- 1 -平成23年12月7日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第18564号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成23年10月5日判決東京都目黒区<以下略>原告 X東京都大田区<以下略>被告株式会社リコー同訴訟代理人弁護士田中昌利同東崎賢治同井上聡 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 請求(1) 被告は,原告に対し,199万4200円及びこれに対する昭和56年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 仮執行宣言 2 答弁(1) 本案前の答弁本件訴えを却下する。 (2) 本案に対する答弁主文同旨第2 事案の概要- 2 - 1 本件は,原告が被告に対し,被告は,従前の訴訟(東京地方裁判所平成13年(ワ)第11935号,東京高等裁判所平成13年(ネ)第4275号,最高裁判所平成14年(オ)第59号)の判決の成立過程において,原告の権利を害する意図のもとに,事実を秘匿した目録を提出し,虚偽の事実を主張するという作為又は不作為によって,裁判所を欺罔する等の不正な行為を行い,その結果,あり得べからざる内容の確定判決を取得し,かつ,損害賠償 る意図のもとに,事実を秘匿した目録を提出し,虚偽の事実を主張するという作為又は不作為によって,裁判所を欺罔する等の不正な行為を行い,その結果,あり得べからざる内容の確定判決を取得し,かつ,損害賠償義務を免れたことによって,原告に損害を与えたと主張して,主位的には不法行為に基づく損害賠償請求として,予備的には不当利得返還請求として,損害406億8948万円の一部である199万4200円及びこれに対する不法行為後である昭和56年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提となる事実(争いのない事実以外は,証拠を項目の末尾に記載する。ただし,書証は枝番を含む。)(1) 原告は,次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい,本件実用新案権に係る考案を「本件考案」という。)を有していた(甲3,5,11,乙4)。 登録番号第978602号考案の名称カッター装置付きテープホルダー出願日昭和41年6月13日出願公告昭和47年1月22日登録日昭和47年9月29日満了日昭和56年6月13日実用新案登録請求の範囲「巻回テープ類を保持する本体1に固定刃2を有する引出口3を形成し,該引出口3には固定刃2と共に,引出したテープT類を剪断する可動刃4を回動自在に設けたカッター装置付テープホルダーにおいて,操作摘み9を有- 3 -する可動刃4の緩挿軸8に幅裁断用切刃7を固着し,軸8と引出口3の間に一対の案内ロール5,6を装架した構造」(2) 原告と被告間の訴訟の経緯等(甲3,乙1~35,38)ア原告は,昭和53年以降,東京地方裁判所に対し,被告を相手方として,被告が製造販売した複 対の案内ロール5,6を装架した構造」(2) 原告と被告間の訴訟の経緯等(甲3,乙1~35,38)ア原告は,昭和53年以降,東京地方裁判所に対し,被告を相手方として,被告が製造販売した複写機である「リコーPPC900及びB・Aチェンジャー」,「リコーPPC900及びセンタースリッター」並びに「リコピーPLC5000オート」(以下,「被告係争複写機」という。)について,原告の有する本件実用新案権を侵害すると主張して,不法行為による損害賠償請求,又は,不当利得返還請求として,一定の台数分の製品についての請求等の細分化した一部請求として,多数回にわたり訴訟を提起し,いずれも請求棄却の判決を受けてきた。 これらの訴訟において,侵害対象物は被告係争複写機とされていたものの,侵害の有無の判断において対象となっていたのは,被告係争複写機のうちのカッター装置付き複写用ロール紙(転写紙)ないしロール感光紙の支持機構部分,すなわち,本件考案に対応する部分であった(この点について,原告は,昭和60年(ワ)第5132号事件において,前訴において,本件考案と,イ号製品ないしハ号製品とを対比するに当たり,被告製品中本件考案の技術的範囲に属しない複写機構も含めて主張した主張上の不備があり,その結果敗訴したと主張したが,同事件判決においては,「確定判決における,本件考案とイ号,ロ号及びハ号製品の対比にあたっては,それらの製品のロール紙支持機構が原告の主張として取り上げられていることが認められ,この点において,前訴において原告の主張に不備があったとはみられず,かつ,前訴において,裁判所は原告の右ロール紙支持機構に関する主張について判断を行っている」とされた(乙5))。 イ原告は,平成7年,東京地方裁判所に対し,上記アと同様の訴訟(平成7年(ワ)第 ,かつ,前訴において,裁判所は原告の右ロール紙支持機構に関する主張について判断を行っている」とされた(乙5))。 イ原告は,平成7年,東京地方裁判所に対し,上記アと同様の訴訟(平成7年(ワ)第115号)を提起したが,同年7月14日,原告の訴えは一部- 4 -請求の名のもとに同一の訴訟を蒸し返すものであり,これまで繰り返し理由がないとする裁判所の確定した判断を受けている請求と実質的に同じ請求をするものである等として,訴権の濫用に該当し,訴えの利益を欠き不適法である等として訴えを却下する旨の判決を受けた。 ウ原告は,その後も,東京地方裁判所に対し,上記と同様の訴訟を提起したが(平成7年(ワ)第25729号,平成8年(ワ)第1042号,平成9年(ワ)第2356号,同年(ワ)第2358号,平成10年(ワ)第7808号,平成11年(ワ)第1317号,平成12年(ワ)第6663号,同年(ワ)第16890号),いずれもイと同様の理由で訴えを却下する旨の判決を受けた。 (3) 平成13年訴訟(甲1~8,11,乙38~41)ア(ア) 原告は,平成13年6月8日,東京地方裁判所に対し,被告を相手方とする損害賠償請求訴訟(平成13年(ワ)第11935号)を提起した(以下「前訴」という。)。 (イ) 原告は,前訴訴状(甲5)に原告作成に係る本判決別紙1-1「イ号侵害物(「カッター装置付きテープホルダー」)目録」,同別紙1-2「ロ号侵害物(「カッター装置付きテープホルダー」)目録」及び同別紙1-3「ハ号侵害物(「カッター装置付きテープホルダー」)目録」を添付し,各目録記載の物件は,原告の本件実用新案権を侵害すると主張した。上記各目録において,原告は,「ロール紙を切断するカッター装置を施した本体」部分である「カッター装置付きテープホルダー」と, を添付し,各目録記載の物件は,原告の本件実用新案権を侵害すると主張した。上記各目録において,原告は,「ロール紙を切断するカッター装置を施した本体」部分である「カッター装置付きテープホルダー」と,「複写機構」部分である「被告係争複写機」とからなる「併存体」のうち,「カッター装置付きテープホルダー」を侵害物とするとしていた。 他方,原告は,前訴において損害額を主張するに当たっては,被告係争複写機の製造販売台数から,その実施料相当額を算出していた。 - 5 -(ウ) これに対し,被告は,平成13年7月5日,前訴答弁書(甲11)を提出し,それまでに反復された同種訴訟の経緯から見て,前訴訴状において原告が主張するイ号侵害物,ロ号侵害物及びハ号侵害物は,それぞれ「被告係争複写機」と解されるとした上,被告作成に係る本判決別紙2-1「イ号物件目録」,同別紙2-2「ロ号物件目録」及び同別紙2-3「ハ号物件目録」を前訴答弁書に添付した。 (エ) 原告は,平成13年7月10日,前訴準備書面(甲7)を提出し,被告作成に係る上記(ウ)の前訴答弁書添付別紙2-1「イ号物件目録」及び別紙2-3「ハ号物件目録」は,本件実用新案権の構成要件「引出口3」に該当する「固定刃と回転刃の間隙部」に関する記載を故意に欠如させていること,別紙2-3「ハ号物件目録」は,本件実用新案権の構成要件「一対の案内ロール5,6」に該当する「上下ローラ」等に関する記載を故意に欠如させていること等を主張した。 (オ) 東京地方裁判所は,平成13年7月24日,訴えを却下する旨の判決を言い渡した(甲3,乙38)。同判決は,原告が作成した上記(イ)の各目録を基にして,本判決別紙3-1「別紙イ号製品目録」,同別紙3-2「別紙ロ号製品目録」及び同別紙3-3「別紙ハ号製品目録」を前訴判決 渡した(甲3,乙38)。同判決は,原告が作成した上記(イ)の各目録を基にして,本判決別紙3-1「別紙イ号製品目録」,同別紙3-2「別紙ロ号製品目録」及び同別紙3-3「別紙ハ号製品目録」を前訴判決に添付し,原告は「被告係争複写機」をもって本件実用新案権の侵害品と主張しているとして,(2)イ,ウと同様の判断をした。 イ原告は,東京高等裁判所に対し,控訴したが(平成13年(ネ)第4275号),同裁判所は,平成13年10月30日,控訴を棄却する旨の判決を言い渡した(甲2,乙39)。同判決は,本判決別紙1-1~3の各目録(ただし,別紙1-1及び別紙1-3の各3枚目の9行目「きる」を「できる」と訂正したものである。)を添付し,同各目録記載の物件と,第1審判決(甲3)添付の各目録記載の物件は同一であると判断した。 ウ原告は,最高裁判所に対し,上告したが(平成14年(オ)第59号),- 6 -同裁判所は,平成14年3月12日,上告を棄却する旨の決定をした(甲1)。 エなお,原告は,知的財産高等裁判所に対し,平成19年3月8日付けで,確定判決(甲2,乙39)に対する再審の訴えを提起し,民事訴訟法338条1項5号の再審事由が存すると主張したが(平成19年(ム)第10001号),同裁判所は,同月27日,再審の訴えを却下する旨の決定をした。 (4) 原告は,東京地方裁判所に対し,平成23年6月7日,被告を相手方として,本件訴訟を提起した。 3 当事者の主張(1) 原告の主張ア被告は,次のとおり,平成13年訴訟の判決の成立過程において,原告の権利を害する意図のもとに,事実を秘匿した目録を提出し,虚偽の事実を主張するという作為又は不作為によって,裁判所を欺罔する等の不正な行為を行い,その結果,ありうべからざる内容の確定判決を取得し 告の権利を害する意図のもとに,事実を秘匿した目録を提出し,虚偽の事実を主張するという作為又は不作為によって,裁判所を欺罔する等の不正な行為を行い,その結果,ありうべからざる内容の確定判決を取得し,かつ,損害賠償義務を免れたことによって,原告に損害を与えた。 (ア) 原告は,平成13年訴訟において「カッター装置付きテープホルダー」に関する本件実用新案権を主張し,その考案に係る「カッター装置付きテープホルダー」関連物品をもって侵害品と主張していたのであるから,同訴訟は,同一の紛争を蒸し返すものではなく,訴権の濫用ではなかった。 (イ) 原告は,平成13年訴訟の第1審において,原告作成に係る本訴別紙1-1~3の各目録(「イ号侵害物(『カッター装置付きテープホルダー』)目録)等。ただし,控訴審における訂正前のもの。)を提出し,同訴訟の控訴審において,上記第1審訴状別紙1-1~3の各目録の訂正を申し立て(甲8),被告は,これを異議なく認めているから,- 7 -同判決に添付された同各目録は当事者間に争いがないものであるところ,同各目録には,本件実用新案権の「引出口3」に該当する「間隙部」の記載や,「一対の案内ロール5,6」に該当する「上・下ローラ5,6」の記載が存在していた。また,前提となる事実(2)イ,ウの平成7年(ワ)第25729号,平成8年(ワ)第1042号,平成9年(ワ)第2356号,同年(ワ)第2358号,平成10年(ワ)第7808号,平成11年(ワ)第1317号,平成12年(ワ)第6663号の各判決添付の目録には,本件実用新案権の構成要件「引出口3」に該当する「60固定刃21と回転刃22の間隙部」又は「58固定刃2と回転刃3の間隙部」との記載や,構成要件「一対の案内ロール5,6」に該当する「55搬送ローラ対」等の記載が存在 成要件「引出口3」に該当する「60固定刃21と回転刃22の間隙部」又は「58固定刃2と回転刃3の間隙部」との記載や,構成要件「一対の案内ロール5,6」に該当する「55搬送ローラ対」等の記載が存在していた。 (ウ) 他方,被告は,前提となる事実(3)ア(ウ),(エ)のとおり,平成13年訴訟の第1審において被告作成に係る別紙2-1~3の各目録(「イ号物件目録」等)を提出し,また,同種訴訟である平成12年(ワ)第16890号事件において被告作成に係る各目録(乙34)を提出したが,いずれの目録においても,本件実用新案権の構成要件「引出口3」に該当する「60固定刃21と回転刃22の間隙部」又は「58固定刃2と回転刃3の間隙部」との記載や,構成要件「一対の案内ロール5,6」に該当する「55搬送ローラ対」等の記載は存在しておらず,これらの記載を故意に欠如させるという欺罔行為を行った。 (エ) 被告は,本件実用新案権に係る物品と,これに係らない物品が,異なる技術思想体系の物品であることを知っており,(ア)のとおり,平成13年訴訟が,同一の紛争を蒸し返すものではないことを認識していた。 (オ) また,被告は,平成13年訴訟の第1審の第1回口頭弁論期日において,「減縮後の請求に対し」答弁書を陳述したが,上記「減縮後の請- 8 -求に対し」とは,被告において,原告作成に係る別紙1-1~3の各目録記載のイ号~ハ号各侵害物についての実施料相当額の一部の請求を認めたことを意味していた。 (カ) 被告の欺罔行為により,原告が主張する侵害品が「被告係争複写機」であることを前提とした本来あり得べからざる内容の判決となった。 (キ) 被告は,上記確定判決を取得するとともに損害賠償の義務を免れたことにより,原告に406億8948万円の損害を生じさせているか あることを前提とした本来あり得べからざる内容の判決となった。 (キ) 被告は,上記確定判決を取得するとともに損害賠償の義務を免れたことにより,原告に406億8948万円の損害を生じさせているから,うち199万4200円を請求する。すなわち,別紙目録1-1~3記載のイ号~ハ号の各「カッター装置付きテープホルダー」は,本件実用新案権を侵害するところ,イ号侵害物については,昭和47年3月から昭和56年6月13日までの間に被告が製造販売した16万1100台に係る実施料相当額86億0274万円のうち当初の7台に係る実施料相当額37万3800円,ロ号侵害物については,昭和47年3月から昭和56年6月13日までの間に被告が製造販売した9万1100台に係る実施料相当額48億6474万円のうち当初の6台に係る実施料相当額32万0400円,ハ号侵害物については,昭和47年2月から昭和56年6月13日までの間に被告が製造販売した10万4700台に係る実施料相当額272億2200万円のうち当初の5台に係る実施料相当額130万円の合計199万4200円及びこれに対する侵害行為後である昭和56年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する。 イ被告の主張に対する反論(消滅時効)(ア) 権利主張を止めたものでもなく,権利についての判決による公権的判断を受ける機会を放棄したものでもないような場合には,訴えを取り下げても訴えの提起による時効中断の効力は存続すると解するのを相当- 9 -とする判例(最判昭和50年11月28日民集29巻10号1797頁),著しく正義公平の理念に反する場合には民法724条後段の効力は生じない旨の判例(最判平成21年4月28日判例タイムズ1299号134頁)からすると,本件において消滅時効 集29巻10号1797頁),著しく正義公平の理念に反する場合には民法724条後段の効力は生じない旨の判例(最判平成21年4月28日判例タイムズ1299号134頁)からすると,本件において消滅時効を認めることは相当ではない。 (イ) 不当利得返還請求の時効期間は10年であるから,未だ時効期間は経過していない。 (ウ) 被告は,前訴の第1審の第1回口頭弁論期日において「減縮後の請求に対し…」と陳述しているから,全部請求(406億8948万円)を前提として,前訴において被告が認める減縮後の請求にかかる一部請求(199万4200円)については,承認(民法147条)となる。 (2) 被告の主張(本案前の答弁)ア本件訴えは,平成7年訴訟及び前訴を含む先行訴訟と同様,請求棄却の判決が確定した事件と同一の紛争を蒸し返すものであり,繰り返し理由がないとする裁判所の確定した判断を受けている請求と実質的に同一の請求をするものであって,被告の地位を不当に長く不安定な状態におき,ことさら被告に応訴のための負担を強いるものである。 イ原告が主張する被告の欺罔行為については,既に,前訴の控訴審において,原告が,前訴の第1審判決添付のイ号物件目録,ロ号物件目録及びハ号物件目録が,平成13年訴訟の控訴審判決添付のイ号目録,ロ号目録及びハ号目録と実質的に同一でない旨主張したのに対し,東京高等裁判所は,「両者が同一の製品であることは明らかである。」旨の実質的な判断をしているから(甲2),欺罔行為によって虚偽の確定判決を取得した場合に当たらないことは明らかである。 ウ以上のとおり,原告は,平成7年訴訟及び前訴において訴え却下の判決が確定しているにもかかわらず,なおも本件訴訟を提起したものであるか- 10 -ら,原告の本件訴えが,訴権の濫 明らかである。 ウ以上のとおり,原告は,平成7年訴訟及び前訴において訴え却下の判決が確定しているにもかかわらず,なおも本件訴訟を提起したものであるか- 10 -ら,原告の本件訴えが,訴権の濫用に当たる不適法なものであることは明らかであり,しかも,その点を補正することができないから,原告の訴えは直ちに却下されるべきである。 (3) 被告の主張(請求原因に対する認否反論)ア原告の主張する事実は否認し,法的主張は争う。 イ不法行為が成立しないこと(ア) 被告による目録の提出行為は「虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔する等の不正な行為」とはなり得ないこと目録は,訴訟における審理の対象となる物件を特定するために提出されるものであり,被告は,侵害論における双方当事者の主張がすれ違いの議論とならないよう目録を提出するが,最終的には,訴訟物の範囲を画するものとして,原告が設定する権限を有しているから,被告が提出する目録は,原告が設定する権限を有する訴訟物の範囲についての案の提示にすぎず,事実の主張には当たらない。 (イ) 原告の提出した目録に基づいて裁判所が判断したこと東京高裁は,前訴において,原告による請求内容を,原告が提出した目録に基づいて画されるものと認識した上で,不適法な訴えであると判断したから,被告は,目録の提出により,裁判所を欺罔したものではない。 (ウ) 当事者間に確定判決が存在する場合,その判決の成立過程における相手方の不法行為を理由として,その判決の既判力ある判断を実質的に矛盾する損害賠償請求をすることは,確定判決の既判力による法的安定を著しく害する結果となるから,原則として許されるべきではなく,当事者の一方が,相手方の権利を害する意図のもとに,(a)作為又は不作為によって相手方が訴訟手続に関与す 確定判決の既判力による法的安定を著しく害する結果となるから,原則として許されるべきではなく,当事者の一方が,相手方の権利を害する意図のもとに,(a)作為又は不作為によって相手方が訴訟手続に関与することを妨げ,あるいは(b)虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔するなどの不正な行為を行い,その結果- 11 -本来在り得べからざる内容の確定判決を取得し,かつ,これを執行したなど,その行為が著しく正義に反し,確定判決の既判力による法的安定の要請を考慮してもなお容認し得ないような特別の事情がある場合に限って許されるものと解される(最判昭和44年7月8日民集23巻8号1407頁,最判平成10年9月10日判時1661号81頁,最判平成22年4月13日裁判集民事234号31頁)。さらに,(b)の類型においては,敗訴当事者も手続に関与していたものであり,自ら正しい認定を得るための資料を提出し得たのであるから,上記特別の事情がある場合とは,相手方の裁判所を欺罔する不正行為が刑事上詐欺罪の有罪判決が確定するなど明白に公序良俗に違反する訴訟行為による不法行為の成立が認められる場合に限られると解される(東京高判昭和45年10月29日判時610号53頁,名古屋地判昭和46年4月27日判タ264号230頁,東京地判昭和46年9月20日判タ272号335頁)。 原告は,被告が,原告と被告間の過去の訴訟において虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔した,すなわち,上記(b)の類型に該当すると主張するものであるが,原告の主張する行為につき刑事上詐欺罪の有罪判決が確定するなど明白に公序良俗に違反する訴訟行為は存在しない。したがって,上記特別の事情は存在せず,原告の主張は失当である。 (エ) 原告が本件訴訟において「欺罔行為」と主張する「被告が提出した目録に事実の隠蔽 明白に公序良俗に違反する訴訟行為は存在しない。したがって,上記特別の事情は存在せず,原告の主張は失当である。 (エ) 原告が本件訴訟において「欺罔行為」と主張する「被告が提出した目録に事実の隠蔽がある」旨の主張は,前訴において原告が既に行っているから,原告は,前訴で主張し排斥されたものと同一の主張を行うものであり,紛争の蒸し返しを試みるにすぎない。 (オ) 原告は,本件訴訟における主張と同一の主張に基づき,前訴の控訴審判決について,再審の訴えを提起し(乙40),裁判所はこれを不適法として却下しているから(乙41),原告は,再審手続で主張し排斥- 12 -されたものと同一の主張を行うものであり,紛争の蒸し返しを試みるにすぎず,上記特別の事情は存在しない。 (カ) 消滅時効原告の「平成13年判決の成立過程における被告の行為が不法行為に当たる」との主張を前提とすれば,遅くとも前訴判決が確定した平成14年3月12日には,原告は「損害及び加害者を知った」(民法724条)のであるから,既に消滅時効が完成している。 ウ不当利得返還請求権が存在しない原告は,昭和53年以降,被告に対し,多数の蒸し返し的な訴訟を提起してきており,被告は,原告と被告との間の過去の訴訟により一度も利得を得ておらず,かえって,応訴の負担を被り続けているのであるから,原告が被告に対して不当利得返還請求権を有することはあり得ない。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の答弁について被告は,本件訴訟は,平成7年訴訟及び前訴を含む先行訴訟と同様,請求棄却の判決が確定した事件と同一の紛争を蒸し返すものであり,原告は,平成7年訴訟及び前訴について訴え却下の判決が確定しているにもかかわらず,なおも本件訴訟を提起したものであるから,本件訴えは,訴権の濫用に当たる不適 した事件と同一の紛争を蒸し返すものであり,原告は,平成7年訴訟及び前訴について訴え却下の判決が確定しているにもかかわらず,なおも本件訴訟を提起したものであるから,本件訴えは,訴権の濫用に当たる不適法なものであると主張する。 しかしながら,原告は,平成7年訴訟及び前訴等の従前の訴訟においては,原告が保有する本件実用新案権が,被告が製造販売する製品により侵害され,これにより実施料相当額の損害を被ったと主張して,一部請求として内金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めていたのに対し(甲1~3,乙2~35,38,39),本件訴訟においては,被告は,前訴の判決の成立過程において,原告の権利を害する意図のもとに,事実を秘匿した被告作成に係る前訴答弁書別紙2-1~3の目録を提出し,虚偽の事実を主張するという作為又は- 13 -不作為によって,裁判所を欺罔する等の不正な行為を行い,その結果,ありうべからざる内容の確定判決を取得し,かつ,損害賠償義務を免れたことによって,原告に損害を与えたと主張して,不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求として,実施料相当額の損害の一部請求として199万4200円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるものであるから,上記従前の訴訟と本件訴訟では,審理の対象となる損害の主張において重複するものの,違法行為の主張において内容を異にしており,本件訴訟を提起することが,実質的に前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり,その確定判決によって紛争全体が解決されたとの被告の合理的期待に反し,被告に二重の応訴の負担を強いるものとまでいうことはできないものである。 したがって,本件訴えが信義則に反して不適法であると認めることはできず,被告の上記主張を採用することはできない。 2 被告の不法行為について 負担を強いるものとまでいうことはできないものである。 したがって,本件訴えが信義則に反して不適法であると認めることはできず,被告の上記主張を採用することはできない。 2 被告の不法行為についてそこで,原告の主張する被告の不法行為について検討する。 原告は,被告が前訴において,不実な内容の被告作成に係る前訴答弁書別紙2-1~3の各目録を提出したことが,裁判所に対する欺罔行為であり,不法行為を構成すると主張する。しかし,被告が,上記各目録を提出したのは,前訴において,原告が原告作成に係る前訴訴状別紙1-1~3の各目録を提出し訴訟の審理の対象となる侵害物件を特定したのに対し,被告側の主張を明らかにするために行ったものであって,適法な訴訟活動であり被告の行為に違法な点は認められない。 したがって,被告に違法な行為は認められないのであるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。 第4 結論以上により,原告の請求は,理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 - 14 -東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官菊池絵理 裁判官小川雅敏 小川雅敏
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