平成17年10月25日判決言渡平成12年(行ウ)第42号千葉県に代位して行う損害賠償等請求事件判決 主文 1 原告らの被告Aに対する請求に係る訴えを却下する。 2 原告らのその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,千葉県(以下「県」という。)に対し,連帯して56億0958万6656円及び内28億円に対する平成12年4月1日から,内28億0958万6656円に対する平成13年3月31日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要東京湾北部の千葉県市川市,同県船橋市及び同県浦安市の地先に位置する浅海域である通称三番瀬(以下「三番瀬」という。)海域(市川2期地区等)の埋立計画に関連して,B連合会及びC銀行からE漁協に対して融資された金員の利息を支払うために,E漁協がB連合会から借り受けたことによる債務について,県は,その債務を免責的に引き受けて支払った。これに関して,県の住民である原告らは,当時千葉県企業庁長(以下「企業庁長」という。)であった被告Fがした,県の前記債務引受けした債務に係る支出決定及び支出命令が違法であり,同支出決定及び支出命令について当時千葉県知事(以下「県知事」という。)であった被告A及び被告Fには財務会計上の義務違反があると主張して,平成14年法律第4号による改正前の地方自治法(以下「旧地自法」という。)242条の2第1項4号に基づき,県に代位して,被告らに対し,前記支出決定及び支出命令に基づく支出金相当額の損害賠償金及び支出日の翌日からの遅延損害金の連帯支払を求めた。 1 前提となる事実(1) 当事者等ア原告ら原告らは,いずれも県の住民である。 イ被告ら被告Aは,昭和56年4月から平成13年3月まで,県知事の地位にあった者である。 の連帯支払を求めた。 1 前提となる事実(1) 当事者等ア原告ら原告らは,いずれも県の住民である。 イ被告ら被告Aは,昭和56年4月から平成13年3月まで,県知事の地位にあった者である。また,被告Fは,平成11年4月1日から平成13年4月25日まで,企業庁長の地位にあった者である。 ウ企業庁長と企業庁企業庁長は,地方公営企業法4条に基づいて定められた,「千葉県土地造成整備事業,工業用水道事業等の設置等に関する条例」(以下「条例」という。)2条1項の規定により,県が地方公営企業として設置した土地造成整備事業,工業用水道事業及び鉄道事業の管理者(同法7条ただし書き,条例4条)であり,同法8条1項各号に掲げる事項を除き,土地造成整備事業,工業用水道事業及び鉄道事業の業務を執行し,当該業務の執行に関し県を代表する(同法8条1項本文)。 また,千葉県企業庁(以下「企業庁」という。)は,同法14条の規定により企業庁長の権限に属する事務を処理させるために設けられた組織である(条例5条1項)。 (2) 市川2期地区埋立計画の概要ア企業庁は,昭和49年に発足したが,臨海地域土地造成整備事業(以下「臨海事業」という。)を実施しているところ,これは企業庁の前身の時代からの土地造成整備事業の一つで,東京湾の浦安から富津までの海岸線の埋立造成整備事業を指すものであり,別紙図面1のとおり,19の地区に分かれている。 その一つである市川地区について,その一部(市川1期地区。別紙図面2の「市川(一期)地区」部分。)の造成計画は,昭和44年度から昭和49年度にかけて,千葉県と都心を結ぶ地域として,交通緩和を図る道路(東京湾岸道路)と鉄道(JR京葉線)の用地確保及び関連する業務用地の必要性と市川市における過密化の排除,環境悪化の防止等の都市問題解決のため けて,千葉県と都心を結ぶ地域として,交通緩和を図る道路(東京湾岸道路)と鉄道(JR京葉線)の用地確保及び関連する業務用地の必要性と市川市における過密化の排除,環境悪化の防止等の都市問題解決のための地域開発用地の造成を目的として計画され,埋立てが実施された。この埋立事業は,昭和42年に策定された千葉県第2次総合5か年計画等に基づくものであった。 イ次いで,昭和48年6月,千葉県第4次総合5か年計画が策定され,その中に,計画面積434ヘクタール,5か年計画中の埋立予定面積217ヘクタールの市川2期地区埋立計画(以下「本件埋立計画」という。)が盛り込まれた。その後,昭和51年9月に千葉県新総合5か年計画が策定され,その中で,本件埋立計画は計画面積が157ヘクタールに縮小され,事業計画実施は昭和56年度以降とされた。 なお,市川2期地区は,市川地区2期あるいは市川地区第2期ともいい,浦安2期地区は,浦安地区第2期ともいう。市川2期地区及び浦安2期地区は,別紙図面1,2のとおりである。 (3) E漁協との交渉ア昭和51年ころ,E漁協から企業庁に対し,浦安2期地区埋立事業等による潮回りの変化等を原因として,漁場環境が悪化したとして補償を要求する旨の要望があった。また,昭和51年9月の千葉県新総合5か年計画により,前記(2)イのとおり本件埋立計画が延期されたため,E漁協から企業庁に対し,漁業補償に関する要望があった。 イ(ア) 県とE漁協は,昭和52年5月17日,「漁業権の放棄に伴う損失の補償に関する協定書」により,県が市川地先において市川2期地区土地造成事業を実施するに当たり,E漁協がE漁協の有する漁業権の一部を放棄することによって生ずるE漁協の損失に対する補償に関し,次のとおり協定を締結した。 1条 E漁協は,E漁協及びG漁協の有する共同 地造成事業を実施するに当たり,E漁協がE漁協の有する漁業権の一部を放棄することによって生ずるE漁協の損失に対する補償に関し,次のとおり協定を締結した。 1条 E漁協は,E漁協及びG漁協の有する共同漁業権(共第1号)の一部(現在の免許区域のうち別紙図面3に表示されたア,イ,ウ,エ及びアの各点を順次結んだ線によって囲まれた区域)にかかる一切の権利を昭和52年5月31日限り放棄するものとする。 2条中略3条県は,E漁協が1条に規定する漁業権の一部を放棄することに伴い,通常生ずる損失に対して補償を行うものとし,その補償金の総額は2億6327万2000円とする。 4条中略5条中略6条県は,埋立工事を実施するに当たり,この協定による漁業権の一部の放棄によって変更されたのちの漁業権の区域におけるE漁協の組合員の行う漁業に対して被害を及ぼさないよう十分配慮するものとする。 (イ) 県とE漁協は,昭和52年5月17日,前記(ア)の協定に関し,次のとおり覚書を締結した。 a 県が将来E漁協の有する漁業権漁場について,E漁協に対し漁業権放棄の申入れを行った場合の補償金の算定は,別添「漁種別数量一覧表」(中略)を基礎として行うものとする。 (以下省略)b 県は,E漁協に対し,前記(ア)の協定6条の被害を与えた場合,共同漁業権については県・E漁協協議して被害総額を補償するものとする。 cE漁協は,県の実施する浦安地区第2期土地造成事業,市川地区第2期土地造成事業,漁場環境整備のための澪掘り事業について協力するものとする。 (ウ) 県とE漁協は,昭和52年5月17日,のり生産資材購入資金の融資に関し次のとおり確認した。 a 県は,E漁協に対し,のり生産資材購入資金としてE漁協の有する区画漁業権評価額の27パーセント相当額7億6572万5000円を融 5月17日,のり生産資材購入資金の融資に関し次のとおり確認した。 a 県は,E漁協に対し,のり生産資材購入資金としてE漁協の有する区画漁業権評価額の27パーセント相当額7億6572万5000円を融資する措置を講ずるものとする。 県は,E漁協の前記借入金に対する金利について,E漁協の実質負担にならないよう必要な措置を講ずるものとする。 前記融資措置の時期及び方法等については,県・E漁協協議し別途定めるものとする。 b 県が将来E漁協の有する漁業権漁場について,E漁協に対し漁業権放棄の申入れを行う場合,E漁協は,これに応ずるものとする。 これにより,E漁協が漁業権を放棄する場合,県は,別添「のり生産数量一覧表」(中略)を基礎として,補償金の算定を行うものとする。(以下省略)前記により,県がE漁協に支払う補償金のうち,区画漁業権評価額の27パーセント相当については,前記aに定める融資措置額と同額とするものとする。 c 県は,E漁協に対し,前記(ア)の協定6条の被害を与えた場合,区画漁業権については,被害総額に別添「のり生産数量一覧表」(中略)における融資対象外柵数と被害発生時の実行使柵数との比率を乗じた額を補償するものとする。 (以下省略)ウ(ア) E漁協は,昭和54年5月9日付け文書で,企業庁長に対し,京葉港市民の海辺造成及び市川航路浚渫事業について協力を要請されたが,次の事項について納得できる回答を得られるならば,協力したいとして,・市川航路浚渫によりE漁協の漁場環境はどのように変化するか(従来どおりの漁業ができるか。)。また,この対策はどうするのか。・市川地区事業等の将来計画及び実施時期。・事業計画が実施に移され漁業権が全面的に放棄された後においても,なお漁業継続を希望する組合員があったとき,この対応を示せという意 の対策はどうするのか。・市川地区事業等の将来計画及び実施時期。・事業計画が実施に移され漁業権が全面的に放棄された後においても,なお漁業継続を希望する組合員があったとき,この対応を示せという意向が出た場合はどうするのか。について回答を求めた。 (イ) 企業庁長は,昭和54年5月23日付け文書で,E漁協に対し,回答した。 前記(ア)・については,次のとおりである。すなわち,航路浚渫に伴う漁場への影響は,他の諸要因と相俟って未知の分野が介在し,解明が困難であることから,3月12日県水産部に対し「市川航路浚渫及び市民の海辺造成工事計画に伴う関係漁協対策」について,文書をもってお願いしている。また,当該対策等に必要な経費については,当庁が基本的に負担することになっているので,この中で対応していきたい。 前記(ア)・については,次のとおりである。すなわち,関係機関と協議のうえ,下記のとおり実施したいと考えている。 記a 昭和54年度から昭和56年度環境アセスメント等の調査b 昭和55年度から昭和56年度全面漁業補償交渉の開始及び妥結c 昭和57年度から昭和58年度埋立免許申請など諸手続d 昭和59年度から昭和65年度埋立て,土地造成工事e 土地利用計画終末処理場(約100ヘクタール)を含めた処分用地,海浜公園等。その他,干潟(約150ヘクタール),湿地前記(ア)・については,次のとおりである。すなわち,本件交渉のときにE漁協及び県水産部と十分協議したいと考える。 (4) 三者合意及び転業準備資金の融資ア昭和57年6月8日付け協定県(代表者企業庁長)とE漁協は,昭和57年6月8日,協定書により,市川市地先海面の現状と将来変化を勘案し,E漁協の組合員が将来円滑な転業を図るための準備に要する資金(以下「転業準備 月8日付け協定県(代表者企業庁長)とE漁協は,昭和57年6月8日,協定書により,市川市地先海面の現状と将来変化を勘案し,E漁協の組合員が将来円滑な転業を図るための準備に要する資金(以下「転業準備資金」という。)の融資に関して,次のとおり協定した(以下,この協定を「昭和57年6月8日付け協定」といい,この協定書を「昭和57年6月8日付け協定書」という。)。 1条 E漁協は,E漁協の組合員のうちで昭和57年3月31日現在で転業準備資金の融資を希望する者に対して貸付けを行うものとし,県は,E漁協に対し,E漁協の有する区画漁業権及び共同漁業権(それらの区域は別紙図面2のとおり)の漁場評価額を限度とした原資の融資措置を講ずるものとする。 2項 E漁協は,前項の原資の融資措置に当たっては,E漁協が将来漁業権放棄により受けるべき漁場評価額に基づく補償金相当額を担保とするものとする。 3項 1項に基づく原資の融資措置に関して,必要な事項については県・E漁協協議し,別に定めるものとする。 2条前条1項に規定する漁場評価額については,別途県・E漁協協議し合意書を取り交わすものとする。 3条 E漁協は,県から漁業権放棄の申入れがあったときは,速やかにこれに応ずるものとする。 (中略)県は,E漁協の組合員のうちで,漁業権放棄後も漁業継続を希望する者があった場合は,この取扱いについて,E漁協と十分協議するものとする。 イ昭和57年6月12日付け合意県(代表者企業庁長)とE漁協は,昭和57年6月12日,合意書により,昭和57年6月8日付け協定書2条に基づき,E漁協の有する漁業権の漁場評価額に関し,次のとおり合意した(以下,この合意を「昭和57年6月12日付け合意」といい,この合意書を「昭和57年6月12日付け合意書」という。)。 (ア) 区画漁業権区第 漁協の有する漁業権の漁場評価額に関し,次のとおり合意した(以下,この合意を「昭和57年6月12日付け合意」といい,この合意書を「昭和57年6月12日付け合意書」という。)。 (ア) 区画漁業権区第2号の漁場評価額は,35億0334万円(昭和52年5月17日付けで締結した確認書aに定める漁場評価額の27パーセント相当額7億6572万5000円を含む。)とする。 (イ) G漁協と共有の共同漁業権共第1号の残存漁場評価額(75パーセント相当)は10億5366万円とする。 (ウ) 漁場評価額の合計額は,45億5700万円とする。 ウ昭和57年7月5日付け確認県(代表者企業庁長)とE漁協は,昭和57年7月5日,確認書により,昭和57年6月8日付け協定書に関して,次のとおり確認した(2条1項の組合員数は624名,同条2項の組合員数は106名。以下,この確認を「昭和57年7月5日付け確認」と,4条2項を「利息の実質負担回避の約束」といい,この確認書を「昭和57年7月5日付け確認書」という。)。 1条協定書1条1項の規定に基づく融資限度額については,昭和57年6月12日付け合意書の漁場評価額に基づき,45億5700万円とする。 2条 E漁協は,E漁協の組合員に対して別表1(中略)の融資限度額の範囲内で貸付けを行うものとする。 2項 E漁協は,前項の貸付けを行うに当たり,別表2(中略)の者については,一定額貸付けを保留するものとする。 3条前条1項の貸付けに伴い,E漁協の組合員はE漁協に対して,将来漁業権放棄に伴う補償金の配分相当額を担保に供するものとする。 4条 E漁協は,その借入金について,将来県の行う土地造成事業に伴う漁業権放棄に対し補償金が支払われたときには,速やかにその返済に充てるものとする。 2項県は,E漁協及びE漁協の組合員の借入金に対す 条 E漁協は,その借入金について,将来県の行う土地造成事業に伴う漁業権放棄に対し補償金が支払われたときには,速やかにその返済に充てるものとする。 2項県は,E漁協及びE漁協の組合員の借入金に対する利息について,E漁協及びE漁協の組合員の実質負担とならないような措置を講ずるものとする。 5条前条1項に規定する補償金については,昭和57年6月12日付け合意書並びに県とE漁協の間で昭和52年5月17日付けで締結した覚書及び確認書(前記(3)イ(イ)の覚書及び同(ウ)の確認書)に基づき決定するものとする。 エ本件融資協定(ア) 県(代表者企業庁長),B連合会及びE漁協は,昭和57年7月14日,「転業準備資金の融資に関する協定書」により,昭和57年6月8日付け協定書1条3項の規定に基づく転業準備資金の融資の実施に関し,次のとおり協定を締結した。 1条 B連合会は,E漁協に対し,転業準備資金として22億円を融資するものとする。 2項前項の融資回数は1回とし,融資期間は昭和57年7月15日から昭和58年3月31日までとする。ただし,融資期間については,県・B連合会・E漁協協議のうえ変更できるものとする。 3項 E漁協は,前項の期間が満了したときは,1項の融資額を速やかにB連合会に対し返済するものとする。 2条 B連合会は,前条の融資額に対する融資利率を年6.9パーセントとする。 2項 E漁協は,償還日における融資残額に前項の融資利率を乗じて算出した額を利息としてB連合会に支払うものとする。 3条県は,B連合会が行う1条の融資に当たり,B連合会に対し11億円を預金するものとする。 2項前項の預金期間については,1条2項に定める融資期間とする。 4条 B連合会は,1条に基づく融資が完了したときは,速やかに転業準備資金融資完了報告書(中略)を県 11億円を預金するものとする。 2項前項の預金期間については,1条2項に定める融資期間とする。 4条 B連合会は,1条に基づく融資が完了したときは,速やかに転業準備資金融資完了報告書(中略)を県に提出するものとする。 5条この協定に定めのない事項及び協定の実施に必要な事項は,県・B連合会及びE漁協で協議して別途定めるものとする。 (イ) 県(代表者企業庁長),C銀行及びE漁協は,昭和57年7月14日,「転業準備資金の融資に関する協定書」により,昭和57年6月8日付け協定書1条3項の規定に基づく転業準備資金の融資の実施に関し,次のとおり協定を締結した。 1条 C銀行は,E漁協に対し,転業準備資金として20億9750万円を融資するものとする。 2項前項の融資回数は1回とし,融資期間は昭和57年7月15日から昭和58年3月31日までとする。ただし,融資期間については,県・C銀行・E漁協協議のうえ変更できるものとする。 3項 E漁協は,前項の期間が満了したときは,1項の融資額を速やかにC銀行に対し返済するものとする。 2条前条の融資額に対する融資利率を年6.9パーセントと定める。 2項 E漁協は,C銀行からの融資金に前項の融資利率を乗じた利息を償還日にC銀行に支払うものとする。 3条県は,C銀行が行う1条の融資に当たり,C銀行に対し7億円を預金するものとする。 2項前項の預金期間については,1条2項に定める融資期間とする。 4条 C銀行は,1条に基づく融資が完了したときは,速やかに転業準備資金融資完了報告書(中略)を県に提出するものとする。 5条この協定に定めのない事項及び協定の実施に必要な事項は,県・B連合会及びE漁協で協議して別途定めることとする。 (以下,前記(ア)及び(イ)の協定を一括して「本件融資協定」と,この協定による一連の措 この協定に定めのない事項及び協定の実施に必要な事項は,県・B連合会及びE漁協で協議して別途定めることとする。 (以下,前記(ア)及び(イ)の協定を一括して「本件融資協定」と,この協定による一連の措置を「本件融資措置」と,前記(ア)及び(イ)の協定書を一括して「昭和57年7月14日付け本件融資協定書」と,前記アないしエの一連の協定,合意,確認を「三者合意」という。)オ本件融資協定に基づく融資の実行本件融資協定に基づき,昭和57年7月,E漁協に対して,転業準備資金として,B連合会から22億円,C銀行から20億9750万円の合計42億9750万円(以下「本件転業準備資金」という。)が融資された(以下「本件融資」という。)。その際,県は,各金融機関に対し,融資総額の一定割合(B連合会に対しては2分の1,C銀行に対してはほぼ3分の1)を預金した。 カ本件融資後の合意等(融資期間の延長,利息に関する合意,融資金融機関の一本化)本件融資後,本件埋立計画の確定に向けた作業が続けられたが,計画のとりまとめに時間を要したこと等から,前記エ(ア)の協定1条2項の融資期間は,平成13年3月27日時点で30数回延長され,前記エ(イ)の協定1条2項の融資期間は,平成2年10月30日時点で10数回延長された。 また,前記エ(イ)の協定については,県,B連合会及びE漁協は,平成3年3月28日,同趣旨の「転業準備資金の融資に関する協定書」により,昭和57年6月8日付け協定書1条3項の規定に基づく転業準備資金の融資に関し,協定を締結し,実質的には金融機関がC銀行からB連合会に変更となり,融資金融機関がB連合会に1本化された。その後,この協定1条2項の融資期間は,平成13年3月27日時点で20数回延長された。 そして,利息については,前記融資期間の延長の都度,そ 合会に変更となり,融資金融機関がB連合会に1本化された。その後,この協定1条2項の融資期間は,平成13年3月27日時点で20数回延長された。 そして,利息については,前記融資期間の延長の都度,その当時の金利情勢に応じて利率の改定が行われた。 (5) 免責的債務引受け(E漁協の利息負担回避措置)ア E漁協の県に対する要望(これは「利息の実質負担回避の約束」の履行を要望するもの)を受けて,県(代表者企業庁長),B連合会及びE漁協は,昭和63年3月30日,「転業準備資金の融資に伴う利息に関する協定書」により,昭和57年6月8日付け協定書,昭和57年7月5日付け確認書,昭和57年7月14日付け本件融資協定書等に基づいて実施した本件融資に伴う利息の負担に関し,次のとおり協定を締結した。 1条県は,E漁協がB連合会及びC銀行より転業準備資金の原資の融資を受けたことにより発生する利息を支払うために,B連合会から借り受け,E漁協の債務となっている額を引き受けるものとする。 2項前項の債務は,昭和57年7月15日より昭和61年10月31日までの期間に発生した利息のうち,E漁協がB連合会から借り受けた13億8330万円とし,E漁協はB連合会の当該債務を免れるものとする。 3項昭和61年11月1日から昭和63年12月31日までの融資期間が満了し,E漁協がB連合会及びC銀行に本件融資を返済したときまでに発生した利息については,別途県,B連合会及びE漁協との間で利息の負担に関する協定を締結し,県は,E漁協のB連合会に対する債務を引き受けるものとする。 2条県が,前条2項及び3項の規定によりE漁協から引き受け,又は引き受けることとなる債務は,別途県及びB連合会との協議により支払うものとする。 3条県,B連合会及びE漁協との間で締結された昭和57年7月1 ,前条2項及び3項の規定によりE漁協から引き受け,又は引き受けることとなる債務は,別途県及びB連合会との協議により支払うものとする。 3条県,B連合会及びE漁協との間で締結された昭和57年7月14日付け本件融資協定書については,本件転業準備資金の融資期間満了時まで継続する。 イ E漁協の県に対する要望を受けて,県(代表者企業庁長),B連合会及びE漁協は,平成3年3月28日,「転業準備資金の融資に伴う利息に関する協定書」により,昭和57年6月8日付け協定書,昭和57年7月5日付け確認書,昭和57年7月14日付け本件融資協定書等に基づいて実施した本件融資に伴う利息の負担に関し,次のとおり協定を締結した。 1条県は,E漁協がB連合会及びC銀行より転業準備資金の原資の融資を受けたことにより発生する利息を支払うために,B連合会から借り受け,E漁協の債務となっている額を平成3年3月29日に引き受けるものとする。 2項前項の債務は,昭和61年10月31日から平成2年10月31日までの期間に発生した利息のうち,E漁協がB連合会から借り受けた10億7710万円とし,E漁協はB連合会の当該債務を免れるものとする。 2条県が,前条2項の規定により引き受けたB連合会の貸付債権の貸付期間は,平成3年10月31日までとする。ただし,貸付期間については,県,B連合会及びE漁協協議のうえ変更できるものとする。 2項県は,前項の期間が満了したときは,1項の貸付金を県,B連合会協議のうえ,B連合会に支払うものとする。 3項 1項の貸付金の利率は年7.06パーセントとする。 3条県,B連合会及びE漁協の間で締結された昭和57年7月14日付け本件融資協定書については,合意書に定める転業準備資金の貸付期間満了時まで継続する。 4条平成2年10月31日から本件転業準備資 3条県,B連合会及びE漁協の間で締結された昭和57年7月14日付け本件融資協定書については,合意書に定める転業準備資金の貸付期間満了時まで継続する。 4条平成2年10月31日から本件転業準備資金の融資期間満了時までに発生した利息については,別途県,B連合会及びE漁協との間で利息の負担に関する協定を締結し,県はE漁協のB連合会に対する債務を引き受けるものとする。 ウ E漁協の県に対する要望を受けて,県(代表者企業庁長),B連合会及びE漁協は,平成6年12月15日,「転業準備資金の融資に伴う利息に関する協定書」により,昭和57年6月8日付け協定書,昭和57年7月5日付け確認書,昭和57年7月14日付け本件融資協定書,前記イの協定書等に基づいて実施した本件融資に伴う利息の負担に関し,次のとおり協定を締結した。 1条県は,E漁協がB連合会及びC銀行より転業準備資金の原資の融資を受けたことにより発生する利息を支払うために,B連合会から借り受け,E漁協の債務となっている額を平成6年12月26日に引き受けるものとする。 2項前項の債務は,平成2年10月31日から平成6年10月31日までの期間に発生した利息のうち,E漁協がB連合会から借り受けた11億2400万円とし,E漁協はB連合会の当該債務を免れるものとする。 2条県が,前条2項の規定により引き受けたB連合会の貸付債権の貸付期間は,平成7年4月28日までとする。ただし,貸付期間については,県,B連合会及びE漁協協議のうえ変更できるものとする。 2項県は,前項の期間が満了したときは,1条の貸付金を県,B連合会協議のうえ,B連合会に支払うものとする。 3項 1条の貸付金の利率は年4.10パーセントとする。 3条県,B連合会及びE漁協の間で締結された昭和57年7月14日付け本件融資協定書について B連合会協議のうえ,B連合会に支払うものとする。 3項 1条の貸付金の利率は年4.10パーセントとする。 3条県,B連合会及びE漁協の間で締結された昭和57年7月14日付け本件融資協定書については,合意書に定める転業準備資金の貸付期間満了時まで継続する。 4条平成6年10月31日から本件転業準備資金の融資期間満了時までに発生した利息については,別途県,B連合会及びE漁協との間で利息の負担に関する協定を締結し,県はE漁協のB連合会に対する債務を引き受けるものとする。 エ E漁協の県に対する要望を受けて,県(代表者企業庁長),B連合会及びE漁協は,平成11年3月26日,「転業準備資金の融資に伴う利息に関する協定書」により,昭和57年6月8日付け協定書,昭和57年7月5日付け確認書,昭和57年7月14日付け本件融資協定書,前記イの協定書等に基づいて実施した本件融資に伴う利息の負担に関し,次のとおり協定を締結した。 1条県は,E漁協がB連合会より転業準備資金の原資の融資を受けたことにより発生する利息を支払うために,B連合会から借り受け,E漁協の債務となっている額を平成11年3月26日に引き受けるものとする。 2項前項の債務は,平成6年10月31日から平成10年10月30日までの間に発生した利息のうち,E漁協がB連合会から借り受けた5億2640万円とし,E漁協はB連合会の当該債務を免れるものとする。 2条県が,前条2項の規定により引き受けたB連合会の貸付債権の貸付期間を平成11年10月29日までとする。ただし,貸付期間については,県,B連合会及びE漁協協議のうえ変更できるものとする。 2項県は,前項の期間が満了したときは,1条の貸付金を県,B連合会協議のうえ,B連合会に支払うものとする。 3項 1条の貸付金の利率は年1.400パーセントと E漁協協議のうえ変更できるものとする。 2項県は,前項の期間が満了したときは,1条の貸付金を県,B連合会協議のうえ,B連合会に支払うものとする。 3項 1条の貸付金の利率は年1.400パーセントとする。 3条県,B連合会及びE漁協の間で締結された昭和57年7月14日付け本件融資協定書については,合意書に定める転業準備資金の貸付期間満了時まで継続する。 4条平成10年10月30日から本件転業準備資金の融資期間満了時までに発生した利息については,別途県,B連合会及びE漁協との間で利息の負担に関する協定を締結し,県はE漁協のB連合会に対する債務を引き受けるものとする。 (以下,前記アないしエの4回の債務引受けを一括して「本件各債務引受け」といい,これにより県が引き受けた債務を「本件各引受債務」という。)オ本件各引受債務については,県,B連合会間の合意書及び同合意書の一部変更に関する合意書並びに県,B連合会及びE漁協間の「転業準備資金の融資に伴う利息に関する協定書(一部変更)」により,支払期日が延長され,その間の利率が変更された。 以上により,平成11年10月29日時点における県の本件各引受債務額は合計55億3990万2340円(1回目の債務引受けにつき,元本13億8330万円・利息8億6578万6451円。2回目の債務引受けにつき,元本10億7710万円・利息4億1349万6695円。3回目の債務引受けにつき,元本11億2400万円・利息1億4543万7816円。4回目の債務引受けにつき,元本5億2640万円・利息438万1378円。)に達した。 (6) 本件各引受債務に係る予算措置及び支出ア平成11年度支出(ア) 予算措置本件各引受債務については,昭和57年度以降,臨海事業に係る継続費(地方自治法212条)として,県の予算に計 た。 (6) 本件各引受債務に係る予算措置及び支出ア平成11年度支出(ア) 予算措置本件各引受債務については,昭和57年度以降,臨海事業に係る継続費(地方自治法212条)として,県の予算に計上されていたが,平成11年度と平成12年度の2か年度に分割して支出予算に計上されることになった。 平成12年3月22日,本件各引受債務に係る支出予算を計上した平成11年度補正予算案及び平成12年度当初予算案が千葉県議会(以下「県議会」という。)で可決された。 平成11年度補正予算に計上された支出予算額は,県が負担した債務額のうち28億円(浦安2期地区事業費21億円,京葉港地区事業費7億円)で,平成12年度当初予算に計上された支出予算額は,平成12年度末に支払った場合を見込んで,平成12年度未まで利率年1.735パーセントにより返済期日を延長した場合の債務残額(見込み)28億2870万1000円(浦安2期地区事業費21億2152万6000円,京葉港地区事業費7億0717万5000円)であった。 (イ) 支出負担行為被告Fは,企業庁長として,前記(ア)のとおり,本件各引受債務の支払のために,平成11年度補正予算に計上し,議決を経た28億円について,千葉県企業庁財務規程(以下「財務規程」という。)27条1項2号で定められた支出予算の執行手続に従って,平成12年3月23日付けで決裁を行い,支出を決定した。 (ウ) 支出命令及び支出平成11年度補正予算で議決された28億円の支出については,財務規程53条で定められた支出の手続に則って行われ,支出回議書により平成12年3月24日付けで被告Fが企業庁長として決裁し,同支出回議書の送付を受けた出納員によって,平成12年3月31日に同金額がB連合会に支払われた。 イ平成12年度支出(ア) 「転業準備資金の融 12年3月24日付けで被告Fが企業庁長として決裁し,同支出回議書の送付を受けた出納員によって,平成12年3月31日に同金額がB連合会に支払われた。 イ平成12年度支出(ア) 「転業準備資金の融資に伴う利息の支払いに関する協定書」県とB連合会は,本件各引受債務が2か年に分割して支払われるのに伴い,平成12年10月27日,「転業準備資金の融資に伴う利息の支払いに関する協定書」により,前記(5)アないしエの協定に基づき,本件融資に伴う利息の支払に関し,次のとおり協定した。なお,本協定の利率により,平成13年3月30日時点における県の債務残額を算定すると,28億0958万6656円となった。 1条県が前記(5)アないしエの協定で引き受けたB連合会の貸付債権の貸付期間が満了となる平成12年10月27日時点における県のB連合会に対する債務残額については,28億0780万9659円とする。 2条県による前条の債務残額の支払期限については,平成12年10月27日から平成13年3月30日まで延長するものとし,B連合会は,その間の支払について猶予するものとする。 2項前項の規定により延長した支払期限については,県・B連合会協議の上変更できるものとする。 3条県は,B連合会に対し,前条1項の規定による支払猶予期間中における1条の債務残額に係る発生利息を,前条1項により延長した支払期限までに支払うものとする。 2項前項の発生利息に係る利率については,年0.15%とする。 (イ) 支出負担行為被告Fは,企業庁長として,前記(ア)のとおり,本件各引受債務の支払のために,平成12年度当初予算に計上し,議決を経た28億2870万1000円のうち,平成13年3月30日時点における県の債務残額28億0958万6656円(浦安2期地区事業費21億0718万99 のために,平成12年度当初予算に計上し,議決を経た28億2870万1000円のうち,平成13年3月30日時点における県の債務残額28億0958万6656円(浦安2期地区事業費21億0718万9992円,京葉港地区事業費7億0239万6664円)について,財務規程27条1項2号で定められた支出予算の執行手続に従って,同月23日付けで決裁を行い,支出を決定した(以下,この支出決定及び前記ア(イ)の支出決定を併せて「本件各支出決定」という。)。 (ウ) 支出命令及び支出平成12年度予算計上額28億2870万1000円のうち,平成13年3月30日時点における県の債務残額28億0958万6656円の支出については,財務規程53条に則って行われ,支出回議書により同月26日付けで被告Fが企業庁長として決裁し,同支出回議書の送付を受けた出納員によって,平成13年3月30日付けでB連合会に支払われた(以下,この支出回議書の決裁及び前記ア(ウ)の支出回議書の決裁を併せて「本件各支出命令」といい,この支出及び前記ア(ウ)の支出を併せて「本件各支出」という。)。 (7) 三者合意・本件債務引受けと企業庁長の地位・権限,独立採算性三者合意及び本件各債務引受けは,地方公営企業法8条1項,9条8号に基づく地位及び権限により,企業庁長が企業庁の臨海事業に関する業務上の必要性に基づいて行ったものである。 ところで,企業庁の行う土地造成整備事業は,一般会計からの独立採算性(造成した土地の分譲収入を経費に充てるもの)がとられており,土地造成整備事業に係る経費は,企業庁が造成した土地の分譲収入が充てられ,県民が納付する税金等は財源とされていない。実際,本件各支出の財源は,埋立てによって漁業に影響を与えた浦安2期地区及び京葉港地区の土地分譲収入が前記(6)ア(ア)のとおり た土地の分譲収入が充てられ,県民が納付する税金等は財源とされていない。実際,本件各支出の財源は,埋立てによって漁業に影響を与えた浦安2期地区及び京葉港地区の土地分譲収入が前記(6)ア(ア)のとおり充てられた。 なお,E漁協に対しては,昭和47年から昭和59年にかけて実施されたE漁協の有する漁業権海域周辺の埋立工事等の影響による漁獲高の減少に対する補償はされていない。 (8) 監査請求及び訴えの提起ア原告らは,平成12年4月7日,千葉県監査委員に対し,三者合意が違法であるなどとして,前記(6)ア(ウ)の支出28億円について県知事,企業庁長及び関係職員に対する支出した金額の返還請求をすること,及び,前記(6)ア(ア)のとおり,平成12年度当初予算に計上した臨海事業における浦安2期地区事業費及び京葉港地区事業費(以下「平成12年度臨海事業費」という。)の合計28億2870万1000円の支出を差し止めることを請求する旨の住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。 イ千葉県監査委員は,平成12年5月31日付けで,本件監査請求を棄却した。 ウ(ア) 原告らは,平成12年6月29日,旧地自法242条の2第1項4号に基づき,県に代位して,被告らに対し,前記(6)ア(ウ)のとおり支出された金員相当額28億円の損害賠償金及び遅延損害金の支払,並びに,被告らに対し,県知事及び企業庁長が平成12年度臨海事業費の支出をしたときは,支出金相当額28億2870万1000円の損害賠償金及び遅延損害金の支払を請求するとともに,同項1号に基づき,県知事及び企業庁長に対し,平成12年度臨海事業費の支出差止めを請求する旨の訴えを提起した。 (イ) 原告らは,平成13年5月22日の本件弁論準備手続期日において,前記(ア)の請求の趣旨を前記第1のとおり変更した。 に対し,平成12年度臨海事業費の支出差止めを請求する旨の訴えを提起した。 (イ) 原告らは,平成13年5月22日の本件弁論準備手続期日において,前記(ア)の請求の趣旨を前記第1のとおり変更した。 2 争点(1) 被告Aに対する請求に係る訴えの適法性(2) 被告Fの責任(本件各支出決定及び本件各支出命令による被告Fの県に対する損害賠償義務)の有無 3 争点についての各当事者の主張(1) 争点(1)(被告Aに対する請求に係る訴えの適法性)について(本案前の主張)(原告ら)ア住民訴訟のうち旧地自法242条の2第1項4号に基づく損害賠償請求については,被告適格を有するのは原告により訴訟の目的である地方公共団体が有する実体法上の請求権を履行する義務があると主張されている者である。そうすると,原告らが被告Aに対して当該職員であるとして損害賠償を請求している以上,被告Aは本件の被告適格を有する。 イ仮に前記アの見解が認められないとしても,法令上,直接的な財務会計上の権限を有していなくとも,公金支出の直接の原因となる行為をしたものであって,公金支出の必要性について実質的に判断する行為をした者が他にある場合は,その者も「当該職員」に含めるべきである。そして,本件では三者合意締結当時県知事であった被告Aがその適法性の判断について実質的に関与しているのであるから,被告Aの当該職員性は肯定されるべきである。 ウ仮に前記ア及びイの見解が認められないとしても,① 当該財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者,② これらの者から権限の委任を受けるなどして同権限を有するに至った者のほか,③ 法令上又は当該地方公共団体の制度上当該財務会計上の行為を行うかどうかの意思決定を行い得る地位ないし職にあるとされている者はいずれも「当該職員」に当た けるなどして同権限を有するに至った者のほか,③ 法令上又は当該地方公共団体の制度上当該財務会計上の行為を行うかどうかの意思決定を行い得る地位ないし職にあるとされている者はいずれも「当該職員」に当たると解すべきである。なぜなら,このような地位,職にある者は,具体的状況によっては,当該行為に関して地方公共団体に対して損害賠償義務を負担させられることもあるのであり,このような立場にある者に対する訴えを実体に関する審理判断のないまま不適法とすることは住民訴訟の目的に照らし不合理だからである。 そして,本件では,三者合意締結当時県知事であった被告Aが当該財務会計上の行為をするかどうかの決定権を有していたといえるから,被告Aの当該職員性は肯定されるべきである。 (被告A)原告らの被告Aに対する請求に係る訴えは,旧地自法242条の2第1項4号に基づく損害賠償請求であるところ,同号に定める「当該職員」とは,当該財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして同権限を有するに至った者であり,その反面,このような権限を有する地位ないし職にあると認められない者はこれに該当しない。 被告Aは,県知事として予算を調製して県議会に提出する権限及び原則として予算を執行する権限等を有しているが,企業庁の業務に関しては,管理者たる企業庁長に予算の原案作成権があり(地方公営企業法9条3号),また,企業庁の権限に属する事項の予算の執行については,企業庁長にその権限があり(同法8条1項本文,9条11号,同法施行令18条1項),県知事は予算を執行する権限を有していない。 よって,本件各支出当時県知事であった被告Aは,旧地自法242条の2第1項4号に定める「当該職員」に該当せず,原告らの被告Aに対する請求に係る訴えは,旧 県知事は予算を執行する権限を有していない。 よって,本件各支出当時県知事であった被告Aは,旧地自法242条の2第1項4号に定める「当該職員」に該当せず,原告らの被告Aに対する請求に係る訴えは,旧地自法に定められた住民訴訟の要件に該当しないから,不適法である。 (2) 争点(2)(被告Fの責任の有無)について(原告ら)ア原因行為の違法性(三者合意及び本件各債務引受けの違法性)(ア) 漁業補償の可否a 漁業補償の時期埋立てにおける漁業権放棄に関する漁業補償は,埋立てによって将来漁業権が消滅することに対する事前の損害賠償契約である。本件のように,事業主体が企業庁のような地方公営企業である埋立ての場合,漁業補償契約が可能となるのは,事前の損害賠償という法的性格及び事業主体の地方公営企業としての経済性と公共性の見地から,少なくとも埋立計画の基本(面積,区域,利用目的,財源等)が確定し,かつ,その損害の発生の蓋然性が相当程度具体化した時点でなければならない。また,行政計画との関係でみても,埋立事業実施計画が相当程度具体化した段階に至って初めてこれをなすことが可能になると解すべきである。 b 本件埋立計画等の状況企業庁が,三番瀬海域の埋立計画である京葉港2期計画及び本件埋立計画を策定したのは,昭和38年であったが,その後計画は全く進展せず,昭和51年には,企業庁が京葉港2期計画について自ら計画の凍結を宣言せざるを得なかった。三者合意が行われた昭和57年当時は,埋立事業の基本計画はおろか,基本計画案(素案)すら策定されておらず,埋立面積も,その計画図も各目的ごとの必要面積も,事業に要する費用も何ら具体化しておらず,果たして土地需要が実際に発生するかどうかすらも明らかになっていなかった。 企業庁自身が計画の凍結を宣言していた時期であり,具体的 図も各目的ごとの必要面積も,事業に要する費用も何ら具体化しておらず,果たして土地需要が実際に発生するかどうかすらも明らかになっていなかった。 企業庁自身が計画の凍結を宣言していた時期であり,具体的な埋立計画は一切存在しなかった。 c 三者合意締結当時の漁業補償の可否そうすると,本件は,前記bのとおり,三者合意締結当時,具体的な埋立計画は一切存在しなかったのであって,埋立計画が,相当程度に具体化し,損害発生の蓋然性が高度に認められる段階には全く至っていなかったのであるから,漁業補償ができなかったことは明らかである。 (イ) 実質的漁業補償以下の理由によれば,三者合意に基づく本件融資は,実質的漁業補償であることが明らかである。 a 三者合意当事者の動機(a) E漁協及び企業庁が当時置かれていた状況① 周辺海域の埋立工事昭和39年に始まった浦安1期地区埋立事業を皮切りとして,E漁協が漁業権を有する漁場周辺海域の埋立工事が,次のとおり順次行われていった。 開始・着工埋立完了浦安1期地区埋立事業昭和39年開始昭和50年京葉港地区埋立事業昭和44年開始昭和50年ころ浦安2期地区埋立事業昭和47年開始昭和55年浦安2期D地区埋立事業昭和50年2月着工昭和53年市川1期地区埋立事業昭和44年着工昭和49年② E漁協が当時置かれていた状況(全面補償への期待及びその要求)これらの埋立てに伴い,埋立海面に漁業権を有していたG漁協やH漁協等が漁業権放棄に伴う全面補償を得る中で,ひとりE漁協だけが全面漁業補償から取り残されていた。E漁協が,次は自分たちの番だ,という全面補償への期待を強めていたことは想像に難くな ていたG漁協やH漁協等が漁業権放棄に伴う全面補償を得る中で,ひとりE漁協だけが全面漁業補償から取り残されていた。E漁協が,次は自分たちの番だ,という全面補償への期待を強めていたことは想像に難くない。 また,後記(b)①のとおり,昭和50年5月の照会に対する企業庁の回答が「近い将来事業計画が具体化した時点で協力を要請する」とのことであったため,E漁協は,近い将来,転業せざるを得ないものと受け止め,昭和51年以降,市川2期地区埋立事業(以下「本件埋立事業」という。)に伴う補償交渉を申し入れ,漁業を断念せざるを得ない者や老齢・健康その他の事情で海を上がらざるを得ない者に対する全面補償を強く求めていった。 ③ 企業庁が当時置かれていた状況前記①のとおり,周辺海域の埋立事業を順次着工し完了させてきた企業庁にとって,最後に残されたのが本件埋立事業であり,臨海部の埋立ての集大成として,本件埋立事業は何としても完成させたい事業であった。 しかしながら,第1次オイルショックによる経済情勢や「公害国会」による環境保全の気運の高まり等の影響もあって,埋立事業の見直しが余儀なくされ,本件埋立事業の計画が決まらず,漁業権放棄による全面補償はできない状況であった。また,漁業補償してから着工まで長時間を要し,早すぎた補償が批判された富津の補償済海面の問題やFに対する県からの直接融資(先行補償)問題が生じていたため,その対応に苦慮した企業庁としては,埋立計画が決まらない状況での全面補償は何としても避けなければならなかった。 一方,JR京葉線用地の確保のための塩浜地区(通称「三角地」)埋立て,及び京葉港や市川港の入出港船舶の安全確保のための市川航路浚渫が急がれており,これらの事業のためにE漁協の同意を得ることが不可欠であった。また,将来の本件埋立事業の実施のため 称「三角地」)埋立て,及び京葉港や市川港の入出港船舶の安全確保のための市川航路浚渫が急がれており,これらの事業のためにE漁協の同意を得ることが不可欠であった。また,将来の本件埋立事業の実施のためにはE漁協の協力が不可欠となっており,E漁協との良好な関係を維持する必要があり,E漁協からの全面漁業補償要求を無碍に拒否できない状況に置かれていた。 (b) E漁協と企業庁の交渉経過① E漁協は,昭和50年5月,企業庁に対して本件埋立計画について照会をした。これに対する企業庁の回答は,「近い将来事業計画が具体化した時点で協力を要請する」とのことであった。この回答が,転業準備資金融資措置の端緒であり,E漁協は,当初から本件埋立事業による漁業権放棄に伴う全面漁業補償を念頭に置いていた。 ② E漁協は,企業庁に対し,昭和51年以降,本件埋立事業に伴う補償交渉を申し入れ,企業庁は,昭和51年7月13日のEとの協議において,E漁協に対し,5か年計画で本件埋立計画が凍結されたことから,その実施は早くとも昭和56年以降になるとの見通しを示し,漁業権の買収の必要がなくなったこと,それでも買収すると任意買収となり租税特別措置法の適用が受けられないこと,漁場環境悪化に対する対応としては,漁業の継続者には漁業環境整備を,経営規模を縮小する人には低利の資金融資の方法を考えていることを説明した。 ・企業庁は,昭和54年5月,E漁協に対して「昭和55ないし56年度に全面漁業補償の開始及び妥結」の方針を文書で回答した。これは,E漁協から補償について再三にわたる要請があり,本件埋立計画の将来計画及び実施時期を明示するよう求められていたことに対するものであった。すなわち,ここでもE漁協が本件埋立計画に関して漁業補償を求め,これに対して企業庁も「全面漁業補償の開始」等につ 埋立計画の将来計画及び実施時期を明示するよう求められていたことに対するものであった。すなわち,ここでもE漁協が本件埋立計画に関して漁業補償を求め,これに対して企業庁も「全面漁業補償の開始」等について文書による回答を行った。 ・昭和56年2月の時点以降,E漁協が「約束」あるいは「約束文書」を盾に,企業庁に対して,強行に補償を迫るようになった。 このようなE漁協の態度からすれば,前記・の文書による回答があった昭和54年5月から昭和56年2月までの間(おそらく市川航路浚渫の際)に,企業庁とE漁協との間で密約があり,文書で「昭和56年度における全面漁業補償」が約束されていることはほぼ確実である。 ・ E漁協は,昭和56年9月ころになると,本件埋立計画に関して昭和56年度中の漁業補償もしくはそれに代わる貸付けを要求し,それが行われない限り,塩浜地区の埋立てには協力できないと主張した。 ・ E漁協の要求は,基本的には漁業権の放棄と引替えに全面的な漁業補償を求めるものであって,昭和57年1月ころには,E漁協と企業庁とで,「名目」だけを代えた解決方法を検討することが合意された。 (c) E漁協の動機昭和56年度末における全面漁業補償を強硬に求めていたE漁協が本件融資措置を受け入れた動機は,融資という名目こそ用いているものの,全面漁業補償を受けたのと全く同じ経済的効果が得られることである。すなわち,① 融資を受ける額は,後記のとおり,全面漁業補償を受ける場合と同様に漁場評価額に基づいて算定された45億5700万円を上限とするものであり,実際の融資額も,従来より要求していた全面漁業補償額にほぼ見合った42億9750万円である。全面漁業補償を即時に受けたのと全く同様の経済的意義を有している。 ② 元本の返済については,三者合意によって県が将来E漁協に支 より要求していた全面漁業補償額にほぼ見合った42億9750万円である。全面漁業補償を即時に受けたのと全く同様の経済的意義を有している。 ② 元本の返済については,三者合意によって県が将来E漁協に支払う全面漁業補償額をもって充てられる。 ③ 返済時期の定めがあっても,三者の協議で変更が可能である。 ④ 利息支払は県が引き受ける約束であり,E漁協及びその組合員の負担には全くならない。 (d) 企業庁の動機企業庁が本件融資措置を講じた動機は,強硬に「昭和56年度の全面漁業補償」を求めていたE漁協の要求を満足させ,E漁協との良好な関係を維持できると同時に,「融資」という体裁を取ることによって様々な問題を解決できることである。すなわち,① 全面漁業補償の場合と同様に漁場評価額に基づいて融資額の上限を算定することにより,E漁協の要求を満足させることができる。 ② 融資によって生じる利息を県が引き受けることにすれば,E漁協には全面漁業補償と同じ効果を与えたことになり,前記・と相まってE漁協が主張していた「昭和56年度の全面漁業補償」の約束を履行したことになる。 ③ E漁協の要求を満足させることにより,将来の本件埋立事業の際のE漁協の協力を得ることが可能となり,緊急の課題であった塩浜地区埋立てや市川航路浚渫へのE漁協の同意が得られる。 ④ 融資という形式・名目をとることによって,本件が漁業補償ではないとの弁解が立つ。更に,富津の補償済海面のような問題を避けることもできる。 ⑤ B連合会やC銀行という金融機関に融資させることによって,県による先行漁業補償ではないとの言訳が可能となり,G漁協に対する補償の際に生じた国税局との問題を避けることができる。 (e) 動機の面から明らかな実質的漁業補償以上のように,当時E漁協や企業庁が置かれていた状況の下で,双 いとの言訳が可能となり,G漁協に対する補償の際に生じた国税局との問題を避けることができる。 (e) 動機の面から明らかな実質的漁業補償以上のように,当時E漁協や企業庁が置かれていた状況の下で,双方の動機を満足させるものとして行われたのが本件融資措置だったのである。それがまさしく「転業準備資金の融資」と名目を代えただけの全面漁業補償にほかならないことは,こうした動機の面から明らかである。 b 実質的・経済的意義本件融資措置は,昭和57年6月から同年7月にかけて締結された三者合意の5つの協定書等によって構成される一連の措置である。各協定書等に規定された条項を整理すると,次の(a)ないし(j)のとおりであり,これらの条項を総合的に検討すると,本件融資が転業準備資金の融資としてなされたものではなく,まさに実質的な漁業補償が行われたことが明白となる。 (a) 県は,E漁協に対し,その有する区画漁業権及び共同漁業権の漁場評価額を限度とした原資の融資措置を講ずる。 (b) E漁協は,前記融資措置に当たって,E漁協が将来漁業権放棄により受けるべき漁場評価額に基づく補償金相当額を担保とする。なお,E漁協からE漁協の個々の組合員への貸付けに伴い,同組合員もE漁協に対して,将来漁業権放棄に伴う補償金の配分相当額を担保に供する。 (c) E漁協は,県から漁業権放棄の申入れがあったときは,速やかにこれに応ずる。この場合,E漁協は漁業権放棄に必要な一切の手続を行う。 (d) 漁場評価額の合計額は,45億5700万円とする。 (e) 融資限度額は,漁場評価額に基づき,45億5700万円とする。 (f) E漁協は,借入金について,将来県の行う土地造成事業に伴う漁業権放棄に対し補償金が支払われたときには,速やかにその返済に充てる。 (g) 県は,E漁協及びその組合員の借入金に 00万円とする。 (f) E漁協は,借入金について,将来県の行う土地造成事業に伴う漁業権放棄に対し補償金が支払われたときには,速やかにその返済に充てる。 (g) 県は,E漁協及びその組合員の借入金に対する利息について,E漁協及びその組合員の実質負担とならないような措置を講ずる。 (h) B連合会は,E漁協に対し,転業準備資金として22億円を融資し,県は,この融資に当たり,B連合会に対し11億円(融資額の2分の1)を預金する。 (i) C銀行は,E漁協に対し,転業準備資金として20億9750万円を融資し,県は,この融資に当たり,C銀行に対し7億円(融資額のほぼ3分の1)を預金する。 (j) いずれも融資期間は昭和57年7月15日から昭和58年3月31日まで(僅か8か月半)とされ,その期間は県,E漁協,金融機関の協議で変更できる。 つまり,融資金額は漁業権放棄による補償額の算定基準となる漁場評価額に基づいて決定されている(前記(a),(d),(e))のだから,本来漁業補償を受けられない時点であるにもかかわらず,E漁協は,本件融資により漁業権を放棄した場合に見合う補償金相当額を受け取ったことになる。 それと引替えに,E漁協は,県からの漁業権放棄の申入れに速やかに応じ,漁業権放棄に必要な一切の手続を行うことを約束した(前記(c))。補償金相当額の受領と漁業権放棄の約束が引換給付の関係になっているわけである。これは本来の漁業補償の構造そのものである。 融資額の返済については,被融資者であるE漁協は,将来の土地造成事業に伴う漁業権放棄に対する補償金をもって返済金に充てるものとされ(前記(f)),かつ,その将来受ける補償金が担保にされ(前記(b)),融資期間と預金期間はいずれも同一である。したがって,将来支払われる補償金はそのまま借入金の返済に回され, 金に充てるものとされ(前記(f)),かつ,その将来受ける補償金が担保にされ(前記(b)),融資期間と預金期間はいずれも同一である。したがって,将来支払われる補償金はそのまま借入金の返済に回され,いわばE漁協を素通りして県から金融機関に支払われるのと変わりない。本来の漁業補償がなされる時点においては,E漁協にとっては帳簿上の処理がなされるだけで,実質的な入出金があるわけではない。 融資を受けた者が当然支払わなければならない利息は県が負担するものとされ(前記(g)),融資を受けたE漁協は補償金相当額の支払を受けたのみで,その他に何らの負担を負うわけではない。 漁業補償がなされない限り本件融資措置の「スキーム」は完結しないわけだから,一応の融資期間は定められてはいるものの,三者の協議によって変更できるものとされ(前記(j)),実際に融資期間は延長され続けて現在に至っている。 本件融資に当たり,県は,B連合会に対して11億円(融資額の2分の1),C銀行に対して7億円(融資額のほぼ3分の1)を預金しているが(前記(h),(i)),この預金は本件融資の保証としての意味を持つと同時に,金融機関は自己資金の出損を免れ,いわば県がE漁協に直接融資したのと変わらない経済的意義をもっている。 以上のように,本件融資措置は,昭和57年の時点において漁業補償がなされたのと全く同じ実質的・経済的意義を持っている。 c 融資金額本件融資が転業準備資金の融資というのであれば,E漁協の個々の組合員がどのような転業計画を持っているのかに応じて,必要な融資金額が決定されるはずであるが,本件融資においては,前記b(a),(d),(e)のとおり,融資金額は漁業権放棄による補償額の算定基準となる漁場評価額45億5700万円が限度額とされ,前記b(h),(i)に基づき,合計42 あるが,本件融資においては,前記b(a),(d),(e)のとおり,融資金額は漁業権放棄による補償額の算定基準となる漁場評価額45億5700万円が限度額とされ,前記b(h),(i)に基づき,合計42億9750万円が現実に融資されている。このように,本件融資の融資金額は,漁場評価額から一部が留保されてはいるものの,漁場評価額を基準に算定され,漁業権放棄に伴う全面補償と全く同じ算定方法がなされているのである。 E漁協からE漁協の各組合員への貸付額も,各自が有する区画漁業権及び共同漁業権の価額に応じた配分になっており,転業者の転業計画や転業に必要な融資額等は全く考慮されていない。 d 県による利息負担の合意(利息の実質負担回避の約束)昭和57年7月5日付け確認において,県は「組合及び組合員の借入金に対する利息について,組合及び組合員の実質負担とならないような措置を講ずる」ことを約し,実際にその後この合意に基づいて4回にわたり免責的債務引受け(本件各債務引受け)を行っている。転業準備資金であれば,このような合意を行う必要性も合理性も全くない。県がなぜこのような合意をしたのかというと,それは将来予測されたという全面的漁業補償の先行的,脱法的履行という本質を持っていたがために,それが法的に可能となるまでの間の融資金の利息をE漁協及びその組合員に負担させるわけにはいかなかったためである。 仮に,利息負担が,事業を進めていく上での漁業者対策の一環としての必要な経費で,正当な支出であるとすれば,企業庁は,各年度ごとに予算に計上して,現実に支出することに何らの支障はなかったはずであり,そうすれば少なくとも,利子に対する利子は累積しなかったはずであるにもかかわらず,そうしなかったのは,利息も含んで漁業補償時にこれらを上乗せして清算しようと目論んでおり,そ 障はなかったはずであり,そうすれば少なくとも,利子に対する利子は累積しなかったはずであるにもかかわらず,そうしなかったのは,利息も含んで漁業補償時にこれらを上乗せして清算しようと目論んでおり,その利息負担について正当,明確な支出根拠が見出せず,解決を先送りせざるを得なかったからにほかならない。 e 融資の対象者E漁協の組合員は,ごく一部の者を除いてE漁協から融資を受けているものであり,転業予定がなかった者に対しても転業準備資金が拠出されているのであるから,その表面的,形式的な融資目的とは大きな齟齬を来している。それゆえ,多くのE漁協の組合員は,E漁協を介してE漁協の各組合員に対して漁業補償がなされたと認識しており,たとえ本件埋立計画が白紙撤回されてもこれを返却する意思は有していなかったというべきであって,実質的な漁業補償が行われたことが裏付けられる。 (ウ) 違法性(脱法行為)a 脱法行為の違法性そもそも,ある経済的・実質的目的を達するために,それについて法が想定する法制度・形式が存在するにもかかわらず,それと異なる法制度・形式を借用,これに仮託して行った場合,その行為は違法と評価されるというのが原則である。なぜなら,それらは本来の法形式,法制度が規定する要件及び手続を回避することになり,法がそれら要件の充足,手続の履践によって達成,維持しようとした規範,制約が機能しなくなってしまうおそれがあるからである。 違法な目的のために,他の法形式を借用した場合,その行為は当然に違法の評価を受け,瑕疵を帯びるものとなるといわざるを得ない。 しかも,当事者が行政機関である場合は,法治行政の原則からして,より厳格な基準による必要がある。とりわけ公金に係わる財務会計行為において脱法目的の行為(契約を含む。)が行われると,予算,監査,決算段階での 当事者が行政機関である場合は,法治行政の原則からして,より厳格な基準による必要がある。とりわけ公金に係わる財務会計行為において脱法目的の行為(契約を含む。)が行われると,予算,監査,決算段階での弊害も大きく,違法と評価されるのはむしろ当然であり,このことは,地方公営企業の長が広範な契約締結権限を有するものであっても,何ら変わるものではない。 b 脱法行為としての三者合意の違法性本件融資は,漁業補償,しかも,本来許されないはずの漁業補償を融資という形式を借用して行った脱法行為であって違法である。 本件融資の基礎となった三者合意は,その違法な目的(実質的漁業補償の即時支払)を達するため,融資契約という法形式(県のEに対する,いつになるかわからない将来の漁業補償を引当てに,金融機関からE漁協に融資をさせ,かつ,本来融資ならば借り手が負担すべき利息を県が負担するとする三者間の契約)を借用,それに仮託してなされたものである。そして,このような迂回,脱法的手段をとったことによって,漁業補償であれば本来適用されるべき漁業補償規程,履践されるべき手続等が潜脱され,また,本件発覚まで巧妙に隠ぺいされ,県民等に明らかにされず,その是正,抜本的対策が決定的に遅れたこと等,その弊害も大きいものがある。したがって,そこで締結された三者合意は,いわゆる違法な目的を達するためになされた脱法行為であり,違法の評価を受けるものである。 c 本件各債務引受けの違法性本件各債務引受けは,4度にわたって行われているが,いずれも三者合意を前提に,「E漁協の実質的負担とならない措置」を具体化し,実現することを目的とする財務会計行為であり,三者合意の実質的・客観的違法性を承継したものである。本件各債務引受けの行為主体である各企業庁長には,その違法性を除去・是正すべき義務がある を具体化し,実現することを目的とする財務会計行為であり,三者合意の実質的・客観的違法性を承継したものである。本件各債務引受けの行為主体である各企業庁長には,その違法性を除去・是正すべき義務があるにもかかわらず,その権限を逸脱・濫用して,漫然と各引受行為を行ったものであり,当該職員としての忠実義務に違反した違法性がある。 (エ) 違法性(裁量権の逸脱・濫用)a 管理者(企業庁長)に付託された権限の限界地方公営企業の場合,その管理者にいかに形式的に広範な権限が付与され,また,その行使に当たっての裁量が広いものであっても,そこには地方公営企業法の立法趣旨,そのような権限を付与し,裁量権が与えられた目的,趣旨等からする一定の限界,制約が存在する。そして,地方公営企業の管理者(長)も地方公共団体の機関であり,法治国家における公僕である。その裁量権の逸脱・濫用は,公務員の誠実義務(地方自治法138条の2)に違反した違法な行為となるのは当然のことである。 b 裁量権の逸脱・濫用(a) 裁量権の逸脱・濫用の判断基準「経済性の発揮」という地方公営企業の行為規範から考えると,地方公営企業の管理者たる企業庁長の裁量権の逸脱・濫用を判断する際には,経済的合理性という視点を重視せざるを得ない。具体的には,契約締結行為をみる場合,当該契約が,① 経済的合理性及び公共性を踏まえた上での「契約目的の合理性」,② 経済的合理性の観点から見た「契約内容の相当性」という二つの要件を充たしているかどうかによって判断する必要がある。 (b) 契約目的の合理性について被告らは,三者合意を本件埋立計画という計画達成の一手段と位置付け,更に本件埋立計画の目的について,江戸川流域下水道終末処理場用地,住工混在の解消のための都市再開発用地等の確保を挙げている。 しかし,まず第 三者合意を本件埋立計画という計画達成の一手段と位置付け,更に本件埋立計画の目的について,江戸川流域下水道終末処理場用地,住工混在の解消のための都市再開発用地等の確保を挙げている。 しかし,まず第1に,被告らが主張する本件埋立計画の利用目的は,従来より埋立計画の縮小に伴い変遷を重ねてきたという経緯があり,真にそのような目的が存したかどうかということ自体が疑問である。特に昭和51年9月のいわゆる事実上の埋立・凍結宣言においては,本件埋立計画について「造成工事は当地区の主な土地利用計画である江戸川左岸流域下水道終末処理場用地が必要とされる時期を待って着手する」とされており,少なくとも昭和51年の時点では終末処理場用地が必要とされていなかったことを示している。そして,この終末処理場用地は,最終的に現在の県知事により埋立計画が白紙撤回されたことからも明らかなように,結局「必要とされる」ことはなかったのである。 第2に,仮にそのような利用目的を基礎付ける事実が一応是認できたとしても,まったく収益性のない事業は企業庁の存在意義からして許されないはずである。地方公営企業における「公共の福祉」の実現は,何よりも経済性の発揮によって全うされるというのが地方公営企業法の理念だからである。それにもかかわらず,被告らの主張には,前記のような利用目的で埋立事業を行い,本当に収益が上がる事業であるかどうかという視点が欠けている。 以上から,三者合意については到底その目的に合理性を見出すことはできない。 (c) 契約内容の相当性について① 半永久的な利息負担三者合意の経済的不合理性の根幹は,埋立てが行われない限り半永久的に利息を支払続けなければならないという三者合意の構造そのものに存する。 当時は埋立ての場所や埋立面積も決まっておらず,到底漁業補償を行うこと 経済的不合理性の根幹は,埋立てが行われない限り半永久的に利息を支払続けなければならないという三者合意の構造そのものに存する。 当時は埋立ての場所や埋立面積も決まっておらず,到底漁業補償を行うことなど許されない段階であった。このような段階で漁業補償が許されないのは,E漁協側の損害の見通しもきちんと立たないうちに事前の損害賠償たる漁業補償を行なってしまうことになり,E漁協側の損害の額が減少したり,損害の発生そのものが無くなったりすると,県に不測の損失を与えるおそれが大きいからである。 このような趣旨からするならば,漁業補償が許されないような段階で,漁業補償を元本返済の引当てとするような「スキーム」を組むこと自体,極めて危険で違法性の高い行為であると言わざるを得ないのである。 三者合意は,このような趣旨に真っ向から反する内容であるが故に,「半永久的な利息負担」という途方もない損害を県に与えることになったのであり,著しく経済的相当性,合理性を欠落しているものである。このような観点から見れば,56億円の利息負担という損害の発生は,たまたま埋立計画が延びてしまったために結果的に発生してしまったものではなく,契約内容の欠陥から必然的に発生した損害であると言えるのである。 ② 費用対効果の視点の欠如経済性の発揮という企業庁の第一の使命からすれば,ある事業を行う場合に,どの程度の費用に対しどの程度の収益が得られるかという費用対効果の視点が要求されるのは当然のことである。この費用対効果の視点は,契約目的を考える際にも吟味されなければならないが,契約目的達成のための個々の手段の相当性を考える際にも充分検討する必要があるものである。 本件の三者合意については,埋立てによる収益がどの程度であり,それに対し総額でどの程度の費用をかければよいかという検討が全 のための個々の手段の相当性を考える際にも充分検討する必要があるものである。 本件の三者合意については,埋立てによる収益がどの程度であり,それに対し総額でどの程度の費用をかければよいかという検討が全くなされず,その結果,三者合意に基づく支出と,E漁協とのその後の漁業補償交渉の円滑化という効果とのバランスの検討も何ら行われないまま契約が締結され,漫然と費用のみが支出される構造となっている。 このような状況で経済性の発揮という使命を果たすことなどできる訳が無く,この点から見ても三者合意は杜撰としか言いようのない契約であった。 ③ 代替手段の存在この点は費用対効果の問題として捉えることもできるが,経済性の発揮という観点からすると,一般に,ある目的達成のために複数の選択肢が存する場合に,いずれの手段をとっても同じ効果を上げることができるのであれば,より支出の少ないものを選択すべきは当然の理である。 本件の場合,当時実際に漁場が悪化していたというのであれば,正規の影響補償を行ったり,転業希望者への融資措置を行うなど,埋立計画の円滑な遂行という事業目的を達成し得る他の方法も検討できたはずである。 このような検討を一切行わず,無限定な利息負担という最悪の選択肢を選んでしまったという意味でも,三者合意の内容は経済的な相当性・合理性を欠くものである。 ④ 法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律の趣旨違反三者合意の仕組みは,県はE漁協の利息を負担するばかりでなく,金融機関の元本回収についても預金提供という形で実質的な負担を余儀なくされかねないのであり,法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律3条が禁止した保証契約に類似するものである。 (d) 企業庁長の裁量権逸脱・濫用(あてはめ)以上のとおり,三者合意は,その目的においても,また,その内容 法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律3条が禁止した保証契約に類似するものである。 (d) 企業庁長の裁量権逸脱・濫用(あてはめ)以上のとおり,三者合意は,その目的においても,また,その内容においても,企業庁の第一の使命である経済性の発揮という視点を欠落した,合理性,相当性を著しく欠く契約であった。 このような企業庁長の契約締結行為は,経済性の発揮のために企業庁長に与えられた裁量権の範囲を著しく逸脱し,これを濫用するものであり,強い違法性を帯びるものである。 イ本件各支出決定及び本件各支出命令の違法性(被告Fの責任)(ア) 違法性承継論一般と具体的判断基準本件各支出決定及び本件各支出命令は,三者合意及びそれに基づく本件各債務引受けという原因(先行)行為が財務会計行為であること,仮に財務会計行為でないとしても「一体と評価されなければならない緊密な関係」「直接の原因ということができる密接かつ一体的な関係」にある場合に当たること,原因行為と後行行為の機関が全く同一であることからして,その違法性は基本的に承継される場合である。 本件のように,機関が同一で,その先任者の原因行為に違法事由となる瑕疵が存在するにもかかわらず,後任者がこれを前提として財務会計行為を行った場合,それが財務会計上の義務違反となるか否かの具体的判断基準は,① 原因行為の瑕疵の内容及び② その違法性の程度,③ 財務会計行為がなされるに当たってその瑕疵の存在を認識することが可能であったか否か(瑕疵の存在の認識可能性),④ 瑕疵の存在を認識できたとすればそれを是正することが可能であったか(瑕疵の是正可能性)等,諸般の事情を総合的に検討して判断すべきである。 (イ) 被告Fの責任a 原因行為の瑕疵の内容原因行為の瑕疵の内容は,前記アのとおりであり,(a) 三者合意及 能であったか(瑕疵の是正可能性)等,諸般の事情を総合的に検討して判断すべきである。 (イ) 被告Fの責任a 原因行為の瑕疵の内容原因行為の瑕疵の内容は,前記アのとおりであり,(a) 三者合意及びこれに基づく融資措置という形式を借用して,本来許されないはずの漁業補償を実質的に行ったことが脱法行為に当たる(b) 無限定に利息負担のおそれのある三者合意を締結し,この合意に基づき本件各債務引受けを行った行為が企業庁長の裁量権の逸脱・濫用となるという,2点に要約することができる。 b 原因行為の違法性の程度三者合意やこれを原因とした本件各債務引受けは,周到に脱法の手段を考案した上で意図的に脱法行為を行ったという点,また,その存在を議会に公開しないままひた隠しにしていたという点で極めて悪質である。しかも,これによって県に与えた損害も,56億円強という極めて巨額なものである。 これに加えて,違法行為が極めて長期にわたってなされたことを合わせ考えると,住民訴訟史上類を見ないほど高い違法性を有している。 c 瑕疵の存在の認識可能性(a) 就任時の引継ぎ被告Fは,平成11年4月に企業庁長に就任した時点で,当然前任者から本件融資に関する引継ぎを受けていたはずであり,本件融資,契約関係,その後の経過等の事実関係について詳細に認識していたものと考えられる。 (b) 関係文書の存在本件融資やその後の本件各債務引受けの存在は,これらを裏付ける文書によって確認可能である。また,三者合意に至る経緯についても,E漁協とのやりとりを記録した内部文書が存在し,企業庁長としての立場でいつでも調査可能であった。 (c) 本件各支出決定及び本件各支出命令に先行,関連する行為被告Fは,在任中,本件各支出に関して以下のとおり企業庁長名義で各契約を締結している。 ① 転業準備 の立場でいつでも調査可能であった。 (c) 本件各支出決定及び本件各支出命令に先行,関連する行為被告Fは,在任中,本件各支出に関して以下のとおり企業庁長名義で各契約を締結している。 ① 転業準備資金の融資に関する協定書5通昭和57年7月14日付け本件融資協定書の融資期間の延長,利率の変更,利息の支払約束と期限に関するもの。 ② 転業準備資金の融資に関する協定書5通平成3年3月28日付け協定書の融資期間の延長,利率の変更,利息の支払約束と期限に関するもの。 ③ 合意書2通昭和63年3月30日付け合意書の融資期間の延長,利率の変更,利息の支払約束と期限に関するもの。 ④ 転業準備資金の融資に伴う利息に関する協定書2通平成3年3月28日付けの同表題の協定書の一部変更を内容とするもの。 ⑤ 転業準備資金の融資に伴う利息に関する協定書2通平成6年12月15日付けの同表題の協定書の一部変更(支払期日の延長と利率の引下げ)を内容とするもの。 ⑥ 転業準備資金の融資に伴う利息に関する協定書2通平成11年3月26日付けの同表題の協定書の一部変更(支払期日の延長と利率の引下げ)を内容とするもの。 ⑦ 合意書2通平成11年3月26日付けの合意書の変更を内容とするもの。 ⑧ 転業準備資金の融資に伴う利息の支払に関する協定書平成12年10月27日時点における債務残額に関し,県とB連合会との間で確認したもの。 このように,被告Fは,少なくとも平成11年10月からは,本件融資に関して基本となる各協定書,合意書の変更契約を自ら締結しているのであり,これらの文書の内容を認識していたのであれば,本件融資の巨額なこと,20年の長期にわたって放置されてきたこと等の本件融資の異常性,問題性に思い至らずにはいられないはずである。 (d) 被告Fの認識可能性したがって,被告 識していたのであれば,本件融資の巨額なこと,20年の長期にわたって放置されてきたこと等の本件融資の異常性,問題性に思い至らずにはいられないはずである。 (d) 被告Fの認識可能性したがって,被告Fは,三者合意の各内容とその持つ意味について十分認識していたというべきであって,それらの違法性についての認識可能性は十分あったといえる。 d 瑕疵の是正可能性(a) 三者合意の抜本的見直しの可能性① 三者合意締結に至る経緯E漁協,B連合会らは,三者合意が漁業補償を脱法的に行うことを目的とした違法な契約であり,経済性を追求すべき企業庁長の裁量権を逸脱したものであることを十分すぎるほど知悉した上で三者合意を締結している。本件の違法行為を行ったのは,あくまで当時の企業庁長並びに,その後4度の債務引受けを行った歴代企業庁長という「企業庁の執行機関」であり,県はこれらの執行機関が違法な行為を行ったことにより損害を被った被害者である。そしてE漁協やB連合会らは,企業庁長という県の執行機関と結託し,県に損害を与える違法な行為を行った加害者なのである。 たとえば,E漁協は,三者合意締結当時,埋立面積がいまだ決まっておらず,到底漁業補償を受け取れる状況になかったにもかかわらず,執拗に企業庁に対してこれを要求し,三者合意を取り付けるに至っている。 また,B連合会も,もともとはE漁協の漁業補償とは無関係だったはずであるが,県から融資金の50パーセント相当額の預金を受け,しかも,毎年多額に発生する利息については県から確実に回収できるとの大きなメリットがあったため,三者合意に参加し,県による利息負担という恩恵を受けてきたわけである。 このような経緯からすれば,E漁協やB連合会は,三者合意の効果を否定されることで被害を被る善意の当事者などでは決してなく,むしろ自 合意に参加し,県による利息負担という恩恵を受けてきたわけである。 このような経緯からすれば,E漁協やB連合会は,三者合意の効果を否定されることで被害を被る善意の当事者などでは決してなく,むしろ自分たちがかつて行った違法行為の是正に積極的に協力すべき立場にあったことは明らかである。 ② 事情の変化(埋立計画面積の縮小)被告Fが就任した後である平成11年6月,「市川2期地区・京葉港2期地区計画策定懇談会」(以下「計画策定懇談会」という。)に提出する埋立計画案が提示され,この計画案の中で,市川2期地区の埋立計画面積が縮小されるに至った。この埋立計画面積の縮小により,E漁協の漁業権区域が埋め立てられないことが確実となった(実際には,この計画案に対しては環境庁から再検討の要請がきており,千葉県環境会議(以下「環境会議」という。)での検討の結果,更に埋立面積が縮小される可能性も高かった。)。 ③ 被告Fが本件各支出決定及び本件各支出命令を行った際の当事者の利害状況前記②の事情の変化の結果,三者合意を締結した当事者いずれもが,少なくとも平成11年6月以降の段階では,以下に示すとおり,それまで三者合意に固執していた状況から,三者合意を見直さなくてはならない利害状況へと変化していた。 ・ B連合会B連合会は市川2期地区の埋立計画面積が縮小され,E漁協の漁業権区域からはずれてしまったことで,元本回収の目途が立たなくなっていた。43億円という巨額な元金債権の不良債権化は,B連合会の経営自体を揺るがしかねず,契約更新拒否に伴う預金の引上げの危険と合わせ考えると,極めて深刻な事態に陥っていたといえる。 B連合会の立場からすれば,このような状況を打開するため,利息の減免を条件に元本回収の協力を企業庁に要請するという選択肢も充分考えられた。 ・ E漁協 と,極めて深刻な事態に陥っていたといえる。 B連合会の立場からすれば,このような状況を打開するため,利息の減免を条件に元本回収の協力を企業庁に要請するという選択肢も充分考えられた。 ・ E漁協E漁協は,B連合会から元本を全額請求されても仕方のない状況に置かれていた。実質的には漁業補償の受取りであっても,実際に埋立てが実現していない以上,受け取った43億円を返還しなければならないのは当然のことである。 このようなE漁協の立場からすれば,企業庁から元本返済の一部協力その他の見返り(影響補償等)が提示されれば,一定の支出はやむを得ないと判断せざるを得なかった。 ・企業庁企業庁としては,単なる埋立事業の経費と考えていたはずの利息が元金より巨額となってしまい,極めて無駄な債務負担が発生していたばかりか,埋立案縮小後は,このまま手をこまねいて放置していれば,半永久的に無駄な支出が発生し続けるという状況が確定していた。したがって,本来であれば,この無駄な巨額の利息の減免交渉が急務であり,同時に三者合意そのものも抜本的に見直す必要があった。 経済性の追求を第一の使命とする企業庁であれば当然の判断であり,企業庁長がそのような指示をすれば,当然,全庁的に問題解決へ向けた態勢がとれたはずであった。 ④ 是正可能性の検討以上のような三者合意に至る経緯や関係当事者の利害状況の変化からすれば,既発生の利息の減免を絡めた三者合意の抜本的見直しは十分可能であり,むしろ自然な流れでもあった。 つまり,被告Fは漫然と利息の支払を行うのではなく,このような三者の立場を考慮した行動をとることで,違法な利息の支出を避けることは充分可能だった。 よって,本件においては,是正可能性の要件が充たされている。 (b) 法的主張による是正可能性① 錯誤無効三者合意は,当初2 慮した行動をとることで,違法な利息の支出を避けることは充分可能だった。 よって,本件においては,是正可能性の要件が充たされている。 (b) 法的主張による是正可能性① 錯誤無効三者合意は,当初2,3年の内に埋立てがなされる状況にあることを前提になされたものであった。このことは三者合意に至る話し合いを通じて明らかにされていたものであるから,明示された動機となっていた。そして逆に2,3年後の埋立ては無いと当事者らが認識していれば,このような無限定な利息負担の契約はあり得ないはずであったのであるから,この動機は三者合意の要素となっていた。 しかし,実際の客観的な状況は,原告らが再三指摘しているとおり,埋立計画の早期実施は到底実現の見込みのない状況であった。 つまり,この点で当事者の認識と客観的状況との間に齟齬が生じている。 また,その後の本件各債務引受けについても,あくまで契約当事者らは,埋立てが早期に実施されるとの認識に基づいて行ってきたものであるから,やはり客観的状況と当事者らの認識・動機との間には齟齬が生じていたと言える。 よって,県としては,この点を指摘して錯誤無効の主張を行うことが可能であった。 ② 事情変更の原則仮に錯誤とは言えないまでも,三者合意締結当時の前提事項として埋立計画の早期実現とこれに伴う漁業補償の実施が一致した見解であったことは間違いない。 そうだとすると,2,3年後の段階において,埋立計画が実現せず,当初の前提要件が崩れた段階で,三者合意を支える基礎が崩れていたと言える。 加えて,平成11年6月には,埋立面積を大幅に縮小した計画案が策定され,計画策定懇談会に報告されているが,この計画案ではE漁協の漁業権区域が除外されており,E漁協に対する漁業補償ができないという根本的な前提条件の変化があったのである。 したが 小した計画案が策定され,計画策定懇談会に報告されているが,この計画案ではE漁協の漁業権区域が除外されており,E漁協に対する漁業補償ができないという根本的な前提条件の変化があったのである。 したがって,被告Fとしては,この点を指摘して事情変更の原則を主張し,少なくとも昭和63年3月30日の債務引受け以降の利息負担の効力を否定することも可能であった。 ③ 公序良俗違反本件における被害者は県であり,三者合意や,これに基づく本件各債務引受けを行ってきた執行機関たる歴代企業庁長らは,E漁協,B連合会ら金融機関と結託して加害行為を行った加害者である。 このような観点からすれば,被告Fは,今までの企業庁長の不法行為を断罪すると共に,これに積極的に関わってきたE漁協,B連合会らの共同不法行為を指摘することができたはずである。 そして,この共同不法行為の中核をなすのが三者合意であり,その後の本件各債務引受けに他ならない。しかも,その違法性は,県が損害を受けた金額や,周到に脱法方法を検討している点等から考えて,極めて強いものであった。 よって,被告Fとしては,三者合意やその後の本件各債務引受けが,公序良俗に反するものとして無効であるとの主張が可能であった。 ④ 歩積み両建て融資に関する規制の趣旨違反本件融資は,県が利息の最終的負担者であること,元本についても契約上債務者であるE漁協は漁業補償なき限り支払の能力・意思ともになく,最終的には県からの支払が予定されていたことからすれば,実質的には本件融資の借り主は県であり,B連合会はその実質的借り主から融資の半額を預金させている。その融資全額について市中金利と同様な利率による利息を支払わせるのは,歩積み両建て融資に関する規制の趣旨に反し,法的にも違法の評価を受けるものであり,これは,過剰利息分についての債 預金させている。その融資全額について市中金利と同様な利率による利息を支払わせるのは,歩積み両建て融資に関する規制の趣旨に反し,法的にも違法の評価を受けるものであり,これは,過剰利息分についての債務不存在確認訴訟において,法的主張として成立するものである。 (c) まとめ(法的主張と三者合意の見直しとの関係)第1に,前記(b)のとおり,被告Fとしては,いくつかの法的主張が可能だったのであり,これを訴訟外でも主張できたはずである。 第2に,たとえ法的主張が不可能であっても,あるいはあえて法的主張をせずとも,前記(a)のとおり,話し合いにより十分是正が可能であったはずである。 つまり,法的主張が可能であればもちろん,そうでなくとも是正可能性はあったというべきである。 e 被告Fの責任以上のとおり,被告Fについては,原因行為の瑕疵の内容,違法性の程度,認識可能性,是正可能性いずれの要件をみても,本件各支出決定及び本件各支出命令が違法であり,被告Fの責任を強く肯定する方向を示しているのであり,被告Fが責任を負うべきは当然である。 被告Fの最大の罪は,累積していた利息の支払を安易に行ったことで,原告らが縷々述べてきたような利息の減免や,三者合意の根本的見直しといった是正可能性のチャンスを奪ってしまったということである。この意味で,被告Fの責任は,単に契約を引き延ばし,三者合意の存在を隠匿してきただけの歴代企業庁長らとは自ずから質も程度も異なるものである。 (被告ら)ア三者合意の適法性(ア) 本件埋立計画とE漁協の動向a 昭和50年ころの状況昭和50年5月ころ,E漁協から本件埋立計画について知りたいとの照会が企業庁にあり,企業庁は,近い将来事業計画が具体化された時点で協力を要請する旨回答した。その後,E漁協は,企業庁が昭和50年5月に行っ 0年5月ころ,E漁協から本件埋立計画について知りたいとの照会が企業庁にあり,企業庁は,近い将来事業計画が具体化された時点で協力を要請する旨回答した。その後,E漁協は,企業庁が昭和50年5月に行った前記回答により,将来転業せざるを得ないものと受け止め,転業を想定する生活設計を進めてきたとして,本件埋立計画に関する補償交渉を申し入れてきた。企業庁は,本件埋立計画の策定状況から,全面補償は昭和56年以降になると説明した。 b 漁場環境の悪化に伴うE漁協からの要望昭和51年ころ,E漁協は,企業庁に対し,浦安2期D地区の埋立てによる影響で海苔の漁場環境が年々悪くなってきた,同地区の埋立てに同意したのは,近い将来本件埋立計画による埋立てが行われるものと思ったからであるなどとたびたび主張した。そして,E漁協は,企業庁に対し,浦安2期D地区の影響による漁場環境の悪化によって漁業を断念せざるを得なくなった者に対する漁業補償,転業又は兼業する者に対する貸付け,また,漁業を続けようとする者のために良い漁場の造成を要望した。 c 昭和56年から昭和57年当時の交渉状況昭和56年2月ころ,E漁協は,企業庁との交渉において,浦安2期D地区埋立による影響と昭和55年に行われた市川航路の浚渫工事の影響による潮流の変化により,品質良好な海苔生産が不可能になったとして,漁業権の放棄と引替えに全面的な漁業補償を要求した。 その後も,E漁協は,企業庁との交渉の席上,本件埋立計画の具体化が予想されたことから,E漁協の組合員の中には資材の購入を見合わせる者や転業を進めている者もいること,E漁協の組合員に中年層が多く,生活基盤が不確定であること等を主張した。昭和56年9月ころ,企業庁がE漁協と協議した際,E漁協は,本件埋立計画に関して昭和56年度中の漁業補償もしくはそれに代わ と,E漁協の組合員に中年層が多く,生活基盤が不確定であること等を主張した。昭和56年9月ころ,企業庁がE漁協と協議した際,E漁協は,本件埋立計画に関して昭和56年度中の漁業補償もしくはそれに代わる貸付けを要求し,行われない限り,塩浜地区の埋立てには協力できないと主張した。また,E漁協は,昭和56年10月ころ,企業庁に対し,昭和57年3月までに何らかの対応を示してほしいと強く対応を迫った。 企業庁は,E漁協に対し,各種調査等計画策定に必要な手続に期間を要するため,埋立免許の取得は昭和60年度後半になる見込みであること,昭和57年3月末までに漁業補償を行うことは困難であることを説明した。しかし,E漁協は,昭和56年10月ころ,昭和57年3月までの決着を迫り,漁業を廃止する者には補償金に見合うものを100パーセント出してほしいと要望した。 (イ) 三者合意の性格転業準備資金の原資は,金融機関がE漁協に対して行った有利子による本件融資であって,本件融資による返済の債務はE漁協が金融機関に対して負っているものであり,県は返済に関し何らの債務も負担するものではない。 また,本件融資は,E漁協がその組合員の円滑な転業の支援を目的として,E漁協のその組合員に融資するため,E漁協が金融機関から融資を受けたものであって,県による事前の漁業補償でもない。 三者合意は,転業準備資金に関する措置全体の枠組み及び関係者の責務を定めたものであり,行政主体の一部門としての側面をもつ企業庁とE漁協及び金融機関との間の関係を規律し公益上の目的を達成するために結んだ概括的な基本協定であり,抽象的な義務を定めたものにすぎない。すなわち,三者合意は,企業庁が本件融資措置の実施について企画・立案,総合調整し,支援することを内容とはしているが,県の具体的な支払に関する債務の内 協定であり,抽象的な義務を定めたものにすぎない。すなわち,三者合意は,企業庁が本件融資措置の実施について企画・立案,総合調整し,支援することを内容とはしているが,県の具体的な支払に関する債務の内容(金額,履行期等)は定められていない。また,E漁協が金融機関に対して負う利息に関する債務について,県が金融機関に対して保証又は引受けする効果を生じさせる内容ともなっていない。 このように,昭和57年当時,県は三者合意により抽象的な義務を負担したが,企業庁として執るべき具体的な措置の内容については,その後の本件埋立計画の動向,E漁協との協議・交渉等を踏まえて,執るべき措置の内容が決まり,その内容に応じて県の負担する具体的な債務の内容も決まることとなったのである。 (ウ) 三者合意の必要性a 公共の福祉の上からの必要性企業庁は,地方公営企業として事業の効率的な運営を図るだけではなく,地方公共団体の一部門として,事業遂行過程の各場面(事業の目標設定,手法選択等)において,公共の福祉に対する配慮をなすべき立場にある。 臨海事業は,高度経済成長の時代には県民所得の向上と雇用機会の増大を図るための産業振興を中心的な課題とし,安定経済成長の時代には人口増加に伴う社会的要請に対応した都市基盤あるいは流通基盤の整備を中心的な課題として,企業庁において遂行されてきた事業である。企業庁は,臨海事業の遂行を通じて,それぞれの時代の社会・経済の状況に即応した県及び県内各地域の発展に貢献し,公共の福祉の増進につとめている。そのことは,地域の安定的発展と生活環境の整備を目的とした本件埋立計画についても例外ではなく,本件埋立計画の事業化は将来の公共の福祉の増進に寄与するものである。 したがって,本件埋立計画の事業遂行のために行った三者合意の締結は,地方公営企業である企 した本件埋立計画についても例外ではなく,本件埋立計画の事業化は将来の公共の福祉の増進に寄与するものである。 したがって,本件埋立計画の事業遂行のために行った三者合意の締結は,地方公営企業である企業庁の公共の福祉の増進という基本原則(地方公営企業法3条)から是認されるところである。 b 事業遂行上の必要性前記(ア)のとおり,E漁協の漁場の周辺において,当時企業庁がそれまでに行った埋立事業等による漁場環境の悪化に起因して多くのE漁協の組合員が転業を希望し,かつ,E漁協からも強い要請が出されていたという状況下で,当該要請に応じE漁協の組合員の円滑な転業を図る援助措置を講ずることは,本件埋立事業をはじめ今後の臨海事業の円滑な推進を図り公共の福祉の増進を目的とする企業庁としては,避けることのできない地方公営企業としての経営判断であったといわざるを得ない。 また,当時企業庁は,通勤・通学時の混雑緩和等のための現在のJR京葉線用地及び市川市における住工混在解消のための工場移転用地の確保を目的とした鉄道用地及び工場用地の造成のための塩浜地区の埋立工事の実施を目前としていた。この地区の埋立工事の円滑な推進の上からも,企業庁が本件融資措置を企画・立案し,その実施を支援する役割を果たすことは,事業遂行上必要なことであった。 したがって,三者合意の締結は,現在及び将来において事業を円滑に推進するという企業の経済性(地方公営企業法3条)の上からも要請されるところであった。 さらに,三者合意の締結は,本件埋立事業をはじめ今後の臨海事業の円滑な推進を図るという企業経営の合理性という面も考慮して行われた措置である。 c 本件埋立計画の実現可能性(a) 埋立事業に着手する見通し昭和57年当時,本件埋立計画は,昭和56年4月の県第2次新総合5か年計画において定めら 合理性という面も考慮して行われた措置である。 c 本件埋立計画の実現可能性(a) 埋立事業に着手する見通し昭和57年当時,本件埋立計画は,昭和56年4月の県第2次新総合5か年計画において定められた期間内に土地利用計画を立案し,2,3年後には埋立事業に着手する見通しであった。 (b) 環境保全の観点からの意見昭和57年当時,環境保全の観点から本件埋立計画に反対する意見は,県議会においても新聞報道においても見当らず,環境保全の観点から埋立事業に反対する意見は公の場に現れることはなかった。また,当時の企業庁担当者も埋立てが中止になるという事態は全く想定していなかった。 d 転業対策の意義と必要性漁業補償交渉においては,補償金の算定・支払金額等の補償の適正のみが重要になるのではなく,漁業権の放棄は,漁業者の生活態様に大きな変化を生じさせるのであるから,漁業者の将来に向かっての生業の確保をも考慮しなければ,円満な解決は期待できず,この意味で,企業庁が,転業について協力すること,何らかの対策を講じることは,将来予想される補償交渉を円満に妥結する上で大きな役割を果たすものであり,必要なものであった。 また,塩浜地区の埋立事業を緊急に進めるに当たりE漁協の同意を必要としていた当時の状況下において,本件埋立計画が事業化されるまで何らの対応策も講じないとすれば,それはE漁協からの要望への対応として不十分なものであった。 e 本件の具体的事情県がE漁協に対して漁業権放棄による漁業補償又は影響補償を行うことは,以下の理由から適当ではなかった。 (a) 重複,複雑化の回避浦安2期D地区の埋立て等による影響補償については,近い将来行われることが見込まれていた本件埋立事業の実施の際に併せて考慮し,補償についての無用な重複又は複雑化を回避することが適当であ 複雑化の回避浦安2期D地区の埋立て等による影響補償については,近い将来行われることが見込まれていた本件埋立事業の実施の際に併せて考慮し,補償についての無用な重複又は複雑化を回避することが適当であった。 (b) E漁協の要望内容E漁協の要望は,漁業権の放棄と引替えに全面的な漁業補償を求めるものであって,影響補償を求めるものではなかった。 (c) 漁業補償の困難性県は,本件埋立計画が決まらない以上,漁業権全面放棄にかかる損失補償を行うことはできなかったものであり,そのような状況の中で漁業補償と同様に解釈されるような措置はとれなかった。 fE漁協の実質負担回避の必要性本件埋立計画が確定していなかったことから,漁業権全面放棄を前提とした補償はできず,かつ,影響補償も困難な状況にあったが,E漁協の組合員が転業せざるを得ない状況になったため,転業準備資金による融資措置を講じざるを得ない状況であった。また,漁場環境の悪化はこれまで企業庁が行ってきた周辺地区埋立事業に起因していたことは明らかであり,本件融資にかかる利息等の負担に関して県が実質負担の意向を表明しなければ,企業庁とE漁協との関係が悪化することは明らかであった。そのため,本件融資の利息についてE漁協及びその組合員の実質負担とならないような措置を講じることには,埋立て等の事業を円滑に進めていくための政策的必要性があった。 (エ) 三者合意の経済的合理性(利息負担の相当性)a 漁業者対策としての必要経費県が本件転業準備資金の利息についてE漁協及びその組合員の実質負担とならないような措置を講ずることを約したことは,臨海事業を進めるための転業対策の一環としてのものであった。 当時,漁業者の不安を払拭しなければ,近い将来に予定していた本件埋立計画についてE漁協の同意を得ることが困難になると ることを約したことは,臨海事業を進めるための転業対策の一環としてのものであった。 当時,漁業者の不安を払拭しなければ,近い将来に予定していた本件埋立計画についてE漁協の同意を得ることが困難になると予想されていたことから,転業が困難な漁業者の負担を軽減して事業の円滑な推進を図ろうとしたものであり,そのために要する経費は,臨海事業の遂行に必須の漁業者対策としての必要経費であった。 b 本件埋立計画,臨海事業における転業対策としての本件融資の位置付け(a) 転業対策の重要性実際の漁業補償交渉は,単に漁業協同組合に対する補償金額の妥結で事足りるものではなく,漁業協同組合の組合員が代替性のない漁業を生業としていることへの配慮,すなわち他の業種への転業を迫られるという事態への十分な対応が極めて重要であり,金銭補償と漁業者対策は「車の両輪」といわれている。 このことは,臨海事業においても同様である。県の行ってきた臨海事業は,一地域あるいは数地域にわたってその生活環境に根底から変革をもたらすものであり,仮に漁業権自体は適正な補償を与え得たとしても,将来に向かっての生業の確保を考えなくては交渉は円満な妥結を期し得ない。将来の生活設計に対する不安をでき得る限り除去するため,転業等について協力しあるいは指導することは,取りもなおさず補償交渉を円満かつ納得ゆく線で妥結させるために大きな役割を果たすものであり,また必要条件でもあった。 このように,漁業者対策,中でも転業対策は,その成否如何によっては埋立事業の進捗を左右し,ひいては土地造成整備事業全体の会計にも影響を与えかねないほどの重要性を有していた。 (b) 機動的な経営判断① 漁業補償状況企業庁は,東京湾内湾(浦安市から富津市)において,広大な範囲の埋立てを順次,実施してきた。埋立てに伴い,浦安地区 を与えかねないほどの重要性を有していた。 (b) 機動的な経営判断① 漁業補償状況企業庁は,東京湾内湾(浦安市から富津市)において,広大な範囲の埋立てを順次,実施してきた。埋立てに伴い,浦安地区から富津地区に至る42漁業協同組合のうち,これまで37の漁業協同組合の漁業権の一部又は全部の放棄に対して補償を行ってきており,特に漁業権を全面放棄した漁業協同組合は33に及んでいる。 ② E漁協の状況と企業庁の経営判断昭和57年当時,東京湾北部においては,まさにE漁協及びG漁協の漁業権だけが残っていた。企業庁は,E漁協及びG漁協の漁業権海域に隣接した漁業権海域を有していたH漁協,I漁協及びJ漁協の各漁業協同組合に対しては,漁業権の放棄に伴う漁業補償を支払済みの上,西側からは浦安2期地区,東側から京葉港地区の埋立てが進行してきていたのであるから,残るE漁協及びG漁協に対してもできるだけ早期に漁業補償交渉を開始して,東京湾北部の土地造成整備事業の円滑な推進を図ることは,経済的合理性の見地からも相当であり,当時の経営判断として誤りはなく,適切であった。 そして,漁業権を有するE漁協の組合員にとって喫緊の問題である転業について,その準備資金の利息を負担させないような措置を講じて支援することも,円滑な漁業補償交渉により早期に妥結を図るための機動的な経営判断として容認されるべきであるし,臨海事業の円滑な推進を図るうえで,経済的合理性を欠いてはおらず,相当な措置であった。 c 三者合意による利息負担回避措置の内容(a) 措置の程度について昭和57年の本件融資の利息の実質負担回避の約束は,県とE漁協やその組合員との間に直ちに具体的な権利義務関係を発生させるものではなかったが,本件融資を受けたE漁協の組合員が,将来の利息負担に追われることなく転業の準備 の利息の実質負担回避の約束は,県とE漁協やその組合員との間に直ちに具体的な権利義務関係を発生させるものではなかったが,本件融資を受けたE漁協の組合員が,将来の利息負担に追われることなく転業の準備ができるという点で,企業庁がそれまでにも行ってきた転業対策の一環としての意義を有している。本件転業準備資金の元本は,あくまでもE漁協の組合員が返済することが前提であるが,それに伴う利息の負担を免れれば,早い段階から転業の準備にとりかかることができ,E漁協との漁業交渉もより円滑に進められることは明らかである。 企業庁は,転業者が安定した生活を確保できるようにするため,転業者による共同事業に対する助成,技能取得者に対する奨励金等の支給をはじめ,種々の対策を実施してきたところである。これらの対策と比べても,利息の実質負担回避措置は臨海事業における転業対策の一環として適正を欠く措置ではない。また,いわゆる利子補給を行って,間接的に経済活動等を一定の方向に誘導することは広く行われている措置であって,不当なものではない。 したがって,利息の実質負担回避はその程度においても相当であったといえる。 (b) 措置の対象期間について昭和57年当時,企業庁は利息負担措置について,少なくとも2ないし3年後にはE漁協との漁業補償交渉の中で一体的に解決することを目指していた。すなわち,本件埋立計画は,昭和56年の国土庁の首都圏整備計画に位置付けられ,昭和56年4月の県第2次新総合5か年計画においても昭和60年までの事業着手が明確に位置付けられたことから,企業庁は,昭和57年当時,昭和60年度に埋立免許の取得を見込んでいたのであり,利息負担を期限の目途もなく負担し続ける前提で利息の実質負担回避の約束をしたものではなかった。 また,E漁協側も,漁業補償は昭和60年ころに 当時,昭和60年度に埋立免許の取得を見込んでいたのであり,利息負担を期限の目途もなく負担し続ける前提で利息の実質負担回避の約束をしたものではなかった。 また,E漁協側も,漁業補償は昭和60年ころになるものと受け止めていた。 (c) 利息の利率の相当性について本件融資の利率は年6.9パーセントであるが,直近に発行された昭和57年3月の企業債については市中銀行が引き受けた際の利率は年7.8パーセントであった。また,同年7月14日時点の長期プライムレートは8.4パーセントであり,本件融資の利率はこのいずれよりも低くなっている。長期プライムレートが1年以上,前記企業債は7年の貸付期間であることを考慮に入れても,本件融資の利率である年6.9パーセントは適正を欠いた利率ではなく,経済的合理性の観点からも相当なものであることは明らかである。 また,昭和58年以降,本件融資の融資期間の延長の都度,その金利情勢に応じて利率の改定を行い,利息の額が少なくなるよう対応したもので,企業債及び長期プライムレートとの比較において,いずれも相当なものである。 d まとめ以上のとおり,県が本件融資の利息についてE漁協及びその組合員の実質負担とならないような措置を講ずることを約したことは,経済的合理性を欠かない相当な措置であった。 (オ) 適法性前記のとおり,E漁協の組合員に対して転業準備資金として融資措置を講じること及びその利息についてE漁協及びその組合員の実質負担とならないような措置を講ずることを約したことには必要性,合理性があったものであり,違法な措置とはいえない。 また,三者合意は脱法目的で締結されたものではなく,企業庁長は,その権限を誠実に執行したものであり,権限の逸脱・濫用はない。 イ本件各債務引受けの適法性以下のとおり,県が行った4回にわたる債務 。 また,三者合意は脱法目的で締結されたものではなく,企業庁長は,その権限を誠実に執行したものであり,権限の逸脱・濫用はない。 イ本件各債務引受けの適法性以下のとおり,県が行った4回にわたる債務引受契約の締結(本件各債務引受け)及びその後の返済期日の延長の措置は,これまでに企業庁が行ってきた臨海事業の経過と影響,E漁協との一連の交渉経過等からすれば,何ら非難されるべき違法は存在しない。 (ア) 債務引受契約の締結県が,昭和63年3月30日,平成3年3月28日,平成6年12月15日,平成11年3月26日の4回にわたり,県・B連合会・E漁協の三者間で協定を締結し,県においてE漁協に発生した借入利息相当分を免責的に債務引受けした(本件各債務引受け)。 本件各債務引受けは本件各支出の原因となった行為であり,これらにより県は,E漁協のB連合会に対する債務となっていた本件融資の利息支払のための借入債務相当額について具体的な支払義務を負った。 (イ) 本件各債務引受けの法的根拠と適法性本件各債務引受けは,地方公営企業法8条1項及び9条8号に基づいて行われたものである。 次のとおり,本件各債務引受けは,本件埋立事業の実現による公共の福祉の増進の上からも,また,本件埋立事業の円滑な遂行の上からも是認されるものである。 a 公共の福祉の上からの必要性本件埋立計画の目的は,地域の安定的発展と生活環境の整備におかれ,具体的には江戸川左岸流域下水道終末処理場用地,住工混在の解消のための都市再開発用地等を確保することであり,したがって,本件埋立計画は公共公益施設を主体とする極めて公共性の高い土地利用計画であり,本件埋立事業は常に県の重要な施策目標とされていた。 また,昭和61年9月に「市川2期地区埋立計画基本計画案」,平成5年3月に「市川2期地区土地造成基本 体とする極めて公共性の高い土地利用計画であり,本件埋立事業は常に県の重要な施策目標とされていた。 また,昭和61年9月に「市川2期地区埋立計画基本計画案」,平成5年3月に「市川2期地区土地造成基本計画」が策定され,環境会議において環境保全のあり方が検討され,環境会議の提言に基づき補足調査も実施され,平成10年10月には計画策定懇談会が設置され,常に本件埋立計画の事業着手に向けられた作業が進められていた。 したがって,企業庁としては,本件埋立事業のもつ公共性の上から,本件埋立事業が事業化された段階で円滑に事業を推進するために,漁業権放棄等について円満にE漁協と交渉する必要があった。そのことは,本件埋立事業のもつ公共性のゆえに,近隣の市町村・住民においても強く望まれるところであった。 b 事業遂行上の必要性しかしながら,本件埋立事業の事業化が結果的に遅れ,本件融資(本件転業準備資金の融資)による利息により多額の欠損金が生じたため,E漁協から,組合経営上の懸念及び組合員の不安を取り除くため,発生利息の全部又は一部の清算の要望が出されるに至った。企業庁としては,事業着手に向けた作業が進められている本件埋立計画が事業化された後,本件埋立事業を円滑に進めるためには,E漁協との協力関係を維持する必要に迫られていた。 (ウ) 本件各引受債務の返済期日の延長の適法性本件各引受債務について,B連合会との間で延長に関する協定を締結して返済期日の延長の措置を講じ,平成11年度に至るまで支払を見送ってきたが,これも地方公営企業の管理者である企業庁長の権限に基づいて行ってきたものである。 そもそも地方公営企業における財務管理は,その時々の資金計画,金利情勢,運用方法等を総合的に勘案しながら,管理者がその権限において行うものであり,ある特定の債務の処理について ってきたものである。 そもそも地方公営企業における財務管理は,その時々の資金計画,金利情勢,運用方法等を総合的に勘案しながら,管理者がその権限において行うものであり,ある特定の債務の処理について市中金利との比較で著しく適正を欠く金利を負担するなどの明らかに不合理な運用が行われない限り,違法性を帯びるものではない。 また,本件埋立計画は,本件各債務引受け後も継続して事業着手に向けた作業が続けられていたため,企業庁では,本件埋立計画が具体化した後のE漁協との本格的な補償交渉の中で,総合的な転業対策の一環として一体的に解決することを目指しながら,返済期日の延長の都度,その当時の金利情勢に応じて利率の改定等を行いながら対応を続けてきた。 なお,改訂された利率については,企業債及び長期プライムレートとの比較においていずれも相当なものであった。 したがって,本件各引受債務の返済期日の延長の協定も適法であることは明らかである。 (エ) 埋立事業に反対する意見について第1回目の債務引受けを行った昭和63年の時点では,環境保全の観点から埋立事業に反対する意見は,次第に公の場で表明されつつあったが,昭和63年当時に環境保全の観点から本件埋立計画に反対する意見によって埋立てが中止となることが予測されるような状況ではなかった。 ウ本件各支出決定及び本件各支出命令の適法性(ア) 本件各支出に至るまでの経過a 環境会議の設置県は,平成4年6月2日,環境会議を設置した。環境会議は,学識経験者,住民の代表者及び産業界の代表者12名で構成され,「千葉県環境憲章」の策定をはじめ環境保全の基本理念や環境問題に対する政策展開のあり方,あるいは大規模開発計画に対する環境保全のあり方等について提言を行うものとされた。 b 環境会議の提言県は,市川2期地区・京葉港2期地区 はじめ環境保全の基本理念や環境問題に対する政策展開のあり方,あるいは大規模開発計画に対する環境保全のあり方等について提言を行うものとされた。 b 環境会議の提言県は,市川2期地区・京葉港2期地区土地造成計画(以下「両計画」という。)の推進にあたり,平成5年3月29日に環境会議に「市川2期地区・京葉港2期地区土地造成計画にかかわる環境保全計画書」を提出した。これを受けて環境会議は,平成7年11月9日に両計画に関する環境保全のあり方について提言した。この提言の内容は,「両計画の予定地が東京湾に残された貴重な浅海域であり,ここに生息する生物が微妙な生態系を構成していることから,具体的な計画の策定に当たっては,(一) 主要生物の生息状況や鳥類の利用状況,水質浄化機能等に関する補足調査の実施(二) 人工海浜の造成手法等についての検討 (三) 専門委員会の設置による検討 (四) 土地利用の必要性についての十分な吟味などに配慮する必要がある」というものであった。 c 見直し案の検討前記bの提言の中で,「計画の作成に当たっては環境の分野の有識者を含めた専門委員会を設置するなど,広く意見を聴きながら進めること」とされていることを受けて,企業庁は,平成10年10月19日に計画策定懇談会を設置し,環境の補足調査結果等を踏まえ,計画の見直しについての意見を聴き,環境に配慮した計画案を作成することにした。 計画策定懇談会には,環境分野の有識者として,市川2期埋立問題対策協議会の代表幹事であったK(当時東邦大学理学部助教授)や,財団法人日本自然保護協会研究担当部長のL,財団法人日本野鳥の会研究センター副所長のMらが委員として参加している。すなわち,計画策定懇談会においては,三番瀬海域における両計画の策定に資するため,環境保全の観点からも意見を聴くこととし のL,財団法人日本野鳥の会研究センター副所長のMらが委員として参加している。すなわち,計画策定懇談会においては,三番瀬海域における両計画の策定に資するため,環境保全の観点からも意見を聴くこととしたのである。 企業庁は,両計画については,平成11年6月,計画策定懇談会での意見,シンポジウムでの意見及び地元市等からの要望を踏まえ,見直し案を取りまとめ,同月19日に開催された第3回計画策定懇談会において説明を行い,大幅な見直しを行ったことについて評価を得た。 さらに,企業庁は,同年12月25日に開催された第4回計画策定懇談会による検討等を経て,見直しによる具体的な計画案である「市川2期地区見直し計画(案)」及び「京葉港2期地区見直し計画(案)」を取りまとめ,平成12年2月28日に環境会議に報告した。 この見直し計画(案)は,埋立てについては,他の地域の土地や現在ある施設では対応できないかどうかを細かく検討するとともに,環境への影響の最も少ないところを利用することによって,三番瀬の人の利用と自然環境との共生を図り,必要最小限の土地利用と規模になるよう検討したものであった。 (イ) 本件各支出の検討前記のとおり,見直し計画(案)は,従来の埋立計画に対する各分野からの意見を踏まえた上,埋立面積の縮小等の変更を施したものであり,同計画案が打ち出されたことで本件埋立事業が相当短期間の内に具体化し,急速に進展することが予想された。企業庁としては,本件埋立事業が具体化された時点でE漁協その他の関係者との交渉を円滑に進めて,事業の迅速な推進を図るため,これまでに引き受けた利息に関するE漁協を含む地元関係者の不安を解消し,企業庁に対する信頼を維持することに努めなければならなかった。 そのため,企業庁は,本件埋立事業について急速な進展が見込まれる状況を踏ま 引き受けた利息に関するE漁協を含む地元関係者の不安を解消し,企業庁に対する信頼を維持することに努めなければならなかった。 そのため,企業庁は,本件埋立事業について急速な進展が見込まれる状況を踏まえて,本件転業準備資金に関する措置について全般的に見直し,E漁協との関係を再構築していくための交渉の第一歩として,これまでに引き受けた債務の処理を行うこととした。 (ウ) 本件各支出決定及び本件各支出命令の手続及び適法性本件各支出決定及び本件各支出命令は,企業庁の事業遂行上の必要性に基づき,本件に係る支出額を支出予算に計上し,平成12年2月定例県議会の本会議及び警察・企業常任委員会における審議において,十分に説明し議決を経たうえ,適法な手続によりなされたもので,企業庁長が企業庁の管理者として認められている広範な権限に基づいて行ったものであって,法令に違反する点はなく,何ら違法性を有するものではない。 a 原因行為の違法について前記アのように,昭和57年度の一連の協定等は違法ではない。仮に,同協定等に何らかの違法があったとしても,本件各支出決定及び本件各支出命令の直接の原因行為である本件各債務引受けには,公序良俗違反はなく,無効とはいえないし,そのほか取消し,解除の原因もなく,私法上有効であるから,企業庁長としては,県が既に負っていた債務を免れるための方策をとるべき財務会計法規上の義務を負っていたものとはいえない。 b 瑕疵の存在の認識可能性について前記aのとおり,本件各支出決定及び本件各支出命令の原因行為は私法上有効であるから,被告Bには,瑕疵の存在の認識可能性はない。 c 是正可能性について本件各支出決定及び本件各支出命令の原因行為には無効,取消し,解除原因はなかったのであるから,是正方法としては,契約の合意解除か債務不履行状態を継続する の認識可能性はない。 c 是正可能性について本件各支出決定及び本件各支出命令の原因行為には無効,取消し,解除原因はなかったのであるから,是正方法としては,契約の合意解除か債務不履行状態を継続するかのいずれかしかないところ,債務不履行状態の継続は,相手方から訴訟を提起され,強制執行を受ける可能性がある点で是正の意味がない。また,合意解除については,以下の観点から不可能であった。すなわち,被告Fが企業庁長に就任した平成11年度は,本件埋立計画に関し,埋立面積の縮小等の変更を含む見直し案をとりまとめるなど,計画の状況が大きく変化した時期であった。一方,E漁協は,企業庁長に対し,平成11年9月20日付けで「転業準備貸付金の決着を求める要望書」を提出するなど,転業準備資金の返済について不安を高めていた。また,これに先立つ平成10年5月23日に開催されたE漁協の総会終了後,説明会の席上で,E漁協の理事から,転業準備資金の利息の負担で経営が危機的状況に陥っているとの発言があった。このような状況下で,仮に本件債務引受契約の合意解除を提案したとしても,E漁協がこれを受け入れるはずはなく,そのような提案をすれば,E漁協との補償交渉が直ちに暗礁に乗り上げるおそれがあった。 このように,本件各支出決定及び本件各支出命令について,法的な是正可能性はなかった。 原告らは,実質的には本件融資の借り主は県であり,B連合会はその実質的借り主から融資の半額を預金させているとして,歩積み両建て融資に関する規制の趣旨に反するとし,過剰利息分の債務不存在の理由となる旨主張しているが,本件融資の借り主は実質上もE漁協であり,原告らの主張は理由がない。 d 本件各支出決定及び本件各支出命令について結局,前記aのとおり,本件各支出決定及び本件各支出命令の原因行為は私法上有効で が,本件融資の借り主は実質上もE漁協であり,原告らの主張は理由がない。 d 本件各支出決定及び本件各支出命令について結局,前記aのとおり,本件各支出決定及び本件各支出命令の原因行為は私法上有効であるから,本件各支出決定及び本件各支出命令は県が負っている債務を履行するために行ったものであり,被告Fの行為は正当な職務行為であって,およそ財務会計法規上の義務違反とはなり得ない。 しかも,本件各支出決定及び本件各支出命令は議会において審議され,可決された予算案に基づいて行われたものであり,被告Fはそのようなプロセスを経て財務会計行為を実行したものであって,何ら義務違反はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告Aに対する請求に係る訴えの適法性)について(1) 原告らは,被告Aに対する請求に係る訴えにおいて,被告Aが,旧地自法242条の2第1項4号の「当該職員」に当たるとして,被告Aに対して損害賠償等の請求をするものであるところ,同号にいう「当該職員」とは,当該訴訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びその者から権限の委任を受けるなどしてその権限を有するに至った者をいう(最高裁昭和55年(行ツ)第157号・同62年4月10日第二小法廷判決・民集41巻3号239頁参照)。 本件でその適否が問題とされている財務会計上の行為は,本件各支出決定及び本件各支出命令であるところ,これらの財務会計上の行為は,県が地方公営企業として設置した土地造成整備事業の業務の執行に当たるから,本件各支出決定及び本件各支出命令を行う権限を法令上本来的に有する者は,土地造成整備事業の管理者である企業庁長である(地方公営企業法8条1項本文,条例4条)。そうすると,県知事であった被告Aは,本件各支出決定及び本件各 件各支出命令を行う権限を法令上本来的に有する者は,土地造成整備事業の管理者である企業庁長である(地方公営企業法8条1項本文,条例4条)。そうすると,県知事であった被告Aは,本件各支出決定及び本件各支出命令を行う権限を法令上本来的に有する者ではなく,また,その者から権限の委任を受けるなどしてその権限を有するに至った者でもないから,同号の「当該職員」に当たらないというべきである。 (2) 争点(1)についての原告らの主張のうち,アの主張は,被告Aが旧地自法242条の2第1項4号の「当該職員」に該当する理由とはならず,イの主張は,独自の見解であって採用することはできず,ウの主張は,独自の見解である上,被告Aは法令上又は県の制度上本件各支出決定及び本件各支出命令を行うかどうかの意思決定を行い得る地位ないし職にあるとされている者と認めることもできない。 したがって,争点(1)についての原告らの主張はいずれも理由がない。 (3) よって,原告らの被告Aに対する請求に係る訴えは,同号に定められた住民訴訟の要件に該当せず,不適法である。 2 争点(2)(被告Fの責任の有無)について(1) 先行する原因行為の違法と当該財務会計職員の行為の違法との関係本件の被告Fに対する請求は,企業庁長の職にあった被告Fが,本件各支出決定及び本件各支出命令をしてはならない義務が存在したにもかかわらず,これに違反して,本件各支出決定及び本件各支出命令をしたとして,被告Fに対し,旧地自法242条の2第1項4号に基づく損害賠償を請求しているものであるところ,原告らは,被告Fが,このような義務を負うべき根拠として,本件各支出決定及び本件各支出命令に先行する原因行為である三者合意及び本件各債務引受けが違法であることを挙げ,このような違法な原因行為を前提とする財務会計行為をすることは 義務を負うべき根拠として,本件各支出決定及び本件各支出命令に先行する原因行為である三者合意及び本件各債務引受けが違法であることを挙げ,このような違法な原因行為を前提とする財務会計行為をすることは前記義務に違反し違法であると主張するものである。 そこでまず,一般的に,旧地自法242条の2第1項4号の規定に基づく損害賠償請求訴訟において,当該財務会計職員の財務会計上の行為の違法の有無を判断するに当たって,財務会計上の行為に先行する原因行為に存在する違法をどのように考えるべきかについて,検討することとする。 旧地自法242条の2第1項4号の規定に基づく代位請求に係る当該職員に対する損害賠償請求訴訟は,地方自治法242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正のための住民訴訟の一類型として,財務会計上の行為を行う権限を有する当該職員に対し,職務上の義務に違反する財務会計上の行為による当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を求めるものにほかならないから,旧地自法242条の2第1項4号により当該職員に損害賠償責任を問うことができるのは,当該職員の財務会計上の行為に先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても,同原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当である(最高裁昭和61年(行ツ)第133号・平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁参照)。 そして,財務会計上の行為の権限を有する職員が,当該権限を有していた前任者等の当該職員以外の者によって行われた先行する原因行為に違法事由となるべき瑕疵が存在するにもかかわらず,その原因行為を前提とした財務会計行為を行った場合に,当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務違反に当たるか否かは によって行われた先行する原因行為に違法事由となるべき瑕疵が存在するにもかかわらず,その原因行為を前提とした財務会計行為を行った場合に,当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務違反に当たるか否かは,原因行為に存する瑕疵の内容及びその違法性の程度,財務会計行為がなされるに当たって,当該職員自身が,その瑕疵の存在を認識することが可能であったか否か,瑕疵の存在を認識できたとすれば,これを是正することが可能であったかなどの諸般の事情を総合的に検討して判断すべきである。 (2) 原因行為の瑕疵の有無ア三者合意の瑕疵の有無(ア) 前記第2の1の事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によれば,前記第2の1の事実のほかに,以下の事実が認められる。 aE漁協の漁場に隣接する別紙図面2の浦安2期D地区の埋立てによる影響,市川航路の浚渫工事の影響による潮流の変化により,昭和55,6年ころ,E漁協の漁場環境の悪化,生産力の低下等が生じていた。 b 本件埋立計画は,昭和56年4月の千葉県第2次新総合5か年計画において,昭和60年前後には,JR京葉線用地及び江戸川左岸流域下水道終末処理場用地の確保が必要となっているとして,計画期間内(昭和56年度から昭和60年度まで)に,これら必要な用地のほか,大規模な人工干潟と地域の土地需要を見極めながら公共公益施設用地を主体とした土地利用を計画立案し,事業に着手するとされた。 cJR京葉線の昭和62年度の開業に向け,日本鉄道建設公団によって,用地の買収及び鉄道施設の工事が進められ,昭和56年ころには,本件埋立計画の一部である別紙図面2の塩浜地区を除いて用地は確保されたため,企業庁は,日本鉄道建設公団から,塩浜地区のJR京葉線用地を早急に確保することを求められ,その用地確保のために,塩浜地区の埋立ての必要があったが,E漁協からは 塩浜地区を除いて用地は確保されたため,企業庁は,日本鉄道建設公団から,塩浜地区のJR京葉線用地を早急に確保することを求められ,その用地確保のために,塩浜地区の埋立ての必要があったが,E漁協からは,本件埋立計画に関して何らの措置をとらずに塩浜地区のみを切り離して埋立てを実施することに反対の意向が表明された。 dE漁協と企業庁は,昭和56年2月18日から昭和57年4月21日までの1年余の間,10数回にわたり,本件埋立事業等に関する協議・交渉をした。 その中で,E漁協は,再三にわたり,それまでの経緯・前記aの漁場環境の悪化・組合員の現状等を訴えて,漁業権放棄を前提とした全面的な漁業補償を求めたが,県は,埋立計画が遅れていて具体化しておらず,漁業補償はできないので,転業者対策として融資措置によって対応する旨提案し,E漁協もこれを了解した。 その間,次のやりとりがあった。すなわち,昭和57年2月20日付けで,E漁協は,企業庁に対し,同年3月末日までに漁業権放棄又はこれに見合う貸付金の方向で話し合いが解決すること,漁業権が放棄されるまで漁業振興対策資金(漁場管理費)を援助してもらいたいこと,転業する漁業者には転業対策資金面で十分な対策を講ずることなどを要望した。同年3月3日,企業庁は,E漁協に対し,E漁協と企業庁とで相違点があるとしたうえ,E漁協は漁業補償という考えだが,企業庁は融資措置という考えであると念を押した。最終回において,E漁協は,・融資を7月15日以前に実施してほしい・配分については,配分委員会で協議しているが,5月の通常総会までに確定したい。・将来の問題まで含めた覚書を締結したい。・ 45億円の融資のうち,組合員に対する貸付けを保留する3億円については,基金扱いとしたい。・漁業継続希望者は組合員総数624名のうち92 に確定したい。・将来の問題まで含めた覚書を締結したい。・ 45億円の融資のうち,組合員に対する貸付けを保留する3億円については,基金扱いとしたい。・漁業継続希望者は組合員総数624名のうち92名(のり,採貝31名,採貝のみ61名)である。などの意向等を述べた。 e 企業庁は,昭和57年7月7日開催の県議会企業常任委員会において,転業準備資金について,・浦安2期地区の埋立て,市川航路の浚渫等により,漁場環境が変わってきたこと,・ E漁協では,昭和50年ころから漁民の転業を考え,漁業補償について数度の照会があり,企業庁はその都度対処してきたこと。E漁協においては,組合員の転業を円滑に進めるための暫定措置として,転業資金の融資を実施することになったこと,・企業庁としては,今後,市川2期地区の埋立てに伴う,漁業権放棄の円満な解決を図るために,融資資金の原資の一部をそれぞれの金融機関に預託し,円滑な転業が進むよう貸付けをしてもらうことにしたことを報告した。 f 企業庁においては,昭和57年6月及び7月の三者合意の締結に当たって,本件埋立計画が遅れた場合や中止になった場合についての具体的な対処方法等は検討されなかった。 昭和57年7月の本件融資の融資額を決めるに当たっては,個々の組合員について,経済状況や家族構成,転業計画や転業に必要な額等についての調査は行われなかった。 g 企業庁は,昭和48年以来,本件埋立計画の策定を続けてきて,県により,昭和61年9月に「市川2期地区埋立計画基本計画案」(計画面積約470ヘクタール)が,平成5年3月に「市川2期地区土地造成基本計画」(造成面積約470ヘクタール)がそれぞれ策定された。しかし,環境会議は,平成7年11月,県知事に対し,両計画(市川2期地区・京葉港2期地区土地造成計画)に関する環境保全 2期地区土地造成基本計画」(造成面積約470ヘクタール)がそれぞれ策定された。しかし,環境会議は,平成7年11月,県知事に対し,両計画(市川2期地区・京葉港2期地区土地造成計画)に関する環境保全のあり方について提言をしたが,その提言の内容は,両計画の予定地が東京湾に残された貴重な浅海域であり,そこに生息する生物が微妙な生態系を構成していることから,具体的な計画の策定に当たっては,・主要な生物の生息状況や鳥類の利用状況,水質浄化機能等に関する補足調査の実施,・人工海浜の造成手法等についての検討,・専門委員会の設置による検討,・土地利用の必要性についての十分な吟味などに配慮する必要がある,というものであった。 企業庁は,平成11年6月,計画策定懇談会での意見,シンポジウムでの意見及び地元市等からの要望を踏まえ,市川2期・京葉2期計画の見直し案(計画面積が,市川2期計画は約470ヘクタールから約90ヘクタールに,京葉2期計画は約270ヘクタールから約11ヘクタールに縮小され,E漁協が漁業権を有する海域の大部分は埋立ての対象区域外となった。)について取りまとめ,計画策定懇談会において説明をし,平成12年2月に「市川2期地区見直し計画(案)」等を取りまとめたが,事業計画が確定しないまま,平成13年9月に至って,県の施策変更により,本件埋立計画の計画中止を決定した。 h ところで,E漁協は,本件埋立計画が将来具体化されることを前提として,本件融資を受け,これを転業準備資金として組合員に貸し付けたことにより,約80パーセントの組合員が漁業をやめて転業等し,他の組合員も埋立てが始まるまでは漁業を続けるという事態になっている。 E漁協の組合員数は,昭和57年7月当時624名であったが,現在約100名である。 企業庁長は,平成14年12月2 転業等し,他の組合員も埋立てが始まるまでは漁業を続けるという事態になっている。 E漁協の組合員数は,昭和57年7月当時624名であったが,現在約100名である。 企業庁長は,平成14年12月24日,企業庁の「転業準備資金に係る補償検討委員会設置要綱」により設置された「転業準備資金に係る補償検討委員会」に対し,本件埋立計画の中止に伴い転業準備資金の関係者に対して行う補償の考え方について,諮問した。これを受けて,同委員会は,平成15年3月,E漁協は,本件埋立計画について,企業庁の施策を長期間にわたり信頼し,これを前提として協力してきたものであるから,企業庁は,E漁協に対し,本件埋立計画の中止に伴う代償措置を講じて,金銭的な補償を行うのが社会通念上適切であるとした上,補償金額の算定に当たっては,今後存続することになるE漁協の有する本件埋立計画の予定対象海域の区画漁業権及び共同漁業権の価値(後記漁場評価額よりも相当低下)を算定し,これと昭和57年7月当時の漁場評価額(45億5700万円)との差額を補償し,この補償金は転業準備資金の清算に充当されるべきであるが,その補償金の額は転業準備資金の清算に必要な金額であるべきであるなどと答申した。 (イ) 瑕疵の有無a 実質的漁業補償原告らは,具体的な埋立計画がなかった三者合意締結当時においては,漁業補償ができなかったにもかかわらず,実質的漁業補償として,三者合意に基づき本件融資がなされたから,三者合意は脱法行為として違法である旨主張する。 確かに,公有水面埋立法上は,埋立ての事業主体が,公有水面の埋立ての免許を受けた後に,漁業権者,入漁権者等の公有水面に関し権利を有する者に対し,損害の補償等をすることが義務付けられている(同法6条1項)が,このことから,埋立ての事業主体が,公有水面の埋立ての ての免許を受けた後に,漁業権者,入漁権者等の公有水面に関し権利を有する者に対し,損害の補償等をすることが義務付けられている(同法6条1項)が,このことから,埋立ての事業主体が,公有水面の埋立ての免許を受ける前に,漁業権者に対する埋立て後の漁業権の消滅等という損害についての補償である漁業補償に関して,漁業権者との間で任意に契約を締結すること自体が禁止されるものではなく,法令上,漁業補償の時期について,制約は設けられていない。 したがって,三者合意に基づく本件融資が実質的漁業補償であるかどうかということは,三者合意の瑕疵の有無を判断するに当たって,問題とはならないから,原告らの前記主張は理由がない。 なお,前記(ア)の事実(前記第2の1(2)ないし(7)の事実を含む。)関係の下において,三者合意に基づく本件融資が実質的漁業補償であるかどうかはいずれとも断定し難い。 b 裁量権の逸脱三者合意は,企業庁長が県を代表して,地方公営企業である土地造成整備事業の業務の執行として,締結したものであり,企業庁長は,三者合意の締結について,裁量権を有していたといえる。ただし,企業庁長にそのような裁量権があるといっても,その裁量には自ずから限界があり,契約目的の合理性,契約内容の相当性等から裁量の範囲を逸脱するものと判断される場合には,三者合意の締結には瑕疵があり,違法性を帯びることとなる。 (a) 契約目的の合理性前記(ア)のとおり,三者合意締結当時,浦安2期D地区の埋立て等により,E漁協の漁場環境の悪化,生産力の低下等といった影響が出ていたこと,本件埋立計画は,昭和56年4月の千葉県第2次新総合5か年計画にも盛り込まれ,計画期間内の事業着手が予定されていたことからすれば,県としては,E漁協に対して,その組合員の転業を支援するための措置をとる 埋立計画は,昭和56年4月の千葉県第2次新総合5か年計画にも盛り込まれ,計画期間内の事業着手が予定されていたことからすれば,県としては,E漁協に対して,その組合員の転業を支援するための措置をとる必要があったといえる。そして,三者合意は,E漁協に対し,その組合員の転業準備資金を融資することをその主たる内容とするものであり,E漁協に対して,その組合員の転業を支援するための措置をとるという目的のために締結されたものといえるから,その目的には合理性があるといえる。 また,埋立事業の遂行には,埋立てに係る公有水面に関し権利を有する者の同意が必要であるところ,前記の本件埋立計画の事業着手の予定があったことに加えて,前記(ア)のとおり,本件埋立計画の一部である塩浜地区については,JR京葉線用地の確保のため,早急に埋立ての必要があったが,本件埋立計画に関して何らの措置をとらずに塩浜地区のみを切り離して埋立てを実施することにE漁協が反対したことから,県としては,E漁協の協力を得るために,何らかの措置をとる必要があったといえ,三者合意は,県がE漁協の協力を得るという事業遂行上の目的のためにも締結されたものということができ,この目的にも合理性があるといえる。 以上のとおり,三者合意は,その目的において,合理性があるといえる。 (b) 契約内容の相当性三者合意に基づく本件融資は,E漁協の組合員の転業準備資金の融資として行われたものであるが,前記(ア)のとおり,昭和57年7月の時点では,本件埋立計画の具体性を欠いており,計画の見直しということもあり得たうえ,融資額を決めるに当たって,転業準備のために必要な額についての調査は行われずに,前記第2の1(4)のとおり,E漁協の漁場評価額45億5700万円が融資限度額とされ,実際の融資総額は,漁場評価額に近 融資額を決めるに当たって,転業準備のために必要な額についての調査は行われずに,前記第2の1(4)のとおり,E漁協の漁場評価額45億5700万円が融資限度額とされ,実際の融資総額は,漁場評価額に近い42億9750万円となっている。転業準備資金としての融資であれば,本来,転業準備のために必要な融資額を調査し,それに基づいて融資額が決定されるべきところ,前記のとおり,そのような調査を行わずに,融資額が決定されている本件融資は,E漁協の協力を得るためという目的を考慮しても,本件埋立計画の具体性を欠いている時点で,その融資額の全額についてまで,融資の必要性があったとは認め難い。 また,前記第2の1(4)ウのとおり,三者合意においては,本件融資の利息について,県は,E漁協及びその組合員の実質的負担とならないような措置を講ずることを約束(利息の実質負担回避の約束)しているため,本件融資の利息が発生した場合には,それを負担しなければならないことになるところ,前記第2の1(4)ウ及びエのとおり,融資期間は,県・金融機関・E漁協の協議によって変更できるものとされ,本件融資の元本はE漁協の漁業権放棄による補償金によって返済することが予定されていたため,本件埋立計画の実施が遅れれば,融資期間はその分だけ長期化し,利息も多額になるおそれがあったが,昭和57年7月の時点では本件埋立計画の具体性を欠いていたにもかかわらず,本件埋立計画の実施が遅れた場合や本件埋立計画が実現しない場合については,何ら検討がなされておらず,県の多額の負担を回避するための措置が講じられていない。実際,前記(ア)のとおり,本件埋立計画は中止となり,前記第2の1(5)のとおり,県は,三者合意に基づき,本件各債務引受けをし,平成11年10月29日時点において,55億3990万2340円 いない。実際,前記(ア)のとおり,本件埋立計画は中止となり,前記第2の1(5)のとおり,県は,三者合意に基づき,本件各債務引受けをし,平成11年10月29日時点において,55億3990万2340円(元本41億1080万円,利息14億2910万2340円)という多額の債務を負担し,前記第2の1(6)のとおり,これを平成11年度及び平成12年度の2か年に分割して支払ったため,本件融資の元本(42億9750万円)を超える56億0958万6656円の支出をすることになった。 そして,本件融資の元本の返済がされておらず,その利息が発生し続ける以上,前記第2の1(4)ウの利息の実質負担回避の約束によれば,県には更なる負担のおそれがある。 以上のとおり,三者合意は,それに基づく本件融資の融資額についてその全額を融資する必要性があったとは認め難いことに加えて,本件埋立計画の実施が遅れた場合や本件埋立計画が実現しない場合に,県に多額の債務が無限定に発生する構造になっており,経済性の発揮という,地方公営企業の経営の基本原則(地方公営企業法3条)にも反することから,契約内容の相当性を欠くものといわざるを得ない。 前記第2の1(7)のとおり,企業庁の行う土地造成整備事業は独立採算性がとられていて,本件各支出の財源は,浦安2期地区及び京葉港地区の土地分譲収入が充てられ,県民が納付する税金等が充てられていないとしても,それは前記判断を左右するに足りない。 (c) 三者合意の瑕疵以上によれば,三者合意は,契約目的に合理性が認められるものの,契約内容の相当性を欠き,企業庁長の裁量権を逸脱するものとして,瑕疵があるといわなければならない。 イ本件各債務引受けの瑕疵の有無三者合意は,前記アのとおり瑕疵があるものの,私法上有効であり,県には,三者合意により,基 企業庁長の裁量権を逸脱するものとして,瑕疵があるといわなければならない。 イ本件各債務引受けの瑕疵の有無三者合意は,前記アのとおり瑕疵があるものの,私法上有効であり,県には,三者合意により,基本的に,E漁協に対し,本件融資の利息について,E漁協及びその組合員の実質的負担とならないような措置をとる義務が生じたといえる。 本件各債務引受けは,三者合意により生じた私法上の義務を履行するため,県が,本件融資の利息について,E漁協及びその組合員の実質的負担とならないような措置の具体化として行ったものであり,また,既に発生した私法上の義務を消滅させる手段もなかったといえるから,本件各債務引受け自体に瑕疵があるということはできない。 (3) 本件各支出決定及び本件各支出命令の違法性の有無ア証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告Fは,企業庁長に就任した平成11年4月1日から半年以内には,企業庁の担当者から説明を受けたり,昭和57年6月8日付け協定書,昭和57年6月12日付け合意書,昭和57年7月5日付け確認書,昭和57年7月14日付け本件融資協定書,本件各債務引受けの書面(転業準備資金の融資に伴う利息に関する協定書)4通,「市川2期・京葉港2期計画の見直し案について」と題する書面等を見るなどして,本件埋立計画が環境問題の調査等で遅延しており,本件融資が約17年の長期間にわたっていて,E漁協が本件融資の利息支払のために借り受けた債務(県が引き受けた債務)の元本及び利息が合計約55億円という多額になっていることを認識した。 (イ) ところで,企業庁としては,本件各引受債務について,本件埋立計画が具体化した時点で,漁業権全面放棄による補償と一体的に解決する予定であったが,前記(2)ア(ア)gの平成11年6月の見直し案により, ところで,企業庁としては,本件各引受債務について,本件埋立計画が具体化した時点で,漁業権全面放棄による補償と一体的に解決する予定であったが,前記(2)ア(ア)gの平成11年6月の見直し案により,本件各引受債務の処理について早急に対応する必要が生じた。また,企業庁長(被告F)は,同年9月20日付けで,E漁協から,前記見直し案に対する回答を求める要望書が提出され,その中に,転業準備貸付金の決着について(今年度内の終結を望む)という項目があるため,同年10月15日付けで,E漁協に対し,環境会議を経て,埋立実施計画の策定後に,関係機関と調整を図りながら,できるだけ早期に漁業補償交渉を開始し,その中で転業準備資金の処理についてE漁協と誠意をもって協議したいと回答した。 (ウ) 被告Fは,平成11年12月下旬,本件各引受債務を返済することを決断をしたが,それは,本件各引受債務を返済することによりその利息が増え続けるのを断ち切って,将来における県の負担の軽減を図るためであった。 そして,被告Fは,三者合意,本件各債務引受けなどについて,無効・取消事由など法律上の問題がないかを検討したが,ないという結論に達したため,本件各支出決定及び本件各支出命令をした。 イ違法性の有無(ア) 前記(2)アのとおり,本件各支出決定及び本件各支出命令の原因行為である三者合意には瑕疵があり,前記アのとおり,被告Fには,本件埋立計画の遅延,本件融資の長期化により本件融資の利息額が多額になっていることの認識があり,職務上,三者合意の内容を知っていたのであるから,その瑕疵の存在を認識することは可能であったといえる。 しかし,前記(2)イのとおり,本件各支出決定及び本件各支出命令の直接の原因行為である本件各債務引受けには瑕疵があるとはいえないこと,本件各支出決定及び本件各 を認識することは可能であったといえる。 しかし,前記(2)イのとおり,本件各支出決定及び本件各支出命令の直接の原因行為である本件各債務引受けには瑕疵があるとはいえないこと,本件各支出決定及び本件各支出命令は本件各債務引受けにより私法上負っている債務の履行としての本件各支出を行うためにされたものであること,被告Fには,原因行為の瑕疵の是正可能性がなかったことからすれば,本件各支出決定及び本件各支出命令は,本件融資の元本についての問題とは別に,利息に関する問題(本件各引受債務の元本・利息の問題)のみを先に処理するものであるという点も含めて,企業庁長の裁量の範囲内の行為といえる。 (イ) 原告らは,原因行為の瑕疵の是正可能性に関して,被告Fには,三者合意及び本件各債務引受けにつき,錯誤無効,事情変更の原則による失効,公序良俗違反による無効,歩積み両建て融資に関する規制の趣旨違反の法的主張による是正可能性があった旨主張する。しかし,前記(2)ア(ア)認定の事実(前記第2の1の事実を含む。)関係等の下において,この主張は採用することができない。すなわち,錯誤無効の主張については,埋立ての時期につき当事者の認識と事実とが一致しないかどうかが明らかではないし,県側に民法95条但書の重大な過失の問題もあり得るから,錯誤無効の主張をするのは困難である。また,事情変更の原則の主張については,埋立てが実現できなかったことについて,県側の責任の問題があるので,融資金融機関に対し,事情変更の原則による契約の失効を主張するのは困難である。さらに,公序良俗違反の主張についてはこれを認めるに足りないし,歩積み両建て融資に関する規制の趣旨違反の主張については,そのような違反があることによって,本件融資が違法であるとまではいえない。したがって,以上の法的主張によって, てはこれを認めるに足りないし,歩積み両建て融資に関する規制の趣旨違反の主張については,そのような違反があることによって,本件融資が違法であるとまではいえない。したがって,以上の法的主張によって,被告Fに,原因行為の瑕疵の是正可能性があったということはできない。 また,原告らは,契約当事者の話し合いによる三者合意の抜本的見直しの可能性があった旨主張する。しかし,原告らの主張は,県以外の契約当事者が,県に任意に協力することを前提とするものであり,そのような前提のもとに見直しの可能性があることをもって,被告Fに,原因行為の瑕疵の是正可能性があったということはできない。実際,本件各債務引受けは,Eの県に対する「利息の実質負担回避の約束の履行の要望」を受けてされたこと(前記第2の1(5)のとおり),E漁協は,本件融資による金員を転業準備資金として組合員に貸し付けたことにより,約80パーセントの組合員が漁業をやめて転業等していること(前記(2)ア(ア)hのとおり),B連合会にとって本件融資による負担は軽いものとはいえないし,E漁協は,企業庁に対し,本件融資による利息負担により経営が危機的状況にあると訴えるなどしており,三者合意による本件融資の処理に関して,県・B連合会・E漁協の利害の対立は深刻であること,転業準備資金に係る補償検討委員会は,諮問を受けて,企業庁は,E漁協に対し,本件埋立計画の中止に伴う代償措置を講じて,金銭的な補償を行うのが適切であるとした上,その補償金の額は転業準備資金の清算に必要な金額であるべきであると答申したこと(前記(2)ア(ア)hのとおり)などに照らすと,被告Fにおいて,契約当事者の話し合いによる三者合意の抜本的見直しの可能性があったとは認め難い。 (ウ) したがって,被告Fには,本件各支出決定及び本件各支出命令をす ア)hのとおり)などに照らすと,被告Fにおいて,契約当事者の話し合いによる三者合意の抜本的見直しの可能性があったとは認め難い。 (ウ) したがって,被告Fには,本件各支出決定及び本件各支出命令をするに際し,予算執行の適正を確保するために,財務会計法規上の義務として,本件各支出決定及び本件各支出命令をしてはならない義務が存したと認めることは困難であり,本件各支出決定及び本件各支出命令には,財務会計法規上の義務違反はなく,違法とはいえない。 よって,本件各支出決定及び本件各支出命令をしてはならない義務の存在を前提として,被告Fが,これに違反したことを理由とする原告らの被告Fに対する損害賠償の請求には理由がない。 3 被告Aについてなお,仮に被告Aが,本件各支出決定,本件各支出命令又は本件各支出について,旧地自法242条の2第1項4号にいう「当該職員」に該当し,被告Aに対する請求に係る訴えが適法であるとしても,被告Fにおけるのと同様の理由により,被告Aには,本件各支出決定,本件各支出命令又は本件各支出について,財務会計法規上の義務違反はなく,違法とはいえないから,被告Aに対する損害賠償請求は理由がない。 第4 結論以上によれば,原告らの被告Aに対する請求に係る訴えは不適法であるからこれを却下し,原告らのその余の請求(被告Fに対する請求)は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第3部裁判長裁判官山口博裁判官佐々木清一裁判官武田美和子は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官山口博(別紙省略) 裁判長 裁判官山口博(別紙省略)
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