平成12年(行ケ)第97号実用新案取消決定取消請求事件(平成13年5月21日口頭弁論終結)判決原告小糸工業株式会社訴訟代理人弁理士前田和男同下山冨士男被告特許庁長官及川耕造指定代理人幸長保次郎同宮崎恭同山口由木同宮川久成 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告特許庁が平成9年異議第74744号事件について平成12年1月7日にした決定を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告主文と同旨第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告は、名称を「衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置」とする実用新案登録第2531341号考案(平成5年2月25日実用新案登録出願、平成9年1月10日設定登録、以下「本件考案」という。)の実用新案権者である。 平成9年10月2日、上記実用新案につき実用新案登録異議の申立てがされ、平成9年異議第74744号事件として特許庁に係属したところ、原告は、平成10年7月21日に明細書の実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正請求をし、平成11年1月5日に訂正請求書の補正をした(以下、この補正を「本件補正」といい、本件補正後 成10年7月21日に明細書の実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正請求をし、平成11年1月5日に訂正請求書の補正をした(以下、この補正を「本件補正」といい、本件補正後の訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。)。 特許庁は、同実用新案登録異議の申立てにつき審理した上、平成12年1月7日、「実用新案登録第2531341号の実用新案登録を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は同年3月1日原告に送達された。 2 実用新案登録請求の範囲の記載(1) 設定登録時の明細書の実用新案登録請求の範囲の記載衛生洗浄装置の操作部において、該操作部の多数の機能選択スイッチを配置した操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と兼用して本体側と着脱自在に構成すると共に、該リモコン操作機側に設けた発光部と本体側に設けた受光部間を光結合したことを特徴とする衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置。 (2) 本件訂正後の明細書(以下「訂正明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線で示す。)衛生洗浄措置の操作部において、該操作部の多数の機能選択スイッチを配置した操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と兼用して上記衛生洗浄装置の本体側と着脱自在に構成し、便座に着座している使用者自身の近傍にある上記操作部に向けて操作し得るように、上記リモコン操作機の下端部に発光部を設け、該発光部と上記本体側に設けた受光部とを光結合し、また、上記リモコン操作機を上記本体の操作部位置に嵌合した状態でも操作し得るように、上記発光部と上記受光部とを光結合し得るように構成したことを特徴とする衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置。 3 本件決定の理由 上記本体の操作部位置に嵌合した状態でも操作し得るように、上記発光部と上記受光部とを光結合し得るように構成したことを特徴とする衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置。 3 本件決定の理由本件決定は、別添決定書写し記載のとおり、①本件補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではないから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則9条2項及び特許法120条の4第3項において順次準用する同法131条2項の規定に適合するものとして、これを認め、②訂正明細書の実用新案登録請求の範囲記載の考案(以下「本件訂正考案」という。)は、特開平2-66231号公報(本訴甲第4号証、以下「刊行物1」という。)及び実開平4-19911号公報(本訴甲第5号証、以下「刊行物2」という。)記載の各考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであって、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則9条2項及び特許法120条の4第3項において順次準用する同法126条4項の規定により認められないとし、③本件考案の要旨を設定登録時の明細書の実用新案登録請求の範囲記載のとおり認定した上、その考案は、刊行物1、2記載の各考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものとして、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)3条1項及び2項の規定により、取り消すべきものとした。 第3 原告主張の本件決定取消事由 1 本件決定の理由中、本件訂正請求及び本件補正 の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)3条1項及び2項の規定により、取り消すべきものとした。 第3 原告主張の本件決定取消事由 1 本件決定の理由中、本件訂正請求及び本件補正の内容の認定(決定書2頁13行目~12頁10行目)、本件補正の適否の判断(同12頁12行目~13頁16行目)、刊行物1、2の記載をそのまま摘記した部分の認定(同15頁2行目~16頁16行目、17頁8行目~18頁5行目)、本件訂正考案と刊行物1記載の考案との一致点及び相違点の認定(同19頁7行目~20頁16行目)は認める。 本件決定は、本件訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点についての判断を誤り(取消事由)、本件訂正を認めなかった結果、本件考案の要旨の認定を誤ったものであるから、違法として取り消されるべきである。 2 取消事由(本件訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点についての判断の誤り)(1) 本件決定は、本件訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点1、すなわち、「本件訂正考案では、そのワイヤレスリモコン操作機を、『衛生洗浄装置の本体側と着脱自在に構成し』、『またリモコン操作機を本体の操作部位置に嵌合した状態でも操作し得るように、発光部と受光部とを光結合し得るように構成し』て、衛生洗浄装置の操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と『兼用して』いるのに対し、刊行物1記載の考案1の、リモコン送信器により遠隔操作される衛生洗浄装置では、このような構成を備えていない点」(決定書19頁末行~20頁9行目)について、刊行物1記載の考案に刊行物2記載の考案を適用することにより上記相違点1に係る構成のようにすることに「格別の困難性はなく、このようなことは当業者がきわめて容易になし得た程度のことである」(同21頁19行目~末行)とするとと 2記載の考案を適用することにより上記相違点1に係る構成のようにすることに「格別の困難性はなく、このようなことは当業者がきわめて容易になし得た程度のことである」(同21頁19行目~末行)とするとともに、同相違点2、すなわち、「本件訂正考案では、『便座に着座している使用者自信(注、「自身」の誤記と認める。)の近傍にある操作部に向けて操作し得るように、リモコン操作機の下端部に発光部を設け』ているのに対し、刊行物1記載の考案では、『リモコン送信器の端部に発光窓を設け』ているものの、特に『下端部』との限定がない点」(同20頁11行目~16行目)について、「リモコン送信器の発光窓なり遠隔制御装置の送出部(ワイヤレスリモコン操作機の発光部)を、リモコン発信器とか遠隔制御装置の上端部に設けるか、あるいはその下端部に設けるかは、適宜に選択し得る設計的事項に過ぎない事項であり、特に発光窓なり送出部(発光部)を下端部に設け、本件訂正考案におけるように構成するようなことは当業者がきわめて容易になし得た程度のことである」(同22頁13行目~23頁1行目)と判断するが、誤りである。 (2) 本件訂正考案の技術的な特徴は、①操作面を、ワイヤレスリモコン操作機の操作面と兼用して衛生洗浄装置の本体側と着脱自在に構成したこと、②便座に着座している使用者(リモコン操作者)自身の近傍にある操作部に向けてリモコン操作機を操作し得るように、リモコン操作機の下端部に発光部を設け、当該発光部と本体側に設けた受光部とを光結合したこと、③リモコン操作機を本体の操作部位置に嵌合した状態でも操作し得るように、発光部と上記受光部とを光結合し得るように構成したことにある。 これらの構成によって、便座に着座している使用者(リモコン操作者)の前方位置又は近傍位置において前記リモコン操作 作し得るように、発光部と上記受光部とを光結合し得るように構成したことにある。 これらの構成によって、便座に着座している使用者(リモコン操作者)の前方位置又は近傍位置において前記リモコン操作機を操作する際、当該使用者が特にその姿勢位置を気にすることなく、また、リモコン操作機を本体の操作部位置に嵌合した際にも、リモコン操作機の下端部に設けた発光部と本体側に設けた受光部とを確実に光結合させることができるとともに、生産コストの引下げをも図ることができる。すなわち、本件訂正考案は、狭い空間のトイレ内における身体の行動や動作が極めて制限された特殊な状況の下で、使用者の体格や姿勢に関係なく、また介護者と要介護者がトイレに入る場合も含めて、リモコン操作機の操作性を良好とすることができるという極めて顕著な効果を奏するものである。 (3) 従来一般に、リモコンの使用者(操作者)がリモコン操作器の先端を本体の受光部に向けて、本体とを対向させる状態でリモコンを操作するというのが常識であり、刊行物1、2記載の各考案も、上記のような技術常識の範囲内のものにすぎない。これに対し、本件訂正考案は、その技術課題を合理的に解決するために従来の常識技術を全く逆転させることに想い至り、リモコン操作機の下端を本体の受光部分に向けて操作する構成にしたという逆転思想から構成された特異なものである。 このような特有の構成と顕著な効果を有する本件訂正考案と、刊行物1、2記載の各考案の目的、構成、作用及び効果は全く異なるものであるから、本件訂正考案は、刊行物1、2記載の各考案からは、到底想到し得るものではなく、また、それらを組み合わせて得られるものでもない。 (4) したがって、本件決定の本件訂正の適否に関する上記判断は誤りであり、本件考案の要旨を設定登録時の明細 からは、到底想到し得るものではなく、また、それらを組み合わせて得られるものでもない。 (4) したがって、本件決定の本件訂正の適否に関する上記判断は誤りであり、本件考案の要旨を設定登録時の明細書の実用新案登録請求の範囲記載のとおり認定した点も誤りに帰するから、本件決定は違法であって、取り消されるべきものである。 第4 被告の反論 1 本件決定の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。 2 取消事由(本件訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点についての判断の誤り)について(1) 本件訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点1に関しては、刊行物1記載のリモコン送信器の具体的な細部についての構成として、刊行物2に記載されているような遠隔制御装置の構成を採用して適用することは、刊行物1、2記載の各考案がリモコン送信器なり遠隔制御装置として同様の技術に係るものであり、かつ、その適用を特に阻害する要因もないことから、格別の困難性はないというべきであり、当業者であればきわめて容易に想到し得た程度のことである。 (2) 同相違点2に関しては、刊行物1記載の考案のリモコン送信器及び刊行物2記載の考案の遠隔制御装置において、それぞれの上端部に発光窓ないし送出部(発光部)を設ける点が開示されているところ、その発光部をリモコン送信器ないし遠隔制御装置の上端部に設けるか、あるいはその下端部に設けるかという点は、リモコン送信器ないし遠隔制御装置の具体的な配置構成等に対応して、適宜に選択し得る設計的事項にすぎないことである。 衛生洗浄装置においては、使用者は便座に後ろ向きに着座するものであり、刊行物1の第1図には、操作信号受信部15は便座の側方、すなわち使用者が着座したときの腰の近傍に設けることが記載されているのであるから、本件訂正 おいては、使用者は便座に後ろ向きに着座するものであり、刊行物1の第1図には、操作信号受信部15は便座の側方、すなわち使用者が着座したときの腰の近傍に設けることが記載されているのであるから、本件訂正考案におけるように、発光部をリモコン送信器の下端部に設け、便座に着座している使用者自身の近傍にある操作部に向けて操作し得るように構成することは、当業者であれば格別の困難性を伴うことなく選択し得る程度の設計的事項にすぎない。 (3) 原告は、本件訂正考案の「顕著な効果」について主張するが、リモコン操作機の下端部に設けた発光部と本体側に設けた受光部との確実な光結合、生産コストの引下げといった点は、当業者であれば、刊行物2記載の遠隔制御式電気機器に関する考案から当然に予測することができる程度のことである。また、介護者と要介護者がトイレに入る場合については、本件明細書に記載がない上、仮に、そのような場合を想定したとしても、その効果は刊行物1記載の考案から予測することができる程度のことである。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由(本件訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点についての判断の誤り)について(1) 原告は、本件訂正考案の技術的な特徴及びその奏する効果について主張するので、まず、この点を訂正明細書に沿って検討する。 訂正明細書(甲第11号証)の【考案が解決しようとする課題】欄には、「この種のワイヤレスリモコン操作機を付属した衛生洗浄装置によれば、リモコン操作機と同様の機能選択操作を可能にする操作部が本体にも設けられるため、本体とリモコン操作機の二箇所に操作部を構成することとなり、生産コストが高騰する要因になっている。このため、本体の操作部を省略してリモコン操作機だけにすると、操作性が悪くなるという問題を有していた。・・・更に、衛 操作機の二箇所に操作部を構成することとなり、生産コストが高騰する要因になっている。このため、本体の操作部を省略してリモコン操作機だけにすると、操作性が悪くなるという問題を有していた。・・・更に、衛生洗浄装置の従来のワイヤレスリモコン操作機は、一般に壁に固定したリモコンハンガーに着脱する構成になっており、置き場所が限定されることから、大人と子供のように体格の異なる使用者が同じ位置での使用を余儀なくされるため、使用者によっては無理な姿勢で操作使用しなければならなくなり、操作性が悪くなるという問題を有していた。本考案は、上記問題に鑑みて創案されたものであり、本体の操作部を廃止した衛生洗浄装置のワイヤレスリモコン操作機において、該リモコン操作機を本体の操作部の構造との兼用構造として生産コストの引き下げを図ると共に、便座に着座している使用者の体格に関係なく操作性が良好になり、またリモコン操作機の操作位置にも影響されることがなく自由に操作することができる衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置を提供することを目的とするものである」(【0003】~【0006】段落)との記載が、【作用】欄には、「リモコン操作機はその下端部に発光部が設けられているため、トイレ内において使用者がこのリモコン操作機を手で持っている際、更に壁面に取り付けて使用する際のいずれでも、リモコン操作機の下端部が使用者自身の近傍にある操作部(受光部)へ向いているので、その発光部と受光部とを確実に光結合させることができ、衛生洗浄装置を容易に操作することができる。特に、従来のように便器の脇に設けられた操作部に比較して、便座に着座している使用者が身体を捩ることなく、また誤操作することなく、使用者の前方においてリモコン操作機を自由に操作することができ、非常に快適に衛生洗浄装置を使用するこ けられた操作部に比較して、便座に着座している使用者が身体を捩ることなく、また誤操作することなく、使用者の前方においてリモコン操作機を自由に操作することができ、非常に快適に衛生洗浄装置を使用することができる。リモコン操作機を本体側操作部位置に着脱する兼用構造であるため、従来のような衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置の欠点であった体格の異なる使用者、及び小児や介護を必要とする使用者に対し、衛生洗浄装置の本体での操作、リモコン操作機の手操作又はリモコン操作機を壁に掛けた状態での操作を任意に選択使用することができ、衛生洗浄装置のように座って使用する機器の操作性が格段に向上する、又本体側操作部の構造が不要になり、構造を簡素化することができる」(【0008】~【0009】段落)との記載が、【考案の効果】欄には、「本考案に係る衛生洗浄装置におけるワイヤレスリモコン装置は、上記の如くリモコン操作機を本体側操作部位置に着脱する兼用構造にしたことにより、本体側の操作部の構造が不要になり、生産コストを引き下げることができる。特にリモコン操作機を衛生洗浄装置の本体側のみならず、便座に着座している使用者が手に持ったり、または前方の壁面に取り付けるといった所望の位置で使用することができるため、操作性が良好になる。しかも、使用者の前方においてリモコン操作機を操作することができるため、便器の脇に設けられた操作部に向かい使用者が身体を捩って操作する従来のような構成に比較して、非常に快適に衛生洗浄装置を使用することができる」(【0021】段落)との記載がそれぞれ認められ、以上によれば、本件訂正考案は、リモコン操作機を本体側と着脱自在な構造として、本体操作部とリモコン操作機の操作面を兼用すること(相違点1に係る構成)によって、本体操作部での操作のほかに、リモコン れ、以上によれば、本件訂正考案は、リモコン操作機を本体側と着脱自在な構造として、本体操作部とリモコン操作機の操作面を兼用すること(相違点1に係る構成)によって、本体操作部での操作のほかに、リモコン操作機による手操作や壁に掛けた状態での操作を可能とするという操作上の利点を図りつつ、操作面を別々に設けるものよりも生産コストの引下げを可能とし(以下「作用効果A」という。)、他方、リモコン操作機の発光部をその下端部に設けること(相違点2に係る構成)によって、リモコン操作部を手操作する場合にも、壁に掛けた状態で使用する場合にも、本体側の受光部との確実な光結合が無理なく図られる(以下「作用効果B」という。)という作用効果を奏するものであると認められる。 (2) 以上の認定に基づいて、まず、本件訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点1(リモコン操作機を本体側と着脱自在な構造とし、本体操作部とリモコン操作機の操作面を兼用する構成の有無)についての本件決定の判断を検討するに、刊行物2(甲第5号証)には、「テレビジョン受像機、扇風機等の電気機器の操作部において、該操作部の複数の押しボタンを配列した操作面を、遠隔制御装置の操作面と兼用して上記電気機器の本体側と着脱自在に構成し、上記遠隔制御装置の端部に送出部を設け、該送出部と上記本体側に設ける受光部とを光結合し、また、上記遠隔制細装置を上記本件の操作部位置に収納した状態でも操作し得るように、上記送出部と上記受光部とを光結合し得るように構成した電気機器における遠隔制御の装置」(本件決定書18頁12行~19頁1行目参照)が記載されていることが認められ、これによれば、上記相違点1に係る構成が刊行物2に開示されていることが明らかである。そして、刊行物2においては、遠隔制御すべき本体装置として衛生洗浄装置を明示し 照)が記載されていることが認められ、これによれば、上記相違点1に係る構成が刊行物2に開示されていることが明らかである。そして、刊行物2においては、遠隔制御すべき本体装置として衛生洗浄装置を明示した記載はないものの、その考案の詳細な説明の「産業上の利用分野」の欄には、「本件考案はテレビジョン受像機、扇風機等遠隔制御装置にて制御される電気機器に関する」(1欄11行目~12行目)と記載されているように、遠隔制御装置によって制御される電気機器について汎用的に利用可能な技術として開示されているのであるから、これを刊行物1に記載されたワイヤレスリモコン操作機によって制御する衛生洗浄装置に適用することを困難とする理由はないというべきである。 そして、本件訂正考案の作用効果A(本体操作部での操作のほかに、リモコン操作機による手操作や壁に掛けた状態での操作を可能とするという操作上の利点を図りつつ、操作面を別々に設けるものよりも生産コストの引下げを可能とするとの点)は、リモコン操作を行う電気機器であれば、その電気機器の種類にかかわらず、当該客観的な構成自体から当業者において当然に予測することのできるものにすぎないというべきであるから、これを本件訂正考案に特有の顕著な効果であるとする原告の主張は採用することができない。 よって、相違点1についての本件決定の判断に誤りはないというべきである。 (3) 次に、相違点2(リモコン操作機の発光部をその下端部に設けた構成の有無)についての本件決定の判断を検討するに、原告は、従来の技術常識は、リモコンの使用者(操作者)がリモコン操作器の先端を本体の受光部に向けて本体とを対向させる状態でリモコンを操作するというものであって、刊行物1、2記載の考案はこの技術常識の範囲内のものにすぎないのに対し、本件訂正 者(操作者)がリモコン操作器の先端を本体の受光部に向けて本体とを対向させる状態でリモコンを操作するというものであって、刊行物1、2記載の考案はこの技術常識の範囲内のものにすぎないのに対し、本件訂正考案は、このような従来の常識技術を全く逆転させ、リモコン操作機の下端を本体の受光部分に向けて操作する構成にした点で特異なものである旨主張する。 しかし、刊行物1(甲第4号証)の第1図に示されているリモコン操作機(リモコン送信器16)の発光部(発光窓20)は、その先端というよりは、操作面上に設けられているというべきものであって、便座に着座した使用者が操作面と対向する形態で使用した場合には、使用者の方向に発光する構成であると認められる。このような発光部の構成は、便座付近に受光部が位置することを想定し、その光結合を容易にすることを目的としたものと解されるものであって、原告の主張する「従来の技術常識」とは異なり、むしろ、リモコン装置の発光部が受光部との位置関係で適宜に採用することができる設計的事項にすぎないことを示唆するものというべきである。 加えて、リモコン操作機の発光部をリモコン操作機のどの部分に設けるかということに関しては、当該リモコン操作機の通常の使用態様を想定して、本体側の受光部との光結合を容易にするという要請以外に、格別の技術的制約を見いだすことはできない。なお、刊行物2(甲第5号証)の図面に示されているリモコン操作機(遠隔制御装置10)では、発光部(制御信号送出部43)がリモコン操作機の先端部に図示されており、原告が「従来の技術常識」として主張するところに沿う構成ということはできるが、当該図面が扇風機の制御装置を想定したものであることは明らかであり、リモコン操作機の先端部に発光部を設ける構成が、通常の使用態様を想定して受 識」として主張するところに沿う構成ということはできるが、当該図面が扇風機の制御装置を想定したものであることは明らかであり、リモコン操作機の先端部に発光部を設ける構成が、通常の使用態様を想定して受光部との光結合を容易にするという以上の技術的必然性に由来するものとは認められない。 そうすると、リモコン操作機において、発光部を設ける位置については、通常の使用態様、受光部との位置関係等に応じて適宜に採用することのできる設計的事項にすぎないというべきであるから、衛生洗浄装置において使用するリモコン操作機の下端部と規定した相違点2に係る本件訂正考案の構成は、当業者がきわめて容易に想到し得たことというべきである。 そして、相違点2に係る構成によって奏される上記の作用効果B(リモコン操作部を手操作する場合にも、壁に掛けた状態で使用する場合にも、本体側の受光部との確実な光結合が無理なく図られる点)については、リモコン操作機の発光部と本体側の受光部との光結合を容易にするというこの種の機器が当然に有する課題に関して、上記のような設計的事項として適宜に選択し得る構成に係るものにすぎないのであるから、これを顕著な効果ということはできない。 よって、相違点2についての本件決定の判断に誤りはない。 (4) したがって、本件訂正考案が実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるとして本件訂正を認めなかった本件決定の判断及び本件考案の要旨を設定登録時の明細書の実用新案登録請求の範囲の記載のとおりとした認定には、誤りはないというべきである。 2 以上のとおり、原告主張の本件決定取消事由は理由がなく、他に本件決定を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担に うべきである。 2 以上のとおり、原告主張の本件決定取消事由は理由がなく、他に本件決定を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第13民事部裁判長裁判官篠原勝美裁判官長沢幸男裁判官宮坂昌利
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