昭和23(れ)374 賍物故買

裁判年月日・裁判所
昭和24年1月12日 最高裁判所大法廷 判決 破棄差戻 仙台高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      本件を仙台高等裁判所に差し戻す。          理    由  弁護人倉田雅充の上告趣意第一、二点について。  旧刑訴第四六条、第三七九条によ

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判決文本文6,105 文字)

主文原判決を破棄する。 本件を仙台高等裁判所に差し戻す。 理由弁護人倉田雅充の上告趣意第一、二点について。 旧刑訴第四六条、第三七九条によれば、原審における弁護人は、被告人のため独立して上訴を為すことを得るものである。そして、その立法趣旨は主として原審の審理に干与した弁護人は、その審理に基く判決に対し上訴すべきか否かを独立して決定するに適するものと認めたからである。それ故原審の弁護人でない者若しくは判決宣告後において被告人の選任した弁護人は、たとい、被告人の明示した意思に反しなくとも、独立しては、上訴を為すことを得ないものと解しなければならない。 しかし、憲法第三四条第三七条等によれば、被告人は、自己の権利を擁護するため、弁護人に依頼する権利を憲法上確認保障されたのであるから、刑訴応急措置法第二条の規定により刑事訴訟法上上訴をするためにも資格を有する弁護人に依頼することができるものと解釈しなければならない。そして被告人は特に上訴をする依頼を為す旨明示せざるも、自ら上訴を為さずして上訴審における弁護を弁護士たる弁護人に依頼したときは上訴をすることをも依頼したものと見るを相当とするから、かゝる場合その弁護人は被告人を代理して被告人のため上訴をすることができるものといわねばならぬ。その際被告人の代理たる旨を明示することは必ずしも必要とするものではなく、要は、弁護届、上訴状等一件書類によりその趣旨を看取し得るを以て足るものといわねばならぬ。されば被告人を代理して上訴をすることを許さない趣旨の従前の大審院判例は、これを変更する要ありと認める。 さて、本件においては被告人は自ら上訴を為すことなく弁護士平井三郎に控訴審における弁護を依頼する旨の弁護届を同弁護士と連署して第一審裁判所に提出し、 前の大審院判例は、これを変更する要ありと認める。 さて、本件においては被告人は自ら上訴を為すことなく弁護士平井三郎に控訴審における弁護を依頼する旨の弁護届を同弁護士と連署して第一審裁判所に提出し、- 1 -同時に、同弁護士において第一審判決に控訴する旨の控訴状を同裁判所に提出したものであるから、同弁護士の控訴状は、被告人を代理して、被告人のために控訴の申立をしたことを窺い知ることができる。それ故前述の理由により本件控訴は適法に申立てられたものといわねばならぬ。然るに原判決は右控訴申立を不適法として棄却したのであるから、失当であつて本件上告は、その理由がある。 判決理由に関する裁判官真野毅の少数意見は、次のとおりである。 憲法は、国民の基本的人権を保障すると共に、その直接の擁護者として弁護人の地位職責の重要性を認め、数個の規定をさえ置いている。そして、国家は、つとに法律及び法律実務に通ずる一定資格を有する者を弁護士として公認し、被告人弁護の任に当らしめる制度を設けている。これによつて、一つには被告人の基本的人権を適正に擁護し、また一つには社会的正義を妥当に実現することを目的としたものである。すなわち弁護士は、裁判官、検察官と共に司法の一環として欠くことのできない必要な機関であることは、今更強調するまでもないところである。その間弁護士は、全官、全公の地位にあるのではないが、半官半民、半公半私の特殊な立場にあるだけである。そこで、刑事訴訟の分野における弁護士の行為について考えて見ると(この点については、従来の考え方に再検討を要すべきものが多々ある)、これを二種類に大別することができる。すなわち、弁護士が弁護機関として行動する訴訟行為と被告人の代理人として行動する訴訟行為との区別である。そして、前者は、さらに、被告人の意思に反しても独立し )、これを二種類に大別することができる。すなわち、弁護士が弁護機関として行動する訴訟行為と被告人の代理人として行動する訴訟行為との区別である。そして、前者は、さらに、被告人の意思に反しても独立してなし得る訴訟行為と、被告人の明示した意思に反してはなし得ない訴訟行為とに分類することができる。 (一) 旧刑訴第四六条(新刑訴第四一条)は、「弁護人は、別段の規定ある場合に限り、独立して訴訟行為を為すことを得」る旨を定めている。例えば、訴訟に関する書類及び証拠物の閲覧、訴訟に関する書類の謄写(旧第四四条)、押収、捜索、検証、鑑定の立会(第一五八条、第一七八条、第二二七条)、公判期日前の被- 2 -告人尋問の立会(第三二三条)、公判期日前裁判所が証拠物若しくは証拠書類の提出を命じ又は証人、鑑定人、通事若しくは飜訳人に対し召喚状を発する処分の請求(第三二四条)、公判期日前証拠物又は証拠書類の提出(第三二五条)、公判期日前の証人尋問の立会(第三二六条)、被告人、証人、鑑定人、通事又は飜訳人の尋問(第三三八条)、裁判長の処分に対する異議申立(第三四八条)、証拠調終了後における意見の陳述(第三四九条)のごときがそれに該当する。これらは、何れも弁護士が、冒頭に述べた弁護機関として行動する固有な訴訟行為であり且つ旧刑訴第四六条によつて特に独立してなし得る訴訟行為とされたものである。ここに独立という意義は、被告人との関係において被告人の意思に従属せず、これから独立しているということである。これ以外に、独立の意義を解することは、恐らく何人にもできないであろう。弁護士は、弁護機関たる地位職責から、被告人の意思に独立して、すなわち被告人の明示の意思に反しても、これらの訴訟行為をなすことができるのである。これは、言わば弁護士の独立的固有権として認められたものであ 士は、弁護機関たる地位職責から、被告人の意思に独立して、すなわち被告人の明示の意思に反しても、これらの訴訟行為をなすことができるのである。これは、言わば弁護士の独立的固有権として認められたものである。 (二) つぎに、以上の外弁護士は、弁護機関たる地位職責から弁護権の行使に必要な限度においては、被告人の特別の委任を要せずして、固有な権利として各種の訴訟行為をなし得るが、しかも他面弁護士は、被告人個人の基本的人権の擁護を使命とする立場にある関係上、被告人の明示した意思に反してはなし得ない一群の訴訟行為がある。これは、言わば弁護士の非独立的固有権ともいうべきものである。 弁護士が、弁護機関として弁護のためになすべき訴訟行為は、それが前述の独立的固有権又は後述の委任代理権に属しない限り、原則としてこの非独立的固有権に属する。これは、まさに冒頭陳述の弁護士の地位職責から当然に由来するところであつて、独立固有権のごとく個々の法律規定を必要とするものではない。この範囲において、弁護士の訴訟行為は、固有権に基いてなされるのであつて、被告人の訴訟代理人としてなされるのではない。 - 3 -旧刑訴第二五条(新刑訴第二一条)は、「弁護人は、被告人の為、忌避の申立を為すことを得。但し、被告人の明示したる意思に反することを得ず」と定めているが、これはかかる規定がなくとも当然弁護人の非独立的固有権として認められるべきものを、ただ念のために明定したに過ぎないものと解するを相当とする。次に、本件で問題となつている旧刑訴第三七九条(新刑訴第三五五条、第三五六条)は、「原審における……弁護人は、被告人の為、上訴を為すことを得但し被告人の明示した意思に反することを得ず」と定めている。この規定もまた前者と同様に、弁護人の当然有する非独立的固有権を、念のため明定したものと における……弁護人は、被告人の為、上訴を為すことを得但し被告人の明示した意思に反することを得ず」と定めている。この規定もまた前者と同様に、弁護人の当然有する非独立的固有権を、念のため明定したものと一見思われるけれども、この規定は、いささか異つた意義をもつていることに注意しなければならぬ。 すなわち、これは弁護人の非独立的固有権に関する規定ではなくして、原審における弁護人の特別な権能(非独立的)を創設した規定である。その趣旨は、原審における弁護人は、原審において既に弁護の任務を終了したものではあるが、自己の担当した被告事件の全貌をよく知悉していると認められる関係上、又弁護士の職責は、一面社会正義の実現を使命とする立場を有するから、これに一応上訴をするが適当であるか否かの判断をなさしめ、これを適当と認める場合には被告人のために上訴をなし得る途を開いたものである。と同時に、他面弁護士は被告人個人の基本的人権の擁護を使命とする立場にある関係上、被告人の明示した意思に反して上訴はできないとしたものと解すべきである。 かかる明文規定を待たずして、弁護士は、原則として弁護のために必要な諸種の訴訟行為を、非独立的固有権の行使としてなすことができる。その主なるものは、控訴、上告、抗告、再抗告、再審、保釈、勾留の執行停止の各申立のごときがよい適例であろう。 (三) さらに、弁護士は、固有の権利としてではなく、特に被告人の委任に基き訴訟代理人として訴訟行為をなす場合がある。これは、刑事訴訟においてはその- 4 -事例が甚だ少いのであるが、主として被告人の財産権に関する訴訟行為が、これに該当する。例えば、押収品又は保釈金の還付請求のごときものがそれである。一般に普通の刑事訴訟の弁護に関する訴訟行為は、明文規定の有無を問わずすべて、弁護士が固有の権利とし に関する訴訟行為が、これに該当する。例えば、押収品又は保釈金の還付請求のごときものがそれである。一般に普通の刑事訴訟の弁護に関する訴訟行為は、明文規定の有無を問わずすべて、弁護士が固有の権利として行動するものであつて、被告人の訴訟代理人として行動するものではないと言わなければならぬ。 さて、原審は、「被告人の為上訴を為し得る弁護人は、訴訟が原審に繋属していた当時において弁護人であつた者に限られるものである」ことを前提とし、本件で控訴をした弁護人は第一審判決言渡の翌日弁護人に選任せられたもので、旧刑訴第三七九条にいわゆる原審における弁護人に該当しないから、控訴の申立は法律上の方式に違反するものであるとした。成程、右弁護人が原審における弁護人に該当しないことは、判示の言うとおりである。しかしながら、控訴審の弁護人として依頼を受けた弁護士は、その地位職責から言つて固有の権利として被告人のために控訴の申立をすることができるのは上述したとおりである。すでに、旧刑訴第三七九条は、その任務を終つた原審における弁護人でさえ、被告人の明示した意思に反しない限りは、被告人のために上訴をすることができる旨を規定している。ましてや、被告人の積極的に明示した意思によつて、上訴審における弁護を依頼されたその弁護士自身は、一層強い理由をもつて、被告人のために上訴をすることができるものと言わなければならぬ。そして、これが国家の認めた弁護士制度並びに憲法が弁護士に荷わしめた重い職責に最もよく合致した解釈であると信ずる。この点において上告趣意は、結局理由あるものと認められるから、原判決を破棄し差戻すを相当とする。 多数意見は、「旧刑訴第四六条、第三七九条によれば、原審における弁護人は、被告人のため独立して上訴をなすことを得るものである」と説いている。しかし、旧刑訴 ら、原判決を破棄し差戻すを相当とする。 多数意見は、「旧刑訴第四六条、第三七九条によれば、原審における弁護人は、被告人のため独立して上訴をなすことを得るものである」と説いている。しかし、旧刑訴第三七九条によれば、原審における弁護人は、被告人の明示した意思に反し- 5 -ては上訴をなすことができない。それ故、その上訴は、被告人の意思に従属すべきものであつて、これを独立した上訴ということができないことは明白である。これは、上述のごとく一見弁護士の非独立的固有権による上訴と誤解され易いところがあるが、その実質は特に原審の弁護人に創設的に与えられた権能(非独立的)であるに過ぎない。つぎに、多数意見は、「上訴審における弁護を弁護士たる弁護人に依頼したときは、上訴をすることをも依頼したものと見るを相当とするから、かかる場合その弁護人は被告人を代理して被告人のため上訴をすることができる」と説いている。しかし、刑事訴訟において、弁護士が被告人の訴訟代理人として訴訟行為をするのは、上述のごとく被告人の財産権に関する訴訟行為のごとき特殊なものに限定せらるべきであつて、一般に弁護士が弁護のためにする訴訟行為は、被告人の代理人としてするのではなく、固有の権利の行使として(規定の有無を問わず)するものである。その中法定の主要なものは、被告人の明示の意思に反しても全く独立の固有権の行使として(旧刑訴第四六条)訴訟行為をするを得るものと解するを相当とする。また、多数意見は、「その際被告人の代理人たる旨を明示することは必ずしも必要とするものではない」と説いている。しかし、代理人の行為が直接本人に対してその効力を有するためには、代理人がその権限内において本人(被告人)のためにすることを示して行為をすることを要する(民法第九九条)。この点において多数意見の判示は、 、代理人の行為が直接本人に対してその効力を有するためには、代理人がその権限内において本人(被告人)のためにすることを示して行為をすることを要する(民法第九九条)。この点において多数意見の判示は、代理の観念に反するように思われる。弁護人は単に弁護人として行動しているのであつて、代理人たることを示して行動しているのではない。要するに、多数意見が、従来の通説に反し弁護士の上訴に効力を認めた点は、たしかに一つの進歩ではあるが、その理由の根拠を代理関係に求めたことには賛同するを得ない。端的に言つて、刑事訴訟において弁護士は、弁護人として行動する意識はあるが、被告人の代理人として行動するというような意識は、毛頭ないであろう。前述した非独立的固有権の思想こそは、最もよく弁護士の地位職責に基くそ- 6 -の訴訟行為の本質にピツタリと適合するものであると信ずる。これは、各国の弁護士史の推移と発展に徴しても、また私の三十有四年に亘つた弁護士生活の体験に顧みても、殊に新憲法の布かれた今日においては、最早動かし難い信念となつている。 よつて旧刑訴第四四七条第四四九条の趣旨に則り主文のとおり判決する。 以上は理由に関する少数意見を除き、裁判官全員一致の意見である。 検察官柳川真文関与昭和二四年一月一二日最高裁判所大法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官長谷川太一郎裁判官沢田竹治郎裁判官霜山精一裁判官井上登裁判官栗山茂裁判官真 霜山精一裁判官井上登裁判官栗山茂裁判官真野毅裁判官小谷勝重裁判官島保裁判官斎藤悠輔裁判官藤田八郎裁判官岩松三郎裁判官河村又介- 7 -

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