平成16(許)20 過料取消決定に対する抗告却下決定に対する許可抗告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年12月16日 最高裁判所第一小法廷 決定 破棄自判 広島高等裁判所 平成16(ラ)75
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判決文本文3,054 文字)

主文 原決定を破棄し,原々決定に対する抗告を棄却する。 理由 抗告人の抗告理由について 1 記録によれば,本件の経緯は,次のとおりである。 (1) D工業株式会社(以下「D工業」という。)の各取締役は平成12年9月30日に,監査役は平成13年9月30日にいずれも退任したが,同社の支店の所在地における登記につき,その旨の登記がされたのは平成15年10月15日であった。もっとも,上記各退任により,D工業では取締役及び監査役につき法定の員数が欠けることになったにもかかわらず,新たな取締役及び監査役は同年9月30日まで選任されなかったことから,上記各退任の登記手続は,同日まで行うことができないものであった(最高裁昭和41年(行ツ)第65号同43年12月24日第三小法廷判決・民集22巻13号3334頁参照)。 (2) D工業の支店の所在地を管轄する広島法務局可部出張所の登記官は,広島地方裁判所に対し,平成15年10月17日付けで,商業登記規則123条に基づき,D工業の支店の登記につき,同社の代表取締役である相手方に,商法498条1項1号に該当する同社の取締役,代表取締役及び監査役の退任登記を怠ったとの違反事項がある旨の通知をした。 広島地方裁判所は,上記通知の内容である退任登記を怠ったとする点については裁判をしなかったが,平成16年3月4日,相手方がD工業の代表取締役に在任中,平成12年9月30日に取締役が退任し,法定の員数を欠くに至ったのに,平成15年9月30日までその選任手続を怠ったことを理由として,相手方を過料6万円に処する旨の非訟事件手続法(以下「法」という。)208条ノ2第1項に規定する過料の裁判(以下「本件第1裁判」という。)をし,その異議申立期間が経過- 1 -した。 (3) ,相手方を過料6万円に処する旨の非訟事件手続法(以下「法」という。)208条ノ2第1項に規定する過料の裁判(以下「本件第1裁判」という。)をし,その異議申立期間が経過- 1 -した。 (3) D工業の本店の所在地を管轄する広島法務局の登記官は,広島地方裁判所に対し,平成15年10月30日付けで,商業登記規則123条に基づき,D工業につき,相手方に,商法498条1項18号に該当する取締役及び監査役の各選任を怠ったとの違反事項がある旨の通知をした。 広島地方裁判所は,平成16年3月24日,本件第1裁判の存在を看過し,本件第1裁判と同一の事由により,相手方を過料6万円に処する旨の法208条ノ2第1項に規定する過料の裁判(以下「本件第2裁判」という。)をし,その異議申立期間が経過した。 (4) 原々審広島地方裁判所は,平成16年4月13日,本件第2裁判が,同一の事由による確定した本件第1裁判が存在するにもかかわらずされたものであることを理由に,法19条1項を適用して本件第2裁判を取り消す旨の原々決定をした。 (5) 原々決定は,平成16年4月13日に検察官に通知され,検察官は,同月26日,原々決定に対する抗告をした。 2 原審は,次のとおり判示して,抗告人の原々決定に対する抗告を却下した。 原々決定は,過料の裁判を取り消した裁判であるから,法207条3項の「過料の裁判」に当たるものであり,これに対しては即時抗告をすることができるとするのが法の趣旨と解される。そうすると,原々決定に対する抗告は即時抗告によるべきものであるところ,本件の原々決定に対する抗告は,即時抗告期間経過後にされた不適法なものであって却下を免れない。 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 【要旨1】原々決定は,法 対する抗告は,即時抗告期間経過後にされた不適法なものであって却下を免れない。 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 【要旨1】原々決定は,法19条1項の規定に基づく取消しの裁判であって,法207条3項に規定する過料の裁判に当たるものではないところ,法19条1項所- 2 -定の非訟事件の裁判を取り消す裁判について,抗告を禁ずるとの規定がなく,かつ,即時抗告によるとする規定もない以上,同裁判に対しては通常抗告をすることができるものと解するのが相当である(法20条1項)。したがって,原審の上記判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。 4 更に進んで,原々審の判断の当否について検討する。 即時抗告に服する非訟事件の裁判は,法19条1項の規定による取消し及び変更をすることができないこと(同条3項),通常抗告に服する非訟事件の裁判についても,抗告により上級審の判断がされた場合には,同条1項による取消し及び変更の余地がないことに照らして,非訟事件の裁判が確定したときには,同項による取消し及び変更をすることができないものと解するのが相当である。 しかしながら,非訟事件の裁判は,法律上の実体的権利義務の存否を終局的に確定する民事訴訟事件の裁判とは異なり,裁判所が実体的権利義務の存在を前提として合目的な裁量によってその具体的内容を定めたり,私法秩序の安定を期して秩序罰たる過料の制裁を科するなどの民事上の後見的な作用を行うものである(最高裁昭和36年(ク)第419号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1089頁,最高裁昭和37年(ク)第243号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁,最高裁昭和37年(ク)第64号同41年12月27日大法廷決定・民集20巻 廷決定・民集19巻4号1089頁,最高裁昭和37年(ク)第243号同40年6月30日大法廷決定・民集19巻4号1114頁,最高裁昭和37年(ク)第64号同41年12月27日大法廷決定・民集20巻10号2279頁参照)。【要旨2】このような非訟事件の裁判の本質に照らすと,裁判の当時存在し,これが裁判所に認識されていたならば当該裁判がされなかったであろうと認められる事情の存在が,裁判の確定後に判明し,かつ,当該裁判が不当であってこれを維持することが著しく正義に反することが明らかな場合には,当該裁判を行った裁判所は,職権により同裁判を取り消し又は変更することができるものと解すべきである。 本件においては,前記1のとおり,確定した法208条ノ2に規定する過料の裁- 3 -判である本件第1裁判が存在したにもかかわらず,その存在が看過され,同一事由について本件第2裁判がされたものであるから,本件第2裁判は不当であってこれを維持することが著しく正義に反することが明らかであり,本件第2裁判を取り消すことができるものというべきである。したがって,職権により本件第2裁判を取り消した原々決定は,結論において是認することができる。 5 以上によれば,原々決定に対する抗告を却下した原決定は破棄を免れない。 論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。そして,前記説示によれば,本件第2裁判を取り消した原々決定は相当であるから,これに対する抗告人の抗告を棄却することとする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官島田仁郎裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官才口千晴)- 4 - 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉徳治 裁判官 才口千晴

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