主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金50万円を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,原告が,(1)自己が告訴した2件の被疑事件につき神戸地方検察庁の副検事がそれぞれ不起訴処分とした行為は,捜査を尽くさずに行った違法な処分であるとし,(2)自己が告訴した被疑事件について取調べを受けた際,同副検事が原告を「君」と呼称した上,原告に対してプライバシーを侵害する発言を行ったとし,(3)それらとは別に自己が告訴した被疑事件につき,神戸地方検察庁の別の副検事が,原告を取調べた際,原告に対して告訴の取下げを不当に要求したとし,以上の副検事の各行為はそれぞれ国家賠償法上違法な行為に当たると主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として,上記各行為によって原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料として,金50万円の支払を求めた事案である。 2 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,各項末尾掲記の証拠によって容易に認められる。 (1) 原告がなした告訴(有印私文書偽造等被疑事件)原告は,神戸地方検察庁に対し,平成11年11月24日,A,B,C,D,E及びFを有印私文書偽造罪等で告訴した(以下「本件有印私文書偽造等事件」という。)。(甲14)(2) G副検事による取調べの状況及び処分神戸地方検察庁のG副検事は,本件有印私文書偽造等事件につき,原告,外2人をそれぞれ取り調べた。(争いがない)G副検事による原告の取調べは,平成12年11月29日,同年12月14日,同月15日,平成13年2月5日,同月15日の5回にわたって行われた。 (弁論の全 れ取り調べた。(争いがない)G副検事による原告の取調べは,平成12年11月29日,同年12月14日,同月15日,平成13年2月5日,同月15日の5回にわたって行われた。 (弁論の全趣旨)本件有印私文書偽造等事件につき,同年5月16日にAが逮捕されるなど捜査が進められ,同年6月5日,Aは神戸地方裁判所に公判請求されたが,A以外の被告訴人については,いずれも不起訴処分となった。(甲14,乙5)Aは,同年9月28日,同裁判所において,懲役1年6月執行猶予3年の判決を受けた。(乙6)(3) 原告がなした告訴(傷害被疑事件)原告は,平成13年9月20日,H,I,J,K,A及び氏名不詳者を傷害罪で告訴した(以下「本件傷害事件」という。)。(甲9,10,弁論の全趣旨)(4) L副検事による取調べの状況及び処分平成14年5月14日,神戸地方検察庁のL副検事は本件傷害事件について,神戸地方検察庁において,原告を取り調べた。(争いがない)その際,L副検事は,原告に対し,「君」と呼びかけたことがあり,原告がこれに対し,別の呼び方をして欲しいと申し入れをした。また,L副検事は,原告に対し,「Kが暴行された事件に関与していないか。」等と質問した。(争いがない)なお,本件傷害事件については,同年12月24日,Iに係る事件につき不起訴処分とされ,それ以外の被告訴人に係る事件については中止処分とされた。 (甲9)(5) 原告がなしたL副検事及びG副検事を被告訴人とする告訴原告は,平成14年5月30日ころ,G副検事を公務員職権濫用罪で告訴し(以下「本件公務員職権濫用事件」という。),次いで,同年6月17日ころ,L副検事を,国家 副検事を被告訴人とする告訴原告は,平成14年5月30日ころ,G副検事を公務員職権濫用罪で告訴し(以下「本件公務員職権濫用事件」という。),次いで,同年6月17日ころ,L副検事を,国家公務員法違反(以下「本件国家公務員法違反事件」という。)及び侮辱罪(以下「本件侮辱事件」という。)で告訴した。(甲4,6,20,弁論の全趣旨)本件公務員職権濫用事件,本件国家公務員法違反事件及び本件侮辱事件は,いずれも,同年12月5日,不起訴処分とされた。(甲11,12)なお,原告は,同月10日,上記各不起訴処分を不服として,神戸検察審査会に審査を申し立てたが,同審査会は,平成15年4月9日付けでいずれも不起訴相当との判断をした。(弁論の全趣旨)(6) 原告のなした告訴(特別公務員暴行陵虐致傷被疑事件,名誉毀損被疑事件)原告は,本件傷害事件の告訴に先立って,平成13年3月29日に,兵庫県垂水警察署員であるM,N,O及びPを特別公務員暴行陵虐致傷罪で告訴し(以下「本件特別公務員暴行陵虐致傷事件」という。),次いで,同年8月7日に,司法書士Qを名誉毀損罪で告訴しており(以下「本件名誉毀損事件」という。),いずれの告訴事件もL副検事が担当した。本件特別公務員暴行陵虐致傷事件は,平成14年5月2日に不起訴処分とされ,本件名誉毀損事件は,同月9日に不起訴処分とされた。(争いがない)原告は,同月14日,上記各不起訴処分を不服として,神戸検察審査会に審査を申し立てたが,同審査会は,平成15年4月9日付けでいずれも不起訴相当との判断をした。(弁論の全趣旨) 3 争点及び当事者の主張(1) G副検事が,本件有印私文書偽造等事件に関して不当な取調べ及び告訴の取下げ要求を行ったか 日付けでいずれも不起訴相当との判断をした。(弁論の全趣旨) 3 争点及び当事者の主張(1) G副検事が,本件有印私文書偽造等事件に関して不当な取調べ及び告訴の取下げ要求を行ったかア原告の主張・事実G副検事は,本件有印私文書偽造等事件について,前記のとおり原告を取り調べた際,長時間にわたりトイレに行かせず,「お前ら被害者じゃない。参考人や犯罪者や。」と怒鳴り,「犯罪者にされたくなかった取り下げろ。」などと言って,告訴の取下げを強要し,あるいは執拗に要求した。 ・違法性G副検事の前記行為は国家賠償法上違法な行為であり,G副検事を公務員として副検事の職務に当たらせている被告は,国家賠償法1条1項に基づき原告の被った損害を賠償すべき義務を負う。 イ被告の主張・事実否認する。G副検事はAに対する逮捕状を請求するなどして強制捜査を実施しようとしていたのであり,原告に対して告訴の取下げを求める必要性はなかった。告訴を取り下げさせる方法としてG副検事が行ったと原告が主張する内容は,不自然不合理きわまりなく,信用できない。すなわち,身体拘束されていない原告に対し,トイレに行くことを阻止することは不可能である。また,検察実務において,一般的に,参考人とは,被害者を含め,被疑者以外の者の総称として使用されているところ,「被害者じゃない。参考人や。」などという発言は,何らの意味もなさないものであり,G副検事がそのような発言をすることはあり得ない。 ・違法性争う。 仮に,原告の主張する事実が全て認められても,本件有印私文書偽造等事件の告訴の取下げは結局 言をすることはあり得ない。 ・違法性争う。 仮に,原告の主張する事実が全て認められても,本件有印私文書偽造等事件の告訴の取下げは結局なされておらず,G副検事の行為により,原告が損害を被ったとは認めがたい。 (2) 平成14年5月14日の取調べの際,L副検事は違法な職務行為を行ったかア原告の主張・事実L副検事は,平成14年5月14日,本件傷害事件に対する取調べの際,原告を「君」と呼び,原告が「年長者に対して失礼ではないか。」と申し入れ,同副検事も二度と原告に対して使わないと約束したが,その後も連呼し,調書にも「君は」と記載し,訂正しなかった。 また,L副検事は,原告に対し,Kに対する暴行事件に関与していないかと質問し,さらに,Aが逮捕されたことや,同人がKと不倫していることを原告に話し,原告の落胆や動揺を楽しんだ。 ・違法性L副検事の前記各行為は国家賠償法上違法な行為であり,L副検事を公務員として副検事の職務に当たらせている被告は,国家賠償法1条1項に基づき原告の被った損害を賠償すべき義務を負う。 イ被告の主張・事実L副検事が原告を「君」と呼んだこと,また,原告に対し,「Kの暴行事件に関係していないか。」等と質問したことは認める。もっとも,原告から「別の呼び方にしてほしい。そうしてもらえないのなら今日は帰る。」と言われたことから,それ以降は,原告のことを「Rさん」ないしは「あなた」と呼称し,取調べを継続した。L副検事は,供述調書の記載については,「Rさんのことは君で統一する。」旨伝え,原告の了承を得た上で供述調 ことから,それ以降は,原告のことを「Rさん」ないしは「あなた」と呼称し,取調べを継続した。L副検事は,供述調書の記載については,「Rさんのことは君で統一する。」旨伝え,原告の了承を得た上で供述調書を作成した。 L副検事が原告にAの不倫関係につき告げたことは否認する。前記取調べの際,原告から「Aは,私が告訴した事件で神戸の裁判所で裁判を受けて,実刑1年半,執行猶予3年になった。」と申し立て,「Aの愛人的な男がKだ。」と申し立てたものである。 また,前記取調べの際,L副検事が原告に,Aの逮捕事実を告げたこと,その時点まで原告が同事実を知らなかったことは否認する。同時点では,Aに対する有罪判決は確定していたところ,同事件の捜査に関与していない同副検事が捜査の一過程にすぎないAの逮捕事実を取り上げて原告に告げるというのは不自然である。また,Aの逮捕事実は,原告が告訴した本件有印私文書偽造等事件に関するものであり,原告がその事実を知らなかったとは考えがたい。 ・違法性検察官が,取調室において,取調べの際,相手を「君」と呼称する行為は違法ではない。また,原告が告訴した傷害事件の関係者が暴行の被害を受けた事件と原告との関わりの有無を確認することは,本件傷害事件の捜査として,原告の供述の信用性等を吟味するため必要であって,これは検察官として適正な職務の遂行であるから,違法ではない。 (3) L副検事は本件特別公務員暴行陵虐致傷事件及び本件名誉毀損事件を不当に不起訴処分としたかア原告の主張L副検事は,本件特別公務員暴行陵虐致傷事件及び本件名誉毀損事件につき,いずれも捜査を尽くさず,各被告訴人をいずれも不起訴処分とした。かかる行為は, としたかア原告の主張L副検事は,本件特別公務員暴行陵虐致傷事件及び本件名誉毀損事件につき,いずれも捜査を尽くさず,各被告訴人をいずれも不起訴処分とした。かかる行為は,検察官の職務に違反する違法なものであり,国家賠償法上違法とされるものである。 イ被告の主張国家賠償法1条1項は,国又は地方公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を与えたときに成立する責任であると解すべきところ(最高裁昭和60年11月21日第1小法廷判決・民集39巻7号1512頁参照),犯罪の捜査及び検察官の公訴権の行使は,国家及び社会の秩序維持という公益を図るために行われるものであって,犯罪の被害者の被侵害利益ないし損害の回復を目的とするものではなく,また,告訴は,捜査機関に犯罪捜査の端緒を与え,検察官の職権発動を促すものにすぎないから,被害者又は告訴人が捜査又は公訴提起によって受ける利益は,これらによって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず,法律上保護された利益ではないというべきである。したがって,被害者ないし告訴人は,捜査機関による捜査が適正を欠くこと又は検察官の不起訴処分の違法を理由として,国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求をすることはできないというべきである(最高裁平成2年2月20日第3小法廷判決・判例時報1380号94頁参照)。 よって,原告には,国家賠償法に基づき賠償されるべき損害の発生は認められないから,本件の捜査経緯の内容を検討するまでもなく,原告の各請求は,いずれも理由がない。 (4) 原告の被った損害額ア原告の主張原告が,G副検事及びL副検事の上記各違法行為によって 内容を検討するまでもなく,原告の各請求は,いずれも理由がない。 (4) 原告の被った損害額ア原告の主張原告が,G副検事及びL副検事の上記各違法行為によって被った精神的苦痛に対する慰謝料は,金50万円を下らない。 イ被告の主張争う。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)について(1) 原告は,平成12年11月29日から平成13年2月15日までの間に,計5回実施されたG副検事の原告に対する取調べにおける言動により精神的苦痛を被った旨主張する。 そこで検討するに,一般市民による告訴は,公益的見地からなされる犯罪捜査との関係では一端緒にすぎないといえるものの,刑事訴訟法上保障された国民の権利であることは明白であるから,捜査機関が任意の撤回を促す限度を越えて取下げを強要したり,執拗に取下げを求める働きかけをするようなことは,捜査及び公訴提起に関する権限を国家に独占させた法の趣旨に悖る行為として許されず,捜査機関の職務上そのような行為があった場合には,国家賠償法上,違法と評価せざるを得ないものというべきである。 この点,被告は,結果的に原告が告訴を取下げなかった旨主張するが,告訴取下げ要求の態様及び状況によっては,そのような要求を受けること自体が告訴人に精神的苦痛をもたらす場合が十分有り得るから,告訴が実際には取下げられなかったとしても,その事実のみによって違法評価が妨げられるものではない。 (2) しかるところ,原告は,G副検事が長時間にわたり原告をトイレに行かせず,「お前ら被害者じゃない。参考人や犯罪者や。」と怒鳴り,「犯罪者にされたくなかった取り下げろ。」などと言って,告訴の取下げを強要し,あるいは執拗に要求したと主張し,原告本人の供述及 イレに行かせず,「お前ら被害者じゃない。参考人や犯罪者や。」と怒鳴り,「犯罪者にされたくなかった取り下げろ。」などと言って,告訴の取下げを強要し,あるいは執拗に要求したと主張し,原告本人の供述及び原告作成の陳述書(甲1,4)にはこれに沿う部分がある。 しかし,証拠(乙4,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,G副検事は,本件有印私文書偽造等事件につき原告を取り調べた際,原告に対し,告訴事件が原告の親族間の問題であり,裁判になれば親族間の様々な事情が外部の目にさらされ得る旨を説明し,告訴を差し控えるべきでないかと示唆するとともに,原告の告訴意思を数回にわたり確認したことは認められるが,それ以上に同副検事が原告に対し告訴取下げの強要等をなしたことは,以下のとおり認めがたい。 すなわち,原告本人の供述等を仔細に見ると,G副検事の原告に対する取調べが長時間にわたり行われ,その間,原告がトイレに行きたい旨を告げても,もう少し待つようにとG副検事から要請されたため,我慢できる限りでトイレに行くのを差し控えていたが,我慢の限度に達したため,自らの意思で取調室を退出し,トイレへ行ったというのである。そうであれば,同副検事の原告に対する要請は,任意の協力を求める範囲内であり,原告は自らの意思でトイレに行くことが可能な状況にあったと考えられるし,そもそも,当該要求が告訴の取下げを間接的に強制する目的で行われたような事情も本件証拠上認めがたい。 また,原告は,G副検事が原告に対し,「被害者じゃない。参考人や。」などと発言した旨主張するが,刑事司法実務においては,被害者を含め,被疑者以外の者の総称として参考人という名称を用いるのが一般的であると認められるから(弁論の全趣旨),「被害者じゃない。参考人や。」という発言 した旨主張するが,刑事司法実務においては,被害者を含め,被疑者以外の者の総称として参考人という名称を用いるのが一般的であると認められるから(弁論の全趣旨),「被害者じゃない。参考人や。」という発言は,何らの意味もないものであり,G副検事がそのような発言をしたとはにわかに想定しがたく,そのような発言があったとする原告本人の供述等は信用できない。 さらに,原告は,同副検事が,「犯罪者にされたくなかったら取り下げろ。」と発言したと主張し,原告本人の供述等によれば,同副検事が「告訴を取り下げなかったら罪にできるぞ。」とか「(罪にすることは)どないでもできる。」などと発言したというのであるが,同副検事がそのような明らかに違法性を帯びた発言をなしたというのはたやすく信用しがたい。 以上により,原告本人の前記供述等は信用しがたい。 (3) 加えて,原告は,別件でG副検事から取調べを受けた際,告訴の取下げを強要されたとする第三者の陳述を記載した書面(甲35,36)を提出しているが,その陳述記載にかかるG副検事の言動はいずれもいささか不自然であって信用しがたいし,また,これらは同副検事の原告に対する告訴取下げに関する言動を直接裏付けるものではなく,当該言動を認めるに足りない。 (4) 以上のとおり,原告の主張する事実はいずれも本件証拠上認められない。 2 争点(2)について(1) 原告は,L副検事が取調べに際して,様々な言動をもって原告に精神的苦痛を与えた旨を主張する(被侵害権利についての原告の主張は不明瞭であるが,その趣旨からして人格権侵害の主張と解される。)。 そこで検討するに,前記前提事実と証拠(乙1,2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,平成14年5月14日の取調中にL副検事が原告を「君」 ,その趣旨からして人格権侵害の主張と解される。)。 そこで検討するに,前記前提事実と証拠(乙1,2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,平成14年5月14日の取調中にL副検事が原告を「君」と呼んだこと,原告から「別の呼び方にしてほしい。そうしてもらえないのなら今日は帰る。」と言われたことから,それ以降は原告のことを「Rさん」ないしは「あなた」と呼称し,取調べを継続したこと,但し,その後もL副検事が原告を「君」と呼称することがあったこと,調書の記載につき,L副検事が「Rさんのことは君で統一する。」と述べ,最終的には原告の了承を得た上で原告につき「君」との呼称を用いて供述調書を作成したこと,同副検事が原告に対し,「Kの暴行事件に関係していないか。」等と質問したことが認められる。 (2) 思うに,検察官が取調室において,取調べの際,取調対象者を「君」と呼んだり,調書に「君」と記載したとしても,侮蔑感情が含まれるなど特段の事情がない限り違法とまではいえないところ,前記認定事実によれば,L副検事は原告の抗議に応じて「Rさん」または「あなた」と呼称するなどしていることが認められ,その他の事情を検討しても同副検事に原告を蔑む意図があったとは認められないから,同副検事の発言も違法とはいえない。 また,L副検事が原告を取り調べた際,「Kが暴行された事件に関与していないか。」と質問した事実については,原告が告訴した傷害事件の関係者が暴行の被害を受けた別事件と原告との関係の有無を確認することは,本件傷害事件の捜査として,原告の供述の信用性等を吟味するため必要性がないとはいえず,これが検察官として違法な職務行為にあたるとはいえない。 他にも,L副検事が,平成14年5月14日の取調べの際,原告に対し,原告の権利利益 用性等を吟味するため必要性がないとはいえず,これが検察官として違法な職務行為にあたるとはいえない。 他にも,L副検事が,平成14年5月14日の取調べの際,原告に対し,原告の権利利益を侵害する言動をなしたことを認めるに足る証拠がない。 (3) さらに,原告は,L副検事が,Aが逮捕されたことや同人がKと不倫していることを原告に話し,原告の落胆や動揺を楽しんだ事実があった旨主張し,原告本人の供述及び原告作成の各陳述書(甲5ないし7)にはこれに沿う部分がある。 しかし,Aを告訴したのは他ならぬ原告であり,原告は,Aが逮捕されたことや判決を受けたことを知っていた可能性が高いのであるから,L副検事が別事件の取調べで敢えて指摘したとは考えられないし,まして原告の落胆や動揺を楽しむために指摘するとは到底考えられず,この点に関する原告本人の供述等は信用できない。 かえって,証拠(乙2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,L副検事が,本件傷害事件について告訴人として原告の取調べをした際,原告に対し本件傷害事件に関するAの関与について質問をしていると,原告が自ら進んで「Aは,私が告訴した事件で神戸の裁判所で裁判を受けて,実刑1年半,執行猶予3年になった。」と申し立てたこと,そこで,同副検事が自ら入手していたAの前科調書を確認し,懲役1年6月,執行猶予3年でなかったかと原告に確認すると,「そんな内容だった。」と原告が回答するというやり取りがあったこと,また,同じころ,原告は,「Aの愛人的な男がKだ。」と同副検事に申し立てたことが認められる。 したがって,原告の主張に理由はない。 3 争点(3)について(1) 思うに,犯罪の捜査及び検察官の公訴権の行使は,国家及び社会の秩序維持という公益を図る たことが認められる。 したがって,原告の主張に理由はない。 3 争点(3)について(1) 思うに,犯罪の捜査及び検察官の公訴権の行使は,国家及び社会の秩序維持という公益を図るためになされるものであって,犯罪の被害者の被侵害利益ないし損害の回復を目的とするものではなく,この理は,たとえ犯罪捜査の端緒が一般国民の告訴によるものである場合でも同様である。 そうであれば,検察官が不起訴処分をなした場合に,当該検察官が個別の国民に対して職務上の法的義務を負担しているとは認められない以上,被害者や告訴人に対し当該処分の違法を理由に国家賠償法1条1項の責任が生ずる余地がないことは明らかである。 なお,告訴をした国民が捜査機関の捜査又は検察官の公訴提起によって精神的安堵感ないし期待感の満足を得ることがあるとしても,それらは捜査機関の職権発動によって反射的にもたらされる事実上の利益であるにすぎず,法律上保護された利益ではないというべきである。 (2) そこで検討するに,本件における原告の主張は,L副検事が原告の起訴した事件を不起訴処分にしたことが違法であるということに尽きるから,原告の主張に理由がないことは明らかである。 第4 結論以上によれば,原告の本訴請求はその余の点につき判断するまでもなく理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第6民事部 裁判長裁判官田中澄夫 裁判官大藪和男裁判官三宅知三郎 男裁判官 三宅知三郎
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