令和5(わ)590 Aに対する電子計算機使用詐欺、Bに対する電子計算機使用詐欺、道路交通法違反、電磁的公正証書原本不実記録・同供用、Cに対する電子計算機使用詐欺

裁判年月日・裁判所
令和7年1月14日 大阪地方裁判所
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判決文本文13,151 文字)

令和5年(わ)第590号、第1209号、第3590号 主文 被告人Bを判示第1の罪について懲役1年2月に、判示第2の罪について懲役4月に処する。 被告人Bに対し、この裁判が確定した日から、判示第1の罪につき3年間その刑の執行を猶予する。 被告人Bに対し、この裁判が確定した日から、判示第2の罪につき2年間その刑の執行を猶予し、その猶予の期間中被告人Bを保護観察に付する。 被告人Bの本件各公訴事実中、各電子計算機使用詐欺の点については、被告人Bは無罪。 被告人A及び被告人Cはいずれも無罪。 理由 (罪となるべき事実)被告人Bは、第1 令和4年8月15日、大阪市D区役所において、同区役所職員に対し、真実は、被告人Bが同区(以下略)に住所を異動した事実がないのに、同所に住所を異動した旨の内容虚偽の住民異動届を提出して受理させ、その頃、同区役所において、情を知らない同区役所職員に、権利義務に関する公正証書の原本と して用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記録をさせ、即時、これを同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供した第2 令和4年10月16日午前11時21分頃、道路標識によりその最高速度が60km毎時と指定されている大阪市E区内の高速道路において、その最高速度を81km毎時超える141km毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行したものである。 (証拠の標目)[括弧内記載の番号は、証拠等関係カードにおける検察官請求の証拠番号を示す。]判示第1の事実について被告人Bの公判供述被告人Bの検察官調書(乙17)F(甲44)、G(甲45)の各警察官調書捜査報告書(甲41から43まで)判示第 号を示す。]判示第1の事実について被告人Bの公判供述被告人Bの検察官調書(乙17)F(甲44)、G(甲45)の各警察官調書捜査報告書(甲41から43まで)判示第2の事実について第1回、第2回公判調書中の被告人Bの供述部分捜査報告書(甲32、33)速度違反認知カード(甲31)大阪府公安委員会の決定抄本(甲34)(被告人Bの確定裁判)被告人Bは、令和4年8月12日大阪地方裁判所で暴力行為等処罰に関する法律違反の罪により懲役1年2月(3年間執行猶予)に処せられ、その裁判は同月27日確定したものであって、この事実は前科調書(乙10)によって認める。 (被告人Bについての法令の適用)判示第1について 1 構成要件及び法定刑を示す規定 電磁的公正証書原本不実記録の点は刑法157条1項に、不実記録電磁的公正証書原本供用の点は刑法158条1項、157条1項にそれぞれ該当する。 2 科刑上一罪の処理電磁的公正証書原本不実記録とその供用との間には手段結果の関係があるので、刑法54条1項後段、10条により1罪として犯情の重い不実記録電磁的公正証書原本供用罪の刑で処断する。 3 刑種の選択懲役刑を選択する。 4 併合罪の処理前記確定裁判があった暴力行為等処罰に関する法律違反の罪と刑法45条後段の併合罪であるから、刑法50条によりまだ確定裁判を経ていない判示第1の罪について更に処断する。 5 宣告刑の決定所定刑期の範囲内で被告人Bを懲役1年2月に処する。 6 刑の執行猶予情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 判示第2について 1 構成要件及び法定刑を示す規定道路交通法118条 る。 6 刑の執行猶予情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 判示第2について 1 構成要件及び法定刑を示す規定道路交通法118条1項1号、22条1項、令和4年法律第32号附則6条により同法による改正前の4条1項、道路交通法施行令1条の2第1項に該当する。 2 刑種の選択懲役刑を選択する。 3 宣告刑の決定所定刑期の範囲内で被告人Bを懲役4月に処する。 4 刑の執行猶予 被告人Bは令和4年8月12日大阪地方裁判所で暴力行為等処罰に関する法律違反の罪により懲役1年2月に処せられ3年間その刑の執行を猶予され、判示第2の罪はその猶予の期間内に犯したものであるが、情状に特に酌量すべきものがあるから、刑法25条2項を適用してこの裁判が確定した日から2年間その刑の執行を猶予する。 5 保護観察刑法25条の2第1項後段によりその猶予の期間中被告人Bを保護観察に付する。 (被告人Bに対する電磁的公正証書原本不実記録・同供用についての公訴権濫用の主張に対する判断)弁護人は、社会実態として住民票上の住所と居所が異なることは珍しくなく、それらが逐一公訴提起されてはいないことからすると、本件公訴提起は、被告人Bが暴力団員であるがゆえに行われた憲法上の平等原則に抵触する偏頗なものであるから、公訴権の濫用として公訴棄却されるべきであると主張する。 しかし、被告人Bの行為が電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪に該当することは明らかで、その悪質性の程度が著しく低いともいえない。本件の公訴提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に当たるとはいえず、公訴権濫用には当たらない。 (被告人Bについての量刑の理由)本件は、①前刑の執行猶予判決の宣告後確 いともいえない。本件の公訴提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に当たるとはいえず、公訴権濫用には当たらない。 (被告人Bについての量刑の理由)本件は、①前刑の執行猶予判決の宣告後確定前に、内容虚偽の住民異動届を提出して住民基本台帳ファイルに不実の記録をさせるなどしたという電磁的公正証書原本不実記録・同供用と、②同判決確定後の刑執行猶予期間中に、高速道路で最高速度を超過して普通自動車を運転して進行したという道路交通法違反の事案である。 電磁的公正証書原本不実記録等の犯行は、居住できない場所を住所の移転先として内容虚偽の異動を届け出るなどしたという住民基本台帳に対する一般の信頼を一定程度害するものであり、速度超過の犯行は、その超過の程度が約80キロメート ル毎時と著しく、危険性を軽視することのできないものである。前刑の執行猶予判決の宣告後に、その確定前後にわたってされた犯行であることは軽視できない。もっとも、いずれの犯行も、執行猶予判決のされた罪とは性質が異なり、電磁的公正証書原本不実記録等の犯行については単発的な犯行であること、速度超過の犯行については道路交通事犯で処罰された前科のないことは、相当に考慮することができる。被告人Bが各犯行を認めていること、兄が出廷の上、被告人Bの監督を誓約していることなどの事情も考慮し、今回は、各犯行につき、それぞれその刑の執行を猶予する(速度超過の犯行については、その猶予の期間中保護観察に付することになる。)のが相当であると判断した。 (被告人3名に対する電子計算機使用詐欺についての無罪の理由)第1 電子計算機使用詐欺の各公訴事実の要旨は次のとおりである。 被告人3名は、H株式会社(以下「H社」という。)が有料道路の料金所に設置したETCシステムを利用するに際し、ETCカードの 由)第1 電子計算機使用詐欺の各公訴事実の要旨は次のとおりである。 被告人3名は、H株式会社(以下「H社」という。)が有料道路の料金所に設置したETCシステムを利用するに際し、ETCカードの正当な使用権限を有する者が乗車する場合に有料道路の通行料金が割引されるETC利用割引の適用を不正に受けようと考え、共謀の上、被告人C名義のETCカードを挿入したETC車載器を搭載した普通乗用自動車を被告人Bが運転し、被告人Aが同乗して、⑴令和4年12月8日午後5時36分頃から同日午後5時53分頃までの間、大阪府松原市内の入口ランプから流入し、同市内の料金所を経由して、堺市内の出口ランプから流出するに際し、⑵同月15日午後3時22分頃から同日午後3時40分頃までの間、大阪市E区内の料金所から流入し、大阪府守口市内の出口ランプから流出するに際し、真実は、被告人Cが乗車しておらず、被告人C名義のETCカードの正当な使用権限がないのに、同ETCカードを挿入した同ETC車載器を作動させて、前記各料金所等に設置されたETCシステムの路側無線装置と同車載器との間で、同ETCカードに記録されたETCカード情報等を交信させ、H社が管理する大阪府内に設置されたETCシステム利用による通行料金の記録、徴収等の事務処理に使用される電子計算機に対し、同ETCカードの正当な使用権限を有する者が同ETC カードを利用して前記各料金所等のETCレーンを通過したとの虚偽の情報を与え、それぞれ、その頃、同電子計算機に、前記⑴の区間内の通行料金が570円である旨の、前記⑵の区間内の通行料金が930円である旨の財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作り、よって、⑴については正規の通行料金との差額750円相当の、⑵については正規の通行料金との差額390円相当の財産上不法の利益 行料金が930円である旨の財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作り、よって、⑴については正規の通行料金との差額750円相当の、⑵については正規の通行料金との差額390円相当の財産上不法の利益をそれぞれ得た。 第2 事案の概要及び争点等本件は、被告人A及び被告人Bが、被告人Cの許諾を得て、被告人C名義のETCカード(以下「本件ETCカード」という。)を、被告人Cが乗車することなく、H高速道路で利用したという事案である(本件のETCカードの利用行為を「本件各行為」という。)。本件ETCカードは、株式会社I(以下「I社」という。)の発行する被告人C名義のクレジットカードに付帯して(紐付けられて)発行されたものである。 ETCカードに関する各種規定上、自己名義のETCカードを他人に貸与等することは禁止されているが、被告人Aは、本件ETCカード使用の許諾を得た被告人Cと、生計を一にする同居の事実婚の夫婦であり、本件では、同夫婦間で1枚のETCカードが貸し借りされたものである。なお、被告人Aは暴力団会長、被告人Bはその配下の暴力団員である。 本件の争点は、①本件各行為が「虚偽の情報」を与える行為であるか(被告人A及び被告人Bの本件ETCカードの使用権限の有無を含む。)、②本件各行為の実質的違法性の有無、③被告人3名の故意及び共謀の有無、④本件各行為による損害の有無、⑤本件各起訴が罪刑法定主義(憲法31条)に違反するか、⑥本件各起訴が公訴権の濫用に当たるかである。 当裁判所は、本件ETCカードの名義人である被告人Cと同被告人から使用の許諾を得た被告人Aとが生計を一にする同居の事実婚の夫婦であり、ETCカード使用の際には本人確認のための措置がクレジットカード使用の場合とは異なり厳格に はされていない状況の下で、H社等が本件各行為の 得た被告人Aとが生計を一にする同居の事実婚の夫婦であり、ETCカード使用の際には本人確認のための措置がクレジットカード使用の場合とは異なり厳格に はされていない状況の下で、H社等が本件各行為のような生計を一にする同居の事実婚の夫婦間での1枚のETCカードの貸し借りによって使用することまで、不正通行に当たるとして許容していない旨の周知を十分にしていなかったなどの本件事実関係の下では、被告人らがH社に虚偽の情報を与えたということはできず、電子計算機使用詐欺は成立しないと判断した。 第3 本件各行為が虚偽の情報を与えたといえるか(争点①)について 1 ETCシステムの概要、関係規定等は、次のとおりである。 ⑴ ETCシステムとは、料金の徴収を自動化するための機器及びこれを作動させるシステムの集合体をいい(有料道路自動料金収受システムを使用する料金徴収事務の取扱いに関する省令(以下「省令」という。甲23資料3)1条)、高速道路の混雑防止、キャッシュレス化による利便性の向上、管理費の削減等を目的として運用が開始されたものである(甲2)。ETCシステムを利用しようとする者は、ETCカードを発行する者等の定める手続によりETCカードの貸与を受けることが必要となる(ETCシステム利用規程(甲23資料9)3条)。 ⑵ クレジットカードに付帯するETCカードの取扱いについては、H社の定めるH高速道路営業規則(甲23資料11)により、同営業規則、ETCシステム利用規程(甲23資料9)のほか、当該クレジットカード会社の定める会員規約によることとされている(17条2項)。 H高速道路営業規則には、「ETCカードによるH高速道路の料金の支払いは、通行の都度、クレジットカード会社から貸与を受けている本人が乗車する車両1台に限り行うことができます。」(17条 条2項)。 H高速道路営業規則には、「ETCカードによるH高速道路の料金の支払いは、通行の都度、クレジットカード会社から貸与を受けている本人が乗車する車両1台に限り行うことができます。」(17条4項)、「当該ETCカードの名義人と異なる者が当該ETCカードを使用し、又は使用しようとした場合」は、「ETCカードによる料金の支払いの取扱いを停止し、利用者に他の手段による支払いを求めることができます。」(17条7項3号)との規定があり、また、「利用者が高速道路等の通行又は利用時に」、「利用者が正当に使用する権限を有していないETCカードを使用する行為により料金の全部又は一部を免れた場合は」、「当該通行 又は利用を不正通行として取り扱います。」(32条1項10号)との規定がある。 本件ETCカードに関する規定である「ETCスルーカード規定」(甲21)には、「ETC会員は、他人に対し、本カードを貸与、預託、譲渡もしくは担保提供を一切してはなりません。」、「本カードは、本カード上に表示されたETC会員本人だけが使用できるものとします。」(2条2項)と定められている。本件ETCカードの裏面にも、「このカードの所有権は当社に属し、他に貸与・質入・譲渡することはできません。」との文言が記載されている(甲5)。 また、H社の前身となるH高速道路公団とI社との間で締結された有料道路自動料金収受システム等を利用した有料道路通行料金決済契約(以下、同契約の契約書を「本件決済契約書」という。甲40)では、ETCカードによる料金の支払に関し、ETC会員がETCシステムにより通行した場合は、8条1項に該当する場合を除きETCカードによる支払を承認するものとするとされている(3条1項)。 本件決済契約書8条1項3号には、「ETC会員以外の者がETCカードを使用し ムにより通行した場合は、8条1項に該当する場合を除きETCカードによる支払を承認するものとするとされている(3条1項)。 本件決済契約書8条1項3号には、「ETC会員以外の者がETCカードを使用したと認められる場合(通行車両に当該会員が同乗している場合を除く。)」には、H社はETCカードによる支払を拒絶した上で当該ETCカードを留置することができると規定されている。 ⑶ これらの各種規定からすると、ETCカードを利用する有料道路を管理し、利用料金を徴収するH社、本件ETCカードを被告人Cに発行したI社のいずれもが、共通認識として、ETCカード名義人以外の者によるETCカードの使用を禁止しており、ここにいう使用とは、ETCカードの名義人が運転し、又は同乗することをいうものとしていたということができる。ETC会員によるETCカードの利用は、全て親カードの利用とみなされ、ETCカードの利用代金は親カードのカード利用代金と合算して支払われるものとされており(ETCスルーカード規定(甲21)6条1項)、ETCカードの利用による通行料金の支払はクレジットカードの決済機能を利用するものであるため、本件ETCカードについても、カード名義人の個別的な信用を基礎として貸与されるクレジットカードと同様の扱いとし ているものと考えられる。 各弁護人は、本件各行為によって、被告人C名義の本件ETCカードを車載器に挿入して本件ETCカードに記録された情報等を交信させており、高速道路の通行につきETCシステムが制度上取得する必要な情報を過不足なく与えていた、ETCカード利用の際、料金の徴収のために必要なその通行に関する情報(道路整備特別措置法施行規則(甲23資料2)13条2項3号イ)、あるいは、料金を納付しようとする者の識別その他料金の徴収に必要な情報で暗号 ード利用の際、料金の徴収のために必要なその通行に関する情報(道路整備特別措置法施行規則(甲23資料2)13条2項3号イ)、あるいは、料金を納付しようとする者の識別その他料金の徴収に必要な情報で暗号化されたもの及びこれにより関連機器を正常に作動させるため必要な情報(識別処理情報、省令(甲23資料3)4条1項2号)であるETCシステムに送信されるカードに関する情報としては、カードID等の情報に限られ、ETCカード名義人が同乗している事実、ETCカードの正当な使用権限があることはこれに含まれないから、虚偽の情報を与えたということはできないと主張するものと解される。 しかし、ETCカードの基本的な機能は、通行料金を徴収することにある。取り分けクレジットカードに付帯されたETCカードの使用については、前記のように、クレジットカードがカード名義人の個別的な信用を基礎として信用を供与するものであることからすれば、ETCカードの使用に際しても、名義人本人と使用者との同一性が重視されるものというべきである。ETCシステムに送信されるカードに関する情報に、カード名義人と紐付く固有のカードIDが含まれているのも、そのためであるといえる。ETCシステム上、名義人本人による有効適切な使用か否かを判定して、正規の料金を徴収することが事務処理の目的となっており、基本的には名義人本人以外の使用は予定されていないと解される。 ⑷ もっとも、I社は、H社に対し、ETCカードの情報及び車載器の登録情報等を記録処理装置に登録し、通行の履歴を記録することを条件に、ETCカード名義人からの署名徴求を省略できることとしており(本件決済契約書(甲40)6条)、H高速道路営業規則(甲23資料11)でも、ETCカードによる料金の支払については、原則としてサインを不要としている(17条 からの署名徴求を省略できることとしており(本件決済契約書(甲40)6条)、H高速道路営業規則(甲23資料11)でも、ETCカードによる料金の支払については、原則としてサインを不要としている(17条5項)。実際にも、E TCシステム上、ETCレーンにおいて通行者の署名徴求をはじめとする本人確認手続が取られることはなく、ETCカード名義人が車両に乗車しているかどうかの確認も行われていない。これは、ETCシステムの目的である高速道路の混雑防止やキャッシュレス化による利便性の向上等の必要があることによるものと解され、技術的な制約があるためであるから、このような事情のあることから、直ちにカード名義人本人以外の使用を一般に許容していることにはならない。しかし、ETCカードの名義人本人の使用であること(同乗を含む。)の確認が、クレジットカード使用の場合と同程度にはされていないことは、虚偽の情報を与えたか否かの判断に当たって、一定程度考慮すべき事情になると解される。 2 次に、本件では、取り分け、被告人Aと被告人Cとの関係性、本件ETCカードの取得経緯、利用実態等に関し、次のような事実関係がある。 ⑴ 被告人Aは、令和元年6月以降、現在に至るまで被告人Cと同居しており、両被告人は事実婚の夫婦関係にある。被告人Aと被告人Cは、2人の収入を併せて生活費としており、被告人Aは被告人Cに対し、毎月30万円を生活費として渡し、足りなくなった場合にはその都度追加で金銭を渡すなどしており、両被告人の消費生活は、被告人Aの収入と被告人Cの収入とを明確に区別することなく、その両被告人の収入に支えられていた。本件ETCカードに紐付く被告人Cのクレジットカードからは、両被告人の生活費の引落しがされるなどしており、両被告人は生計を一にしていると認められる。 被告人 、その両被告人の収入に支えられていた。本件ETCカードに紐付く被告人Cのクレジットカードからは、両被告人の生活費の引落しがされるなどしており、両被告人は生計を一にしていると認められる。 被告人Aの所属する暴力団が特定抗争指定暴力団に指定された令和2年1月以降、被告人Aは被告人Cと2人で過ごす時間が長くなり、2人で外食などに出かける機会が多くなったことに伴い、暴力団員である被告人Bの運転の下、高速道路を頻繁に利用するようになった。当時被告人3名はETCカードを所持していなかったことから、高速道路利用の都度、料金所で現金払いをしていたが、被告人Cは、令和2年2月、料金所での混雑を避けるため、自己のクレジットカードに紐付く本件ETCカードの発行を受けた。被告人Cは、本件ETCカードの取得について被告人 Aには相談しておらず、自己の判断で発行手続を行い、被告人Aと被告人Cの専属運転手である被告人Bに本件ETCカードを渡した。これまでに被告人Cが発行を受けたETCカードは、本件ETCカード1枚のみであり、被告人Cの利用のため別途ETCカードの発行を受けていたことはなかった。 その後、本件ETCカードは、被告人Bの運転の下、被告人Cの同乗していない状態で、被告人Aや被告人Cの子がそれぞれ乗車したり、送迎に向かう際に被告人Bが単独で乗車したりしている場合のほか、被告人Cと被告人Aが2人で乗車している場合や、被告人Cのみが乗車している場合にも相当の頻度で利用されていた。 被告人Bは、被告人Cを含む被告人Aの家族の送迎をする専属運転手として、本件ETCカードを利用していたものであり、被告人Cが同乗せず、被告人Aが被告人Bの運転の下に乗車する場合には、被告人Cが被告人Aに対し、本件ETCカードを貸与していたものと認められる。 ⑵ 以上の認定は Cカードを利用していたものであり、被告人Cが同乗せず、被告人Aが被告人Bの運転の下に乗車する場合には、被告人Cが被告人Aに対し、本件ETCカードを貸与していたものと認められる。 ⑵ 以上の認定は、被告人3名の供述に依拠するものである。捜査担当の警察官は、被告人A及び被告人Cの自宅前に秘匿カメラを設置した捜査の結果、被告人Aらの使用する自動車について、被告人Aのみが乗車しているのが7割、被告人Cも乗車しているのが3割であると証言する。しかし、その全てで本件ETCカードが利用されていたのかは明らかでない(本件ETCカードを利用していた場合を前提とする証言であるとすると、後記のような本件ETCカードの利用実態とは異なることになる。)。また、秘匿撮影した映像を消去したこともあって、この証言を裏付けるような証拠はなく、その他、被告人3名の各供述に合理的な疑いを入れるべき事情は存在しない。 ⑶ 以上の事実関係によれば、本件ETCカードの利用は、その利用実態、取り分け1枚のETCカードを貸し借りし、被告人Cも本件ETCカードを相当の頻度で利用していたことに照らし、基本的に被告人A及び被告人Cが同居の事実婚の夫婦として同一生計の範囲内で営む消費生活の一部とみることができる。このような事情の下でされた被告人Cの被告人Aに対する本件ETCカードの貸与は、そのよ うな関係性のない第三者に対する貸与や、カード名義人が別途発行を受けたカードを包括的な許諾の下に渡した切りにする態様の貸与とは性質が異なるというべきである。このような意味で、本件各行為が、名義人本人に対する個別的な信用を基礎に信用を供与するクレジットカードシステムの趣旨に反すると直ちにはいえず、被告人C自身の使用と同視する余地が十分にあるものであったということができる。 弁護人の請求する証 に対する個別的な信用を基礎に信用を供与するクレジットカードシステムの趣旨に反すると直ちにはいえず、被告人C自身の使用と同視する余地が十分にあるものであったということができる。 弁護人の請求する証拠によれば、ETCカード名義人739人のうち、同カード名義人が同乗していない前提で231人(31.3%)が同居家族にETCカードを貸与したことがある、同カード名義人が同乗していない状態で370人(50. 1%)は家族が運転することがある旨それぞれ回答していることが認められる。このことも、特に生計を一にする者の間ではそのような理解の余地のあることを裏付けるものともいえる。 3 前記2のような事情からすると、本件各行為がH社に対し虚偽の情報を与えたことになるかは、必ずしも明らかでない状況にあったというべきであるから、使用者が反対動機を形成することが困難な状況にあったことは否定し難い。それにもかかわらず、本件当時、生計を一にする同居の夫婦名義の1枚のETCカードを使用する場合であっても、名義人本人が同乗していない場合には、他人名義のETCカードの使用として不正通行となる旨の周知はされていない(なお、現在でも、他人名義のETCカードの使用が不正であるという周知がされただけで、生計を一にする同居の夫婦が1枚のETCカードを使用する場合についての取扱いが具体的に周知されているわけではない。)。実際にも、H社やI社が、生計を一にする同居の夫婦名義の1枚のETCカードを使用した事例を、不正通行として取り扱っていたことをうかがわせる証拠はない。 クレジットカード使用の場合には、カード会社から加盟店に対し署名徴求、暗証番号の入力、セキュリティコードの入力等の手続により名義人と使用者との同一性を確認する義務を課せられ、このような義務に違反した場合に、加盟店はカード 場合には、カード会社から加盟店に対し署名徴求、暗証番号の入力、セキュリティコードの入力等の手続により名義人と使用者との同一性を確認する義務を課せられ、このような義務に違反した場合に、加盟店はカード会社から立替払金の支払を受けられなくなるなどの経済的な損害を負う危険も負って いる。これに対し、ETCカードの使用の場合には、H社はこのような本人確認の義務を課せられておらず、I社も本人確認の義務を緩和することを容認している。 このような事情も考えると、消費生活を経済的に支え合う関係にある同一生計の同居の夫婦である被告人Cから被告人Aへの本件ETCカードの貸与によって、クレジットカードシステムにおけるカード名義人の個別的な信用に関する審査の意義が、当然に無意味なものになると理解されていたかは、必ずしも明らかではない。本件各行為のようなETCカードの使用方法が禁止されていることについて、十分な注意喚起がされていなかったことは、H社等が、同一生計の同居の夫婦間の1枚のETCカードの貸与の場合にETCカードの名義人が同乗しているか否かについて、重要な関心を寄せてこなかった可能性を示すものということもできる。 以上のような事情は、本件各行為が「虚偽の情報を与えた」として当罰性のあるものということができるかを見るに当たって、十分に考慮されるべきであると解される。 4 検察官は、実質的違法性に関する主張の中で、本件各行為が常習的な犯行の一環であることやいわゆる暴力団排除条項を潜脱するものであることを挙げて、これを許容することは社会通念上相当でないと主張するので、念のため検討しておく。 確かに、被告人Aの供述によれば、暴力団の組事がある愛知県や三重県の方面に行く場合には被告人Cが同乗していなかったというのであるから、被告人Cが同乗しないまま本件ETC ので、念のため検討しておく。 確かに、被告人Aの供述によれば、暴力団の組事がある愛知県や三重県の方面に行く場合には被告人Cが同乗していなかったというのであるから、被告人Cが同乗しないまま本件ETCカードが使用された日が一定数ある可能性は否定できない。しかし、検察官の主張を基に検討しても、被告人Cの同乗なく、被告人Aと被告人Bが本件ETCカードを使用したのは、令和4年9月27日から12月28日までの約3か月間(高速道路を利用した日はうち77日間であり、1日に複数回利用した日も多く認められる。)で18日間であり、被告人3名の高速道路利用全体との関係で、その頻度が特に高いものとは評価できない。また、本件では、暴力団員である者に利用させるため名義人本人の必要とは別にETCカードの発行を受けたという事情はなく、1枚のETCカードを広く共用していた状況にあることに照らすと、 自己名義のETCカードを取得できない暴力団員である被告人Aと被告人Bに利用させるため、あえて被告人CがETCカードを取得したと認めることはできないから、暴力団排除条項(ETCスルーカード規定14条1項、JCBカードの会員規約11条の2、甲21)を潜脱する意図で本件ETCカードを取得したものではなく、取得後の利用実態を踏まえても、暴力団排除条項の潜脱を専ら意図した使用がされてきたとまでは評価できない。 なお、本件各公訴事実は、本件各公訴事実の記載内容自体や、冒頭陳述、証明予定事実記載書の検察官の主張の内容のほか、検察官が令和5年7月31日の第2回期日間整理手続期日において、「名義人が同乗していない使用という事実」「のみ」で、本件電子計算機使用詐欺の「構成要件に該当する」という主張であると明示的に釈明した内容からも明らかなように、被告人Aらが暴力団員であるとの属性を隠して 人が同乗していない使用という事実」「のみ」で、本件電子計算機使用詐欺の「構成要件に該当する」という主張であると明示的に釈明した内容からも明らかなように、被告人Aらが暴力団員であるとの属性を隠して本件ETCカードを利用したことが、公訴事実として構成されているものではない。 5 総合評価名義人本人以外の者によるETCカードの利用が一般に禁止されていることを踏まえても、本件ETCカード名義人である被告人Cと同被告人から使用の許諾を得た被告人Aとが生計を一にする同居の事実婚の夫婦であり、ETCカード使用の際には本人確認のための措置がクレジットカード使用の場合とは異なり厳格にはされていない状況の下で、H社等が本件各行為のような生計を一にする同居の事実婚の夫婦間での1枚のETCカードの貸し借りによって使用することまで、不正通行に当たるとして許容していない旨の周知を十分にしていなかったなどの本件事実関係の下では、本件各行為が処罰に値するだけの虚偽の情報を与えたものということはできないと解される。 第4 結論被告人3名に対する電子計算機使用詐欺に係る各公訴事実については、被告人3名が虚偽の情報を与えたということはできず、犯罪の証明がないことになるから、 刑事訴訟法336条により、被告人A及び被告人Cに対してはいずれも無罪を、被告人Bに対しては電子計算機使用詐欺の各公訴事実について無罪を、それぞれ言い渡すこととする。 (求刑被告人Aにつき懲役1年6月、被告人Bの電子計算機使用詐欺、道路交通法違反につき懲役1年4月、確定判決前余罪である電磁的公正証書原本不実記録・同供用につき懲役1年2月、被告人Cにつき懲役10月)令和7年1月14日大阪地方裁判所第5刑事部 裁判長裁判官三輪篤志 的公正証書原本不実記録・同供用につき懲役1年2月、被告人Cにつき懲役10月) 令和7年1月14日大阪地方裁判所第5刑事部 裁判長 裁判官三輪篤志 裁判官小泉健介 裁判官武藤遼

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