- 1 -主文 1 控訴人の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。 ⑴ 被控訴人Y1,被控訴人Y5及び被控訴人Y6は,控訴人に対し,それぞれ,被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y9と連帯して,151万2500円及びこれに対する平成26年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被控訴人Y2及び被控訴人Y3は,控訴人に対し,それぞれ,被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y9と連帯して,75万6250円及びこれに対する平成26年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑶ 被控訴人Y4は,控訴人に対し,被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y9と連帯して,605万円及びこれに対する平成26年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑷ 被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y9は,控訴人に対し,連帯して,1210万円及びこれに対する平成26年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を,上記⑴の金員の限度で被控訴人Y1,被控訴人Y5及び被控訴人Y6と,上記⑵の金員の限度で被控訴人Y2及び被控訴人Y3と,上記⑶の金員の限度で被控訴人Y4とそれぞれ連帯して支払え。 ⑸ 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを3分し,その2を被控訴人らの負担とし,その余を控訴人の負担とする。 3 この判決は,第1項⑴ないし⑷に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人Y1,被控訴人Y5及び被控訴人Y6は,控訴人に対し,それぞれ,被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y9と連帯して,243万7500円- 2 -及びこれに対する平成26年7月7日から支払済 訴人Y1,被控訴人Y5及び被控訴人Y6は,控訴人に対し,それぞれ,被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y9と連帯して,243万7500円- 2 -及びこれに対する平成26年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人Y2及び被控訴人Y3は,控訴人に対し,それぞれ,被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y9と連帯して,121万8750円及びこれに対する平成26年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人Y4は,控訴人に対し,被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y9と連帯して,975万円及びこれに対する平成26年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y9は,控訴人に対し,連帯して,1950万円及びこれに対する平成26年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を,第2項の金員の限度で被控訴人Y1,被控訴人Y5及び被控訴人Y6と,第3項の金員の限度で被控訴人Y2及び被控訴人Y3と,前項の金員の限度で被控訴人Y4とそれぞれ連帯して支払え。 第2 事案の概要(略語は,特に断りのない限り,原判決の例による。以下同じ。) 1 本件は,指定暴力団であるC会の構成団体であるD組等の構成員である被控訴人Y9を含むグループ(本件詐欺グループ)により,控訴人の息子になりすまし同人が現金を至急必要としているかのように装って1000万円の金員をだまし取る詐欺(本件詐欺行為)の被害を受けた控訴人が,①本件詐欺行為は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成20年法律第28号による改正後のもの。以下「暴対法」という。)31条の2の「威力利用資金獲得行為」を行うについてされたものであり,本件詐欺行為の当時,亡A(以下「A」という 止等に関する法律(平成20年法律第28号による改正後のもの。以下「暴対法」という。)31条の2の「威力利用資金獲得行為」を行うについてされたものであり,本件詐欺行為の当時,亡A(以下「A」という。原審係属中に死亡),被控訴人Y7及び被控訴人Y8(以下,上記3名を併せて「Aら」という。)はC会の「代表者等」(同条本文)であったと主張して,Aの相続人である被控訴人Y1,B,被控訴人Y4,被控訴人Y5及び被控訴人Y6(以下併せて「被控訴人Y1ほか4名」という。)並びに被控訴人Y7及び被控訴人Y8に対し,同条本文に基づき,②本件詐欺行為はC会の事業の執行に- 3 -ついて行われたものであり,本件詐欺行為の当時,Aは被控訴人Y9の使用者であり,被控訴人Y7及び被控訴人Y8はAに代わって事業を監督する者であったと主張して,Aの相続人である被控訴人Y1ほか4名に対し民法715条1項本文に基づき,被控訴人Y7及び被控訴人Y8に対し民法715条2項に基づき,被控訴人Y9に対し民法719条1項前段に基づき,本件詐欺行為による控訴人の財産的損害1000万円,慰謝料500万円及び弁護士費用450万円の合計1950万円(Aの相続人である被控訴人Y1ほか4名に対しては各法定相続分の割合で按分した金額)の損害賠償金並びにこれに対する本件詐欺行為の日である平成26年7月7日から支払済みまで民法所定の年5分(平成29年法律第44号による改正前の民法404条所定の利率。以下同じ。)の割合による遅延損害金の連帯支払(被控訴人Y1ほか4名に対しては上記の各按分額の限度での連帯支払)を求める事案である。 原審は,本件詐欺行為の当時,被控訴人Y9はD組等の構成員であったと推認され,この推認を覆すに足りる証拠はないものの,被控訴人Y9がC会又はその構成団体であるD組等の 支払)を求める事案である。 原審は,本件詐欺行為の当時,被控訴人Y9はD組等の構成員であったと推認され,この推認を覆すに足りる証拠はないものの,被控訴人Y9がC会又はその構成団体であるD組等の威力を利用したと認めることはできず,また,被控訴人Y9がC会の事業として本件詐欺行為を行ったと認めることもできないから,Aらが控訴人に対し暴対法31条の2又は民法715条に基づく損害賠償責任を負うとは認められないとして,控訴人の請求を被控訴人Y9に対し控訴人の本件詐欺行為による財産的損害1000万円及び弁護士費用100万円の合計1100万円並びにこれに対する不法行為の日である平成26年7月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,被控訴人Y9に対するその余の請求並びに被控訴人Y1ほか4名,被控訴人Y7及び被控訴人Y8に対する請求をいずれも棄却したところ,控訴人が上記の敗訴部分を不服として控訴した。 原判決の言渡し後,Aの訴訟承継人の一人であるBが死亡し,その相続人である被控訴人Y2及び被控訴人Y3がその訴訟承継人となった(以下,A及びBの- 4 -訴訟承継人である被控訴人6名を併せて「被控訴人A承継人ら」といい,被控訴人Y9を除く被控訴人8名を併せて「被控訴人Y1ら」という。)。 2 暴対法の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり原判決の補正(当審における当事者の主張の付加を含む。)をし,後記3のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第2の1並びに「2 前提事実」及び「2 争点及びこれに関する当事者の主張」(原判決3頁3行目から16頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(以下,補正後の引用に係る上記「2。 2の1並びに「2 前提事実」及び「2 争点及びこれに関する当事者の主張」(原判決3頁3行目から16頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(以下,補正後の引用に係る上記「2。 原判決3頁4行目から5行目にかけての「E´(以下「E´」という。)」を「E(以下「E」という。甲28の1・2)」に改める。 原判決4頁7行目から8行目にかけての「同委員会告示第199号」の次に「(暴対法7条1項及び暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則(平成3年国家公安委員会規則第4号。以下「暴対法施行規則」という。)5条に基づく公示)」を加え,同頁9行目の「指定された」を「指定され,同告示は同月23日から効力を生じた」に改め,同頁10行目の「Aは,」の次に「平成17年までC会C一家六代目総長の地位にあり(甲23,乙1),」を,同行の「前記⑶の告示」の次に「及び平成28年6月20日付け東京都公安委員会告示第219号(効力発生日は同月23日。甲12)」をそれぞれ加え,同頁12行目及び14行目の各「被告B」をいずれも「B」に改め,同頁15行目末尾の次に改行して「B(Aの二女)は,令和元年7月19日に死亡した。被控訴人Y2はBの夫であり,被控訴人Y3はB及び被控訴人Y2の子である。(弁論の全趣旨)」を,同頁16行目の「被告Y7は,」の次に「平成10年頃から」をそれぞれ加え,同頁17行目の「である(弁論の全趣旨)」を「であって(弁論の全趣旨),平成17年4月にAからC会C一家総長の地位を承継し,以後,同七代目総長の地位にある(甲23,乙1)」に,同頁21行目の「F会」を「F會ない- 5 -しF興業」に,同頁22行目の「平成24年12月」から5頁4行目末尾までを「平成10年11月3日当時,F興業の代行であり,かつ,D組の組長であ )」に,同頁21行目の「F会」を「F會ない- 5 -しF興業」に,同頁22行目の「平成24年12月」から5頁4行目末尾までを「平成10年11月3日当時,F興業の代行であり,かつ,D組の組長であったが,同日,二代目F興業を襲名し,D組改めF會内二代目F興業として活動するようになった。Dは,平成11年5月頃にGがF會内三代目F興業を継承したことから,再びD組を名乗るようになり,平成25年11月25日,Dが二代目F會会長を,Hが二代目D組組長をそれぞれ襲名した。(甲48。以下,D組及びF會ないしF興業を総称して「D組等」という。)」にそれぞれ改める。 ⑶ 原判決5頁10行目の「2」を「3」に改める。 ⑷ 原判決10頁9行目を「a 本件詐欺行為が指定暴力団の威力を利用して行われたものであること」に,同頁26行目の「「威力を利用して」」を「指定暴力団の威力を利用して」にそれぞれ改める。 ⑸ 原判決11頁1行目の「威力を利用して」を「指定暴力団の威力を利用して」に改め,同頁21行目の「本件詐欺行為は」の次に「指定暴力団の威力を利用して行われたものであり,」を加える。 3 当審における当事者の主張⑴ 争点1(被控訴人Y9は本件詐欺行為当時D組等の構成員であったか否か)について(被控訴人Y1らの主張)被控訴人Y9が,公判段階の被告人質問においてD組等の構成員である旨を供述したのは,D組等の関係者が被控訴人Y9の公判を誰も傍聴しておらず,D組等の構成員を自称していることがD組等の関係者に判明する心配はないと思っていたためである。また,被控訴人Y9が,D組等を辞めるつもりであると供述しながら,D組等に脱退通知書を送付し又はD組等から脱退証明書を取得していないのは,実際にはD組等の構成員ではなかったためである。 ⑵ 争点2(Aら 人Y9が,D組等を辞めるつもりであると供述しながら,D組等に脱退通知書を送付し又はD組等から脱退証明書を取得していないのは,実際にはD組等の構成員ではなかったためである。 ⑵ 争点2(Aらは控訴人に対し暴対法31条の2本文の損害賠償責任を負う- 6 -か否か)について(被控訴人Y1らの主張)Iが,被控訴人Y9に対し受け子の仕事の紹介を受けることを断ったにもかかわらず,被控訴人Y9から交付された3万円で受け子の仕事をするためのスーツやワイシャツ等を購入し,受け子の仕事をするために指示された場所で待機をするなどした上,一旦は郡山市に戻りながら,自ら被控訴人Y9に対し受け子の仕事を紹介するよう依頼し,以後,逮捕されるまで受け子の仕事を続けたのは,金を稼ぎたいというI自身の意思によるものであり,被控訴人Y9がC会の威力を利用したものとは認められない。 ⑶ 争点4(本件詐欺行為により控訴人が受けた損害の額)について(控訴人の主張)ア慰謝料について特殊詐欺は,被害者を精神的・身体的に追い詰める犯罪である点において殺人に比肩すべきものであること,詐取された金員の取戻しが容易でないこと,仮に取り戻すことができたとしても長期間を要すること,控訴人は独居の高齢者であり今回の被詐取金員を生活の当てにしていたこと,自分には何ら非がないにもかかわらず親族から叱責されるなどの二次的損害を受けていること,控訴人が今回の事件を機に外部者との交流を必要以上に恐れ,体力・判断能力の低下を招き,特別養護老人ホーム入所の遠因となっていること等を勘案すると,控訴人は,生命・身体に対する不法行為に比肩すべき精神的な損害を被ったというべきである。これらの事情を勘案すれば,控訴人の精神的損害を慰謝すべき慰謝料の額は500万円を下らない。 と等を勘案すると,控訴人は,生命・身体に対する不法行為に比肩すべき精神的な損害を被ったというべきである。これらの事情を勘案すれば,控訴人の精神的損害を慰謝すべき慰謝料の額は500万円を下らない。 イ弁護士費用について本件においては,控訴人の身辺の安全の確保や主張立証活動に労力を要すること等から,多数の弁護士による対応が必要不可欠であることを勘案すると,弁護士費用として,財産的損害及び精神的損害の合計額の3割に相- 7 -当する450万円が認められるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,控訴人の請求は,①被控訴人Y1,被控訴人Y5及び被控訴人Y6に対し各151万2500円,②被控訴人Y2及び被控訴人Y3に対し各75万6250円,③被控訴人Y4に対し605万円,④被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y9に対し各1210万円の損害賠償金並びにこれらに対する本件詐欺行為の日である平成26年7月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(上記④の被控訴人3名の間では相互の連帯支払,上記④の被控訴人3名と上記①ないし③の被控訴人A承継人らとの間では上記①ないし③の各金員の限度での連帯支払)を求める限度で理由があり,その余はいずれも理由がないと判断するものであり,その理由は以下のとおりである。 2 被控訴人Y9等の不法行為及び争点1(被控訴人Y9は本件詐欺行為当時D組等の構成員であったか否か)について被控訴人Y9を含む本件詐欺グループが控訴人に対し本件詐欺行為を行ったことは,ところ,争点1(被控訴人Y9は本件詐欺行為当時D組等の構成員であったか否か)に関する当裁判所の判断は,以下のとおり原判決の補正(当審における当事者の主張に対する判断の付加を含む。)をするほかは,原判決の「事実 (被控訴人Y9は本件詐欺行為当時D組等の構成員であったか否か)に関する当裁判所の判断は,以下のとおり原判決の補正(当審における当事者の主張に対する判断の付加を含む。)をするほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」(以下「原判決第3」という。)の及び⑵(原判決17頁2行目から22頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(以下,補正後の引用に係る同2ア以下の事実を「認定事実ア」のようにいう。)。 ⑴ 原判決17頁3行目の「甲9ないし11,」の次に「甲14ないし17,」を,「甲25,」の次に「甲46,甲57,」をそれぞれ加え,同頁6行目から7行目にかけての「及び」を「において,平成21年頃にDから盃を受けてD組等の組員になった旨を供述しており,」に,同行の「において」を「においても」- 8 -に,同行,同頁9行目及び11行目の各「D組」をいずれも「D組等」に,同行の「認識するまで」を「認識した後もなお」にそれぞれ改める。 原判決19頁20行目末尾の次に改行して次のとおり加える。 「ウ被控訴人Y9は,福島刑務所の在監中である平成25年7月17日にD組等の構成員であるJと養子縁組をし,本件詐欺行為について詐欺罪で起訴された後の平成28年2月17日にJと離縁した。」⑶ 原判決19頁21行目の「ウ」を「」に改める。 ⑷ 原判決20頁3行目の「出所した後」の次に「の平成26年5月30日から平成28年2月21日までの間」を加え,同頁4行目の「住民登録をした」を「住民登録をしていた(甲9,10)」に改め,同頁6行目末尾の次に改行して次のとおり加える。 「オ平成27年10月12日当時,被控訴人Y9は,その自宅に,「K一家F會会長代行 D´」等と記載された名刺,表紙に「C会K一家 R七代目 め,同頁6行目末尾の次に改行して次のとおり加える。 「オ平成27年10月12日当時,被控訴人Y9は,その自宅に,「K一家F會会長代行 D´」等と記載された名刺,表紙に「C会K一家 R七代目 F會」と記載され「K」の代紋の刻印のあるノート及び被控訴人Y9の名前が記載された「6月当番表」と題する書面を所持していた(甲46)。」⑸ 原判決20頁7行目の「⑵」から8行目の「前記⑴の認定事実に基づき,」までを「⑵ 上記⑴の認定事実アないしオに基づき,」に,同頁11行目の「及び」を「において,平成21年頃にDから盃を受けてD組等の組員になった旨を供述しており,」に,同行の「において」を「においても」に,同行並びに同頁12行目,14行目,同行から15行目にかけて及び17行目の各「D組」をいずれも「D組等」に,同頁12行目の「刑務所内においても」を「本件詐欺行為の実行前に服役していた福島刑務所及び現在服役中の富山刑務所においても,本件訴訟で被控訴人Y9がD組等の構成員であるか否かが争われていることを認識した後もなお,」に,同頁14行目の「不利な」を「極めて不利な」に,同頁20行目の「構成員でなければ」から21行目の「ものである」- 9 -までを「構成員であることを前提としなければ容易に想定できないものであり,また,前記⑴ウのとおり,被控訴人Y9が福島刑務所の在監中にD組等の構成員であるJと養子縁組をしたことも,被控訴人Y9がD組等の構成員でなければ容易に想定し難い行動というべきである」に,同頁22行目の「前記⑴ウ」を「前記⑴」にそれぞれ改める。 ⑹ 原判決21頁13行目末尾の次に改行して次のとおり加える。 「オしかも,前記⑴オのとおり,平成27年10月12日当時,被控訴人Y9は,その自宅に,「K一家 F會会長代行 D´」 める。 ⑹ 原判決21頁13行目末尾の次に改行して次のとおり加える。 「オしかも,前記⑴オのとおり,平成27年10月12日当時,被控訴人Y9は,その自宅に,「K一家 F會会長代行 D´」等と記載された名刺,表紙に「C会K一家 R七代目 F會」と記載され「K」の代紋の刻印のあるノート及び被控訴人Y9の名前が記載された「6月当番表」と題する書面を所持しており,これらはいずれも被控訴人Y9がD組等の構成員であることを前提としなければ容易に想定できないものというべきである。」⑺ 原判決21頁14行目の「オ」を「カ」に,同頁20行目の「ではない」を「ではなく」に,同頁23行目の「から,」を「,上記アないしオの事実を総合すれば,被控訴人Y9は,本件詐欺行為の当時,D組等の構成員であったものと推認され,この推認を覆すに足りる証拠はないことは前示のとおりであるから,」に,同頁25行目の「D組」を「D組等」にそれぞれ改める。 ⑻ 原判決22頁1行目末尾の次に改行して次のとおり加える。 「キ被控訴人Y1らは,当審において,被控訴人Y9が,公判段階の被告人質問においてD組等の構成員である旨を供述したのは,D組等の関係者が被控訴人Y9の公判を誰も傍聴しておらず,D組等の構成員を自称していることがD組等の関係者に判明する心配はないと思っていたためであり,また,D組等を辞めるつもりであると供述しながらD組等に脱退通知書を送付し又はD組等から脱退証明書を取得していないのは,被控訴人Y9がD組等の構成員ではなかったためである旨を主張する。 - 10 -しかしながら,前記アのとおり,被控訴人Y9は,D組等の関係者に伝わる可能性が想定される捜査段階の供述においても一貫して自身がD組等の組員であると述べており,暴力団員であるという事実は刑事裁判に しかしながら,前記アのとおり,被控訴人Y9は,D組等の関係者に伝わる可能性が想定される捜査段階の供述においても一貫して自身がD組等の組員であると述べており,暴力団員であるという事実は刑事裁判において極めて不利な情状であるにもかかわらず,捜査段階から公判段階まで一貫して自身がD組等の組員であると述べていたこと等に加え,被控訴人Y9が,原審本人尋問において,福島刑務所を出所した後,本件詐欺行為を含む一連の犯行につき逮捕されるまでの間に,友人,知人や内妻に対しても自らがD組等の組員であると告げており,D組等の組員を名乗っていることがD組等の組員に知られた場合のことは考えていなかった旨を供述していること(被控訴人Y9本人33,34,68頁)や,D組等に脱退通知書を送付し又はD組等から脱退証明書を取得していないのは,むしろD組等の組員でありそのことを上記のとおり周囲の者らにも告げていた被控訴人Y9にD組等を脱退する意思がないことの徴表とみるのが相当であると解されること等に照らせば,被控訴人Y1らの上記主張は採用することができない。 なお,被控訴人Y1らは,当審において,被控訴人Y9がC会の構成員として把握されているか否かについての弁護士会からの照会に対して警視庁が回答しかねると答えたこと(乙11)を指摘するが,警察庁の通達において,暴力団情報に関しては,法令の規定により警察において厳格に管理する責任を負っており,暴力団員等の個人情報の提供については,個人情報保護に関する法令及び条例の規定に従って行う必要があり,相手方が行政機関以外の者である場合には,法令の規定に基づく場合のほかは,当該情報が暴力団排除等の公益目的の達成のために必要であり,かつ,警察からの情報提供によらなければ当該目的を達成することが困難な場合にのみ行うものとされてい 合には,法令の規定に基づく場合のほかは,当該情報が暴力団排除等の公益目的の達成のために必要であり,かつ,警察からの情報提供によらなければ当該目的を達成することが困難な場合にのみ行うものとされているので(平成31年3月30日付け警察庁丙組組企発第105号,丙組暴発第7号),警視庁において特定の個人が- 11 -C会の構成員として把握されている場合でも,警視庁が上記の基準に照らして弁護士会からの照会に対する回答において情報提供を差し控えることはあり得るのであるから,被控訴人Y1らによる上記の指摘は,被控訴人Y9がD組等の構成員であったことについての前示の認定判断を左右するものではない。 以上のほか,その余の被控訴人らの主張も,被控訴人Y9がD組等の構成員であったことについての前示の認定判断を左右するに足りるものとは認められない。」 3 争点2(Aらは控訴人に対し暴対法31条の2本文の損害賠償責任を負うか否か)について⑴ 前記の前提事実⑴ないし⑻及び認定事実アないしオ並びに以下の括弧内に掲記した証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア C会等についてC会は,平成25年6月17日及び平成28年6月20日の東京都公安委員会の各告示をもって,暴対法3条に基づく指定を受けた指定暴力団である。平成26年末時点の勢力範囲は1都1道1府15県に及び,構成員数は約3400人(準構成員等を含めると約8500人)であり,全暴力団構成員約2万2300人(準構成員等を含めると約5万3500人)に占める割合は約15.2パーセント(準構成員等を含めると約15. 9パーセント)で,六代目S組に次いで日本国内2位である(甲5の1・3頁,甲6・2頁)。 平成26年中,全国の暴力団構成員の検挙人員は4734人(準構成員等を含め ト(準構成員等を含めると約15. 9パーセント)で,六代目S組に次いで日本国内2位である(甲5の1・3頁,甲6・2頁)。 平成26年中,全国の暴力団構成員の検挙人員は4734人(準構成員等を含めると2万2495人)であったが,そのうちC会の構成員は834人(準構成員等を含めると3785人)で,約17.6パーセント(準構成員等を含めると約16.8パーセント)であり,その割合は,C会の構成員が全暴力団構成員に占める割合を上回っている(甲6・9頁)。 - 12 -また,東京都内においては,平成26年中の暴力団構成員等の検挙人員4923人のうちC会の構成員は1920人(約39パーセント)であり,S組を含む他の暴力団の構成員の検挙人員を大きく上回っている(甲8・178頁)。 Aは,平成17年4月までC会C一家六代目総長の地位にあり,上記の東京都公安委員会の各告示においてC会を代表する者とされた者であって,平成29年9月12日に死亡した。 被控訴人Y7は,平成10年頃から平成26年4月17日までC会の会長の地位にあり,同月18日以降はC会の特別相談役の地位にある者であって,平成17年4月からはC会C一家七代目総長の地位にある。 被控訴人Y8は,同月17日までC会の会長代行の地位にあり,同月18日以降はC会の会長の地位にある者である。 イ暴力団組織の構造及び活動等について暴力団は,一般に,首領を頂点とした封建的家父長制を模した擬制的血縁関係により構成されており,暴力団の各首領が互いに擬制的血縁関係を結び,下部団体の首領が上部団体の首領の子分となることによって重層的な大規模団体を構成することが多い。また,暴力団の社会にあっては,親分・子分の上下関係は絶対的なものとされ,親分の命令に従うのが子分としての当分の義務であり,こうした義 子分となることによって重層的な大規模団体を構成することが多い。また,暴力団の社会にあっては,親分・子分の上下関係は絶対的なものとされ,親分の命令に従うのが子分としての当分の義務であり,こうした義務や暴力団社会の掟に反し,親分の支配や集団の一体性を乱した者に対しては,厳しい制裁を加える一方,親分等の命令に従い組織に貢献した者に対しては,組織内のより高い地位を始め相応の報酬を与えるなどして内部秩序を保っている。(甲29・2頁)暴力団組織内部の下位構成員から上位構成員への資金の流れは,主に上納金制度を通じて行われている。上納金制度とは,暴力団の組織の維持・運営に要する資金あるいは首領・幹部自らの生活費や遊興費を賄うた- 13 -めに,構成員から定期的に一定額を組織に納めさせる程度であり,系列内の上位団体に対しても行われ,暴力団に広くみられるものである。(甲29・15頁)暴力団は,暴力と組織の威力を最大限に利用しつつ,より巧妙かつ効率的に経済的利益を得るため,経済・社会の発展等に対応して,その資金獲得活動を変化させ続けており,近年は,その実態を隠蔽しながら各種の事業活動に進出するなどし,一般社会での不透明な資金獲得活動を活発化させているほか,振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺等への関与を深めるなど,その活動分野を更に拡大している状況がうかがわれる。また,近年の暴力団構成員等の罪種別検挙状況をみると,恐喝,傷害等の暴力団の威力をあからさまに示す形態の犯罪の割合が減少傾向又は横ばいで推移する一方で,必ずしも暴力団の威力をあからさまに示す必要のない詐欺の割合が増加しており(平成17年は5.8%であったが,平成26年は10.4%に増加している),この背景としては,数次にわたる暴対法の改正による規制の強化,社会における暴力団排除活 す必要のない詐欺の割合が増加しており(平成17年は5.8%であったが,平成26年は10.4%に増加している),この背景としては,数次にわたる暴対法の改正による規制の強化,社会における暴力団排除活動の進展等により,暴力団の威力をあからさまに示して行う資金獲得活動が困難化したことなどが考えられる。(甲5の1・6,7頁)ウ特殊詐欺等について特殊詐欺とは,被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ,指定した預貯金口座への振込みその他の方法により,不特定多数の者から現金等を騙し取る犯罪の総称をいう(甲6・5頁)。 特殊詐欺の犯行グループは,リーダーや中核メンバーを中心として,電話を繰り返しかけて被害者をだます「架け子」,自宅等に現金等を受け取りに行く「受け子」等が役割を分担し,組織的に犯罪を敢行している。また,特殊詐欺の犯行グループの周辺には,犯行に悪用されることを承知しながら,犯行拠点をあっせんしたり,他人名義の預貯金口座を供給したり- 14 -する者が存在し,犯行グループの活動を助長している。(甲5の2・42頁)特殊詐欺の総検挙人員に占める暴力団構成員等の割合は,平成26年は35.2%,平成27年は33.0%,平成28年は26.3%,平成29年は25.2%,平成30年は22.9%と減少傾向にあるものの,刑法犯・特別法犯総検挙人員において暴力団構成員等の検挙人員が占める割合が平成26年以降に7%前後で推移し平成30年に6.3%であることと比較して,依然として高い割合となっている(甲53・1,2頁)。 また,特殊詐欺の主犯(首謀者・グループリーダー・張本人等)の検挙人員に占める暴力団構成員等の割合は平成26年が26.8%,平成27年が35.8%,平成28年が28.6%,平成29年が45.8%,平成30年が4 の主犯(首謀者・グループリーダー・張本人等)の検挙人員に占める暴力団構成員等の割合は平成26年が26.8%,平成27年が35.8%,平成28年が28.6%,平成29年が45.8%,平成30年が45.3%であり,出し子・受け子・見張りの指示役の検挙人員に占める暴力団構成員等の割合は平成26年が47.2%,平成27年が47.6%,平成28年が44.4%,平成29年が39.3%,平成30年が47.9%であり,暴力団構成員等が主犯又は指示役となる割合が高いものとなっている(甲53・2,3頁)。 特殊詐欺においては,①共犯者を勧誘して実際に加担させること自体が相当に困難であり,検挙されるリスクの高い「受け子」や「出し子」の多くは警察に逮捕されていくため,これらを補充するための勧誘を継続的かつ強力に行う必要がある,②犯行に用いられる他人名義の携帯電話や口座等は,指定暴力団を後ろ盾にした闇金融業者等が多重債務者等に契約等をさせて転売するなどの犯罪行為により入手されるのが実態の通例である,③詐取金が何人もの共犯者を転々と中継して分配される間に持ち逃げされたり,役割分担に不満を持つメンバーが指示に従わなかったり,警察にたれ込みをしたりすることのないように犯行グループが互いに分断されているため,共犯者の統制が困難である,④他の暴力団から- 15 -の金銭要求や襲撃等に対する防衛が必要であるなどの事情から,強い内部の統制力及び外部への対抗力がなければ犯行グループを維持し運営することは困難であり,指定暴力団員の関与する特殊詐欺においては,指定暴力団の威力が内部の統制及び外部への対抗に利用されることになるとされている(甲55・95ないし98頁)。 エ本件詐欺行為に至る経緯等について被控訴人Y9は,平成26年5月18日に福島刑務所を出所した後 が内部の統制及び外部への対抗に利用されることになるとされている(甲55・95ないし98頁)。 エ本件詐欺行為に至る経緯等について被控訴人Y9は,平成26年5月18日に福島刑務所を出所した後間もなく,C会L家四代目M会(以下「M会」という。)の構成員であるEから,特殊詐欺の受け子を紹介するよう依頼を受けた(甲14・1頁,甲15・1頁,甲24の2・10頁,甲28の1及び2,甲35・2ないし12頁,甲51・3頁,被控訴人Y9本人16,66頁)。 N(以下「N」という。)は,Eから依頼を受けてEに特殊詐欺の受け子を紹介するとともに,自ら特殊詐欺の受け子の役割を実行するなどしていた者であるが,EがC会の構成員であったため,Eには逆らえないところがあると考えていた。 また,Nは,平成26年2月ないし3月頃,Eの指示により,福島刑務所において服役していた被控訴人Y9に出所用のスーツを差し入れたことがあり,同年5月下旬頃,Eから福島刑務所を出所した被控訴人Y9を紹介され,被控訴人Y9から「C会K一家F会Y9」と書かれた紙片を手渡された。 その後,Nは,Eの指示により,被控訴人Y9に対し,特殊詐欺の受け子の役割を実行するためには事前にスーツ,ワイシャツ,ネクタイ,革靴,ビジネスバッグ等を準備し,髪の色を黒くしてサラリーマンに見えるようにしなければならないこと,指示役から指示された時間に指示された駅に行って指示役の指示に従って行動すること,現金を受け取る際は指示役から指示された偽名を名乗ること,現金を受け取った後は指示役か- 16 -ら指示された場所に行き,指示された方法で現金を引き継ぐことなどを説明した。 (甲35・4,5頁,甲41・2ないし5頁,甲42・1,2頁)Iは,平成26年5月,O(「ヒロ」と称する人物。以下「O」と された場所に行き,指示された方法で現金を引き継ぐことなどを説明した。 (甲35・4,5頁,甲41・2ないし5頁,甲42・1,2頁)Iは,平成26年5月,O(「ヒロ」と称する人物。以下「O」という。)及びP(「トシ」と称する人物。以下「P」という。)のつてで被控訴人Y9から仕事を紹介してもらうことになり,被控訴人Y9から電話で指示を受けて郡山市から新宿駅に上京した。上京のための交通費や上京後の生活費等は,被控訴人Y9が負担した。 Iは,Oから,暴力団員のPが紹介してくる人だから被控訴人Y9も暴力団関係の人であると思う,被控訴人Y9が紹介しようとしている仕事はおそらくすぐに警察に捕まるような違法な仕事であり,1回入ったら抜けにくくなるかもしれないなどと告げられ,上京後に一旦は,被控訴人Y9に対し,仕事をすることができない旨を告げたが,被控訴人Y9から,上京のための交通費や上京後の生活費等を出したのだから郡山市には帰らせない旨を告げられた。 Iは,Oと相談の上,Pを通じて被控訴人Y9から紹介される仕事をしなくて済むようにしてもらうことを依頼したが,被控訴人Y9から,ワイシャツ,スラックス,革靴,ビジネスバッグ等を購入するよう指示を受け,被控訴人Y9に対する恐怖心等から,被控訴人Y9の指示に従ってこれらを購入した。なお,これらの購入資金3万円は,Nが被控訴人Y9の指示を受けて同被控訴人からこれを預かり,Iに交付したものである。 そして,Iは,被控訴人Y9の指示により特殊詐欺の受け子の役割を実行することになり,指示役から指示を受けた待機場所に赴いたことがあったが,実際に受け子の役割を実行するには至らなかった。 (甲34・2ないし11頁,甲36・3頁,甲41・5ないし7頁,甲42・3ないし6頁,甲47・11枚目)- 17 - に赴いたことがあったが,実際に受け子の役割を実行するには至らなかった。 (甲34・2ないし11頁,甲36・3頁,甲41・5ないし7頁,甲42・3ないし6頁,甲47・11枚目)- 17 -その後,Iは,Pから,被控訴人Y9には話をつけておくので郡山市に戻ってくるよう告げられ,被控訴人Y9の了解を得て一旦は郡山市まで戻ったが,その後,自ら被控訴人Y9に連絡を取って上京した。 そして,Iは,「イトウ」,「丸山」,「スズキ」等と称する複数の指示役から具体的な指示を受けて特殊詐欺の受け子の役割を実行し,特殊詐欺の被害者から受領した現金をC会K一家Q会の構成員であるRに交付していた。 Iは,被控訴人Y9から,受け子の役割を実行するための交通費や報酬とともに生活費を手渡され,受け子の役割を実行する際には,被控訴人Y9の指示に従って,被控訴人Y9にその進捗状況等を電話で逐一報告していたが,被控訴人Y9がIの実家の住所を知っていたため,途中で特殊詐欺のグループを抜けることは難しいと思って受け子の役割を実行し続けており,逮捕されれば角を立てずに特殊詐欺の組織を抜けられると思っていた。 (甲14・1,2,10ないし12頁,甲15・2,3頁,甲34・12ないし14頁,甲36・1,2,4頁,甲37,甲38・2ないし4頁,甲39・3ないし5頁,甲40・1,2頁,甲50)本件詐欺グループは,平成26年7月6日から同月7日にかけて,本件詐欺行為を行った。その際,被控訴人Y9は,Iに受け子の役割を実行させ,Iから,その進捗状況等について逐一報告を受けていた。(甲14・3,10ないし13頁)被控訴人Y9は,Eから支払を受けた詐欺行為の報酬の中からIに対する報酬を支払っており,被控訴人Y9はIが被害者から受け取った金員の5パーセントを,Iはそ た。(甲14・3,10ないし13頁)被控訴人Y9は,Eから支払を受けた詐欺行為の報酬の中からIに対する報酬を支払っており,被控訴人Y9はIが被害者から受け取った金員の5パーセントを,Iはその3パーセントを報酬として受領していた。 Eは,同月16日,被控訴人Y9の指示により,本件詐欺行為の報酬として50万円を被控訴人Y9の母親名義の預金口座に振り込む方法で支- 18 -払ったが,Iは,本件詐欺行為の直後に逮捕されたため,本件詐欺行為の報酬を受領していない。 (甲14・13ないし17頁,甲15・3,4頁,甲16・1頁) 被控訴人Y9は,Iに対し,警察に逮捕された場合に被控訴人Y9やその周辺の人物のことについて話さないよう口止めをしており,Iが逮捕された後,自らの費用で弁護士をIの接見に行かせ,同弁護士を通じて,関係者のことを話さなければ20日間で釈放されるなどと告げたため,Iは,被控訴人Y9に対する恐怖心から,逮捕後約3か月間は被控訴人Y9や関係者の名前を供述しなかった。 Nもまた,家族への仕返し等を恐れ,逮捕後約3か月間はEの氏名を供述しなかった。 (甲14・18頁,甲34・1頁,甲35・1,2頁,甲40・1,2頁,乙5・2頁,被控訴人Y9本人・25頁)⑵ 上記⑴の認定に係る事実に基づき,Aらが控訴人に対し暴対法31条の2本文の損害賠償責任を負うか否かを検討する。 ア本件詐欺行為が,Aらが代表者等の地位にある指定暴力団の指定暴力団員によって行われたものであることについて暴対法31条の2の「代表者等」とは,「当該暴力団を代表する者又はその運営を支配する地位にある者」(同法3条3号)をいい,「当該暴力団を代表する者」すなわち会長,総長等と称する暴力団の首領のほか,「その運営を支配する地位 者等」とは,「当該暴力団を代表する者又はその運営を支配する地位にある者」(同法3条3号)をいい,「当該暴力団を代表する者」すなわち会長,総長等と称する暴力団の首領のほか,「その運営を支配する地位にある者」すなわち暴力団組織の階層的構成においてその運営を支配する立場にある者も含まれる。 のとおり,Aは,平成17年4月までC会C一家六代目総長の地位にあり,平成25年6月17日及び平成28年6月20日の東京都公安委員会による指定暴力団の指定に係る各告示(暴対法7条1項及び暴対法施行規則5条に基づく公示)においてC会を代表する者とされていたも- 19 -のであって,これらの告示は警察組織を統括する同公安委員会による詳細な実態の調査及び認定並びに審査専門委員の意見に基づく国家公安委員会の確認を経て行われたもの(暴対法3条3号,6条,7条,33条,36条,暴対法施行規則5条3号等)であるから,Aは,本件詐欺行為の当時,C会を「代表する者」(暴対法3条3号)であったものと認められ,少なくともC会の「運営を支配する地位にある者」(同号)として同法31条の2の「代表者等」に該当する者であったと認めるのが相当である。 のとおり,被控訴人Y8は,本件詐欺行為の当時,C会の会長の地位にあった者であるから,C会を「代表する者」(同法3条3号)であったと認められるとおり,被控訴人Y7は,本件詐欺行為の当時,C会の特別相談役の地位にあり,相談役とは,一般に,会社等において社長等がその役職を後進に継承した後に引き続き重大な事項等について現執行部等に対する指導や助言等を行う役職をいうところ,被控訴人Y7は,本件詐欺行為の約2か月半前まで長期にわたりC会の会長の地位にあり,平成17年4月以降は本件詐欺行為の前後を通じてC会C一家七代目総長の地位にもある者であ 等を行う役職をいうところ,被控訴人Y7は,本件詐欺行為の約2か月半前まで長期にわたりC会の会長の地位にあり,平成17年4月以降は本件詐欺行為の前後を通じてC会C一家七代目総長の地位にもある者であって,暴力団組織の階層的支配服従関係に照らすと,C会の会長職を後進に継承した後もなお,C会の特別相談役として,C会の会長等に指導や助言等をすることを通じ,その運営に強い影響力を有するものと推認され,これを覆すに足りる的確な証拠はないから,被控訴人Y7は,本件詐欺行為の当時,C会の「運営を支配する地位にある者」(同法3条3号)として同法31条の2の「代表者等」に該当する者であったと認めるのが相当である。したがって,Aらは,本件詐欺行為の当時,いずれも同法31条の2の「代表者等」に該当する者であったものと認められる。 そして,上記⑴エの認定に係る事実によれば,本件詐欺行為は,C会の下部組織であるD組等の構成員である被控訴人Y9及び同じくC会の下部組織であるM会の構成員であるEを含む本件詐欺グループによって行われた- 20 -ものであることが認められるから,本件詐欺行為は,Aらが代表者等の地位にある指定暴力団の指定暴力団員によって行われたものと認めるのが相当である。 被控訴人Y1らは,Aが平成17年4月にC会の代表者から引退しており,本件詐欺行為の当時C会の代表者ではなかった旨を主張するが,前示のとおり,Aは,同月までC会C一家六代目総長の地位にあり,平成25年6月17日及び平成28年6月20日の東京都公安委員会による指定暴力団の指定に係る各告示においてC会を代表する者とされていたものであって,これらの告示は警察組織を統括する同公安委員会による詳細な実態の調査及び認定並びに審査専門委員の意見に基づく国家公安委員会の確認を経て行われたもので おいてC会を代表する者とされていたものであって,これらの告示は警察組織を統括する同公安委員会による詳細な実態の調査及び認定並びに審査専門委員の意見に基づく国家公安委員会の確認を経て行われたものであるから,Aは,本件詐欺行為の当時,C会を「代表する者」(暴対法3条3号)であったものと認められ,少なくともC会の「運営を支配する地位にある者」(同号)として同法31条の2の「代表者等」に該当する者であったと認めるのが相当であり,上記の主張は直ちに採用することができない。 イ本件詐欺行為が威力利用資金獲得行為を行うについてされたものであることについて暴対法31条の2は,指定暴力団の代表者等は,当該指定暴力団の指定暴力団員が「当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持,財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得,又は当該資金を得るために必要な地位を得る行為」,すなわち「威力利用資金獲得行為」を行うについて他人の生命,身体又は財産を侵害したときは,一定の場合を除き,これによって生じた損害を賠償する責任を負う旨を定めており,民法715条の規定を適用して代表者等の損害賠償責任を追及する場合において生ずる被害者側の主張立証責任の負担の軽減を図ることを趣旨とする規定であると解されるところ,暴対法31条の2は,上記「威力利用資金獲得行為」- 21 -の定義につき「当該指定暴力団の威力を利用して」と規定し,同法9条が指定暴力団員による暴力的要求行為の禁止について相手方に「威力を示して」要求することを要件としているのと異なり,「威力を利用」するとの文言を用いており,相手方に「威力を示」すことを要件としていないことに照らせば,同法31条の2本文の「当該指定暴力団の威力を利用して」とは,指定暴力団員が,当該指定暴力団に所属していることにより の文言を用いており,相手方に「威力を示」すことを要件としていないことに照らせば,同法31条の2本文の「当該指定暴力団の威力を利用して」とは,指定暴力団員が,当該指定暴力団に所属していることにより,資金獲得活動を効果的に行うための影響力又は便益を利用することをいい,当該指定暴力団の指定暴力団員としての地位と資金獲得活動とが結び付いている一切の場合をいう趣旨であって,必ずしも当該暴力団の威力が被害者に対して直接示されることを要しないものと解するのが相当である。 前記⑴イ及びウの認定に係る事実によれば,暴力団は,暴力と組織の威力を最大限に利用しつつ,より巧妙かつ効率的に経済的利益を得るため,経済・社会の発展等に対応して,その資金獲得活動を変化させ続けており,近年は,その実態を隠蔽しながら,特殊詐欺等への関与を深めるなど,その活動分野を更に拡大している状況がうかがわれることに加え,特殊詐欺の犯行グループは,リーダーや中核メンバーを中心として架け子や受け子等が役割を分担して組織的に犯罪を敢行しており,強い内部の統制力及び外部への対抗力がなければ犯行グループを維持し運営することは困難であることなどから,指定暴力団員の関与する特殊詐欺においては,指定暴力団の威力が内部の統制及び外部への対抗に利用されることになることが認められる。 そして,前記⑴エの認定に係る事実によれば,本件詐欺行為の当時D組等の構成員であった被控訴人Y9は,M会の構成員であるEから特殊詐欺の受け子を紹介するよう依頼を受け,Eに対し,本件詐欺行為において受け子の役割を実行したIを紹介したことが認められるところ,Iは,O- 22 -から,暴力団員のPが紹介してくる人だから被控訴人Y9は暴力団関係の人であると思う,被控訴人Y9が紹介しようとしている仕事はおそらくすぐに を紹介したことが認められるところ,Iは,O- 22 -から,暴力団員のPが紹介してくる人だから被控訴人Y9は暴力団関係の人であると思う,被控訴人Y9が紹介しようとしている仕事はおそらくすぐに警察に捕まるような違法な仕事であり,1回入ったら抜けにくくなるかもしれないなどと告げられ,当初は被控訴人Y9に対しこの仕事はできない旨を告げていたことや,被控訴人Y9に自分の実家の住所を知られていたため,途中で特殊詐欺のグループを抜けることは難しいと思って受け子の役割を実行し続け,逮捕されれば角を立てずに特殊詐欺の組織を抜けられると思っていたこと,被控訴人Y9から同被控訴人やその周辺の人物のことについて話さないよう口止めをされており,同被控訴人に対する恐怖心から逮捕後約3か月間は同被控訴人や関係者の名前を供述しなかったことなどに照らせば,Iは,現に指定暴力団員であった被控訴人Y9が暴力団の構成員であることを認識していたものと推認するのが相当である。そして,被控訴人Y9は,Iに対し,上京のための交通費や上京後の生活費等に加え,特殊詐欺の受け子の役割を実行するために必要な衣料品等の購入資金や交通費及び報酬とともにその後の生活費を手渡すなどして,Iが被控訴人Y9に対する恐怖心や経済的な恩義から受け子の役割の実行を継続せざるを得ない状況を作り出した上,Iに受け子の役割を実行させる際には,その進捗状況等を逐一報告させるなどしてIを自らの統制の下に置き,警察に逮捕された場合に被控訴人Y9やその周辺の人物のことについて話さないよう口止めをするなどして,自らの指示により受け子の役割を忠実に実行させていたのであるから,C会の下部組織であるD組等に所属していることにより資金獲得活動としての本件詐欺行為を効果的に行うための影響力又は便益を利用していたものと認 示により受け子の役割を忠実に実行させていたのであるから,C会の下部組織であるD組等に所属していることにより資金獲得活動としての本件詐欺行為を効果的に行うための影響力又は便益を利用していたものと認めるのが相当である。 また,前記⑴エの認定に係る事実によれば,本件詐欺行為の当時D組等の構成員であった被控訴人Y9は,M会の構成員であるEの指示を受け- 23 -たNから出所用のスーツの差し入れを受け,特殊詐欺の受け子の役割を実行するための準備やその役割を実行する際の具体的な手順等について説明を受けるなどしたほか,Nに対し,特殊詐欺の受け子の役割を実行するために必要な衣料品等の購入資金をIに交付するよう指示するなどしていたことが認められるところ,Nは,EがC会の構成員であったため,Eには逆らえないところがあると考えており,Eから被控訴人Y9を紹介された際,同被控訴人からC会の下部組織であるD組等の肩書を付した紙片を手渡されていたことなどに照らせば,E及び被控訴人Y9がC会の下部組織の構成員であることを認識していたものと認められる。そして,Eは,Nが指定暴力団員であるEに対する恐怖心から同人の指示に従うことを利用して,被控訴人Y9に特殊詐欺の受け子の役割を実行するための準備やその役割を実行する際の具体的な手順等について説明するよう指示をするなどしてNを本件詐欺行為に加担させ,被控訴人Y9もまた,Nが指定暴力団員である被控訴人Y9に対する恐怖心から同被控訴人の指示に従うことを利用して,特殊詐欺の受け子の役割を実行するために必要な衣料品等の購入資金をIに交付するよう指示するなどしてNを本件詐欺行為に加担させていたのであるから,E及び被控訴人Y9は,C会の下部組織であるM会ないしD組等に所属していることにより資金獲得活動としての本件詐欺行為 をIに交付するよう指示するなどしてNを本件詐欺行為に加担させていたのであるから,E及び被控訴人Y9は,C会の下部組織であるM会ないしD組等に所属していることにより資金獲得活動としての本件詐欺行為を効果的に行うための影響力又は便益を利用していたものと認めるのが相当である。 以上によれば,指定暴力団の指定暴力団員である被控訴人Y9及びEがI及びNと共同で行った資金獲得行為としての本件詐欺行為は,当該指定暴力団に所属していることにより資金獲得活動を効果的に行うための影響力又は便益を利用して行われたものと認められ,当該指定暴力団の指定暴力団員としての地位と資金獲得行為とが密接に結び付いているものといえるから,「当該指定暴力団の威力を利用して」行われたものと- 24 -認めるのが相当であり,暴対法31条の2の「威力利用資金獲得行為」を行うについてされたものと認められるというべきである。 被控訴人Y1らは,被控訴人Y9とE及びIのつながりは,被控訴人Y9が福島刑務所で服役していたことによって直接又は間接にできた個人的な人脈であるから,被控訴人Y9がIを受け子役としてEに紹介したことに関しては威力を利用した行為といえる行為はない旨を主張する。 しかしながら,上記において認定し説示したとおり,被控訴人Y9は,E及びIと共同して本件詐欺行為を行うに当たり,指定暴力団(C会の下部組織であるD組等)に所属していることにより資金獲得活動としての本件詐欺行為を効果的に行うための影響力又は便益を利用していたものと認められ,当該指定暴力団の指定暴力団員としての地位と資金獲得行為とが密接に結び付いているものといえるから,本件詐欺行為は,指定暴力団の威力を利用して行われたものとして暴対法31条の2の「威力利用資金獲得行為」を行うについてされたものと しての地位と資金獲得行為とが密接に結び付いているものといえるから,本件詐欺行為は,指定暴力団の威力を利用して行われたものとして暴対法31条の2の「威力利用資金獲得行為」を行うについてされたものと認めるのが相当であり,被控訴人Y9とE及びIのつながりが個人的な人脈によるものであるか否かは,上記の認定判断を左右するものではない。 被控訴人Y1らは,当審において,Iが被控訴人Y9に対し受け子の仕事の紹介を受けることを断ったにもかかわらず,被控訴人Y9から交付された3万円で受け子の仕事をするためのスーツやワイシャツ等を購入し,受け子の仕事をするために指示された場所で待機をするなどした上,一旦は郡山市に戻りながら,自ら被控訴人Y9に対し受け子の仕事を紹介するよう依頼し,以後,逮捕されるまで受け子の仕事を続けたのは,金を稼ぎたいというI自身の意思によるものであり,被控訴人Y9がC会の威力を利用したものとは認められない旨を主張する。 において説示したとおり,Iは,Oから,暴力団員のPが紹介してくる人だから被控訴人Y9が暴力団関係の人であると- 25 -思う,被控訴人Y9が紹介しようとしている仕事はおそらくすぐに警察に捕まるような違法な仕事であり,1回入ったら抜けにくくなるかもしれないなどと告げられ,当初は被控訴人Y9に対しこの仕事はできない旨を告げていたことや,被控訴人Y9に自分の実家の住所を知られていたため,途中で特殊詐欺のグループを抜けることは難しいと思って受け子の役割を実行し続け,逮捕されれば角を立てずに特殊詐欺の組織を抜けられると思っていたこと,被控訴人Y9から同被控訴人やその周辺の人物のことについて話さないよう口止めをされており,同被控訴人に対する恐怖心から逮捕後約3か月間は同被控訴人や関係者の名前を供述しなかったことなど ていたこと,被控訴人Y9から同被控訴人やその周辺の人物のことについて話さないよう口止めをされており,同被控訴人に対する恐怖心から逮捕後約3か月間は同被控訴人や関係者の名前を供述しなかったことなどに照らせば,Iは,現に指定暴力団員であった被控訴人Y9が暴力団の構成員であることを認識していたものと推認するのが相当であり,このような状況の下で,被控訴人Y9が,Iに対し,上京のための交通費や上京後の生活費等に加え,特殊詐欺の受け子の役割を実行するために必要な衣料品等の購入資金や交通費及び報酬とともにその後の生活費を手渡すなどして,Iが被控訴人Y9に対する恐怖心や経済的な恩義から受け子の役割の実行を継続せざるを得ない状況を作り出した上,Iに受け子の役割を実行させる際には,その進捗状況等を逐一報告させるなどしてIを自らの統制の下に置き,警察に逮捕された場合に被控訴人Y9やその周辺の人物のことについて話さないよう口止めをするなどして,自らの指示により受け子の役割を忠実に実行させていたのであるから,C会の下部組織であるD組等に所属していることにより資金獲得活動としての本件詐欺行為を効果的に行うための影響力又は便益を利用していたものと認められ,Iが単に金を稼ぎたいという自身の意思のみで特殊詐欺の受け子の役割を実行し続けていたとは認められないというべきであり,被控訴人Y1らの上記主張は採用することができない。 また,被控訴人Y1らは,本件詐欺行為について指定暴力団の威力の利- 26 -用を背景とした資金獲得行為であることを理由として暴対法31条の2の「威力利用資金獲得行為」に当たるとすることは,その範囲を「威力利用資金獲得行為」にとどまらず「これと密接に関連する行為」にまで拡張するものであり,このような不当な拡張解釈は許されない旨を主張する。 威力利用資金獲得行為」に当たるとすることは,その範囲を「威力利用資金獲得行為」にとどまらず「これと密接に関連する行為」にまで拡張するものであり,このような不当な拡張解釈は許されない旨を主張する。 しかしながら,前において説示したとおり,暴対法31条の2本文の「当該指定暴力団の威力を利用して」とは,指定暴力団員が,当該指定暴力団に所属していることにより,資金獲得活動を効果的に行うための影響力又は便益を利用することをいい,当該指定暴力団の指定暴力団員としての地位と資金獲得活動とが結び付いている一切の場合をいう趣旨であると解されるところ,指定暴力団の指定暴力団員である被控訴人Y9及びEがI及びNと共同で行った資金獲得行為としての本件詐欺行為は,当該指定暴力団に所属していることにより資金獲得活動を効果的に行うための影響力又は便益を利用して行われたものと認められ,当該指定暴力団の指定暴力団員としての地位と資金獲得行為とが密接に結び付いているものといえるから,「当該指定暴力団の威力を利用して」行われたものと認めるのが相当であり,上記の判断は,本件詐欺行為が単に指定暴力団の威力の利用を背景とした資金獲得行為であることをもって同条の「威力利用資金獲得行為」に当たることを認めたものではなく,被控訴人Y1らの主張はその前提を欠くものであって採用することができない。 以上のほか,被控訴人Y1らのその余の主張も,暴対法31条の2本文に基づくAらの控訴人に対する損害賠償責任に関する前示の認定判断を左右するに足りるものとは認められない。 ウ暴対法31条の2ただし書1号等について 被控訴人Y1らは,被控訴人Y9は生活費を得る目的で本件詐欺行為を行い,本件詐欺行為で得た金員を全て自己の生活費等に費消しており,- 27 -D組等 条の2ただし書1号等について 被控訴人Y1らは,被控訴人Y9は生活費を得る目的で本件詐欺行為を行い,本件詐欺行為で得た金員を全て自己の生活費等に費消しており,- 27 -D組等の関係者は被控訴人Y9が本件詐欺行為で収益を得たことを知らず,Aらは,本件詐欺行為により直接又は間接にその生計の維持,財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得,又は当該資金を得るために必要な地位を得ていないから,本件においては暴対法31条の2ただし書1号が適用される旨を主張する。 しかしながら,前記⑴アないしウの暴力団組織の構造及び活動等(同イ並びに指定暴力団による組織的な特殊詐欺の実情等や前記⑴エの本件詐欺行為に至る経緯等に徴すると,指定暴力団(C会の下部組織)の構成員である被控訴人Y9が当該指定暴力団の威力を利用して行った資金獲得行為としての本件詐欺行為によって得た1000万円の金員のうち,被控訴人Y9の所属する指定暴力団の組織に納付されたものが一切なかったとは容易に想定し難く,また,被控訴人Y1らにおいてC会並びにその二次団体及び三次団体の役職にある一定以上の地位の幹部が所属の組や上部団体に毎月定額の金員を支払っていることを自認していることや,本件詐欺行為によって得た1000万円の全額が専ら被控訴人Y9の個人の用途に供されたことを認めるに足りる客観的な証拠は存しないこと等に照らせば,仮にその一部が被控訴人Y9の報酬等として同被控訴人の生活費等に費消されたとしても,そのことをもって直ちにAらが本件詐欺行為により直接又は間接にその生計の維持,財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得,又は当該資金を得るために必要な地位を得ていないとは認められないから,被控訴人Y1らの上記主張は採用することができない。 以上のほか,その余の被 持,財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得,又は当該資金を得るために必要な地位を得ていないとは認められないから,被控訴人Y1らの上記主張は採用することができない。 以上のほか,その余の被控訴人Y1らの主張も,暴対法31条の2ただし書1号の適用の有無に関する前示の認定判断を左右するに足りるものとは認められない。 4 争点3(Aらは民法715条の責任を負うか否か)について- 28 -暴対法31条の2は,民法715条の特則として,被害者側の主張立証責任の負担の軽減の観点から,同条所定の使用者の「事業の執行について」の被用者の行為という要件に代えて,「威力利用資金獲得行為…を行うについて」の指定暴力団員の行為であることを指定暴力団の代表者等の損害賠償責任の要件と定めたものであり,本件において,暴対法31条の2所定の上記要件を満たしていると認められることは前記3において争点2(Aらは控訴人に対し暴対法31条の2本文の損害賠償責任を負うか否か)について説示したとおりであるから,争点3(Aらは民法715条の責任を負うか否か)については判断を要しないものというべきである。 5 争点4(本件詐欺行為により控訴人が受けた損害の額)について⑴ 財産的損害について控訴人は,本件詐欺行為により1000万円を詐取されたのであるから,同額の損害を被ったものと認められる。 ⑵ 精神的損害について前提事実⑴によれば,控訴人は,本件詐欺グループにより,息子が現金を至急必要とする状態にあるとの虚偽の情報を告げられ,不安な心理状態を利用されて金員を詐取されるに至ったものであり,指定暴力団の指定暴力団員らによる組織的犯罪によって生活の平穏を害されて精神的打撃を受けるなど,本件詐欺行為により多大な精神的苦痛を被ったものと認められる。 されて金員を詐取されるに至ったものであり,指定暴力団の指定暴力団員らによる組織的犯罪によって生活の平穏を害されて精神的打撃を受けるなど,本件詐欺行為により多大な精神的苦痛を被ったものと認められる。加えて,本件詐欺行為が,息子の身を案じる親の心情につけ入る卑劣な手口であり,被害金額が高額に及んでいることなど,本件に現れた一切の事情(当審において控訴人が指摘するように,詐取された金員の取戻しには多大な困難が伴い相当の期間を要すると見込まれ,控訴人は独居の高齢者であって被害金額は老後の生計の資金に充てることが予定されていたとみられるなどの事情を含む。)を総合考慮すれば,控訴人の被った精神的苦痛は,財産的損害の賠償をもって完全に慰謝されるものとはいえないから,慰謝料として,上記⑴の財産的損害- 29 -の1割に相当する100万円の賠償を認めるのが相当である。 弁護士費用について不法行為の被害者が,自己の権利擁護のため訴えを提起することを余儀なくされ,訴訟追行を弁護士に委任した場合には,その弁護士費用は,事案の難易,請求額,認容された額その他諸般の事情を総合考慮して相当と認められる額の範囲内のものに限り,当該不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきであるところ(最高裁昭和41年(オ)第280号同44年2月27日第一小法廷判決・民集23巻2号441頁),本件におけるこれらの諸般の事情(当審における控訴人の指摘に係る主張立証活動に要する労力の程度などの事情を含む。)を総合考慮すれば,本件詐欺行為と相当因果関係に立つ損害と認められる弁護士費用の額は,上記⑴の財産的損害及び上記⑵の慰謝料の合計額1100万円の1割に相当する110万円とするのが相当であるというべきである。 ⑷ 小括以上によれば,本件詐欺行為により控訴人が受 用の額は,上記⑴の財産的損害及び上記⑵の慰謝料の合計額1100万円の1割に相当する110万円とするのが相当であるというべきである。 ⑷ 小括以上によれば,本件詐欺行為により控訴人が受けた損害の額は,上記⑴の財産的損害として1000万円,上記⑵の慰謝料として100万円,上記⑶の弁護士費用として110万円の合計1210万円と認めるのが相当である。 したがって,①本件詐欺行為を行った被控訴人Y9は,民法719条1項前段に基づく共同不法行為による損害賠償責任として,暴対法31条の2の「代表者等」である被控訴人Y7及び被控訴人Y8は,同条本文に基づく損害賠償責任として,控訴人に対し,それぞれ相互に連帯して(被控訴人A承継人らと1210万円及びこれに対する本件詐欺行為の日である平成26年7月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負うものであり,②暴対法31条の2の「代表者等」であるAの相続人である被控訴人A承継人らは,同条本文に基づく損害賠償責任の相続債務として,控訴人に対し,被控訴- 30 -人Y9,被控訴人Y7及び被控訴人Y8と連帯して,Aの妻である被控訴人Y4(相続分2分の1)Aの亡長女の子である被控訴人Y1並びにAの子である被控訴人Y5及び被控訴人Y6(相続分各8分の1)がそAの亡二女(B)の子である被控訴人Y2及びY3(相続分各16分の1)がそれぞれ75万6250円並びにこれらに対する上記の遅延損害金の支払義務を負うものである。 6 結論以上によれば,控訴人の請求は,①被控訴人Y1,被控訴人Y5及び被控訴人Y6に対し各151万2500円,②被控訴人Y2及び被控訴人Y3に対し各75万6250円,③被控訴人Y4に対し605万円,④被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y 人Y1,被控訴人Y5及び被控訴人Y6に対し各151万2500円,②被控訴人Y2及び被控訴人Y3に対し各75万6250円,③被控訴人Y4に対し605万円,④被控訴人Y7,被控訴人Y8及び被控訴人Y9に対し各1210万円の損害賠償金並びにこれらに対する本件詐欺行為の日である平成26年7月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(上記④の被控訴人3名の間では相互の連帯支払,上記④の被控訴人3名と上記①ないし③の被控訴人A承継人らとの間では上記①ないし③の各金員の限度での連帯支払)を求める限度で理由があり,その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却するのが相当であって,原判決中これと異なる部分は相当でなく,控訴人の控訴は一部理由があるから,これに基づき原判決を上記のとおり変更することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部 裁判長裁判官岩井伸晃 - 31 -裁判官片野正樹 裁判官平城恭子
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