令和4(ワ)31814 懲罰取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年5月14日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文64,837 文字)

- 1 -令和7年5月14日判決言渡令和4年(ワ)第31814号懲罰取消等請求事件主文 1 被告は、原告に対し、18万円及びうち3万円に対する令和4年3月14日から、うち15万円に対する同年4月3日から、各支払済みまで年3% の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを25分し、その24を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、460万円及びこれに対する及びうち15万円に対する令和2年7月16日から、うち5万円に対する同月31日から、うち10万円に対する同年8月25日から、うち5万円に対する同年9月8日から、うち40万円に対する令和3年3月12日から、うち10万円に対する同年10月 5日から、うち90万円に対する同年11月25日から、うち10万円に対する同月29日から、うち80万円に対する令和4年2月15日から、うち100万円に対する同年3月14日から、うち50万円に対する同月25日から、うち30万円に対する同年4月1日から、うち5万円に対する同月18日から、うち10万円に対する同年5月16日から、各支払済みまで年3%の割合によ る金員を支払え。 第2 事案の概要等本件は、刑事施設であるαセンター(以下「本件センター」という。)に受刑者として収容されていた原告が、金属アレルギーを理由にひげをそることを拒否したところ、本件センターの職員が有形力を行使して原告のひげをそり(以 下「本件措置」という。)、その後、原告がひげをそることを拒否したことを - 2 -理由に閉居10日間の懲罰(以下「本件懲罰」という。)を受け、さ が有形力を行使して原告のひげをそり(以 下「本件措置」という。)、その後、原告がひげをそることを拒否したことを - 2 -理由に閉居10日間の懲罰(以下「本件懲罰」という。)を受け、さらに、本件懲罰を不服とする原告の審査の申請を却下する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)がされたことにつき、本件措置、本件懲罰及び本件裁決が国家賠償法(以下「国賠法」という。)上違法であると主張するとともに、本件センターの職員から多数の違法な処遇を受けたなどと主張して、国賠法1条1項に基 づき、慰謝料合計460万円及びこれに対する各違法行為の日から各支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 関係法令等の定め関係法令等の定めは、別紙「関係法令等の定め」記載のとおりである(なお、別紙中で定義した略称は、本文中においてもこれを用いる。)。 2 前提事実(当事者間に争いがないか後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実等)⑴ 当事者原告は、令和元年▲月▲日、懲役7年の有罪判決を受け、同年▲月▲日に同判決が確定した男性の懲役受刑者であり、令和2年▲月▲日から令和4年 ▲月▲日まで本件センターに収容されていた。 原告は、同日、β刑務所に移送された上、令和6年▲月▲日、γ刑務所に移送され、以後、現在まで同刑務所に収容されている(当裁判所に顕著な事実)。 ⑵ 原告の入院の経過等 ア原告は、令和2年7月13日、急性骨髄性白血病の診断を受け、その後、本件センターから重症指定を受け、同月16日から同年8月25日まで、A病院に入院した。 イ原告は、令和2年8月25日、A病院からB病院へ転院し、同日から同年9月19日まで、同年10月7日から同年11月16日まで、及び令和 、同月16日から同年8月25日まで、A病院に入院した。 イ原告は、令和2年8月25日、A病院からB病院へ転院し、同日から同年9月19日まで、同年10月7日から同年11月16日まで、及び令和 3年2月9日から同年3月12日まで、それぞれ同病院に入院した。 - 3 -ウ原告は、令和3年3月12日にB病院を退院した後、休養としての処遇を受け、同年5月10日まで、本件センターの病棟に収容された。 エ原告は、令和3年5月6日、休養の解除がされ、同月10日、本件センターのC工場に配役された。 ⑶ 本件措置及び本件懲罰に至る経緯 ア本件センター第3区を担当する統括矯正処遇官(以下「第3区長」という。)は、令和4年3月14日、原告がひげをそらずに伸ばしていたことから、原告を同区理髪室まで連行させ、原告に対し、ひげをそるよう指示した。原告は、これを正当な理由をもって拒否する旨を述べ、その指示に従わなかった(以下「本件拒否行為」という。)。 第3区長は、原告の前記動静を踏まえ、刑事収容施設法77条1項に基づき、制止等の措置を執ることとして、原告の両腕を本件センターの職員2名により制止させた状態で、別の職員にトリマー及び電池式かみそりを使用させ、原告のひげをそらせた(本件措置)。(乙22)イ本件センターの長(以下「本件センター長」という。)は、令和4年3 月24日、原告が本件拒否行為に及んだ事実をもって、職員に反抗したと認定した上、本件拒否行為が、本件センター長が定めた被収容者遵守事項等(以下「本件遵守事項等」という。乙5)第4の15「職員に対し、抗弁、無視その他不当な方法で反抗してはならない。」に違反する反則行為であると判断し、刑事収容施設法150条1項に基づき、原告に対し、閉 居10日の懲罰 という。乙5)第4の15「職員に対し、抗弁、無視その他不当な方法で反抗してはならない。」に違反する反則行為であると判断し、刑事収容施設法150条1項に基づき、原告に対し、閉 居10日の懲罰を科すこと(本件懲罰)を決定し、同月25日、その執行を開始した。 本件懲罰は、同年4月3日、その執行が終了した。(乙23、24)⑷ 本件裁決についてア原告は、本件懲罰の執行中であった令和4年3月26日、刑事収容施設 法157条1項に基づき、本件懲罰の取消しを求めて、δ矯正管区長に対 - 4 -し、審査の申請(以下「本件審査申請」という。)をした(乙25)。 イ δ矯正管区長は、令和4年5月11日、本件審査申請について、本件懲罰の執行が既に終了しており、不服を申し立てる法律上の利益が存在しないから不適法であるとして、本件審査申請を却下する旨の裁決(本件裁決)をした(乙29)。 ⑸ 主食区分及び作業報奨金に関する訓令及び通達の定め等ア主食区分について被収容者に対する食料の給与について定めた訓令である矯正施設被収容者食料給与規程(平成7年法務省矯医訓第659法務大臣訓令。以下「食料給与規程」という。乙73)は、適正な食料を給与するために必要な基 本的事項を定めており、3条において、刑務所に収容されている20歳以上の男性の1日当たりの主食の給与熱量につき、主食区分ごとにA食(1600キロカロリー)、B食(1300キロカロリー)、C食(1200キロカロリー)と規定している。 また、食料給与規程の運用について定めた通達である「矯正施設被収容 者食料給与規程の運用について」(平成7年3月17日矯医660矯正局長依命通達。乙39)は、その記2⑵において、「A食とは就業者で立位の作業が一週間につきおおむね15 である「矯正施設被収容 者食料給与規程の運用について」(平成7年3月17日矯医660矯正局長依命通達。乙39)は、その記2⑵において、「A食とは就業者で立位の作業が一週間につきおおむね15時間以上のもの又はこれに相当する内容の作業に従事するものに給与する主食」、「B食とは居室外の就業者でA食を給与するもの以外のものに給与する主食」、「C食とは就業の有 無にかかわらず、居室内で生活するものに給与する主食」と規定している。 イ作業報奨金について作業報奨金計算額の加算の基準その他の作業報奨金の支給等を適正に行うための必要な事項について定めた訓令である「作業報奨金に関する訓令」(乙38)は、刑事施設の長は、就業者ごとに作業等工(以下「等工」と いう。)を指定する旨(3条1項)、及び等工は1等工から10等工まで - 5 -に区分する旨規定している(同条3項)。そして、刑事施設の長は、就業者について、作業の種類及び内容、作業を行っている期間、当該作業に要する知識及び技能の程度、作業成績並びに就業態度を考慮し、適当と認めるときは、直近上位の等工に昇等させる旨規定している(5条)。 作業報奨金通達(乙40)は、昇等の限度について定めているところ、 昇等の限度は、A作業からC作業の区分(以下「昇等区分」という。)によって異なり、A作業においては1等工まで、B作業においては3等工まで、C作業においては5等工までとされている。 本件センターにおける昇等区分の具体的内容については、「作業報奨金の計算等について」(令和3年4月1日付け本件センター長達示。乙75) の別表1「作業区分表」(乙75・11から14枚目)に規定されており、「金属製品製造、その他製造等、化学製品製造作業」(以下「金属製品製造等作業」という。) 付け本件センター長達示。乙75) の別表1「作業区分表」(乙75・11から14枚目)に規定されており、「金属製品製造、その他製造等、化学製品製造作業」(以下「金属製品製造等作業」という。)はB作業、運搬係はA作業に当たる。なお、運搬係の作業内容は、作業製品を手押し台車やリフターを使用し指定の場所に運搬する作業等であり、立位作業である(弁論の全趣旨)。 3 争点以下の措置等について、国賠法上の違法の有無並びに損害の有無及び額⑴ 本件措置(争点1)⑵ 本件懲罰(争点2)⑶ 本件裁決(争点3) ⑷ 本件センターにおけるその他の処遇ア A病院入院中における措置等(争点4)イ B病院入院中における処遇(争点5)ウ B病院退院後の処遇(争点6)エ主食区分の指定等(争点7) オ原告に対するその他の医療上の措置等(争点8) - 6 -カ原告をカメラが設置された居室に収容した措置等(争点9)キ本件措置以降のひげそりに関する措置(争点10)ク優遇区分に関する措置(争点11)ケ弁護士からの信書に関する措置(争点12)コ本件センターの医師が抗原回避措置を講じる必要性を示さなかったこと (上記⑴から⑶、キ及びクに対する予備的請求)(争点13) 4 争点に関する当事者の主張⑴ 本件措置について(争点1)(原告の主張)ア原告には金属アレルギーの症状があったところ、本件センターの内科医 は、令和3年9月13日、原告を診察した際、原告が金属アレルギーであるとの所見を述べて、ロコイド軟膏を処方した。さらに、本件センターの皮膚科医は、同年11月25日の診察の際に、この施設ではパッチテストができないため断言は避けるが金属アレルギーと考えられ ルギーであるとの所見を述べて、ロコイド軟膏を処方した。さらに、本件センターの皮膚科医は、同年11月25日の診察の際に、この施設ではパッチテストができないため断言は避けるが金属アレルギーと考えられる、根本的に発症を防ぐには、アレルゲンとなる金属との接触を避けるほかない、ひげの 処理については原告が身体拘束前に行っていた方法(樹脂製のアタッチメントを装着したトリマーを使用して短く刈る方法)が医学的見地から望ましいとの所見を述べていた。 また、原告は、令和4年3月14日当時、昼夜間居室内で処遇を受けており、その作業内容は、居室内で千羽鶴を折るというものであって、ひげ の長さもおおむね10mm程度であったのであるから、衛生面、安全面という観点からもひげそりの必要性はなかった。 したがって、第3区長によるひげそりの指示は違法であり、金属アレルギーを理由とする本件拒否行為は、正当な理由に基づいた行為であった。 それにもかかわらず、第3区長は、本件措置を指示し、有形力を行使し てひげそりを行わせた。これにより、原告は、右腕に強い痛みを感じるほ - 7 -ど締め上げられた。 以上によれば、本件措置は、刑事収容施設法77条1項の職務の執行には該当せず、また、被収容者に対して制止等の措置を執る上で合理的に必要な限度も超えていたものであり、国賠法上、違法である。 イ本件措置により、原告は、激しい痛みを感じ、人格的利益を侵害された。 これに対する慰謝料は、100万円を下らない。 (被告の主張)ア受刑者は、刑事収容施設法58条に基づく身辺の清潔保持義務があり、刑事施設の長は、同法60条に基づき、受刑者に対し、ひげそりを義務付けることができると解され、ひげそりを行わせない「相当」の理由(規則 26条4項)が存し 条に基づく身辺の清潔保持義務があり、刑事施設の長は、同法60条に基づき、受刑者に対し、ひげそりを義務付けることができると解され、ひげそりを行わせない「相当」の理由(規則 26条4項)が存しない場合、刑事施設の長は、原告にひげそりを行わせる必要がある。 イ原告が主張する金属アレルギーについては、本件措置当時、原告の主訴はあったものの、当面は外用薬の処方で対応しつつ、経過観察とするなどの対応がとられていたにとどまり、原告が金属アレルギーであると診断さ れた事実はないのであって、本件センターの皮膚科医師は、原告に対し早急にパッチテストを実施するなどして金属アレルギーの有無を判別する必要性はなく、仮に何らかの症状が出た場合には、再度受診するなどの経過観察で足りると判断していた。加えて、本件センターの職員らが、ひげそり後の原告の顔面に発赤、腫れ及び出血が認められないことを確認してい る。 したがって、本件措置当時において、ひげそりを行わせない「相当」の理由はなかった。 そこで、第3区長は、原告にひげそりを行わせる必要があるため、原告に対し、ひげをそるよう繰り返し指示した。 ところが、原告は、上記指示を拒否し、刑事施設の職員の職務の執行を - 8 -妨げた。そして、第3区長は、そのままの状態で原告にひげそりを強制し、原告が抵抗して身体を動かすなどした場合、トリマーの刃により原告の身体等が傷付く危険性が大きいと考え、その危険性を回避するための必要最小限の措置として、刑事収容施設法77条1項に基づき、制止等の措置を執ることとし、原告の両腕を制止させたものである。 このような経緯に加え、本件センターの職員らが原告のひげをそるのに必要な範囲を超えて有形力を行使したと認めるに足りる事情は存しないことからす 執ることとし、原告の両腕を制止させたものである。 このような経緯に加え、本件センターの職員らが原告のひげをそるのに必要な範囲を超えて有形力を行使したと認めるに足りる事情は存しないことからすれば、本件措置は、当時の具体的状況に鑑み、原告にひげそりを行わせるために相当と認められる範囲の有形力の行使であった。 したがって、本件措置は、刑事収容施設法77条1項が定める「必要な 措置」として行われたものであり、国賠法上、違法とはいえない。 ⑵ 本件懲罰について(争点2)(原告の主張)本件拒否行為は、正当な理由に基づいた行為であり、本件遵守事項等に反するものではない。したがって、本件懲罰は、刑事収容施設法150条の要 件を欠く違法な処分であり、国賠法上、違法である。 本件懲罰によって原告の人格的利益及び法的地位が侵害されたところ、これに対する慰謝料は、50万円を下らない。 (被告の主張)上記⑴(被告の主張)のとおり、原告は、ひげそりを行わないことにつき 「相当」の理由が存しないにもかかわらず、ひげをそらずに伸ばし、不衛生になっていたところ、第3区長からひげそりの指示を繰り返し受けたにもかかわらず、原告は、これを拒否し、同指示に従わなかったのであるから、本件拒否行為は、職員に対し抗弁して反抗したものと評価でき、原告が本件遵守事項等の第4の15「職員に対し、抗弁、無視その他不当な方法で反抗し てはならない。」に違反する行為に及んだことは明らかである。 - 9 -したがって、本件拒否行為は遵守事項違反に当たり、刑事収容施設法150条1項の要件を満たしているから、その裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものとはいえない。 よって、本件懲罰は、国賠法上、違法とはいえない。 ⑶ 本件裁決について(争点3) 、刑事収容施設法150条1項の要件を満たしているから、その裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものとはいえない。 よって、本件懲罰は、国賠法上、違法とはいえない。 ⑶ 本件裁決について(争点3) (原告の主張)本件裁決時点(令和4年5月11日)においても、不服申立ての利益は存在しているから、不服申立ての利益がないとした本件裁決は違法であり、国賠法上の違法がある。 原告は、本件裁決によって精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝 料は、10万円を下らない。 (被告の主張)本件懲罰の執行は令和4年4月3日をもって終了しており、同日以降にその不服を申し立てる利益を欠くことは明らかであるから、本件審査申請を不適法とした本件裁決には、何ら違法はない。 ⑷ 本件センターにおけるその他の処遇についてア A病院入院中における措置等について(争点4)(原告の主張)本件センターは、令和2年7月16日、急性骨髄性白血病に罹患した原告に対して講じる必要がある措置及び遵守事項等について、原告の主治医 から説明を受けたにもかかわらず、次のとおり、それらの措置を講じず、また、遵守事項に反する不適切な処遇を行った。これらの処遇は、国賠法上、違法である。 (ア) 本件センターは、原告に対し、歯ブラシの乾燥殺菌用として必要なコップを貸与しなかった(以下「処遇ア」という。)。 原告は、処遇アにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝 - 10 -料は、5万円が相当である。 (イ) 本件センターは、原告に対し、転倒防止のために必要な踵付きの履物を貸与しなかった(以下「処遇イ」という。)。 原告は、処遇イにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料は、5万円が相当である。 (ウ) し、転倒防止のために必要な踵付きの履物を貸与しなかった(以下「処遇イ」という。)。 原告は、処遇イにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料は、5万円が相当である。 (ウ) 本件センターは、原告に対し、頭髪の脱落による食事への混入防止等のために必要な調髪及びタオル等を頭に巻くことを許可する措置をしなかった(以下「処遇ウ」という。)。 原告は、処遇ウにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料は、5万円が相当である。 (エ) 本件センターの職員は、原告が在室していたクリーンルーム内において、靴下を脱ぎ、自身の素足を素手で触った後、洗浄・消毒することなく、素手のまま室内の設備、原告の身体、手錠、捕縄、衣類、タオル等に触れた(以下「処遇エ」という。)。 原告は、処遇エにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝 料は、5万円が相当である。 (被告の主張)(ア) 処遇アからウについて本件センターは、令和2年7月16日にA病院医師から、急性骨髄性白血病に罹患した原告に対して、医療上の措置として、歯ブラシの乾燥 殺菌用のコップを貸与する必要がある旨、原告に転倒防止用の履物を貸与すべき必要がある旨及び原告の頭皮を保護するために調髪及びタオル等を頭に巻く必要がある旨の個別具体的な説明や指示を受けていないから、原告の主張は理由がない。 (イ) 処遇エについて 本件センターの職員が原告の病室内で自身の足を素手で数回指圧した - 11 -ことは認めるが、靴下を脱いだ事実はない。なお、当時は新型コロナウイルス感染症の流行期でもあり、本件センターの職員は、A病院のルールに従い、入室前の手指消毒を徹底していた。 また、原告が入院していた病室は一般病棟であり、クリーンルームではな 当時は新型コロナウイルス感染症の流行期でもあり、本件センターの職員は、A病院のルールに従い、入室前の手指消毒を徹底していた。 また、原告が入院していた病室は一般病棟であり、クリーンルームではない。 原告の主張は、原告に対する医療との関係でいかなる法的義務に違反したのかも明らかでなく、理由がない。 イ B病院入院中における処遇について(争点5)(原告の主張)本件センターは、原告がB病院に入院中、原告に対し、次のとおり、不 適切な処遇を行った。これらの処遇は、国賠法上、違法である。 (ア) 本件センターは、原告がB病院に入院中である令和2年9月8日、原告に対し、自弁書籍の閲覧を不許可とし、令和3年3月12日までの入院期間中、自弁書籍2点の閲覧を制限した(以下「処遇オ」という。)。 自弁書籍の閲覧の権利は、憲法により保障された重要な権利であり、 刑事収容施設法69条及び70条は、被収容者による書籍等の閲覧の制限について厳格に規定している。 しかし、本件センターは、合理的な理由なく、処遇オを行い、原告の閲覧の権利を侵害したものであり、違法である。 被告は、病室に私物を保管させるための設備がないなどと主張するが、 病室には荷物などを保管するための枕頭台、ロッカー等があるし、B病院においてもそれらに私物を保管することは許可されていたのであるから、被告の主張には理由がない。 原告は、処遇オにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料は、5万円が相当である。 (イ) 本件センターは、令和2年8月25日、原告の実弟が原告に宛てて発 - 12 -信した信書(以下「本件信書」という。)を同年9月15日まで差し止めた(以下「処遇カ」という。)。 本件信書は、別件の民事訴訟において、裁判所から期限付 原告の実弟が原告に宛てて発 - 12 -信した信書(以下「本件信書」という。)を同年9月15日まで差し止めた(以下「処遇カ」という。)。 本件信書は、別件の民事訴訟において、裁判所から期限付きで回答を求められた事項に関するやり取りであったところ、本件信書の交付が差し止められたことにより、原告は、裁判所に対し、期日延長申立書を作 成し、郵便で発送せざるを得なくなり、経済的損害が生じた。 原告は、処遇カにより精神的苦痛及び経済的損害を被ったところ、その損害額は、5万円である。 (被告の主張)(ア) 処遇オについて 原告は、B病院に入院したため、刑事収容施設内の保管私物を自ら管理使用(閲覧)することができない状況となったのであるから、自弁書籍を閲覧できないこととなったとしても、それは当然の事理にすぎず、また、刑事収容施設法69条、70条が、刑事施設の長又は職員に対し、原告に対して自弁書籍を閲覧することができるようにすべき何らかの措 置を執ることまでをも法的義務として課していると解すべき根拠はない。 そして、本件センターは、保管私物の管理の観点から、外部医療機関に入院中の被収容者については、官給品を使用させる取扱いとして、自弁書籍等を含めた自弁物品の使用は認めていないところ、原告が当時休養患者であり安静にして療養に専念すべき立場にあること、原告の病室 は狭小であること、病室内には本件センター長が指定する保管設備が備えられておらず、常に紛失等のおそれがあること、本件センターの原告の居室内に保管されている書籍等を職員が持ち出すなどすることで汚損、破損などの原告からのクレームにも繋がりかねないこと、自弁書籍2点は余暇時間に閲読するための書籍であり、緊急性も認められないこと等 を総合的に勘案し、B病院入 員が持ち出すなどすることで汚損、破損などの原告からのクレームにも繋がりかねないこと、自弁書籍2点は余暇時間に閲読するための書籍であり、緊急性も認められないこと等 を総合的に勘案し、B病院入院中の閲覧を認めなかったのであって、か - 13 -かる措置に何ら不合理な点は見いだされない。 刑事収容施設法62条3項に基づき被収容者を外部医療機関に入院させる場合、職員が同行し、被収容者を戒護下に置くのであるから、刑事施設への収容関係が継続しており、保管私物の保管方法についても、刑事施設の長は法務省令で定めるところにより、「刑事施設の管理運営上 必要な制限をすることができる。」のであって、病室内にロッカーなどの保管設備があるからといって、当然に保管私物の保管場所があるというものではないから、原告の主張は前提を誤っている。 以上のとおり、処遇オは違法ではなく、原告の主張は理由がない。 (イ) 処遇カについて 本件センターでは、原告宛ての本件信書について、令和2年8月24日、本件センター担当係において処理した後、同月25日に交付する予定としていたが、担当者が交付を失念した。その後、同年9月15日、交付の失念が発覚し、直ちに原告に交付されるまでの間、交付が遅れたことは事実である。 もっとも、その遅延の原因は、単に担当者が交付を失念したものであり、悪質性は全くないこと、交付が遅れた日数も約20日にとどまり、それによって原告に具体的損害が生じたことはうかがわれないこと、本件センターでは、本件信書について交付の失念が発覚した際、直ちに原告に交付した上、本件センターの看守長が原告の入院先に赴き直接謝罪 をしていることなどを踏まえると、本件信書の交付が遅延したことによって、原告の人格的利益が侵害されたとまでは評価する 直ちに原告に交付した上、本件センターの看守長が原告の入院先に赴き直接謝罪 をしていることなどを踏まえると、本件信書の交付が遅延したことによって、原告の人格的利益が侵害されたとまでは評価するには足りず、原告に金銭賠償を必要とする程度に明確な精神的苦痛を生じさせたことは認められない。 したがって、原告の主張は、理由がない。 ウ B病院退院後の処遇について(争点6) - 14 -(原告の主張)本件センターは、令和3年3月12日にB病院の医師から、医療及び医療上の処置として退院後の原告に対して講じる必要がある措置の説明を受けたにもかかわらず、次のとおり、不適切な処遇を行った。これらの処遇は、国賠法上、違法である。 すなわち、本件センターは、①B病院の医師から原告には刻み食が必要である旨の説明を受けたにもかかわらず、原告に対し、刻み食での対応をしなかった、②B病院の医師から原告には横臥の必要がない旨の説明を受けていたにもかかわらず、令和3年3月12日から同年5月6日までの間、原告に対して横臥を義務付けた、③同年3月30日の健康診断において、 血液検査の結果をB病院に提供しない旨述べていたにもかかわらず、原告が同意していない白血球の血液像の検査に要する分の血液まで過剰に採血した上、採血した原告の血液検体を目的範囲外である白血球の血液像の検査に供し、同検査結果を無断でB病院に開示した、④同月16日から同年4月11日の間、原告に対し、服薬の必要がなくなった処方薬の服用を 漫然と指示し続けた(以下、上記①~④の処遇を併せて「処遇キ」という。)。 原告は、処遇キにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料は、40万円が相当である。 (被告の主張)(ア) 刻み食の提供について 本件セン 処遇を併せて「処遇キ」という。)。 原告は、処遇キにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料は、40万円が相当である。 (被告の主張)(ア) 刻み食の提供について 本件センターは、B病院の医師から、原告に対して刻み食を提供する必要がある旨の説明を受けていないから、原告の主張は、理由がない。 (イ) 横臥の指示について本件センターは、B病院の医師から、原告について横臥の必要がない旨の説明を受けていない。 本件センター長は、令和2年7月14日、原告が急性骨髄性白血病と - 15 -診断されたことを受け、原告を重症指定とし、休養患者として処遇することとし、原告がB病院を退院した令和3年3月12日から本件センター医師により休養解除が相当と判断された同年5月6日までの間、休養患者として処遇していたものであるところ、休養患者に対する処遇は、「布団(ベッドを含む。以下同じ。)に横がさせる。」(乙72・2枚 目)とされている上、原告が「医師の診断により、横がさせる必要がないと認められる者」(乙72・2枚目)に該当しないことから、本件センター長は、原告に対して横臥の指示をしたものである。 したがって、本件センター長がした上記指示に何ら違法はない。 (ウ) 令和3年3月30日に原告に対し実施した採血について 原告は、急性骨髄性白血病に罹患し、B病院に入院して治療を受けていたところ、同病院退院時、本件センターは、同病院医師から原告の血球がまだ少ないため週1回程度血算チェックを行い、その結果を回送するよう依頼されていた。 また、原告は、当時、急性骨髄性白血病の寛解直後であり、かつ、そ れまでも外部医療機関に入退院を繰り返しており、原告の生命に危険が及ぶおそれがあったから、刑事収容施設法62条1項 れていた。 また、原告は、当時、急性骨髄性白血病の寛解直後であり、かつ、そ れまでも外部医療機関に入退院を繰り返しており、原告の生命に危険が及ぶおそれがあったから、刑事収容施設法62条1項ただし書の趣旨からして、原告の意思に反してでも診療等を行うべき状況であった。 したがって、本件センターの裁量により検査結果をB病院に提供したことが違法となるものではない。 さらに、診療録の記載からすれば、原告が同日の採血の内容を理解した上、同意していたことは明らかである。 よって、採血の実施及びその検査結果をB病院に提供したことにつき、違法な点はない。 (エ) 処方薬の服用の指示について 本件センターが原告に対し投薬の必要がなくなった処方薬の服用を漫 - 16 -然と指示し続けた事実はない。本件センターは、B病院から伝えられた処方に基づき、令和3年3月12日以降、原告にレボフロキサシンを含めた処方薬を服用するよう勧めたものであり、しかも、本件センターは、同年4月11日までの間、本件センター医師等から原告に対するレボフロキサシンの服用を中止する旨の指示等を受けていないのであるから、 原告の主張は、理由がない。 エ主食区分の指定等について(争点7)(原告の主張)(ア) 主食区分の指定について原告は、令和3年10月5日から同年11月17日までの間、運搬係 として運搬作業を終日行いながら他の作業にも従事していたことから、1週間当たりの立位作業時間が事実上15時間を超えており、主食区分がA食とされるべきであった。しかるに、本件センターは、同年10月5日から同年11月12日の朝食までの間、原告の主食区分をB食として、原告に適切な熱量の食事を支給せず、刑事収容施設法40条1項2 号の「食事及び湯茶」 。しかるに、本件センターは、同年10月5日から同年11月12日の朝食までの間、原告の主食区分をB食として、原告に適切な熱量の食事を支給せず、刑事収容施設法40条1項2 号の「食事及び湯茶」の支給を受ける権利を侵害した。 (イ) 昇等区分の指定について本件センターは、令和3年10月5日から同年11月17日までの間、原告が昇等区分のA作業に当たる指導補助(運搬係)及び衛生係の作業に従事していたにもかかわらず、B作業に指定し、刑事収容施設法98 条2項及び3項の「報奨金加算額」を適法に受ける権利を侵害した(以下、上記(ア)及び(イ)に係る処遇を併せて「処遇ク」という。)。 (ウ) 原告は、処遇クにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料は、10万円が相当である。 (被告の主張) (ア) 主食区分について - 17 -a 原告は、令和3年10月5日から同年11月17日までの期間、原則座業である金属製品製造等作業に指定されていた。 また、原告は、同年10月5日から同年11月11日までの間、自身に割り当てられていた金属製品製造等作業に従事しつつ、原告自らの希望により、運搬係の見習として、時折、作業が終了した材料を回 収し、機器等も使用せずに指定の場所へ運んでいたにすぎず、運搬係として指定された者が行う、手押し台車やリフター(重量物の運搬や棚への積み下ろしなどで使用する機器)を使用した材料の運搬などはしていなかった。 原告の上記作業内容からすれば、同年10月5日から同年11月1 1日までの間、原告が「立位での作業が一週間につきおおむね15時間以上のもの又はこれに相当する内容の作業に従事するもの」に該当するとは認められないから、上記期間中の原告の主食区分がB食であることは明らかである。 b 「立位での作業が一週間につきおおむね15時間以上のもの又はこれに相当する内容の作業に従事するもの」に該当するとは認められないから、上記期間中の原告の主食区分がB食であることは明らかである。 b その後、本件センターは、令和3年11月9日に開催した処遇審査 会において、同月11日付けで原告の作業職種に運搬係を追加指定することとした。また、本件センターは、運搬係の作業が立位での作業であり、上記追加指定により、原告が「立位での作業が一週間につきおおむね15時間以上のもの又はこれに相当する内容の作業に従事するもの」に該当することになるから、翌12日の昼食以降、原告の主 食区分をB食からA食へと変更した。 c したがって、同年10月5日から同年11月17日までの間の原告の主食区分に関し、国賠法上の違法はない。 (イ) 昇等区分の指定についてa 原告は、令和3年5月10日に金属製品製造等作業に指定され、同 日から同年11月11日までの間、同作業に従事していた。同作業は、 - 18 -作業区分表上、B作業に当たるから、原告の令和3年10月5日から同年11月11日までの昇等区分は、B作業となる。原告は、同期間中、衛生係に指定された旨主張するが、そのような事実はない。 b 原告は、令和3年11月11日付けで、作業職種に運搬係が追加指定され、翌12日から同月17日までの間、同作業に従事していた。 運搬係は、作業区分表上、A作業に当たる。なお、原告は、上記期間中においても、衛生係に指定されていなかった。 これにより、原告は、同月12日から同月17日まで間、金属製品製造等作業(B作業)及び運搬係(A作業)の2職種を指定された状態となったが、運搬係が主たる作業であったことから、原告の昇等区 分は、A作業となった。 同月12日から同月17日まで間、金属製品製造等作業(B作業)及び運搬係(A作業)の2職種を指定された状態となったが、運搬係が主たる作業であったことから、原告の昇等区 分は、A作業となった。 c したがって、同年10月5日から同年11月17日までの間の原告の昇等区分の指定に関し、国賠法上の違法はない。 オ原告に対するその他の医療上の措置等について(争点8)(原告の主張) 本件センターは、原告に対し、①令和2年12月17日から同月22日までの間は、しもやけ悪化による感染症予防のため、温あん法(湯たんぽ)を実施した上、靴下を二重に着用することも認めていたが、令和3年11月29日から令和4年1月25日までの間は、上記措置を講じず、かつ、工場出業時及び運動時に手袋の着用を認めず、疾病の予防措置を怠った。 これにより、原告のしもやけは悪化した。 また、本件センターは、②令和4年1月25日、原告が発熱したことから新型コロナウイルス感染症に感染した疑いがあるとして、本件センター病棟3階の隔離された居室に原告を収容したところ、同日、ラピッドテスト(抗原検査)により陰性であることが確認されたにもかかわらず、同月 31日まで原告を上記居室に隔離し続けた。しかし、本件センターは、刑 - 19 -事収容施設法64条に基づき、同感染症を感染させるおそれがなくなった時点、少なくとも同月26日には、通常の病棟居室に原告を収容すべきであった(以下、上記①及び②の処遇を併せて「処遇ケ」という。)。 処遇ケは、国賠法上、違法である。 原告は、処遇ケにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料 は、10万円が相当である。 (被告の主張)(ア) しもやけに対する対応について原告は、令和2年11月16日にB病院を退院 告は、処遇ケにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料 は、10万円が相当である。 (被告の主張)(ア) しもやけに対する対応について原告は、令和2年11月16日にB病院を退院後、引き続き、急性骨髄性白血病の処方薬を服用していたところ、同年12月17日、本件セ ンター内科医師が、原告のしもやけが悪化することで何らかの感染症に感染することを防止するため、湯たんぽの実施が望ましい旨の所見を示したことから、本件センターは、原告に対し、湯たんぽの使用を認めるとともに、裁量により靴下の二重使用を認めていた。 しかし、令和3年4月28日、原告がB病院において採血及び骨髄穿 刺検査を受けたところ、同病院医師から、数値に異常は認められず、入院前と同じように施設における集団生活に戻って問題ない旨及び今後の定期的な採血、通院等のフォローが不要である旨の所見が示されたことを踏まえ、本件センターは、同年5月6日、原告の休養を解除した。 上記の経緯からすれば、令和3年11月29日から令和4年1月25 日までの間、本件センターが原告に対し、温たんぽ、靴下を二重に着用すること、工場出業時及び運動時に手袋の着用することを許可すべき法的義務があったとは認められない。 そして、本件センターは、令和3年11月29日から令和4年1月25日までの間、原告のしもやけに対して適切な医療上の措置を講じてい たのであるから、原告の主張は理由がない。 - 20 -(イ) 隔離措置について本件センターは、令和4年1月25日、原告に37.8度の発熱があり、新型コロナウイルス感染症への感染が疑われたため、新型コロナ感染対策に係るマニュアルに基づき、本件センターの病棟3階の単独室に収容した。 令和4年1月25日に原告が受けた抗 度の発熱があり、新型コロナウイルス感染症への感染が疑われたため、新型コロナ感染対策に係るマニュアルに基づき、本件センターの病棟3階の単独室に収容した。 令和4年1月25日に原告が受けた抗原検査は、飽くまで簡易検査であり、その結果が陰性であっても数日間は経過観察を要するものであったこと、原告には検査当日のみならず翌日及び翌々日も発熱が認められ、新型コロナウイルス感染症への感染が疑われる状態にあったこと、当時は新型コロナウイルス感染症が流行しており、刑事施設の適正な運営及 び矯正処遇の実施のために刑事施設内における感染拡大を防止する措置を講じる必要性が極めて大きかったことからすれば、原告について、依然として当該疾病を感染させるおそれがなくなったとはいえなかったのであり、同月26日に通常の病棟居室に収容すべきであったとはいえず、単独室に収容したことにつき、国賠法上の違法はない。 カ原告をカメラが設置された居室に収容した措置等について(争点9)(原告の主張)(ア) 本件センターは、令和4年2月15日、理由なく原告の所持品を全て取り上げ、数時間にわたり検査をした(以下「本件所持品検査」という。)。 また、本件センターは、同日、原告をテレビ監視システム及び音声マ イクが設置された居室(以下「カメラ室」という。)に収容した上、同月21日には、原告に対し、昼夜にわたり単独室に収容する処遇である昼夜居室処遇をした(以下「本件昼夜居室処遇」という。)。なお、同単独室もカメラ室であった。本件昼夜居室処遇は、原告がβ刑務所に移送される同年▲月▲日まで継続された。 (イ) 被告は、本件所持品検査の理由として、原告が本件センターの職員の - 21 -個人情報を入手していたことが判明したことから、原告が職員の個 送される同年▲月▲日まで継続された。 (イ) 被告は、本件所持品検査の理由として、原告が本件センターの職員の - 21 -個人情報を入手していたことが判明したことから、原告が職員の個人情報を利用して職員に対する攻撃や籠絡などの行為に及ぶおそれがあり、原告が他にも職員の個人情報を入手しているか否かを確認する必要があったなどと主張するが、原告が職員の個人情報を利用して職員に対する攻撃や籠絡などの行為に及ぶおそれはなく、原告が職員の個人情報を入 手していたからといって、刑事施設の規律及び秩序の維持について具体的な危険が存在したとはいえないのであり、本件所持品検査の必要があったとはいえない。 (ウ) カメラ室への収容は、一般の居室収容に比較して、プライバシーの制約による被侵害利益の程度が大きく、主に自傷や自殺などといった職員 の巡回視察による監視では未然に防ぐことが困難な突発的な事故への対応の必要性を想定し、許容されているものであり、その収容の判断は慎重にされなければならない。しかし、原告をカメラ室に収容することについて、慎重な検討は行われていない。 被告は、原告が本件センターの職員の個人情報を入手していたことに ついて、調査の必要性があったなどと主張するが、原告が本件センターの職員の個人情報を入手した経緯は容易に推認可能であり、カメラ室に収容して調査をする必要はないし、ウェアラブルカメラを使用した監視等の他の方法によっても原告の様子を監視することは可能であって、原告をカメラ室に収容したことは、必要性、相当性を欠いたものである。 (エ) 本件昼夜居室処遇について、被告は、原告と本件センターの職員との接触を絶つ目的があったと主張するが、そのような事情は昼夜居室処遇を実施するか否かにおいて考慮すべき事 たものである。 (エ) 本件昼夜居室処遇について、被告は、原告と本件センターの職員との接触を絶つ目的があったと主張するが、そのような事情は昼夜居室処遇を実施するか否かにおいて考慮すべき事情ではなく、違法な他事考慮である。加えて、原告が本件センターの職員の個人情報を入手した経緯は容易に推認可能であったのであり、個人情報の漏洩に関する事案の解明 の観点からも、本件昼夜居室処遇の必要性はなかった。 - 22 -(オ) 以上のとおり、本件所持品検査、カメラ室への収容及び本件昼夜居室処遇(以下、これらの処遇を併せて「処遇コ」という。)は、いずれも著しく合理性を欠いており、その裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであって、違法である。 原告は、処遇コによって人格的利益を侵害され、精神的苦痛を被った ところ、これに対する慰謝料は、80万円が相当である。 (被告の主張)(ア) 本件センターの職員が、令和4年2月15日、原告から発信の申請があった実母宛ての信書を検査したところ、「懲戒請求」と題する書面(以下「本件書面」という。)が同封されており、本件書面には、複数名の 職員の名前や特定の職員の日常生活に関する情報等が記載されていた。 本件センターは、原告が本来知ることのできない職員の氏名等の個人情報を職員から聞き出す等の不相当な方法で入手した可能性が強く疑われたこと、加えて、原告がこれらの個人情報を利用して第三者等を介して職員個人を攻撃したり、原告自らも、当該職員に対し、個人情報を知 っていることを示唆して、心理的な圧力を与えたり、当該職員を籠絡したりするなどして、自身の処遇の緩和を図ろうとするおそれがあったこと、また、職員の個人情報が更に漏洩する事態を即時に防止し、刑事施設の規律及び秩序を適正に維持す 的な圧力を与えたり、当該職員を籠絡したりするなどして、自身の処遇の緩和を図ろうとするおそれがあったこと、また、職員の個人情報が更に漏洩する事態を即時に防止し、刑事施設の規律及び秩序を適正に維持するためには、当該情報の取得者である原告の動静を綿密に視察する必要性があったことから、令和4年2月1 5日、原告を第4区1階B棟103室(カメラ室)に転室させた。 また、本件センターは、原告が本件書面に記載された職員以外にも職員の氏名や個人情報等を入手している可能性があったことから、刑事施設の規律及び秩序を維持するため、刑事収容施設法75条1項に基づき、同居室及び原告の保管私物の検査を実施した。 (イ) 上記(ア)の個人情報の不相当な漏洩については、情報の取得者である - 23 -原告のみならず、これに関係する職員の動静も含めて調査を行い、事案の全容を解明する必要があるところ、その調査の間、原告を他の受刑者と同様に工場に出業させて不特定多数の職員や他の受刑者と接触する機会を与えると、原告がどの職員から情報を得ているか等について、口裏合わせなどの隠ぺい工作が行われ、事案解明の障害となるおそれがあっ た。したがって、原告を本件昼夜居室処遇とした本件センター長の判断には、裁量権の範囲の逸脱又は濫用はない。 加えて、本件では、原告が本件センターの職員から職員の個人情報を取得した疑いが強かったため、単に昼夜居室処遇として他の被収容者との接触を絶つだけでは、同様の行為を防止するために不十分であり、原 告の動静を綿密に視察する必要があるため、カメラ室処遇とされたものであり、原告をカメラ室に収容した本件センター長の判断は、刑事施設の規律及び秩序を維持するために必要であって、かつ、原告の改善・教化を図り、社会への適応性を回復、増 るため、カメラ室処遇とされたものであり、原告をカメラ室に収容した本件センター長の判断は、刑事施設の規律及び秩序を維持するために必要であって、かつ、原告の改善・教化を図り、社会への適応性を回復、増進させて社会に更生復帰させるためにも必要な措置であるから、裁量権の範囲の逸脱又は濫用はない。 また、本件所持品検査についても、上記(ア)の状況からすれば、刑事施設の規律及び秩序の維持が困難となる具体的な危険性が存在したのであり、刑事施設の規律及び秩序を維持するため、原告が他の職員の氏名や個人情報等も入手していないかを調査すべく、原告の所持品及び居室を検査する必要があったことから、刑事収容施設法75条1項に基づいた 適法な検査である。 キ本件措置以降のひげそりに関する措置について(争点10)(原告の主張)本件センターは、令和4年3月14日から同年▲月▲日までの間、原告に対し、ひげそりを強制する権限が存在しないにもかかわらず、有形力を 用いて、医学的見地からみて原告に使用させることが不適切な電池式かみ - 24 -そりでひげそりの強要を継続し、毎日ひげそりをするように指示した(以下「処遇サ」という。)。処遇サは、国賠法上、違法である。 原告は、処遇サにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料は、90万円が相当である。 (被告の主張) 上記⑴(被告の主張)のとおり、原告には、規則26条4項に定める、ひげそりを行わせない「相当」の理由が存しなかったのであるから、本件センターの職員が原告に対しひげをそるよう指示することは、違法とはいえない。 したがって、原告の主張は、理由がない。 ク優遇区分に関する措置について(争点11)(原告の主張)本件センターは、令和4年4月1日から同月10日 示することは、違法とはいえない。 したがって、原告の主張は、理由がない。 ク優遇区分に関する措置について(争点11)(原告の主張)本件センターは、令和4年4月1日から同月10日の間に、違法な本件懲罰の法律効果が及んだ状態で優遇区分の指定処分を行い、同年4月1日から同年9月30日の間、不適切な優遇区分で処遇した(以下「処遇シ」 という。)。処遇シは、国賠法上、違法である。 原告は、処遇シにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料は、30万円が相当である。 (被告の主張)上記⑵(被告の主張)のとおり、本件懲罰に違法な点はない。 また、優遇措置は、受刑者に改善更生の意欲を喚起させるべく、物品の貸与・支給の範囲、物品の自弁の許可範囲、面会及び信書の発受に関する管理運営上の制限事項の範囲等について、優遇区分に応じて恩恵的・優遇的な措置を執ることを可能とした制度であり、権利的ではない事項に係る優遇を設けたものにすぎないから、優遇区分の指定及び変更によって被収 容者の法律上の利益が侵害されるものではない。 - 25 -したがって、本件懲罰に違法な点はなく、また、優遇措置については、受刑者の権利又は法律上の利益として保障されるものではないから、原告の主張は理由がない。 ケ弁護士からの信書に関する措置について(争点12)(原告の主張) 本件センターは、令和4年4月16日に到達した訴訟代理人弁護士からの信書を理由なく差入物品として処理することで同月21日に交付し、同月22日に予定された同弁護士との処遇に関する面会に必要な事前準備の時間を十分に与えなかった(以下「処遇ス」という。)。処遇スは、国賠法上、違法である。 原告は、処遇スにより精神的苦痛を被ったところ、これに対す 弁護士との処遇に関する面会に必要な事前準備の時間を十分に与えなかった(以下「処遇ス」という。)。処遇スは、国賠法上、違法である。 原告は、処遇スにより精神的苦痛を被ったところ、これに対する慰謝料は、5万円である。 (被告の主張)原告の訴訟代理人弁護士から差入物品が本件センターに郵送されたのは、令和4年4月16日(土曜日)であったが、本件センターの執務時間外の ため、回付作業は同月18日(月曜日)以降に行われることとなった。 担当職員が原告宛ての上記差入物品の回付作業に着手したのは同月19日であった。担当職員は、同日、上記差入物品につき、信書に該当するか否かの検査を担当する部署に確認し、同月20日、当該検査担当部署の職員は、信書には該当しない旨の判断をした。その後、同月21日に上記差 入物品は原告の居室があった区に回付された後、原告に引き渡された。 当時、1256人の被収容者を収容していた本件センターにおいて、執務外の土曜日及び日曜日に届いたものも含め、順番に検査を実施する必要があったという事情も考慮すれば、殊更、上記差入物品の原告への引渡しが遅れた事実は認められないし、意図的に原告に対して引渡しを遅らせた という事情も存在しない。 - 26 -また、上記差入物品は、刑事収容施設法33条1項5号の「書籍等」のうちのその他の文書図画に該当し、信書に該当するものは含まれていない。 仮に、原告の主張どおり、上記差入物品が信書に該当するとしても、差入物品の一次検査を担当する部署から信書の検査を担当する部署に回送され、当該検査部署において信書の検査について規定した刑事収容施設法 127条に基づく検査が実施された後、原告に交付されることになるから、原告への交付が令和4年4月21日より早まることはない。 され、当該検査部署において信書の検査について規定した刑事収容施設法 127条に基づく検査が実施された後、原告に交付されることになるから、原告への交付が令和4年4月21日より早まることはない。 さらに、信書を差入物品として処理されたことが、どのような理由で、同弁護士との処遇に関する面会に必要な事前準備の時間を十分に与えなかったことにつながるのか、いかなる法的根拠により国賠法上違法となる のか、同措置によりどのような損害が発生したのか、原告からは具体的な主張がない。 コ本件センターの医師が抗原回避措置を講じる必要性を示さなかったことについて(上記⑴から⑶、キ及びクに対する予備的請求)(争点13)(原告の主張) 本件センターの皮膚科医師は、原告を診察した令和3年11月25日の時点で、原告に金属アレルギー反応による症状が生じていたことを把握していたのであるから、電気かみそりの使用を中止する等、推定される抗原である金属との接触を回避する措置(抗原回避措置)を講じる必要があったにもかかわらず、これを講じる必要性を示さなかった。上記医師のこの 不作為は、医師としての注意義務に反するものであり、最高裁平成17年12月8日判決・裁判集民事218号1075頁の判旨及び医師法23条の規定に照らし、国賠法上の違法がある。 この結果、原告に対して本件措置、本件懲罰、本件裁決、処遇サ及び処遇シが行われたものであり、これらにより原告が被った損害は、同医師の 上記不作為と密接かつ不可分な関係にあり、相当因果関係がある。 - 27 -よって、原告は、被告に対し、本件措置、本件懲罰、本件裁決、処遇サ及び処遇シに係る請求(損害額合計280万円)の予備的請求として、国賠法1条1項に基づき、280万円の支払を求める。 (被告 7 -よって、原告は、被告に対し、本件措置、本件懲罰、本件裁決、処遇サ及び処遇シに係る請求(損害額合計280万円)の予備的請求として、国賠法1条1項に基づき、280万円の支払を求める。 (被告の主張)令和3年11月25日の診療内容によれば、本件センターの皮膚科医師 は、金属アレルギーである可能性を留保しつつ、原告からの症状の有無等の聴取や症状の観察など、問診や身体所見を通じて、皮膚科医師としての経験則に基づいた診察を行っているといえる。 そして、原告について、金属アレルギーとの診断がされておらず、かつ、金属アレルギーの明らかな症状が認められなかったことも踏まえると、そ の時点で、原告がいう抗原回避措置を講じなかったことが不合理であったとはいえず、原告の主張には理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 本件措置について(争点1)⑴ 認定事実 前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 ア金属アレルギー(ア) 金属アレルギーには、金属接触アレルギーと全身型金属アレルギーがあるところ、このうち、金属接触アレルギーは、装飾品などの身の回り のものが長時間皮膚に接触したときや、ピアスなどの金属を真皮内に入れたときに、皮膚炎(接触皮膚炎)が現れるものであり、局所性の遅延型過敏反応を示す(乙1・54頁、乙2・259頁、乙3・342頁、乙4・1309頁)。 金属アレルギーは、いわゆるⅣ型(遅延型)に分類されるところ(乙 1・55頁)、Ⅳ型は、抗原に感作されたTリンパ球を中心とする細胞 - 28 -性免疫により引き起こされる反応である(乙4・1308頁)。 また、アレルギーの疾患ごとに、原因となりやすいアレルゲン(抗原)や誘因・条件はある程度決まっており( を中心とする細胞 - 28 -性免疫により引き起こされる反応である(乙4・1308頁)。 また、アレルギーの疾患ごとに、原因となりやすいアレルゲン(抗原)や誘因・条件はある程度決まっており(同・1309頁)、接触皮膚炎の場合は、原因としての金属と発症疾患としての接触皮膚炎の因果関係は明瞭である(乙3・342頁)。アレルギー性接触皮膚炎は、感作さ れた個体にしか生じないが、いったん感作されると微量の抗原であっても生じ得る(乙4・1337頁)。 (イ) 皮膚の金属アレルギー(接触皮膚炎)の診断では、パッチテスト(アレルゲンエキスを滴下したパッチを前腕、上腕、背中等の健常部の皮膚に貼付し、48時間刺激した上で観察・評価を行う検査方法)が標準的 な検査法であり、その信頼性は高いとされている (乙1・55頁、乙3・342頁、乙4・1310頁)。 イ本件センターにおけるひげそりに使用可能な器具後記ウ及びエの当時、本件センターにおいて、調髪やひげそりの際に使用される器具は、大要次のとおりであった。 (ア) バリカン頭髪、もみあげ、えり足を刈るために使用する器具。なお、バリカンは、アタッチメントの装着が可能である(乙17、弁論の全趣旨)。 (イ) 電池式かみそり個人に貸与される、ひげそりに使用する器具(自弁で購入している者 を除く。)。なお、電池式カミソリは、アタッチメントの装着はできない。(乙15、弁論の全趣旨)(ウ) トリマー巻きひげやひげの伸び過ぎを理由として電池式かみそりでひげそりができなかった場合、理髪実施後に理髪立会職員等が許可をして同職員 立会いの下で行うひげそりに使用する器具。なお、トリマーは、アタッ - 29 -チメントの装着が可能である。(弁論の全趣旨)ウ原告に 合、理髪実施後に理髪立会職員等が許可をして同職員 立会いの下で行うひげそりに使用する器具。なお、トリマーは、アタッ - 29 -チメントの装着が可能である。(弁論の全趣旨)ウ原告に対する診察の経緯等(ア) 原告は、令和3年8月10日の医務巡回時、本件センターの看護師に対し、電池式かみそりでひげをそると赤くなり、口唇周囲部が腫脹する、少し経つと軽減する、(自分は)金属アレルギーである、どうしたらよ いか、などと申し出た。 原告は、同年9月13日及び同年11月9日、本件センターの内科医師による診察を受け、上記症状を訴えるなどしたところ、いずれの診察においても、外用薬(ロコイド軟膏)が処方された。(乙12、13、97) (イ) 原告は、令和3年11月22日、処方された外用薬を塗布しても、発赤は些少ながら治まるものの痛みや唇の腫れは変わらないなどとして、金属アレルギーに関して皮膚科の診察を願い出た。 原告は、同月25日に本件センターの皮膚科医師による診察を受け、本件センター職員の立会いの下、上記(ア)のような症状を訴え、金属アレ ルギーについて尋ねた。同皮膚科医師は、原告に対し、本件センターでは金属アレルギーの検査ができず、正確な診断はできない旨説明し、金属アレルギーの正確な診断を行うためにパッチテスト等を外部施設で実施する必要があるとの所見を示すとともに、何らかの症状が出た際には再度受診するよう伝え、診療録に「PT(判決注:パッチテスト)など 外で施行を」、「有事再診」と記載した。 本件センターにおいて、後記(エ)の「特別貸与願」及び後記(オ)の「教示願」についての対応を検討する際、同皮膚科医師のこれらの説明等のうち、本件センターでは金属アレルギーの検査ができず、正確な診断はできない旨説明 いて、後記(エ)の「特別貸与願」及び後記(オ)の「教示願」についての対応を検討する際、同皮膚科医師のこれらの説明等のうち、本件センターでは金属アレルギーの検査ができず、正確な診断はできない旨説明したことは本件センター長まで報告されたが、同皮膚科 医師が金属アレルギーの正確な診断を行うためにパッチテスト等を外部 - 30 -施設で実施する必要があるとの所見を示し、同日の診療録に「PTなど外で施行を」と記載したことについては報告されなかった。このため、本件各証拠上、同医師がかかる所見を示したこと等が上記検討の際や本件措置及び本件懲罰の際に考慮されたとは認められない。(乙12、13、15、21~25、28、97) (ウ) 原告は、令和3年12月6日、本件センターの内科医師による診察を受けた際、本件センターの職員に対し、金属アレルギーでひげそりを使用できないため、医務課からも処遇部門に伝えて欲しい旨申し出た。同職員は、原告に対し、上記申出があったことを処遇部門の上司に報告するが、原告からも願せんで自身の願意を記載して提出するよう指導した。 (乙14)(エ) 原告は、令和3年12月7日、本件センター長に対し、「特別貸与願」と題する願せん(乙15・3頁)を提出し、金属アレルギーの対策として、アレルゲンとの接触を避けるように医師から指示を受けており、アレルゲンとの接触を伴う電池式かみそりの使用ができないため、調髪の 際貸し出している樹脂製のアタッチメントが装着できるトリマーを貸与するよう願い出た。 本件センター長は、同月14日、原告が金属アレルギーであるとの正確な診断がなされていないことや、原告が貸与を願い出た同トリマーは、理髪用器具として整備されているものであることから、同トリマーの貸 ンター長は、同月14日、原告が金属アレルギーであるとの正確な診断がなされていないことや、原告が貸与を願い出た同トリマーは、理髪用器具として整備されているものであることから、同トリマーの貸 与は不相当であると判断し、同日、第4区長を通じて、原告に対し、上記願せんにつき、「願意取り計らわない。」旨告知した。(乙15)なお、本件センター長が上記判断をするに当たり、原告を診察した本件センターの皮膚科医師に意見を照会したり、上記アのような金属アレルギーの特性等について医学的知見を参考に検討したりした形跡は見当 たらない。 - 31 -(オ) 原告は、令和3年12月16日、「教示願」と題する願せん(乙12・4~6頁)を提出し、同年11月25日の診察において、皮膚科医師から、根本的にアレルゲンとの接触を控えるしか金属アレルギーによる症状を防ぐ方法は存在せず、ひげの処理をするのであれば原告が収容前に行っていた方法(樹脂製アタッチメントを使用しトリマーでカットする 方法)で実施し、金属と直接接触するのを控えるよう指示を受けたなどとした上、電池式かみそりを使用してひげを処理するに当たり、発赤、腫れ、痛み、出血などの症状により甚大な精神的苦痛を受けているため、「医師の医療上必要な措置である指示に反しない、そして申出人が苦痛を感じない処理方法の教示を求め」る旨願い出るとともに、「教示を頂 けない場合は、自身の権利保護のため申出人の判断にて処理します」などと付言した。 本件センター長は、原告が金属アレルギーであるとの正確な診断がなされていないことなど上記(エ)の経緯も踏まえた上で、現時点における原告の症状に特に配慮すべきところはなく、特別な処理方法を検討する 必要性はないことに加え、原告が本件センターに入所してか なされていないことなど上記(エ)の経緯も踏まえた上で、現時点における原告の症状に特に配慮すべきところはなく、特別な処理方法を検討する 必要性はないことに加え、原告が本件センターに入所してから今回の出願までの間、ひげそりが原因で発赤、腫れ、出血があったとの申出はなく、本件センターの職員が原告の肌の状態を確認したがその状況もなく、今回の申出の信ぴょう性は極めて低いなどとして、同月22日、第4区長を通じて、原告に対し、本件センターが指定したひげそりでこれまで と同様にひげをそること、肌荒れなどが生じた場合は、処方された外用薬で対応すること、苦痛の生じない方法については教示の必要性を認めないので教示しないことを告知した。 なお、本件センター長が上記の対応を決定した際の決裁文書には、同月17日午前10時30分に撮影された原告の顔写真等が添付され、同 写真には「発赤、腫れ、出血などの症状は一切認められない。」との説 - 32 -明が付記されていたが、本件センター長が上記判断をするに当たり、原告を診察した本件センターの皮膚科医師に意見を照会したり、上記アのような金属アレルギーの特性等について医学的知見を参考に検討したりした形跡は見当たらない。(乙12、24)(カ) 原告は、令和4年1月11日、自分は金属アレルギーであるため、も みあげ等の理髪について、樹脂製アタッチメントを装着したまま実施したい旨申し出た。本件センターの職員は、原告の金属アレルギーの有無は不明ではあるものの、もみあげ及びえり足の理髪時におけるアタッチメントの装着の有無については当時の内規に明記されておらず、肌荒れや傷等の理由からアタッチメントを装着したまま実施している者も以前 にいたことから、上司に確認した上で、理髪用のバリカンに樹脂製のア トの装着の有無については当時の内規に明記されておらず、肌荒れや傷等の理由からアタッチメントを装着したまま実施している者も以前 にいたことから、上司に確認した上で、理髪用のバリカンに樹脂製のアタッチメントを装着したままでの調髪実施を許可した。(乙17、18)(キ) 原告は、令和4年1月19日、手のしもやけが悪化しているとして、皮膚科の診察を申し出、同月20日に皮膚科医師による診察を受けた。 原告は、同診察中、金属アレルギーについて話し始めたため、同診察に 立会していた本件センターの副看守長(医務課医務係長)は、原告に対し、金属アレルギーについては、今回の診察内容であるしもやけと無関係な内容であり、しもやけ以外の話はしないよう指導したが、原告がなおも金属アレルギーについて話したため、原告に対し、退室を指示した。 同医師は、原告による金属アレルギーの訴えに関し、外用薬(ロコイド 軟膏)を処方するとともに、診療録に「悪化時再診」と記載した。 なお、原告は、同診察時のやり取りにつき、本件センターの副看守長による有形力の行使をもって診察を妨害されたなどとして、苦情を申し出たが、原告の診察を有形力をもって妨害した事実は認められないとして、不採択となった。(乙13、19~21、97) (ク) 原告は、令和4年2月2日、本件センターの看護師に対し、異汗性湿 - 33 -疹、ステロイドの副反応、しもやけ、診断書交付の有無、金属アレルギーの症状・訴えのカルテへの記載の有無及び採血結果等に関して確認したいなどとして、皮膚科の診察を願い出た。 原告は、同月10日に本件センターの皮膚科医師の診察を受け、手のしもやけ及び金属アレルギーについて訴えた。同皮膚科医師は、金属ア レルギーの明らかな症状はないとしつつ、(原告)本人の症 出た。 原告は、同月10日に本件センターの皮膚科医師の診察を受け、手のしもやけ及び金属アレルギーについて訴えた。同皮膚科医師は、金属ア レルギーの明らかな症状はないとしつつ、(原告)本人の症状としては発赤などがあるようであり、金属アレルギーの正確な診断を行うためにパッチテスト等を外部施設で実施する必要があるとして、「外施設でPTなどを」などと診療録に記載するとともに、原告に対し、悪化時には再度受診するよう伝えた。(乙13、97) なお、本件証拠上、同日の診察の経緯・内容が本件措置及び本件懲罰の際に考慮されたことはうかがわれない(乙21~25、28)。 (ケ) 原告は、その後も貸与されている電気カミソリを使ってひげそりを行っていたが、この方法によると痛みを伴い、この痛みを我慢することに限界を感じたため、令和4年2月28日頃から、原告自身の判断により、 比較的痛みの少ない部分である下唇下部及び両頬の一部に限ってひげをそることとした(乙24、25、弁論の全趣旨)。 エ本件措置の経緯(前提事実⑶、乙22、24、弁論の全趣旨)(ア) 原告は、令和4年2月21日以降、昼夜居室処遇を受け(後記9⑴カ参照)、居室内で刑務作業に従事しており、同年3月14日当時も、居 室内で刑務作業に従事しており、機械を用いた作業を行っていなかった。 (イ) 第3区長は、令和4年3月14日、原告がひげをそらずに伸ばしていたことから、本件センターの職員らに原告を居室から出室させるよう指示し、原告を同区理髪室まで連行した。なお、当時の原告のひげは、おおむね数mmから10mm程度の長さであった。 (ウ) 第3区長は、同日午後4時15分頃、同理髪室内中央付近に置かれた - 34 -椅子に座った原告に対し、樹脂製アタッチメント未装着 おおむね数mmから10mm程度の長さであった。 (ウ) 第3区長は、同日午後4時15分頃、同理髪室内中央付近に置かれた - 34 -椅子に座った原告に対し、樹脂製アタッチメント未装着のトリマーを示しながら、ひげをそるよう繰り返し指示した。これに対し、原告は、「正当な理由で拒否します。」などと述べ、第3区長の指示に従わなかった(本件拒否行為)。 (エ) 第3区長は、同日午後4時16分頃、原告の前記(ウ)の動静を踏まえ、 刑事収容施設法77条1項に基づき、制止等の措置を執ることとし、その指揮の下、本件センターの職員2名が原告の両腕をそれぞれ両手で制したところ、原告は、「そこまでしなくても拒否はしないですよ。」などと述べた。第3区長は、原告を制止した状態で、別の本件センターの職員にトリマー及び電池式かみそりを使用させ、原告のひげそりを開始 させた。 原告は、同日午後4時17分頃、右腕を制している職員の方に顔を向け、「強いです。」などと述べた。第3区長が原告に体の力を抜くよう指示すると、原告は聞き返すように「はい。」と述べた。その後、第3区長は、再度、原告に対し、力を抜くように指示したが、原告は、特に 返答しなかった。 (オ) 第3区長は、同日午後4時26分頃、原告のひげそりが終了したことから、原告に対し、職員の制止を解くが急に動いたり抵抗したりすることのないように指示したところ、原告は了承した。第3区長は、職員に制止を解くよう指揮し、午後4時27分頃、原告を居室に還室させた。 第3区長は、ひげそり実施直後である同日午後4時26分頃、原告の顔面に出血や赤み、腫れなどがなかったことを確認した。 (カ) 原告は、令和4年3月29日の医務巡回時、本件センターの看護師に対し、唇の周囲にピリピリ感 後である同日午後4時26分頃、原告の顔面に出血や赤み、腫れなどがなかったことを確認した。 (カ) 原告は、令和4年3月29日の医務巡回時、本件センターの看護師に対し、唇の周囲にピリピリ感があり、処方されたロコイド軟膏を塗ったが改善しない旨を訴えた(乙97)。 オ β刑務所移送後の状況(乙32、弁論の全趣旨) - 35 -(ア) 原告は、令和4年▲月▲日、本件センターからβ刑務所へ移送されたところ(前提事実⑴)、原告が自弁の電池式かみそりを所持していなかったことから、β刑務所では原告に対して官給品のT字かみそりが貸与された。 (イ) 原告は、令和4年6月15日、「金属アレルギーと考えられる症状の 発症を防ぐため」として、「特別使用・貸与」願と題する願せんを提出し、電動トリマー及び樹脂製アタッチメントの貸与を願い出た。 (ウ) β刑務所医師は、令和4年6月21日に原告を診察し、プラスチックトリマーを原告に貸与することが望ましいとの所見を示した。原告は、同年7月1日、β刑務所職員から、β刑務所では、上記トリマーの取扱 いがなく、貸与することが難しい旨告知を受けたことから、同月4日、「貸与願」と題する願せんを提出し、「低刺激性の官物電気シェーバー」の貸与を願い出た。 (エ) β刑務所長は、令和4年7月5日に実施されたβ刑務所医師による原告の診察において、プラスチックトリマーの取扱いがないのであれば、 工場に備え付けられているシェーバー(D)の使用が望ましいとの所見が示されたこと、β刑務所において、金属アレルギーの検査が実施されていないことなどを考慮し、原告に対し、金属アレルギーの検査を実施することとし、その検査結果が出るまでの間、上記シェーバーを貸与することとした。もっとも、上記シェーバーは、個 ルギーの検査が実施されていないことなどを考慮し、原告に対し、金属アレルギーの検査を実施することとし、その検査結果が出るまでの間、上記シェーバーを貸与することとした。もっとも、上記シェーバーは、個人貸与とはせず、担当 職員等が管理し、使用時のみ貸与とし、また、ひげそりは、入浴該当日の休憩時間等適宜の時間に職員が貸与し実施させることとした。 (オ) その後、原告は、外部の病院においてパッチテストを受け、陽性反応が出たことなどから、令和5年4月28日、同病院の医師から金属アレルギーの確定診断を受けた。 ⑵ 判断枠組み - 36 -刑事収容施設法60条1項は、受刑者には、法務省令で定めるところにより、調髪及びひげそりを行わせる旨規定しているところ、その趣旨は、受刑者に調髪及びひげそりを自由に行わせることとした場合は、受刑者の衛生管理につき支障が生じるおそれや、刑務作業において機械に髪を巻きこまれるなどの安全衛生面での危険が生じるおそれがあることに加え、反社会的集団 に属する者の特有の容貌にした上で他の受刑者に対してそれを誇示するなどして矯正処遇の適切な実施における支障が生じるおそれがあることにあると解される。 そして、刑事施設の長等は、刑事施設の規律及び秩序を適正に維持するために合理的に必要な措置を執ることができるのであって(刑事収容施設法7 3条、77条等)、上記のような同法60条1項の趣旨に照らせば、受刑者が正当な理由なく調髪及びひげそりの指示を拒否する場合には、同法77条1項に基づく制止等の措置として、合理的に必要な限度で一定の有形力を行使した上で、強制的にひげそりを行うことも許されるものと解される。 もっとも、受刑者が調髪又はひげそりを行わないことを希望する場合にお いて、その宗教、その者 的に必要な限度で一定の有形力を行使した上で、強制的にひげそりを行うことも許されるものと解される。 もっとも、受刑者が調髪又はひげそりを行わないことを希望する場合にお いて、その宗教、その者が国籍を有する国における風俗慣習、釈放の時期その他の事情を考慮して相当と認めるときは、調髪又はひげそりを行わせないものとするとされている(規則26条4項)ことも踏まえると、上記有形力の行使は、ひげそりをしないことが「相当」と認めるべき事情の有無やその内容・程度も勘案した上で、同法60条1項の規定の趣旨目的を達成するた めに必要かつ相当な限度において認められるというべきである。 ⑶ 当てはめア原告は、本件措置に関し、ひげそりを拒否する理由について「正当な理由」がある旨述べるにとどまり、具体的な理由を述べていないが(上記⑴エ。なお、原告は、本件拒否行為に先立ち、ひげそりの指示に対し、アレ ルギー症状が出るので樹脂製アタッチメントを貸与するよう求めたなどと - 37 -主張している。)、原告が令和3年8月以降繰り返し本件センターの医師や職員に対して金属アレルギー及びかみそりによる皮膚の炎症を訴え、また、アタッチメントの装着ができるトリマーの貸与や、ひげそりに当たり苦痛を感じない方法による処理方法の教示を求める旨の願せんを提出していたこと(上記⑴ウ)などからすれば、原告がひげそりを拒否した理由は、 電池式かみそりの使用による金属アレルギーの発症の予防の点にあると認められ、また、上記のような経緯に照らすと、第3区長を始めとする本件センターの職員においてもそれを認識し又は容易に認識し得たものと認められる。 イ原告が金属アレルギーの確定診断を受けたのは、β刑務所に移送された 後、同刑務所の判断により外部の病院で検査を受 ンターの職員においてもそれを認識し又は容易に認識し得たものと認められる。 イ原告が金属アレルギーの確定診断を受けたのは、β刑務所に移送された 後、同刑務所の判断により外部の病院で検査を受けた後のことであり(上記⑴オ(オ))、本件措置が執られた令和4年3月14日当時は、原告が金属アレルギーであるか否かにつき確定診断はされていなかった。しかし、それは、原告が令和3年8月以降、金属アレルギーの症状を繰り返し訴えていたものの(上記⑴ウ)、原告が収容されていた本件センターでは同診断 に必要なパッチテストを実施することができず、また、原告を診察した本件センター皮膚科医師が原告につき金属アレルギーの正確な診断を行うためにパッチテスト等を外部施設で実施する必要がある旨の所見を繰り返し示していたにもかかわらず、これが実施されなかったためである(上記⑴ウ(イ)、(ク))。そもそも、「原告が金属アレルギーであるか否かにつき確 定診断がされていなかった」という事実は、「原告が金属アレルギーでない」ことを意味するものではない上、上記のような経緯に照らすと、本件措置当時、原告につき金属アレルギーである旨の確定診断がされていなかったことを重視するのは相当とはいえない(なお、本件センターにおいても、同皮膚科医師が本件センターでは金属アレルギーの検査ができず、正 確な診断はできない旨説明したことを認識しており(乙12、15)、原 - 38 -告につき金属アレルギーであるとの正確な診断がされていない理由が、所要の検査をしていないためであることを認識していたと認められる。)。 かえって、原告は、金属アレルギーの症状を繰り返し訴え、内科医師から2回にわたり外用薬であるロコイド軟膏を処方されたが、痛みや唇の腫れは改善しないとして、皮膚科医師 認識していたと認められる。)。 かえって、原告は、金属アレルギーの症状を繰り返し訴え、内科医師から2回にわたり外用薬であるロコイド軟膏を処方されたが、痛みや唇の腫れは改善しないとして、皮膚科医師の診察を受け、同医師は、原告に対し、 本件センターでは金属アレルギーの検査ができず、正確な診断はできない旨説明するとともに、金属アレルギーの正確な診断を行うためにパッチテスト等を外部施設で実施する必要があるとの所見を示したものであり、また、本件センターの職員が作成した視察表(乙12、15)によれば、同皮膚科医師は、皮膚の炎症については外用薬で対応するよう説明したとい うのであって、一連の経過をみても、原告が金属アレルギーであることと矛盾する医学的所見は示されていなかったばかりか、同皮膚科医師が電池式かみそりの使用につき問題がない旨の所見を示していたという事情もうかがわれない(上記⑴ウ)。なお、金属アレルギーの特性(上記⑴ア)や本件の一連の経緯に照らすと、令和4年2月10日の診察の際に原告に 金属アレルギーの明らかな症状が認められなかったこと(上記⑴ウ(ク))は、原告が金属アレルギーであることと矛盾する医学的所見とはいえないし、令和4年1月17日午前10時30分頃、原告の顔面に発赤、腫れ、出血などの症状が一切認められなかったとしても(上記⑴ウ(オ))、原告の金属アレルギーの有無に関する確認として、十分とはいえない。 そうすると、本件措置当時、第3区長において、原告が電池式かみそりでひげをそることにつき、医療上問題がないと即断できる状況、すなわち、ひげそりをしないことが「相当」と認められる事情が存在しないと即断できる状況ではなかったというべきである。 ウそれにもかかわらず、本件センターは、本来重視すべきでない、原告に きる状況、すなわち、ひげそりをしないことが「相当」と認められる事情が存在しないと即断できる状況ではなかったというべきである。 ウそれにもかかわらず、本件センターは、本来重視すべきでない、原告に つき金属アレルギーである旨の確定診断がされていなかったことを重視し - 39 -た上(上記⑴ウ(エ))、原告が令和3年8月以降、ひげそりが原因で発赤や腫れがあったなどと繰り返し訴えていたにもかかわらず(上記⑴ウ(ア)~(エ))、令和3年12月16日に原告が「教示願」を出すまで、原告がひげそりが原因で発赤、腫れ等があったとの申出をしたことがない旨、事実を誤認し(上記⑴ウ(オ))、かつ、診察に立ち会った職員からの不十分な報告 に基づき、原告を診察した本件センター皮膚科医師が原告につき金属アレルギーの正確な診断を行うためにパッチテスト等を外部施設で実施する必要がある旨の所見を示していたことを考慮に入れなかった。 そればかりか、本件センターは、同医師が原告に対して本件センターでは金属アレルギーの検査ができず、正確な診断はできない旨を説明したこ とを認識していたのに(乙12、15)、同医師に意見を照会したり、金属アレルギーの特性等に係る医学的知見を参考に検討したりして慎重に検討することなく、原告の申出の信ぴょう性は極めて低いなどと決め付けていたものであって(上記⑴ウ(イ)、(オ))、これは、原告の訴える金属アレルギーの症状や一連の経過に対する評価として、著しく合理性を欠くも のといわざるを得ない。 エさらに、令和4年3月14日当時、原告は機械作業をしておらず、居室内での刑務作業に従事していたこと(上記⑴エ(ア))、ひげの長さは数mmから10mm程度であったこと(上記⑴エ(イ))、原告はひげを全くそらなかったのではなく 当時、原告は機械作業をしておらず、居室内での刑務作業に従事していたこと(上記⑴エ(ア))、ひげの長さは数mmから10mm程度であったこと(上記⑴エ(イ))、原告はひげを全くそらなかったのではなく、比較的痛みの少ない下唇下部及び両頬の一部はひげを そっていたこと(上記⑴ウ(ケ))からすると、原告のひげが機械に巻き込まれたり原告がひげを他の受刑者に誇示したりするなど、原告がひげをそらないことにより、衛生管理における支障、安全衛生面での危険、他の受刑者の矯正処遇の適切な実施における支障などが生じる具体的なおそれがあったとは認め難い。 オ加えて、原告は、令和3年8月から金属アレルギー及びかみそりによる - 40 -皮膚の炎症を繰り返し訴えるとともに、アタッチメントの装着ができるトリマーの貸与や、ひげそりに当たって苦痛を感じない方法による処理方法の教示を求める旨の願せんを提出するなど(上記⑴ウ(ア)~(ク))、本件センター所定の手続に従いながら、金属アレルギーの症状を予防するための方法を模索していたものであるが、上記ウのとおり本件センターによる著 しく合理性を欠く評価に基づき、原告の要望はほとんど叶えられず、原告は、その後も貸与された電気カミソリによりひげそりを行ってきたが、令和4年2月28日頃に至り、痛みを我慢することに限界を感じ、比較的痛みの少ない部位に限ってひげをそることとしたものであり(上記⑴ウ(ケ))、原告が他の部位のひげをそらなかったことをもって、本件センターの規律 に殊更反抗したものとはいえず、むしろ、金属アレルギーの症状を予防するためにやむを得ずとった対応にすぎないというべきである。 その一方、令和3年8月から本件措置が執られた令和4年3月までの約7か月の間、本件センターは、金属アレルギーを訴 属アレルギーの症状を予防するためにやむを得ずとった対応にすぎないというべきである。 その一方、令和3年8月から本件措置が執られた令和4年3月までの約7か月の間、本件センターは、金属アレルギーを訴える原告に対する電池式かみそりの使用の可否につき、原告を診察した皮膚科医師に照会をする ことも十分に可能であったと考えられるが、そのような照会をしたことはうかがわれず、また、より刺激の低い器具の使用の可否について検討をしたこともうかがわれない。もとより、受刑者は、刑の執行のために刑事施設に拘置されているものであり(刑事収容施設法2条4号~6号)、また、刑事施設は、その人員や予算上の制約等からしても、被収容者のあらゆる 申出に対して迅速に検討して応答する義務を負うものでないことは明らかである。しかし、刑事施設においては、被収容者の健康等を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとされているところ(同法56条)、アレルギー性接触皮膚炎は、いったん感作されると微量の抗原であっても生じ得るも のであり(上記⑴ア(ア))、その影響は刑事施設を出所した後にまで及び得 - 41 -るものであること、アレルギーの種類によっては生死にかかわるものがあることからすると、アレルギーに関する訴えについては、誠実かつ相応に慎重に検討する必要があるというべきである(薬や食品によるアレルギー体質のある者は、本件センター入所時の健康診断の際、必ず職員に申し出ることとされているのも(乙16)、アレルギーのこのような特性を踏ま えたものと考えられる。)。しかるに、本件センターでは、原告を診察した皮膚科医師が原告につき金属アレルギーの正確な診断を行うためにパッチテスト等を外部施設で実施する必要 のこのような特性を踏ま えたものと考えられる。)。しかるに、本件センターでは、原告を診察した皮膚科医師が原告につき金属アレルギーの正確な診断を行うためにパッチテスト等を外部施設で実施する必要がある旨の所見を示していたことを考慮に入れなかっただけでなく、同医師に意見を照会したり、金属アレルギーの特性等に係る医学的知見を参考に検討したりして慎重に検討 することなく、誤った事実認定や不十分な確認に基づき、原告の申出の信ぴょう性は極めて低いなどと決め付けていたものであり、これは、原告の訴える金属アレルギーの症状や一連の経過に対する評価として著しく合理性を欠くものであった(上記ウ)。そうすると、本件センターが原告に対する電池式かみそりの使用の可否につき同医師に照会せず、また、より 刺激の低い器具の使用の可否について検討しなかったことは、刑事施設の人員や予算上の制約等によるやむを得ないものではなく、原告の訴える金属アレルギーの症状や一連の経過に対する上記のような著しく合理性を欠く評価に基づいて、必要な検討を漫然と怠ったものといわざるを得ない。 カこのような本件措置当時の状況及びこれに至る経緯を踏まえると、令和 4年3月14日当時、原告につき、下唇下部及び両頬の一部以外の部位のひげそりをしないことが「相当」と認めるべき事情があったことがうかがわれるだけでなく、本件拒否行為には正当な理由があったと認められるのであって、「そこまでしなくても拒否はしないですよ。」などと述べていた原告を有形力をもって制止し、アタッチメントのない電池式かみそりを 用いて(上記⑴イ(イ)及びエ(エ))、強制的にひげをそらなければならない - 42 -ほどの必要性及び緊急性があったとはいえないし、また、そのような行為に及ぶことの相当 池式かみそりを 用いて(上記⑴イ(イ)及びエ(エ))、強制的にひげをそらなければならない - 42 -ほどの必要性及び緊急性があったとはいえないし、また、そのような行為に及ぶことの相当性もなかったというべきである。 なお、本件措置の直後に、第3区長が原告の肌に出血や赤み、腫れなどがなかったことを確認しているが(上記1⑴ウ(オ))、金属アレルギーは遅延型の反応を示すものである上(上記⑴ア)、医学的専門知識を持たない 第3区長がそのような確認をしたからといって、原告が金属アレルギーであることが否定されるものではなく(事実、上記1⑴エ(オ)のとおり、原告は、検査の結果、金属アレルギーの確定診断を受けている。)、上記のような一連の経緯を踏まえると、第3区長による上記確認は、本件拒否行為に正当な理由がなかったことの合理的根拠とはいえない。 キこれに対し、被告は、本件措置当時、当面は外用薬の処方で対応しつつ、経過観察とするなどの対応がとられていたにとどまり、本件センターの皮膚科医師は、原告に対し早急にパッチテストを実施するなどして金属アレルギーの有無を判別する必要性はなく、仮に何らかの症状が出た場合には、再度受診するなどの経過観察で足りると判断していた旨主張する。 しかし、本件センターの皮膚科医師が、原告に対し早急にパッチテストを実施するなどして金属アレルギーの有無を判別する必要性はないと考えていたことを認めるに足りる証拠は提出されていない。かえって、原告は、同皮膚科医師による診察に先立ち、令和3年9月及び11月、本件センターの内科医師に対して金属アレルギーの症状を訴え、2回にわたり外用薬 が処方されたが、これを塗布しても症状が改善しなかったため、同月、同皮膚科医師の診察を受けたものであって(上記⑴ 本件センターの内科医師に対して金属アレルギーの症状を訴え、2回にわたり外用薬 が処方されたが、これを塗布しても症状が改善しなかったため、同月、同皮膚科医師の診察を受けたものであって(上記⑴ウ(ア)及び(イ))、既に一定の「経過観察」を経た上での診察であり、同皮膚科医師も診療録(乙13、97)の記載からそのことを当然に認識していたと認められるし、同皮膚科医師が診療録にあえて「PTなど外で施行を」(令和3年11月2 5日)あるいは「外施設でPTなどを」(令和4年2月10日)などと繰 - 43 -り返し記載したこと(上記⑴ウ(イ)及び(ク))、同皮膚科医師が原告に対して本件センターでは金属アレルギーの検査ができず、正確な診断はできない旨説明したこと(乙12、15)を総合的に勘案すると、上記⑴ウ(イ)及び(ク)のとおり、同皮膚科医師は、原告につき、金属アレルギーの正確な診断を行うためにパッチテスト等を外部施設で実施する必要があるとの所見 を示したと認めるのが相当であり、外用薬で対応するというのは、上記検査により金属アレルギーの有無を正確に診断できるようになるまでの当面の対応を指示したものにすぎないと認められる。 被告の上記主張は、にわかに採用することができない。 なお、これらの認定によっても、同皮膚科医師が原告に対するパッチテ スト実施の緊急性についてどのように判断していたのかの詳細は明らかではないが、検査実施が3か月以上先でもよいとか、金属アレルギーの抗原となるものを原告の顔面に強制的に接触させてもかまわないなどと考えていたことをうかがわせる証拠はないのであって、本件センターが原告に対する電池式かみそりの使用の可否につき同医師に照会せず、また、より刺 激の低い器具の使用の可否について検討しなかったこ 考えていたことをうかがわせる証拠はないのであって、本件センターが原告に対する電池式かみそりの使用の可否につき同医師に照会せず、また、より刺 激の低い器具の使用の可否について検討しなかったことにつき、必要な検討を漫然と怠ったものである旨の上記オの評価を左右するものではない。 クこれらの点からすれば、第3区長が、本件センターの職員に有形力を行使させた上で、強制的に原告のひげをそらせた本件措置は、刑事収容施設法60条1項の規定の趣旨目的を達成するために必要かつ相当な限度を超 えるものであり、かつ、同法77条1項の制止等の措置として合理的に必要な限度を超えるものであって、許容されるものではない。 したがって、第3区長による本件措置は、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とされたものというべきであるから、国賠法上、違法である。 ⑷ 損害 - 44 -上記のとおり、本件措置は国賠法上違法であるところ、本件措置は、金属アレルギーを訴えていた原告の顔面に抗原である金属を強制的に接触させる行為であり、その所要時間も約10分と、ひげそりに要する時間としては長めであること(上記⑴エ(エ)及び(オ))、金属アレルギーは遅延型の反応を示すところ(上記⑴ア)、原告は、令和4年3月29日、本件センターの看護 師に対し、唇の周囲にピリピリ感があり、処方されたロコイド軟膏を塗ったが改善しない旨を訴えていたこと(上記⑴エ(カ))、他方で、原告の制止のための有形力の行使の程度が強度のものであったとまでは認められないこと及び本件措置後、原告に実際に金属アレルギーの深刻な症状が生じたとまでは認められないことを総合すると、本件措置によって生じた原告の精神的損害 に係る慰謝料は、3万円と認めるのが相当である。 2 本件懲 置後、原告に実際に金属アレルギーの深刻な症状が生じたとまでは認められないことを総合すると、本件措置によって生じた原告の精神的損害 に係る慰謝料は、3万円と認めるのが相当である。 2 本件懲罰について(争点2)⑴ 判断枠組み刑事収容施設法150条1項は、刑事施設の長は、被収容者が遵守事項を遵守しなかった場合に懲罰を科することができる旨を、同条2項は、懲罰を 科するに当たっては、反則行為をした被収容者の年齢、心身の状態及び行状、反則行為の性質、軽重、動機及び刑事施設の運営に及ぼした影響、反則行為後におけるその被収容者の態度、受刑者にあっては懲罰がその者の改善更生に及ぼす影響その他の事情を考慮しなければならない旨を、同条3項は、懲罰は、反則行為を抑制するのに必要な限度を超えてはならない旨を、それぞ れ定めているところ、具体的にどのような反則行為に対し、どのような懲罰を科するかは、このような法令の定めの範囲内において、当該施設内の実情に通じた刑事施設の長の合理的な裁量的判断に委ねられているものと解され、その裁量的判断が合理的根拠を欠くなど、著しく妥当性を欠く場合には、刑事施設の長の処分は、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法となると いうべきである。 - 45 -⑵ 当てはめ本件懲罰は、原告が第3区長からのひげそりの指示を拒否したこと(本件拒否行為)が、本件遵守事項等の第4の15「職員に対し、抗弁、無視その他不当な方法で反抗してはならない。」に違反するとの認定及び評価に基づき、行われたものである(乙24)。 しかしながら、上記1⑶において説示したとおり、本件拒否行為には正当な理由があったと認められるから、本件センター長が、本件拒否行為が正当な理由のない「抗弁」又は「反抗」に当たるとし 24)。 しかしながら、上記1⑶において説示したとおり、本件拒否行為には正当な理由があったと認められるから、本件センター長が、本件拒否行為が正当な理由のない「抗弁」又は「反抗」に当たるとして本件遵守事項等の第4の15違反に該当すると評価したことは、合理的根拠を欠いたものといえる。 そして、それにもかかわらず、懲罰の種類の中でも最も重い閉居罰を原告 に科すことは、社会通念に照らし、著しく合理性を欠くといわざるを得ない。 したがって、本件懲罰は、本件センター長の裁量権の範囲を逸脱したものであり、原告に対し職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とされたものというべきであるから、国賠法上、違法である。 これに反する被告の主張は、上記1のとおり、前提において理由がない。 ⑶ 損害上記のとおり、本件懲罰は国賠法上違法であるところ、上記⑵で説示したことに加え、閉居罰は、自弁の物品の使用や書籍の閲覧等の停止等を内容とするものであり、受刑者の自由に対する制約が相応に大きいものであること(刑事収容施設法152条参照)、及び本件懲罰の期間が10日間であるこ とを踏まえると、本件懲罰によって原告が被った精神的損害に係る慰謝料は、15万円と認めるのが相当である。 3 本件裁決について(争点3)⑴ 本件懲罰は、令和4年4月3日、その執行が終了しており、その執行の終了をもって、本件懲罰につき不服を申し立てる利益は消滅したと認められる。 したがって、δ矯正管区長が、同年5月11日に、不服を申し立てる法律 - 46 -上の利益が存在しないとして本件審査申請を却下した本件裁決は、適法である。 ⑵ 原告は、本件懲罰を前提とした優遇区分に基づく優遇措置が令和4年9月30日まで続いていたとして、同日までは本件懲罰 -上の利益が存在しないとして本件審査申請を却下した本件裁決は、適法である。 ⑵ 原告は、本件懲罰を前提とした優遇区分に基づく優遇措置が令和4年9月30日まで続いていたとして、同日までは本件懲罰に係る不服申立ての利益が残存していた旨主張する。 しかし、受刑者が懲罰を受けたことが優遇区分の判断に当たって影響を及ぼし得るとしても、優遇区分の指定又はその指定の変更は評価期間における受刑態度の評価に基づき行うものとされており(刑事収容施設法89条、53条)、刑事施設の長の裁量的判断に委ねられているといえるし、受刑者の優遇措置に関する訓令(乙10)や通達(乙11)においても、懲罰を受け たことによって直ちに特定の優遇区分を指定するものとはされておらず、その指定は複数の評価項目の総合判断によるものとされ、懲罰を科されたことは不利な事情の一つとされているにすぎない。そうすると、懲罰の後の優遇区分の指定の判断において不利な事情として考慮され得るという不利益は、事実上の不利益にとどまるというべきである。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 ⑶ よって、本件裁決につき、国賠法上、違法とはいえない。 4 A病院入院中における措置等(処遇ア~エ)について(争点4)⑴ 処遇アについて原告は、本件センターが、令和2年7月16日、原告に対して講じる必要 がある措置又は遵守事項として原告の主治医から説明を受けたにもかかわらず、原告に対し、歯ブラシの乾燥殺菌用として必要なコップを貸与しなかったこと(処遇ア)が違法である旨主張する。 しかし、本件各証拠(乙34等)によっても、本件センターの職員が歯ブラシの乾燥殺菌用として必要なコップを原告に対して貸与すべきなどとの説 明等をA病院の医師から受けていたにもか 旨主張する。 しかし、本件各証拠(乙34等)によっても、本件センターの職員が歯ブラシの乾燥殺菌用として必要なコップを原告に対して貸与すべきなどとの説 明等をA病院の医師から受けていたにもかかわらず、これに従わなかったと - 47 -いう事実も、当該コップの貸与がされなかったことにより、原告の具体的な権利又は利益が侵害されたという事実も認められない。 したがって、処遇アにつき、国賠法上、違法とはいえない。 ⑵ 処遇イについて原告は、本件センターが、令和2年7月16日、原告に対して講じる必要 がある措置又は遵守事項として原告の主治医から説明を受けたにもかかわらず、原告に対し、転倒防止のために踵付きの履物を貸与しなかったこと(処遇イ)が違法である旨主張する。 確かに、一般に、入院生活において、滑りやすい履物は相当でなく、滑りにくい履物が推奨されており、A病院においても、一般的な注意事項として その旨の説明がされていたものと認められる(乙56、弁論の全趣旨)。 しかし、被告は、本件センターの職員は、入院初日である令和2年7月16日に原告に対して踵付きのスリッパを貸与した旨主張しており、また、証拠(乙57、58)によれば、本件センターは、同年8月3日にA病院の医師から転倒防止のためシューズを原告に使用させるように要請されたことを 受け、同月4日、原告に運動靴を貸与したことが認められるところ、本件各証拠(乙34等)によっても、本件センターの職員が踵付きの履物を原告に貸与すべきなどとの説明等を同月3日より前にA病院の医師から受けていたにもかかわらず、これに従わなかったという事実も、踵付き履物の貸与が一定期間されなかったことにより、原告の具体的な権利又は利益が侵害された という事実も認められない。 したがっ ら受けていたにもかかわらず、これに従わなかったという事実も、踵付き履物の貸与が一定期間されなかったことにより、原告の具体的な権利又は利益が侵害された という事実も認められない。 したがって、処遇イにつき、国賠法上、違法とはいえない。 ⑶ 処遇ウについてア原告は、本件センターが、令和2年7月16日、原告に対して講じる必要がある措置又は遵守事項として原告の主治医から説明を受けたにもかか わらず、原告に対し、頭髪の脱落による食事への混入防止等のために必要 - 48 -な調髪及びタオル等を頭に巻くことを許可しなかった旨主張する。 イ証拠(乙59、60)によれば、次の事実が認められる。 (ア) 原告は、A病院において抗がん剤治療を受けていたところ、令和2年7月30日午後6時頃、本件センターの職員に対し、頭髪の脱毛が多いため、食事の際に頭部にタオルを巻かせてほしい旨の申出をし、本件セ ンターの職員は、これを許可した。 (イ) 本件センターの別の職員は、同日午後8時40分頃、原告に対し、喫食の際は食事への毛髪混入防止のため頭部にタオルを巻くことを許可するが、書面等の作成の際にタオルを頭部に巻くことについては、必要性が認められた場合にその都度許可する旨述べた。原告がその理由を尋ね たのに対し、同職員は、タオルは本来顔や手等を拭く物であり、頭部に巻き付けることは使用目的として不適当であるが、食事の際は抜け落ちた毛髪が食事に混入すると衛生上好ましくないことから、適当な方法が見つかるまでの間はこれを許可する旨説明した。 (ウ) 本件センターの職員は、同日午後8時55分頃、A病院の看護師に対 し、毛髪の落下を防止するための適当な装具の有無を尋ねたところ、同看護師から、頭部に装着する医療用ネットを貸与された。 ウ) 本件センターの職員は、同日午後8時55分頃、A病院の看護師に対 し、毛髪の落下を防止するための適当な装具の有無を尋ねたところ、同看護師から、頭部に装着する医療用ネットを貸与された。 原告は、上記ネットの着用に同意し、同月31日の朝食の際には、同ネットを着用して喫食した。 (エ) 本件センターの職員は、同年8月13日、A病院の医師から原告に対 する調髪の可否について照会されたことなどから、同日午後2時30分頃、同病院の病室において、原告の調髪を実施した。 ウ上記イの本件センターの一連の対応につき、医師の指示に従わなかったものや医療上不適切と認められるものは見当たらない。 その他、本件各証拠によっても、毛髪の脱落に関する本件センターの職 員の対応について、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然 - 49 -とされたと評価されるものはない。 したがって、処遇ウにつき、国賠法上、違法とはいえない。 ⑷ 処遇エについて原告は、A病院入院時に本件センターの職員が自身の足を素手で数回指圧した上、洗浄消毒をしなかった行為があったなどとして、感染症予防につい て相当の対策を講じるべき注意義務への違反が明らかである旨主張する。 この点、証拠(乙90)及び弁論の全趣旨によれば、A病院で勤務していた本件センターの職員が、令和2年7月31日、原告の病室内において、靴を脱いで足を素手で指圧したことが認められる。なお、原告は、当時の原告の病室がクリーンルームと同様の状態であった旨主張するところ、確かに、 原告の病室には空気を循環させるアイソレーターは設置されていたものの、ベッドの周囲をビニールカーテン等で覆うなどの措置はされておらず、通常の病室と同様の設備であったと認められ(乙90)、クリーンルームと の病室には空気を循環させるアイソレーターは設置されていたものの、ベッドの周囲をビニールカーテン等で覆うなどの措置はされておらず、通常の病室と同様の設備であったと認められ(乙90)、クリーンルームと同様の状況であったとは認められない。 そして、本件センターの職員の上記行為は、原告が急性骨髄性白血病患者 であり、感染症予防につき特に注意が必要な患者であったこと及び本件センターがそれを認識していたこと(前提事実⑵ア、乙90)を踏まえると、適切な行為とはいい難いものの、その行為を原因として原告が何らかの感染症に感染したなどの事実は認められず、原告の具体的な権利又は利益が侵害されたとまでは認められない。 したがって、処遇エに関する原告の主張には理由がない。 5 B病院入院中における処遇(処遇オ、カ)について(争点5)⑴ 認定事実証拠(乙63、67、68、70、81、82)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 ア本件センターの担当者は、令和2年8月24日、原告宛ての信書(1通) - 50 -を処理し、同月25日に原告に交付予定としたが、同日に原告に交付することを失念した。同年9月15日、交付の失念が発覚し、同信書が原告に交付された。 本件センターの看守長は、同月17日、B病院に赴き、原告に対し謝罪したところ、原告は、特に不満を述べることはなかった。 イ原告は、令和2年8月27日付けで、本件センター長に対し、余暇時間に閲覧するためとして、①「令和2年7月16日以降に交付された購入及び差入れ書籍」並びに②自弁書籍である「甲の薬は乙の毒」及び「悪徳の輪舞曲」(以下、同2冊を「本件自弁書籍」という。)をB病院で閲覧したいとして、その使用許可の出願をした(乙63。以下「本件出願」と び差入れ書籍」並びに②自弁書籍である「甲の薬は乙の毒」及び「悪徳の輪舞曲」(以下、同2冊を「本件自弁書籍」という。)をB病院で閲覧したいとして、その使用許可の出願をした(乙63。以下「本件出願」とい う。)。 なお、本件出願における「令和2年7月16日以降に交付された購入及び差入れ書籍」に該当するものは、「警視庁公安部・青山望完全黙秘」と題する書籍であり、令和2年7月30日頃に購入され、本件センターの職員が納品後にB病院に持参して原告に確認させ、指印をさせた後、本件 センターに持ち帰り、原告の居室において保管私物として保管されていたものであった(以下、この書籍を「本件購入書籍」という。)。 ウ本件自弁書籍は、本件センターの原告の居室内において、保管私物バッグ内に保管されていたものであった。 エ本件センターでは、規則19条1項及び通達に基づき、被収容者に対し、 被収容者が使用する居室内の保管私物バッグに錠を付けるとともに、保管私物バッグから物品を出し入れする場合以外は、施錠するよう指導していた。 オ本件センター長は、①B病院の病室が狭小であること、②本件センター長が指定する保管設備は備えられておらず常に紛失の可能性があり、原告 が保管私物を自ら管理できる状況にないこと、③本件自弁書籍及び本件購 - 51 -入書籍を原告に所持させる緊急性が認められないこと、④休養とされた原告は安静にすべき立場であり、保管私物を所持させることは相当ではないことなどから、令和2年9月7日、本件出願を認めない旨決定し(以下「本件閲覧不許可処分」という。)、同月8日、原告に告知した(乙63)。 カ原告は、令和2年9月25日付け及び同年10月6日付けで、本件セン ター長に対し、保管私物であった訴訟書類一式、判例 件閲覧不許可処分」という。)、同月8日、原告に告知した(乙63)。 カ原告は、令和2年9月25日付け及び同年10月6日付けで、本件セン ター長に対し、保管私物であった訴訟書類一式、判例六法、国語辞典、「問題演習基本七法2019」、「ステップアップ民事事実認定第2版」、「事例演習民事訴訟法第2版」、「事例から民法を考える」、ノート、筆記用具等の所持の許可を願い出たところ、本件センター長は、同月9日、使用許可を求めるもののうち、「問題演習基本七法2019」、「ステップア ップ民事事実認定第2版」、「事例演習民事訴訟法第2版」及び「事例から民法を考える」については不許可とし、その他の物品については、係属中の民事訴訟の終結又は訴訟代理人選任など、必要な理由が消失するまでの間、使用を認め、発信に必要な物品については、その後においても引き続き使用を認める旨決定し、同月10日、原告に告知した。 原告は、令和2年10月13日付けで、本件センター長に対し、改めて「ステップアップ民事事実認定第2版」及び「事例演習民事訴訟法第2版」の2冊の所持の許可を出願したところ、本件センター長は、訴訟書類作成の参考となる箇所があるとする本人の必要性及び現に本人を原告とする訴訟が係属中であることなどを総合勘案し、同月16日、これを許可した。 (乙68)⑵ 本件閲覧不許可処分(処遇オ)についてア判断枠組み刑事収容施設法は、自弁の書籍等を閲覧する権利が憲法上保障されたものであることに鑑み、被収容者が自弁の書籍等を閲覧することは、同法第 2編第2章第8節及び第12節の規定による場合のほか、これを禁止し、 - 52 -又は制限してはならない旨定め(同法69条)、原則として、自弁書籍等の閲覧の自由を保障するものとしつつ 第 2編第2章第8節及び第12節の規定による場合のほか、これを禁止し、 - 52 -又は制限してはならない旨定め(同法69条)、原則として、自弁書籍等の閲覧の自由を保障するものとしつつ、自弁の書籍等の閲覧を禁止又は制限することができる場合の要件を定めている(同法70条、71条、151条1項4号、3項3号等)。そして、被収容者が刑事施設外の医療施設において入院した場合においても、被収容者が自弁の書籍等を閲覧する権 利が保障されるべきものであることは、被収容者が刑事施設に収容されている場合と同様である。 もっとも、被収容者が自弁の書籍等を閲覧するためには、同法45条及び46条の規定するところにより、その書籍等が刑事施設内に受け入れられることが前提であり、刑事施設に受け入れられた自弁の書籍等は、同法 47条1項により被収容者に引き渡され、これを閲覧することができることになるのであり、また、被収容者に引き渡された書籍等は、保管私物として、同法48条の規定が適用されることになる。すなわち、ここで保障されているのは、刑事施設内に受け入れられた自弁の書籍等を閲覧する自由であり、刑事施設がこれを禁止又は制限することができる要件が限定さ れているというものである。 そして、刑事収容施設法その他の法令の規定をみても、刑事施設外の医療施設に入院中の被収容者が、刑事施設に対し、刑事施設の居室内に保管している自弁の書籍等の私物を上記医療施設まで運搬するよう請求することができる旨の規定も、刑事施設において、被収容者が閲覧を希望する 自弁の書籍等を刑事施設の居室内から上記医療施設まで運搬する義務を負う旨の規定も見当たらない。 そうすると、刑事施設外の医療施設に入院中の被収容者が刑事施設の居室内に保管している自弁の書籍等の閲 自弁の書籍等を刑事施設の居室内から上記医療施設まで運搬する義務を負う旨の規定も見当たらない。 そうすると、刑事施設外の医療施設に入院中の被収容者が刑事施設の居室内に保管している自弁の書籍等の閲覧を希望した場合には、同法69条等の規定をそのまま適用することはできないといわざるを得ないのであ って、刑事施設の長は、保管私物の保管方法について、刑事施設の管理運 - 53 -営上必要な制限をすることができること(同法48条1項)をも勘案すると、かかる希望を認めるか否かについては、被収容者の入院治療の状況に加え、保管設備等の状況、勤務職員の体制、上記希望を認める必要性・緊急性等を踏まえた刑事施設の長の裁量に委ねられていると解される。 イ当てはめ これを本件閲覧不許可処分についてみると、本件出願時、本件自弁書籍は、本件センターの原告の居室内の保管私物バッグ内に保管されていたものであり(上記⑴ウ)、本件出願を認めるか否かについては、上記アのような刑事施設の長の裁量に委ねられているものである。 そして、原告は、令和2年7月13日、急性骨髄性白血病の診断を受け、 その後、本件センターから重症指定を受け、治療のためにB病院に入院していたものであり(前提事実⑵ア及びイ)、基本的に、治療に専念し、安静にすべき立場にあった。また、本件自弁書籍は、本件センターの原告の居室内において保管私物バッグ内に保管されていたものであった(上記⑴ウ)。そして、本件センターにおいては、保管私物の管理の観点から、被 収容者に対し、被収容者が使用する居室内の保管私物バッグに錠を付けること等を指導するとともに、外部医療機関に入院中の被収容者については、官給品を使用させる取扱いとして、原則として、自弁書籍等を含めた自弁物品の使用は認めていなかった 室内の保管私物バッグに錠を付けること等を指導するとともに、外部医療機関に入院中の被収容者については、官給品を使用させる取扱いとして、原則として、自弁書籍等を含めた自弁物品の使用は認めていなかったところ(前記⑴エ、弁論の全趣旨)、本件センターには、令和4年時点において1200人以上が収容されており (乙89、92)、本件閲覧不許可処分当時もこれに匹敵する規模の人数が収容されていたことがうかがわれるのであって、限られた人員の下で多数の被収容者の要望を公平に取り扱う必要があることからすると、必要性・緊急性が高いとはいえない被収容者の要望について応じないとしても、やむを得ないといわざるを得ない。 これらの事情を踏まえると、特に緊急の必要性が認められない場合にま - 54 -で、本件センターの職員が原告の保管私物バッグを開披してその中から原告の私物を取り出すことはしないとの取扱いをすることは、特に不合理なものとはいえない。しかるに、本件自弁書籍は、原告が繰り返し所持の許可を求めた「ステップアップ民事事実認定第2版」及び「事例演習民事訴訟法第2版」とは違い、訴訟書類作成の参考となるなどの事情はうかがわ れないのであって、上記のように重症指定を受け、入院治療中の原告に所持させる緊急性があったとは認められない。 確かに、B病院の病室が3冊の書籍を置くことができないほど狭小とは考えにくく、本件センター長が本件出願を認めないとする理由(上記⑴オ)の中には相当性について疑問のあるものもないとはいえないが、上記のと おり検討したところに照らすと、本件閲覧不許可処分について、本件センター長がその裁量を逸脱し又は濫用したものということはできないのであって、これに反する原告の主張は、採用することができない。 なお、本件センターは ろに照らすと、本件閲覧不許可処分について、本件センター長がその裁量を逸脱し又は濫用したものということはできないのであって、これに反する原告の主張は、採用することができない。 なお、本件センターは、原告に対して1回につき3冊までの備付書籍の貸出しを行っているが(乙63、85~88)、官物である備付書籍の貸 出しの際には、原告の保管私物バッグの開披という過程が生じないし、刑事収容施設法48条の適用もないから、本件自弁書籍と同列に論じることはできず、上記判断を左右するものとはいえない。 よって、本件閲覧不許可処分は、適法である。 ⑶ 本件信書の差止め(処遇カ)について ア上記⑴アによれば、本件センターの職員の落ち度によって、原告宛ての信書の交付が21日ほど遅れたことが認められる。 原告は、同信書の交付が遅れたことによって、別件の民事訴訟手続において期日延長申立書を提出せざるを得なくなったなどと主張するが、そのような事実を裏付ける的確な証拠はなく(なお、原告は令和2年9月19 日までB病院において入院中であり、同信書の交付の遅れ如何にかかわら - 55 -ず、訴訟準備が容易ではなかったと認められる。前提事実⑵イ)、また、本件各証拠によっても、同信書の交付が遅れたことによって、原告に何らかの経済的損害や、金銭賠償を要するほどの精神的損害が生じたとまでは認められない。 イよって、処遇カに関する原告の主張には理由がない。 6 B病院退院後の処遇(処遇キ)について(争点6)⑴ 刻み食の対応について原告は、本件センターは、原告につき、B病院を退院後、刻み食が必要である旨の説明をB病院の医師から受けていたにもかかわらず、原告に対して刻み食を提供しなかった旨主張する。 しかし、本件各証拠によっても、 ンターは、原告につき、B病院を退院後、刻み食が必要である旨の説明をB病院の医師から受けていたにもかかわらず、原告に対して刻み食を提供しなかった旨主張する。 しかし、本件各証拠によっても、本件センターがB病院の医師から上記のような説明を受けたとの事実を認めることはできないし、刻み食の提供がなかったことによって原告にどのような不利益等が生じたのかも不明であり、原告の具体的な権利又は利益の侵害があったとも認められない。 よって、原告の上記主張には理由がない。 ⑵ 横臥の対応について原告は、本件センターは、原告につき、B病院を退院後、横臥の必要がない旨の説明をB病院の医師から受けていたにもかかわらず、原告に対して横臥を義務付けた旨主張する。 しかし、本件各証拠によっても、本件センターがB病院の医師から上記の ような説明を受けたとの事実を認めることはできず、原告の上記主張には理由がない。 ⑶ 採血及びその検査結果の取扱いについて原告は、本件センターが、令和3年3月30日に原告の同意を得ずに血球の血液像の検査に要する分の血液を採取した上で、血液検体を目的範囲外で ある白血球の血液像の検査に供し、同検査結果を無断でB病院に提供した旨 - 56 -主張する。 しかし、同日の診療録(乙97)には「健康診断と一緒なら採血(外医依頼)とってもいいと発言あり」との記載があり、採血をすること自体について原告の同意が全くなかったわけではない(なお、原告は、かかる発言をしたことを否認するが、にわかに採用することができない。)。 しかも、原告は、急性骨髄性白血病という重大な疾病に罹患して入退院を繰り返していたこと(前提事実⑵ア及びイ)、令和3年3月12日のB病院退院時、原告の血球がまだ少ないため週1回程度血液検査 しかも、原告は、急性骨髄性白血病という重大な疾病に罹患して入退院を繰り返していたこと(前提事実⑵ア及びイ)、令和3年3月12日のB病院退院時、原告の血球がまだ少ないため週1回程度血液検査を行い、その結果を回送するよう、本件センターの担当医は同病院の医師から依頼されていたこと(乙35)を勘案すると、刑事収容施設法62条1項の趣旨に照らし、 上記検査結果をB病院に提供することは医療上相当な措置であったといえるのであって、上記採血及び検査結果の提供が違法とはいえない。 したがって、原告の上記主張には理由がない。 ⑷ 薬の服用について原告は、令和3年3月16日から同年4月11日までの間、本件センター が原告に対して服薬の必要がなくなった処方薬であるレボフロキサシンの服用を漫然と指示し続けた旨主張する。 しかし、同年3月12日の診療録(乙97)によれば、レボフロキサシンは、B病院入院時から原告に対して処方されていた薬であると認められるところ、同月16日の時点でその服薬の必要性がなかったことをうかがわせる 的確な証拠はない。 したがって、原告の上記主張には理由がない。 ⑸ 小括以上のとおり、処遇キにつき、国賠法上、違法とはいえない。 7 主食区分の指定等(処遇ク)について(争点7) ⑴ 認定事実 - 57 -証拠(乙75、76、91、96)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア原告は、令和3年10月5日から同年11月17日までの間、金属製品製造等作業に指定されていた。原告は、上記期間中、金属製品製造等作業として、メンテホールシール巻き作業、グロメット組付け作業等の作業を 担当していたところ、これらは、原則として座業であった。 イ原告は、令和3年10月5日から同年1 期間中、金属製品製造等作業として、メンテホールシール巻き作業、グロメット組付け作業等の作業を 担当していたところ、これらは、原則として座業であった。 イ原告は、令和3年10月5日から同年11月11日までの間、上記アの作業に加え、時折、作業が終了していた材料を回収し、指定の場所に運搬する作業をしていたが、原告が運搬係に指定されていたわけではなく、また、立位作業の割合が多く占めることもなかった。 上記期間の原告の昇等区分はB作業であり、主食区分はB食であった。 ウその後、令和3年11月11日付けで、原告の作業職種に運搬係が追加指定され、原告は、翌12日から同月17日までの間、上記アの作業に加え、運搬係の作業にも従事していた。 これにより、原告は、同月12日から同月17日までの間、金属製品製 造等作業(B作業)及び運搬係(A作業)の2職種を指定された状態となったが、運搬係が主たる作業であったことから、上記期間の原告の昇等区分は、A作業と指定された。 そして、本件センターは、原告が立位の作業が中心となる運搬係に指定されたことに伴い、同月12日の昼食から原告の主食区分をB食からA食 へと変更した。 ⑵ 主食区分の指定について原告は、令和3年10月5日から同年11月11日までの間につき、原告の主食区分がB食とされていたことが違法である旨主張するが、上記⑴ア及びイのとおり、同期間の原告の作業は座業が中心であり、原告が「立位の作 業が一週間につきおおむね15時間以上のもの又はこれに相当する内容の作 - 58 -業に従事するもの」(前提事実⑸ア)に該当するとは認められないから、原告の主食区分がB食と指定されていたことは、違法とはいえない。 ⑶ 昇等区分の指定について原告は、令和3年10月5日から -業に従事するもの」(前提事実⑸ア)に該当するとは認められないから、原告の主食区分がB食と指定されていたことは、違法とはいえない。 ⑶ 昇等区分の指定について原告は、令和3年10月5日から同年11月17日までの間、原告が昇等区分のA作業に当たる運搬係及び衛生係の作業に従事していたにもかかわら ず、B作業に指定されていたことが違法である旨主張するが、原告は、上記⑴ア及びイのとおり、同年10月5日から同年11月11日まではB作業、同月12日から同月17日まではA作業に指定されており、原告の主張は一部前提を欠くものである上、その指定に関し、違法な点は認められない。 ⑷ 小括 よって、処遇クにつき、違法とはいえない。 8 原告に対するその他の医療上の措置等(処遇ケ)について(争点8)⑴ しもやけに対する措置についてア認定事実証拠(乙64、65、71、97)及び弁論の全趣旨によれば、次の事 実が認められる。 (ア) 令和2年12月17日当時、原告は、急性骨髄性白血病の薬を処方され、休養加療中であったところ、本件センター内科医師は、原告のしもやけが悪化することで何らかの感染症に感染することを防止するため、原告に対して温あん法(湯たんぽを使用して患部を温める方法)の実施 が望ましいとの所見を示した。これを受け、本件センターは、同日、原告に対し、湯たんぽの使用を認めるとともに、靴下の二重着用を認めた。 (イ) 原告は、令和3年4月28日、B病院において採血及び骨髄穿刺検査を受けたところ、同病院医師から、数値に異常は認められず、入院前と同じように施設における集団生活に戻って問題ない旨及び今後の定期的 な採血、通院等のフォローが不要である旨の所見が示された。 - 59 -本件センターは、同年5 常は認められず、入院前と同じように施設における集団生活に戻って問題ない旨及び今後の定期的 な採血、通院等のフォローが不要である旨の所見が示された。 - 59 -本件センターは、同年5月6日、上記所見を踏まえ、原告の休養を解除した。 (ウ) 原告は、令和3年11月29日、しもやけの診察を希望し、同年12月6日、本件センター内科医師の診察を受けたところ、同医師から足趾凍瘡との所見を示され、内服薬と外用薬を処方された。原告は、手足の しもやけの悪化を理由に、令和4年1月4日、本件センター内科医師の診察を受けたところ、内服薬の処方量が増量された。また、原告は、同月17日にも本件センター内科医師の診察を受け、同日の診療録に「両手指足趾凍瘡不変」と記載された。 原告は、手のしもやけが悪化しているとして、同月20日、本件セン ター皮膚科医師の診察を受けたところ、同医師は、手の凍瘡との所見を示し、外用薬を処方するとともに、原告に対し、悪化時は再診するよう伝えた。その後、原告は、同月25日、手指の痛みが強いとして診察を受けたところ、両手指の発赤、腫脹が確認されるなどした。 なお、令和3年11月29日から令和4年1月25日までの間におい て、医師から、原告に対して温あん法を実施すること、靴下を二重に着用すること、又は工場出業時及び運動時に手袋を着用することが望ましい旨の所見が示されたことはなかった。 イ検討原告は、本件センターは、令和2年12月17日から同月22日までの 間、原告に対し、しもやけ悪化による感染症予防のため、温あん法を実施した上、靴下を二重に着用することも認めていた一方で、令和3年11月29日から令和4年1月25日までの間は、原告に対し、上記措置を講じず、かつ、工場出業時及び運動時に手袋の着 のため、温あん法を実施した上、靴下を二重に着用することも認めていた一方で、令和3年11月29日から令和4年1月25日までの間は、原告に対し、上記措置を講じず、かつ、工場出業時及び運動時に手袋の着用を認めなかったことから、原告のしもやけが悪化し、もって刑事収容施設法56条の趣旨に基づく疾 病の予防措置を怠った旨主張する。 - 60 -確かに、上記ア(ア)から(ウ)のとおり、令和2年12月17日に認められていた湯たんぽの使用及び靴下の二重着用の措置が、令和3年11月29日から令和4年1月25日までの間は執られなかったことが認められる。 しかし、①令和2年12月17日当時の医師の所見は、感染症の感染防止の観点から温あん法の実施が望ましいというものにすぎなかったこと (上記ア(ア))、②同日当時、原告は急性骨髄性白血病により休養加療中であり、感染症の感染防止につき配慮の要請が大きかった一方、令和3年11月当時は、休養が解除されていたこと(上記ア(ア)、(イ))、③同月29日から令和4年1月25日までの間において、医師から原告に対して温あん法を実施すること、靴下を二重に着用すること、又は工場出業時及び運 動時に手袋を着用することが望ましい旨の所見が示されたことはなかったこと(上記ア(ウ))からすれば、本件センターにおいて、上記期間中に、原告に対して湯たんぽを使用させる、靴下を二重に着用させる、又は工場出業時及び運動時に手袋の着用させるなどの職務上の注意義務があったということはできない。 したがって、本件センターが、上記期間中、原告に対して上記各措置を講じなかったことにつき、国賠法上、違法とはいえない。 ⑵ 原告を病棟の単独室に収容したことについてア認定事実証拠(乙79、97)及び弁論の全趣旨によれば 記期間中、原告に対して上記各措置を講じなかったことにつき、国賠法上、違法とはいえない。 ⑵ 原告を病棟の単独室に収容したことについてア認定事実証拠(乙79、97)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 (ア) 本件センター長は、令和3年3月8日、新型コロナウイルス感染症への対策等について定めた「新型コロナウイルス感染対策マニュアル」(以下「本件マニュアル」という。乙79)を策定した。 本件マニュアルは、「感染が疑われる者」を「息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある者、発熱や 咳など比較的軽い風邪の症状が続いている者で医師が新型コロナウイル - 61 -ス感染の疑いがあると判断した者、その他医師が総合的に判断した結果、ウイルス検査受検が必要と判断し、その結果が確定するまでの間の者」と定義した上で、被収容者につき「感染が疑われる者」が発生した場合は、病棟3階単独室に収容する旨規定している。 (イ) 原告は、令和4年1月25日午後7時30分頃、37.8度の発熱が あり、新型コロナウイルス感染症への感染が疑われたため、本件マニュアルに基づき、本件センターの病棟3階の単独室に収容された。 同日午後7時43分頃、原告に対し、新型コロナウイルス感染症のラピッドテスト(抗原検査)が実施された。同日午後7時50分頃の原告の体温は、39.3度であった。同日午後7時58分頃、上記抗原検査に つき、陰性の結果が出た。 (ウ) 原告の令和4年1月26日午前7時頃の体温は、37.7度であったが、翌27日には、再び39度台の発熱が確認され、採血検査が実施された。 原告は、同月31日、体温が36.1度に下がり、全身状態に異常は ないことが確認され、上記(イ)の単独 度であったが、翌27日には、再び39度台の発熱が確認され、採血検査が実施された。 原告は、同月31日、体温が36.1度に下がり、全身状態に異常は ないことが確認され、上記(イ)の単独室に収容する措置が解除された。 イ検討刑事施設においては、被収容者の健康及び刑事施設内の衛生を保持するため、適切な保健衛生上の措置を講ずるものとされ(刑事収容施設法56条参照)、その長は、刑事施設内における感染症の発生を予防し、又はそ のまん延を防止するために必要な医療上の措置を執るほか、隔離等の措置を執るものとされているところ(同法64条)、本件マニュアルにおける新型コロナウイルスの「感染が疑われる者」の定義及び本件センターにおいて「感染が疑われる者」が発生した場合の対応策(上記ア(ア))は、合理的なものといえる。そして、上記アによれば、原告が令和4年1月25日 午後7時30分頃に発熱した時点において、原告が本件マニュアルの「感 - 62 -染が疑われる者」に該当すると判断し、本件センターの病棟3階の単独室に収容した措置は、本件マニュアルに沿うものであるとともに、同法64条の規定に照らしても、相当な措置であったということができる。 しかも、同日の検査結果は、飽くまでラピッドテスト(抗原検査)の結果にすぎず、原告が新型コロナウイルス感染症につき陰性であると確定さ せるものとはいえないこと、翌日以降も原告には37.5度以上の発熱が継続して確認されていたこと(上記ア(イ)及び(ウ))に照らすと、同月31日まで同単独室への収容を継続したことも、相当な措置であったといえる。 したがって、本件センターが、同月25日から同月31日までの間、原告を上記単独室に収容した措置につき、国賠法上、違法とはいえない。 ⑶ 小括 継続したことも、相当な措置であったといえる。 したがって、本件センターが、同月25日から同月31日までの間、原告を上記単独室に収容した措置につき、国賠法上、違法とはいえない。 ⑶ 小括よって、処遇ケに関する原告の主張には理由がない。 9 原告をカメラが設置された居室に収容した措置等(処遇コ)について(争点9)⑴ 認定事実 証拠(乙41、42、45~48)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア本件センターは、原告が本件センターに入所した令和2年▲月▲日以降、本件センターの措置・処遇について、自己を正当化し、事実をわい曲、誇張した申出を累行し、職員の揚げ足を取ろうとする動静が認められ、本件 センターの規律のかく乱や自己の処遇を緩和しようとする傾向が顕著に認められることなどを理由として、同年8月24日付けで原告を要視察者(好訴性)に指定した。 イ本件センターの職員は、令和4年2月14日、原告から発信の申請があった実母宛ての信書を検査したところ、「懲戒請求」と題する書面(本件 書面)が同封されており、同書面には、複数名の職員の名前や特定の職員 - 63 -の日常生活に関する情報等が記載され、また、それらの個人情報を漏洩した職員について懲戒請求をする旨の記載がされていた。これらの職員の氏名又は個人情報は、本件センターでは一般に開示していないものであり、本件センターの被収容者が通常は知ることができない情報であった。 ウ本件センターは、原告が通常は知ることのできない職員の氏名等の個人 情報を職員から聞き出す等の不正な手段で入手して、これを利用して職員個人を攻撃し、自身の処遇の緩和を図ろうとする意図が認められ、原告の動静を綿密に視察する必要性があると判断し、令和4年2月15日、原 情報を職員から聞き出す等の不正な手段で入手して、これを利用して職員個人を攻撃し、自身の処遇の緩和を図ろうとする意図が認められ、原告の動静を綿密に視察する必要性があると判断し、令和4年2月15日、原告を第4区1階B棟103室(カメラ室)に転室させた。 エまた、本件センターの副看守長及び看守部長は、原告が本件書面に記載 された職員以外にも職員の氏名や個人情報等を入手していないかを調査するため、刑事収容施設法75条1項に基づき、原告の転室前の居室であった第4区D棟第115室及び原告の保管私物の検査を実施した(本件所持品検査)。本件所持品検査の結果、原告の私物のノートや便せんにも複数名の職員の名前等が記載されている状況が認められた。 オ本件センターは、令和4年2月16日、処遇審査会に付議した上、原告を要視察者(好訴性)よりも注意して視察を必要とする要注意者(好訴性)に指定変更した。 カさらに、原告を従前のとおり工場に出業させ、不特定多数の職員及び受刑者と接触させると、原告がどの職員から情報を得ているか等について原 告と関係者による口裏合わせなどの隠ぺい工作が行われ事案解明の障害になるおそれがあるとして、全容を把握し、事案の詳細が判明するまでの間、原告を昼夜居室処遇とすることとし(本件昼夜居室処遇)、令和4年2月21日、原告に対し、その旨を告知した上で、第4区1階B棟103室(カメラ室)から第3区1階B棟120室(カメラ室)に転室させた。本件昼 夜居室処遇は、同年▲月▲日に原告がβ刑務所に移送されるまで継続され - 64 -た。 ⑵ 検討ア本件所持品検査について(ア) 刑事収容施設法75条は、刑務官は、刑事施設の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、被収容者について、その身体、着衣、所 - 64 -た。 ⑵ 検討ア本件所持品検査について(ア) 刑事収容施設法75条は、刑務官は、刑事施設の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、被収容者について、その身体、着衣、所 持品及び居室を検査するとともに、その所持品を取り上げて一時保管をすることができる旨規定しているところ、刑事施設の規律及び秩序を維持するために検査や一時保管の必要があるか否かの判断は、刑事施設内の実情に通暁し、直接その衝に当たる刑務官の合理的な裁量的判断に委ねられていると解される。 (イ) 令和4年2月14日、原告が通常は知ることができない本件センターの職員の名前や特定の職員の日常生活に関する情報等を入手していることが判明したところ(上記⑴イ)、被収容者が刑事施設の職員の個人情報等を入手すると、当該被収容者が、当該個人情報を利用し、当該職員個人を攻撃又は籠絡するなどして、自身の処遇の緩和を図るなどの事態 が生じる可能性があり、刑事施設の規律及び秩序の維持に支障を生じさせるおそれがあるといえる。 したがって、本件書面に記載されていた情報の他にも原告が職員の個人情報を入手していないか否かを確認するため、所持品検査を実施することは、刑事施設の規律及び秩序の維持の観点から必要かつ相当なもの ということができる(なお、本件所持品検査の結果、原告の私物のノートや便せんにも複数名の職員の名前等が記載されている状況が認められたのは、上記⑴エのとおりである。)。 よって、本件所持品検査につき、本件センターの副看守長及び看守部長がその裁量権の範囲を逸脱又は濫用したとはいえないから、本件所持 品検査につき、国賠法上、違法とはいえない。 - 65 -イカメラ室への収容及び本件昼夜居室処遇について(ア) 刑事収容施設法 権の範囲を逸脱又は濫用したとはいえないから、本件所持 品検査につき、国賠法上、違法とはいえない。 - 65 -イカメラ室への収容及び本件昼夜居室処遇について(ア) 刑事収容施設法は、被収容者につき、性別、受刑者又は未決拘禁者等の別、懲役受刑者、禁錮受刑者及び拘留受刑者の別に従い、それぞれ互いに分離する旨を定めるが(同法4条1項)、その居室の指定に関しては、適当と定める場合に居室外に限り刑種の別による分離をしないこと ができる旨の定め(同法4条3項)や、受刑者の隔離(同法76条)、保護室への収容(同法79条)及び懲罰としての閉居罰(同法151条1項6号、152条)等の定めを置くほかは、定めを置いていないのであって、刑事施設内における受刑者の居室の指定は、前記のような定めを除いては、刑事施設の実情に通暁する刑事施設の長の合理的な裁量的 判断に委ねられていると解される。 そして、受刑者は、刑の執行のために刑事施設に拘置されており(同法2条4号~6号)、刑事施設の規律及び秩序は適正に維持されなければならないこと(同法73条1項)からすると、刑事施設内において、これらのために必要かつ相当な限度において、居室を指定され、監視又 は観察の対象となることを基本的に受忍すべき立場にあり、そのために受刑者のプライバシーが一定程度制限されることはやむを得ないと解される。しかも、刑事収容施設法がカメラによる居室内の監視を禁止又は制限する旨の規定を置いていないこと、居室内の動静を監視するためにカメラを設置することが刑務官による居室内の検査や刑事施設の職員に よる巡回視察を補完するものとして必要かつ合理的な手段であるといえることからすれば、同法は、刑事施設の規律及び秩序を維持するためにカメラ室に被収容者を収容すること 内の検査や刑事施設の職員に よる巡回視察を補完するものとして必要かつ合理的な手段であるといえることからすれば、同法は、刑事施設の規律及び秩序を維持するためにカメラ室に被収容者を収容することを一律に禁止しているものではなく、その収容の判断について、刑事施設の長の合理的な裁量的判断に委ねているものと解するのが相当である。 (イ) これを本件についてみると、令和4年2月14日、原告が複数名の本 - 66 -件センターの職員の名前、特定の職員の日常生活に関する情報等、通常では知ることができない職員の個人情報を入手していたことが判明したところ(上記⑴イ)、被収容者が刑事施設の職員の個人情報等を入手した場合、当該被収容者が当該個人情報を利用し、当該職員個人を攻撃又は籠絡するなどして、自身の処遇の緩和を図るなどの事態が生じる可能 性があると認められるから、上記の事態は、刑事施設の規律及び秩序の維持の観点から看過し難いものであったといえる。 したがって、本件センター長が、原告が当該個人情報を入手した経緯、当該職員との関係、再度個人情報の漏洩の事態が発生する兆候の有無等について調査するため、継続的かつ緻密に原告の動静を観察して記録し、 調査する必要があると判断して、原告をカメラ室に収容したことは、不合理なものとはいえない。 また、原告が個人情報を入手した経緯に関与した職員又は受刑者と接触すると、口裏合わせ等の隠ぺい工作が行われるなどして、事案の解明の障害となり得るから、不特定多数の職員及び受刑者との接触を避ける ため、原告を昼夜居室処遇とする必要があることからすると、本件センター長が本件昼夜居室処遇を行ったことについても不合理なものとはいえない。なお、原告は、昼夜居室処遇を実施するか否かの判断において、刑事施 原告を昼夜居室処遇とする必要があることからすると、本件センター長が本件昼夜居室処遇を行ったことについても不合理なものとはいえない。なお、原告は、昼夜居室処遇を実施するか否かの判断において、刑事施設の職員との接触について考慮することは違法な他事考慮である旨主張するが、昼夜居室処遇を行うか否かは、刑事施設の実情に通暁す る刑事施設の長が、個々の受刑者の性状、処遇状況、受刑者と刑事施設職員との関係等の様々な事情を総合的に考慮した上で、その合理的な裁量的判断によるべきものであって、当該受刑者と刑事施設の職員との接触について考慮してはならないという理由はない。原告の上記主張には理由がない。 さらに、カメラ室への収容及び本件昼夜居室処遇は、原告がβ刑務所 - 67 -に移送される令和4年▲月▲日まで継続していたものであるが(上記⑴カ)、その間、上記の個人情報の漏洩に関する事案が解明されるなどして、カメラ室へ収容する必要性や本件昼夜居室処遇を継続する必要性がなくなったという事情は見当たらないのであって、同日までカメラ室への収容及び本件昼夜居室処遇を継続したことが不合理なものということ はできない。 したがって、原告をカメラ室に収容したこと及び本件昼夜居室処遇について、国賠法上、違法とはいえない。 ⑶ 小括よって、処遇コに関する原告の主張には理由がない。 10 本件措置以降のひげそりに関する措置(処遇サ)について(争点10)⑴ 原告は、本件措置後も、本件センターが原告に対して電池式かみそりの使用を「強要」又は「指示」した旨主張するものの、当該「強要」又は「指示」の具体的な内容については主張立証がない。 ⑵ よって、本件措置以降のひげそりに関する措置(処遇サ)につき、国賠法 上、違法とはいえない 「指示」した旨主張するものの、当該「強要」又は「指示」の具体的な内容については主張立証がない。 ⑵ よって、本件措置以降のひげそりに関する措置(処遇サ)につき、国賠法 上、違法とはいえない。 11 優遇区分に関する措置(処遇シ)について(争点11)⑴ 原告は、本件センターが、令和3年4月1日から同月10日の間に、違法な本件懲罰の法律効果が及んだ状態で優遇区分の指定処分を行い、同月1日から同年9月30日の間、不適切な優遇区分で処遇したことが違法である旨 主張する。 ⑵ しかし、上記3⑵において説示したとおり、受刑者が懲罰を受けたことが優遇区分の判断に当たって影響を及ぼし得るとしても、優遇区分の指定又はその指定の変更は刑事施設の長の裁量的判断に委ねられているものであり、懲罰を受けたことによって直ちに特定の優遇区分を指定するものとはされて おらず、その指定は、複数の評価項目の総合判断によることとされており、 - 68 -懲罰を科されたことは不利な事情の一つとされているにすぎない。 そして、本件各証拠によっても、原告について、本件懲罰を受けなければ、より有利な優遇区分の指定がされたという事実を認めることはできない。また、そもそも優遇措置は、受刑者に改善更生の意欲を喚起させるべく、物品の貸与・支給の範囲、物品の自弁の許可範囲、面会及び信書の発受に関する 管理運営上の制限事項の範囲等について、優遇区分に応じて恩恵的・優遇的な措置を執ることを可能とした制度であり、権利的ではない事項に係る優遇を設けたものにすぎないところ(乙10、11、弁論の全趣旨)、原告は、上記⑴の期間、本件センターが指定した優遇区分に伴って具体的にどのような原告の権利又は利益が侵害されたのかについて具体的な主張立証を行って おらず、この点 10、11、弁論の全趣旨)、原告は、上記⑴の期間、本件センターが指定した優遇区分に伴って具体的にどのような原告の権利又は利益が侵害されたのかについて具体的な主張立証を行って おらず、この点においても、原告の主張には理由がない。 ⑶ よって、優遇区分の指定(処遇シ)につき、国賠法上、違法とはいえない。 12 弁護士からの信書に関する措置(処遇ス)について(争点12)⑴ 認定事実証拠(乙51、52、89、93、94)及び弁論の全趣旨によれば、次 の事実が認められる。 ア令和4年4月16日(土曜日)、原告宛ての郵便物(以下「本件差入物品」という。)が本件センターに郵送された。 本件センターでは、被収容者宛ての信書、電報及びレタックスが届いた場合は、処遇本部に回送し、処理を依頼することとされ、また、休日に小 包等の荷物が郵送された場合は、同日の当直勤務担当職員が勤務終了時に会計課領置係に引き継ぎ、翌日が休日の場合は同日の当直勤務担当職員に引き継ぐこととされていた。 本件差入物品は、小包等の荷物として処理され、上記取扱いに従い、同月17日(日曜日)、同月16日の当直勤務担当職員から同月17日の当 直勤務担当職員に引き継がれた後、同月18日(月曜日)、同担当職員か - 69 -ら会計課職員に引き継がれた。 イその後、会計課職員は、本件差入物品を開封し、所定の調査を行ったところ、本件差入物品は、代理人のE弁護士を差入人とするものであり、その内容は、①「ご連絡」、②「保有個人情報開示決定等の期限の延長について(通知)」、③「保有個人情報開示請求について(求補正)」、④「懲 罰審査会の開催等に関する通知書」、⑤「閉居罰重罰者の心得(写し)」、⑥「昼夜居室棟における生活の心得(写し)」であることが確認され 知)」、③「保有個人情報開示請求について(求補正)」、④「懲 罰審査会の開催等に関する通知書」、⑤「閉居罰重罰者の心得(写し)」、⑥「昼夜居室棟における生活の心得(写し)」であることが確認された。 会計課職員は、本件差入物品が信書に該当するか否かにつき、担当部署に照会したところ、当該担当部署は、同月20日、本件差入物品は信書に該当しないとの判断を示した。 ウ本件差入物品は、同月21日に原告に交付された。 エ原告は、同月22日、本件差入物品を差し入れた弁護士と面会をした。 オ当時、本件センターには、1200人以上の者が収容されており、本件センターの職員は、執務外の土曜日及び日曜日に届いたものも含め、送付された郵便物等を順番に検査する必要があった。 ⑵ 検討原告は、本件差入物品は信書として処理されるべきであり、これが信書として適切に処理されていれば、令和4年4月21日よりも前に本件差入物品の交付を受けることができたなどとして、処遇スにより、同月22日の弁護士との面会に係る事前準備の時間を奪われたなどと主張する。 しかしながら、上記⑴イ及びウのとおり、本件差入物品が本件センターに郵送されたのは同月16日(土曜日)であり、本件差入物品が信書に該当するか否かについて本件センターにおいて検討されたのは同月18日(月曜日)以降であるところ、当時、本件センターには、1200人以上の者が収容されており、本件センターの職員は、執務外の土曜日及び日曜日に届いたもの も含め、送付された郵便物等を順番に検査する必要があったのであって(上 - 70 -記⑴オ)、本件各証拠を精査しても、仮に、会計課から照会を受けた担当部署において本件差入物品が信書に該当すると判断していれば、本件差入物品が同月21日よりも前に原 たのであって(上 - 70 -記⑴オ)、本件各証拠を精査しても、仮に、会計課から照会を受けた担当部署において本件差入物品が信書に該当すると判断していれば、本件差入物品が同月21日よりも前に原告に交付された蓋然性が高かったとは認められない。 したがって、本件差入物品が信書として処理されていれば、同月21日よ りも前に原告が交付を受けることができたという前提が認められないから、本件差入物品が信書として処理されるべきであったか否かを検討するまでもなく、処遇スに関する原告の上記主張に理由がないことは明らかである。 13 本件センターの医師が抗原回避措置を講じる必要性を示さなかったことについて(予備的請求)(争点13) ⑴ 原告は、本件センターの皮膚科医師は、原告を診察した令和3年11月25日の時点で、原告に金属アレルギー反応による症状が生じていたことを把握していたのであるから、推定される抗原回避措置を講じる必要性を示す注意義務があった旨主張する。 ⑵ しかし、令和3年11月25日の診察時において、原告が本件センターの 皮膚科医師に対して金属アレルギーの症状を訴えたことは認められるものの(上記1⑴ウ(イ))、その客観的な状態を認定するための的確な証拠は提出されておらず(同日の診療録にも記載がない。)、同皮膚科医師が原告の金属アレルギー反応による客観的な症状をどこまで把握していたのかは明らかでないのであって、原告の主張は、その前提が十分とはいえない。 ところで、金属接触アレルギーは、装飾品等の身の回りのものが長時間皮膚に接触したときや、ピアス等の金属を真皮内に入れたときに、皮膚炎(接触皮膚炎)が現れるものを典型とするものであるところ(上記1⑴ア)、上記診察時において、原告がひげそりの方法に関する本件センターの 膚に接触したときや、ピアス等の金属を真皮内に入れたときに、皮膚炎(接触皮膚炎)が現れるものを典型とするものであるところ(上記1⑴ア)、上記診察時において、原告がひげそりの方法に関する本件センターの指示等について具体的に相談していたとまでは認められず、原告が本件センター収容 中にその意に反して金属に長時間接触するなどの状況が生じることを同皮膚 - 71 -科医師がその時点において容易に予測し得たとは認め難い。 そして、同皮膚科医師は、原告の主訴や診療の経緯を踏まえた上で、本件センターでは金属アレルギーの検査ができず、正確な診断はできない旨説明し、金属アレルギーの正確な診断を行うためにパッチテスト等を外部施設で実施する必要があるとの所見を示すとともに、何らかの症状が出た際には再 度受診するよう伝えるなどしたものであるところ(上記1⑴ウ(ア)及び(イ))、上記の状況下において、原告に対する治療方針を決定するため、まず、原告が金属アレルギーであるか否かを正確に診断すべく、パッチテストを実施する必要があるとした同皮膚科医師の判断は、特に不合理なものとはいえない。 以上に加え、このような状況において直ちに抗原回避措置を講じないこと が社会一般の医療の水準に反するものであることを裏付ける医学的文献等が提出されていないことを考え合わせると、医師法23条の規定を踏まえても、同皮膚科医師が令和3年11月25日の時点において抗原回避措置を講じる必要性を示さなかったとしても、社会一般の医療水準に照らして不適切であったとまではいうことはできず、原告の上記主張は理由がない。 ⑶ よって、本件センターの皮膚科医師が令和3年11月25日の段階において抗原回避措置を講じる必要性を示さなかったとしても、国賠法上、違法とはいえない。 告の上記主張は理由がない。 ⑶ よって、本件センターの皮膚科医師が令和3年11月25日の段階において抗原回避措置を講じる必要性を示さなかったとしても、国賠法上、違法とはいえない。 第4 結論以上の次第で、原告の請求は、本件措置について3万円及び本件懲罰につい て15万円並びにこれらに対応する各違法行為の日(本件懲罰については、その執行が終了した日)である令和4年3月14日及び同年4月3日から各支払済みまで民法所定の年3%の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、この限度でこれらを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 - 72 - 裁判長裁判官篠田賢治 裁判官髙部祐未 裁判官金澤康は、退官のため、署名押印することができない。 裁判長裁判官篠田賢治 - 73 -(別紙)関係法令等の定め 1 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」という。)⑴ 56条(保健衛生及び医療の原則) 刑事施設においては、被収容者の心身の状況を把握することに努め、被収容者の健康及び刑事施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。 ⑵ 60条(調髪及びひげそり)ア受刑者には、法務省令で定めるところにより、調髪及びひげそりを行わせ る。(1項)イ刑事施設の長は、受刑者が自弁により調髪を行いたい旨の申出をした場合において、その者の処遇上適当と認めると 刑者には、法務省令で定めるところにより、調髪及びひげそりを行わせ る。(1項)イ刑事施設の長は、受刑者が自弁により調髪を行いたい旨の申出をした場合において、その者の処遇上適当と認めるときは、これを許すことができる。 (2項)ウ刑事施設の長は、受刑者以外の被収容者が調髪又はひげそりを行いたい旨 の申出をした場合には、法務省令で定めるところにより、これを許すものとする。(3項)⑶ 73条(刑事施設の規律及び秩序)ア刑事施設の規律及び秩序は、適正に維持されなければならない。(1項)イ前項の目的を達成するため執る措置は、被収容者の収容を確保し、並びに その処遇のための適切な環境及びその安全かつ平穏な共同生活を維持するため必要な限度を超えてはならない。(2項)⑷ 77条(制止等の措置)ア刑務官は、被収容者が自身を傷つけ若しくは他人に危害を加え、逃走し、刑事施設の職員の職務の執行を妨げ、その他刑事施設の規律及び秩序を著し く害する行為をし、又はこれらの行為をしようとする場合には、合理的に必 - 74 -要と判断される限度で、その行為を制止し、その被収容者を拘束し、その他その行為を抑止するため必要な措置を執ることができる。(1項)イ 2項(略)⑸ 150条(懲罰の要件等)ア刑事施設の長は、被収容者が、遵守事項若しくは96条4項(106条の 2第2項において準用する場合を含む。)に規定する特別遵守事項を遵守せず、又は74条3項の規定に基づき刑事施設の職員が行った指示に従わなかった場合には、その被収容者に懲罰を科することができる。(1項)イ懲罰を科するに当たっては、懲罰を科せられるべき行為(以下この節において「反則行為」という。)をした被収容者の年齢、心身の状態及び行状、 は、その被収容者に懲罰を科することができる。(1項)イ懲罰を科するに当たっては、懲罰を科せられるべき行為(以下この節において「反則行為」という。)をした被収容者の年齢、心身の状態及び行状、 反則行為の性質、軽重、動機及び刑事施設の運営に及ぼした影響、反則行為後におけるその被収容者の態度、受刑者にあっては懲罰がその者の改善更生に及ぼす影響その他の事情を考慮しなければならない。(2項)ウ懲罰は、反則行為を抑制するのに必要な限度を超えてはならない。(3項) 2 刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(以下「規則」という。)⑴ 26条(受刑者の調髪及びひげそりの回数等)ア男子の受刑者には、刑の執行開始後速やかに、及びおおむね一月に一回、調髪を行わせる。(1項)イ男子の受刑者には、刑の執行開始後速やかに、及び一週間に二回以上(閉 居罰を科されている者については、一週間に一回以上)、ひげそりを行わせる。(2項)ウ女子の受刑者には、必要があるときに、調髪及び顔そりを行わせる。(3項)エ前3項の規定にかかわらず、受刑者が調髪又はひげそりを行わないことを 希望する場合において、その宗教、その者が国籍を有する国における風俗慣 - 75 -習、釈放の時期その他の事情を考慮して相当と認めるときは、調髪又はひげそりを行わせないものとする。(4項)オ受刑者に行わせる調髪の髪型の基準は、法務大臣が定める。(5項)⑵ 28条(調髪及びひげそりの方法の基準)被収容者の行う調髪、ひげそり及び顔そりの方法の基準は、法務大臣が定め る。 3 被収容者の保健衛生及び医療に関する訓令(平成18.5.23矯医訓3293法務大臣訓令)8条(被収容者の調髪及びひげそりの方法の基準) そりの方法の基準は、法務大臣が定め る。 3 被収容者の保健衛生及び医療に関する訓令(平成18.5.23矯医訓3293法務大臣訓令)8条(被収容者の調髪及びひげそりの方法の基準) ⑴ 1項、2項(略)⑵ 理髪の作業に従事させる受刑者又は被収容者の調髪を依頼する理容業者がいないことその他やむを得ない事由があるときは、刑事施設の長は、必要な理髪用具を被収容者に貸与して調髪を行わせることができる。(3項)⑶ 被収容者のひげそり及び顔そりは、居室、浴場その他適当な場所において、 かみそり(電池式のものを含む。)を用いて行わせる。(4項)以上

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