平成26(行ケ)10227 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年7月29日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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判決文本文54,279 文字)

平成27年7月29日判決言渡 平成26年(行ケ)第10227号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成27年7月8日判決 原告 レスメッドセンサー テクノロジーズリミテッド 訴訟代理人 弁理士 奥山尚一 同 有原幸一 同 松島鉄男 同 河村英文 同 中村綾子 同 森本聡二 同 角田恭子 同 田中祐 同 徳本浩一 同 渡辺篤司 同 児玉真衣 同 水島亜希子 同 増屋徹 被告 特許庁長官 指定代理人 平田佳規 同 森林克郎 同 稲葉和生 平田佳規 同森林克郎 - 2 -同稲葉和生 同内山 進 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2013-5613号事件について平成26年5月27日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(1) 原告(特許出願時の名称・「ビアンカメッドリミテッド」)は,発明の名称を「生理的徴候を監視するための装置,システム,および方法」とする発明について,平成19年6月1日を国際出願日とする特許出願(特願2009-513469号,優先権主張2006年(平成18年)6月1日・米国。以下「本願」という。)をした(甲2,乙1)。 原告は,平成23年10月13日付けの拒絶理由通知(甲3)を受けたため,平成24年2月16日付けで,本願の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書の「発明の名称」について手続補正(甲6)をした(上記手続補正後の「発明の名称」は,「生理的徴候を監視するための装置」である。)。 さらに,原告は,同年4月26日付けの拒絶理由通知(甲7)を受けたため,同年10月31日付けで,本願の願書に添付した特許請求の範囲について手続補正(甲9)をしたが,同年11月19日付けで,上記手続補正に係る補正を却下する旨の補正却下の決定(甲10)及び拒絶査定(甲12)を- 3 -受けた。 そこで,原告は,平成25年3月27日,拒 正(甲9)をしたが,同年11月19日付けで,上記手続補正に係る補正を却下する旨の補正却下の決定(甲10)及び拒絶査定(甲12)を- 3 -受けた。 そこで,原告は,平成25年3月27日,拒絶査定不服審判を請求するとともに(甲13),本願の願書に添付した特許請求の範囲について手続補正(以下「本件補正」という。甲14)をした。 (2) 特許庁は,上記請求を不服2013-5613号事件として審理を行い,平成26年5月27日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(出訴期間90日附加。以下「本件審決」という。)をし,同年6月10日,その謄本が原告に送達された。 (3) 原告は,平成26年10月7日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載(1) 本件補正前のもの本件補正前(ただし,平成24年2月16日付け手続補正による補正後。 以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(甲6。 以下,同請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 「【請求項1】生体対象の呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析,および表示するのに有用な装置であって,前記対象より反射された反射信号を前記対象との物理的接触または機械的結合なしに分析し,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出するように構成されたプロセッサと,前記プロセッサに接続され,前記反射信号を受信するように設けられたセンサと,前記反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を示すベースバンド信号を出力するように設けられた乗算回路と,- 4 -分析および導出された前記測定結果を前記 に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を示すベースバンド信号を出力するように設けられた乗算回路と,- 4 -分析および導出された前記測定結果を前記装置のローカルまたはリモートユーザに与えるように構成されたディスプレイと,を備え,前記センサおよび前記プロセッサは,共に前記対象との直接的または間接的な物理的接触なしに作動するように設けられている装置。」(2) 本件補正後のもの本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(甲14。以下,同請求項1に係る発明を「補正発明」という。下線部は,本件補正による補正箇所である。)。 「【請求項1】生体対象の呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析,および表示するのに有用な装置であって,前記生体対象に使用可能な無線周波数(RF)のパルス信号を送信する送信機と,前記生体対象から反射された反射信号を受信するように設けられたセンサと,前記反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を示すベースバンド信号を出力するように設けられた乗算回路と,前記センサと接続され,前記ベースバンド信号を分析し,前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号を決定し,前記位相差信号から呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出するように構成されたプロセッサと,分析および導出された前記測定結果を前記装置のローカルまたはリモートユーザに与えるように構成されたディスプレイと,- 5 -を備え,前記センサ及び前記プロセッサは,共に前記生 サと,分析および導出された前記測定結果を前記装置のローカルまたはリモートユーザに与えるように構成されたディスプレイと,- 5 -を備え,前記センサ及び前記プロセッサは,共に前記生体対象との直接的または間接的な物理的接触なしに作動するように設けられ,前記反射信号は,当該装置とともに設けられた前記送信機により生成される装置。」 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,①本件補正は,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,これらを併せて「当初明細書等」という。甲2)に記載した事項の範囲内においてしたものではないから,特許法17条の2第3項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである,②本願発明は,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2004-252770号公報(以下「引用文献1」という。)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,同法29条2項の規定により特許を受けることができないから,本願は拒絶されるべきであるというものである。 (2) 本件審決が認定した引用文献1に記載された発明(以下「引用発明」という。),本願発明と引用発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明「浴槽における入浴者の有無を検知するための信号を発射する信号発射手段と,前記信号を受信する受信手段と,前記浴槽に入浴している入浴者の動きを検知するためのドプラ信号を出力すると共に,反射されたドプラ信号を受信し,ドプラ出力を出力するドプラ成分検出手段と,前記受信手段からの出力に基づいて,前記浴槽に入浴者が存在するか否かを判断し,前記ドプラ るためのドプラ信号を出力すると共に,反射されたドプラ信号を受信し,ドプラ出力を出力するドプラ成分検出手段と,前記受信手段からの出力に基づいて,前記浴槽に入浴者が存在するか否かを判断し,前記ドプラ成分検出手段からのドプラ出力に基づいて,前記浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出た後に浴槽から入浴者がいなくなったのか,又は,前記浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出ていないにもかかわらず- 6 -入浴者がいなくなったのかを判断する制御手段と,前記制御手段の制御に基づいてディスプレイの表示よる警報を発する警報手段とを備え,前記制御手段は,前記ドプラ出力に,前記入浴者が浴槽から出る動作を示す出力が含まれているか否かに基づいて,前記判断を行い,前記信号発射手段及び前記ドプラ成分検出手段は,所定の周波数の信号を生成する発振回路と,前記発振回路から出力された信号を変調する変調回路と,前記変調回路から出力された信号を分配して出力する分配回路と,前記分配回路から出力された信号を増幅して出力する第1の増幅回路と,前記第1の増幅回路から出力された信号を出力する送信空中線と,受信した信号を出力する受信空中線と,前記受信空中線から出力された信号を増幅して出力する第2の増幅回路と,前記分配回路から出力された信号と,前記第2の増幅回路から出力された信号とを乗算し,その結果をドプラ出力として出力する乗算回路とを備えた装置により一体的に構成される,溺没検知装置。」(判決注・「ディスプレイの表示よる警報を発する警報手段」は,「ディスプレイの表示による警報を発する警報手段」の誤記と認める。以下においては,誤記を訂正したもので,表記する。)イ一致点「生体対象の動作を検知,分析,および表示するのに有用な装置であって,前記対象より反射された反射信号 手段」の誤記と認める。以下においては,誤記を訂正したもので,表記する。)イ一致点「生体対象の動作を検知,分析,および表示するのに有用な装置であって,前記対象より反射された反射信号を前記対象との物理的接触または機械的結合なしに分析し,それより動作の測定結果を導出するように構成されたプロセッサと,前記プロセッサに接続され,前記反射信号を受信するように設けられたセンサと,前記反射信号に送信信号を乗じ,それより動作を示すベースバンド信号を出力するように設けられた乗算回路と,分析および導出された前記測定結果を前記装置のユーザに与えるように- 7 -構成されたディスプレイと,を備え,前記センサおよび前記プロセッサは,共に前記対象との直接的または間接的な物理的接触なしに作動するように設けられている装置。」である点。 ウ相違点ユーザが,本願発明では「ローカルまたはリモートユーザ」であるのに対して,引用発明はどのようなユーザであるか不明な点。 第3 当事者の主張 1 原告の主張(1) 取消事由1(本件補正の補正要件の判断の誤り)本件審決は,①補正発明の特許請求の範囲(請求項1)記載の「生体対象に使用可能な無線周波数(RF)のパルス信号を送信する送信機」(以下「特定事項1」という。)及び「前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号を決定…するように構成されたプロセッサ」(以下「特定事項2」という。)の構成によれば,補正発明は,「無線周波数エネルギーがパルス信号の場合に,位相差信号から呼吸,心活動および身体機能または動作のうち一つ以上の測定結果を導出するという事項」(以下「包含事項」という。)を構成に含むこと 正発明は,「無線周波数エネルギーがパルス信号の場合に,位相差信号から呼吸,心活動および身体機能または動作のうち一つ以上の測定結果を導出するという事項」(以下「包含事項」という。)を構成に含むことになるが,当初明細書等には,包含事項が記載されていない,②当初明細書等には,位相差のみを信号として取り出した「位相差信号」なるものは記載されておらず,ましてや,「呼吸,心活動,および身体機能又は動作のうち一つ以上の測定結果」を導出する「位相差信号」なる信号は記載されていないし,また,「位相差信号」をどのように決定するかについても記載されていないから,特定事項2が記載されていないとして,本件補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないも- 8 -のではなく,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえないから,特許法17条の2第3項の規定に違反する旨判断した。 しかしながら,以下に述べるとおり,当初明細書等には,包含事項及び特定事項2のいずれについても記載されているから,本件審決の上記判断は誤りである。 ア包含事項の記載について(ア) 当初明細書等の段落【0039】には,「s(t)=u(t)cos(2πfct+θ)(1)」の式(以下「式(1)」という。)で示される「無線周波数信号」がユニットから送信されること,式(1)中の「fc」は「搬送周波数」,「t」は「時間」,「θ」は「任意の位相角」,「u(t)」は「パルス波形」であることが記載されている。 一般に余弦関数(コサイン)の引数は「瞬時位相」であること(甲15の1,2,16の1,2)からすると,式(1)中の「2πfct+θ」は瞬時位相である。 そうすると,「2πfct+θ」は時間の経 一般に余弦関数(コサイン)の引数は「瞬時位相」であること(甲15の1,2,16の1,2)からすると,式(1)中の「2πfct+θ」は瞬時位相である。 そうすると,「2πfct+θ」は時間の経過とともに変化する構成要素であり,任意の位相角θは,瞬時位相の固定偏差であるといえる(甲16の1,2)。 (イ) 当初明細書等の段落【0041】には,①「受信信号と送信信号は,ミキサと呼ばれる一般的な電子機器(アナログあるいはデジタル方式)により混合することができる」こと,②ミキサの「混合信号」は,「m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)) (3)」の式(以下「式(3)」という。)で示されること,③式(3)中の「φ(t)」は「送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」,「γ」は「反射信号の減衰量」であること,④「反射体が一定の場合,φ(t)およびm(t)は一定となる。我々に該当する例では,反射体(胸部など)が動作しており,m(t)が時間とともに変化する。」,⑤呼吸により胸部が正弦動作- 9 -している場合,「resp(t)=cos(2πfmt)」であること,⑥「混合信号は,fm成分(およびフィルタリングにより簡単に除去可能な2fcを中心とする成分)を含んでいる。混合後のローパスフィルタの出力側の信号を未処理センサ信号と称し,動作,呼吸,および心活動に関する情報を含んでいる。」との記載がある。 式(3)中の「cos(2πfct)」は送信信号,「cos(2πfct+φ(t))」は受信信号であり(甲15の1,2),式(3)中の「φ(t)」は,「送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」(上記③)である。式(1)(送信信号s(t))と式(3)(混合信号m(t))と 甲15の1,2),式(3)中の「φ(t)」は,「送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」(上記③)である。式(1)(送信信号s(t))と式(3)(混合信号m(t))とを対比すると,式(1)中の位相角θと式(3)中の経路差φ(t)が形式的に同等であることは明確であるから,位相角θと経路差φ(t)は,いずれも,余弦関数の引数の中の瞬時位相として現れており,信号の位相に関する情報を伝えるものである。 したがって,「φ(t)」は,「送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」を表すものであるが,受信信号の時間経過とともに変化する瞬時位相でもある。 また,「φ(t)」は,一般に「位相シフト」,「位相オフセット」,「位相差」(甲17の1,2)と呼ばれていることからすると,「φ(t)」は,「位相シフト」,すなわち,「位相差信号」を意味するものといえる。 さらに,送信された信号が反射して帰ってくると,その経路距離,すなわち経路差に応じて位相がずれており,「経路差」と「位相差」は同じものを別の表現で表したものであることは,当業者にとって自明であり(甲20の1,2),「経路差(pathdifference)」と「位相差(phasedifference)」が密接に関連していることは,本願の優先権主張日当時,一般的な技術常識であったものである。 そうすると,当初明細書等の上記各記載及び図1(別紙明細書図面参照)- 10 -には,ローパスフィルタのフィルタリングにより混合信号から2fcを中心とする成分が除去された後の出力信号は,位相差信号である「φ(t)」となり,この位相差信号に「動作,呼吸,および心活動に関する情報」を含んでいることが開示されているといえるから,位相差信号である「φ とする成分が除去された後の出力信号は,位相差信号である「φ(t)」となり,この位相差信号に「動作,呼吸,および心活動に関する情報」を含んでいることが開示されているといえるから,位相差信号である「φ(t)」から,「動作,呼吸,および心活動に関する情報」を導出できることは明らかである。 なお,当初明細書等の段落【0072】には,「反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作を示すベースバンド信号を出力するように乗算回路を設けてもよい。」との記載があることからすると,「φ(t)」は,「ベースバンド信号」から得ることのできる「位相差信号」であって,「ベースバンド信号」や「未処理センサ信号」とは区別されるものである。 (ウ) 任意のパルス波形は,「f=1/T」(Tはパルスの周期)の「調波」(1つの周波数の整数倍の周波数の波)である正弦波の無限の和に分解することができるから,送信信号と受信信号との間には位相差の無限のセットが存在することになる。これらの位相差を検出し,組み合わせ,全体の経路差(φ(t))を推定することは,数学的に可能であるし,当業者であれば,フーリエ級数の方法を用いて,位相差の測定値を用いることで,全体の経路差(φ(t))を生成することができる。 したがって,当業者であれば,これらの位相差を取り出すことは可能である。 また,φ(t)の変化は,ある特定の条件下において時間遅延として検出できるが(甲15の1,2),当初明細書等の段落【0043】には,「UWBの場合,未処理センサ信号を解放する別の方法が有利である。UWBの場合,最も重要な空気と身体との界面までの経路距離は,送信パルスとピーク反射信号との間の遅延を測定することにより求められる。 - 11 -たとえばパルス幅が1ns,センサを形 有利である。UWBの場合,最も重要な空気と身体との界面までの経路距離は,送信パルスとピーク反射信号との間の遅延を測定することにより求められる。 - 11 -たとえばパルス幅が1ns,センサを形成する身体までの距離が0.5mのとき,パルスのピーク反射までの総経過時間m(τ)は,1/(3×108)s=3.33nsとなる。多数のパルス(たとえば1μsあたり1nsパルス1回)を送信し,経路距離がゆっくり変化していると仮定することにより,その期間における時間遅延の平均として未処理センサ信号を導出することができる。」との記載があり,その特定の条件が具体的に示されている。このように送信信号と受信信号との間の時間遅延が直接検出され,その時間遅延が経路差に直接関連付けられることになる。 (エ) 以上によれば,当初明細書等には,本件審決にいう「包含事項」(無線周波数エネルギーがパルス信号の場合に,位相差信号から呼吸,心活動および身体機能または動作のうち一つ以上の測定結果を導出するという事項)が記載されているから,これと異なる本件審決の認定は誤りである。 (オ) 被告は,式(3)は,連続波(CW)の混合信号を表現した式であって,送信波がパルス信号である場合の混合信号を表したものではなく,UWBなどの「パルス信号」については,余弦関数(コサイン)の連続波の場合と異なり,送受の信号を乗算しても,必ずしも位相差に関連する信号が得られるものではないし,一般のパルス波形に対しては「位相」の定義自体が困難であり,その位相差を求めることは当業者の技術常識から明らかなわけではない旨主張する。 しかしながら,任意の周期的なパルス信号は正弦波の無限の和として定義することができ,位相差は任意の周期的なパルス信号においても意味をなすこと,パルス波は異なる周波数を有 わけではない旨主張する。 しかしながら,任意の周期的なパルス信号は正弦波の無限の和として定義することができ,位相差は任意の周期的なパルス信号においても意味をなすこと,パルス波は異なる周波数を有する複数の正弦波を単に重ね合わせたものであり,任意の波形は異なる周波数の正弦波又は余弦波の重ね合わせとして表現できることは波動の基本的原理であること(甲16な- 12 -いし19)からすると,位相差の概念をパルス波に関連付けることは理論的に可能であり,一般のパルス波形に対して「位相」の定義自体が困難であるとはいえない。 また,当初明細書等には,「図13は,本開示の装置およびシステムの別の実施形態における音,超音波,赤外線,光,および/または相対湿度などの使用可能な補助センサを示すブロック図である。」(段落【0036】),「反射信号はRF信号とすることができ,あるいは超音波,赤外線,および/または可視光など別の種類の信号であってもよい。」(段落【0071】),「以上はRF信号を用いての実証であったが,超音波,赤外線,可視光などの他の種類の信号を用いてもよい。」(段落【0102】)との記載がある。上記記載によれば,本願発明において,パルス波を用いて位相差を求めることができることは,波動の基本的原理から当業者にとって明らかである。 したがって,被告の上記主張は理由がない。 イ特定事項2の記載について前記アによれば,当初明細書等から,「θ」は「任意の位相角」であること,「φ(t)」は,「送信および受信信号の経路差」を表すものであるが,「位相差信号」でもあること,ミキサの出力信号をローパスフィルタでフィルタリングすることにより,位相差のみを取り出した「位相差信号」を得ることができること,この位相差信号には「呼吸,心活動,および身体 位相差信号」でもあること,ミキサの出力信号をローパスフィルタでフィルタリングすることにより,位相差のみを取り出した「位相差信号」を得ることができること,この位相差信号には「呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の情報」が含まれていることを理解できる。 そうすると,当初明細書等には,本件審決にいう「特定事項2」(前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号を決定…するように構成されたプロセッサ)が記載されているから,これと異なる本件審決の認定は誤りである。 - 13 -ウ小括以上によれば,補正発明は,当初明細書等に記載されているから,本件補正は,新たな技術的事項を導入しないものであって,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。 したがって,本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に違反するものではないから,同項違反を理由に本件補正を却下した本件審決の判断は誤りである。 (2) 取消事由2(本願発明の容易想到性の判断の誤り)本件審決は,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである旨判断したが,以下に述べるとおり,本件審決の判断は誤りである。 ア一致点の認定の誤り(ア) 本願の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて,「本願明細書」という。甲2)における「本開示は,簡便かつ低コストな方法による人間の動作,呼吸,心拍数,および睡眠状態の監視に関し,より詳細には,それらに対応する情報を取得,処理し,容易に理解できる形式で表示するための装置,システム,および方法に関する。」(段落【0002】),「人間の動作,呼吸,心拍数,および睡眠状態を監視するための簡便かつ らに対応する情報を取得,処理し,容易に理解できる形式で表示するための装置,システム,および方法に関する。」(段落【0002】),「人間の動作,呼吸,心拍数,および睡眠状態を監視するための簡便かつ低コストな装置,システム,および方法のさまざまな実施形態を提供する。さまざまな実施形態において,被験者が寝る場所の近く(ベッド脇のテーブル上など)に配置するのに適したセンサユニットを,結果を分析,視覚化し,ユーザに伝達可能な監視および表示ユニットに接続することができる。」(段落【0017】)との記載によれば,本願発明の主眼とするところは,処理対象となっているベースバンド信号が人間の睡眠時の呼吸活動に関するデータが含まれた信号であることに鑑み,睡眠中の人間の呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検- 14 -知,分析,および表示するのに有用な装置等を提供することにあり,「睡眠状態の監視」であることは明らかである。 そうすると,本願発明は,人間の睡眠障害の臨床監視の分野に属するものであるから,本願発明の「生体対象」は,「睡眠中の人間」と解釈すべきである。 したがって,本願発明の「生体対象」の「動作」は「人間の睡眠中の動作」,本願発明の「検知,分析および表示」の対象は「睡眠中の身体活動に起因する動作,呼吸,心拍数,睡眠状態」,本願発明の「反射信号」は「睡眠中の人間から反射された信号」,本願発明の「送信信号」は「睡眠中の人間の呼吸活動,身体動作の状態を検知するために発射される信号」,本願発明の「ベースバンド信号」は睡眠中の人間の「呼吸,心活動および身体機能又は動作の分析の対象となる信号」,本願発明の「ディスプレイ」は睡眠中の人間の「呼吸,心活動および身体機能又は動作のうち一つ以上の測定結果を表示するもの」と解釈すべきであ 呼吸,心活動および身体機能又は動作の分析の対象となる信号」,本願発明の「ディスプレイ」は睡眠中の人間の「呼吸,心活動および身体機能又は動作のうち一つ以上の測定結果を表示するもの」と解釈すべきである。 (イ) 一方で,引用文献1(甲1)の段落【0010】の「入浴者の意識喪失に伴って入浴者が浴槽内に溺没してしまった場合は数分間の観察時間内に窒息し,心配停止に至ることが考えられる。これを防止するためには溺没判断を数秒程度の短時間に行い,早急に警報などを発する必要がある。」との記載によれば,引用発明の溺没検知装置の機能は,浴槽内にいる「入浴者」が「溺没」(「人の生命,健康に害が発生する情況で,水中に人が沈むこと」(段落【0021】))しているか否かを短時間で判断し,警報を発することにある。 このように引用発明は,浴槽内の人間の溺没監視の分野に属するものであり,人間の睡眠障害の臨床監視の分野に属する本願発明とは,技術分野が全く異なるから,引用発明の「入浴者」は本願発明の「生体対象」に相当するものではない。 - 15 -したがって,引用発明の「入浴者」の動作は,本願発明の「生体対象」の「動作」とは異なり,引用発明は,本願発明の「検知,分析および表示」の対象,「反射信号」,「送信信号」,「ベースバンド信号」及び「ディスプレイ」の構成も備えていないから,本件審決がした一致点の認定は誤りである。 イ相違点の容易想到性の判断の誤り本件審決は,相違点に関し,引用発明の目的が人の異常を早急に発見することが可能な溺没検知装置の提供にあることに照らせば,引用発明において,ユーザとしてリモートユーザを想定することに格別の技術的困難性も阻害要因もないから,引用発明において相違点に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が容易になし得ること らせば,引用発明において,ユーザとしてリモートユーザを想定することに格別の技術的困難性も阻害要因もないから,引用発明において相違点に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が容易になし得ることである旨判断した。 しかしながら,本件審決の上記判断は,前記アのとおり,本願発明の技術分野は人間の睡眠障害の臨床監視の分野に属するのに対し,引用発明の技術分野は浴槽内の人間の溺没監視の分野に属するものであり,両発明の技術分野が全く異なることを看過し,技術分野に関する誤った前提に基づくものであるから,誤りである。 ウ小括以上によれば,本件審決における本願発明と引用発明との一致点の認定及び相違点の容易想到性の判断に誤りがあるから,本願発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとした本件審決の判断は誤りである。 (3) まとめ以上のとおり,本件審決には,本件補正の補正要件(特許法17条の2第3項)の判断を誤って,本件補正を却下した誤りがあり,また,本願発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとした判断の誤りがある。 - 16 -したがって,本件審決は,違法であるから,取り消されるべきである。 2 被告の主張(1) 取消事由1に対しア当初明細書等には,「位相差」又は「位相差信号」の用語の記載はなく,「位相差」又は「位相差信号」と呼べるものについての記載もない。 したがって,当初明細書等には,反射信号と送信されたパルス信号との位相差を示す「位相差信号」を「決定」し,その「位相差信号」から呼吸,心活動および身体機能または動作のうち一つ以上の測定結果を導出することについての記載もない。 イ(ア) この点に関し,原告が挙げる当 差を示す「位相差信号」を「決定」し,その「位相差信号」から呼吸,心活動および身体機能または動作のうち一つ以上の測定結果を導出することについての記載もない。 イ(ア) この点に関し,原告が挙げる当初明細書等の段落【0041】記載の式(3)は,特定周波数の余弦関数(コサイン)を用いて表した連続波(CW)の混合信号を表現した式であり,同段落には,式(3)のうちの「φ(t)」を「送信および受信信号の経路差」と呼び,振幅がγに減衰されることが記載されている。 しかしながら,送信信号と受信信号の「位相差」とは,同じ周波数の2つの連続波の位相のみが異なっている場合,その差が位相差であるが(乙2),当初明細書等には,「送信および受信信号の経路差」である「φ(t)」が,「位相差」又は「位相差信号」であることを述べた記載はない。 また,仮に「φ(t)」が数学的には「位相差」と呼べるとしても,式(3)は,送信信号と受信信号の文字通りの位相差を求めることを開示するものではないのみならず,式(3)の混合信号をローパスフィルタでフィルタリング処理することにより,反射信号の減衰量γ及びφ(t)に対する余弦関数(コサイン)値という2つの変動する値の積が求め得るとしても,φ(t)の値の「決定」が行われることはない。 さらに,式(3)は,連続波(CW)の混合信号を表現した式であり,連- 17 -続波(CW)は「パルス信号」ではないから,送信波がパルス信号である場合の混合信号を表したものではない。UWBなどの「パルス信号」については,余弦関数(コサイン)の連続波の場合と異なり,送受の信号を乗算しても,必ずしも位相差に関連する信号は得られない。実環境で短時間かつ広帯域なパルスを運動する被検体に送信すると,その送信信号と被検体との相互作用,波の伝播過程によ の場合と異なり,送受の信号を乗算しても,必ずしも位相差に関連する信号は得られない。実環境で短時間かつ広帯域なパルスを運動する被検体に送信すると,その送信信号と被検体との相互作用,波の伝播過程による波形の歪みやマルチパス歪み等により,周波数,振幅の変化の仕方,そして波数も変化し,結果的に送信信号と受信信号の波形は大きく相違すると考えられ,一般のパルス波形に対しては「位相」の定義自体が困難であり,その位相差を求めることは当業者の技術常識から明らかなわけではない。 以上によれば,当初明細書等の段落【0041】は,「位相差」又は「位相差信号」について記載したものではなく,反射信号と送信されたパルス信号との位相差を示す「位相差信号」を「決定」すること(特定事項2)を記載したものとはいえない。 (イ) 次に,原告が挙げる当初明細書等の段落【0043】には,UWBの場合,送信パルスとピーク反射信号との間の「遅延」を測定することにより,身体までの「経路距離」を求めること,動きが無視できるような短い時間間隔で多数のパルスの送受信を行って得られた時間遅延を平均して「未処理センサ信号」を導出することが記載されている。 しかしながら,上記の「遅延」は,送信パルスと反射信号との時間差であって,「位相差」とは異なるものである。また,同段落記載のUWBの場合の実施態様は「別の方法」であって,同段落には,連続波(CW)のような「乗算回路」の記載がない。 したがって,当初明細書等の段落【0043】は,「位相差」又は「位相差信号」について記載したものではなく,反射信号と送信されたパルス信号との位相差を示す「位相差信号」を「決定」すること(特定事- 18 -項2)を記載したものとはいえない。 ウ以上によれば,当初明細書等には,包含事項及び特定事項につ 信号と送信されたパルス信号との位相差を示す「位相差信号」を「決定」すること(特定事- 18 -項2)を記載したものとはいえない。 ウ以上によれば,当初明細書等には,包含事項及び特定事項についての記載はなく,本件補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するから,本件補正を却下した本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由1は理由がない。 (2) 取消事由2に対しア一致点について本願発明の特許請求の範囲の請求項1には,「生体対象の呼吸,心活動,及び身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析,および表示する」との記載があるが,本願発明が人間の睡眠障害の監視対象の分野に属することや,本願発明の「生体対象」が「睡眠中の人間」であることを特定する記載はない。 また,本願明細書の記載事項(段落【0053】,【0103】等)を参酌しても,本願発明が人間の睡眠障害の臨床監視の分野に属するものに限定され,本願発明の「生体対象」を「睡眠中の人間」に限定的に解釈すべき理由はない。 そうすると,本願発明の「生体対象」を「睡眠中の人間」に限定的に解釈すべきことを前提に,本願発明の「生体対象の動作」を「人間の睡眠中の動作」に,本願発明の「検知,分析,および表示」の対象を「睡眠中の身体活動に起因する動作,呼吸,心拍数,睡眠状態」に,本願発明の「反射信号」を「睡眠中の人間から反射される信号」に限定的に解釈べき理由はなく,これと同様に,「送信信号」,「ベースバンド信号」及び「ディスプレイ」の構成についても限定的に解釈すべき理由はない。 - 19 -したがって,本件審決 れる信号」に限定的に解釈べき理由はなく,これと同様に,「送信信号」,「ベースバンド信号」及び「ディスプレイ」の構成についても限定的に解釈すべき理由はない。 - 19 -したがって,本件審決がした一致点の認定に誤りはない。 イ相違点の容易想到性について前記アのとおり,本願発明を人間の溺没監視の分野を除き,睡眠障害の監視対象の分野に限定的して解釈すべき理由はない。 そして,引用発明が人の異常を早急に発見することが可能な溺没検知装置の提供であることを目的としていることに照らすと,当業者がユーザとしてリモートユーザを想定することに格別の技術的困難性も阻害要因もない。 したがって,本件審決がした相違点の容易想到性の判断に誤りはない。 ウ小括以上によれば,本件審決における一致点の認定及び相違点の容易想到性の判断に誤りはなく,本願発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。 (3) まとめ以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件補正の補正要件の判断の誤り)について原告は,本件審決が,当初明細書等には補正発明の「包含事項」及び「特定事項2」がいずれも記載されていないから,本件補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものではなく,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないとして,特許法17条の2第3項の規定に違反する旨判断し,本件補正を却下したのは誤りである旨主張するので,以下において判断する。 - 20 -(1 した事項の範囲内においてしたものとはいえないとして,特許法17条の2第3項の規定に違反する旨判断し,本件補正を却下したのは誤りである旨主張するので,以下において判断する。 - 20 -(1) 本件審決の内容についてア本件補正は,本願の願書に添付した特許請求の範囲を補正するものであり,当初明細書等記載の請求項1を補正した本件補正前の請求項1(前記第2の2(1))を本件補正後の請求項1(同(2))に補正することをその内容に含むものである(甲14)。 本件補正後の請求項1の記載は,「生体対象の呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析,および表示するのに有用な装置であって,前記生体対象に使用可能な無線周波数(RF)のパルス信号を送信する送信機と,前記生体対象から反射された反射信号を受信するように設けられたセンサと,前記反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を示すベースバンド信号を出力するように設けられた乗算回路と,前記センサと接続され,前記ベースバンド信号を分析し,前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号を決定し,前記位相差信号から呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出するように構成されたプロセッサと,分析および導出された前記測定結果を前記装置のローカルまたはリモートユーザに与えるように構成されたディスプレイと,を備え,前記センサ及び前記プロセッサは,共に前記生体対象との直接的または間接的な物理的接触なしに作動するように設けられ,前記反射信号は,当該装置とともに設けられた前記送信機により生成される を備え,前記センサ及び前記プロセッサは,共に前記生体対象との直接的または間接的な物理的接触なしに作動するように設けられ,前記反射信号は,当該装置とともに設けられた前記送信機により生成される装置。」というも- 21 -のである(下線部は本件補正による補正箇所)。 イそして,本件審決が認定した補正発明の「包含事項」である「無線周波数エネルギーがパルス信号の場合に,位相差信号から呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち一つ以上の測定結果を導出するという事項」及び「特定事項2」である「前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号を決定…するように構成されたプロセッサ」は,補正発明の特許請求の範囲(本件補正後の請求項1)の記載との関係でみると,同請求項1の「前記ベースバンド信号を分析し,前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号を決定し,前記位相差信号から呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出するように構成されたプロセッサ」の構成(以下「本件構成」という場合がある。)に相当するものと解される。 そうすると,本件審決が当初明細書等には補正発明の包含事項及び特定事項2のいずれも記載されておらず,本件補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものではないと認定したのは,当初明細書等の記載事項全体から,本件構成に係る技術が開示されているものと認められない旨認定したことにほかならないから,以下においては,当初明細書等に本件構成に係る技術が開示されているか したのは,当初明細書等の記載事項全体から,本件構成に係る技術が開示されているものと認められない旨認定したことにほかならないから,以下においては,当初明細書等に本件構成に係る技術が開示されているかどうかについて検討する。 (2) 当初明細書等の記載事項について当初明細書等(甲2)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙明細書図面を参照)。 ア 【特許請求の範囲】【請求項1】- 22 -生体対象の呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析,および表示するのに有用な装置であって,前記対象より反射された信号を前記対象との物理的接触なしに分析し,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち前記1つ以上の測定結果を導出するように構成されたプロセッサと,前記分析および導出された測定結果を前記装置のローカルまたはリモートユーザに与えるように構成されたディスプレイとを備える装置。 【請求項2】前記プロセッサに接続され,前記対象より反射された前記信号を受信するように設けられたセンサをさらに備える請求項1の装置。 【請求項3】前記センサおよび前記プロセッサは,ともに前記対象との直接的または間接的な物理的接触なしに作動するように設けられた請求項2の装置。 【請求項4】前記反射信号は,前記装置とともに設けられた送信機により生成される請求項1の装置。 【請求項5】前記送信機は,前記生体対象に使用可能な無線周波数(RF)エネルギー信号を生成するように構成された請求項4の装置。 【請求項6】前記反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち前記1つ以上を示すベースバンド信号を出力するように設けられた乗算回路をさ れた請求項4の装置。 【請求項6】前記反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち前記1つ以上を示すベースバンド信号を出力するように設けられた乗算回路をさらに備える請求項1の装置。 【請求項7】前記プロセッサは,前記ベースバンド信号のエネルギーエンベロープの- 23 -ピークを特定することにより前記対象の身体動作期間を識別するように構成された請求項6の装置。 【請求項8】前記プロセッサは,単位時間あたりの前記ベースバンド信号のしきい値交差回数をカウントすることにより前記対象の身体動作期間を識別するように構成された請求項6の装置。 【請求項9】センサをさらに備え,前記プロセッサは前記ベースバンド信号を受信しそれに応じて処理された信号を出力するように構成され,前記プロセッサはさらに前記処理された信号を用いて前記対象の呼吸活動を判別するように構成された請求項6の装置。 【請求項10】センサをさらに備え,前記プロセッサは前記センサの出力を受信しそれに応じて処理された信号を出力するように構成され,前記プロセッサはさらに前記処理された信号を用いて前記対象の心活動を判別するように構成された請求項6の装置。 【請求項11】前記プロセッサは,ある測定時間区分における前記ベースバンド信号のエネルギーを他の時間区分に対して算出することにより活動カウントを求めるように構成された請求項6の装置。 【請求項12】前記プロセッサは,分類器モデルを実行し,前記ベースバンド信号から導出された呼吸信号より得られた特徴を処理することによりチェーン・ストークス呼吸パターンを特定するように構成された請求項6の装置。 【請求項13】前記プロセッサは,前記ベースバンド信号から導出された呼 た呼吸信号より得られた特徴を処理することによりチェーン・ストークス呼吸パターンを特定するように構成された請求項6の装置。 【請求項13】前記プロセッサは,前記ベースバンド信号から導出された呼吸信号を処- 24 -理することにより無呼吸低呼吸指数(AHI:Apnoea-Hypopnoeaindex)を求めるように構成された請求項6の装置。 【請求項15】前記プロセッサは,前記ベースバンド信号から導出された動作信号の分析により前記対象の睡眠状態を求めるように構成された請求項1の装置。 【請求項16】前記プロセッサは,分類器モデルを実行し,前記分類器モデルより与えられた動作信号,呼吸信号,および心信号のうち1つ以上を組み合わせて睡眠状態を求めるように構成された請求項1の装置。 【請求項17】前記プロセッサは,前記対象の呼吸および動作活動がある期間にわたり所定のしきい値を下回ったと判定することにより中枢性無呼吸状態を識別するように構成された請求項1の装置。 【請求項18】前記プロセッサは,導出された呼吸頻度を既存の呼吸測定結果のセットと比較することにより前記対象の呼吸窮迫状態を識別するように構成された請求項1の装置。 【請求項23】前記対象より反射された前記信号は無線周波数(RF)信号を含む請求項1の装置。 イ 【発明の詳細な説明】(ア) 【技術分野】【0002】本開示は,簡便かつ低コストな方法による人間の動作,呼吸,心拍数,および睡眠状態の監視に関し,より詳細には,それらに対応する情報を取得,処理し,容易に理解できる形式で表示するための装置,システム,- 25 -および方法に関する。 (イ) 【背景技術】【0003】睡眠中の睡眠パターン,心拍数,および呼吸の監視は,大 得,処理し,容易に理解できる形式で表示するための装置,システム,- 25 -および方法に関する。 (イ) 【背景技術】【0003】睡眠中の睡眠パターン,心拍数,および呼吸の監視は,大人と幼い子供の両方における閉塞性および中枢性睡眠時無呼吸の臨床監視から,幼い乳児における健康な睡眠パターンの確保に至るまで,多くの理由から関心を集めている。たとえば,未熟児は心肺の制御が未熟であることが多く,15~20秒間呼吸が停止したり,呼吸が浅くなったりすることがある。これは未熟児無呼吸と呼ばれ,生後2~3ヶ月間続くことが多い。周期性呼吸(呼吸の振幅が数分間にわたって上昇,下降する)もまた未熟児によく見られる。そのような乳児の場合,低心拍数(徐脈)を乳児の酸素不足を警告する信号として利用できるため,心拍数を監視することも有用である。 【0008】成人においては,睡眠中の心拍数と呼吸数の測定結果を,継続的な健康管理のための臨床的指標として用いることができる。たとえば呼吸数の上昇は,呼吸作用の活発化を伴う慢性的な閉塞性肺疾患など,何らかの呼吸窮迫や疾患に関連している可能性がある。臨床研究によれば,チェーン・ストークス呼吸あるいは周期性呼吸と呼ばれるある種の呼吸パターンが心疾患患者の予後不良を示す指標となることがわかっている。 また呼吸と心活動の同時測定により,呼吸のたびに心拍数が上昇,下降する呼吸性洞性不整脈(RSA:respiratorysinusarrhythmia)と呼ばれる現象を評価することもできる。この結合効果の振幅は,通常健康な若者の方が大きいことから,健康の指標として用いることができる。 また,睡眠中の心拍数変化から有益な臨床的情報を得ることができる。 具体的には,心拍数の上昇が,睡眠時無呼吸や他の症状と関連しうる交 な若者の方が大きいことから,健康の指標として用いることができる。 また,睡眠中の心拍数変化から有益な臨床的情報を得ることができる。 具体的には,心拍数の上昇が,睡眠時無呼吸や他の症状と関連しうる交- 26 -感神経系の全身的な活性化の指標となる。さらに,心調律の安定を目的とした治療に対する反応の監視は,一般的な臨床問題のひとつである。 たとえば,一般的な心不整脈として,心房が不規則に鼓動する心房細動(AF:atrialfibrillation)がある。この結果,心拍数が不規則になり,上昇する。一般的なAFの治療には薬理療法と外科的療法があり,医師の目標は不整脈の再発がないか調べる追跡監視を行うことにある。 睡眠中の心拍数の非侵襲的かつ低コストの監視は,上記症状や他の心不整脈を追跡監視する手段を医師に提供する有益なメカニズムとなる。 【0009】このように,睡眠中の睡眠パターン,呼吸,および心拍数ならびに睡眠中の動作を確実に監視できる方法,システム,または装置には,さまざまな状況で用途がある。 【0010】呼吸,心臓,および睡眠監視の必要性に応えるため,さまざまな技術が背景技術において開示されている。呼吸監視は,現在さまざまな方法により主に院内環境において行われている。呼吸作用を測定する一般的な方法のひとつにインダクタンスプレチスモグラフィを用いたものがあり,この方法では患者の胸部に弾性のバンドがきつく巻かれ,患者の吸気,呼気とともにそのインダクタンスが変化する。この技術は,睡眠医療において最も広く利用されている呼吸監視技術である。この方法における利便上の厳しい制約は,患者がバンドを着用しなければならず,しかも付属の電子記録機器に配線でつながれた状態となる点である。 【0015】心拍数,呼吸,および動作の非接触で る。この方法における利便上の厳しい制約は,患者がバンドを着用しなければならず,しかも付属の電子記録機器に配線でつながれた状態となる点である。 【0015】心拍数,呼吸,および動作の非接触での測定に関しては,さまざまな方法が述べられている。そのひとつは,光学干渉法を用いて呼吸,心活動,および動作を非接触で特定する方法である。しかしこの発明では,- 27 -衣服や寝具材により光学信号が遮断されるという制約がある。呼吸,心臓,および動作に関わる要素を取得し区別するのに必要な処理については明らかでない。第2の方法は,超音波を用いて動作を検知する方法である。この方法における制約は,低反射のため信号対雑音比に劣ることがあり,また呼吸,動作,および心信号を同時に収集できない点である。 身体動作を測定するための別の非接触測定方法としては,連続波レーダ(無線周波数帯域の電磁波を使用)を用いて呼吸と心拍動を検知する方法がある。 【0016】非接触の方法を用いて生理学的データを取得するための前述の方法における制約には,センサによるさまざまな制約(寝具による妨害,劣悪な信号対雑音比,大型アンテナの必要性など)が含まれている。さらに,呼吸数,心調律状態,睡眠状態,呼吸窮迫,睡眠呼吸障害の形跡などの有用な「より高レベル」の生理学的状態を抽出する方法は,背景技術において提供されていない。本開示はまた,無線周波数の送信電力レベルが非常に低く(たとえば0dBm未満),小型化でき(たとえば,センサの大きさが5cm×5cm×5cm以下),電池駆動が可能であり,人間にも安全に使用できるという点において利点がある。 (ウ) 【発明の概要】【0017】本開示は,人間の動作,呼吸,心拍数,および睡眠状態を監視するための簡便かつ低コストな装置,システ 人間にも安全に使用できるという点において利点がある。 (ウ) 【発明の概要】【0017】本開示は,人間の動作,呼吸,心拍数,および睡眠状態を監視するための簡便かつ低コストな装置,システム,および方法のさまざまな実施形態を提供する。さまざまな実施形態において,被験者が寝る場所の近く(ベッド脇のテーブル上など)に配置するのに適したセンサユニットを,結果を分析,視覚化し,ユーザに伝達可能な監視および表示ユニットに接続することができる。必要であれば,センサユニットと表示/監- 28 -視ユニットを一体の独立したユニットに内蔵することができる。上記ユニットは,非接触動作センサ(一般的な身体動作,呼吸,および心拍数の検知用)と,処理機能(睡眠状態,呼吸数,心拍数,および動作などのパラメータを導出する)と,表示機能(視覚的なフィードバックを与える)と,音声機能(呼吸とともに周波数が変化する音や,動作を検出しないときに鳴る警告音などの音声フィードバックを与える)と,取得データを別のユニットに送信する通信機能(有線または無線)のうち1つ以上を備えることができる。この別のユニットにより上記の処理,表示,音声機能を実行することでき,またデータロガーとすることもできる。 【0018】一実施形態において,対象の呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析,および表示するのに有用な装置は,前記対象より反射された信号を前記対象との物理的接触なしに分析し,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち前記1つ以上の測定結果を導出するように構成されたプロセッサと,前記分析および導出された測定結果を前記装置のローカルまたはリモートユーザに与えるように構成されたディスプレイとを備えていてもよい。 【0019】別 果を導出するように構成されたプロセッサと,前記分析および導出された測定結果を前記装置のローカルまたはリモートユーザに与えるように構成されたディスプレイとを備えていてもよい。 【0019】別の実施形態において,対象の呼吸パラメータ,心活動,および身体動作または機能のうち1つ以上を測定,分析,および表示するためのシステムは,前記対象に向けて無線周波数信号を伝播させるように構成された送信装置と,前記対象より反射された無線周波数信号を受信するように設けられた受信機と,前記反射信号を分析することにより,呼吸パラメータ,心活動,および身体動作または機能のうち1つ以上の測定結果を生成するように設けられたプロセッサと,音声または視覚指示のい- 29 -ずれかまたは両方により,選択された情報を前記システムのローカルまたはリモートユーザに与えるモニタとを備えていてもよい。 (エ) 【発明を実施するための形態】【0025】図1は,本装置およびシステムの無線周波数センサの構成要素の概略を,説明のためにパルス連続波信号とともに示す図である。送信機は,人間などの対象に向けて無線周波数信号を送信する。ついで,反射した信号が受信,増幅,および元の信号の一部と混合され,このミキサの出力がローパスフィルタリングされる。得られた信号は被験者の動作,呼吸,および心活動に関する情報を含んでおり,これを未処理センサ信号という。別の実施形態では,本システムにおいて90°位相のずれた2つの搬送信号を用いて直交送信を行うことも可能である。パルスの時間幅がきわめて短い場合,そのようなシステムは超広帯域(UWB:ultrawideband)無線周波数センサとして特徴付けられる。 【0026】図2は,未処理センサ信号を処理し,次の処理に用いる3つの信号を生成 合,そのようなシステムは超広帯域(UWB:ultrawideband)無線周波数センサとして特徴付けられる。 【0026】図2は,未処理センサ信号を処理し,次の処理に用いる3つの信号を生成する方法についての概略を示す図である。未処理信号は,身体動作,呼吸,および心活動の組み合わせを反映する成分を通常含んでいる。身体動作は,ゼロ交差またはエネルギーエンベロープ検出アルゴリズム(またはさらに複雑なアルゴリズム)を用いて特定でき,それを用いて「動作オン」または「動作オフ」インジケータを形成できる。呼吸活動は,通常0.1~0.8Hzの範囲にあり,その領域を通過領域とするバンドパスフィルタにより元の信号をフィルタリングすることで得られる。 心活動は,それより高い周波数の信号に反映されており,1~10Hzといった通過領域のバンドパスフィルタによりフィルタリングすることで測定できる。 - 30 -【0027】図3は,未処理センサ信号を処理し動作情報を得る手段をさらに詳細に示す図である。ある技術では,ある期間における信号のエネルギーエンベロープを算出し,しきい値と比べて高いエネルギーエンベロープを有する期間を動作期間とする。別の技術では,信号がしきい値(たとえばゼロ値)を交差した回数をカウントし,ゼロ交差の値が高い領域を高動作領域とする。これらの技術を別個にまたは組み合わせて用いることで,動作を検知することができる。 【0028】図4は,本システムより得られた呼吸活動のサンプル信号を,現在臨床上のゴールドスタンダードとなっているインダクタンスプレチスモグラフィより得られた信号(レスピバンド(Respiband)(登録商標)という市販システムを使用)と比較して示す図である。本開示の装置およびシステムでは,呼吸の振幅と周波数の ダクタンスプレチスモグラフィより得られた信号(レスピバンド(Respiband)(登録商標)という市販システムを使用)と比較して示す図である。本開示の装置およびシステムでは,呼吸の振幅と周波数の両方を測定することができる。 【0029】図5は,本装置およびシステムより得られた心活動のサンプル信号を,パルスオキシメータを用いた従来の心拍数監視システムより得られた信号と比較して示す図である。本開示の装置およびシステムでは,個々の心拍動が判別可能な信号を取得することができる。 【0030】図6は,本装置およびシステムにより心拍数を算出するための技術を示す図である。心活動により,心弾動と呼ばれる圧力波が体表面に発生する。その心信号からは,個々のパルスが判然と見える信号が得られることがある(位置,体型,およびセンサを形成する距離の組み合わせによる)。そのような場合,しきい値通過技術(信号がしきい値を超えた地点とパルスとを関連付ける)により心拍動が特定される。より複雑な- 31 -(しかし一般的な場合においては),心弾動はより複雑であるが反復性のパルス波形を示す。そのため,得られた心信号をパルス波形テンプレートと関連付けることができ,その相関の強い部位が心拍動位置として用いられる。 【0031】図7は,本発明において,導出された動作m(t),呼吸r(t),および心信号c(t)から分類器モデルにより情報を統合し,有意義な生理学的分類を抽出する方法を示す図である。上記3つのデータストリームは時間区分ごとに分けられ,各時間区分について統計学的特徴が生成される。その特徴は,たとえば信号変動,スペクトル成分,またはピーク値などであり,ベクトルXr,Xn,Xcとしてグループ化される。これらのベクトルにより,単一の特徴ベクトルXを て統計学的特徴が生成される。その特徴は,たとえば信号変動,スペクトル成分,またはピーク値などであり,ベクトルXr,Xn,Xcとしてグループ化される。これらのベクトルにより,単一の特徴ベクトルXを生成することができる。これらの特徴は合成され(たとえばαTXを用いた線形重み付けによる),その時間区分がある特定の生理学的状態(たとえば被験者の睡眠または覚醒状態)に対応する確率が求められる。時間区分ごとの分類はさらに他の時間区分における分類と合成され,より高レベルの判断(被験者がレム状態,ノンレム状態,覚醒状態のいずれにあるかなど)を生成することができる。 【0034】図10は,導出された動作m(t),呼吸r(t),および心信号c(t)から分類器モデルにより情報を統合し無呼吸低呼吸指数(AHI:Apnoea-Hypopnoeaindex)を抽出する方法を示す図である。この分類器モデルは,呼吸信号,心拍数,および動作信号のあらゆる組み合わせを処理することにより無呼吸低呼吸指数を概算するためのアルゴリズムである。図11は,呼吸信号,心拍数,および動作信号のあらゆる組み合わせを処理することによりAHIを概算するためのアルゴリズムを示す図であり,測定および/または導出された被験者の呼吸作用のみ用い- 32 -る場合を含む。 【0036】図13は,本開示の装置およびシステムの別の実施形態における音,超音波,赤外線,光,および/または相対湿度などの使用可能な補助センサを示すブロック図である。この図では,送受信機,プロセッサ,データロガー,視覚表示手段,音声インジケータ,および補助センサを備える具体的な一実施形態の典型的な概略についてもブロック図形式で示されている。 【0037】一実施形態において,装置は,被験者が寝る場所の比 覚表示手段,音声インジケータ,および補助センサを備える具体的な一実施形態の典型的な概略についてもブロック図形式で示されている。 【0037】一実施形態において,装置は,被験者が寝る場所の比較的近く(ベッド脇のテーブル上など)に配置可能なセンサユニットと,結果を分析,視覚化しユーザに伝達可能な監視および表示ユニットとを備える。必要であれば,センサユニットと表示/監視ユニットを一体の独立したユニットに内蔵してもよい。このユニットは,一般的な身体動作,呼吸,および心拍数の検知のための非接触動作センサと,睡眠状態,呼吸数,心拍数,および動作などのパラメータを導出する処理機能と,視覚的なフィードバックを与える表示機能と,たとえば呼吸とともに周波数が変化する音や,動作を検出しないときに鳴る警告音などの音声フィードバックを与える音声機能と,取得データを別のユニットに送信する有線または無線通信機能という特徴のうち1つ以上を備えることができる。この別のユニットにより上記の処理,表示,音声機能を実行することができる。 (オ) 【0039】具体的な一実施形態では,動作センサが無線周波数ドップラーセンサを備えてもよく,このセンサを用いて無線周波数エネルギー(通常100MHz~100GHzの範囲)を送信し,受信した反射信号を用いて- 33 -動作信号を構成することができる。この動作原理としては,無線周波数波【数1】s(t)=u(t)cos(2πfct+θ) (1)がユニットから送信される。この例において,fcは搬送周波数,tは時間,θは任意の位相角,u(t)はパルス波形である。連続波システムでは,u(t)の大きさは常に1であるため,式(1)より省略できる。より一般化すれば,パルスは以下のように定められる。 【数2】 時間,θは任意の位相角,u(t)はパルス波形である。連続波システムでは,u(t)の大きさは常に1であるため,式(1)より省略できる。より一般化すれば,パルスは以下のように定められる。 【数2】1, t∈[kTkT+Tp], k∈Zu(t)= (2) ここでTは期間幅,Tpはパルス幅である。Tp<<Tのとき,このシステムはパルス連続波システムとなる。極限的な例では,Tpの時間がきわめて短くなると,放射信号のスペクトルがきわめて広くなり,このようなシステムを超広帯域(UWB)レーダまたはインパルスレーダという。あるいは,RF送信信号の搬送周波数を変化(チャープ)させ,いわゆる周波数変調連続波(FMCW:frequencymodulatedcontinuouswave)システムを構成することもできる。 【0040】この無線周波数信号は,パルスゲーティング用の回路に接続された局部発振器を用いて,センサとともに配置した送信機により生成することができ,あるいは信号タイミングの適切な制御により,いわゆる「バイスタティック」構成にて受信機/センサから送信機を分離することもできる。FMCWの場合,電圧制御発振器を電圧周波数変換器とともに用いて送信用RF信号を生成する。RF信号を電磁波に乗せるには,アン- 34 -テナを用いればよい。アンテナは,無指向性(全方向にほぼ等しく電力を送信する)と指向性(ある特定の方向に優先的に電力を送信する)のいずれであってもよい。本システムでは,指向性アンテナを用い,送信および反射エネルギーが主に一方向から来るようにするのが有利である。本開示の装置,システム,および方法は,単純なダイ 力を送信する)のいずれであってもよい。本システムでは,指向性アンテナを用い,送信および反射エネルギーが主に一方向から来るようにするのが有利である。本開示の装置,システム,および方法は,単純なダイポールアンテナ,パッチアンテナ,ヘリカルアンテナなどさまざまな種類のアンテナを用いた多様な実施形態で利用でき,アンテナの選択は,必要とする指向性,大きさ,形状,コストなどの要因に左右される。ただし本装置およびシステムは,人間に使用する上で安全とされている構成で使用できる点に注意されたい。本システムでは,総システム平均放射電力が1mW(0dBm)以下であることが実証されている。RF照射の推奨安全レベルは1mW/cm2である。0dBmで送信するシステムから1メートル離れた場所での等価電力密度は,上記推奨限界の少なくとも100分の1である。 【0041】いずれの場合も,放射された信号は電波を反射する物体により反射され(空気と身体との界面など),反射された信号の一部が受信機で受信される。受信機は,送信機とともに配置しても,いわゆる「バイスタティック」構成にて送信機と別個に配置してもよい。受信信号と送信信号は,ミキサと呼ばれる一般的な電子機器(アナログあるいはデジタル方式)により混合することができる。たとえばCWの場合,混合信号は以下に等しい。 【数3】m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)) (3)ここでφ(t)は送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合),γは反射信号の減衰量である。反射体が一定の場合,- 35 -φ(t)およびm(t)は一定となる。我々に該当する例では,反射体(胸部など)が動作しており,m(t)が時間とともに変化する。簡単な例として,呼吸により胸部が正 反射体が一定の場合,- 35 -φ(t)およびm(t)は一定となる。我々に該当する例では,反射体(胸部など)が動作しており,m(t)が時間とともに変化する。簡単な例として,呼吸により胸部が正弦動作している場合,【数4】resp(t)=cos(2πfmt) (4)混合信号は,fm成分(およびフィルタリングにより簡単に除去可能な2fcを中心とする成分)を含んでいる。混合後のローパスフィルタの出力側の信号を未処理センサ信号と称し,動作,呼吸,および心活動に関する情報を含んでいる。 【0042】未処理センサ信号の振幅は反射信号の平均経路距離に左右されるため,センサにおいて空値およびピーク検知(よりセンサ感度の低いまたは高い領域)が発生する。この影響は,90°位相のずれた信号を送信機より同時に送信する直交法を用いることで最小限に抑えることができる(この2つの信号をIおよびQ成分という)。この結果2つの反射信号が得られ,これらを混合して最終的に2つの未処理センサ信号が得られる。絶対値をとり(あるいは他の方法で)これら2つの信号からの情報を合成することで,単一の未処理センサ信号出力が得られる。 【0043】UWBの場合,未処理センサ信号を解放する別の方法が有利である。 UWBの場合,最も重要な空気と身体との界面までの経路距離は,送信パルスとピーク反射信号との間の遅延を測定することにより求められる。たとえばパルス幅が1ns,センサを形成する身体までの距離が0. 5mのとき,パルスのピーク反射までの総経過時間m(τ)は,1/(3×108)s=3.33nsとなる。多数のパルス(たとえば1μsあたり1nsパルス1回)を送信し,経路距離がゆっくり変化していると仮- 36 -定することにより,その期間における時間遅延の (3×108)s=3.33nsとなる。多数のパルス(たとえば1μsあたり1nsパルス1回)を送信し,経路距離がゆっくり変化していると仮- 36 -定することにより,その期間における時間遅延の平均として未処理センサ信号を導出することができる。 【0044】このように,無線周波数センサなどのセンサにより,胸壁の動作,より一般的には本システムの対象となる身体の一部の動作を取得することができる。方向選択性は,指向性アンテナまたは多重RF送信機を用いることにより得られる。このようにしてパルス連続波システムを用いて得られた呼吸信号が,図4の上側に示されている。ただし連続波,FMCW,またはUWBレーダを用いても同様の信号が得られることは言うまでもない。 【0045】さらに,受信する反射エネルギーの大部分は皮膚の表面層から来るため,各心拍動に伴う血圧変化による心拍動の皮膚表面への現れである心弾動についても動作センサにより得ることができる。RF動作センサにより得られる体表面心弾動図の一例を,指装着式のパルスオキシメータからの参照心弾動信号とともに図5に示す。睡眠中の被験者からセンサが受信する信号には,呼吸および心信号が混ざった信号に加え,動作のアーチファクトが通常含まれている。これら異なる信号は,デジタルフィルタリング技術など,さまざまな技術を用いた信号処理により分離できる(たとえば2~10Hzの帯域幅の線形バンドパスフィルタを用いて主に心信号を抽出し,0.15~0.6Hzの帯域幅のバンドパスフィルタを用いて呼吸成分を抽出できる)。また,より一般的なデジタルフィルタリング技術,たとえば適応ノイズ消去や非線形フィルタなどを用いてもよい。その概略については図2に示されている。 【0046】上述したように,受信信号は大きな動 た,より一般的なデジタルフィルタリング技術,たとえば適応ノイズ消去や非線形フィルタなどを用いてもよい。その概略については図2に示されている。 【0046】上述したように,受信信号は大きな動作のアーチファクトを含みうる。 - 37 -これは,身体からの反射信号が複数の反射経路を有し,複雑な信号となるためである(たとえば,一方の手がセンサに近づき,胸部が離れる場合)。そのような上半身動作に伴う複雑な信号が,図2の未処理信号に示されている。そのような信号の受信により上半身が動作していることがわかるため,睡眠状態を特定するのに有用である。また,下半身の動作の信号(不随意的な脚反射など)をセンサで検知することもでき,むずむず脚症候群や周期性四肢運動などの睡眠障害の診断に有用である。 (カ) 【0051】本システムは,ついで処理機能を用いて上記センサ入力を合成しいくつかの有用な出力を取得して,それらの出力を有意義な形式で表示することができる。これらの工程は以下のように実行される。 【0052】身体動作に関する情報は,以下のようにして算出される。被験者が動くとき,無線周波数の経路長が大きく急激に変化するため,それに応じて非接触センサからの受信信号に大きな変化が生じる。このような「動作イベント」は,短い時間区分(通常0.5~5秒)における信号のエネルギーを,それより長い時間にわたってセンサにより観察されるベースライン動作と比較することにより識別できる(図3を参照)。その時間区分におけるエネルギーが進行時間に対する所定のしきい値を超えた場合,その時間区分は「活動イベント」と判定されそのように記録される。しきい値に対するエネルギーの超過量を用いて,そのイベントの活動の振幅を重み付けできる。あるいは,「しきい値交差数」すなわち信 場合,その時間区分は「活動イベント」と判定されそのように記録される。しきい値に対するエネルギーの超過量を用いて,そのイベントの活動の振幅を重み付けできる。あるいは,「しきい値交差数」すなわち信号が設定レベルを通過した回数をカウントすることにより動作を検知できる。これはゼロ交差法とも呼ばれる。 【0053】そのようにして,受信信号から動作プロファイルを構築することがで- 38 -きる。その全体の動作を,あらかじめ収集した動作プロファイルのデータベースと比較することで,「動作なし」,「微動作」,「大きな動作」といったカテゴリに分類できる。この点に関して,本開示の装置,システム,および方法は,物理的安全を要する状況において,たとえば透けて見える半透明の壁を通して生体を検知するといった用途がある。 【0054】呼吸に関する情報は,以下のようにして得られる。第一に,呼吸の速いことは呼吸窮迫(一例)と関連することから,呼吸頻度が呼吸パターンを特徴付ける有用な手段となる。呼吸頻度は,たとえば毎分10呼吸といったように,毎分の呼吸回数として定義できる。さらに,呼吸頻度の変化は,睡眠状態の有用な指標となりうる。急速眼球運動(レム)では,ノンレム睡眠時よりも呼吸頻度が変化しやすい。呼吸頻度を算出するために,呼吸信号からの信号(図4参照)が処理される。呼吸頻度は,ある特定の時間尺度(たとえば10秒または100秒)において信号のパワースペクトル密度を概算することにより算出される。パワースペクトル密度を算出する方法については,平均ピリオドグラムなど従来の方法を用いてもよい。呼吸信号の一部が動作により著しく損なわれている場合,データに欠けた部分があってもパワースペクトル密度の概算が可能であるロムのピリオドグラム(Lomb'speriod ど従来の方法を用いてもよい。呼吸信号の一部が動作により著しく損なわれている場合,データに欠けた部分があってもパワースペクトル密度の概算が可能であるロムのピリオドグラム(Lomb'speriodogram)と呼ばれる方法を用いればよい。パワースペクトル密度(PSD:powerspectraldensity)を算出した後は,0.1~0.8Hzの範囲(人間の呼吸頻度の通常の範囲)におけるPSDのピークを検索することにより呼吸頻度が特定される。大人は一般的に乳児や幼い子供より呼吸頻度が低いため,検索範囲を0.1~0.5Hz(一例)に短縮できる。ピークのパワーが,帯域の他の部分における平均パワーをある特定量超えた場合(たとえばバックグラウンドより少なくとも50%高い場合),その周波数を- 39 -その時間区分における呼吸頻度と認識する。そのようにして,各時間区分の呼吸頻度を測定期間において算出することができる。 【0055】呼吸信号の振幅もまた重要であり,それはセンサ呼吸信号の振幅に反映される。振幅変化は,一般的に60秒の時間尺度で呼吸の振幅が非常に低い状態から非常に高い状態まで変化する睡眠呼吸障害であるチェーン・ストークス呼吸を特定する特徴となる。本発明では,上述した呼吸パワースペクトル密度のピークおよびその付近のパワーの平方根をとることで,ある時間区分における呼吸信号の振幅を確実に概算することができる。このようにして,時間区分ごとの振幅変化を追跡調査することができる。 【0056】呼吸信号に含まれるパターンの周期的特性もまた,睡眠呼吸障害があることを示すものとして重要である。閉塞性無呼吸は,一般的に60秒の時間尺度で呼吸の中断と回復を繰り返すパターンとして現れる。本開示では,呼吸信号の時間区分ごとのパワースペク また,睡眠呼吸障害があることを示すものとして重要である。閉塞性無呼吸は,一般的に60秒の時間尺度で呼吸の中断と回復を繰り返すパターンとして現れる。本開示では,呼吸信号の時間区分ごとのパワースペクトル密度(PSD)を算出し0~0.05Hz帯域の周波数成分を取り出すことにより,上記のパターンを確実に検知することができる。 【0057】閉塞性無呼吸は,上記の周波数成分にしきい値を適用することで検知でき,ある成分がこのしきい値を超えたとき,高い信頼性をもって閉塞性無呼吸があることを示すことができる。より正確な方法としては,周波数成分値(または呼吸信号から導出された他の指標)を分類器(たとえば線形判別分類器)に入力し,そこからその時間区分で発生した無呼吸の確率を出力する方法がある。無呼吸低呼吸指数(AHI)の概算値は,各時間区分の確率を合計し,記録の継続時間で除して1時間あたり- 40 -の分単位無呼吸時間を概算することにより算出できる。AHI値は,ついで1時間あたりの分単位無呼吸時間に所定の定数を乗じることにより算出できる。 【0058】また呼吸情報に加え,心臓および動作情報を処理することで,本システムの睡眠呼吸障害の検知精度を向上させることができる。たとえば,心活動からの情報を用いて,呼吸に基づく睡眠呼吸障害の検知の分類精度を向上させることができる。その時間のパルスを用いて,パルスイベント時間のPSD,パルスイベント時間の標準偏差,パルスイベント時間の系列相関という特徴のうちの複数の特徴からなるセットがエピックごとに算出される。これらの心活動の特徴は,分類器(線形判別分類器など)により処理され,無呼吸の確率が算出される。さらに,その活動からの情報を用いて,エピックごとの動作エシックスの数をカウントし,これを線形判別 る。これらの心活動の特徴は,分類器(線形判別分類器など)により処理され,無呼吸の確率が算出される。さらに,その活動からの情報を用いて,エピックごとの動作エシックスの数をカウントし,これを線形判別分類器で処理して無呼吸の確率を算出し,個々の無呼吸イベントを特定することにより,被験者がいつ睡眠から目覚めたかを求めることができる。 【0059】上記3つの確率(呼吸,心臓,または動作信号のうち1つ以上の質が悪く特徴が算出されない場合は,2つ以上の確率)は,確率合成器で(たとえば上記確率を平均することにより)合成できる。 【0060】無呼吸低呼吸指数(API)の概算値は,各エピックの合成した確率を平均し,1時間あたりの時間区分数を乗じて1時間あたりの分単位無呼吸時間を概算することにより算出できる。AHI値は,ついで1時間あたりの分単位無呼吸時間に所定の線形マッピングを乗じることにより算出できる。 - 41 -【0061】本開示の装置およびシステムは,完全な睡眠ポリグラフを受けた125人の被験者から得られた呼吸,動作,および心拍数のデータを用いてAHIを概算するように設定されている。結果の示すところによれば,本システムにより,中程度から重度の無呼吸症患者(AHI>15)と無呼吸でない患者(AHI<5)とを82%を超える精度で判別することができる。 【0062】また,たとえば人間の乳児の監視においては,無呼吸の状態がいつ発生するか(いわゆる中枢性無呼吸)を検知することも重要である。これは,ある時間区分において上記に定義した呼吸振幅指標をとることによって測定でき,その値がある特定のしきい値(これにより感度を決定)を下回ったとき,無呼吸と見なされる。たとえば,乳児が15秒間無呼吸であった場合に,中枢性無呼吸の状態を た呼吸振幅指標をとることによって測定でき,その値がある特定のしきい値(これにより感度を決定)を下回ったとき,無呼吸と見なされる。たとえば,乳児が15秒間無呼吸であった場合に,中枢性無呼吸の状態を警告音でユーザに知らせることができる。 【0063】心活動に関する情報は,以下のようにして得られる。バンドパスフィルタを用いて未処理センサ信号をバンドパスフィルタリングすることにより,初期「心信号」が得られる。得られた信号を心弾動図という。心臓の各収縮は,皮膚表面で見られる特有のパルス波形と関連している。 各パルス波形は,ピーク検知などの単純な技術,あるいはより精巧なテンプレートマッチング法によって求められる。テンプレートマッチング法では,テンプレートパルス波形(以前の記録より導出)が心弾動図と相関付けられる。その相関の高い地点がパルスイベント時間と特定される。 【0064】- 42 -ついで,単位時間あたりのパルス波形の数をカウントすることにより心拍数を求めることができる。他の有用なパラメータ,たとえば心拍間隔は,パルス波形時間の差を算出することにより求めることができる。 たとえば,パルス波形時間が[0.1s,1.1s,2.3s,3.1s…]の場合,対応する心拍間隔は1s,1.2s,0.8sとなる。 (キ) 【0071】〔さまざまな実施形態の説明〕本開示では,生理学的監視装置,システム,および方法のさまざまな実施形態が検討される。一実施形態において,対象の呼吸パラメータ,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析,および表示するのに有用な装置は,対象より反射された信号を対象との物理的接触なしに分析し,たとえば人間の被験者など,対象のさまざまな生理学的パラメータの測定結果を導出するように構成されたプロ 分析,および表示するのに有用な装置は,対象より反射された信号を対象との物理的接触なしに分析し,たとえば人間の被験者など,対象のさまざまな生理学的パラメータの測定結果を導出するように構成されたプロセッサを備える。分析および導出された測定結果を本装置のローカルまたはリモートユーザに与えるようにディスプレイを構成してもよい。反射信号はRF信号とすることができ,あるいは超音波,赤外線,および/または可視光など別の種類の信号であってもよい。 【0072】本実施形態およびさまざまな実施形態の別の態様においては,センサをプロセッサに接続し,対象より反射された信号を受信するように設けてもよい。センサおよびプロセッサは,対象との直接的または間接的な物理的接触なしに作動するように設けられる。本実施形態の別の態様においては,本装置とともに設けられた送信機により反射信号を生成してもよい。さらに,人間の被験者に使用可能なRFエネルギー信号を生成するように送信機を構成してもよい。本実施形態およびさまざまな実施形態のさらに別の態様においては,反射信号に送信信号を乗じ,それよ- 43 -り呼吸,心活動,および身体機能または動作を示すベースバンド信号を出力するように乗算回路を設けてもよい。身体機能の一例として子供の排尿があり,これを被験者の小さな身体動作により検知してもよい。 【0073】本実施形態およびさまざまな実施形態の別の態様においては,ベースバンド信号のエネルギーエンベロープのピークを特定することにより被験者の身体動作期間を識別するようにプロセッサを構成してもよい。さらに,単位時間あたりのベースバンド信号のしきい値交差回数をカウントすることにより被験者の身体動作期間を識別するようにプロセッサを構成してもよい。本実施形態およびさまざまな実 サを構成してもよい。さらに,単位時間あたりのベースバンド信号のしきい値交差回数をカウントすることにより被験者の身体動作期間を識別するようにプロセッサを構成してもよい。本実施形態およびさまざまな実施形態の別の態様においては,センサを設け,ベースバンド信号を受信しそれに応じて処理された信号を出力するようにプロセッサを構成し,さらに処理された信号を用いて被験者の呼吸活動または心活動を判別するようにプロセッサを構成してもよい。処理された信号は,独立成分分析などの公知のデジタル信号処理技術によるバンドパス,マルチバンドパス,または信号分離プロセスの出力とすることができる。 【0074】本実施形態およびさまざまな実施形態の別の態様においては,ある測定時間区分におけるベースバンド信号のエネルギーを他の時間区分に対して算出することにより活動カウントを求めるようにプロセッサを構成してもよい。さらに,分類器モデルを実行し,ベースバンド信号から導出された呼吸信号より得られた特徴を処理することによりチェーン・ストークス呼吸パターンを特定するようにプロセッサを構成してもよい。 さらに,ベースバンド信号から導出された呼吸信号を処理することにより無呼吸低呼吸指数(AHI)を求めるようにプロセッサを構成してもよい。AHIは,導出された呼吸作用パラメータのみにより求めてもよ- 44 -い。本実施形態およびさまざまな実施形態の関連する態様においては,ベースバンド信号から導出された動作信号の分析により対象の睡眠状態を求めるようにプロセッサを構成してもよい。他の態様においては,分類器モデルを実行し,分類器モデルより与えられた動作信号,呼吸信号,および心信号のうち1つ以上を組み合わせて睡眠状態を求めてもよい。 本実施形態およびさまざまな実施形態の別の関連する態様 おいては,分類器モデルを実行し,分類器モデルより与えられた動作信号,呼吸信号,および心信号のうち1つ以上を組み合わせて睡眠状態を求めてもよい。 本実施形態およびさまざまな実施形態の別の関連する態様においては,対象の呼吸および動作活動がある期間にわたり所定のしきい値を下回ったと判定することにより中枢性無呼吸状態を識別するようにプロセッサを構成してもよい。さらに別の態様においては,導出された呼吸頻度を既存の呼吸測定結果のセットと比較することにより被験者の呼吸窮迫状態を識別するようにプロセッサを構成してもよい。 【0079】本実施形態およびさまざまな実施形態の別の態様においては,送信信号に反射信号を乗じることにより得られるベースバンド信号を用いて反射信号を処理および分析してもよい。ベースバンド信号を分類器により分析し,その分類結果に応じて活動カウントを求めてもよい。前記1つ以上の生理学的パラメータを求めるための上記の求められた活動カウント。 (ク) 【0102】(結論)以上のように,非接触でのアクチグラフィにより従来の手首アクチグラフィと同等の情報が得られることが一適用例において実証された。また,非接触生体動作センサはより豊かな生理情報源である。アクチグラフィが単一のモダリティの信号であるのに対し,非接触生体動作センサではアクチグラフィと呼吸情報の両方が得られる。非接触センサはまた,利便性が高く非侵襲的であることがわかった。以上はRF信号を用いて- 45 -の実証であったが,超音波,赤外線,可視光などの他の種類の信号を用いてもよい。 (ケ) 【産業上の利用可能性】【0103】本開示の装置,システム,および方法は,呼吸や心活動などの人間または他の生体対象の生理学的徴候を非侵襲的かつ非接触で監視および分析す もよい。 (ケ) 【産業上の利用可能性】【0103】本開示の装置,システム,および方法は,呼吸や心活動などの人間または他の生体対象の生理学的徴候を非侵襲的かつ非接触で監視および分析するのに有用である。本開示はまた,睡眠監視,ストレス監視,健康監視,侵入者検知,物理的安全においても用途がある。 (3) 当初明細書等における本件構成に係る技術の開示の有無についてア前記(2)の当初明細書等(甲2)の記載事項によれば,当初明細書等には,次の点が開示されていることが認められる。 (ア) 人間の動作,呼吸,心拍数及び睡眠状態を監視する装置には,様々な状況での用途があり,従来から,呼吸,心活動又は動作を測定し,監視する方法として,患者の胸部に弾性のバンドを巻き付けて吸気,呼気及びそのインダクタンスの変化を測定し,呼吸作用を監視する方法や,光学干渉法,超音波又は連続波レーダを用いて呼吸,心活動又は動作を非接触で測定する方法が存在していたが,前者には,患者がバンドを着用しなければならず,機器に配線でつながれるという利便上の制約があり,後者には,寝具による光学信号の遮断,超音波が低反射のため信号対雑音比に劣ること,大型アンテナが必要であることなどの制約があった(段落【0002】,【0003】,【0009】,【0010】,【0015】,【0016】)。 (イ) 「本開示」は,人間の動作,呼吸,心拍数及び睡眠状態を監視するための簡便かつ低コストな装置又はシステムを提供することを目的とするものであり,対象の呼吸,心活動及び身体機能又は動作のうち1つ以上を検知,分析及び表示するのに有用な装置又はシステムとして,前記- 46 -対象より反射された信号を前記対象との物理的接触なしに分析し,それより呼吸,心活動,及び身体機能又は動作のうち前 つ以上を検知,分析及び表示するのに有用な装置又はシステムとして,前記- 46 -対象より反射された信号を前記対象との物理的接触なしに分析し,それより呼吸,心活動,及び身体機能又は動作のうち前記1つ以上の測定結果を導出するように構成された「プロセッサ」と,前記分析及び導出された測定結果を前記装置のローカルまたはリモートユーザに与えるように構成された「ディスプレイ」を備える構成を採用し,また,前記対象に向けて無線周波数信号を伝播させるように構成された「送信装置」と,前記対象より反射された無線周波数信号を受信するように設けられた「受信機」と,前記反射信号を分析することにより,呼吸パラメータ,心活動及び身体動作又は機能のうち1つ以上の測定結果を生成するように設けられた「プロセッサ」と,選択された情報を前記システムのローカルまたはリモートユーザに与える「モニタ」とを備える構成を採用した(段落【0017】ないし【0019】)。 (ウ) 「本装置」においては,図1(別紙明細書図面参照)に示すように,「RF送信機」が,人間などの対象に向けて無線周波数信号(パルス連続波信号)を送信し,「RF受信機」が対象から反射された反射信号を受信し,これが「増幅器」により増幅され,さらに,「ミキサ」により元の信号の一部と混合され,この「ミキサ」の出力が「フィルタ」によりローパスフィルタリングされ,「未処理センサ信号」(図1では「未処理動作信号」と表記)が得られる(段落【0025】,図1,請求項1ないし5)。 この「未処理センサ信号」は,「身体動作,呼吸,および心活動」の組み合わせを反映する成分を通常含んでおり,図2(別紙明細書図面参照)に示すように,「未処理センサ信号」(図2では「センサからの未処理信号」と表記)を処理することにより,次の処理に用いる 心活動」の組み合わせを反映する成分を通常含んでおり,図2(別紙明細書図面参照)に示すように,「未処理センサ信号」(図2では「センサからの未処理信号」と表記)を処理することにより,次の処理に用いる3つの信号(図2記載の「心信号」,「呼吸信号」及び「動作」の信号)を生成する(段落【0026】,図2)。 - 47 -「身体動作」は,「未処理センサ信号」にゼロ交差又はエネルギーエンベロープ検出アルゴリズムを用いて「動作オン」又は「動作オフ」インジケータを形成することができ,「呼吸活動」は,「未処理センサ信号」を「0.1~0.8Hz」の範囲を通過領域とするバンドパスフィルタによりフィルタリングすることで得られ,「心活動」は,「未処理センサ信号」を「1~10Hz」の範囲を通過領域とするバンドパスフィルタによりフィルタリングすることで測定できる(段落【0026】)。 さらに,図3(別紙明細書図面参照)に示すように,「未処理センサ信号」のエネルギーエンベロープを算出し,しきい値と比べて高いエネルギーエンベロープを有する期間を動作期間としたり,「未処理センサ信号」がしきい値(たとえばゼロ値)を交差した回数をカウントし,ゼロ交差の値が高い領域を高動作領域とし,これらの技術を別個に又は組み合わせて用いることで,動作を検知することができる(段落【0027】)。 (エ) 「プロセッサ」には,「反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作を示すベースバンド信号を出力するように設けられた乗算回路」(請求項6)を設けてもよい(段落【0072】)。 「プロセッサ」による「反射信号に送信信号を乗じることにより得られるベースバンド信号」を用いた処理及び分析の例としては,「ベースバンド信号のエネルギーエンベロープのピークを特 【0072】)。 「プロセッサ」による「反射信号に送信信号を乗じることにより得られるベースバンド信号」を用いた処理及び分析の例としては,「ベースバンド信号のエネルギーエンベロープのピークを特定することにより前記対象の身体動作期間を識別」(請求項7),「単位時間あたりの前記ベースバンド信号のしきい値交差回数をカウントすることにより前記対象の身体動作期間を識別」(請求項8),「ある測定時間区分における前記ベースバンド信号のエネルギーを他の時間区分に対して算出することにより活動カウントを求め」ること(請求項11),「分類器モデル- 48 -を実行し,前記ベースバンド信号から導出された呼吸信号より得られた特徴を処理することによりチェーン・ストークス呼吸パターンを特定」(請求項12),「前記ベースバンド信号から導出された呼吸信号を処理することにより無呼吸低呼吸指数(AHI:Apnoea-Hypopnoeaindex)を求め」ること(請求項13)がある(段落【0073】,【0074】,【0079】)。 イ前記アによれば,当初明細書等には,①「呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析及び表示するのに有用な装置」において,プロセッサが,反射信号がミキサにより元の信号の一部と混合され,このミキサの出力がフィルタによりローパスフィルタリングされた「未処理センサ信号」又は乗算回路において反射信号に送信信号を乗じることにより得られる「ベースバンド信号」を処理又は分析することにより,「呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析」できること,②「ベースバンド信号」を用いた処理及び分析の例として,プロセッサが,「ベースバンド信号」の「エネルギーエンベロープのピークを特定」,「ベースバンド信号のしきい ち1つ以上を検知,分析」できること,②「ベースバンド信号」を用いた処理及び分析の例として,プロセッサが,「ベースバンド信号」の「エネルギーエンベロープのピークを特定」,「ベースバンド信号のしきい値交差回数をカウント」,「ベースバンド信号のエネルギー」を「時間区分に対して算出」又は「ベースバンド信号から導出された呼吸信号より得られた特徴を処理」する例が開示されていることが認められる。 しかしながら,他方で,当初明細書等には,「プロセッサ」が,「ベースバンド信号」を分析することにより,反射信号と送信信号(「送信された無線周波数(RF)のパルス信号」)との「位相差」を示す「位相差信号」を決定することについて述べた記載はなく,また,「位相差信号」から「呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出すること」について述べた記載もない。さらに,当初明細書等には,そもそも「位相差」や「位相差信号」の用語の記載はない。 - 49 -そうすると,当初明細書等の記載事項全体から,補正発明の「前記ベースバンド信号を分析し,前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号を決定し,前記位相差信号から呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出するように構成されたプロセッサ」の構成(本件構成)に係る技術が開示されているものと認めることはできない。 ウこれに対し原告は,①当初明細書等の段落【0041】には,ミキサの「混合信号」が,「m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)) (3)」の式(式(3)」)で示されており,式(3)中の「cos(2πfct)」は送信信号,「cos(2πfct+φ(t))」は が,「m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)) (3)」の式(式(3)」)で示されており,式(3)中の「cos(2πfct)」は送信信号,「cos(2πfct+φ(t))」は受信信号(甲15の1,2),「φ(t)」は,「送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」であること(段落【0041】),②当初明細書等の段落【0039】には,「パルス波形」の「無線周波数信号」である送信信号が「s(t)=u(t)cos(2πfct+θ) (1)」の式(式(1))で示されており,式(1)(送信信号s(t))と式(3)(混合信号m(t))とを対比すると,式(1)中の位相角θと式(3)中の経路差φ(t)が形式的に同等であることは明確であるから,位相角θと経路差φ(t)は,いずれも,余弦関数の引数の中の瞬時位相として現れており,信号の位相に関する情報を伝えるものであること,③「φ(t)」は,一般に「位相シフト」,「位相オフセット」,「位相差」(甲17の1,2)と呼ばれていることからすると,「φ(t)」は,「位相シフト」,すなわち,「位相差信号」を意味すること,④送信された信号が反射して帰ってくると,その経路距離,すなわち経路差に応じて位相がずれており,「経路差」と「位相差」は同じものを別の表現で表したものであることは,当業者にとって自明であり(甲20の1,2),「経路差(pathdifference)」と「位相差(phasedifference)」が密接に関連していることは,本願の優先権主張日- 50 -当時,一般的な技術常識であったこと,⑤当初明細書等の段落【0072】には,「反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作を示すベースバンド信号を出力するように乗算回路を 当時,一般的な技術常識であったこと,⑤当初明細書等の段落【0072】には,「反射信号に送信信号を乗じ,それより呼吸,心活動,および身体機能または動作を示すベースバンド信号を出力するように乗算回路を設けてもよい。」との記載があること,及び⑥当初明細書等の段落【0041】及び図1(別紙明細書図面参照)の記載によれば,当初明細書等には,式(3)中の「φ(t)」は,「送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」を表すものであるが,「ベースバンド信号」から得ることのできる「位相差信号」でもあり,また,ローパスフィルタのフィルタリングにより混合信号から2fcを中心とする成分が除去された後の出力信号は,位相差信号である「φ(t)」となり,この位相差信号に「動作,呼吸,および心活動に関する情報」を含んでいることが開示されているといえるから,位相差信号である「φ(t)」から,「動作,呼吸,および心活動に関する情報」を導出できることが記載されているなどとして,当初明細書等に,補正発明の本件構成に係る技術が記載されている旨主張する。 しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。 (ア) 当初明細書等の段落【0041】中には,「受信信号と送信信号は,ミキサと呼ばれる一般的な電子機器(アナログあるいはデジタル方式)により混合することができる。たとえばCWの場合,混合信号は以下に等しい。 【数3】m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)) (3)ここでφ(t)は送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合),γは反射信号の減衰量である。反射体が一定の場合φ(t)およびm(t)は一定となる。我々に該当する例では,反射体(胸部など)が動作しており,m(t)が時間と 一の反射体により反射が決定される場合),γは反射信号の減衰量である。反射体が一定の場合φ(t)およびm(t)は一定となる。我々に該当する例では,反射体(胸部など)が動作しており,m(t)が時間とともに変化する。簡単な例として,- 51 -呼吸により胸部が正弦動作している場合,【数4】resp(t)=cos(2πfmt) (4)混合信号は,fm成分(およびフィルタリングにより簡単に除去可能な2fcを中心とする成分)を含んでいる。混合後のローパスフィルタの出力側の信号を未処理センサ信号と称し,動作,呼吸,および心活動に関する情報を含んでいる。」との記載があり,「φ(t)」は「送信および受信信号の経路差(単一の反射体により反射が決定される場合)」であることが示されている。 しかるところ,「位相差」とは,同じ周波数を有し,同じ時点に属するとされる二つの波の位相の差を意味し,0°~360°の角度に相当する値で示されるのに対し(甲17の1(訳文甲17の2),乙2),「経路差」とは,二つの波の間における波の源と干渉が起きる点との間の経路の長さの違いを意味するものであり,「経路差」は「位相差」が生じる一般的な要因となるが(甲22の1(訳文甲22の2)),「位相差」と「経路差」は,概念的に異なるものである。 また,当初明細書等には,補正発明の特許請求の範囲(本件補正後の請求項1)の「位相差信号」が「経路差」と同義であることについての記載はなく,「φ(t)」が本件補正後の請求項1の「位相差信号」あるいは「前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号」に相当することについての記載も示唆もない。もっとも,原告が主張するように,式(1)(送 た前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号」に相当することについての記載も示唆もない。もっとも,原告が主張するように,式(1)(送信信号s(t))(当初明細書等の段落【0039】)と式(3)(混合信号m(t))(同段落【0041】)とを対比すると,式(1)中の位相角θと式(3)中の経路差φ(t)が形式的に同等のものであり,いずれも,余弦関数の引数の中の瞬時位相として信号の位相に関- 52 -する情報を伝えるという点で共通するといえるとしても,このことから直ちに「φ(t)」が本件補正後の請求項1の「位相差信号」に相当することを認めることはできない。 (イ) 仮に「φ(t)」が送信信号及び受信信号の「経路差」を表すとともに,その位相差を示す「位相差信号」を表したものと解する余地があるとしても,式(3)(m(t)=γcos(2πfct)cos(2πfct+φ(t)))は,ミキサから出力された混合信号m(t)に位相差信号としての「φ(t)」の成分が含まれていることを示したものにすぎず,プロセッサが「ベースバンド信号」を分析し,「φ(t)」を決定したことを示したものとはいえないし,当初明細書等の記載事項全体をみても,プロセッサが「ベースバンド信号」を分析し,「φ(t)」を決定し,又は決定することができることを示す記載はない。 また,当初明細書等には,プロセッサが,「φ(t)」又は「位相差信号」から「呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出」し,又は導出することができることについての記載はない。 (ウ) 以上によれば,当初明細書等には,式(3)中の「φ(t)」が,本件補正後の請求項1の「位相差信号」あるいは「前記生体対象から反射された前記反射 出することができることについての記載はない。 (ウ) 以上によれば,当初明細書等には,式(3)中の「φ(t)」が,本件補正後の請求項1の「位相差信号」あるいは「前記生体対象から反射された前記反射信号と前記生体対象に向けて送信された前記無線周波数(RF)のパルス信号との位相差を示す位相差信号」に相当することについての開示があるものとはいえないし,また,プロセッサが「ベースバンド信号」を分析し,「φ(t)」を決定し,「φ(t)」から「呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上の測定結果を導出」することについての開示があるものともいえないから,当初明細書等に補正発明の本件構成に係る技術が記載されているとの原告の主張は,理由がない。 (4) 小括以上のとおり,当初明細書等の記載事項全体から,補正発明の本件構成に- 53 -係る技術が開示されているものと認めることはできないから,本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものと認めることはできない。 したがって,本件補正が特許法17条の2第3項の規定に違反するとして本件補正を却下した本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本願発明の容易想到性の判断の誤り)について原告は,本件審決における本願発明と引用発明との一致点の認定及び相違点の容易想到性の判断に誤りがあるから,本願発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとした本件審決の判断は誤りである旨主張するので,以下において判断する。 (1) 引用文献1の記載事項等についてア引用文献1(甲1)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙甲1図面を参照)。 (ア) 【0001】【発明 て判断する。 (1) 引用文献1の記載事項等についてア引用文献1(甲1)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙甲1図面を参照)。 (ア) 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,浴槽における溺没事故を検知する溺没検知装置に関する。 (イ) 【0002】【従来の技術】従来,人の異常を検知する装置として種々の装置が開発されている。このような異常検知装置は,例えば浴槽や浴室で使用される浴室事故検知装置に利用されてきた。 【0003】例えば,これまでの浴室事故検知装置は浴室内における人の挙動を検出し,しばらくの時間にわたり挙動が途絶えると異常があると判断し警報を発するものであった。 - 54 -【0004】これは主に長時間入浴による熱中症防止を狙ったものであり,異常判定までに数分間の観察期間を設けている。 (ウ) 【0009】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,人の異常を検知する場合はできる限り早急にその異常を検知することが望まれる。 【0010】例えば,入浴者の意識喪失に伴って入浴者が浴槽内に溺没してしまった場合は数分間の観察時間内に窒息し,心配停止に至ることが考えられる。 これを防止するためには溺没判断を数秒程度の短時間に行い,早急に警報などを発する必要がある。 【0011】また,前述の特許文献2に記載の従来技術や,特許文献3に記載の従来技術では,人が動いているのか停止しているのかを判別するとしているが,例えば溺没等の異常により人の動きが停止しているのか,それとも,異常が発生していない状態で人の動きが停止しているのかが判別できない。そのため,浴槽内で人の動きがない場合,真に異常が発生したのか否かに関わらず,異常を検知してしまうという問題点を有し ,それとも,異常が発生していない状態で人の動きが停止しているのかが判別できない。そのため,浴槽内で人の動きがない場合,真に異常が発生したのか否かに関わらず,異常を検知してしまうという問題点を有している。 【0012】本発明は,人の異常を早急に発見することが可能な溺没検知装置を提供することを目的とする。 (エ) 【0013】【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために,本発明に係る溺没検知装置は,浴槽における入浴者の有無を検知するための信号を発射する信号発射手段と,前- 55 -記信号を受信する受信手段と,前記浴槽に入浴している入浴者の動きを検知するためのドプラ信号を出力すると共に,反射されたドプラ信号を受信し,ドプラ出力を出力するドプラ成分検出手段と,前記受信手段からの出力に基づいて,前記浴槽に入浴者が存在するか否かを判断し,前記ドプラ成分検出手段からのドプラ出力に基づいて,前記浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出た後に浴槽から入浴者がいなくなったのか,又は,前記浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出ていないにもかかわらず入浴者がいなくなったのかを判断する制御手段と,前記制御手段の制御に基づいて警報を発する警報手段とを備える。 【0014】また,本発明に係る溺没検知装置は,前記制御手段は,前記ドプラ出力に,前記入浴者が浴槽から出る動作を示す出力が含まれているか否かに基づいて,前記判断を行う。 【0015】また,本発明に係る溺没検知装置は,前記信号発射手段が,前記浴槽の一端に接する浴室の壁に形成され,該浴槽を挟んで,前記信号発射手段が形成されている壁と対向する浴室の壁に,前記信号発射手段から発射された信号を反射する反射手段を備え,前記受信手段が,該反射手段から反射された信号を受信する。 【001 を挟んで,前記信号発射手段が形成されている壁と対向する浴室の壁に,前記信号発射手段から発射された信号を反射する反射手段を備え,前記受信手段が,該反射手段から反射された信号を受信する。 【0018】また,本発明に係る溺没検知装置は,前記信号発射手段及び前記ドプラ成分検出手段は,所定の周波数の信号を生成する発振回路と,前記発振回路から出力された信号を変調する変調回路と,前記変調回路から出力された信号を分配して出力する分配回路と,前記分配回路から出力された信号を増幅して出力する第1の増幅回路と,前記第1の増幅回路から出力された信号を出力する送信空中線と,受信した信号を出力する受信- 56 -空中線と,前記受信空中線から出力された信号を増幅して出力する第2の増幅回路と,前記分配回路から出力された信号と,前記第2の増幅回路から出力された信号とを乗算し,その結果をドプラ出力として出力する乗算回路とを備えた装置により一体的に構成される。 【0021】また,本発明にいう溺没とは,人の生命,健康に害が発生する情況で,水中に人が沈むことをいい,無意識のうちに水中に人が沈む場合も含み,溺れることが要件とされるものではない。 (オ) 【0052】図4に示されるように,本実施形態のドプラ成分検出装置は,発振回路401と,分配回路402と,増幅回路403と,送信空中線404と,受信空中線405と,増幅回路406と,乗算回路407とを備える。 【0053】発振回路401は,所定の周波数の信号を発生し,分配回路402に出力する。 【0054】分配回路402は,発振回路401から出力された信号を,増幅回路403及び乗算回路407に分配して出力する。 【0055】増幅回路403は,分配回路402から出力された信号を増幅し,送信空中線 分配回路402は,発振回路401から出力された信号を,増幅回路403及び乗算回路407に分配して出力する。 【0055】増幅回路403は,分配回路402から出力された信号を増幅し,送信空中線404に出力する。 【0056】送信空中線404は,増幅回路403から出力された信号をドプラ信号として送信する。 【0057】受信空中線405は,ドプラ信号を受信して,増幅回路406に出力す- 57 -る。 【0058】増幅回路406は,受信空中線405から出力された信号を増幅し,乗算回路407に出力する。 【0059】乗算回路407は,分配回路402から出力された信号と,増幅回路406から出力された信号とを乗算し,その結果をドプラ出力として出力する。 【0060】ここで,図1に示されるドプラ成分検出装置の動作について図5を参照してさらに説明する。図5は,図1に示されるドプラ成分検出装置の動作の概略図である。 【0061】図5に示されるように,送信空中線501から発射されたドプラ信号Fcは,速度Vで動いている人502に当たる。本実施形態では,この人502は,例えば入浴者である。 【0062】そして,速度Vで動いている人502に当たったドプラ信号Fcは,この速度Vに依存した周波数を含むドプラ信号Fdとして反射される。 【0063】そして,ドプラ信号Fdは,受信空中線503において受信される。 (カ) 【0142】図26に示されるように,本発明に係る溺没検知装置の第2の実施形態は,信号を発射する信号発射装置2601と,反射信号を受信する受信装置2602と,ドプラ信号を発射すると共に,反射されたドプラ信号を受信するドプラ成分検出装置2603と,本実施形態の溺没検知装置- 58 -の動作を制御する 2601と,反射信号を受信する受信装置2602と,ドプラ信号を発射すると共に,反射されたドプラ信号を受信するドプラ成分検出装置2603と,本実施形態の溺没検知装置- 58 -の動作を制御する制御装置2604と,制御装置2604の制御に基づいて警報を発生する警報装置2605とを備える。 【0147】制御装置2604は,本実施形態の溺没検知装置の動作を制御する。また,制御装置2604は,受信装置2602からの出力と,ドプラ成分検出装置2603からのドプラ出力とに基づいて,警報装置2605に対して警報の発生を指示する。 【0148】警報装置2605は,制御装置2604の指示に基づいて警報を発する。 なお,警報装置2605が発する警報は,音,光,ディスプレイの表示,物体の動き,溺没検知装置にネットワークで接続されたサーバに警報を示す情報を送信するなどを単体で,又は任意に組み合わせて実現できる。 【0149】なお,本実施形態において使用する信号発射装置2501の構成及び動作は,前述の図1,図3(判決注・省略)を参照して説明した,信号発射装置101と同様の構成及び動作であるためその詳細な説明を省略する。 (キ) 【0265】【発明の効果】以上のように,本発明によれば,制御手段が,ドプラ成分検出手段からのドプラ出力に基づいて,浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出た後に浴槽から入浴者がいなくなったのか,又は,浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出ていないにもかかわらず入浴者がいなくなったのかを判断しているため,溺没事故が発生した場合であっても,直ちに事故の発生を検知することができる。 イ引用文献1に,本件審決が認定した「引用発明」(前記第2の3(2)ア)- 59 -が記載されていることについては争いがない。 前記 であっても,直ちに事故の発生を検知することができる。 イ引用文献1に,本件審決が認定した「引用発明」(前記第2の3(2)ア)- 59 -が記載されていることについては争いがない。 前記アの引用文献1の記載事項によれば,引用文献1には,引用発明に関し,次の点が開示されていることが認められる。 (ア) 人の異常を検知する装置における従来の技術では,例えば,浴室内における人の挙動を検出し,しばらくの時間にわたり挙動が途絶えると異常があると判断し,警報を発する浴室事故検出装置があり,異常判定までに数分間の観察期間を設けるものであったが,人の異常を検知する場合はできる限り早急にその異常を検知することが望まれるという課題があり,また,人が動いているのか停止しているのかを判別していたが,それでは,例えば,入浴者の浴槽内の溺没等の異常により人の動きが停止しているのか,異常が発生していない状態で人の動きが停止しているのかが判別できないため,浴槽内で人の動きがない場合,真に異常が発生したのか否かに関わらず,異常を検知してしまうという問題点を有していた(段落【0002】ないし【0004】,【0009】ないし【0011】)。 (イ) 引用発明は,上記の課題ないし問題点を解決し,人の異常を早急に発見することが可能な溺没検知装置を提供することを目的とするものであり,上記の課題ないし問題点を解決するための手段として,浴槽における入浴者の有無を検知するための信号を発射する信号発射手段と,信号を受信する受信手段と,浴槽に入浴している入浴者の動きを検知するためのドプラ信号を出力するとともに,反射されたドプラ信号を受信し,ドプラ出力を出力するドプラ成分検出手段と,受信手段からの出力に基づいて,浴槽に入浴者が存在するか否かを判断し,ドプラ成分検出手段から のドプラ信号を出力するとともに,反射されたドプラ信号を受信し,ドプラ出力を出力するドプラ成分検出手段と,受信手段からの出力に基づいて,浴槽に入浴者が存在するか否かを判断し,ドプラ成分検出手段からのドプラ出力に基づいて,浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出た後に浴槽から入浴者がいなくなったのか,又は,浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出ていないにもかかわらず入浴者がいなくなったのか- 60 -を判断する制御手段と,制御手段の制御に基づいて警報を発する警報手段を備える構成を採用し,また,前記信号発射手段及び前記ドプラ成分検出手段は,所定の周波数の信号を生成する発振回路と,前記発振回路から出力された信号を変調する変調回路と,前記変調回路から出力された信号を分配して出力する分配回路と,前記分配回路から出力された信号を増幅して出力する第1の増幅回路と,前記第1の増幅回路から出力された信号を出力する送信空中線と,受信した信号を出力する受信空中線と,前記受信空中線から出力された信号を増幅して出力する第2の増幅回路と,前記分配回路から出力された信号と,前記第2の増幅回路から出力された信号とを乗算し,その結果をドプラ出力として出力する乗算回路とを備えた装置により一体的に構成される構成を採用した(段落,段落【0012】,【0013】,【0018】)。 (ウ) 引用発明においては,制御手段が,ドプラ成分検出手段からのドプラ出力に基づいて,浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出た後に浴槽から入浴者がいなくなったのか,又は,浴槽に入浴していた入浴者が浴槽から出ていないにもかかわらず入浴者がいなくなったのかを判断するため,溺没事故が発生した場合であっても,直ちに事故の発生を検知することができるという効果を奏するものである(段落【0265】)。 (2) ていないにもかかわらず入浴者がいなくなったのかを判断するため,溺没事故が発生した場合であっても,直ちに事故の発生を検知することができるという効果を奏するものである(段落【0265】)。 (2) 一致点の認定の誤りの有無について原告は,①本願明細書(当初明細書等の「発明の詳細な説明」の記載及び図面と同内容である。以下同じ。甲2)の記載事項(段落【0002】,【0017】)によれば,本願発明の主眼とするところは,処理対象となっているベースバンド信号が人間の睡眠時の呼吸活動に関するデータが含まれた信号であることに鑑み,睡眠中の人間の呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析,および表示するのに有用な装置等を提供することにあり,「睡眠状態の監視」であることは明らかであり,本願発明は,人- 61 -間の睡眠障害の臨床監視の分野に属するものであるから,本願発明の「生体対象」は,「睡眠中の人間」と解釈すべきであり,同様に,本願発明の「生体対象」の「動作」は「人間の睡眠中の動作」,本願発明の「検知,分析および表示」の対象は「睡眠中の身体活動に起因する動作,呼吸,心拍数,睡眠状態」,本願発明の「反射信号」は「睡眠中の人間から反射された信号」,本願発明の「送信信号」は「睡眠中の人間の呼吸活動,身体動作の状態を検知するために発射される信号」,本願発明の「ベースバンド信号」は睡眠中の人間の「呼吸,心活動および身体機能又は動作の分析の対象となる信号」,本願発明の「ディスプレイ」は睡眠中の人間の「呼吸,心活動および身体機能又は動作のうち一つ以上の測定結果を表示するもの」と解釈すべきである,②一方で,引用文献1(甲1)の記載事項(段落【0010】,【0021】)によれば,引用発明は,浴槽内の人間の溺没監視の分野に属するものであり 一つ以上の測定結果を表示するもの」と解釈すべきである,②一方で,引用文献1(甲1)の記載事項(段落【0010】,【0021】)によれば,引用発明は,浴槽内の人間の溺没監視の分野に属するものであり,人間の睡眠障害の臨床監視の分野に属する本願発明とは,技術分野が全く異なるから,引用発明の「入浴者」は本願発明の「生体対象」に相当するものではなく,同様に,引用発明の「入浴者」の動作は,本願発明の「生体対象」の「動作」とは異なり,引用発明は,本願発明の「検知,分析および表示」の対象,「反射信号」,「送信信号」,「ベースバンド信号」及び「ディスプレイ」の構成も備えていないとして,本件審決がした本願発明と引用発明の一致点の認定は誤りである旨主張する。 しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。 ア上記①の点について(ア) 本願発明の特許請求の範囲(本件補正前の請求項1)の記載は,前記第2の2(1)のとおりであり,同請求項1には,「生体対象の呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析,および表示するのに有用な装置」との記載があるが,同請求項1の「生体対象」について「睡眠中の人間」に限定する記載はないし,また,同請求項1- 62 -の「生体対象の呼吸,心活動,および身体機能または動作」を「人間の睡眠中の動作」に限定する記載もない。 (イ) 次に,本願明細書(甲2)には,本件補正前の請求項1の「生体対象」を「睡眠中の人間」に,「生体対象の呼吸,心活動,および身体機能または動作」を「人間の睡眠中の動作」にそれぞれ限定することについての記載も示唆もない。 前記1(3)ア(イ)のとおり,本願明細書には,人間の動作,呼吸,心拍数及び睡眠状態を監視するための簡便かつ低コストな装置又はシステムを提供することを目的 することについての記載も示唆もない。 前記1(3)ア(イ)のとおり,本願明細書には,人間の動作,呼吸,心拍数及び睡眠状態を監視するための簡便かつ低コストな装置又はシステムを提供することを目的とすることについての開示があるが,この目的にいう「人間の動作」は,その文理上,人間の動作一般を意味するものであり,「人間の睡眠中の動作」に限定すべき理由はない。かえって,本願明細書の段落【0103】に「本開示の装置,システム,および方法は,呼吸や心活動などの人間または他の生体対象の生理学的徴候を非侵襲的かつ非接触で監視および分析するのに有用である。本開示はまた,睡眠監視,ストレス監視,健康監視,侵入者検知,物理的安全においても用途がある。」との記載があるように,本願明細書記載の装置は,睡眠監視のほかに,「ストレス監視,健康監視,侵入者検知,物理的安全」の用途に利用できることについての記載がある。 (ウ) 原告が挙げる本願明細書の段落【0002】の「本開示は,簡便かつ低コストな方法による人間の動作,呼吸,心拍数,および睡眠状態の監視に関し,より詳細には,それらに対応する情報を取得,処理し,容易に理解できる形式で表示するための装置,システム,および方法に関する。」との記載は,本願発明の「生体対象」を「睡眠中の人間」に限定することの根拠となるものではない。 また,原告が挙げる本願明細書の段落【0017】の「本開示は,人間の動作,呼吸,心拍数,および睡眠状態を監視するための簡便かつ低- 63 -コストな装置,システム,および方法のさまざまな実施形態を提供する。 さまざまな実施形態において,被験者が寝る場所の近く(ベッド脇のテーブル上など)に配置するのに適したセンサユニットを,結果を分析,視覚化し,ユーザに伝達可能な監視および表示ユニットに接 を提供する。 さまざまな実施形態において,被験者が寝る場所の近く(ベッド脇のテーブル上など)に配置するのに適したセンサユニットを,結果を分析,視覚化し,ユーザに伝達可能な監視および表示ユニットに接続することができる。必要であれば,センサユニットと表示/監視ユニットを一体の独立したユニットに内蔵することができる。上記ユニットは,非接触動作センサ(一般的な身体動作,呼吸,および心拍数の検知用)と,処理機能(睡眠状態,呼吸数,心拍数,および動作などのパラメータを導出する)と,表示機能(視覚的なフィードバックを与える)と,音声機能(呼吸とともに周波数が変化する音や,動作を検出しないときに鳴る警告音などの音声フィードバックを与える)と,取得データを別のユニットに送信する通信機能(有線または無線)のうち1つ以上を備えることができる。この別のユニットにより上記の処理,表示,音声機能を実行することでき,またデータロガーとすることもできる。」との記載は,「睡眠中の人間」の「睡眠状態,呼吸数,心拍数,および動作」を監視する例を述べたものであるが,前記(イ)のとおり,本願明細書には,本願明細書記載の装置を,睡眠監視のほかに,「ストレス監視,健康監視,侵入者検知,物理的安全」の用途に利用できることについての記載があること(段落【0103】)に照らすと,上記段落【0017】の記載は,本願発明の「生体対象」を「睡眠中の人間」に限定することの根拠となるものではない。 (エ) 以上によれば,本願発明の「生体対象」を「睡眠中の人間」に,「生体対象」の「動作」を「人間の睡眠中の動作」に限定解釈することを前提とする原告の上記①の主張は,本願発明の特許請求の範囲(本件補正前の請求項1)の記載及び本願明細書の記載に基づかないものであって,採用することができない。 - 眠中の動作」に限定解釈することを前提とする原告の上記①の主張は,本願発明の特許請求の範囲(本件補正前の請求項1)の記載及び本願明細書の記載に基づかないものであって,採用することができない。 - 64 -イ上記②の点について本願発明と引用発明とを対比すると,①引用発明の「入浴者」は本願発明の「生体対象」に,引用発明の「入浴者が浴槽から出る動作」は本願発明の「生体対象の動作」に相当すること,②引用発明の「入浴者の有無を検知するために発射される信号」,「受信した信号を出力する受信空中線」,「乗算回路」,「反射されたドプラ信号」及び「制御手段」は,本願発明の「送信信号」,「反射信号を受信するように設けられたセンサ」,「乗算回路」,「前記対象より反射された反射信号」及び「プロセッサ」にそれぞれ相当すること,③引用発明の「ドプラ出力」は送信したドプラ信号と反射したドプラ信号を乗算して得られるものであるから,本願発明における反射信号に送信信号を乗じて得られる「ベースバンド信号」に,引用発明の「ディスプレイ」は本願発明の「ディスプレイ」に相当すること,④引用発明が「ドプラ出力に,前記入浴者が浴槽から出る動作を示す出力が含まれているか否かに基づいて,前記判断を行い」,「ディスプレイの表示による警報を発する」ことは,本願発明の「生体対象の呼吸,心活動,および身体機能または動作のうち1つ以上を検知,分析,および表示」に相当することが認められる。 したがって,引用発明が本願発明の「生体対象」,「生体対象の動作」,「検知,分析および表示」の対象,「反射信号」,「送信信号」,「ベースバンド信号」及び「ディスプレイ」の構成を備えていないとの原告の上記②の主張は理由がない。 ウ前記ア及びイによれば,本件審決がした本願発明と引用発明の一致点の 反射信号」,「送信信号」,「ベースバンド信号」及び「ディスプレイ」の構成を備えていないとの原告の上記②の主張は理由がない。 ウ前記ア及びイによれば,本件審決がした本願発明と引用発明の一致点の認定は誤りであるとの原告の主張は理由がない。 (3) 相違点の容易想到性の判断の誤りの有無について原告は,本件審決は,相違点に関し,引用発明の目的が人の異常を早急に発見することが可能な溺没検知装置の提供にあることに照らせば,引用発明- 65 -において,ユーザとしてリモートユーザを想定することに格別の技術的困難性も阻害要因もないから,引用発明に相違点に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が容易になし得ることである旨判断したが,本願発明の技術分野は人間の睡眠障害の臨床監視の分野に属するのに対し,引用発明の技術分野は浴槽内の人間の溺没監視の分野に属するものであり,両発明の技術分野が全く異なることを看過し,技術分野に関する誤った前提に基づくものであるから,誤りである旨主張する。 しかしながら,引用文献1には,人の異常を検知する装置における従来の技術には,人の異常を検知する場合はできる限り早急にその異常を検知することが望まれるという課題があり,引用発明は,上記課題を解決し,人の異常を早急に発見することが可能な溺没検知装置を提供することを目的とすることについての開示があること(前記(1)イ(ア)及び(イ))からすると,引用文献1に接した当業者は,引用発明の「ディスプレイ」を「分析および導出された前記測定結果」を「装置のローカルまたはリモートユーザ」に与えるように構成(相違点に係る本願発明の構成)することを容易に想到することができたものと認められる。 また,引用発明の技術分野が浴槽内の人間の溺没監視の分野に属するものであることは, ーザ」に与えるように構成(相違点に係る本願発明の構成)することを容易に想到することができたものと認められる。また,引用発明の技術分野が浴槽内の人間の溺没監視の分野に属するものであることは,相違点の容易想到性の判断に影響を及ぼすものではない。したがって,原告の上記主張は,理由がない。 (4) 小括以上によれば,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官大西勝滋 裁判官神谷厚毅 (別紙)明細書図面 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図6】 【図7】 【図10】 【図11】 【図13】 (別紙)甲1図面 【図1】 【図26】 【図4】 【図5】 (別紙)甲1図面 【図1】 【図4】 【図5】 【図26】

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