平成18(行ウ)16 時間外手当等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年4月22日 奈良地方裁判所
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判決文本文19,574 文字)

- 1 -主文 被告は,原告Aに対し,736万8598円及びこれに対する平成18年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,802万8137円及びこれに対する平成18年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求を棄却する。 訴訟費用はこれを5分し,その1を被告の,その余を原告らの負担とする。 この判決は第1,2項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求の趣旨 被告は,原告Aに対し4427万9189円,被告Bに対し4804万9566円,及びこれらに対する平成18年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告の負担とする。 仮執行宣言第2事案の概要 本件は,被告の設置する奈良県立奈良病院(以下「奈良病院」という。)の産婦人科に勤務する医師である原告A(以下「原告A」という。)及び原告B(以下「原告B」という。)が,原告らの行っている宿日直勤務及び宅直勤務は時間外・休日勤務であるのに,平成16年1月1日から平成17年12月31日までの割増賃金が支払われていないとして,被告に対し,労働基準法37条に基づく割増賃金と,これに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合の遅延損害金の支払を求めた事案である。 - 2 - 前提事実当事者間に争いのない事実及び証拠(各認定事実の後に掲記のもの)によって容易に認められる事実は,以下のとおりである。 ( )当事者等 原告A及び原告Bは,奈良病院産婦人科に勤務する医師である。 被告は,奈良病院を設置運営する者である。 本件請求に係る期間である平成16年1月1日から平成17年12月31日までの間,奈良病院産婦人 原告A及び原告Bは,奈良病院産婦人科に勤務する医師である。 被告は,奈良病院を設置運営する者である。 本件請求に係る期間である平成16年1月1日から平成17年12月31日までの間,奈良病院産婦人科には原告ら2名を含む5名の医師が勤務していた。 ( )勤務時間等 ア原告らの正規の勤務時間(所定就業時間)は,月曜日から金曜日までの各午前8時30分から午後5時15分までである(甲1)。 イ被告は,原告らに対し,本来の勤務以外に交代で宿日直勤務を命じており,原告らはこれに従事している(甲1,2の1,2の2,乙33~56の2)。その勤務時間は,宿直が平日休日を問わず午後5時15分から翌朝8時30分まで,日直が休日(土曜,日曜,祝日)の午前8時30分から午後5時15分までである(甲1)。 宿直医師は,入院患者並びに救急外来患者に対する診療に当たるために,奈良病院に宿泊する。 ウ原告らを含む奈良病院の産婦人科医師は,宿日直勤務以外に,自主的に「宅直」当番を定め,宿日直の医師だけでは対応が困難な場合に,宅直医師が奈良病院に来て宿日直医師に協力し診療を行っていた(甲25,証人I)。 ( )原告らの宿日直回数 原告らは,平成16年1月1日から平成17年12月31日までの期間中,別紙1(乙858)〈省略〉記載の回数にわたり,宿日直を行った。 - 3 -( )原告らの給与額等 原告Aの月額給料は,平成16年4月1日から平成17年3月31日まで47万0204円,同年4月1日から同年11月31日まで48万0298円,同年12月1日から同月31日まで48万0586円であった。 原告Bの月額給料は,平成16年4月1日から平成17年3月31日まで49万9310円,同年4月1日から同年11月31日まで50万7444円,同年12月1日から同月31日ま 48万0586円であった。 原告Bの月額給料は,平成16年4月1日から平成17年3月31日まで49万9310円,同年4月1日から同年11月31日まで50万7444円,同年12月1日から同月31日まで50万7843円であった。 原告らは,給料のほかに扶養手当,調整手当,住居手当,初任給調整手当,通勤手当,月額特殊勤務手当,超過勤務手当,宿日直手当,期末手当,勤勉手当,休日勤務手当を受給していた。平成16年及び平成17年における諸手当の金額は,別紙2(乙857)〈省略〉記載のとおりである。 ( )条例等の定め ア奈良県では,職員の勤務時間,休暇等に関する条例(平成7年3月奈良県条例第29号。以下「勤務時間条例」という。)9条1項において,「任命権者は,人事委員会の許可を受けて,第3条から第6条までに規定する勤務時間(以下「正規の勤務時間」という。)以外の時間において職員に設備等の保全,外部との連絡及び文書の収受を目的とする勤務その他の人事委員会規則で定める断続的な勤務をすることを命ずることができる。」と規定されている(甲3)。 イ勤務時間条例9条1項を受けて,職員の勤務時間,休暇等に関する規則(平成7年3月奈良県人事委員会規則第16号。以下「勤務時間規則」という。)7条1項には,「勤務時間条例9条1項の人事委員会規則で定める断続的な勤務は,次に掲げる勤務とする。」と規定され,同項3号(6)に「県立医科大学付属病院又は県立病院における入院患者の病状の急変等に対処するための医師又は歯科医師の当直勤務」と規定されている(甲4)。 - 4 -ウ宿日直手当に関する規則(昭和46年3月奈良県人事委員会規則第12号)3条1項4号は,勤務時間規則7条1項3号(6)の勤務に関し,その勤務1回につき,2万円の宿日直手当を支給すると規定している(甲 宿日直手当に関する規則(昭和46年3月奈良県人事委員会規則第12号)3条1項4号は,勤務時間規則7条1項3号(6)の勤務に関し,その勤務1回につき,2万円の宿日直手当を支給すると規定している(甲5)。 (6)消滅時効平成16年1月1日から同年10月25日までの間の,原告らの被告に対する時間外・休日割増賃金債権については,消滅時効期間が経過した(労働基準法115条)。 被告は,平成20年7月16日の第4回弁論準備手続期日において,上記消滅時効を援用した。 (7)既払いの宿日直手当額被告は,平成16年10月26日以降の宿日直手当として,原告Aに対して246万円,原告Bに対して260万円を支払った(乙42,858)。 争点及び当事者の主張( )勤務時間規則7条1項3号(6)は,労働基準法41条3号に違反するか。 ア原告らの主張勤務時間規則7条1項3号(6)は,労働基準法41条3号に違反し無効である。 同号は,「監視又は継続的労働に従事する者で,使用者が行政官庁の許可を得たもの」につき,労働時間や休日に関する労働基準法の適用を除外すると規定している。この「監視又は断続的労働に従事する者」について,監視労働とは一定部署にあって監視するのを本来の業務とし,常態として身体又は精神的緊張の少ない労働をいい,断続的労働とは,実作業が間欠的に行われて手待ち時間の多い労働をいう。同号を受けて,勤務時間条例9条1項も,監視又は断続的労働に従事する者について例外的な時間外割増賃金の支払義務がないとしているのである。しかし,医師は継続的に医療という高度な専門知識を要する労働に従事する労働者であり,監視又は- 5 -断続的労働に従事する者には当たらないから,勤務時間規則7条1項3号は,労働基準法41条3号に違反する。 すなわち,原告らは産婦人 度な専門知識を要する労働に従事する労働者であり,監視又は- 5 -断続的労働に従事する者には当たらないから,勤務時間規則7条1項3号は,労働基準法41条3号に違反する。 すなわち,原告らは産婦人科医師であり,産婦人科の性質上,宿日直勤務でも,分娩に対応せねばならないし,ハイリスク妊娠患者に対する診療行為も行う必要があるし,入院患者のみならず救急外来患者に対する診療行為をも命じられ行っている。このような原告らの時間外・休日の勤務実態からすれば,これらは監視又は断続的労働とはいえず,通常の労働時間内勤務と同等の労働が時間外,休日にも行われているといえる。 イ被告の主張原告らは地方公務員であるから,給与を含む勤務条件につき勤務条件法定(条例)主義が適用される。本件では,中立的かつ専門的な機関である奈良県人事委員会が,勤務時間規則において,県立病院における入院患者の病状の急変等に対処するための医師の当直勤務を「断続的な勤務」と捉えることを許可しているのである。そして,原告らが宿日直勤務において行っている業務内容は,全て勤務時間規則7条1項3号(6)に該当する。 原告らの宿日直勤務における救急外来受診患者数及び異常分娩件数は多くなく,正常分娩において医師が実際に診療を行う時間も多くないから,宿日直勤務は断続的勤務といえる。 (2)割増賃金の対象たる労働時間ア原告らの主張原告らの宿日直勤務及び宅直勤務は,その勤務時間全てが,労働基準法37条1項にいう時間外又は休日勤務に当たる。 (宿日直勤務について)原告らは産婦人科医師であり,産婦人科の性質上,夜間・休日を問わず分娩に対応せねばならないが,宿日直勤務中の原告らの分娩立会いは常態的なものであり,通常勤務の延長にほかならない。また,そもそも救急外- 6 -来患者の診察は勤務時間規則7条 ,夜間・休日を問わず分娩に対応せねばならないが,宿日直勤務中の原告らの分娩立会いは常態的なものであり,通常勤務の延長にほかならない。また,そもそも救急外- 6 -来患者の診察は勤務時間規則7条1項3号(6)に規定されておらず,原告らは宿日直勤務において救急外来患者の診療に当たる法的義務はないのに,救急外来患者の診療に当たっている。異常分娩や異常妊娠等に対する診療も昼夜を問わず多い。平成16年1月1日から平成17年12月31日までの間に,原告らは宿日直時間の4割程度の時間,現実に就労していると考えられる。このような原告らの時間外勤務実態からすれば,宿日直勤務に関し,通常の労働時間内勤務と同等の労働が時間外,休日にも行われているといえる。そして,原告らの宿日直勤務の労働時間は,待ち時間を含む宿日直勤務の時間帯全てと考えるべきである。 (宅直勤務について)奈良病院は一次救急(入院を必要としない程度)から三次救急(高度医療を必要とする程度)までの救急患者を受け入れているため時間外の救急外来患者数は少なくなく,宿日直医(1名)の負担が重いこと,急変した入院患者への対応と救急患者の診療が重なれば対応が不可能であること,異常分娩等の場合には一名の宿日直医のみでは対応できないことから,被告の命じた勤務を可能ならしめるために,原告らは自主的に応援医師を確保するための宅直当番を決めているのであって,宿日直と宅直は一体の制度である。奈良病院も宅直の存在を認識した上で,それを前提とした産科医療を運営していた。宅直当番は自宅で待機し,呼び出されれば病院に急行するが,呼び出されて行う職務は患者に対する診療行為であって原告らの職務そのものといえるし,宅直当番のときに呼び出される頻度も稀ではないから,宅直勤務でも労働からの解放が保障されていないというべきで るが,呼び出されて行う職務は患者に対する診療行為であって原告らの職務そのものといえるし,宅直当番のときに呼び出される頻度も稀ではないから,宅直勤務でも労働からの解放が保障されていないというべきであるし,実質的に役務提供が義務付けられていないと認められる特段の事情はなく,奈良病院の指揮命令下に置かれていたといえる。したがって,宅直当番の時間も全て割増賃金の対象となる労働時間と考えるべきである。 イ被告の主張- 7 -争う。 (宿日直勤務について)割増賃金の対象となる労働時間は,原告らが現実に診療を行っている時間をいい,診療の合間の待機時間は労働時間に含まれない。原告らが宿日直勤務において救急外来受診患者及び異常分娩へ対処した場合の割増賃金の支払は,社会通念上の一定の線引きの元に必要と判断される所要時間をもって,労働基準法37条にいう割増賃金を支払う対象となる労働時間と考えるべきである。 (宅直勤務について)宅直は,原告ら奈良病院の産婦人科医師らが自主的に行っているものであり,被告が命じているわけではないから,宅直時間は給与の支給の対象となる労働時間ではない。 (3)割増賃金の額ア原告らの主張原告ら主張の割増賃金は,別紙3(訴状添付の割増賃金計算書)〈省略〉のとおりである。 割増賃金算定に関して,一般職の職員の給与に関する条例(昭和32年9月奈良県条例第33号,乙856。以下「給与条例」という。)が労働基準法37条4項,労働基準法施行規則(以下「施行規則」という。)21条に反する場合は,違反する限りで無効である。 原告らは,給与のほかに諸手当を受給していたが,このうち調整手当,初任給調整手当,月額特殊勤務手当,期末手当,勤勉手当は,労働の対価たる性格を有するから,割増賃金の算定の基礎とされなければならない。 住居手当も施行規 かに諸手当を受給していたが,このうち調整手当,初任給調整手当,月額特殊勤務手当,期末手当,勤勉手当は,労働の対価たる性格を有するから,割増賃金の算定の基礎とされなければならない。 住居手当も施行規則21条により除外される住宅手当には当たらず,割増賃金の算定の基礎とされるべきである。 イ被告の主張- 8 -争う。職員の勤務1時間当たりの給与額の算定は,給与条例23条に基づいて行わなければならず,割増賃金の算定に関する原告らの主張は争う。 第3当裁判所の判断 争点1(勤務時間規則7条1項3号(6)は,労働基準法41条3号に違反するか。)について(1)前記前提事実に加え,証拠(甲1,2,8~10,27,28,乙33~56,58,59,61~791,844,845(枝番号含む),原告A本人,証人I)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア奈良病院は,1次,2次,3次救急全てを取り扱う総合病院であり,産婦人科医師が複数人在籍し,麻酔科医師もおり,救命センターや新生児のNICU施設があるため,奈良県北部だけでなく,奈良県全域及び京都府南部からの救急患者が運ばれてくる病院である(証人I)。 イ原告らは,奈良病院から宿日直勤務を命じられており(甲1,2の1,2の2,乙33~56),宿日直勤務において命じられている業務は,入院患者の急変に対応するほか,やむを得ぬ事情がない限り救急外来患者の診療にも従事することであり,宿直勤務の際は奈良病院に宿泊して業務を行い,日直勤務においても奈良病院で業務を行い,宿日直勤務中は勤務位置をできる限り明確にして常時ポケットベルを携帯し,呼出しに速やかに応答することが義務付けられている(甲2の1及び2)。また,産婦人科という診療科目の特質上,宿日直勤務時間中に分娩に立ち会うことも少なくなく(乙 明確にして常時ポケットベルを携帯し,呼出しに速やかに応答することが義務付けられている(甲2の1及び2)。また,産婦人科という診療科目の特質上,宿日直勤務時間中に分娩に立ち会うことも少なくなく(乙58,59),宿日直勤務時間中に,帝王切開術実施を含む異常分娩や,分娩・新生児・異常妊娠治療その他の診療も行っていた。平均分娩時間は初産婦で約15時間,経産婦で約5時間であり(甲8),宿日直医師は助産師や看護師と協力して分娩に当たるが,分娩には必ず医師が立ち会い,異常分娩の場合には分娩前や後にもさまざまな医療行為等を行い,助産師や看護師は,異常があればすぐに宿日直医師に連絡することに- 9 -なっている(証人I)。また,異常分娩は結果的に正常分娩でなかったものをいい,さまざまな類型があるが,奈良病院では異常分娩の割合が高く(証人I),それらに対しては医師が診断を行い,処置や診療,手術を行うことになる(甲9,10)。これらに対処する産婦人科の宿日直医師は,1名であった(乙33~56)。 ウ奈良病院には宿直勤務者が睡眠するための施設が備えられているが(乙863),宿直勤務中に睡眠時間を十分に取ることは難しい(証人I,原告A本人)。被告が,奈良病院産婦人科における,平成19年6月1日から平成20年3月31日までの宿日直勤務中における通常業務(原則として,外来救急患者への処置全般及び入院患者にかかる手術室を利用しての緊急手術等)の割合を調査したところ,原告ら奈良病院産婦人科医師は,宿日直勤務時間中24%の時間,通常業務に従事していた(乙855)。 (2)労働基準法は労働条件(勤務条件)の最低基準を定めることを目的とするものであり(同法1条2項),同法が適用される限りにおいて,地方公務員の勤務条件はこれを条例で定める場合においても労働基準法で定め 労働基準法は労働条件(勤務条件)の最低基準を定めることを目的とするものであり(同法1条2項),同法が適用される限りにおいて,地方公務員の勤務条件はこれを条例で定める場合においても労働基準法で定められた基準以上のものでなければならない。原告らは,一般職の地方公務員であり(地方公務員法3条),一部の規定を除き労働基準法が適用され(同法58条),同法37条,41条の適用をも受ける。したがって,原告らが地方公務員であって勤務条件条例主義の適用を受けるとしても,それは同法37条,41条で定める基準以上のものでなければならないと解される。 時間外又は休日労働の割増賃金支払義務に関する労働基準法37条の規定は,監視又は断続的労働に従事する者で,使用者が労働基準監督署長の許可を受けた者については,適用しないこととされているが(同法41条3号),同法41条3号にいわゆる「断続的労働」に該当する宿日直勤務とは,正規の勤務時間外又は休日における勤務の一態様であり,本来業務を処理するためのものではなく,構内巡視,文書・電話の収受又は非常事態に備えて待機- 10 -するもの等であって,常態としてほとんど労働する必要がない勤務をいうものと解される(平成14年3月19日厚生労働省労働基準局長通達基発第0319007号,甲13)。そして,同法41条3号にいう行政官庁たる労働基準監督署長は,①常態としてほとんど労働する必要がない勤務のみであること(原則として通常の労働の継続は認められないが,救急医療等を行うことがまれにあっても一般的にみて睡眠が十分とりうるものであること),②相当の睡眠設備が設置され,睡眠時間が確保されていること,③宿直勤務は週1回,日直勤務は月1回を限度とすること,④宿日直勤務手当は,その勤務につく労働者の賃金の一人一日平均額の3分の1を下らな ,②相当の睡眠設備が設置され,睡眠時間が確保されていること,③宿直勤務は週1回,日直勤務は月1回を限度とすること,④宿日直勤務手当は,その勤務につく労働者の賃金の一人一日平均額の3分の1を下らないこと,という許可基準をみたす場合に,医師等の宿日直勤務を許可するものとされている(前記通達(甲13)の別紙「労働基準法第41条に定める宿日直勤務について」)。 ところで,勤務時間条例9条1項は,職員に断続的な勤務を命じることができるとし,勤務時間規則7条1項3号(6)は,県立病院の入院患者の病状の急変等に対処するための医師又は歯科医師の当直勤務が断続的な勤務に当たると規定する。しかし,前記認定のとおり,原告らは,産婦人科という特質上,宿日直時間に分娩への対応という本来業務も行っているが,分娩の性質上,宿日直時間内にこれが行われることは当然に予想され,現に,その回数は少なくないこと,分娩の中には帝王切開術の実施を含む異常分娩も含まれ,分娩・新生児・異常分娩治療も行っているほか,救急医療を行うこともまれとはいえず,また,これらの業務はすべて1名の宿日直医師が行わなければならないこと,その結果,宿日直勤務時間中の約4分の1の時間は外来救急患者への処置全般及び入院患者にかかる手術室を利用しての緊急手術等の通常業務に従事していたと推認されること,これらの実態からすれば,原告らのした宿日直勤務が常態としてほとんど労働する必要がない勤務であったということはできない。 - 11 -以上のような実情に鑑みると,本件においては,原告らの宿日直勤務について,これを断続的な勤務とした勤務時間規則7条1項3号(6)に該当するものとすることは,労働基準法41条3号の予定する労働時間等に関する規定の適用除外の範囲を超えるものというべきである。 (3)被告は,原告ら 続的な勤務とした勤務時間規則7条1項3号(6)に該当するものとすることは,労働基準法41条3号の予定する労働時間等に関する規定の適用除外の範囲を超えるものというべきである。 (3)被告は,原告らの宿日直勤務における救急外来受診患者数及び異常分娩件数は多くなく,正常分娩において医師が実際に診療を行う時間も多くないから,労働基準法41条3号の断続的勤務にあたると主張する。しかし,前記(1)で認定した,奈良病院産婦人科における宿日直勤務の実情に照らすと,宿日直勤務において行わなければならない本来業務(通常業務)の発生率が低く,一般的に見て睡眠が十分とりえ,労働基準法37条に定める割増賃金(過重な労働に対する補償)を支払う必要がない勤務であるとは到底いえない。 また,被告は,奈良県人事委員会が医師の当直勤務を断続的な勤務ととらえることを許可しているのだから,労働基準法41条3号に反しないと主張する。しかし,労働条件の最低基準を定めるという同法の目的に照らせば,行政官庁の許可も同法37条,41条の趣旨を没却するようなものであってはならず,そのために上記通達等(甲13)が発せられ医師等の宿日直勤務の許可基準が定められているのである。そうすると,奈良県人事委員会の許可も上記許可基準と区別する理由はなく,上記許可基準を満たすものに対して行われなければならないと解されるから,被告の主張は採用できない。 争点2(割増賃金の対象たる労働時間)について(1)宿日直勤務についてア労働基準法上の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,仮眠時間であっても労働者が実作業に従事していないというだけでは使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者- 12 ,仮眠時間であっても労働者が実作業に従事していないというだけでは使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者- 12 -が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができるとされている。 前記1(1)で認定したような原告らの宿日直勤務の態様・内容によれば,原告らは奈良病院から宿日直勤務を命じられ,宿日直勤務の開始から終了までの間,場所的拘束を受けるとともに,呼出しに速やかに応じて業務を遂行することを義務付けられている。したがって,原告らは,実際に患者に対応して診療を行っている時間だけでなく,診療の合間の待機時間においても労働から離れることが保障されているとはいえず,宿日直勤務の開始から終了までの間,医師としてその役務の提供が義務付けられているといえ,奈良病院の指揮命令下にあるといえる。 イこの点,被告は,割増賃金を支払う対象となる労働時間を,社会通念上の一定の線引きのもとに必要と判断される所要時間と考えるべきであると主張するけれども,そのように解すべき法律上の根拠はなく,採用することができない。 (2)宅直についてア前記前提事実に加え,証拠(甲1,2,11,25,27,28,証人I,原告A本人,原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 宅直勤務は,奈良病院の産婦人科医師の間で自主的に定められている制度である。奈良病院は一次救急から三次救急までの救急患者を受け入れているため救急外来患者数も多い(証人I)。本件請求に係る期間には奈良病院の産婦人科医師は5名しかおらず,宿日直医師として1名しか置けないため,同時に対応しなければならない患者が複数いる場合や,医師1名では対応できない分娩(帝王切開術を行う分娩)等の場合には,宿日 病院の産婦人科医師は5名しかおらず,宿日直医師として1名しか置けないため,同時に対応しなければならない患者が複数いる場合や,医師1名では対応できない分娩(帝王切開術を行う分娩)等の場合には,宿日直医師の求めに応じてそれに協力する医師を確保する必要があるとして,宅直勤務制度ができたものである(甲11,25,証人I)。本件請求に係る- 13 -期間においては,原告Aが奈良病院の産婦人科医師の宅直当番を決め,カレンダーに記入して産婦人科医師に知らせていた(原告A本人)。奈良病院の内規では宅直制度について触れられておらず(甲1,2,証人I),宅直当番について,産婦人科医師が奈良病院に届け出る等はしていなかった(証人I)。上記のように1名の宿日直医師で対応できない場合が生じれば,宿日直医師から宅直医師へ連絡がとられ,宅直医師は奈良病院に来て宿日直医師に協力し診療を行っていた(甲25,証人I)。宅直医師は自宅にいることが多いが,待機場所が指定されているわけではなかった(証人I)。 なお,奈良病院の他の診療科には宅直制度はない。 イ上記宅直勤務が,割増賃金の請求できる労働基準法上の労働時間といえるか否かは,宅直勤務時間が「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」に当たるか否かによる。 本件の宅直勤務制度は,救急外来患者も多い奈良病院における産婦人科医師の需要の高さに比べて,5名しか産婦人科医師がいないという現実の医師不足を補うために,産婦人科医師の間で構築されたものである。しかしながら,原告らも認めるように宅直勤務は奈良病院の産婦人科医師の間の自主的な取り決めにすぎず,奈良病院の内規にも定めはなく,宅直当番も産婦人科医師が決め,奈良病院には届け出ておらず,宿日直医師が宅直医師に連絡をとり応援要請しているものであって,奈良病院がこれを命 の自主的な取り決めにすぎず,奈良病院の内規にも定めはなく,宅直当番も産婦人科医師が決め,奈良病院には届け出ておらず,宿日直医師が宅直医師に連絡をとり応援要請しているものであって,奈良病院がこれを命じていたことを示す証拠はない。また,宅直当番の医師は自宅にいることが多いが,これも事実上のものであり,待機場所が定められているわけではない。 このような本件の事実関係の下では,本件の宅直勤務時間において,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていた,つまり,奈良病院の指揮命令下にあったとは認められない。 - 14 -したがって,宅直勤務の時間は,割増賃金を請求できる労働時間とはいえない。 ウこの点,原告らは,宅直制度は宿日直制度と一体の制度であって,奈良病院は宅直制度を認識した上で,それを前提とした産科医療を運営しており,宅直勤務について実質的に役務提供が義務付けられていないと認められる特段の事情はなく,奈良病院の指揮命令下に置かれていたと主張する。 前記認定のとおり,宅直制度は宿日直医師の負担を軽減しこれを補うためにできたものである。しかし,奈良病院において産婦人科のみが救急外来患者が多いことを示す証拠はなく,他の診療科目においても,宿日直の医師1名では対応できない場合があると考えられるが,産婦人科だけでなく他の診療科目においても宿日直医は1名である(乙33~56の2)。 確かに,産婦人科という診療科目の特質上,夜間に分娩等に対処しなければならないことが多いとしても,それが常に2名以上の医師を必要としており,宅直制度がなければ宿日直制度が成り立たないと断定することは困難である。 また,奈良病院の産婦人科部長Iは,平成15年11月と平成17年2月の2回にわたり,奈良病院や被告に対して産婦人科医の増員や労働環境の改善を求め,その中でその時点での と断定することは困難である。 また,奈良病院の産婦人科部長Iは,平成15年11月と平成17年2月の2回にわたり,奈良病院や被告に対して産婦人科医の増員や労働環境の改善を求め,その中でその時点での産婦人科医の労働の現状を説明するに当たって宅直勤務についても言及しており,奈良病院は,宅直勤務の存在を認識していたといえる(甲19,20,証人I)。しかしながら,これに対して奈良病院が宅直勤務に関する指揮命令を行った事実は,本件全証拠によっても認められない。そして,前述のように他の診療科目でも医師1名では対応できない場合が考えられるのに宿日直医が1名であることからすれば,奈良病院が,産婦人科のみにある宅直制度を利用することを前提として,産婦人科医師に過大な負担を負わせる運営を行っていたとまで認定することはできない。 - 15 -したがって,原告らの主張は採用できない。 争点3(割増賃金の額)について(1)割増賃金の計算方法被告は,割増賃金の算定の基礎となる勤務一時間あたりの賃金額は給与条例23条(乙856)に基づいたものでなければならないと主張する。確かに,一般職の地方公務員の給与は条例で定めることとなっており(地方公務員法24条6項),その条例に基づかずに金銭を支給することはできない(同法25条1項)。 一般職の地方公務員の場合,割増賃金の一時間あたりの額も条例で定められるけれども,労働基準法が労働条件(勤務条件)の最低基準を定めることを目的とするものであることを考えると(同法1条2項),条例で定める割増賃金の一時間あたりの額は同法で定める基準を下回ってはならないと解される。したがって,割増賃金の算定根拠たる一時間あたりの賃金額,時間外・休日労働における割増率も,同法で定める基準を下回ってはならない。 給与条例23条の定める勤務一 る基準を下回ってはならないと解される。したがって,割増賃金の算定根拠たる一時間あたりの賃金額,時間外・休日労働における割増率も,同法で定める基準を下回ってはならない。 給与条例23条の定める勤務一時間あたりの賃金額は,月額の給料及び地域手当を基礎とするものであるが,これはそれ以外の諸手当は算定の基礎としないという趣旨であると解され,労働基準法37条,施行規則21条よりも勤務一時間あたりの給与額の基礎となるべき諸手当を絞り込んでおり,同法の定める基準を下回っている。したがって,本件における割増賃金の算定の基礎となる勤務一時間あたりの賃金額は,同法37条,施行規則21条によるべきである。 原告らは,給料のほかに扶養手当,調整手当,住居手当,初任給調整手当,通勤手当,月額特殊手当,超過勤務手当,宿日直手当,期末手当,勤勉手当,休日勤務手当を支給されている。通勤手当は同法37条4項により算定の基礎とすることはできず,扶養手当は同項の家族手当に当たり,住居手当は施行規則21条3号に当たり,勤勉手当,期末手当は同条5号に当たり,算定- 16 -の基礎とすることはできない。また,超過勤務手当,宿日直手当,休日勤務手当は,正規の勤務時間以外の労働に対する対価であるから,割増賃金の算定の基礎となる一時間あたりの給与額算出に当たっては,これを除外して考えるべきである。したがって,上記以外の手当であって,労働者の個人的事情で左右されず,労働の内容や量と関係する手当である,調整手当,初任給調整手当,月額特殊勤務手当を算定の基礎に加えるのが相当である。 (2)1時間あたりの賃金額ア前記前提事実に加え,証拠(乙857)によると,以下の事実が認められる。 (ア)原告Aの月額給料は,平成16年4月1日から平成17年3月31日まで47万0204円,同年4月1日 間あたりの賃金額ア前記前提事実に加え,証拠(乙857)によると,以下の事実が認められる。 (ア)原告Aの月額給料は,平成16年4月1日から平成17年3月31日まで47万0204円,同年4月1日から同年11月30日まで48万0298円,同年12月1日から同月31日まで48万0586円であった。 原告Aは,平成16年に調整手当を60万3666円,初任給調整手当を191万5200円,月額特殊勤務手当を14万円支給され,平成17年に調整手当を61万5950円,初任給調整手当を189万6500円,月額特殊勤務手当を12万円支給されていた。これらを12か月で除すると,平成16年の月額の調整手当は5万0305.5円,初任給調整手当は15万9600円,月額特殊勤務手当は1万1666. 6円(小数点以下第1位まで記載)となる。同様に平成17年の月額の調整手当は5万1329.1円,初任給調整手当は15万8041.6円,月額特殊勤務手当は1万円となる。 (イ)原告Bの月額給料は,平成16年4月1日から平成17年3月31日まで49万9310円,同年4月1日から同年11月30日まで50万7444円,同年12月1日から同月31日まで50万7843円であった。 - 17 -原告Bは,平成16年に調整手当を62万6919円,初任給調整手当を186万0600円,月額特殊勤務手当を14万円,平成17年に調整手当を63万9129円,初任給調整手当を182万8900円,月額特殊勤務手当を12万円支給されていた。これらを12か月で除すると,平成16年の月額の調整手当は5万2243.2円,初任給調整手当は15万5050円,月額特殊勤務手当は1万1666.6円となる。同様に平成17年の月額の調整手当は5万3260.7円,初任給調整手当は15万2408.3円,月額特殊勤務手 3.2円,初任給調整手当は15万5050円,月額特殊勤務手当は1万1666.6円となる。同様に平成17年の月額の調整手当は5万3260.7円,初任給調整手当は15万2408.3円,月額特殊勤務手当は1万円となる。 イ原告らは月によって定められた賃金を支給されており,月により休日数が異なるので,施行規則19条1項4号により,一時間あたりの賃金額は月額の賃金を一年間における1か月の平均所定労働時間数で除した金額となる。 被告における休日は,土曜日,日曜日,国民の祝日,年末年始であり(甲1,33~56の2),原告らの一年間の出勤日は,243日となる。 一日の所定労働時間8時間に243日を乗じ,12か月で除すると,1か月の平均労働時間は162時間となる。 原告Aにつき,月額の給料額に,月額の調整手当,初任給調整手当,月額特殊勤務手当を加え,それを162時間で除すると,一時間あたりの賃金額は次のようになる。 ①平成16年10月26日から同年12月31日まで,4270.2円②平成17年1月1日から同年3月31日まで,4256.6円③同年4月1日から同年11月30日まで,4318.9円④同年12月1日から同月31日まで,4320.7円原告Bにつき,同様に計算すると,一時間あたりの賃金額は次のようになる。 ①平成16年10月26日から同年12月31日まで,4433.7円- 18 -②平成17年1月1日から3月31日まで,4413.4円②同年4月1日から同年11月30日まで,4463.6円③同年12月1日から同月31日まで,4466.1円(3)割増賃金を請求できる労働時間の時間数につき,前記前提事実及び証拠(乙42~56(枝番号含む))から検討する。 ア上記2(1)(2)で述べたように,割増賃金を請求できる労働時間は,原告らの宿直及び日直勤務 を請求できる労働時間の時間数につき,前記前提事実及び証拠(乙42~56(枝番号含む))から検討する。 ア上記2(1)(2)で述べたように,割増賃金を請求できる労働時間は,原告らの宿直及び日直勤務時間である。そして,前記前提事実記載のとおり,原告らの宿直時間は午後5時15分から翌朝8時30分までの15時間15分であり,日直時間は午前8時30分から午後5時15分までの8時間45分である。 前記前提事実(6)によれば,平成16年1月1日から同年10月25日までの間の,原告らの被告に対する時間外,休日割増賃金債権は,時効消滅している。同年10月26日から平成17年12月31日までの間に原告らが宿日直勤務を行った回数は別紙4〈省略〉記載のとおりであり,原告Aの宿直勤務時間は合計1372時間30分,日直勤務時間は合計271時間15分,原告Bの宿直勤務時間は合計1418時間15分,日直勤務時間は合計297時間30分である。 イ午後10時から午前5時までの労働は,深夜労働にあたる(施行規則20条1項)。したがって,宿直勤務のうち,休日の午後10時から午前5時までの勤務は休日労働かつ深夜労働(A)であり,休日のそれ以外の宿直勤務時間は休日労働(C)である。休日以外の宿直勤務時間のうち午後10時から午前5時までの勤務は時間外労働かつ深夜労働(B)であり,それ以外の宿直勤務時間は時間外労働(D)である。 また,日直勤務時間は,休日労働(C)である。 ウしたがって,原告Aの宿日直勤務時間のうち,①平成16年10月26日から同年12月31日までの間の,- 19 -A休日の深夜労働に当たる時間数は,28時間B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,70時間C休日労働に当たる時間数は,68時間(宿直33時間,日直35時間)D時間外労働の時間数は, -A休日の深夜労働に当たる時間数は,28時間B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,70時間C休日労働に当たる時間数は,68時間(宿直33時間,日直35時間)D時間外労働の時間数は,82時間30分②平成17年1月1日から同年3月31日までの間の,A休日の深夜労働に当たる時間数は,49時間B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,84時間C休日労働に当たる時間数は,119時間(宿直57時間45分,日直61時間15分)D時間外労働の時間数は,99時間③平成17年4月1日から同年11月30日までの間の,A休日の深夜労働に当たる時間数は,119時間B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,238時間C休日労働に当たる時間数は,289時間(宿直140時間15分,日直148時間45分)D時間外労働の時間数は,280時間30分④平成17年12月1日から同月31日までの間の,A休日の深夜労働に当たる時間数は,21時間B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,21時間C休日労働に当たる時間数は,51時間(宿直24時間45分,日直26時間15分)D時間外労働の時間数は,24時間45分エ原告Bの宿日直勤務時間のうち,①平成16年10月26日から同年12月31日までの間の,A休日の深夜労働に当たる時間数は,49時間- 20 -B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,56時間C休日労働に当たる時間数は,119時間(宿直57時間45分,日直61時間15分)D時間外労働の時間数は,66時間②平成17年1月1日から同年3月31日までの間の,A休日の深夜労働に当たる時間数は,49時間B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,91時間C休日労働に当たる時間数は,119時間(宿直57時間45分,日直6 から同年3月31日までの間の,A休日の深夜労働に当たる時間数は,49時間B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,91時間C休日労働に当たる時間数は,119時間(宿直57時間45分,日直61時間15分)D時間外労働の時間数は,107時間15分③平成17年4月1日から同年11月30日までの間の,A休日の深夜労働に当たる時間数は,119時間B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,231時間C休日労働に当たる時間数は,289時間(宿直140時間15分,日直148時間45分)D時間外労働の時間数は,272時間15分④平成17年12月1日から同月31日までの間の,A休日の深夜労働に当たる時間数は,21時間B時間外労働で深夜労働に当たる時間数は,35時間C休日労働に当たる時間数は,51時間(宿直24時間45分,日直26時間15分)D時間外労働の時間数は,41時間15分(4)時間外,休日割増賃金の額ア労働基準法は,時間外,休日労働について,深夜労働に当たるか否かについても区別して,次のような割増賃金の支払を義務付けている。 A休日労働と深夜労働が重なるときは,通常の労働時間の賃金の6割以- 21 -上(施行規則20条2項)B時間外労働と深夜労働が重なるときは,5割以上(同条1項)C休日労働は,3割5分以上(労働基準法37条1項,割増賃金令)D時間外労働は,2割5分以上(同法37条1項,割増賃金令)イ原告Aについて,上記の最低割合での割増賃金を計算すると,以下のようになる。 ①平成16年10月26日から同年12月31日までの間の,A休日の深夜労働時間に対して4270.2円×28時間×1.6=19万1304.9円B時間外労働で深夜労働の時間に対して4270.2円×70時間×1.5=44万83 年12月31日までの間の,A休日の深夜労働時間に対して4270.2円×28時間×1.6=19万1304.9円B時間外労働で深夜労働の時間に対して4270.2円×70時間×1.5=44万8371円C休日労働の時間に対して4270.2円×68時間×1.35=39万2004円D時間外労働の時間に対して4270.2円×82時間30分×1.25=44万0364.3円②平成17年1月1日から同年3月31日までの間の,A休日の深夜労働時間に対して4256.6円×49時間×1.6=33万3717.4円B時間外労働で深夜労働の時間に対して4256.6円×84時間×1.5=53万6331.6円C休日労働の時間に対して4256.6円×119時間×1.35=68万3822.7円D時間外労働の時間に対して4256.6円×99時間×1.25=52万6754.2円③平成17年4月1日から同年11月30日までの間の,- 22 -A休日の深夜労働時間に対して4318.9円×119時間×1.6=82万2318.5円B時間外労働で深夜労働の時間に対して4318.9円×238時間×1.5=154万1847.3円C休日労働の時間に対して4318.9円×289時間×1.35=168万5018.8円D時間外労働の時間に対して4318.9円×280時間30分×1.25=151万4314. 3円④平成17年12月1日から同月31日までの間の,A休日の深夜労働時間に対して4320.7円×21時間×1.6=14万5175.5円B時間外労働で深夜労働の時間に対して4320.7円×21時間×1.5=13万6102円C休日労働の時間に対して4320.7円×51時間×1.35=29万7480.1円D時間外労働の時間に対して4320 深夜労働の時間に対して4320.7円×21時間×1.5=13万6102円C休日労働の時間に対して4320.7円×51時間×1.35=29万7480.1円D時間外労働の時間に対して4320.7円×24時間45分×1.25=13万3671.6円上記の合計額は,982万8598.2円となる。 ウ原告Bについて,上記の最低割合での割増賃金を計算すると,以下のようになる。 ①平成16年10月26日から同年12月31日までの間の,A休日の深夜労働時間に対して4437.7円×49時間×1.6=34万7915.6円B時間外労働で深夜労働の時間に対して- 23 -4437.7円×56時間×1.5=37万2766.8円C休日労働の時間に対して4437.7円×119時間×1.35=71万2916.5円D時間外労働の時間に対して4437.7円×66時間×1.25=36万6110.2円②平成17年1月1日から同年3月31日までの間の,A休日の深夜労働時間に対して4413.4円×49時間×1.6=34万6010.5円B時間外労働で深夜労働の時間に対して4413.4円×91時間×1.5=60万2429.1円C休日労働の時間に対して4413.4円×119時間×1.35=70万9012.7円D時間外労働の時間に対して4413.4円×107時間15分×1.25=59万1671. 4円③平成17年4月1日から同年11月30日までの間の,A休日の深夜労働時間に対して4463.6円×119時間×1.6=84万9869.4円B時間外労働で深夜労働の時間に対して4463.6円×231時間×1.5=154万6637.4円C休日労働の時間に対して4463.6円×289時間×1.35=174万1473.5円D時間外労働の時間に対 で深夜労働の時間に対して4463.6円×231時間×1.5=154万6637.4円C休日労働の時間に対して4463.6円×289時間×1.35=174万1473.5円D時間外労働の時間に対して4463.6円×272時間15分×1.25=151万9018. 8円④平成17年12月1日から同月31日までの間の,- 24 -A休日の深夜労働時間に対して4466.1円×21時間×1.6=15万0060.9円B時間外労働で深夜労働の時間に対して4466.1円×35時間×1.5=23万4470.2円C休日労働の時間に対して4466.1円×51時間×1.35=30万7490.9円D時間外労働の時間に対して4466.1円×41時間15分×1.25=23万0283.2円上記の合計額は,1062万8137.1円となる。 (5)既払額前記前提事実記載のとおり,被告は,平成16年10月26日から平成17年12月31日までの原告らの宿日直勤務につき,原告Aに対して246万円,原告Bに対して260万円を支払った(別紙4〈省略〉)。 上記(4)イで算出した原告Aの割増賃金合計額から既払額246万円を引くと,未払割増賃金額は736万8598円(一円未満切捨て)となる。 また,上記(4)ウで算出した原告Bの割増賃金合計額から既払額260万円を引くと,未払割増賃金額は802万8137円(一円未満切捨て)となる。 結論 以上のとおりであるから,原告らの請求は,原告Aが被告に対して736万8598円の未払割増賃金及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成18年12月15日から支払済みまで民法所定年5分の割合の遅延損害金の支払を求める部分,原告Bが被告に対して802万8137円の未払割増賃金及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成18年12月 成18年12月15日から支払済みまで民法所定年5分の割合の遅延損害金の支払を求める部分,原告Bが被告に対して802万8137円の未払割増賃金及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成18年12月15日から支払済みまで民法所定年5分の割合の遅延損害金の支払を求める部分に限り理由があるから- 25 -認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条,65条1項を,仮執行宣言につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。 奈良地方裁判所民事部裁判長裁判官坂倉充信裁判官齋藤憲次裁判官伊藤昌代

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