主文 西福岡税務署長が平成17年3月4日付けで原告aに対してした原告aの平成13年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額9255万0654円,納付すべき税額112万8000円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも平成17年7月4日付け異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 西福岡税務署長が平成17年3月4日付けで原告aに対してした原告aの平成14年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額9418万6750円,納付すべき税額172万8400円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 西福岡税務署長が平成17年3月4日付けで原告aに対してした原告aの平成15年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額6707万8250円,納付すべき税額147万4200円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 若松税務署長が平成17年3月4日付けで原告bに対してした原告bの平成13年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額9231万5158円,納付すべき税額111万4400円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 若松税務署長が平成17年3月4日付けで原告bに対してした原告bの平成14年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額9563万2500円,納付すべき税額229万9700円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも平成17年7月7日付け異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 若松税務署長が平成17年3月4日付けで原告bに対してした原告bの平成15年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額6724万1500円,納付すべき税額164万8300円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定 処分(ただし,い けで原告bに対してした原告bの平成15年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額6724万1500円,納付すべき税額164万8300円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定 処分(ただし,いずれも平成17年7月7日付け異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 福岡税務署長が平成17年3月4日付けで原告cに対してした原告cの平成13年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額845万5602円,納付すべき税額16万2400円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 福岡税務署長が平成17年3月4日付けで原告cに対してした原告cの平成14年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額839万7250円,納付すべき税額14万5200円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 福岡税務署長が平成17年3月4日付けで原告cに対してした原告cの平成15年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額2033万8000円,納付すべき税額288万4200円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも平成17年7月7日付け異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 八幡税務署長が平成17年3月4日付けで原告dに対してした原告dの平成13年分の所得税に係る更正処分のうち,総所得金額4749万5126円,納付すべき税額79万7200円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求主文と同旨第2事案の概要 本件は,原告らの経営する法人が契約者となり,原告らと同法人が保険料を各2分の1ずつ負担した養老保険契約の満期保険金を受領した原告らが,同法 人負担分も含む保険料全額を,所得税における一時 要 本件は,原告らの経営する法人が契約者となり,原告らと同法人が保険料を各2分の1ずつ負担した養老保険契約の満期保険金を受領した原告らが,同法 人負担分も含む保険料全額を,所得税における一時所得の金額の計算上控除し得る「収入を得るために支出した金額」(所得税法34条2項)に当たるものとして,各税務署長に対し,平成13年分から平成15年分の所得税に係る確定申告をしたところ,各税務署長から,同法人が負担した(保険料として損金処理した)2分の1の保険料は,「収入を得るために支出した金額」に当たらないとして,更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受けたことから,その判断を争い,被告に対し,上記各処分の取消しを求めた事案である。 関係法令等の定め本件に関連する法令等の定めは,以下のとおりである(法文等は,一部省略することがある。)。 ⑴所得税法34条2項(一時所得)一時所得の金額は,その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため,又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し,その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。 ⑵所得税法施行令183条2項(生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得金額の計算上控除する保険料等)生命保険契約等に基づく一時金の支払を受ける居住者のその支払を受ける年分の当該一時金に係る一時所得の金額の計算については,次に定めるところによる。 2号当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額は,その年分の一時所得の金額の計算上,支出した金額に算入する。ただし,次に掲げる掛金,金額又は個人型年金加入者掛金の総額については,当該支出した金額に算入しない。 イ厚生年金保険法第9章の規定に基づく一時金(法31条2号 額の計算上,支出した金額に算入する。ただし,次に掲げる掛金,金額又は個人型年金加入者掛金の総額については,当該支出した金額に算入しない。 イ厚生年金保険法第9章の規定に基づく一時金(法31条2号に掲げるものを除く。)に係る同号に規定する加入員の負担した掛金 ロないしニ(省略)⑶所得税基本通達34-4(生命保険契約等に基づく一時金等に係る所得金額の計算上控除する保険料等。乙28)令第183条第2項第2号又は第184条第2項第2号に規定する保険料又は掛金の総額には,その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額も含まれる。 (注)使用者が負担した保険料又は掛金で36-32により給与等として課税されなかったものの額は,令第183条第2項第2号又は第184条第2項第2号に規定する保険料又は掛金の総額に含まれる。 ⑷所得税法76条1項(生命保険料控除)居住者が,各年において,生命保険契約等に係る保険料又は掛金を支払った場合には,次に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額を,その居住者のその年分の総所得金額,退職所得金額又は山林所得金額から控除する。 1号ないし4号(省略)⑸所得税基本通達76-4(使用者が負担した使用人等の負担すべき生命保険料等。乙36・649頁)役員又は使用人の負担すべき生命保険料等を使用者が負担した場合には,その負担した金額は役員又は使用人が支払った生命保険料等の金額には含まれないものとする。ただし,その負担した金額でその役員又は使用人の給与等として課税されたものは,その役員又は使用人が支払った生命保険料等の金額に含まれるものとする。 ⑹法人税基本通達9-3-4(養老保険に係る保険料。乙24)法人が,自己を契約者とし,役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険 使用人が支払った生命保険料等の金額に含まれるものとする。 ⑹法人税基本通達9-3-4(養老保険に係る保険料。乙24)法人が,自己を契約者とし,役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする養老保険(被保険者の死亡又は生存を保険事故とする生命保険をいい,傷害特約等の特約が付されているものを含むが,9-3-6に定める定期付養老保険を含まない。)に加入してその保険料を支払っ た場合には,その支払った保険料の額については,次に掲げる場合の区分に応じ,それぞれ次により取り扱うものとする。 ⑴死亡保険金(被保険者が死亡した場合に支払われる保険金をいう。)及び生存保険金(被保険者が保険期間の満了の日その他一定の時期に生存している場合に支払われる保険金をいう。)の受取人が当該法人である場合その支払った保険料の額は,保険事故の発生又は保険契約の解除若しくは失効により当該保険契約が終了する時までは資産に計上するものとする。 ⑵死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である場合その支払った保険料の額は,当該役員又は使用人に対する給与とする。 ⑶死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で,生存保険金の受取人が当該法人である場合その支払った保険料の額のうち,その2分の1に相当する金額は⑴により資産に計上し,残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし,役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には,当該残額は,当該役員又は使用人に対する給与とする。 ⑺同通達9-3-5(定期保険に係る保険料。乙37)法人が,自己を契約者とし,役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期保険(一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険をいい,傷害特約等の特約が る保険料。乙37)法人が,自己を契約者とし,役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期保険(一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険をいい,傷害特約等の特約が付されているものを含む。)に加入してその保険料を支払った場合には,その支払った保険料の額については,次に掲げる場合の区分に応じ,それぞれ次により取り扱うものとする。 ⑴死亡保険金の受取人が当該法人である場合その支払った保険料の額は,期間の経過に応じて損金の額に算入する。 ⑻相続税法基本通達3-17(雇用主が保険料を負担している場合。乙3 4)雇用主がその従業員(役員を含む。)のためにその者(その者の配偶者その他の親族を含む。)を被保険者とする生命保険契約に係る保険料の全部又は一部を負担している場合において,保険事故の発生により従業員その他の者が当該契約に係る保険金を取得したときの取扱いは,次に掲げる場合の区分に応じ,それぞれ次によるものとする。 ⑵従業員以外の者の死亡を保険事故として当該従業員が当該保険金を取得した場合雇用主が負担した保険料は,当該従業員が負担していたものとして,当該保険料に対応する部分については,相続税及び贈与税の課税関係は生じないものとする。 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴当事者原告aは,平成8年8月21日,株式会社e(現在の商号は株式会社f。 以下「e」という。)の代表取締役に就任し,現在に至るまで,その地位にある者である。 原告bは,平成元年8月1日,eの取締役に就任し,平成15年12月1日,同社の代表取締役に就任して,現在に至るまで,その地位にある者である。 原告cは,平成10年11月2日,eの取締役に就任し,平成11年2月1日,株式会社g(現在 締役に就任し,平成15年12月1日,同社の代表取締役に就任して,現在に至るまで,その地位にある者である。 原告cは,平成10年11月2日,eの取締役に就任し,平成11年2月1日,株式会社g(現在の商号は株式会社h。以下「g」という。)の取締役に就任して,現在に至るまで,各社の取締役の地位にある者である。 原告dは,平成8年8月21日,eの代表取締役に就任し,平成15年12月1日,これを辞任した者である。 ⑵養老保険契約の締結原告らは,平成8年から平成10年にかけて,契約者をe又はg(以下, この2社をあわせて「e等」ということがある。),被保険者を原告ら又はその親族,保険期間を3年又は5年,死亡保険金の受取人をe等,満期保険金の受取人を原告ら(一部,途中から原告らに変更されたものも含む。)とする養老保険に加入した(これらの保険を全てあわせて,以下「本件養老保険契約」という。乙14ないし17)。その際,社員総会において,e等が受け取る死亡保険金の全部又は相当部分は,退職金又は弔慰金の支払に充当するものとすることなどを定めた「生命保険契約付保に関する規定」を議決した(乙12,13)。 ⑶支払保険料の処理等e等は,本件養老保険契約の支払保険料の経理処理について,その2分の1を保険料として損金処理したため,この部分はe等が負担した扱いとなった。他方,残りの2分の1の保険料については,原告らに対する貸付金等の科目で経理処理されたため,実質的に原告らが負担した扱いとなった。 ⑷満期保険金の受領等本件養老保険契約の保険期間(3年又は5年)が満了した時(平成13年12月16日から平成15年12月17日までの間の日),被保険者である原告ら又はその親族は生存していたため,原告らは,平成13年分,14年分,15年分の満期保険金及び割増保険金(以 た時(平成13年12月16日から平成15年12月17日までの間の日),被保険者である原告ら又はその親族は生存していたため,原告らは,平成13年分,14年分,15年分の満期保険金及び割増保険金(以下「本件満期保険金等」という。)をそれぞれ受領した(乙18ないし21)。 原告らは,本件満期保険金等を受領した際に,前記⑶のようにe等が原告らに対する貸付金として処理した金額を返済した。 ⑸確定申告等原告らは,受領した満期保険金を一時所得として確定申告するに当たり,e等が支払った保険料の全額を「その収入を得るために支出した金額」(所得税法34条2項)として控除できるものとして,別紙各表(原告a,原告b,原告cの別表1ないし3,原告dの別表1)の「確定申告(A)」欄の とおり,平成13年分,14年分,15年分の所得税の確定申告を行った。 原告dは,平成17年3月1日,別紙中原告dの別表1の「修正申告(B)」欄のとおり,修正申告を行った。 ⑹更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分西福岡・若松・福岡・八幡各税務署長(以下「各税務署長」ということがある。)は,平成17年3月4日,e等の支払保険料のうち,e等が保険料として損金処理した分(保険料総額の2分の1。以下「法人損金処理保険料」という。)については,原告らの一時所得の金額の計算上,「収入を得るために支出した金額」には当たらないとして,原告a,原告b,原告cについては別紙各表の「更正処分等(B)」欄のとおり,原告dについては「更正処分等(C)」欄のとおり,更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件更正処分等」という。)を行った(甲1の1ないし3,甲7の1ないし3,甲10の1ないし3,甲13)。 なお,原告らとe等との間の相互の貸付金に係る利息に関し,一時所得及び雑所得の金額の計算上是 「本件更正処分等」という。)を行った(甲1の1ないし3,甲7の1ないし3,甲10の1ないし3,甲13)。 なお,原告らとe等との間の相互の貸付金に係る利息に関し,一時所得及び雑所得の金額の計算上是正すべき点があった(詳細は,本件の争点とは関係しないため省略する。)ことから,本件更正処分等は,この点も是正して行われた。 ⑺異議決定原告らは,平成17年4月26日,各税務署長に対し,本件更正処分等につき異議申立てを行った。 これに対し,各税務署長は,支払保険料のうち法人損金処理保険料は原告らにとって「収入を得るために支出した金額」に当たらないという判断に変更はないものの,一時所得及び雑所得の計算上,一部,計算の誤りや集計ミス等があったとして(詳細は,本件の争点とは関係しないため省略する。),同年7月4日及び7日,本件更正処分等の一部(原告aの平成13年分,原告bの平成14年,15年分,原告cの平成15年分)について,一部を取 り消し,その余については申立てを棄却する旨の異議決定(以下「本件異議決定」という。)を行った(原告a,原告b,原告cについては別紙各表の「異議決定(C)」欄のとおり,原告dについては「異議決定(D)」欄のとおり。甲2,8,11,14)。 ⑻審査請求等原告らは,平成17年8月4日,本件更正処分等を不服として,国税不服審判所長に対し審査請求を行ったが,平成18年6月30日,これらはいずれも棄却された(甲3,9,12,15)。 そこで,原告らは,同年12月27日,本件各訴えを提起した。 争点及び当事者の主張法人損金処理保険料(保険料総額の2分の1)は,原告らの一時所得の金額の計算上控除できる「収入を得るために支出した金額」(所得税法34条2項)に当たるか。 (原告らの主張)⑴所得税法34条2項は,一時所得の金 険料(保険料総額の2分の1)は,原告らの一時所得の金額の計算上控除できる「収入を得るために支出した金額」(所得税法34条2項)に当たるか。 (原告らの主張)⑴所得税法34条2項は,一時所得の金額の計算上,「その収入を得るために支出した金額」を控除できる旨規定しており,その文言上,収入を得た本人が負担したものしか控除できないという限定はされていない。 次に,所得税法施行令183条2項2号は,「生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額」は一時所得の計算上控除できる旨規定しており,その文言上,本人負担部分しか控除できないという限定はない。同項の解釈に関するDHCコンメンタール所得税法2(甲17・2654頁)も,生命保険契約等に基づく一時金の支払を受けた場合について,何ら限定を付することなく,「使用者が負担した保険料又は掛金で給与等として課税されなかったものの額は,保険料又は掛金の総額に含まれる。」と明記している。菅原恒夫編『改訂新版生命保険と税金』(甲18・79頁)も,一時所得の計算に関し,何ら限定を付することなく,「算式中の支払保険料や配当金には,契約 者である会社や個人事業主が支払っていたり,受け取っていた金額も含まれます。」と明記している。 そして,所得税基本通達34-4は,一時所得の計算上控除できる保険料等の額には「満期返戻金等の支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額も含まれる」と明記している。なお,被告は,同規定の注書きからすると,控除できるのは所得者本人に給与課税等されている場合に限られることが前提になっていると解釈できると主張するが,同注書きは,少額非課税とされた保険料は,年末調整における生命保険料控除の対象とならない(所得税基本通達76-4参照)ので,注書きがなければ一時所得の計算上も控除できないとの誤 できると主張するが,同注書きは,少額非課税とされた保険料は,年末調整における生命保険料控除の対象とならない(所得税基本通達76-4参照)ので,注書きがなければ一時所得の計算上も控除できないとの誤解を招くおそれがあることから,あえて原則どおり控除できることを規定したものとみるべきであって,被告の上記解釈は誤りである。 このような規定等からすれば,原告ら負担保険料のみならず,法人損金処理保険料についても,原告らの一時所得の計算上控除できるというべきである。 ⑵契約者(保険料支払者)を法人,被保険者を従業員の家族等,死亡保険金の受取人を従業員等,満期保険金の受取人を法人とする養老保険契約を想定する(以下「ケースA」という。)。これは,死亡保険金と満期保険金の受取人を本件養老保険契約と逆にしたものである。 ケースAの場合,法人税基本通達9-3-4⑶によれば,法人は支払保険料の2分の1を資産計上し,残りの2分の1を損金算入する処理をすることになるところ,前者の資産計上した部分は従業員等の実質的な負担がないことになる。他方,相続税法基本通達3-17⑵は,雇用主(法人に相当する。)が負担した保険料につき,「当該従業員が負担していたものとして,相続税及び贈与税の課税関係は生じないものとする。」と規定しているから,ケースAで従業員等が受領した死亡保険金を一時所得として申告する場合, 雇用主(法人)が負担した保険料全額を控除できることとなる。 そして,死亡と生存は保険事故としては同質であり表裏の関係にあるから,被保険者が死亡して従業員等が死亡保険金を受け取る場合(ケースA)と,被保険者が満期に生存していて従業員等が満期保険金を受け取る場合(本件養老保険契約)とでは,従業員等の一時所得の金額の計算上,控除されるべき範囲は同じになるべきである。したが る場合(ケースA)と,被保険者が満期に生存していて従業員等が満期保険金を受け取る場合(本件養老保険契約)とでは,従業員等の一時所得の金額の計算上,控除されるべき範囲は同じになるべきである。したがって,本件養老保険契約においては,原告らの一時所得の計算上,e等の支払保険料全額が控除されるべきである。 被告は,法人が支払った保険料のうち,従業員等の一時所得の計算上控除できるのは,保険料支払段階で従業員等に給与課税等がなされ,保険金受取人が実質的に負担しているとみられる部分に限られるから,本件養老保険契約における法人損金処理保険料は控除できないと主張する。しかし,ケースAにおいては,前記のとおり,従業員等に実質的な負担がない部分も含めて控除されるのであるから,保険料支払段階での保険金受取人への課税と保険金課税段階での控除とを結びつける必然性はなく,被告の主張は誤りである。 また,原告らの上記反論を受け,被告は,ケースAにおいて従業員等に給与課税されていない保険料部分もその一時所得の計算上控除できるのは,相続税法基本通達3-17⑵が,保険料相当額の経済的利益を従業員等が法人から福利厚生として享受していたものとする趣旨で特別に控除を認めたものであり,これを本件養老保険契約にあてはめることはできないと主張する。 しかし,福利厚生として享受したものとして控除を認めたという点は直ちに受け入れ難い上,被告の主張によれば,相続税法基本通達3-17⑵は,法律が定める課税要件(原則)を通達によって特例的に緩和する,いわゆる緩和通達の性質を有することとなり,租税法律主義に違反することとなるのであって,認められるべきではない。 ⑶法人税基本通達9-3-4⑶が制定された昭和55年には,国税当局は本件養老保険契約のような契約形態を想定し得たはずであるのに,所得税法3 に違反することとなるのであって,認められるべきではない。 ⑶法人税基本通達9-3-4⑶が制定された昭和55年には,国税当局は本件養老保険契約のような契約形態を想定し得たはずであるのに,所得税法3 4条2項,同法施行令183条2項,所得税基本通達34-4は長年改正されておらず,納税者は,本件養老保険契約のような場合,支払を受ける者以外の者(e等)が負担した保険料も控除できるものとして,経済活動や納税を行ってきた。これに反する本件更生処分等は,原告らの予測可能性・法的安定性を害し,違法である。 また,租税法は侵害規範であるから,法的安定性の要請が働き,「疑わしきは納税者の利益に」の観点から,租税法の解釈においてみだりに拡張解釈や類推解釈を行うことは許されない。本件養老保険契約においては,前記のように,法令の規定等によれば法人損金処理保険料も控除されるべきなのであるから,これと異なる本件更正処分等は違法である。 ⑷被告は,所得税法施行令183条2項2号ただし書イないしニは,所得者において実質的な負担がないものを例示列挙し,これを「支出した金額」に算入しない(控除しない)としたものであり,所得者に実質的な負担がない保険料部分は控除できないという原則に沿うものであると主張する。しかし,例えば同ただし書イをみると,所得者である加入員において掛金を支払ったという実質的な負担がある場合にもこの掛金を控除することはできないとしているのであり,被告の上記論理は誤りである。また,同ただし書を例示列挙とみることは,イないしニに個別かつ詳細に列挙された場合以外にも控除を認めない(国民に租税の負担が課される)とするものであり,租税法律主義に反する。 ⑸被告は,所得税の生命保険料控除に関する所得税法76条1項,所得税基本通達76-4を指摘する。しかし, にも控除を認めない(国民に租税の負担が課される)とするものであり,租税法律主義に反する。 ⑸被告は,所得税の生命保険料控除に関する所得税法76条1項,所得税基本通達76-4を指摘する。しかし,一時所得の計算上の控除と,所得税の生命保険料控除とでは,考え方が異なっているのであり,これらを同列に扱おうとする被告の解釈は誤りである。 ⑹仮に,被告が主張するように,法人の支払保険料のうち受取人の一時所得から控除できるのは受取人に課税されたものに限られるという解釈を採った としても,保険料支払段階の50パーセントの課税をもって,支払保険料の総額について課税済みと捉えるべきであるから,原告らの一時所得の計算上,法人損金処理保険料についても控除を認めるべきである。 ⑺被告は,法人損金処理保険料に対応する満期保険金は,実質的には原告らが法人から贈与により取得したものとみられるから,原告らの一時所得の計算上控除できないと主張する。しかし,原告らは,満期時に生存又は死亡のいずれの結果が生ずるかが分からないことから生じるリスクを負担していたことなどからして,贈与による取得とみることはできないから,被告の主張は失当である。 (被告の主張)⑴生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算において控除される保険料等の金額は,以下述べるように,収入を得た本人が負担した保険料及び事業主が負担した保険料で使用人に対して給与課税された保険料等に限られ,本人が負担していない保険料は控除されない。したがって,本件養老保険契約に係る法人損金処理保険料は,原告らの一時所得の計算上控除されない。 ア所得税法施行令183条2項2号は,そのただし書において,生命保険契約等に係る保険料又は掛金のうち,加入員自身が負担して所得控除の対象となっているもの及び事業主 一時所得の計算上控除されない。 ア所得税法施行令183条2項2号は,そのただし書において,生命保険契約等に係る保険料又は掛金のうち,加入員自身が負担して所得控除の対象となっているもの及び事業主が負担して経費処理されたものについては,所得者の一時所得の計算上控除しないものとしている。このような規定によれば,法は,所得者において実質的な負担がない保険料等は控除しないものとしているというべきである。 イ所得税基本通達36-32は,使用者が使用人等のために負担した生命保険料等が少額であれば,その金額は使用人に対し給与課税しない旨規定しているところ,同通達34-4がこのように課税されない場合について注記している(所得者において,給与課税されていないにもかかわらず一 時所得の計算上控除できるということをあえて注意書きしている)ことからすると,同規定はそのような場合を例外とみていると解される。つまり,同規定が,所得者以外の者が負担した保険料等をも控除できるとしているのは,使用者が使用人等のために負担した保険料等は使用人等に対し給与課税等されているということが前提になっているのである。そして,同規定は,給与課税等されていれば当該保険料等は実質的に使用人等が負担しているとみられることから,使用人等が保険料を受領した場合の一時所得の計算においてこれを控除できる旨定めているのである。 そうすると,法人損金処理保険料は,e等が支出し原告らに給与課税されておらず,実質的に原告らが負担しているとみることはできないから,所得税法施行令183条2項2号,所得税基本通達34-4によっても,原告らの一時所得の計算上控除することはできない。 ウ法人税基本通達9-3-4⑴ないし⑶の各場合を想定すると,本件養老保険契約と同様に満期保険金が個人に対する一時所得となる 通達34-4によっても,原告らの一時所得の計算上控除することはできない。 ウ法人税基本通達9-3-4⑴ないし⑶の各場合を想定すると,本件養老保険契約と同様に満期保険金が個人に対する一時所得となるのは⑵の場合のみであるところ,この場合,法人が負担した保険料については従業員等の給与等として課税する扱いとされている。すなわち,所得税基本通達34-4が,所得者以外の者が負担した保険料等も控除できると定めているのは,保険料負担者が法人である場合,当該保険料は従業員等に対する給与等として課税されていることを前提としているのである。このような規定からは,保険金の受取人が支払った保険料等のほかに控除できる保険料は,法人が支払った保険料等のうち,保険金の受取人である従業員等の給与等として課税されたもののみであることが導かれる。 エ所得税の生命保険料控除に関する規定をみると,法人が負担した保険料等について,所得税基本通達76-4本文は,使用人等が総所得金額から控除することを認めていないが,ただし書は,使用人等の給与等として課税されたものは控除できると定めており,同規定の注書きは,給与等とし て課税されない生命保険料等は控除の対象とならないと定めている。これは,生命保険料控除は,その生命保険料を支払った者について適用すべきものであるが,使用者が負担した生命保険料であっても,その従業員等の給与として課税されたものは,その従業員等が課税対象とされた給与等から支払ったものと同様であるので,その従業員等が支払った生命保険料の金額に含まれることとしたものである。この考え方に従えば,本件のような場合に,法人が負担した保険料で従業員等の一時所得の計算上控除できるのは,従業員等の給与等として課税されたもの(給与課税を受けない程度のものと認められたものを含む。) の考え方に従えば,本件のような場合に,法人が負担した保険料で従業員等の一時所得の計算上控除できるのは,従業員等の給与等として課税されたもの(給与課税を受けない程度のものと認められたものを含む。)に限られるというべきである。 オ一時所得の計算に関し,昭和62年法律第96号による改正所得税法の解説(国税庁発行『昭和62年改正税法のすべて』)は,「一時金等の額から控除する保険料又は掛金の総額は,課税済の本人負担分に限られ,…事業主が負担した保険料又は掛金で給与所得として課税が行われていないものは,その控除する保険料又は掛金の総額から除くこととされています。」と規定している(乙27・47頁)。これによれば,一時所得の計算上控除されるのは,本人が負担した保険料及び事業主が負担した保険料で使用人に対し給与課税された保険料等に限られ,本人が負担していない保険料は控除されないことになる。 また,財団法人大蔵財務協会発行の国税速報(乙29・3枚目)に記載されているように,所得税基本通達34-4が,支払を受けた者以外の者が負担した保険料等も控除することとしているのは,契約者や受取人以外の者が保険料を負担した場合には,原則的に,その段階で給与課税や相続税課税がなされていることが前提となっているのであり,本件養老保険契約のように,受取人に給与課税等がされていない場合には,同規定による控除は認められるべきではないのである。 ⑵ケースAでは,前記のとおり,法人税基本通達9-3-4⑶によれば,法 人が負担した保険料のうち2分の1は損金処理され,残りの2分の1は資産計上になる一方,相続税法基本通達3-17⑵によれば,従業員等が死亡保険金を受け取った場合,従業員等の一時所得の計算上,法人が負担した保険料全額を控除できることになる。この点,原告らは,法人が損金 計上になる一方,相続税法基本通達3-17⑵によれば,従業員等が死亡保険金を受け取った場合,従業員等の一時所得の計算上,法人が負担した保険料全額を控除できることになる。この点,原告らは,法人が損金処理した保険料の2分の1は,従業員等に実質的な負担がないにもかかわらず,従業員等の一時所得の計算上控除が認められているのであり,「控除できるのは本人が負担した保険料及び事業主が負担した保険料で従業員等に対して給与課税された保険料等(従業員等に実質的な負担があるもの)に限られる」という法の原則ないし趣旨は存在しない旨主張する。 しかし,相続税法基本通達3-17⑵は,従業員等が死亡保険金を受領してこれが一時所得となる場合,使用者からその保険料相当額の経済的利益を,いわば福利厚生として享受したものとみるべきであるから,当該経済的利益については従業員等の給与として所得税を課税しない(従業員が法人から経済的利益を受けた場合には給与とみなされ所得税が課税されるのが原則であるが,従業員が死亡保険金を受け取った場合には,当該死亡保険金は実質的には法人から遺族に対する香典ないし弔慰金の性質を有するものであるから,従業員は当該保険料相当額の経済的利益を福利厚生として享受したものとして,上記原則にかかわらず,所得税の課税をしないという特別の扱いをした。)というものであり,雇用主が負担した保険料は実質的には従業員等に課税済みと同視できるのである。そうであるから,従業員等の一時所得の計算上控除できるのである。したがって,原告らの上記主張は当たらない。 ⑶本件養老保険契約は,法人税基本通達9-3-4⑶において規定の対象とされている養老保険契約の死亡保険金と満期保険金の受取人をそれぞれ逆にしたものであり,法令,通達等に規定されていない類型であるから,法令の原則的な規定 法人税基本通達9-3-4⑶において規定の対象とされている養老保険契約の死亡保険金と満期保険金の受取人をそれぞれ逆にしたものであり,法令,通達等に規定されていない類型であるから,法令の原則的な規定・趣旨に従って処理すべきである。 生命保険の性質や保険料の算定方法等については,養老保険は死亡保険と 生存保険を組み合わせたものであり,本件養老保険契約も,この両者を組み合わせたものとなっている。 そして,死亡保険(定期保険)についての保険料の性質は掛け捨ての危険保険料であり,本件養老保険契約のように死亡保険金受取人が法人である場合には,法人税基本通達9-3-5⑴に従い,法人が支払った死亡保険料部分は損金に算入されるべきことになる。この危険保険料部分について,原告らは,法人税基本通達9-3-4⑶を類推し,福利厚生的なものとみて損金処理したとする。この点,当該部分が損金処理されるべきことは争わないが,本件養老保険契約は死亡保険金受取人が法人であるから,当該部分は法人税基本通達9-3-4⑶の想定する福利厚生的なものとは異なるのであり,同規定を類推すべきことにはならない。当該部分(法人損金処理保険料)は,法人の一種の金融費用的なものとして損金処理されることになる。そして,当該部分については,原告らが負担したものでも原告らに給与課税等されたものでもないから,原告らの一時所得の計算上,控除されるべきではない。 他方,生存保険についての保険料は,満期保険金の支払財源に充てるための積立保険料(貯蓄部分)であり,本件養老保険契約のように満期保険金受取人が原告らである場合には,原告らが貯蓄部分の利益を享受するのであるから,積立保険料部分は原告らの給与として課税されるのが本来である(法人税基本通達9-3-4⑵)。この積立保険料部分について,原告らは,e等から る場合には,原告らが貯蓄部分の利益を享受するのであるから,積立保険料部分は原告らの給与として課税されるのが本来である(法人税基本通達9-3-4⑵)。この積立保険料部分について,原告らは,e等からの借入金として処理したとする。そうすると,借入金処理された部分(原告ら負担保険料)は,実質的には当該借入金相当部分の保険料等に相当する資金を法人から借り入れて被保険者自身が支払ったということになり,もともと法人が負担しておらず従業員等が実際に負担したものといえるから,法人税基本通達9-3-4⑶とは何ら関係はなく,その類推適用も受けない。 そして,この部分については,原告らが負担したものであるから,原告らの一時所得の計算上,控除されるべきである。 以上のように,本件養老保険契約の法人損金処理保険料は,原告らの一時所得の計算上,控除されるべきではない。 ⑷原告らは,法人税基本通達9-3-4⑶を類推適用したとし,保険料の2分の1について給与課税されれば,保険料全額を原告らの一時所得の計算上控除できると主張する。しかし,同規定は,法人が負担した保険料に対する法人側の課税関係を定めたものであって,保険金を受け取った側の課税上の取扱いについては何ら規定するものではないから,原告らの主張は失当である。 ⑸原告らは,ケースAでは,相続税法基本通達3-17⑵によれば,保険料全額を従業員の一時所得の計算上控除できるところ,生命保険契約においては生存も死亡も同質の保険事故であるから,被保険者が死亡した場合も満期に生存していた場合も保険金の課税上の取扱いは同様にすべきであり,本件養老保険契約においても,保険料全額の控除を認めるべきであると主張する。 しかし,税法(所得税法34条,同法施行令183条2項,相続税法3条,5条等)は,個人が満期保険金や死亡保険金を受 であり,本件養老保険契約においても,保険料全額の控除を認めるべきであると主張する。 しかし,税法(所得税法34条,同法施行令183条2項,相続税法3条,5条等)は,個人が満期保険金や死亡保険金を受け取った場合,当該保険金受取人が保険料を負担していたか否かや,保険金の支払が死亡に起因するものか満期によるものかによって異なる取扱いをしているのであるから,原告の主張は前提において誤っており,失当である。 ⑹法人損金処理保険料部分に対応する満期保険金(2分の1)については,受取人(原告ら)がe等から贈与によって取得したものとみるべきである(相続税法5条1項)。そして,法人からの贈与であれば,受取人の一時所得として課税されることになるところ,贈与税の場合,その計算上贈与者が負担した経費は一切考慮されないことからすれば,本件の場合,原告らの一時所得の計算上,e等が負担した保険料(贈与者が負担した経費に相当する。)を控除できないのは当然である。 ⑺本件養老保険契約は,通常の企業が締結する生命保険契約とは全く目的を 異にし,原告らにとっては,自己資金を一切負担することなく,法人の資金のみで,短期間(3年又は5年)で,数億円もの金員を取得することができる仕組みとなっており,しかも,保険料を負担したe等にとっても当該保険料は損金に算入でき,税負担を免れるものとなっている。そうすると,本件養老保険契約は,原告らがほとんど税負担を負うことなく資金の移転を受けることを企図した不自然な契約形態であり,法人税基本通達9-3-4や相続税法基本通達3-17⑵が想定する通常の保険契約とはいえないから,これらの規定を根拠に,法人損金処理保険料をも控除できるとする原告らの主張は失当である。 ⑻法人損金処理保険料部分も控除できるとする原告らの主張は,会計上も不合理 通常の保険契約とはいえないから,これらの規定を根拠に,法人損金処理保険料をも控除できるとする原告らの主張は失当である。 ⑻法人損金処理保険料部分も控除できるとする原告らの主張は,会計上も不合理である。 第3当裁判所の判断 本件では,所得税法34条2項にいう「収入を得るために支出した金額」の解釈が問題となっているところ,憲法84条は,法律の根拠に基づかずに租税を課すことはできないという租税法律主義の原則を定めている。そして,この定めの趣旨は,国民生活の法的安定性と予測可能性を保障することにあることからすると,租税法規はできるだけ明確かつ一義的であることが望ましく,その解釈に当たっては,法令の文言が重視されるべきである。 もっとも,課税対象となる納税者側の社会生活上の事象は千差万別であるから,それらの全てを法令により明確かつ一義的に規定することは不可能であり,公正な租税の実現の必要性も考慮すると,法令の趣旨・目的,租税の基本原則,税負担の公平性・相当性等を総合考慮し,法的安定性,予測可能性を損なうことのない限度で,租税法令を客観的,合理的に解釈することも許されるというべきである。 なお,通達は,上級行政庁が下級行政庁に対して行う命令ないし示達であり(国家行政組織法14条2項),国民に対する関係で拘束力を有する法規範で はないから,通達の定めは,一応の行政解釈として裁判所の解釈の参考となり得るにとどまる。しかしながら,租税行政は通達の下に統一的・画一的に運用され,通達が極めて重要な役割を果たしており,国民が納税義務の有無等を判断するに当たっても重要な指針となっていると考えられることにかんがみると,通達の文言,趣旨及びその合理性等も十分に検討した上で,租税法令の解釈を行うべきものと解される。 以上の観点から,本件養老保険契約におけ たっても重要な指針となっていると考えられることにかんがみると,通達の文言,趣旨及びその合理性等も十分に検討した上で,租税法令の解釈を行うべきものと解される。 以上の観点から,本件養老保険契約における法人損金処理保険料が「収入を得るために支出した金額」に当たるか否かを検討する。 2⑴まず,所得税法34条2項は,一時所得の計算における控除の対象を「収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため,又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)」と規定しているが,その文言上,所得者本人が負担した部分に限られるのか,所得者以外の者が負担した部分も含まれるのかは,必ずしも明らかでない。 そして,所得税法施行令183条2項2号本文は,生命保険契約等に基づく一時金が一時所得となる場合,保険料又は掛金の「総額」を控除できるものと定めており,この文言からすると,所得者本人負担分に限らず保険料等全額を控除できるとみるのが素直である。そして,同号ただし書イないしニは,控除が認められない場合を,包括的・抽象的文言を用いることなく,法律と条文を特定して個別具体的に列挙しており,他に控除が認められない場合が存することをうかがわせる体裁とはなっていない。 このような所得税法及び同法施行令の規定を併せ考慮すれば,生命保険金等が一時所得となる場合,同号ただし書イないしニに列挙された場合以外は,所得者以外の者が負担した保険金等も控除できるものと解釈するのが自然である。 (2)所得税基本通達34-4も,明確に,控除し得る金額には「支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額(これらの金額のうち,…の金 額を除く。)も含まれる。」と規定しており,括弧書きで除かれた部分以外に控除し得る金額が限定される場合があると読み取ることは困難である。 が負担した保険料又は掛金の額(これらの金額のうち,…の金 額を除く。)も含まれる。」と規定しており,括弧書きで除かれた部分以外に控除し得る金額が限定される場合があると読み取ることは困難である。 3⑴被告は,関連法令及び通達を合理的に解釈すれば,一時所得の計算上控除し得るのは,収入を得た本人が負担した保険料及び事業主が負担した保険料で使用人に対して給与課税された保険料に限られ,原告らが法人損金処理保険料を控除することは認められないと主張するので,以下,検討する。 ⑵被告は,所得税法施行令183条2項2号ただし書は,所得者において実質的な負担がない保険料等は控除しないことを例示的に定めたものであり,原告らにとって法人損金処理保険料は実質的負担がないものであるから,控除は認められないと主張する。 確かに,同号ただし書イないしニを仔細に検討すれば,控除の対象から除かれているのは,加入員自身が負担して所得控除の対象となっているもの及び事業主が負担して経費処理されたものであると読み取ることも可能ではある。 しかしながら,イないしニの列挙事由から上記法の趣旨ないし原則を直ちに導き得るものとはいえず,納税者の観点からしても,そのような解釈をすることは困難といわざるを得ない。 同号本文が総額控除を原則的なものとして定め,ただし書が例外的に控除できない場合を個別具体的に法律と条文を列挙して示していることからすると,イないしニは例示列挙ではなく,限定列挙とみるのが相当である。 そうすると,被告の上記主張は採用できない。 なお,同号本文を,被告の主張するような趣旨に限定解釈するという論理も,文言上無理があるといわざるを得ず,採用することができない。 ⑶被告は,所得者以外の者が負担した保険料等も控除できる旨の所得税基本通達34-4の規定は,所得者以外の者が に限定解釈するという論理も,文言上無理があるといわざるを得ず,採用することができない。 ⑶被告は,所得者以外の者が負担した保険料等も控除できる旨の所得税基本通達34-4の規定は,所得者以外の者が保険料等を負担した場合,原則として所得者(保険金受取人)に給与課税等されていることを前提としたもの であると主張し,同規定の注書きは,上記のような前提があるからこそ,少額非課税であっても控除できるという例外的取扱いをあえて明確化したものであるとする。 確かに,証拠(乙29)によれば,同規定が所得者以外の者が負担した保険料等も控除できるとしていることの背景には,原則的に所得者に給与課税等されているという点があることがうかがわれる。 しかし,そのような背景があるとしても,何ら明文がないのに,所得者に給与課税等されていなければ控除できないと限定的に解釈することは困難である。 むしろ,所得税法施行令183条2項2号,所得税基本通達34-4の文言からすると,誰が保険料等を支払ったか,所得者に給与課税等されたか否かにかかわらず,控除を認めることとしているとみる方が合理的である。 関連する通達をみても,生命保険料等控除に関する同通達76-4は,本文において,役員又は使用人に給与課税されたか否かを明確に区別しているのに対し,同通達34-4本文ではその区別がされていないことからすると,行政解釈としても,一時所得の計算上の控除の場面では,生命保険料等控除の場面とは異なり,給与課税の有無を問わず控除を認めることとしているものと解される。 また,同規定の注書きが,所得者に対し少額非課税とされた場合にも控除できる旨定めているのは,少額非課税とされた生命保険料等については生命保険料控除の対象とならない(同通達76-4の注書き参照)ので,注書きがなければ一時所得の計算 対し少額非課税とされた場合にも控除できる旨定めているのは,少額非課税とされた生命保険料等については生命保険料控除の対象とならない(同通達76-4の注書き参照)ので,注書きがなければ一時所得の計算上も控除できないとの誤解を招くおそれがあることから,あえて原則(本文)どおり控除できることを規定した確認的なものであると解するのが相当であり,注書きによって本文の例外を定めたものとみることになる被告の主張は採用できない。 ⑷被告は,所得税法76条1項(生命保険料控除)及び所得税基本通達76 -4を根拠に,法人が保険料等を負担して使用人に給与課税されていない場合は,使用人の一時所得の計算上その保険料等を控除できないことを指摘する。 確かに,上記各規定は,使用者が負担した保険料であっても使用人等に給与課税されていれば使用人等が支払ったのと同様であるという観点から,給与課税されている場合に限定して,生命保険料等控除を認めたものと解される。 しかし,上記各規定が定める生命保険料控除と,一時所得の計算上の控除は,別の場面の問題であるから,前者に関する解釈から後者に関する解釈を導くことは相当でない。 ⑸被告は,法人税基本通達9-3-4⑴ないし⑶の各場合のうち,満期保険金が個人に対する一時所得となるのは⑵の場合のみであり,この場合,法人が負担した保険料については従業員等に給与課税等されることになっていることを指摘する。 しかし,上記⑵の場合の取扱いをもって,従業員等が一時所得の計算上控除できる保険料は法人が支払った保険料のうち従業員等に給与課税されたものに限られるとの法の趣旨ないし原則を読み取ることは相当とはいえず,被告の上記指摘は採用できない。 ⑹法人税基本通達9-3-4⑶,相続税法基本通達3-17⑵によれば,ケースAにおいては,従業員の一時所 限られるとの法の趣旨ないし原則を読み取ることは相当とはいえず,被告の上記指摘は採用できない。 ⑹法人税基本通達9-3-4⑶,相続税法基本通達3-17⑵によれば,ケースAにおいては,従業員の一時所得の計算上,法人が負担した保険料全額を控除できることになるところ,これについて,被告は,従業員が使用人から保険料相当額の経済的利益を福利厚生として享受したものとして,従業員等に課税済みと同視したものであり,所得税基本通達34-4の特則であると主張する。 しかし,相続税法基本通達3-17⑵が福利厚生という観点から定められたものであるとしても,そこから被告の主張するような解釈を導くことはで きない。 ⑺被告は,法人損金処理保険料部分に対応する満期保険金(2分の1)については,原告らがe等から贈与によって取得したものとみるべきであるから,法人損金処理保険料は原告らの一時所得の計算上控除できないと主張する。 しかし,保険金の受領を直ちに贈与と見ることはできず,被告の主張は採用できない。 ⑻被告は,本件養老保険契約は通常行われる保険契約と異なり,原告らがほとんど税負担を負うことなくe等から資金の移転を受けることを企図した不自然な契約形態であるとして,法人損金処理保険料の控除を認めるべきではないと主張する。 しかし,本件養老保険契約のように,契約者を法人,被保険者を従業員等,死亡保険金の受取人を法人,満期保険金の受取人を従業員等とする契約形態は,必ずしも想定不可能なほど不自然・不合理なものとはいえないのであり,被告の上記主張は採用できない。確かに,本件で原告らが法人損金処理保険料を控除することを認めれば,原告らがほとんど税負担を負わずにe等から資金の移転を受けることができることになるが,それは法令上許された契約を締結したことによる結果であって,こ 告らが法人損金処理保険料を控除することを認めれば,原告らがほとんど税負担を負わずにe等から資金の移転を受けることができることになるが,それは法令上許された契約を締結したことによる結果であって,これが直ちに租税の基本原則に抵触するとか,租税の公平性を害するものということはできない。 以上検討したように,所得税法34条2項,同法施行令183条2項2号の規定の文言を重視すると,所得者以外の者が負担した保険料等を,所得者に対する給与課税の有無にかかわらず控除できるものと解するのが自然であること,所得税基本通達34-4は,所得者以外の者が負担した保険金等も明確に控除できると規定し,給与課税等の有無によって区別していないこと,そのような中,所得税法34条2項,同法施行令183条2項2号の規定を被告の主張のように限定解釈又は類推解釈することは,法的安定性,予測可能性確保の観点からして相当性を欠くといわざるを得ないことなどを総合考慮すると,被告の 主張する解釈を採用することはできず,養老保険契約に基づく満期保険金が一時所得となる場合,所得者以外の者が負担した保険料も控除できると解するのが相当である。 以上によれば,各税務署長が原告らに対してした本件更正処分等は,法令の解釈・適用を誤ったものであって違法であるから,これを取り消すべきである。 第4 結論 よって,原告らの請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第2民事部裁判長裁判官岸和田羊一裁判官塚田奈保裁判官関川亮介
▼ クリックして全文を表示