平成23(行ウ)535 決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年2月16日 東京地方裁判所
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平成24年2月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(行ウ)第535号決定処分取消請求事件口頭弁論終結日平成23年12月15日判決ドイツ連邦共和国<以下略>原告ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー特許管理人弁理士竹沢荘一同中馬典嗣同森浩之東京都千代田区<以下略>被告国処分行政庁特許庁長官指定代理人秦智子同進藤晶子同佐藤一行同大江摩弥子同河原研治 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 特許庁長官が平成22年3月11日付けで原告に対してした特願2009-545880号についての国内書面に係る手続の却下処分を取り消す。 2 特許庁長官が平成22年3月11日付けで原告に対してした特願2009-545880号についての国際出願翻訳文提出書に係る手続の却下処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,外国語でされた国際特許出願の出願人である原告が,当該国際特許出願について,特許法184条の4第1項に規定する明細書,請求の範囲,図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の日本語による翻訳文(以下「明細書等の翻訳文」という。)並びに同法184条の5第1項に規定する について,特許法184条の4第1項に規定する明細書,請求の範囲,図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の日本語による翻訳文(以下「明細書等の翻訳文」という。)並びに同法184条の5第1項に規定する書面(以下「国内書面」という。)を提出したところ,特許庁長官から,明細書等の翻訳文に係る手続については提出期間経過後の提出であることを理由として,国内書面に係る手続については翻訳文が提出期間内に提出されなかったことにより上記国際特許出願が取り下げられたものとみなされたことを理由として,それぞれ手続の却下処分を受けたことから,被告に対し,当該各却下処分の取消しを求めた事案である。 1 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,当事者間に争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 原告は,2008年(平成20年)1月23日,パリ条約による優先権主張日を2007年(平成19年)1月23日(米国における先の出願の特許出願日),受理官庁を欧州特許庁,国際出願言語を英語として,発明の名称(日本語訳)を「ビデオ画像に基づく道路特性分析,車線検出,および車線逸脱防止方法および装置」とする発明について,千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約(以下「特許協力条約」という。)3条に基づく国際出願(PCT/EP2008/000488。以下「本件国際出願」という。)をした。 本件国際出願は,特許協力条約4条(1)(Ⅱ)の指定国に日本国を含むものであったため,特許法184条の3第1項の規定によりその国際出願日にさ れた特許出願とみなされた国際出願(日本における出願番号・特願2009-545880号。以下「本件国際特許出願」という。)であり,かつ,本件国際特許出願は,英語でされた外国語特許出願(同法184条の4第 特許出願とみなされた国際出願(日本における出願番号・特願2009-545880号。以下「本件国際特許出願」という。)であり,かつ,本件国際特許出願は,英語でされた外国語特許出願(同法184条の4第1項)である。 (2)ア原告は,平成21年7月14日,特許庁長官に対し,本件国際特許出願についての国内書面(甲1。以下「本件国内書面」という。)を提出した。 外国語特許出願である本件国際特許出願についての特許法184条の4第1項本文の国内書面提出期間は,本件国際出願に係る特許協力条約2条(ⅺ)の優先日である平成19年1月23日から2年6月が経過する平成21年7月23日までであったところ,上記のとおり,本件国内書面が国内書面提出期間の満了前2月から満了の日までの間に提出されたため,同項ただし書により,本件国際特許出願についての明細書等の翻訳文の提出期間は,本件国内書面の提出日(平成21年7月14日)から2月以内,すなわち同年9月14日までとされることとなった。 イ原告は,特許庁長官に対し,平成21年9月14日までに,本件国際特許出願についての明細書等の翻訳文を提出せず,同月24日に至ってこれらの翻訳文を添付した「国際出願翻訳文提出書」と題する書面(甲2。以下「本件翻訳文提出書」という。)を提出した。 (3)ア特許庁長官は,原告に対し,本件翻訳文提出書の提出が明細書等の翻訳文の提出期間経過後であるとの理由により,本件翻訳文提出書に係る手続は却下すべきものと認められる旨の平成21年12月2日付け「却下理由通知書」(甲3の2)を送付した。 イまた,特許庁長官は,原告に対し,本件国際特許出願は,特許法184条の4第1項ただし書の翻訳文提出特例期間内に明細書等の翻訳文の提出がないため,取り下げられたものとみなされたから,国内書面に係る手 また,特許庁長官は,原告に対し,本件国際特許出願は,特許法184条の4第1項ただし書の翻訳文提出特例期間内に明細書等の翻訳文の提出がないため,取り下げられたものとみなされたから,国内書面に係る手続は認められないとの理由により,本件国内書面に係る手続は却下すべきも のと認められる旨の平成21年12月2日付け「却下理由通知書」(甲3の1)を送付した。 (4) 原告は,平成22年1月22日,特許庁長官に対し,「パリ条約による優先権主張取下書」と題する書面(甲4。以下「本件取下書」という。)を提出した。本件取下書には,【事件の表示】として,本件国際特許出願に係る日本における出願番号(特願2009-548880)が記載されている。 また,原告は,同月28日,特許庁長官に対し,上記(3)の各却下理由通知書に対する弁明書(乙1)を提出し,各却下理由通知書記載の却下理由は認められない旨を主張した。 (5) 特許庁長官は,平成22年3月11日付けで,前記(3)アの却下理由通知書記載の理由により,本件翻訳文提出書に係る手続を却下する旨の処分(以下「本件翻訳文提出書却下処分」という。)をした。 また,特許庁長官は,同日付けで,前記(3)イの却下理由通知書記載の理由により,本件国内書面に係る手続を却下する旨の処分(以下「本件国内書面却下処分」といい,これと本件翻訳文提出書却下処分とを併せて「本件各却下処分」という。)をした。 なお,本件各却下処分に係る通知が原告に到達したのは,同月24日である(甲5の1及び2,甲6)。 (6) 原告は,平成22年5月24日付けで,本件各却下処分について,行政不服審査法による異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)をした。 その後,特許庁長官は,同年11月17日,「本件異議申立てを棄却する。」との 年5月24日付けで,本件各却下処分について,行政不服審査法による異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)をした。 その後,特許庁長官は,同年11月17日,「本件異議申立てを棄却する。」との決定(以下「本件異議決定」という。)をした。 本件異議決定は,同月18日に原告に送達された。 (7) 原告は,平成23年5月18日,被告を相手方として,本件異議決定の取消しを求める訴訟(東京地方裁判所平成23年(行ウ)第318号。以下「318号事件」という。)を提起し,さらに,同年9月12日,本件各却下処 分の取消しを求める本件訴訟を提起した。同月20日,本件訴訟が318号事件に併合された後,同月21日,原告は,318号事件に係る訴えを取り下げた。 2 争点本件の争点は,「本件各却下処分が違法なものか否か」である。 第3 争点に関する当事者の主張 1 原告の主張(1) 原告が,平成22年1月22日,特許庁長官に対し,本件国際特許出願に関して本件取下書を提出したことにより,本件国際特許出願における2007年(平成19年)1月23日を優先日とするパリ条約による優先権主張は取り下げられたものであり,その結果,本件国際特許出願に係る特許協力条約2条(ⅺ)の優先日は,本件国際出願の国際出願日である2008年(平成20年)1月23日に繰り下がることとなる。 そうすると,本件国際特許出願についての国内書面提出期間(特許法184条の4第1項)の満了日も,上記国際出願日である平成20年1月23日から2年6月が経過する平成22年7月23日に繰り下がることとなるところ,原告は,特許庁長官に対し,いずれも上記満了日前である平成21年7月14日に本件国内書面を,同年9月24日に本件翻訳文提出書を提出している。 したがって,本件国際特許出願 がることとなるところ,原告は,特許庁長官に対し,いずれも上記満了日前である平成21年7月14日に本件国内書面を,同年9月24日に本件翻訳文提出書を提出している。 したがって,本件国際特許出願については,特許法184条の4第1項本文の国内書面提出期間内に明細書等の翻訳文が特許庁長官に提出されていることとなるから,その提出が提出期間経過後であることを理由とする本件翻訳文提出書却下処分は違法であり,また,明細書等の翻訳文の提出が提出期間内になかったため,本件国際特許出願は取り下げられたものとみなされたから,国内書面に係る手続は認められないことを理由とする本件国内書面却下処分も違法である。 (2) 本件異議決定は,特許法43条1項に基づくパリ条約による優先権主張の取下げについて,同法にその要件及び効果等に関する規定が何ら設けられておらず,特許庁の方式審査便覧においても認められない旨が明記されているから,現行法上認められない手続である旨判断している。 しかしながら,特許法には,パリ条約による優先権主張の取下げができないとする規定は存在せず,他方,出願審査の請求については,「出願審査の請求は,取り下げることができない。」(特許法48条の3第3項)との明文の規定が置かれている。しかるところ,出願審査の請求が,「出願に吸収され,当該出願の一部」になるという点で,パリ条約による優先権主張と同一の法的性格を有することからすれば,特許法が,出願審査の請求については明文の規定で取下げを禁止しているのに,これと同一の法的性格を有するパリ条約による優先権主張については取下げを禁止する明文の規定を置いていないのは,出願審査の請求とは異なり,パリ条約による優先権主張については,その取下げを認める趣旨であると解すべきである。 2 被告の主張( 先権主張については取下げを禁止する明文の規定を置いていないのは,出願審査の請求とは異なり,パリ条約による優先権主張については,その取下げを認める趣旨であると解すべきである。 2 被告の主張(1) 本件国際特許出願は,特許法184条の4第1項ただし書の「翻訳文提出特例期間」内に明細書等の翻訳文が提出されなかったことにより,その期間の経過をもって取り下げられたものとみなされ(同条3項),その出願の効果が消滅したのであるから,その後に優先権主張を取り下げる旨の本件取下書が提出されても,何らの効果も生じない。 したがって,原告による本件取下書の提出は,本件国際特許出願に係る本件翻訳文提出書及び本件国内書面に係る各手続に対する処分(本件各却下処分)にも何ら影響がなく,その理由を覆すものとならないことは明らかである。 (2) また,上記(1)の点をおくとしても,以下のとおり,原告による優先権主張の取下げを認める余地はない。 ア特許協力条約における優先権主張の取下げについて(ア) まず,原告による本件取下書の提出について,本件国際出願における特許協力条約に基づく優先権主張の取下げとしての効力を認める余地はない。 すなわち,国際出願における特許協力条約に基づく優先権主張の取下げについては,特許協力条約に基づく規則90の2.3に手続が定められており,その要件及び効力については,以下のとおりとされている。 ① 優先日から30月を経過する前に取り下げる。 ② 取下げは,出願人の選択により国際事務局,受理官庁又は(予備審査請求をした場合は)国際予備審査機関に対して行い,取下書を各機関が受領したときに効力を生ずる。 ③ 優先権主張の取下げが優先日について変更が生じる場合には,もとの優先日から起算した場合にまだ満了していない期間は は)国際予備審査機関に対して行い,取下書を各機関が受領したときに効力を生ずる。 ③ 優先権主張の取下げが優先日について変更が生じる場合には,もとの優先日から起算した場合にまだ満了していない期間は,変更後の優先日から起算する。 (イ) しかるところ,原告による本件取下書の提出(平成22年1月22日)は,本件国際出願の「優先日」(2007年(平成19年)1月23日)から30月を経過した後にされたものである上に,当該出願の受理官庁である欧州特許庁に対して行われたものではないから,特許協力条約に基づく優先権主張の取下げとしての効力が生ずるための要件を欠くものであることが明らかである。 イ特許法に基づくパリ条約による優先権主張の取下げについて特許法は,43条においてパリ条約による優先権主張の手続を定めているが,その取下げについては,パリ条約にも,特許法にも,その要件及び効果等についての規定が何ら設けられていない。 したがって,我が国の特許法においては,パリ条約による優先権主張の取下げの手続は認められていないと解すべきであるから,原告による本件 取下書の提出について,特許法に基づくパリ条約による優先権主張の取下げとしての効力を認める余地はない。 第4 当裁判所の判断1(1) 原告は,本件取下書の提出によって,本件国際特許出願に関する2007年(平成19年)1月23日を優先日とする優先権主張は取り下げられたものであり,その結果,本件国際特許出願に係る特許協力条約2条(ⅺ)の優先日は,本件国際出願の国際出願日である2008年(平成20年)1月23日に繰り下がることとなり,ひいては,本件国際特許出願についての国内書面提出期間(特許法184条の4第1項)の満了日も平成22年7月23日に繰り下がることとなる旨主張する。 そ 20年)1月23日に繰り下がることとなり,ひいては,本件国際特許出願についての国内書面提出期間(特許法184条の4第1項)の満了日も平成22年7月23日に繰り下がることとなる旨主張する。 そこで,原告による本件取下書提出の効果について検討するに,前記争いのない事実等(1)ないし(3)のとおりの本件国際特許出願に係る事実経過からすれば,①原告は,2008年(平成20年)1月23日,特許協力条約3条に基づいて,同条約8条に基づくパリ条約による優先権主張(優先権主張日・2007年(平成19年)1月23日(米国における先の出願の特許出願日))を伴う本件国際出願(受理官庁・欧州特許庁)をしたこと,②本件国際出願は,日本において,特許法184条の3第1項の規定により,その国際出願日にされた特許出願とみなされたこと(本件国際特許出願),③本件国際特許出願についての明細書等の翻訳文の提出期間は,同法184条の4第1項ただし書の適用により,原告が本件国内書面を提出した日である平成21年7月14日から2月が経過する同年9月14日までであったことが認められる。 しかるところ,原告は,当該提出期間の満了日までに上記翻訳文をいずれも提出しなかったのであるから,特許法184条の4第3項の規定により,当該満了日が経過した時点で,本件国際特許出願は取り下げられたものとみなすものとされる。 そうすると,原告が本件取下書を特許庁長官に提出した平成22年1月22日の時点においては,本件国際特許出願は,既に取り下げられたものとされ,そもそも特許出願として特許庁に係属していないこととなるから,当該出願に関して,優先権主張の取下げを含む特許庁における法律上の手続は,およそ観念することができないというべきである。 してみると,原告による本件取下書の提出を に係属していないこととなるから,当該出願に関して,優先権主張の取下げを含む特許庁における法律上の手続は,およそ観念することができないというべきである。 してみると,原告による本件取下書の提出をもって,本件国際特許出願に関する優先権主張の取下げの効果を生じさせるものと認めることはできない。 (2) なお,原告は,特許法43条1項に基づくパリ条約による優先権主張の取下げについて,現行法上認められない手続であるとした本件異議決定の判断を論難し,特許法は上記取下げを認める趣旨と解すべきである旨を主張するが,上記(1)の判断は,特許法がパリ条約による優先権主張の取下げを認めるものか否かの解釈いかんに左右されるものではないから,原告の上記主張の当否については,判断の必要を認めない。 2 以上によれば,本件国際特許出願に係る特許協力条約2条(ⅺ)の優先日が2008年(平成20年)1月23日に繰り下がり,ひいては,国内書面提出期間の満了日も平成22年7月23日に繰り下がる旨の原告の主張には理由がなく,そうすると,特許法184条の4第1項の規定によって定まる本件国際特許出願についての明細書等の翻訳文の提出期間は,平成21年9月14日(前記1(1)③)までということになり,他方,原告は当該提出期間内に上記翻訳文をいずれも提出しなかったものであるから,本件各却下処分についての原告主張の違法事由はいずれも認めることができない。他に本件各却下処分を違法なものとすべき理由も認められない。 したがって,原告の請求はいずれも理由がないから,棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官大西勝滋 裁判官石神有 のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官大西勝滋 裁判官石神有吾

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