平成18(レ)2 不当利得返還等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成18年8月17日 津地方裁判所 その他 尾鷲簡易裁判所 平成17(ハ)34
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判決文本文34,541 文字)

- 1 -いわゆる消費者金融会社の営業の譲渡を受けて当該譲渡会社の商号を続用した譲受会社が,譲渡会社の債務については責めに任じないとの免責登記をしていた場合であっても,顧客の譲渡会社に対する過払金返還債務の支払を拒むことが信義則に反するとされた事例。 平成18年8月17日判決言渡平成18年(レ)第2号不当利得返還等請求控訴事件平成18年(レ)第6号附帯控訴事件(原審・尾鷲簡易裁判所平成17年(ハ)第34号)判決主文 控訴人の控訴及び被控訴人の附帯控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。 (1)控訴人は,被控訴人に対し,金67万7509円及び内金40万0486円に対する平成18年3月11日から,内金15万円に対する平成17年6月7日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)被控訴人の,その余の請求(当審における拡張部分を含む)をいずれも棄却する。 控訴人のその余の控訴,及び被控訴人のその余の附帯控訴を,いずれも棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その4を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 この判決は,第1項(1)に限り,仮に執行することができる。 - 2 -事実及び理由第1当事者の求める裁判 控訴人(控訴について)(1)原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 (2)被控訴人の請求を棄却する。 (3)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 (附帯控訴について)(1)本件附帯控訴を棄却する。 (2)附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。 被控訴人(控訴について)(1)本件控訴を棄却する。 (2)控訴費用は控訴人の負担とする。 (附帯控訴について)(1)原判決を次のとおり変更する(請求の拡張)。 (2)控訴人は,被控訴人に対し,11 控訴人(控訴について)(1)本件控訴を棄却する。 (2)控訴費用は控訴人の負担とする。 (附帯控訴について)(1)原判決を次のとおり変更する(請求の拡張)。 (2)控訴人は,被控訴人に対し,116万9495円及び内金70万1491円に対する平成18年3月11日から支払済みまで年6分の割合による,内金15万2500円に対する平成17年6月7日から支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 (3)訴訟費用は,第1,2審とも控訴人の負担とする。 (4)仮執行宣言第2事案の概要 本件は,ハッピークレジット株式会社(以下「旧ハッピークレジット」という。)及び同社から平成12年6月1日に営業譲渡を受けてその商号を続用した控訴人との間で継続的な金銭消費貸借取引を行ってきた被控訴人が,控訴人- 3 -に対し,(1)旧ハッピークレジット及び控訴人との取引経過について利息制限法を適用して引直し計算をすると過払金が発生しており,控訴人は悪意の受益者で同過払金に対し商事法定利率の年6分の割合による利息の支払義務を負うとして,不当利得返還請求権に基づき,過払金元金70万1491円と平成18年3月10日までの既発生利息31万5504円及び同過払金元金に対する同月11日から支払済みまで年6分の割合による利息の支払を求めるとともに(2)控訴人が旧ハッピークレジットにおける取引履歴を開示しなかったことは違法であるとして,民法709条の不法行為の損害賠償請求権に基づき,慰謝料等15万2500円及びこれに対する訴状送達の翌日である平成17年6月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は,控訴人の,旧ハッピークレジットが負っていた過払金返還債務は商法(平成17年法律第87号による改正前のもの,以下同じ。)26 法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は,控訴人の,旧ハッピークレジットが負っていた過払金返還債務は商法(平成17年法律第87号による改正前のもの,以下同じ。)26条2項所定の免責登記により免責されるとの抗弁を排斥し,過払金返還債務の利息の利率を民事法定利率の年5分,取引履歴の非開示による損害を4万円として,被控訴人の請求を一部認容した。 原判決に対し,控訴人は被控訴人の請求の棄却を求めて控訴し,他方,被控訴人は附帯控訴して,取引履歴の非開示による損害を原審主張額の15万0854円から15万2500円へ請求を拡張した。 前提となる事実当事者間に争いのない事実と証拠(省略)によると次の事実が認められる。 (1)控訴人は,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)による登録を受けた貸金業者である。控訴人は,昭和57年4月27日に消費者金融大手のアイフル株式会社の100%子会社として資本金1000万円で設立され,設立当初の商号は「株式会社クレストファクタリング」で,本店は京都市a区b町c番地,代表取締役はAであった(証拠略)。 - 4 -(2)旧ハッピークレジットは,株式会社幸福銀行(以下「幸福銀行」という)の系列会社として昭和47年5月25日大阪市d区e町f番g号で,代表取締役をB,消費者金融業を事業目的として「ハッピークレジット株式会社」の商号で資本金1000万円で設立され,その後,近畿を中心に次々と支店を開店して事業を拡大していき,平成11年3月末時点において,近畿・東海地区に32事業所(無人店9店)を開店し,従業員は152名であり,営業利益は平成10年3月期の第26期が9億3595万2142円,平成11年3月期の第27期が6億5940万2625円,平成12年3月期の第28期が7億78 9店)を開店し,従業員は152名であり,営業利益は平成10年3月期の第26期が9億3595万2142円,平成11年3月期の第27期が6億5940万2625円,平成12年3月期の第28期が7億7846万9517円であった。 旧ハッピークレジットの経営状態は,上記のとおり,特に問題なく推移していたが,平成11年5月に主力銀行で,グループ会社でもある幸福銀行が経営破綻し,金融再生委員会より管理命令が発せられる事態となり,この幸福銀行の経営破綻により,旧ハッピークレジットも,信用悪化を招き資金供給が枯渇して,事業継続が著しく困難になるのが必至の状況となった。 旧ハッピークレジットは,経営破綻の最悪の事態を可能な限り回避するため,金融再生委員会及び金融整理管理人の示唆に基き,関連会社である株式会社スカイとともに,旧ハッピークレジットらの有する営業貸付債権をその劣化前に他の事業者に譲渡して引当資産を保全すると共に,営業自体も譲渡して顧客の混乱を回避し,また,従業員もその譲渡先に全員再雇用してもらうという営業譲渡の方法により打開策を模索し,平成11年7月ころから具体的な営業譲渡先の選定作業に入り,平成12年2月に,消費者金融大手のアイフル株式会社から,営業貸付債権を好条件で譲り受けるほか,従業員全員再雇用,旧ハッピークレジットと株式会社スカイの同時譲受などを骨子とする意向表明があった。そのため,旧ハッピークレジットは,金融再生委員会などとも協議の上,具体的な条件交渉に入った結果,アイフル株式会社の100%子会社である株式会社クレストファクタリング(控訴人)が,旧ハ- 5 -ッピークレジットの営業貸付債権全部と営業承継に必要な固定資産等を譲り受け,従業員も全員同条件で再雇用することなどを骨子とする平成12年3月29日付け営業財産譲渡契約が,旧ハッ が,旧ハ- 5 -ッピークレジットの営業貸付債権全部と営業承継に必要な固定資産等を譲り受け,従業員も全員同条件で再雇用することなどを骨子とする平成12年3月29日付け営業財産譲渡契約が,旧ハッピークレジットと譲受会社である控訴人との間で締結された。 (3)被控訴人は,幸福銀行の関連会社であった旧ハッピークレジット(大阪市d区e町f番g号,代表取締役B,証拠略)との間で,同社の近鉄四日市駅前にある営業店舗において,平成6年7月22日に金銭消費貸借包括契約証書を作成した(証拠略,ただし,これが同社との取引の開始であったかについては争いがある。)。同契約証書では,借入限度額が30万円,借入の利率が実質年率32.85パーセント,遅延利息の利率が実質年率39.00パーセント,返済方式及び各回の返済金額として元利定額リボルビング方式毎返済期日に定額金1万4000円を支払い,これをまず前日までの利息に充当し,残りを元金に充当すると記載され,13条(合意管轄裁判所)には「本契約に関して裁判手続きの必要が生じたとき,ハッピーの本社或いは四日市支店の所在地のどちらかハッピーの選定する裁判所のみを管轄裁判所とすることに合意します。」との条項がある。 そして,被控訴人は,少なくとも平成6年11月30日から平成12年4月24日までの間,旧ハッピークレジットとの間で,利息制限法所定の制限利率を超えた約定利息・遅延損害金のもとで継続的な金銭消費貸借取引を行い,金銭の借入れと弁済を繰り返した。これらの被控訴人と旧ハッピークレジットとの間の取引は,同社の近鉄四日市駅前にある営業店舗において取り扱われた。 (4)控訴人(当時の商号は株式会社クレストファクタリング,平成7年12月1日に本店を京都市h区i町j番地kに移転,代表取締役A)は,平成12年3月29日,旧ハッ る営業店舗において取り扱われた。 (4)控訴人(当時の商号は株式会社クレストファクタリング,平成7年12月1日に本店を京都市h区i町j番地kに移転,代表取締役A)は,平成12年3月29日,旧ハッピークレジット(大阪市d区e町f番g号,代表取締役A)との間で,上記(2)のとおり,営業財産譲渡契約を締結した(以下- 6 -「本件営業譲渡契約」といい,同契約にかかる契約書を「本件営業譲渡契約書」という。証拠略)。なお本件営業譲渡契約書において,控訴人は京都市h区i町j番地k,株式会社クレストファクタリング,代表取締役Cと記載されている。 控訴人は,上記営業譲渡に伴い,顧客承継を円滑に実行するため,平成12年4月5日に,旧ハッピークレジットと同じ「ハッピークレジット株式会社」に商号を変更し,本店を大阪市l区m町n丁目o番p号に移転した(証拠略)。 (5)旧ハッピークレジットは,本件営業譲渡契約に従い,平成12年5月31日をもって営業を終了し,同年6月1日に控訴人にその営業を譲渡した(以下「本件営業譲渡」という。)。 控訴人は,その際,商号の譲渡も受け,以後「ハッピークレジット株式会社」の商号を続用したが,平成12年6月9日に,本店において,「当会社は平成12年6月1日商号の譲渡を受けたが,譲渡人である大阪市d区e町f番g号ハッピークレジット株式会社の債務について責に任じない。」旨,旧ハッピークレジットの債務について商法26条2項所定の免責登記(以下「本件免責登記」という。)を了した(証拠略)。 一方,旧ハッピークレジットは,債権譲渡,登記の年月日平成12年6月1日,譲受人控訴人,債権の総額214億0392万0622円との登記を同年6月2日に行った。 (6)旧ハッピークレジットは,本件営業譲渡の後,残務処理を行い,平成13年1月11日に「四 成12年6月1日,譲受人控訴人,債権の総額214億0392万0622円との登記を同年6月2日に行った。 (6)旧ハッピークレジットは,本件営業譲渡の後,残務処理を行い,平成13年1月11日に「四ツ橋クレジット株式会社」へと商号を変更し,同月末に大阪地方裁判所に自己破産を申し立て同年2月9日に破産宣告を受けた(証拠略)。 (7)被控訴人は,旧ハッピークレジットの営業譲渡に伴い貸主たる地位を譲り受けた控訴人に対し,平成12年6月6日から平成15年11月28日まで- 7 -の間,別紙1の「弁済額」欄64ないし80記載のとおり,返済を繰り返した。これらの被控訴人と控訴人との間の取引は,同社が本件営業譲渡に伴い旧ハッピークレジットから承継した近鉄四日市駅前にある上記営業店舗(以下「四日市駅前店」という。)において取り扱われた(証拠略)。 (8)控訴人(代表取締役A)は,平成14年5月1日本店を大阪市l区m町n丁目o番p号から,京都市q区r町s-tに移転し,平成16年4月12日商号を「ハッピークレジット株式会社」から現在の「トライト株式会社」へと変更し,平成17年4月4日本店を肩書住所地へ移転し,その後も貸金業を継続している。 争点 (1)被控訴人が控訴人に対して過払金返還請求権を有するか。 ア被控訴人と旧ハッピークレジットとの間の取引経過イ控訴人が旧ハッピークレジットとの間で,被控訴人に対する過払金返還債務を承継しない旨合意したか。 ウ控訴人は,旧ハッピークレジットの過払金返還債務を本件免責登記により承継しないとして被控訴人に対抗できるか。 エ過払金返還債務の利息の利率(2)被控訴人の控訴人に対する取引履歴非開示による損害賠償請求権の有無ア控訴人が,被控訴人の旧ハッピークレジットとの間の取引履歴を開示しなかったことで不法行為責任 エ過払金返還債務の利息の利率(2)被控訴人の控訴人に対する取引履歴非開示による損害賠償請求権の有無ア控訴人が,被控訴人の旧ハッピークレジットとの間の取引履歴を開示しなかったことで不法行為責任を負うか。 イ損害額 争点に関する当事者の主張(1)争点(1)ア(被控訴人と旧ハッピークレジットとの間の取引経過)について(被控訴人の主張)ア被控訴人と旧ハッピークレジットとの間の取引経過は,別紙1(別紙省- 8 -略。以下別紙全て省略)における1994(平成6)年11月30日から2000(平成12)年4月24日の該当欄に記載のとおりである。この点については,原審において擬制自白が成立しており,擬制自白も自白の一種であるところ,例外的に自白の撤回が認められる真実に反し,かつ錯誤に基づくものという事情は認められない。そうすると,平成18年3月10日現在の過払金合計は70万1491円である。 イ控訴人が控訴審において主張する被控訴人と旧ハッピークレジットとの間の取引経過は別紙2「元利金計算書」(証拠略)であるが,これによって旧ハッピークレジット及び,控訴人との取引における過払金を算出すると,原審での認定額より低額になる(証拠略)。しかし,仮に同取引経過が真実であるならば,わざわざ過払金が多いままの状態を控訴審の段階まで放置するとは考え難く,より早期に同取引経過を開示したはずである。 また,被控訴人提出の控訴人の会員カード(証拠略)は,控訴人が作成したものではなく,その作成経緯は不明であるから,元利金計算書の正当性を裏付けるものではない。したがって,元利金計算書の内容は到底信用できない。 (控訴人の主張)ア被控訴人と旧ハッピークレジットとの間の取引は平成3年3月13日に開始され,平成12年4月24日まで継続しており,その詳細は,別 がって,元利金計算書の内容は到底信用できない。 (控訴人の主張)ア被控訴人と旧ハッピークレジットとの間の取引は平成3年3月13日に開始され,平成12年4月24日まで継続しており,その詳細は,別紙2「元利金計算書」のとおりである(証拠略)。これによれば,平成12年6月1日時点の旧ハッピークレジットの被控訴人に対する過払金返還債務の額は27万6331円である。元利金計算書の内容が真実であることは被控訴人の会員カード(証拠略。会員カードとは,初回融資の際に顧客管理のために作成し,新規融資や住所変更等があれば随時改訂していくものである。)に記載された内容と一致していることによって裏付けられる。 イ被控訴人が主張する別紙1の取引経過については,平成6年11月30- 9 -日以降の取引しか記載されておらず,しかも1万2000円の弁済から始まっている。貸金業者とその顧客との間において,このように貸付けを前提とせずに,いきなり弁済から開始する取引はあり得ない。 また,被控訴人は擬制自白の撤回は認めるべきではないと主張するが,擬制自白には当事者拘束力はない。 (2)争点(1)イ(控訴人が旧ハッピークレジットとの間で,被控訴人に対する過払金返還債務を承継しない旨合意したか)について(被控訴人の主張)控訴人は,本件営業譲渡において商号を続用することにより,商法26条1項に従い,旧ハッピークレジットの被控訴人に対する過払金返還債務を承継する旨合意した。 ア営業譲渡において商号を続用する譲受人の責任本件営業譲渡において,譲受人である控訴人は,商法245条1項1号による「営業の全部又は重要なる一部の譲渡」を受け,しかも,旧ハッピークレジットの商号を続用しているから,同社は法律上当然に競業避止義務を負うことになる。したがって,控訴人は,商法26条1項に 1号による「営業の全部又は重要なる一部の譲渡」を受け,しかも,旧ハッピークレジットの商号を続用しているから,同社は法律上当然に競業避止義務を負うことになる。したがって,控訴人は,商法26条1項に基づき,旧ハッピークレジットの営業により生じた被控訴人に対する過払金返還債務を承継し,それについて弁済する責任を負う。そして,控訴人は,旧ハッピークレジットから営業譲渡を受けて商号を続用したから,本件営業譲渡時に既に発生していた過払金返還債務についても,営業用財産と有機的一体をなすものとして,旧ハッピークレジットから承継したと推定される。これに対し,控訴人が主張する本件営業譲渡契約において旧ハッピークレジットの被控訴人に対する過払金返還債務を承継しない旨の合意があったとの事実は,次のとおり立証されていない。 イ過払金返還債務を承継しない旨の合意の不存在(ア)過払金返還債務は貸付債権と不可分である。 - 10 -約定利率が利息制限法所定の制限利率を超えており,かつ,みなし弁済の要件を満たさない継続的な金銭消費貸借においては,貸付債権と過払金返還債務はその性質上密接不可分の関係にあるので,分離してどちらかのみを譲渡することはできない。 すなわち,ある金銭消費貸借について貸付債権が存在するか逆に過払金返還債務が存在するかの判断対象は,顧客と貸金業者との間の従前の取引経過という単一の契約関係にすぎないのであって,みなし弁済の成否という法的判断における見解の相違によって結論が異なってくるにすぎない。その意味で,貸付債権と過払金返還債務は,単一の契約関係においていわば表裏一体の関係にある。したがって,過払金返還債務は,契約関係そのものと同視すべきものであり,独立の支分権的な債務とはいえないから,当該金銭消費貸借の貸主たる地位を譲り受けておきながら おいていわば表裏一体の関係にある。したがって,過払金返還債務は,契約関係そのものと同視すべきものであり,独立の支分権的な債務とはいえないから,当該金銭消費貸借の貸主たる地位を譲り受けておきながら過払金返還債務は引き受けないものとすることはできない。 (イ)本件営業譲渡契約における合意内容の合理的解釈本件営業譲渡契約書には,過払金返還債務を承継しないものとする文言はない。また,本件営業譲渡契約では,旧ハッピークレジットの貸付債権は額面により評価されているし,控訴人は旧ハッピークレジットの顧客データ等を承継し,顧客データの移転が完了した後は,旧ハッピークレジットは顧客情報を消去することとなっている。そして,本件営業譲渡契約書では,第3条3.2(2)<6>)において,譲渡対象債権の額を評価した基準日から2か月以内に,営業貸付債権等について,過払金返還請求を受けた債権が判明した場合には,当該貸付けにかかる営業貸付債権等の額を譲渡対象資産の額から控除し,控訴人が返還した過払金については追加的に控除することもある旨が定められているところ,同規定は譲受人である控訴人が過払金返還債務を承継することを前提とした規定といえる。 - 11 -以上のような本件営業譲渡における合意内容を合理的に解釈すれば,旧ハッピークレジットと控訴人との間において,過払金返還債務を承継しないという合意は存在していない。 (控訴人の主張)控訴人は,旧ハッピークレジットとの間の本件営業譲渡契約において,商法26条2項に従い,被控訴人に対する過払金返還債務を承継しない旨合意している。 ア控訴人と旧ハッピークレジットは,本件営業譲渡契約の際,旧ハッピークレジットの負債については,本件営業譲渡契約書第2条2.2(1)に規定する旧ハッピークレジットの「顧客預り金」及び「顧客前受収 ア控訴人と旧ハッピークレジットは,本件営業譲渡契約の際,旧ハッピークレジットの負債については,本件営業譲渡契約書第2条2.2(1)に規定する旧ハッピークレジットの「顧客預り金」及び「顧客前受収益」を除き,一切引き受けないことを約した。「顧客預り金」及び「顧客前受収益」は,いずれも過払金返還債務とは一切関係のない金員であるから,控訴人は旧ハッピークレジットの過払金返還債務を承継していない。 イ被控訴人の主張に対する反論(ア)貸付債権と過払金返還債務が不可分一体との見解は誤りである。 不当利得責任と契約責任とは,要件,効果,法的性質等を全く異にするものであり,過払金返還請求権は契約関係から発生するものではないから,両者を混同した議論は失当である。貸付債権と過払金返還債務が不可分一体であるとの主張は,被控訴人の独自の見解にすぎない。 (イ)被控訴人による本件営業譲渡契約の合意内容の解釈は誤りである。 本件営業譲渡契約書第3条3.2(2)の規定は,譲受対象債権の経済的価値(回収可能性)の評価にかかる調整規定であり,債務の承継に関する調整規定ではないから,控訴人が旧ハッピークレジットの過払金返還債務を当然に承継する趣旨ではないことは明らかである。同規定では「債権回収に困難をきたす…債権」<7号>の具体例として「過払返還請求を受けた債権」を列挙しているのであり,顧客から過払金返還請- 12 -求を受けるような局面においては,当該顧客からなお譲受対象債権を回収することは困難であるから,当該債権の経済的価値をゼロと評価して譲渡対価の支払対象外とするため,当該債権が経済的価値を有することを前提として暫定的に算出された譲渡対価から,当該債権の元金残高相当額等を控除するという調整を行うことを規定しているにすぎない。 また,本件営業譲渡契約において貸付 ,当該債権が経済的価値を有することを前提として暫定的に算出された譲渡対価から,当該債権の元金残高相当額等を控除するという調整を行うことを規定しているにすぎない。 また,本件営業譲渡契約において貸付債権が額面で評価されたことと債務を承継するかどうかは別問題であり,むしろ過払金返還債務を承継しないからこそ,貸付債権が額面で評価されたのである。さらに,顧客データ等は,いずれも「資産」ないし「債権」であって「負債」ないし「債務」ではないから,控訴人が,旧ハッピークレジットからかかる「資産」又は「債権」の譲渡を受けたことも,控訴人が旧ハッピークレジットの被控訴人に対する過払金返還債務を承継した理由となるものではない。 (3)争点(1)ウ(控訴人は,旧ハッピークレジットの過払金返還債務を本件免責登記により承継しないとして被控訴人に対抗できるか)について(控訴人の主張)ア控訴人は,本件営業譲渡の後,遅滞なく本件免責登記をしている。そして,以下のとおり,控訴人の四日市駅前店が商法上の支店に当たらないし控訴人の免責の主張は信義則に反しない。したがって,控訴人は,商法26条2項により,旧ハッピークレジットの過払金返還債務を承継しないことを被控訴人に対抗できる。 イ四日市駅前店が商法10条の支店に当たらない。 四日市駅前店は,本店の指示命令に従って機械的に取引を行うにすぎない場所であり,店頭窓口・自動契約受付機・ATMを備えただけの単なる店舗であることが明らかであるから,商法10条にいう支店には該当せずそもそも支店登記を要しない。 控訴人の営業組織上,四日市駅前店の店長の権限は極めて狭いものであ- 13 -った。店長は,当該店舗にかかる営業においてすら法人を代表・代理する一般的権限は有しておらず人事権もない。また,消耗品の購入を除いた独自の経費支出 前店の店長の権限は極めて狭いものであ- 13 -った。店長は,当該店舗にかかる営業においてすら法人を代表・代理する一般的権限は有しておらず人事権もない。また,消耗品の購入を除いた独自の経費支出も認められていないし,営業活動に関しても金融庁事務ガイドライン・第三分冊(金融会社関係)において貸付けの上限とされている50万円の枠内でしかも本社の貸付基準に沿った貸付けしかすることができない。そして,50万円以下の貸付けについても,会社全体で一括して管理されているデータに登録され,本社でも同店における貸付状況がオンラインで確認ができるようになっており,それを通じて具体的な貸付け,その後の回収状況を管理されていた。また,簡単な回収業務は行うものの訴訟等の法的手続に関してはすべて本社の判断により行っているのであって,同店で行う回収業務の内容は機械的なものにすぎない。四日市駅前店の人員構成も,わずか店長を含め従業員5名にとどまる。 ウ控訴人の免責の主張は信義則に反しない。 (ア)リスク負担について金銭消費貸借契約上の関係においては,当事者である貸主及び借主がそれぞれ相手方が破産等に至るリスクを負担しているのであるから,本件について三者間の不当利得関係との前提でリスク負担者を考えるのは誤りである。控訴人は,幸福銀行グループの破綻処理の一環として,旧ハッピークレジットの営業資産を譲渡する方針が採られたことから,その要請に応じて同社の資産を譲り受けたものであり,同社と従前から取引関係にあってその破綻リスクを甘受することもやむを得ない被控訴人とは根本的に立場が異なる。 そればかりか,控訴人は,既に適切に評価された譲渡代金を支払っているのであるから,さらに過払金返還債務までを負うこととなれば,二重の金銭負担を強いられることになり,控訴人の負担の下で被控 が異なる。 そればかりか,控訴人は,既に適切に評価された譲渡代金を支払っているのであるから,さらに過払金返還債務までを負うこととなれば,二重の金銭負担を強いられることになり,控訴人の負担の下で被控訴人のみが旧ハッピークレジットの他の債権者から抜け駆け的に債権回収を図- 14 -る結果となり,不公平である。 (イ)被控訴人による権利行使の機会喪失について控訴人は,旧ハッピークレジットより貸付債権を譲り受けたと主張しているもので,既発生の過払金返還債務を含めた一切の契約関係を引き継ぐかのように振る舞ったことはない。控訴人は,被控訴人に対して,旧ハッピークレジットの破産の事実をあえて秘したことはない上,控訴人は被控訴人に対してかかる破産の事実について告げるべき法的義務も道義的義務も一切ない。 被控訴人は,旧ハッピークレジットから控訴人への債権譲渡等の説明も受けた上で,債権譲渡の事実を異議なく承諾しているにもかかわらずかかる事実を一切無視した訴訟活動を行っているのであって,このことこそ禁反言の法理に反する。 (ウ)本件営業譲渡は相当の対価をもってなされており,本件営業譲渡は詐害行為的ではない。 被控訴人は,旧ハッピークレジットが本件営業譲渡により受け取った対価は同社の債権者の一部に対する弁済にのみ充てられて,被控訴人のような過払金返還請求権の債権者はほとんど弁済を受けなかったと主張するが,これは,旧ハッピークレジットが債務超過であり,金融機関が別除権(担保権)を有していたことからすれば当然の処理にすぎない。 (エ)控訴人に,過払金返還債務の存在の認識がない。 利息制限法を超過する利率が設定されていることと,過払金が現に発生しているか否かは全く別の問題であるし,リスク回避については様々な手段があるのであって,控訴人は,本件債権譲渡契約において 識がない。 利息制限法を超過する利率が設定されていることと,過払金が現に発生しているか否かは全く別の問題であるし,リスク回避については様々な手段があるのであって,控訴人は,本件債権譲渡契約において過払金返還債務を承継しない合意をしたのであるから,旧ハッピークレジットの過払金返還債務の存否について関知すべき立場にはなかった。 (オ)他事例における和解による解決について- 15 -信義則とは,個々の当事者間ごとの個別事情に基づいて判断されなければならないものであるから,本件において,控訴人が被控訴人に対して旧ハッピークレジットの債務を承継していないと主張することが信義則に違反するか否かは,控訴人と被控訴人との間の個別事情から判断されなければならないのである。控訴人以外の者との間の和解は,本件における信義則違反の有無を判断するに当たり,何らの意味を有しない。 (被控訴人の主張)ア控訴人の上記免責の主張は争う。控訴人は,本件営業譲渡に伴い旧ハッピークレジットの商号を続用しているから,以下のとおり,商法26条,13条,12条により,本件免責登記による免責の効力が認められないし控訴人は,旧ハッピークレジットの過払金返還債務を承継しないことを善意の第三者である被控訴人に対抗できない。 イ四日市駅前店の支店登記における免責登記の不存在控訴人は,被控訴人と取引をしていた四日市駅前店が商法10条の支店としての実質を有するにもかかわらず,同店の支店登記をしておらず,ひいては支店登記における免責登記をしていない以上,商法13条等により旧ハッピークレジットの過払金返還債務を承継しないことを被控訴人に対抗できない。 四日市駅前店が商法上の支店に当たることについては,擬制自白が成立しており,その撤回は認められない。 実体をみても,四日市駅前店は,旧ハッピー 払金返還債務を承継しないことを被控訴人に対抗できない。 四日市駅前店が商法上の支店に当たることについては,擬制自白が成立しており,その撤回は認められない。 実体をみても,四日市駅前店は,旧ハッピークレジットの金銭消費貸借包括契約証書(証拠略)において「四日市支店」と表記されており,支店としての名称を有している。加えて,四日市駅前店は,営業2課の統括を受ける一店舗として三重県下において広く営業活動をしており,初回でも50万円という金融庁事務ガイドラインの上限金額まで独自に貸付けを行う広い権限を有し,店長のほか常勤の従業員が5名もいて,旧ハッピーク- 16 -レジットの当時から,少なくとも15年以上の長期にわたり設置されていた。同店では,給与等は本社支給であったが日用物品は独自に購入することができ,貸金回収のための同店専用の銀行預金口座があり,本店から離れて一定の営業活動を行って対外的取引をなしていた。こうした諸点に照らせば,四日市駅前店は,支店としての実質も有している。 ウ信義則違反控訴人による過払金返還債務を承継しない旨の主張は,以下の事情に照らし信義則に違反するから,これを被控訴人に対抗することはできない。 (ア)リスク回避可能性三者間の給付不当利得関係の当事者の一人の無資力のリスクは,その無資力の危険を回避できたにもかかわらず回避しなかった者が負うべきであり,あえて回避可能なリスクを回避しなかった者が,リスク回避の方法のない者の不測の損害において利得をするのは,信義に反し許されない。 本件では,控訴人は,将来顧客から利息制限法所定の利率による引直し計算の主張を受けるリスクを考慮して,営業の譲受価格を決めることが可能であったのに対し,一般市民である被控訴人は,旧ハッピークレジットが無資力となることのリスク回避は不可能であった 利率による引直し計算の主張を受けるリスクを考慮して,営業の譲受価格を決めることが可能であったのに対し,一般市民である被控訴人は,旧ハッピークレジットが無資力となることのリスク回避は不可能であった。よって,控訴人が旧ハッピークレジットの無資力のリスクを負うべきである。 (イ)旧ハッピークレジットに対する権利行使機会の喪失控訴人は,本件営業譲渡後は控訴人のみが取引の相手方であると被控訴人に信じさせて,被控訴人による旧ハッピークレジットに対する権利行使の機会を喪失させた。控訴人は,本件営業譲渡後も,旧ハッピークレジットと同一の基本契約に基づき同一の顧客番号で被控訴人からの返済を収受しているのであって,貸金の返済と過払金請求の相手が別になるとは考え難いことに照らし,旧ハッピークレジットの過払金返還義務- 17 -を承継しないと主張することは禁反言の法理に違反する。 (ウ)本件営業譲渡が詐害的である。 本件営業譲渡において,旧ハッピークレジットが受け取った対価は,その一部の債権者である金融機関に対する弁済にのみ充てられ,被控訴人のような過払金返還請求権の債権者はほとんど弁済を受けなかった。 そして,控訴人はこのことを十分認識していたのであるから,本件営業譲渡は,過払金返還請求権の債権者らとの関係では詐害行為的である。 かかる事情のもとでは,本件営業譲渡に当事者として加わった控訴人に旧ハッピークレジットの無資力の危険を負わせるのが公平な結論であり,逆に,過払金返還債務を免責するというのは当事者間の公平を著しく害する。 (エ)過払金返還債務の存在についての悪意控訴人は,旧ハッピークレジットの貸付けが利息制限法を超える利率においてなされていたことを知っていたのであるから,過払金返還債務の存在について悪意であり,過払金返還債務を営業の譲受価格に反映さ 悪意控訴人は,旧ハッピークレジットの貸付けが利息制限法を超える利率においてなされていたことを知っていたのであるから,過払金返還債務の存在について悪意であり,過払金返還債務を営業の譲受価格に反映させることができた。したがって,本件営業譲渡時に過払金について知り得なかった被控訴人ら顧客の不測の損害において,控訴人が過払金返還債務を免れるという利益を得ることは,当事者間の公平に反する。 (オ)本件営業譲渡直後の控訴人による過払金支払等の矛盾挙動控訴人は,平成12年ころから平成18年の本件訴訟継続中までの間継続的に,訴え提起後に過払金及び過払利息を満額支払うという内容の訴訟外和解をしている。控訴人が,本件営業譲渡直後には旧ハッピークレジットからの過払金返還債務の承継を認めておきながら,後日になって訴訟リスクを判断しながら過払金返還債務を承継しない旨を主張することは,矛盾挙動である。 (4)争点(1)エ(過払金返還債務の利息の利率)について- 18 -(被控訴人の主張)ア旧ハッピークレジット及び控訴人は悪意の受益者であるから,過払金返還債務の利息の利率は商事法定利率の年6分である。 控訴人は,旧ハッピークレジット及び控訴人における取引へのみなし弁済規定の適用についてその主張立証を何らしていない。本件各金銭消費貸借取引が利息制限法所定の利息を超えた約定利息によってなされていたことは当事者間に争いがないから,旧ハッピークレジット及び控訴人は民法704条の悪意の受益者である。 イ被控訴人は,商人として過払金を貸金に充当することによって運用し,利益を上げていたのであるから,悪意の受益者として,過払金返還債務につき商事法定利率年6分の割合による利息を支払う義務を負う。 したがって,平成18年3月10日までの既発生利息の合計は,別紙1のとおり,3 上げていたのであるから,悪意の受益者として,過払金返還債務につき商事法定利率年6分の割合による利息を支払う義務を負う。 したがって,平成18年3月10日までの既発生利息の合計は,別紙1のとおり,31万5504円となる。 ウよって,被控訴人は,控訴人に対し,民法704条の不当利得返還請求権に基づき,上記過払金元金70万1491円と平成18年3月10日までの既発生利息31万5504円及び同過払金元金に対する同月11日から支払済みまで年6分の割合による利息の支払を求める。 (控訴人の主張)ア過払金返還債務の利息の利率についての被控訴人の主張は争う。控訴人が過払金につき不当利得返還債務を負うとしても,旧ハッピークレジット及び控訴人は悪意の受益者ではなく,その利息の利率は民事法定利率の年5分である。 イ民法704条の悪意立証の対象としては,問題とされる金銭消費貸借の借入残高がゼロになっていることを貸金業者が認識していたことまでが含まれる。 本件営業譲渡では,旧ハッピークレジットの一切の債務を承継しないこ- 19 -とを前提とするスキームが実行されており,控訴人は,旧ハッピークレジットの過払金返還債務の存否を含む債務の状況について調査する必要も義務もなかったし,限られた時間の中で5万件にも及ぶ譲渡債権につき,個別に取引経過を調査の上みなし弁済という法的判断を行うことなど不可能であったから,悪意でなかったことは明らかである。 ウ仮に控訴人が悪意であったとしても,利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての過払金返還債務は,法律の規定によって発生する債権であるから,その悪意の受益者が支払うべき利息の利率は民事法定利率の年5分である。 (5)争点(1)(控訴人が旧ハッピークレジットとの間の取引履歴を開示しなかったことで,被控訴 によって発生する債権であるから,その悪意の受益者が支払うべき利息の利率は民事法定利率の年5分である。 (5)争点(1)(控訴人が旧ハッピークレジットとの間の取引履歴を開示しなかったことで,被控訴人に対し不法行為の損害賠償責任を負うか)について(被控訴人の主張)ア被控訴人代理人弁護士は,控訴人に対し,平成16年8月19日,同年11月12日,同年12月1日,平成17年5月9日に取引履歴の開示を求めているが,控訴人は,平成16年11月18日付けでようやく平成6年11月30日以降の取引履歴を開示したにとどまり,平成17年12月7日の原判決言渡し後まで,それ以前の取引履歴を開示しなかった。 取引履歴を開示しなかったことについては,擬制自白が成立している。 イ貸金業者は,金銭消費貸借契約の契約上の付随義務として,顧客から取引履歴の開示を求められた場合には,特段の事情のない限り信義則上これを開示すべき義務を負うのであり,本件営業譲渡により金銭消費貸借契約の貸主の立場を旧ハッピークレジットから承継した控訴人についても,当然に開示義務を負っている。 したがって,控訴人が,旧ハッピークレジットと被控訴人との間の取引履歴を開示しなかったことは違法であり,被控訴人に対し不法行為の損害賠償責任を負う。 - 20 -ウ取引履歴非開示による損害額被控訴人は,控訴人の一連の取引履歴の開示に対する消極的な対応により,過払金確定が困難となり,早期の過払金回収による円滑な債務整理を阻害され,少なくとも10万円の精神的苦痛を被った。また,被控訴人は控訴人の取引経過非開示により弁護士に依頼することを余儀なくされ,弁護士費用相当額の損害を被ったが,弁護士費用は5万2500円を下らない。なお,控訴人は,原判決が言い渡された後の平成17年12月19日に,代理人弁護士を通 より弁護士に依頼することを余儀なくされ,弁護士費用相当額の損害を被ったが,弁護士費用は5万2500円を下らない。なお,控訴人は,原判決が言い渡された後の平成17年12月19日に,代理人弁護士を通じて,突然取引履歴の開示として平成3年3月13日以降の「元利金計算書」(証拠略)を送付してきた。しかし,仮に元利金計算書の記載内容が真実の取引経過であったとしても,被控訴人が主張する損害は既に発生済みであるから,解消されることはない。 エよって,被控訴人は控訴人に対し,民法709条の損害賠償請求権に基づき,慰謝料等15万2500円及びこれに対する訴状送達の翌日である平成17年6月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (控訴人の主張)ア貸金業者から営業譲渡がなされ,営業譲受人に過払金返還債務が承継されず,かつ,当該事実を顧客に対抗できる場合は,顧客は,営業譲受人と顧客との間の取引に関して発生した過払金返還請求権を営業譲受人に対して行使できる余地はないことから,営業譲受人としては,営業譲渡人と顧客との間の取引履歴を開示すべき義務を負わないと解すべきである。貸金業者の取引履歴の開示義務を認めた最高裁判所第3小法廷平成17年7月19日判決は,現に取引関係のあった貸金業者とその顧客の間での義務を問題としたにすぎず,本件のような場合については射程外である。 イしたがって,控訴人は旧ハッピークレジットと被控訴人との間の取引履歴を開示する義務は負っておらず,非開示が不法行為になることはない。 - 21 -ウ被控訴人の損害の主張は否認する。 控訴人は,既に旧ハッピークレジットと被控訴人の全取引履歴を開示済みであるから,被控訴人には慰謝されるべき損害等は発生していない。 第3当裁判所の判断1争点(1)ア(被控訴人と の主張は否認する。 控訴人は,既に旧ハッピークレジットと被控訴人の全取引履歴を開示済みであるから,被控訴人には慰謝されるべき損害等は発生していない。 第3当裁判所の判断1争点(1)ア(被控訴人と旧ハッピークレジットとの間の取引経過)について(1)被控訴人は,被控訴人と旧ハッピークレジットとの間の取引経過は,別紙1における平成6年11月30日から平成12年4月24日の該当欄に記載のとおりであると主張する。 まず,被控訴人は,この点に関し,原審において擬制自白が成立しておりその撤回は認められないと主張している。しかし,擬制自白の効果が確定的に生じるのは事実審の最終口頭弁論終結時であり,それ以前であれば当事者はいつでも争うことができるから,第1審において擬制自白が成立した事実についても,当事者が控訴審で争えば,控訴審における擬制自白は成立しないというべきである。擬制自白には,裁判上の自白と異なり当事者を拘束する力はなく,撤回という問題は生じない。これと異なる被控訴人の主張は採用できない。 (2)以上を前提に,被控訴人と旧ハッピークレジットとの間の取引経過について検討するに,甲5及び弁論の全趣旨によると,被控訴人が主張する別紙1の取引経過は,平成16年11月18日付けで控訴人から開示された平成6年11月30日以降の取引分について,その当初残高をゼロにして作成されたものと認められるから,その内容が被控訴人と旧ハッピークレジットとの全取引経過を正確に反映しているとは認め難い。一方,控訴人は,被控訴人と旧ハッピークレジットとの間の取引経過は別紙2のとおりであると主張して元利金計算書を提出する。なお,別紙2記載の過払金返還債務の額は,悪意の受益者としての利息を付さずに算出されたものである。 そして,控訴人は,顧客との取引履歴を業として管理しているの であると主張して元利金計算書を提出する。なお,別紙2記載の過払金返還債務の額は,悪意の受益者としての利息を付さずに算出されたものである。 そして,控訴人は,顧客との取引履歴を業として管理しているのであるし- 22 -後記のとおり成立の認められる被控訴人の「会員カード」(証拠略)には,被控訴人と旧ハッピークレジットの初回取引が平成3年3月13日に開始され,同日20万円の与信,平成4年9月18日に15万円の与信,平成5年8月21日に20万円の与信,平成6年7月22日に30万円の与信が決定された旨記載されていて,乙13の内容はこれと符合しているから正当なものと評価できる。なお,平成4年9月になされた15万円の貸付けについては,元利金計算書では同月21日の欄に記載されているが,これは,同月18日に与信決定されたものが同月21日実際に貸し付けられたものと考えられる。 したがって,被控訴人と旧ハッピークレジットの取引経過は元利金計算書のとおりであったと認められ,平成12年6月1日の本件営業譲渡の時点において既に約27万円の過払金返還債務が発生していたといえる。 (3)これに対し,被控訴人は,元利金計算書の内容が真実であるなら過払金返還債務の額が減るから控訴人は原審で開示したはずであるし,会員カードの作成者や作成経緯は明らかではないとして,元利金計算書の内容は信用できないなどと主張する。しかし,控訴人はそもそも旧ハッピークレジットの過払金返還債務を承継しない旨主張しているのであるから,過払金返還債務を承継するものとして額を比較している被控訴人の主張はその前提を欠く。また,乙24はその方式及び趣旨から旧ハッピークレジットの社員が顧客管理のために作成したもので,その成立が認められるから,被控訴人の上記主張は採用できない。 (4)一方,被控訴人は,前 前提を欠く。また,乙24はその方式及び趣旨から旧ハッピークレジットの社員が顧客管理のために作成したもので,その成立が認められるから,被控訴人の上記主張は採用できない。 (4)一方,被控訴人は,前記第2の2(6)のとおり,旧ハッピークレジットの営業譲渡に伴い,貸主たる地位を譲り受けた控訴人に対し,平成12年6月6日から平成15年11月28日までの約3年半の間,別紙1「弁済額」欄記載のとおり,17回にわたり返済のみを繰り返している。 そして,別紙1の上記部分と別紙2の取引経過をあわせると,別紙3とな- 23 -るので,被控訴人と旧ハッピークレジット及び控訴人との間の本件営業譲渡の前後を通じての一連の取引経過は,別紙3の「貸付額」及び「弁済額」のとおりであると認められる。 争点(1)イ(控訴人による過払金返還債務の承継の有無)について(1)被控訴人は,本件営業譲渡において,譲受人である控訴人が,譲渡人である旧ハッピークレジットの商号を続用しているから,商法26条1項に基づき,旧ハッピークレジットの営業により生じた被控訴人に対する過払金返還債務を承継したと推定されると主張し,これに対し,控訴人は,本件営業譲渡の時点で旧ハッピークレジットが被控訴人に対して負っていた過払金返還債務については承継しない旨の合意が成立しているから,上記債務を承継しないと主張する。 そこで検討するに,営業譲渡がなされた場合には,営業譲渡契約に別段の定めがなければ,営業に属する一切の積極及び消極財産が,当事者間において移転の対象とされているものと解されるもっとも,本件営業譲渡契約書。 (証拠略)によれば,本件営業譲渡契約では,旧ハッピークレジットの負債につき,[1]控訴人は,基準日現在の残高相当額で,本契約別表1の譲渡資産・負債目録に記載する旧ハッピークレジッ 業譲渡契約書。 (証拠略)によれば,本件営業譲渡契約では,旧ハッピークレジットの負債につき,[1]控訴人は,基準日現在の残高相当額で,本契約別表1の譲渡資産・負債目録に記載する旧ハッピークレジットの顧客預り金及び顧客前受収益に関する債務を引き継いだ金額を限度として,免責的に引き受けること(第2条2.2(1)),[2]控訴人は,本第2.2条(1)に掲げる負債を除き旧ハッピークレジットの債務につき,一切引き受けないこと(第2条2.2(2))が合意されている。そして,旧ハッピークレジット(代表取締役B)と控訴人(代表取締役A)間の平成12年7月26日付「預り金及び前払利息に関する覚書」(証拠略)によると,同条項によって控訴人が引き受けることとされた「顧客預り金」及び「顧客前受収益」は全店舗分で149万6951円にすぎないので,これらの金員に,顧客との間で生じている過払金返還債務は含まれていないものと推認できる。 - 24 -また,旧ハッピークレジットが消費者金融業者として利息制限法所定の制限利率を超える約定利息・遅延損害金のもとで貸金業の営業を行っていた者である以上,その営業を譲り受ける控訴人としても,旧ハッピークレジットの負債として相当額の過払金返還債務が存在していることは当然に予測していたと考えられ,本件営業譲渡契約もそれを前提に締結されているとみるのが相当である。 以上によると,本件営業譲渡契約書の上記第2条2.2(2)の条項は,商号続用の場合に譲渡人の営業に因り生じた債務について営業の譲受人もまたその弁済の責めに任ずる旨を規定した商法26条1項を前提とした上で,過払金返還債務を含む旧ハッピークレジットの債務について,営業譲渡の当事者間では,控訴人が引き受けないことを合意した約定であると解される。 したがって,本件営業譲渡契約にお 6条1項を前提とした上で,過払金返還債務を含む旧ハッピークレジットの債務について,営業譲渡の当事者間では,控訴人が引き受けないことを合意した約定であると解される。 したがって,本件営業譲渡契約において,控訴人と旧ハッピークレジットとの間では,旧ハッピークレジットの過払金返還債務を控訴人が承継しない旨の合意があり,営業譲渡の授受当事者間で,過払金返還債務は移転の対象にされなかったものと認められる。 (2)これに対し,被控訴人は,過払金返還債務は貸付債権と不可分一体であるから,貸主たる地位を譲り受けておきながら過払金返還債務のみを引き受けないとすることはできない旨主張する。しかし,金銭消費貸借契約に基づく借入金の返済により発生する過払金返還債務は,同契約の効果として発生するものではなく,同契約の存在を前提とするものの,これとは別個独立に法定の要件を満たすことにより発生するものであるから,貸付債権と不可分一体のものとは考えられない。したがって,営業譲渡の授受当事者間において貸付債権の貸主たる地位を譲り受ける一方で,当時存在していた過払金返還債務について引き受けないとする合意ができないとは解されないから,被控訴人の上記主張は採用できない。 また,被控訴人は本件営業譲渡契約書における第3条3.2(2)<6>- 25 -などの規定からすれば,控訴人が過払金返還債務を承継することが当然の前提とされたものと合理的に解釈されると主張する。しかし,本件営業譲渡契約書(証拠略)によれば,同規定は,譲渡対価等の支払につき最終支払額の算出方法を定めた規定であり,「基準日後二ヶ月以内に,本営業無担保貸付債権の口座内容が変化し,下記のいずれかに該当すると甲が認識したときは当該債権の元金残高相当額(本第3.2条(2)<6>については,控訴人の返還にかかる額も追加 準日後二ヶ月以内に,本営業無担保貸付債権の口座内容が変化し,下記のいずれかに該当すると甲が認識したときは当該債権の元金残高相当額(本第3.2条(2)<6>については,控訴人の返還にかかる額も追加的に含めるものとする。)を控除する。」とし,下記として「<1>介入口座,<2>詐欺口座,<3>死亡口座,<4>逮捕口座,<5>逃亡口座,<6>過払返還請求を受けた債権,<7>その他債権回収に困難をきたすものとして,控訴人が合理的に判断する上記<1>乃至<7>に準ずる債権。」を挙げていることが認められる。そうすると,同規定は,基準日後一定の期間において譲受対象債権のうち債権回収が困難と認められたものにつき,営業譲渡価格に反映させるために置かれたものと解されるから,これだけをもって過払金返還債務を承継することが当然の前提とされていたと解釈することは困難である。その他,過払金返還債務を承継している根拠として被控訴人が主張している諸点は,いずれも過払金返還債務を承継するか否かと直接には関係がないといわざるを得ず,いずれも採用できない。 争点(1)ウ(控訴人は,旧ハッピークレジットの過払金返還債務を本件免責登記により承継しないとして被控訴人に対抗できるか)について(1)四日市駅前店の商法10条の支店の該当性,及び本件免責登記の効力ア前記第2の2(5)のとおり,控訴人は旧ハッピークレジットの商号を続用しているため,本件営業譲渡契約によって営業譲渡の授受当事者間において過払金返還債務を承継しない旨の合意があったとしても,それを被控訴人に対抗できず,商法26条1項により支払義務を負うかが問題となる。 - 26 -この点,控訴人は,商法26条2項に基づき,本件免責登記を営業譲渡後遅滞なく行っているとして免責される旨主張するが,被控訴人は,被控訴人と 条1項により支払義務を負うかが問題となる。 - 26 -この点,控訴人は,商法26条2項に基づき,本件免責登記を営業譲渡後遅滞なく行っているとして免責される旨主張するが,被控訴人は,被控訴人と取引のあった控訴人の四日市駅前店は支店としての実質を有し,同支店での免責登記がなされていない以上,商法10条,12条,13条により本件免責登記によって免責されることはない旨主張する。 そこで,四日市駅前店に支店としての実質があるかについて検討する。 イ被控訴人は,四日市駅前店が支店である事実についても擬制自白の成立を主張しているが,擬制自白に拘束力がないことは前記のとおりである。 ところで,第2の2(3)のとおり,旧ハッピークレジットが作成した金銭消費貸借包括契約証書(証拠略)では四日市駅前店は「四日市支店」と表記されているし,本件営業譲渡に当たり控訴人が旧ハッピークレジットとの間で締結した平成12年7月26日付「預り金及び前払利息に関する覚書」(証拠略)には「四日市支店」との記載があることからすると,旧ハッピークレジットでは,四日市駅前店は「四日市支店」と呼称されていたものと推認できる。しかし,証拠(略)によれば,四日市駅前店は,本件営業譲渡の後,控訴人の組織上は他の店舗とともに営業2課に所属する扱いとなっており,店長を含め従業員は5名であること,物的設備としては店頭窓口・自動契約受付機・ATMがあること,貸付けに関しては,本社の貸付基準に基づいて最大50万円までしかすることができず,同額以上の貸付けについては本社営業部の決裁が必要とされていること,日常の文房具等のごく少額の経費の支払は独自にするものの,従業員の給料の支払はもとより,家賃や水道光熱費等その他の経費の支払はすべて本社で行っていること,月に1度は営業2課の課長が貸付内容や運営の 日常の文房具等のごく少額の経費の支払は独自にするものの,従業員の給料の支払はもとより,家賃や水道光熱費等その他の経費の支払はすべて本社で行っていること,月に1度は営業2課の課長が貸付内容や運営のチェックに訪れるほか日常的に指示を受けていることが認められる。 これらの事実によると,控訴人の四日市駅前店は,店頭窓口・自動契約受付機・ATMを備えただけの単なる店舗であるというべきであり,商法- 27 -10条にいう支店としての実質を備えているとは認められない。 ウ以上によると,控訴人の四日市駅前店は商法10条にいう支店に該当しないから,同店における免責登記がないからといって,本件免責登記の効力を否定することはできない。 (2)本件免責登記による免責の主張は信義則に反し許されないか。 ア次に,被控訴人は,控訴人が本件免責登記によって免責の主張をすることは信義則に反し許されないと主張するので,この点につき検討する。 イ前提となる事実に,証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,本件営業譲渡に関して次の事実が認められる。 (ア)旧ハッピークレジットは,平成11年5月にその主力銀行でありグループ会社であった幸福銀行が経営破綻し,金融再生委員会により管理命令が発せられるとの事態を受けて,信用悪化と資金供給の枯渇が生じ,早晩事業継続が著しく困難になることが必至の状況となった。 そのため,旧ハッピークレジットの有する営業貸付債権が劣化する前に他の事業者に譲渡して引当資産を保全するとともに,顧客の混乱を回避し,従業員を譲渡先に全員再雇用するという営業譲渡の方法による打開策が模索された(証拠略)。 (イ)交渉の結果,アイフル株式会社の100%子会社であった控訴人が,旧ハッピークレジットの営業貸付債権全部と営業承継に必要な固定資産等を譲り受けることとなり,従業員 開策が模索された(証拠略)。 (イ)交渉の結果,アイフル株式会社の100%子会社であった控訴人が,旧ハッピークレジットの営業貸付債権全部と営業承継に必要な固定資産等を譲り受けることとなり,従業員も全員同条件で再雇用することなどを骨子とする本件営業譲渡契約が締結された(証拠略)。 (ウ)本件営業譲渡後も,旧ハッピークレジットから控訴人に四日市駅前店の店舗や従業員はそのまま引き継がれ,控訴人が旧ハッピークレジットの商号を続用して,貸金業の営業を継続した。 控訴人は,本件営業譲渡後,旧ハッピークレジットの顧客と契約書の書換えをすることとし,「契約書/書換え手続のご案内」として,旧ハ- 28 -ッピークレジットから営業債権の譲渡を受け新たにスタートすることになったこと,控訴人が貸主としてこれまでの取引を継続するが,契約変更に伴い上限利率を29.20パーセントに引き下げること,今回契約書の書換えの手続をするため,来店を依頼する旨の案内や貼り紙をした(証拠略)。 (エ)控訴人及び旧ハッピークレジットは,被控訴人に対し,平成12年6月8日付の債権譲渡・譲受通知書(証拠略)を交付し,同通知書には,旧ハッピークレジットの被控訴人に対する貸付債権を同月1日,契約上の地位とともに控訴人が譲り受けたので,譲渡人旧ハッピークレジットに対する支払は弁済の効力を生じない旨,譲受時点での旧ハッピークレジットの被控訴人に対する貸付債権の残元本は19万1934円,利息7273円,遅延損害金410円と記載されていた。 これに対し,被控訴人は,同通知書に事前に印刷されている,上記の債権譲渡及び契約上の地位の移転について異議なく承諾する旨の文言の下の債務者欄の住所,氏名欄に住所,氏名を自署した(証拠略)。 控訴人は,本件営業譲渡後も,上記通知書記載の元本,利息及び遅延損害 の債権譲渡及び契約上の地位の移転について異議なく承諾する旨の文言の下の債務者欄の住所,氏名欄に住所,氏名を自署した(証拠略)。 控訴人は,本件営業譲渡後も,上記通知書記載の元本,利息及び遅延損害金の額を前提として,被控訴人から平成15年11月28日に至るまで弁済を受領し続けた。 (オ)しかしながら,上記債権譲渡・譲受通知書(証拠略)に記載された貸付債権の元本,利息及び遅延損害金の額は,旧ハッピークレジットにおける利息制限法所定の制限利率を超える約定利息・遅延損害金を前提に計算されたものであり,後記のとおり,過払金返還債務の利息の利率を年5分として計算すると,別紙3のとおり,平成12年6月6日時点で利息制限法の制限利率に従い,元本充当計算をすると,旧ハッピークレジットの被控訴人に対する貸付元本は完済され,27万円を超える過払金が生じていた。 - 29 -被控訴人は,控訴人から,そのような過払いの事情を一切知らされることなく,また,その後,控訴人から新たな金銭借入れを行なうなど,消費者金融の利便を何ら受けていないのに,控訴人から請求を受けたため,平成12年6月6日から平成15年11月28日まで17回に亘り合計12万3000円を控訴人に支払った。しかし,被控訴人は,これ以上の控訴人からの利息制限法に反する不当な支払い請求を免れ,債務不存在確認と過払金の返還を請求するため,弁護士に相談して,取引履歴の開示を求めたが,控訴人が応じなかったので,代理人弁護士を選任して本訴を提起するに至った。 (カ)本件営業譲渡後,控訴人が,顧客との間で,旧ハッピークレジットの取引も通算して過払金を支払う内容の訴訟外和解をした事例も複数存在する(証拠略)。 ウ以上を踏まえ検討する。 (ア)上記認定のとおり,本件営業譲渡では,店舗や従業員も含めて旧ハッピーク レジットの取引も通算して過払金を支払う内容の訴訟外和解をした事例も複数存在する(証拠略)。 ウ以上を踏まえ検討する。 (ア)上記認定のとおり,本件営業譲渡では,店舗や従業員も含めて旧ハッピークレジットの営業が控訴人に譲り渡されたため,その前後を通じ,営業の外形は被控訴人を含む顧客にとって特段の変化はなかったと考えられる。そして上記(2)イ(ウ)の案内や貼り紙,さらに同(エ)の債権譲渡・譲渡通知書をみても,旧ハッピークレジットとの間の取引に関連する債務等の帰趨について何ら言及はされていないから,被控訴人を含む顧客としては,旧ハッピークレジットとの間の金銭消費貸借契約が控訴人に移転した以上,旧ハッピークレジットとの間の取引に関連する事項は,全般的に控訴人に移転すると考えるのが通常であると解される。なお旧ハッピークレジットは破産しているから,旧ハッピークレジットに対し過払金返還請求請求権を有する債権者は保護されない状況にある。 (イ)一方,第3の3(2)イ(オ)のとおり,被控訴人と旧ハッピークレ- 30 -ジットとの間の取引では,本件営業譲渡の時点において過払金返還債務が発生していたのであるから,被控訴人に対する貸付債権は既に消滅して存在しなかったものである。そして,控訴人は,自らが消費者金融大手のアイフルの100%子会社であることや,旧ハッピークレジットが消費者金融業として利息制限法の制限利率を超える約定利息・遅延損害金のもとで貸付けを行っていたことから本件営業譲渡の時点において,過払金返還債務が生じている可能性を十分に予想できていたといえる。 それにもかかわらず,控訴人は,本件営業譲渡後も,被控訴人に対し新たな貸付けを行った事実もないのに,旧ハッピークレジットにおける利息制限法所定の利率を超える約定利息・遅延損害金をもとに計算し える。 それにもかかわらず,控訴人は,本件営業譲渡後も,被控訴人に対し新たな貸付けを行った事実もないのに,旧ハッピークレジットにおける利息制限法所定の利率を超える約定利息・遅延損害金をもとに計算した元本利息及び遅延損害金の額を前提として,被控訴人から平成15年11月28日に至るまで利息ないし遅延利息名下に合計12万3000円の弁済を受領し続け,さらに,被控訴人が過払金の返還を求めて本訴を提起した後も,旧ハッピークレジットから承継した顧客データや取引履歴などを,被控訴人の要求にも拘わらず,直ちに開示することはなく,本件営業譲渡後に支払を受けた上記12万3000円を任意に返還する意向を示すだけであった。 (カ)このような控訴人の対応は,旧ハッピークレジットにおける取引と控訴人における取引の一連性,継続性を前提とした上で,控訴人としても旧ハッピークレジットから引き続いて,被控訴人が利息制限法の制限利率を上回る約定利息・遅延損害金を弁済していたことに伴う利益を享受していたものといえる。それに対して,被控訴人が,利息制限法に従い元本充当計算をして,過払金を確定した上,円滑な債務整理を早期に行いたいと希望するのは,消費者金融の顧客として法律上認められた当然の権利行使といえる。ところが,上記のような本件事実関係のもとで,控訴人において,被控訴人から過払金返還請求を受けた途端,旧ハッピ- 31 -ークレジットの過払金返還債務については本件免責登記をもって免責される旨主張することは,本件営業譲渡にあたり,金融再生委員会等が営業譲渡の授受当事者に示唆していたと思われる顧客の混乱の回避の趣旨にも反するものであって,民法1条2項が定める信義に反する権利の行使といわざるを得ない。 また,証拠(略)によると,控訴人は,他事例では旧ハッピークレジットの取引 たと思われる顧客の混乱の回避の趣旨にも反するものであって,民法1条2項が定める信義に反する権利の行使といわざるを得ない。 また,証拠(略)によると,控訴人は,他事例では旧ハッピークレジットの取引も通算して過払金を支払う内容の和解もしているところ,かかる行為からは,控訴人が旧ハッピークレジットの過払金債務を承継したことを自認している態度を看取することができる。 (エ)これらの諸事情からすれば,控訴人が,商法26条2項に基づき,本件免責登記を根拠に,同法1項の適用を排して過払金返還債務を免れる旨主張することは,民法1条2項の信義則に反して許されないものというべきである。 エこれに対し,控訴人は,以下のとおり,控訴人が被控訴人に対し本件免責登記による免責の効果を主張することは信義則に反しない旨主張するので順次,検討する。 (ア)リスク負担について控訴人は,幸福銀行グループの破綻処理の一環として,旧ハッピークレジットの営業資産を譲渡する方針が採られたことから,その要請に応じて同社の資産を譲り受けたものであり,同社と従前から取引関係にあってその破綻リスクを甘受することもやむを得ない被控訴人とは根本的に立場が異なるばかりか,既に適切に評価された譲渡代金を支払っているから,さらに過払金返還債務までを負うこととなれば,二重の金銭負担を強いられることになり,控訴人の負担の下で被控訴人のみが旧ハッピークレジットの他の債権者から抜け駆け的に債権回収を図る結果となり,不公平であると主張する。 - 32 -しかし,控訴人は,消費者金融大手のアイフル株式会社の100%子会社として,旧ハッピークレジットと同じく消費者金融業を永年営んでいることからして,顧客から受領してきた利息制限法に違反する制限超過利息については,同法に基づき元本充当計算をした結果,過払金 0%子会社として,旧ハッピークレジットと同じく消費者金融業を永年営んでいることからして,顧客から受領してきた利息制限法に違反する制限超過利息については,同法に基づき元本充当計算をした結果,過払金があれば顧客には法律上返還を求める権利があることを,本件営業譲渡に際し当然に認識していたものである。そして,控訴人は,本件営業譲渡に際し,旧ハッピークレジットから商号の譲渡も受けて同社の商号を利用し,同社の従前の顧客に対する営業貸付債権の譲渡を受けて消費者金融業を承継したもので,顧客との間では,従前どおり,利息制限法に違反する制限超過利息の支払を受けることを当然の前提として営業を行っていたものである。以上の事実のほかに,本件において認められる控訴人と被控訴人のそれぞれの経済的能力や情報量の差異等を考慮すると,本件営業譲渡が幸福銀行グループの破綻処理の一環であることを考慮しても,控訴人が主張するリスク負担は,顧客である被控訴人ではなく,控訴人において行うべきであると考えられる。 したがって,控訴人が,旧ハッピークレジットから譲渡を受けた被控訴人に対する営業貸付債権について,被控訴人が従前旧ハッピークレジットに支払っていた利息制限法の制限超過利息についての同法に基づく過払金返還債務のみを引き受けないとすることは,消費者金融業を巡る取引における信義則に反すると言わざるをえないから,控訴人の上記主張は採用できない。 (イ)被控訴人による権利行使の機会喪失について控訴人は[1]旧ハッピークレジットから既発生の過払金返還債務を含めた一切の契約関係を引き継ぐように振る舞ったことはなく,[2]そもそも本件営業譲渡に当たり,被控訴人に対する過払金返還債務が現に発生しているか否かの認識はなく,関知もしていかったし,控訴人が- 33 -被控訴人に対し,旧ハ うに振る舞ったことはなく,[2]そもそも本件営業譲渡に当たり,被控訴人に対する過払金返還債務が現に発生しているか否かの認識はなく,関知もしていかったし,控訴人が- 33 -被控訴人に対し,旧ハッピークレジットの破産の事実を秘したことはない上,被控訴人に対してかかる破産の事実について告げるべき法的義務も道義的義務もないと主張する。しかし,前記のとおり,本件営業譲渡の前後の状況からすれば,被控訴人を含む顧客は,旧ハッピークレジットとの間の取引に関連する事項は全般的に控訴人に移転するものと考えるのが通常であり,控訴人としても,貸付債権のみを承継するということを積極的に知らせてはいないのであるから,上記[1]の点は前記判断を左右するものではない。また,上記[2]の点についても,控訴人として過払金返還債務が生じている可能性を十分予想できていたのに,控訴人が本件営業譲渡の際に,被控訴人ら旧ハッピークレジットの顧客に示した案内や貼り紙(証拠略)には,同社が顧客に対し負っている利息制限法に基づく過払金返還債務について控訴人は承継しない旨の説明やそれに対して顧客が行うべき権利保全の対策等の説明は一切記載されていないことに照らすと,同様に前記判断を左右しない。 次に,控訴人は,被控訴人が,旧ハッピークレジットから控訴人への債権譲渡等の説明も受けた上で,債権譲渡の事実を異議なく承諾しているにもかかわらず,かかる事実を一切無視した訴訟活動を行っているから,被控訴人が行う信義則違反の主張こそ禁反言の法理に反すると主張する。確かに,前示のとおり,被控訴人は,平成12年6月8日付の債権譲渡・譲受通知書(証拠略)の,債権譲渡及び契約上の地位の移転につき異議なく承諾する旨の印字された文言下の債務者欄に住所,氏名を自署している。しかし,上記認定事実及び弁論の全趣 2年6月8日付の債権譲渡・譲受通知書(証拠略)の,債権譲渡及び契約上の地位の移転につき異議なく承諾する旨の印字された文言下の債務者欄に住所,氏名を自署している。しかし,上記認定事実及び弁論の全趣旨によると,被控訴人は,平成12年6月当時,利息制限法に基づく元本充当計算の結果を知らずに,控訴人担当者から求められるままに同書面に自署したものと認められるから,上記自署の事実により前記認定は左右されず,控訴人の主張は採用できない。 - 34 -(ウ)控訴人は,本件営業譲渡は相当の対価をもってなされており,本件営業譲渡は詐害行為的ではないと主張する。 しかし,上記認定事実によると,控訴人は,本件営業譲渡において,旧ハッピークレジットの顧客に対する債務を承継しないことにより,同社が受け取った本件営業譲渡の対価は,金融機関に対する弁済にのみ充てられて,被控訴人のような消費者金融の顧客の利息制限法に基づく過払金返還請求権については殆ど弁済を受けられなくなることを十分に認識していたものと認められる。そうだとすると,本件営業譲渡が詐害行為といえなくとも,このような,顧客の利息制限法に基づく制限超過利息の返還請求が妨げられることを認容した上で,控訴人が本件免責登記による免責の効果を主張することは,消費者金融大手のアイフル株式会社の100%子会社で,旧ハッピークレジットと同程度の規模で消費者金融を営む業者としての経営活動における信義則に反すると言わざるを得ないから,控訴人の上記主張は採用できない。 (エ)他事例における和解による解決について控訴人は,他事例における解決は本件における信義則違反の有無を判断するに当たり何らの意味も有しないと主張する。しかし,他事例における解決方法は,控訴人の一般的な態度を示すものであるから,本件においても信義則を判断する ける解決は本件における信義則違反の有無を判断するに当たり何らの意味も有しないと主張する。しかし,他事例における解決方法は,控訴人の一般的な態度を示すものであるから,本件においても信義則を判断する事情として考慮される。 (オ)その他,信義則違反の点に関する控訴人の反論は,上記ウの説示に照らし,いずれも採用できない。 (3)以上の次第で,控訴人は,本件免責登記によっても,被控訴人に対し,本件営業譲渡により旧ハッピークレジットの過払金返還債務を承継しなかったことを対抗できず,同債務を支払う義務を負う。 争点(1)エ(過払金返還債務の利息の利率)について(1)旧ハッピークレジット及び控訴人の悪意- 35 -ア平成12年6月8日付の債権譲渡・譲受通知書,会員カード及び弁論の全趣旨によると,旧ハッピークレジット及び旧ハッピークレジットから営業譲渡を受けた控訴人は,被控訴人との間の取引における約定利息,遅延損害金が利息制限法所定の制限利率を超えるものであることを当然に認識していたものと認められる。そして,旧ハッピークレジット及び控訴人のような貸金業者は,顧客から利息制限法所定の利率を上回る約定利率による弁済金を受領する場合,例外的に貸金業法43条1項のみなし弁済規定の適用を受けるのでなければ,利息制限法所定の利率を上回る利息,遅延損害金の約定が無効とされ,その弁済金は同法所定の利率に引き直して計算された利息及び遅延損害金並びに元金に充当されて,いずれ計算上貸付債権が消滅して法律上の原因を欠く利得が発生することを認識,認容しつつ,これを受領しているといえる。 かかる状況のもとでは,旧ハッピークレジット及び控訴人において,みなし弁済規定の適用があることや,同規定の適用があると信じて然るべき事情があることについての主張立証がない限り,弁済金を利 といえる。 かかる状況のもとでは,旧ハッピークレジット及び控訴人において,みなし弁済規定の適用があることや,同規定の適用があると信じて然るべき事情があることについての主張立証がない限り,弁済金を利息制限法所定の利率に引き直して計算した結果,顧客に対する過払金が発生した時点でその弁済金の受領が法律上の原因を欠くものであることにつき悪意であったというべきである。そして,本件では,みなし弁済規定の適用に関する主張立証はないから,旧ハッピークレジット及び控訴人は悪意の受益者であるといえる。 イこれに対し,控訴人は,悪意の受益者といえるためには,問題とされる金銭消費貸借契約の借入残高がゼロになっていることを貸金業者が認識していることが必要であり,本件営業譲渡では,控訴人には旧ハッピークレジットの過払金返還債務につき調査する必要も義務もなく,被控訴人との金銭消費貸借契約の借入残高がゼロになっていることを認識していなかったから悪意ではないなどと主張している。 - 36 -しかし,貸金業法43条のみなし弁済規定の適用を受けない限り,取引が積み重なって,借主が約定の返済を続ければ,利息制限法の適用によりいずれは過払になることが十分予想されるところであるから,計算の結果いつ借入残高がゼロになるかまで認識していなくとも,現に過払となった当初より悪意の受益者になると解される。そして,貸金業者からの営業譲受人である同じく貸金業者である控訴人においても,譲り受けた営業貸付債権が利息制限法の適用により既に存在しない可能性があることは十分予想されるところであるから,現に貸付債権が存在していなければ,営業譲渡を受けて,さらに弁済を受領した当初より悪意の受益者になると解される。したがって,控訴人の上記主張は採用できない。 (2)過払金返還債務の利息の利率被控訴人 に貸付債権が存在していなければ,営業譲渡を受けて,さらに弁済を受領した当初より悪意の受益者になると解される。したがって,控訴人の上記主張は採用できない。 (2)過払金返還債務の利息の利率被控訴人は,控訴人の被控訴人に対する過払金返還義務についての民法704条の利息は商事法定利率である年6分の割合によるべきであると主張する。しかし,利息制限法所定の制限利率を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権は,法律の規定によって発生する債権である。 一方,商法514条の適用又は類推適用されるべき債権は商行為によって生じた債権又はこれに準ずるものでなければならないところ,上記不当利得返還請求権をもって商行為によって生じた債権に準ずるものと解することはできない。 したがって,控訴人の被控訴人に対する過払金返還債務についての利息は民事法定利率である年5分の割合によるべきである。 (3)まとめ以上を踏まえて,控訴人の被控訴人に対する過払金返還債務の額を計算すると,別紙3のとおり,過払金元金が40万0486円,最終取引日である平成15年11月28日から平成18年3月10日までの確定利息が12万7023円となる。よって,控訴人は,被控訴人に対し,これら合計52万- 37 -7509円,及び上記過払金元金40万0486円に対する同月11日から支払済みまで年5分の割合による利息の支払義務を負うことになる。 争点(2)(控訴人が旧ハッピークレジットとの間の取引履歴を開示しなかったことで,被控訴人に対し不法行為の損害賠償責任を負うか)について(1)控訴人の取引履歴の開示義務ア被控訴人は,取引履歴の非開示の事実についても擬制自白の成立を主張しているが,擬制自白に拘束力がないことは前記のとおりである。 もっとも,証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば 人の取引履歴の開示義務ア被控訴人は,取引履歴の非開示の事実についても擬制自白の成立を主張しているが,擬制自白に拘束力がないことは前記のとおりである。 もっとも,証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人代理人弁護士が,控訴人に対し,平成16年8月19日,同年11月12日,同年12月1日,平成17年5月9日に書面により取引経過の開示を求めたこと,控訴人は,平成6年11月30日以降の取引履歴については,平成16年11月18日付けで開示したが,それ以外の部分については,その後2回にわたる開示請求及び本訴の提起にかかわらず,原判決の言渡しに至るまで開示しなかったこと,控訴審から受任した控訴人代理人弁護士が,平成17年12月19日になって,被控訴人代理人弁護士に対し,平成6年11月29日以前の取引履歴をファクシミリで送信して開示したことがそれぞれ認められる。 イ貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上,保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む。)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うものと解すべきである(最高裁判所第3小法廷平成17年7月19日判決)。 このことは,貸金業者から営業譲渡を受けて,営業譲渡人の顧客データとともに同社と顧客との間の取引履歴に関する情報を引き継いだ営業譲受人についても,同様に妥当するものと解される。 - 38 -これを本件についてみるに,控訴人は,前記のとおり旧ハッピークレジットと顧客との間の取引履歴に関する情報を引き継いでいるのであるから信義則上,取引履歴の開示義務を負うと解される。ところが,控訴人は,被控訴人代理人弁護士が被控訴人の円滑な のとおり旧ハッピークレジットと顧客との間の取引履歴に関する情報を引き継いでいるのであるから信義則上,取引履歴の開示義務を負うと解される。ところが,控訴人は,被控訴人代理人弁護士が被控訴人の円滑な債務整理をする目的で本件訴訟を遂行するため4回にわたって書面により開示を求めたにもかかわらず,原判決言渡し後の平成17年12月19日になるまで平成6年11月29日以前の取引履歴を開示しなかった。そのため,被控訴人は,過払金の確定ができず,早期の円滑な債務整理が阻害されたのであるから,このことは被控訴人の人格権・財産権を違法に侵害するもので民法709条の不法行為に当たる。 ウなお,この点に関し,控訴人は,貸金業者から営業譲渡がなされ,営業譲受人に過払金返還債務が承継されず,かつ,当該事実を顧客に対抗できる場合は,営業譲受人としては,営業譲渡人と顧客との間の取引履歴を開示すべき義務を負わないと主張する。しかし,前記第3の3のとおり本件では,控訴人が旧ハッピークレジットの過払金返還債務を承継しないことを被控訴人に対抗できないから,控訴人の上記主張は前提を欠くもので採用できない。 (2)損害の有無及び額前記のとおり,控訴人は,平成6年11月30日以降の取引履歴については,被控訴人代理人の書面による請求を2回受け,初回の請求を受けてから約3か月で開示しているものの,それ以外の部分については,その後2回にわたる書面による開示請求,及び本訴の提起にかかわらず,原判決の言渡し後に至るまで開示しなかったこと,控訴人の負うべき過払金返還債務の元金は原審では約70万円であったのに対し当審では約40万円となるが,これは控訴後に取引履歴を開示した結果であること,その他前記第3の3(2)イ(エ),(オ)の本件営業譲渡後の被控訴人の控訴人に対する弁済状況な- 円であったのに対し当審では約40万円となるが,これは控訴後に取引履歴を開示した結果であること,その他前記第3の3(2)イ(エ),(オ)の本件営業譲渡後の被控訴人の控訴人に対する弁済状況な- 39 -ど,本件に顕れた一切の事情を考慮すると,被控訴人が,控訴人の取引履歴開示義務違反によって被った精神的苦痛を慰謝すべき金額としては10万円が相当である。 また,被控訴人は,上記取引履歴の非開示のため弁護士に依頼して本件訴訟を提起することを余儀なくされたと主張するところ,上記認容された過払金返還請求額や慰謝料相当額及び代理人としての訴訟活動の内容等を検討すると,控訴人の取引履歴の非開示と相当因果関係のある弁護士費用相当額としては5万円が相当である。 これに対し,控訴人は,すべての取引履歴を開示した以上,損害はないと主張するが,開示の時期は原判決言渡し後であることからして,既に被控訴人に損害は生じているというべきであるから,同主張は採用できない。 (3)以上の次第で,控訴人は,被控訴人に対し,取引履歴の非開示による不法行為に基づく損害賠償として,15万円及びこれに対する不法行為後で訴状送達の翌日である平成17年6月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 結論 したがって,被控訴人の本件請求のうち,(1)過払金元金40万0486円最終取引日である平成15年11月28日から平成18年3月10日までの確定利息12万7023円及び上記過払金元金額に対する同月11日から支払済みまで年5分の割合による利息,並びに(2)取引履歴の非開示による不法行為に基づく損害賠償15万円及びこれに対する平成17年6月7日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の請求は理由があるが,その余の部分は理由がない。 よって,本件控訴及 歴の非開示による不法行為に基づく損害賠償15万円及びこれに対する平成17年6月7日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の請求は理由があるが,その余の部分は理由がない。 よって,本件控訴及び附帯控訴に基づき原判決を変更して,被控訴人の控訴人に対する請求を本判決主文第1項(1)の限度で認容し,被控訴人の当審における拡張後の請求を含むその余の請求を棄却し,その余の控訴及び附帯控訴- 40 -はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の負担について民訴法67条,64条を,仮執行の宣言につき同法259条をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 津地方裁判所民事第2部裁判長裁判官水谷正俊裁判官上野泰史裁判官薄井真由子(別紙は省略)

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