平成26(行コ)91 法人税更正処分取消等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成28年2月10日 名古屋高等裁判所 名古屋地方裁判所 平成23(行ウ)116
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判決文本文15,642 文字)

- 1 -平成28年2月10日判決言渡名古屋高等裁判所平成26年(行コ)第91号法人税更正処分取消等請求控訴事件(原審・名古屋地方裁判所平成23年(行ウ)第116号)主文 一審被告の控訴に基づき,原判決中,一審被告の敗訴部分を取り消し,同部分に関する一審原告の請求を棄却する。 一審原告の控訴を棄却する。 訴訟費用は第一審,第二審とも一審原告の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 一審原告の控訴の趣旨( )原判決を次のとおり変更する。 処分行政庁が平成22年6月28日付けで一審原告に対してした一審ア原告の平成19年4月1日から平成20年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち所得金額1809億7870万9733円,納付すべき税額309億7419万2100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 イ処分行政庁が平成25年2月28日付けで一審原告に対してした一審原告の平成20年4月1日から平成21年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち所得金額マイナス698億6583万4166円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金698億6583万4166円を下回る部分を取り消す。 ウ一審原告の訴えのうちその余の部分をいずれも却下する。 ( )訴訟費用は第一審,第二審とも一審被告の負担とする。 一審被告の控訴の趣旨主文1,3と同旨- 2 -第2事案の概要本件は,内国法人である一審原告が,平成19年4月1日から平成20年 3月31日までの事業年度(以下「平成20年3月期」という。)及び同年4月1日から平成21年3月31日までの事業年度(以下「平成21年3月期」といい,平成20年3月期と併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について,確定申告をしたと原 期」という。)及び同年4月1日から平成21年3月31日までの事業年度(以下「平成21年3月期」といい,平成20年3月期と併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について,確定申告をしたと原判決別表4及び5記載のとおりそれぞれ租税特別措置法(平成21年法律第13号による改正ころ,処分行政庁は,前のもの。以下「措置法」という。)66条の6第1項(タックスヘイブン対策税制)により,シンガポール共和国(以下「シンガポール」という。)において設立された一審原告の子会社であるの課税対象留保金額に相当する金A額が,一審原告の本件各事業年度の所得金額の計算上益金の額に算入されるなどとして,の法人税につき,原判決別表4記載のとおり更平成20年3月期正処分,過少申告加算税賦課決定処分等をし,の法人税に平成21年3月期つき,原判決別表5記載のとおり更正処分をしたことに関し,一審原告がこれらの処分の取消しを求めた事案である。 処分行政庁が平成22年6月28日付けで一審原告に対し一審原告は,①てした一審原告の平成20年3月期の法人税の更正処分のうち所得金額1809億7870万9733円,納付すべき税額309億7419万2100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分の取消し,②処分行政庁が平成22年6月28日付けで一審原告に対してした一審原告の平成21年3月期の法人税の更正処分のうち所得金額マイナス688億6903万1633円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金688億6903万1633円を下回る部分の取消し,③処分行政庁が平成24年6月22日付けで一審原(ただし平告に対してした一審原告の平成21年3月期の法人税の更正処分成24年10月12日付け減額再々更正処分により一部取り消された後のものうち所得金額マイナス698億6583万 2日付けで一審原(ただし平告に対してした一審原告の平成21年3月期の法人税の更正処分成24年10月12日付け減額再々更正処分により一部取り消された後のものうち所得金額マイナス698億6583万4166円を超える部分及の)- 3 -び翌期へ繰り越す欠損金698億6583万4166円を下回る部分の取消し,並びに④処分行政庁が平成25年2月28日付けで一審原告に対してした一審原告の平成21年3月期の法人税の更正処分のうち所得金額マイナス698億6583万4166円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金698億6583万4166円を下回る部分の取消しを求めて,本件訴えを提起した。 処分行政庁原審は,一審原告の上記①の請求は理由があり,上記④のうちが平成25年2月28日付けで一審原告に対してした一審原告の平成21年3月期の法人税の更正処分のうち所得金額マイナス688億6903万1633円を超える部分及び翌期へ繰り越す欠損金688億6903万1633円を下回る部分の取消しを求める部分の請求は理由があるとして,これらを一審原告の上記②の訴え,上記③の訴え,及び上記④のういずれも認容し,処分行政庁が平成25年2月28日付けで一審原告に対してした一審原告ちの平成21年3月期の法人税の更正処分のうち所得金額マイナス688億6903万1633円を超えない部分及び翌期へ繰り越す欠損金688億6903万1633円を超える部分の取消しを求める部分の訴えは,いずれも不適法であるとして,これらを却下した。 これに対し,一審原告は,上記④のうち原審が訴えを却下した部分の一審原告の請求の認容を求めて控訴した(なお,一審原告は,原判決のうち上記②の訴え及び上記③の訴えを却下した部分については,控訴をしていな)。 い。 また,一審被告は,原審が請求を認容した部 部分の一審原告の請求の認容を求めて控訴した(なお,一審原告は,原判決のうち上記②の訴え及び上記③の訴えを却下した部分については,控訴をしていな)。 い。 また,一審被告は,原審が請求を認容した部分の一審原告の請求の棄却を求めて控訴した。 本件に関係する法令等の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり付加訂正するほかは,原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」の2ないし5のとおりであるから,これを引用する。 - 4 -( )原判決13頁25行目冒頭から26行目末尾までを次のとおり改める。 「上記争点について一方当事者の主張を前提とした場合における一審原告の納税金額,納付すべき税額,還付所得税額及び翌期へ繰り越す欠損金の額が,それぞれ上記のとおりであることについては,当事者間に争いがない。」( )原判決17頁5行目末尾の次に,行を改めて次のとおり加える。 「更正の請求は,納税義務の確定手続という租税行政手続の一環として納税申告の過誤是正のために法定されている手続であり,通則法23条は公定力が生じる前の段階についての規定であるが,課税処分に対して,取消訴訟等を経ることなく国家賠償訴訟を提起することが認められている(最高裁平成22年6月3日第1小法廷判決・民集64巻4号1010頁(以下『平成22年最判』という。))。国家賠償による納税者の権利救済の場面では,更正処分の公定力の意味を実質的に否定することになることを是認しながら,同じく更正処分取消訴訟という納税者の権利救済の場面で,公定力が生じる前の段階の行政手続上の制約を理由に,訴えの適法性を否定することは背理である。 さらに,平成22年最判によって破棄された原判決は,取消訴訟等を経ずに国家賠償訴訟を提起することを否定したものであるが,訴え却下で 行政手続上の制約を理由に,訴えの適法性を否定することは背理である。 さらに,平成22年最判によって破棄された原判決は,取消訴訟等を経ずに国家賠償訴訟を提起することを否定したものであるが,訴え却下ではなく,請求棄却という判決がなされており,訴訟要件の問題としてとらえていないことを踏まえても,通則法23条の趣旨を訴訟要件の根拠とすることができないことは明らかである。」( )原判決18頁21行目末尾の次に,行を改めて次のとおり加え,同頁22 行目の「(ア)」を「(イ)」と,19頁13行目の「(イ)」を「(ウ)」と,同頁23行目の「(ウ)」を「(エ)」と,20頁6行目の「(エ)」を「(オ)」と改める。 「(ア) 措置法66条の6第3項にいう『主たる事業が株式の保有である』こと(以下,このような事業を『株式保有業』という。)の意義- 5 -同項を含むタックスヘイブン対策税制は,昭和53年3月31日に成立した『租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律』(昭和53年法律第11号)によって新設されたものであるところ,その立案担当者は,株式保有業の典型的なものとして,持株会社及び投資会社を適示し,株式保有業とはわざわざタックス・ヘイブンに子会社を設立して行うための経済的な合理性,必要性がなく,国内からでも十分に営むことのできるものであると説明している(乙33,38頁~39頁)。そして,上記の持株会社とは,当時の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成9年法律第87号による改正前のもの。以下『独占禁止法』という。)9条3項が定義するとおり『株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を所有することにより,国内の会社の事業活動を支配することを主たる事業とする会社』をいうのであるから,単に株式を保有して配当を受けるだけ 条3項が定義するとおり『株式(社員の持分を含む。以下同じ。)を所有することにより,国内の会社の事業活動を支配することを主たる事業とする会社』をいうのであるから,単に株式を保有して配当を受けるだけにとどまらず,株式所有に基づく資本参加によって会社機関の意思形成に決定的な影響力を与えることをもって,本来自由であるべき他会社の事業活動をその主要な事項に関し自己の意思に従って統一的に指揮することを通じて当該株式発行会社を支配するものを含むものであって,このような持株会社は,本件で問題となっている地域統括機能を含む被支配会社に対する管理機能を中心的な業務とするものである。 したがって,地域統括業務等の被支配会社を管理する業務は,株式保有業に含まれる業務にすぎず,株式保有業から独立した事業とはいえない。」( ) 原判決21頁6行目の「(オ)」を「(カ)」と改め,11行目末尾の次に,行を改 めて次のとおり加え,12行目の「(カ)」を「(キ)」と,23行目の「(キ)」を「(ク)」と改める。 「このことは,措置法の上記改正がされた第174回国会の参議院財政金融委員会における青山慶二参考人の発言(乙28)や,上記改正に関する経済産業省作成の資料である『平成22年度税制改正について』(乙29)から- 6 -も明らかである。」( ) 原判決23頁21行目末尾の次に,行を改めて次のとおり加える。 「一審被告は,株式保有業に統括業務が含まれると主張するが,『株式の保有』という文言の文理解釈上,そのように解することはできない。『保有』とは,自分のものとして持ち続けることを指す概念であり(甲65),『保有』という用語は,状態に着目した概念である。したがって,『株式・・・の保有・・・を主たる事業とするもの』とは,株式を自己のものとして持ち続けることを主た 続けることを指す概念であり(甲65),『保有』という用語は,状態に着目した概念である。したがって,『株式・・・の保有・・・を主たる事業とするもの』とは,株式を自己のものとして持ち続けることを主たる事業とするものを意味することになる。このような理解は,会社法等の私法領域で用いられているものであり,投資事業有限責任組合契約に関する法律等が『株式の保有』とその被統括会社からの信頼に基づき経営又は技術の指導を行うことを別個の事業と規定していることからも明らかである。他方,租税法上,この点について明確な定義規定は見当たらないのであるから,借用概念として同様に解すべきであり,これと異なる解釈を採ることは,文理解釈に反するばかりか,租税法律主義にも反することとなる。 なお,平成22年改正措置法66条の6第3項により,主たる事業が『株式等の保有』である統括会社で,被統括会社に対する統括業務を行うものについては,事業基準により適用除外規定の適用対象とならない特定外国子会社等から除く旨規定された。しかし,これを根拠として,Aの行っていた地域統括業務が株式保有業に含まれるものであると解釈することはできない。 上記改正前の同項は,統括会社が事業基準を満たす場合も想定しているのである。地域統括業務のような実態ある事業こそが主たる事業であるというのがビジネス界の共通した認識であり,現地で実態ある会社がたまたま株式を保有しており,これによる配当等が他の事業の収入を上回るからといって,それだけで主たる事業が株式保有業になるというのは,実務的に全く想定していなかったというのが,ビジネス界の感覚であった。措置法の上記改正が- 7 -された第174回国会の参議院財政金融委員会において,青山慶二参考人は,『主な事業が株式の保有等であれば合算対象から除外されないこととさ が,ビジネス界の感覚であった。措置法の上記改正が- 7 -された第174回国会の参議院財政金融委員会において,青山慶二参考人は,『主な事業が株式の保有等であれば合算対象から除外されないこととされておりました。』,『持ち株会社等は合算対象にしてしまうということでございました。』などと発言しているが,これは,国会における参考人として,議員に制度の概要をわかりやすく説明することに主眼があったもので,事業基準に関する精緻な法解釈を踏まえた発言となっていなかったのは明らかである。また,経済産業省作成の『平成22年度税制改正について』(乙29)についても,『課税対象となる。』とするのではなく,『課税対象となるケースがあり』とあえて記載されている以上,統括会社であっても,事実関係次第では適用除外基準(改正前)を満たすため,課税対象にならない場合を当然に想定していたもので,統括会社が,改正前の主たる事業の解釈上,必ず株式保有業に該当するとの断定的解釈を示したものではない。」( )原判決24頁20行目末尾の次に,行を改めて次のとおり加える。 「地域統括事業は,必ずしも被統括会社の株式を保有することを当然の前提とするものではない。地域統括会社が被統括会社の株式を保有しない事例も数多く存在し,このような場合,地域統括事業の対価は,配当以外の形となり,株式保有業に包含される関係には立ち得ないのである。」( )原判決24頁25行目末尾の次に,行を改めて次のとおり加える。 「特定外国子会社等が行っている実質的な能動的活動実態が一つの『事業』を構成する場合にも,当該事業が現地で営まれた結果,子会社の利益が高まり,配当が増加することになったという間接的な関連性をとらえて,これが受動的性格を有する株式保有業であると結論づけるのは,単なるご都合主義に 合にも,当該事業が現地で営まれた結果,子会社の利益が高まり,配当が増加することになったという間接的な関連性をとらえて,これが受動的性格を有する株式保有業であると結論づけるのは,単なるご都合主義にすぎないのである。」( )原判決25頁5行目末尾の次に,行を改めて次のとおり加える。 「なお,平成22年の時点で,アジア事業の地域マネジメントについて,約6割弱の企業グループが日本本社直轄で行っていたとされているが,Aが多- 8 -くの経営資源を投下して所在地国で地域統括業務を行っているのに対し,これらの企業グループがどのような事業展開をしているのかその内容は明らかでない。むしろ,約4割強の企業グループは,『現地での地域統括』の必要性,経済的合理性があるからこそ,現地に統括会社を設立していることが窺えるのであり,一律に軽課税国に本店を置くことに積極的な経済合理性を認め難いとすることは,4割強もの企業グループが現地で地域統括を行っている実態を根拠なく無視するものであり,地域統括の本質を見誤ったものである。」( ) 原判決25頁8行目末尾の次に,行を改めて次のとおり加える。 「仮に,Aが,株式保有業を独立した事業として行っていると認められたとしても,株式保有業は,被統括会社に対する統率力や経営統制の強化等の地域統括業務を効果的に行うための一つの機能ないし手段という従たるものにすぎないのである。」第3当裁判所の判断 一審被告の控訴について( )Aの業務内容等に関する認定事実は,以下のとおり付加訂正するほかは, 原判決「事実及び理由」の「第3当裁判所の判断」の2( )のとおりであ るから,これを引用する。 ア原判決41頁9行目に「これらに」とあるのを「これら」と改める。 イ原判決42頁12行目に「28人以上」とあるの 由」の「第3当裁判所の判断」の2( )のとおりであ るから,これを引用する。 ア原判決41頁9行目に「これらに」とあるのを「これら」と改める。 イ原判決42頁12行目に「28人以上」とあるのを「20人以上」と改め,14行目から15行目及び22行目から23行目の「株式保有業務(持株機能に係る業務)」とあるのをいずれも「持株(株主総会・配当処理等)に関する業務」と改める。 ウ原判決45頁26行目に「原告が」とあるのを「一審原告は,」と改め,46頁2行目に「が勘案された。」とあるのを「を勘案したとしている。」と改める。 - 9 -( )Aは,株式の保有を「主たる事業」(措置法66条の6第3項括弧書き) とするものかどうか(本案の争点①)についてアAは,次のとおり株式の保有を「主たる事業」とするもの,すなわち,株式保有業を目的とするものであり,一審原告の主張する地域統括業務は,株式保有事業に含まれる一つの業務にすぎず,株式保有業と別個独立の業務とはいえないものと認められる。 すなわち,上記括弧書きの「株式の保有」という文言のみに着目すると,株式を自己のものとして持ち続けることのみを意味するものと見えないではないが,これを事業として行う以上,それによって利益を受けることが当然に含意されているのであり,その利益を得る方法としては,保有する株式数が発行済株式の半数に遠く及ばない者のように,株式発行会社の経営に介入はもとより関与することもなく,単に会社の定めた額の配当を受領するにとどまる場合もあれば,発行済株式の過半を有する者の場合には,株式発行会社を支配し,その人事や業務内容を自己の意のままに決定することを通じて,より多くの配当を得ようと活動することもあり,独占禁止法9条3項にいう持株会社は,後者の典型例である。したがって,事業 式発行会社を支配し,その人事や業務内容を自己の意のままに決定することを通じて,より多くの配当を得ようと活動することもあり,独占禁止法9条3項にいう持株会社は,後者の典型例である。したがって,事業としての「株式の保有」とは,単に株式を保有し続けることのみならず,当該株式発行会社を支配しかつ管理するための業務もまた,その事業の一部をなすというべきであり,本件で問題となっている一定地域内にある被支配会社を統括するための諸業務もまた,株式保有業の一部をなし措置法66条の6第3項括弧書きの「事業」に該当することは明らかである。 イアに述べた株式保有業に関する解釈は,その後の法改正によっても裏付けられる。すなわち,平成22年改正措置法66条の6第3項により,主たる事業が「株式等の保有」である統括会社で,被統括会社に対する統括業務を行うものについては,事業基準により適用除外規定の適用対象とな- 10 -らない特定外国子会社等から除く旨規定された。これは,統括業務が,株式保有業の一つの業務であって配当を増加させるために行われるものであるとしても,内国法人が海外における企業戦略を有利に進めていくために有効であることから,被統括会社に対する統括業務を行うものを,事業基準により適用除外規定の適用対象とならない特定外国子会社等から除くこととしたものと理解できるのであり,以上に述べたところと整合するものである。このことは,措置法の上記改正がされた第174回国会の参議院財政金融委員会において,青山慶二参考人が,「これまでは主な事業が株式の保有等であれば合算対象から除外されないこととされておりました。 いわゆる持ち株会社等は合算対象にしてしまうということでございました。今回の法案によりますと,企業実体を伴っていると認められる統括会社につきましては,資産所得 ら除外されないこととされておりました。 いわゆる持ち株会社等は合算対象にしてしまうということでございました。今回の法案によりますと,企業実体を伴っていると認められる統括会社につきましては,資産所得を除いて合算対象から除外することを認めることとされております。」などと述べていることからも明らかである(甲15,乙28,66)。 これについて,一審原告は,国会における参考人として,議員に制度の概要をわかりやすく説明することに主眼があったもので,事業基準に関する精緻な法解釈を踏まえた発言となっていなかったのは明らかであるなどと主張する。 しかし,上記発言は,立法機関である国会において,措置法改正の審議の中で述べられているものであるから,改正の前提となる立法事実として把握されているところが端的に述べられたものと認められるのであって,被統括会社に対する統括業務を行うものが,事業基準により適用除外規定の適用対象とならないのであれば,そもそも上記措置法の改正自体が必要がなかったのであるから,精緻な法解釈をするまでもなく,法改正の意図は明らかである。すなわち,上記の法改正は,前記のとおり,子会社に対して行われる地域統括業務は,株式保有業に本質的に伴うもので,株式保- 11 -有業のための業務として含まれているものであることを前提としつつも,地域統括業務が実体を伴って行われている場合に,合算対象から除外することとしたのであって,このことは,海外進出した内国法人の置かれた環境の変化等を踏まえて新たな立法政策を採用したことを示すものであり,経済産業省作成の「平成22年度税制改正について」(乙29)においても明確に示されているし,その当時,上記改正について示された国税庁の見解とも合致しているところである(乙76)。 ウそして,実際にもAは,地域統括業務か 22年度税制改正について」(乙29)においても明確に示されているし,その当時,上記改正について示された国税庁の見解とも合致しているところである(乙76)。 ウそして,実際にもAは,地域統括業務から利益を得るのではなく,保有する株式の配当によって得ているのであり,「主たる事業」は,名実ともに株式保有業と認められるのである。 会社は営利法人であり,利益を上げることを目的として,集めた資本等を経済的合理性があるように運用しているのであるから,「主たる事業」の判断に当たって,当該事業のために保有している財産の資産総額に占める割合や当該事業による所得金額の多寡を重視すべきことは当然である。 そして,Aが地域統括業務自体から利益を得ていないのは,そもそも同業務の成果により被支配会社の利益を増大させ,それを配当収入として取得しようとしたものであって,地域統括業務自体から利益を得ようとはしていなかったからであり,地域統括業務による収益状況がたまたま芳しくなかったことによって,これによる所得金額が少なくなったことに起因するものではない。 一審原告は,①一審原告自身が株式を保有し,一審原告自身が地域統括業務も行うこと,②一審原告自身が株式を保有し,Aに地域統括業務を行わせること,③Aに株式を保有させ,地域統括業務も行わせること等のいずれを選択することも可能だったのである。また,Aは,地域統括業務の対価について,実費を徴収するか,地域統括業務の提供先であるグループ会社の売上高等に一定の料率を乗じた金額として徴収しているが,実費を- 12 -超えて徴収するか,上記の料率をどのように設定するかによって,地域統括業務によって得る利益を多くし,配当によって得る利益を少なくすることも,逆に,地域統括業務によって得る利益を少なくし,配当によって得る利益を多くする 記の料率をどのように設定するかによって,地域統括業務によって得る利益を多くし,配当によって得る利益を少なくすることも,逆に,地域統括業務によって得る利益を少なくし,配当によって得る利益を多くすることも選択可能である。そして,一審原告のグループにおいては,新規子会社の設立,増減資,企業買収,合併,分社,清算等は,一審原告の企画の下にその承認を受けて行われることになっており,配当についても,基本的に一審原告が設定した配当性向に従って実施されることになっていたのである。そのため,一審原告は,これらの選択を行うことによって,日本において課税されることを免れ,シンガポールの優遇税制により課税される額が少なくなるように調整することが可能であった。すなわち,一審原告が主張するような地域統括業務が株式保有業に含まれるものではないとの法解釈を採ると,一審原告が実質的に支配するグループ企業の利益を,どこに留めるかということについて,グループ企業を支配している一審原告は,いかようにも行うことが可能なのであり,課税との関係で調整することが可能となるのである。 また,地域統括業務は,その多くが我が国において行うことが可能であるし,海外に支店を設けることによっても可能なものである。そして,地域統括業務は,各孫会社が利益を上げられるようにするために行うものであるから,海外に地域統括業務を行う子会社を設立して孫会社の株式を保有させる必要はなく,本社が株式を保有して地域統括業務を行えば足りるのであるから,あえて子会社にこれを行わせるのは,低い税率の適用を受けるためのものというほかない。 なお,現に相当の人員と設備によって他の業務を行っている場合については,措置法の平成17年改正による人件費10%控除によって考慮されているのであるから,Aにおける地域統括業務が実体の いうほかない。 なお,現に相当の人員と設備によって他の業務を行っている場合については,措置法の平成17年改正による人件費10%控除によって考慮されているのであるから,Aにおける地域統括業務が実体のあるものであることは,以上の認定の妨げとなるものではない(乙81)。 - 13 -エ一審原告の反論について(ア)一審原告は,前記アのような解釈は文言解釈にも私法一般に用いられている概念にも反すると主張するが,この主張は「株式の保有」という文言のみに着目しているものであり,本件で検討すべきことが「株式の保有を目的とする事業」の意義であることを看過したものというほかなく,その前提において誤っている。また,一審原告は,投資事業有限責任組合契約に関する法律等が株式の保有と被保有会社に対する経営又は技術の指導とが別個独立の事業として規定されていることをその主張を根拠付けるものとしている。しかし,同法は,営利法人としての会社一般を対象とするものではなく,事業者への資金供給を促進するための投資事業を行う有限責任組合に関する法律であるから,本来,同法にいう有限責任組合の行う事業は上記の目的に沿った投資事業に限定されるものであるが,同法は,これに関連する事業として一審原告の指摘する「経営又は技術の指導」も事業として行えることとし,そのことを注意的に規定したにすぎない。そのほか,一審原告がこれに関連して指摘する中小企業投資育成株式会社法についても,ほぼ同様のことが妥当するところであり,これらの法律の規定は,前記アの解釈を採ることを妨げるものではない。 (イ)一審原告は,株式の保有を事業とするといえるには,株式の売買収入により収益を上げるような資産運用的な所得の獲得を目的としていること等を要するなどと主張する。しかし,株式の保有によって得る本質的な利 一審原告は,株式の保有を事業とするといえるには,株式の売買収入により収益を上げるような資産運用的な所得の獲得を目的としていること等を要するなどと主張する。しかし,株式の保有によって得る本質的な利益は,前記のとおりであって,一審原告の主張は「資産運用的な所得の獲得」として,株式の配当を得ることや,得られる配当を増加させて所得を獲得することを含まないと主張するもののようであるが,そうであるとすれば,一審原告の主張は失当といわざるを得ない。 (ウ)一審原告は,地域統括事業は,必ずしも被統括会社の株式を保有する- 14 -ことを当然の前提とするものではなく,地域統括会社が被統括会社の株式を保有しない事例も数多く存在し,このような場合,地域統括事業の対価は,配当以外の形となり,株式保有業に包含される関係には立ち得ないなどと主張する。 しかし,地域統括業務を行っている会社が,地域統括業務の提供先の被統括会社の株式を保有していないことがあるとしても,地域統括業務と株式保有業の前記のような関係からすれば,地域統括業務が現に株式を保有している子会社に対して行われている場合に,それが株式保有業の内容をなすものとして,株式保有業を「主たる事業」と認定することの妨げとなるものではないというべきである。そして,少なくとも,Aのように,資産の過半が株式の保有に充てられ,利益の大部分を保有する株式の配当によって得ている場合には,まさに,地域統括業務が株式保有業のために行われているといえるのであって,Aの「主たる事業」は,株式保有業と認められるのである。 また,地域統括会社が被統括会社の株式を保有しない場合には,地域統括会社の親会社(一審原告のような立場の会社)か,又は地域統括会社の親会社が支配する別の子会社が被統括会社の株式を保有しているなど,何らかの形で 括会社が被統括会社の株式を保有しない場合には,地域統括会社の親会社(一審原告のような立場の会社)か,又は地域統括会社の親会社が支配する別の子会社が被統括会社の株式を保有しているなど,何らかの形で株式による支配力を及ぼしていることが多いと想定され,その場合は,親会社への配当に課税されることになったり,別の子会社が株式保有業を営んでいることになって,そこへの配当がタックスヘイブン対策税制の対象となったりするのであるから,地域統括会社が被統括会社の株式を保有している場合とで,実質的な不均衡が生じるものでもない。 (エ)一審原告は,特定外国子会社等が行っている実質的な能動的活動実態が一つの「事業」を構成する場合にも,当該事業が現地で営まれた結果,子会社の利益が高まり,配当が増加することになったという間接的- 15 -な関連性をとらえて,これが受動的性格を有する株式保有業であると結論づけるのは,単なるご都合主義にすぎないなどと主張する。 しかし,特定外国子会社等の能動的活動によって,子会社の利益が高まり,配当が増加することについて,一審原告はその関連性を「間接的」と表現するが,特定外国子会社等の能動的活動は,子会社の利益を高め,配当を増加させるために行っているのであるから,まさに能動的活動の目的とされた結果が生じたことになるのであって,その関連性は,単なる偶然ではなく,強固なものである。むしろ,このような関連性を「間接的」と評価することはできない。 (オ)一審原告は,Aの配当所得の大部分は,地域統括事業の成功の反射的効果であり,実質的にはその対価であるなどと主張する。しかし,上記主張は,地域統括業務が,配当所得を増加させるために行われるものであり,株式保有業の一部をなすものであることを自認しているものであって,地域統括業務が株式保有業 価であるなどと主張する。しかし,上記主張は,地域統括業務が,配当所得を増加させるために行われるものであり,株式保有業の一部をなすものであることを自認しているものであって,地域統括業務が株式保有業による利益を増加させるために行われているという本質がより明らかに示されているといえるのである。 (カ)一審原告は,Aが,株式保有業を独立した事業として行っていると認められたとしても,株式保有業は,被統括会社に対する統率力や経営統制の強化等の地域統括業務を効果的に行うための一つの機能ないし手段という従たるものにすぎない旨主張する。 しかし,Aは,元々株式保有業と無関係な地域統括業務を開始したものではなく,設立当初からグループ各社に対する支配権を有しつつ,地域統括業務を開始したのであるから,株式保有業が地域統括業務の機能ないし手段にすぎなかったとは認め難い。 (キ)一審原告は,地域統括業務が株式保有業とは別個独立の事業であることを前提として,いずれを主たる事業と評価すべきかについて,縷々主張しているが,アで説示したとおり,地域統括業務は株式保有業中の一- 16 -つの業務にすぎず,別個独立の事業とは認め難いから,これらの主張はいずれもその前提を欠くものといわざるを得ない。 (ク)そのほか,一審原告は,平成22年の時点で,アジア事業の地域マネジメントについて,約6割弱の企業グループが日本本社直轄で行っていたことについて,Aが多くの経営資源を投下して所在地国で地域統括業務を行っているのに対し,これらの企業グループがどのような事業展開をしているのかその内容は明らかでないし,むしろ,約4割強の企業グループは,「現地での地域統括」の必要性,経済的合理性があるからこそ,現地に統括会社を設立していることが窺えるとして,一律に軽課税国に本店を置くことに積 容は明らかでないし,むしろ,約4割強の企業グループは,「現地での地域統括」の必要性,経済的合理性があるからこそ,現地に統括会社を設立していることが窺えるとして,一律に軽課税国に本店を置くことに積極的な経済合理性を認め難いとすることは,4割強もの企業グループが現地で地域統括を行っている実態を根拠なく無視するもので,地域統括の本質を見誤ったものであるなどと主張する。 しかし,一審原告は,Aが多くの経営資源を投下して所在地国で地域統括業務を行っているとするが,Aでは,資産の過半が株式の保有に充てられているのであるから,むしろ株式の保有に多くの経営資源が投下されているというべきである。また,4割強の企業グループが,現地に支店を置くのではなく,地域統括会社を設立して,その本店を現地に置いて地域統括業務を行っていることについては,軽課税国であることが考慮されている可能性があるのであり,むしろ,積極的な経済合理性という観点からすれば,支店を置くことでも対応できる地域統括業務を,軽課税国であることから本店を置いて行っている可能性が高いのであって(原判決「事実及び理由」の「第3当裁判所の判断」の2( )オ (ア)。また,軽課税国が,多くの場合,自国に本店等を設置してもらうために税金を軽くしていることは,公知の事実というべきである。),一審原告の主張は理由がない。 ( )以上のとおり,A各事業年度において,Aは,株式の保有を「主たる事 - 17 -業」(措置法66条の6第3項括弧書き)とするものと認められるから,事業基準を満たさないものである。したがって,その余の点について判断するまでもなく,一審原告の本件各事業年度において,措置法66条の6第1項が適用されることになる。 そうすると,本件各処分及び本件賦課決定処分は,いずれも適法である。 って,その余の点について判断するまでもなく,一審原告の本件各事業年度において,措置法66条の6第1項が適用されることになる。 そうすると,本件各処分及び本件賦課決定処分は,いずれも適法である。 一審原告の控訴について一審原告は,平成21年3月期の法人税に関する第4次更正処分の取消しを求める訴えのうち,原判決において却下された部分は適法な訴えであると主張し,同部分の訴えにかかる請求を認容するよう求めている。 しかし,一審原告は,上記処分の違法事由としては,措置法66条の6第1項の適用の誤りを主張するのみであり,しかも,同項の適用に誤りがなかった場合には,一審原告の平成21年3月期の法人税についての所得金額及び翌期へ繰り越す欠損金の額が第4次更正処分のとおりであることは当事者間に争いがないところ,前記1で認定説示したとおり,上記処分における同項の適用に誤りはないのであるから,仮に上記訴え部分が適法であったとしても,同訴えにかかる請求は理由がないこととなる。もっとも,その場合においても,一審被告はこの部分について控訴を提起していないから,控訴審における不利益変更禁止の原則により,原審において却下された訴えにかかる請求を棄却することはできない。 そうすると,一審原告の上記主張が失当である場合はもとより,それが相当なものであっても,原判決中,一審原告の控訴部分はこれを取り消し又は変更することはできないのであって,一審原告の控訴はいずれにしても失当として棄却すべきものである。 一審原告の請求を認容した部分は不当であるか 以上によれば,原判決中原判決中,一審被告敗訴部分を取り消し,同ら,一審被告の控訴に基づき,部分に関する一審原告の請求を棄却し,一審原告の控訴は失当であるから,こ- 18 -れを棄却することとして,主文のとおり判決する。 決中,一審被告敗訴部分を取り消し,同ら,一審被告の控訴に基づき,部分に関する一審原告の請求を棄却し,一審原告の控訴は失当であるから,こ- 18 -れを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第4部裁判長裁判官藤山雅行裁判官長谷川恭弘裁判官上杉英司

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