平成19年7月19日判決言渡平成18年(ワ)第136号立替金請求事件平成19年6月20日口頭弁論終結 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求の趣旨被告は原告に対し,148万9488円及びこれに対する平成18年10月8日から支払済まで年6分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が後示2(1)①の売買代金立替払契約を主張して,被告に立替金債務の履行を請求する事案である。 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実(1)当事者・関係者①原告は,割賦販売法に基づく割賦購入斡旋を主な目的とする会社である。 ②被告は,下記(2)(3)(4)の当時,「G」の名称を使い,屋台でお好み焼屋をしていた者である(甲1,被告本人尋問の結果)。 ③株式会社Aは,下記(2)(3)(4)の当時,「H」の名称(以下本件名称ということがある)を使い,モバイルショップの商品名で,催事販売店のオーナーの募集勧誘を行なっていた会社であるが,平成13年9月4日,自己破産を申し立てて,破産宣告を受けた(甲6,7,乙2ないし7)。 ④株式会社Bは,本件名称を使い,飛騨高山地方の特産品の販売等を行なっている会社である(乙7,10,弁論の全趣旨)。 (2) Aの代理店募集被告は,Aの販売代理店募集の広告を見て,平成13年6月頃,同社主催の催事販売の代理店契約の事業説明会に参加した(乙2ないし7,10)。 (3)立替払契約書(ただし,その記載内容や法的効力に争いがある)Aは,平成13年8月頃被告に対し,ショッピングクレジット契約書(甲1。以下本件契約書といい,下記立替払契約を本件立替払契約という)を交付し,被告は,これに署名押印した。現在,同契約書には,Aを取次店として,被告が有限会社Cから購入するグリ グクレジット契約書(甲1。以下本件契約書といい,下記立替払契約を本件立替払契約という)を交付し,被告は,これに署名押印した。現在,同契約書には,Aを取次店として,被告が有限会社Cから購入するグリラー・冷凍庫・フードウォーマー等(以下本件商品といい,その売買契約を本件売買契約という)の代金につき,被告を委託者とし,原告を受託者として,平成13年8月29日,下記内容で立替払契約を締結する旨の記載がある(乙10)。 ①原告は,本件商品代金115万5000円をCに立替払する。 ②被告は,上記代金に,分割手数料33万4488円を加えた合計148万9488円を,各2万4800円宛(初回は2万6288円)に分割して,平成13年9月から平成18年8月まで毎月27日限り,原告に支払う。 ③被告が上記割賦金の支払を怠り,20日以上の期間を定めて,書面で催告されたにもかかわらず,期間内に払わないときは,期限の利益を失う。 ④遅延損害金は年6パーセントとする。 (4)納品確認書及び意思確認の電話(ただし,その経過等に争いがある)①Aは,平成13年8月頃被告に対し,納品確認書(甲2。以下本件確認書という)を交付し,被告は,これに署名押印したが,現在同確認書には,同年8月29日に商品を受領した旨の記載がある(乙10)。 ②原告の担当者は,平成13年8月29日被告に対し,契約意思確認のための電話をした(以下本件電話という。甲4)。 (5)原告の立替払原告は,平成13年9月5日Cに本件商品代金を支払った(甲4)。 争点 本件の主な争点は,(ア)本件立替払契約の成否(後示(1)①。請求原因),(イ)同契約の錯誤無効の成否(同(2)③),(ウ)本件売買契約の不成立その他の同契約上の抗弁を原告に対抗することの可否(同(2)④),(エ)本件立替金債務の消滅時効の成 (後示(1)①。請求原因),(イ)同契約の錯誤無効の成否(同(2)③),(ウ)本件売買契約の不成立その他の同契約上の抗弁を原告に対抗することの可否(同(2)④),(エ)本件立替金債務の消滅時効の成否(同(2)⑤。以上抗弁)であり,上記(ア)(イ)(ウ)に関し,(a)本件契約書と本件確認書の作成経過及び,本件電話による意思確認の有無,(b)Aが原告の代理人又は代行者に当たるかが,上記(ウ)(エ)に関し,それぞれ,(c)本件商品は割賦販売法上の特定商品か,(d)本件売買契約が被告にとり商行為に当たるかが問題になっている。 (1)原告の主張①前示1(3)(5)のとおり,被告は,本件立替払契約の申込をし,原告は,平成13年8月29日これを承諾して,被告と同契約を締結し,本件商品代金を立替払したが,被告は,同契約で定められた割賦金を支払わない。 よって,原告は,未払割賦金148万9488円と本件訴状送達以降の年6分の約定利率による遅延損害金の支払を求める。 ②後示(2)②③の主張は,否認ないし争う。 ア原告は,平成13年8月29日,前示1(4)②のとおり,本件電話をして契約意思を確認したが,被告から,事前審査のためかなどの質問はなく,かえって請求書等は自宅に送付すること,初回支払は同年9月から始めることなどを回答しているから,本件立替払契約の成立は明らかである。 イまた,原告は,Aになんらの代理権も付与しておらず,同社は,原告の代理人や代行者には当たらないし,「H」の名称を使って催事販売ができる等の動機も表示されていないから,被告に錯誤はない。 ③後示(2)④の主張は,否認ないし争う。 ア本件商品は,代理店として店舗で物品販売をするための機材であって,家庭用冷蔵庫の類ではなく,割賦販売法2条4項の指定商品に当たらない。よって,本件売買契 後示(2)④の主張は,否認ないし争う。 ア本件商品は,代理店として店舗で物品販売をするための機材であって,家庭用冷蔵庫の類ではなく,割賦販売法2条4項の指定商品に当たらない。よって,本件売買契約の不成立や無効等を原告に対抗することはできない。 イまた,被告は,前示1(4)①のとおり,本件確認書に署名押印しており,本件商品の未納入を主張することは信義則に反し,許されない。 ④後示(2)⑤の主張は,否認ないし争う。 ア従前被告は,本件売買契約が商行為に当たらない旨主張しており,今になって商行為だというのは,時機に遅れた防御方法であって許されない。 イ被告は,前示1(1)②のとおり,屋台でお好み焼屋をしていただけであって商人ではなく,また本件売買契約は,客観的外形的に,開業を目的とした準備行為と認められないから,商行為には当たらない。 (2)被告の主張①前示(1)①のうち,本件立替払契約の成立は否認し,法的主張は争う。 下記②③④のとおり,本件立替払契約及び本件売買契約は,不成立ないし無効であり,本件商品も未納入であるから,本件請求には理由がない。 ②本件立替払契約は,以下のとおり,意思の不合致により不成立である。 ア被告は,平成13年6月17日,前示1(2)のとおり,A主催の事業説明会に参加し,催事販売の斡旋を受けた。そこでは,有名な「H」の会社の紹介があって,(a)Aから簡易店舗,機器一式を購入して,物産品を仕入れ,同社から斡旋されたショッピングセンター内で販売する,(b)登録料,機器一式等の費用は合計113万円である旨の説明があった。 イその後,Aからの勧誘で,クレジットの審査が通れば,契約するという話になり,被告は,前示1(3)と(4)①のとおり,本件契約書,本件確認書に署名押印して,同社に返送したが,これは,あくまでクレ イその後,Aからの勧誘で,クレジットの審査が通れば,契約するという話になり,被告は,前示1(3)と(4)①のとおり,本件契約書,本件確認書に署名押印して,同社に返送したが,これは,あくまでクレジットの事前審査のためのものであって,当時本件契約書に商品名,金額等は一切記載されておらず,また代理店契約書は2通とも被告の手元にある。 ウしかるところ,Aから上記書類が届いていないと度々連絡があり,不審に思った被告は,平成13年8月28日頃,書類が届いていないなら,この契約は解除してほしい旨(正確には,契約はしないとの意味)を,同社に電話で伝えたが,翌日頃から電話がつながらなくなった。 エその後,被告は,Aの破産を知ったが,連絡の取れた同社の担当者からは,契約はすでに解除されている旨の説明を受けた。 オそもそも割賦購入斡旋は,信販会社と販売店の共同の利益を追及するため構築されたシステムであり,信販会社は信用供与先を開拓することなく,販売店が見つけた顧客に対しローンを組んで,手数料を得ることができ,販売店は債権回収のノウハウを持たなくても,信販会社の信用供与を活用できるなど,両者は,経済上一体不可分の関係にある。 カまた,信販会社が立替払契約締結に立会うのは極めてまれであり,通常,販売店は,顧客に対する勧誘や,申込書の交付・受領,信販会社の承諾の意思表示の伝達等をすべて行ない,契約の変更・解約の窓口になっており,顧客にとって,販売店の行為は,すなわち信販会社の行為である。 キそのため,通産省産業政策局消費経済課長から社団法人日本割賦販売協会会長宛の昭和57年4月13日付及び昭和58年3月11日付各通達や,同局取引信用室長から社団法人日本クレジット産業協会会長宛通達によって,販売店の販売方法や信用状態の調査等が具体的に指導されている。 ク の昭和57年4月13日付及び昭和58年3月11日付各通達や,同局取引信用室長から社団法人日本クレジット産業協会会長宛通達によって,販売店の販売方法や信用状態の調査等が具体的に指導されている。 ク以上によれば,Aは,原告の代理人であって,本件立替払契約の締結,解約等につき包括的な代理権を有しており,そうでないとしても,原告の代行者に当たるというべきところ,上記アないしエのとおり,被告には,本件立替払契約を締結する意思がなく,その申込もしていないのであるから,同契約はいまだ成立していない。 ③仮に本件立替払契約が成立しているとしても,以下のとおり,同契約には要素の錯誤があって,無効である。 ア実際は,上記②アの説明と異なり,Aは,Bとは無関係な会社であって,本件名称を無断使用しており,被告に催事販売の仕事を斡旋したり,正当に本件名称を使用させられなかったが,にもかかわらず,その旨被告に誤信させて,本件立替払契約を締結させたものであった。 イ一方,被告の資力からすれば,本件立替払契約を締結しなければ,本件商品を購入することができなかったが,これは,Aが,同契約を詐欺の手段として利用したものにほかならない。 ウ以上の事情を知っていれば,被告が本件立替払契約に応じるはずはなく,そのことはAにも分かっていたところ,上記②クのとおり,同社は,原告の代理人又は代行者であって,信義則上両者を同一視すべきであるから,本件立替払契約は,要素の錯誤により無効である。 ④また,本件商品は,台所用品,家庭用電気機械器具に類する商品で,割賦販売法2条4項の指定商品であるところ,(a)上記②③によれば,本件売買契約も不成立又は,錯誤により無効であるうえ,(b)本件商品の引渡もないから,被告は,割賦販売法30条の4第1項により,上記事情を原告に対抗する。 ⑤ であるところ,(a)上記②③によれば,本件売買契約も不成立又は,錯誤により無効であるうえ,(b)本件商品の引渡もないから,被告は,割賦販売法30条の4第1項により,上記事情を原告に対抗する。 ⑤仮に本件売買契約が被告にとって商行為であり,割賦販売法の適用がない場合,被告は,一度も割賦金を支払っておらず,前示1(3)③の特約により,初回弁済日の平成13年9月27日に期限の利益を喪失したから,本件立替金債務は,5年間の経過により時効消滅した。よって,これを援用する。 ⑥前示(2)②アの事実は否認する。被告は,Aから,クレジットの事前審査の電話があると聞いていたものであって,原告主張の発言はしていない。 第3争点に対する判断 前提となる事実(a)前示第2の1(1)ないし(5)の事実,甲3ないし7,乙2ないし7,(b)後示採用できない部分を除く乙10,被告本人尋問の結果のほか,(c)甲1,2,乙1,8,9の各存在によれば,以下の事実が認められる。 (1)株式会社A(代表取締役・D。本店・東京都台東区ab丁目c番d号eビル。登記簿上の本店・岐阜県高山市f町g丁目h番地)は,従前,B東京営業所(乙7),あるいは「H」などの名称を使用して,各地のショッピングセンター等で,飛騨高山地方の特産品の販売を行なっていた会社であるが,更にモバイルショップの商品名で,下記(2)(3)(4)のような,いわゆる催事販売店のオーナーの募集勧誘を行なっていた。 一方,飛騨高山地方には株式会社Bという会社があって,Eが社長を務め,「H」の名称による,特産品の販売等で有名だった。 (2)被告(昭和42年生)は,高校卒業後ガソリンスタンド店員,自動車用品の営業社員等の仕事を経た後,お好み焼屋をしていた。被告は,「G」という名称を使っていたが,実態は屋台のお好み焼屋で, た。 (2)被告(昭和42年生)は,高校卒業後ガソリンスタンド店員,自動車用品の営業社員等の仕事を経た後,お好み焼屋をしていた。被告は,「G」という名称を使っていたが,実態は屋台のお好み焼屋で,高価な営業機材は保有しておらず,金融機関やリース会社と取引したことはなかった。 しかるところ,被告は,新聞で,Aの販売代理店募集の広告を見て,平成13年6月大垣商工会議所で開かれた,同社主催の事業説明会に参加した。上記広告は,飛騨高山地方の特産品を扱う販売代理店のオーナーを募集する内容で,「H」などの名称を使い,要旨,(a)本業で50万円以上,副業でも30万円以上の収入は可能とか,(b)加盟金,保証金,ロイヤリティー,ノルマ一切なしなどの謳い文句で参加を勧誘しており,当時仕事が不調だった被告は,増収を願って説明会に出席したものであった。 (3)上記説明会では,まずビデオでAの会社紹介があったが,その内容は,Eが社長をしている,「H」の会社というものであって,被告は,Aを,Eが社長を務める有名な会社と同じ会社と認識していた。 その後,同説明会では,チラシや宣伝資料が配られ,Aの担当者から説明があった。 その骨子は,(a)モバイルショップと呼ばれる移動式簡易店舗のオーナーになれば,各地のショッピングセンター等で,飛騨高山地方の特産品の催事販売をすることができる,(b)それには,Aと販売代理店契約を締結し,機材一式を購入する必要がある,(c)費用は,登録料3万円,簡易店舗代15万円,機材一式95万円の合計113万円(消費税別)というものだった。 (4)そして,Aの担当者は,(ア)催事会場となる営業スペースは,同社で開拓した場所をオーナーに斡旋し,商品となる各種特産品も,同社から供給する,(イ)代理店制なので,登録料だけ払えば,通常フランチャイズ契約で ,Aの担当者は,(ア)催事会場となる営業スペースは,同社で開拓した場所をオーナーに斡旋し,商品となる各種特産品も,同社から供給する,(イ)代理店制なので,登録料だけ払えば,通常フランチャイズ契約で徴収されるロイヤリティー,保証金,加盟金は要らない,(ウ)商品仕入代金は,売上金の中から決済するので,用意する必要はない,(エ)上記(3)(c)の費用の大半は,提携先のクレジットでまかなえるので,大きな自己資金は不要であるなどの好条件を提示して,参加を勧誘した。更に,被告など参加者に渡された資料の中には,(a)オーナー自身が本業として稼働するプラン①では,月間売上150万円で,収入は月35万円から59万円になるとか,同40万円以上は可能であるとか,(b)店舗の運営・管理一切をAに任せるプラン②でも,収入は月20万円以上は可能であるなどの謳い文句や,営業見通しが掲載されていた。 (5)上記事業説明会の終了後も,A営業社員のFから勧誘があり,被告は,上記(2)(3)(4)のようなAの業容や,契約上の好条件に引かれて,最終的には,クレジットが通り自己資金が要らないなら,モバイルショップのオーナーになってもよいと考えるようになった。 そこで,Aは,平成13年8月頃被告に,本件契約書,本件確認書,代理店契約書,販売業務委託契約書を送付し,被告は,(a)本件契約書に署名押印した。また,(b)Fから,クレジットの審査に必要という説明があったため,被告は,これを信じて,本件確認書にも署名押印し,本件契約書と一緒に同社に返送した。一方,被告は,(c)代理店契約書及び,店舗の運営・管理をAに任せる趣旨の販売業務委託契約書にも署名して,自分で保管していたが,これらの契約書には,すでにAの記名押印が完了していた。 (6)その後,Aから原告に,本件契約書及び本件確認 店舗の運営・管理をAに任せる趣旨の販売業務委託契約書にも署名して,自分で保管していたが,これらの契約書には,すでにAの記名押印が完了していた。 (6)その後,Aから原告に,本件契約書及び本件確認書が送付されたが,そのうち本件契約書には,Aを取次店とし,被告が有限会社Cから購入するグリラー1基・冷凍庫1基・フードウォーマー1基・ウォーマー1基及びその付属品の代金総額115万5000円(消費税込。税抜き価額は110万円)につき,被告を委託者とし,原告を受託者として,平成13年8月29日,前示第2の1(3)①以下の内容で立替払契約を締結する旨の記載があった。また,本件確認書には,同日,被告が本件立替払契約に基づき購入した商品の納品を受けたことを確認する旨が記載されていた。 これを受けて,原告の担当者は,平成13年8月29日被告に電話して,契約意思の確認をしたが,被告から,本件立替払契約を結ぶつもりはないとか,契約書は単に事前審査のためのものであるなどの発言はなく,かえって担当者の確認に対し,請求書の送付先は自宅でよいなどの回答があった。 そこで,原告は,販売店に通知して,本件立替払契約の約定所定の,同契約を成立させるのに必要な手続を取った。 (7)実際には,当時Aは,経済的に破綻状態にあり,平成13年9月4日,東京地方裁判所に自己破産を申し立てて,破産宣告を受けてしまった。原告は,同月5日,上記破産申立を知ったが,振込中止の手続が間に合わず,同日中に本件商品代金が支払われた。その後,上記破産手続は,平成14年3月28日廃止になり,一般債権者に配当はなかった。 一方,被告に対する本件商品の引渡はなく,被告がBに事情を確認したところ,同社のI常務取締役から,Aは,自社とは無関係な会社であって,Bや「H」の名称を無断で使用していたものである旨の回 なかった。 一方,被告に対する本件商品の引渡はなく,被告がBに事情を確認したところ,同社のI常務取締役から,Aは,自社とは無関係な会社であって,Bや「H」の名称を無断で使用していたものである旨の回答があった。 本件立替払契約の成否(前示第2の2(1)①の主張について)(1)前示1(5)(6)認定の事実によれば,被告は,本件契約書に署名押印し,これが被告の意思に基づき原告に提出されているのであって,客観的に契約の申込があったと認めることができ,これに対する原告の承諾も存在するといえるから,原告と被告の間に本件立替払契約が成立したと認めるのが相当である。 (2)これに対し,被告は,本件立替払契約を締結する意思を有しておらず,契約締結の申込もしていない旨を主張しており,乙10,被告本人の供述中には,(a)本件契約書や本件確認書は,あくまでクレジットの事前審査のために作成したものにすぎず,(b)自分が署名押印した当時,本件契約書には,商品名,代金額等が記載されていなかったなどと,上記主張に沿う部分がある。 しかしながら,当時の被告の認識や代理店契約書等の作成状況は,前示1(5)認定のようなものであって,そのほかに被告本人の供述等を精査しても,原告の審査が通った後に,あらためて本件立替払契約を締結し直すことが予定されていたとは認められず,上記(a)の主張は直ちに採用することができない。 また,上記(b)の事実を認めるだけの客観的証拠はないうえ,前示1(3)(4)認定の事実によれば,被告は,モバイルショップのオーナーとなるための登録料3万円,簡易店舗代15万円,機材一式95万円の合計113万円(消費税別)の相当部分を,クレジットその他の立替払契約の対象とする旨の認識を有していたと認められるところ,本件契約書記載の前示1(6)の商品名や代金額は, 15万円,機材一式95万円の合計113万円(消費税別)の相当部分を,クレジットその他の立替払契約の対象とする旨の認識を有していたと認められるところ,本件契約書記載の前示1(6)の商品名や代金額は,上記物品のうち,機材一式と簡易店舗代の名称や代金額110万円(消費税込で115万5000円)とほぼ一致していると認められ,被告の認識と本件契約書の記載との間に重大な齟齬は存在しないというのが相当である。 したがって,そのほか,前示1(6)第2段認定の本件電話による意思確認の内容も考え併せれば,本件契約書の商品名欄や代金額欄が後で補充されたものであるとしても,これによって,直ちに上記(1)の認定が左右されるとはいえず,被告の上記主張は,いずれも採用することができない。 (3)次に,被告は,Aが原告の代理人ないし代行者であることを前提に,(ア)Aの担当者との間では,上記(2)(a)の趣旨の合意があった,(イ)平成13年8月28日頃,Aに本件立替払契約等を解除してほしい,ないし契約はしない旨を伝えており,(ウ)その後同社のFからは,契約はすでに解除されている旨の説明を受けたなどの事情をあげて,本件立替払契約の不成立を主張しており,乙10,被告本人の供述中には,これに沿う部分がある。 しかしながら,前示1(4)(5)(6)認定の事実によれば,(a)Aは,いわゆる締約行為上の代行者に当たり,原告に代わって,本件立替払契約の勧誘や契約内容の説明を行ない,顧客に対する契約書の交付や受領等の事実行為を行なう権限があり,あるいはこれを原告から許容されていたと認めるのが相当であるが,(b)これを超えて,原告からAに,契約申込に対する承諾や,契約内容の変更,解約その他の法律上の行為を行なう権限が授与されていたと認めるだけの証拠はないし,被告主張の前示第2の2(2) 当であるが,(b)これを超えて,原告からAに,契約申込に対する承諾や,契約内容の変更,解約その他の法律上の行為を行なう権限が授与されていたと認めるだけの証拠はないし,被告主張の前示第2の2(2)②オないしキ掲記の事情から,上記代理権を推認ないし擬制することもできないというのが相当である。 したがって,被告の上記主張も採用することができない。 本件立替払契約の錯誤無効の成否(前示第2の2(2)③の主張について)(1)一般に,顧客と販売店間の売買契約の代金を目的として,割賦購入斡旋業者が顧客と締結する立替払契約の締約行為について,販売店や取次店が,当該割賦購入斡旋業者の代行者となり,顧客との間で当該立替払契約の勧誘や説明,契約書の交付や受領等の事実行為を行なった場合において,代行者の詐欺的行為によって,顧客が錯誤に陥り,立替払契約を締結したときは,少なくとも当該立替払契約が代行者の詐欺的行為の手段として利用されたなどの事情がある限り,上記錯誤が立替払契約締結の動機となったにすぎない場合であっても,顧客は,当該代行者の認識と割賦購入斡旋業者の認識とを同視して,自己の動機が当該立替払契約の要素となっていることを割賦購入斡旋業者に対抗し,同契約の無効を主張できると解するのが相当である。 すなわち,通常,割賦購入斡旋業者と販売店ないし取次店との間には,加盟店契約が締結されており,これによって,割賦購入斡旋業者は,販売店等が開拓した顧客への信用供与により立替払手数料を取得するという営業上の利益を得るほか,直接販売店等から加盟店料を徴収するなどの関係が存在するところ,当該立替払契約が,販売店等の締約行為上の代行者の詐欺的行為の手段として利用された場合には,債務不履行責任の判定上は,履行補助者の過失が債務者の過失とみなされるのと同様に,錯誤の成否の するところ,当該立替払契約が,販売店等の締約行為上の代行者の詐欺的行為の手段として利用された場合には,債務不履行責任の判定上は,履行補助者の過失が債務者の過失とみなされるのと同様に,錯誤の成否の判定上,締約行為上の代行者の認識を当該割賦購入斡旋業者自身の認識と同視するのが,信義則及び報償責任の原則に合致するというべきであって,その結果,割賦購入斡旋業者は,当該代行者が自己と無関係な第三者にすぎない旨を主張できなくなっても,やむを得ないからである。 そこで,次項以下で,本件に関し,上記の点について検討する。 (2)まず,AとBとの関係の存否からみるに,Bからは,前示1(7)のとおり両社の関係を否定する趣旨の回答がなされており,またAの破産後も,Bの経営に支障が生じたり,同破産手続において,同社の責任が追及されたりした形跡はないから,以上によれば,Aは,実際にはBと関係がないにもかかわらず,前示1(1)(2)(3)認定のとおり,有力な会社であるBの東京営業所を名乗り,あるいは同社の商標である「H」の名称に無断で便乗して,販売代理店の募集をし,同(3)認定のような内容虚偽の会社紹介ビデオまで使用していたと認めるのが相当である。 したがって,以上のほか,前示1(4)の契約条件は極めて破格のものであり,経営見通しにも誇張があるとみられる点も考え併せると,Aによる前示1(2)ないし(5)認定の催事販売店のオーナーの募集は,いわゆる詐欺的商法の類と認めるべきであって,同社は,実際は困難であるにもかかわらず,被告に,自社の開拓した営業スペースの斡旋や,有力な販売商品の供給が受けられると誤信させて,本件立替払契約を締結させたものと認めるのが相当である。 (3)そして,上記(2)第一段のような信用力の仮装行為は,通常,逆に信用性の低さの徴表に当たるという 売商品の供給が受けられると誤信させて,本件立替払契約を締結させたものと認めるのが相当である。 (3)そして,上記(2)第一段のような信用力の仮装行為は,通常,逆に信用性の低さの徴表に当たるというべきところ,被告が,上記(2)認定のAの実態や,オーナー募集の問題点を知っていれば,容易に同社の勧誘に基づき,本件立替払契約のような信用取引に入ることはないと認められるから,以上によれば,被告には,本件立替払契約の締結に当たり,重要な動機の錯誤があり,Aは,その事情を知悉していたと認めるのが相当である。 (4)他方,前示1(2),(4)(エ),(5)第1段各認定の資産状況や営業状態,説明会参加の動機等からすれば,Aからオーナー募集の勧誘を受けた当時の被告の資力は,十分なものではなかったと認められるのであって,Aは,被告に原告との間で本件立替払契約を締結させるのでなければ,本件商品代金相当の資金を領得することは困難だったというべきであるから,Aは,本件立替払契約を,みずからの行なう詐欺的行為の重要な手段として利用したと認めるのが相当である。 (5)これに対し,原告は,前示2(3)(a)のとおり,締約行為上,Aを自己の代行者として使用して,被告に本件立替払契約を締結させたものであるから,被告は,上記(3)末尾のAの認識をもって,原告自身の認識と主張することが許されるというのが相当であって,原告は,上記(2)(3)掲記の被告の動機が,本件立替払契約上表示されていたことを否定できないというべきである。 そして,以上の認定は,前示2(3)(b)のとおり,Aに法律行為に関する代理権が授与されていなかったとしても,左右されるものではないから,結局本件立替払契約の錯誤無効の抗弁には,理由があるというのが相当である。 結論 以上の次第で,その余の点について検 行為に関する代理権が授与されていなかったとしても,左右されるものではないから,結局本件立替払契約の錯誤無効の抗弁には,理由があるというのが相当である。 結論 以上の次第で,その余の点について検討するまでもなく,原告の請求は,すべて理由がない。 岐阜地方裁判所多治見支部裁判官夏目明徳
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