令和4(ワ)5542 損害賠償請求事件(国家賠償請求)

裁判年月日・裁判所
令和6年7月18日 東京地方裁判所
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判決文本文26,370 文字)

- 1 -令和6年7月18日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第5542号損害賠償請求事件(国家賠償請求)口頭弁論終結日令和6年4月11日判決 主文 1 被告は、原告に対し、110万円及びこれに対する平成30年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを10分し、その9を原告の負担とし、その余を被告の負 担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、1100万円及びこれに対する平成30年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、弁護士であった原告が、犯人隠避教唆の被疑者として検察官から受けた取調べに違法があり、精神的苦痛を受けたと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金1100万円及びこれに対する上記取調べ後の平成30年11月6日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法 (以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠等により容易に認定することができる事実)⑴ 原告に対する捜査等の経緯 ア弁護士であった原告は、平成30年10月15日(以下、平成30年の出来- 2 -事については、年月日を記載する際に「平成30年」を省略する。)、横浜地方検察庁(以下「横浜地検」という。)特別刑事部のA検察官(以下「A検察官」という。)により、犯人隠避教唆の被疑者として通常逮捕された。 上記逮捕に係る被疑事 に「平成30年」を省略する。)、横浜地方検察庁(以下「横浜地検」という。)特別刑事部のA検察官(以下「A検察官」という。)により、犯人隠避教唆の被疑者として通常逮捕された。 上記逮捕に係る被疑事実は、要旨、原告は、弁護士であるところ、B(以下「B」という。)が、C(以下「C」という。)が運転免許を有しないで自動車を運転する こととなるおそれがあることを知りながら、平成28年5月12日、Cに対し、Bが所有する普通乗用自動車を提供して犯した道路交通法違反(車両提供)事件(以下「本件道路交通法違反事件」という。)に関し、Bの刑事責任を免れさせようと企て、Bと共謀の上、Bにおいて、同月下旬頃、Cに対し、CがB方から同車を勝手に持ち出して運転したものであるなどと警察官に虚偽の事実を申告するように依頼 し、さらに、原告において、同年6月7日、Cに対し、前記同様に依頼して、Cにその旨決意させ、よって、Cをして、同月17日頃、神奈川県泉警察署において、司法警察員に対し、CがB方から同車を勝手に持ち出して運転したものであるなどと虚偽の事実の申告をさせ、もって犯人隠避を教唆したというものであった(以下、この犯人隠避教唆事件を「本件犯人隠避教唆事件」という。)。 なお、Cは、平成28年5月12日、無免許で上記自動車を運転し、同車にはD(以下「D」という。)及びE(以下「E」という。)が同乗していたところ、Cが交通事故(以下「本件交通事故」という。)を起こしたことにより、Dが死亡した。 そして、同月24日、B及びEが原告の勤務する法律事務所を訪れ、原告がEによる本件交通事故の状況等に関する供述を録取した体裁になっている「供述調書」と 題する書面(以下「本件供述調書」という。)が作成されたが、本件供述調書には、実際の本件交通事故の状況等 告がEによる本件交通事故の状況等に関する供述を録取した体裁になっている「供述調書」と 題する書面(以下「本件供述調書」という。)が作成されたが、本件供述調書には、実際の本件交通事故の状況等とは異なる虚偽の内容が記載されていた。(乙2、6、弁論の全趣旨)イ原告は、10月17日、本件犯人隠避教唆事件について、勾留された。 ウ原告は、本件犯人隠避教唆事件について、F弁護士(以下「F弁護士」とい う。)、G弁護士(以下「G弁護士」という。)及びH弁護士を、弁護人として選任し- 3 -た。(原告本人、弁論の全趣旨)エ原告につき、10月26日、本件犯人隠避教唆事件について10日間の勾留期間延長の裁判がされた(勾留期間の満了日は11月5日)。これに対し、原告の弁護人であるF弁護士は、10月26日、準抗告の申立てをしたが、同準抗告は、同日、「本件の処分を決するためには、勾留を継続した上で、更に共犯者や関係者を取 り調べ、関係場所の捜索差押を行うなど所要の捜査を遂げた上で再度被疑者を取り調べることが必要であり、そのためにはなお、相当の日数を要すると認められる」などとして、棄却された(横浜地方裁判所平成30年(む)第6133号)。(甲1、18)オ横浜地検検察官は、11月5日、横浜地方裁判所に対し、本件犯人隠避教唆 事件について、原告に対する公訴を提起した(同裁判所平成30年(わ)第1832号)。 カ横浜地方裁判所は、令和2年2月3日、本件犯人隠避教唆事件につき、原告を懲役2年(執行猶予5年)に処する旨の判決を宣告した。同判決は、令和4年9月13日に原告の控訴が棄却され(東京高等裁判所令和2年(う)第377号)、令 和5年8月30日に原告の上告が棄却されたこと(最高裁判所令和4年(あ)第1259号)に た。同判決は、令和4年9月13日に原告の控訴が棄却され(東京高等裁判所令和2年(う)第377号)、令 和5年8月30日に原告の上告が棄却されたこと(最高裁判所令和4年(あ)第1259号)により、確定した。(乙2、6、8)上記判決において認定された罪となるべき事実は、要旨、Bは、Cが運転免許を受けないで自動車を運転することとなるおそれがあることを知りながら、平成28年5月12日、Cに対し、普通乗用自動車を提供し、その後、Cが、運転免許を受 けないで、同車を運転したことで、道路交通法違反事件を犯したものであるが、原告は、Bと共謀の上、Bにおいて、同月下旬頃、Cに対し、Cの前記運転行為に関して警察官から事情を聴かれた際にはCが同車をBから提供を受けずに勝手に運転したなどと虚偽の供述をするよう依頼し、Cにその旨決意させ、よって、Cをして、同年6月17日、神奈川県泉警察署において、同署司法警察員からCの前記運転行 為に関して事情を聴かれた際、Cが同車をBから提供を受けずに勝手に運転したな- 4 -どと虚偽の供述をさせ、もって犯人隠避を教唆したというものであった。 (乙2、6)⑵ 原告に対する取調べア原告は、本件犯人隠避教唆事件について逮捕、勾留されていた10月15日から11月5日までの間、A検察官及びI検察官(以下、両者を併せて「本件検察官ら」という。)により、取調べ(以下「本件取調べ」という。)を受けた。本件取 調べの時間及び主体は、別紙「原告に対する取調べ時間一覧」記載のとおりである。 (乙1)イ原告は、10月15日の逮捕直後の弁解録取において、「事実無根です。私は犯人隠避の教唆をしていません。私からはこれ以上話すことはありません。」と述べ、同月16日の取調べの冒頭において、「じゃあここからわたくし黙 月15日の逮捕直後の弁解録取において、「事実無根です。私は犯人隠避の教唆をしていません。私からはこれ以上話すことはありません。」と述べ、同月16日の取調べの冒頭において、「じゃあここからわたくし黙秘に入りますの で、よろしく」と述べた。それ以降、原告は、本件取調べにおいて、トイレ等のために取調べの中断を求める場合や、取調べ状況報告書への署名及び指印をしない旨の意思を示す場合を除き、取調べ中には、被疑者用の椅子に着席し、正面を向いたまま静止し、自ら発言をすることも、本件検察官らの発言に対する返答その他の反応をすることもなかった。(甲5、6、乙4、5、7、原告本人、弁論の全趣旨) 3 争点及び争点に対する当事者の主張本件の争点は、本件検察官らの取調べが国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か(争点1)、原告の損害の発生の有無及び金額(争点2)である。 ⑴ 争点1(本件検察官らの取調べが国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について (原告の主張)ア黙秘の意思の表明後に取調べを継続したことが違法(黙秘権侵害)であること憲法38条1項が包括的黙秘権の実効的な保障を求めていることからすれば、黙秘権行使の意思を明確にしている者に対して取調べを継続する行為は、憲法及び刑 事訴訟法(以下「刑訴法」という。)が保障する黙秘権を侵害するものであり、国家- 5 -賠償法上違法というべきである。被告は、刑訴法198条1項を根拠に、黙秘している被疑者にも取調べ受忍義務が認められる旨主張するが、そのような解釈は、黙秘権の保障の趣旨に反し、誤りである。 原告は、10月15日の逮捕直後の弁解録取において、被疑事実を否認する旨及びこれ以上話すことはない旨を伝え、同月16日の取調べの冒頭でも黙秘に入る旨 は、黙秘権の保障の趣旨に反し、誤りである。 原告は、10月15日の逮捕直後の弁解録取において、被疑事実を否認する旨及びこれ以上話すことはない旨を伝え、同月16日の取調べの冒頭でも黙秘に入る旨 を述べて、黙秘の意思を明らかにし、それ以降の取調べにおいて、一貫して黙秘権を行使した。それにもかかわらず、本件検察官らは、別紙のとおり50時間以上もの長時間にわたり取調べを続けた。被疑者が黙秘権を行使しているにもかかわらず取調べを続行して発問や説得をする行為は、供述の強要であり、黙秘権保障の趣旨と相いれないものである。 したがって、原告が黙秘の意思を明示的に表明し、その意思をA検察官が確認した時点(10月16日15時23分)以降において、本件検察官らが別紙のとおり取調べを行ったこと自体が、原告の黙秘権を侵害する国家賠償法上違法な行為であるというべきである。 イ A検察官の取調べが社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し違法であるこ と前記アが認められないとしても、本件取調べにおけるA検察官の取調べは、以下のとおり、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱するものであり、国家賠償法上違法である。 黙秘権侵害 取調べ受忍義務を肯定する現在の裁判実務を前提としても、黙秘権を行使する被疑者に対する発問、説得等には一定の限界があり、限界を超える発問、説得等は、黙秘権を侵害するものであり、社会通念上相当な捜査権限の行使とは評価し得ず、国家賠償法上の違法を構成するものというべきである。 A検察官の取調べは、原告の人格や弁護士としての能力、本件犯人隠避教唆事件 における原告の防御方針を執拗に非難するなどして、原告を精神的に圧迫すること- 6 -で供述を強要しようとするものであり、その頻度及び長さに照らしても、原 しての能力、本件犯人隠避教唆事件 における原告の防御方針を執拗に非難するなどして、原告を精神的に圧迫すること- 6 -で供述を強要しようとするものであり、その頻度及び長さに照らしても、原告に対する発問や説得といい得る限度を超えるものであった。 したがって、A検察官の取調べは、原告の黙秘権を侵害するものであり、社会通念上相当な捜査権限の行使であるとはいえず、国家賠償法上違法というべきである。 弁護人依頼権侵害 憲法34条の弁護人依頼権は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく、被疑者に対し、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障するものである。そして、弁護人から援助を受けるに当たっては、被疑者と弁護人が信頼関係を築いて保持することが不可欠の前提となるから、 取調官が被疑者と弁護人との信頼関係を破壊する行為は、弁護人依頼権を侵害するものというべきである。 本件取調べにおいて、A検察官は、原告に対し、複数回にわたり、弁護人の活動を侮辱したり、原告が弁護人に迷惑をかけているから自分だけで防御活動をすればよいという発言をしたりした。これらの発言は、原告と弁護人との信頼関係を破壊 しようとするものであって、原告の弁護人依頼権を侵害するものであり、社会通念上相当な捜査権限の行使であるとはいえず、国家賠償法上違法というべきである。 人格権侵害被疑者に対する取調べは、社会通念上相当と認められる範囲でのみ適法に行い得るものであって、この範囲を逸脱する行為があったときは、国家賠償法上違法とな る。そして、人格権は、憲法13条後段の幸福追求権から導かれる基本的人権の一つであり、これを 範囲でのみ適法に行い得るものであって、この範囲を逸脱する行為があったときは、国家賠償法上違法とな る。そして、人格権は、憲法13条後段の幸福追求権から導かれる基本的人権の一つであり、これを否定・侵害するような取調べは、社会通念上相当と認められる範囲を超え、国家賠償法上違法というべきである。 A検察官は、本件取調べの全般において、原告の尊厳を損なう言動、原告の正当な防御活動を否定する発言、原告の人格や弁護士としての能力等を否定し、揶揄・ 侮辱する発言、殊更に原告の不安を煽ったり原告の人間関係を破壊させる行動を示- 7 -唆したりして、原告を困惑ないし畏怖させる発言等を繰り返した。このようなA検察官の一連の取調べは、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し、原告の人格権を侵害するものであって、国家賠償法上違法というべきである。 (被告の主張)ア本件犯人隠避教唆事件の悪質性について 本件犯人隠避教唆事件は、弁護士としての地位や能力を悪用して刑事司法作用を妨害したものであって、弁護士倫理に反し、弁護士にあるまじき犯罪行為であり、人としての良心にももとるものであって、刑事事件の中でも、極めて悪質な事案であった。これに加えて、本件交通事故により死亡したDの遺族が、原告の懲戒請求をしていたことや、本件犯人隠避教唆事件が社会的耳目を集めていたこと等からす ると、検察官としては、真実の発見や事案の真相解明を目的とするのはもちろんのこと、弁護士である原告に対し、法曹としての倫理観のかん養と反省、更生を促すため、様々な観点から説明や説得を尽くして、真実を述べるように取調べを行う高度の必要性があった。 イ黙秘の意思の表明後に取調べを継続したことについて 刑訴法198条1項は、捜査機関に対し、犯罪捜査の必要が 説明や説得を尽くして、真実を述べるように取調べを行う高度の必要性があった。 イ黙秘の意思の表明後に取調べを継続したことについて 刑訴法198条1項は、捜査機関に対し、犯罪捜査の必要があるときは、身体の拘束を受けている被疑者を出頭、滞留させた上で取り調べることができる旨を規定したものと解されるところ、判例は、「身体の拘束を受けている被疑者に取調べのために出頭し、滞留する義務があると解することが、直ちに被疑者からその意思に反して供述することを拒否する自由を奪うことを意味するものでないことは明らかで ある」(最高裁平成5年(オ)第1189号同11年3月24日大法廷判決・民集53巻3号514頁。以下「平成11年最大判」という。)としており、身体拘束を受けている被疑者が黙秘権を行使する場合に検察官等の捜査官が取調べを継続したとしても、そのことが直ちに黙秘権の侵害となるものではない。 したがって、原告が、A検察官に対し、黙秘の意思を明示的に表示し、その意思 をA検察官が確認したとしても、それ以降に原告に対して取調べを継続することが- 8 -直ちに原告の黙秘権を侵害することになるものではなく、取調べを継続した本件検察官らの行為が黙秘権侵害に当たり国家賠償法上違法であるとする原告の主張には、理由がない。 ウ A検察官の取調べについて検察官による取調べが国家賠償法上違法かどうかは、取調べの対象となった事案 の内容・性質、被疑者に対する嫌疑の程度、被疑者の供述内容を始めとする取調べ時点における証拠関係の下での取調べの必要性・目的等の諸般の事情を勘案して、当該取調べが社会通念上相当と認められる範囲を超えていないかどうかを個別的、具体的に検討すべきである。 そして、被疑者に対する取調べは、事案の真相解明を目的とする 性・目的等の諸般の事情を勘案して、当該取調べが社会通念上相当と認められる範囲を超えていないかどうかを個別的、具体的に検討すべきである。 そして、被疑者に対する取調べは、事案の真相解明を目的とするものであり、そ の過程で、被疑者に対して自白の説得等を行うこと自体は非難されるべきことではなく、その中で、捜査官が被疑者に対し、人格を損なわない限度において、たとえ厳しい口調で迫ることがあったとしても、事案の重大性や嫌疑の程度によっては、やむを得ないと評価される場合もある。また、その判断に当たっては、ある特定の時点における個別の発言や一部のやり取りを切り取って、断片的にその趣旨を評価 するのではなく、前後又は別日の発言内容等を含めて、一連のものの一環として、全体的に判断される必要がある。 黙秘権侵害について被疑者の取調べに当たり真実の供述を得るには、捜査官が被疑者に対して説得を行うことも必要であるから、このような場合における捜査官の被疑者に対する発言 は、捜査権の行使として社会通念上相当と認められる範囲を逸脱するものと認められない限り、違法の評価を受けるものではないというべきである。 そして、本件取調べの必要性や、取調べが行われた具体的な日時等に鑑みると、A検察官が、原告の取調べを継続したことは、説得行為として社会通念上相当な範囲を逸脱したものとは認められず、原告の取調べを継続したことによる黙秘権侵害 は認められない。また、原告が指摘する本件取調べにおけるA検察官の発言はいず- 9 -れも、前後の発言内容等を踏まえ、一連のものの一環として全体的にみた場合、社会通念上相当な範囲を逸脱したものとは認められず、国家賠償法上違法となるような原告の黙秘権侵害はない。 したがって、黙秘権の侵害をいう原告の主張には理由 、一連のものの一環として全体的にみた場合、社会通念上相当な範囲を逸脱したものとは認められず、国家賠償法上違法となるような原告の黙秘権侵害はない。 したがって、黙秘権の侵害をいう原告の主張には理由がない。 弁護人依頼権侵害について 検察官が取調べの際に弁護人の弁護方針を理由として供述等を拒む被疑者に対して事実をありのままに供述するように説得することは、捜査の在り方として許されないものとはいえず、その際、検察官が弁護人の弁護方針に言及したとしても、弁護人が選択した弁護方針が他方当事者である検察官の行動にも影響を与え、それが被疑者に不利益に作用することもあり得る以上、その言及が直ちに社会通念上相当 性を欠くという評価を受けるべきものではない。 原告が指摘する本件取調べにおけるA検察官の発言は、いずれも、その前後の発言内容等を踏まえ、一連のものの一環として全体的にみた場合、社会通念上相当な範囲を逸脱したものとは認められず、原告と弁護人らとの間の信頼関係を破壊する結果をもたらす可能性がある内容ともいえない。 したがって、弁護人依頼権の侵害をいう原告の主張には理由がない。 人格権侵害について本件取調べについては、原告が弁護士としての地位や能力を悪用して行った本件犯人隠避教唆事件を対象としており、その内容が死者に責任を転嫁しようとする極めて悪質な事案であったこと、客観的な証拠関係から原告が犯人隠避教唆に及んだ との強い嫌疑が認められたこと、原告について、逮捕前の取調べでは虚偽を述べている可能性が高く、逮捕後には方便を使って取調べを中断させていることが伺われるなど、死者に対する謝罪の意思や反省悔悟の情が見受けられなかったこと等の事情に照らせば、本件取調べにおいて、犯行に至る経緯や動機の解明のために、原告の 便を使って取調べを中断させていることが伺われるなど、死者に対する謝罪の意思や反省悔悟の情が見受けられなかったこと等の事情に照らせば、本件取調べにおいて、犯行に至る経緯や動機の解明のために、原告の過去の弁護士としての考え方や刑事事件に取り組む姿勢に改めるべき点があれば これを指摘したり、原告の親族や事件関係者の置かれた状況や心情に言及して、そ- 10 -の点に配慮するよう述べたりすることも、必要かつ相当であった。 本件取調べは、真実発見のための説得や追及を目的として行われたことはいうまでもないが、更に、本件犯人隠避教唆事件の罪質等の具体的事情も考慮して、関連性が認められる事柄に言及しながら行われたものであり、個々の発言に、口調の厳しいものがあったり、原告の虚言を戒める発言があったり、その態様の一部に不適 切な部分があったことは否定できないものの、本件取調べを全体としてみれば、社会通念上相当な範囲を逸脱するものとは認められないため、国家賠償法上違法となるような人格権侵害はない。 したがって、人格権の侵害をいう原告の主張には理由がない。 ⑵ 争点2(原告の損害の発生の有無及び金額)について (原告の主張)原告は、連日長時間にわたり、黙秘権、弁護人依頼権及び人格権を侵害する一連の違法な取調べを受けたものであり、その精神的苦痛は、計り知れず甚大である。 これに対する慰謝料は、1000万円とするのが相当である。 また、原告はやむを得ず原告訴訟代理人らに依頼して本件訴訟を提起するに至っ たのであり、その弁護士費用として、少なくとも100万円が損害として認められるべきである。 (被告の主張)否認し争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件検察官らの取調べが国家賠償法1条1項の適用上違法であるか なくとも100万円が損害として認められるべきである。 (被告の主張)否認し争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件検察官らの取調べが国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否か)について⑴ 黙秘の意思の表明後に取調べを継続したことが違法(黙秘権侵害)であるとの主張についてア本件取調べにおいて、原告は、10月15日の逮捕直後の弁解録取において 被疑事実を否認する旨及びこれ以上話すことはない旨を伝え、同月16日の取調べ- 11 -の冒頭においても、「じゃあここからわたくし黙秘に入りますので、よろしく」と述べ、それ以降は、トイレ等のために取調べの中断を求める場合や、取調べ状況報告書への署名及び指印をしない旨の意思を示す場合を除き、取調べ中には、被疑者用の椅子に着席し、正面を向いたまま静止し、自ら発言をすることも、本件検察官らの発言に対する返答その他の反応をすることもなく、黙秘をする意思を一貫して示 し続けていた(前記前提事実⑵イ)。そして、このような状況の下、本件検察官らは、原告に対し、11月5日までの間、別紙記載のとおり、断続的に取調べを行ったものである(同ア)。 この点に関して、原告は、憲法38条1項が包括的黙秘権の実効的な保障を求めていることからすれば、被疑者が黙秘権行使の意思を明確にした場合において、そ の意思表示が真意であるかを確認したときは、それ以上の意思確認や説得等は許されず、取調べを終了しなければならないとして、取調官が一定の供述の獲得を目指して被疑者を取調べの場に滞留させ続けたり、質問・説得等を繰り返したりする行為は、憲法及び刑訴法が保障する黙秘権を侵害するものであり、国家賠償法上違法である旨主張する。 イいわゆる黙秘権について、憲法38条1項は、何人も、自己 、質問・説得等を繰り返したりする行為は、憲法及び刑訴法が保障する黙秘権を侵害するものであり、国家賠償法上違法である旨主張する。 イいわゆる黙秘権について、憲法38条1項は、何人も、自己に不利益な供述を強要されないと規定するところ、その法意は、何人も自己が刑事上の責任を問われるおそれがある事項について供述を強要されないことを保障することにあるものと解される(最高裁昭和27年(あ)第838号同32年2月20日大法廷判決・刑集11巻2号802頁参照)。また、黙秘権に関して、刑訴法198条2項は、被 疑者の取調べに際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならないと規定している。 一方、刑訴法198条1項本文は、検察官等は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができると規定し、同項ただし書は、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、 又は出頭後、何時でも退去することができると規定するところ、身体の拘束を受け- 12 -ている被疑者に取調べのために出頭し、滞留する義務があると解することが、直ちに被疑者からその意思に反して供述することを拒否する自由を奪うことを意味するものでないことは明らかである(平成11年最大判参照)。そのため、逮捕又は勾留されている被疑者が黙秘の意思を表明した場合において、検察官等が、その後も当該被疑者を取調べのために出頭、滞留させ、その取調べを継続したとしても、その こと自体をもって、憲法及び刑訴法が保障する黙秘権を侵害するものということはできない。 ウそうすると、本件取調べにおいて、本件検察官らが、原告が黙秘の意思を表明した後も取調べを継続したこと自体をもって、原告の黙秘権を侵 び刑訴法が保障する黙秘権を侵害するものということはできない。 ウそうすると、本件取調べにおいて、本件検察官らが、原告が黙秘の意思を表明した後も取調べを継続したこと自体をもって、原告の黙秘権を侵害するものとして国家賠償法上違法であると認めることはできない。 ⑵ A検察官の取調べが社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し違法であるとの主張についてア判断枠組み原告は、本件取調べにおけるA検察官の具体的言動が、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し、原告の黙秘権、弁護人依頼権及び人格権を侵害するものとして 国家賠償法上違法である旨主張する。 この点について、検察官の取調べが国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否かは、取調べの対象となった事案の内容・性質、被疑者に対する嫌疑の程度、取調べ時点における証拠関係の下での取調べの必要性、取調べの具体的態様等諸般の事情を勘案して、当該取調べが社会通念上相当と認められる範囲を超えるものである か否かにより判断するのが相当であり、その判断に際しては、被疑者の人格権はもとより、被疑者に保障されている黙秘権、弁護人依頼権等の権利の内容及びその保障の趣旨を考慮すべきものと解される。 イ事案の内容・性質、嫌疑の程度、取調べの必要性について本件犯人隠避教唆事件の被疑事実は、Bが犯した本件道路交通法違反事件につい て、弁護士であった原告が、Bの刑事責任を免れさせようと企て、Bと共謀の上、- 13 -Cをして、警察官に対し、CがB方からB所有の車両を勝手に持ち出して運転したものであるなどと虚偽の事実の申告をさせ、もって犯人隠避を教唆したというものであり(前記前提事実⑴ア)、高い職業倫理が求められる弁護士がその地位や能力を悪用して刑事司法作用を妨害したものであるという点におい るなどと虚偽の事実の申告をさせ、もって犯人隠避を教唆したというものであり(前記前提事実⑴ア)、高い職業倫理が求められる弁護士がその地位や能力を悪用して刑事司法作用を妨害したものであるという点においても、悪質性が高いものということができる。また、本件犯人隠避教唆事件については、Cが、警察官に 対し、本件供述調書の内容に沿う虚偽の供述をしていたことについては、明らかな証拠があったものと認められるところ、原告が本件供述調書の作成に関与していたことや、B及びEが原告の関与をうかがわせる供述をしていたこと(以上につき、甲1、乙2、6、弁論の全趣旨)等からすれば、本件取調べ時において、原告には相当の嫌疑があったものといえ(このことは、原告に対する逮捕状及び勾留状の発 付がされており(前記前提事実ア、イ)、後に原告に対する有罪判決が確定したこと(同カ)にも現れている。)、これと別異に解すべき事情があるとは認められない。 そして、本件犯人隠避教唆事件の内容や、原告の被疑事実がBとの共謀に係るものであったこと等からすれば、本件犯人隠避教唆事件に係る処分を決するためには、客観的証拠関係や共犯者及び関係者の供述内容等と原告の供述内容との整合性を確 認する必要があったものといえ、原告に対して取調べを行う必要性が存在したものと認められる。 ウ取調べにおけるA検察官の具体的言動についてA検察官と原告は、本件取調べにおいて、以下のやり取りを行ったことが認められる(甲5、6、乙4、5、7、原告本人、弁論の全趣旨)。 ① 10月18日の取調べa 原告が、A検察官に対し、居室に戻って水を飲みたいと申し出たところ、A検察官は、取調べ中であるから我慢すべきであると述べ、居室に戻ることを認めなかった。(争いのない事実)bA検察官は、原告 a 原告が、A検察官に対し、居室に戻って水を飲みたいと申し出たところ、A検察官は、取調べ中であるから我慢すべきであると述べ、居室に戻ることを認めなかった。(争いのない事実)bA検察官は、原告が黙秘をしていることに関して、「あなたがこうやって黙秘 で徹底的に争いますと、(略)、私から言わせればね、虚偽の弁解に基づいてそうい- 14 -った主張をね、すると、迷惑かかるんですよ、周りの人に。奥さんとか子どもさんにも迷惑かかるんですよ。」などと述べた。 cA検察官は、原告が取調べ状況報告書への署名及び指印をしない旨の意思を示したのに対し、「署名してください。皆さん署名してるんです。なぜ弁護士であるあなたができない。内容に間違いがあるなら言ってください。同一性確認できない じゃないの。なぜそんなこともできない。弁護士だろ。ルール守ってくださいよ。」、「おかしいでしょう。あなたの言ってることは。」などと述べたが、それでも原告が署名及び指印に応じなかったため、署名及び指印をしないことを了承した。 ② 10月21日の取調べaA検察官は、取調べの冒頭で、原告に対して体調を尋ねたが、原告が応答し なかったため、「なんか体調も答えられないの。それなんか黙秘と関係あんの。」、「なんなのそれは、それは黙秘権の行使なんですか。あなたの言ってる黙秘権ってなんなんですか、全然理解できないんだけども。っていうかあなた自身も分かってないんじゃないの。」などと述べた。 bA検察官は、原告に対し、原告がそれまでに弁護士として行ってきた弁護活 動に関して、「まあやっぱりちょっとバランスの悪さは感じますよね。(略)それが今回につながっていると思うんですよね。」、「着眼点が、修習生だね。」、「あなたの例えばその恐喝傷害の事件の弁護活動や 動に関して、「まあやっぱりちょっとバランスの悪さは感じますよね。(略)それが今回につながっていると思うんですよね。」、「着眼点が、修習生だね。」、「あなたの例えばその恐喝傷害の事件の弁護活動やってる記録改めてちょっと見直してみたりもしたし、あるいはあなた自身がノートでね、その事件に関してはかなり思い入れもあるような記載ぶりになっていたから、ちょっと見てみようというところもあっ て見てみたんだけども。やっぱりピンとこないですよね。できるなって思わなかった、少なくとも。なに細かいところに目いっちゃってんのってね。」、「ちょっとあの、なんていうか視野が狭いなっていうふうに、あなたについてね、感じる部分もあって。まあごめんなさいね、さっきから偉そうに説教してるけど、あなたがしゃべらないからこうなってんだからね。」などと述べた。 cA検察官は、原告が取調べ状況報告書への署名及び指印をしない旨の意思を- 15 -示したのに対し、「皆さんにしてもらってるんですよね。で、このルールに、そんなに瑕疵があるとも思えないんですよね。(略)なんでルール守れないの。そういうところなんじゃないの。」、「ただのルール守りたくないわがままな自己満足な人にしか目に映りませんよ、そんなの。」、「そういうところも含めて悔い改めないと再犯しますよあなた、何らかの形で。」などと述べた。 ③ 10月23日の取調べaA検察官は、原告に対し、Dの遺族の存在や、原告が本件交通事故に関して虚偽の内容の本件供述調書を作成したことに言及した上で、「普通はそしたら遺族の人にも悪いことしたと、弁護士としてそれはやっちゃいかんかったと。で事情についてはこれこれこうですと、すいませんでしたってね、いうのがあたりまえなの に、いや黙秘ですと。そりゃいかるで 遺族の人にも悪いことしたと、弁護士としてそれはやっちゃいかんかったと。で事情についてはこれこれこうですと、すいませんでしたってね、いうのがあたりまえなの に、いや黙秘ですと。そりゃいかるでしょう、何なんだってそれはって、弁護士じゃないのかってなんで説明しないんだって。」などと述べた。 b 原告が、A検察官に対し、「トイレに行きます。」と申し出たのに対し、A検察官は、「行きますじゃなくて、行きたいですでしょ。」と述べた上、原告がトイレに行くことを認めたものの、「事前に行っといてもらえるかな、トイレ。毎回言って るでしょ。そんなに長くまだ調べやってないんだから。取調べの妨害になりますよ。 トイレ行っといてくださいよ、事前に。当たり前の話でしょ。拘置所の人にも迷惑かかるんだよね。弁護士なんだから。」などと述べ、原告がトイレから戻ると、A検察官は、「取調べ中断してすいませんでしたとか言うんじゃねえの、普通。子どもじゃないんだから。あなた被疑者なんだよ、犯罪の。(略)なんでそんなことをね、言 わさせるんですか。子どもじゃないんだから。弁護士なんでしょ。あまりにもかっこ悪いですよ。」と述べた。 ④ 10月25日の取調べaA検察官は、原告に対し、取調べの冒頭、A検察官の挨拶に原告が応答しなかったことに関して、「挨拶ぐらいしろよ。挨拶無視するっていうのは良くないっす よ。自分がやられたら嫌だろ。黙秘権と関係ねえじゃん。昨日も言ったけども。ま- 16 -あいったい何がしたいのかね、あなたは。」などと述べた上、「単にね、苦しい状況っていう場面だけで物事考えてない。どうもあなたの思考過程っていうのはそういうところがあるように思えるんだけどね。本質を見れないから。」などと述べた。 bA検察官は、原告に対し、原告の弁護人として っていう場面だけで物事考えてない。どうもあなたの思考過程っていうのはそういうところがあるように思えるんだけどね。本質を見れないから。」などと述べた。 bA検察官は、原告に対し、原告の弁護人としてF弁護士及びG弁護士が就いていることに関して、「弁護士全員を敵に回すと思いますよ。F先生だってG先生だ って辛い立場になると思いますよ、なんであんな奴の弁護するんだってねえ。」、「F先生とかG先生にも迷惑かけないでもらいたいですよねえ。自分でやればいいじゃん。自信あるんでしょ。自信なければねえ、刑事弁護なんてやれないはずだから。 しかも刑事弁護についてはプライド持ってるわけでしょ。したらやってみればいいじゃないの、人に迷惑かけないで。」、「F先生とかG先生の目から見るとね、あいつ の弁護してるっていうのは弁護士自体のね、接見交通に関する世の中の見方を厳しくしちゃうし、それに加担することになっちゃうわけじゃないですか。一体何なんだって言われちゃうわけじゃないですか。迷惑なんですよね。あのいろんな人に迷惑かけないで諦めてくださいよもう。反省してくださいよ。人のせいばっかりにしてないで。」などとと述べた。 ⑤ 10月26日の取調べaA検察官は、原告に対し、「被害者とか、そういう人たちのリアルなところには、全然なんていうか本質的に感覚的に思いが至らないのかもしれないですねえ、あなたは。」、「僕ちゃんがやれるのは、ねえ、刑事事件(略)。しかも僕には、ねえ、質問能力がある。あるいは人前でねえ、パフォーマンスするっていうのも、これは テレビに出たりとかして鍛えてるんだと、他の弁護士にはできない能力があるんだ。 これを特に裁判員裁判で活かしてやりたい、活かせるはずだ、そっちの方向で出過ぎた杭になろう。まあこんなようなお子ちゃま発想だ レビに出たりとかして鍛えてるんだと、他の弁護士にはできない能力があるんだ。 これを特に裁判員裁判で活かしてやりたい、活かせるはずだ、そっちの方向で出過ぎた杭になろう。まあこんなようなお子ちゃま発想だったんでしょうね、あなたの弁護士観っていうのはね。全然大間違いですよ。ガキだよねあなたって。なんかね、子どもなんだよね。子どもが大きくなっちゃったみたいなね。」などと述べた。 bA検察官は、原告に対し、原告が押収品目録に住所の記載を求められた際に- 17 -個人の住所ではなく所属事務所の所在地を記載したこと等に関して、「なんか昨日の押収手続見てても、なんか大きい子どもがいるなみたいなね。ちょっとびっくりした感じですよね。うーん。逆に言うと素直だなってところなんだけど、根っこは素直なんだろうなって。まあ上から目線で申し訳ないけども。面白いですよね。ちょっとこう立ち止まって考えちゃうと、AかBか選択しないといけなくなると、な ぜか必ず間違うみたいなね。」、「普通の能力がある弁護士であればそうなることは直感的に分かるから、別に個人の住所書くんですよ、普通に、ね。そこで、あくまでも石川事務所の住所を書くんだっていう判断をしてしまうあなたは、やっぱどこかおかしいですよ、能力がね、足りてないっすよ、争うとこ間違ってるんですよ、完全に。」などと述べた。 cA検察官は、原告に対し、「あなたのやってることは空回りなんですよ。やっていたこともね。今もそうだし、過去もそうですよ。なぜかというと、繰り返しになるけど、本質を見ようとする能力、努力、いずれも足りなかったからですよね。 すべてが場当たり的。で、しかもちょっと歪んじゃっているわけですよね。」、「超筋悪ですね。まさに刑事弁護を趣味でしかやれない人。プロではない。」、「だからもの ずれも足りなかったからですよね。 すべてが場当たり的。で、しかもちょっと歪んじゃっているわけですよね。」、「超筋悪ですね。まさに刑事弁護を趣味でしかやれない人。プロではない。」、「だからもの すごい、こう抽象的なんですよね、んー、あなたの発想っていうのが、お子ちゃま的。」、「まあだからねえ、あの短絡的、お子ちゃま的なんですよあなたの発想っていうのは。僕ちゃん質問上手だから、それで刑事弁護で名を上げるんだと。僕ちゃんの尋問技術を持ってすれば、オープンに聞いていけば、真実が語られるんだと、ねえ。」などと述べた。 ⑥ 10月27日の取調べA検察官は、原告に対し、「ほんとむちゃくちゃだよね。情けない。どうやったらこんな弁護士ができあがるんだ。そういえば弁護教官を聞いていなかったな、刑弁教官。誰、刑弁教官。聞きにいこうかなあ、どういう教育をしてんだって。なんでこんなことになってんだっつって。そうだ調べりゃ分かるから、ちょっとやるか。 法廷立ってもらうか。そういうのも必要だよねえ。おかしいよね、こんな弁護士生- 18 -み出して、どういう教育してんの、司法研修所。まあいいや、ちょっと調べとくわ。」と述べた。 ⑦ 10月28日の取調べaA検察官は、原告に対し、勾留期間延長の裁判に対する準抗告が棄却されたこと(前記前提事実エ)に関して、「もう既にこんなに取調べを受けていますと、 で黙秘の決意は変わらないから、これ以上調べをやるのは、自白を強要するのは、黙秘権の侵害だとかわけの分からないことを主張して。あなたがなんで時間を気にしているのかなと思ったら、ああそういうことかと思って。また着眼点がとろいなと思ったけどもねえ。全然、裁判所は、むしろそれを、その主張を排斥するために今後もあなたの取調べをする必要があるというこ にしているのかなと思ったら、ああそういうことかと思って。また着眼点がとろいなと思ったけどもねえ。全然、裁判所は、むしろそれを、その主張を排斥するために今後もあなたの取調べをする必要があるということをね、はっきり書いてくれてい るわけで。だから、全然通用していないですよ、あなた方の主張っていうのは。おそらくあの黙秘権のところはF先生っていうよりあなただよね、あの稚拙な主張。 なんだこれって。本当に些末な点をね、あのそれじゃ無罪取れないですよ、刑事弁護。まあ実際取れていないと思うけど、あなたの活動ではね。下手くそなんだよ。 やり方がね。全然怖くないもん。鬱陶しいだけ。」、「かわいそうですよ、F先生とか も。F先生の評価も落ちちゃってんだから。なんだこれって。なにこの準抗告の申立書って。たぶんあなたでしょ、あの時間でこんなに取調べ受けてます、これがこれからも続きます、もうしゃべらないのでこれ以上の取調べを続けるのは黙秘権侵害ですみたいな。何を言ってるんだ、全然理屈になってねえじゃねえかって。」などと述べた。 bA検察官は、原告に対し、原告が行ってきた刑事弁護活動に関して、「鬱陶しいだけ。前も言ったけども。そりゃ、ほかの事件を直接に担当していた人からも私話聞いているから。鬱陶しいだけなんですよ、いらいらいらさせる、人をね。」、「鬱陶しいだけなんですよね。面倒くさい。もうそれしかないですよね。手強いなっていう感じにはならないんですよ。」、「依頼者だってかわいそうですよねえ、見通しを きちっと立てられないし伝えることもできない。ある意味弁護士としての能力が相- 19 -当程度劣っているあなたの弁護活動を、ねえ、なんだか知らないけど弁護士っていう肩書きがあるもんだから、なんだか知らないけどテレビにも出てるもんだから、あ ある意味弁護士としての能力が相- 19 -当程度劣っているあなたの弁護活動を、ねえ、なんだか知らないけど弁護士っていう肩書きがあるもんだから、なんだか知らないけどテレビにも出てるもんだから、あれなんとなく信用できるのかしらって関わっちゃった人たちが、おかしな弁護活動されて、権利義務についての重大な場面でひどい目に遭って。ある意味取り返しつかないことだってあり得るわけですからね。」などと述べた。 cA検察官は、原告に対し、「あなたのゼミの先生、早稲田のゼミの先生、慶応の先生っつってたか、ちょっと今名前ど忘れしちゃったけども。あなたのことをすごく褒めていたし、将来がすごく楽しみだみたいなことも書いてあったけども、これじゃないですか。そして法廷でわけの分からないこと喚いてるって。人を見る目がないんじゃないかって思われちゃいますよね。私はそう思っているけども既に。」 と述べた。 dA検察官は、原告に対し、公訴提起後のことに関して、「僕ちゃんは強いからなんとかしてやるっつって津波と闘ったって、勝ち目ないわけじゃないですか。僕ちゃん強くないし、弁護士として。だからもう資格諦めてください。もう整理つけてくださいよ。」、「あなたに弁護士をやる資格はないから」、「だからもう無理なんで すよ。傷を深めるだけなんすよ。あなたが弁護士資格に汲々とするっていうことは。」などと述べた上、「もうひたすら公判でも頭を下げて、いろんな人に迷惑かけましたと、弁護士として絶対やってはいけないことをやったし、弁護士全体の品位をね、貶めるようなことになってしまったと。そういうふうに泣きながら言うしかねえんだよ。」と述べた。 eA検察官は、原告に対し、「やったこともそうだし、素質的にも刑事弁護やる資格はないんすよ。刑事弁護だけじゃなくて弁護 まったと。そういうふうに泣きながら言うしかねえんだよ。」と述べた。 eA検察官は、原告に対し、「やったこともそうだし、素質的にも刑事弁護やる資格はないんすよ。刑事弁護だけじゃなくて弁護士自体、資格がないんですよあなたには。なかったんですよ。それを実感できたでしょ、こうなって。だから諦めてください、もう。無駄なんだから。あなたが無自覚なだけなんすよ。」と述べた。 ⑧ 11月1日の取調べ aA検察官は、原告に対し、「あなたの中学校の成績を見てたらあんまり数学と- 20 -か理科とか理系的なものが得意じゃなかったみたいですねえ。本はたくさん読んでいたみたいだけども。なんかちょっと論理性がさ、なんかずれてんだよなあ。」と述べた。 bA検察官は、原告に対し、「そういう見え透いた嘘をつくのやめましょうよ、恥ずかしいから。大人なんだからさ、子どもじゃないんだから。子どもみたいなん ですよね、あなた見ていると。社会性がやっぱりちょっと欠けてんだよね」、「もともと嘘つきやすい体質なんだから、あなたは。」、「はっきり取調べにおいてね、明確な嘘をつくのって、ちょっとやっぱり特殊な人が多いですよね。やっぱり詐欺師的な類型の人たちですよ。あなたもちょっとそこに片足突っ込んでると思うな。」、「珍しいよ、こんなにあの嘘が明確にばれる人っていうのも。あの笑っちゃって申し訳 ないけど、本当にそうっすよ。まあだからある意味なんか素直なのかもしれないね、天然、天然っていう言葉なのかもしれない、よく分かんないけど。」などと述べた。 エ検討取調べ中の原告の行動に関するものa 前記ウのA検察官の言動(以下、前記ウのA検察官の各言動を、その記載の 符号を用いて「①a」、「①b」などということがある。)のうち、①aは、原告が取 取調べ中の原告の行動に関するものa 前記ウのA検察官の言動(以下、前記ウのA検察官の各言動を、その記載の 符号を用いて「①a」、「①b」などということがある。)のうち、①aは、原告が取調べ中に水を飲むために居室に戻ることを認めなかったものであり、③bは、原告に対し、取調べの開始前にトイレに行っておくように求めたものである。 被疑者に対する取調べは、被疑者に対する一定の身体的制約を伴うものであるところ、被疑者が居室に戻ったりトイレに行ったりすることは、取調べの中断を伴う ものであることからすれば、取調べを行う検察官において、被疑者に対し、取調べの中断を必要以上に招かないよう、居室に戻ることを制限したり、事前にトイレに行っておくことを求めることが、直ちに不合理であるということはできない。そして、①aについて、その時点で取調べの開始から長時間が経過していたり、原告に水分摂取について特別の配慮を要する健康上の理由があるなど、特に原告の申出を 認めるべき事情があったとはうかがわれないこと、③bについて、A検察官は、原- 21 -告の申出を受けて取調べを中断し、原告がトイレに行くことを認めていることからすれば(なお、本件取調べを通じて、A検察官が原告によるトイレに行きたい旨の申出を拒んだことがあるとは認められない。)、上記のような①a及び③bにおけるA検察官の対応自体に違法があるということはできない。 b もっとも、被疑者であっても、生理的理由によりトイレに行くことは、やむ を得ない事柄であり、それ自体として非難されるべきものではないところ、A検察官は、③bのとおり、トイレから戻った原告に対し、「取調べ中断してすいませんでしたとか言うんじゃねえの、普通。子どもじゃないんだから。あなた被疑者なんだよ、犯罪の。(略)なん ではないところ、A検察官は、③bのとおり、トイレから戻った原告に対し、「取調べ中断してすいませんでしたとか言うんじゃねえの、普通。子どもじゃないんだから。あなた被疑者なんだよ、犯罪の。(略)なんでそんなことをね、言わさせるんですか。子どもじゃないんだから。弁護士なんでしょ。あまりにもかっこ悪いですよ。」などと発言しており、 このような発言は、原告が犯罪の被疑者であることを殊更に指摘して、取調べを行う検察官に対して必要以上に服従的な態度を取ることを求めるものといわざるを得ず、後記の各発言と併せてみれば、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものというべきである。 取調べ状況報告書への署名及び指印に関するもの 前記ウのA検察官の言動のうち、①c、②cは、いずれも、原告に対し、取調べ状況報告書への署名及び指印を求めるとともに、原告がこれに応じなかったことを非難する趣旨の発言である。 取調べ状況報告書は、取調べ時間や供述調書作成の有無等の取調べに係る外形的事実が記載されるものと解され、被疑者において、その記載内容の誤りの有無を確 認した上で署名及び指印をすることは、取調べに係る外形的事実を明らかにする意義がある一方で、そのこと自体が被疑者に何らかの不利益をもたらすとは考え難いことからすれば、A検察官において、原告に対してこれを求めたり、これに応じない原告の対応が合理性を欠く旨を指摘したりすることには、相応の理由があったものといえる。そして、①c及び②cの発言の中には、穏当さを欠く言辞が含まれて いることは否めないものの、飽くまでも取調べ状況報告書への署名及び指印との関- 22 -連で述べられたものにとどまることからすれば、①c及び②cの発言が社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原 いることは否めないものの、飽くまでも取調べ状況報告書への署名及び指印との関- 22 -連で述べられたものにとどまることからすれば、①c及び②cの発言が社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものであるとまでいうことはできない。 黙秘に関するもの前記ウのA検察官の言動のうち、①b、②a、③a、④aは、本件取調べにおい て原告が黙秘していることに関する発言である。 このうち、①bは、原告に本件犯人隠避教唆事件の嫌疑があると解する検察官としての立場において、原告に対し、黙秘を続ければ真相解明等に時間を要し、原告の家族の負担を増加させる結果にもなること等を指摘することにより、真実を供述するよう説得する趣旨の発言といえ、それが取調べにおける発言として社会通念上 相当と認められる範囲を超えるものということはできない。また、③aは、原告に本件犯人隠避教唆事件の嫌疑があると解する検察官としての立場において、原告に対し、真実を供述してDの遺族にも謝罪をすべきであるとの見解を述べる趣旨の発言といえ、それが取調べにおける発言として社会通念上相当と認められる範囲を超えるものということはできない。 他方、②a及び④aは、A検察官による体調を尋ねる質問や挨拶に対して返事をしない原告に対し、黙秘権を理解していないなどとして非難を加える発言である。 取調べに際して、自己の意思に反する供述をしないことは、被疑者に認められた権利であるというべきところ(刑訴法198条2項)、当該発言は、これと異なる前提に立って、原告の黙秘の対応に不当な非難を加えるものであって、黙秘権の保障の 趣旨に反するものといわざるを得ず、後記の各発言と併せてみれば、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものというべきで 不当な非難を加えるものであって、黙秘権の保障の 趣旨に反するものといわざるを得ず、後記の各発言と併せてみれば、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものというべきである。 弁護人らの弁護活動に関するもの前記ウのA検察官の言動のうち、④bは、原告の弁護人としてF弁護士及びG弁護士が就いていることについて、原告がこれらの弁護士に迷惑をかけている旨をい う発言であり、⑦aは、F弁護士がした準抗告の申立ての内容について、着眼点が- 23 -とろい、稚拙な主張である、鬱陶しい、理屈になっていないなどとするとともに、そのような申立てをすることによってF弁護士の評価も落ちている旨をいう発言である。 これらの発言は、原告の弁護人として活動すること自体が当該弁護士の迷惑になるとした上、その弁護活動の内容も揶揄するものであって、被疑者に弁護人依頼権 が保障されていること(憲法34条、刑訴法30条1項)に照らせば、穏当さを欠くものといわざるを得ない。しかしながら、本件取調べの期間中、原告は、平日は毎日、弁護人らと接見していたものと認められるところ(原告本人、弁論の全趣旨)、A検察官において、これを不当に制限したとは認められないし、弁護人らの活動についてあえて虚偽の事実を原告に告げるなどして、原告と弁護人らとの意思疎通を 阻害したものとも認められない。また、これらの発言は、A検察官が、原告に本件犯人隠避教唆事件の嫌疑があり、勾留延長にも理由があると解する検察官としての立場において、自身の見解を述べたにとどまるものと理解し得るものであり、原告がこれを聞くだけで原告と弁護人らとの信頼関係が直ちに損なわれるともいえない。 そうすると、④b及び⑦aの発言をもって、原告の弁護人依頼権を侵害したとまで は認め のと理解し得るものであり、原告がこれを聞くだけで原告と弁護人らとの信頼関係が直ちに損なわれるともいえない。 そうすると、④b及び⑦aの発言をもって、原告の弁護人依頼権を侵害したとまで は認められないし、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものであるということもできない。 原告の能力、資質等に関するものa 前記ウのA検察官の言動のうち、②b、⑤aないしc、⑦b、d、eは、いずれも、原告が弁護士としての能力ないし資質に乏しいことをいう趣旨の発言であ る。その内容は、原告がそれまでに弁護士として行ってきた弁護活動等に関して、「バランスの悪さは感じますよね。」、「着眼点が、修習生だね。」、「できるなって思わなかった」、「なんていうか視野が狭いな」と述べたり(②b)、「お子ちゃま発想だったんでしょうね、あなたの弁護士観っていうのはね。全然大間違いですよ。ガキだよねあなたって。なんかね、子どもなんだよね。子どもが大きくなっちゃった みたいなね。」、「ちょっとこう立ち止まって考えちゃうと、AかBか選択しないとい- 24 -けなくなると、なぜか必ず間違うみたいなね。」、「やっぱどこかおかしいですよ、能力がね、足りてないっすよ」、「本質を見ようとする能力、努力、いずれも足りなかったからですよね。すべてが場当たり的。で、しかもちょっと歪んじゃっているわけですよね。」、「超筋悪ですね。まさに刑事弁護を趣味でしかやれない人。プロではない。」、「あなたの発想っていうのが、お子ちゃま的。」、「短絡的、お子ちゃま的な んですよあなたの発想っていうのは。」と述べたり(⑤aないしc)、「鬱陶しいだけ。」、「依頼者だってかわいそうですよねえ、見通しをきちっと立てられないし伝えることもできない。ある意味弁護士としての能 んですよあなたの発想っていうのは。」と述べたり(⑤aないしc)、「鬱陶しいだけ。」、「依頼者だってかわいそうですよねえ、見通しをきちっと立てられないし伝えることもできない。ある意味弁護士としての能力が相当程度劣っているあなたの弁護活動を、ねえ、なんだか知らないけど弁護士っていう肩書きがあるもんだから、なんだか知らないけどテレビにも出てるもんだから、あれなんとなく信用できるの かしらって関わっちゃった人たちが、おかしな弁護活動されて、権利義務についての重大な場面でひどい目に遭って。」、「僕ちゃん強くないし、弁護士として。」、「素質的にも刑事弁護やる資格はないんすよ。刑事弁護だけじゃなくて弁護士自体、資格がないんですよあなたには。なかったんですよ。」と述べたり(⑦b、d、e)するものであって、原告が弁護士としての能力ないし資質に乏しいことを、殊更に侮 辱的な又は揶揄する表現を用いて、繰り返し指摘するものであった。 このような発言について、被告は、本件犯人隠避教唆事件は、原告の弁護士としての地位や能力を悪用して行われた弁護士倫理に反する悪質な行為であるとした上、その犯行動機の形成過程や犯行態様が原告の従前の刑事弁護に対する考え方と密接に関わっていることに鑑み、A検察官において、従前の原告の弁護活動の在り方等 についての問題点等を指摘することで、原告に対し、真摯な反省を促し、真実を供述するよう説得する趣旨でされたものである旨主張する。しかし、上記の各発言は、その前後の発言を併せてみても、本件犯人隠避教唆事件の犯行動機の形成過程や犯行態様と関連性を有するとは直ちに解し難い、原告の弁護士としての一般的な能力ないし資質に関するものであって、それが殊更に侮辱的な又は揶揄する表現を用い て繰り返しされていることからしても、本件取 態様と関連性を有するとは直ちに解し難い、原告の弁護士としての一般的な能力ないし資質に関するものであって、それが殊更に侮辱的な又は揶揄する表現を用い て繰り返しされていることからしても、本件取調べの対象である本件犯人隠避教唆- 25 -事件とは直接関係なく、又は、本件犯人隠避教唆事件に係る指摘として必要な範囲を超えてされたものといわざるを得ない。 b また、前記ウのA検察官の言動のうち、④a、⑧a、bは、いずれも、原告の一般的な資質に問題があることをいう趣旨の発言である。その内容は、原告の思考過程について、「単にね、苦しい状況っていう場面だけで物事考えてない。どうも あなたの思考過程っていうのはそういうところがあるように思えるんだけどね。本質を見れないから。」と述べたり(④a)、原告の中学校の成績を見たとして、「あんまり数学とか理科とか理系的なものが得意じゃなかったみたいですねえ。」、「なんかちょっと論理性がさ、なんかずれてんだよなあ。」と述べたり(⑧a)、原告が嘘を付いているとした上で、「子どもみたいなんですよね、あなた見ていると。社会性 がやっぱりちょっと欠けてんだよね」、「もともと嘘つきやすい体質なんだから、あなたは。」、「やっぱり詐欺師的な類型の人たちですよ。あなたもちょっとそこに片足突っ込んでると思うな。」と述べたり(⑧b)するものであって、原告の人間性、論理性、社会性等の一般的な資質に問題があることを、殊更に侮辱的な又は揶揄する表現を用いて、本件取調べの対象である本件犯人隠避教唆事件とは直接関係なく、 又は、本件犯人隠避教唆事件に係る指摘として必要な範囲を超えて、繰り返し指摘するものであった。 c さらに、前記ウのA検察官の言動のうち、⑥、⑦cは、いずれも、原告が学生又は司法修習生として指導を受けた 本件犯人隠避教唆事件に係る指摘として必要な範囲を超えて、繰り返し指摘するものであった。 c さらに、前記ウのA検察官の言動のうち、⑥、⑦cは、いずれも、原告が学生又は司法修習生として指導を受けた教官等の教育又は評価に問題があることをいう趣旨の発言である。その内容は、「誰、刑弁教官。聞きにいこうかなあ、どういう 教育をしてんだって。なんでこんなことになってんだっつって。」、「おかしいよね、こんな弁護士生み出して、どういう教育してんの、司法研修所。」と述べたり(⑥)、「人を見る目がないんじゃないかって思われちゃいますよね。」と述べたり(⑦c)するものであって、指導者の問題を指摘する形をとりながら、その実質は、原告の弁護士としての能力や一般的な資質に問題があることを、殊更に侮辱的な又は揶揄 する表現を用いて、本件取調べの対象である本件犯人隠避教唆事件とは直接関係な- 26 -く、又は、本件犯人隠避教唆事件に係る指摘として必要な範囲を超えて、指摘するものであった。 d 以上のとおり、②b、④a、⑤aないしc、⑥、⑦bないしe、⑧a、bの各発言は、原告の弁護士としての能力や一般的な資質に問題があることを、殊更に侮辱的な又は揶揄する表現を用いて、本件取調べの対象である本件犯人隠避教唆事 件とは直接関係なく、又は、本件犯人隠避教唆事件に係る指摘として必要な範囲を超えて、繰り返し指摘するものであって、原告の人格を不当に非難するものといわざるを得ない。そして、原告は、本件取調べを通じて黙秘を続け、供述をしない姿勢を示していたこと、それにもかかわらずこれらの発言が一方的かつ執拗ともいえる程度に繰り返されていたことからすれば、これらの発言は、これを受ける者が反 論をせずに看過することが困難な程度の人格的な非難を繰り返すことにより、 かわらずこれらの発言が一方的かつ執拗ともいえる程度に繰り返されていたことからすれば、これらの発言は、これを受ける者が反 論をせずに看過することが困難な程度の人格的な非難を繰り返すことにより、その者に黙秘を解いて何らかの供述をさせようとしたものと評価せざるを得ず、黙秘権の保障の趣旨にも反するというべきである。そうすると、これらの発言は、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものというべきである。 なお、被告は、これらの発言は、原告に対して、被害者やその遺族等の感情を想像させて反省を促し、真実を供述するように説得する目的のものである旨主張するが、その前後の発言内容を考慮しても、各発言の内容からそのような目的を読み取ることは困難であるし、仮にA検察官がそのような目的でこれらの発言をしたものであるとしても、原告の人格を不当に非難することを正当化する理由とはならない というべきである。 オ小括以上によれば、本件取調べにおけるA検察官の言動は、前記イのとおりの事案の内容・性質、嫌疑の程度及び取調べの必要性を考慮しても、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものといわざるを得ず、国家賠償法 1条1項の適用上違法というべきである。なお、本件取調べにおける前記ウ以外の- 27 -やり取りの内容を検討しても、以上の判断が左右されるものではない。 2 争点2(原告の損害の発生の有無及び金額)について本件取調べにおいてA検察官がした原告の人格権侵害に当たる発言の内容、頻度及びそのような取調べが継続した期間を考慮すれば、これにより原告は相当の精神的苦痛を被ったといえ、その慰謝料の額は、100万円と認めるのが相当である。 また、違法な本件取調べと相当因果関係を有する弁護 ような取調べが継続した期間を考慮すれば、これにより原告は相当の精神的苦痛を被ったといえ、その慰謝料の額は、100万円と認めるのが相当である。 また、違法な本件取調べと相当因果関係を有する弁護士費用は、上記金額の1割である10万円と認めるのが相当である。 3 結論以上によれば、被告は、原告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金110万円及びこれに対する本件取調べ後の平成30年11月6日から支払済みま で改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。 よって、原告の請求は、主文第1項記載の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。なお、仮執行宣言については、必要があるとは認められないから、これを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第37部 裁判長裁判官貝阿彌亮 裁判官中井彩子 裁判官山嵜優介

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