平成12(ネ)5985 賃料増額,賃料減額確認各請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成13年9月19日 東京高等裁判所
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判決文本文15,504 文字)

(原審・東京地方裁判所八王子支部平成9年(ワ)第3079号、第3134号賃料増額、賃料減額確認各請求事件(原審言渡日平成12年10月13日)) 主文 一光専寺の控訴及び株式会社パルコの当審における訴えの変更に基づき、原判決を次のとおり変更する。 1 光専寺が株式会社パルコに賃貸している原判決添付別紙物件目録記載の各土地(いずれも東京都武蔵野市AB丁目所在)の1か月当たりの賃料が、イ同目録1記載の土地については、平成7年4月1日以降、平成8年6月8日以降、平成10年4月28日以降及び平成11年10月1日以降、いずれも金25万6576円、ロ同目録2記載の土地については、平成7年4月1日以降、平成8年6月8日以降、平成10年4月28日以降及び平成11年10月1日以降、いずれも金14万2621円、ハ同目録3記載の土地については、平成7年4月1日以降、平成8年6月8日以降、平成10年4月28日以降及び平成11年10月1日以降、いずれも金26万8959円、ニ同目録4記載の土地については、平成8年6月8日以降、平成10年4月28日以降及び平成11年10月1日以降、いずれも金15万5862円であることを確認する。 2 株式会社パルコは、光専寺に対し、金30万8233円及び内金8万9487円に対する平成8年1月1日から、内金11万9316円に対する平成9年1月1日から、内金9万9430円に対する同年11月1日から各支払済みまで年1割の割合による金員を支払え。 二光専寺のその余の控訴並びに株式会社パルコの控訴及びその余の請求をいずれも棄却する。 三訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを4分し、その3を株式会社パルコの負担とし、その余を光専寺の負担とする。 事実及び理由 第一控訴 パルコの控訴及びその余の請求をいずれも棄却する。 三訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを4分し、その3を株式会社パルコの負担とし、その余を光専寺の負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨一株式会社パルコ(以下、単に「パルコ」という。)原判決を次のとおり変更する。 1 光専寺がパルコに賃貸している原判決添付別紙物件目録記載の各土地(いずれも東京都武蔵野市AB丁目所在)の1か月当たりの賃料が、イ同目録1記載の土地(以下「土地1」という。)については、平成7年4月1日以降25万2000円、平成8年6月8日以降25万4000円、平成10年4月28日以降25万円、平成11年10月1日以降平成13年3月31日まで24万7000円、ロ同目録2記載の土地(以下「土地2」という。)については、平成7年4月1日以降13万9000円、平成8年6月8日以降13万8000円、平成10年4月28日以降13万5000円、平成11年10月1日以降平成13年3月31日まで13万3000円、ハ同目録3記載の土地(以下「土地3」という。)については、平成7年4月1日以降26万5000円、平成8年6月8日以降26万6000円、平成10年4月28日以降26万2000円、平成11年10月1日以降平成13年3月31日まで25万9000円、ニ同目録4記載の土地(以下「土地4」という。)については、平成8年6月8日以降15万1000円、平成10年4月28日以降14万8000円、平成11年10月1日以降平成13年3月31日まで14万7000円であることを確認する。 2 光専寺の請求を棄却する。 二光専寺原判決を次のとおり変更する。 1 平成7年4月1日以降の1か月当たりの賃料 年10月1日以降平成13年3月31日まで14万7000円であることを確認する。 2 光専寺の請求を棄却する。 二光専寺原判決を次のとおり変更する。 1 平成7年4月1日以降の1か月当たりの賃料が、土地1については27万5803円、土地2については14万2621円、土地3については28万9115円であること、本件土地4の平成8年6月8日以降の1か月当たりの賃料が15万5862円であることを確認する。 2 パルコは、光専寺に対し、152万9106円及び内金44万3934円に対する平成8年1月1日から、内金59万1912円に対する平成9年1月1日から、内金49万3260円に対する同年11月1日から各支払済みまで年1割の割合による金員を支払え。 3 パルコの請求を棄却する。 第二事案の概要本件は、賃貸人である光専寺と賃借人であるパルコとの間に継続中の土地1ないし4に関する賃貸借契約について、光専寺が本件特約(固定資産税及び都市計画税が増額されたときは、増額された金額の、堅固建物敷地部分については3倍、非堅固建物敷地部分については2倍の金額のそれぞれ12分の1を従前の1か月分の賃料に加算した額をもって新たな月額賃料とする、また、経済情勢、地域の繁栄情況に比し賃料が不相応となったときは、賃貸人と賃借人が協議の上増減することができるとの特約)に基づいて賃料増額の意思表示をしたのに対し、パルコが賃料減額の意思表示をし、それぞれ賃料額の確認を求めるとともに、光専寺がパルコの実際支払賃料との差額(平成7年4月1日から平成9年10月31日までの分)及びこれに対する借地借家法所定の年1割の割合による利息の支払を求めた事案である。 原審は、本件特約の効力につき、賃料増減額の紛争を未然に防ぐという役割からすれば、本件特約の適用結果を不服とする当事者が任 に対する借地借家法所定の年1割の割合による利息の支払を求めた事案である。 原審は、本件特約の効力につき、賃料増減額の紛争を未然に防ぐという役割からすれば、本件特約の適用結果を不服とする当事者が任意のときに争い得るものとしては、その目的を達し得ないところであるから、特約に基づく賃料額が、特約を離れて試算された相当賃料額と実質的に乖離していないと認められる限度では、賃料増減額請求は許されないものとして、本件特約が事情変更の原則により遅くとも平成7年4月1日までに失効したとのパルコの主張を排斥した。そして、鑑定人Cの鑑定結果(C鑑定)を正当と認め、ひとまず本件特約を離れたとき、土地1ないし土地4の各時点(土地1ないし3については、光専寺の賃料増額請求及びパルコの賃料減額請求に係る平成7年4月1日、土地1ないし4については、パルコの賃料減額請求に係る平成8年6月8日及び平成10年4月28日)における相当賃料額については、C鑑定の結論を採用すべきであるとした上、C鑑定による賃料額と光専寺主張の賃料額とを対比すると、土地2の平成7年4月1日の時点の賃料を除き、両者の間には有意の差があるとして、同土地の上記時点の賃料については本件特約に従って算出された賃料額、その他の賃料についてはいずれもC鑑定による賃料額をもって相当賃料額と認定したが、双方がこれを不服として控訴を提起した。 なお、当審において、パルコは、光専寺に対し、平成11年9月4日到達の書面により、同年10月1日以降の各土地の賃料につき更に10パーセントの減額をすべき旨の意思表示をし、平成13年3月23日到達の書面により、同年4月1日以降の各土地の賃料につき更に減額すべき旨の意思表示をしたとして、平成10年4月28日以降の賃料額の確認請求を、同日から平成11年9月30日までの賃料額の確認請 月23日到達の書面により、同年4月1日以降の各土地の賃料につき更に減額すべき旨の意思表示をしたとして、平成10年4月28日以降の賃料額の確認請求を、同日から平成11年9月30日までの賃料額の確認請求と同年10月1日以降平成13年3月31日までの賃料額の確認請求(賃料額は、いずれもC鑑定による。)に変更し、光専寺は、上記請求の変更に同意した。 一当事者間に争いがない事実及び争点は、原判決について次のとおり付加・訂正し、パルコの当審における新主張及び補充主張並びに光専寺の当審における補充主張を次項及び第三項のとおり加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄中の「第2 事案の概要」1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決4頁13行目の末尾に「また、賃料については、当月分を毎月末日限り支払う約定であった。」を加える。 2 同5頁1行目の「同日」を「平成7年4月1日」に、同3行目の 「その後」から同4行目末尾までを「、同年6月20日に賃借人の地位を承継した後、後記平成8年6月8日の賃料減額請求までの間、同訴外人の支払賃料と同額の賃料を支払っていた。」に、それぞれ改める。 3 同頁7行目の「平成7年4月1日」の前に「土地1ないし3の」を、同9行目から10行目にかけての「平成8年4月1日」の前及び同13行目の「平成10年4月28日」の前にいずれも「土地1ないし4の」を、それぞれ加える。 4 同13行目の次に改行して次のとおり加える。 「 パルコは、光専寺に対し、平成11年9月4日到達の書面により、同年10月1日以降分の賃料を減額するように請求した。 パルコは、光専寺に対し、平成13年3月23日到達の書面により、同年4月1日以降分の賃料を減額するように請求した。」二パルコの当審における新主張及び補充主張 1 本件特約 ように請求した。 パルコは、光専寺に対し、平成13年3月23日到達の書面により、同年4月1日以降分の賃料を減額するように請求した。」二パルコの当審における新主張及び補充主張 1 本件特約は、固定資産税額に一定の係数を乗じた額をもって地代額を算出しようとするものであるが、固定資産税額の決定の前提となる固定資産評価額は、従前は時価の2、3割に抑えられていたものが、平成6年以降は一挙に時価の7割もの金額に引き上げられたところ、このような税務政策の変更は、契約当事者はもとより、経済専門家又は税務専門家の誰一人として全く予期できなかったものである。東京地方裁判所調停部の裁判官も、固定資産税額に一定の係数を乗じた額をもって地代額を算出しようとする手法が平成6年以降分の賃料については妥当性を欠くに至ったことを認めている(甲19)。 したがって、本件特約は、平成6年以降、事情変更の原則により失効したというべきであるが、仮にそうでないとしても、光専寺自身、本件特約が合理性を喪失するに至っていることを自覚しており、平成8年4月8日以降分については、本件特約に基づいて算出される金額の賃料を請求していないから、本件特約は、平成8年4月ころ、黙示的に合意解約されたというべきである。 2 借地借家法の定める賃料増減額請求権は、事情変更の原則を基礎にしてこれを拡充したものであり、一般の賃料増減額訴訟においては、2、3年間の経済変動により数パーセントの乖離が生じた場合には、賃料額の変更が認容されているところ、土地2の平成7年4月1日以降平成8年6月7日までの賃料については、本件特約に基づいて算出された賃料額14万2621円とC鑑定による賃料額13万9000円との間に2.6パーセントもの乖離が生じているのであるから、当然、賃料減額請求権に基づく変更を認めるべ いては、本件特約に基づいて算出された賃料額14万2621円とC鑑定による賃料額13万9000円との間に2.6パーセントもの乖離が生じているのであるから、当然、賃料減額請求権に基づく変更を認めるべきである。 3 パルコは、光専寺に対し、土地1ないし4の賃料について、平成11年9月4日到達の書面により、同年10月1日以降、平成13年3月23日到達の書面により、同年4月1日以降それぞれ更に減額すべき旨の意思表示をした。 C鑑定によれば、平成11年2月15日時点の適正継続地代月額は、土地1については24万7000円、土地2については13万3000円、土地3については25万9000円、土地4については14万7000円とされている。 そして、平成11年2月15日以降同年10月1日までの間の経済事情の変動は、現状維持ないし悪化していることはあっても上昇していることはないから、同年10月1日の時点での相当賃料額は、上記各金額を超えることはない。 4 原判決22頁10行目に判示されているとおり、平成8年6月8日以降はパルコの実際支払賃料額が相当賃料額を超過しているから、パルコは、光専寺に対し、上記支払超過額の返還請求権を有している。 パルコは、当審の平成13年2月14日の口頭弁論期日において、光専寺に対し、同日までの上記支払超過額の返還請求権をもって、光専寺のパルコに対する原判決主文第2項の金員の返還請求権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。 三光専寺の当審における補充主張 1 C鑑定は、賃貸借対象土地のうち、土地1については13平方メートル(全体の面積45.95平方メートルの28.29パーセントに当たる。)、土地3については13平方メートル(全体の面積48.03平方メートルの27.0629パーセントに当たる。)、土地4については12平 体の面積45.95平方メートルの28.29パーセントに当たる。)、土地3については13平方メートル(全体の面積48.03平方メートルの27.0629パーセントに当たる。)、土地4については12平方メートル(全体の面積26.90平方メートルの44.60パーセントに当たる。)を控除して土地価格を算出している点に誤りがある。 2 C鑑定は、標準的画地価格に個別格差率を乗じて土地1ないし4の価格を算出しているが、この個別格差率の査定に当たり、画地条件、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件の5条件を設け、それぞれの条件について判定した標準的画地との偏差率を百分率で表し、これらを乗じて得た数値をもって格差率としている。しかし、上記5条件の設定自体の合理性、5条件についての格差率の判定の正確性に疑問があるばかりでなく、5条件の各格差率の相乗積を求めることの妥当性にも疑問がある。 3 原判決は、本件特約に基づいて算出した各時点における賃料額とC鑑定による適正賃料額とを比較して有意の差があるか否かを判断した上、相当賃料額を認定しているが、両者の格差及び従前賃料額とC鑑定による賃料額の格差は次のとおりであるから、いずれも有意の差がないというべきである。したがって、パルコの減額請求はいずれも認められない。 (一) 土地1について平成7年4月1日の時点においては、光専寺主張の賃料額(本件特約に基づいて算出された賃料額)27万5803円はC鑑定による賃料額25万2000円の9.45パーセント高である。このようなわずか10パーセント足らずの差を「有意の差」として本件特約の効力を否定してしまうことは、かかる特約の趣旨を没却するものというべきであり、賃貸人、賃借人双方にとっての特約存在の利便性を失わせるものであって、相当ではない。 仮に本件特約の効力が認 本件特約の効力を否定してしまうことは、かかる特約の趣旨を没却するものというべきであり、賃貸人、賃借人双方にとっての特約存在の利便性を失わせるものであって、相当ではない。 仮に本件特約の効力が認められないとしても、従前の賃料25万6575円が継続するだけであるが、パルコの減額請求の効果を考えるとしても、C鑑定による賃料額25万2000円は従前賃料額25万6576円のわずか1.78パーセント減にすぎないのであって、従前賃料額が未だ不相当となっていないことが明らかというべきである。したがって、減額請求は認められない。 平成8年6月8日の時点においても、C鑑定による賃料額25万4000円は、光専寺主張の賃料額27万5803円(本件特約に基づいて算出された賃料額は29万0521円であるが、光専寺は賃料増額請求をしていない。)の8.58パーセント減であり、従前の支払賃料額25万6576円の1.01パーセント減にすぎない。すなわち、いずれにしても、従前の賃料額は未だ不相当となっていないから、パルコの減額請求は容認されない。 平成10年4月28日の時点においても、C鑑定による賃料額25万円は、光専寺主張の賃料額27万5803円(この時点でも、光専寺は、本件特約に基づく賃料増額請求をしていない。)の10.32パーセント減であり、従前の支払賃料額25万6576円の2.63パーセント減にすぎず、この程度では、賃料減額請求は認められるべきではない。 (二) 土地2について平成7年4月1日の時点においては、光専寺主張の賃料額(本件特約に基づいて算出された賃料額)14万2621円は、C鑑定による賃料額13万9000円のわずか2.60パーセント高にすぎず、この程度では、パルコの減額請求が認められる余地はない。 平成8年6月8日の時点においても、C鑑定によ )14万2621円は、C鑑定による賃料額13万9000円のわずか2.60パーセント高にすぎず、この程度では、パルコの減額請求が認められる余地はない。 平成8年6月8日の時点においても、C鑑定による賃料額13万8000円に対し、光専寺主張の賃料額14万2621円(本件特約に基づいて算出された賃料額は14万9770円であるが、光専寺はその金額を主張していない。)はわずか3.34パーセント高にすぎないから、パルコの減額請求は理由がないことが明らかである。 平成10年4月28日の時点においても、光専寺主張の賃料額14万2621円はC鑑定による賃料額13万5000円の5.64パーセント高にすぎず、この程度では、従前の賃料額が不相当になったとはいえないから、パルコの減額請求は認められない。 (三) 土地3について平成7年4月1日の時点においては、C鑑定による賃料額26万5000円に対し、光専寺主張の賃料額(本件特約に基づいて算出された賃料額)28万9115円は9.1パーセント高である。このようなわずか10パーセント足らずの差を「有意の差」として本件特約の効力を否定してしまうことは、上記のとおり、かかる特約の趣旨を没却するものというべきであり、相当ではない。 仮に本件特約の効力が認められないとしても、従前の賃料26万8959円が継続するだけであるが、パルコの減額請求の効果を考えるとしても、C鑑定による賃料額26万5000円は、従前の賃料額26万8959円のわずか1.49パーセント減にすぎないのであって、従前賃料額が未だ不相当となっていないことが明らかというべきである。 平成8年6月8日の時点においても、C鑑定による賃料額26万6000円は、光専寺主張の賃料額28万9115円(本件特約に基づいて算出された賃料額は30万4502円であるが、光専 いうべきである。 平成8年6月8日の時点においても、C鑑定による賃料額26万6000円は、光専寺主張の賃料額28万9115円(本件特約に基づいて算出された賃料額は30万4502円であるが、光専寺は賃料増額請求をしていない。)の8.68パーセント減であり、従前の支払賃料額26万8959円の1.11パーセント減にすぎないのであって、従前の賃料額は未だ不相当となっていないから、パルコの減額請求は認められるべきではない。 平成10年4月28日の時点においても、C鑑定による賃料額26万2000円に対し、光専寺主張の賃料額28万9115円は10.34パーセント高であり、従前賃料額26万8959円は2.65パーセント高にすぎないから、この程度の変動では不相当になったとまではいえない。 (四) 土地4について平成8年6月8日の時点においては、C鑑定による賃料額15万1000円に対し、光専寺主張の賃料額15万5862円(本件特約に基づいて算出された賃料額は16万4484円であるが、光専寺は増額請求をしていない。)は3.21パーセント高にすぎないから、パルコの減額請求は理由がない。 平成10年4月28日の時点においても、従前の賃料額15万5862円はC鑑定による賃料額14万8000円の5.31パーセント高となる計算であるが、この程度の較差では、未だ従前賃料が不相当になったとまではいえない。 第三当裁判所の判断一本件特約がなかったとした場合の相当賃料額について 1 当裁判所も、C鑑定の結論は正当なものとして採用することができ、本件特約がなかったとした場合の、パルコ、光専寺双方の増減額の意思表示に係る時点における相当賃料額については、C鑑定によるのが相当と判断する。その理由は、原判決10頁18行目の「1.1倍」を「1.01倍」に、同24行目の「太 合の、パルコ、光専寺双方の増減額の意思表示に係る時点における相当賃料額については、C鑑定によるのが相当と判断する。その理由は、原判決10頁18行目の「1.1倍」を「1.01倍」に、同24行目の「太さ」を「幅員」に、同14頁28行目の「低価」を「低下」に、同15頁末行の「原告、被告」を「パルコ、光専寺」にそれぞれ改めるほかは、原判決「事実及び理由」欄中の「第3 争点の判断」1に記載のとおりであるから、これを引用する。 2 これに対し、光専寺は、「C鑑定は、賃貸借対象土地のうち、土地1については13平方メートル、土地3については13平方メートル、土地4については12平方メートルを控除して土地価格を算出している点に誤りがある」と主張する。 しかしながら、証拠(甲32の1、2、甲33、34、丙1の1ないし5、証人C、鑑定人Cの鑑定結果)及び弁論の全趣旨によれば、C鑑定は、賃貸借対象土地のうち、土地1及び土地3についてはそれぞれ13平方メートル、土地4については12平方メートル(いずれも概測)を控除して土地価格を算定しているが、上記控除部分は、武蔵野市道第D号線の敷地となっているため、道路敷以外の使用ができない土地であること、パルコは、上記道路敷部分の西側歩道部分に衣料品を展示するなどしてこれを利用しているが、C鑑定は、土地価格の算定に当たりこの歩道部分は除外していないこと、以上の事実が認められる。したがって、C鑑定の上記土地価格の算出方法に何ら誤りはない。 光専寺の上記主張は、採用することができない。 3 また、光専寺は、「C鑑定は、標準的画地価格に個別格差率を乗じて土地1ないし4の価格を算出しているが、この個別格差率の査定に当たり、画地条件、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件の5条件を設け、それぞれの条件について判定した標準的画地 別格差率を乗じて土地1ないし4の価格を算出しているが、この個別格差率の査定に当たり、画地条件、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件の5条件を設け、それぞれの条件について判定した標準的画地との偏差率を百分率で表し、これらを乗じて得た数値をもって格差率としている。しかし、上記5条件の設定自体の合理性、5条件についての格差率の判定の正確性に疑問があるばかりでなく、5条件の各格差率の相乗積を求めることの妥当性にも疑問がある」と主張する。 しかしながら、C鑑定の上記土地価格の算出方法は、不動産鑑定評価基準に沿ったもので、相当なものと認められる。 光専寺の上記主張は、採用することができない。 二本件特約の効力について 1 当裁判所も、本件特約が事情変更の原則により遅くとも平成7年4月1日までに失効した旨のパルコの主張は理由がないものと判断する。その理由は、原判決が「事実及び理由」欄中の「第3 争点の判断」2において説示しているとおりであるから(ただし、原判決19頁15行目の「平成6年度の」から同18行目の「けれども、」までを削る。)、これを引用する。 2 パルコは、本件特約は平成8年4月ころ黙示的に合意解約されたと主張するが、本件の全証拠をもってしても、これを認めるに足りない。光専寺が、平成8年4月8日以降の分について、本件特約に基づいて算出される額の賃料を請求していないことも、この判断を左右するものではない。したがって、上記主張は採用することができない。 三本件各土地の相当賃料額について 1 当裁判所も、ひとまず本件特約を離れた場合の、土地1ないし土地4の各時点(土地1ないし3については、光専寺の賃料増額請求及びパルコの賃料減額請求に係る平成7年4月1日、土地1ないし4については、パルコの賃料減額請求に係る平成8年6月8日、平成 地1ないし土地4の各時点(土地1ないし3については、光専寺の賃料増額請求及びパルコの賃料減額請求に係る平成7年4月1日、土地1ないし4については、パルコの賃料減額請求に係る平成8年6月8日、平成10年4月28日及び平成11年10月1日)における相当賃料額については、C鑑定の結論を採用するのが相当であると判断する。 そして、本件特約が設けられた趣旨は、賃貸借契約継続中に生ずべき賃料増減額に関する紛争を未然に防ぐことにあると解されるから、本件特約の適用結果を、これを不服とする当事者が任意のときに争い得るものとしては、その目的を達し得ないことが明らかである。そうすると、本件特約に基づく賃料額が、本件特約を離れて試算された相当賃料額と実質的に乖離しないと認められる場合には、賃料増減額請求は許されないものと解するのが、本件特約の趣旨に適うものというべきである。 2 C鑑定によって認められる平成6年度以降の固定資産税等の額を用いて、係争各年度(ただし、平成11年度を除く。)における本件特約に基づく賃料額を試算し(なお、本件賃貸借契約においては、賃料を構成する部分のうちに堅固建物敷地部分と非堅固建物敷地部分があるから、正確には、非堅固建物敷地部分については固定資産税等の増額分の2倍をもって計算すべきであるが、便宜上一律3倍の数値を用いた。しかし、これにより大きな差違は生まれないものと認められる。)、本件各増減額請求時における鑑定による相当賃料額(適正支払賃料額)とを比較すると、別表のとおりとなる(ただし、土地4の平成6年4月1日及び平成7年4月1日の各特約欄記載の額は、各時点における合意賃料額である。)。 3 そこで、1の考え方に従い、2の数値を用いて、まず、平成7年4月1日の時点における賃料増減額請求について検討すると、土地1の本件特約に基づく賃 約欄記載の額は、各時点における合意賃料額である。)。 3 そこで、1の考え方に従い、2の数値を用いて、まず、平成7年4月1日の時点における賃料増減額請求について検討すると、土地1の本件特約に基づく賃料額27万5803円は、本件特約を離れて試算された相当賃料額25万2000円の約9.4パーセント増、土地3の本件特約に基づく賃料額28万9115円は、本件特約を離れて試算された相当賃料額26万5000円の9.1パーセント増に当たる。この程度の較差をもって上記1にいう実質的な乖離に当たるとみるべきかどうかについては、不動産ないしその賃料額の鑑定が、ある程度の幅を伴うものであって、所詮相対的なものであることを免れないことからして、見解の分かれるところと思われるが、本件においては、本件特約に基づく賃料額と本件特約を離れて試算された相当賃料額(鑑定額)との間には実質的な乖離がないということはできず、したがって、土地1及び土地3については、光専寺の賃料増額請求は許されないものというべきである。 これに対し、土地2の本件特約に基づく賃料額14万2621円は、本件特約を離れて試算された相当賃料額(鑑定額)13万9000円の約2.6パーセント高にすぎないから、その間には実質的な乖離がないと認めるのが相当であり、したがって、光専寺の賃料増額請求は、正当として容認されるべきものということができる。 次に、同時点におけるパルコの減額請求について検討すると、土地1及び土地3については、上記のとおり、光専寺の賃料増額請求は許されないのであるから、パルコの減額請求の当否は、同時点における従前の支払賃料額を基準として判断されるべきであるところ、土地1の上記鑑定額25万2000円は、従前の賃料額25万6576円に比して約1.8パーセント減、土地3の上記鑑定額26万5000 時点における従前の支払賃料額を基準として判断されるべきであるところ、土地1の上記鑑定額25万2000円は、従前の賃料額25万6576円に比して約1.8パーセント減、土地3の上記鑑定額26万5000円は、従前の賃料額26万8959円に比して約1.5パーセント減にとどまることが明らかであるから、この程度の較差では、未だ従前の賃料額が不相当になったとは認められないというべきである。また、土地2については、光専寺の賃料増額請求に係る14万2621円と上記鑑定額13万9000円との間には、わずか2.6パーセントの較差があるにすぎないから、この程度ではパルコの減額請求は容認される余地はないものというべきである。 そうすると、別表「認定額」欄のとおり、平成7年4月1日の時点における土地1の相当賃料額は、従前の支払賃料額と同額の25万6576円、土地2の相当賃料額は、上記増額に係る14万2621円、土地3の相当賃料額は、従前の支払賃料額と同額の26万8959円となる。 4 次に、平成8年6月8日、平成10年4月28日及び平成11年10月1日の各時点における賃料額については、光専寺は本件特約に基づく増額請求をしていないから、専らパルコの減額請求の当否が検討の対象となる。 そこで、平成8年6月8日の時点における、本件特約を離れて試算された土地1の相当賃料額(鑑定額)25万4000円は、上記従前の支払賃料額25万6576円の1パーセント減、本件特約を離れて試算された土地2の相当賃料額(鑑定額)13万8000円は、上記増額に係る14万2621円の約3.3パーセント減、本件特約を離れて試算された土地3の相当賃料額(鑑定額)26万6000円は、上記従前の支払賃料額26万8959円の約1.1パーセント減、本件特約を離れて試算された土地4の相当賃料額(鑑定額)15 、本件特約を離れて試算された土地3の相当賃料額(鑑定額)26万6000円は、上記従前の支払賃料額26万8959円の約1.1パーセント減、本件特約を離れて試算された土地4の相当賃料額(鑑定額)15万1000円は、従前の合意による支払賃料額15万5862円の約3.2パーセント減にとどまることが明らかである。 また、同様にして、平成10年4月28日の時点における、各土地の本件特約を離れて試算された相当賃料額(鑑定額)と従前の支払賃料額(土地1、3、4)又は増額に係る賃料額(土地2)との較差をみると、土地1は約2.6パーセント減、土地2は約5.6パーセント減、土地3は約2.7パーセント減、土地4は約5.3パーセント減にとどまることが認められる。 さらに、同様にして、平成11年10月1日の時点における、各土地の本件特約を離れて試算された相当賃料額(鑑定額)と従前の支払賃料額(土地1、3、4)又は増額に係る賃料額(土地2)との較差をみると、土地1は約3.9パーセント減、土地2は約7.2パーセント減、土地3は約3.8パーセント減、土地4は約6.0パーセント減であると認められる。 以上のうち、平成8年6月8日及び平成10年4月28日の各時点における上記の程度の較差をもってしては、未だ従前の賃料額が不相当になったとは認められないというべきであり、平成11年10月1日の時点における土地1及び土地3についても同様に解することができる。これに対し、平成11年10月1日の時点における土地2及び土地4についての較差は、それぞれ約7.2パーセント、約6.0パーセントであり、やや微妙なものを含むといわざるを得ないが、本件賃貸借契約に本件特約が設けられた趣旨等に照らし、従前の賃料額が、パルコの減額請求を容認するのを相当とする程度に不相当となったものと認めることはで り、やや微妙なものを含むといわざるを得ないが、本件賃貸借契約に本件特約が設けられた趣旨等に照らし、従前の賃料額が、パルコの減額請求を容認するのを相当とする程度に不相当となったものと認めることはできないというべきである。 そうすると、上記各時点におけるパルコの減額請求はいずれも理由がないというべきであり、本件各土地の相当賃料額は、別表「認定額」欄のとおりとなる。 5 以上によれば、本件各土地の1か月当たりの賃料額は、別表「認定額」欄記載のとおり、イ土地1については、平成7年4月1日以降、平成8年6月8日以降、平成10年4月28日以降及び平成11年10月1日以降、いずれも25万6576円、ロ土地2については、平成7年4月1日以降、平成8年6月8日以降、平成10年4月28日以降及び平成11年10月1日以降、いずれも14万2621円、ハ土地3については、平成7年4月1日以降、平成8年6月8日以降、平成10年4月28日以降及び平成11年10月1日以降、いずれも26万8959円、ニ土地4については、平成8年6月8日以降、平成10年4月28日以降及び平成11年10月1日以降、いずれも15万5862円であるから、光専寺及びパルコの各賃料額確認請求は、その限度において理由があるが、その余は理由がない。 なお、パルコは、前記のとおり、当審において、平成13年4月1日以降の賃料につき更に減額請求をしたとして、平成11年10月1日以降の賃料額確認請求を平成13年3月31日を終期とする請求に変更している。しかし、平成13年3月31日までの間に光専寺から賃料増額請求がなされた可能性を否定できないので、平成11年10月1日以降の賃料額確認部分については、終期を定めないで判決をすることとする。したがって、光専寺が平成13年3月31日までの間に賃料増 ら賃料増額請求がなされた可能性を否定できないので、平成11年10月1日以降の賃料額確認部分については、終期を定めないで判決をすることとする。したがって、光専寺が平成13年3月31日までの間に賃料増額請求をしていないときには、上記部分に係る判決の効力は、同年4月1日以降には及ばないことが明らかである。念のため付言する次第である。 四差額賃料について 1 以上のとおり、土地1、土地3及び土地4については、光専寺の賃料増額請求及びパルコの賃料減額請求のいずれも認められないから、結局、従前の賃料額が維持されていることになり、光専寺の差額賃料の請求は理由がない。 2 これに対し、土地2については、平成7年4月1日以降月額14万2621円への増額が認められるから、光専寺は、パルコに対し、従前の支払賃料との差額月額9943円の支払請求権を有することになる。 したがって、光専寺のパルコに対する差額賃料の請求は、平成7年4月1日から平成9年10月31日まで31か月分合計30万8233円及びうち8万9487円に対する平成8年1月1日から、うち11万9316円に対する平成9年1月1日から、うち9万9430円に対する同年11月1日から各支払済みまで借地借家法所定年1割の割合による利息金の支払を求める限度で理由がある。 3 なお、上記によれば、パルコには原判決のいうような賃料の過払いがあるとは認められないから、過払いがあることを前提とするパルコの相殺の抗弁は失当である。 第四結論よって、光専寺の控訴及びパルコの当審における訴え変更に基づき、原判決を主文第一項のとおり変更し、パルコの控訴及び当審におけるその余の請求並びに光専寺のその余の控訴をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第67条第2項、第61条、第64条本文を適用して、主文のとお り変更し、パルコの控訴及び当審におけるその余の請求並びに光専寺のその余の控訴をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第67条第2項、第61条、第64条本文を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第5民事部裁判長裁判官魚住庸夫裁判官飯田敏彦裁判官菅野博之は、差支えにつき、署名押印することができない。 裁判長裁判官魚住庸夫(別表)6/4/1 7/4/1 8/6/8 10/4/28 11/10/1土地1特約 256,576 275,803 290,521 290,521鑑定  256,576 252,000 254,000 250,000 247,000認定額 256,576 256,576 256,576 256,576差額 0 0 0 土地2特約  132,678 142,621 149,770 149,770鑑定  132,678 139,000 138,000 135,000 133,000認定額 142,621 142,621 142,621 142,621差額 9,943 9,943 9,943 9,943 土地3特約  268,959 289,115 304,502 304,502 9,943 9,943 9,943 9,943 土地3特約  268,959 289,115 304,502 304,502鑑定  268,959 265,000 266,000 262,000 259,000認定額 268,959 268,959 268,959 268,959差額 0 0 0 土地4特約  (144,996)  (155,862) 164,484 164,484鑑定  144,996 143,000 151,000 148,000 147,000認定額 155,862 155,862 155,862差額 0 0

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