令和1(わ)886 公職選挙法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和2年2月19日 札幌地方裁判所
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判決文本文3,879 文字)

主文 被告人Aを懲役10月に,被告人B,被告人C及び被告人Dをそれぞれ懲役6月に処する。 被告人4名に対し,この裁判が確定した日から5年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは,平成31年2月28日施行のa町議会議員選挙に際し,同選挙に立候補する決意を有していたもの,被告人B,被告人C及び被告人Dは,被告人Aの選挙運動者であり,被告人Aが同選挙に立候補する決意を有することを知っていたもので あるが,被告人4名は,第1 被告人Aの選挙運動者であるE及び同Fと共謀の上,被告人Aの当選を得,又は得させる目的をもって,いまだ被告人Aの立候補の届出のない同月14日午前11時頃から同日午後0時30分頃までの間,北海道夕張郡a町(住所省略)所在のGにおいて,別紙一覧表1記載のとおり,同選挙の選挙人であるHほか33 名に対し,被告人Aのための投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として,1人当たり1500円相当(合計5万1000円相当)の飲食の供応接待をするとともに,立候補届出前の選挙運動をし,第2 被告人Aの選挙運動者であるI,同J,同K及び同Lと共謀の上,被告人Aの当選を得,又は得させる目的をもって,いまだ被告人Aの立候補の届出のない同 日午後3時頃から同日午後4時30分頃までの間,同町(住所省略)所在のMにおいて,別紙一覧表2記載のとおり,同選挙の選挙人であるNほか36名に対し,被告人Aのための投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として,1人当たり1705円相当(合計6万3085円相当)の飲食の供応接待をするとともに,立候補届出前の選挙運動をし, 第3 被告人Aの選挙運動者であるO,同P及び同Qと共謀の上,被告人Aの当選を 1人当たり1705円相当(合計6万3085円相当)の飲食の供応接待をするとともに,立候補届出前の選挙運動をし, 第3 被告人Aの選挙運動者であるO,同P及び同Qと共謀の上,被告人Aの当選を 得,又は得させる目的をもって,いまだ被告人Aの立候補の届出のない同月19日午前11時頃から同日午後0時30分頃までの間,同町(住所省略)所在のRにおいて,別紙一覧表3記載のとおり,同選挙の選挙人であるSほか49名に対し,被告人Aのための投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として,1人当たり1523円相当(合計7万6150円相当)の飲食の供応接待 をするとともに,立候補届出前の選挙運動をし,第4 被告人Aの選挙運動者であるT,同U,同V,同W及び前記Lと共謀の上,被告人Aの当選を得,又は得させる目的をもって,いまだ被告人Aの立候補の届出のない同日午後3時頃から同日午後4時30分頃までの間,同町(住所省略)所在のXにおいて,別紙一覧表4記載のとおり,同選挙の選挙人であるYほか22 名に対し,被告人Aのための投票及び投票取りまとめ等の選挙運動をすることの報酬として,1人当たり1932円相当(合計4万4436円相当)の飲食の供応接待をするとともに,立候補届出前の選挙運動をした。 (法令の適用)被告人4名について,それぞれ 罰条判示第1ないし第4の各行為のうち供応接待の点いずれも包括して刑法60条,公職選挙法221条1項1号事前運動の点 いずれも包括して刑法60条,公職選挙法239条1項1号,129条科刑上一罪の処理判示第1ないし第4の各行為についていずれも刑法54条1項前段,10条(1罪として重い供応接待の罪の刑で処断) 刑 ,公職選挙法239条1項1号,129条科刑上一罪の処理判示第1ないし第4の各行為についていずれも刑法54条1項前段,10条(1罪として重い供応接待の罪の刑で処断) 刑種の選択 判示第1ないし第4の各罪についていずれも懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重) 刑の執行猶予刑法25条1項(量刑の理由)被告人らは,選挙期間前に,a町農村部の行政区のうち,4つの区の選挙人を対象として,各区ごとに1回ずつ「激励会」と称する会合を開催し,合計144名の選挙 人に対し,約23万円分の飲食の供応接待をしたものである。供応接待を受けた人数は多数に及び,これらの区の選挙当日の有権者数459名のうちの約3割が「激励会」に出席していたこと,さらに,本件選挙における被告人Aの得票数が524票であったことも踏まえると,選挙の公正さを害した程度は大きいといえる。犯行態様をみても,激励会の出席者から会費を受領したかのように装うために架空の領収証を作成・ 発行するなどしており,悪質である。 他方で,これらの区では,従前から,町議会議員選挙に際し,統一候補者を支援しており,その中で,本件各犯行と同様に,立候補者側において,「激励会」を開催することが繰り返されており,被告人らは,激励会を取り止めることによる有権者からの批判を恐れ,このような慣習に従って激励会を開催したものである。そのような事情 があるとしても,民主主義社会における選挙の重要性に鑑みれば,被告人らは,立候補を決意し,又は立候補予定者を支援する後援会幹部となった以上は,公職選挙法の定めるルールを理解してそれを遵守するこ があるとしても,民主主義社会における選挙の重要性に鑑みれば,被告人らは,立候補を決意し,又は立候補予定者を支援する後援会幹部となった以上は,公職選挙法の定めるルールを理解してそれを遵守することを優先すべきである。そして,供応接待や事前運動が規制されていることはさほど難しいルールでもないのであるから,これまでの慣習が違法であることは認識できるはずであるし,認識すべきである。したが って,被告人らが本件各犯行に及んだことは選挙の公正さを求める公職選挙法のルー ルを軽視するものであり,その地域の悪しき慣習を断ち切り難いからといって,その責任非難の程度を殊更弱めるのは相当ではない。 そうすると,本件では,被告人らについて,懲役刑を選択するのが相当である。 ただ,提供した飲食の代金額が選挙人1人当たり千数百円にとどまっており,その点では悪質性が高くない。また,本件各犯行態様は前例を参考としたもので,被告人 らが自ら考え出すなどしたものでもない。これらの点は,一定程度被告人らに有利に斟酌するのが相当である。したがって,同種事案と比較して特に重い刑とする必要はない。 そこでさらに,被告人らの責任につき,個別に検討する。 まず,被告人Aは,もともと立候補自体に積極的でなく,選挙の日が迫る中で依頼 を引き受けたという事情はあるが,本件選挙の立候補予定者として激励会を行わないという決断をすることができる立場にあった。しかも,規模を縮小したとはいえ,激励会の開催を決め,供応接待の資金を提供したほか,各激励会において,自らへの支援を求めたものである。被告人らの中では最も重い責任を負うべきである。 次に,被告人Cは,被告人Aの後援会幹事長として,激励会の式次第を起案するな ど,激励会の開催に向けた準備を取り仕切ってい を求めたものである。被告人らの中では最も重い責任を負うべきである。 次に,被告人Cは,被告人Aの後援会幹事長として,激励会の式次第を起案するな ど,激励会の開催に向けた準備を取り仕切っていたもの,被告人Dは,後援会会計長として,被告人Aから提供された供応接待の資金を各地区に分配するなどしたものであるところ,それぞれ本件各犯行において重要な役割を果たしており,被告人Cと被告人Dとの間では,量刑に差をつけるほどに役割の大きさに違いがあるとはいえない。 そして,被告人Bは,被告人Cや被告人Dと比べ,本件各犯行において果たした具 体的な役割は小さいものの,被告人Aの前にこれらの地区の統一候補者として町議会議員を3期務め,初めて激励会を開催する他の被告人らと比べて,本件各犯行の違法性を充分認識している立場にあったにもかかわらず,後援会会長として,激励会の開催を了承し,後援会の役員会では,架空の領収証を配ればよい旨の話をしたり,全ての激励会に出席して被告人Aへの支援を求めたのである。したがって,被告人C及び 被告人Dと同程度の責任を負うべきである。 他方で,被告人らに前科がないこと,被告人らがいずれも事実関係を認めていること,被告人Aについては,すでに町議会議員を辞職していることなども踏まえると,被告人らに実刑をもって臨むのは相当ではない。そこで,被告人らに対しては,各人の責任の重さに応じて,主文の刑を科した上で,その刑の執行を猶予することが相当であると判断した。もっとも,公民権停止期間を5年より下回るべき特段の事情はな いから,その猶予期間は5年間とした。 (求刑被告人Aにつき懲役10月,被告人Cにつき懲役8月,被告人B及び被告人Dにつきそれぞれ懲役6月)令和2年2月19日札幌地方裁判所刑事第2部 いから,その猶予期間は5年間とした。(求刑被告人Aにつき懲役10月,被告人Cにつき懲役8月,被告人B及び被告人Dにつきそれぞれ懲役6月) 令和2年2月19日 札幌地方裁判所刑事第2部 裁判長 裁判官中川正隆 裁判官向井志穂 裁判官岩竹遼 (別紙省略)

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