平成26(行ウ)18 生活保護基準引下げに基づく保護費変更(減額)処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年12月14日 那覇地方裁判所
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判決文本文224,598 文字)

令和5年12月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(行ウ)第18号生活保護基準引下げに基づく保護費変更(減額)処分取消請求事件口頭弁論終結日令和5年7月20日判決 当事者の表示別紙1当事者目録に記載のとおり(なお、以下同別紙で定義した略称は、以下でも用いることとする。) 主文 1 本件各訴えのうち、原告番号3の請求に係る部分は、令和▲年▲月▲日の同原告の死亡により終了した。 2 本件各訴えのうち原告番号1、2、4ないし7の各主位的請求に係る部分をいずれも却下する。 3 原告番号1、2、5ないし7の各予備的請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求那覇市福祉事務所長が平成25年8月1日付けで原告らに対してそれぞれした生活保護法25条2項に基づく各保護変更決定処分のうち、平成25年厚生労 働省告示第174号によって金額を減額する部分をいずれも取り消す。 2 予備的請求(原告番号1、2、3、5、6及び7関係)那覇市福祉事務所長が平成25年8月1日付けで原告番号1、2、3、5、6及び7に対してそれぞれした生活保護法25条2項に基づく各保護変更決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、生活保護法に基づく保護を受けている者である原告らが、平成25年厚生労働省告示第174号(以下「平成25年告示」という。)による「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生労働省告示第158号。以下「保護基 準」という。)の改定(以下「本件保護基準改定」という。)に基づいて那覇市福祉事務所長がした原告らの生活扶助費の額を変 護法による保護の基準」(昭和38年厚生労働省告示第158号。以下「保護基 準」という。)の改定(以下「本件保護基準改定」という。)に基づいて那覇市福祉事務所長がした原告らの生活扶助費の額を変更する旨の保護の変更に係る決定(以下「本件各決定」という。)は、憲法25条並びに生活保護法3条及び8条等に違反する違憲、違法なものであるなどとして、①主位的に、原告らが、本件各決定のうち平成25年告示によって保護に係る金額が減額となる部分の 取消しを求め(以下「主位的請求」という。)、②予備的に、原告番号1、2、3、5、6及び7が、本件各決定のうち原告番号1、2、3、5、6及び7についてされたものの全部の取消しを求める(以下「予備的請求」という。)事案である。 2 生活保護法に基づく保護に係る制度の概要等(なお、法令等の定めを摘示する ときは、実質的な改正がある場合を除き、便宜上、現行の法令によって摘示するものとする。)⑴ 生活保護法の定めア目的生活保護法は、憲法25条の理念に基づき、国が生活に困窮する全ての国 民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする(生活保護法1条)。 イ基本原理等全ての国民は、生活保護法の定める要件を満たす限り、差別されることな く平等に、同法による保護(以下、単に「保護」という。)を受けることがで き(同法2条。無差別平等の原理)、同法により保障される「最低限度の生活」は、「健康で文化的な生活水準を維持することができるもの」でなければならない(同法3条。最低生活の原理)。また、保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のた な生活水準を維持することができるもの」でなければならない(同法3条。最低生活の原理)。また、保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ(同法4条1項)、民法に定め る扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、全て保護に優先して行われなければならない(同条2項。保護の補足性の原理)。生活保護法1条から4条までに規定するところは、同法の基本原理であって、同法の解釈及び運用は、全てこの原理に基づいてされなければならない(同法5条)。 保護は、厚生労働大臣(平成11年法律第160号による生活保護法の改 正前は厚生大臣。以下同じ。ただし、以下においては、上記の改正の前後で区別することなく「厚生労働大臣」と表記する場合がある。)の定める基準により測定した要保護者(生活保護法6条2項にいう要保護者のこと。以下同じ。)の需要を基として、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとし(同法8条1項)、上記の基 準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない(同条2項)。また、保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効かつ適切に行うものとする(同法9条)。 保護は、世帯を単位としてその要否や程度を判定して実施するものとし(同法10条本文)、これにより難いときは、個人を単位として定めることができる(同条ただし書)。 ウ保護の種類及び生活扶助の方法等保護には、①生活扶助、②教育扶助、③住宅扶助、④医 ものとし(同法10条本文)、これにより難いときは、個人を単位として定めることができる(同条ただし書)。 ウ保護の種類及び生活扶助の方法等保護には、①生活扶助、②教育扶助、③住宅扶助、④医療扶助、⑤介護 扶助、⑥出産扶助、⑦生業扶助及び⑧葬祭扶助の8種類があり(生活保護 法11条1項)、これらの扶助は、要保護者の必要に応じ、単給又は併給として行われる(同条2項)。 生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、①衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの(生活保護法12条1号)及び②移送(同条2号)の範囲内において行われる(同 条柱書き。以下において「生活扶助」というときは、上記①に係る保護を指すものとする。)。 生活扶助の方法としては金銭給付(同法6条4項にいう金銭給付のこと。 以下同じ。)が原則とされるが、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があると きは、現物給付によって行うことができる(同法31条1項)。 ⑵ 保護基準の定め等(平成27年厚生労働省告示第268号による改正前のもの。以下同じ。)ア厚生労働大臣は、保護の要否を判断するための基準として、生活保護法8条1項に基づき保護基準を定めており、保護の要否は、保護基準に基づき、 その者の属する世帯の最低生活費の額を算定し、当該最低生活費の額と当該世帯の収入との比較により判定し、当該世帯の収入が当該最低生活費の額を下回る場合に初めて、当該不足分に限り、保護が行われる。 保護基準は、前記⑴ウの8種類の保護の基準はそれぞれ保護基準別表第1から第8までに定めるところによる旨を定めるとともに(1項)、要保護 者に特別の事由があって、これらの基準 護が行われる。 保護基準は、前記⑴ウの8種類の保護の基準はそれぞれ保護基準別表第1から第8までに定めるところによる旨を定めるとともに(1項)、要保護 者に特別の事由があって、これらの基準により難いときは、厚生労働大臣が特別の基準を定める旨を定めている(2項)。 イ地域の級地区分保護基準は、生活扶助、住宅扶助及び葬祭扶助に係る各基準(保護基準別表第1、第3及び第8)について、被保護者(生活保護法6条1項にいう被 保護者のこと。以下同じ。)の居住地の地域の級地区分に応じてその基準額 を定めているところ、保護基準別表第9は、当該級地区分として、全国の市町村を1級地-1、1級地-2、2級地-1、2級地-2、3級地-1及び3級地-2の6つの級地に区分している。上記地域の級地区分においては、おおむね、大都市及びその周辺市町は1級地に、県庁所在地を始めとする中都市は2級地に、その他の市町村は3級地に区分されており、原告らの居住 地である那覇市は「2級地-1」に区分されている。 ウ生活扶助基準保護基準のうち、生活扶助基準(保護基準別表第1)は、基準生活費に関する定め(第1章)と加算に関する定め(第2章)に大別される(以下において、「生活扶助基準」という場合には、基準生活費に関する定め(保 護基準別表第1第1章)を指すものとする。)。 基準生活費は、個人単位に費消される経費(例えば、飲食物費や被服費)、に対応する基準として年齢別に定められた第1類の表に定める個人別の額を合算した額(以下「第1類費」という。)と、世帯全体としてまとめて支出される経費(例えば光熱水費や家具什器費)に対応する基準として世 帯人員数別に定められた第2類の表に規定する額(以下「第2類費」という。)を合計した額とされている。 帯全体としてまとめて支出される経費(例えば光熱水費や家具什器費)に対応する基準として世 帯人員数別に定められた第2類の表に規定する額(以下「第2類費」という。)を合計した額とされている。 第1類の表は、級地区分ごとに、被保護者の年齢の区分(①0~2歳、②3~5歳、③6~11歳、④12~19歳、⑤20~40歳、⑥41~59歳、⑦60~69歳及び⑧70歳以上の各区分)に応じて基準額を定 めている。 第2類の表は、級地区分ごとに、保護受給世帯(保護を受けている世帯のこと。以下同じ。)の世帯人員数別に基準額及び地区別冬季加算額(11月から3月までの加算額)を定めている。 加算(保護基準別表第1第2章)は、基準生活費において配慮されてい ない個別的な特別需要を補塡することを目的として設けられているもの である。 (以上につき、乙A1)エ保護の変更等保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、速やかに、職権をもってその決定を行い、書面を もって、これを被保護者に通知しなければならないが(生活保護法25条2項前段)、被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を、不利益に変更されることがない(同法56条)。 ⑶ 生活扶助基準の設定の方法現行の生活扶助基準は、標準世帯(なお、本件保護基準改定がされた時点に おいては、33歳、29歳及び4歳の3人世帯。以下「標準世帯」という。)の最低生活費を具体的な額として設定した上で、これを具体的な世帯の構成(年齢、世帯人員及び地域)を踏まえた指数を用いて「展開」(定義は、次の段落に判示するとおりである。)する方法によって生活扶助基準額を設定する方法が採られている。 すなわち、まずは、 構成(年齢、世帯人員及び地域)を踏まえた指数を用いて「展開」(定義は、次の段落に判示するとおりである。)する方法によって生活扶助基準額を設定する方法が採られている。 すなわち、まずは、①標準世帯につき、その最低生活費の額に基づいて生活扶助基準額を定め、これを一般世帯の消費実態の第1類費と第2類費の構成割合を参考として、第1類費と第2類費に分解し、②年齢階級別、世帯人員別及び級地別に、標準世帯と比較して最低生活に要する費用がどの程度になるかとの観点から、標準世帯を基軸として、第1類費については栄養所要量(国民の 健康の保持及び増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準として厚生労働大臣が定めたもの。現在の「日本人の食事摂取基準」と同義である。以下同じ。)を参考とした指数、第2類費については消費支出を参考とした指数をそれぞれ設定し、③②で設定した指数を標準世帯の第1類費、第2類費に適用することによって、年齢階級別及び世帯人員別の生活扶 助基準額を設定し、さらに、④級地による地域差についても、「1級地の1」を 基軸としてその他の級地ごとに設定した指数を適用して生活扶助費の額を設定している(以下、標準世帯を基軸として他の年齢階級及び世帯人員の生活扶助基準額を定めること及び1級地-1を基軸として他の級地との地域差も考慮した生活扶助基準額を定めることを総称して「展開」といい、展開に相当する部分を「展開部分」という。)。 (以上につき、乙A20)⑷ 社会保障審議会等の専門家(学識経験者等の有識者。以下同じ。)による組織の概要ア社会保障審議会は、厚生労働省本省に設置されている審議会等の1つであり、厚生労働大臣の諮問に応じて社会保障に関する重要事項を調査審議する とともに、これ 。以下同じ。)による組織の概要ア社会保障審議会は、厚生労働省本省に設置されている審議会等の1つであり、厚生労働大臣の諮問に応じて社会保障に関する重要事項を調査審議する とともに、これに係る重要事項に関し、厚生労働大臣又は関係行政機関に意見を述べること等の事務をつかさどるところ(厚生労働省設置法6条、7条1項)、社会保障審議会に関し必要な事項は、政令で定めることとされている(同法7条2項)。そして、同項による委任を受けた社会保障審議会令においては、社会保障審議会の運営に関し必要な事項を社会保障審議会会長が社 会保障審議会に諮って定めることとされており(社会保障審議会令11条)、これを受けて社会保障審議会運営規則が制定されている。 なお、厚生労働省設置法が施行される(平成13年1月6日)前においては、社会福祉事業法(平成12年法律第111号による改正前の題名。現在の題名は社会福祉法)6条1項の規定に基づき、厚生省(当時。以下同じ。) に、社会福祉事業の全分野における共通的基本事項その他重要な事項を調査審議するため中央社会福祉審議会(昭和38年法律第133号による社会福祉事業法の改正前の名称は、社会福祉審議会。以下、同改正の前後を通じて「中央社会福祉審議会」という。)が置かれ、同審議会に、生活保護法の施行に関する事項を調査審議するため、生活保護専門分科会(以下単に「生活保 護専門分科会」という。)を置くものとされていた(平成12年法律第111 号による改正前の社会福祉事業法10条1項)が、厚生労働省設置法が施行されたことに伴い、同審議会及び厚生省に置かれていたその他の審議会が、社会保障審議会に統合された。 イ生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下「専門委員会」という。)は、社会保障審議会運営規 されたことに伴い、同審議会及び厚生省に置かれていたその他の審議会が、社会保障審議会に統合された。 イ生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下「専門委員会」という。)は、社会保障審議会運営規則8条に基づき、社会保障審議会福祉部会にその 設置が諮られ、平成15年7月28日の社会保障審議会福祉部会において設置することが了承された結果、社会保障審議会福祉部会の下に設置された委員会であり、その設置の目的は、保護基準の在り方を始めとする生活保護制度全般について検討することである(乙A12の1)。 ウ生活扶助基準に関する検討会(以下「生活扶助基準検討会」という。)は、 平成19年10月19日までに、厚生労働省社会・援護局長の下に設置された検討会である(乙A14の1)。なお、生活扶助基準検討会の位置付けは、国家行政組織法8条の規定に基づいて設置される審議会等には該当しないが、厚生労働省社会・援護局長が行政運営上の参考に資するため、専門家の参集を求めて意見の聴取等を行った会合であり、その設置の目的は、学識経 験者等による級地を含む生活扶助基準の見直しについて専門的な分析・検討を行うことである(乙A14の1)。 エ生活保護基準部会(以下「基準部会」という。)は、社会保障審議会運営規則2条に基づき、社会保障審議会にその設置が諮られ、平成23年2月10日の社会保障審議会(総会)において設置することが了承され、社会保障 審議会の下に常設の部会として設置された部会であり、その設置の目的は、定期的に、専門家による保護基準の専門的かつ客観的な評価・検証を行うため、保護基準の定期的な評価・検証について審議することである(乙A6、21、23)。 3 前提事実(当事者間に争いがないか、後に掲記する証拠及び弁論の全趣旨によ り容 的な評価・検証を行うため、保護基準の定期的な評価・検証について審議することである(乙A6、21、23)。 3 前提事実(当事者間に争いがないか、後に掲記する証拠及び弁論の全趣旨によ り容易に認められる事実。以下「前提事実」という。) ⑴ 原告ら原告らは、いずれも、本件各決定がされた当時、那覇市内に居住し、それぞれ保護を受けている者である。 ⑵ 本件保護基準改定に至る経緯の概要ア生活扶助基準については、平成15年から平成16年にかけて、専門委員 会における検証(以下「平成16年検証」という。)が行われ、その結果を取りまとめた平成16年12月の「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」(乙A4。以下「平成16年報告書」という。)において、「勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助基 準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に1度の頻度で検証を行う必要がある」との見解が示された(乙A4)。 イ平成19年には、前記アの専門委員会の報告を受け、生活扶助基準検討会における検証(以下「平成19年検証」という。)が行われ、その結果を取り まとめた平成19年11月の「生活扶助基準に関する検討会報告書」(乙A5。以下「平成19年報告書」という。)において、生活扶助基準の水準が、一般低所得者の生活扶助相当支出額(消費支出額の全体から、生活保護制度における生活扶助以外の扶助に該当するもの(家賃・地代等=住宅扶助、教育費=教育扶助、医療診療代=医療扶助等)、生活保護制度において基本的 に認められない支出に該当するも 体から、生活保護制度における生活扶助以外の扶助に該当するもの(家賃・地代等=住宅扶助、教育費=教育扶助、医療診療代=医療扶助等)、生活保護制度において基本的 に認められない支出に該当するもの(自動車関連経費等)及び保護受給世帯は支払が免除されているもの(NHK受信料)を除いたもののこと。乙A28も参照。以下同じ。)の水準に比べ、単身世帯(60歳以上の場合)につき「高め」、夫婦子1 人(有業者あり)世帯につき「やや高め」になっているとの検証の結果が示された(乙A5)。 ウ平成23年2月、基準部会が設置され、平成21年全国消費実態調査(以 下、全国消費実態調査のことを「全消調査」といい、各年の全消調査のことを具体的に指すときは、「平成21年全消調査」のようにいう。)の特別集計等のデータを用いて、国民の消費動向、特に一般低所得世帯の生活実態を勘案しながら、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が図られているか否か等について検証が行われた(以下「平成25年検証」という。)。 基準部会は、平成25年1月、平成25年検証の結果を、「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(乙A6。以下「平成25年報告書」という。)に取りまとめた。(以上につき、乙A6)⑶ 本件保護基準改定ア厚生労働大臣は、平成25年5月16日、平成25年告示を発出すること により、本件保護基準改定をした上で、本件保護基準改定による改定がされた後の保護基準を同年8月1日から適用した(乙A1、3)。 イ本件保護基準改定は、①基準部会における検証の結果(平成25年報告書)に基づき、年間収入階級第1・十分位層(第1・十分位とは、全世帯を所得階級に応じて10等分し、10等分したうちの所得が1番低い世帯をいう。 以下、これと同様に る検証の結果(平成25年報告書)に基づき、年間収入階級第1・十分位層(第1・十分位とは、全世帯を所得階級に応じて10等分し、10等分したうちの所得が1番低い世帯をいう。 以下、これと同様に年間収入階級を表すときは、単に「第○・○分位」という。)の世帯の消費実態と生活扶助基準の年齢、世帯人員及び居住地域別の較差を是正する(以下「ゆがみ調整」という。)とともに、②平成19年検証の結果や平成20年以降のデフレーション(以下「デフレ」という。)の傾向を生活扶助基準の水準に反映してこなかった結果、生活扶助基準額が実 質的に引き上げられた(保護受給世帯の可処分所得が、相対的かつ実質的に増額した)と評価することができるとして、平成20年以降の物価の動向(変動)を生活扶助基準額に反映させること(以下「デフレ調整」という。)をその目的ないし内容とするものである。 もっとも、厚生労働大臣は、本件保護基準改定をするに当たっては、③激 変緩和措置として、㋐ゆがみ調整につき、平成25年検証の結果を反映する 程度を2分の1とすること(以下「2分の1処理」という。)、㋑ゆがみ調整とデフレ調整を併せて実施することによって生じる生活扶助費の増額又は減額の幅の上限を10%とすること、㋒ゆがみ調整及びデフレ調整の結果を3年間にわたって段階的に実施すること、といった措置を採っており、本件保護基準改定は、上記㋒を前提として、3年間(計3回)にわたって段階 的に実施するものとされた改定(以下、3年間にわたって実施された各保護基準の改定を総称するときは「本件各保護基準改定」という。)のうち初回に当たる改定である。(以上につき、乙A16、弁論の全趣旨)ウ厚生労働大臣は、デフレ調整をするに当たって、生活扶助による支出が想定される品目に係る物価変動 件各保護基準改定」という。)のうち初回に当たる改定である。(以上につき、乙A16、弁論の全趣旨)ウ厚生労働大臣は、デフレ調整をするに当たって、生活扶助による支出が想定される品目に係る物価変動率を算定することを目的として、総務省が公表 している消費者物価指数(全国・年平均のもの。以下「総務省CPI」といい、各年の総務省CPIのことを具体的に指すときは、「平成20年総務省CPI」のようにいう。)のデータを基に、総務省CPIにおける全ての消費品目から、①生活扶助以外の他の扶助により賄われる品目(家賃、教育費、医療費等)及び②原則として保有することが認められていないか、又は支払 を免除されるかのいずれかに該当するため保護受給世帯において支出することが想定されていない品目(自動車関係費、NHK受信料等)(以下、①及び②を併せて「非生活扶助相当品目」という。)を除いた品目(以下「生活扶助相当品目」という。)のみを対象として算定する消費者物価指数(全国・年平均のもの。以下「生活扶助相当CPI」といい、各年の生活扶助相 当CPIのことを具体的に指すときは、「平成20年生活扶助相当CPI」のようにいう。)を用いることとした。そして、平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIをそれぞれ算定した上で、平成20年から平成23年までの間の生活扶助相当CPIの変化率が「-4.78%」であると算定し(以下「本件下落率」という。)、これをデフレ調整の基礎 とした。(甲A7) ⑷ 本件各決定及びこれに対する不服申立てア原告らは、那覇市福祉事務所長から、平成25年8月1日付けで、本件保護基準改定を主な理由としてされた生活保護法25条2項に基づく各保護の変更の決定を受けた(本件各決定。甲B1の1、2の1、3の1 ア原告らは、那覇市福祉事務所長から、平成25年8月1日付けで、本件保護基準改定を主な理由としてされた生活保護法25条2項に基づく各保護の変更の決定を受けた(本件各決定。甲B1の1、2の1、3の1、4の1、5の1、6の1、8の1)。本件各決定により、原告番号4を除く各原告の 生活扶助費については、いずれも減額される結果となったが、原告番号4の生活扶助費については、本件保護基準改定に基づいて減額された部分もあったものの、それに併せて勤労控除(基礎控除)額が増額されたため、原告番号4の生活扶助費の全体としては1か月当たり3910円が増額される結果となった(甲B1の4、2の4、3の4、4の4、5の4、6の4、8の 4)。 イ原告らは、平成25年9月30日、本件各決定を不服として、沖縄県知事に対し、それぞれ審査請求をしたが、沖縄県知事は、同年11月11日、原告らに対し、原告らがした上記の各審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。(甲B1の2、2の2、3の2、4の2、5の2、6の2、8の2) ウ原告らは、平成25年12月10日、前記イの裁決に不服があるとして、厚生労働大臣に対し、それぞれ再審査請求をしたが、厚生労働大臣は、平成26年4月18日、原告らに対し、原告らがした上記の各再審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(甲B1の3、2の3、3の3、4の3、5の3、6の3、8の3)。 ⑸ 本件各訴えの提起原告らは、平成26年10月17日、本件各訴え(ただし、主位的請求に係る部分のみ)を提起し、令和2年12月24日の本件第1回弁論準備手続期日において、本件訴えのうち予備的請求に係る部分を追加した(当裁判所に顕著な事実)。 ⑹ 原告番号3は、令和▲年▲月▲日、死亡した。 4 主たる 日の本件第1回弁論準備手続期日において、本件訴えのうち予備的請求に係る部分を追加した(当裁判所に顕著な事実)。 ⑹ 原告番号3は、令和▲年▲月▲日、死亡した。 4 主たる争点⑴ 本件各訴えのうち主位的請求に係る部分の適法性(本案前の争点)(争点⑴)⑵ 本件保護基準改定をする旨の厚生労働大臣の判断にその有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるか(争点⑵-①)⑶ 本件各決定に係る理由の提示の不備の有無(争点⑵-②) 5 主たる争点に関する当事者の主張主たる争点に関する当事者の主張の要旨は別紙2に記載のとおりである。なお、本文において用いた略称については、同別紙においても用いることとし、また、同別紙において用いた略称についても、本文において用いることとする。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え、後に掲記する各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実(以下「認定事実」という。)が認められる。 ⑴ 水準均衡方式が採用されるに至るまでの間の生活扶助基準を改定する方式の変遷等 ア生活扶助基準を改定する方式は、現行の生活保護法が施行された昭和25年当初は、マーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を1つ1つ積み上げて最低生活費を算定する方式。以下同じ。)が採用されたが、昭和36年4月1日以降は、エンゲル方式(栄養審議会(当時)の答申に基づく栄養所要量を満た し得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算定する方式)が採用された(乙A7の2、乙A10)。 イ生活保護 げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算定する方式)が採用された(乙A7の2、乙A10)。 イ生活保護専門分科会は、昭和39年12月16日付けで、それまでの保護の水準の改善について検討した内容を取りまとめ、厚生大臣に対し、中間報 告(昭和39年中間報告。乙A32)を提出した。昭和39年中間報告の概 要は、次のとおりである。 保護の水準について見ると、数年来その水準は大幅に改善されてきたとはいいながらも、全都市勤労者世帯の平均消費水準と比較すると未だ50%にも満たない低い水準に置かれており、また、最近の一般国民の生活内容が急速に高度化し、かつ、所得階層間の格差が縮小しつつある現状に 鑑み、これに対応した生活水準とするためには、さらに相当の改善を行うことが必要である。 一般国民の平均消費水準に比較して低所得階層の消費水準の上昇が大きく、消費水準の階層別格差縮小の傾向が見られる現状を前提として最低生活保障水準としての保護の水準の改善を考える限りにおいては、一般国 民の平均的消費水準の動向を追うのみではその目的を達し得ないものであって、低所得階層の消費水準、特に保護階層に隣接する全都市勤労者世帯である第1・十分位の消費水準の動向に着目した改善を行うことが特に必要である。すなわち、第1・十分位における消費水準の最近の上昇率に加えて、第1・十分位と保護階層との格差縮小を見込んだ改善を行うべき である。この場合、見込むべき格差縮小の度合いについては、第1・十分位と保護階層との格差縮小の動向についても参酌すべきである。 (以上につき、乙A32)ウ厚生大臣は、昭和39年中間報告を踏まえ、昭和40年4月1日以降、生活扶 小の度合いについては、第1・十分位と保護階層との格差縮小の動向についても参酌すべきである。 (以上につき、乙A32)ウ厚生大臣は、昭和39年中間報告を踏まえ、昭和40年4月1日以降、生活扶助基準を改定する方式として格差縮小方式を採用した。なお、格差縮小 方式とは、政府経済見通しにおける個人消費の伸び率に格差縮小分を上乗せし、一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げることにより、低所得世帯と保護受給世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式である。(乙A7の2、乙A10)⑵ 昭和58年意見具申と水準均衡方式の採用 ア生活保護専門分科会は、保護の現行水準の評価や当時の生活扶助基準を改 定する方式(格差縮小方式)の適否等について重点的に審議を行った上で、昭和55年12月、それまでの検討状況を中間的に整理するとともに今後の検討の方向性を明らかにするため、「生活保護専門分科会審議状況の中間的とりまとめ」(乙A9。以下「昭和55年中間取りまとめ」という。)を作成した。昭和55年中間取りまとめの概要は、次のとおりである。 保護の現行水準については、昭和40年度(年度は実施年度を示す。以下同じ。)以降、格差縮小方式によって生活扶助基準が改定されてきた結果、昭和40年当時の水準に比して相当の改善が図られた点は評価されるべきである。しかし、栄養摂取の態様については未だ貧困性が強く認められ、さらに、地域社会の成員としてふさわしい生活を営むために不可欠な 交通費、教育費、交際費等の社会的経費は、一般世帯のみならず第1・十分位の世帯と比較しても著しい開きがあることなどを勘案すると、保護受給世帯の消費支出の水準は今後さらに改善を要するものと認められる。 生活扶助基準を改定する方式については 般世帯のみならず第1・十分位の世帯と比較しても著しい開きがあることなどを勘案すると、保護受給世帯の消費支出の水準は今後さらに改善を要するものと認められる。 生活扶助基準を改定する方式については、消費支出を指標とし、かつ、予想される生活水準に対応することができるものであることが前提とな る。現行の生活扶助基準を改定する方式である格差縮小方式は、前記のとおりその格差の縮小が十分でない現状においては、その考え方は妥当性を有するものと認められる。 (以上につき、乙A9)イ中央社会福祉審議会は、生活保護専門分科会における検討を踏まえ、その 最終的な検討の結果として、昭和58年12月に昭和58年意見具申(乙A8)を取りまとめ、厚生大臣に対し、生活扶助基準の在り方等について意見具申を行った。昭和58年意見具申の概要は、次のとおりである。 生活扶助基準の評価生活保護制度において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水 準との関連において捉えられるべき相対的なものである。 国民の生活水準が著しく向上した今日における最低生活の保障の水準は、単に肉体的生存に必要な最低限の衣食住を充足すれば十分というものではなく、一般国民の生活水準と均衡のとれた最低限度のもの、すなわち、家族全員が必要な栄養量を確保するのはもちろんのこと、被服及びその他の社会的費用についても、必要最低限の水準が確保されるものでなければ ならない。 このような考え方に基づき、総理府(当時)家計調査を所得階層別に詳細に分析検討した結果、現在の生活扶助基準は、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得た。しかしながら、国民の生活水準は今後も向上すると見込まれるので、保護受給世帯及び低所得 世帯の生活実態を 生活扶助基準は、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得た。しかしながら、国民の生活水準は今後も向上すると見込まれるので、保護受給世帯及び低所得 世帯の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要がある。 生活扶助基準を改定する方式生活保護制度において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきもので あり、生活扶助基準を改定するに当たっては、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費水準との調整が図られるよう適切な措置をとることが必要である。 また、当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当である。なお、 賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである。 (以上につき、乙A8)ウ厚生大臣は、昭和58年意見具申を踏まえ、昭和59年4月1日以降、生活扶助基準を改定する方式として水準均衡方式を採用し、同日以降、現在に 至るまで、同方式に基づいて生活扶助基準が改定されている(乙A7の2、 乙A10)。 水準均衡方式は、当該年度に予想される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る方式であり、政府経済見通しにおける個人消費(民間最終消費支出)の伸びに準拠して翌年度の改定率を算定する点では格差縮小方式と同様であるが、格差縮小分を上乗 せせず、また、個人消費の伸びに関する指標の実績値との調整を図ることとしている点において、格差縮小方式と異 に準拠して翌年度の改定率を算定する点では格差縮小方式と同様であるが、格差縮小分を上乗 せせず、また、個人消費の伸びに関する指標の実績値との調整を図ることとしている点において、格差縮小方式と異なっている(乙A7の2)。 ⑶ 平成16年検証に至る経緯等ア保護基準の見直しに係る動向等いわゆるバブル景気が崩壊した後、複合不況といわれる長期間の景気の 低迷期が続き、その間、平成4年頃からは、完全失業率が上昇して高水準にとどまり続けるとともに、賃金、物価及び家計消費支出についても増加率が鈍化し、さらに、平成10年頃以降は、いずれも減少に転ずるなどしていた(乙A11)。 そのような社会経済情勢の中で、衆議院厚生委員会(当時)は、平成1 2年5月10日、社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案(いわゆる社会福祉基礎構造改革法案)を可決すべきものであるとする旨の議決をした際、「介護保険制度の施行後5年後を目途とした同制度全般の見直しの際に、(中略)生活保護の在り方について十分検討を行うこと」を含む附帯決議をし、参議院国民福祉委員会(当時)も、 同月26日、同法律案を可決すべきものであるとする旨の議決をした際、同旨の附帯決議をした(乙A12の1・2)。 また、平成15年6月27日に閣議によって決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」(当時。現在の名称は、「経済財政運営と改革の基本方針」)は、 毎年6月に決定される経済及び財政政策の柱となる基本方針であるいわ ゆる骨太の方針のことであり、上記は、その平成15年のものである。以下も、同様である。)においては、①保護その他福祉の各分野においても、制度、執行の 及び財政政策の柱となる基本方針であるいわ ゆる骨太の方針のことであり、上記は、その平成15年のものである。以下も、同様である。)においては、①保護その他福祉の各分野においても、制度、執行の両面から各種の改革を推進する、②年金・医療・介護・保護等の社会保障サービスを一体的に捉え、制度の設計を相互に関連付けて行う、③生活保護制度においても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、 年金制度改革等との関係を踏まえ、老齢加算等の扶助基準等制度、運営の両面にわたる見直しが必要である旨の方針が示された(乙A12の2)。 平成15年6月19日に取りまとめられた財政制度等審議会の建議においても、近年の物価・賃金動向等の社会経済情勢の変化を踏まえるとともに年金制度改革における給付水準の見直しとも一体的に検討すれば、生 活扶助基準・加算の引下げ・廃止、各種扶助の在り方の見直し、扶助の実施についての定期的な見直し・期限の設定等、制度・運用の両面にわたり多角的かつ抜本的な検討が必要であるなどの指摘がされた(乙A12の2)。 さらに、社会保障審議会も、平成15年6月16日付け同審議会意見に おいて、生活保護制度については、他の社会保障制度との関係や雇用政策との連携等にも留意しつつ、今後、その在り方についてより専門的に検討していく必要がある旨の見解を示した(乙A12の2)。 イ専門委員会の設置及び平成16年検証前記アのような状況を踏まえ、平成15年7月28日、保護基準の在り 方を始めとする生活保護制度の全般について検討することを目的として、社会保障審議会福祉部会の下に「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(専門委員会)が設置された。なお、専門委員会は、学識経験者を中心とする12名の委員により構成され、同年8月6日以降 的として、社会保障審議会福祉部会の下に「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(専門委員会)が設置された。なお、専門委員会は、学識経験者を中心とする12名の委員により構成され、同年8月6日以降、月1回程度の頻度で開催された。(乙A12の1) 専門委員会は、平成15年12月16日付けで平成15年中間取りまと め(乙A13)を作成し、専門委員会における生活扶助基準についての考え方を示した。平成15年中間取りまとめの概要は、次のaからcのとおりである。 a 生活扶助基準の評価生活保護制度において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活 水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり、具体的には、第1・十分位の世帯の消費水準に着目することが適当である。このような考え方に基づき第1・十分位の勤労者3人世帯の消費水準について詳細に分析して3人世帯(勤労)の生活扶助基準額と比較した結果は、次の⒜から⒞のとおりである。 ⒜ 第1・十分位の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、後者が高い。 ⒝ 第1・十分位(第1~第5・五十分位)のうち、食費、教養娯楽費等の減少が顕著な分位である第1~第2・五十分位の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、後者が高い。 ⒞ 第1・十分位のうち、残りの第3~第5・五十分位の消費水準(結果として第1・五分位の消費水準に近似)と勤労控除額を除いた生活扶助基準額とを比較すると均衡が図られている。しかし、保護受給世帯の消費可能額である勤労控除額を含めた生活扶助基準額と比較すると、後者が高い。 b 生活扶助基準の第1類費及び第2類費の設定の在り方について標準世帯(夫婦子1人の3人世帯)を基準として具体的な世帯類型別にこれを展開してみると、いくつかの問題が見 ると、後者が高い。 b 生活扶助基準の第1類費及び第2類費の設定の在り方について標準世帯(夫婦子1人の3人世帯)を基準として具体的な世帯類型別にこれを展開してみると、いくつかの問題が見られるとして、おおむね、次の⒜から⒞のとおり指摘している。 ⒜ 第1類費の年齢別格差について 生活扶助基準を改定する方式としてマーケットバスケット方式が 採用されていた時の栄養所要量を基準として設定されている現行の第1類費の年齢別格差について、直近の年齢別の栄養所要量及び一般低所得世帯の年齢別消費支出額と比較して検証したところ、おおむね妥当であるが、年齢区分の幅の在り方については引き続き検討することが必要であり、また、0歳児については、人工栄養費の在り方を含 めた見直しが必要である。 ⒝ 世帯人員別の生活扶助基準について第1類費と第2類費の割合は、一般低所得世帯の消費実態と比べると第1類費が相対的に大きく、また、このように相対的に大きな第1類費が年齢別に組み合わされるために、多人数世帯ほど生活扶助基準 額が割高になることが指摘されているところ、これを是正するため、3人世帯の生活扶助基準額の第1類費と第2類費の構成割合を一般低所得世帯の消費実態に均衡させるよう第2類費の構成割合を高めることが必要であり、また、世帯人員別に定めた第2類費の換算率については、一般低所得世帯における世帯人員別の第2類費に相当する 支出額(以下「第2類費相当支出額」といい、第1類費に相当する支出額を、上記と同様に「第1類費相当支出額」という。)との格差を踏まえ、多人数世帯の換算率を小さくする方向で見直しを行うことが必要である。 ⒞ 単身世帯の生活扶助基準について 単身世帯の第1類費及び第2類費の構成割合については、 という。)との格差を踏まえ、多人数世帯の換算率を小さくする方向で見直しを行うことが必要である。 ⒞ 単身世帯の生活扶助基準について 単身世帯の第1類費及び第2類費の構成割合については、現在の3人世帯(標準世帯)を基軸とする基準の設定は、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとはなっていない。したがって、一般に単身世帯数が増加している中で、とりわけ保護受給世帯の約7割が単身世帯であること、単身世帯における第1類費及び第2類費につい ては一般世帯の消費実態から見て、これらを区分する実質的な意味が 乏しいことも踏まえ、単身世帯については、一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが望ましい。 c 生活扶助基準を改定する方式の在り方について⒜ 昭和59年度以降採用されている水準均衡方式はおおむね妥当で あると認められてきたが、最近の経済情勢は、この方式を採用した当時と異なることから、例えば5年間に1度の頻度で、生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である。 ⒝ 定期的な検証を行うまでの毎年の改定については、近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定し ておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる保護受給世帯への影響が懸念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要であり、この場合、国民にとってわかりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の1つとして用いることなども考えられる。 ⒞ 急激な経済変動があった場合には、機械的に改定率を設定するのではなく、最低生活水準確保の見地から別途対応することが必要である。 (以上につ つとして用いることなども考えられる。 ⒞ 急激な経済変動があった場合には、機械的に改定率を設定するのではなく、最低生活水準確保の見地から別途対応することが必要である。 (以上につき、乙A13)専門委員会は、平成16年12月15日、平成16年検証の結果を平成16年報告書(乙A4)に取りまとめた。平成16年報告書のうち生活扶 助基準の評価、検証等に関する部分の概要は、次のa及びbのとおりである。 a 生活扶助基準の評価・検証について平成15年中間取りまとめにおいて報告したとおり、水準均衡方式を前提とする手法により、勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得 世帯の消費支出額との比較において検証及び評価した結果、その水準は 基本的に妥当であったが、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全消調査等を基に5年に1度の頻度で検証を行う必要がある。なお、生活扶助基準の検証に当たっては、平均的に見れば、勤労基礎控除も含めた生活扶助基準額が一般低所得世帯の消費における生活扶助相当支出額 よりも高くなっていること、また、各種控除が実質的な生活水準に影響することも考慮する必要がある。また、これらの検証に際しては、地域別、世帯類型別等に分けるとともに、調査方法及び評価手法についても専門家の知見を踏まえることが妥当であるほか、捕捉率(保護を受ける条件を満たす世帯がどれだけ実際に保護を受けているか)についても検 証を行う必要がある旨の指摘があった。 b 生活扶助基準の設定及び算定方法について現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており、また、算定については、世帯人員数分を単純に足し上げて算定される第1類費(個人消費部分)と、 b 生活扶助基準の設定及び算定方法について現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており、また、算定については、世帯人員数分を単純に足し上げて算定される第1類費(個人消費部分)と、世帯規模の経済性、いわゆるスケールメリットを考慮 し、世帯人員数に応じて設定されている第2類費(世帯共同消費部分)とを合算する仕組みとされているため、世帯人員別に見ると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない。このため、特に次の①から③の点について改善が図られるよう、設定及び算定方法について見直しを検討する必要がある。なお、これらの点は、いずれも 平成15年中間とりまとめにおいても指摘されているところである。 ① 多人数世帯基準の是正第2類費の構成割合及び多人数世帯の換算率に関する見直しのほか、世帯規模の経済性を高めるような設定等について検討する必要がある。 ② 単身世帯基準の設定 単身世帯の生活扶助基準についても、多人数世帯の基準と同様、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっておらず、保護受給世帯の7割は単身世帯が占めていることや、近年、高齢化の進展や扶養意識の変化に伴って高齢単身世帯の増加が顕著となっており、今後もさらにその傾向が進むと見込まれることなどの事情に鑑み、 単身世帯については、一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが必要である。 ③ 第1類費の年齢別設定の見直し人工栄養費の在り方も含めた0歳児の第1類費や、第1類費の年齢区分の幅の拡大などについても見直しが必要である。 (以上につき、乙A4、13)⑷ 生活扶助基準検討会の設置及び平成19年検証ア平成19年検証に至る経緯等 類費の年齢区分の幅の拡大などについても見直しが必要である。 (以上につき、乙A4、13)⑷ 生活扶助基準検討会の設置及び平成19年検証ア平成19年検証に至る経緯等専門委員会による平成16年報告書において、全消調査等を基に5年に1度の頻度で生活扶助基準の定期的な検証を行う必要がある旨が指摘された ことに加え、平成18年7月に閣議によって決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」において、生活扶助基準について、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直し及び級地の見直しに早急に着手し、平成20年度には確実に実施すべきである旨定められたことなどを踏まえ、平成19年10月19日には、級地を含む生活扶助基準の全体の見直しについ て専門的な分析及び検証を行うことを目的として、5名の学識経験者を構成員とする生活扶助基準検討会が設置された(乙A4、14の1・2)。 生活扶助基準検討会は、平成19年10月19日から同年11月30日までの間、計5回にわたり、平成16年報告書における指摘を踏まえ、定期的な検証のほか、生活扶助基準に係る課題として残されていた項目(生活扶助 基準の水準の妥当性、体系の妥当性、地域差の妥当性等)について検討を重 ねた上で、同月30日付けで、その最終的な検討の結果を平成19年報告書に取りまとめた(乙A5)。 イ平成19年報告書の概要は、次のとおりである。 平成19年検証における主な検討項目は、生活扶助基準の①水準の妥当性(生活扶助基準の水準につき、保護を受けていない低所得世帯における消費 実態との均衡が適切に図られているかどうかに関する評価及び検証)、②体系の妥当性(第1類費と第2類費の合算によって算定される生活扶助基準額が消費実態を反映し 受けていない低所得世帯における消費 実態との均衡が適切に図られているかどうかに関する評価及び検証)、②体系の妥当性(第1類費と第2類費の合算によって算定される生活扶助基準額が消費実態を反映しているかどうかに関する評価及び検証)、③地域差の妥当性(現行の級地制度においては、最も高い級地と最も低い級地の生活扶助基準額の較差が22.5%となっているが、これが地域間における生活水準 の差を反映しているかどうかに関する評価及び検証)等である。 平成19年検証においては、生活扶助基準の評価及び検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全消調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別等の様々な角度から詳細に分析することが適当であるとの観点から、それぞれの検討項 目について、直近の(平成16年)全消調査の結果等を用いて、主に統計的な分析を基に、専門的、かつ客観的に評価及び検証を実施した。上記の各検討項目に係る評価及び検証の結果は、次のからのとおりである。 生活扶助基準の水準について保護受給世帯のうち平成16年報告書において比較検討の対象とされ た夫婦子1人の勤労3人世帯(標準世帯)は5.5%にすぎないことを踏まえ、標準世帯だけではなく、保護受給世帯の74.2%を占める単身世帯にも着目して評価及び検証を実施した結果は、次のaからcのとおりである。 a 夫婦子1人(有業者あり)世帯の第1・十分位における生活扶助相当 支出額は、世帯当たり14万8781円であったのに対し、当該世帯の 平均の生活扶助基準額は、世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高めであった。第1・五分位で比較すると、前者が15万3607円、後者が15万0840円であり、生 、当該世帯の 平均の生活扶助基準額は、世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高めであった。第1・五分位で比較すると、前者が15万3607円、後者が15万0840円であり、生活扶助基準額がやや低めとなっている。 b 単身世帯(60歳以上の場合)の第1・十分位における生活扶助相当 支出額は、世帯当たり6万2831円であったのに対し、当該世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当たり7万1209円であり、生活扶助基準額が高めであった。第1・五分位で比較すると、前者が7万1007円、後者が7万1193円であり、均衡した水準となっている。 c 生活扶助基準額は、これまで第1・十分位の消費水準と比較すること が適当とされてきたが、①第1・十分位の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること、②第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較してもおおむね遜色ない状況にあることから、今回の検証にお いてこれを変更する理由はない。ただし、標準世帯については、その第1・十分位における消費水準は第3・五分位の消費水準の7割に達しているが、単身世帯(60歳以上)については、その割合が5割(第1・五分位でみると約6割)にとどまっている点に留意する必要があるほか、これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある。 生活扶助基準の体系について生活扶助基準の体系に関する評価及び検証に当たっては、世帯構成等が異なる保護受給世帯の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である。 消費実態との比較にお 世帯構成等が異なる保護受給世帯の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である。 消費実態との比較において世帯人員別に見た課題として、平成16年報 告書が指摘した事項(①人数が増すにつれて第1類費の比重が高くなり、割高となっていること、②単身世帯について、消費実態を反映したものとなっておらず、第1類費と第2類費に区分する実質的意味が乏しいことも踏まえ、別途の基準を設定することについて検討することが望ましいこと)を踏まえ、平成19年検証においては、平成17年度からの生活扶助基準 の見直し(後記⑸イ参照)がされた後の世帯人員別及び年齢階級別の生活扶助基準額について、改めて消費実態を反映しているか評価及び検証を実施した結果は、次のaからdのとおりである。 a 世帯人員別の生活扶助基準額の水準については、生活扶助基準額を第1・五分位における世帯人員別の生活扶助相当支出額と比較すると、4 人世帯及び5人世帯ではいずれも生活扶助基準額が生活扶助相当支出額に比べて相対的にやや高めとなっており、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態が見られる。 b 年齢階級別の基準額の水準については、生活扶助基準額を単身世帯の 第1~第3・五分位における年齢階級別の生活扶助相当支出額と比較すると、20~39歳及び40~59歳では生活扶助基準額が生活扶助相当支出額に比べて相対的にやや低めとなっている一方、70歳以上では生活扶助基準額が生活扶助相当支出額より相対的にやや高めであるなど、消費実態からややかい離している。 c 現在の生活扶助基準は、第1類費と第2類費に分けられているが、実際の消費実態 上では生活扶助基準額が生活扶助相当支出額より相対的にやや高めであるなど、消費実態からややかい離している。 c 現在の生活扶助基準は、第1類費と第2類費に分けられているが、実際の消費実態がこうした考え方に当てはまるか評価及び検証を行ったところ、個人的経費である第1類費相当支出額についても世帯人員によるスケールメリットが見られ、また、世帯共通経費である第2類費相当支出額についてもその世帯員の年齢階級別で差が見られた。したがって、 第1類費と第2類費に区分された生活扶助基準額が実際の消費実態を 反映しているとはいえない状況となっているといえる。 このため、世帯人員別のスケールメリットを消費実態に合わせて反映させるためには、必ずしも第1類費と第2類費に区分する必要性はないと考えられる。 d 生活保護制度においては、しばしば「標準世帯」が取り上げられてき ており、昭和61年以降は、「標準3人世帯(33歳、29歳、4歳)」が標準世帯とされているが、この「標準世帯」については、実質的には生活扶助基準の改定に際して生活扶助基準の基軸となる世帯として利用するという意味合いが強いところ、かかる「生活扶助基準の基軸」としての役割に関していえば、仮に、生活扶助基準の体系が消費実態と整 合性が取れているのであれば、必ずしも上記の標準世帯を基軸として生活扶助基準額を設定する方式をとる必要はなく、また、要保護者の保護の基準の設定という点では、複数人員世帯より単身世帯に着目して生活扶助基準を設定することが可能である。 生活扶助基準の地域差について 現行の級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の消費実態と、直近(平成16年)の消費実態を比較すると、地域差が縮小する傾向がみられ、世帯類型、年齢階級 扶助基準の地域差について 現行の級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の消費実態と、直近(平成16年)の消費実態を比較すると、地域差が縮小する傾向がみられ、世帯類型、年齢階級等で実際の生活様式は異なるとしても、平均的には、現行の地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差は縮小してきている。 (以上につき、乙A5)⑸ 平成25年検証に至るまでの生活扶助基準の改定の状況等ア平成16年度まで厚生労働大臣は、昭和59年4月に生活扶助基準を改定する方式として水準均衡方式を採用して以降、平成12年度までは、政府経済見通しにおける 民間最終消費支出の伸び等を踏まえ、毎年、生活扶助基準額(標準世帯の生 活扶助基準額)を増額する旨の改定をしたが、平成13年度及び平成14年度においては前年度の生活扶助基準額のまま据え置くこととし、平成15年度及び平成16年度においては、生活扶助基準額を若干減額する(それぞれ前年度の99.1%、99.8%。なお、生活扶助基準額の過去の改定率については、1級地-1における標準世帯で表されるのが通常である。以下同 じ。)旨の改定をした(乙A10)。 イ平成17年度から平成19年度まで平成17年度から平成19年度までの標準世帯の生活扶助基準額について、厚生労働大臣は、民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、それぞれ前年度の生活扶助基準 額を据え置くこととした(乙A10、70~72)。 なお、平成16年報告書において、多人数世帯における生活扶助基準の是正の必要性が指摘されていたことを受け、平成17年度において、一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るため、①第1類費については、世帯単位での個人別の 告書において、多人数世帯における生活扶助基準の是正の必要性が指摘されていたことを受け、平成17年度において、一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るため、①第1類費については、世帯単位での個人別の額の合算額に、4人世帯の場合には0.95、5人以上世帯の場 合には0.90の各逓減率を掛ける措置が3年間で段階的に導入され、②第2類費についても、4人以上の世帯の基準額を抑制する旨の生活扶助基準の改定がされている(乙A7の3)。 ウ平成20年度から平成25年度まで平成19年報告書により、当時の生活扶助基準の水準が、一般低所得世帯 (標準世帯における第1・十分位)の消費実態と比べて高いという結果が得られたことから、厚生労働大臣は、生活扶助基準の水準を一般国民の消費実態に適合したものとする見直しについて検討を行ったが、当時の原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため、平成20年度は生活扶助基準額を据え置くこととし、生活扶助基準の見直しは平成21年度の予算を編成す る過程で適切に対応することとした(乙A10、15、73、74)。 しかしながら、平成21年度の予算を編成する時点においても、平成20年2月以降の生活関連物資を中心とした物価の上昇が国民の家計へ大きな影響を与えていたことに加え、「100年に1度」といわれる同年9月以降の世界的な金融危機(いわゆるリーマン・ショック)が実体経済へ深刻な影響を及ぼしており、国民の将来に対する不安が高まっている状況にあると考 えられたことから、厚生労働大臣は、当時の社会経済情勢に鑑み、平成21年度についても、生活扶助基準額の見直しは行わずに、これを据え置くこととし、その後も、国民生活の安心が優先されるべき状況にあるなどとして保護基準が据え置かれ続けた結果、次の5年後の検 鑑み、平成21年度についても、生活扶助基準額の見直しは行わずに、これを据え置くこととし、その後も、国民生活の安心が優先されるべき状況にあるなどとして保護基準が据え置かれ続けた結果、次の5年後の検証(平成25年検証)の結果を踏まえた本件保護基準改定に至るまで、平成19年報告書における検証 の結果を踏まえた生活扶助基準の見直しが行われない状況が続いた(乙A7の1、乙A10、74~77)。 ⑹ 基準部会の設置及び平成25年検証に至る経緯ア各種経済指標の推移等平成20年9月のリーマン・ショック後の国民生活に関する主要な経済指 標の推移は、以下の表のとおりである。なお、「一般勤労世帯の賃金」欄については、事業所規模5人以上の調査産業計の一人平均月間現金給与総額の増加率を、「消費者物価上昇率」欄については、総務省CPI(消費者物価指数(全国・総合))の上昇率を、「家計消費支出の推移」欄については、全国勤労者世帯の家計消費支出の増加率(名目値)をそれぞれ指し、プラスの値は それらの値が前年比で上昇したことを、マイナスの値はそれらの値が前年比で下落したことを、それぞれ示すものである(乙A11)。 完全失業率一般勤労世帯の賃金消費者物価上昇率家計消費支出の推移平成20年4.0%-0.3%+1.4%+0.5%平成21年5.1%-3.9%-1.4%-1.8% 平成22年5.0%+0.5%-0.7%-0.2%平成23年4.6%-0.2%-0.3%-3.0%平成24年4.3%-0.7%0.0%+1.6%イ平成21年全消調査平成22年12月24日に総務省統計局が公表した、平成21年全消調査における2人以 .0%平成24年4.3%-0.7%0.0%+1.6%イ平成21年全消調査平成22年12月24日に総務省統計局が公表した、平成21年全消調査における2人以上の世帯の家計の収支並びに貯蓄及び負債に関する結果によれば、平成21年の2人以上の世帯の1か月平均消費支出は、平成16年全消調査におけるものに比べ、名目で6.0%(年率1.2%)の減少、消 費者物価の変動を除いた実質で6.1%(年率1.3%)の減少となっていた(乙A110)。 ウ基準部会の設置及びその検討平成16年報告書において、生活扶助基準の定期的な検証の必要性が指摘されたことや、その後の平成19年検証における指摘等を踏まえ、平成23 年2月、これらに引き続いて学識経験者による専門的かつ客観的な検証を行うため、社会保障審議会の下に新たな常設の部会として、基準部会が設置された。基準部会は、8人の学識経験者によって構成され、平成23年4月以降、合計13回にわたり部会を開催するなどして所要の検証を行い(平成25年検証)、平成25年1月18日付けで、平成25年報告書を取りまとめ た。(乙A6、16)⑺ 平成25年検証の概要等平成25年報告書の概要は、次のとおりである。 ア検証の方針と検証の方法検証の方針と検証の概要 基準部会は、平成21年全消調査の特別集計等のデータを用いて、国民の消費動向、特に一般低所得世帯の生活実態を勘案しながら、生活扶助基準と一般低所得者世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否か 等について、検証を行うこととした。この際、平成16年報告書において、第1類費と第2類費を合算する仕組みを含む体系の設定や算定方法について見直しを検討する必要があると指摘され(前記⑶イb参照 等について、検証を行うこととした。この際、平成16年報告書において、第1類費と第2類費を合算する仕組みを含む体系の設定や算定方法について見直しを検討する必要があると指摘され(前記⑶イb参照)、さらに、平成19年報告書においても、生活扶助基準の評価及び検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのために は、全消調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別等の様々な角度から詳細に分析することが適当であると指摘されたこと(前記⑷イ参照)を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に生活扶助基準額と消費実態のかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った。 具体的には、生活保護制度において保障すべき健康で文化的な最低限度の生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものとされてきたことから、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として第1・十分位を設定し、第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出額を用いて様々な世帯構成に展開するための指数(消費実態の指数)を算 定した。その上で、様々な世帯構成の生活扶助基準額を算定する際に基本となる年齢、世帯人員及び地域別の生活扶助基準額が第1・十分位の消費実態を十分反映しているかについてより詳細な検証を行うことにした。その際、仮に第1・十分位の全ての世帯が保護を受けた場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員(世帯人数)体系 及び級地の生活扶助基準額への影響を評価する方法を採用した。 平成25年検証においては、その一部に統計的な分析手法である回帰分析を採用したが、その理由は、①全消調査の調査客体にはそもそも10代以下の単身世帯がほとんどいないため、10代以 る方法を採用した。 平成25年検証においては、その一部に統計的な分析手法である回帰分析を採用したが、その理由は、①全消調査の調査客体にはそもそも10代以下の単身世帯がほとんどいないため、10代以下の消費を正確に計測することができないという限界があったこと、②今回の検証結果の妥当性を 補強するため、回帰分析を用いた結果とおおむね遜色がないかどうかを確 認するとしたことによるものである。 検証に使った統計データについて平成25年検証においては、国民の消費実態を世帯構成別に細かく分けて分析する必要があるため、平成21年全消調査の個票データを用いた。 なお、基準部会は、前記のとおり、平成25年検証において第1・十 分位の世帯の生活扶助相当支出額を用いて様々な世帯構成に展開するための指数を算定しているが、その理由は、以下の①から⑥のとおりである。 すなわち、①生活扶助基準を国民の健康で文化的な最低限度の生活水準として考えた場合、指数を全分位の所得階層(全世帯)あるいは中位所得階層(第3・五分位)等から算定することも可能であるが、これまでの検 証にならい、保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証においては現実的であると判断したこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜 色なく充足されている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、高所得階層を除くその他の十分位の傾向を見ても等しく減少しており、特に第1・十分位の収入が減少してい 層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、高所得階層を除くその他の十分位の傾向を見ても等しく減少しており、特に第1・十分位の収入が減少しているわけではないこと、⑤OECD(経済協力開発機構。以下同じ。)の国際的基準によれば、等価可処 分所得(世帯の可処分所得をスケールメリットを考慮して世帯人員数の平方根で除したもの)の中位置(全データの真中の値)の半分に満たない世帯は、相対的貧困層にあるとされるところ、平成21年全消調査の結果によれば、第1・十分位に属する世帯の大部分は、上記のOECDの基準によれば、相対的貧困層以下にあることを示していること、⑥分散分析等の 統計的な手法により検証したところ、各十分位間のうち、第1・十分位と 第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられることである。 検証の手法年齢階級別の生活扶助基準額の水準については、まず、年齢階級別に設定されている生活扶助基準の第1類費について、異なる年齢階級間の比率 (以下「年齢階級指数」という。)につき、消費実態と比べてどれほどのかい離があるかを統計学的分析手法である回帰分析を採用して検証した。 分析に際しては、スケールメリットが最大に働く場合(単純に世帯年収に着目)と最小に働く場合(1人当たりの世帯年収に着目)のそれぞれの想定に応じた2種類の第1・十分位を設定し、それぞれを用いて算定され た年齢階級指数の平均値を採用した。 世帯人員別の生活扶助基準額の水準については、第1類費相当支出額及び第2類費相当支出額ごとに、各世帯人員別の平均消費水準を指数化し(単身世帯を1とする。以下「世帯人員指数」という。)、現行の生活扶助 帯人員別の生活扶助基準額の水準については、第1類費相当支出額及び第2類費相当支出額ごとに、各世帯人員別の平均消費水準を指数化し(単身世帯を1とする。以下「世帯人員指数」という。)、現行の生活扶助基準額を同様に指数化したものと比較した。なお、第1類費相当支出額の スケールメリットについては、年齢階級指数を用いて、世帯人員全員が実際の年齢にかかわらず平均並みの消費をする状態に補正することにより年齢の影響を除去し、世帯人員による影響のみを評価できるようにした。 生活扶助基準の地域差についても、世帯人員別の検証と同様に、集計データより平均値を求め、各級地別に1人当たりの生活扶助相当支出額の平 均消費水準を指数化したもの(1級地-1を1とする。以下「級地指数」という。)と、現行の生活扶助基準額を同様に指数化したものとを比較した。なお、指数化に当たっては、第1類費相当支出額については上記の世帯人員体系の検証と同様に年齢の影響を除去するとともに、世帯人員指数で第1類費相当支出額及び第2類費相当支出額の合計の消費を調整する ことにより世帯人員数による消費水準の相違の影響を除去し、地域差によ る影響のみを評価することができるようにした。 イ検証の結果年齢階級別(第1類費)の生活扶助基準額の水準0~2歳の生活扶助相当支出額を1としたときの各年齢階級指数は、生活扶助基準額では、0~2歳が0.69、3~5歳が0.86、6~11 歳が1.12、12~19歳が1.37、20~40歳が1.31、41~59歳が1.26、60~69歳が1.19、70歳以上が1.06であるのに対し、生活扶助相当支出額では、同じ順にそれぞれ1.00、1. 03、1.06、1.10、1.12、1.23、1.28、1.08となっており、生活扶助基準額 が1.19、70歳以上が1.06であるのに対し、生活扶助相当支出額では、同じ順にそれぞれ1.00、1. 03、1.06、1.10、1.12、1.23、1.28、1.08となっており、生活扶助基準額による年齢階級指数と第1・十分位の消費実 態による年齢階級指数を比べると、各年齢間の年齢階級指数にかい離が認められた。 世帯人員別(第1類費及び第2類費)の生活扶助基準額の水準第1類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員指数は、生活扶助基準額では、単身世帯が0.88、2人世帯が1. 76、3人世帯が2.63、4人世帯が3.34、5人世帯が3.95となっているのに対し、生活扶助相当支出額では、同じ順にそれぞれ、1. 00、1.54、2.01、2.34、2.64となっており、第1類費における生活扶助基準額による世帯人員指数と第1・十分位の消費実態による世帯人員指数とを比べると、世帯人員が増えるにつれて指数のかい離 が拡大する傾向が認められた。 同様に、第2類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員指数は、生活扶助基準額では、単身世帯が1.06、2人世帯が1.18、3人世帯が1.31、4人世帯が1.35、5人世帯が1.36となっているのに対し、生活扶助相当支出額では、同じ順にそれ ぞれ、1.00、1.34、1.67、1.75、1.93となっており、 第2類費における生活扶助基準額による世帯人員指数と第1・十分位の消費実態による世帯人員指数とを比べると、世帯人員が増えるにつれて指数のかい離が拡大する傾向が認められた。 級地別の生活扶助基準額の水準1級地-1の生活扶助相当支出額を1としたときの各級地指数は、生活 扶助基準額では、1級地-1が1.02、1級地 れて指数のかい離が拡大する傾向が認められた。 級地別の生活扶助基準額の水準1級地-1の生活扶助相当支出額を1としたときの各級地指数は、生活 扶助基準額では、1級地-1が1.02、1級地-2が0.97、2級地-1が0.93、2級地-2が0.88、3級地-1が0.84、3級地-2が0.79となっているのに対し、生活扶助相当支出額では、それぞれ、1.00、0.96、0.90、0.90、0.87、0.84となっており、生活扶助基準額による級地指数と第1・十分位の消費実態によ る級地指数とを比べると、消費実態の地域差の方が小さくなっている。 年齢・世帯人員及び地域の影響を考慮した場合の水準前記からまでの検証の結果を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の指数を反映した場合の影響は、次のとおりとなった。 例えば、現行の生活扶助基準額(第1類費、第2類費及び冬季加算。子 どもがいる場合は児童養育加算、1人親世帯は母子加算をそれぞれ含む。)と検証の結果を完全に反映した場合の平均値を個々の世帯の構成ごとに見ると、夫婦と18歳未満の子1人世帯では、年齢による影響が現行の生活扶助基準額に比べて-2.9%、世帯人員による影響が-5.8%、地域による影響が+0.1%でこれらを合計した影響が計-8.5%となっ た。同様に、夫婦と18歳未満の子2人世帯では順に-3.6%、-11. 2%、+0.2%、計-14.2%となり、60歳以上の単身世帯では、順に+2.0%、+2.7%、-0.2%、計+4.5%となり、ともに60歳以上の高齢夫婦世帯では順に+2.7%、-1.9%、+0.7%、計+1.6%となり、20~50代の若年単身世帯では順に-3.9%、 +2.8%、-0.4%、計-1.7%となり、母親と18歳未満の子1 世帯では順に+2.7%、-1.9%、+0.7%、計+1.6%となり、20~50代の若年単身世帯では順に-3.9%、 +2.8%、-0.4%、計-1.7%となり、母親と18歳未満の子1 人の母子世帯では順に-4.3%、-1.2%、+0.3%、計-5.2%となった。 このように、世帯員の年齢、世帯人員又は居住する地域の組合せにより、各世帯への影響は様々である。 ウ平成25年報告書には、以上のような記載に加え、「厚生労働省において 生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。なお、その際には現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。」との記載もある。 エ平成25年検証の結果に関する留意事項平成25年検証において試みた検証の手法は、平成19年報告書において指摘があった年齢階級別、世帯人員別及び級地別に、生活扶助基準の展開と一般低所得世帯の消費実態との間にどの程度かい離が生じているかを詳細に分析したものである。これにより、個々の保護受給世帯を構成す る世帯員の年齢、世帯人員又は居住する地域の様々な組合せによる生活扶助基準の妥当性について、よりきめ細やかな検証が行われたことになる。 しかし、年齢、世帯人員(世帯人数)の体系又は居住する地域の組合せによる基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしても、なお、その値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯の構成によって 様々に異なる差が生じ得る。こうした差は、金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なり、かつ、消費に影響を及ぼす極 の値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯の構成によって 様々に異なる差が生じ得る。こうした差は、金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なり、かつ、消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生じると考えられる。しかし、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、また、特定の世帯の構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて 少数となるといった統計上の限界があることなどから、全ての要素につい て分析及び説明することができるに至らなかった。 平成25年検証において採用した年齢、世帯人員及び地域の影響を検証する手法についても、委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い1つの妥当な手法である一方、これまでの検証の方法との継続性、整合性にも配慮したものであることから、これが唯一の手法ということでもない。 さらに、基準部会の議論においては、国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり、将来の生活扶助基準を検証する手法を開発していくことが求められる。今後、政府部内において具体的な生活扶助基準の見直しを検討する際には、今回の検証の結果を考慮しつつも、同時に検証の方法について一定の限界があることに留意する必 要がある。 全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合の推移を見ると、中位所得階層である第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合がともに減少傾向にあり、その動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準の検証の際に参照されてき た一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。 とりわけ、第1・十分位の者にとっては、全所得階層における年間収入総 しつつ、これまで生活扶助基準の検証の際に参照されてき た一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。 とりわけ、第1・十分位の者にとっては、全所得階層における年間収入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても、その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。 また、現実には、第1・十分位の階層には、保護基準以下の所得の水準 で生活している者も含まれることが想定される点についても、留意が必要である。 今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在保護を受けている世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。 さらに、生活扶助基準額の見直しによる影響の実態を把握し、今後の検 証の際には参考にする必要がある。 (以上につき、乙A6)⑻ 本件保護基準改定の実施ア厚生労働大臣は、平成25年検証の結果に基づき、第1・十分位の世帯の消費実態と生活扶助基準の年齢、世帯人員及び居住地域別の較差を是正する ための改定(ゆがみ調整)をするとともに、近年、デフレ傾向が続いてきた中で生活扶助基準額が据え置かれてきたことに鑑み、消費者物価指数の動向を勘案した改定(デフレ調整)をすることとした。なお、厚生労働大臣は、本件保護基準改定のうちゆがみ調整をすることによって生じる財政効果を平成25年度から平成27年度までの3年間で約90億円と見積もった。 (甲A7、弁論の全趣旨)内閣は、平成25年1月29日、本件保護基準改定を反映した後の保護に要する費用のうち国の負担すべき部分等を含む平成25年度のいわゆる政府予算案を閣議により決定し、同年2月28日、これを国会に提出して、同 は、平成25年1月29日、本件保護基準改定を反映した後の保護に要する費用のうち国の負担すべき部分等を含む平成25年度のいわゆる政府予算案を閣議により決定し、同年2月28日、これを国会に提出して、同日、衆議院予算委員会において、同予算案の審査が開始された。そして、同 年5月15日、上記の政府予算案のとおり、平成25年度の予算は成立した。 (乙A18、43)イ厚生労働大臣は、平成25年5月16日、平成25年告示を発出することにより、保護基準を改定した(本件保護基準改定)上で、本件保護基準改定による改定がされた後の保護基準を同年8月1日から適用した。(乙A1、 3)⑼ 本件保護基準改定の内容等ア本件保護基準改定は、具体的には、改定する前の保護基準について、①まず、平成25年検証の結果に基づくゆがみ調整を実施し、②ゆがみ調整をした後の生活扶助基準額に消費者物価指数の近年の動向を勘案したデフレ調 整を実施した上で、③激変緩和措置(前提事実⑶イ)を講ずることにより、 保護基準を改定した後の生活扶助基準額を算定し、平成25年から平成27年までの3年間にわたって、生活扶助基準の内容をこれに沿って段階的に改定するもののうち、初回に実施されたものであり、これらの概要は以下のとおりである。 イゆがみ調整 ゆがみ調整は、平成25年検証の結果を踏まえ、生活扶助基準について、第1・十分位の世帯の消費実態と生活扶助基準の年齢、世帯人員及び居住地域別の較差を是正するものである。 すなわち、平成25年検証においては、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準のそれぞれについて、第 1・十分位の全ての世帯が保護を受けたと仮定した場合における1世帯当たりの平均受給額が不変となるように 別、世帯人員別及び級地別に、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準のそれぞれについて、第 1・十分位の全ての世帯が保護を受けたと仮定した場合における1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして指数化しているところ、本件保護基準改定をするに当たっては、平成25年検証によって判明した、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の生活扶助基準額による各指数の分布と一般低所得世帯の消費実態による各指数の分布との間のかい離につき、生活 扶助基準の「展開のための指数」に反映することで、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ったものである。 もっとも、ゆがみ調整をするに当たっては、平成25年検証の結果(かい離)をそのまま生活扶助基準の改定に反映させるのではなく、上記の結果のうちの2分の1のみを当該改定に反映させる「2分の1処理」が行わ れている。 ゆがみ調整によって、第1類費の基準額について、各年齢階級間の差を小さくし、また、第1類費の基準額に係る逓減率(世帯人員が1人増加するごとに第1類費の基準額の合計額に乗ずる割合)について、世帯人員の増加に応じた逓減の割合を大きくするとともに、第2類費の基準額につい て、世帯人員の増加に応じた世帯人員別の基準額の増額の幅を大きくし、 さらに、第1類費及び第2類費の各基準額について、それぞれ各級地間の基準額の差を小さくした(乙A17)。 なお、本件保護基準改定においては、平成25年検証の結果を踏まえ、期末一時扶助につき、世帯人員数が増えると単純にその世帯人員数倍していた従前の仕組みを見直して、世帯人員数ごとに世帯規模の経済性(スケ ールメリット)を考慮した基準額を定めることとされ、さらに、勤労控除については、基礎控除における全額控除となる水準を8000円から1万5000円に引き 、世帯人員数ごとに世帯規模の経済性(スケ ールメリット)を考慮した基準額を定めることとされ、さらに、勤労控除については、基礎控除における全額控除となる水準を8000円から1万5000円に引き上げ、控除率の逓減措置を廃止して一律10%に見直すこととされ、併せて、特別控除については廃止することとする旨の改定も行われた(乙A16、17)。 ウデフレ調整デフレ調整は、平成20年以降、生活扶助基準額が見直されていない一方、デフレ傾向が続いていることを踏まえ、客観的な経済指標である物価を勘案して生活扶助基準額の見直しをするものである(甲A7・24頁)。 すなわち、総務省から公表されている消費者物価指数(総務省CPI)を 基に、全ての消費品目から非生活扶助相当品目を除いて算定した消費者物価指数(生活扶助相当CPI)の動向を勘案するとの方針に基づき、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率として算定された4. 78%(本件下落率。なお、その具体的な算定の方法は、後記⑿のとおりである。)を、ゆがみ調整をした後の生活扶助基準額に反映させる(同生活扶助 基準額に「1-0.0478(=0.9522)」を乗ずる)ことによりされたものである(甲A7・27~29頁、弁論の全趣旨)。 エ激変緩和措置厚生労働大臣は、平成25年報告書に記載された平成25年検証の結果に関する留意事項における指摘(前記⑺エ)を踏まえ、保護受給世帯に対する 激変緩和措置として、①平成25年から3年間をかけて段階的に生活扶助基 準の改定を実施する(すなわち、本件各保護基準改定がされる前の生活扶助基準額をA、本件各保護基準改定がされた後(平成27年)の生活扶助基準額をBとした場合、本件保護基準改定がされた後(平成25年)の生活扶助 を実施する(すなわち、本件各保護基準改定がされる前の生活扶助基準額をA、本件各保護基準改定がされた後(平成27年)の生活扶助基準額をBとした場合、本件保護基準改定がされた後(平成25年)の生活扶助基準額を「A×2/3+B×1/3」とし、平成26年における生活扶助基準の改定がされた後の生活扶助基準額を「A×1/3+B×2/3」とする 方法をとる(乙A17・27頁参照)。)とともに、②本件各保護基準改定がされることによる影響を一定程度に抑える観点から、本件保護基準改定がされる前の生活扶助基準額からの増減の幅は、±10%を超えないように調整することとした(乙A16、17)。 オ他の制度への影響を最小限度にするための対応 政府は、生活扶助基準を参考としている他の制度の影響については、それぞれの制度の趣旨や目的、実態を十分に考慮しながら、できる限りその影響が及ばないよう適切に対応する方針とし、また、各地方自治体に対しても、上記の方針の趣旨を理解した上で、適切に判断・対応するように求めるなどした(乙A18)。 ⑽ 平成29年検証の概要等ア基準部会は、平成28年5月から平成29年12月までの間、15回の部会を開催し、①生活扶助基準に関する検証、②有子世帯の扶助・加算に関する検証、③勤労控除及び就労自立給付金の見直し効果の検証、④級地制度に関する検証、⑤その他の扶助・加算に関する検証並びに⑥これまでの生活扶 助基準の見直しによる影響の把握を主な検討事項として議論を重ね、上記⑥の影響の把握を行った上で、上記①及び②を中心に、一定の検証の結果を取りまとめ、平成29年12月14日付けで、「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(乙A80。以下「平成29年報告書」という。)を公表した。 イ平成29年報告書の概要 中心に、一定の検証の結果を取りまとめ、平成29年12月14日付けで、「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(乙A80。以下「平成29年報告書」という。)を公表した。 イ平成29年報告書の概要は、次のとおりである。 これまでの基準見直しによる影響の把握(上記ア⑥) 本件各保護基準改定に伴う生活扶助基準額(生活扶助本体及び加算)の影響について、影響が生じた額の割合(生活扶助基準額が本件各保護基準改定がされる前のものと比べて減額された割合)を世帯類型別に見ると、①高齢者世帯では「-1%以上-2%未満」が約4割を占め、②母子世帯では「-6%以上-7%未満」が約4割を占め、③傷病者・障害者世帯及 びその他の世帯では「-1%以上-2%未満」が約3割を占めていた。特に母子世帯への影響は大きく、多人数の世帯についても影響が大きい傾向が見られた。 また、保護受給世帯と一般世帯における平成24年度から平成26年度にかけての各支出費目の比較については、支出割合が保護受給世帯と一般 世帯とで異なるものの、経年の支出割合の推移は大きな差が見られず、本件各保護基準改定による家計への影響を評価するまでには至らなかった。 生活扶助基準の水準の検証生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として相応しい所得階層の検証を行った上で、生活扶助基準の水準の検証を行うこととし、その対象と なるモデル世帯として、夫婦子1人世帯(親の年齢は65歳未満、子どもの年齢は18歳以下から構成される世帯)と高齢夫婦世帯(65歳以上の高齢者2人から構成される世帯)を設定した。 上記検証の結果、夫婦子1人世帯については、消費構造(固定的経費の支出割合)の変化に関する分析及び年収階級別の消費支出の変化(変曲点) に関する分析により得られたそれぞ る世帯)を設定した。 上記検証の結果、夫婦子1人世帯については、消費構造(固定的経費の支出割合)の変化に関する分析及び年収階級別の消費支出の変化(変曲点) に関する分析により得られたそれぞれの結果に係る各消費支出の金額はほぼ近似しており、さらには、これと従前から比較対象分位として参照してきた第1・十分位の平均消費支出も同等の水準となっている。これらを総合的に勘案すると、夫婦子1人世帯の生活扶助基準については、夫婦子1人世帯の第1・十分位を比較する対象とする所得階層と考えることが適 当である。そこで、現行の(本件各保護基準改定後の)生活扶助基準額と 第1・十分位の生活扶助相当支出額とを比較すると、両者はおおむね均衡していた。 一方、高齢夫婦世帯については、消費構造(固定的経費の支出割合)の変化に関する分析と、消費支出の変動(変曲点)に関する分析より得られたそれぞれの結果に係る各消費支出の金額にかい離が生じる結果となり、 これは、貯蓄を年収換算する方法等に何らかの課題があることに起因するものと考えられ、高齢夫婦世帯の年収階級別の分析の評価については課題が残る結果となった。 生活扶助基準の年齢、世帯人員及び級地別の検証年齢、世帯人員及び級地別に見た一般低所得世帯の消費実態との関係に ついては、夫婦子1人世帯を展開の基軸(モデル)と設定した上で、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に消費支出を回帰分析も用いて指数化し、現行の(本件各保護基準改定後の)基準額の指数とのかい離を検証したところ、世帯人員別の指数について実データによる場合と回帰分析による場合との結果に違いが生じた。この違いは、理論値を導き出すための回帰式 の立て方に起因するものと考えられるが、その原因等について十分に解明するには至らなかった データによる場合と回帰分析による場合との結果に違いが生じた。この違いは、理論値を導き出すための回帰式 の立て方に起因するものと考えられるが、その原因等について十分に解明するには至らなかった。 (以上につき、乙A80)⑾ 消費者物価指数についてア消費者物価指数の概要 一般に、「物価」とは、あらゆる商品の平均価格を指し、「物価指数」とは、物価の動きをある時点と比べてその変動を比率の形で表した数値を指す。そして、物価指数のうち、全国の世帯(消費者)が購入する財及びサービスの価格の変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定するものが「消費者物価指数」である。すなわち、消費者物価指数とは、家計の消費構造を 一定のもの(物価を測定する財及びサービスの種類及びその数量のことであ り、これを比ゆ的に「買い物かご」と称することがある。以下、消費者物価指数を算定する手法を論ずる場合に、「買い物かご」を上記と同様の意味において用いる。)に固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを指数値で示したものであり、我が国においては、総務省統計局が消費者物価指数を作成し、公表している(乙A25、33)。 なお、消費者物価指数は、国や地方自治体の経済施策における指標となっているほか、各種の法令に基づいて給付される公的年金の給付額の改定等においても広く用いられている(乙A25・4~5頁)。 イ消費者物価指数(総務省CPI)を算定する方法 指数参照時点及び価格参照時点 前記アのとおり、消費者物価指数は、ある基準となる時点の物価を100として、比較する時点(年)(以下「比較時」ということがある。)の物価の変化の割合を示すものであるから、消費者物価指数の算定においては、 アのとおり、消費者物価指数は、ある基準となる時点の物価を100として、比較する時点(年)(以下「比較時」ということがある。)の物価の変化の割合を示すものであるから、消費者物価指数の算定においては、比較の基準となる時点(指数を参照する時点)を定める必要があり、ここでいう、「物価指数を100とする基準となる時点」のことを「指数参照時 点」という。また、消費者物価指数は、前記アのとおり、家計の消費構造を一定のもの(買い物かご)に固定した上で、これに要する費用(価格)の変化を指数値で示すものであるから、その算定に当たっては、比較の基準となる価格を与える時点を定める必要があり、ここでいう、比較時の価格と比較される価格を与える時点(すなわち、価格比の分母となる価格を 与える時点)のことを「価格参照時点」という。(甲A186、乙A25・6~7頁、乙A85・741~742頁)指数品目消費者物価指数の算定においては、消費者が購入する全ての商品を網羅的にその対象とすることは現実的に困難であるから、家計の上で重要度の 高い商品を代表として選び、その価格を調査することとしている。このよ うに、調査の対象として選ばれた商品(品目)を「指数品目」といい、これは、世帯が購入する多種多様な財及びサービス全体の物価の変動を代表できるように、家計の消費支出の中で重要度が高いこと、価格変動の代表性があること、継続調査が可能であること等の観点から選ばれるものである。なお、総務省CPIにおいては、家計調査の集計結果を基に、上記の 観点から指数品目の選定が行われている。(乙A25・8~10頁)ウエイト消費者物価指数の算定においては、個々の指数品目の値動きを総合するに当たり、家計の消費支出全体、つまり、「買い物かご」全体に占めるそれ 目の選定が行われている。(乙A25・8~10頁)ウエイト消費者物価指数の算定においては、個々の指数品目の値動きを総合するに当たり、家計の消費支出全体、つまり、「買い物かご」全体に占めるそれぞれの指数品目に係る支出金額の割合を加味することとされているとこ ろ、このような割合のことを「ウエイト」といい(以下も同様の意味において用いる。)、その時点の支出が指数のウエイトとして使用される時点のことを「ウエイト参照時点」という(以下も同様の意味において用いる。)。 また、ウエイトを加味して平均することを「加重平均」という。 なお、総務省CPIを算定するに当たって用いられる指数品目別のウエ イトは、家計調査(後記⒀ア)の結果を基に計算されている。 (以上につき、乙A25・13~15頁、乙A85・741~742頁) 総務省CPIを算定する具体的な方法総務省が作成、公表している消費者物価指数(総務省CPI)は、以下の式のとおり、①指数品目の価格指数に、家計の消費支出全体に占める支 出額の割合である②ウエイトを乗じ、③それを合計した上で、ウエイトの総数で除することで算定される(乙A25・6~24頁)。 消費者物価指数=(①指数品目の価格指数×②ウエイト)の合計÷ウエイトの総数そして、上記の計算式における価格指数とウエイトは刻々と変化するも のであるところ、消費者物価指数の算定方法としては、どの時点のウエイ トをとるか、つまり、ウエイト参照時点をどこに置くかによって、複数のものが考案されており(乙A26・2頁)、国際労働機関(ILO)が作成したILOマニュアルにおいては、以下の指数(算定の方法)が紹介されている。 a ロウ指数 ロウ指数は、一般的な指数算式の1つであり、比較される2つの ・2頁)、国際労働機関(ILO)が作成したILOマニュアルにおいては、以下の指数(算定の方法)が紹介されている。 a ロウ指数 ロウ指数は、一般的な指数算式の1つであり、比較される2つの時点間において、一般に「買い物かご」と呼ばれる消費構造(物価を測定する財及びサービスの種類及びその数量)において、ある一定量の財又はサービスを購入するために要する全費用の割合の変化として指数を定義することで得られるものである。ラスパイレス指数やパーシェ指数等 は、ロウ指数の特別なケースとして位置付けられる点で、ある種のロウ指数であるとも説明することができる。なお、ウエイト参照時点については、基準時と比較時の間の1つを含むいつの時点でもよいとされている。(甲A123、乙A26)b ラスパイレス指数 ラスパイレス指数は、ロウ指数のうち、特にウエイト参照時点(「買い物かご」を固定する時点)を基準時(期首)とするものであり、その算定には、比較時において数量情報を調査する必要がないため、速報性に優れるとされている。また、ラスパイレス指数には、物価上昇率を過大評価する上方バイアスがあるとされている(甲A123、乙A26)。 c パーシェ指数パーシェ指数は、ロウ指数のうち、特にウエイト参照時点を比較時(期末)とするものであり、その算定には、経済の変化に応じて常に最新のウエイトが反映されるが、そのための調査コストが大きいとされている。 また、パーシェ指数には、物価上昇率を過小評価する下方バイアスがあ るとされている。(甲A123、乙A26) 総務省CPIのウエイト参照時点総務省CPIは、前記の各指数算式のうち、基準時をウエイト参照時点とするラスパイレス式を用いているが、時間の経過とともに消費生活の内容が 、乙A26) 総務省CPIのウエイト参照時点総務省CPIは、前記の各指数算式のうち、基準時をウエイト参照時点とするラスパイレス式を用いているが、時間の経過とともに消費生活の内容が変化することを踏まえ、基準時(ウエイト参照時点)を5年ごとに改定することとしており、具体的には、西暦年の末尾が0と5の年を基準 時として改定している。また、指数品目についても、同様の趣旨から、基準時を改定すると同時に併せて見直される(以下「品目改定」という。)こととなっており、平成22年(2010年)に行われた品目改定においては、平成17年(2005年)に行われた前回の品目改定がされた後の品目(以下「平成17年指数品目」という。)に28品目を追加するとと もに、22品目を廃止し、これにより、平成22年を基準時とする消費者物価指数の算定に用いる指数品目(以下「平成22年指数品目」という。)は588品目となった(乙A25・7~19頁、乙A33・7頁)。 ⑿ 生活扶助相当CPIの変化率(本件下落率)を算定する過程ア生活扶助相当CPIの概要 生活扶助相当CPIは、デフレ調整に係る検討の一環として、物価の変動(下落)により、保護受給世帯の可処分所得が実質的にどの程度増加したのかを検討することを目的に、厚生労働省が独自に算定した指数であって、その算定の方法は、総務省CPIと基本的には同様である(前記⑾参照)ものの、主として、①非生活扶助相当品目を除外している点に加え、②ウエイト 参照時点(かつ指数参照時点)を平成20年と平成23年の間に位置する平成22年とした点において、総務省CPIと算定方法が異なる(甲A7・29頁、弁論の全趣旨)。 イ生活扶助相当CPIを算出する具体的な過程平成20年生活扶助相当CPI 間に位置する平成22年とした点において、総務省CPIと算定方法が異なる(甲A7・29頁、弁論の全趣旨)。 イ生活扶助相当CPIを算出する具体的な過程平成20年生活扶助相当CPI 算定式は、以下のとおりである。なお、ここで用いられた指数品目は、 平成22年指数品目のうち平成20年においても総務省CPIを算定するに当たって指数品目とされていた品目(すなわち、平成20年総務省CPIは平成17年を基準年とするため、平成17年指数品目)から、非生活扶助相当品目を除いた485品目である。 (①平成17年指数品目から非生活扶助相当品目を除外したもの〔48 5品目〕の平成20年時点の各価格指数×②各品目ごとの平成22年ウエイト)の合計÷平成22年ウエイトの総数=646627.9÷6189≒104.5平成23年生活扶助相当CPI 算定式は、以下のとおりである。なお、ここで用いられた指数品目は、平成22年指数品目から非生活扶助相当品目を除いた517品目である。 (①平成22年指数品目から非生活扶助相当品目を除外したもの〔517品目〕の平成23年時点の各価格指数×②各品目ごとの平成22年ウエイト)の合計÷平成22年ウエイトの総数 =635973.1÷6393≒99.5ウ生活扶助相当CPIの変化率(本件下落率)前記イのとおり、ウエイト参照時点である平成22年を100として(つまり、指数参照時点を平成22年として)、平成20年生活扶助相当CPI は「104.5」と算定され、平成23年生活扶助相当CPIは「99.5」と算定されたことから、以下の計算式によって、本件下落率が算定された。 (①平成23年生活扶助相当CPI-②平成20年生活扶助相当CPI)÷③平成20年生活扶助相当CPI) 相当CPIは「99.5」と算定されたことから、以下の計算式によって、本件下落率が算定された。 (①平成23年生活扶助相当CPI-②平成20年生活扶助相当CPI)÷③平成20年生活扶助相当CPI)×100=(99.5 ― 104.5) ÷ 104.5 × 100 ≒-4.78(本件下落率) (以上につき、甲A7・29頁、乙A27、28、弁論の全趣旨)⒀ 消費状況等に関する調査及び統計ア家計調査総務省統計局が実施している家計調査は、国民生活における家計の収支の実態を把握するために、一般国民の家計上の支出、収入、貯蓄等を調査する 統計法上の基幹統計(統計法2条4項所定の国勢調査その他国の行政機関が作成する統計のうち総務大臣が指定する特に重要な統計のこと。以下同じ。)の1つであり、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっている。そして、その調査の対象となる世帯の選定については、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等が推計できるよう、層化三段抽出法が採られており、 これによって無作為に選定された全国約9000世帯を対象に、日々の収入・支出、購入数量を記載する家計簿等の調査票を配付してそれを回収し、集計することによって行われている。(乙A81)イ社会保障生計調査厚生労働省が実施している社会保障生計調査は、被保護者の生活実態を 明らかにし、保護基準の改定等の生活保護制度の企画運営等のために必要な基礎資料を得る目的で被保護者の家計の収支の状況を調査する一般統計調査(統計法2条7項所定の行政機関が行う基幹統計調査(同条6項所定の基幹統計の作成を目的とする統計調査のこと)以外の統計調査のこと。以下同じ。)であり、保護基準の改定等の生活保護制度の企画運営に用いられてい るも の行政機関が行う基幹統計調査(同条6項所定の基幹統計の作成を目的とする統計調査のこと)以外の統計調査のこと。以下同じ。)であり、保護基準の改定等の生活保護制度の企画運営に用いられてい るものである。その調査の対象となる保護受給世帯の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市から1ないし3自治体を選定し、その選定された自治体から合計約1100世帯を抽出することによって行われている。また、家計の収支の状況は、被保護者の生活実態を明らかにする観点から、食料費、住居費等の費目ごとの支出金額及び割 合として集計され、調査の手法としても、個別品目の消費支出の割合等を正 確かつ詳細に記載させるための措置は講じられていない。(乙A83) 2 本件各訴えのうち主位的請求に係る部分の適法性(本案前の争点)(争点⑴)について⑴ 原告らは、主位的請求として、本件各決定のうち、本件保護基準改定に基づいて保護の金額が減額となる部分の取消しを求めている。 ⑵ しかしながら、本件各決定は、生活保護法25条2項に基づき、本件各決定による変更前の生活扶助費の額を、本件保護基準改定に基づく生活扶助費の額に変更するものであって、本件各決定による変更前の生活扶助費の額を減額すること自体を内容とするものではない。すなわち、本件各決定は、本件保護基準改定に基づいて生活扶助費の額を改めて決定し、これに基づいて生活扶助費 を支給することをその内容とするものであって、結果的には、本件各決定がされる前の生活扶助費の額から本件保護基準改定によって減額となる部分を減額したのと同様の状況を生じさせる効果を有するものではあるものの、本件各決定自体は、従前の生活扶助に係る保護の決定において定められた生活扶助費の額の一部を減額 保護基準改定によって減額となる部分を減額したのと同様の状況を生じさせる効果を有するものではあるものの、本件各決定自体は、従前の生活扶助に係る保護の決定において定められた生活扶助費の額の一部を減額する趣旨のもの(すなわち、従前の保護の決定の一部のみを 取り消すもの)ではないというべきである。 ⑶ なお、原告らは、原告番号4につき、平成25年告示によって生活扶助費の額が減額となる部分と、勤労控除(基礎控除)として取り扱われる額が増額となる部分とは、明確に区別し得るものであって、可分であり、かつ、そのように解さなければ、憲法14条の平等原則に反し、不合理である旨主張するが、 前記⑵のとおり、本件各決定は、本件保護基準改定に基づいて生活扶助費の額を改めて決定し、これに基づいて生活扶助費を支給することとする趣旨のものであって、収入として認定される金額の算定に当たって考慮される勤労控除(基礎控除)を含め、一体として不可分な処分であるから、原告らの主張は、採用することができない。 ⑷ したがって、本件各訴えのうち主位的請求に係る部分は、存在しない処分の 取消しを求めるものというほかなく、不適法なものである。 3 本件保護基準改定をする旨の厚生労働大臣の判断にその有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるか(争点⑵-①)について⑴ 判断の枠組み等についてア判断の枠組みについて 憲法25条は、全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言する。しかし、かかる抽象的な概念を具体化するためには、国の財政事情を無視することができず、かつ、多方面にわたる高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断に基づいて立法することを必要とするものであるから、具 かる抽象的な概念を具体化するためには、国の財政事情を無視することができず、かつ、多方面にわたる高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断に基づいて立法することを必要とするものであるから、具体的にど のような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられているといえる。そして、個々の国民に対しては、同条の趣旨を実現するために制定された生活保護法が具体的な権利を賦与している。(以上につき、最高裁昭和39年(行ツ)第14号同42年5月24日大法廷判決・民集21巻5号1043頁(以下「朝日訴訟最高裁判決」という。)及び最 高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁(以下「堀木訴訟最高裁判決」という。)参照) 生活保護法によれば、同法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ(同法3条)、厚生労働大臣による保護基準の決定を規律する規定であ る同法8条2項は、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであるのみならず、これを超えないものでなければならない旨規定する。そして、これらの規定にいう「最低限度の生活」は、抽象的かつ相対的な概念であって、その時々における経済的・ 社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断及び決 定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。(以上につき、堀木訴訟最高裁判決参照) そ に当たっては、国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。(以上につき、堀木訴訟最高裁判決参照) そうすると、厚生労働大臣は、保護基準のうち生活扶助基準の改定につ いて、改定する必要性の有無や改定した後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否か等の判断に当たり、前記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有するものというべきである。 また、生活扶助基準の改定は、特に、それによって生活扶助費を減額す る旨の改定がされる被保護者との関係では、従前の生活扶助費が支給されることを前提として現に生活の設計を立てていた被保護者の期待的利益を喪失させる側面があることも否定し得ないから、厚生労働大臣は、生活扶助基準を改定する必要性を踏まえつつ、被保護者のこのような期待的利益にも可及的に配慮するため、当該改定をするための具体的な方法等につ いて、激変緩和措置の要否等を含め、前記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有するというべきである。 したがって、本件保護基準改定については、①保護基準を改定する必要があり、かつ、当該改定がされた後の保護基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の 判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手順における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があると認められる場合、又は②激変緩和措置等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の生活への影響等の観点からみて裁量権の範 められる場合、又は②激変緩和措置等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の生活への影響等の観点からみて裁量権の範 囲からの逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、 8条2項の規定に違反し、違法となるというべきである。(以上につき、老齢加算訴訟最高裁判決参照)そして、前記の判断の枠組みを前提に、厚生労働大臣がその有する裁量権に基づいてした本件保護基準改定をする旨の判断の適否について裁判所が審査を行うに当たっては、前記のとおり、生活扶助基準を改定す る前提となる最低限度の生活の需要に係る評価が専門技術的な考察に基づいた政策的判断であることや、基準生活費の額等については、各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて生活扶助基準と一般国民の消費実態との比較検討等がされ、それらに基づいて改定されてきた経緯等(認定事実⑴から⑸まで)に鑑みると、主としてゆがみ調整及びデフレ調整に よる生活扶助基準額を減額する旨の改定に至る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査されるべきものと解される。(以上につき、老齢加算訴訟最高裁判決参照)イ基準部会等の専門家による組織の関与の位置付けについて 本件保護基準改定については、ゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断は、認定事実⑻アのとおり、基準部会が作成した平成25年報告書に基づくものである点で、専門家による組織が関与してされた検証等の結果がその前提となっていると認められる一方、デフレ調整をすることや2分の1処理を始めとする激変緩和措置をとることに係る厚生労働大臣の判断は、上記 る点で、専門家による組織が関与してされた検証等の結果がその前提となっていると認められる一方、デフレ調整をすることや2分の1処理を始めとする激変緩和措置をとることに係る厚生労働大臣の判断は、上記 のような専門家による組織が関与してされた検証等を経ることなくされたものと認められる。そこで、厚生労働大臣がその有する裁量権に基づいてした本件保護基準改定に係る判断の審査において、上記の専門家による組織が関与してされた検証等の結果の有無をどのように評価すべきかが問題となる。 この点につき、確かに、政府は、生活保護法案が国会において審議され ていた当時より、保護基準の設定の前提となる「最低限度の生活」の基準につき、保護基準の性質等に鑑み、専門家による組織である社会保障制度審議会がした検討の結果を基礎として適切な措置を講ずるのが至当と考えている旨を答弁するなど(甲A85)、保護基準の設定につき、専門家による組織における検討を踏まえて行うことを想定していたことがうかが われ、また、本件保護基準改定がされるに至る以前の保護基準を改定する方式の決定に際しても、認定事実⑴及び⑵のとおり、厚生労働大臣は、生活保護専門分科会等の専門家による組織における検討の結果を踏まえて、累次判断してきており、専門家による組織が関与してされた検証等の結果は、厚生労働大臣がその有する裁量権に基づいてした保護基準の改定の要 否に係る判断の合理性を支えるための1つの手段又は要素として重要な役割を果たしてきたと評価することができる。 しかしながら、生活保護法は、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり、基準部会等の専門家による組織に諮問し、又はその意見を求めること等につき、特に規定を置いておらず、その関連法規にも、保護基準を改 定するに当た 法は、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり、基準部会等の専門家による組織に諮問し、又はその意見を求めること等につき、特に規定を置いておらず、その関連法規にも、保護基準を改 定するに当たり、専門家による組織が関与してされた分析及び検証を経ることが必要である旨の規定は見当たらない。そして、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会(前記第2の2⑷ア)の下に常設の部会として設置された基準部会についても、その設置の趣旨及び審議事項は、「保護基準の定期的な評価・検証」を行うこととされ(同エ)、保護基準の改定の 在り方や厚生労働大臣が将来に予定している保護基準の改定の当否等についての検証は、これに含まれていない。また、認定事実⑸ウのとおり、厚生労働大臣は、平成20年から平成24年までの間の水準均衡方式に基づく毎年度の生活扶助基準の改定においても、基準部会がした検証の結果である平成19年報告書の結果を踏まえて改定せず、従前の生活扶助基準 をそのまま据え置く旨の判断をするなど、厚生労働大臣は、本件保護基準 改定がされる以前の保護基準の改定においても、専門家による組織が関与してされた検証等の結果を踏まえつつも、その当時の社会経済情勢等の諸般の事情を総合的に勘案し、その専門技術的かつ政策的な見地から、その有する裁量権に基づき、保護基準の改定の要否及び改定する場合の内容に係る判断をしてきたと認められる。 以上によれば、上記のような生活保護法が立法された経緯や本件保護基準改定がされる以前の保護基準が改定された経過等の原告らが指摘する諸点を踏まえても、保護基準を改定するに先立って専門家による組織が関与してされた検証等の結果が存しないことをもって直ちに、生活保護法が厚生労働大臣に対して与えている保護基準を改定する際に行使 摘する諸点を踏まえても、保護基準を改定するに先立って専門家による組織が関与してされた検証等の結果が存しないことをもって直ちに、生活保護法が厚生労働大臣に対して与えている保護基準を改定する際に行使される専 門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が、一定の制約を受けるなどということはできず、専門家による組織が関与してされた検証等の結果は、飽くまで厚生労働大臣がした判断の合理性を支える1つの手段又は要素にとどまるものと解するのが相当であり、このことは、厚生労働大臣がした判断の合理性ひいては適法性を裁判所が審査する場合においても同様で あると解するのが相当である。 したがって、厚生労働大臣がした保護基準の改定に先立って基準部会等の専門家による組織が関与してされた検証等が行われていない場合であっても、これによって当該保護基準の改定が直ちに違法となるものではないのはもちろん、その判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとか、統計 等の客観的数値等の合理的関連性や専門的知見との整合性が欠けると推認されることにもならないから、厚生労働大臣がその有する裁量権に基づいてした本件保護基準改定に係る判断の適否を裁判所が審査するに当たっては、当該判断に先立って専門家による組織が関与したことの有無にかかわらず、前記アにおいて判示した審査基準に基づいて評価すべきものと 解するのが相当である。また、厚生労働大臣が、保護基準を改定した場合 において、当該改定に先立って専門家による組織が関与してされた検証等の結果が存しないときは、被告ないし国は、当該保護基準の改定につき、上記のような検証等が存する場合と比較して、より高度の合理的理由ないし改定を正当化する事由があることにつき積極的に説明すべき責任を負うとも解し難い。以上に反する原告らの主 当該保護基準の改定につき、上記のような検証等が存する場合と比較して、より高度の合理的理由ないし改定を正当化する事由があることにつき積極的に説明すべき責任を負うとも解し難い。以上に反する原告らの主張は、全て採用することができ ない。 ウ判断の枠組みに関するその余の原告らの主張について 原告らは、憲法25条から制度後退禁止原則が導かれることを前提に、被告ないし国は、本件保護基準改定につき、より高度の合理的理由ないし相当の正当化につき主張立証責任を負うというべきである旨主張する。 しかしながら、前記アのとおり、憲法25条は、全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言するものであって、同条1項は、個々の国民に対し、国に対する関係において具体的な権利を付与するものではなく、「最低限度の生活」に係る具体的な権利は、同条の規定の趣旨を実現するために制定さ れた生活保護法によって初めて個々の国民に対して与えられるものである。また、前記アのとおり、同項及び生活保護法の趣旨を実現するための同法における「最低限度の生活」は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断及び決定されるべきものであ り、これを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。 したがって、憲法25条1項及び2項も、一旦立法により上記の「最低限度の生活」に係る権利が具体化された場合であっても、上記の諸事情や これに対する評価の変更に伴い、当該具体的な権利の内容が権 したがって、憲法25条1項及び2項も、一旦立法により上記の「最低限度の生活」に係る権利が具体化された場合であっても、上記の諸事情や これに対する評価の変更に伴い、当該具体的な権利の内容が権利者に不利 益に変更される場合があることも、当然に予定しているものというべきであり、同条が制度後退禁止原則を定めたものと解することはできない。 よって、原告らの主張は、その前提を欠くものであって、採用することができない。 原告らは、社会権規約2条1項、9条、11条及び12条が制度後退禁 止原則を定めており、かかる社会権規約の条項を踏まえて憲法25条を解釈すれば、同条からも制度後退禁止原則を導くことができるとして、本件保護基準改定は、制度後退禁止原則ないしその趣旨に反する点で、厚生労働大臣が有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用に当たるなどと主張する。 しかしながら、社会権規約9条は「この規約の締約国は、社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。」と規定しているところ、これは、締約国において、社会保障についての権利が国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し、当該権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明し たものであって、個人に対し即時に社会保障についての具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。このことは、社会権規約2条1項が、締約国において「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」ことを求めていることからも明らかである。(以上、最高裁昭和60年(行ツ)第92号平 成元年3月2日第一小法廷判決・裁判集民事156号271頁参照)そして、社会権規 実現を漸進的に達成する」ことを求めていることからも明らかである。(以上、最高裁昭和60年(行ツ)第92号平 成元年3月2日第一小法廷判決・裁判集民事156号271頁参照)そして、社会権規約11条及び12条の解釈についても、社会権規約9条に係る上記の解釈と異にすべき理由は見いだせず、また、原告らが指摘する社会権規約委員会が採択した一般的意見についても、その内容が直ちに締約国を国際法上も国内法上も拘束すると解すべき根拠は見当たらな い。 そうすると、社会権規約が、原告らのいう制度後退禁止原則を定めていると解することはできないから、原告らの主張は、その前提を欠くものであって採用することができない。 原告らは、生活保護法8条2項が、保護基準を改定するに当たって考慮すべき事項を明確に規定していることからすれば、同項に規定された考慮 要素を考慮せずに保護基準が改定された場合には、それをもって直ちに同項違反となるほか、「国の財政事情」等の同項に規定された考慮要素以外の要素を独立した考慮要素として加味したり、同項に列挙された各要素に優先したりすることは認められない旨主張する。 しかしながら、前記アのとおり、生活保護法8条2項における最低限 度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断及び決定されるべきものであるから、厚生労働大臣は、保護基準の改定の要否を判断するに当たって、要保護者の生活上の属性に関わる事項だけではなく、国の財政事情等を含む複雑多様な要素を考慮した上での専門技術的かつ 政策的な判断をする必要があり、それをすることが当然に許されるというべきである。 したがって、厚生労働大臣は、生活 はなく、国の財政事情等を含む複雑多様な要素を考慮した上での専門技術的かつ 政策的な判断をする必要があり、それをすることが当然に許されるというべきである。 したがって、厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定に係る裁量権を行使するに当たって、生活保護法8条2項所定の事項を考慮することが義務付けられるということはできず、他方で、同項に定められた事項以外の事項 を考慮することが許されないということはできない。 よって、原告らの上記主張は、採用することができない。 ⑵ ゆがみ調整についてアゆがみ調整の必要性等について認定事実⑶から⑸まで及び⑺によれば、次のaからdの各事実が認めら れる。 a 専門委員会による平成16年検証の結果(平成15年中間取りまとめ及び平成16年報告書)として、生活扶助基準の展開部分に関して、「世帯人員別に見ると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない」などとして、多人数世帯に係る基準の是正や、単身世帯について別途の基準を設定するなど、その見直しを検討する必要があ る旨が指摘されるとともに、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全消調査等を基に5年に1度の頻度で検証を行う必要がある旨が指摘された(認定事実⑶イ及び)。 b その後、前記aにおける定期的な検証の必要性の指摘等を受けて設置 された生活扶助基準検討会による平成19年検証において、生活扶助基準の「水準」の妥当性のほか、生活扶助基準の体系の妥当性についても検証がされ、その結果(平成19年報告書)として、生活扶助基準の展開部分について、一般低所得世帯との比較の結果、年齢階級別及び世帯人員別のいずれについても実態とのかい離が指摘さ 系の妥当性についても検証がされ、その結果(平成19年報告書)として、生活扶助基準の展開部分について、一般低所得世帯との比較の結果、年齢階級別及び世帯人員別のいずれについても実態とのかい離が指摘されたほか、地域別に ついても、現行の地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差は縮小してきている旨が指摘された(認定事実⑷イ、)。 c 平成19年報告書における前記bの指摘を踏まえ、厚生労働大臣は、生活扶助基準を消費実態に適合したものとする見直しについて検討を行ったが、当時の原油価格の高騰や金融危機による影響等に鑑み、平成 20年以降、本件保護基準改定に至るまで、平成19年報告書の検証の結果を踏まえて生活扶助基準を見直すことはなかった(認定事実⑸ウ)。 d 前記cのとおり、生活扶助基準の見直しが実施されない状況が続く中、生活扶助基準の定期的な検証等を目的として基準部会によって実施された平成25年検証において、平成21年全消調査の結果を用いた生活 扶助基準の展開部分の検証が行われた。その結果(平成25年報告書) として、生活扶助基準の「展開のための指数」は、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっておらず、その結果、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれについても、保護受給世帯間の公平を欠く状態になっていることが判明した。(認定事実⑺ア及びイ) 前記の各事実に照らせば、厚生労働大臣が、平成16年検証、平成1 9年検証及びそれらを前提とする平成25年検証の各結果を踏まえ、「展開のための指数」が一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないために、保護受給世帯間の公平を欠く状態になっていると認識した上で、平成25年検証の結果に基づき、一般低所得世帯の消費実態を展開の ための指数」が一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないために、保護受給世帯間の公平を欠く状態になっていると認識した上で、平成25年検証の結果に基づき、一般低所得世帯の消費実態を展開のための指数に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることと する旨の判断をしたこと(ゆがみ調整をする旨の判断をしたこと)自体については、一定の合理性があるものと認められる。 イ平成25年検証の検証方法について もっとも、ゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断は、前記アのとおり、平成25年検証の結果を踏まえたものであるところ、平成25年検証にお ける検証の方法に誤りや不合理な点がある場合には、当該判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くおそれが生じることとなる。そこで、以下、原告らが指摘する事項を中心に、平成25年検証における検証の方法(認定事実⑺参照)につき、その合理性等を検討する。 第1・十分位を比較する対象とした点についてa 原告らは、基準部会が一般低所得世帯の消費実態と比較する対象として第1・十分位を設定したことが不合理である旨主張する。 しかし、認定事実⑴イ、⑵ア、⑶イ及び⑷イによれば、昭和39年中間報告以降、専門家による組織が関与してされた検証等におい ては、一般低所得者世帯との比較という観点で、第1・十分位の消費水 準に着目した検討が行われ、平成16年検証及び平成19年検証においても、第1・十分位の消費水準をもって比較の対象としていると認められ、平成25年検証がされる以前においても、具体的な生活扶助基準の検証に当たっては、第1・十分位の消費水準と比較する方法が採られていたということができる。また、比較する対象として第1・十分位 認められ、平成25年検証がされる以前においても、具体的な生活扶助基準の検証に当たっては、第1・十分位の消費水準と比較する方法が採られていたということができる。また、比較する対象として第1・十分位を設 定した根拠につき、基準部会は、平成25年報告書において具体的に提示しているところ(認定事実⑺ア)、基準部会は、学識経験者の委員らによって構成された組織であって(同⑹ウ)、その検討も、厚生労働省社会・援護局保護課が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査結果概要」等の客観的な調査結果等を前提に、当該委員 らの学識的知見も踏まえて行われたものであると認められる(乙A36の1・2)。 したがって、基準部会が一般低所得世帯の消費実態と比較する対象として第1・十分位を設定したことは、一定の合理性を有するものであったと認められる。 b 原告らは、基準部会が一般低所得世帯の消費実態と比較する対象として第1・十分位を設定したことは、①平均的一般世帯の消費支出、②一般低所得世帯(第1・五分位〔所得下位20%〕と第2・五分位〔所得下位20~40%〕)の消費支出、③保護受給世帯の消費支出の3つの間の格差の均衡に留意するものとされている水準均衡方式の考え方に 反し、不合理である旨主張する。 しかしながら、昭和58年意見具申(乙A8)や昭和55年中間取りまとめ(乙A9)を見ても、原告らが指摘するような留意事項に係る記載は見当たらず、その余の原告らの主張立証によっても、昭和58年意見具申がされるに際し、上記のような留意事項が示された事実を認める に足りる的確な証拠は見当たらない。 また、この点をひとまずおくとしても、認定事実⑵ウのとおり、水準均衡方式は、政府経済見通しにおける個人消費(民間最終消 事項が示された事実を認める に足りる的確な証拠は見当たらない。 また、この点をひとまずおくとしても、認定事実⑵ウのとおり、水準均衡方式は、政府経済見通しにおける個人消費(民間最終消費支出)の伸びに準拠して翌年度の改定率を算定するものであって、生活扶助基準の「水準」(絶対値)を改定することを目的とするものであると認められる。他方、ゆがみ調整の前提となった平成25年検証は、認定事実⑺ア のとおり、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に、生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態のかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行うことにより、展開部分を中心とする生活扶助基準の妥当性を検証することを目的とするものであると認められるものの、上記のような平成25年検証で用いられた手法は、 水準均衡方式の考え方と矛盾するものとはいえず、むしろ、生活扶助基準の展開部分に一般国民の消費実態を反映させるという意味においては、一般国民の消費実態により相対的に生活扶助基準が決まるという水準均衡方式の考え方に沿うものであるということができる。 そうすると、平成25年検証は、水準均衡方式による生活扶助基準の 改定と目的を異にするものである上、一般国民の消費実態を反映させるという意味においては水準均衡方式の考え方に沿うものであると認められるから、一般低所得世帯の消費実態と比較する対象として第1・十分位を設定したことを含む平成25年検証の方式等が、仮に水準均衡方式と異なるところがあるとしても、かかる点をもって直ちに、平成25 年検証が不合理な内容のものである、水準均衡方式の考え方とされるもの(上記①ないし③)と矛盾するなどということはできない。 c 原告らは、基準部会が一般低所得世帯の消費実態と比較する対 年検証が不合理な内容のものである、水準均衡方式の考え方とされるもの(上記①ないし③)と矛盾するなどということはできない。 c 原告らは、基準部会が一般低所得世帯の消費実態と比較する対象として第1・十分位を設定したことは、最下位層との比較は際限のない保護基準の引下げを招きかねない点で不合理である旨主張する。 しかしながら、前記bのとおり、平成25年検証は、生活扶助基準額 と一般低所得世帯の消費実態のかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行うものであって、生活扶助基準の「水準」(絶対値)を改定することに向けた検証を行うことを目的とするものではなく、展開部分を中心とする生活扶助基準の妥当性を検証することを目的とするものである。 そうすると、厚生労働大臣が、平成25年検証の結果に基づいて生活扶助基準を改定したとしても、それが必ず生活扶助基準の「水準」(絶対値)の引下げにつながるわけではないから(実際にも、高齢者世帯のように、ゆがみ調整がされることによって生活扶助基準額が増額となる世帯も存在する。認定事実⑺イ参照)、原告らの主張は、その前提を異に するものである。 d 以上によれば、基準部会が一般低所得世帯の消費実態と比較する対象として第1・十分位を設定したことには合理性がない旨の原告らの主張は、採用することができない。 検証に使用した統計データについて a 原告らは、平成25年報告書において「第1・十分位階層」として用いられた個票データの数が平成21年全消調査の総世帯数の10分の1と一致しないなど、使用されたデータの概要が不明確であるとして、平成25年報告書の正確性には疑義がある旨主張する。 b 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば 年全消調査の総世帯数の10分の1と一致しないなど、使用されたデータの概要が不明確であるとして、平成25年報告書の正確性には疑義がある旨主張する。 b 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次のから⒠の各事実が認め られる。 平成21年全消調査は、平成17年国勢調査を基に推計した世帯を母集団とし、その中から2人以上世帯5万2404世帯、単身世帯4402世帯を抽出して行われた抽出調査であり、その集計の際には、回答が得られた個票データに、調査の対象である市町村の人口密度や 分布等によって決められた抽出率の逆数等で算定される集計用乗率 を乗じることによって、全国規模の消費実態の推計が行われる。なお、集計用乗率は、個票データごとに設定されている。(乙A91)⒝ 平成21年全消調査につき、総務省が公表しているデータを基に、単身世帯と2人以上世帯のそれぞれの個票データの平均集計用乗率を算定すると、単身世帯の個票データの平均集計用乗率は、2人以上 世帯の個票データの平均集計用乗率よりも相当に大きな数値になっていた(乙A93の1・2、乙A94、95)。 ⒞ 平成25年検証において用いたデータは、平成21年全消調査の個票データのうち、データ①(年間収入が低い世帯から順に並べた第1・十分位の世帯)とデータ②(世帯員1人当たりの年間収入が低い世帯 から順に並べた第1・十分位の世帯)の2種類である(乙A37)。 ⒟ データ①及びデータ②を構成する個票データを選定するに当たっては、前記及び⒝の集計用乗率を使用し、データ①については世帯年収が、データ②については世帯員1人当たりの年収が、それぞれ下位の世帯から個票データを順に並べ、それぞれの個票データに集計用 乗率を乗じた実際の世帯数の累計が全体の実際の世 ①については世帯年収が、データ②については世帯員1人当たりの年収が、それぞれ下位の世帯から個票データを順に並べ、それぞれの個票データに集計用 乗率を乗じた実際の世帯数の累計が全体の実際の世帯数の下位10%となるところまでの個票データの集団を「第1・十分位」として各データを構成した(弁論の全趣旨)。 「世帯年収」が下位の世帯から個票データを並べた場合(データ①を構成する個票データを選定する場合)には、その下位の世帯には相 対的に単身世帯が多く含まれ、他方、「世帯員1人当たりの年収」が下位の世帯から個票データを並べた場合(データ②を構成する個票データを選定する場合)には、その下位の世帯には相対的に2人以上の世帯が多く含まれることとなる。そうすると、前記⒝のとおり、各個票データの平均集計用乗率は、単身世帯の方が2人以上世帯よりも相当 大きな数値であるから、下位に単身世帯が多く含まれるデータ①の場 合、データ②の場合と比較して、集計用乗率を乗じた世帯数の累計が全体の世帯数の下位10%となる個票データの個数(すなわち世帯数)は少なくなった、すなわち、データ①を構成する個票データの個数は、データ②を構成する個票データの個数より少ない結果となった(弁論の全趣旨)。 c 以上によれば、平成25年検証において用いた個票データ(データ①及びデータ②)の数と、と平成21年全消調査の世帯数の10%の数が一致しないことは、データを抽出する方法から生じる当然の帰結であって、また、原告らの主張を踏まえても、その抽出の方法につき不合理な点は見受けられない。 よって、平成25年報告書において使用されたデータの概要が不明確であり、平成25年報告書の正確性には疑義がある旨の原告らの主張は、採用することができない。 な点は見受けられない。 よって、平成25年報告書において使用されたデータの概要が不明確であり、平成25年報告書の正確性には疑義がある旨の原告らの主張は、採用することができない。 比較の対象となる第1・十分位の世帯から保護受給世帯を除外しなかったことについて 原告らは、平成25年検証においては、一般低所得世帯と保護受給世帯を比較するにあたり、一般低所得世帯に保護受給世帯が含まれている可能性が考慮されていないから、平成25年検証は、比較する2つの集団が、比較の対象とする要因に関しては厳密に区別されなければならないという統計学上の大原則に反し、統計学的に全く意味をなさないものである旨 主張する。 しかしながら、認定事実⑺ア及びのとおり、平成25年検証は、生活扶助基準額に一般低所得世帯の消費実態が適切に反映されているかを検証するために、消費実態を検討する一般低所得世帯を第1・十分位と設定した上で、その消費実態の年齢階級別、世帯人員別及び級地別の指数と、 それらの各世帯が実際に当時の基準により保護を受けたとした場合の生 活扶助基準額の年齢階級別、世帯人員別及び級地別の指数を比較したものである。すなわち、平成25年検証は、第1・十分位の消費支出と生活扶助基準額とを比較したものであって、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費支出と実際の保護受給世帯の消費支出を比較するものではないから、第1・十分位から保護受給世帯が除外されていなかったとしても、原告ら が上記において主張する統計学上の原則が当てはまる場面とはいえず、統計学上の問題が生じるとも認められない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 平成25年検証が統計的に不合理なもの又は統計的な検討が不 る統計学上の原則が当てはまる場面とはいえず、統計学上の問題が生じるとも認められない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 平成25年検証が統計的に不合理なもの又は統計的な検討が不十分なものであるか否かについて a 原告らは、平成25年報告書で示された各回帰モデルには、決定係数が0.3前後であって統計学的にみて精度が低いと評価すべきものが複数含まれることからすれば、平成25年検証における一連の分析の結果は、参考程度の域を超えるものではないと評価すべきである旨主張し、これに沿う証拠(甲A198)もある。 証拠(甲A198、199、乙A6、96、97)及び弁論の全趣旨によれば、①決定係数とは、回帰分析(回帰モデル)データに対する当てはまりの良さを示す指標であって、0以上1以下となるその数値が1に近づくほど、当該回帰分析の当てはまりが良いことを指すこと、②一般に、決定係数が、0.8以上であれば、ある程度の当てはまりが実現 され、0.3以下では当てはまりが悪いなどと解されているものの、分析の対象である「被説明変数」が何かによって決定係数の評価は異なるため、決定係数の数値が有する意味についての一般的な基準は存しないこと、③平成25年検証において用いられた平成21年全消調査の個票データを含むクロス・セクション(横断面)データに係る回帰分析にお いては、決定係数が0.3程度しか得られない場合も多く、0.5でも 極めて良い評価とされていることの各事実が認められる。 そうすると、原告らが指摘するとおり、平成25年検証で用いられた回帰分析(回帰モデル)のうち、年齢階級別(第1類費)の検証に係るものの決定係数は、データ①が0.28、データ②が0.36であること(甲A198、乙A6)を踏まえても、上記 成25年検証で用いられた回帰分析(回帰モデル)のうち、年齢階級別(第1類費)の検証に係るものの決定係数は、データ①が0.28、データ②が0.36であること(甲A198、乙A6)を踏まえても、上記のとおり、クロス・セク ションデータの分析においては、決定係数が0.3程度の値しか得られないことも多いことや、平成25年報告書においても、消費実態については、多様な要因が影響するものと考えられるとされていること(認定事実⑺エ参照)に照らすと、上記の回帰式の決定係数の値が0.3前後であるからといって、この回帰式を用いて指数を算定することが統計 学的に誤りであるとまでは直ちに認め難いから、平成25年検証において用いられた回帰分析の手法が、統計学的な見地からみて不合理なものであるとは認められない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 b 原告らは、平成25年報告書で示された回帰モデルにつき、有意水準 を5%と設定してt検定を行った場合、有意な差が認められなかった変数が多数存在したにもかかわらず、平成25年検証においては、そのような変数を除外した上で再分析しておらず、t検定の結果が反映されていないため、信頼することができないものとなっている旨主張し、これに沿う証拠(甲A198)もある。 証拠(乙A90、98)及び弁論の全趣旨によれば、①統計学上、「効果がない(無効)」や「異なっていない(同質)」を主張する帰無仮説といい、反対の「効果がある(有効)」や「異なっている(異質)」と主張する仮説を対立仮説ということ、②「t検定」とは、帰無仮説を介在させる手法の1つであり、t値(推定係数をその標準誤差で割ることで求 められる。)を用いて、一定の有意水準を設定した上で、それを前提に 「説明変数の被説明変 t検定」とは、帰無仮説を介在させる手法の1つであり、t値(推定係数をその標準誤差で割ることで求 められる。)を用いて、一定の有意水準を設定した上で、それを前提に 「説明変数の被説明変数への真の効果が0(ゼロ)である」という帰無仮説を検定し、これが否定されることで、「説明変数の被説明変数への効果がある(0ではない)」という対立仮説を採択するものであること、③帰無仮説の検証において、帰無仮説の下で期待された結果が生じなかった場合、その帰無仮説を「棄却する」といい、これは、反対の内容で ある対立仮説を受け入れることである一方、帰無仮説に反することが検定において認められず、帰無仮説が棄却されなかったとしても、これは、当該帰無仮説を積極的に支持することを意味するわけではないことの各事実が認められる。 そうすると、原告らが指摘するとおり、平成25年検証における回帰 モデルにつき、t検定を行った結果、有意な差が認められなかった説明変数が多数存在したとしても、それは、t 検定でいう「対立仮説」を採択することができない(帰無仮説を棄却することができない)結果、当該説明変数につき「統計的に有意性があるとはいえないこと」、すなわち、結果が帰無仮説と矛盾しないことを意味するにとどまり、これを超 えて、t検定でいう「帰無仮説」が積極的に支持されること、つまり、当該説明変数につき「有意性がないこと」まで意味するものではないというべきである。 よって、t検定の結果として、統計的に有意な差があるとは認められなかった説明変数を除外することなく、そのまま当該回帰分析を用いた としても、それが統計学的に誤りであるとはいえないから、原告らの主張は、その前提を異にするものであって、採用することができない。 まとめ前記 く、そのまま当該回帰分析を用いた としても、それが統計学的に誤りであるとはいえないから、原告らの主張は、その前提を異にするものであって、採用することができない。 まとめ前記からまでのもののほか、原告らは、平成25年検証における回帰分析につき、「誤差項の分散均一性」等の仮定に係る検討を行っていな いため、回帰分析が不十分である旨主張するが、原告らの主張立証(甲A 198等)を踏まえても、それらの仮定の検討を行わなかったことが、統計学的な見地から見て不合理である又は検討として不十分であると認めるに足りる的確な証拠はなく、また、平成25年検証が統計学的に正当性を有しないことに関する原告らのその余の主張を検討しても、平成25年検証が統計的に不合理なものである又は不十分なものであることを認め るには至らない。 したがって、平成25年検証が、統計的に不合理なもの又は統計的な検討が不十分なものであるとは認められず、平成25年検証における検証の方法は、一定の合理性を有するものであると認められる。 ウ 2分の1処理について 認定事実⑼イのとおり、ゆがみ調整をするに当たっては、平成25年検証の結果をそのまま生活扶助基準の改定に反映させるのではなく、上記の結果のうち2分の1の割合のみを当該改定に反映させる2分の1処理が行われているところ、原告らは、厚生労働大臣が、平成25年報告書に表れた数値をそのまま適用することなく、2分の1処理をすることで、年間 91億2100万円程度の生活扶助費削減を行い、これによって、2分の1処理が行われなければさらなる増額が実現されるはずであった被保護者の生活扶助費の増額が何らの合理的理由もなく抑えられたことを意味するから、本件保護基準改定は、恣意的かつ著しく不 れによって、2分の1処理が行われなければさらなる増額が実現されるはずであった被保護者の生活扶助費の増額が何らの合理的理由もなく抑えられたことを意味するから、本件保護基準改定は、恣意的かつ著しく不合理である旨主張する。 しかしながら、原告らが指摘する2分の1処理による生活扶助費を削減する効果は、平成25年検証におけるサンプル世帯と実際の保護受給世帯とでは、年齢階級別、世帯人員別又は級地別の分布が全く同じではなかったため、結果的に生じたものとみる余地もあることからすれば、仮に、2分の1処理によって原告らが指摘するとおりの生活扶助費を削減する効 果が生じていたとしても、そのことのみをもって直ちに、2分の1処理を 実施した厚生労働大臣の目的が生活扶助費を削減することにあったと認めることはできないから、原告らの主張は、その前提自体を異にするものというべきである。 前記の点をひとまずおくとしても、前記⑴アのとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準を改定する必要性を踏まえつつ、当該改定をするため の具体的な方法等を決定することについて、激変緩和措置の要否等を含め、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているから、厚生労働大臣が、本件保護基準改定をするに当たり、平成25年報告書に記載された内容をどの程度又はどの範囲で生活扶助基準の改定に反映させるのかについては、厚生労働大臣の裁量に委ねられていることになる。 そして、平成25年報告書によれば、①平成25年検証の結果を生活扶助基準額にそのまま反映する場合、生活扶助基準額への影響は、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せにより様々であって、60歳以上の単身世帯では+4.5%、ともに60歳以上の高齢夫婦世帯では+1. 6%となる一 ま反映する場合、生活扶助基準額への影響は、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せにより様々であって、60歳以上の単身世帯では+4.5%、ともに60歳以上の高齢夫婦世帯では+1. 6%となる一方、夫婦と18歳未満の子1人世帯では-8.5%となり、 夫婦と18歳未満の子2人世帯では-14.2%となり、母親と18歳未満の子1人の母子世帯では-5.2%となるなど、特に子どものいる世帯の生活扶助基準額の減額率は相対的に見て大きいものとなっており(認定事実⑺イ)、②「平成25年検証の結果に関する留意事項」として、平成25年検証における検証の手法につき、委員による専門的議論の結果得 られた透明性の高い1つの妥当な手法である一方、統計上の限界があるなど、これが唯一の手法ではない旨、今後、具体的な生活扶助基準の見直しの検討において平成25年検証の結果を考慮する際には、検証の方法について一定の限界があることに留意する必要がある旨、現在保護を受けている世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観 点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある旨がそれぞれ 指摘されている(同エないし)。 以上に加え、ゆがみ調整の目的及び趣旨(前記ア)に照らすと、平成25年検証の結果を部分的に生活扶助基準の改定に反映させる場合には、ゆがみ調整による影響の内容及び程度にかかわらず、一定の割合でこれを生活扶助基準の改定に反映させることがゆがみ調整の目的及び趣旨に沿 う措置であるということができることも併せ考慮すれば、厚生労働大臣は、本件保護基準改定について、平成25年検証の結果に基づき、ゆがみ調整による影響の内容及び程度にかかわらず、一定の割合(2分の1)でこれを生活扶助基準の改定に反映させることによ れば、厚生労働大臣は、本件保護基準改定について、平成25年検証の結果に基づき、ゆがみ調整による影響の内容及び程度にかかわらず、一定の割合(2分の1)でこれを生活扶助基準の改定に反映させることにより(認定事実⑻ア、同⑼イ、)、「生活扶助基準の展開部分の適正化」というゆがみ調整の本質的部分 を改変しないようにしたものと認められる一方、平成25年検証の結果をそのまま生活扶助基準の改定に反映させた場合には、子どものいる世帯への影響が大きくなることが予想されたこと(上記①)から、平成25年検証における検証の方法には統計上の限界があり、唯一の手法ではなく(上記②)、生活扶助基準の見直しを検討する際にはそのことに留意する必 要がある(同)旨や、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある旨(同)の基準部会の指摘等を踏まえ、平成25年検証の結果を生活扶助基準の改定に反映させる割合(上記の一定の割合)を2分の1にとどめることにより、上記の影響を緩和する趣旨及び目的で、激変緩和措置の1つとして、2分の1処理を実施することとしたものと認められるところ、 このような厚生労働大臣の判断については、平成25年検証の趣旨に反するものとは認められず、一定の合理性があるものと認められる。そして、上記に判示したところに照らすと、原告らが指摘する2分の1処理に伴って生活扶助基準額の増額が抑制されたとの事実があるとされることによっても、それは、厚生労働大臣が有する裁量権の範囲にとどまるもの(考 慮することができる複数の政策目的、要素等の中からいずれの政策目的、 要素等を重視するかを選択し、かつ、採用することができる複数の選択肢の中からいずれの選択肢を選択するかの問題の範ちゅうにとどまるもの)と認められるから、上記の認定及び判断は ずれの政策目的、 要素等を重視するかを選択し、かつ、採用することができる複数の選択肢の中からいずれの選択肢を選択するかの問題の範ちゅうにとどまるもの)と認められるから、上記の認定及び判断は左右されない。 したがって、2分の1処理に係る厚生労働大臣の判断は、一定の合理性があるものと認められ、また、平成25年検証及びこれを踏まえてされた ゆがみ調整の趣旨及び目的にも反しないものであることを踏まえれば、2分の1処理に係る厚生労働大臣の判断が、前記の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものであるとは認められないから、原告らの主張は、採用することができない。 エゆがみ調整についての結論 以上のとおり、ゆがみ調整については、前記アのとおり、ゆがみ調整をする必要がある旨の厚生労働大臣の判断には一定の合理性があるものと認められ、また、前記イのとおり、その判断の根拠とされる平成25年検証も、学識経験者の委員らによって構成された基準部会が、客観的な調査の結果等を前提に、当該委員らの学識的知見も踏まえて実施されたものであると認め られる一方、原告らが指摘する各事項につき検討しても、2分の1処理に係る厚生労働大臣の判断を含め、その合理性や統計学的な正当性を否定すべき事情は認められない。 以上の次第で、平成25年検証に基づいてゆがみ調整をする旨の厚生労働大臣の判断の過程に過誤や欠落があるということはできず、統計等の客観的 な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるということもできないから、ゆがみ調整をすることに係る厚生労働大臣の判断が、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであったとは認められない。 ⑶ デフレ調整について ともできないから、ゆがみ調整をすることに係る厚生労働大臣の判断が、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであったとは認められない。 ⑶ デフレ調整について デフレ調整は、認定事実⑼ウ及び同⑿のとおり、総務省から公表されている 消費者物価指数(総務省CPI)を基に、平成17年指数品目又は平成22年指数品目から非生活扶助相当品目を除いたもの(生活扶助相当品目)の価格指数等を用いて算定した消費者物価指数である生活扶助相当CPIの動向を勘案するとの方針に基づき、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率(本件下落率)を独自に算定し、これを生活扶助基準の水準の改定 に反映させるというものである。そうすると、デフレ調整については、その必要性(デフレ調整をする必要性)のみならず、厚生労働大臣がその有する裁量権に基づいてした本件下落率を算定する具体的な方法に係る判断の相当性(デフレ調整をする相当性)についても個々に問題となる。 そこで、以下においては、まず、デフレ調整をする必要性の有無について検 討し、その後に、デフレ調整をする相当性の有無につき、被告が説明する本件下落率を算定する過程を前提に、当該算定の過程における個々の厚生労働大臣の判断、すなわち、①物価(消費者物価指数)を指標としたこと、②デフレ調整の対象となる期間の始期を平成20年としたこと、③デフレ調整の対象となる期間の終期を平成23年としたこと、④ウエイト参照時点(指数参照時点) を平成22年と設定したこと並びに⑤生活扶助相当CPIの算定における指数品目の選定及びウエイトの設定方法の各過程について、被告が説明する厚生労働大臣の判断の過程(なお、その詳細については別紙3参照)に沿って順次検討を加え、最後に、 生活扶助相当CPIの算定における指数品目の選定及びウエイトの設定方法の各過程について、被告が説明する厚生労働大臣の判断の過程(なお、その詳細については別紙3参照)に沿って順次検討を加え、最後に、本件下落率を生活扶助基準に反映させることとした判断の適否(デフレ調整をすることによって生活扶助基準を改定することの適否) につき検討をすることとする。 アデフレ調整をする必要性について 被告が説明する厚生労働大臣の判断の過程の要旨平成19年検証の結果、一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされながら、生活扶助基準額を減額する旨の改定が行われなかったことによ って、平成20年当時、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態 との均衡が崩れ、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態に比較して高くなっていた。そのような中、同年9月のリーマン・ショックに端を発する世界的な金融危機によって、賃金、物価、家計消費等がいずれも落ち込み、一般国民の消費水準等が下落する一方、生活扶助基準については、その間の経済動向を踏まえた改定(生活扶助基準額を減額する旨の改 定)がされず、その水準が据え置かれたままにされてきた。その結果、保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したと評価することができる状況にあり、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡が、より一層顕著となっていたことから、平成20年以降の保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ) により生じた保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るため、デフレ調整をする必要があると判断した。 認定事実によれば、デフレ調整をするに至る経緯につき、次のaからdの各事実が認められる。 生じた保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るため、デフレ調整をする必要があると判断した。 認定事実によれば、デフレ調整をするに至る経緯につき、次のaからdの各事実が認められる。 a 専門委員会は、平成16年報告書において、勤労3人世帯の生活扶助 基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証及び評価をした結果、その水準は基本的に妥当であったとする一方、平成16年検証の後に行われるべき生活扶助基準の定期的な検証に当たっては、平均的に見れば、勤労基礎控除も含めた生活扶助基準額が、一般低所得世帯の消費における生活扶助相当支出額よりも高くなっていること等も 考慮する必要がある旨を指摘した(認定事実⑶イa)。 b 平成16年報告書における生活扶助基準の定期的な検証の必要性に関する指摘等を踏まえて設置された生活扶助基準検討会は、平成19年報告書において、夫婦子1人(有業者あり)世帯及び単身高齢世帯(60歳以上)につき、第1・十分位における世帯当たり生活扶助相当支出 額と保護受給世帯平均の生活扶助基準額とを比較すると、夫婦子1人 (有業者あり)世帯につき約1.1%、単身世帯(60歳以上の場合)につき約13.3%、生活扶助基準額の方が高い旨を指摘した(認定事実⑷ア、イa及びb)。 c 厚生労働大臣は、平成19年報告書の検証結果を踏まえ、生活扶助基準の水準を一般国民の消費実態に適合したものとする見直しについて 検討を行ったが、当時の原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため、平成20年度は生活扶助基準額を据え置くこととし、その後も、平成25年検証の結果を踏まえた本件保護基準改定に至るまで、平成19年報告書の検証結果を踏まえた生活扶助基準の見直しを行わなかった(認定事実⑸ウ) 年度は生活扶助基準額を据え置くこととし、その後も、平成25年検証の結果を踏まえた本件保護基準改定に至るまで、平成19年報告書の検証結果を踏まえた生活扶助基準の見直しを行わなかった(認定事実⑸ウ)。 d なお、我が国においては、完全失業率が平成21年以降悪化し、さらには、一般勤労世帯の賃金もおおむね下落する傾向を示し、消費者物価指数の上昇率及び家計消費支出についても、平成21年以降、下落ないし減少を続けるなど、賃金、物価及び家計消費がいずれも下落する傾向を示すといった経済の状況が、平成20年から平成23年までの間は続 いており、また、平成21年の2人以上の世帯の1か月平均消費支出は、平成16年に比して名目で6.0%(年率1.2%)の減少、消費者物価の変動を除いた実質で6.1%(年率1.3%)の減少となっていた(認定事実⑹ア、イ)。 前記の各事実に照らせば、厚生労働大臣は、生活扶助基準の水準が、 平成19年検証により、一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られ、かつ、その後のリーマン・ショックに端を発する世界的な金融危機の影響により、平成20年以降、消費、物価、賃金等がいずれも下落する経済情勢にあったにもかかわらず、このような経済の動向が生活扶助基準に反映されることもなかった結果、一般国民の消費実態との均衡 が崩れた状況(生活扶助基準額の方が相対的に高い状態)にあり、生活扶 助基準を改定して、当該不均衡を是正すべき状況になっていたところ、平成25年検証においては、生活扶助基準の水準それ自体の評価及び検証は行われなかったものの、上記のような経済の状況(平成20年以降のデフレ傾向)により、保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準額が実質的に引き上げられ それ自体の評価及び検証は行われなかったものの、上記のような経済の状況(平成20年以降のデフレ傾向)により、保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準額が実質的に引き上げられた)と評価することができる状 況にあったことから、一般国民との間の上記のような不均衡を是正するためにデフレ調整をする必要がある旨の判断をしたものと認められる。 そうすると、前記の厚生労働大臣の判断の過程については、それ自体として特に不合理なものとはいえず、また、前記のとおり、その前提となる経済統計等の客観的な数値等との合理的関連性も認められ、また、平 成16年検証や平成19年検証によって示された専門的知見との整合性もあると認められるから、一定の合理性があるものと認められる。 原告らは、平成19年検証を行った生活扶助基準検討会は、厚生労働省社会・援護局長が何らの法律上の根拠に基づかずに設置した同局長が私的に諮問するための組織にすぎないことに加え、その検討の期間が極めて短 く、その検討の回数が不十分であることからすれば、平成19年検証は、学識経験者による検証として位置付けられるようなものではなく、平成19年報告書をデフレ調整をする必要性があることの根拠とする被告の主張は不合理である旨主張する。 しかしながら、前記⑴イのとおり、生活保護法やその関連法規には、 厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり基準部会等の専門家による組織に諮問し又はその意見を求めなければならない旨の規定は存しないのであって、専門家による組織が関与してされた検証等の結果は、飽くまで、厚生労働大臣がした判断の合理性を支える1つの手段又は要素にとどまり、このことは、厚生労働大臣がした判断の合理性ひいては適法性を裁 判所が審査する場 が関与してされた検証等の結果は、飽くまで、厚生労働大臣がした判断の合理性を支える1つの手段又は要素にとどまり、このことは、厚生労働大臣がした判断の合理性ひいては適法性を裁 判所が審査する場合においても同様であると解するのが相当である。 そうすると、平成19年検証を行った主体が、法律上の根拠に基づいて設置された組織であるか否かという点は、直ちに厚生労働大臣がした判断の合理性を左右する事情であるとは認められず、むしろ、級地を含む生活扶助基準の全体の見直しについて専門的な分析及び検証を行うことを目的として5名の学識経験者を構成員として設置されたという生活扶助基 準検討会が設置された目的やその人的な構成(認定事実⑷ア)に照らせば、生活扶助基準検討会は、平成19年検証を実施する主体としての適格性を有していたと評価することができる。 また、検討期間の長短や会議の回数等の原告らが指摘する平成19年検証の経過に係る事情についても、必ずしも検討期間の長短や会議の回数が 検討の内容や質に影響する必然性があるとはいえず、平成19年報告書において、上記の事情を原因とする検討の内容や質に対する影響が生じたことをうかがわせる証拠ないし事情等が見当たらないことからすれば、上記の事情のみをもって直ちに、平成19年検証が不合理なものであることが基礎付けられているとも評価することはできない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 原告らは、平成19年報告書は、「生活扶助基準の引下げ」との結論を出しておらず、むしろ、平成19年報告書が公表された後に、生活扶助基準検討会の委員5名全員が連名で公表した平成19年検討会委員文書の内容からすれば、生活扶助基準を引き下げることには慎重であるべきという のが委員の 平成19年報告書が公表された後に、生活扶助基準検討会の委員5名全員が連名で公表した平成19年検討会委員文書の内容からすれば、生活扶助基準を引き下げることには慎重であるべきという のが委員の総意であったから、平成19年報告書をデフレ調整をする必要性があることの根拠とする被告の主張は不合理である旨主張する。 確かに、平成19年検討会委員文書において、「生活扶助基準額の引き下げについては、慎重であるべき」と指摘された事実があることは認められ(甲A5)、生活扶助基準検討会の委員が生活扶助基準を引き下げるこ とに慎重な意見を有していたとはいえるものの、前記において判示した とおり、専門家による組織が関与してされた検証等の結果は、飽くまで、厚生労働大臣がした判断の合理性を支える1つの手段又は要素にすぎず、また、前記⑴アのとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定に係る判断について、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有していると認められる以上、生活扶助基準検討会の委員が有していたとうかがわれる 上記の意見が、厚生労働大臣がする生活扶助基準を改定する必要があるか否かに係る判断を法的に拘束するものとはいえない。 また、この点をひとまずおくとしても、平成19年検討会委員文書には、上記の指摘に続き、「ただし、こうした政策的判断は・・・本検討会の目的の範囲を越えており、今後、行政当局、あるいは政治の場において、総合 的に判断されるべきものであると考える。」との指摘もあること(甲A5)からすれば、平成19年検討会委員文書において示された生活扶助基準検討会の委員の意見は、最終的には、生活扶助基準額を引き下げることの要否については、生活扶助基準検討会における検討の結果を踏まえた厚生労働大臣の総合的な判断に委ねる趣旨のもの て示された生活扶助基準検討会の委員の意見は、最終的には、生活扶助基準額を引き下げることの要否については、生活扶助基準検討会における検討の結果を踏まえた厚生労働大臣の総合的な判断に委ねる趣旨のものと解するのが相当であるから、 厚生労働大臣がしたデフレ調整をする必要がある旨の判断が、生活扶助基準検討会の意見と異なるものであったとも評価することはできない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 原告らは、生活扶助基準検討会が生活扶助基準額と比較する対象である一般低所得世帯として第1・十分位を設定したことが不合理である旨主張 する。 a 認定事実⑷イcによれば、生活扶助基準検討会が平成19年検証において、生活扶助基準額と比較する対象を第1・十分位の消費水準と設定したのは、従前の専門家による組織が関与してされた検証等においても、生活扶助基準額については第1・十分位の消費水準と比較すること が適当とされてきたことを前提に、①第1・十分位の消費水準は、平均 的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること、②第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較してもおおむね遜色ない状況にあることからすれば、平成19年検証においてもこれを変更する理由はない旨の判断によ るものと認められる。 そして、前記⑵イaのとおり、昭和39年中間報告以降、専門家による組織が関与してされた検証等においては、一般低所得者世帯との比較という観点で第1・十分位の消費水準に着目した検証等が行われ、平成16年検証においても、第1・十分位の消費水準を生活扶助基準額と の比較の対象とされたものである。 一般低所得者世帯との比較という観点で第1・十分位の消費水準に着目した検証等が行われ、平成16年検証においても、第1・十分位の消費水準を生活扶助基準額と の比較の対象とされたものである。 b原告らは、前記a①につき、標準世帯については、その第1・十分位における消費水準は第3・五分位の消費水準の7割に達しているが、単身世帯(60歳以上)については、その割合が5割(第1・五分位でみると約6割)にとどまっている点に留意する必要がある旨の指摘 が平成19年報告書にあること(認定事実⑷イc)等を捉え、前記a①の点が、生活扶助基準額と第1・十分位の消費水準とを比較すべき根拠とはなり得ない旨主張する。 しかしながら、平成19年検証においては、上記のような留意すべき事項があることを踏まえてもなお、生活扶助基準額と第1・十分位 の消費水準と比較すべきとの結論を採った上で、最終的に、生活扶助基準額と第1・十分位の消費水準とを比較した結果を前提とする平成19年報告書が作成されているから、平成19年検証は、上記の留意すべき事項等の原告らが指摘する事情も織り込んだ上で、平成19年検証において第1・十分位の消費水準をもって生活扶助基準額との比 較の対象とすることを前提に行われたものと認められる。 したがって、原告らが指摘する事情は、生活扶助基準検討会の判断が不合理であることを基礎付けるものとはいえず、原告らの主張は、採用することができない。 ⒝ 原告らは、前記a②につき、夫婦子1人世帯においては、第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及率が平均的な 世帯と比較して明らかな差があることに加え、第1・十分位に属する世帯における必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較して大きな差があるものが多 ける必需的な耐久消費財の普及率が平均的な 世帯と比較して明らかな差があることに加え、第1・十分位に属する世帯における必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較して大きな差があるものが多数あることからすれば、前記a②の点も、生活扶助基準額と第1・十分位の消費水準とを比較すべき根拠とはなり得ない旨主張し、これに沿う証拠(甲A95の4)もある。 しかしながら、前記第2の2⑴イのとおり、生活保護制度は、最低限度の生活(「健康で文化的な生活水準を維持することができるもの」(生活保護法3条。最低生活の原理))を保障するものであって、生活扶助基準額の検証に当たっても、かかる原理等を前提に、前記aのとおり、昭和39年中間報告以降、専門家による組織が関与してされた 検証等においては、一般低所得者世帯との比較という観点で第1・十分位の消費水準に着目した検討が行われてきたものである。そして、これは、生活保護専門分科会を始めとする専門家による組織が、その有する専門的知見を前提として、生活扶助基準額と比較する対象として第1・十分位の消費水準を採用するのが相当であるとの判断の下、 累次の報告書、意見書等を作成してきたことにほかならず、平成19年検証においても、従前の累次の専門家による組織が関与してされた検証等と同様、「一般低所得世帯との比較」として、第1・十分位世帯の消費水準を用いることとされているところ、本件においては、平成19年検証とそれ以外の従前の累次の専門家による組織が関与して された検証等との間で、生活扶助基準額と比較すべき対象を異にすべ き具体的な事実の変化があったことをうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらない。 この点、原告らは、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要性は、生活扶助 すべき対象を異にすべ き具体的な事実の変化があったことをうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらない。 この点、原告らは、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要性は、生活扶助基準を改定する方式として水準均衡方式が採用されたことにより新たに生じた課題であるところ、平成15年中 間取りまとめに至るまで、生活扶助基準の妥当性の検証が行われなかったから、平成19年報告書の記載は、その前提自体が誤っている旨主張するが、認定事実⑴から⑶までのとおり、保護基準が定められて以降、生活扶助基準の水準の妥当性が継続的に問題とされ、専門家による組織が関与してされた検証等が累次行われてきたことは明らか であり、生活扶助基準を改定する方式として水準均衡方式が採用されたことによって初めて生活扶助基準の妥当性が問題となったわけではないから、原告らの主張は、その前提を異にするものであって、採用することができない。 そうすると、一般低所得世帯である第1・十分位世帯と平均的な世 帯との間で、必需的な耐久消費財の普及率や必需的な消費品目の購入頻度において、原告らが指摘するような一定の差異が存するとしても、専門家による組織である生活扶助基準検討会が、そのような差異があることも踏まえつつ、その有する専門的知見に基づき、生活扶助基準額と比較する対象として第1・十分位の消費水準を採用したものであ り、かつ、従前の検証との間で生活扶助基準額と比較する対象に関する取扱いを異にすべき具体的な事情があったとも認め難い以上、上記の生活扶助基準検討会の専門的知見に基づく判断が不合理であるとは評価し難いというべきである。 したがって、原告らが指摘するとおり、第1・十分位世帯における 必需的な耐久消費財の普及状況や衣類等の必需的な消費品目 の専門的知見に基づく判断が不合理であるとは評価し難いというべきである。 したがって、原告らが指摘するとおり、第1・十分位世帯における 必需的な耐久消費財の普及状況や衣類等の必需的な消費品目の購入 頻度につき、平均的な世帯と比して一定の差異があるとしても、その具体的な数値をもって直ちに、生活扶助基準検討会の判断が不合理であることが基礎付けられるとは認められないから、原告らの主張は、採用することができない。 c 以上によれば、生活扶助基準検討会が、平成19年検証において、生 活扶助基準額と比較する対象を第1・十分位の消費水準と設定した判断については、原告らが主張するところを踏まえても、不合理であるとは認められない。 小括以上によれば、原告らが指摘する諸点を踏まえても、平成19年報告書 において指摘された内容や平成20年度以降の生活扶助基準の改定の状況及び経済の状況等を踏まえてデフレ調整をする必要があるとした厚生労働大臣の判断が、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであるとは認められず、当該判断が違法であるということもできない。 イ物価(消費者物価指数)を指標とすることの合理性について 被告が説明する厚生労働大臣の判断の過程の概要毎年度の生活扶助基準の改定は、従前、消費を基礎とする水準均衡方式に基づいてされてきたところ、本件保護基準改定をするに際し、仮に消費を基礎とする改定をした場合、生活扶助基準額の減額の幅が必要以上に大 きくなることが想定されたのに対し、一般国民の生活水準との均衡を図るという水準均衡方式の前提とする考え方の下においては、消費支出のほかに、物価、賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定することも十 ることが想定されたのに対し、一般国民の生活水準との均衡を図るという水準均衡方式の前提とする考え方の下においては、消費支出のほかに、物価、賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定することも十分考えられた。そこで、厚生労働大臣は、生活扶助基準の水準の改定について、消費を基礎としつつ一般国民の生活水準との均衡を図るという水 準均衡方式の考え方を堅持しつつも、平成20年以降のデフレ傾向によっ て保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したことにより、保護受給世帯と一般国民との間の不均衡が生じていることから、保護受給世帯と一般国民との間の不均衡を是正するためには、その原因の1つである平成20年以降のデフレ傾向による保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加に着目した生活扶助基準の水準の見直しを行うのが 直截的かつ相当であると判断し、客観的な経済指標の1つである物価を基にして生活扶助基準の水準の検討、見直しを行うこととした。 前記の厚生労働大臣の判断の過程については、その内容自体に、特に不合理な点があるとは認められず、また、生活扶助基準の改定の指標の在り方についても検討が必要であって、その一例として、国民にとってわか りやすいものとするという観点から、消費者物価指数の伸びも改定の指標の1つとして用いることなども考えられる旨の見解を示した平成15年中間取りまとめ(認定事実⑶イc⒝)とも整合的であって専門的知見との整合性も認められる上、平成21年の2人以上の世帯の1か月平均消費支出が、平成16年全消調査に比べ、名目で6.0%減少していることを 示していた平成21年全消調査の結果(同⑹イ)という統計等の客観的な数値との合理的関連性も認められるから、一定の合理性があるものと認められる 全消調査に比べ、名目で6.0%減少していることを 示していた平成21年全消調査の結果(同⑹イ)という統計等の客観的な数値との合理的関連性も認められるから、一定の合理性があるものと認められる。 a 原告らは、厚生労働大臣において、本件保護基準改定をするに際し、生活扶助基準を改定する方式につき、「消費者物価指数を独立した要素 として考慮する」という水準均衡方式とは相いれない独自の方式に変更しようとするのであれば、基準部会における慎重な検討を経るべきであったにもかかわらず、かかる慎重な手続を一切経ることなく、消費者物価指数を考慮するデフレ調整をした厚生労働大臣の判断には、その判断の過程に重大な過誤があって、その有する裁量権の範囲からの逸脱又は 濫用があることは明らかである旨主張する。 しかしながら、前記⑴イのとおり、生活保護法が立法された経緯や本件保護基準改定がされる以前の保護基準が改定された経過を踏まえても、保護基準を改定するに先立って専門家による組織が関与してされた検証等の結果が存しないことをもって直ちに、生活保護法が厚生労働大臣に対して与えている保護基準を改定する際に行使される専門技術 的かつ政策的な見地からの裁量権が、一定の制約を受けるなどということはできず、専門家による組織が関与してされた検証等の結果は、飽くまで、厚生労働大臣がした判断の合理性を支える1つの手段又は要素にとどまり、このことは、厚生労働大臣がした判断の合理性ひいては適法性を裁判所が審査する場合においても同様であると解するのが相当で ある(前記ア参照)から、厚生労働大臣が、生活扶助基準を改定するに当たって消費者物価指数をその直接の指標として用いるに際し、基準部会等の専門家による組織が関与してされた検証等の結果を 当で ある(前記ア参照)から、厚生労働大臣が、生活扶助基準を改定するに当たって消費者物価指数をその直接の指標として用いるに際し、基準部会等の専門家による組織が関与してされた検証等の結果を得ていないとしても、これをもって直ちに、上記の厚生労働大臣の判断に瑕疵があると評価することはできず、また、本件保護基準改定において、厚生 労働大臣が有する裁量権の範囲からの逸脱、又はその濫用があったことを基礎付ける事情を構成するともいえない。 また、原告らの主張のうち、「消費者物価指数を独立した要素として考慮する」方式が、水準均衡方式とは相いれないものであるとする点についても、上記のとおり、保護基準を改定することに係る厚生労働大臣 の判断は、専門家による組織が関与してされた検証の結果等に法的に拘束されるものではないことからすれば、厚生労働大臣は、生活扶助基準を改定する方式について、昭和58年意見具申に基づいて採用した水準均衡方式のみに拘束され、それ以外の方式を用いて生活扶助基準を改定することができないとは認められない。そして、デフレ調整は、前記 のとおり、デフレ傾向の中にあっても生活扶助基準額が据え置かれてき たことに起因する保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加を是正する目的に基づいてされたものであり、水準均衡方式による改定とは、その趣旨及び目的が必ずしも同一ではないから、生活扶助基準を改定する方式として、従前の水準均衡方式と消費者物価指数を考慮するという方式とが、消費に着目するか、物価の変動に着目するかという点に おいて考え方に相違があるとしても、そのことのみをもって、本件保護基準改定が不合理なものであることが基礎付けられると評価することはできない。 よって、原告らの主張は、採用することができな に おいて考え方に相違があるとしても、そのことのみをもって、本件保護基準改定が不合理なものであることが基礎付けられると評価することはできない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 b 原告らは、過去の専門家による組織が関与してされた検証等の際にも、 生活扶助基準を改定する際の考慮要素(指標)として、消費者物価指数を考慮することについては強い異論が出ていた旨主張し、確かに、認定事実⑵イのとおり、昭和58年意見具申においては、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである旨の指摘がされている。 しかしながら、前記⑴イのとおり、保護基準を改定することに係る厚生労働大臣の判断が、専門家による組織が関与してされた検証等の結果に法的に拘束されるものではない。仮に、この点をひとまずおくとしても、昭和58年意見具申は、本件保護基準改定がされる約30年前に、その当時の経済の状況(なお、昭和50年代においては、消費者物価指 数や家計の消費支出が継続的に5%を優に超える上昇率を示していたとうかがわれる(乙A11)。)を踏まえて検討されたものである。 そうすると、昭和58年意見具申における上記の指摘が、認定事実⑹アのとおり、賃金、物価及び家計消費がいずれも下落する傾向を示す経済の状況(デフレ傾向)が続くといった平成20年以降の経済の状況を 前提として保護基準を改定する場合のことをも想定した指摘であると は直ちには解し難い。また、前記のとおり、昭和58年意見具申がされた後の平成15年中間取りまとめにおいては、消費者物価指数の伸びも、保護基準を改定する際の指標の1つとして用いることなども考えられるとの見解が示されていることも併せ考慮すれば、物価( 意見具申がされた後の平成15年中間取りまとめにおいては、消費者物価指数の伸びも、保護基準を改定する際の指標の1つとして用いることなども考えられるとの見解が示されていることも併せ考慮すれば、物価(消費者物価指数)を生活扶助基準を改定する際の指標とすることが、本件保護基準 改定がされるよりも以前に各専門家による組織が関与してされた検証等の結果と整合しないものであったとは評価することができない。 よって、原告らの上記の指摘を踏まえても、消費者物価指数をデフレ調整をする際の指標とすることとした厚生労働大臣の判断が一定の合理性を有することが否定されることになるとは認められない。 原告らは、消費者物価指数の測定と、家計の可処分所得の測定は、全く異なるものであって、消費者物価指数の変化率そのものは、これによって生じる保護受給世帯の実質的な可処分所得の変動の割合を反映するものではないから、物価の変動に起因する被保護者の可処分所得の実質的な変動を把握するために、消費者物価指数を考慮することは不合理である旨主 張する。 しかしながら、生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの等を、原則として金銭給付の方法によって提供するものであって(前記第2の2⑴ウ)、当該金銭給付の具体的な金額を定めるための生活扶 助基準は、生活扶助によって賄うべき物品・サービスの購入に充てるための金銭給付の額について定めるものであるといえる。そうすると、生活扶助基準の水準は、保護受給世帯における収入額(可処分所得)、すなわち購買力として捉える余地があることになるところ、収入額(可処分所得)が変化しない場合であっても、物価が変動する場合には、購買力が実 助基準の水準は、保護受給世帯における収入額(可処分所得)、すなわち購買力として捉える余地があることになるところ、収入額(可処分所得)が変化しない場合であっても、物価が変動する場合には、購買力が実質的に 変動することになることは、当然の理である。 したがって、デフレ調整は、前記アのとおり、平成20年から平成23年までの間、物価の下落(デフレ)が続く一方で、生活扶助基準が改定されないままの状況が続いていたこと(認定事実⑹ア)を前提に、その間の被保護者の可処分所得の実質的な変動(物価の下落による購買力の変動)を生活扶助基準に反映させることを目的とするものであるから、物価(消 費者物価指数)をその指標とすることは、上記の目的に整合しており、かつ、一定の合理性があると認められる。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 原告らは、水準均衡方式において準拠する民間最終消費支出の伸びは、名目値であることからすれば、物価の変動は、水準均衡方式に内包されて いることになるにもかかわらず、これに重ねて、同期間の物価変動率を生活扶助基準に反映させる「デフレ調整」をすることは、物価の下落を二重に評価するものであって、不合理である旨主張する。 しかしながら、デフレ調整の対象となる期間は、平成20年から平成23年までであるところ(認定事実⑼ウ)、厚生労働大臣は、平成19年報告 書において指摘された平成19年検証の結果を踏まえ、生活扶助基準を一般国民の消費実態に適合したものとする見直しについて検討を行ったものの、平成20年当時の原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めること等の民間最終消費支出の伸びとは別の事情を理由として、平成20年度以降平成24年度に至るまで、生活扶助基準額 いて検討を行ったものの、平成20年当時の原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めること等の民間最終消費支出の伸びとは別の事情を理由として、平成20年度以降平成24年度に至るまで、生活扶助基準額を据え置く旨の判断をし たものであって(同⑸ウ)、この間の民間最終消費支出の伸び等を考慮して当該判断をしたものとは認められない。 そうすると、平成20年以降の消費や物価の変動については、デフレ調整がされるまで、生活扶助基準に反映されてこなかったものと認められるから、デフレ調整をしたことにより、平成20年から平成23年までの間 について、名目値である民間最終消費支出の伸びと物価変動率とを二重に 評価したことにはならないというべきである。 したがって、原告らの主張は、その前提を異にするものであり、採用することができない。 以上によれば、原告らが指摘する諸点を踏まえても、デフレ調整をするに当たり、物価(消費者物価指数)をその指標とすることとした厚生労働 大臣の判断が、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであるとは認められず、当該判断が違法であるということもできない。 ウデフレ調整の対象となる期間の始期を平成20年としたことについて 被告が説明する厚生労働大臣の判断の過程の概要 厚生労働大臣が、物価変動率を算定する期間の始期を平成20年としたのは、デフレ調整の目的が、平成20年以降のデフレ傾向による保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による保護受給世帯と一般国民と間の不均衡を是正することにあったためである。すなわち、平成19年検証において、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態と比較し て高いという見解が示され、生活扶助基準 給世帯と一般国民と間の不均衡を是正することにあったためである。すなわち、平成19年検証において、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態と比較し て高いという見解が示され、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れていたと評価することができる状況にあったが、平成20年時点においては、平成19年検証に基づく生活扶助基準額を減額する旨の改定がされず、その後、平成20年9月のリーマン・ショックに端を発した世界的な金融危機が我が国の消費等の実体経済に大きな影響を 与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況に至ったところ、厚生労働大臣は、このような平成20年以降のデフレ傾向により、保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準の水準が実質的に引き上げられた)と評価することができる状況にあり、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡がより一層顕著とな っていたことから、かかる平成20年以降のデフレ傾向によって拡大した 生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡を是正するためにデフレ調整をしたものである。 前記の厚生労働大臣の判断の過程については、①平成19年報告書において、夫婦子1人(有業者あり)世帯及び単身高齢世帯(60歳以上)につき、第1・十分位における世帯当たり生活扶助相当支出額と保護受給 世帯の平均の生活扶助基準額とを比較すると、夫婦子1人(有業者あり)世帯につき約1.1%、単身世帯(60歳以上の場合)につき約13.3%、生活扶助基準額の方が高い旨が指摘されていること(前記アb)、②厚生労働大臣が、本件保護基準改定をするに至るまで、平成19年報告書の検証結果を踏まえた生活扶助基準の見直しを行わなかったこと(同c)、 ③我が国に い旨が指摘されていること(前記アb)、②厚生労働大臣が、本件保護基準改定をするに至るまで、平成19年報告書の検証結果を踏まえた生活扶助基準の見直しを行わなかったこと(同c)、 ③我が国においては、完全失業率が平成21年以降悪化し、さらには、一般勤労世帯の賃金もおおむね下落する傾向を示し、消費者物価指数及び家計消費支出についても、平成21年以降、下落ないし減少を続けるなど、賃金、物価及び家計消費がいずれも下落する傾向を示すといった経済の状況が、平成20年から平成23年までの間は続いており、また、平成21 年の2人以上の世帯の1か月平均消費支出は、平成16年に比して名目で6.0%(年率1.2%)の減少、消費者物価の変動を除いた実質で6. 1%(年率1.3%)の減少となっていたこと(同d)の各事情に照らせば、平成20年以降、デフレ傾向にあったにもかかわらず、消費等の動向を基礎として生活扶助基準が改定されなかったことにより、保護受給世帯 の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準額が実質的に引き上げられた)と評価し得る状況にあったと認められるから、それ自体として特に不合理なものとは認められず、また、その前提となる経済統計等の客観的な数値等との合理的関連性も認められるのであって、デフレ調整をする目的に照らして、一定の合理性があるものと認められる。 a 原告らは、平成19年報告書は、その前の専門家による報告(平成1 6年報告書)以降の平成16年から平成19年までのいずれかの時点において、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態に比べて高くなったとの評価を示しているにとどまることに加え、本件保護基準改定がされる以前に最後に生活扶助基準の水準が改定されたのが平成16年度であったことからすれば、デフレ 般低所得世帯の消費実態に比べて高くなったとの評価を示しているにとどまることに加え、本件保護基準改定がされる以前に最後に生活扶助基準の水準が改定されたのが平成16年度であったことからすれば、デフレ調整の対象となる期間の起点は、 生活扶助基準の水準が改定された直近の年である平成16年か、遅くとも上記の評価が示された中での最も遅い時期である平成19年とするのが論理的である旨主張し、これに沿う事実(認定事実⑶イ、前記①及び②)もある。 b しかしながら、証拠(甲A118、乙A11)及び弁論の全趣旨によ れば、平成16年から平成19年までの総務省CPIの上昇率は、前年比で平成16年が0.0%、平成17年が-0.3%、平成18年が0. 3%、平成19年が0.0%であったと認められ、平成16年から平成19年までの間においては、必ずしもデフレ傾向が生じているとはいえないことが認められる。また、厚生労働大臣は、民間最終消費支出の伸 び等を考慮して、平成17年度から平成19年度までの間、生活扶助基準額を据え置く旨の判断を続けたと認められる一方(認定事実⑸イ)、平成20年度から平成24年度までについては、平成19年報告書の検証結果を踏まえ、生活扶助基準を消費実態に適合したものとする見直しについて検討を行ったものの、当時の原油価格の高騰が消費に与える影 響等を見極めることなどを理由として、生活扶助基準を据え置く旨の判断をしたものであって(同ウ)、かかる判断は、この間の民間最終消費支出の伸び等を考慮した結果ではない。 その上で、前記のとおり、デフレ調整は、平成20年以降のデフレ傾向によって拡大した生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との 不均衡を是正するために、生活扶助基準の水準を適正化することを目的 とするもの おり、デフレ調整は、平成20年以降のデフレ傾向によって拡大した生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との 不均衡を是正するために、生活扶助基準の水準を適正化することを目的 とするものであることからすれば、厚生労働大臣が、平成19年報告書における指摘を踏まえて生活扶助基準を一般国民の消費実態に適合したものに改定する必要があることを認識しつつも、生活扶助基準を改定することを留保してきた平成20年度以降をデフレ調整の対象となる期間とすることは、上記のようなデフレ調整の目的に照らし、一定の合 理性が認められる。 c 他方、原告らが主張する平成16年をデフレ調整の対象となる期間の始期とする場合には、上記のとおり、厚生労働大臣は、平成17年度から平成19年度までの期間につき、既に、民間最終消費支出の伸び等の経済の動向を考慮して生活扶助基準を据え置く旨の判断を一度してい るにもかかわらず、改めて、同じ期間における物価の変動という経済の動向を再度考慮することになるところ、原告らの主張するところを踏まえても、消費支出の変動と物価の変動とを重複して考慮すべき必要性や相当性は見いだせないから、原告らの主張は、採用することができない。 また、平成19年度をデフレ調整の対象となる期間の始期とする場合 には、上記のような消費支出の変動と物価の変動を重複して考慮するという問題は生じないものの、前記⑴アのとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定について、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有し、かかる裁量権の中には、デフレ調整をする場合における物価下落率を算定する始点となる時期を定めること等の当該算定の方法を設 定することも含まれると解されることを前提とすると、原告らの主張するところによっても、平成19年をデフレ調整 場合における物価下落率を算定する始点となる時期を定めること等の当該算定の方法を設 定することも含まれると解されることを前提とすると、原告らの主張するところによっても、平成19年をデフレ調整の対象となる期間の始期としなければならない必然性があったとまでは認められない(原告の立論を前提とした場合に厚生労働大臣の判断が不当である旨を論じるにとどまる。なお、後記における判示も参照。)から、前記の認定及び 判断を覆すには足りない。 d よって、原告らの主張は、採用することができない。 原告らは、平成20年は、原油価格の高騰等の諸事情によって近年では物価上昇率が突出して大きかった年であり、生活扶助基準を改定するに当たり、平成20年の消費者物価指数を参考資料とすべきではなかったにもかかわらず、厚生労働大臣は、上記の点に着目し、物価の下落率を不当に 大きく見せることを目的として、デフレ調整の対象となる期間の始期を平成20年と設定したとみるのが自然であるから、デフレ調整の対象となる期間の始期を平成20年と定めた厚生労働大臣の判断は恣意的であって不合理である旨主張し、これに沿う証拠(甲A118)もある。 しかしながら、前記からまでのとおり、デフレ調整の対象となる期 間の始期を平成20年と設定した厚生労働大臣の判断には、一定の合理性が認められるところ、本件全証拠によっても、上記の厚生労働大臣の判断が、物価の下落率が大きくなるよう意図的かつ恣意的に行われたものであることを基礎付ける具体的な事情は認められず、原告らの主観的な憶測にとどまるものといわざるを得ない。 以上に加え、仮に、平成19年を始期として物価変動率を算定したとしても、生活扶助相当CPIの変動率はマイナス4.60%であって(弁論の らの主観的な憶測にとどまるものといわざるを得ない。 以上に加え、仮に、平成19年を始期として物価変動率を算定したとしても、生活扶助相当CPIの変動率はマイナス4.60%であって(弁論の全趣旨。乙A102も参照)、平成20年を始期とした本件下落率との差は0.18%にとどまることも踏まえれば、平成20年をデフレ調整の対象となる期間の始期とする旨の厚生労働大臣の判断が、物価の下落率を 不当に大きく見せることを目的としたと認めることは困難であり、また、厚生労働大臣が、デフレ調整をするに当たり、結果として平成19年から平成20年の間の経済の動向を考慮しなかったとみる余地があること(前記参照)を前提としたとしても、厚生労働大臣がその有する裁量権に基づいてしたデフレ調整に係る判断につき、考慮すべき事項を考慮すること を怠った違法があるとまでは評価することはできない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 以上によれば、その余の原告らが指摘する諸点を踏まえても、デフレ調整の対象となる期間の始期を平成20年と定める旨の厚生労働大臣の判断が、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであるとは認められず、当該判断が違法であるということもできない。 エデフレ調整の対象となる期間の終期を平成23年としたことについて 被告が説明する厚生労働大臣の判断の過程の概要厚生労働大臣は、本件保護基準改定をする旨の判断をした当時の最新の総務省CPIのデータは平成23年のものであったため、物価変動率の算定の終期を平成23年とした。 前記の厚生労働大臣の判断の過程については、平成23年総務省CPIのデータが平成24年1月27日に公表されたこと(乙 であったため、物価変動率の算定の終期を平成23年とした。 前記の厚生労働大臣の判断の過程については、平成23年総務省CPIのデータが平成24年1月27日に公表されたこと(乙A42)、内閣が、平成25年1月29日、本件保護基準改定を反映した後の保護に要する費用のうち国の負担すべき部分等を含む平成25年度の政府予算案を閣議により決定し、同年2月28日、これを国会に提出し、同日、衆議院 予算委員会において、同予算案の審査が開始されたこと(認定事実⑻ア)に照らせば、その内容自体に、特に不合理な点があるとは認められず、その前提となる客観的な事実関係との合理的関連性も認められるから、一定の合理性があるものと認められる。 原告らは、政策判断を行うために統計データを使用する場合には、原則 として、最新のデータが用いられるべきところ、本件保護基準改定をすることが検討された時期における最新の総務省CPIのデータは平成24年のものであったから、厚生労働大臣は、本件保護基準改定をするに当たっては、デフレ調整の対象となる期間の終期を平成24年とした上で、平成24年総務省CPIのデータを使用すべきであった旨主張し、これに沿 う証拠(乙A44の1~4)もある。 しかしながら、本件保護基準改定については、生活扶助相当CPIを算定する方法(認定事実⑿アからウまで)からも明らかなとおり、その前提となる検討は相当に複雑かつ膨大であって、その作業を平成24年総務省CPIのデータが公表された平成25年1月25日(乙A44の1~4)から平成25年度の政府予算案が閣議により決定された同月29日まで のわずか4日間で実施することは現実的には困難というほかない。また、前記⑴アのとおり、厚生労働大臣は 5日(乙A44の1~4)から平成25年度の政府予算案が閣議により決定された同月29日まで のわずか4日間で実施することは現実的には困難というほかない。また、前記⑴アのとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定について、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有するのであって、かかる裁量権には、生活扶助基準を改定する時期や、当該改定の検討に当たってどのような統計資料を用いるのかといった点を判断することも含まれると解 すべきところ、生活扶助基準を改定し、それを実施するに至るまでにすべき各種の検討やその内容の周知には、相応の時間を要することに加え、ゆがみ調整やデフレ調整を内容とする本件保護基準改定が、いずれも生活扶助基準の内容を適正なものとすることを目的とするものであって、これを可及的速やかに実施する要請も存すると認められる。 以上の点に照らせば、平成24年総務省CPIのデータが公表された時期等の原告らの主張するところを踏まえても、厚生労働大臣が、本件保護基準改定をするに当たって、現実的に使用することが可能な最新のデータとして平成23年総務省CPIのデータを選択した上で、デフレ調整の対象となる期間の終期を同年とする旨の判断をしたことにつき、不合理な点 があるとは認められない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 以上によれば、その余の原告らが指摘する諸点を踏まえても、平成23年総務省CPIのデータを用いることを前提に、デフレ調整の対象となる期間の終期を平成23年とする旨の厚生労働大臣の判断が、その有する裁 量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであるとは認めら れず、当該判断が違法であるということもできない。 オ生活扶助相当CPIを算定するに際してウエイト 、その有する裁 量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであるとは認めら れず、当該判断が違法であるということもできない。 オ生活扶助相当CPIを算定するに際してウエイト参照時点及び指数参照時点を平成22年としたことについて 被告が説明する厚生労働大臣の判断の過程の概要本件保護基準改定がされた平成25年当時、家計調査(総務省CPI) のウエイトのデータとしては、平成17年の基準によるもの(平成17年ウエイト)及びそれ以前の基準によるものと、平成22年の基準によるもの(平成22年ウエイト)が存在したところ、国民の消費の内容は経時的に変化することからすれば、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するためには、物価指数を算定する時点に可能な限り近接した時点の消費の 構造を示すデータを用いるのが相当と考えられた。そこで、厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定するに当たり、平成22年ウエイトを用いることとした。 前記の厚生労働大臣の判断の過程については、①消費者物価指数の算定においては、個々の指数品目の値動きを総合するに当たり、家計の消費 支出全体、つまり、「買い物かご」全体に占めるそれぞれの指数品目に係る支出金額の割合であるウエイトが用いられていること(認定事実⑾イ)、②総務省CPIを算定するに当たって用いられる指数品目別のウエイトは、家計調査の結果を基に計算されているところ、総務省CPIにおいても、時間の経過とともに消費生活の内容が変化することを踏まえ、基準時 (ウエイト参照時)を5年ごとに改定しており、具体的には、西暦年の末尾が0と5の年を基準時として改定していること、③本件保護基準改定がされた時点の直近の時点において、ウエイト参照時が改定さ (ウエイト参照時)を5年ごとに改定しており、具体的には、西暦年の末尾が0と5の年を基準時として改定していること、③本件保護基準改定がされた時点の直近の時点において、ウエイト参照時が改定されたのは、平成22年(2010年)であったこと(上記②及び③につき、同)、④ILOマニュアルにおいても、現在の消費パターンにできるだけ近づけるた めには、なるべく直近のウエイトを用いる方が望ましいと考えられる旨の 見解が示されていること(甲A123、乙A85)の各事実に照らせば、その内容自体に、特に不合理な点があるとは認められず、その前提となる客観的な事実関係との合理的関連性や専門的知見との整合性も認められるから、一定の合理性があるものと認められる。 原告らは、直近の消費構造を反映するという観点について、平成17年 ウエイトにつき、総務省は、平成19年において中間年における見直しをした上で、これを平成20年1月から適用していたから、生活扶助相当CPIの算定に当たっても、平成17年ウエイト(平成19年に見直しされた後のもの)を用いるのがむしろ合理的であって、平成22年ウエイトを用いることとした厚生労働大臣の判断は不合理である旨主張する。 しかしながら、前記⑴アのとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定について、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているのであって、かかる裁量権の中には、デフレ調整をする場合における物価下落率を算定する方法の設定も含まれると認められることは、前記ウcに判示したとおりである。 そうすると、仮に、原告らが主張するように平成17年ウエイト(平成19年に見直しされた後のもの)を採用する場合には、平成19年に平成17年ウエイトについて中間年における見直しが実 である。 そうすると、仮に、原告らが主張するように平成17年ウエイト(平成19年に見直しされた後のもの)を採用する場合には、平成19年に平成17年ウエイトについて中間年における見直しが実施されたこと(甲A32)を踏まえても、デフレ調整の終期である平成23年から見て4年前の時点の消費構造(ウエイト)を基礎として生活扶助相当CPIを算定する ことになり、平成22年の消費構造(ウエイト)を採用する場合と比して、国民の消費の内容の経時的な変化による現実の消費構造と採用するウエイトとの間のかい離がより顕著となるとの問題点が生じることに加え、国民の消費の内容は経時的に変化することから、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するために、物価指数を算定する時点に可能な限り近接し た時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当であること自体は、前 記④のとおり、ILOマニュアルにおいても認められていることにも照らすと、平成20年から平成23年までというデフレ調整の対象となる期間を前提とする限り、最も直近であるといえる平成22年ウエイトを採用し、平成17年ウエイト(平成19年に見直しされた後のもの)を採用しないこととした厚生労働大臣の判断は、上記の厚生労働大臣が有する裁量 権の範囲にとどまるもの(いずれのウエイトを採用するかは、選択し得る複数の選択肢の中からいずれの選択肢を選択するかの問題の範ちゅうにとどまるもの)と認められる。 したがって、原告らの指摘する事情は、平成22年ウエイトを用いる旨の厚生労働大臣の判断に一定の合理性が認められる旨の前記の判断を 覆すには足りない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 原告らは、物価指数の計算における標準的な指数としては、総務省CPIにおいても採用 性が認められる旨の前記の判断を 覆すには足りない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 原告らは、物価指数の計算における標準的な指数としては、総務省CPIにおいても採用されている基準時(期首)をウエイト参照時点とするラスパイレス指数が用いられるのが一般的であるにもかかわらず、何らの統 計学上の根拠もなく、ウエイト参照時点を平成22年とする独自の算定方法を用いて生活扶助相当CPIを算定した厚生労働大臣の判断は不合理である旨主張する。 しかしながら、認定事実⑾イのとおり、消費者物価指数を算定する際に用いられる方法としては、ILOマニュアルにおいて紹介されているも のとしても、ラスパイレス指数以外にも複数のものがあることに加え、世界各国においても、それぞれの特徴を踏まえ、その目的に照らして相当と考えられる算定の方法(指数)が採用されていると認められること(乙A26)からすれば、生活扶助相当CPIにつき、ラスパイレス指数を採用しないことをもって直ちに統計学上の根拠を欠くことにはならない。そし て、認定事実⑿アのとおり、生活扶助相当CPIを算定する方法は、①総 務省CPIを算定する基礎となっている指数品目から非生活扶助相当品目を除外している点及び②ウエイト参照時点(かつ指数参照時点)を平成20年と平成23年の間に位置する平成22年とした点を除き、基本的には総務省CPIと算定する方法が同一であるといえるところ、認定事実⑾イaのとおり、一般的な指数算式の1つとされるロウ指数は、比較され る2つの時点間において、一般に「買い物かご」と呼ばれる消費構造において、ある一定量の財又はサービスを購入するために要する全費用の割合の変化として指数を定義することで得られるものとされている。 る2つの時点間において、一般に「買い物かご」と呼ばれる消費構造において、ある一定量の財又はサービスを購入するために要する全費用の割合の変化として指数を定義することで得られるものとされている。 そうすると、生活扶助相当CPIを導く算式は、上記のロウ指数の一例と評価することが可能であるといえ、ゆえに、一定の統計学上の根拠を有 するものと評価することができる。 a 原告らは、ロウ指数は、「固定買い物かご」方式を前提とするものであるところ、「買い物かご」を固定せず、マーケットバスケット方式を逸脱して算定された生活扶助相当CPIは、そもそもロウ指数ではない旨主張する。 b 確かに、認定事実⑿イ及びによれば、平成23年生活扶助相当CPIの指数品目の数は、平成22年指数品目から非生活扶助相当品目を控除した517品目であるのに対し、平成20年生活扶助相当CPIの指数品目の数は、平成22年指数品目のうち平成20年においても総務省CPIを算定するに当たって指数品目とされていた品目(すなわち、 平成20年総務省CPIは平成17年を基準年とするため、平成17年指数品目)から非生活扶助相当品目を控除した485品目であり、両者の指数品目の数には、平成22年ウエイトを定めるに当たって新たに採用された32品目(平成22年新規採用品目)が含まれるか否かという点で差異があると認められる。 しかしながら、後に掲記する証拠によれば、①一部の品目の価格を観 察することができないという状況は、欠価格の問題などと呼ばれ、物価指数を作成する実務においてしばしば発生する問題であるとされ(乙A86)、②ILOマニュアルにおいても、欠価格の問題が生じ得ることを前提に、当該問題を処理する方法が紹介されているところ(乙A85・283~28 る実務においてしばしば発生する問題であるとされ(乙A86)、②ILOマニュアルにおいても、欠価格の問題が生じ得ることを前提に、当該問題を処理する方法が紹介されているところ(乙A85・283~289頁)、③現に、総務省CPIの作成においても、欠価格の 問題が生じた場合には、「類似品目の物価動向」によって「欠価格品目の物価動向」を推測する方法、すなわち「欠価格品目の価格動向」について「類似品目の価格動向」と同一であったと仮定する方法が採用されている(乙A86、87)ことの各事実が認められる。 c そうすると、欠価格の問題が生じたとしても、なお統計学上有意な消 費者物価指数を算定することは可能であると認められるところ、このことにつき、本件のように欠価格が生じている時点(本件においては平成20年)が欠価格が生じていない時点(本件においては平成22年)より前である場合においては、上記と理論的に異なると解すべき統計学上の知見も見いだせない。 そして、欠価格の問題については、ILOマニュアルにおいて「欠価格となった品目を計算上除外して物価指数を作成する」という欠価格の問題を処理する方法も紹介されているところ(乙A85・283頁)、かかる方法を採用する場合、欠価格となった品目の価格動向については、「他の全ての品目の価格動向」と同じと仮定したことを意味する。すな わち、欠価格の問題を処理する方法として、上記のような方法を用いる場合には、欠価格の問題が生じた品目については、当該品目が他の全ての品目の価格動向と同じ動向であると仮定することによって「買い物かご」の中身を固定することを前提に、欠価格の問題が生じた一部の品目につき、統計学上必要な処理をしたにすぎず、「買い物かご」の内容を変 える処理をしたわけではないと評価す ことによって「買い物かご」の中身を固定することを前提に、欠価格の問題が生じた一部の品目につき、統計学上必要な処理をしたにすぎず、「買い物かご」の内容を変 える処理をしたわけではないと評価する余地もあると認められる。 d 以上によれば、原告らが主張するとおり、仮に、ロウ指数が、「固定買い物かご」方式を前提とするものであるとしても、平成20年生活扶助相当CPIを算定する際に平成22年新規採用品目が含まれていない点については、平成20年総務省CPIにおいて欠価格の問題が生じた平成22年新規採用品目につき、「欠価格となった品目を計算上除外し て物価指数を作成する」という欠価格の問題を処理する方法を採用したものと評価することができ、平成20年及び平成23年の各生活扶助相当CPIは、いずれも固定された同じ「買い物かご」を前提として算定されたものと評価することができるから、「固定買い物かご」方式を逸脱したものとは認められないというべきである。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 e なお、生活扶助相当CPIにおいて採用されたと認められる「欠価格となった品目を計算上除外して物価指数を作成する」という欠価格の問題を処理する方法(前記d)は、前記bの総務省CPIにおける方法とは異なっているものの、そもそも、欠価格の問題の処理については複数 の方法が想定されるのであって(乙A85・283~289頁)、総務省CPIにおける方法が唯一のものというわけではないことに加え、①生活扶助相当CPIは、元々総務省CPIを算定する前提となる指数品目の一部だけを対象とする指数品目(生活扶助相当品目)を前提に算定しているため、上位分類が同一でも生活扶助相当品目と非生活扶助相当品 目が混在することとなり、「同じ類 算定する前提となる指数品目の一部だけを対象とする指数品目(生活扶助相当品目)を前提に算定しているため、上位分類が同一でも生活扶助相当品目と非生活扶助相当品 目が混在することとなり、「同じ類に属する他の品目」を特定することが難しく、総務省CPIを算定する手順と同一の手順で処理することが困難であること、②欠価格は、その性質から、正解となる価格の動向を観察することが不可能であり、ILOマニュアルによって認められているどのような処理をするにしても「真の価格動向」との差異が生じるこ とは避けられないこと、③欠価格となっている品目(平成22年新規採 用品目)は、わずか32品目であり、支出ウエイトにして約3%(204/6393)にすぎず、その影響は限定的であると予想されること(以上、①から③につき、いずれも乙A86)等に照らすと、生活扶助相当CPIにおいて用いられた欠価格の問題を処理する上記の方法についても、一定の合理性があるものと認められる。 そうすると、厚生労働大臣が、総務省CPIにおける欠価格の問題を処理する方法とは異なる上記のような欠価格の問題を処理する方法を採用したことをもって、生活扶助相当CPIを算定する方法が統計学上の専門的知見に反する不合理なものであるとも認められない。 原告らは、仮に、生活扶助相当CPIがロウ指数に該当するとしても、 ロウ指数については、それが発案された当初から、厳密な方法論が確立されておらず、その後、現在に至るまでに、ラスパイレス指数等のより精緻な理論が確立されるに至った結果、淘汰されて使われなくなったのであって、また、ILOマニュアルにおける「実務的にあるいは経済学的にオーソライズされた指数算式」にかかる記述には含まれていないことなどから すれば、生活扶助相当CP されて使われなくなったのであって、また、ILOマニュアルにおける「実務的にあるいは経済学的にオーソライズされた指数算式」にかかる記述には含まれていないことなどから すれば、生活扶助相当CPIがロウ指数と解し得ることを根拠として「ウエイト参照時点は任意の時点でよい」と主張することは、統計学の専門的見地から見て正当化され得ないものである旨主張する。 しかしながら、第17回労働統計家会議が採択した「消費者物価指数に関する決議」(乙A62)によれば、確かに、ロウ指数が考案された以降、 基準時(ウエイト参照時点)についての議論が進展ないし成熟してきたことがうかがわれ、さらには「消費者物価指数作成の実際的な選択肢」としてラスパイレス指数が提示されているとは認められるものの、これを超えて、同決議につき、ロウ指数の考え方が統計学において淘汰されて使われなくなったという趣旨までが含まれているとは理解することができない。 また、統計委員会が平成22年2月22日に総務大臣に対してした答申 (「『指数の基準時に関する統計基準』の設定について」(府統委第17号)。 甲A188)についても、その前提となる「諮問第24号」(乙A89)と併せて読めば、公的な機関における指数としてラスパイレス指数以外の指数を用いることを否定する趣旨を含むものとまでは認められない。さらに、ILOマニュアルにおいて、ロウ指数につき「非常に普及した一般的な物 価指数の種類の1つ」と紹介されていること(甲A123及び乙A85・本文4頁)に照らせば、ILOマニュアル上の「実務的にあるいは経済学的にオーソライズされた指数算式」の項目においてロウ指数が紹介されていないこと等のILOマニュアルに係る原告らの主張を踏まえても、ILOマニュアルが、ロウ指数 マニュアル上の「実務的にあるいは経済学的にオーソライズされた指数算式」の項目においてロウ指数が紹介されていないこと等のILOマニュアルに係る原告らの主張を踏まえても、ILOマニュアルが、ロウ指数の統計学上の正当性や実用性を否定するもので あるとは理解することができない。 そうすると、原告らの主張立証を踏まえても、本件の証拠関係の下においては、本件保護基準改定がされた時点において、ロウ指数の統計学上の実用性や正当性が否定される状況にあったとは認められない。 よって、原告らの主張は、その前提を欠き、採用することができない。 原告らは、生活扶助相当CPIにつき、仮に、基準年である平成22年を中心にその前後で分けるとすれば、平成20年から平成22年までについては一般に下方バイアスが生じるとされるパーシェ式、平成22年から平成23年までについては一般に上方バイアスが生じるとされるラスパイレス式によったことになるところ、このように異なる指数を混交するこ とは、不正確な物価変動率とならざるを得ないため、計算原理が混交した生活扶助相当CPIには欠陥があることが明らかである旨主張する。 確かに、認定事実⑾イ及び同⑿イによれば、平成20年生活扶助相当CPIについてはパーシェ指数、平成23年生活扶助相当CPIについてはラスパイレス指数であって、本件下落率は、前者から後者への変化率を 捉えたものであるといえる。しかしながら、前記及びのとおり、生活 扶助相当CPIの算定方法については、全体としてロウ指数の一例と評価することができるという意味において、一定の統計学上の根拠を有するものであると認められることに加え、そもそも、ラスパイレス指数とパーシェ指数は、どちらもロウ指数の定義式を用いて表すことができる 評価することができるという意味において、一定の統計学上の根拠を有するものであると認められることに加え、そもそも、ラスパイレス指数とパーシェ指数は、どちらもロウ指数の定義式を用いて表すことができるロウ指数のうちの特別なケースとして位置付けられる指数であること(認定事実⑾ イa)も踏まえれば、上記のとおり、分析的に見れば、生活扶助相当CPIにつき、上記の2つの異なる指数に分割できるとしても、この点をもって、生活扶助相当CPIの算定方法につき、それが全体としてロウ指数に該当するものであるとの評価が否定されるとも、計算原理が混交した欠陥があり、ひいては統計学上の見地に照らして不合理であるとも認められ ず、他に、原告らの主張を裏付けるに足りる的確な証拠ないし事情等も見当たらない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 a 原告らは、ILOマニュアルにおいて、原告主張規準が定められているとした上で、生活扶助相当CPIが原告主張規準に反している旨主張 する。 b しかしながら、ILOマニュアルの記載を見ても、原告主張規準を明記した箇所は見当たらず(甲A123、乙A85)、むしろ、証拠(乙A88)及び弁論の全趣旨によれば、統計学上、比較時点を基準時より過去とすることも許容されているとうかがわれることからすれば、規準① (基準時(価格参照時点)は、対象とする時系列間の期首であり起点であり、また、比較時は、当該時系列の期首以降期末までの各時点であり、したがって、基準時(価格参照時点)は比較時より過去の時点となること)については、原告らのその余の主張立証を踏まえても、これが統計学上の国際規準として承認されていることを認めるに足りない。 cILOマニュアルには、指数を100とする時点(指数参照時点)に については、原告らのその余の主張立証を踏まえても、これが統計学上の国際規準として承認されていることを認めるに足りない。 cILOマニュアルには、指数を100とする時点(指数参照時点)に ついて、「指数系列は、当該指数の数値によって単に割ることによって、「指数の変化率を変えることなく、別の参照時点に変えることができる。」との記載があり(甲A123、乙A85・292頁)、指数を100とする時点(指数参照時点)を置き換える方法が説明されていることが認められるから、規準②(基準時の指数値は100でなければならな いこと)については、原告らのその余の主張立証を踏まえても、これが統計学上の国際規準として承認されていることを認めるに足りない。 d 前記のとおり、総務省CPIの算定やILOマニュアルにおいて、物価の変動を比較する2つの時点において品目数が異なる場合(欠価格の問題がある場合)があることは、当然の前提として予定されており、 その場合の処理方法も明示されていることからすれば、規準④(基準時と各比較時の対象とする品目は完全に同一で対応していなければならないこと)については、原告らのその余の主張立証を踏まえても、これが統計学上の国際規準として承認されていることを認めるに足りない。 e 規準③(マーケットバスケット方式によって消費者物価指数は作成さ れなければならないこと)については、仮に、これが統計学上の国際規準として承認されていることを前提としても、前記のとおり、生活扶助相当CPIについては、ILOマニュアルにおいても紹介されている内容に従った欠価格の問題の処理をしたことにより、平成20年及び平成23年の各生活扶助相当CPIは、いずれも固定された同じ「買い物 かご」を前提として算定されたもの ルにおいても紹介されている内容に従った欠価格の問題の処理をしたことにより、平成20年及び平成23年の各生活扶助相当CPIは、いずれも固定された同じ「買い物 かご」を前提として算定されたものと評価することができるから、生活扶助相当CPIを算定した方法が規準③に反するものとは認められず、これに反する原告らの主張は、その前提を異にするものである。 f よって、原告らの主張は、いずれもその前提を異にするものであって、採用することができない。 原告らは、「新しい時点から旧い時点の上昇率(下落率)」と「旧い時点 から新しい時点の下落率(上昇率)」とには双対性がないことからすれば、常に指数基準時を比較元(物価指数の算定期間の始期) に固定し、旧い時点から新しい時点の値を比較しなければならないのであるから、生活扶助相当CPIの算定に際し、指数参照時点を平成22年と設定した点が、恣意的かつ不合理である旨も主張する。 しかしながら、原告らの主張立証を踏まえても、消費者物価指数の算定方法につき、双対性が問題となるとか、指数基準時を比較元に固定しなければならないなどといった統計学的な規準ないし原則が存すると解すべき根拠は不明といわざるを得ない。 また、この点をおいて、仮に、原告らが主張するように、統計学上、常 に指数基準時を比較元(物価指数の算定期間の始期) に固定し、旧い時点から新しい時点の値を比較しなければならないとしても、本件下落率は、平成22年を指数参照時点として、平成20年及び平成23年の各生活扶助相当CPIを求め、両者の相対的な変化率を算定したものであり、平成20年から平成22年までの変化率と平成22年から平成23年までの 変化率を比較するものではない。また、ウエイト参照時点を固定する限り、ウエ め、両者の相対的な変化率を算定したものであり、平成20年から平成22年までの変化率と平成22年から平成23年までの 変化率を比較するものではない。また、ウエイト参照時点を固定する限り、ウエイト参照時点を平成20年とした場合と平成22年とした場合との間において、平成20年から平成23年までの物価下落率として算定された数字には差異を生じないと認められることからすれば、本件下落率及びその前提となる生活扶助相当CPIについては、その算定方法からして、 双対性が問題となる又は、指数基準時を比較元に固定しなければならないとは認められないから、厚生労働大臣が、デフレ調整をする前提として、ウエイト参照時点を平成22年とする旨の判断をしたことが不合理であるということはできない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 原告らは、仮に、総務省統計局も採用している統計学上の通常の手法に 従い、①平成17年を基準時とした平成20年生活扶助相当CPIを算定し、②平成22年を基準時とした平成23年平均の生活扶助相当CPIを算定し、③平成17年を基準時とした平成22年平均の生活扶助相当CPIを算定し、最後に④①と②の数値を接続するという算定方法を用いた場合、平成20年から平成23年の間の生活扶助相当CPIの変動率は、「- 2.26%」にとどまるとして、厚生労働大臣が採用した生活扶助相当CPIの算定の方法が不合理である旨主張し、これに沿う証拠(甲A122)もある。 しかしながら、これまでに判示したところによれば、消費者物価指数を算定する方法には複数のものがあることになるところ、これを前提とする と、そのいずれかの方法によって算定された消費者物価指数のみが唯一の正解となるとは認められず、また、複数の方法がある 指数を算定する方法には複数のものがあることになるところ、これを前提とする と、そのいずれかの方法によって算定された消費者物価指数のみが唯一の正解となるとは認められず、また、複数の方法があることに伴う当然の結果として、それらの結果が一致せず、複数の結果が算定されることも統計学上は許容されることになるから、原告らが上記に主張する結果も、統計学上許容される結果の1つ(なお、当該結果が、実際の物価の下落率より も低い数値にとどまっている可能性も排除されないものである。)である可能性があるにとどまる。 その上で、前記⑴アのとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定について、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているのであって、かかる裁量権の中には、デフレ調整をする場合における物価下落率 を算定する方法の設定も含まれると認められること(前記参照)も踏まえると、厚生労働大臣が採用した以外の方法によれば、厚生労働大臣が採用した方法によって算定される数値とは異なる数値が算定され、かつ、厚生労働大臣が採用した方法によって算定される数値よりも低い数値が算定されるとの一事をもって直ちに、厚生労働大臣の判断が不合理である、 又はその有する裁量権の範囲から逸脱し、若しくはこれを濫用したもので あるという評価を受けることはないというべきである。そして、厚生労働大臣の有する裁量権が、国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を要することに由来すること(前記⑴ア参照)も踏まえると、原告らが上記に主張するところは、その内容に照らし、これまでに判示したところを覆すには 足りないというべきである。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 以上 も踏まえると、原告らが上記に主張するところは、その内容に照らし、これまでに判示したところを覆すには 足りないというべきである。 したがって、原告らの主張は、採用することができない。 以上によれば、原告らが指摘する諸点を踏まえても、デフレ調整をする前提として、生活扶助相当CPIを算定するに際し、その基準時(ウエイト参照時点)を平成22年とする旨の厚生労働大臣の判断が、その有する 裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであるとは認められず、当該判断が違法であるということもできない。 カ生活扶助相当CPIの算定における指数品目の選定及びウエイトの設定の方法について 被告が説明する厚生労働大臣の判断の過程の概要 物価及びその変動率を算定するためには、指数品目を選定し、当該指数品目の価格指数及びウエイトを把握する必要があるところ、本件保護基準改定がされた平成25年当時、生活扶助による支出が想定される品目(生活扶助相当品目)の価格指数及びウエイトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPIのデータが存在した一方、その他に信頼 性等が担保された適切なデータは見当たらなかった。 もっとも、総務省CPIの指数品目には、生活扶助による支出がおよそ想定されない品目(非生活扶助相当品目)が多数含まれており、保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を正確に把握するためには、非生活扶助相当品目を含めて物価及びその変動率を算定することは相 当ではないと考えられ、また、被保護者の需要の有無及び程度を判断する 手法として、一般低所得者が支出する品目のうち生活扶助相当品目を用いる手法は、従前から行われており、かつ、専門家においても是認されていたものであ た、被保護者の需要の有無及び程度を判断する 手法として、一般低所得者が支出する品目のうち生活扶助相当品目を用いる手法は、従前から行われており、かつ、専門家においても是認されていたものであった。 そこで、厚生労働大臣は、生活扶助相当品目(総務省CPIの指数品目から非生活扶助相当品目を除いた品目)の価格指数及びウエイトのデータ のみを用いた生活扶助相当CPIを算定し、本件下落率を算定した。 認定事実、証拠(乙A41の1・2)及び弁論の全趣旨によれば、次のaからeの各事実が認められる。 a 総務省CPIは、①指数品目の価格指数に、②家計の消費支出全体に占める支出額の割合であるウエイトを乗じ、③それを合計した上で、ウ エイトの総数で除する、という方法によって算定される(認定事実⑾イ)。 b 総務省CPIを算定するに当たって用いられる指数品目の選定及び指数品目別のウエイトの算定は、国民全体の支出等が推計できるように無作為に選定された全国約9000世帯を対象に実施される家計調査 の結果に基づいて行われている(認定事実⑾イ及び、同⒀ア)。 c 総務省CPIは、国や地方自治体の経済施策における指標となっているほか、各種の法令に基づいて給付される公的年金の給付額の改定等においても広く用いられている(認定事実⑾ア)。 d 生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者 に対して、衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なものの範囲内において行われるものであって、また、保護の種類としては、生活扶助のほかにも、教育扶助や住宅扶助、医療扶助等が存する(前記第2の2⑴ウ及び)。 e 平成18年までに廃止された老齢加算につき、その廃止を提言した専 門委員会も、一般低所得者層の消費支出全体か かにも、教育扶助や住宅扶助、医療扶助等が存する(前記第2の2⑴ウ及び)。 e 平成18年までに廃止された老齢加算につき、その廃止を提言した専 門委員会も、一般低所得者層の消費支出全体から、非生活扶助相当品目 に対する消費支出を除くことによって算定した「生活扶助相当消費支出額」に基づき被保護者の需要の有無等について検討している(乙A41の1・2、弁論の全趣旨)。 前記のaからeまでの各事実に照らせば、前記の厚生労働大臣の判断の過程については、一定の合理的な根拠となる客観的な事実に裏付けら れていると認められ、それ自体として特に不合理なものとはいえず、また、生活扶助相当品目の価格指数及びウエイトのデータのみを用いることとした点についても、保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を正確に把握するという目的に適合しており、また、客観的かつ明確な基準を採用することで、恣意的な判断を回避しようとしたものと評価す ることができ、専門委員会における前例という専門的知見とも整合することからすれば、一定の合理性があるものと認められる。 原告らは、被保護者は、情報家電製品(パソコンや大型ハイビジョン対応テレビ等)を新たに購入することはほとんどなく、また「海外パック旅行」についても生活扶助費から支出することは生活保護制度において想定 されていないことからすれば、厚生労働大臣が、生活扶助相当CPIのウエイトを設定するに際し、生活扶助相当品目に上記の情報家電製品や「海外パック旅行」費を含めたことは、保護受給世帯の消費性向に反したものであって不合理である旨主張する。 しかしながら、前記⑴アのとおり、生活扶助基準の改定については、 厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められ の消費性向に反したものであって不合理である旨主張する。 しかしながら、前記⑴アのとおり、生活扶助基準の改定については、 厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるのであって、かかる裁量権の中には、デフレ調整をする場合における物価下落率を算定する方法の設定も含まれることは、既に判示したとおりである(前記オ等参照)。 そして、家電製品については、厚生労働省が平成22年に実施した「家 庭の生活実態及び生活意識に関する調査結果概要」によれば、保護受給世 帯においても、パソコンは約4割、ビデオレコーダーは約7割、電子レンジや洗濯機は約9割、カラーテレビや冷蔵庫はほぼ10割の各普及率となっていることが認められる(乙A36の1)一方、原告らの主張立証を踏まえても、保護受給世帯が、それらの家電製品を小売店において新品として購入する割合が著しく低いことを認めるに足りる的確な証拠は見当た らない。また、「海外パック旅行」についても、生活保護制度の運用上、被保護者が海外へ渡航したことのみをもって直ちに保護を停止又は廃止する取扱いとはされておらず、単なる遊興を目的とした海外旅行等の場合に、それに要した交通費や宿泊費に充てられる額について、当該者の収入として認定を行う取扱いとすることとされているに留まる(乙A84)。 そうすると、保護受給世帯においても、生活扶助費から、パソコンやテレビ等の家電製品を購入する費用や海外へ渡航する費用を支出することが想定されることになるところ、仮に、これらのものについて、一般世帯との普及率との差異を含む保護受給世帯の消費実態や価格下落の大きさ(本件下落率への寄与度の大きさ)等を根拠として、生活扶助相当品目か ら除外するとすれば、他の品目との関係で、いかなる 一般世帯との普及率との差異を含む保護受給世帯の消費実態や価格下落の大きさ(本件下落率への寄与度の大きさ)等を根拠として、生活扶助相当品目か ら除外するとすれば、他の品目との関係で、いかなる品目を除外すべき品目とするのかに関する客観的な基準を設定することは困難なものとなりかねない上、上記のとおり、生活扶助費から支出されることが想定される品目であるにもかかわらずあえてこれを除外するのであれば、その基準の定め方のいかんによっては、かえって客観性を欠く恣意的なものとなるお それも否定することができないから、生活扶助相当CPIのウエイトを設定するに際し、生活扶助相当品目に情報家電製品や「海外パック旅行」費を含めた厚生労働大臣の判断が不合理なものとはいえない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 a 原告らは、生活扶助相当CPIは保護受給世帯を対象とした物価指数 であるから、生活扶助相当CPIにおけるウエイトは、保護受給世帯に おける取引金額又は取引量を前提として設定されるべきであるところ、保護受給世帯の消費構造には、一般世帯とは異なる特徴が存するから、厚生労働大臣は、生活保護法8条2項の要請に基づき、社会保障生計調査の結果を用いるなどして、保護受給世帯の消費実態ないし消費支出構造を把握した上で、これに基づいてウエイトの設定や生活扶助相当品目 の選定を行わなければならなかったにもかかわらず、平成22年ウエイト(ただし、非生活扶助相当品目を除外したもの)を用いた点で不合理である旨主張する。 b しかしながら、生活保護制度により保障される最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであ るところ(認定事実⑵イ、前記⑴ア)、専門家による組織たる中央社会 ながら、生活保護制度により保障される最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであ るところ(認定事実⑵イ、前記⑴ア)、専門家による組織たる中央社会福祉審議会による昭和58年意見具申を踏まえて昭和59年度以降の生活扶助基準の改定において採用されている水準均衡方式においても、一般国民の消費水準(民間最終消費支出の伸び)が改定の指標とされ、一般低所得世帯ないし保護受給世帯の消費水準が改定の指標とされ ているわけではないこと(認定事実⑵イ、同ウ)も踏まえれば、原告らの主張立証を踏まえても、厚生労働大臣が、生活扶助基準の改定に係る裁量権を行使するに際し、必ず保護受給世帯の消費実態ないし消費支出構造を具体的に把握した上でこれを考慮しなければならないと解すべき根拠は見いだせないから、原告らの主張は、その前提を欠くものと いわざるを得ない。 c また、前記bの点をひとまずおくとしても、前記⑴アのとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定について、改定をする必要性の有無や改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否か等を判断するに当たり、専門技術的かつ 政策的な見地からの裁量権を有するのであって、かかる裁量権には、上 記の判断をするに際し、どのような統計資料等を用いるのかといった点を判断することも含まれるというべきである(前記エ参照)。 そして、デフレ調整は、物価変動率(貨幣価値の変化)を把握して生活扶助基準を改定する趣旨のものであって、保護受給世帯の消費構造を把握して改定する趣旨のものではないから、保護受給世帯の消費構造に 則した物価変動率を把握することは、生活扶助相当CPIを算定するに当たって1つの考慮要素となり得る て、保護受給世帯の消費構造を把握して改定する趣旨のものではないから、保護受給世帯の消費構造に 則した物価変動率を把握することは、生活扶助相当CPIを算定するに当たって1つの考慮要素となり得るにとどまり、かつ、統計数値の精度や信頼性も勘案する必要があることに照らすと、デフレ調整をするに当たり、保護受給世帯の消費構造を考慮するかどうか、考慮するとしてどの程度考慮するかについても、専門技術的知見に基づく厚生労働大臣の 裁量に委ねられているというべきである。 d その上で、総務省CPIを算定するに当たって用いられる指数品目別のウエイトは、家計調査の結果を基に計算されているところ(認定事実⑾イ)、家計調査は、総務省統計局が実施する統計法上の基幹統計の1つであり、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっていることに加 え、その調査の対象となる世帯の選定については、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等が推計できるよう、層化三段抽出法によって無作為に選定されており、さらには、調査の対象となる世帯数も全国約9000世帯にわたる(認定事実⒀ア)。 一方、原告らが指摘する社会保障生計調査は、厚生労働省が、被保護 者の家計の収支の状況を調査する一般統計調査であって、その調査の対象となる保護受給世帯の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市から1ないし3自治体を選定し、その選定された自治体から合計約1100世帯を抽出することによって行われている。また、家計の収支の状況は、食料費、住居費等の費目ご との支出金額及び割合として集計され、調査の手法としても、個別の品 目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置は講じられていない(認定事実⒀イ)。 以上のような各調査の との支出金額及び割合として集計され、調査の手法としても、個別の品 目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置は講じられていない(認定事実⒀イ)。 以上のような各調査の特徴等を対比すると、確かに、社会保障生計調査については、その調査の対象が保護受給世帯に限られている点で、被保護者の消費実態に近いものとみる余地がある一方、その調査の対象と なる世帯の選定数及び選定の方法からすると、調査の対象となる世帯の地域的な偏りやサンプル数が相対的にみて小さいことに起因する統計資料としての精度の限界があり、また、その調査の結果から個別の品目に係る支出量や支出金額を把握することもできない。これに対し、家計調査については、保護受給世帯以外の世帯を含む全国の世帯を対象とす るものではあるものの、調査の対象となる世帯を抽出する方法につき、地域的な偏りが生じないための方策が採られており、またそのサンプル数も社会保障生計調査に比して格段に多い点で、統計資料としての精度は相対的に見て高いといえ、また、その調査の結果からは、詳細な品目別の支出額を把握することが可能である。 e そうすると、社会保障生計調査と家計調査とでは、保護受給世帯の消費実態を正確に把握するという観点で優劣が明らかであるとまではいえない上、生活保護制度により保障される最低生活の水準が、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものである以上、家計調査を一般国民の生活水準を把握するための統計資料として採用 することにも一定の合理性があると認められるから、生活扶助相当CPIを算定する前提となるウエイトの算定に当たり、統計資料としての精度が高い家計調査に基づく総務省CPIのウエイトを採用した上で、生活扶助費による支出がおよそ想定され 認められるから、生活扶助相当CPIを算定する前提となるウエイトの算定に当たり、統計資料としての精度が高い家計調査に基づく総務省CPIのウエイトを採用した上で、生活扶助費による支出がおよそ想定されない非生活扶助相当品目を総務省CPIの指数品目から除外することで、保護受給世帯が生活扶助費に より購入する品目の物価及びその変動率を把握しようとした厚生労働 大臣の判断が、不合理であるとは認められず、厚生労働大臣が有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものとも認められない。よって、原告らの主張は、採用することができない。 原告らは、①デフレ調整の対象となる期間に含まれる平成22年には、様々な要因により、薄型テレビ(大型ハイビジョン対応テレビ)の販売台 数が急激かつ一時的に伸びたという特殊な事情があったこと、②平成17年から平成22年にかけて、パソコンやカメラの性能の向上が著しく、これに応じて「品質調整」の措置が採られた結果、生活扶助相当CPIの算定において、それらの購入数量が大幅に増加したものとみなされたことといった特殊な事情があったにもかかわらず、厚生労働大臣が、生活扶助相 当CPIを算定するに当たり、これらの特殊な事情を考慮しなかった点が不合理である旨主張する。 しかしながら、上記①については、前記ウ及びエのとおり、デフレ調整の対象となる期間を平成20年から平成23年までと定めた厚生労働大臣の判断には、一定の合理性があるものと認められるところ、デフレ調整 の対象となる期間に含まれる平成22年につき、原告らが指摘するような特殊な事情が存したとしても、それを理由に大型ハイビジョン対応テレビ等の一定の品目を生活扶助相当品目から除外したり、ウエイトを調整したりすれば、それがかえって客観性を欠く恣 、原告らが指摘するような特殊な事情が存したとしても、それを理由に大型ハイビジョン対応テレビ等の一定の品目を生活扶助相当品目から除外したり、ウエイトを調整したりすれば、それがかえって客観性を欠く恣意的な判断となりかねないことについては前記において判示したとおりである。 また、上記②については、確かに、消費者物価指数を算定するに当たっては、商品の品質や容量等といった物価の変動以外の要因による価格差を除去して比較時価格を算定するために「品質調整」が行われており、これによって、消費者物価指数の算定上、特にパソコンやカメラについては、品質の向上に応じてそれらの品目の価格が下落し、又は購入数量が増加し たものとみなされたことが認められるものの(甲A183)、「品質調整」 自体は、消費者物価指数の算定に当たって一般に必要とされる処理であること(乙A26)からすれば、その結果が生活扶助相当CPIに織り込まれることは、消費者物価指数の考え方に基づく限りいわば当然のことであり、また、パソコンやカメラの品質が向上したことなどにより、保護受給世帯が全く恩恵を受けなかったということはできない(本件においても、 それをうかがわせる証拠ないし事情等は見当たらない。)にもかかわらず、これを殊更に排除するような処理を行うことは、消費者物価指数に係る統計学的知見にも整合しない、まさに恣意的な判断となりかねない。 したがって、平成20年から平成22年にかけてのテレビやパソコン等の価格の下落や品質の向上等が、デフレ調整における物価下落率(本件下 落率)の算定において相当程度影響していることは一概に否定し難いことを前提としても、これまでに判示したとおり、非生活扶助相当品目を除外すること及びその除外品目の選定(線引き)につき一 本件下 落率)の算定において相当程度影響していることは一概に否定し難いことを前提としても、これまでに判示したとおり、非生活扶助相当品目を除外すること及びその除外品目の選定(線引き)につき一定の合理的な理由が認められる以上、厚生労働大臣が、生活扶助相当CPIを算定するに当たり、原告らが主張する上記①及び②の各事情をいずれも考慮しなかったこ とをもって、厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落があったとは認め難く、生活扶助相当CPIの算定における指数品目の選定及びウエイトの設定に係る厚生労働大臣の判断が不合理であるとも、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものとも認められない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 以上によれば、原告らが指摘する諸点を踏まえても、総務省CPIの指数品目のうち生活扶助相当品目の価格指数及びウエイトのデータのみを用いた生活扶助相当CPIを算定した上で本件下落率を算定する旨の厚生労働大臣の判断が、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであるとは認められず、当該判断が違法であるというこ ともできない。 なお、原告らは、保護受給世帯の生活実態ないし消費性向を反映させたり、テレビ等3品目を生活扶助相当品目から除外したりした上で生活扶助相当CPIを算定すると、本件下落率よりも物価の下落率が大幅に抑えられる旨の複数の結果が算出される旨主張し、これに沿う証拠(甲A20、183)もあるところ、これは、前記オに判示したところと同様、生活 扶助相当CPIを算定する方法が唯一無二のものではなく、複数のものが想定されることに起因するものと認められる上、前記cのとおり、厚生労働大臣は、デフレ調整をする場合における物価下落率を算定する方 扶助相当CPIを算定する方法が唯一無二のものではなく、複数のものが想定されることに起因するものと認められる上、前記cのとおり、厚生労働大臣は、デフレ調整をする場合における物価下落率を算定する方法の設定やその際に用いる統計資料等の選択について、裁量権を有しているから、本件下落率が、原告らが主張する下落率と異なるものであり、かつ、 原告らが主張する下落率よりも高い数値のものであるという一事をもって直ちに、厚生労働大臣がした本件下落率の算定について、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものと認められることにはならない。そして、原告らが主張する数値との差異が相応に大きいものと評価する余地がある(他方で、当該差異が、生活扶助相当CPIを算定する 方法の選択に由来する当然の結果にすぎないと評価することもできないわけではないともうかがわれるところである。)としても、厚生労働大臣がしたデフレ調整をする旨の判断における一連の過程についていずれも一定の合理性があるものと認めることができることや、本件下落率と原告らが主張する数値との差異の程度を前提とする限り、厚生労働大臣が本件 下落率を前提としてデフレ調整をする旨の判断をすることが、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してしたものと直ちに結論付けることができるとまでは認め難いから、この点も、上記の認定及び判断を左右しない。 キ沖縄県に固有の事情(沖縄県の生活扶助相当CPI)を考慮しなかった点 について 原告らは、厚生労働大臣が、生活保護法8条2項に規定された各要素を考慮することなく保護基準を改定した場合には、それをもって直ちに同項に違反したこととなり、厚生労働大臣が有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用となるところ、厚生労働大 8条2項に規定された各要素を考慮することなく保護基準を改定した場合には、それをもって直ちに同項に違反したこととなり、厚生労働大臣が有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用となるところ、厚生労働大臣が、本件保護基準改定をするに当たり、同項にいう「所在地域別」の事情に該当する沖縄県の事情(特に、 沖縄県における生活扶助相当CPIの変化率)について考慮することを怠ったことが、生活保護法8条2項に違反し、ひいては憲法14条にも違反するとして、厚生労働大臣が有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものに当たる旨主張する。 a しかしながら、前記⑴ウのとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準 の改定に係る裁量権を行使するに当たって、生活保護法8条2項所定の事項を考慮することが義務付けられるということはできないから、原告らの主張は、その前提を異にするものである。 b また、前記aの点をひとまずおくとしても、前記⑴アのとおり、生活扶助基準の改定については、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な 見地からの裁量権が認められるのであって、その裁量権には、生活扶助基準の体系をどのように設定又は改定するかといった点や、設定した生活扶助基準の体系において同項が定める考慮要素をどのように及びどの程度考慮するのかといった点についての裁量も含まれるというべきである。 そして、現行の生活扶助基準については、前記第2の2⑶のとおり、標準世帯の最低生活費を具体的な額として設定した上で、これを具体的な世帯の構成(年齢、世帯人員又は地域)を踏まえた指数を用いて「展開」する方法によって設定する方法が採られており、保護受給世帯の居住地域に係る事情(生活保護法8条2項にいう「所在地域別」の事情) は、生活扶助基準の「展開」としての級地別 た指数を用いて「展開」する方法によって設定する方法が採られており、保護受給世帯の居住地域に係る事情(生活保護法8条2項にいう「所在地域別」の事情) は、生活扶助基準の「展開」としての級地別の最低生活費を定めること によって考慮されることとなっている。 以上のような枠組みを前提に、厚生労働大臣は、認定事実⑸アのとおり、生活扶助基準の「水準」の改定方式として水準均衡方式を採用して以降、政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び等を踏まえ、標準世帯の生活扶助基準額を改定し、これを具体的な世帯の構成(年齢、 世帯人員、地域)を踏まえた指数を用いて「展開」することで、全ての保護受給世帯に対して当該改定を反映してきた一方、本件保護基準改定においては、上記のような「展開」による改定の反映に加え、認定事実⑼イのとおり、第1・十分位の世帯の消費実態と生活扶助基準の年齢、世帯人員及び居住地域別の較差を是正することを直接の目的とする改 定(ゆがみ調整)をすることで、「所在地域別」の事情も考慮した生活扶助基準の適正化を図ったと認められる。 c そうすると、原告らが指摘する沖縄県固有の事情等の「所在地域別」の事情については、本件保護基準改定においては、ゆがみ調整における考慮要素とされているほか、生活扶助基準の改定を「展開」する過程に おいても考慮されているというべきであるから、厚生労働大臣が、本件保護基準改定において、「所在地域別」の事情である沖縄県に固有の事情の考慮を怠ったとする原告らの主張は、その前提を欠くものといわざるを得ない。 また、前記bのような「展開」を前提とする生活扶助基準を設定した 上で、「所在地域別」の事情については「展開」において考慮する旨の生活扶助基準を改定する枠組みを設定した厚生労働大臣の ない。 また、前記bのような「展開」を前提とする生活扶助基準を設定した 上で、「所在地域別」の事情については「展開」において考慮する旨の生活扶助基準を改定する枠組みを設定した厚生労働大臣の判断については、原告らの主張を踏まえても、その合理性を疑うべき事情は見当たられないことからすれば、厚生労働大臣が、デフレ調整をするに際し、沖縄県の生活扶助相当CPI等の沖縄県に固有の事情を独立の考慮要素 として個別に考慮しなかったとしても、そのことをもって、本件保護基 準改定をする旨の厚生労働大臣の判断が不合理なものであるとはいえず、その有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があることが基礎付けられるとも認められない。 よって、原告らの主張は、本件保護基準改定が憲法14条に違反する旨のもの含め、採用することができない。 クデフレ調整についての結論前記アからキまでに検討したとおり、デフレ調整については、デフレ調整をすることが必要である旨の厚生労働大臣の判断には一定の合理性があるものと認められ、また、その対象となる期間を平成20年から平成23年までの間とした上で、その間の生活扶助相当CPIの下落率(本件下落率)を 算定し、本件下落率を前提としてデフレ調整をする旨の厚生労働大臣の一連の判断の過程に過誤や欠落があるということはできず、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるということもできないから、デフレ調整をする旨の厚生労働大臣の判断が、その有する裁量権の範囲の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであったとは認め られない。 ⑷ ゆがみ調整とデフレ調整を併せて実施したことの適否についてア原告らは、生活扶助基準の絶対値としての「水準」の調整を目的とするデ 濫用してされたものであったとは認め られない。 ⑷ ゆがみ調整とデフレ調整を併せて実施したことの適否についてア原告らは、生活扶助基準の絶対値としての「水準」の調整を目的とするデフレ調整による生活扶助費の減額をする際、ゆがみ調整をした結果として生じてしまった減額分を考慮して計算をしなければ、ゆがみ調整による減額と デフレ調整による減額とで不当な重複引下げをしていることになるが、本件保護基準改定においてはそのような考慮がされておらず不当である旨主張する。 イしかしながら、 ゆがみ調整は、平成25年検証の結果を踏まえ、その検証の結果を2分の1の割合で生活扶助基準に反映させようとするものである ところ(認定事実⑼イ)、平成25年検証は、仮に第1・十分位の全ての世帯 が保護を受けた場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにしつつ、一般低所得世帯の消費実態と生活扶助基準を年齢、世帯人員及び級地別に指数を用いて相対比較することによって、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態とのかい離を詳細に分析するものである(同⑺ア)から、ゆがみ調整は、一般低所得世帯の消費 実態を展開のための指数に反映させて、生活扶助基準の展開部分を適正なものとすることを目的とするものであると認められる。 他方、デフレ調整は、認定事実⑼ウのとおり、デフレ傾向が続いたことにより、保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加し、一般国民との間で不均衡が生じたとして、これを是正するために平成20年から平成23 年までの生活扶助相当CPIの下落率を算定し、それを生活扶助基準に反映させるというものであって、その目的は、生活扶助基準の絶対値としての水準を適正なものとすることにあると認め 年から平成23 年までの生活扶助相当CPIの下落率を算定し、それを生活扶助基準に反映させるというものであって、その目的は、生活扶助基準の絶対値としての水準を適正なものとすることにあると認められる(同⑼イ)。 そうすると、仮に、原告らが指摘するとおり、ゆがみ調整及びデフレ調整の双方につき、生活扶助基準額が減額となるという効果が生じ得る(なお、 前記⑵イcのとおり、高齢者世帯のように、ゆがみ調整がされることによって生活扶助基準額が増額となる世帯も存在するところである。)ことが認められるとしても、上記のとおり、ゆがみ調整とデフレ調整は、それぞれ目的や内容を異にするものであることからすれば、上記のような効果が生じることが、生活扶助費を不当に重複して引き下げるものであるとは認められず、 この点をもって直ちに、本件保護基準改定においてゆがみ調整及びデフレ調整を併せて実施することとした厚生労働大臣の判断が不合理であると認められることにはならない。また、それらを併せて実施するにあたり、それぞれから生じ得る生活扶助基準額を減額する効果を最終的にどのように生活扶助基準に反映させるのかについても、生活扶助基準の改定について厚生労 働大臣が有する専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権に基づく判断に 委ねられているというべきであるから、厚生労働大臣が、デフレ調整によって生活扶助基準額を減額する際、原則として、ゆがみ調整の結果生じた生活扶助基準額の減額を考慮して計算しないものとしたとしても、それをもって、本件保護基準改定をすることに係る厚生労働大臣の判断が不合理であるということもできない。 ウよって、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて実施することとした厚生労働大臣の判断につき、その有する裁量権の範囲からの逸脱 に係る厚生労働大臣の判断が不合理であるということもできない。 ウよって、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて実施することとした厚生労働大臣の判断につき、その有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるとは認められないから、原告らの主張は、採用することができない。 ⑸ 原告らが主張するゆがみ調整とデフレ調整に共通するその余の違法事由について ア被保護者の生活の実態の考慮等について原告らは、保護基準を定めるに当たっては、被保護者の最低限度の生活の需要を満たされているか否かを考慮することは必須であり、そのためには、保護基準の妥当性を判断するに際し、被保護者の生活の実態を詳細に、しかも正確に把握することは不可欠であるにもかかわらず、本件保護基準 改定がされる以前において、被保護者が健康で文化的な最低限度の生活を営めていなかったこと等の被保護者の生活の実態の情報を反映することなくされた本件保護基準改定には、厚生労働大臣の有する裁量権の範囲からの逸脱またはその濫用がある旨主張し、これに沿う証拠(甲A61、62、63の1・2)もある。 a しかしながら、原告らの主張に沿う上記の各証拠(全日本民主医療機関連合会による平成19年及び平成25年の調査(甲A61、63の1・2)、新潟県立大学講師小澤薫氏による平成22年の調査(甲A62)の各結果等。以下、総称して「原告ら摘示調査結果等」という。)については、その調査がされた時期、調査の方法又は目的等に照らせば、いずれ も調査の客観性や中立性の担保という観点で、それらの結果の正確性に 疑義を挟む余地があると認められるほか、それらの結果をどこまで一般化することができるのかという点についても一定の限界があるというほかない。 そうすると、原告ら摘示調 れらの結果の正確性に 疑義を挟む余地があると認められるほか、それらの結果をどこまで一般化することができるのかという点についても一定の限界があるというほかない。 そうすると、原告ら摘示調査結果等をもって、一般的に見て、保護受給世帯が、原告らが指摘するように、本件保護基準改定がされる以前に おいても、健康で文化的な最低限度の生活を営むことができない状況にあったと認めることはできず、また、保護受給世帯の実態とされるものに係る原告らのその余の主張立証を踏まえても、これを覆すに足りない。 b また、前記⑴アのとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準の改定について、改定をする必要性の有無や改定をした後の生活扶助基準の内容 が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否か等の判断に当たり、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているところ、これまでにも判示したとおり、かかる裁量権には、上記判断に際し、いかなる統計資料等を用いるのかといった点を判断することも含まれるというべきである(前記⑶エ、同カc参照)。 そうすると、厚生労働大臣が、本件保護基準改定をするに際し、上記のとおり、調査の客観性や中立性の担保という観点で、調査の結果の正確性に疑義を挟む余地があり、さらには、それらの結果を一般化することについても一定の限界があると認められる原告ら摘示調査結果等を用いることなく、前記⑴から⑶までのとおり、それ以外の政府統計等の 客観的で信頼性も高い数値等に基づいて本件保護基準改定をする旨の判断をしたことが、不合理であるとは認められず、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものであるとも認められない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 イ厚生労働大臣が不当な動機 、不合理であるとは認められず、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものであるとも認められない。 よって、原告らの主張は、採用することができない。 イ厚生労働大臣が不当な動機ないし目的をもってその有する裁量権を行使 したか否かについて 原告らは、①本来、基準部会の議論の方向としては、保護基準の水準を引き上げる方向となるはずであったにもかかわらず、平成25年検証の方法や報告書案においてもかかる方向の議論が盛り込まれず、さらには、実際に取りまとめられた平成25年報告書における保護給付の充実を導くべき提言についても無視されていること、②自民党の政権公約に基づいて 本件保護基準改定が実現されたこと等の本件保護基準改定に至る経緯、③本件保護基準改定がされた後に実施された平成30年の保護基準の改定において、平成23年以降のインフレを踏まえた保護費の引上げが実施されていないこと等も踏まえれば、本件保護基準改定は、自民党が掲げてきた保護費の削減という政治的意図に基づいて強行されたものであり、本来 考慮すべきでない政権公約ないし政治的意図に基づき決定された本件保護基準改定は、厚生労働大臣の裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものである旨主張する。 a しかしながら、前記①については、基準部会において、保護基準の水準を引き上げる方向の議論をしていたことを認めるに足りる的確な 証拠はなく(甲A101~105の各1参照)、むしろ、平成25年検証における基準部会の役割は、前記第2の2⑷エ及び認定事実⑺アのとおり、平成16年検証及び平成19年検証の指摘を踏まえ、生活扶助基準額と国民の消費実態とのかい離等を分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行うことにあったことからすれば、 アのとおり、平成16年検証及び平成19年検証の指摘を踏まえ、生活扶助基準額と国民の消費実態とのかい離等を分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行うことにあったことからすれば、平成2 5年検証において、保護基準の水準の引上げなどという政策的な議論がされたとは認め難く、これを認めるに足りる的確な証拠も見当たらない。 b また、前記②についても、確かに、証拠(甲A73~84)及び弁論の全趣旨によれば、㋐自民党は、平成24年3月頃より、「生活保護に関するプロジェクトチーム」を設置して保護給付の見直し等について検 討を行い、その後の同年4月頃より、「生活保護給付水準の10%引き 下げ」等の生活保護制度の見直し案を政策として打ち出すようになったこと、㋑自民党は、第46回衆議院議員総選挙(同年12月16日執行)においても「生活保護費(給付水準の原則1割カット)」を含む政権公約を掲げたこと、㋒自民党に所属する田村憲久厚生労働大臣(当時)が、同年12月27日、厚生労働大臣に任命された際に実施された記者会見 において、自民党の上記㋑の政権公約の存在に言及しつつ、保護基準を引き下げることとなる旨の発言をし、その後も同旨の発言を繰り返したことの各事実が認められ、これらの経緯があった後に、本件保護基準改定が実施されたことからすれば、本件保護基準改定が、自民党の政策に影響された政治的な判断が契機となってされた側面があるとみる余地 はあると認められる。 しかしながら、前記⑴ウのとおり、厚生労働大臣は、国の財政事情等を含む複雑多様な要素を考慮した上での専門技術的かつ政策的な判断をする必要があり、生活扶助基準の改定に係る裁量権を行使するに当たって、生活保護法8条2項に定められた事項以外の事項を考慮するこ 等を含む複雑多様な要素を考慮した上での専門技術的かつ政策的な判断をする必要があり、生活扶助基準の改定に係る裁量権を行使するに当たって、生活保護法8条2項に定められた事項以外の事項を考慮するこ とが許されないということはできないから、本件保護基準改定につき、仮に、自民党の政策やその背景にあるものとうかがわれる国民感情に影響された側面があったとしても、厚生労働大臣はそれらの事情も踏まえて生活扶助基準の改定の要否及びその内容を判断することができる以上、上記の点をもって直ちに、本件保護基準改定をする旨の厚生労働大 臣の判断が、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものであると認められるとはいえず、また、本件保護基準改定をする旨の厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるということはできず、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるということはできない旨の前記⑴から⑷までの判断を左 右する事情であるとも認められない。 c 最後に、前記③については、本件保護基準改定及び本件各決定がされた後に生じた事情であって、本件各決定の適法性を直ちに左右する事情であるとはいえない。 また、この点をひとまずおくとしても、認定事実⑽イのとおり、平成30年にされた保護基準の改定に先立って行われた平成29年検証 において、少なくとも夫婦子1人世帯の生活扶助基準については、現行の(本件保護基準改定がされた後の)生活扶助基準額と第1・十分位の生活扶助相当支出額がおおむね均衡しているとの検証の結果が示されたことに加え、前記⑴アのとおり、厚生労働大臣は、保護基準のうち生活扶助基準の改定について、改定をする必要性の有無や改定後の生活 扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持 の結果が示されたことに加え、前記⑴アのとおり、厚生労働大臣は、保護基準のうち生活扶助基準の改定について、改定をする必要性の有無や改定後の生活 扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否か等の判断に当たり、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有することからすれば、平成30年にされた保護基準の改定における厚生労働大臣の判断は、水準均衡方式の下、消費者物価指数の変動以外にも、消費動向等の様々な事情を考慮してされたとみる余地があ る。 そうすると、平成30年にされた保護基準の改定において、物価の上昇を理由とする生活扶助基準の改定がされなかったことから直ちに、厚生労働大臣が、不当な目的で本件保護基準改定をしたと推認することは困難であるといわざるを得ず、他に上記の点をうかがわせる証拠ないし 事情等も見当たらない。 以上によれば、原告らの主張は、採用することができない。 ⑹ 本件保護基準改定自体の適法性に関する結論前記⑴ないし⑸の検討によれば、原告らが指摘する諸点を踏まえても、ゆがみ調整及びデフレ調整をすることを骨子とする本件保護基準改定に係る厚生 労働大臣の判断が、最低限度の生活を具体化することに係る判断の過程及び手 順における過誤、欠落の有無等の観点からみて、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであるとは認められず、また、2分の1処理を含む激変緩和措置等の措置についても、これを採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした厚生労働大臣の判断が、被保護者の生活に対する影響等の観点からみて、その有す る裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであるとは認められない。 よって、本件保護基 当であるとした厚生労働大臣の判断が、被保護者の生活に対する影響等の観点からみて、その有す る裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであるとは認められない。 よって、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断は、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用してされたものであるとは認められないから、適法である。 4 本件各決定に係る理由の提示の不備の有無(争点⑵-②)について⑴ 原告らは、本件各決定をするに当たっては、どのような事実経過及び理由から、生活扶助費の減額がされることになったのかにつき、根拠法規の適用関係を明らかにして、処分の名宛人にも分かるように詳細な理由の提示がされなければならないにもかかわらず、本件各決定があったことを原告らに対して通知 した各生活保護変更通知書には、処分の理由として「生活保護費基準額の改定」としか記載されていないことからすれば、本件各決定には、行政手続法14条1項等が定める理由の提示をすべき義務に違反する違法がある旨主張する。 ⑵ 生活保護法は、保護の実施機関は、保護の変更を必要とすると認めるときは決定を行い、書面によって被保護者に通知しなければならず、その通知書には 理由を付さなければならないとし(生活保護法24条3項、4項、25条2項)、行政手続法は、不利益処分をする場合には、名宛人に対し、当該不利益処分の理由を示さなければならない旨を規定している(行政手続法14条)。 このように、行政庁が名宛人に対して処分をする際に理由を提示すべきものとされている趣旨は、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制 するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えると ころにあると解される。そうであるところ、上記の各規定により 行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制 するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えると ころにあると解される。そうであるところ、上記の各規定によりどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような理由の提示が求められる趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮して決定すべきである(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同2 3年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)。 ⑶ そして、証拠(甲B1の1、2の1、3の1、4の1、5の1、6の1、8の1)及び弁論の全趣旨によれば、本件各決定を通知した各生活保護変更通知書には、処分の理由として「生活保護費基準額の改定」等との記載とともに、本件保護基準改定による変更後の生活扶助費の具体的金額の記載があると認 められるところ、①本件各決定は、本件保護基準改定に伴って、本件保護基準改定により改定された後の保護基準(生活扶助基準)の内容に従った変更のみを行うものであって(弁論の全趣旨)、本件各決定には、処分庁による恣意的な判断が介入する余地はない(現に、本件各訴えにおいても、原告らは、本件各決定が違法であることの実体的な根拠として、本件保護基準改定が違法である ことのみを挙げている。)こと、②本件保護基準改定の内容については、官報によって、国民全体に周知されていたこと(乙A3)、③原告らは、本件各決定を通知した各生活保護変更通知書に記載された本件各決定による変更後の生活扶助費の具体的金額とそれ以前の通知における生活扶助費の具体的金額を比較すれば、生活扶助費が減額された事実やその具体的な減額の幅を認識するこ 保護変更通知書に記載された本件各決定による変更後の生活扶助費の具体的金額とそれ以前の通知における生活扶助費の具体的金額を比較すれば、生活扶助費が減額された事実やその具体的な減額の幅を認識するこ とは可能であったことからすれば、本件各決定を通知した各生活保護変更通知書に記載された理由は、上記の各規定の要求する理由の提示として、少なくともその最小限度は満たすものであったものと認められるというべきである。 ⑷ したがって、本件各決定を通知した各生活保護変更通知書の理由の提示に不備があるとは認められないから、原告らの主張は、採用することができない。 第4 結論以上のもののほか、本件各決定が違法なものであることを認めるに足りる証拠ないし事情等は見当たらないから、本件各決定は、いずれも適法である。 よって、本件各訴えのうち原告番号1、2、4ないし7の各主位的請求に係る部分は、いずれも不適法であるから、これらをいずれも却下し、原告番号1、2、 5ないし7の各予備的請求は、いずれも理由がないから、これらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 なお、原告番号3は令和▲年▲月▲日に死亡しているところ(前提事実⑹)、保護を受ける権利は一身専属の権利であり、当該被保護者の死亡によって当然に消滅し、相続の対象とはなり得ないと解される(朝日訴訟最高裁判決参照)。 したがって、本件各訴えのうち同原告に係る部分については、その死亡と同時に当然に終了したものと解されるので、この旨を主文において明らかにすることとする。 那覇地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官福渡裕貴 裁判官横山寛 裁判官 那覇地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官福渡裕貴 裁判官横山寛 裁判官石川颯人 (別紙1)当事者目録 (別紙2)争点に関する当事者の主張の要旨 第1 争点⑴(本件各訴えのうち主位的請求に係る部分の適法性(本案前の争点))について (原告ら(原告番号4)の主張)本件各決定につき、本件保護基準改定に基づき生活扶助費の額を減額する部分は、その余の部分と明確に区別し得るものであるから可分である。 また、本件各決定のうち原告番号4に係る処分についても、保護基準と勤労控除(基礎控除)とは、基本的な性格も法形式も全く異なるものであることに加え、 それらに基づく給付がいずれも可分の性質を有する現金の給付に係るものであることからすれば、平成25年告示によって生活扶助費の額を減額する部分と、勤労控除(基礎控除)として取り扱われる金額が増額された部分は、明確に区別しうるものであって、可分である。また、そのように解さなければ、勤労控除(基礎控除)された金額が増額された原告番号4とそうではないその余の原告らとの 間で合理的理由のない差別的取扱いをするものであって、憲法14条の平等原則に反し、不合理である。 したがって、本件各訴えのうち主位的請求に係る部分は、適法である。 (被告の主張)保護基準を改定したことに基づく保護の変更をする旨の処分は、従前に行われ た保護を開始する旨の処分とは別個に、被保護者に対する保護の程度(保護費)を改めて決定する旨の処分であり、また、保護基準に基づいて算定したその者の属する世帯の最低 る旨の処分は、従前に行われ た保護を開始する旨の処分とは別個に、被保護者に対する保護の程度(保護費)を改めて決定する旨の処分であり、また、保護基準に基づいて算定したその者の属する世帯の最低生活費のうち、当該世帯の収入(収入認定額)によっては補えない部分を保護費として決定する旨の処分であって、収入認定額の算定に当たって考慮される勤労控除(基礎控除)を含め、一体として不可分な処分である。 したがって、本件各決定のうち「金額を減額する部分」の取消しを求める本件 各訴えのうち主位的請求に係る部分は、存在しない処分の取消しを求める訴えであって、不適法である。 第2 争点⑵-①(本件保護基準改定をする旨の厚生労働大臣の判断にその有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるか)について(原告らの主張) 1 判断の枠組み等について⑴ 判断の枠組みについてア生活保護法における生活扶助は、憲法25条1項の生存権に基づく給付であるところ、同項に基づく生存権は、憲法上の権利として法規範性を有する。 そして、保護基準の改定(引下げ)につき、生活保護法8条等によって厚生 労働大臣に裁量が認められるとしても、同法が具体的にどの程度の裁量の余地を厚生労働大臣に与えているかについては、同法8条等の解釈の問題であり、とりわけ、憲法上の権利たる生存権に関わる生活保護法における保護基準、特にその中核となる生活扶助基準については、その有する裁量権の幅が著しく減縮するというべきである。 すなわち、保護基準の設定ないし改定は、被保護者に対する保護費の額を定めるものであり、被保護者が最低限度の生活をするために必要な収入を定めるものである。被保護者の多くは、生きるために必要な収入を得ることができないこと 設定ないし改定は、被保護者に対する保護費の額を定めるものであり、被保護者が最低限度の生活をするために必要な収入を定めるものである。被保護者の多くは、生きるために必要な収入を得ることができないことから、その生存を保護に頼っている。そのため、本件保護基準改定のような保護基準の引下げ、取り分け、保護基準の中核となる生活扶助 基準の引下げは、まさに、被保護者の生存を脅かすものであり、生存権に対する極めて重大な侵害行為である。加えて、生活保護制度は、一般国民の生活の根幹を支えるさまざまな制度と連動しており、保護基準は、現代日本における「ナショナルミニマム」としての意味合いを有しているのであって、その引下げは、全国民の生活水準を引き下げるという影響を及ぼすものであ る。また、特に保護基準の引下げについては、法令上、既に認められていた 基準が合理的理由なく後退した局面といえることからすれば、生存権の自由権的効力を侵害するものといえる。 以上のような保護基準の改定及びこれによって侵害される生存権の性質等を踏まえれば、保護基準の改定において厚生労働大臣が有する裁量権の幅は著しく減縮されるというべきであり、その逸脱又は濫用の判断に当たって は、厳格な審査基準が適用されなければならない。 また、厚生労働大臣に対し、保護基準の改定に係る権限を付与する生活保護法8条は、厚生労働大臣が保護基準を改定するにあたって、「要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮」すべきことを明確に規定する(同条2項)など、その文言からし ても、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たって有する裁量権の幅を限界付ける規定であることは明らかであり、そうすると、同項の趣旨からしても、保護基準の改定において厚生労 ど、その文言からし ても、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たって有する裁量権の幅を限界付ける規定であることは明らかであり、そうすると、同項の趣旨からしても、保護基準の改定において厚生労働大臣が有する裁量権は著しく減縮されたものであるというべきである。 イ専門技術的裁量とは、政治的判断や専門技術的知識を必要とする不確定概 念の解釈・適用についての裁量をいうところ、これについては、①通常の専門技術的裁量、②高度の専門技術的裁量、及び③極めて高度の専門技術的裁量の三段階に分類される。そして、保護基準の改定については、その根拠となる統計学につき、厚生労働大臣ないし厚生労働省が専門技術的知識や経験を有しているものではないことに加え、その判断の性質も、計画目標を実現 するものでもなく、かつ、多数の衝突する私的利害と公的利害との調整を要するものでもないことからすれば、保護基準の改定において厚生労働大臣が有する裁量権は、上記のうち①通常の専門技術的裁量に位置づけられるというべきであるから、その裁量権の幅は、広範なものとはなり得ない。 この点、生活扶助の老齢加算(70歳以上の被保護者に対し、一定の金額 を生活扶助費に加算して支給する平成18年4月に廃止された制度のこと。 以下同じ。)の廃止の是非が争われた最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁(以下「老齢加算福岡訴訟最高裁判決」という。)も、保護基準の改定における厚生労働大臣の専門技術的な裁量権の行使について、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門技術的知見との整合性の有無等について審査されるべき」旨 明確に判示しているところ、本件保護基準改定は、行政が有する調査結果(データ)を基 ついて、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門技術的知見との整合性の有無等について審査されるべき」旨 明確に判示しているところ、本件保護基準改定は、行政が有する調査結果(データ)を基にした、統計学の手法による分析ないし検討結果を根拠とするものであることも踏まえれば、本件保護基準改定については、同調査結果(データ)を用いた再現性のある検証の結果、厚生労働大臣が挙げる保護基準を改定する根拠が合理性を有しないものであると判明する場合に加え、高度の 専門技術的知識や経験を有する統計学の専門家からみて、統計学の手法による分析ないし検討結果を根拠とする厚生労働大臣の裁量権の行使の結果について重大な欠陥ないし誤りがあると判明した場合には、当該厚生労働大臣の判断には、その有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があることになる。 ウ以上のような本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の裁量権の性質等に鑑みれば、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断における裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用の有無の審査に当たって、裁判所は、以下の判断の枠組みを適用すべきである。すなわち、㋐生活扶助基準の引下げに見合う「要保護者」の最低限度の生活の「需要」を満たすために必要な生活費の減 少が認められるか否か、㋑引下げ後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否か、㋒「その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民の状況等との相関関係において判断決定」しているか、㋓まずは、「高度の専門技術的な考察」をし、次いで「それに基づいた政策的判断」をしているか、㋔㋐及び㋑の観点に絞って検討がされて いるか否か、㋕裁判所において「統計等の客観的な数値等との合理的関連性 や専門的知見との整合 し、次いで「それに基づいた政策的判断」をしているか、㋔㋐及び㋑の観点に絞って検討がされて いるか否か、㋕裁判所において「統計等の客観的な数値等との合理的関連性 や専門的知見との整合性に欠ける」か否かについても認定した上で、厚生労働大臣がした裁量権の行使に、その有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるか否かを審査しなければならない(最高裁平成22年(行ツ)第392号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁(以下「老齢加算東京訴訟最高裁判決」といい、これと老齢加算福岡訴訟最 高裁判決と併せて「老齢加算訴訟最高裁判決」という。)参照)。 エまた、生活保護法8条2項が、前記アのとおり、厚生労働大臣が保護基準を改定するにあたって考慮すべき事情を明確に規定していることからすれば、同項に列挙された各要素は、保護基準の改定に当たり、優先的に考慮されなければならない。そうすると、同各要素を考慮せずに保護基準の改定が 行われた場合には、それをもって直ちに同項違反となり、その有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用となるほか、これ以外の要素を同項に列挙された各要素に優先したり、政策的な考慮をしたりして保護基準を改定した場合にも、当該裁量権の行使は、同項の委任の範囲を超えるものとして、違憲又は違法なものとなる。特に、老齢加算訴訟最高裁判決における判示を踏ま えれば、「最低限度の生活」を保護基準において具体化するに当たって、「国の財政事情」を独立の考慮要素として加味することは認められないというべきである。 ⑵ 基準部会等の専門家による組織の関与についてア衆議院又は参議院の厚生委員会(当時。以下この項において同じ。)におい てされた生活保護法の立法過程における質問及び答弁の内容(甲 ⑵ 基準部会等の専門家による組織の関与についてア衆議院又は参議院の厚生委員会(当時。以下この項において同じ。)におい てされた生活保護法の立法過程における質問及び答弁の内容(甲A85、86)によれば、保護基準については、同法が立法された当時より、国民の最低生活の線を引く重要性から、継続的な審議機関の必要性が指摘され、政府としても、上記指摘を踏まえ、厚生省の判断ではなく、諮問機関によって得られた結論に従って実施すべきことを認めているのであって、同法の立法担 当者も、立法の経緯につき同旨の説明をしている(甲A88・168頁)。加 えて、同法が立法された当時の厚生大臣(当時)が、参議院厚生委員会において、自ら「基準額につきましては下げないということでどこまでも進んで行きたい」と明言していること(甲A87・3頁)や、保護受給世帯の家計には弾力性がないために生活扶助基準には下方硬直性があることも併せれば、保護基準の引下げについては特に慎重な配慮が必要であって、専門家に よる組織が関与してされた厳格な審議、検討ないし判断を経ていることこそが、厚生労働大臣の保護基準の改定に係る判断の正当性を根拠付けるものというべきであり、厚生労働大臣は、勝手に保護基準を改定する方式を変更することはできず、保護基準を改定する方式を変更する場合には、適切な手続を経ることが必要である。 よって、本件保護基準改定については、特にデフレ調整につき、上記のような専門家による組織が関与してされた審議、検討ないし判断を経ていないから、これに係る厚生労働大臣の判断については、その判断の過程に重大な過誤があり、ひいては、その有する裁量権の範囲からの逸脱又は濫用があることが明らかである。 イ仮に、本件保護基準改定におい に係る厚生労働大臣の判断については、その判断の過程に重大な過誤があり、ひいては、その有する裁量権の範囲からの逸脱又は濫用があることが明らかである。 イ仮に、本件保護基準改定において、厚生労働大臣が、基準部会等の諮問機関における審議、検討ないし判断を経ることなく、自身の判断のみでその実施を決断したことをもって直ちに、その有する裁量権の範囲からの逸脱又は濫用があるとまではいえないとしても、前記アを前提とすれば、専門家による組織が関与してされた審議、検討ないし判断を経ることなくされた保護基 準を改定する旨の厚生労働大臣の判断の過程を審査するについては、判断の過程の合理性ないし過誤・欠落の審査(被告が主張する判断過程合理性審査)のみを行うのではなく、判断の過程の審査における原則的な審査の方法というべき考慮要素審査、すなわち、厚生労働大臣による考慮要素の選択にまで立ち入った審査を行うべきである。 2 ゆがみ調整について⑴ 第1・十分位を比較する対象とした点について基準部会は、平成25年検証において、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準とを比較することで、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かの「検証」を行っているところ、基準部会が、一 般低所得世帯の消費実態と比較する対象として第1・十分位を設定したことは、下記ア及びイの理由から不合理である。 ア水準均衡方式に反すること昭和59年から現在に至るまで採用されてきた保護基準を改定する方式である水準均衡方式は、中央社会福祉審議会において、保護受給世帯の消費 水準を「一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準」であるとし、その均衡(格差)をそのまま維持せよとの意見具申がされたことを受けて採用さ は、中央社会福祉審議会において、保護受給世帯の消費 水準を「一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準」であるとし、その均衡(格差)をそのまま維持せよとの意見具申がされたことを受けて採用されたものであり、その際には、①平均的一般世帯の消費支出、②一般低所得世帯(第1・五分位〔所得下位20%〕と第2・五分位〔所得下位20~40%〕)の消費支出、③保護受給世帯の消費支出の3つの間の格差の均衡に 留意するものとされていた。 そうすると、単純に最下層である第1・十分位の消費支出を比較する対象と設定することは、水準均衡方式の趣旨に反する。 イ最下位層との比較は際限のない保護基準の引下げを招くこと生活保護制度につき、様々な理由により保護の受給資格がありながらこれ を利用せず生活扶助基準以下の生活を余儀なくされている者(漏給層)が多数存在する現状で、第1・十分位の消費水準との比較を根拠に保護基準を引き下げることを許せば、保護基準を際限なく引き下げていくことにつながることになりかねないのであるから、比較する対象として第1・十分位を設定することは不合理である。 ⑵ 平成25年検証の統計学上の正当性等について被告がゆがみ調整の根拠であると主張する平成25年報告書については、その前提となる平成25年検証につき、下記アからオまでのとおり、統計学上の多くの間違いや疑問点があり、その結果たる数値については統計学的に正しいとはいえない。よって、平成25年報告書における分析結果を根拠としたゆが み調整は、統計等の客観的な数値との合理的関連性も、専門的知見との整合性もないため、本件保護基準改定は、厚生労働大臣が有する裁量権を濫用してされたものである。 ア平成25年検証に使用した統計データが他に公 の客観的な数値との合理的関連性も、専門的知見との整合性もないため、本件保護基準改定は、厚生労働大臣が有する裁量権を濫用してされたものである。 ア平成25年検証に使用した統計データが他に公表されているデータと整合しないこと 平成25年報告書によれば、生活扶助基準額と第1・十分位の消費支出とを比較するために使用した統計データは、平成21年全消調査の個票データ(抽出した調査対象(標本)である世帯に調査票を配布し、後に回答が記入された調査票を当該世帯から回収した上で、当該回収した調査票から、世帯別に世帯人員数、各世帯人員の年齢、世帯の年間収入、消費支出額等を整理 し、調査情報としてまとめたもののこと。以下同じ。)であると推認されるところ、平成25年報告書において「第1・十分位階層」として用いられた個票データの数が、平成21年全消調査の総世帯数の10分の1と一致しないことからすれば、平成25年検証においては、総務省統計局がまとめた世帯人員による収入十分位階級のデータとは異なるものを適宜使用している疑 いがあるなど、使用されたデータの概要が不明確である。 イ比較の対象となる第1・十分位の世帯から保護受給世帯を除外しなかったこと平成25年検証においては、「一般低所得世帯」と「保護受給世帯」の比較がされているところ、統計学上の大原則として、比較する2つの集団は、比 較の対象とする要因に関しては厳密に区別されなければならない。しかし、 平成25年検証においては、これに用いられたデータ上、「一般低所得世帯」に「保護受給世帯」が含まれている可能性が高いにもかかわらず、この点を看過して比較検討が行われているのであるから、その検討の結果は、上記の統計学上の大原則に反し、統計学的に 上、「一般低所得世帯」に「保護受給世帯」が含まれている可能性が高いにもかかわらず、この点を看過して比較検討が行われているのであるから、その検討の結果は、上記の統計学上の大原則に反し、統計学的に全く意味をなさない。 ウ 「決定係数」について 回帰分析によって定式化された回帰モデル(回帰直線の方程式)につき、予測値の精度、つまりデータに対する回帰モデルの適合の良さを評価する手法として、決定係数(なお、その数値は0以上1以下となり、1に近いほど予測値の精度は高いことを指す。)があり、少なくとも0.5を下回るような回帰モデルを良いモデルであると評価することは難しいところ、平成25年 報告書で示された各回帰モデルにつきこれを算定すると、決定係数が0.3前後と統計学的にみて精度が低いと評価すべきものが複数含まれることからすれば、平成25年検証における一連の分析結果は、統計学的にみた場合、あくまで参考程度の域を超えるものではないと評価すべきである。 エ 「回帰係数のt検定」の採用方法について 回帰係数の統計的検定(母集団に関する仮説を標本から得た情報に基づいて検証すること。以下同じ。)を行うために必要となるt値と呼ばれる検定統計量(このt値を用いた統計的検定法を「t検定」という。t検定とは、帰無仮説(「効果がない(無効)」ことや「異なっていない(同質)」ことを主張する仮説であり、統計的検定において、棄却(否定)し得る仮説のこと。 以下同じ。)が正しいと仮定した場合に、統計量がt 分布に従うことを利用する統計的検定の方法のことである。以下同じ。)について、平成25年報告書で示された回帰モデルにつき、有意水準(検定において帰無仮説を設定したときに、その帰無仮説を棄却(否定)する基準となる確率のこと。以下同じ。) 法のことである。以下同じ。)について、平成25年報告書で示された回帰モデルにつき、有意水準(検定において帰無仮説を設定したときに、その帰無仮説を棄却(否定)する基準となる確率のこと。以下同じ。)を5%と設定して行った場合、有意な差が認められなかった変数が多 数存在したにもかかわらず、平成25年検証においては、かかる変数を除い た再分析は試みられていない。ゆえに、平成25年検証は、t検定の結果を全く反映していないものであって、信頼することができないものとなっている。 オ検討方法の不十分さについて平成25年検証で用いられた回帰分析について、誤差項の分散均一性(比 較する2つのグループにおいて、サンプルの分散が等しいこと)、正規性(比較する2つのグループにおいて、サンプルが正規に分布していること)及び説明変数間の多重共線性(説明変数間に非常に強い相関があったり、一次従属的な変数があること)等の仮定につき、検討が行われておらず、さらには、回帰分析において一般的に用いられている最小2乗法(OLS)による回帰 分析も行っていない疑いがある。 ⑶ 2分の1処理について厚生労働大臣は、ゆがみ調整につき、自らが十分な合理性を有する旨主張する平成25年報告書を尊重せずに、各年齢階級別の「ゆがみの大きさ」に基づいた世帯規模別逓減率(乖離率)につき、平成25年報告書の数値をそのまま 適用することなく、その2分の1に留めることとする2分の1処理を行うことで、生活扶助費の予算の更なる削減を実現した。 すなわち、本件保護基準改定において、厚生労働大臣は、ゆがみ調整に係る調整幅につき2分の1処理をすることで、これをしない場合に比して、①生活扶助基準(第1類費)の基準額につき、1年間で440億5900万円 ち、本件保護基準改定において、厚生労働大臣は、ゆがみ調整に係る調整幅につき2分の1処理をすることで、これをしない場合に比して、①生活扶助基準(第1類費)の基準額につき、1年間で440億5900万円の減少 (減額)を、②生活扶助基準(第2類費)の基準額につき1年間で9億3800万円の減少(減額)を実現したと推計することができる。これを前提とすると、2分の1処理によって、保護受給世帯のうち1人世帯の生活扶助費において約155億1400万円の削減効果が、保護受給世帯のうち2人世帯ないし5人世帯の生活扶助費において63億9300万円の増額効果が、それぞれ生 じたものと推計されるから、これを行わなかった場合に比して、年間91億2 100万円程度の生活扶助費削減を行ったこととなる。これは、2分の1処理が行われたことにより、2分の1処理が行われなければさらなる増額が実現されるはずであった被保護者の生活扶助費の増額が何らの合理的理由もなく抑えられたことを意味するから、本件保護基準改定は、恣意的かつ著しく不合理である。 3 デフレ調整について⑴ デフレ調整の必要性についてア被告は、デフレ調整の必要性の根拠として、平成19年検証により、当時の生活扶助基準は一般の低所得世帯の消費実態と比べて高いという結果が得られたことを挙げるが、以下の事情に照らせば、平成19年報告書をデフ レ調整の必要性の根拠とする被告の主張は、客観的事実に反する重大な事実誤認に基づくものであることは明らかである。 平成19年検証を行った生活扶助基準検討会は、厚生労働省社会・援護局長が何らの法律上の根拠に基づかずに設置した同局長が私的に諮問するための組織にすぎない(乙A14の1、甲A95の2)ことに加え、平 成1 証を行った生活扶助基準検討会は、厚生労働省社会・援護局長が何らの法律上の根拠に基づかずに設置した同局長が私的に諮問するための組織にすぎない(乙A14の1、甲A95の2)ことに加え、平 成19年10月19日から同年11月30日までの1カ月半程度におけるわずか5回の会議に基づいて平成19年報告書を取りまとめており、その検討の期間が極めて短く、その検討の回数が不十分であることからすれば、学識経験者による検証として位置付けられるようなものではなかった。 平成19年報告書は、「生活扶助基準の引下げ」との結論を出しておら ず、むしろ、平成19年報告書が公表された後に、生活扶助基準検討会の委員5名全員が連名で公表した「『生活扶助基準に関する検討会報告書』が正しく読まれるために」と題する文書(甲A5。以下「平成19年検討会委員文書」という。)の内容からすれば、生活扶助基準を引き下げることには慎重であるべきというのが生活扶助基準検討会の委員の総意であっ た。 平成19年報告書は、第1・十分位の消費水準と比較すべき根拠として①第1・十分位の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること、②第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は平均的な世帯と比較してもおおむね遜色のない こと、③生活扶助基準額はこれまで第1・十分位の消費水準と比較することが適当とされてきたところ、平成19年検証に際してこれを変更する理由がないこと、を挙げるが、下記のとおり、これらはいずれも根拠として成り立っていない。 a ①について 平成19年報告書には、単身世帯(60歳以上)につき、第1・十分位の消費水準は、中央値である こと、を挙げるが、下記のとおり、これらはいずれも根拠として成り立っていない。 a ①について 平成19年報告書には、単身世帯(60歳以上)につき、第1・十分位の消費水準は、中央値である第3・五分位の5割(第1・五分位でみると約6割)にとどまっている点に留意する必要がある旨の記載があるところ、議事録(甲A99)からうかがわれる平成19年報告書に上記の記載がされるに至る経緯からすれば、少なくとも単身世帯については、 前記①の根拠は当てはまらないというのが委員の総意であったから、前記①の点は、生活扶助基準額と第1・十分位の消費水準とを比較すべき根拠とはなり得ない。 b ②について夫婦子1人世帯においては、第1・十分位に属する世帯における必需 的な耐久消費財の普及率につき、平均的な世帯と比較して明らかな差があることに加え、第1・十分位に属する世帯における必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較して大きな差があるものが多数あることからすれば、前記②の点は、生活扶助基準額と第1・十分位の消費水準とを比較すべき根拠とはなり得ない。 c ③について 保護基準の妥当性の検証は、昭和58年12月に中央社会福祉審議会が取りまとめた「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(乙A8。以下「昭和58年意見具申」という。)に基づき水準均衡方式が採用され、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要が生じたことにより新たに生じた課題であるが、その後も、専門委員会 による平成15年12月16日付け「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(乙A13。以下「平成15年中間取りまとめ」という。)に至るまで、生活扶助基準の妥当性の検証は行われていなかったから、前記③の点は、その前提自 付け「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(乙A13。以下「平成15年中間取りまとめ」という。)に至るまで、生活扶助基準の妥当性の検証は行われていなかったから、前記③の点は、その前提自体が誤っていることは明らかである。 イ仮に、平成19年報告書が、生活扶助基準の引下げを示唆する内容のもの であったとしても、厚生労働大臣は、現実には、平成19年検証の後、原油価格や物価の高騰、100年に1度という経済危機等の毎年の状況を見て、生活扶助基準の引下げは行わないという積極的な判断を行ってきたにもかかわらず、平成25年になるや、一転してその間の物価動向を勘案して生活扶助基準の引下げを行うこととしたというのは、矛盾する態度であるという ほかなく、不合理である。 ⑵ 物価(消費者物価指数)を指標とすることの合理性についてア厚生労働大臣は、昭和58年意見具申に従い水準均衡方式を採用して以降今日に至るまで、同方式に基づいて生活扶助基準の改定を行ってきており、また、生活保護法が立法される過程から、専門家による審議会等の慎重な手 続に基づいて保護基準を決定することが前提とされ(前記1⑵ア)、それが、厚生労働大臣の裁量判断の正当性を根拠付けるものとされており、とりわけ、水準均衡方式は、「水準均衡」という考え方そのものから、専門家による専門技術的検証を不可欠の要素とする方式であった。加えて、水準均衡方式は、民間消費支出の伸び率により、前年の生活扶助費を前提として1年ごとにこ れを改定していく方式であり、消費者物価を独立した要素として考慮するこ とは論理的にあり得ず、昭和58年意見具申においても、「賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料に留めるべきである。」と明 立した要素として考慮するこ とは論理的にあり得ず、昭和58年意見具申においても、「賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料に留めるべきである。」と明言されていたほか、過去の専門家による組織が関与してされた検証においても、生活扶助基準を改定するに際し、物価指数を独立した考慮要素(指標)とすることについては、専門家から強い異論が出てい た。 したがって、厚生労働大臣において、本件保護基準改定に際し、生活扶助基準の決定方式につき、「消費者物価指数を独立した要素として考慮する」という水準均衡方式とは相いれない独自の方式に変更しようとするのであれば、基準部会における慎重な検討を経るべきであった。そうであるにもか かわらず、かかる慎重な手続を一切経ることなく、水準の均衡を判断する際の独立の考慮要素として消費者物価指数を考慮することを前提とするデフレ調整をした厚生労働大臣の判断には、その判断の過程に重大な過誤があるから、その有する裁量権の範囲からの逸脱又は濫用があることは明らかである。 イそもそも、総務省統計局が認めるとおり、消費者物価指数の測定と、家計の可処分所得の測定は、全く異なるものであるから、消費者物価指数の変化率そのものは、これによって生じる保護受給世帯の実質的な可処分所得や生計費の変動の割合を反映するものではない。 よって、仮に、物価の変動によって被保護者の可処分所得に実質的な変動 が生じる余地があるとしても、その変動を把握するために消費者物価指数を考慮することは不合理である。 ウまた、水準均衡方式において準拠することとされる民間最終消費支出の伸びが、実質値ではなく名目値であることからすれば、物価の変動は、水準均衡方式に内包されていることにな とは不合理である。 ウまた、水準均衡方式において準拠することとされる民間最終消費支出の伸びが、実質値ではなく名目値であることからすれば、物価の変動は、水準均衡方式に内包されていることになる。そうすると、デフレ調整の対象とされ る平成20年から平成23年までの各年度につき、水準均衡方式に基づく改 定として、「一般国民の消費の実態との均衡上ほぼ妥当な水準」であるという判断の下で生活扶助基準が改定されてきたのであるから、これに重ねて、同期間の物価変動率を生活扶助基準に反映させる「デフレ調整」を行うことは、物価の下落を二重に評価するものであって、不合理である。 ⑶ デフレ調整の対象となる期間の始期を平成20年としたことについて 被告は、平成16年報告書において生活扶助基準の水準は「基本的に妥当」と評価されたこと、平成19年報告書おいて生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態に比べて高いと評価されたことに加え、平成17年度から平成19年度まで生活扶助基準が据え置かれたことを根拠に、デフレ調整の対象となる期間の始期を平成20年と設定した旨主張するが、そもそも、平成19年 報告書については、前記⑴アのとおり、その作成主体の適格性や審議経過に問題があるのであって、同報告書を根拠とすることは不合理である。また、この点をおくとしても、平成19年報告書は、その前の専門家による報告(平成16年報告書)以降の平成16年から平成19年までのいずれかの時点において、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態に比べて高くなったとの評 価を示しているにとどまる。そうすると、本件保護基準改定がされる以前に最後に生活扶助基準の水準が改定されたのが平成16年度(0.2%の引下げ)であったことも踏まえれば、デフレ調 なったとの評 価を示しているにとどまる。そうすると、本件保護基準改定がされる以前に最後に生活扶助基準の水準が改定されたのが平成16年度(0.2%の引下げ)であったことも踏まえれば、デフレ調整の対象となる期間の起点は、生活扶助基準の水準が改定がされた直近の年である平成16年か、遅くとも上記の評価が示された中での最も遅い時期である平成19年とするのが論理的である。そ うであるにもかかわらず、厚生労働大臣がデフレ調整の対象となる期間の起点を平成20年と設定したのは、同年が、原油価格の高騰等の諸事情によって近年では物価上昇率が突出して大きかった年であり、生活扶助基準を改定するに当たり、平成20年の消費者物価指数を参考資料とすべきではなかったところ、厚生労働大臣は、上記の点に着目し、物価の下落率を不当に大きく見せること を目的として同年をデフレ調整の対象となる期間の始期としたとみるのが自 然であるから、デフレ調整の対象となる期間の始期を平成20年と定めた厚生労働大臣の判断は不合理である。 また、上記のとおり物価上昇率が突出した年である平成20年をデフレ調整の対象となる期間に含めれば、一時的かつ異常な物価下落率が算定されることとなることについては、総務省統計局の分析からしても明らかであるところ、 厚生労働大臣が、平成20年当時、物価が高騰していたにもかかわらず生活扶助費を据え置いたということは、すなわち、当時の物価の上昇を生活扶助費に反映すべきではないと判断したことを意味する。そうであるにも関わらず、デフレ調整の対象となる期間に平成20年を含めるとすると、厚生労働大臣は、保護基準の引上げについては平成20年の物価の上昇を考慮しないこととす る一方、その引下げについては同年の物価の上昇を考慮するという 対象となる期間に平成20年を含めるとすると、厚生労働大臣は、保護基準の引上げについては平成20年の物価の上昇を考慮しないこととす る一方、その引下げについては同年の物価の上昇を考慮するという判断をしたということになり、かかる判断は矛盾するものであるのみならず、生活保護法8条2項にも反するものであって、不合理である。 ⑷ デフレ調整の対象となる期間の終期を平成23年としたことについて政策判断を行うために統計データを使用する場合には、原則として、最新の データが用いられるべきところ、本件保護基準改定をすることが検討された時期における最新の総務省CPIのデータは平成23年ではなく平成24年のものであったから、厚生労働大臣は、本件保護基準改定をするに当たっては、デフレ調整の対象となる期間の終期を平成24年とした上で、平成24年総務省CPIのデータを使用すべきであった。 この点につき、被告は、本件保護基準改定を含む平成25年度の政府予算案を編成した時に平成24年総務省CPIのデータを用いることは時間的に不可能であった旨主張するが、厚生労働省が本件保護基準改定を含む「見直し案」を発表した平成25年1月27日の2日前に当たる同月25日の時点で、総務省が平成24年総務省CPIのデータを公表していたことに加え、同時点から 本件保護基準改定の適用が開始された時(同年8月1日)までにはかなりの時 間的余裕があり、さらには、本件保護基準改定が被保護者の生活に重大な悪影響を及ぼすものであることからすれば、厚生労働大臣は、平成23年総務省CPIのデータを用いた従前の案を凍結した上で、平成24年総務省CPIのデータを用いて検証し直すべきであったというべきである。よって、これを怠った厚生労働大臣の判断は不合 働大臣は、平成23年総務省CPIのデータを用いた従前の案を凍結した上で、平成24年総務省CPIのデータを用いて検証し直すべきであったというべきである。よって、これを怠った厚生労働大臣の判断は不合理である。 ⑸ 生活扶助相当CPIの算定に際して指数参照時点を平成22年としたことについてある品目の価格比を考察する場合、同じ2時点の変化率でも、「新しい時点から旧い時点の上昇率(下落率)」と「旧い時点から新しい時点の下落率(上昇率)」との間には双対性がなく(双対性の欠如)、指数品目(個別品目)の価格 比の加重平均である物価指数においても同様に双対性がない。そのため、物価指数を作成する場合には、常に指数参照時点(物価指数を100とする基準となる時点)を比較元(物価指数の算定期間の始期)に固定し、旧い時点を基準とした新しい時点の値を比較しなければならない。 そうであるにもかかわらず、厚生労働大臣は、平成20年生活扶助相当CP Iを算定するに当たり、指数参照時点を平成22年に設定することで、テレビやノート型パソコンといった価格の下落幅の大きな品目の物価指数の差が大きくなるようにし、ひいては最終的に算定される生活扶助相当CPIの変化率(下落率)が過大になるようにしたから、指数参照時点を平成22年と定めた厚生労働大臣の判断は、恣意的かつ不合理である。 ⑹ 生活扶助相当CPIの算定に際しウエイト参照時点を平成22年としたことについてア被告は、生活扶助相当CPIが平成20年から平成23年という非常に短い期間を対象とするものであることや直近の消費構造を反映する必要があることから、ウエイト参照時点を平成22年とした判断は合理的である旨主 張するが、総務省CPIも、5年に1度の頻度でウエイ 短い期間を対象とするものであることや直近の消費構造を反映する必要があることから、ウエイト参照時点を平成22年とした判断は合理的である旨主 張するが、総務省CPIも、5年に1度の頻度でウエイトを見直すという運 用を前提に、1年ないし5年のスパンで消費者物価の変動率を計算するものであることからすれば、平成20年から平成23年という生活扶助相当CPIの対象となる期間が、総務省CPIに比して非常に短いなどとはおよそ評価することができない。また、直近の消費構造を反映するという観点についても、総務省統計局が、平成20年以前としては直近である平成17年総務 省CPIのウエイト(以下「平成17年ウエイト」などという。)につき、平成19年において中間年における見直しをした上で、これを平成20年1月から適用していたのであり、生活扶助相当CPIの算定に当たっても、かかる平成17年ウエイトを用いるのがむしろ合理的であったから、被告の主張は不合理である。 イ生活扶助相当CPIの算定に際し、ウエイト参照時点を平成22年とした厚生労働大臣の判断は、下記ないしのとおり、統計学上の根拠もなく、総務省統計局が伝統的に採ってきた方法や消費者物価指数に関する国際規準にも反しており、恣意的かつ不合理である。 物価指数の計算における標準的な指数としては、基準時(指数参照時点) をウエイト参照時点とするラスパイレス指数が用いられるのが一般的であって、総務省CPIにおいてもラスパイレス指数が採用されているにもかかわらず、厚生労働大臣は、何らの統計学的根拠もなく、ウエイト参照時点を平成22年とする独自の算定方法を用いて生活扶助相当CPIを算定した。 被告は、消費者物価指数に関する国際規準の内容を敷衍する形で 、何らの統計学的根拠もなく、ウエイト参照時点を平成22年とする独自の算定方法を用いて生活扶助相当CPIを算定した。 被告は、消費者物価指数に関する国際規準の内容を敷衍する形で国際労働機関(以下「ILO」という。)によって作成された「消費者物価指数マニュアル―理論と実践―」(甲A123、乙A85。以下「ILOマニュアル」という。)において、ウエイト参照時点を期首から期末の間の任意の時点とすることができるロウ指数が紹介されていることを前提に、ウエイト 参照時点を平成22年と設定とした点につき、ロウ指数を採用したものと して説明ができる旨主張する。 しかし、ロウ指数は、「固定買い物かご」方式を前提とするものであるところ、「買い物かご」を具体的に固定せず、マーケットバスケット方式を逸脱して算定された生活扶助相当CPIは、そもそもロウ指数ではない。 また、この点をひとまずおくとしても、ロウ指数については、それが発 案された当初から、ウエイト参照時点の選択を含め、厳密な方法論が確立されておらず、その後、現在に至るまでに、ウエイト参照時点に関するより精密な議論が発展した結果、ラスパイレス指数等のより精緻な理論が確立されるに至り、実務でもそれらが採用されるに至った一方、ウエイト参照時点を厳密に定義しないロウ指数は淘汰され、使われなくなった。そし て、ロウ指数については、確かに、ILOマニュアルに掲載されてはいるものの、ILOマニュアルにおける、「実務的にあるいは経済学的にオーソライズされた指数算式」に係る記述には含まれていない(なお、ラスパイレス指数、フィッシャー指数等の指数は、含まれている。)。 そうすると、現在において、ウエイト参照時点をどこに置くかについて の議論をしないまま 」に係る記述には含まれていない(なお、ラスパイレス指数、フィッシャー指数等の指数は、含まれている。)。 そうすると、現在において、ウエイト参照時点をどこに置くかについて の議論をしないまま、生活扶助相当CPIがロウ指数と解し得ることを根拠として「ウエイト参照時点は任意の時点でよい」と主張することは、統計学の専門的見地から見て正当化され得ないものである。 被告は、生活扶助相当CPIの算定方法につき、仮に、基準年である平成22年を中心にその前後で分けるとすれば、平成20年から平成22年 までについてはパーシェ式、平成22年から平成23年までについてはラスパイレス式によったことになるところ、ラスパイレス指数とパーシェ指数は、いずれもロウ指数という統一の定義式で表すことのできる指数であって、パーシェ指数は、ラスパイレス指数と同様の加重相加平均の算式で表すこともできる指数であるから、デフレ調整に当たり異なる計算原理を 混合して用いたことにはならない旨主張する。 しかし、一般に、ウエイトを基準時で固定するラスパイレス指数については上方バイアスが生じる一方、ウエイトを比較時で固定するパーシェ指数については下方バイアスが生じるところ、このように異なる指数を混交した場合、比較する二時点間の指数値にどの程度の上方及び下方のバイアスが含まれるか不明となり、不正確な物価変動率とならざるを得ない。ゆ えに、正確な物価変動率を求めるためには、計算論理が同じ指数値を利用する必要があるから、被告の上記主張からして、計算原理が混交した生活扶助相当CPIには致命的な欠陥があることは明らかである。また、そもそも、平成20年生活扶助相当CPIについては、期首である平成20年を基準時とせず、また、平成22年を比較時ともしてい 混交した生活扶助相当CPIには致命的な欠陥があることは明らかである。また、そもそも、平成20年生活扶助相当CPIについては、期首である平成20年を基準時とせず、また、平成22年を比較時ともしていない点で、パーシ ェ指数にも該当しない意味不明の数値である。 ILOマニュアルにおいては、①基準時(価格参照時点)は、対象とする時系列間の期首であり起点であり、また、比較時は、当該時系列の期首以降期末までの各時点であり、したがって、基準時(価格参照時点)は比較時より過去の時点となること(以下「規準①」という。)、②基準時の指 数値は100でなければならないこと(以下「規準②」という。)、③マーケットバスケット方式によって消費者物価指数は作成されなければならないこと(以下「規準③」という。)、④規準③の必然的結果として、基準時と各比較時の対象とする品目は完全に同一で対応していなければならないこと(以下「規準④」といい、規準①ないし③と併せて「原告主張規 準」という。)が定められている。 しかし、生活扶助相当CPIについては、平成20年生活扶助相当CPIを算定するに当たり、平成22年を基準時(価格参照時点)とし、平成20年を比較時としている点で、規準①に反しており、また、その結果、平成20年と平成23年とで品目数が異なってしまっており、規準④から も逸脱している。すなわち、総務省CPIにおける指数品目(消費者物価 指数を算定するに当たり、家計の上で重要性が高い商品として、その価格を調査する対象に選ばれた代表的な商品(品目)のこと。以下同じ。)は、家計調査(総務省統計局が実施している国民生活における家計収支の実態を把握するために、一般国民の家計上の支出、収入、貯蓄等を調査する統計法上の基幹統計の一つのこと。以 品目)のこと。以下同じ。)は、家計調査(総務省統計局が実施している国民生活における家計収支の実態を把握するために、一般国民の家計上の支出、収入、貯蓄等を調査する統計法上の基幹統計の一つのこと。以下同じ。)の結果を参照して5年ごと に改定される運用となっており、生活扶助相当CPIの算定の直近では、平成17年(2005年)及び平成22年(2010年)に改定が行われているところ、平成22年の指数品目の改定において追加された32品目(以下「平成22年新規採用品目」という。)については、「過去の比較時」である平成20年の価格データの調査時には調査対象に含まれておらず、 これらについては欠測値として除外して算定をせざるを得ない。その結果、平成20年生活扶助相当CPIについては、平成22年新規採用品目を除外した485品目の価格データとウエイトを用いて計算している一方、「将来の比較時」である平成23年の価格データについては、上記欠測値の問題は生じないため、平成23年生活扶助相当CPIについては、これ を含む517品目の価格データとウエイトを用いて計算しているのである。以上の点については、品目数が異なることで、実質的に価格品目のバスケット(買い物かご)が変更されたことを意味することからすれば、規準③にも反していることとなる。 ウ以上のとおり、生活扶助相当CPIは、国際規準から逸脱するものであっ て合理性がなく、かつ、歴史的・学術的な検証が全くなされていないものであり、これによって、平成20年から平成23年までの間の物価の下落率が特に大きいいわゆる家電製品を含む生活扶助相当品目のウエイトが不相当かつ不合理に高くなり、特に平成20年から平成22年の物価の変動については、パーシェ式が用いられたことで、「価格が下落する一方で購入 特に大きいいわゆる家電製品を含む生活扶助相当品目のウエイトが不相当かつ不合理に高くなり、特に平成20年から平成22年の物価の変動については、パーシェ式が用いられたことで、「価格が下落する一方で購入数量が 増加する」という下方バイアスが働く結果となったことも相まって、同期間 の生活扶助相当CPIの下落率も過大に算定されることとなった。 なお、仮に、総務省統計局も採用している統計学上の通常の手法に従い、①平成17年を基準時とした平成20年生活扶助相当CPIを算定し、②平成22年を基準時とした平成23年平均の生活扶助相当CPIを算定し、③平成17年を基準時とした平成22年平均の生活扶助相当CPIを算定し、 最後に④①と②の数値を接続するという算定方法を用いた場合、平成20年から平成23年の間の生活扶助相当CPIの変動率は、「-2.26%」にとどまる。 ⑺ 生活扶助相当CPIの算定における指数品目の選定及びウエイトの設定方法について ア厚生労働大臣が、生活扶助相当品目のウエイトを設定するに当たり、非生活扶助相当品目を除外したのみで、一般世帯を対象とする総務省CPIにおけるウエイトをそのまま採用したことは、保護受給世帯の生活実態ないし消費性向を無視するものであり、明らかに恣意的かつ不合理である。 被保護者は、一般世帯の者よりも消費支出額の絶対額が低い一方、生活 扶助費を毎日の食費と必要最低限の被服費に重点的に支出せざるを得ないため、上記以外の品目につき支出する余裕に乏しく、特に、情報家電製品(パソコンや大型ハイビジョン対応テレビ等)を購入することはほとんどないほか、「海外パック旅行」についても、遊興目的での海外渡航費を生活扶助費から支出することは生活保護制度において想定されていない ソコンや大型ハイビジョン対応テレビ等)を購入することはほとんどないほか、「海外パック旅行」についても、遊興目的での海外渡航費を生活扶助費から支出することは生活保護制度において想定されていない (「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)の第10の19参照)。これらの点を含め、保護受給世帯の消費構造には、一般世帯とは異なる特徴が存在することは、家計調査の結果と社会保障生計調査(厚生労働省が実施している被保護者の生活実態を明らかにし、保護基準の改定等の生活保 護制度の企画運営等のために必要な基礎資料を得る目的で被保護者の家 計収支の状況を調査する一般統計調査のこと。以下同じ。)の結果を比較対照すれば明らかであるところ、生活扶助相当CPIは、保護受給世帯を対象とした物価指数であるから、生活扶助相当CPIにおけるウエイトは、保護受給世帯における取引金額又は取引量を前提として設定されるべきであるし、また、保護受給世帯の上記のような消費性向を正確に把握しな ければ、デフレ傾向による保護受給世帯の可処分所得の実質的変化を把握することはできない。 そうすると、厚生労働大臣が、生活扶助相当CPIのウエイトを設定するに際し、生活扶助相当品目に上記の情報家電製品や「海外パック旅行」費を含めたことは、保護受給世帯の消費性向に反したものであって不合理 である。また、この点をひとまずおき、仮に、これらを生活扶助相当品目に含める余地があることを前提としたとしても、上記のとおり、保護受給世帯の消費構造には、一般世帯とは異なる特徴が存するから、厚生労働大臣は、生活保護法8条2項の要請に基づき、社会保障生計調査の結果を用いるなどして、一般世帯ではなく、保護受給世帯の消 おり、保護受給世帯の消費構造には、一般世帯とは異なる特徴が存するから、厚生労働大臣は、生活保護法8条2項の要請に基づき、社会保障生計調査の結果を用いるなどして、一般世帯ではなく、保護受給世帯の消費実態ないし消費支 出構造を把握した上で、これに基づいてウエイトの設定や生活扶助相当品目の選定を行わなければならない。 しかし、厚生労働大臣は、実際には、社会保障生計調査の結果等を用いて保護受給世帯の消費実態ないし消費性向を把握した上で、より合理的な根拠に基づき被保護者の生活実態ないし消費性向に合ったウエイトを算 定することを怠って、平成22年総務省CPIにおけるウエイト(ただし、非生活扶助相当品目を除外したもの)をそのまま用いることで、上記の情報家電製品のウエイトに占める割合が不当に増加するなど、保護受給世帯の生活実態ないし消費性向とかけ離れた生活扶助相当品目のウエイトを設定し、不相当に過大な生活扶助相当CPIの下落率を算定した(なお、 第1・五分位の世帯の消費実態に基づいてウエイトを設定し直した場合に は、下落率は、「-2.81%」にとどまり、社会保障生計調査の結果と総務省統計局が公開している価格変化率を用いるなどして保護受給世帯の生活実態ないし消費性向を反映させた場合には、下落率は「-0.64%」にとどまるものである。)から、本件保護基準改定は、本来考慮すべき保護受給世帯の消費実態を考慮せず、また、考慮すべきではない一般世帯の消 費実態を考慮したものといえ、生活保護法8条2項に違反し、また、厚生労働大臣が有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用に当たる。 この点、前記の情報家電製品のうち、特に大型ハイビジョン対応テレビ、デスクトップ型パソコン及びノート型パソコン(以下これらを併せて「テレ 裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用に当たる。 この点、前記の情報家電製品のうち、特に大型ハイビジョン対応テレビ、デスクトップ型パソコン及びノート型パソコン(以下これらを併せて「テレビ等3品目」という。)については、被保護者が購入することが困難 であるほどに高価であり、また、被保護者の日々の生活にとっては不要不急の家電製品である。そうであるにもかかわらず、国が算定した「-4. 78%」という生活扶助相当CPIを算定した結果(本件下落率)に対するテレビ等3品目の寄与度は極めて大きく、仮に、これらを除外して計算した場合、その結果は「-1.96%」にとどまる事実も、厚生労働大臣 による生活扶助相当品目のウエイトの設定が被保護者の生活実態ないし消費性向と著しくかい離していることを裏付けている。 イ被告は、保護受給世帯においても、家電製品は一般世帯と同様に普及していることからすれば、保護受給世帯においても家電製品を生活扶助費で購入することが十分予想されるから、情報家電製品(テレビ等3品目)を含む家 電製品を生活扶助相当品目に含めることは当然である旨主張する。 しかし、保護受給世帯においても家電製品が一般世帯と同様に普及しているとする被告の主張については、パソコンの普及率を見ても明らかなとおり、前提となる事実に誤認がある。この点をひとまずおき、仮に、保護受給世帯においても家電製品が一般世帯と同様に普及しているとみる余地があると しても、保護受給世帯が保有するテレビ等の情報家電製品については、保護 を受ける前から保有していた、他人から無償で譲り受けた、又は中古品を購入したなど、小売店において新品を新たに購入する以外の方法で入手した可能性が非常に高い。現に、平成22年に実施された地上波テレビ放 を受ける前から保有していた、他人から無償で譲り受けた、又は中古品を購入したなど、小売店において新品を新たに購入する以外の方法で入手した可能性が非常に高い。現に、平成22年に実施された地上波テレビ放送の地上デジタル化においては、国が、保護受給世帯を含む市町村民税が課されていない世帯に対し、いわゆる地デジ化対応デジタルチューナーを無償で配布し たことも、上記の点を裏付けている。 そうすると、生活扶助相当CPIを含む消費者物価指数が、小売店における新品の購入価格の変動を問題とするものであることも併せれば、生活扶助相当品目に情報家電製品を含めるのは不合理である。 ウ平成22年の前後は、同年に実施された地上波テレビ放送の地上デジタル 化への対応のための需要に加え、いわゆる家電エコポイント制度におけるポイントの付与率が引き下げられる直前のいわゆる駆け込み需要によって、薄型テレビ(大型ハイビジョン対応テレビ)の販売台数が急激かつ一時的に伸びたという特殊な事情があり、また、パソコンやカメラについては、平成17年から平成22年にかけて、性能の向上が著しく、これに応じて、消費者 物価指数を作成する上でのルールである「品質調整」の措置が採られた結果、生活扶助相当CPIの算定においては、それらの購入数量が大幅に増加したものとみなされる(なお、上記の品質調整については、過剰に実施されたとの見解が有力である。)という特殊な事情があった。これらの特殊事情の影響を考慮することを怠り、生活扶助相当CPIを算定した厚生労働大臣の判 断は不合理である。 ⑻ 沖縄県に固有の事情(沖縄県の生活扶助相当CPI)を考慮しなかった点について前記1⑴エのとおり、生活保護法8条2項に規定された各要素を考慮することなく保護基準の改定が行われた場合には、そ ⑻ 沖縄県に固有の事情(沖縄県の生活扶助相当CPI)を考慮しなかった点について前記1⑴エのとおり、生活保護法8条2項に規定された各要素を考慮することなく保護基準の改定が行われた場合には、それをもって直ちに同項に違反し たこととなり、厚生労働大臣が有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用と なるところ、厚生労働大臣は、本件保護基準改定をするに当たり、同項にいう「所在地域別」の事情に該当する沖縄県の事情(特に、沖縄県における生活扶助相当CPIの変化率)について考慮していない。 仮に、これを考慮していれば、デフレではなく、むしろ、インフレーション(以下「インフレ」という。)が生じていたと認められる沖縄県については(な お、沖縄県における平成20年から平成23年までの間の総務省CPIの変化率はわずか「-0.5」にとどまり(甲A133)、また、被告が主張する計算方法を前提とした、平成20年から平成23年までの間の沖縄県の生活扶助相当CPIの変化率の推定値は「-0.996」となる(甲A208の1~3)。)、被告らが主張するデフレ調整の根拠は当てはまらないことは明らかである。 よって、厚生労働大臣が、上記の沖縄県の事情について考慮することを怠って実施した本件保護基準改定が、同項8条2項に違反し、ひいては憲法14条にも違反するものとして、その有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるといえることは明らかである。 4 ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったことの適否について 被告らは、基準部会における検証は、絶対値としての生活扶助費の給付水準の適正化を目的としておらず、年齢階級別、世帯人員別及び級地区分別による保護受給世帯間での相対的な不公平の是正のみを目的としているから、その検証の結果に基づくゆ 、絶対値としての生活扶助費の給付水準の適正化を目的としておらず、年齢階級別、世帯人員別及び級地区分別による保護受給世帯間での相対的な不公平の是正のみを目的としているから、その検証の結果に基づくゆがみ調整は、本来、財政的にはニュートラル(プラスマイナスゼロ)であって、絶対値としての生活扶助基準の是正を行うことを目的とするデフレ調 整とは考え方として重複するものではない旨主張する。 しかし、水準均衡方式において定期的に行う必要があるとされた検証は、一般国民の消費水準と比較して生活扶助基準が妥当な水準にあるか否かについての検証であり、絶対値としての生活扶助基準の「水準」を検証するものであることがその大前提とされている。 そうすると、基準部会においてされた平成25年検証も、生活扶助基準の絶対 値としての「水準」の検証を主たる目的とするものであって、それと一体的に、年齢・世帯人員・級地の3要素による詳細な類型分けをし、保護受給世帯間の不公平の是正(ゆがみ調整)を行った点に、従前の検証とは異なる特徴があるにすぎない。また、仮に、財政的にニュートラルであることを目的とするのであれば、ゆがみ調整によって総額90億円もの保護費の削減という財政効果が生じるこ とは常識的にあり得ず、その理由についての「サンプル世帯と実際の保護受給世帯との世帯構成及び地域分布の違いによるものである」旨の被告の主張についても、その機序は不明である。 したがって、生活扶助基準の絶対値としての「水準」の調整を目的とするデフレ調整による生活扶助費の減額をする際、ゆがみ調整をした結果として生じてし まった減額分を考慮して計算をしなければ、ゆがみ調整による減額とデフレ調整による減額とで不当な重複引下げをしていることになるが、本件保護基準改定において 、ゆがみ調整をした結果として生じてし まった減額分を考慮して計算をしなければ、ゆがみ調整による減額とデフレ調整による減額とで不当な重複引下げをしていることになるが、本件保護基準改定においてはそのような考慮がされておらず不当である。 5 ゆがみ調整とデフレ調整に共通するその余の違法事由について⑴ 制度後退禁止原則等について ア憲法25条憲法25条2項は、「向上及び増進に努める」べきという国の義務のみを規定し、「後退」については規定されていないことに加え、生存権(憲法25条1項)の自由権的効果及び抽象的権利としての性質からすれば、制度後退禁止原則(ある制度の成立又は当該制度の下における一定の利益の供与が、 憲法上の要請とはいえないものの、それが一度導入された以上は、当該制度を廃止又はその内容を後退させることが、憲法上許されなくなるとされる命題のこと。以下同じ。)が導かれるところ、これを訴訟の局面から捉えれば、保護基準の引下げという「後退」が行われた場合には、それが憲法25条に違反しないということ、又は相当に正当化されることにつき、国が主張立証 責任を負うことを意味することとなる。これに、保護基準の引下げが、最低 賃金等のナショナルミニマムにも連動することも併せれば、被告ないし国は、本件保護基準改定につき、より高度の合理的理由ないし相当の正当化につき主張立証責任を負うというべきである。 イ国際人権規約違反経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会権規約」と いう。)は、2条1項において、条約締結国に対し、「この規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」(同規約2条1項)ために行動を採る義務を課していることからすれば、条約 約」と いう。)は、2条1項において、条約締結国に対し、「この規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」(同規約2条1項)ために行動を採る義務を課していることからすれば、条約締結国のとった措置によって権利の実現がそれ以前よりも後退することは、同項の趣旨に反する。 さらに、社会権規約は、社会保障に対する権利を定める9条、食料、衣料 及び住居を内容とする相当な生活水準についての、全ての者の権利等を定める11条並びに到達可能な最高水準の健康に対する権利を定める12条等において、制度後退禁止原則を定めているところ、かかる社会権規約の条項を踏まえて憲法25条を解釈すれば、同条からも、制度後退禁止原則を導くことができる。そして、社会権規約の締結国であるわが国の行政機関である 厚生労働大臣が、保護基準の改定に際し、制度後退原則を定める社会権規約に違反するような改定を行った場合には、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものというべきであるところ、本件保護基準改定が上記の社会権規約の各条項により導かれる制度後退原則ないしその趣旨に反することは明らかである。 また、仮に、社会権規約につき、法的拘束力までは認められないとしても、我が国が制度後退禁止原則を規定する社会権規約を批准し、さらに、いわゆる社会権規約委員会が同原則を内容とする一般的意見(極めて例外的な場合にのみ後退的な措置が許される旨の意見)を採択しているという事実からすれば、本件各決定ないし本件保護基準改定は、その合理性を支える事実を欠 いているというべきであるため、違憲又は違法である。 ⑵ 被保護者の生活の実態の考慮等について生活保護法3条及び8条2項の文言ないし趣旨からすれば、保護基準を定めるに当たっては、被保護 いているというべきであるため、違憲又は違法である。 ⑵ 被保護者の生活の実態の考慮等について生活保護法3条及び8条2項の文言ないし趣旨からすれば、保護基準を定めるに当たっては、被保護者の最低限度の生活の需要を満たされているか否かを考慮することは必須であり、そのためには、保護基準の妥当性を判断するに際し、被保護者の生活の実態を詳細に、しかも、正確に把握することが不可欠で ある。 その上で、保護基準は、平成13年時点において、既にそれを引き下げる余裕はなく(甲A64)、全日本民主医療機関連合会による平成19年及び平成25年の調査(甲A61、63の1・2)、新潟県立大学講師小澤薫氏による平成22年の調査(甲A62)の各結果等によれば、被保護者が、本件保護基準 改定がされる以前においても、健康で文化的な最低限度の生活を営めていなかったことが明らかであった。かかる被保護者の生活の実態を考慮すると、平成25年当時に生活扶助基準を引き下げれば、被保護者は、健康で文化的な最低限度の生活を営むに足りる必要最低限の支出をすることすら不可能となることは容易に判明したものであり、厚生労働大臣は、本件保護基準改定をするに 当たって、このような被保護者の生活の実態を考慮しなければならなかったところ、これを怠り、最も基本的かつ重要な情報である被保護者の生活の実態に関する情報を反映させることなく、本件保護基準改定をしたものである。 したがって、本件保護基準改定は、生活保護法8条2項等の要請を無視したものであり、厚生労働大臣が有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があ る。 ⑶ 厚生労働大臣が不当な動機ないし目的をもってその有する裁量権を行使したか否かについてア基準部会における各委員の報告は、いずれも、当時の保護基準は、 からの逸脱又はその濫用があ る。 ⑶ 厚生労働大臣が不当な動機ないし目的をもってその有する裁量権を行使したか否かについてア基準部会における各委員の報告は、いずれも、当時の保護基準は、あるべき水準より低い、又は均衡しているとの結論であって、そうすると、本来、 基準部会の議論の方向としては保護基準の水準を引き上げる方向となるは ずであったにもかかわらず、厚生労働省の事務局からは、これに反し、検証の対象を年齢、世帯人員及び級地に絞る旨の検証の方法が示され、その後に提示された報告書案においても、保護基準の水準を引き上げる方向の議論が盛り込まれず、さらに、実際に取りまとめられた平成25年報告書における保護給付の充実を導くべき提言についても、全く無視されている。 イ前記アの平成25年報告書が作成された経緯や取扱いに加え、本件保護基準改定がされるに先立って実施された衆議院の総選挙(第46回衆議院議員総選挙。平成24年12月16日執行)において、自由民主党(以下「自民党」という。)が、生活保護制度に関し、「給付水準の10%引下げ」を始めとする見直し案を政権公約として提示するなどし(甲A73)、その後、上記 の見直し案に基づき、生活保護制度の改定を実現してきたという経過や、本件保護基準改定がされた後に実施された平成30年の保護基準の改定において、平成23年以降のインフレを踏まえた保護費の引上げが実施されていないこと等も踏まえれば、本件保護基準改定は、自民党が掲げてきた保護費の削減という政治的意図に基づいて強行されたものであることは明らかで ある。 したがって、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断は、本来考慮すべきでない政権公約ないし政治的意図に基づきされたものであるから、その有する裁量権の範囲か のであることは明らかで ある。 したがって、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断は、本来考慮すべきでない政権公約ないし政治的意図に基づきされたものであるから、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したものに当たる。 (被告の主張) 1 判断の枠組みについて⑴ 厚生労働大臣が広範な裁量権を有していることについて憲法25条、生活保護法3条及び8条2項にいう「最低限度の生活」は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における経済的・ 社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。 したがって、厚生労働大臣は、保護基準の改定については、激変緩和措置の 採否も含め、上記のような専門技術的かつ政策的見地からの広範な裁量権を有するというべきである。 ⑵ 厚生労働大臣の判断が違法と判断される場合についてそして、前記⑴のような専門技術的見地に基づいた政策的判断として行われる保護基準の改定については、①当該改定後の保護基準の内容が被保護者の健 康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであり、かつ、これを超えないものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手順における過誤、欠落の有無等の観点からみて、その有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②激変緩和措置等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において 現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に 権の範囲からの逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②激変緩和措置等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において 現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の生活への影響等の観点からみて、その有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法となる。 前記⑴及び上記の点は、老齢加算最高裁判決においても承認されているところである。 ⑶ 専門家による組織の関与と厚生労働大臣が有する裁量権との関係について 保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断については、その当不当が直ちに裁判所の司法審査の対象となるわけではなく、当該判断が著しく合理性を欠き、明らかにその有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用したと認められるような場合でなければ、その判断は違法となり得ない。 そして、①厚生労働大臣が、保護基準の改定に当たり、専門家による組織を 関与させることについての法令上の規定がないこと、②基準部会の設置の趣旨及び審議事項は「保護基準の定期的な評価・検証」に尽き(乙A21)、保護基準の評価及び検証を踏まえた保護基準の改定の在り方等は基準部会の設置の趣旨及び審議事項とされておらず、厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等についての分析、検証等が設置の趣旨及び審議事項に含まれる余地 はないこと等からすれば、厚生労働大臣は、保護基準の改定に当たっての基準部会等の専門家による組織の関与の在り方や、関与を求めた際の検証又は検討結果ないし意見をどのように考慮するかについても専門技術的かつ政策的裁量を有しているというべきである。 ⑷ 本件における具体的な判断の手法及び枠組みについて そして、一般に、行政裁量 検討結果ないし意見をどのように考慮するかについても専門技術的かつ政策的裁量を有しているというべきである。 ⑷ 本件における具体的な判断の手法及び枠組みについて そして、一般に、行政裁量が認められる行政処分の適否が問題となる場合における判断の過程の審査とは、裁判所が、「原告」が納得できないと主張する点について、行政機関(「被告」)の説明する判断の過程が一応の説得力を持つか否かを審査する形で、いわば行政機関の説明する判断の過程をできる限り生かす審査の方法であると解されており、同審査では、「被告」が説明する論証の過 程を追試的に検証し、それが一応納得することができるものか否か、すなわち、「被告」が挙げる理由に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かという観点から、その適否が判断されることになる(以下、このような審査の方法を「判断過程合理性審査」という。)。 前記⑶で論じた専門家による組織の関与の在り方と厚生労働大臣が有する 裁量権との関係を踏まえ、これを本件に即していえば、厚生労働大臣が、保護 基準の改定に当たり、①専門家による組織が関与してされた審議及び検討を経ることなく判断した場合については、当該判断の前提となる課題に関する事実認識やそれに対する評価、対策の課題解決手段としての適合性に一定の合理性が認められれば、その有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるとはいえないというべきであり、②専門家による組織が関与してされた審議及び検 討を経た上で判断した場合については、当該判断が、上記の検討に係る結果ないし意見等と積極的に抵触するものであることが明らかであり、かつ、厚生労働大臣の判断の過程について一定の合理性すら認められないような場合でない限り、その有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があると し意見等と積極的に抵触するものであることが明らかであり、かつ、厚生労働大臣の判断の過程について一定の合理性すら認められないような場合でない限り、その有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があるとはいえないというべきである。また、これらの審査に当たっては、判断の過程及び手続に おける過誤又は欠落が、現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法及び生活保護法の趣旨及び目的に反したと評価することができるほどに明らかに合理性を欠くと認められるようなものであるかについても検討されなければならない。 2 本件保護基準改定に至る厚生労働大臣の判断の過程について 本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の具体的な判断の過程については、別紙3「被告が説明する厚生労働大臣の判断の過程」に記載のとおりであり、かかる判断の過程につき、前記1⑷において論じた判断の枠組みに即して検討すれば、本件保護基準改定に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤及び欠落があるとは認められないから、本件保護基準改定は適法である。 3 原告らの主張に対する反論⑴ 判断の枠組み等についてア生活保護法8条2項との関係について原告らは、保護基準の改定において、生活保護法8条2項に列挙された考慮要素を考慮せず、あるいは、それ以外の考慮要素を優先して考慮したり、 政策的な考慮をしたりした場合には、厚生労働大臣が行った保護基準の改定 は、その有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用するものであって、特に、老齢加算訴訟最高裁判決における判示を踏まえれば、「国の財政事情」を独立した考慮要素として加味することは認められない旨主張する。 しかし、前記1⑴のとおり、厚生労働大臣は、保護基準の設定及び改定について広範な裁量権を有 おける判示を踏まえれば、「国の財政事情」を独立した考慮要素として加味することは認められない旨主張する。 しかし、前記1⑴のとおり、厚生労働大臣は、保護基準の設定及び改定について広範な裁量権を有しているところ、その一環として、保護基準の設定 及び改定に当たっていかなる事情を考慮要素とするかについても、広範な裁量権を有しているから、保護基準の設定及び改定において考慮する要素は、同項が列挙する事項に限られるものではなく、考慮要素相互間においても、同項に列挙された考慮要素が優先的に考慮されるものでもない。また、どの要素を考慮するかの判断に当たっても、前記1⑴のとおり、高度の専門技術 的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであることからしても、同項に列挙された考慮要素以外について政策的な考慮をする余地がないとする理由もない。 また、「国の財政事情」を独立した考慮要素とすることの当否についても、そもそも、本件保護基準改定は、国の財政事情を考慮して行われたものでは なく、また、この点をおくとしても、老齢加算訴訟最高裁判決は、いずれもその判示内容からすれば、厚生労働大臣が保護基準の改定をするに当たって「国の財政事情」を独立した考慮要素とすることを否定していないことは明らかである。 よって、本件保護基準改定において「国の財政事情」を考慮したことを根 拠に、厚生労働大臣が有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用がある旨の原告らの主張は、そもそも、その前提を欠くものである上、老齢加算訴訟最高裁判決の判示及び趣旨を正解しないものであって、誤りである。 イ基準部会等の専門家による組織の関与について 原告らは、生活扶助基準の引下げは、専門家によって構成される審議会 等の検討の結果に従ったものでなけれ いものであって、誤りである。 イ基準部会等の専門家による組織の関与について 原告らは、生活扶助基準の引下げは、専門家によって構成される審議会 等の検討の結果に従ったものでなければならない旨主張する。 しかし、前記1⑶のとおり、厚生労働大臣は、保護基準の改定に当たっての基準部会等の専門家による組織の関与の在り方や、関与を求めた際の検証又は検討結果ないし意見をどのように考慮するかについての専門技術的かつ政策的裁量を有しているというべきであることに加え、厚生労働大臣は、生活保護制度や保護受給世帯の状況について精通し、生活保護制 度の制度設計を行う事務を始めとする生活保護制度に関する国の行政事務に係る責任者として、これを遂行する上で必要となる専門技術的知見を蓄積し、保有している。現に、厚生労働大臣は、上記の専門技術的知見を背景に、毎年度の生活扶助基準の改定を始め、生活扶助以外の扶助や各種加算の改定をするに当たり、その都度、これを専門家による組織に諮るこ となく自ら行ってきたほか、専門家による組織が関与してされた検証の結果に基づく保護基準の設定又は改定を行う際も、その当時の社会経済情勢等を総合的に勘案し、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量判断に基づく改定を行ってきたところである。 そうすると、厚生労働大臣が、保護基準の改定に当たり、基準部会等の 専門家による組織が関与してされた審議及び検討を経ていないことは、専門的知見との整合性に欠けること、ひいては当該改定に係る厚生労働大臣の判断の裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用があることを意味するものではなく、また、専門家による組織である審議会等の検討の結果が存する場合においても、その位置付けは、厚生労働大臣の判断を法的に拘束す るものではなく、 逸脱又はその濫用があることを意味するものではなく、また、専門家による組織である審議会等の検討の結果が存する場合においても、その位置付けは、厚生労働大臣の判断を法的に拘束す るものではなく、飽くまで厚生労働大臣が判断をする際の参考意見として、生活扶助基準の改定に当たっての考慮要素として位置付けられているにすぎないというべきである。 原告らは、本件保護基準改定において、基準部会等の諮問機関における審議、検討ないし判断を経ていないこと根拠として、本件保護基準改定の 適否における審査方法としては、判断過程合理性審査が妥当しない旨主張 する。 しかし、そもそも、判断の過程の審査における原則的審査方法が「考慮要素審査」であるとする原告らの主張自体、これまでの判例の評価として疑問であることに加え、原告らの上記の主張の根拠と解される老齢加算東京訴訟最高裁判決も、老齢加算の廃止が専門委員会のとりまとめに基づく ものであることを理由に、判断過程合理性審査を採用するなどとは述べていない。以上に加え、前記のとおり、本件保護基準改定につき、審議会等の専門家による組織の意見に法的拘束力を認める根拠はないことも併せれば、原告らの上記の主張は理由がなく、本件においても判断過程合理性審査が妥当するというべきである。 ⑵ ゆがみ調整についてア第1・十分位を比較する対象とした点について原告らは、平成25年検証において、第1・十分位の消費実態を一般低所得世帯の消費実態と比較する対象として設定したことにつき、水準均衡方式の考え方に反すること及び最下位層との比較は際限のない保護基準の引下 げを招くことなどを理由に、不合理である旨主張する。 a しかし、生活扶助基準の改定方式である水準均衡方式は、政府経済見 の考え方に反すること及び最下位層との比較は際限のない保護基準の引下 げを招くことなどを理由に、不合理である旨主張する。 a しかし、生活扶助基準の改定方式である水準均衡方式は、政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸びに準拠して生活扶助基準の「水準」の改定率を決定する方式である一方、生活扶助基準の妥当性の検証においては、保護基準が最低限度の生活の需要を満たしつつこれを超え てはならないとされていることから(生活保護法8条2項)、過去から一貫して、低所得世帯の消費実態や生活様式に着目して基準の策定ないし検証が行われてきたところである。 このように、生活扶助基準の「水準」の改定方式と生活扶助基準の妥当性の検証の手法とでは、そもそもその目的も内容も異なるものであっ て、原告らの主張は、前提において誤っている。 b さらに、平成25年検証は、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態とのかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行ったものであって、単純に第1・十分位の消費支出と生活扶助基準を比較したものではない。また、昭和58年意見具申において、生活扶助基準が「一般国 民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達している」と評価されたのは、「変曲点」の概念を用いて、2.99-50分位の生活扶助相当支出額と生活扶助基準額とを比較した結果によるものであって(乙A31・1~3頁)、原告らが主張するような事情が生活扶助基準の妥当性の検証の前提とされた事実はない。 また、生活扶助基準の妥当性については、生活保護制度において保障すべき最低生活の水準が、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚して定められ また、生活扶助基準の妥当性については、生活保護制度において保障すべき最低生活の水準が、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚して定められていることを踏まえて、格差縮小方式の導入のきっかけとなった、生活保護専門分科会による昭和39年12月16日付け中間報告(乙A32。以下「昭和39 年中間報告」という。)から一貫して、低所得世帯の消費実態に着目して検証が行われてきたのであり、さらには、平成15年中間取りまとめにおいても、「年間収入階級第1/10分位の世帯の消費水準に着目することが適当である。」(乙A13)とされ、平成19年報告書においても、第1・十分位における消費水準との比較により検証を行っている(乙A5)。 そのような中で、基準部会における平成25年検証においても、①これまでの検証に倣い、保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十 分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜 色なく充足されている状況にあることなどを踏まえて、第1・十分位の世帯を比較する対象とすることが妥当であると判断されているところであって、このような基準部会の判断の合理性を否定すべき理由はない。 以上のとおり、平成25年検証において、第1・十分位の世帯を比較する対象として設定した基準部会の検証の方法には、何ら問題はない。 イ平成25年検証の統計学上の正当性等について原告らは、平成25年報告書において「第1・十分位階層」として用いられた個 る対象として設定した基準部会の検証の方法には、何ら問題はない。 イ平成25年検証の統計学上の正当性等について原告らは、平成25年報告書において「第1・十分位階層」として用いられた個票データの数が、平成21年全消調査の総世帯数の10分の1と一致しないことからすれば、平成25年検証において使用されたデータの概要が不明確であって不合理である旨主張する。 しかし、平成25年検証において用いたデータは、データ①(年間収入が低い世帯から順に並べた第1・十分位の世帯。以下同じ。)とデータ②(世帯員1人当たりの年間収入が低い世帯から順に並べた第1・十分位の世帯。以下同じ。)の2種類であるところ、これらは、それぞれ異なる抽出方法を用いて個票データから選定することで作成されたものであって、 それらの抽出方法によれば、これらの各個票データの数が、いずれも平成21年全消調査の調査世帯数ないし集計世帯数(総世帯)の単純な10分の1の数になるものではないことは当然であるから、原告らが指摘する個票データ数の不一致は、平成25年検証に用いられたデータと平成21年全消調査との整合性を否定すべき事情にはならない。 原告らは、平成25年検証につき、「保護受給世帯」と比較する対象である「一般低所得世帯」に保護受給世帯が含まれている可能性が高いにもかかわらず、この点を看過して比較検討を行っており、その検討の結果は、統計学上の大原則に反し、統計学的に全く意味をなさない旨主張する。 しかし、平成25年検証において、「一般低所得世帯(第1・十分位の 世帯)の消費支出」と比較している対象は、「生活扶助基準額」であり、 実際の保護受給世帯の消費支出額を比較の対象としたものではない。 したがって、平成25年検証は、「2つの集団」及 世帯)の消費支出」と比較している対象は、「生活扶助基準額」であり、 実際の保護受給世帯の消費支出額を比較の対象としたものではない。 したがって、平成25年検証は、「2つの集団」及び2つの集団におけるそれぞれの「消費支出」を比較したものではないから、原告らの主張は、平成25年検証の方法につき、第1・十分位世帯(平成21年全消調査)と保護受給世帯という「2つの集団」及び2つの集団におけるそれぞれの 「消費支出」を比較したものであるという誤った前提に立った主張であって、平成25年検証の合理性を否定すべき事情とはならない。 原告らは、平成25年検証における回帰モデルの中に、決定係数が低く、統計学的に見て精度が低いと評価すべきものが複数含まれており、参考程度の域を超えるものではない旨主張する。 しかし、回帰分析における当てはまりの良さ、すなわちその回帰分析が実態を近似する程度を示す指標である決定係数につき、どの程度の決定係数の値であれば実態を近似したものとして妥当と評価されるかについては一般的な基準は存在せず、また、原告らが指摘する平成25年検証の回帰分析における決定係数の値も、それが、一般に、決定係数につき「0. 3くらいしか得られない場合も多い」(乙A97・43頁)とされる「クロス・セクションデータ」(乙A96・16頁)の分析であることも踏まえれば、0.3前後というその値のみをもって、当該分析を妥当なものとして採用することが統計的に誤りといえるような極端に低いものであるともいえない(乙A6・13頁、乙A97・43頁)。 よって、原告らの主張は、単に統計的分析の当不当を指摘するものにすぎず、厚生労働大臣の判断についての裁量権の範囲からの逸脱、またはその濫用を基礎付け得るものではない。 原 ・43頁)。 よって、原告らの主張は、単に統計的分析の当不当を指摘するものにすぎず、厚生労働大臣の判断についての裁量権の範囲からの逸脱、またはその濫用を基礎付け得るものではない。 原告らは、平成25年検証の回帰分析につき、t検定の結果を全く反映していない信頼することができないものである旨主張する。 しかし、回帰分析における「t検定」とは、帰無仮説を介在させる手法 の一つであるところ、帰無仮説の検証において、帰無仮説を「採択」すること、すなわち「棄却しない」ことの統計的な意味は、当該帰無仮説と矛盾しないということにすぎず、当該帰無仮説を積極的に支持すること(すなわち、帰無仮説が「真」であって、説明変数に効果がないと積極的に支持すること)ではない。 したがって、有意水準を5%とした場合に帰無仮説を棄却することができないとしても、その説明変数を除外しなければ、それを説明変数に含めた回帰分析の結果を採用することができないというものではないから、原告らの主張は、t検定によって帰無仮説が棄却することができない場合の統計的解釈を誤ったものであって、平成25年検証の正当性を疑わせる事 情とはいえない。 原告らは、回帰分析の結果を適切に評価するためには、①誤差項の分散均一性、②正規性及び③説明変数間の多重共線性等、統計的方法に課せられている仮定を満たしておかなければならないにもかかわらず、平成25年報告書では、これらの検討を行っておらず、また、最小2乗法(OLS) による回帰分析も行っていない疑いがある旨主張する。 しかし、平成25年検証においては、OLSによる回帰分析を実施していることは、平成25年報告書の記載から明らかである。また、原告らが指摘するその余の各手法(上記①ないし③)は、いずれも 張する。 しかし、平成25年検証においては、OLSによる回帰分析を実施していることは、平成25年報告書の記載から明らかである。また、原告らが指摘するその余の各手法(上記①ないし③)は、いずれも、回帰分析結果について、事後的にその精度を検証するための統計的検定の手法であるも のの、同各手法を用いなければ回帰分析の結果を採用し得ないといったような統計的知見は全く存在しない。そして、平成25年検証については、平成25年報告書において「今回の本部会で採用した年齢、世帯人員、地域の影響を検証する手法についても委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である」と評価されているから(乙A6・ 9頁)、その上で、その検証結果について、原告らが上記に指摘するよう な各手法による検討をさらに経るか否かは、正に統計的分析における当不当の問題であって、これを行わなかったことが、厚生労働大臣の有する裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用を基礎付け得るものではない。 ウ 2分の1処理について原告らは、厚生労働大臣が、平成25年報告書を尊重せずに、合理的理由 なく、2分の1処理をしたことにより、年間91億2100万円程度の生活扶助費の削減を行ったものであって、恣意的かつ不合理である旨主張する。 しかし、ゆがみ調整は、本来、財政的にニュートラルなものであって、原告らが指摘する生活扶助費の削減の効果は、平成25年検証におけるサンプル世帯と実際の保護受給世帯との間で、年齢・世帯人員又は級地別の分布が 全く同じではなかったために、結果的に生じたものにすぎないから、かかる削減の結果の発生は、2分の1処理を含む激変緩和措置に係る厚生労働大臣の判断の不合理性を基礎付け得るものではない。 ⑶ デフレ調整について ったために、結果的に生じたものにすぎないから、かかる削減の結果の発生は、2分の1処理を含む激変緩和措置に係る厚生労働大臣の判断の不合理性を基礎付け得るものではない。 ⑶ デフレ調整についてアデフレ調整の必要性について 原告らは、平成19年検証を行った生活扶助基準検討会が検証をする組織として不適格であって、その検討の期間が極めて短く、その検討の回数も不十分で、十分な検討が行われたものとは到底評価することができない旨主張する。 しかし、厚生労働大臣が、生活扶助基準を見直す際、行政運営上の参考 に資するために厚生労働大臣を補佐する下位の行政機関(厚生労働省社会・援護局長)が有識者から意見を聴取した結果を考慮してはならないとする理由も、社会保障審議会の下にある組織が関与してされた検証の結果でなければ考慮することができないとする理由もないから、生活扶助基準検討会が、検証をする組織として不適格であるとの主張は失当である。 また、この点をおくとしても、生活扶助基準検討会は、級地を含む生活 扶助基準の見直しについて専門的な分析及び検討を行うことを目的として、専門委員会及び基準部会と同様に、学識経験者を委員として参集した上で、生活扶助基準の水準、体系、地域差の妥当性等について全消調査の結果等を用いて主に統計等の分布を基に専門的かつ客観的に評価及び検証を実施したものであり、専門委員会及び基準部会と比べても遜色のない 検討のための組織である。そして、専門委員会、生活扶助基準検討会及び基準部会の各組織における検討等の内容が関連性をもって検討されていることに加え、検討の密度等も考慮した場合には、必ずしも検討の期間の長短が検討の内容の質に影響する必然性もないといえることに照らせば、単にその検討 織における検討等の内容が関連性をもって検討されていることに加え、検討の密度等も考慮した場合には、必ずしも検討の期間の長短が検討の内容の質に影響する必然性もないといえることに照らせば、単にその検討の期間の長短をもって、検討が不十分であるとか、厚生労働 大臣が、その意見を検証の結果として考慮してはならないなどといった問題も生じ得ないから、原告らの主張は失当である。 原告らは、生活扶助基準検討会の委員が発表した平成19年検討会委員文書の記載を根拠に、平成19年報告書は、「生活扶助基準の引下げ」との結論を出しておらず、むしろ、生活扶助基準を引き下げることには慎重で あるべきというのが委員の総意であった旨主張する。 しかし、厚生労働大臣は、保護基準を改定するに際し、専門委員会、生活扶助基準検討会及び基準部会による検討の結果を前提としなければならないわけではなく、また、専門委員会等による検討の結果が厚生労働大臣の判断を法的に拘束するものでもないから、厚生労働大臣は、平成19 年検討会委員文書における記載ないし意見に法的に拘束されるものではない。この点をおくとしても、平成19年検討会委員文書につき、原告らが指摘する記載の前後の記載も踏まえれば、生活扶助基準検討会の委員は、「生活扶助基準額の引下げについては、慎重であるべき」としつつも、最終的には、生活扶助基準の引下げの要否を生活扶助基準検討会における検 討の結果を踏まえた厚生労働大臣の総合的な判断に委ねているのは明ら かである。 したがって、厚生労働大臣が、平成19年報告書を含む各種の検討の結果等を踏まえて総合的な検討を行った上で、生活扶助基準額を引き下げるという判断をしたことにつき、生活扶助基準検討会の意見を無視したものとは評価するこ 労働大臣が、平成19年報告書を含む各種の検討の結果等を踏まえて総合的な検討を行った上で、生活扶助基準額を引き下げるという判断をしたことにつき、生活扶助基準検討会の意見を無視したものとは評価することはできないから、原告らの主張は誤りである。 原告らは、生活扶助基準検討会が、平成19年検証において、生活扶助基準の妥当性を検証するに際して第1・十分位の消費水準を比較の対象とすることとした根拠が不合理ないし不十分である旨主張する。 しかし、専門委員会による平成15年検証、生活扶助基準検討会による平成19年検証、さらには、基準部会による平成25年検証のいずれにお いても、実際に、上記の各組織の委員が、生活扶助基準の妥当性については、第1・十分位を比較する対象として検証することが相当であると判断した上で、第1・十分位を比較する対象とした検証がされている。取り分け、基準部会においては、平成25年報告書に記載された第1・十分位を比較する対象とする6つの理由につき、基準部会の委員も確認した上で、 第1・十分位を比較する対象とすることで問題はないとして検証を実施しているのであって、むしろ、本件保護基準改定において、これらと異なる取扱いをし、あえて第1・十分位ではない世帯を比較する対象とすべき合理的理由は見当たらないから、原告らの主張は理由がないというべきである。 イ物価(消費者物価指数)を指標とすることの合理性について 原告らは、厚生労働大臣は、生活扶助基準を改定する方式については、昭和58年意見具申に基づく水準均衡方式によるべき旨の拘束を受けており、これを大きく逸脱する方式を採用することは許されないにもかかわらず、本件保護基準改定に際し、基準部会における検討の手続等を一切経 58年意見具申に基づく水準均衡方式によるべき旨の拘束を受けており、これを大きく逸脱する方式を採用することは許されないにもかかわらず、本件保護基準改定に際し、基準部会における検討の手続等を一切経 ることなく、消費者物価指数を考慮するという水準均衡方式から逸脱した 全く独自の方式によって生活扶助基準を改定したから、本件保護基準改定は、厚生労働大臣が有する裁量権の範囲から逸脱するものである旨主張する。 a しかし、水準均衡方式に基づく生活扶助基準の改定は、昭和58年当時に「妥当な水準」とされた当時の生活扶助基準の水準を維持すべく、 政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠し、一般国民の消費水準の動向に即して改定率を定めることを目的としたものである。一方、本件保護基準改定は、水準均衡方式により改定されてきている生活扶助基準につき、さらに、①低所得者世帯の消費実態と生活扶助基準の年齢等の較差を是正する目的(ゆがみ調整)及び②近年のデフレ傾向に加え て、生活扶助基準が据え置かれてきたことに起因する保護受給世帯の可処分所得の実質的な増加を是正する目的(デフレ調整)に基づいて修正を加えるものである。 このように、本件保護基準改定は、水準均衡方式に基づく生活扶助基準の改定とは異なる観点からされたものであって、水準均衡方式により 改定された生活扶助基準を、生活保護法8条2項の趣旨に照らし、適正化するものであるから、本件保護基準改定に際して厚生労働大臣が採用した消費者物価指数を考慮する方式は、その趣旨に照らすと合理的なものである。 b 加えて、専門委員会が作成した平成16年報告書に先立つ平成15年 中間取りまとめは、生活扶助基準の水準の改定につき、「消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つ 的なものである。 b 加えて、専門委員会が作成した平成16年報告書に先立つ平成15年 中間取りまとめは、生活扶助基準の水準の改定につき、「消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つして用いることなども考えられる」と指摘しているほか、基準部会が作成した平成25年報告書は、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総 合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」 としているのであり、ここでも、厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際、厚生労働大臣の合目的的裁量として、平成25年報告書における検証の結果を考慮した上で、平成25年報告書における検証の結果以外の合理的な経済指標等を総合的に勘案することは否定されていない。むしろ、デフレ調整は、客観的な経済指標である消費者物 価指数の動向を勘案して生活扶助基準を改定するものであるから、平成25年報告書を含む専門家による検討の結果を踏まえたものといえる。 c 原告らは、厚生労働大臣が、一旦水準均衡方式を採用した以上は、その内容に拘束される旨主張するが、そもそも、厚生労働大臣が水準均衡方式を採用した場合にその内容に拘束されるなどという原告らの主張 を裏付けるような法的根拠は、全く見当たらない。また、この点をおくとしても、水準均衡方式に基づいて改定された生活扶助基準の妥当性について定期的な検証が必要であることについては、昭和58年意見具申を含め一貫して専門家から指摘されてきたことも踏まえれば、水準均衡方式が採用された以降においても、定期的な検証の結果、水準均衡方式 とは異なる新たな観点から、生活扶助基準を改定する必要性が 申を含め一貫して専門家から指摘されてきたことも踏まえれば、水準均衡方式が採用された以降においても、定期的な検証の結果、水準均衡方式 とは異なる新たな観点から、生活扶助基準を改定する必要性が認められる場合には、水準均衡方式による改定に加えて又はこれに代えて、水準均衡方式とは異なる観点から生活扶助基準を改定することは、当然に想定されていたというべきである。 よって、厚生労働大臣が、水準均衡方式による改定に加えて、それと は異なる観点から生活扶助基準を改定することも、当然に許されるというべきである。 原告らは、消費者物価指数の測定と、家計の可処分所得(生計費)の測定は全く異なるものであって、消費者物価指数の変化率は、保護受給世帯の実質的な可処分所得や生計費の変動の割合を反映するものではない旨 主張する。 しかし、生活扶助基準は、生活扶助により賄うべき物品・サービスの購入に充てるための金銭給付について定めるものであるから、その給付された結果としての水準は、保護受給世帯における収入額(可処分所得)、すなわち購買力として捉えることができる。そして、収入額(可処分所得)が変化することなく物価が変動する場合に、購買力が変動することは明らか であるから、物価は、購買力の変化を測定する指標となり得るといえる。 また、一般国民の生活水準を示す指標となる消費、物価及び賃金のいずれもが下落していたデフレ状況において生活扶助基準が据え置かれてきたことにより、生活扶助基準の水準が一般国民の生活水準との比較の観点からも相対的に引き上げられたと評価することができる状況において、この 生活扶助基準の水準を改定するための指標として物価を用いることは、購買力の変化の観点から一般国民と保護受給世帯の生活水準との相対的な 的に引き上げられたと評価することができる状況において、この 生活扶助基準の水準を改定するための指標として物価を用いることは、購買力の変化の観点から一般国民と保護受給世帯の生活水準との相対的な均衡を図ることにほかならないから、このような改定の手法は、一般国民の生活水準との関連において相対的なものとして捉えられるべき生活扶助基準を改定する手法として合理的なものであり、さらには、従来からの 水準均衡方式の考え方にも整合するものである。 原告らは、平成20年度から平成23年度までの各生活扶助基準の改定においては水準均衡方式が用いられていたところ、物価の変動は水準均衡方式に内包されていることになるから、水準均衡方式による生活扶助基準の改定とは別に物価を考慮して生活扶助基準を改定することは、物価の下 落を二重に計算することになり不合理である旨主張する。 しかし、平成17年度から平成24年度までの間、厚生労働大臣は、生活扶助基準を据え置いているところ、平成20年度から平成24年度までの生活扶助基準の改定については、平成17年度ないし平成19年度の各生活扶助基準の改定における生活扶助基準の据置きとは異なり、いずれの 年度においても当時の消費等の経済の動向を基礎とした改定を行ってお らず、平成20年以降の消費や物価の経済動向を生活扶助基準の水準に反映させる趣旨による生活扶助基準の改定が行われてこなかった。 よって、本件保護基準改定がされるまでは、平成20年度以降の消費等の経済の動向を生活扶助基準の水準に反映させない趣旨による生活扶助基準の据置きがされてきたことによって、平成20年以降の経済の動向が、 生活扶助基準の水準に反映されていない状況にあったから、平成20年以降の物価の変動を用いてデフレ調整を い趣旨による生活扶助基準の据置きがされてきたことによって、平成20年以降の経済の動向が、 生活扶助基準の水準に反映されていない状況にあったから、平成20年以降の物価の変動を用いてデフレ調整を行うことは、物価の下落を二重に計算すること等には当たらない。 ウデフレ調整の対象となる期間の始期を平成20年としたことについて 原告らは、デフレ調整の起点は平成16年か、遅くとも平成19年とす るのが論理的であるにもかかわらず、厚生労働大臣がデフレ調整の起点を平成20年と設定したのは、物価の下落率を不当に大きく見せることを目的としたとみるのが自然であるから、デフレ調整の対象となる期間の始期を平成20年と定めた厚生労働大臣の判断は不合理である旨主張する。 しかし、本件保護基準改定に当たり、デフレ調整の起点を平成20年と したのは、平成19年報告書において生活扶助基準が一般低所得者世帯の消費実態と比べて高い旨の評価を受け、本来であれば、平成20年度以降速やかに、生活扶助基準の見直しの検討を行わなければならなかったところ、厚生労働大臣が、当時の社会経済状況を考慮して、平成20年度以降の生活扶助基準を据え置いてきたという経緯によるものであるから、本来、 生活扶助基準の見直しが行われるべきであった「平成20年」をデフレ調整の起点としたことには、十分合理的な理由があるというべきである。 また、前記イのとおり、厚生労働大臣は、平成17年度から平成24年度までの間、生活扶助基準を据え置いているものの、平成17年度から平成19年度までについては、平成16年報告書において勤労3人世帯の 生活扶助基準の水準は「基本的に妥当」と評価されていたのであるから、 そ 準を据え置いているものの、平成17年度から平成19年度までについては、平成16年報告書において勤労3人世帯の 生活扶助基準の水準は「基本的に妥当」と評価されていたのであるから、 その生活扶助基準を据え置いたことには合理的な理由があり、平成19年報告書において生活扶助基準が一般低所得者世帯の消費実態と比べて高いと評価されながら、上記の経緯によって生活扶助基準を据え置くこととされた平成20年度以降とは、事情が異なる。 そうすると、デフレ調整をする起点を平成16年とすることは、平成1 9年検証によって、生活扶助基準が基本的に妥当であるとされた期間の考慮要素につき、現時点で重ねて勘案することとなり、妥当でない。 以上に加えて、他に、デフレ調整をする起点を平成16年又は平成19年とすべき必要性は一切見当たらないこと等の事情も併せて考慮すれば、デフレ調整をする起点を平成16年又は平成19年とすべきである旨の 原告らの主張は理由がないことは明らかである。 原告らは、保護基準の引下げにおいては平成20年における物価の上昇を考慮する一方、保護基準の引上げにおいては同年における物価の上昇を考慮しなかった厚生労働大臣の判断は矛盾するものであるなどと主張するとともに、平成20年は、消費者物価指数が一時的かつ異常に上昇した 年であるから、生活扶助基準を改定するに当たり、平成20年の消費者物価指数を参考資料とすべきではなかった旨主張する。 しかし、前者(保護基準の引下げにおいては平成20年における物価の上昇を考慮する一方、保護基準の引上げにおいては同年における物価の上昇を考慮しなかったこと)については、厚生労働大臣が、平成20年とそ れ以前とを比べた物価の上昇を考慮し、平成20年とそれ以 上昇を考慮する一方、保護基準の引上げにおいては同年における物価の上昇を考慮しなかったこと)については、厚生労働大臣が、平成20年とそ れ以前とを比べた物価の上昇を考慮し、平成20年とそれ以後とを比べた物価の下落を考慮しなかったのは、平成20年をデフレ調整の起点としたことに伴う当然の帰結であり、デフレ調整が不合理であることを何ら基礎付けるものではない。 また、後者の点(生活扶助基準を改定するに当たり、平成20年の消費 者物価指数を参考資料とすべきではなかったこと)については、平成20 年と平成23年との比較により生活扶助相当CPIが大幅に下落したという結果をもって、デフレ調整が恣意的にされたと論難するものにすぎず、かえって、これまでに被告が主張してきたような合理的な理由があるにもかかわらず、生活扶助相当CPIが大幅に下落しないようにする目的で、デフレ調整の起点を平成20年としない場合には、そのことこそが合理性 のない恣意的な判断になるといわざるを得ない。 したがって、原告らの主張は、理由がない。 また、デフレ調整の起点を平成20年と設定した結果、平成19年から平成20年の物価上昇が生活扶助基準に反映されないこととなったとみる余地があるにしても、①生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との 間に不均衡があることは、既に、平成19年検証において確認されていた(夫婦子1人世帯において約1.1%、単身高齢世帯において約13.3%)こと、②デフレ調整における物価変動率を算定する対象となる期間(平成20年から平成23年まで)における経済指標についても、二人以上世帯(第1・十分位)における生活扶助相当支出額は約5.2%のマイナスと なっていること、③平成29年検証において、本件保護基 成20年から平成23年まで)における経済指標についても、二人以上世帯(第1・十分位)における生活扶助相当支出額は約5.2%のマイナスと なっていること、③平成29年検証において、本件保護基準改定がされた後の生活扶助基準の水準につき、一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の消費実態と均衡する妥当なものであると評価されていること、④仮に、平成19年を始期として物価下落率を算定したとしても、生活扶助相当CPIの変動率はマイナス4.60%であって、平成20年を始期とした生活 扶助相当CPIの変動率マイナス4.78%とは0.18%の差があるにすぎないことからすれば、このことによってデフレ調整が生活保護法8条2項に違反するということはできない。 エデフレ調整の対象となる期間の終期を平成23年としたことについて原告らは、厚生労働省が今回の生活扶助基準の引下げを含む保護基準の見 直し案を発表する前の時点で、総務省が既に平成24年総務省CPIのデー タを公表していたこと等からすれば、日程上、平成24年総務省CPIのデータを採用して検証し直すことが可能であった旨主張する。 しかし、平成24年総務省CPIは、本件保護基準改定を反映した後の保護に要する費用のうち国の負担すべき部分等を含む平成25年度の政府予算案が閣議により決定された平成25年1月29日の直前(4日前)に公表 されたものであることに加え、政府予算案は、各省庁の概算要求等を考慮した上で多方面にわたる複雑な調整が必要となるなど、それを作成し始めてから閣議による決定をするに至るまでに長期間を要すること等の事情も併せて考慮すれば、平成24年総務省CPIのデータを基礎として算定される生活扶助相当CPIをデフレ調整に用いることは、時間的にみて不可能であっ をするに至るまでに長期間を要すること等の事情も併せて考慮すれば、平成24年総務省CPIのデータを基礎として算定される生活扶助相当CPIをデフレ調整に用いることは、時間的にみて不可能であっ たことは明らかであって、原告らの主張は、現実性を欠く不合理なものといわざるを得ない。 オ生活扶助相当CPIの算定に際して指数参照時点を平成22年としたことについて原告らは、同じ2時点の変化率でも、「新しい時点から旧い時点の上昇率 (下落率)」と「旧い時点から新しい時点への下落率(上昇率)」との間には双対性がないことをからすれば、厚生労働大臣が、平成20年生活扶助相当CPIを算定するに際し、指数参照時点を平成22年と定める旨の判断をしたことは恣意的でかつ不合理である旨主張する。 しかし、そもそも、「双対性」とは、一般に、二つの対象の間において対と なる関係があることを表すものであるが、双対性がないことからその対象が誤っているなどという結論が導かれる概念ではなく、ILOマニュアルを含む消費者物価指数のマニュアル等にも、何らかの「双対性を要する」などという指摘は存在しないから、原告らの主張は、その根拠を欠くものである。 カ生活扶助相当CPIの算定に際しウエイト参照時点を平成22年とした ことについて 原告らは、平成20年生活扶助相当CPIを算定する際には、平成17年ウエイトを用いるべきであるにもかからず、平成22年ウエイトを用いて平成20年生活扶助相当CPIを算定した手法は、統計学上の根拠もなく、総務省統計局が伝統的に採用してきた方法に明らかに反し、かつ、平 成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率(下落率)を不当に過大に算定することになるものであるから、不合 拠もなく、総務省統計局が伝統的に採用してきた方法に明らかに反し、かつ、平 成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率(下落率)を不当に過大に算定することになるものであるから、不合理なものである旨主張する。 しかし、本件保護基準改定が行われた平成25年当時、総務省CPIのウエイトのデータとしては、平成17年ウエイトと平成22年ウエイトが 存在したものの、5年に1度のウエイトの改定が行われる総務省CPIとは異なり、生活扶助相当CPIにおいて物価の変動を測定する対象となる期間は、平成20年から平成23年までという非常に短い期間であることに照らせば、ウエイトを1つに固定するという方法を採ることが、その間の物価の変動を正確に抽出し、デフレ傾向を正確に把握するという目的に 最も適合するものであり、また、最新の国民の消費構造を反映するという観点からすれば、上記の期間の直近のウエイトを用いることが適当である。 そして、本件保護基準改定に最も近い時期のウエイトは平成22年ウエイトであったから、平成20年から平成23年までの期間につき、平成22年を基準とする各品目別の価格指数及びウエイトを用いて生活扶助相当 CPIを算定することには、十分な合理性があるものと認められる。 この点、原告らの主張するように、生活扶助相当CPIを算定する際に平成17年ウエイトを用いることになれば、平成20年からは3年、平成23年からは6年も過去の時点の消費構造(ウエイト)を基礎として生活扶助相当CPIを算定することになるが、そうすると、少なくとも平成2 3年生活扶助相当CPIについては、国民の消費構造の変化による影響を 最小限に抑えることができず、平成20年から平成23年までの物価の変動を可能な限り正確に抽出するという目 も平成2 3年生活扶助相当CPIについては、国民の消費構造の変化による影響を 最小限に抑えることができず、平成20年から平成23年までの物価の変動を可能な限り正確に抽出するという目的にも反し、不合理であることは明らかである。 原告らは、生活扶助相当CPIの算定に当たってラスパイレス指数を用いずにウエイト参照時点を平成22年とする独自の算定方法を用いたこ とが不合理である旨主張する。 確かに、我が国を含む多くの国においては、消費者物価指数を算定する際、ウエイトを指数を算定する対象となる期間の期首に設定するラスパイレス指数を用いているが、これは、直近時点の取引ウエイトを知ることが困難であるとの実務上の理由によるものにすぎず、消費者物価指数を算定 するための指数としてラスパイレス指数のみが正しく、他の指数が誤っていることを意味するものではない。なお、我が国では、消費者物価指数のウエイトは、家計調査の結果を踏まえて5年ごとに改定されており、5年間は同じウエイトを用い続けているが、これは「時間と費用の双方の節約」という「実際上の長所」によるものにすぎないから、5年間は同じウエイ トを用い続けなければ消費者物価指数を算定する方法として合理性を欠くことになるわけでもない。 また、消費者物価指数を算定する方法について、実務的、学術的に正解となる唯一の方式は存在せず、総務省統計局が採用している方式(ラスパイレス式)が唯一の方式ではないところ、ILOマニュアルに掲載された 複数の算式にも、それぞれに特徴があるから、物価指数を作成し、利用する各省庁において、その目的に照らして最も合理的な方式を採用することも当然に許されるというべきである。そして、ILOマニュアルに掲載されている物価指数を作 に特徴があるから、物価指数を作成し、利用する各省庁において、その目的に照らして最も合理的な方式を採用することも当然に許されるというべきである。そして、ILOマニュアルに掲載されている物価指数を作成する手法は、いずれも国際的にも妥当性が認められたものであるといえるところ、本件下落率を算定するに当たって導かれ た平成20年生活扶助相当CPI及び平成23年生活扶助相当CPIは、 いずれもILOニュアルにいう「ロウ指数」であり、また、これらを用いて算定した「平成20年を基準とする平成23年生活扶助相当CPI」(本件下落率)も、ILOマニュアルの「ロウ指数」である。 よって、デフレ調整をするに当たって用いられた生活扶助相当CPIは、国際的な基準に沿う妥当な算式といえるから、平成20年及び平成23年 の各生活扶助相当CPIを算定する際、その直近のウエイトである平成22年ウエイトを用いたことが不合理である旨の原告らの主張は、その前提を誤ったものであって、生活扶助相当CPIを算定するに当たって平成22年ウエイトを用いたことは、それを算定する方法の合理性を何ら左右しない。 原告らは、平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIにおける指数品目が異なることからすれば、生活扶助相当CPIは「固定買い物かご」方式を前提とした指数とはいえず、ロウ指数とはいえない旨主張する。 確かに、総務省CPIの平成22年基準改定によって新たに採用された 平成22年新規採用品目(32品目)については、平成20年の価格指数のデータが存在しないため、平成20年生活扶助相当CPIは485品目、平成23年生活扶助相当CPIは517品目の価格指数のデータを用いて計算されている。もっとも、このように、一部の指 0年の価格指数のデータが存在しないため、平成20年生活扶助相当CPIは485品目、平成23年生活扶助相当CPIは517品目の価格指数のデータを用いて計算されている。もっとも、このように、一部の指数品目の価格を観察することができないという状況は、物価指数の作成実務においてしばしば 発生するものであり(以下、これを「欠価格」又は「欠価格の問題」という。)、これによって物価指数及びその指数を用いた物価変動率を算定することができなくなるわけではない。そして、その欠価格の問題を処理する具体的な方法として、生活扶助相当CPIにおいては、欠価格となった指数品目を計算上除外して物価指数を作成するという手法を採用している ところ、かかる手法は、欠価格となった品目の価格の動向について、「他の 全ての品目の価格動向」と同じと仮定するものであるから、このような計算上の処理は、「買い物かご」の内容を変えることを意味するものではない。 よって、原告らの主張は、生活扶助相当CPIが「固定買い物かご」方式を前提とする指数であるロウ指数に該当することを否定すべき事情と はならない。 なお、生活扶助相当CPIにおける欠価格の問題を処理する上記の方法は、「欠価格品目の価格動向につき、類似品目の価格動向と同一であったと仮定する」という総務省CPIにおける欠価格の問題を処理する手順とは異なっているが、①生活扶助相当CPIは、元々総務省CPIにおける 指数品目の一部だけを対象として算定しているため、上位分類が同一でも生活扶助相当品目と非生活扶助相当品目が混在することとなり、「同じ類に属する他の品目」を特定することが難しく、総務省から公表されている総務省CPIにおける欠価格の問題を処理する手順と同一の手順により処理することができ 生活扶助相当品目が混在することとなり、「同じ類に属する他の品目」を特定することが難しく、総務省から公表されている総務省CPIにおける欠価格の問題を処理する手順と同一の手順により処理することができないこと、②欠価格は、その性質から、正解となる価 格の動向は観察不能であり、どのような処理をするにしても「真の価格動向」との差は避けられないこと、③平成20年生活扶助相当CPIを算定するに当たって欠価格となっている指数品目(平成22年新規採用品目)は、32品目だけであり、支出ウエイトにして約3%にすぎず、その影響は限定的であると予想されることからすれば、実務上の妥当な処理である と評価することができるものである。 原告らは、生活扶助相当CPIで用いられた計算方法については、平成20年から平成22年までについてはパーシェ式、平成22年から平成23年までについてはラスパイレス式によったことになるが、このような計算原理が混交した生活扶助相当CPIは、ロウ指数には該当せず、欠陥が ある旨主張する。 しかし、ラスパイレス指数とパーシェ指数は、どちらもロウ指数という統一の定義式で表すことのできる指数であり、また、パーシェ指数は、ラスパイレス指数と同様に、加重相加(算術)平均として表すこともできる指数であることからすれば、両者の指数を用いて物価変動率を算定することが「異なる計算原理を混交」する不合理なものであるとする原告らの主 張はその根拠を欠くものである。また、確かに、平成20年を基準とする平成23年生活扶助相当CPIは、基準時の置き方を変えることによって、ラスパイレス指数とパーシェ指数の二つの指数に分解して表現することもできるが、かかる点は、生活扶助相当CPIがロウ指数に該当することを何ら否定するもので PIは、基準時の置き方を変えることによって、ラスパイレス指数とパーシェ指数の二つの指数に分解して表現することもできるが、かかる点は、生活扶助相当CPIがロウ指数に該当することを何ら否定するものではない。 原告らは、ILOマニュアルが提示する消費者物価指数の国際規準において原告主張規準が認められていることを前提に、生活扶助相当CPIの算定方法が原告主張規準に反する旨主張する。 しかし、原告主張規準は、そのいずれについても内容が不明確であるのみならず、そのような国際規準が存在することについての立証もない。す なわち、規準①については、ILOマニュアルにおいても、基準時(価格参照時点)を比較時より将来の時点と設定することができることが当然の前提となった記載があること等からすれば、およそ存在しないものであることが明らかである。 次に、規準②は、基準時(指数参照時点)の指数値が100とならない 物価指数は、論理的に存在しないから、規準②は、およそ規準として無意味である。仮に、物価の変動を算定する起点の指数値が100でなければならないとの意味であるとしても、指数を100とする時点(指数参照時点)を置き換えることは、ILOマニュアルにおいても許容されているから、規準②も、およそ存在しないものというべきである。 さらに、規準③及び④についても、その主張に根拠はなく、この点をひ とまずおくとしても、平成20年及び平成23年生活扶助相当CPIは、前記のとおり、平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIとで指数品目数が異なることを踏まえても、いずれも「固定買い物かご」を前提とする指数であるといえるから、原告らの主張は前提を誤ったものである。 キ生活扶助相当CPIの算定にお 相当CPIとで指数品目数が異なることを踏まえても、いずれも「固定買い物かご」を前提とする指数であるといえるから、原告らの主張は前提を誤ったものである。 キ生活扶助相当CPIの算定における指数品目の選定及びウエイトの設定方法について 総務省CPIのウエイトを用いた点についてa 原告らは、厚生労働大臣が、厚生労働省が実施する社会保障生計調査の結果等の保護受給世帯の生活実態ないし消費性向に合った合理的 データを用いて「生活扶助相当品目」の選定及びそのウエイトの設定をすべきであったにもかかわらず、これを怠ったことは不合理である旨主張する。 b しかし、厚生労働大臣は、生活扶助相当支出額を算定する際に、どのような支出をどのような根拠で除外するのかについて裁量を有してい るから、生活扶助相当CPIを算定するに当たって、どのような統計資料を用いるのかを含め、要保護者の需要を把握する方法についても、合理的な裁量を有しているというべきである。そして、デフレ調整は、デフレ傾向が続く中で生活扶助基準が据え置かれ続けたことにより、実質的に生活扶助基準が引き上げられ、保護受給世帯の可処分所得も実質的 に増加している状況が生じていたことを踏まえ、生活扶助基準の調整をしようとするものであり、その調整に当たっては、上記の可処分所得の実質的増加の程度を把握する必要があった。 そのような目的に照らした場合、全ての消費品目から、非生活扶助相当品目を詳細に除外して生活扶助相当品目の価格指数及びウエイトを 算定することが必要であると考えられたことから、詳細な品目による品 目別のウエイトとこれらに対応する品目別の価格指数が存在し、かつ、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度の高い、家計調 ることが必要であると考えられたことから、詳細な品目による品 目別のウエイトとこれらに対応する品目別の価格指数が存在し、かつ、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度の高い、家計調査に基づく総務省CPIのウエイトのデータを採用した厚生労働大臣の判断は合理的である。 c この点、原告らが指摘する社会保障生計調査は、保護基準の改定等に 用いられる統計資料ではあるものの、調査世帯の選定において地域等による偏りが生じる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないこと等を踏まえると、保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界がある。また、社会保障生計調査は、保護受給世帯の「生活実態」を把握する調査であって、保護受給世帯の詳細な支出先や支出 額を把握するものではないから、調査の手法としても、個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じられておらず、その調査の結果を分析しても、おおまかなウエイト(例えば、食料(外食))は把握することができても、家計調査のように詳細な品目(例えば、食料(一般外食(うどん))ごとのウエイトを把握することは できず、ゆえに、これを用いる場合には、その詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算定することができない。 さらに、生活扶助基準の水準は、これまで、水準均衡方式等によって、一般国民の消費実態との均衡を図る観点から改定が行われてきており、一般国民の消費実態を表す家計調査により算定された総務省CPIの ウエイトのデータを用いることは、従来の改定の手法とも整合するものであった。 よって、厚生労働大臣が、社会保障生計調査の結果を用いなかったことが不合理であるとする原告らの主張は理由がない。 d 以上によれば、厚 は、従来の改定の手法とも整合するものであった。 よって、厚生労働大臣が、社会保障生計調査の結果を用いなかったことが不合理であるとする原告らの主張は理由がない。 d 以上によれば、厚生労働大臣が、デフレ調整をするに際し、生活扶助 相当CPIを算定する過程において、社会保障生計調査を用いず、総務 省CPIを用いたことには合理的な理由があり、当該判断に裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用はない。 保護受給世帯の消費実態とのかい離等についてa 原告らは、生活扶助相当CPIにおける「生活扶助相当品目」の選定とウエイトの設定に当たり、保護受給世帯の生活実態ないし消費性向を 完全に無視し、一般世帯を対象にした総務省CPIのデータをそのまま採用した結果、保護受給世帯においては買換えの可能性が著しく低いテレビ等3品目が「生活扶助相当品目」に選定され、また、テレビ等3品目のウエイトが不相当に高く設定されることとなったため、「生活扶助相当CPI」の変化率(本件下落率)が不相当に過大に算定されたなど と主張する。 b しかし、生活扶助相当CPIは、総務省から公表されている総務省CPIを基に、全ての消費品目から、非生活扶助相当品目を除外した生活扶助相当品目について算定した消費者物価指数であるところ、生活扶助相当CPIが、生活扶助基準を据え置いたことに伴って保護受給世帯の 可処分所得が実質的に増加した程度を把握することを目的としたものであることからすれば、それを算定する基礎とすべき品目についても、被保護者が支出する可能性のある品目である生活扶助相当品目に限定することは合理的であるといえ、当該品目の価格の下落幅が大きいという理由のみで、保護受給世帯において購入することが予想される家電製 被保護者が支出する可能性のある品目である生活扶助相当品目に限定することは合理的であるといえ、当該品目の価格の下落幅が大きいという理由のみで、保護受給世帯において購入することが予想される家電製 品(テレビ等3品目)を指数品目からあえて除外することは、かえって恣意的な生活扶助相当CPIを算定する方法となり、不合理であることは明らかである。また、非生活扶助相当品目を除外した結果、生活扶助相当CPIの下落率が同期間における総務省CPIの下落率よりも相対的に大きくなったとしても、これは、保護受給世帯には、それ以外の 世帯と異なり、生活扶助費により支出することがおよそ想定されていな い品目(非生活扶助相当品目)が存在することに起因するものであって、保護受給世帯において生活扶助費により支出することが想定される品目(生活扶助相当品目)の価格の下落が、総務省CPIにおける指数品目全体の価格の下落よりも相対的に大きかったことを意味するにすぎず、生活扶助相当CPIを算定する方法が合理的であることを何ら左右 しない。 c 厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」によれば、保護受給世帯における家電製品の普及率は、相当程度高い水準に至っていると認められることに加え、基準部会も、平成25年報告書において、保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯であ る第1・十分位の世帯の消費実態につき、その「平均消費水準は、中位所得階層の6割に達している」、「国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されている状況にある」などと指摘していることからすれば、保護受給世帯においても、 家電製 消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されている状況にある」などと指摘していることからすれば、保護受給世帯においても、 家電製品は、一般世帯と同様に普及しているということができる。 そうすると、保護受給世帯において家電製品を生活扶助費により購入することが十分予想されるから、生活扶助相当CPIを算定するに当たり、家電製品をその指数品目として考慮することは、当然のことといえる。 加えて、生活保護制度上、被保護者が、保護費をやりくりすることによって得た預貯金等を用いてその費用を賄って海外に渡航することが全く予定されていないわけではないことからすれば、生活扶助相当CPIの算定に当たり、「外国パック旅行」を指数品目に含めたことも何ら不合理ではない。 ク沖縄県に固有の事情(沖縄県の生活扶助相当CPI)を考慮しなかった点 について原告らは、保護基準を改定する場合における考慮要素である「所在地域別」(生活保護法8条2項)の事情として、沖縄県の生活扶助相当CPIの変化率を考慮すると、被告が主張するデフレ調整に係る根拠は沖縄県には当てはまらないことは明らかであるにもかかわらず、厚生労働大臣が、これを考慮 することなく本件保護基準改定をしたことは不合理である旨主張する。 しかし、「所在地域別」の事情については、生活扶助基準上、生活扶助基準の「展開」としての級地別の最低生活費を定めることによって考慮されており、生活扶助基準の「水準」の設定において考慮されるものではない。このような理解を前提に、水準均衡方式による毎年度の生活扶助基準の「水準」 の改定においても、「所在地域別」等によって異なる事情について考慮されることはなく、全ての保護受給世帯に対 ではない。このような理解を前提に、水準均衡方式による毎年度の生活扶助基準の「水準」 の改定においても、「所在地域別」等によって異なる事情について考慮されることはなく、全ての保護受給世帯に対して一律の改定率が適用されてきた。 そして、本件保護基準改定は、生活扶助基準の「水準」についてはデフレ調整を行い、「展開」についてはゆがみ調整を行うなどしたものである。そうすると、原告らが指摘する沖縄県における物価の変動等の「所在地域別」の事 情は、「展開」にかかるゆがみ調整において考慮要素とされているのであって、デフレ調整における考慮要素となるものではない。 よって、厚生労働大臣が、デフレ調整をするに際し、別途、沖縄県の生活扶助相当CPI等の沖縄県に固有の事情を考慮しなかったことが、本件保護基準改定の不合理性を基礎付けることにはならない。 ⑷ ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったことの適否について原告らは、生活扶助基準の「水準」の調整を目的とするデフレ調整による生活扶助費の減額をする際、ゆがみ調整をした結果として生じた減額分を考慮して計算をしなければ、ゆがみ調整による減額とデフレ調整による減額とで不当な重複引下げが生ずるため不合理である旨主張する。 しかし、本件保護基準改定のうち、平成25年検証の結果に基づくゆがみ調 整は、第1・十分位の世帯の消費実態と生活扶助基準の年齢、世帯人員又は級地別の較差を是正するにとどまるものであり、それ自体、生活扶助基準の絶対的な水準の調整を意図したものではないことについては、「第1・十分位のサンプル世帯全てが保護を受けた場合を想定し、その1世帯当たりの平均受給額が不変になるようにした上で、上記消費実態との格差を是正する」というゆが み調整の考え方や平成25年検証に係る ・十分位のサンプル世帯全てが保護を受けた場合を想定し、その1世帯当たりの平均受給額が不変になるようにした上で、上記消費実態との格差を是正する」というゆが み調整の考え方や平成25年検証に係る議事録等から認められる基準部会の委員がした一連の発言からしても明らかである。 また、ゆがみ調整にかかる財政効果であるマイナス90億円についても、上記の第1・十分位のサンプル世帯の消費実態と比較して生活扶助基準の方が相対的に高くなっている世帯構成や地域において、実際の保護受給世帯の分布が 第1・十分位の世帯の分布よりも多くなるなどした結果として、結果的にマイナスの財政効果が生じたに過ぎず、ゆがみ調整の目的が生活扶助基準の「水準」(絶対値)の調整にあることを基礎付けるものではない。 したがって、本件保護基準改定において、ゆがみ調整とデフレ調整は重複する調整ではないから、原告らの主張は、その前提を誤ったものであり、失当で ある。 ⑸ ゆがみ調整とデフレ調整に共通するその余の違法事由についてア制度後退禁止原則等について 原告らは、本件保護基準改定が憲法25条から導かれる制度後退禁止原則に違反する旨主張する。 しかし、憲法25条1項は、国民に具体的権利を付与したものではなく、その具体的内容は、多数の不確定要素を総合考慮して初めて決定することができるものであって、これに係る認定判断は、厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねられていると解されていることに加え、同条2項は、国に対し、社会福祉、社会保障等の向上及び増進に「努めなければならない」と規定 しているにとどまることからすれば、同条が制度後退禁止原則のような立 法府又は行政庁への強力な拘束を定めたものとは解せない。 したがって、憲法25条が制度後退 ければならない」と規定 しているにとどまることからすれば、同条が制度後退禁止原則のような立 法府又は行政庁への強力な拘束を定めたものとは解せない。 したがって、憲法25条が制度後退禁止原則を定めたものということはできず、これを保護基準の設定等に関する厚生労働大臣の裁量権を制約する根拠とすることはできない。 原告らは、本件保護基準改定が、社会権規約の諸規定から導かれる制度 後退禁止原則ないしその趣旨に反する旨主張する。 しかし、原告らが指摘する社会権規約の規定は、社会権規約の締結国の政治的責任を宣明したものにすぎず、個人に対し、即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではなく、社会権規約委員会が採択した一般的意見は、社会権規約の締約国に対する法的拘束力を有するものではない。 また、我が国が社会権規約を批准していること等の社会権規約に関する原告らが主張する事実は、法律の合理性に関する事実(立法事実)として捉えれば、本件保護基準改定とは無関係であり、また、仮にこれらを政策的判断において考慮するとしても、多岐にわたる事情のごく一部にすぎないから、本件保護基準改定の合理性を左右するものではない。 イ被保護者の生活の実態の考慮等について原告らは、被保護者の生活の実態に関する調査の結果等を根拠に、本件保護基準改定以前において、被保護者が健康で文化的な最低限度の生活を営めていなかったことが明らかであり、本件保護基準改定の結果、その状況はより悪化した旨主張する。 しかし、原告らが上記の主張の根拠として挙げる個々の調査及びその結果は、客観性が十分確保されているかにつき疑義があるか、調査対象者が極めて限られたものであって、被保護者全般の生活の状況を明らかにしたものと到底一般化することはできず、その げる個々の調査及びその結果は、客観性が十分確保されているかにつき疑義があるか、調査対象者が極めて限られたものであって、被保護者全般の生活の状況を明らかにしたものと到底一般化することはできず、その信用性にも疑義があるから、原告らの主張は、その前提を欠く。また、この点をひとまずおくとしても、厚生労働大 臣がした本件保護基準改定に係る一連の判断は、これまでに被告が主張した とおり、社会に広く定着し、国民から一定の理解を得られている透明性の高い総務省CPIを活用するなど、客観的かつ合理的な根拠に基づくものであって、原告らが示す種々の調査の結果等の存在により、これらの本件保護基準改定の根拠となった事実や経緯の信頼性は揺らがない。 ウ厚生労働大臣が不当な動機ないし目的をもってその有する裁量権を行使 したか否かについて原告らは、本件保護基準改定は、自民党が掲げてきた保護費の削減という政治的意図に基づいて強行されたものであり、本来考慮すべきでない政権公約ないし政治的意図に基づき決定された本件保護基準改定は、厚生労働大臣の有する裁量権の範囲から逸脱し、又はこれを濫用した違法がある 旨主張する。 しかし、基準部会の役割は、平成16年検証及び平成19年検証の指摘を踏まえ、生活扶助基準額と消費実態のかい離等を分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行うことにあったのであって、基準部会の委員らにおいて、最低生活費を引き上げるべき又は引き下げるべ きなどという政策的議論をした事実はなく、また、厚生労働省の事務局が、独断で、基準部会における検証の対象を年齢、世帯人員及び級地に絞った事実もない。そして、厚生労働大臣は、本件保護基準改定において、平成25年報告書における委員による提言の内容を踏まえて激変緩和措 、独断で、基準部会における検証の対象を年齢、世帯人員及び級地に絞った事実もない。そして、厚生労働大臣は、本件保護基準改定において、平成25年報告書における委員による提言の内容を踏まえて激変緩和措置を講じるなど、基準部会の提言を踏まえた対応を行っている。 加えて、本件保護基準改定に係る生活扶助基準の見直しは、平成19年報告書の検証の結果や平成25年報告書により明らかとなっていた生活扶助基準を見直す必要性に基づいて行われたものであって、本件保護基準改定に係る生活扶助基準額の見直しの程度も、自民党の公約内容(保護費の10%引下げ)に反し、3年間で保護費全体の2.3%を削減する限度 に留まっていることも、本件保護基準改定が上記のような政権公約とは切 り離されて検討され、実施されたことを裏付けている。 よって、本件保護基準改定に係る生活扶助基準の見直しは、その必要性を勘案して、適切に行われたものであって、自民党の政権公約を実現するとの政治的な意図で行われたものでないことは明らかである。 原告らは、平成23年以降インフレが起きていたにもかかわらず、平成 30年度の生活扶助基準の改定において、これを根拠とする生活扶助費の引上げが行われなかったことからすれば、デフレ調整が生活扶助費を引き下げるという目的のために行われたものであることは明らかである旨主張する。 しかし、本件保護基準改定と平成30年度の生活扶助基準の改定とでは、 生活扶助基準の「水準」の検証が、基準部会において行われたか否かに違いがあり、また、消費、物価等の経済指標の動向も異なっているから、平成30年度の生活扶助基準の改定において、物価変動率を根拠とした生活扶助基準の水準の見直しが行われなかったことをもって、本件保護基準改定におけるデフレ調整が 等の経済指標の動向も異なっているから、平成30年度の生活扶助基準の改定において、物価変動率を根拠とした生活扶助基準の水準の見直しが行われなかったことをもって、本件保護基準改定におけるデフレ調整が生活扶助基準の引下げを行うために恣意的に物 価変動率を根拠としたなどとする原告らの主張はその前提を欠き、理由がない。 第3 争点⑵-②(本件各決定に係る理由の提示の不備の有無)について(原告らの主張)本件各決定は、生活保護の中核となる生活扶助費の支給額を引き下げるもので あり、処分の名宛人の生存権に直接影響する極めて重要なものであることに加え、その背景にある事実経過や理由も複雑であって、理解することは容易ではないから、本件各決定をするに当たっては、どのような事実経過及び理由から、生活扶助費の減額がされることになったのかにつき、根拠法規の適用関係を明らかにして、処分の名宛人にも分かるように詳細な理由の提示がされなければならない。 ところが、本件各決定があったことを原告らに対して通知した各生活保護変更 通知書には、処分の理由として「生活保護費基準額の改定」としか記載されておらず、これでは、名宛人である原告らが、本件各決定の背景にある事実経過や理由、根拠となる基準の内容や生活扶助費の算定方法等を全く知ることができない。 したがって、本件各決定には、行政手続法14条1項等が定める理由の提示をすべき義務に違反する違法があるというべきである。 (被告の主張)行政庁がした処分に理由を付記すべき場合に必要とされる理由の提示の程度は、処分の性質と理由の付記を命じた各法律の規定の趣旨及び目的に照らして個別的に決定すべきものである。 そして、本件各決定に係る通知書には、保護の変更をした理由として「生活保 護 提示の程度は、処分の性質と理由の付記を命じた各法律の規定の趣旨及び目的に照らして個別的に決定すべきものである。 そして、本件各決定に係る通知書には、保護の変更をした理由として「生活保 護費基準額の改定」と記載されているところ、本件各決定は、それがされる以前に、官報により、その内容が一般にも周知されている平成25年告示に伴って、平成25年告示の内容どおりの処分を行うものであり、本件各決定がされた時点において、その内容が既に確定していたから、本件各決定に処分行政庁による恣意的な判断が介入するおそれはない。また、上記のとおり、平成25年告示が、 官報によってその内容が一般に周知されていたことに加え、本件各決定に係る各生活保護変更通知書の記載とそれ以前の通知書を見比べることによっても、本件各決定によって各生活扶助額が減額されたことを理解することが可能であることからすれば、上記のような限度の理由の提示につき、原告らによる不服申立ての便宜を損なうものではない。 したがって、本件各決定に係る各生活保護変更通知書における保護の変更の理由の提示は、理由の提示を義務付ける生活保護法及び行政手続法の規定の趣旨に反するものではないから、当該理由の提示に不備があるとはいえない。 以上 (別紙3)被告が説明する厚生労働大臣の判断の過程 1 ゆがみ調整の概要及び厚生労働大臣がゆがみ調整に係る判断に至る経緯(1) ゆがみ調整の概要 生活扶助基準は、標準世帯の最低生活費を生活扶助基準の「水準」(高さ)として設定し、その最低生活費を第1類費と第2類費に分解した上、年齢階級別、世帯人員別、級地別に、標準世帯との最低生活費の差を踏まえて設定された指数を適用して「展開」することによってあらゆる世帯に適用可 設定し、その最低生活費を第1類費と第2類費に分解した上、年齢階級別、世帯人員別、級地別に、標準世帯との最低生活費の差を踏まえて設定された指数を適用して「展開」することによってあらゆる世帯に適用可能な基準として設定されるところ(下図参照)、その「展開のための指数」は、栄養所要量を参考として個人的経費 (第1類費)の指数が設定されるなど、標準世帯との比較において、最低生活に要する費用を示すものとしては必ずしも適切なものとなっていなかった。 また、後記(2)のとおり、平成16年検証において、生活扶助基準の展開部 分に関して見直しを検討する必要がある旨指摘されており、平成19年検証においても、年齢階級別、世帯人員別、級地別の展開部分について、一般低所得 世帯の消費実態を反映したものとなっていないことが指摘されていたが、平成19年検証を踏まえた改定は行われなかった。 さらに、平成23年2月に設置された基準部会において、平成21年全消調査のデータを用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態がどの程度異なるか(例えば、一般低所得世帯の「70歳~」と「20 ~40歳」の年齢階級間において消費実態がどの程度異なるか)について評価・検討したところ、生活扶助基準の「展開のための指数」は、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっておらず、その結果、生活保護受給世帯間の公平を欠く状態になっていることが判明した(仮に、前掲の表において、本件保護基準改定前の「20~40歳」の世帯の展開のための指数「100. 0」と「70歳~」の世帯の展開のための指数「80.3」がそれらの世帯間の最低生活に要する費用(第1類費)を示すものとして適正さを欠く場合、これらの年齢階級間における公平を欠くことになる . 0」と「70歳~」の世帯の展開のための指数「80.3」がそれらの世帯間の最低生活に要する費用(第1類費)を示すものとして適正さを欠く場合、これらの年齢階級間における公平を欠くことになる。)。 以上の経緯を踏まえ、厚生労働大臣は、生活保護受給世帯間の公平を確保するため、本件保護基準改定におけるゆがみ調整を行うことによって、基準部会 の検証によって判明した一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態を生活扶助基準の「展開のための指数」に反映し、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ったものである。 (2) 厚生労働大臣がゆがみ調整に係る判断に至る経緯ア平成25年検証に至る経緯 (ア) 平成16年検証平成16年検証では、生活扶助基準の展開部分に関して、「現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており、また、算定については、世帯人員数分を単純に足し上げて算定される第1類費(個人消費部分)と、世帯規模の経済性、いわゆるスケールメリットを考慮し、世帯人員数に応じて設定されている第 2類費(世帯共同消費部分)とを合算する仕組みとされているため、世帯人 員別に見ると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない」との指摘がされた(乙A第4号証4ページ)。厚生労働大臣は、かかる指摘を踏まえて、平成17年度以降、第1類費について4人世帯の場合に「0.95」、5人以上世帯の場合に「0.90」の各逓減率を導入し、第2類費については4人以上世帯の生活扶助基準を抑制するとの見直しを 行った(乙A第7号証の3・14ページ)。 また、平成16年検証では、「今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5 た(乙A第7号証の3・14ページ)。 また、平成16年検証では、「今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある」(乙A第4号証3ページ)との指摘もされた。 (イ) 平成19年検証平成19年検証では、平成16年検証と同様に、生活扶助基準の評価・検証の方法として、「国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である」(乙A第5号 証3ページ)との考え方が示されるとともに、「水準の妥当性」(生活扶助基準の水準と一般低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られているかどうか)のほか、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の展開部分である「体系の妥当性」(第1類費と第2類費との合算によって定められている生活扶助基準額が消費実態を適切に反映しているか。具体的には、 年齢階級別、世帯人員別の基準額が妥当かどうか。)、「地域差の妥当性」(現行の級地制度が級地間における生活水準の差を反映しているかどうか)についても評価・検討が行われた(同号証2ページ)。 そして、平成19年検証では、生活扶助基準の展開部分について、「生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たっては、世帯構成などが異な る生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系 としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である」(同号証5ページ)との基本的な考え方が示されるとともに、一般低所得世帯と比較して、年齢階級別に見ると、20歳~39歳及び40歳~59歳では生 、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である」(同号証5ページ)との基本的な考え方が示されるとともに、一般低所得世帯と比較して、年齢階級別に見ると、20歳~39歳及び40歳~59歳では生活扶助基準額が相対的にやや低めであるのに対し、70歳以上では相対的にやや高めであるなど消費実態からかい離 していること(同号証7ページ)、世帯人員別に見ると、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であるのに対し、世帯人員が少ない世帯に不利である実態が見られること(同号証6ページ)のほか、地域別に見ると、現行の級地制度における地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差が縮小していること(同号証9ページ)などが明らかになった。 そのため、平成19年検証を踏まえて、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の展開部分について見直しを行うことが考えられたものの、厚生労働大臣は、平成20年度の予算が編成された平成19年12月当時、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の当時の社会経済情勢を見極める必要性等を勘案し、平成19年検証に基づく展開部分の見直しは見送ることと した(乙A第73号証)。 イ平成25年検証(ア) 平成25年検証の目的前記アのとおり、平成16年検証を踏まえて生活扶助基準の展開部分の見直しが行われ、平成19年検証において年齢階級別、世帯人員別、級地 別の展開部分の見直しの必要性が指摘されたが、平成19年検証の結果を踏まえた展開部分の見直しは行われなかった。そこで、平成25年検証においては、平成19年検証の「世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要」であると の指摘を踏まえ、生活保護受 などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要」であると の指摘を踏まえ、生活保護受給世帯間の実質的な公平を図る観点から、年 齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」について、評価・検証が行われることとなった。 (イ) 平成25年検証の方法基準部会は、平成19年検証における「生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのために は、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である」(乙A第5号証3ページ)との指摘を踏まえ、平成21年全消調査を用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の違いを把握し、その世帯構成による消費実態の相違によって生活扶助基準の展開部分の検証を 行うこととした。具体的には、全国消費実態調査を用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の相違を示す「一般低所得世帯の消費実態による指数」を把握し、それと「生活扶助基準額による指数」とを比較することとした。 そして、基準部会は、①平成25年検証においても、過去の検証に倣っ て生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断されたこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されている状 況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1 ている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されている状 況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位のみが減少しているわけではないこと、⑤第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあること、⑥分散分析等の統計的手法(乙A第69号証)による検証からは、各十分位間の中で、 第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、ほ かの十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なるものと考えられること(乙A第6号証4及び5ページ)から、生活保護受給世帯の比較対象としての一般低所得世帯として、第1・十分位の世帯を用いることとしたものである。 (ウ) 平成25年検証の結果(平成25年報告書・乙A第6号証) a 基準部会での検証の結果、以下の表(同号証8ページ)のとおり、年齢階級別(左上の表)、世帯人員別(右上及び左下の表)及び級地別(右下の表)のいずれにおいても、生活扶助基準額による各指数の分布(以下の表における青線)と一般低所得世帯の消費実態による各指数の分布(以下の表における赤線)との間にかい離が認められた。 b また、平成25年報告書においては、前記aの検証結果に関する留意事項として、「今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定 の限界があることに留意する必要がある」、「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般 低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止す の限界があることに留意する必要がある」、「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般 低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」とされた(乙A第6号証9及び10ページ)。 ウ本件保護基準改定におけるゆがみ調整の実施以上の経緯を踏まえて、厚生労働大臣は、基準部会による平成25年検証の結果に基 づき、生活保護受給世帯間の公平を図るため、本件保護基準改定におけるゆがみ調整を行うことによって、一般低所得世帯の消費実態を「展開のための指数」に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることにしたものである(ただし、後記4のとおり、平成25年検証を反映する程度を2分の1とするなどの措置を講じた。)。 なお、平成25年検証においては、「仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法」が用いられ(乙A第6号証3ページ)、ゆがみ調整においては、このような検証により算出された年齢階級別、世帯人員別及び級地別の各区分ごとの指 数によって算出した改定率(展開のための指数の改定率)を、本件保護基準改定前の年齢階級別、世帯人員別、級地別の各第1類費及び第2類費の額に直接乗じるという改定手法が用いられた。すなわち、ゆがみ調整は、このような改定手法により、平成25年検証において平均受給額が不変となるようにして算出された指数を基準額に反映させ、その結果として、これら第1類 費及び第2類費を積み上げることによって算出される各世帯(標準世帯を含む。)の生活扶助費が変更されることになる。そのため にして算出された指数を基準額に反映させ、その結果として、これら第1類 費及び第2類費を積み上げることによって算出される各世帯(標準世帯を含む。)の生活扶助費が変更されることになる。そのため、毎年度の改定において採用されていた消費を基礎とする水準均衡方式のように、標準世帯の生活扶助基準額に改定率を乗じた上で生活扶助基準全体の水準(高さ)として設定し、当該標準世帯の基準額を基軸としてこれを他の世帯類型に展開させ るという改定手法は、そもそも用いられていない。 2 デフレ調整の概要及び厚生労働大臣がデフレ調整に係る判断に至る経緯(1)デフレ調整の概要生活扶助基準の水準は、平成19年検証によって一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られており、生活保護受給世帯と一般国民との均衡が崩れた状態(生活扶助基準の水準が実質的に高い状態)にあった。その 後、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機の影響で、同年以降、賃金、物価、家計消費等がいずれも下落する経済情勢にあったにもかかわらず、このような経済動向(生活扶助基準の水準の減額改定を根拠づける事情)が生活扶助基準に反映されてこなかった結果、デフレ傾向によって生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準の水 準が実質的に引き上げられた)と評価することができる状態にあり、生活保護受給世帯と一般国民との間の均衡はより一層崩れる状態となった。 このように、平成25年検証の時点では、生活扶助基準の水準を引き下げて不均衡を是正すべき状況にあった中、平成25年検証では、生活扶助基準の「展開のための指数」についての評価・検討が行われたものの、生活扶助基準の「水 準」についての評価・検討は行われなかった。そして、 を是正すべき状況にあった中、平成25年検証では、生活扶助基準の「展開のための指数」についての評価・検討が行われたものの、生活扶助基準の「水 準」についての評価・検討は行われなかった。そして、上記のような経済状況において、特に、「百年に一度」とも評される世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼすとともに、国民の将来不安が高まっている状況にあった。消費の動向は、物価のほか、賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであるが、リーマンショック後の 賃金、物価、家計消費等が下落している状況下では、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定される状況にあり、現に、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯の消費支出は約6.0パーセント下落するなどしていた(乙A第11 0号証)。その上、専門委員会による平成15年中間取りまとめにおいては、 改定の指標として消費を用いることについての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性が示されており、改定の指標として物価を用いることも選択肢の一つとして指摘されていたところでもあった。 以上の経緯を踏まえ、厚生労働大臣は、平成20年以降のデフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実 質的な引上げ)により生じた同世帯と一般国民との間の不均衡を是正するため、平成20年から平成23年までの間の生活扶助による支出が想定され得る品目の物価変動率(マイナス4.78パーセント)を算定して、当該数値に基づき生活扶助基準の「水準」を減額改定することによって、その適正化を図ったも 成23年までの間の生活扶助による支出が想定され得る品目の物価変動率(マイナス4.78パーセント)を算定して、当該数値に基づき生活扶助基準の「水準」を減額改定することによって、その適正化を図ったものである。 (2)生活扶助基準の「水準」に係る改定の経過ア昭和58年意見具申を踏まえた水準均衡方式の採用(ア) 昭和58年意見具申前保護基準の設定及び改定については、厚生労働大臣の広範な裁量権に委ねられており、法令上、改定の方法には特段の定めはない。厚生労働大臣 は、毎年度の生活扶助基準の改定に当たり、その方法を個別的に検討するのではなく、一定の改定の方式を採用して改定の指標としてきた。 すなわち、厚生労働大臣は、従前、生活扶助基準の改定の方式として、その時々の社会情勢等も踏まえ、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般的な国民生活の状況等との相関関係において捉えられるべき ものであるという考え方に立脚し、一般国民の生活水準との均衡を図るなどの観点から、①マーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式)、②エンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に 低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル 係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式)、③格差縮小方式(一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)を順次採用してきた(乙A第7号証の2・10ページ)。 (イ) 昭和58年意見具申後 a 厚生労働大臣は、昭和 上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)を順次採用してきた(乙A第7号証の2・10ページ)。 (イ) 昭和58年意見具申後 a 厚生労働大臣は、昭和58年意見具申を踏まえ、昭和59年度以降は、その当時の生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当であったとの評価を前提に、一般国民の生活水準との均衡を図る観点から、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る水準均衡方式を採用してお り、これに基づき毎年度の改定を行ってきた(乙A第7号証の2・10ページ)。 具体的には、生活扶助基準は、年度ごとに、予算編成時(12月頃)に翌年度のものが設定されるところ、水準均衡方式による改定についても、X年度の予算編成時((X-1)年12月頃)において、X年度の 民間最終消費支出の伸び(X年度の消費動向の予測値及び(X-1)年度の消費動向の実績値)を考慮して改定率を算出することによって行われてきた(改定率は、乙A第10号証参照)。 b このように、消費を基礎とする水準均衡方式は、従前の生活扶助基準の改定方式と同様に、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、 一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚し、一般国民の生活水準との均衡を図る観点から採用されたものであって、昭和59年度以降、毎年度の改定に当たっては、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸びの予測値及び実績値)を改定の指標としてきたところである。 もっとも、一般国民の生活水準との均衡を見る際に基礎とすべき指標 としては、消費のほかに賃金や物価も考えられるところであり、前記(ア)のとおり、格差縮小方 としてきたところである。 もっとも、一般国民の生活水準との均衡を見る際に基礎とすべき指標 としては、消費のほかに賃金や物価も考えられるところであり、前記(ア)のとおり、格差縮小方式が採用される前に採用されていたマーケットバスケット方式やエンゲル方式においては、消費そのものが改定の指標とされていたわけではない。そのため、消費を基礎として改定した結果、賃金や物価等の指標も併せて考慮して見ると一般国民の生活水準とか け離れてしまうという事態も想定し得るものであり、そのような場合にまで消費以外の指標を用いないとしていたものではなかった。例えば、消費を基礎とする水準均衡方式においても、消費は下落しているものの賃金や物価は上昇しているような経済状況においては、消費を一応の指標としつつも、消費以外の指標を考慮して生活扶助基準を改定すること もあり得たところであり、消費が唯一で絶対的な基準であると考えられていたものではない。 実際に、厚生労働大臣は、水準均衡方式による改定においても、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸びの予測値及び実績値)のみをもって改定率を算定するわけではなく、消費の動向以外の要素も含め た経済動向や社会情勢等を総合的に勘案して生活扶助基準の水準を改定してきた。そのため、一般国民の消費の動向を指標としつつも、当該年度の社会経済情勢等を勘案し、当該年度の消費の動向が生活扶助基準の水準に反映されない場合もあることから、民間最終消費支出の伸び(予測値及び実績値)と生活扶助基準の改定率とは、必ずしも一致する ものではない(乙A第68号証2ページ)。 イ専門委員会の中間取りまとめにおいて、一般国民の消費の動向を改定の指標とすることの課題等が指摘されていたこと(平成16年検証)(ア) する ものではない(乙A第68号証2ページ)。 イ専門委員会の中間取りまとめにおいて、一般国民の消費の動向を改定の指標とすることの課題等が指摘されていたこと(平成16年検証)(ア) 平成16年検証前水準均衡方式が採用された昭和59年以降の我が国の社会経済情勢は、昭和61年 12月から始まった平成景気(いわゆるバブル景気)が平成2年10月頃 に終えんし、その後遺症から、複合不況といわれる長期間の景気低迷期からなかなか脱却できず、賃金、物価、家計消費等がいずれも継続的に下落するデフレ状況にあった(乙A第11号証18、24及び25ページ参照)。 このような社会経済情勢の中で、平成12年5月の社会福祉事業法等一部改正法案に対する衆議院及び参議院の附帯決議により、生活保護制度の 在り方について十分検討を行うこととされ(乙A第12号証の2・2枚目)、平成15年6月の社会保障審議会意見及び財政制度等審議会建議においても、同様に、生活保護制度の在り方の検討の必要性が指摘された(同号証の2・2及び3枚目)。また、同月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」において、「生活保護におい ても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革などとの関係を踏まえ、老齢加算等の扶助基準など制度、運営の両面にわたる見直しが必要である」とされた(同号証の2・2枚目)。 こうした中、厚生労働大臣は、水準均衡方式に基づき、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸び)を踏まえながらも、その時々の社会経済情勢等を 総合的に勘案の上、生活扶助基準について、昭和59年度から平成12年度までは増額改定(ただし、平成2年度以降は改定率を暫時縮小)をし、平成13年度及び平成14年度は据え置き、平成1 情勢等を 総合的に勘案の上、生活扶助基準について、昭和59年度から平成12年度までは増額改定(ただし、平成2年度以降は改定率を暫時縮小)をし、平成13年度及び平成14年度は据え置き、平成15年度及び平成16年度は減額改定をしてきた(乙A第10号証)。 (イ) 平成15年中間取りまとめ(乙A第13号証) 平成15年に厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の福祉部会の下に設置された専門委員会は、同年12月の中間取りまとめにおいて、「生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであり、具体的には、年間収入階級第1/10分位の世帯の消費水準に着目することが適当である」 とされ、「第1/10分位の勤労者3人世帯の消費水準について詳細に分 析して3人世帯(勤労)の生活扶助基準額と比較した結果」について、「第1/10分位の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、後者が高い」と指摘していた(乙A第13号証1ページ)。 また、昭和59年度以降の改定において、一貫して、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸びの予測値及び実績値)を指標としてきたが、 この点について、専門委員会は、「最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なることから、例えば5年間に一度の頻度で、生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である。」、「近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる被保護世帯への影響が懸 念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要である。」として、改定の指標として消費を用いることについての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性を示し 護世帯への影響が懸 念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要である。」として、改定の指標として消費を用いることについての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性を示していた(同号証2ページ)。 さらに、専門委員会は、「この場合、国民にとってわかりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数 の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。」と、水準均衡方式における改定の指標として物価を用いることについても選択肢の一つとして指摘されていた(同号証2ページ)。 (ウ) 平成16年報告書(乙A第4号証)その後、専門委員会は、平成16年12月、平成16年報告書(乙A第4 号証)を取りまとめた。同報告書は、生活扶助基準の水準について、一般低所得世帯(第1・十分位)の勤労3人世帯(夫婦子1人)の消費支出と生活扶助基準とを比較した結果、「勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であった」(同号証3ページ)との結論を示した。 そこで、厚生労働大臣は、平成16年検証の結果も踏まえた上で、平成 17年度の生活扶助基準を据え置き、その後の平成18年度及び平成19年度の生活扶助基準の各改定においても、当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、その水準を据え置いてきた(乙A第70ないし72号証)。 ウ平成19年報告書において生活扶助基準額が高い旨の指摘がされていた が、その後も減額改定が行われなかったこと(平成19年検証)(ア) 平成19年検証a 平成15年中間取りまとめによる前記イ(イ)の指摘を受け、生活扶助 助基準額が高い旨の指摘がされていた が、その後も減額改定が行われなかったこと(平成19年検証)(ア) 平成19年検証a 平成15年中間取りまとめによる前記イ(イ)の指摘を受け、生活扶助基準は、その後、専門機関において、約5年に一度の頻度で検証が行われてきた。そこでは、生活扶助基準の水準だけでなく、展開部分も含め た生活扶助基準全体の妥当性等が検証される。そして、厚生労働大臣は、水準均衡方式による毎年度の改定とは別に、専門機関による検証の結果を踏まえた生活扶助基準の改定の要否及びその内容を検討してきた。 具体的には、まず、生活扶助基準の見直しの分析・検討を行うため、平成19年に、厚生労働省社会・援護局に「生活扶助基準に関する検討 会」(生活扶助基準検討会)が置かれ、生活扶助基準検討会において同年11月、「生活扶助基準に関する検討会報告書」(平成19年報告書・乙A第5号証)が取りまとめられた。 b 平成19年報告書においては、平成16年全国消費実態調査(以下「平成16年全消調査」という)のデータに基づいて、水準、体系、地域差の 各妥当性を検討し(乙A第5号証2ページ)、夫婦子1人世帯及び単身高齢世帯(60歳以上)の生活扶助基準額が各世帯の第1・十分位における生活扶助相当支出額よりも高めとなっている(夫婦子1人世帯の基準額が15万408円、生活扶助相当支出額が14万8781円であり、基準額が約1.1パーセント高い。また、単身高齢世帯(60歳以上)の基準額 が7万1209円、生活扶助相当支出額が6万2831円であり、基準額 が約13.3パーセント高い。)との結論が得られた(同号証5ページ)。 (イ) 平成20年度以降の生活扶助基準の据置きa 平成19年検証の結果を踏まえると、平成20年度の生活 り、基準額 が約13.3パーセント高い。)との結論が得られた(同号証5ページ)。 (イ) 平成20年度以降の生活扶助基準の据置きa 平成19年検証の結果を踏まえると、平成20年度の生活扶助基準については、一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るため、減額改定を行うことも十分考えられる状況にあった。 しかし、厚生労働大臣は、平成20年度の予算が編成された平成19年12月当時、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の社会経済情勢を見極める必要性等を考慮し、生活扶助基準について、減額改定を行わずにこれを据え置くこととし、平成20年度の消費等の動向を基礎とした改定を行わなかった(乙A第73号証)。 なお、生活扶助基準額は、平成17年度から平成24年度に至るまでの間、改定率100パーセントの改定、すなわち前年度の基準額を据え置く改定がされているが(乙A第10号証)、この据置きには、当該年度の消費や物価等の動向を基礎とした上で据え置くもの、つまり「各年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前 年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、据え置く」(乙A第70ないし72号証参照)ものと、消費や物価等の動向を基礎とせず据え置くもの(乙A第73ないし77号証参照)がある。前者(平成17年度ないし平成19年度)における「据置き」とは、当該年度の消費や物価等の経済動向を生活扶助基準の水準に反映する趣旨であるの に対し、後者(平成20年度ないし平成24年度)における「据置き」とは、当該年度の経済動向を生活扶助基準に反映しなかったという趣旨である。 b また、厚生労働大臣は、平成21年度の予算が編成された平成20年12月当時、同年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大き 向を生活扶助基準に反映しなかったという趣旨である。 b また、厚生労働大臣は、平成21年度の予算が編成された平成20年12月当時、同年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を 与えていたことに加え、同年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が 実体経済へ深刻な影響を及ぼし、国民の将来不安が高まっている状況にあったことを踏まえて、平成21年度の生活扶助基準についても、消費等の動向を基礎とした改定を行わず、これを据え置いた(乙A第74号証)。 c そして、厚生労働大臣は、平成22年度の生活扶助基準についても、完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民 生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、消費等の動向を基礎とした改定を行わずに据え置くこととした。同様に、厚生労働大臣は、平成23年度及び平成24年度の生活扶助基準についても、その時々の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、消費等の動向を基礎とした改定を行わず、据え置くこととした(以上につき、乙A第75ないし77号証)。 エ平成19年検証後の社会経済情勢等(ア) この間、平成20年9月のリーマンショックに端を発した「百年に一度」とも評される世界金融危機は、我が国の消費等の実体経済に大きな影響を与えていた(乙A第78号証の1及び2)。 以下の表は、平成20年から平成23年までの完全失業率(乙A第11 号証8ページ)、一般勤労世帯の賃金(事業者規模5人以上の調査産業計の1人平均月間現金給与総額。同号証18ページ)、消費者物価上昇率(同号証24ページ)及び全国勤労者世帯家計収支のうちの家計消費支出の推移(同号証25ページ)における前年度比の割合をまとめたものである。 給与総額。同号証18ページ)、消費者物価上昇率(同号証24ページ)及び全国勤労者世帯家計収支のうちの家計消費支出の推移(同号証25ページ)における前年度比の割合をまとめたものである。 完全失業率一般勤労世帯の賃金消費者物価上昇率家計消費支出の推移平成20年4.0%-0.3%1.4%0.5%平成21年5.1%-3.9%-1.4%-1.8%平成22年5.0%0.5%-0.7%-0.2%平成23年4.6%-0.2%-0.3%-3.0% この表のとおり、完全失業率は平成21年から急激に悪化し、一般勤労世帯の賃金は、平成21年に3.9パーセントの減少となり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じている。消費者物価上昇率は平成21年から平成23年まで3年連続で対前年比がマイナスとなり、家計消費支出も平成21年から平成23年まで名目値で3年連続 の減少となるなど、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況となった。 このような社会経済情勢を背景として、生活保護受給者数は急激に増加し、平成23年7月には過去最高の205万人となり、その後も引き続き増加していった(乙A第6号証1ページ)。 また、平成21年全消調査においては平成16年全消調査に比べ、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯における消費支出が約6.0パーセント下落していた(その後、平成21年全消調査における夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額は約13万1500円であり(乙A第111号証)、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯(第1・ 十分位)の生活扶助相当支出額、すなわち消費が約11.6パーセント下落して 相当支出額は約13万1500円であり(乙A第111号証)、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯(第1・ 十分位)の生活扶助相当支出額、すなわち消費が約11.6パーセント下落していたことが判明している*1。)。そして、上記の経済動向を踏まえるならば、平成21年以降の消費支出額が増加することは考えにくい状況にあった。 (イ) 以上のような状況を受け、平成24年6月に自民党、公明党及び民主党 の三党で確認書が合意され、それに基づき、三党の提案で国会に提出され、平 *1 平成16年全国消費実態調査における夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額は約14万8781円であったのに対し(乙A第5号証5ページ)、平成21年全国消費実態調査における夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額は約13万1500円であり(乙A第111号証)、平成16年から平成21年にかけて約11.6パーセント下落していた。 成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)附則2条1号には、政府は、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と明記された(乙A第6号証2ページ)。 オ平成25年検証において生活扶助基準の「水準」の検証が行われなかった ことこの間、平成23年2月には、保護基準について専門的かつ客観的に評価、検証することを目的として、社会保障審議会令6条1項、社会保障審議会運営規則2条に基づき、社会保障審議会の下に常設部会として基準部会(生活保護基準部会)が新たに設置された(乙A第21号証)。そして、基準部会 的として、社会保障審議会令6条1項、社会保障審議会運営規則2条に基づき、社会保障審議会の下に常設部会として基準部会(生活保護基準部会)が新たに設置された(乙A第21号証)。そして、基準部会 は、平成25年1月、「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(平成25年報告書・乙A第6号証)を取りまとめた(平成25年検証)。 平成25年報告書は、生活扶助基準について、平成21年の全消調査のデータに基づき、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と一般低所得世帯の消費実態のかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数 を評価・検証したものであり(同号証2ページ)、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果を踏まえて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図るべくゆがみ調整を行った。 他方、基準部会においては、平成25年報告書において取りまとめられているとおり、生活扶助基準の「展開」部分の検証が行われたものの、「水準」 (高さ)の検証は行われなかった。 (3) 厚生労働大臣がデフレ調整に係る判断に至る経緯アデフレ調整の実施を判断した理由前記(2)ウで述べたとおり、平成16年全消調査に基づく平成19年検証の結果、一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされながら、生活扶助 基準について減額改定が行われなかったことによって、平成20年当時、生 活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れ、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態に比較して高くなっていた。このような状況の中、同年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込み、一般国民の消費水準等が下落する一方、生活扶助基準については、その間の経済動向を踏まえた減額改定が行 われずに据え置かれてきた 端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込み、一般国民の消費水準等が下落する一方、生活扶助基準については、その間の経済動向を踏まえた減額改定が行 われずに据え置かれてきた結果、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(平成20年以降の据置きによって、生活扶助基準の水準が実質的に引き上げられた)と評価することができる状況にあり、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡は、より一層顕著となっていた。 そして、平成24年6月の自民党、公明党及び民主党の三党の合意に基づき 国会に提出され、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法附則2条1項により、生活扶助基準の適正化を早急に行うことが明記されていた。 このように、本件保護基準改定前における生活扶助基準の水準は、一般国民の生活水準との均衡が大きく崩れた状態(生活扶助基準の水準が高い状態)となっており、その後、上記のような経済状況において、特に、「百年に一 度」とも評される世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼすとともに、国民の将来不安が高まっている状況にあったが、平成21年全消調査に基づく平成25年検証では展開部分に関する評価・検証が行われる一方、生活扶助基準の水準が妥当か否かの評価・検証は行われなかった。ここで、消費の動向は、物価のほか、賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将 来の予測等の様々な要素にも影響されるものであるが、リーマンショック後の賃金、物価、家計消費等が下落している状況下では、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定される状況にあり、現に、全国消費実態調査によれば、平成16年から平成21 勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定される状況にあり、現に、全国消費実態調査によれば、平成16年から平成21 年にかけて、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯の消費支出が約6.0パー セント下落するなどしていた(乙A第110号証)。 そもそも水準均衡方式が採用された昭和58年当時は、我が国の経済が右肩上がりに成長を続けていた時期であり、一般国民の消費支出の増加に伴い、生活扶助基準も増額改定がされることが見込まれる状況であったところ、その後、社会経済情勢が大きく変化し、専門委員会による平成15年中間取り まとめにおいては、「昭和59年度以降、(中略)毎年度の政府経済見通しの民間消費支出の伸びを基礎とする改定方式がとられて(中略)きたが、最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なる」との指摘もされていた(乙A第13号証2ページ)。 水準均衡方式は、消費を基礎としているものの、同方式の考え方の下にお いては、消費支出のほかに、物価や賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定することも十分考えられるといえるのであって、上記の中間取りまとめにおいても、「最近の経済情勢」を踏まえた場合に、改定の指標として消費を用いることについての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性が示されており、改定の指標として物価を用いることも選択肢の一 つとして指摘されていたことなどを踏まえると、生活扶助基準の水準を調整するに当たり、デフレ傾向に伴う「生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加」に着目し、これを表す指標として物価を用いることにも合理性があるものと認められた。 以上の経緯等を踏まえ、厚生労働大臣は、平成20年以降の生活保護受給 「生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加」に着目し、これを表す指標として物価を用いることにも合理性があるものと認められた。 以上の経緯等を踏まえ、厚生労働大臣は、平成20年以降の生活保護受給 世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)により生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るため、同年以降の物価変動を生活扶助基準に反映させる改定(デフレ調整)を行うこととした。 イ生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(物価変動)を指 標とした改定を行うこととした理由 前記アのとおり、厚生労働大臣がデフレ調整を行うに当たって物価変動率を基に改定を行うこととしたのは、デフレ調整が平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加に着目し、これを生活扶助基準に反映させることを目的としていたからである。ふえんすると、生活扶助基準は、生活保護受給世帯における収入額(可処分所得)、すなわち購買力 として捉えることができるところ、収入額(可処分所得)が変化せずに物価が変動する場合には購買力が変動することになることから、物価は生活保護受給世帯における購買力ひいては実質的な可処分所得の変化を測定する指標となり得るといえる。 ここで、厚生労働大臣が生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的 な増加(物価変動)を指標とした改定を行うこととした理由を改めて整理すると、次のとおりである。 (ア) 本件保護基準改定に際し、従前の水準均衡方式による改定を行わなかった経緯等a 基準部会において、消費(平成21年全消調査)に基づく生活扶助基 準の水準に係る検証が行われなかったこと基準部会は、平成25年検証において、消費(平成21年全消調査)に かった経緯等a 基準部会において、消費(平成21年全消調査)に基づく生活扶助基 準の水準に係る検証が行われなかったこと基準部会は、平成25年検証において、消費(平成21年全消調査)に基づき、生活扶助基準の水準の検証と一体的な展開部分(体系及び級地)の検証を行うことを検討していたが、結果的に、生活扶助基準の展開部分(体系及び級地)に関する評価・検証のみが行われ、生活扶助基準の水準の評価・ 検証は行われなかった。 すなわち、平成24年10月5日開催の第10回基準部会では、水準の検証と一体的な体系及び級地の検証を行うことが議論され、これを踏まえて、同年11月9日の第11回基準部会では、かかる検証の方法として、「ある特定の世帯類型を考えて現行の基準額の水準について検証 する場合、まずは当該世帯類型(第1十分位)が現行の生活扶助基準額 で受給した場合の平均基準額を求めることとなる。しかし、仮に体系及び級地の検証の結果、基準額の体系や級地間較差が低所得世帯の消費の実態と合っていなかったとすれば、その世帯類型が受給した場合の平均基準額の水準には、基準額の体系や級地間較差が低所得世帯の消費の実態と合っていないことの影響が含まれている」として、「ある特定の世 帯類型の基準額の水準を考える際に、①現行の基準額の年齢体系が消費の実態に合っていないことの影響、②現行の基準額の人員数体系が消費の実態に合っていないことの影響、③現行の基準額の級地間較差が消費の実態に合っていないことの影響をそれぞれ定量的に評価することが必要になる」と整理された(乙A第37号証2ページ)。つまり、世帯 類型別の生活扶助基準の水準の検証に際しては、まず、㋐現行の基準額の年齢別、世帯人員別、級地別の体系が消費の実態に合っているか否かを る」と整理された(乙A第37号証2ページ)。つまり、世帯 類型別の生活扶助基準の水準の検証に際しては、まず、㋐現行の基準額の年齢別、世帯人員別、級地別の体系が消費の実態に合っているか否かを定量的に評価した上で、㋑その結果を踏まえて水準の検証を行うという検証方法が確認された。 もっとも、平成25年1月18日に公表された平成25年報告書にお いて、結果的に、上記㋐についての検証は行われたものの、上記㋑についての検証を行うには至らなかった。平成25年報告書においても、「今回、本部会としては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った」(乙A第6号証2ページ)と記載されているとおり、 上記㋐についての検証結果を取りまとめたものとされており、上記㋑については言及がない。 以上のとおり、基準部会は、もともと平成25年検証において、消費(平成21年全消調査)に基づく生活扶助基準の「水準」についても検証を行うことを検討しており、かかる検証が行われていれば、厚生労働 大臣においてその検証結果に基づいて生活扶助基準の「水準」を改定す ることが考えられたところであるが、結果的に、平成25年検証においては、生活扶助基準の「水準」についての検証が行われないこととなったのである。 b 平成25年改定に当たり、消費を基礎とする改定を行った場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定されたこと 前記aのとおり、平成25年検証においては生活扶助基準の「水準」についての検証は行われなかったものの、殊に、平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が我が国の実体経済に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落 基準の「水準」についての検証は行われなかったものの、殊に、平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が我が国の実体経済に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落するなど、一般国民の生活水準が大きく低下していた状況にありながら生活扶助 基準が据え置かれてきたことを踏まえるならば、一般国民の生活水準との均衡が大きく崩れていたことは明らかであるから、平成25年改定において、何らかの経済指標を用いて生活扶助基準の「水準」の調整を図る必要があることは明らかであった。 ここで、消費の動向は、物価や賃金の動向やこれらを踏まえた主観的 な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであるが、平成20年以降の経済状況、特に「百年に一度」とも評される世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼすとともに、国民の将来不安が高まっており、賃金、物価、家計消費等が下落している状況下では、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基 礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定された。現に、平成19年検証及び平成25年検証において用いられた全国消費実態調査のデータによれば、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯の消費支出が約6.0パーセント下落するなどしていた(乙A第110号証)。 なお、その後に判明した事情ではあるが、全国消費実態調査のデータによ れば、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が約11.6パーセント下落していた(前記脚注1参照)。しかも、平成19年検証において、平成16年全消調査のデータとの比較で生活扶助基準額が「やや高め」ないし「高め 1・十分位)の生活扶助相当支出額が約11.6パーセント下落していた(前記脚注1参照)。しかも、平成19年検証において、平成16年全消調査のデータとの比較で生活扶助基準額が「やや高め」ないし「高め」とされていたことを考慮すれば、消費を基礎とする改定を行った場合、デフレ調整における減額率 を大きく上回っていた可能性も否定できない。 c 保護基準の改定の方式について法令上の定めはないことこのように、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定されたところ、厚生労働大臣には、保護基準の改定について専門技術的かつ政策的な見地からの広範な裁量権 が認められており、もとより改定の方式について法令上の定めはなく、具体的な改定の手法は特定の方法に限られるものではない。 そして、消費を基礎とする水準均衡方式についても、法令上定められたものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用している事実上の改定指針の一つにすぎないものである。 d デフレ調整は、消費を基礎とする水準均衡方式が用いられてきた場面とは異なる場面で行われたものであったことさらに、消費を基礎とする水準均衡方式が採用された経緯やその後の社会経済情勢等について見ると、以下に述べるとおり、デフレ調整が行われた当時の社会経済情勢等は、昭和58年意見具申以降の消費を基礎 とする水準均衡方式が用いられてきた際の社会経済情勢等とは異なっていた上、デフレ調整は、約5年に一度行われる専門機関による検証に併せて行われたものであって、毎年度行われる改定とは異なるものである。 (a)すなわち、前記(2)ア(9ないし12ページ)のとおり、厚生 労働大臣は、従前、生活扶助基準の改定の方式として、その時々の社会情勢等も踏まえ 度行われる改定とは異なるものである。 (a)すなわち、前記(2)ア(9ないし12ページ)のとおり、厚生 労働大臣は、従前、生活扶助基準の改定の方式として、その時々の社会情勢等も踏まえ、生活保護において保障すべき最低生活の水準につき、一般 的な国民生活の状況等との相関関係において捉えられるべきものであるという考え方に立脚し、一般国民の生活水準との均衡を図るなどの観点から、①マーケットバスケット方式、②エンゲル方式、③格差縮小方式を順次採用してきた。そして、昭和59年度以降は、その当時の生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当であったとの評価を前提に、一 般国民の生活水準との均衡を図る観点から、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る水準均衡方式を採用しており、これに基づき毎年度の改定を行ってきた(乙A第7号証の2・10ページ)。 このように、消費を基礎とする水準均衡方式は、生活保護において 保障すべき最低生活の水準が一般的な国民生活の状況等との相関関係において捉えられるべきものであるという考え方に立脚しつつ、一般国民の生活水準との比較において妥当と評価された生活扶助基準を基に、毎年度、比較対象である一般国民の消費水準の伸び(変化)を指標として、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維 持しようとするものであって、昭和58年以降、基本的には毎年度の生活扶助基準の改定において用いられてきた考え方である。また、水準均衡方式が採用された昭和58年当時は、我が国の経済が右肩上がりに成長を続けていた時期であり、一般国民の消費支出の増加に伴い、生活扶助基準も増額改定がされることが見込まれる状況であった(実 際、昭和59年か れた昭和58年当時は、我が国の経済が右肩上がりに成長を続けていた時期であり、一般国民の消費支出の増加に伴い、生活扶助基準も増額改定がされることが見込まれる状況であった(実 際、昭和59年から平成12年までの間、生活扶助基準の額は毎年増額されている(乙A第10号証)。)。 (b) ところが、その後、かかる社会経済情勢に変化が生じ、専門委員会による平成15年中間取りまとめは、「昭和59年度以降、(中略)毎年度の政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びを基礎とする改 定方式が採られて(中略)きた」が、「最近の経済情勢はこの方式を 採用した当時と異なる」と明確に指摘していた(乙A第13号証2ページ)。 また、同取りまとめは、「近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる被保護世帯への影響が懸念されることか ら、改定の指標の在り方についても検討が必要である。この場合、国民にとってわかりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。」として、消費者物価指数を生活扶助基準の改定の指標とする可能性に言及し、最近の経済情勢を踏まえ て、消費を指標とする改定の在り方についての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性を示していた(乙A第13号証2ページ)*2。 さらに、平成16年全消調査に基づく平成19年検証の結果、一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされながら、生活扶助基準について減額改 定が行われなかったことによって、平成20年当時、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れ、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消 とされながら、生活扶助基準について減額改 定が行われなかったことによって、平成20年当時、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れ、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態に比較して高くなっていた。このような状況の中、同年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込み、一般国民の消費水準等が下落する一方、生活扶助基準 については、その間の経済動向(民間最終消費支出の伸び)を踏まえた減額改定が行われずに据え置かれてきた結果、本件保護基準改定時においては、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡は、より一層顕著とな *2 本件保護基準改定後の事情ではあるが、基準部会の平成29年検証においても、結論において見送られたものの、物価も含めた経済指標の動向を生活扶助基準に反映させるかの検討が行われている(乙A第68号証10及び11ページ)。 っていた。 このように、デフレ調整は、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込むという経済状況にあり、生活扶助基準と一般国民との間の不均衡が存在しているという前提で、これを是正するために行われたものであ る。 (c) また、前記(2)イ(イ)(13及び14ページ)で述べたとおり、専門委員会において、「例えば5年間に一回の頻度で、生活扶助水準の妥当性について定期的な検証を行うことが必要である」と指摘されていたところ、デフレ調整は、かかる指摘を受けて約5年に一度行わ れる専門機関による保護基準の検証(平成25年検証)に併せて実施されたものであり、消費を基礎とする水 とが必要である」と指摘されていたところ、デフレ調整は、かかる指摘を受けて約5年に一度行わ れる専門機関による保護基準の検証(平成25年検証)に併せて実施されたものであり、消費を基礎とする水準均衡方式のように生活扶助基準の毎年度の改定として行われたものではない。 (d) 以上のとおり、消費を基礎とする水準均衡方式は、①我が国の経済が右肩上がりに成長を続けているという社会経済情勢を背景に、②生活扶助基 準が一般国民の生活水準との比較において妥当であるとの評価を前提に、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維持しようとするものであって、③基本的には毎年度の生活扶助基準の改定において用いられてきたものである。これに対し、デフレ調整は、①平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込 むという経済状況にあり、②生活扶助基準と一般国民との間の不均衡が存在しているという前提でこれを是正するために行われたものであって、③生活扶助基準の毎年度の改定として行われたものでもない。 このように、デフレ調整は、消費を基礎とする水準均衡方式が用いられてきた場面とは全く異なる場面で行われたものである(ただし、デフレ調整も、 消費を基礎とする水準均衡方式も、一般国民の生活水準との均衡を図ろう とする点では共通する。)。 (イ) 物価変動(生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加)を考慮することとした経緯等a 生活扶助基準の改定において、消費を改定の指標とすることが唯一で絶対的な方法として考えられてきたものではないこと 前記(ア)d(a)(25及び26ページ)で述べたとおり、生活扶助基準の改定に当たっては、生活保護において保障すべき最低生活の水準は が唯一で絶対的な方法として考えられてきたものではないこと 前記(ア)d(a)(25及び26ページ)で述べたとおり、生活扶助基準の改定に当たっては、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方が一貫してとられてきた。一般国民の生活水準との均衡を図るという水準均衡方式においても、均衡を評価するための指標としては、消費のほかに 賃金や物価も考えられるところであって、過去にマーケットバスケット方式やエンゲル方式が採用されていたことからも明らかなとおり、消費そのものを改定の指標とすることが唯一で絶対的な方法として考えられてきたものではない。 また、一般国民の生活水準と生活扶助基準との均衡を図るとした場合 に着目すべき指標としては、従前の水準均衡方式に基づく改定において指標とされていた消費のほか、物価や賃金が考えられるところ、前記(ア)d(b)(26ないし28ページ)のとおり、専門委員会の中間取りまとめは消費者物価指数を生活扶助基準改定の指標とする可能性に言及していた(乙A第13号証2ページ)。 b 一般国民と生活保護受給世帯との間の不均衡を是正するために、その原因となった平成20年以降のデフレ傾向による生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加(物価変動)に着目した調整を行うのは直截的かつ相当であると考えられたことここで、平成20年以降の一般国民と生活保護受給世帯との間の不均 衡が拡大した要因の一つとして、物価が下落するデフレ状況にありなが ら生活扶助基準が据え置かれたことにより、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したと評価することができた。この点、生活扶助基準については、生活保護受給世 デフレ状況にありなが ら生活扶助基準が据え置かれたことにより、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したと評価することができた。この点、生活扶助基準については、生活保護受給世帯における購買力(可処分所得)として捉えることができるから、貨幣の購買力を示す物価を指標として生活扶助基準の改定を行うことによって、物価変動率を算定する期間の 始期(平成20年)における実質的な可処分所得を維持しつつ、その後のデフレ状況による可処分所得の相対的、実質的な増加分について調整することが可能となる。そして、上述した一般国民と生活保護受給世帯との間の不均衡を是正するために、その原因となった平成20年以降のデフレ傾向による生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質 的な増加に着目した調整を行うのは直截的かつ相当であると考えられた。 c 物価を考慮した生活扶助基準の改定が行われた実績があったことなお、生活扶助のうち各種加算については、これまでも物価の伸び率を基礎とした改定が行われてきた(乙A第79号証)。 また、生活扶助基準の毎年度の改定においても、消費税が導入された平成元年度や、消費税率が引き上げられた平成9年度には、これら消費税の導入や消費税率の引上げを踏まえた生活扶助基準の増額改定が行われている(乙A第10号証)*3。これらは、上記消費税の導入等の事情を民間最終消費支出の伸びを予測する際の考慮要素としたものであ り、消費を基礎とした水準均衡方式に基づく改定として実施されたものであるものの、生活保護受給世帯における実質的な可処分所得を維持す *3 消費税が導入された平成元年度は4.2パーセントの増額改定(前年は1 帯における実質的な可処分所得を維持す *3 消費税が導入された平成元年度は4.2パーセントの増額改定(前年は1.4パーセント、翌年が3.1パーセントの各増額改定であった。)、消費税率が引き上げられた平成9年度は2.2パーセントの増額改定(前年は0.7パーセント、翌年は0.9パーセントの各増額改定であった。)がされている。 るために財やサービスの価格を考慮して生活扶助基準を改定したものであり、本件保護基準改定以前の生活扶助基準の改定においても財やサービスの価格(物価)の変動に着目した改定が行われていたといえる*4。 (ウ) まとめ(本件保護基準改定に当たり、消費を基礎とする水準均衡方式に よる改定を行わず、物価変動を考慮するデフレ調整を行った理由)以上のとおり、毎年度の生活扶助基準の改定は、従前、消費を基礎とする水準均衡方式に基づいて行われてきたところであるが、法令上定められたものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用している事実上の改定指針にすぎないものであり、保護基準の改定に係る同大臣の判 断を拘束するものではないところ、水準均衡方式が採用された当時とは社会経済情勢が大きく変化しており、平成15年中間取りまとめにおいてもその旨の指摘がされていた。そして、本件保護基準改定に際し、仮に消費を基礎とする改定を行った場合、減額幅が必要以上に大きくなることが想定されたのに対し、一般国民の生活水準との均衡を図るという水準均衡方 式の前提とする考え方の下においては、消費支出のほかに、物価や賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定することも十分考えられるといえる。 式の前提とする考え方の下においては、消費支出のほかに、物価や賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定することも十分考えられるといえる。 *4 さらに、消費税率が引き上げられた令和元年10月には、消費税率の引上げと同時に軽減税率が適用されることも踏まえ、生活扶助相当支出に係る平均的な価格の上昇分を算定した上で、生活扶助基準の増額改定が行われている(乙A第112号証)。すなわち、令和元年 10月の消費税率の引上げ率は1.9パーセント(110%÷108%)であったが、一般世帯における生活扶助相当支出に占める軽減税率の対象品目(酒類・外食を除く飲食料品等)の支出割合(28.4パーセント)を加味して、生活扶助基準は1.4パーセント(1.9%×(100%-28.4%))を加えた改定が行われた。 そこで、厚生労働大臣は、生活扶助基準の「水準」の改定について、それまで行われてきた消費を基礎とする水準均衡方式の考え方(一般国民の生活水準との均衡を図る観点)を堅持しつつも、平成20年以降のデフレ傾向によって生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したことにより、生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡が生じていることから、上述し た生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡を是正するためには、その原因の一つである平成20年以降のデフレ傾向による生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加に着目した生活扶助基準の「水準」の見直しを行うのが直截的かつ相当であると判断し、客観的な経済指標の一つである物価を基にして生活扶助基準の「水準」の検討、見直しを行うこと としたものである。 ウ平成20年以降の生活保護 の見直しを行うのが直截的かつ相当であると判断し、客観的な経済指標の一つである物価を基にして生活扶助基準の「水準」の検討、見直しを行うこと としたものである。 ウ平成20年以降の生活保護受給世帯の相対的、実質的な可処分所得の増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)の程度の把握前記アのとおり、厚生労働大臣は、本件保護基準改定におけるデフレ調整を行うことによって、平成20年以降のデフレ傾向による生活保護受給世帯にお ける可処分所得の相対的、実質的な増加(物価動向)を生活扶助基準に反映させて、その水準の適正化を図ったものである。 具体的には、厚生労働大臣は、平成20年以降の物価の動きを把握するに当たり、総務省統計局が公表している消費者物価指数(総務省CPI)のうち生活扶助による支出が想定され得る品目のデータを用いて、平成20年か ら平成23年までの物価下落率(4.78パーセント)を算定し、本件保護基準改定におけるデフレ調整において、当該数値相当分を減額改定した。 以下においては、厚生労働大臣が、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)により生じた同世帯と一般国民との間の不均衡の程度を把握するに当たり、総務省CPIのうち生活 扶助による支出が想定される品目のデータを用いて物価変動率を算定した理 由(後記(ア))、物価変動率を算定する期間を平成20年から平成23年までとした理由(後記(イ))、家計調査により算出されたウエイトを用いた理由(後記(ウ))、平成22年基準のウエイト(消費の構造)を用いた理由(後記(エ))及び特定の品目について他の品目と異なる取扱いをすることの可否について(後記(オ))を述べ、具体的な物価下落率(4.78パーセント)の算定過程 準のウエイト(消費の構造)を用いた理由(後記(エ))及び特定の品目について他の品目と異なる取扱いをすることの可否について(後記(オ))を述べ、具体的な物価下落率(4.78パーセント)の算定過程 (後記(カ))を明らかにした上で、当該物価下落率の数値相当分が平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)により生じた同世帯と一般国民との間の不均衡を是正するのに相当なものと評価した理由(後記(キ))を述べる。 (ア) 総務省CPIのうち生活扶助による支出が想定される品目のデータを用 いて物価変動率を算定することとした理由物価及びその変動率を算定するためには、指数品目を選定し、その品目の価格指数及びウエイトを把握する必要があるところ、本件保護基準改定が行われた平成25年当時、生活扶助による支出が想定される品目の価格指数及びウエイトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPI のデータが存在した一方、そのほかに信頼性等が担保された適切なデータは見当たらなかった。 もっとも、総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の生活扶助による支出がおよそ想定されない品目が多数含まれており*5、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増 加の程度を正確に把握するためには、上記のような品目を含めて算定することは相当ではないと考えられた。 しかも、被保護者の需要の有無及び程度を判断する手法として、一般低所得者が支出する品目のうち生活扶助相当品目を用いるという手法は、従 *5 家賃は住宅扶助、教育費は教育扶助、医療費は医療扶助によって、そ 生活扶助相当品目を用いるという手法は、従 *5 家賃は住宅扶助、教育費は教育扶助、医療費は医療扶助によって、それぞれ賄われる。 前から行われており、かつ、専門家においても是認されていたものである。 すなわち、老齢加算の廃止を提言した専門委員会は、「生活扶助相当消費支出額」に基づき被保護者の需要の有無等について検討しているところ、「生活扶助相当消費支出額」とは、一般低所得者層の消費支出全体から、生活扶助による支出がおよそ想定されない品目を除くことによって算出 したものである(岡田最高裁調査官解説269及び270ページ参照)。 そして、かかる品目の選定については、「生活扶助において捕捉され得るか否か」という客観的かつ明確な基準に従って判断されたものである。 このような客観的かつ明確な基準に従って判断されたということは、取りも直さず、当該判断においては恣意的判断が入り込む余地がなかったこと を意味する。このように、生活扶助相当CPIの設定における指数品目の選択は、恣意性を排除した客観的かつ明確な条件設定に基づいて行われたものであり、このような客観的かつ明確な基準に従って判断すること自体、恣意的判断が入り込む余地がないという意味において十分な合理性があると考えられた。 以上の理由から、厚生労働大臣は、総務省CPIの指数品目のうち、生活扶助による支出が想定される品目(生活扶助による支出がおよそ想定されない品目を除いた品目)の価格指数及びウエイトのデータを用いて、物価変動率を算定することとした(生活扶助相当CPI)。 (イ) 物価変動率を算定する期間を平成20年から平成23年までとした 理由 a 厚生労働大臣が物価変動率を算 イトのデータを用いて、物価変動率を算定することとした(生活扶助相当CPI)。 (イ) 物価変動率を算定する期間を平成20年から平成23年までとした 理由 a 厚生労働大臣が物価変動率を算定する期間の始期を平成20年としたのは、デフレ調整の目的が、平成20年以降のデフレ傾向による生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による同世帯と一般国民と間の不均衡を是正することにあったためである。 すなわち、前記ア(19ないし21ページ)のとおり、平成19年検 証において生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという見解が現に示され、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れていたと評価できる状況にあったが、平成20年時点では上記検証に基づく減額改定が行われず、その後、同年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が我が国の消費等の実体経済 に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況に至ったところ、厚生労働大臣は、このような平成20年以降のデフレ傾向により生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準の水準が実質的に引き上げられた)と評価することができる状況にあり、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との 不均衡はより一層顕著となっていたことから、かかる平成20年以降のデフレ傾向によって拡大した生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡を是正するためにデフレ調整を行ったものである。 なお、消費者物価指数は、平成19年から平成20年にかけて1パーセントを超える上昇をしていたが、上記のとおり、既に平成19年検証 において、生活扶助基準と一般低所得世帯との不均衡(夫婦子1人世帯において約1.1パーセント、単身 ら平成20年にかけて1パーセントを超える上昇をしていたが、上記のとおり、既に平成19年検証 において、生活扶助基準と一般低所得世帯との不均衡(夫婦子1人世帯において約1.1パーセント、単身高齢世帯において約13パーセント)が確認されていたところであり、平成20年を始点とすることによって平成19年から平成20年にかけての物価変動が反映されないこととなったとしても、これによってデフレ調整後の生活扶助基準の水準と一 般国民の消費実態との均衡を図ることができなくなると評価できるものではない。 そこで、厚生労働大臣は、このようなデフレ調整の目的を踏まえて、物価変動率の算定の始期を平成20年とした。 b 一方で、厚生労働大臣は、平成25年改定当時の最新の総務省CP Iのデータは平成23年のものであったため(平成24年1月27日公 表。乙A第42号証)、物価変動率の算定の終期を平成23年とした。 (ウ) 家計調査により算出されたウエイトを用いた理由(社会保障生計調査により算出されるウエイトを用いなかった理由)a 物価指数は、現実の消費実態を反映させるため、指数品目の価格指数に各品目のウエイト(消費の構造)を乗じて加重平均することで算定さ れるところ、総務省CPIの算定において用いられていたのが家計調査により算出されたウエイトであった。 家計調査は、総務省統計局が、国民生活における家計収支の実態を把握するために、一般国民の家計上の支出、収入、貯蓄等を調査する基幹統計の一つであり、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっている。 そして、その調査対象世帯の選定は、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等が推計できるように統計上配慮されており、このように選定された約9000世帯を対象に調査票を配布してそれ いる。 そして、その調査対象世帯の選定は、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等が推計できるように統計上配慮されており、このように選定された約9000世帯を対象に調査票を配布してそれを回収、集計することによって行われている(以上につき、乙A第81号証)。 この家計調査の結果は、一般国民の消費等の分析に広く用いられており、 総務省CPIはもとより、内閣府の「国民経済計算」、「景気動向指数」、経済産業省の「通商白書」等のほか、会社、研究所、労働組合等の民間においても広く利用されている(乙A第82号証)。 このように、統計法上の基幹統計である家計調査は、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度が高いだけではなく、家計上の支出 (詳細な品目ごとの支出額)等の把握を目的とした調査であるから、総務省CPIないし生活扶助相当CPIの算定に用いられる各品目のウエイト(品目ごとの消費支出の割合)を把握するのに最も適したデータといえる。 さらに、生活扶助基準の水準は、これまでも、一般国民の生活水準と の関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立 脚して改定が行われてきており、一般国民の消費を表す家計調査により算出された消費者物価指数のウエイトデータを用いることは、従来の改定の考え方とも整合するものである。 b 一方、厚生労働省が実施している社会保障生計調査は、被保護世帯の生活実態を明らかにし、保護基準改定等の生活保護制度の企画運営等の ために必要な基礎資料を得る目的で、被保護世帯者の家計収支の状況を調査する一般統計調査である。そして、その調査対象世帯の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市から1ないし3自治体を選定し(例えば、東北ブロックの 計収支の状況を調査する一般統計調査である。そして、その調査対象世帯の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市から1ないし3自治体を選定し(例えば、東北ブロックの青森県、岩手県、秋田市というように選定する。)、その選定された自治体から合計 約1100世帯を抽出することによって行われている。また、家計収支の状況は、被保護者の生活実態を明らかにする観点から、食料費、住居費等の支出金額、割合として集計される(以上につき、乙A第83号証)。 このような社会保障生計調査は、保護基準の改定等に用いられる統計資料ではあるものの、調査世帯の選定において地域等による偏りが生じ る可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないことなどを踏まえると、生活保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界があることは否定できない。 その上、社会保障生計調査は、生活保護受給世帯の「生活実態」を把握する調査であって、生活保護受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握 するものではないから、調査の手法としても、個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じられておらず、その調査結果を分析しても、おおまかなウエイトは把握できても、家計調査のように詳細な品目ごとのウエイトは把握できない(例えば、食料〔外食〕のウエイトは把握できても、食料〔一般外食(うどん)〕のウエイ トは把握できない。)。そのため、社会保障生計調査のウエイトを用い た場合には、消費者物価指数の詳細な品目ごとの価格データが存在するにもかかわらず、その詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想されるところである。 c なお、家計調査には、収入階層別のウエイトのデータも ータが存在するにもかかわらず、その詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想されるところである。 c なお、家計調査には、収入階層別のウエイトのデータもあるが、これについては、いくつかの品目をまとめた「類」レベルでのウエイトのデ ータのみが存在し、品目別のウエイトのデータは存在しない(乙第48号証)。そのため、家計調査の収入階層別のウエイトを用いた場合にも、消費者物価指数の詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想された。 例えば、平成23年の消費者物価指数の「類」としての「保健医療サ ービス」は、診療代、出産入院料、マッサージ料金、人間ドック受診料、予防接種料の5品目で構成されているところ、家計調査の第1・十分位のウエイトデータでは、類としての「保健医療サービス」のウエイトは把握できても、これを構成する診療代等の5品目のウエイトデータは把握できない。ここで、マッサージ料金、人間ドック受診料及び予防接種 料は生活扶助相当品目であるが、診療代及び出産入院料については、生活扶助による支出が想定されていない品目であり*6、類(保健医療サービス)が同一でも生活扶助相当品目とそうでない品目が混在している。 生活扶助相当CPIの算定においては、総務省CPIの指数品目のうち、生活扶助による支出が想定され得る品目(生活扶助による支出がおよそ 想定されない品目を除いた品目)の価格指数及びウエイトのデータを用いて、物価変動率を算定することとしたが、家計調査の第1・十分位のウエイトを用いた場合には、消費者物価指数の詳細な品目ごとのウエイトを反映した物価指数を算出することはできない。 査の第1・十分位のウエイトを用いた場合には、消費者物価指数の詳細な品目ごとのウエイトを反映した物価指数を算出することはできない。 *6 診療代は医療扶助、出産入院料は出産扶助によってそれぞれ賄われる。 d 以上のとおり、厚生労働大臣は、社会保障生計調査の結果を分析したウエイトを用いて物価変動率を算出することが可能であったとしても、家計調査の統計資料としての精度や適格性、従来の改定の考え方との整合性等を総合的に勘案し、家計調査により算出された消費者物価指数のウエイトデータを用いる判断をしたものである。 (エ) 平成22年基準のウエイト(消費の構造)を用いた理由本件保護基準改定が行われた平成25年当時、家計調査(総務省CPI)のウエイトのデータとしては、平成17年以前の基準によるものと、平成22年基準によるものが存在した。 この点、国民の消費の内容は経時的に変化することから、現実の消費実 態を反映した物価指数を算定するためには、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当と考えられた。このような観点から見ると、仮に、平成17年基準によるウエイトのデータを用いた場合には、平成17年以降の消費構造の変化が反映されず(平成20年の指数は3年間、平成23年の指数は6年間の消費構造の変 化が反映されないこととなる。)、物価変動率の算定期間における消費実態を正確に反映しないものとなることが予想された。これに対して、平成22年基準によるウエイトのデータは、物価変動率を算定する期間に接着したものであり(平成20年の指数は2年、平成23年の指数は僅か1年しか離れていない。)、現実の消費実態を反映 。これに対して、平成22年基準によるウエイトのデータは、物価変動率を算定する期間に接着したものであり(平成20年の指数は2年、平成23年の指数は僅か1年しか離れていない。)、現実の消費実態を反映したものとして相当と考え られた。 そこで、厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定するに当たり、平成22年基準によるウエイトを用いることとした。 そして、以下に述べるとおり、かかる厚生労働大臣の判断は、消費者物価指数マニュアル等の記載に照らしても適切なものといえる。 a 物価指数の算定時点とウエイト参照時点とは、できるだけ近接させる ことが望ましいといえること我が国を含む多くの国では、消費者物価指数を算出する際、ウエイトを指数算出の対象期間の期首に設定するラスパイレス指数を用いているが、これは、直近時点の取引ウエイトを知ることが困難であるとの実務上の理由によるものにすぎず(乙A第26号証3ページの注釈4)、 消費者物価指数を算出するための指数としてラスパイレス指数のみが正しく、他の指数が誤っていることを意味するものではない。このことは、消費者物価指数の選択に関し、消費者物価指数マニュアルにおいて、「過去2世紀にわたり、多くの様々な種類の数学的算式が提案されてきた。あらゆる状況に向いている算式は1つもないのかも知れない。」な どと説明されていることからも明らかである(甲A第123号証〔1.13〕3ページ)。 また、総務省CPI等では、ウエイトは、家計調査の結果を踏まえて5年ごとに改定されており、5年間は同じウエイトを用い続けているが、これは、「ウェイトの更新は、特に、世帯支出調査を新たに実施しなけ ればならないとしたら、時間が掛かるし費用も高くなる。」ことから、「時間と費用 おり、5年間は同じウエイトを用い続けているが、これは、「ウェイトの更新は、特に、世帯支出調査を新たに実施しなけ ればならないとしたら、時間が掛かるし費用も高くなる。」ことから、「時間と費用の双方の節約」という「実際上の長所」によるものと認められるから(同号証〔9.79〕291ページ)、5年間同じウエイトを用い続けなければ消費者物価指数の算出方法として合理性を欠くわけでもない。 むしろ、消費者物価指数マニュアルにおいて、「現在の消費パターンにできるだけ近づけるため」に「各年の初めにウェイトを更新する国もある。」とされていることに照らすと(同ページ)、「現在の消費パターンにできるだけ近づける」ためには、なるべく直近のウエイトを用いる方が望ましいと考えられる。また、「価格参照時点より早い時点で得られた数量を使うロウ指数は、ラ スパイレスを上回り勝ちであり、その程度はウェイト参照時点が時間的に早く 戻れば戻るほど、大きくなる。」*7、「どんな買い物かご指数でも、関係する時点が時間的に過去に戻れば戻るほど、数量はますます時代遅れになり、適切さを欠くことになるのは避けられない。引き起こされるバイアスを最小にするために、ウェイトはできる限り頻繁に更新されるべきである。」(同号証〔9.90〕294ページ)と説明されていることからも、ウエイト参照時点を物価指 数の算定時点にできるだけ近接させることが望ましいといえる。 このように、物価指数の算定時点にできるだけ近接した時点のウエイトのデータを用いることが望ましいといえる*8。 b 平成22年をウエイト参照時点とする生活扶助相当CPIの方法は、消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」として紹介されている方法である ことまた、生活扶助相当CPIは、平成2 b 平成22年をウエイト参照時点とする生活扶助相当CPIの方法は、消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」として紹介されている方法である ことまた、生活扶助相当CPIは、平成22年をウエイト参照時点として平成20年及び平成23年の物価指数を算出しているところ、このように対象期間の間の任意の時点でウエイトを採る方法は、消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」と紹介される方法である(乙A第67号証〔15.49〕459及び460ペ ージ)。そして、このような中間年指数は、「パーシェ指数とラスパイレス指数 *7 原告らが主張するような、「平成20年から平成22年までの変化率を、平成17年基準の品目(分類)別の価格指数とウェイトにもとづいて算出した指数」(原告ら第39準備書面8ページ)を用いて算出する方法(古賀意見書(甲A第205号証)7及び8ページ)は、これに該当するといえる。 *8 なお、古賀意見書(甲A第205号証)においても、ウエイトデータの基準年の選択に関する被告の説明について、「確かに、生活扶助相当CPIは、平成20年の物価指数の算出に平成22年のウェイトを利用したので、消費構造の乖離は2年分となる。一方、通常の方法では、これに平成17年のウェイトを利用するので消費構造の乖離は3年分となり、1年分ではあるが長くなる。」(同号証5ページ)と述べられており、上記説明自体が不合理であるとはされていない。 のほぼ中間に来るロウ指数が得られ」、「それは0月とt月の間の理想的な目標指数に非常に近い」と説明される算定方式である(乙A第85号証〔15.51〕460及び461ページ)。 なお、宇南山意見書においても、「生活 ロウ指数が得られ」、「それは0月とt月の間の理想的な目標指数に非常に近い」と説明される算定方式である(乙A第85号証〔15.51〕460及び461ページ)。 なお、宇南山意見書においても、「生活扶助相当CPIは、平成20年を0時点、平成23年をt時点、平成22年をウエイト参照時点とした「ロウ指数」 そのものである。言い換えれば、生活扶助相当CPIに使われている指数算式は「CPIマニュアル」に掲載されている指数算式である。」(乙第86号証4ページ)と述べられている。 (オ) 特定の品目について他の品目と異なる取扱いをすることの可否について a 多数ある指数品目のうち教養娯楽費等の特定の品目に限って他の品目と異なる取扱いをする必要性及び合理性を的確に説明することは必ずしも容易でないこと生活扶助相当CPIの設定に係る厚生労働大臣の判断過程は以上のとおりであるが、ここで、仮に、多数ある指数品目のうちある特定の品 目(例えば、教養娯楽費)に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整するのであれば、その必要性や合理性について統計等の根拠に基づいて的確に説明することが厚生労働大臣には求められたといえる。 しかるに、生活扶助相当CPIで用いられた家計調査のウエイトのデ ータ(乙A第25号証40ページ以下)と社会保障生計調査に基づくウエイトのデータ(乙A第113号証)を比較すると、両者のウエイトの違いは特定の品目(例えば、教養娯楽費)に限られるものではなく、その違いの程度も一様ではない。 また、厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意 識に関する調査」によれば、例えば、生活保護受給世帯のパソコンの普及 率は約4割、ビデオレコーダーは約7割、電子レンジや洗濯機は約9割、 平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意 識に関する調査」によれば、例えば、生活保護受給世帯のパソコンの普及 率は約4割、ビデオレコーダーは約7割、電子レンジや洗濯機は約9割、カラーテレビや冷蔵庫はほぼ10割となっている(乙A第36号証)。これらの事情に照らせば、生活保護受給世帯においても、テレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財は一般世帯と同様に普及しているということができ、生活保護受給世帯において教養娯楽用耐久財を生活扶助で購入するこ とも十分予想されるところ、生活保護費のうちどの程度をテレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財に充てるかは当該世帯ごとの個別の事情によるものであって、この点は教養娯楽用耐久財以外の生活扶助相当品目と変わりがない。 このように、仮に、多数ある指数品目のうち特定の品目(例えば、教養 娯楽費)に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整することを検討したとしても、その必要性や合理性について統計等の根拠に基づいて的確に説明することは必ずしも容易ではなかったといえる。 b 生活扶助基準の改定に当たっては、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、国民に対する説明可能性(説明の分かり易さという 意味での簡便さ)も考慮要素となり得ることなお、念のため付言すると、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIの設定に当たり、これによって平成20年以降の生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度をより正確に把握することを一つの重要な考慮要素として斟酌しているものの、考慮すべき要素は それに限られるわけではなく、前記(ア)及びaのとおり、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、生活保護受給世帯を含む国民に対する説明可能性(説明の分かり易さと の、考慮すべき要素は それに限られるわけではなく、前記(ア)及びaのとおり、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、生活保護受給世帯を含む国民に対する説明可能性(説明の分かり易さという意味での簡便さ)も考慮したものである。 すなわち、平成20年以降における生活保護受給世帯における可処分 所得の相対的、実質的な増加の程度を統計等の資料によって正確に把握 するとしても、そこにはおのずから限界がある。例えば、本件保護基準改定が行われた平成25年の時点においては、平成24年以降の総務省CPIが公表されていなかったから、平成23年から平成25年までの物価変動率(可処分所得の相対的、実質的な増加の程度)を算定することはできない。また、ウエイトのデータの選択についていえば、前記の とおり家計調査のウエイトのデータや社会保障生計調査が存したものの、生活保護受給世帯又は一般低所得世帯における詳細な品目ごとのウエイトを把握できるデータは存しない。さらに、家計調査のウエイトのデータについても、平成20年基準及び平成23年基準のデータは存しないから、近接する他の年のウエイトのデータを用いるほかなく、また、 バイアスが生ずることも避けられない。このように、統計等の資料を用いるとしても、平成20年以降の生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を正確に把握するには限界がある。 そして、基準部会による検証結果が保護基準の改定における考慮要素にとどまるのと同様、生活扶助相当CPIの変動率も、本件保護基準改 定における考慮要素の一つにすぎない。すなわち、厚生労働大臣は、デフレ調整を行うに当たり、生活扶助相当CPIの変動率(マイナス4. 78パーセント)を前提に、これが生活保護受給世帯と一般国民との不 定における考慮要素の一つにすぎない。すなわち、厚生労働大臣は、デフレ調整を行うに当たり、生活扶助相当CPIの変動率(マイナス4. 78パーセント)を前提に、これが生活保護受給世帯と一般国民との不均衡を是正するのに相当なものかという観点からの検討を行っており(後記(キ)参照)、さらに、本件保護基準改定における激変緩和措置と して、ゆがみ調整において平成25年検証の結果を生活扶助基準に反映させる比率を一律2分の1とした上で(2分の1処理)、ゆがみ調整とデフレ調整を併せた本件保護基準改定による減額幅の上限を10パーセントとしており、最終的には、このような激変緩和措置後の生活扶助基準額をもって法3条、8条2項にいう「最低限度の生活」を下回るも のではないとの判断をしたものである。 他方、基準部会の行う評価及び検証が、その時点における保護基準について専門技術的な見地から客観的に評価するものであり、そこに政策的な判断は介在しないのに対し、生活扶助相当CPIの設定は、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加により生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るた め、同年以降の物価変動を生活扶助基準に反映させる改定(デフレ調整)を行うという政策的判断があり、かかる判断に基づいて策定されるものである。そのため、生活扶助相当CPIの設定に当たっては、厚生労働大臣の合目的的な裁量が認められるというべきである。 そうすると、生活扶助相当CPIの設定に当たっては、これにより算 出される物価下落率の正確性が重要な考慮要素の一つであるものの、唯一絶対のものとはいえない。恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、国民に対する説明可能性(説明の分かり易さという意味での簡便さ)も考慮要 落率の正確性が重要な考慮要素の一つであるものの、唯一絶対のものとはいえない。恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、国民に対する説明可能性(説明の分かり易さという意味での簡便さ)も考慮要素となり得るものである。この点、平成15年中間取りまとめにおいても、改定の指標の在り方について「国民にとってわか りやすいものとすることが必要」とされており(乙A第13号証2ページ)、また、平成25年報告書においても、「生活扶助基準の見直しを検討する際には(中略)他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい」とされているところである(乙A第6号証8ページ)。 (カ) 具体的な物価下落率(4.78パーセント)の算定過程以上のとおり、厚生労働大臣は、総務省CPIのデータ(生活扶助による支出が想定され得る品目の平成20年と平成23年の各価格指数のデータ及び平成22年基準によるウエイトのデータ)を用いて、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定することとした。その具体的な算定過程は、 以下のとおりである。 まず、総務省統計局のホームページで公表されている平成22年基準消費者物価指数に係る年報の「第7表-1 品目別価格指数(全国)」から、生活扶助による支出が想定され得る平成20年及び平成23年の各品目の価格指数及び平成22年基準によるウエイト(乙A第27号証の黄色塗りした箇所)を抜き出し、表にまとめる(まとめた表が乙A第28号証である。)。 次に、同号証の表中の「②CPI」欄に記載されている各品目別の価格指数に、「ウエイト」欄記載のウエイトの値を乗じる(それが同号証の「①×②」欄の数値である。)。 さらに、「①×②」欄の数値を合計する(その結果が、同 の「②CPI」欄に記載されている各品目別の価格指数に、「ウエイト」欄記載のウエイトの値を乗じる(それが同号証の「①×②」欄の数値である。)。 さらに、「①×②」欄の数値を合計する(その結果が、同号証18ページの欄外の水色塗りした箇所に記載した数値(平成20年が「64662 7.9」、平成23年が「635973.1」)である。)。 これらの数値を、生活扶助相当品目のウエイトの合計である6189(平成20年)及び6393(平成23年)でそれぞれ除する。 そうすると、以下の計算式のとおり、平成20年の生活扶助相当CPIは「104.5」、平成23年の生活扶助CPIは「99.5」となる。 平成20年:646627.9÷6189=104.5平成23年:635973.1÷6393=99.5そして、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率は、次の計算式のとおり、マイナス4.78パーセントと算定される。 {(99.5-104.5)÷104.5}×100=-4.78% (キ) 平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率(マイナス4.78パーセント)は、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)により生じた同世帯と一般国民との不均衡を是正するのに相当なものと評価した理由 厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動 率をマイナス4.78パーセントと算定したことについて、前記(カ)のとおり、その算定過程が適切であり、平成20年以降の物価変動による生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)の程度を表していると判断した。そして、厚生労働大臣は、前記 過程が適切であり、平成20年以降の物価変動による生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)の程度を表していると判断した。そして、厚生労働大臣は、前記アのとおり、既に平成19年検証において生活扶助基準額と一般低所得世 帯の消費実態との不均衡(夫婦子1人世帯において約1.1パーセント、単身高齢世帯において約13.3パーセント)が確認されていたことに加え、平成20年以降の物価下落が同年9月のリーマンショックに端を発する百年に一度とも評される世界金融危機による実体経済への影響を反映したものであり、物価のみならず、賃金や消費等の経済指標も大きく下落している こと(一般勤労世帯の賃金は平成21年に3.9パーセントの減少となり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じ、家計消費支出も平成21年から平成23年まで3年連続でマイナスとなった。)などに照らして、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)による同世帯と一般国 民との間の不均衡を是正する改定をするに当たっては、その改定率を、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率と同じマイナス4.78パーセントとするのが相当と判断した。 エデフレ調整について、基準部会等の専門機関に意見を求めなかった理由なお、厚生労働大臣が、デフレ調整を行うに当たり、基準部会等の専門機 関に意見を求めなかった理由は次のとおりである。 (ア) 平成25年検証において生活扶助基準の「水準」についての検証が行われなかったこと前記イ(ア)a(22ページ以下)のとおり、基準部会において、平成24年11月までは、消費(平成21年全消調査)に基づく生活扶助基準の「水 生活扶助基準の「水準」についての検証が行われなかったこと前記イ(ア)a(22ページ以下)のとおり、基準部会において、平成24年11月までは、消費(平成21年全消調査)に基づく生活扶助基準の「水準」に ついても検証を行うことが検討されており、厚生労働大臣としては、このよう な基準部会による検証結果に基づいて生活扶助基準の「水準」を改定することも想定していたところであるが、結果的に、基準部会において生活扶助基準の「水準」については検証が行われなかった。 (イ) 厚生労働大臣は生活保護基準改定に係る専門技術的知見を有していること 前記(ア)のとおり、平成25年検証においては生活扶助基準の「水準」についての検証が行われず、基準部会による検証結果を踏まえて生活扶助基準の「水準」を改定することは事実上断念せざるを得なかった。しかしながら、前記アのとおり一般国民の生活水準が大きく低下していた状況を踏まえるならば、平成25年改定において、何らかの経済指標を用いて生 活扶助基準の「水準」の調整を図る必要があることは明らかであった。そして、厚生労働大臣が、本件保護基準改定を行うに当たり、消費ではなく、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(物価変動)に着目して生活扶助基準の「水準」を改定することとした理由は前記イ(21ページ以下)で述べたとおりである。 ここで、厚生労働省は、法を所管しており(厚生労働省設置法4条1項)、厚生労働大臣はその長として(同法2条2項)、生活保護行政(同法4条1項82号)の責任者たる立場にあり、各種の統計調査や現場において生活保護行政を担う地方自治体からの情報収集等を通じて生活保護受給世帯の生活実態を把握するとともに、専門機関から累次にわたり保護基準に 関する分析及 る立場にあり、各種の統計調査や現場において生活保護行政を担う地方自治体からの情報収集等を通じて生活保護受給世帯の生活実態を把握するとともに、専門機関から累次にわたり保護基準に 関する分析及び検証の結果を聴取するなどしている。このように、厚生労働大臣には、生活保護行政の責任者として必要となる専門技術的知見を有しており、保護基準の改定に係る同大臣の判断は、このようにして蓄積されてきた専門技術的知見を踏まえた考察に基づくものである。デフレ調整を行うこととした厚生労働大臣の判断もまた、同大臣の専門技術的知見を 踏まえた考察に基づくものであった。 (ウ) デフレ調整の内容はそれまでの生活扶助基準の改定の基本的な考え方や専門機関による検証の考え方と齟齬するものではなかったことまた、デフレ調整は、平成20年以降の社会経済情勢や一般低所得世帯(第1・十分位)の消費の実態を前提として行われたものであって、殊に、平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が我が国 の実体経済に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落するなど、一般国民の生活水準が大きく低下していた状況を踏まえるならば、何らかの経済指標を用いて生活扶助基準の「水準」の調整を図る必要があることは明らかであった。 ここで、これまでの生活扶助基準の改定は、一貫して、生活保護におい て保障されるべき最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚して行われてきたところ、デフレ調整もこのような考え方に基づくものである。他方、昭和59年度以降、水準均衡方式の下において消費の動向を用いた毎年度の改定が行われてきた実情があったものの、専門委員会による平成15年 中間取りまとめ のような考え方に基づくものである。他方、昭和59年度以降、水準均衡方式の下において消費の動向を用いた毎年度の改定が行われてきた実情があったものの、専門委員会による平成15年 中間取りまとめにおいて、最近の経済情勢を踏まえた場合に、生活保護受給世帯への影響という観点から消費を用いることについての課題や改定の在り方について検討する必要性が示されており、改定の指標として物価を用いることも選択肢の一つとして指摘されていたところであった。 また、被保護者の需要の有無及び程度を判断する手法として、一般低所 得者が支出する品目のうち、生活扶助相当品目だけを用いるという手法は、従前から行われており、かつ、専門家においても是認していたものである。 すなわち、老齢加算の廃止を提言した専門委員会は、「生活扶助相当消費支出額」に基づき被保護者の需要の有無等について検討しているところ、「生活扶助相当消費支出額」とは、一般低所得者層の消費支出全体から、 生活扶助による支出がおよそ想定されない品目を除くことによって算出 したものである(岡田最高裁調査官解説269及び270ページ参照)。 以上のとおり、デフレ調整の内容はそれまでの生活扶助基準の改定に当たっての基本的な考え方や専門機関による検証の考え方と齟齬するものではなかった。 (エ) 社会保障制度改革推進法の附則により、生活扶助基準について必要な見 直しを早急に行うことが求められていたことさらに、平成24年6月、社会保障制度改革推進法案が、自民党、公明党及び民主党の三党の合意に基づき国会に提出され、平成24年8月に同法(平成24年法律第64号)が成立したところ、その附則2条1号には、政府は、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている 世帯に属する者の就労 会に提出され、平成24年8月に同法(平成24年法律第64号)が成立したところ、その附則2条1号には、政府は、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている 世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と明記されており(乙A第6号証2ページ)、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが厚生労働大臣には求められていた。生活保護については予算措置を伴うことから、保護基準の改定内容を平成25年度予算案に盛り込むための時間的制約もあった*9。 (オ) 基準部会等の専門機関に意見を求めなければ保護基準の改定が行えないものではないこと他方で、保護基準の改定は、厚生労働大臣の広範な裁量権に基づく政策判断に委ねられており、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり、基準部会等の専門機関に諮問し又はその意見を求めることなどを定める法 令上の規定はなく、法及び関連法規には、保護基準の改定に当たり専門機関からの意見聴取が必要である旨の規定は見当たらない。そのため、そもそも、基準部会等の専門機関に意見を求めなければ保護基準の改定が行え *9 各年度の政府予算案は、通常、前年12月に閣議決定され、翌年1月の通常国会に提出される。平成25年度予算案は、平成25年1月29日に閣議決定され、国会審議を経て、同年5月15日に成立した。平成25年告示がされたのはその翌日(同月16日)である。 ないものではなかった。 (カ) 厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等について意見を述べることは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではないことさらに、基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会に置か ) 厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等について意見を述べることは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではないことさらに、基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会に置かれる常設の部会であるが(厚生労働省設置法7条、社会保障審議会令 6条1項)、その設置の趣旨及び審議事項は、「生活保護基準の定期的な評価・検証」である(乙A第21号証)。すなわち、基準部会の設置の趣旨及び審議事項は、飽くまで、現在の生活扶助基準の定期的な評価及び検証であって、厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等について審議検討することは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではなかった。 また、基準部会の委員は飽くまでも保護基準の評価・検証のために選任された各種学問分野の専門家であって、基準部会は、個々の専門的知見を活用した多角的視点に基づいた各種分析方法の提案、情報収集、分析や提言を行うことはできても、経済的・社会的条件を通じた政策的判断をすることは基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではない。つまり、基準部会は、 厚生労働大臣の判断における考慮要素の一つとして、専門的知見を集約して得られた事実の説明やその事実に係る分析、評価に関する意見を提供することが求められるものの、それを踏まえた政策的判断を求められているものではない。 この点については、平成24年10月5日の第10回基準部会において、 駒村部会長の「この部会の役割というのは検証するということでございますので、それをどう反映させるかというのは政策判断であろうと思います」との発言に端的に表れている(乙A第22号証13ページ)。また、平成25年1月16日の第12回基準部会において、山田委員が、「この後にこの報告書(引用者注:平成25年報告書の意。)を考慮してい す」との発言に端的に表れている(乙A第22号証13ページ)。また、平成25年1月16日の第12回基準部会において、山田委員が、「この後にこの報告書(引用者注:平成25年報告書の意。)を考慮していただきな がら具体的な政策のプロセスに入っていくと思うのですけれども」との発 言も同趣旨と理解できる(乙A第24号証30ページ)。 そのため、仮にデフレ調整の当否等について専門家からの意見を聴取しようとすれば、いかなる専門家に対して意見を求めるか(専門家個人にするか合議性の専門機関にするか、仮に合議性の専門機関にするとした場合に基準部会にするか新たな機関を立ち上げるかなどを含む。)についての 検討が必要となり、専門家による検討に必要な期間も併せれば、専門家からの意見聴取には相当の期間を要することが見込まれたといえる。 (キ) まとめ以上のとおり、平成19年検証結果及び同検証以降の社会経済情勢等に照らし生活扶助基準の「水準」を改定する必要性が認められたものの、平成25年 検証においては生活扶助基準の「水準」についての検証が行われず、基準部会による検証結果を踏まえた生活扶助基準の「水準」の改定は事実上断念せざるを得なかった。そこで、厚生労働大臣は、自らの専門技術的知見を踏まえてデフレ調整を行うという判断をしたものであるところ、このデフレ調整の内容は、生活扶助基準の改定に当たっての基本的な考え方に立脚したものであり、また、 それまでの専門機関による検証の考え方と齟齬するものでもない。そして、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法の附則において、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが厚生労働大臣には求められていたところ、もとより保護基準の改定に当たり専門機関から意見聴取を求める旨の法令上の規定 障制度改革推進法の附則において、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが厚生労働大臣には求められていたところ、もとより保護基準の改定に当たり専門機関から意見聴取を求める旨の法令上の規定はない上、厚生労働大臣が行おうとするデフレ調整の当否等に ついて審議検討することは基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではなかった(仮に専門家から意見を聴取しようとすれば、相当の期間を要することが見込まれたといえる。)。 厚生労働大臣は、以上のような事実関係等に照らし、デフレ調整について基準部会等の専門機関に意見を求めなかったものである。 オ本件保護基準改定におけるデフレ調整の実施 以上のとおり、厚生労働大臣は、平成20年以降の物価を用いて生活扶助基準の「水準」の適正化を図ることとし、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率(マイナス4.78パーセント)を算定の上、当該数値相当分を減額することが平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)によ る同世帯と一般国民との間の不均衡を是正するのに相当であると評価・判断して、本件保護基準改定におけるデフレ調整(生活扶助基準の「水準」の見直し)を行うに至ったものである。 3 激変緩和措置の概要及び厚生労働大臣がその判断に至る経緯(1) 本件保護基準改定における激変緩和措置の概要 本件保護基準改定における激変緩和措置の概要は、①子どもがいる世帯に配慮して貧困の世代間連鎖を防ぐなどの観点を実現しつつ、「生活扶助基準の展開部分の適正化」というゆがみ調整の本質的部分を改変しないようにするため、平成25年検証の結果を反映する程度を一律2分の1とするとともに(2分の1処理)、②ゆがみ調整とデフレ調整 「生活扶助基準の展開部分の適正化」というゆがみ調整の本質的部分を改変しないようにするため、平成25年検証の結果を反映する程度を一律2分の1とするとともに(2分の1処理)、②ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによって大幅な減額とな る世帯に配慮する観点から、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによる減額幅の上限を10パーセントとした上で、③その結果の反映を3年にわたる期間で段階的に実施するというものである。 (2) 厚生労働大臣が2分の1処理を講じた経緯前記(1)①の2分の1処理についてふえんすると、平成25年検証は、生活 扶助基準の「展開のための指数」について初めて詳細な分析を行ったところ、その手法は、専門的議論の結果得られた透明性の高い合理的なものであると評価することができるものの、当該手法が唯一のものであるということはできないし、特定のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた(乙A第6号証9ページ)。 現に、生活扶助基準については、専門機関による検証が定期的に行われてお り、展開部分についても、平成25年検証の結果等を前提に更なる検証が行われることが予定されていた。 また、平成25年検証は、前記1(1)(1及び2ページ)のとおり、年齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」について検証を行ったものであるところ、その影響は、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せに よって様々であると見込まれた。しかも、平成25年報告書に記載されたとおり、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合、子どものいる世帯では、夫婦子1人世帯(子は18歳未満) 8.5パーセント夫婦子2人世帯(子は18歳未満) 14.2パーセント母子 たとおり、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合、子どものいる世帯では、夫婦子1人世帯(子は18歳未満) 8.5パーセント夫婦子2人世帯(子は18歳未満) 14.2パーセント母子世帯(18歳未満の子1人) 5.2パーセント との減額率となることから、子どものいる世帯への影響が大きくなることが予想された(乙A第6号証7及び8ページ)。この点、平成25年報告書には、平成25年検証の結果に関する留意事項として、「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には(中略)とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」と明記されてお り(同号証9及び10ページ)、平成25年検証自体が上記の観点から激変緩和措置を講じることを予定していたということができる。 以上を踏まえつつ、「生活扶助基準の展開部分の適正化」というゆがみ調整の本質的部分を改変しないようにするため、本件保護基準改定におけるゆがみ調整においては、次回の検証までの激変緩和措置として、平成25年検 証の結果を反映する比率が一律2分の1とされた。 以上

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