主文 被告は,原告に対し,1063万8113円及びこれに対する平成16年6月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,2488万7347円及びこれに対する平成16年6月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告が設置する病院に勤務していた原告が,検査器具を洗浄する際に使用する消毒液に含まれる化学物質(グルタルアルデヒド)の影響で化学物質過敏症に罹患したとして,被告に対し,雇用契約に基づく安全配慮義務違反を理由として損害賠償(遅延損害金を含む)を請求している事案である。 。 争いのない事実等(証拠により認定した事実については各項末尾に証拠を摘示する)。 (1)当事者等(弁論の全趣旨)ア被告は医療援護等を行うことを目的とする社団法人でありA病院以,,(下「被告病院」という)を設置している。 。 イ原告(昭和30年2月5日生)は,看護師の資格を有し,平成6年4月,,,1日被告にアルバイトとして入社し被告病院において勤務していたが,。 平成7年3月1日から正従業員となり平成13年6月30日に退職した原告は,被告病院に勤務中,整形外科,眼科外来,検査科などに配属され ていた。 (2)検査科での勤務内容原告の検査科における勤務状況は,被告病院1階のレントゲン透視室(以下「透視室」という)で実施される被験者の一般状態の観察補助,大腸フ。 ァイバースコープ等の検査器具の洗浄消毒等であった。 大腸ファイバースコープ等の内視鏡の殺菌消毒剤と 院1階のレントゲン透視室(以下「透視室」という)で実施される被験者の一般状態の観察補助,大腸フ。 ァイバースコープ等の検査器具の洗浄消毒等であった。 大腸ファイバースコープ等の内視鏡の殺菌消毒剤としては,グルタルアルデヒドを含有するグルタラール製剤が使用されており,具体的には,平成11年1月以前は丸石製薬株式会社(以下「丸石製薬」という)製造の2%。 ステリハイド(以下「ステリハイド」という)を,それ以降はジョンソン。 ・エンド・ジョンソン株式会社(以下「ジョンソン・エンド・ジョンソン」という)製造のサイデックスプラス28(以下「サイデックス」という)。 。 を使用していた。 (3)原告の症状(甲2)(「」。),関西医科大学附属病院以下関西医大附属病院というのB医師は原告が職場での化学物質暴露により不定愁訴を発現し,化学物質過敏症に罹患し,平成16年6月2日に症状が固定したと診断した。 (4)労働者災害補償保険(以下「労災保険」という)についての認定(甲。 13の1)原告は,平成14年8月6日,大阪西労働基準監督署長により,原告の症,。 状が業務上の災害に基づくものであるとして療養補償給付の決定を受けた 争点 (1)グルタルアルデヒドと原告の症状との因果関係(2)被告の安全配慮義務違反(3)損害額 争点に対する当事者の主張(1)争点(1)(グルタルアルデヒドと原告の症状との因果関係)について (原告の主張)原告がグルタルアルデヒドに暴露した時期及び原告の症状は,別紙「原告勤務状況及び病状一覧」の原告の主張欄のとおりである。 グルタルアルデヒドは一般的に化学物質過敏症の原因となるところ,原告は高濃度のグルタルアルデヒドが暴露されていた透視室で長期間継続して作業に従事していたため,急性症状を発 告の主張欄のとおりである。 グルタルアルデヒドは一般的に化学物質過敏症の原因となるところ,原告は高濃度のグルタルアルデヒドが暴露されていた透視室で長期間継続して作業に従事していたため,急性症状を発症した後,それに継続する形で化学物質過敏症を発症させたのであり,原告の現症状である化学物質過敏症は,被告病院におけるグルタルアルデヒドの暴露によるものである。 (被告の主張)原告がグルタルアルデヒドに暴露した時期及び原告の症状は,別紙「原告勤務状況及び病状一覧」の被告の主張欄のとおりである。 化学物質過敏症は,近年いわゆるシックハウス症候群などとの関連性から取り上げられるようになった疾患名で,その定義は未だ曖昧であり,発生機序・原因を含め病態の十分な解明はされておらず,その病態の存在自体が議論の対象となる段階にある。かかる状況に照らせば,原告が化学物質過敏症との診断を受けた事実は,原告の主張を裏付けるものではなく,仮に原告の主張するような状況が原告に発生しているとしても,その原因は被告病院におけるグルタルアルデヒドの暴露であると判断すべき根拠は存在しない。 (2)争点(2)(被告の安全配慮義務違反の有無)について(原告の主張)ア予見可能性について化学物質を原因とする健康被害が生じた場合に,被害者側に化学物質の危険性について,化学的に詳細かつ厳密に立証することを求めることは,実質上被害者救済の道を閉ざすことになること,危険責任もしくは報償責任の視点からも化学物質を利用することによって利益を得ている加害者の責任が問われないのは不当なことからすると,化学物質による健康被害事 案における予見可能性の有無を判断するにあたっては,当該債務不履行行為(侵害行為)によって発生する病態(症状)の具体的な内容やその疾患名までは予見することができなくとも 化学物質による健康被害事 案における予見可能性の有無を判断するにあたっては,当該債務不履行行為(侵害行為)によって発生する病態(症状)の具体的な内容やその疾患名までは予見することができなくとも,当該債務不履行によって何らかの病態が発生するおそれがあることについて予見することができれば,その病態の発生についても予見可能性ありと評価すべきである。したがって,本件における予見の対象としては,原告がグルタルアルデヒドに暴露した結果,刺激(急性)症状を越えた何らかの症状が生じるおそれがあることととらえるべきである。 また,被告は,総合病院を組織し,経営している医療機関であることにかんがみれば「総合病院を組織し,経営する医療機関として,そこで就,業している労働者の健康管理につき,十分な注意を尽くさなければならない」との法理が導かれるから,一般には予見できないような具体的危険についても予見可能とされる場合があり,かつ,問診等の場面で顕著なように,原因又は病名の特定はできないものの何らかの疾患の疑いがあると認められる場合には,原因を特定し適切な処置をとるために必要な検査その他の情報収集措置をとることが義務づけられているというべきである。また,被告病院は,常時50人以上の従業員を雇用していたから,労働安全衛生法上,衛生管理者,産業医,衛生委員会の設置義務を負い,これらの仕組みを通じて,被告病院における衛生管理を行い,労働者が職場の有害物質によって健康被害を受けないように未然に防止し,あるいは有害物質に暴露した場合にはただちに継続的な暴露を避ける措置を採るなど被害の拡大を回避する措置を講ずべきであり,特に医療機関である被告には通常の場合以上に高い調査能力があるとともに,有害物による健康被害の高度のリスクがある職場としての高度の調査義務が課せられ るなど被害の拡大を回避する措置を講ずべきであり,特に医療機関である被告には通常の場合以上に高い調査能力があるとともに,有害物による健康被害の高度のリスクがある職場としての高度の調査義務が課せられていたというべきである。 以上からすると,①原告が被告病院の検査科において業務に従事するよ うになった平成9年8月時点で,グルタルアルデヒドの暴露によって原告に刺激(急性)症状を越えた何らかの症状が生じる(健康被害を受ける)ことについての予見可能性が十分に認められ,仮に①の時点で予見可能性が認められないとしても,②原告が正式に検査科に配属された平成10年5月時点,③ステリハイドからサイデックスに変更された平成11年1月時点,④原告からの改善要望がされた平成12年3月時点において被告には前記予見可能性があったことは明らかである。 イ結果回避義務違反について前記のとおり,原告が化学物質過敏症に罹患するおそれがあったこと,もしくは原告に刺激(急性)症状を越えた症状(健康被害)が生じるおそれがあったことについて被告が予見することは十分に可能であったから,被告は,グルタルアルデヒド暴露によって生じる刺激(急性)症状に対する暴露防止対策を講ずるべき義務があったところ,被告は,次のとおり,他の医療機関であれば通常取っている急性症状対策すら怠っていたものである。 (ア)グルタラール製剤の添付文書や注意書に医療従事者のグルタルアルデヒド暴露の防止措置について詳しい説明がなされていたにもかかわらず,被告は透視室に十分な換気設備を設けなかったため,透視室内においてグルタルアルデヒド濃度0.20ppmという高濃度が計測される環境であった。また,医療従事者に対し暴露防止対策の指導を行わず,単に製剤の添付文書の記載内容を知らせ,手袋,マスク及びゴーグルの着用 てグルタルアルデヒド濃度0.20ppmという高濃度が計測される環境であった。また,医療従事者に対し暴露防止対策の指導を行わず,単に製剤の添付文書の記載内容を知らせ,手袋,マスク及びゴーグルの着用も医療従事者の自主的判断に委ねているだけであった。さらに,被告は,原告をはじめとする被告病院の医療従事者に対し,グルタラール製剤の添付文書において禁止されているのにグルタルアルデヒドを床の清掃に使用させていた。 (イ)被告病院においては,遅くとも平成10年6月以後,原告の症状を 被告の衛生管理者である医師が把握し,その後も原告の体調不良につき知っていたのであるから,ステリハイドやサイデックスへの暴露とそれに対する防止策についての問題意識をもって調査をすれば,容易にその有害性と暴露による発症事例を知り得たにもかかわらず,医療機関における有害物質暴露に伴う職員の健康問題について,被告の衛生管理者,,,産業医はいずれも通常の医師と患者との関係での診療行為以上の調査検討,連絡を行わず,それらの専門家などから構成されていたはずの衛生委員会も開催された形跡もなく,原告からの意見や改善要望の受け皿にならず,何ら機能していなかった。 (被告の主張)ア予見可能性について過失とは,予見可能性及び結果回避可能性を前提に,予見義務及び結果回避義務を論じるものである以上,注意義務の具体的内容を論じるためには行為の当時,予見可能であった危険の内容を前提に注意義務の具体的内容を論じるべきである。 原告が被告病院に勤務していた当時の我が国におけるグルタルアルデヒドの危険性に関する一般的認識としては「蒸気への暴露による副作用と,。 ,,して明確に指摘できるものは存在しないただし蒸気への暴露によって眼,鼻,喉の刺激症状,頭痛といった,いずれも一時的かつ比較的 険性に関する一般的認識としては「蒸気への暴露による副作用と,。 ,,して明確に指摘できるものは存在しないただし蒸気への暴露によって眼,鼻,喉の刺激症状,頭痛といった,いずれも一時的かつ比較的軽微な副作用が生じている可能性が指摘できる。なお,皮膚への直接の付着による副作用としては,発疹,発赤などの過敏症状がある」といった程度のも。 ,,のであったすなわちグルタルアルデヒド暴露による危険性に関しては一過性で軽微な刺激症状等の可能性が一般的に認識されていたにすぎず,化学物質過敏症に罹患することを予見することは到底不可能であった。 イ結果回避義務違反について(ア)被告は,原告に検査器具の洗浄業務を行わせるに際し,洗浄薬品に 含まれるグルタルアルデヒドに過剰に暴露して健康被害が生じることを防止するために適切な措置を講じていた。すなわち,透視室には,入口付近の天井に通風口があり,換気扇によって室内の空気を吸気し,ダクトを通じて,これを屋上に排気する換気システムが存在しており,良好な換気状態が維持されていた。また,透視室内において検査機器の洗浄時の室内におけるグルタルアルデヒドの濃度の測定検査を行ったところ,グルタルアルデヒド濃度は0.04ppmから0.20ppmの間で推移しており,米国における基準である0.20ppmを示したのは容器周辺に消毒液がこぼれて散っている状態となった場合であるから,換気状態は良好であった。また,被告病院においては,ゴーグルを準備して透視室内に備え付けており,グルタラール製剤の添付文書を看護師詰所に具備していたところであるし,平成11年1月のサイデックスの導入に際し,被告は業者による看護師全員に対する添付文書の内容についての説明会を実施した。さらに,グルタラール製剤を取り扱う看護師にマスクやゴーグルを ところであるし,平成11年1月のサイデックスの導入に際し,被告は業者による看護師全員に対する添付文書の内容についての説明会を実施した。さらに,グルタラール製剤を取り扱う看護師にマスクやゴーグルを着用しない者が多く,事実上看護師の自主性に委ねられる結果となっていたが,原告自身はマスクを着用していた。本件当時のグルタラール製剤への暴露による危険性についての認識が前記アの程度であることに照らせば,マスクやゴーグルの着用については看護師の自主性に委ねるとの対応は極めて常識的なものであった。 (イ)原告は,平成10年6月に被告病院で診察を受けているが,ステリハイドの吸引によって鼻粘膜がヒリヒリするなどの症状を訴えているものの,訴えの内容及び診察等の所見に照らし,一時的な刺激反応と診断するのが妥当であり,診療を担当した医師が診療行為を越えて調査等をすべき義務が生じる余地はない。そして,平成12年6月ころ,C総看護師長は,原告から透視室内での検査業務を担当すると体調が悪くなるとの原告の訴えを聞き,被告病院の産業医であるD医師の診察を受診す るよう指示し,D医師は,同月12日に原告を診察し,グルタルアルデヒドに暴露している疑いがあったことから被告病院に配置転換を指示し,同月末日までにはグルタルアルデヒドを使用していない外科に配置転換となった。 ,,。 (ウ)以上のとおり被告病院の対応は適切であり何ら義務違反はない(3)争点(3)(損害額)について(原告の主張)ア医療費等10万9282円原告は,北里研究所病院の検査結果等をふまえて関西医大附属病院において化学物質過敏症であるとの診断を受け,また,一般の病院等で個々の症状に応じた治療等を受け,その診察や治療に要した費用(文書料を含む)は合計で10万9282円となる。 。 (ア)大 附属病院において化学物質過敏症であるとの診断を受け,また,一般の病院等で個々の症状に応じた治療等を受け,その診察や治療に要した費用(文書料を含む)は合計で10万9282円となる。 。 (ア)大阪中央病院3万6490円(イ)笹川皮膚科2060円(ウ)関西医大附属病院2万6050円(エ)石村クリニック2万4680円(オ)常松診療所2220円(カ)北里研究所病院1万7782円イ交通費等5万6619円原告は化学物質過敏症等の診察・治療のために交通費・宿泊費を負担したところ,それらに要した費用は,次のとおり,合計で5万6619円となる。 (ア)大阪中央病院3200円(イ)笹川皮膚科680円(ウ)関西医大附属病院1万4720円(エ)北里研究所病院2万6600円 (オ)宿泊費1万1419円ウ後遺障害逸失利益1293万8960円原告は,化学物質過敏症に罹患したことにより,医療現場での勤務が到底できない状況にあるから,かかる後遺障害は,自動車損害賠償責任保険における後遺障害等級に照らせば9級10号(神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの。労働能力喪失率35%)に相当する。原告の基礎年収は316万2400円であり,症状固定時49歳であったから,労働能力喪失期間18年(対応するライプニッツ係数は11.690)で計算すると,1293万8960円(円未満四捨五入)となる。 エ特別対策費等52万円原告は,化学物質過敏症の症状を緩和するため,またはこれに罹患しないようにするため,やむなく健康食品,マスク,空気清浄機等を購入するなど化学物質過敏症対策のための特別な支出を余儀なくされているところ,それらに要した費用は,次のとおり,52万円となる。 に罹患しないようにするため,やむなく健康食品,マスク,空気清浄機等を購入するなど化学物質過敏症対策のための特別な支出を余儀なくされているところ,それらに要した費用は,次のとおり,52万円となる。 (ア)健康食品・ドリンク代30万円(イ)マスク代3万円(ウ)空気清浄機付きエアコン購入(差額分)16万円(エ)温熱療法にかかる費用3万円オ通院慰謝料300万円原告の症状が固定した平成16年6月2日までの通院期間を考慮すれば,化学物質過敏症に罹患した原告の精神的苦痛を金銭で慰謝するには,少なくとも300万円を下ることはない。 カ後遺障害慰謝料600万円化学物質過敏症に罹患した原告が後遺障害を被ったことの精神的苦痛を金銭で慰謝するには,少なくとも600万円を下ることはない。 キ弁護士費用226万2486円ク合計2488万7347円よって,原告は,被告に対し,損害賠償請求金額2488万7347円及び訴状送達の翌日からの遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)争う。仮に,原告に損害が発生したとしても,被告が負う損害の範囲は,本件当時に一般的に予見しえた軽微な損害の範囲にとどまるから,労災で認定された損害の範囲を超えず,損害は既に填補されている。 第3争点に対する判断 事実関係等について,(,,(。 。),(1)前記争いのない事実等 証拠 甲2 枝番を含む以下同じ20,29,31,32,34ないし38,乙1ないし9,証人D医師,証人C総看護師長,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告の業務内容等(ア)原告は,平成6年4月1日に被告にアルバイトの看護師として採用され,被告病院において外来処置室での採血,点滴,注射等を担当していたが,平成7年 下の事実が認められる。 ア原告の業務内容等(ア)原告は,平成6年4月1日に被告にアルバイトの看護師として採用され,被告病院において外来処置室での採血,点滴,注射等を担当していたが,平成7年3月から正職員となり,整形外科に配属となって,診察補助などを担当していた。 (イ)原告は,平成10年5月から午前は整形外科,午後は検査科の配属となった。 検査科は,被告病院の1階レントゲン透視室(透視室)にある。透視室及び隣接する部屋の間取りはおおむね別紙図面のとおりであり,透視室は,同図面の左端で,廊下と接する扉と隣りの技師室と接する扉があったが,透視室は放射線管理区域であったことから,原則として戸を開放することはできなかった。透視室の洗面所の上に吸気排気口はあった が換気扇はなかった。なお,透視室の隣りの技師室の流し台の上には換気扇が一つあったが,後記のような局所強制換気システムではなかった(なお,被告病院では現在洗浄機器を購入し,透視室で検査器具の洗浄は行っていない。 。)検査科における検査は,午後1時ころから午後5時ころまでであり,,,(),その内容は大腸ファイバー検査PTCD経皮的胆管ドレナージアンギオ(選択的肝動脈造影,ブロンコ(気管支ファイバー検査)等)である。各検査の月別実施件数は別紙「原告勤務状況及び病状一覧」の「曝露状況」のとおりである。 検査科における看護師の具体的な業務内容は,透視室で検査を受ける患者の一般状態の観察補助や各種スコープ等の検査器具の洗浄消毒であった。最も念入りの洗浄消毒が要求されるのは大腸ファイバースコープであり,大腸ファイバー検査は毎週火曜日又は水曜日に実施されていたが,原告が被告病院に勤務していた当時,大腸ファイバースコープは被告病院に1個しかなかったため,1件の検査が終 大腸ファイバースコープであり,大腸ファイバー検査は毎週火曜日又は水曜日に実施されていたが,原告が被告病院に勤務していた当時,大腸ファイバースコープは被告病院に1個しかなかったため,1件の検査が終了する度に洗浄消毒を行っていた。その具体的消毒方法は,使用後に挿入部をガーゼで拭き,送気,送水を約10秒間繰り返し,スコープ全体を3回水洗洗浄するなどした後,ステリハイドをスコープ内に通していた。また,感染者の患者に使用した場合は,ステリハイドが入っているポリバケツにスコープを15ないし20分間浸していた。ポリバケツには蓋はあったが,消毒中は密封された状態ではなかった。すべての検査が終了すると,ポリバケツに入っているステリハイドを透視室内の洗面所の下に置いてあった容器に戻し,透視室内の透視台や床をステリハイドを付着させた雑巾で清掃していた。 原告は,このような作業を白衣と同様の生地で作られた長袖の予防着を着用し,プラスチック製の手袋を2枚重ねて作業をしていたが,後記 の症状が出てからは通常の紙マスクをしていた。被告病院においては,,,,看護師に対し検査器具の使用方法消毒方法等について説明を実施しゴム手袋を支給していたが,防護マスクや防護ゴーグルなどの防護用具着用の指示をしたことはなかった。 (ウ)原告は,平成10年5月に検査科に配属となって以降,毎月数件から数十件の検査を担当していたが,徐々に鼻粘膜や咽頭炎に違和感を感じ,口内炎ができやすくなったと感じるようになった。原告は,同年6月2日,当時被告病院の衛生管理者であったE医師の診察を受け,E医,,,師に対し鼻粘膜咽頭粘膜のヒリヒリ感や咽頭の腫脹を訴えたところE医師より「検査でステリハイドを使用し,それを吸入したことによ,る刺激症状と考えられるので,一応,耳鼻科受診する け,E医,,,師に対し鼻粘膜咽頭粘膜のヒリヒリ感や咽頭の腫脹を訴えたところE医師より「検査でステリハイドを使用し,それを吸入したことによ,る刺激症状と考えられるので,一応,耳鼻科受診すること」との診断がされた。原告は,その後月に1回程度,咽頭痛や倦怠感を訴えて,被告,。 ,,病院での診察を受け急性上気道炎の治療を受けていたなお原告は被告病院の検査科に配属される前においては,平成9年3月から4月にかけて,アレルギー性の鼻炎,結膜炎(花粉症)の処方を受け,その後も頸部痛や胃部の症状を訴えていたほか,同年9月に発熱があり,急性上気道炎(風邪症状)の診断を受け,11月には去痰剤の処方を受けたことはあったが,検査科に配属になって以降の諸症状が出たことはなかった。 (エ)被告病院においては,平成11年1月から,消毒液をステリハイドからサイデックスに変更した。ステリハイドとサイデックスは,いずれもグルタルアルデヒドを含有するグルタラール製剤であり,内視鏡等の殺菌消毒剤として使用されるものであって,製造業者は異なるが,基本的性能に違いはなかった。 ステリハイドからサイデックスに変更するにあたり,1か月間の試用期間があり,原告は,薬剤部に対しサイデックスは臭気が強い旨の申し ,,出をしたがサイデックスに反対する意見が他に特になかったことから平成11年1月より変更されることとなった。サイデックの使用にあたっては,製造業者であるジョンソン・エンド・ジョンソンから使用方法についての説明が消毒を実施する看護師全員に対してされた。 (オ)原告は,平成11年3月から整形外科に配属となったが,午後は検査科において検査業務にも携わっており,同年9月からは午前は処置室に,午後は検査科に配属となった。 原告は,同年1月以降も咽頭痛が継続 )原告は,平成11年3月から整形外科に配属となったが,午後は検査科において検査業務にも携わっており,同年9月からは午前は処置室に,午後は検査科に配属となった。 原告は,同年1月以降も咽頭痛が継続し,被告病院の診察を受け,同年4月には咽頭部が赤く腫れ,上気道炎との診断によりその治療を受けていた。そして,平成12年1月からは上気道炎の治療以外にアレルギー性の鼻炎,結膜炎などの治療薬を処方されていた。 原告は,同年5月16日に検査科において内視鏡検査の補助をしたところ,翌17日から高熱,咽頭痛,顔面浮腫,口内炎の症状があり,同月22日にE医師にその旨を訴えたところ,E医師は,血液検査で炎症反応がなかったことやサイデックスを使用する検査業務を前日に行っていたことから,サイデックスによるアレルギーを疑った。 原告は,同月頃,第1種内視鏡技師の資格を取得し,院外の研修会や講習会に出席したが,その研修等を通じて透視室の換気状態が不十分であると考え,被告病院に対し換気扇の設置及び検査器具の増加を要求した。被告病院では,改善策について検討したが,透視室が放射線管理区域であることから換気口を新たに作ることは困難であり,また,検査器具を増加し,消毒作業を別の場所で実施するためには高額な費用を要するため,原告の改善要求は実現されなかった。 原告は,同年6月ころ,C総看護師長に対し,透視室での業務後に口内炎が出現するのはサイデックスの影響ではないのかと訴えたところ,C総看護師長は,2,3か月前より原告の体調が芳しくないことを外来 の師長から聞いており,原告に対し,被告病院の産業医であるD医師の。 ,,,診断を受けることを勧めた原告は同月12日D医師の診断を受けD医師に対し,サイデックスを使用した後に歯肉の腫脹,口内炎が出現し,呼吸困難や耳の ,被告病院の産業医であるD医師の。 ,,,診断を受けることを勧めた原告は同月12日D医師の診断を受けD医師に対し,サイデックスを使用した後に歯肉の腫脹,口内炎が出現し,呼吸困難や耳の掻痒感が生じる旨訴えた。D医師は,原告の症状から膠原病を疑ったが血液検査によりそれが否定されたため,サイデックスのアレルギーに由来することを疑い,被告病院に対し原告の配置転換を助言した。 (カ)原告は,平成12年6月30日からサイデックスを使用しない外科に配属になり,同年11月1日から小児科の配属となった。 原告は,同年11月ころから,サイデックスの臭気だけで口内炎ができるようになり,特に,夜勤のときに病棟の詰所に入るとそこに置かれているサイデックスの臭いにより口内炎ができるようになり,その後口内炎が増悪し,歯肉炎,気道の粘膜の刺激症状があったことから,平成,,。 ,,13年6月6日D医師の診察を受けその旨訴えたそして原告はサイデックス臭により咽頭炎や呼吸困難になることがあり,出勤することに恐怖心を持つようになり,同月末,被告病院を退職した。 イ被告病院退職後の原告の症状等(ア)原告は,平成13年7月中旬ころ,常松診療所で診療を受けたところ,アレルゲンに近づかないという対症療法で対応するとしてビタミン剤等が処方された。 原告は,平成14年1月ころ,個人医院に就職したが,グルタルアル,,デヒドが含まれるレントゲン現像液の臭気により口内炎が出現しまた同年3月には,咽頭部から胸部にかけて喘息のような症状が見られたため,同年6月ころに退職した。そして,大阪中央病院呼吸器専門外来を受診し,呼吸器機能検査,胸部写真撮影,アレルギー検査を受け,アレルゲンに近づかないことを指示された。原告は,そのころ,アレルギー 専門施設であ に退職した。そして,大阪中央病院呼吸器専門外来を受診し,呼吸器機能検査,胸部写真撮影,アレルギー検査を受け,アレルゲンに近づかないことを指示された。原告は,そのころ,アレルギー 専門施設である石村クリニックに通院していたが,症状が改善しなかったため,同年5月に通院を中止した。 原告は,平成14年9月中旬ころ,介護施設に就職したが,トイレのクレゾールの臭気によって喉に違和感を覚え,同年10月10日に退職した。 (イ)原告が平成13年7月18日に大阪西労働基準監督署に対し労災保険給付の請求をしたことを受けて,同監督署の依頼に基づき,被告病院において,平成14年3月5日に透視室内のグルタルアルデヒド濃度の測定検査が実施された(翌6日に胃カメラ室の測定検査もされた。 。),,. その測定では午後3時から実施された消毒においては消毒開始時007ppm,10分後0.09ppm,終了時0.06ppmであったが,サイデックス消毒液容器前においては消毒開始時0.15ppm,10分後0.09ppm,終了時には容器の周辺に消毒液が散っており0.20ppmであり,午後4時から実施された消毒においては,消毒開始時0.04ppm,10分後0.09ppm,20分後0.06ppmであった(午後4時からの検査ではサイデックス消毒液容器前の測定はしなかった。D医師は,これらの検査結果をふまえて「環境状。),況は,胃カメラ室での換気は換気扇と窓の開放により良好であるが,透視室は放射線管理区域であるため原則として開放できず,吸気排気口が1か所あるものの,天井近くのためサイデックスのように空気よりやや比重の重い気体の換気は排気されにくい可能性がある」旨の報告(甲13の10,11)を大阪西労働基準監督署長宛に提出した。 (ウ)原告は,平成14年10月ころ くのためサイデックスのように空気よりやや比重の重い気体の換気は排気されにくい可能性がある」旨の報告(甲13の10,11)を大阪西労働基準監督署長宛に提出した。 (ウ)原告は,平成14年10月ころ,大阪産業保健推進センターのF医師の診察を受けたところ,F医師から化学物質過敏症ではないかとの診断を受けた。そして,F医師より化学物質過敏症専門の医院である笹川皮膚科の紹介を受け,受診したところ,化学物質過敏症の疑いとの診断 がされた。原告は,同年12月26日ころ,関西医大附属病院耳鼻咽喉,,,科アレルギー外来を受診しB医師により眼球運動検査生理機能検査呼吸機能検査,血液生化学検査,アレルギー検査,指標追跡検査等の各種検査を受けたところ,指標追跡検査で数回垂直方向で異常が認められたほか,粘膜刺激症状(舌・歯肉に口内炎ができる,上気道症状(声)がかすれて出にくい,咽頭から気管にかけてむくみ,痰が出る,呼吸)(,,)器症状呼吸困難喉が詰まる息が荒くなり時々ヒューヒューという等の自覚症状からすると,化学物質過敏症に罹患しているとの診断がされた。 原告は,平成16年2月23日,北里研究所病院臨床環境医学センターのG医師による検査において眼球運動検査で中枢性眼球運動障害滑,(動性眼球追従運動異常)が観察され,視覚コントラスト感度検査では低下傾向が示され,自律神経機能検査では自律神経機能の不安定さが観察されたことから,同医師により,中枢神経・自律神経機能障害が認められる旨の診断がされた。 原告は,同年6月2日,B医師により,被告病院における化学物質暴露により不定愁訴が出現し,化学物質過敏症に罹患したものであり,同日症状が固定したと診断された。 (エ)原告は,現在,グルタルアルデヒド以外にも,排気ガスやたばこの煙などに 病院における化学物質暴露により不定愁訴が出現し,化学物質過敏症に罹患したものであり,同日症状が固定したと診断された。 (エ)原告は,現在,グルタルアルデヒド以外にも,排気ガスやたばこの煙などによっても,全身の掻痒感,強度の疲労感が生じ,嘔気,呼吸困難等の症状が発生することもあるため,外出が困難であり,就職しておらず,主婦業をしているが,家に籠もりがちとなっている。 (2)証拠(甲1,4,13ないし26,29,乙7,10ないし16,証人B医師)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 アグルタルアルデヒド暴露による副作用について(ア)平成3年7月に日本医事新報3507号に発表された「消毒剤の副 作用」と題する論文(甲22)において,次のような内容を含む報告がなされている。 「消毒剤の副作用は,適用を受ける側のみならず取扱い者側にも生じ,また,その頻度も決して低くないと考えられる。しかし,消毒剤の添付文書・副作用の項をみても「過敏症がある」とだけ記載されているこ,とが多い。血液汚染を受けた鋼製器具や内視鏡などに対する第一選択消毒剤であるグルタラールは,強力な抗菌作用を示す。したがって,毒性も強く,その取扱いには注意を要する。 Axonらは,内視鏡の消毒にグルタラールを使用している52施設について調査した結果,25%以上の施設でその取扱い者にトラブルが発生していたと報告している。トラブルが生じた計36名の内訳は,皮膚炎が32名(88%,結膜炎が8名(22%,鼻刺激症状が6名))(16%)であった。これらの症状は,本剤が飛散し付着したことなどにより生じたと推定されている。 また,Corradoらは,グルタラールの蒸気により鼻炎,喘息および胸部圧迫感などが生じた4症例を報告し,その発生機序として,アレルギーをあげて 散し付着したことなどにより生じたと推定されている。 また,Corradoらは,グルタラールの蒸気により鼻炎,喘息および胸部圧迫感などが生じた4症例を報告し,その発生機序として,アレルギーをあげている。本剤の副作用は,そのものの毒性のみならず,アレルギーによっても生じ得ることを示した報告である。 このように,グルタラールの副作用は本液の付着およびその蒸気の吸入で生じる。本液が付着すると,正常皮膚であっても皮膚炎や皮膚の白,,。 色化硬化などが生じまたその蒸気は眼や呼吸器系の粘膜を刺激するさらに,本剤へのアレルギーで喘息が生じることもある。したがって,本剤の取扱いは換気のよい場所でプラスチックエプロンとゴム手袋を着用して行うべきである。また,浸漬には蓋付きの容器を用いる必要がある」。 (イ)平成7年に手術医学に発表された「2%グルタラールの暴露による 医療従事者の副作用」と題する論文(甲14)において,次のような記載がされている。 「山口県下の8病院でグルタラールを使用している112名の医療従事者に対してアンケート調査を行ったところ,そのうちの97名(86. 6%)が眼刺激を,92名(82.1%)が鼻刺激を経験し,皮膚炎,頭痛,流涙,咽頭痛,悪心,鼻炎などの副作用の訴えもあった。また,これらの医療従事者のうち,グルタラールを床・壁の清拭消毒に用いて,(. いた場合では22名中全員が眼・鼻刺激を経験しそのうち4名181%)が流涙を経験するなど,眼・鼻刺激以外の副作用も高度に発展していた」。 (ウ)被告病院で平成11年1月まで使用されていたステリハイドについて,製造業者である丸石製薬は,使用上の注意として次のとおりの記載をした文書(平成8年3月改訂。乙10)を添付していた。 「A副作用,,。 皮膚に付着すると発疹発 されていたステリハイドについて,製造業者である丸石製薬は,使用上の注意として次のとおりの記載をした文書(平成8年3月改訂。乙10)を添付していた。 「A副作用,,。 皮膚に付着すると発疹発赤等の過敏症状を起こすことがあるB適用上の注意(使用上の注意)a人体に使用しないこと。 b誤飲を避けるため,保管および取り扱いに十分注意すること。 c眼に入らぬよう眼鏡等の保護具をつけるなど,十分注意して取り扱うこと。誤って眼に入った場合には,直ちに多量の水で洗ったのち,専門医の処置を受けること。 dグルタラールの蒸気は眼,呼吸器等の粘膜を刺激するので,眼鏡,マスク等の保護具をつけ,吸入または接触しないように注意すること。外国において,換気が不十分な部屋では適正な換気状態の部屋に比べて,空気中のグルタラール濃度が高いとの報告があり,換気状態の良い部屋でグルタラールを取り扱うことが望ま しい。 eグルタラール水溶液との接触により皮膚が着色することがあるので,液を取り扱う場合にはゴム手袋等を装着すること。また,皮膚に付着したときは直ちに水で洗い流すこと。 f微生物で汚染した部屋等を散布消毒する場合(0.5w/v%液,眼鏡,手袋等の保護具をつけ,マスクをかけ,直接蒸気を)吸入しないよう注意し,短時間(30分以内)に作業を終了すること。 Cその他グルタラールを取り扱う医療従事者を対象としたアンケート調査では,眼,鼻の刺激,頭痛,皮膚炎等の症状が報告されている。また,外国において,グルタラール取扱い者は非取扱い者に比べて,眼,鼻,喉の刺激症状,頭痛,皮膚症状等の発現頻度が高いとの報告がある」。 (エ)平成9年11月29日に開催された第39回日本消化器内視鏡技師研究会の講演予報集(甲24)において「グルタラール製剤多用によ 刺激症状,頭痛,皮膚症状等の発現頻度が高いとの報告がある」。 (エ)平成9年11月29日に開催された第39回日本消化器内視鏡技師研究会の講演予報集(甲24)において「グルタラール製剤多用によ,る室内空気汚染とそれに伴う頭痛,咽頭痛,皮膚接触による手荒れ等の問題点が今後の課題となること,グルタラール製剤には毒性,刺激性,アレルゲン性があり,飛散により目や皮膚から,また蒸気吸入により気道から侵入し,医療従事者に対し種々の副作用が生じ問題となっているところ,既に英国や米国では医療従事者の暴露防止に対して法令化されており,共に最大許容暴露限界が0.2ppmと厳しい規制の中で使用されているが,日本では基準がなく安易に使用されているのが現状であること,洗浄消毒を充実させたところグルタラールによる気分不快,頭痛が見られたことから,消毒を確実に行いながらも,スタッフの健康を損なわない環境を確保していくことが必要であること」等の各報告がさ れた。 (オ)平成10年11月21日に開催された第41回日本消化器内視鏡技師研究会の講演予報集(甲25)において「京都第二赤十字病院の内,視鏡室において内視鏡室の空気中のグルタラール製剤濃度を測定したところ,洗浄室で0.02~0.65ppm,上部検査室では0.02~1.06ppmと高値を示したが,換気のため窓を開放した状態や検査のない休日の測定では低値を示したこと,福井医科大学付属病院の放射線部においてグルタルアルデヒドの残留ガス濃度を測定したところ,グルタルアルデヒド交換時は残留ガス濃度は0.1ppm前後であり明らかな変化は認められなかったが,自動洗浄器作動後は作動前と比べて明らかに上昇し,米国における空気中の最大許容暴露限界の0.2ppmを上回っており,最高値は1.07ppmであり,測定結果は であり明らかな変化は認められなかったが,自動洗浄器作動後は作動前と比べて明らかに上昇し,米国における空気中の最大許容暴露限界の0.2ppmを上回っており,最高値は1.07ppmであり,測定結果は暴露限度の上限値より高く,患者,スタッフに安全な環境とはいえず,今後何らかの対策を講じなければならないが,現状では空気清浄器による換気,将来的には消毒専用室の設置が望まれ,内視鏡洗浄時はゴーグル,グルタルアルデヒド保護用のマスク,手袋,ガウンを着用して防護し,処置具の消毒に関してはグルタルアルデヒドを使用せず蒸気による熱処理を」。 行う自動洗浄装置の導入等を考慮していきたいこと等の報告がされた(カ)平成11年,米国工業保健衛生士協会(ACGIH)は,グルタルアルデヒドのTLV(毎日繰り返しある物質に暴露したときほとんどの労働者に悪影響がみられないと思われる大気中の濃度)の天井値(作業中のどの時点においても超えてはならない値)を0.05ppmと定めた(甲15。 )(キ)被告病院において平成11年1月から使用されていたサイデックスについて,製造業者であるジョンソン・エンド・ジョンソンは,使用上の注意として次の内容を含む文書(平成9年2月改訂。乙14)を添付 していた。 「A副作用,,。 皮膚に付着すると発疹発赤等の過敏症状を起こすことがあるB適用上の注意(使用上の注意)a人体に使用しないこと。 b誤飲を避けるため,保管及び取り扱いに十分注意すること。 c眼に入らぬよう眼鏡等の保護具をつけるなど,十分注意して取り扱うこと。誤って眼に入った場合には,直ちに多量の水で洗った後,専門医の処置を受けること。 dグルタラールの蒸気は眼,呼吸器等の粘膜を刺激するので,眼鏡,マスク等の保護具をつけ,吸入または接触しないように注意 て眼に入った場合には,直ちに多量の水で洗った後,専門医の処置を受けること。 dグルタラールの蒸気は眼,呼吸器等の粘膜を刺激するので,眼鏡,マスク等の保護具をつけ,吸入または接触しないように注意すること。外国において,換気が不十分な部屋では適正な換気状態の部屋に比べて,空気中のグルタラール濃度が高いとの報告があり,換気状態の良い部屋でグルタラールを取り扱うことが望ましい。 eグルタラール水溶液との接触により皮膚が着色することがあるので,液を取り扱う場合にはゴム手袋等を装着すること。また,皮膚に付着したときは直ちに水で洗い流すこと。 Cその他グルタラールを取り扱う医療従事者を対象としたアンケート調査では,眼,鼻の刺激,頭痛,皮膚炎等の症状が報告されている。また,外国において,グルタラール取扱い者は非取扱い者に比べて,眼,鼻,喉の刺激症状,頭痛,皮膚症状等の発現頻度が高いとの報告がある」。 (ク)平成11年2月に丸石製薬が作成した「グルタラール製剤使用上の留意点(乙11)には,要旨次のとおりの記載がされている。 」 「<安全に使用して頂くための注意点>A薬液の皮膚・眼への接触に対する注意点グルタラール製剤が皮膚に付着すると着色したり,発疹,発赤等の過敏症状が起きるため,使用時は皮膚の露出をできる限り少なくするために手袋,エプロンなどを着用して取り扱うが,薄手の手袋は穴があきやすく,薬液と皮膚が長時間接触する可能性があるため使用を避けるべきである。また,消毒作業中に薬液が垂れて腕や肘の皮膚に付着するような場合には長めの手袋を用いるか,腕カバーを着用する。 Bグルタラール蒸気の吸入・曝露に対する注意点a換気換気が不十分な部屋では適正な換気状態の部屋に比べて,空気中のグルタラール濃度が高いとの報告があり換気状態の良 いるか,腕カバーを着用する。 Bグルタラール蒸気の吸入・曝露に対する注意点a換気換気が不十分な部屋では適正な換気状態の部屋に比べて,空気中のグルタラール濃度が高いとの報告があり換気状態の良い部屋で取り扱う。グルタラール蒸気の暴露を防ぐためには,直接蒸気を排気できる局所強制換気システムの使用がもっとも効果的であるが,その導入が困難な場合には,窓をあけておく,換気扇を作動させておくことなどにより,室内空気の十分な換気を行う。換気装置は,グルタラール蒸気発生場所からできる限り近い位置に設置し,グルタラール蒸気発生場所から換気装置までの通り道では,空気中グルタラール濃度が高くなる可能性があるため,その通り道の中に消毒作業者の呼吸帯が位置しないように注意する。 bマスク・ゴーグル換気を行ってもグルタラールの臭いや刺激を感じる場合には,活性炭等を使用したグルタラールを吸収できるマスクを着用し,呼気と吸気が別回路になっているものが作業しやすいが,病院内でこのようなマスクが使用できない場合には,簡易式のものを用 いる。また,グルタラール蒸気は眼に対しても刺激作用を示すから,薬液が直接眼に付着することを防ぎ,さらに蒸気の曝露を防ぐために,密着性がよく,使いやすいゴーグルなどを装着する。 c浸漬槽使用中にグルタラール蒸気の室内への拡散を防ぐためには,密閉性の高い蓋付きの浸漬槽を用い,使用中は蓋をする。 d手技器具を浸漬及び取り出す際は薬液及び蒸気が飛散しやすい。特に内視鏡消毒時の手技においては著明であり,防護具を着用し,作業は丁寧にすばやく行う」。 (ケ)平成12年7月28日,日本消化器内視鏡学会消毒委員会が開催され,内視鏡機器の洗浄・消毒に関する新たな問題について検討し,その一つとしてグルタルアルデヒドの使用上の注意として やく行う」。 (ケ)平成12年7月28日,日本消化器内視鏡学会消毒委員会が開催され,内視鏡機器の洗浄・消毒に関する新たな問題について検討し,その一つとしてグルタルアルデヒドの使用上の注意として「グルタルアル,デヒドは消化器内視鏡学会の消化器内視鏡機器洗浄・消毒法ガイドラインに記載されている唯一の高度作用消毒剤であり,高温減菌のできない内視鏡機器の消毒に使用されているが,毒性が強く諸外国ではすでに使用上の注意が強く喚起されている。医療従事者のグルタルアルデヒド飛沫による角膜障害や皮膚炎などが報告されており,強制排気装置のない室内では毒性による呼吸器障害も予測される。グルタルアルデヒドを多量にしかも頻繁に使用する施設では換気(強制排気装置による)十分に注意するとともに,グルタルアルデヒドを扱う医療従事者の防御を行うように心がけて頂きたい」との報告がされた(甲13の14。 )(コ)平成12年12月,ジョンソン・エンド・ジョンソンは,サイデックスの添付文書を次のとおり改訂した(甲13の4。 )「A使用上の注意a人体に使用しないこと。 b誤飲を避けるため,保管及び取扱いに十分注意すること。 ,,,cグルタラールの蒸気は眼呼吸器等の粘膜を刺激するので眼鏡,マスク等の保護具をつけ,吸入または接触しないよう注意すること。 d眼に入らぬよう眼鏡等の保護具をつけるなど,十分注意して取扱うこと。誤って眼に入った場合には,直ちに大量の水で洗ったのち,専門医の処置を受けること。 B副作用皮膚に付着すると発疹,発赤等の過敏症状を起こすことがある。 Cその他の注意aグルタラールを取扱う医療従事者を対象としたアンケート調査では,眼,鼻の刺激,頭痛,皮膚炎等の症状が報告されている。 b外国において,グルタラール取扱い者は非取扱い とがある。 Cその他の注意aグルタラールを取扱う医療従事者を対象としたアンケート調査では,眼,鼻の刺激,頭痛,皮膚炎等の症状が報告されている。 b外国において,グルタラール取扱い者は非取扱い者に比べて,眼,鼻,喉の刺激症状,頭痛,皮膚症状等の発現頻度が高いとの報告がある。 c眼粘膜刺激性9匹のウサギの片眼にサイデックスプラス283.5%液の実用液0.1mLを投与し,うち投与後6匹のウサギ眼は洗浄せず,3匹のウサギ眼は30秒間生理食塩水で洗浄し,眼刺激性を検討した。投与後24時間ですべてのウサギに結膜の壊死といった強い刺激性が認められ,7日目まで観察された。以後投与後洗浄を行わなかったウサギ6匹のうち4匹が10日目までその症状が認められた。 d皮膚刺激性試験品0.5mLをウサギの右背部,左背部それぞれ2カ所に適用し閉塞し,皮膚刺激性を検討した。皮膚に対し,わずかに紅 斑,又は水腫を形成するといった弱い刺激性が認められた。 D取扱い上の注意a浸漬にはふた付容器を用い,使用中はふたをすること。 b外国において,換気が不十分な部屋では適正な換気状態の部屋に比べて,空気中のグルタラール濃度が高いとの報告があり,換気状態の良い部屋でグルタラールを取扱うことが望ましい。 cグルタラール水溶液との接触により皮膚が着色することがあるので,液を取扱う場合にはゴム手袋等を装着すること。また,皮膚に付着したときは直ちに水で洗い流すこと」。 (サ)平成13年5月,米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は,「グルタルアルデヒド-病院における労働災害」と題する冊子の中で,「平成11年に米国工業保健衛生士協会(ACGIH)において,グル,,タルアルデヒドへの暴露によって生じる健康被害として喉や肺の刺激,,,,,,, ける労働災害」と題する冊子の中で,「平成11年に米国工業保健衛生士協会(ACGIH)において,グル,,タルアルデヒドへの暴露によって生じる健康被害として喉や肺の刺激,,,,,,,喘息喘息様症状呼吸困難鼻の刺激くしゃみぜーぜー息鼻血焼けるような眼の刺激,結膜炎,発疹,アレルギー性皮膚炎,手の変色(茶褐色や黄褐色,じんましん,頭痛,吐き気を指摘している」と)。 報告している(甲15。 ),,(シ)平成16年3月日本消化器内視鏡技師会安全管理委員会が編集し日本消化器内視鏡技師会が会報の別冊として発行した「内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン(第2版(甲19)は,検査環境として,)」グルタルアルデヒドの毒性を指摘し「グルタルアルデヒドは,暴露に,よって皮膚炎,鼻炎,結膜炎などの原因になっている。さらに,極端に換気の悪い環境下で高濃度のグルタルアルデヒドに曝露され続けると,従来何ともなかった微量の化学物質に対しても,口内炎を発症し,喉や肺に痛みを訴えるいわゆる化学物質過敏症に至る場合もある。グルタルアルデヒドの曝露対策は空気中の濃度を極力減らすことであるが,わが 国には法的規制がない。米国の職業安全衛生管理局(OSHA)では,. 。 健康管理のため空気中の濃度は02ppmを超えないこととしているさらに,米国工業保健衛生士協会(ACGIH)は,グルタルアルデヒド濃度を0.05ppm以下にすることを推奨している。グルタルアルデヒドの曝露から身を守るためには,床に接した部分にグルタルアルデヒド専用の排気装置を設置するか,ボックスの中で集中的に排気する局所排気装置などを設置する。洗浄・消毒を行う際には,蒸気の吸入と皮膚接触を最小限に留めるため,フェイスシールド(ゴーグル,専用の)マスク,防水性 装置を設置するか,ボックスの中で集中的に排気する局所排気装置などを設置する。洗浄・消毒を行う際には,蒸気の吸入と皮膚接触を最小限に留めるため,フェイスシールド(ゴーグル,専用の)マスク,防水性のガウン(エプロン,手袋(肘までの長さのもの)を)着用する。腕の部分は皮膚保護用のクリームを塗布する。グルタルアルデヒドの曝露を避けるため,できれば内視鏡の自動洗浄機を用い,専用の排気装置を設置する。しかし,このような設備がないところでも窓を開けて十分な換気を図る」旨指摘している。 (ス)グルタルアルデヒドは,薬事法44条2項,同法施行規則204条別表第3有機薬品及びその製剤20の3において劇薬として指定され,労働安全衛生法57条の2第1項,同法施行令18条の2,別表第9の140において労働者に健康障害を生ずるおそれのある有害物に指定され,特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律2条2項,同法施行令1条,別表第1の66で第一種指定化学物質に指定されている。 イ化学物質過敏症について(ア)化学物質過敏症をめぐる議論化学物質過敏症は,昭和25年から35年ころシカゴ大学の小児科教授であったRandolphが「環境中の化学物質への適応に失敗し,た結果,個体の新たな過敏の状態の形成」という病態を提言し,その後昭和62年には,Cullenが「過去に大量の化学物質に一度暴露, された後,又は長期間慢性的に化学物質の暴露を受けた後,非常に微量の化学物質に再接触した際にみられる不快な臨床症状」という概念のもと,これをMCS(MultipleChemicalSensitivity)と呼ぶことを提唱し,定義付けを行い,その後米国を中心に,臨床環境医学の臨床環境医と称される研究者により微量化学物質の影響についての S(MultipleChemicalSensitivity)と呼ぶことを提唱し,定義付けを行い,その後米国を中心に,臨床環境医学の臨床環境医と称される研究者により微量化学物質の影響についての研究が行われてきた。平成11年夏には,米国の研究者34名の合意文書として「コンセンサス1999」と題する見解が公表され,MCSについて①慢性疾患である,②再現性を持って現れる症状を有する,③微量な物質への暴露に反応を示す,④関連性のない多種類の化学物質に反応を示す,⑤原因物質の除去で改善又は治癒する,⑥症状が多くの器官・臓器にわたっていると定義された。 MCSとして報告されている症候は多彩であり,粘膜刺激症状(結膜炎,鼻炎,咽頭炎,皮膚炎,気管支炎,喘息,循環器症状(動悸,不)整脈,消火器症状(胃腸症状,自律神経障害(異常発汗,精神症状)))(,,,,,),不眠不安うつ状態記憶困難集中困難価値観や認識の変化中枢神経障害(痙攣,頭痛,発熱,疲労感があり,これらの症候が同)時にもしくは交互に出現する。そして,暴露が各症状と関連する又は化,,,学物質過敏症発現の原因ではないかと思われる物質はガソリン灯油天然ガス,殺虫剤(特にクロルデンとクロルピリホリス,溶剤,新品)のカーペット,修理剤,接着剤・糊,ガラス繊維,無カーボン複写紙,柔軟剤,ホルムアルデヒド・グルタルアルデヒド,その他の洗剤等とされている。 (イ)我が国における化学物質過敏症の知見我が国では,平成8年度の厚生科学研究「化学物質過敏症に関する研究」において「化学物質過敏症とは,最初にある程度の量の化学物質,に暴露されるか,あるいは低濃度の化学物質に長期間反復暴露されて, 一旦過敏状態になると,その後極めて微量の同系統の化学物質に対しても いて「化学物質過敏症とは,最初にある程度の量の化学物質,に暴露されるか,あるいは低濃度の化学物質に長期間反復暴露されて, 一旦過敏状態になると,その後極めて微量の同系統の化学物質に対しても過敏症状を来すことをいうが,化学物質との因果関係や発生機序については未解明な部分が多く,今後の研究の進展が期待される」との見解が示され,国際的にMCSの名称で呼ばれている症状につき「化学物質過敏症」との用語が使用されるようになった。 また,平成8年度に厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー研究班において,化学物質過敏症の診断基準が作成され,他の慢性疾患が除,,外されることを前提として主症状として①持続あるいは反復する頭痛,,,,②筋肉痛あるいは筋肉の不快感③持続する倦怠感疲労感④関節痛副症状として①咽頭痛,②微熱,③下痢・腹痛,便秘,④羞明,一過性の暗点,⑤集中力・思考力の低下,健忘,⑥興奮,精神不安定,不眠,⑦皮膚のかゆみ,感覚異常,⑧月経過多などの異常,検査所見として①副交感神経刺激型の瞳孔異常,②視覚空間周波数特性の明らかな閾値低下,③眼球運動の典型的な異常,④SPECTによる大脳皮質の明らかな機能低下,⑤誘発試験の陽性反応であり,主症状2項目と副症状4項目に該当するか,又は,主症状1項目,副症状6項目,検査所見2項目に該当する場合と決められた。 そして,厚生労働省は,平成16年2月27日「室内空気質健康影,響研究会報告書:~シックハウス症候群に関する医学的知見の整理~」(乙7)を公表し「化学物質過敏症とは,微量化学物質に反応し,非,アレルギー性の過敏状態の発現により,精神・身体症状を示すとされるもので,その病態や発生機序について,未解明な部分が多く,診断を受けた症例には,中毒やアレルギーといった既存の疾病によ 反応し,非,アレルギー性の過敏状態の発現により,精神・身体症状を示すとされるもので,その病態や発生機序について,未解明な部分が多く,診断を受けた症例には,中毒やアレルギーといった既存の疾病による患者が含まれており,研究会では微量化学物質暴露による非アレルギー性の過敏状態としてのMCSに相当する病態の存在を否定はしないが,化学物質過敏症という名称のこれまでの使用実態にかんがみると,非アレルギー性 の過敏状態としてのMCSに相当する病態を示す医学用語として化学物質過敏症が必ずしも適当であるとは考えられず,今後,既存の疾病概念で説明可能な病態を除外できるような感度や特異性にすぐれた臨床検査方法及び診断基準が開発されることが必要である」と報告した。 争点(1)(グルタルアルデヒドと原告の症状との因果関係)について(1)前記認定事実を基に原告が化学物質過敏症に罹患したかを検討する。 ,,ア原告の症状経過からすると原告はグルタルアルデヒドに暴露した結果化学物質過敏症に罹患したと認めることができる。すなわち,原告は,平成10年5月被告病院検査科での業務に従事するようになり,同年6月2日に鼻粘膜と咽頭粘膜の刺激を訴えて被告病院のE医師の診察を受け,ステリハイド吸入による刺激が考えられるので一応耳鼻科を受診することと,,の診断がされたことそれ以降も1月に約1回の頻度で咽頭痛などを訴え被告病院において急性上気道炎の治療を受けていたこと,平成11年1月ころから消毒剤がサイデックスに変わったが,原告には刺激臭が強く感じられたこと,平成12年5月16日に検査科において内視鏡検査の補助をしたところ,翌17日から咽頭痛,顔面浮腫,口内炎といった症状が出現し,E医師によりサイデックスアレルギーが疑われる旨診断されたこと,同年6月12日にはD 月16日に検査科において内視鏡検査の補助をしたところ,翌17日から咽頭痛,顔面浮腫,口内炎といった症状が出現し,E医師によりサイデックスアレルギーが疑われる旨診断されたこと,同年6月12日にはD医師に対し,サイデックスを使用した後に歯肉の腫脹,口内炎が出現し,耳の掻痒感や呼吸困難という症状を訴えたところ,D医師によりサイデックスアレルギーが疑われるとして被告病院に対し配置転換が助言され,同月30日からサイデックスを使用しない外科に配属になったこと,その後も特に夜勤の時に,サイデックスの臭気により口内炎が出現し,咽頭炎や呼吸困難となったことなどから,平成13年6月末,,,日に被告病院を退職したことその後個人医院や介護施設に就職するもレントゲン現像液やクレゾールの臭気によって口内炎や喉の違和感を覚えたことからいずれも短期間で退職したこと,同年10月ころ笹川皮膚科に おいて化学物質過敏症の疑いがあるとの診断がされ,平成16年2月の北里研究所病院での検査により,眼球運動検査と視覚コントラスト感度検査で異常が認められ,自律神経機能検査では自律神経機能の不安定性が観察され,同病院の医師より中枢神経・自律神経機能障害が認められる旨の診,,,,断がされたことこのような診断結果を受けてB医師は同年6月2日化学物質過敏症に罹患し,同日症状が固定したと診断したことなど,原告の症状の経過からすると,原告は被告病院の検査科に配属となり,グルタルアルデヒドに暴露した結果,化学物質過敏症に罹患したものと認めることができる。 イまた,原告が被告病院に勤務し,検査科に配属となった平成10年5月ころから平成12年6月30日までの間における透視室の状況からしても,原告は化学物質過敏症に罹患したことが裏付けられる。すなわち,透視室には2カ所の 病院に勤務し,検査科に配属となった平成10年5月ころから平成12年6月30日までの間における透視室の状況からしても,原告は化学物質過敏症に罹患したことが裏付けられる。すなわち,透視室には2カ所の扉があるも放射線管理区域であり原則として開放できないところ,換気設備としては洗面所の天井付近に吸気排気口しかなく,空気より比重が重いグルタルアルデヒドが排気されるとは考えにくい上,隣りの技師室に設置されている換気扇は透視室とを繋ぐ戸から離れた位置にあり,グルタルアルデヒド蒸気排出のために設置された特殊な換気扇ではなく,透視室内の換気は不十分であったといえること「内視鏡の洗浄・,消毒に関するガイドライン(第2版」によれば,極端に換気の悪い環境)下で高濃度のグルタルアルデヒドに暴露され続けると,微量の化学物質に対しても口内炎を発症し,化学物質過敏症に至る場合もあることが指摘されていること,平成14年3月5日に実施された被告病院透視室内におけるグルタラール濃度は0.06ないし0.20ppmであり,米国の職業安全衛生管理局(OSAH)が設定している空気中の濃度0.2ppmを超えるものではないが,米国工業保健衛生士協会(ACGIH)が推奨している0.05ppmを上回るものであったこと,原告は透視室内に午後 1時から午後5時まで勤務したあと掃除等を実施しており長時間換気が不十分な透視室内にいたことなどからすると,原告は被告病院の検査科に従事することを契機として化学物質過敏症に罹患したものと認めることができる。 (2)この点,被告は,化学物質過敏症は未だ曖昧であり,発生機序・原因を含め病態の十分な解明がされておらず,その病態の存在自体が議論の対象となる段階にある疾患であるし,仮に原告が化学物質過敏症に罹患しているとしても,その原因が被告病院に だ曖昧であり,発生機序・原因を含め病態の十分な解明がされておらず,その病態の存在自体が議論の対象となる段階にある疾患であるし,仮に原告が化学物質過敏症に罹患しているとしても,その原因が被告病院における空気中のグルタルアルデヒドの暴露であると判断すべき根拠は存在しない旨主張する。 ,,確かに化学物質過敏症の病態や発生機序については未解明な部分が多く中毒やアレルギーといった既存の疾病による患者が含まれていることが指摘されているところではあるが,微量の化学物質に反応し,非アレルギー性の過敏状態の発現により精神・身体症状を示す病態が存在することが否定されているわけではない。また,前記認定のとおり,化学物質過敏症発生の原因物質としてグルタルアルデヒドが指摘されているところ,原告はグルタルアルデヒドを組成物とするステリハイドやサイデックスという消毒剤を使用する換気が不十分な透視室で作業に従事していたことや検査科に配属になる前と後では原告の症状が明らかに異なることに照らすと,原告の症状は透視室内で発生したグルタルアルデヒドの蒸気に反応したことにより化学物質過敏症に罹患したものと認めることができる。 争点(2)(被告の安全配慮義務違反)について(1)使用者は,雇用契約上の付随義務として,労働者に対し,使用者が業務遂行のために設置すべき場所,施設若しくは器具等の設置管理又は労働者が使用者の指示のもとに遂行する業務の管理に当たって,労働者の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っている。 そこで,前記認定事実に照らして,被告の安全配慮義務違反について検討 (,,する原告及び被告は予見可能性と結果回避義務違反に分けて主張するが本件においては両者を峻別することは相当ではないので,以下では両者を合わせて検討する。 。) 務違反について検討 (,,する原告及び被告は予見可能性と結果回避義務違反に分けて主張するが本件においては両者を峻別することは相当ではないので,以下では両者を合わせて検討する。 。)(2)医学雑誌や医学研究会において,平成3年ころからグルタルアルデヒドの医療従事者に対する危険性が指摘されてきた。すなわち,前記認定のとおり,平成3年にグルタルアルデヒド取扱者に皮膚炎,鼻刺激症状などが生じたとの報告がされ,平成7年には山口県下でグルタルアルデヒドを使用する112名の医療従事者に対するアンケート調査結果では,約86.6%が眼刺激を,約82.1%が鼻刺激を経験し,皮膚炎,頭痛,流涙,咽頭痛,悪心,鼻炎などの副作用の訴えもあり,グルタルアルデヒドを床・壁の清拭消毒に使用していた場合では22名中全員が眼・鼻刺激を経験し,その他の副作用も生じていたとの報告がされていた。平成11年1月まで被告病院にお,「,いて使用していたステリハイドの添付文書にはグルタラールの蒸気は眼呼吸器等の粘膜を刺激するので,眼鏡やマスク等の保護具をつけ,吸入または接触しないように注意すること,外国において換気が不十分な部屋では適正な換気状態の部屋に比べて空気中のグルタラール濃度が高いとの報告があり,換気状態の良い部屋でグルタラールを取り扱うことが望ましいこと,グルタラールを取り扱う医療従事者を対象としたアンケート調査では,眼,鼻の刺激,頭痛,皮膚炎等の症状が報告され,外国において,グルタラール取扱者は非取扱者に比べて,眼,鼻,喉の刺激症状,頭痛,皮膚症状等の発現頻度が高いとの報告があること」等の説明がされていた。平成9年11月に開催された第39回日本消化器内視鏡技師研究会において「グルタルアル,デヒドの飛散により目や皮膚から,蒸気吸入により気道から侵 頻度が高いとの報告があること」等の説明がされていた。平成9年11月に開催された第39回日本消化器内視鏡技師研究会において「グルタルアル,デヒドの飛散により目や皮膚から,蒸気吸入により気道から侵入し,医療従事者に対し様々な副作用が生じ問題となっているが,我が国では基準がなく安易に使用されているのが現状であり,消毒を確実に行いながらも,スタッフの健康を損なわない環境を確保していく必要がある」旨の報告がされ,平 成10年11月に開催された第41回日本消化器内視鏡技師研究会においては,複数の病院において内視鏡室のグルタルアルデヒド濃度が測定され,環境整備のための空気清浄器による換気,消毒専用室の設置,グルタルアルデ,,。 ヒド保護用のマスク手袋ガウンの着用などの方策に関する報告がされた平成11年1月から被告病院で使用を開始したサイデックスの添付文書には,ステリハイドの添付文書と同様の説明がされおり,同年2月に丸石製薬が作成した「グルタラール製剤使用上の留意点」と題する文書には「グル,タラール蒸気の暴露を防ぐためには,直接蒸気を排出する局所強制換気システムの使用が最も効果的であるが,その導入が困難な場合には,窓の開放や換気扇の作動などにより室内空気の十分な換気を行うこと,換気装置はグルタラール蒸気発生場所からできる限り近い位置に設置し,換気を行ってもグルタラールの臭いや刺激を感じる場合には活性炭等を使用したグルタラールを吸収できるマスクを着用すること,薬液の眼への直接付着を防止し,蒸気の暴露を防止するため,密着性がよく,使いやすいゴーグル等を着用すること,密閉性の高い蓋付きの浸漬槽を用い,使用中は蓋をすること,器具を浸漬及び取り出す際には薬液及び蒸気が飛散しやく,特に内視鏡消毒時の手技においては著明であるから,防護具を着用し, ル等を着用すること,密閉性の高い蓋付きの浸漬槽を用い,使用中は蓋をすること,器具を浸漬及び取り出す際には薬液及び蒸気が飛散しやく,特に内視鏡消毒時の手技においては著明であるから,防護具を着用し,作業は丁寧にすばやく行うこと」等の指摘がされていた。 以上の事実経過からすると,平成7年ころからグルタルアルデヒドの医療従事者に対する危険性が具体的に指摘されており,原告が被告病院検査科に配置されていた当時,医療従事者がグルタルアルデヒドの蒸気により眼,鼻などの刺激症状という副作用が生じることが認識されていたということができる。 そして,原告は,平成10年6月2日に当時被告病院の衛生管理者であったE医師に対し,鼻粘膜と咽頭粘膜の刺激を訴え,同医師よりステリハイド吸入による刺激が考えられる旨診断され,その後も咽頭痛が継続し,被告病 院において診察・治療を受けていたのであるから,長時間グルタルアルデヒドを吸入する可能性のある透視室に勤務していた原告の業務内容からすると,被告において,原告の刺激症状が透視室内での洗浄消毒作業に起因するものと認識することは十分に可能であったということができる。 (3)被告は,グルタルアルデヒドの暴露による危険性に関する一般的認識としては,一過的で軽微な刺激症状などの可能性が認識されていたにすぎず,被告において原告が化学物質過敏症に罹患することを予見することは不可能であった旨主張する。 確かに,前記認定のとおり,グルタルアルデヒドの暴露によって化学物質過敏症に罹患するとの指摘がされた「内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン(第2版」が発行されたのは平成16年3月であり,原告の症状につ)き化学物質過敏症との診断がされたのは原告が被告病院を退職した後であって,原告が被告病院に勤務していた当時,原告が化学物質過敏症に ン(第2版」が発行されたのは平成16年3月であり,原告の症状につ)き化学物質過敏症との診断がされたのは原告が被告病院を退職した後であって,原告が被告病院に勤務していた当時,原告が化学物質過敏症に罹患し,あるいは罹患するであろうことを認識・予見することは困難であったことは被告の主張するとおりである。 しかしながら,被告の労働者に比較的軽微な症状が出現し,それが被告の業務に起因する疑いが相当程度あり,その症状が一過性のものかより重篤なものになるのかが定かでない場合,被告において容易に原因を除去し,あるいは軽減する措置を採ることができるときは,そのような措置を講じるべき義務があるというべきであり,特段の措置を講じることなく,従業員の症状,。 経過を観察していた場合には被告は上記義務に違反したというべきであるしかるに,本件においては,原告の症状が一過性で軽微な刺激症状に止まると判断するに足りる資料があったことは証拠上認められないのであり(現に原告はその後化学物質過敏症に罹患していることが判明したことは前記のとおりである,原告のグルタルアルデヒドの吸入によって発生したと考。)えられる刺激症状が一過性のものであるか,より重篤なものになるかは定か ではなかったのであるから,被告において,容易に原因を除去し,あるいは軽減する措置を採ることができた場合は,そのような措置を講じるべき義務があったというべきである。 (4)前記認定のとおり,ステリハイドやサイデックスの添付文書において,使用上の注意として,蒸気が眼,呼吸器等の粘膜を刺激するので,眼鏡,マスク等の保護具をつけ,吸入しないように注意すること,換気の良いところで使用すること,清拭に使用したりしないことなどが記されていた。 しかるに,被告病院の透視室には換気扇がなく,排気口があっても天 マスク等の保護具をつけ,吸入しないように注意すること,換気の良いところで使用すること,清拭に使用したりしないことなどが記されていた。 しかるに,被告病院の透視室には換気扇がなく,排気口があっても天井付近に1つあっただけであり,放射線管理区域であったために戸を自由に開放することができず,換気が十分でなかったのに,被告病院では,看護師に対して防護マスク(グルタルアルデヒドを吸収できるもの)やゴーグルの着用を指示せず,透視室では検査後にグルタラール製剤を漬けた雑巾で透視台や床を清拭させていたのである。防護マスクやゴーグルの着用を原告に指示することは極めて容易であり,それによりグルタルアルデヒドの吸入を減らすことができ,原告の症状は相当程度軽減していた可能性が高く,被告はそのような措置を講じるべき義務に違反したということができる(なお,被告において,平成12年6月12日にD医師が原告を診察・検査した後,原告を速やかにサイデックスを使用しない外科に配置転換したことは適切であった,,,と評価することができるがそれ以前においてそのような措置を講じるか透視室の検査状況の改善が困難であれば,少なくとも防護マスクやゴーグルの着用を原告に対し指示すべきであったということができる。 。)(5)被告は,当時のグルタルアルデヒドの暴露による危険性についての認識からすると,防護マスクやゴーグルの着用については看護師の自主性に委ねるとの対応は極めて常識的なものであった旨主張する。 確かに,当時グルタルアルデヒドの暴露により化学物質過敏症に罹患するとの認識がなかったことは前記のとおりであるが,現に原告がグルタルアル デヒドの吸入により刺激症状を起こした疑いが相当程度あったのであるから,他の看護師に対してはともかく,原告に対しては防護マスクやゴーグルの たことは前記のとおりであるが,現に原告がグルタルアル デヒドの吸入により刺激症状を起こした疑いが相当程度あったのであるから,他の看護師に対してはともかく,原告に対しては防護マスクやゴーグルの着用を指示すべきであったということができ,何らの指示をしなかったこ,。 とは使用者として適切さを欠き安全配慮義務に違反するというべきであるまた,被告は,透視室の入口付近の天井には通風口があり,室内の空気を吸気し,ダクトを通じて屋上に排気する換気システムが存在していたし,グルタルアルデヒド濃度の測定は0.04ppmから0.20ppmの間で推移していたから換気状態は良好であった旨主張する。しかし,グルタルアルデヒドは空気より比重が重いため,天井の通風口までグルタルアルデヒドが上昇し吸気されるかは疑問であるし,グルタルアルデヒド濃度は米国における基準ではあるが,0.05ppmを推奨する見解もあることに照らせば,かかる測定値が前記判断を左右するものではない。 争点(3)(損害額)について(1)医療費等10万6132円前記認定,証拠(甲5ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,次のとおりの各病院において症状に応じた治療を受け,北里研究所病院の検査結果等をふまえて関西医大附属病院において化学物質過敏症であるとの診断を受けたことが認められるから,その診察や治療に要した費用(文書料を含む)の合計は次のとおり10万6132円となる。 。 ア大阪中央病院3万3340円,()なお原告は平成16年3月2日の診療費として3150円甲5の2,(),を別途請求するがこの診療費は領収証明書甲5の1に含まれており二重請求となるから認められない。 イ笹川皮膚科2060円ウ関西医大附属病院2万6050円エ石村クリニック2万46 ,を別途請求するがこの診療費は領収証明書甲5の1に含まれており二重請求となるから認められない。 イ笹川皮膚科2060円ウ関西医大附属病院2万6050円エ石村クリニック2万4680円 オ常松診療所2220円カ北里研究所病院1万7782円(2)交通費等5万6619円証拠(甲32,33)によれば,原告は化学物質過敏症等の診察・治療のために各病院に通院し,交通費・宿泊費の合計として少なくとも原告が主張する5万6619円を要したことが認められる。 (3)後遺障害逸失利益517万5362円証拠(甲31,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,化学物質過敏症に罹患したことにより,医療現場での勤務が到底できない状況にあるが,原告は家事一般を担当していることが認められるから,かかる後遺障害は,後遺障害等級に照らせば12級に相当する14%の労働能力を喪失したとみるのが相当である。原告の基礎年収を原告主張どおりの316万2400円として,症状固定時49歳であったから,労働能力喪失期間18年(対応するライプニッツ係数は11.6895)で計算すると,次のとおり,517万5362円となる。 (計算式)3,162,400×0.14×11.6895=5,175,362(円未満切捨て)(4)特別対策費等0円原告は,化学物質過敏症の症状を緩和するため,健康食品,マスク,空気清浄機等を購入するなど化学物質過敏症対策のための特別な支出を余儀なくされていると主張するが,一部は生活費の範疇に入るものであり,他のものについてはこれを基礎づける証拠が提出されておらず,損害として認められない(もっとも,一定程度の費用を要するものということはでき,この点は慰謝料として斟酌した。 。)(5)通院慰謝料150万円前記認定の を基礎づける証拠が提出されておらず,損害として認められない(もっとも,一定程度の費用を要するものということはでき,この点は慰謝料として斟酌した。 。)(5)通院慰謝料150万円前記認定の原告の症状や通院期間等からすると,原告の通院慰謝料として は150万円が相当である。 (6)後遺障害慰謝料280万円前記認定の原告の後遺障害の内容・程度等からすると,原告の後遺障害慰謝料としては280万円が相当である。 (小計963万8113円)(7)弁護士費用100万円本件事案の内容,難易の程度,認容額,審理経過等本件に現れた一切の事情を考慮すると,本件における弁護士費用は100万円が相当である。 (8)合計額1063万8113円したがって,原告の損害額は1063万8113円となる。 結論 以上によれば,原告の請求は,被告に対して債務不履行に基づく損害賠償債務として1063万8113円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成16年6月19日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があり,その余の請求は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第15民事部裁判長裁判官大島眞一裁判官平井健一郎裁判官中村仁子
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