- 1 -平成30年4月25日判決言渡し平成29年(行コ)第334号,平成30年(行コ)第27号法人税更正処分等取消控訴,同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成27年(行ウ)第730号) 主文 1(1) 控訴人の控訴に基づき,原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 上記(1)の部分につき被控訴人の請求を棄却する。 2 被控訴人の附帯控訴を棄却する。 3 訴訟費用(控訴費用,附帯控訴費用を含む。)は第1,2審ともに被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 前項の部分につき被控訴人の請求を棄却する。 2 附帯控訴の趣旨(1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) A税務署長が平成26年7月4日付けで被控訴人に対してした平成20年8月21日から平成21年8月20日までの事業年度(本件事業年度)分の法人税の更正処分(本件更正処分)のうち所得金額6391万3941円及び納付すべき税額1726万8200円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(本件賦課決定処分)をいずれも取り消す。 第2 事案の概要(以下,理由説示部分を含め,原則として原判決の略称をそのまま用いる。) 1 被控訴人は,被控訴人を死亡退職した元代表取締役B(亡B)への退職慰労金(本件役員退職給与)の支給額4億2000万円を損金の額に算入して本 - 2 -件事業年度分の法人税の確定申告をした。これに対し,A税務署長は,本件役員退職給与の額のうち不相当に高額の部分である2億0875万2000円については損金の額に算入されないことを - 2 -件事業年度分の法人税の確定申告をした。これに対し,A税務署長は,本件役員退職給与の額のうち不相当に高額の部分である2億0875万2000円については損金の額に算入されないことを理由として,被控訴人に対して,所得金額2億6683万3941円,納付すべき税額7814万4200円とする更正処分(本件更正処分)及び過少申告加算税822万円の賦課決定処分(本件賦課決定処分)をした。本件は,被控訴人が,控訴人に対して,本件更正処分及び本件賦課決定処分(本件各処分)の取消しを求める事案である。 原審は,処分行政庁の調査に基づく本件平均功績倍率の3.26にその半数を加えた4.89に亡Bの最終月額報酬額240万円及び勤続年数27年をそれぞれ乗じて計算される金額に相当する3億1687万2000円までの部分は亡Bに対する退職給与として相当であると認められる金額を超えるものではなく,本件役員退職給与の額のうち「不相当に高額な部分の金額」は同額を4億2000万円から控除した残額の1億0312万8000円であることを前提として計算すべきと判断して,本件更正処分のうち所得金額1億6704万1941円及び納付すべき税額4820万6600円を超える部分並びに本件賦課決定処分のうち過少申告加算税の額372万9000円を超える部分をいずれも取り消した。 控訴人は,原審の本件各処分について一部取消しを認めた判断を不服として控訴した。被控訴人は,請求が一部認められなかった部分を不服として附帯控訴した。 2 関係法令の定め,前提事実(当事者間に争いのない事実に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実),本件更正処分の根拠に関する控訴人の主張,争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決 いのない事実に加え,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実),本件更正処分の根拠に関する控訴人の主張,争点及び争点に関する当事者の主張は,以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1ないし4(原判決2頁20行目から10頁21行目まで)に記載の - 3 -とおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決3頁14行目の「D」を「D」と改める。 (2) 原判決7頁23行目末尾の後に「公刊資料における類似法人の功績倍率は,個別の法人及び役員の特別の事情が明確にされたものではないから,これをもって課税要件が明確であるということはできない。」を加える。 (3) 原判決9頁11行目の「すれば,」の後に「平均功績倍率を超える部分についても「不相当に高額」とはいえないし,さらに,」を加え,同頁15行目及び24行目並びに10頁8行目の各「正当な理由」をいずれも「正当な理由があると認められるもの」と改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,被控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」の1ないし3(原判決10頁23行目から23頁22行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決11頁4行目から5行目にかけての「2号は,」の後に「「当該役員のその内国法人の業務に従事した期間,その退職の事情,その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし」と規定して,」を加える。 (2) 原判決12頁24行目末尾の後に「被控訴人は,公刊資料における類似法人 事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし」と規定して,」を加える。 (2) 原判決12頁24行目末尾の後に「被控訴人は,公刊資料における類似法人の功績倍率は,個別の法人及び役員の特別の事情が明確にされたものではないと主張するが,十分な実例情報は掲載されているから,同事実は上記判断を左右するものではない。」を加える。 (3) 原判決13頁19行目から20行目にかけての「行われ,かつ,その平均功績倍率を当該法人に適用することが相当と認められる限り」を「行われる限り,亡Bに対する退職給与相当額を算定する方法として」と,同頁21行目の「合致する」を「最も合致する」とそれぞれ改め,14頁8行 - 4 -目末尾の後に改行して以下のとおり加える。 「ウなお,最高功績倍率法を採用すべきという立場からは,平均功績倍率法を採用すると,後記(3)の同業類似法人5法人のうち順号1及び5の支給事例(原判決別表2)は不相当に高額な金額の退職給与の支給をしたことになりかねず,支給事例としての一定の適格性が確保されている同業類似法人の平均を算出するという平均功績倍率法の算出の前提と矛盾することになるとの反論が考えられるところである。 しかしながら,平均功績倍率法は現に判断の対象となっている法人における退職給与額の相当性を判断するものであって,同判断のための資料となった類似法人における退職給与額の相当性を判断するものではないから,平均値よりも功績倍率の高い類似法人の退職給与額が直ちに不相当に高額であるということはできない。すなわち,このような功績倍率の高い類似法人の退職給与額がそれ自体相当であるか否かは,当該法人を基準として同業類似法人を 率の高い類似法人の退職給与額が直ちに不相当に高額であるということはできない。すなわち,このような功績倍率の高い類似法人の退職給与額がそれ自体相当であるか否かは,当該法人を基準として同業類似法人を倍半基準によって抽出することによって判断されるから,抽出される同業類似法人が当然に異なってくるのであり,平均功績倍率もまた異なってくるところ,上記反論はこの点を看過している。むしろ,前記アにおいて説示したとおり,平均功績倍率法は,同業類似法人における功績倍率の平均値を算定することにより,同業類似法人間に通常存在する諸要素の差異やその個々の特殊性を捨象して平準化された数値を出すことに意義があるのだから,類似法人の中に算出された平均値より不相当に高い功績倍率を用いた法人があったとしても,平均値を算定することの合理性は失われない。したがって,上記反論は不正確な前提に基づくものであり失当である。」(4) 原判決17頁11行目の「あり,」の後に「高いものから4.31,3. 75,3.09,3.00,2.13であり,」を,同頁17行目末尾の後に改行して以下のとおりそれぞれ加える。 - 5 -「 そうすると,本件平均功績倍率は,被控訴人の同業類似法人の抽出を合理的に行った上で,法人税法34条2項及び法人税法施行令70条2号の趣旨に最も合致する合理的な方法で算定されたものであるから,亡Bの最終月額報酬額(240万円)に同人の勤続年数(27年)及び本件平均功績倍率(3.26)を乗じた金額である2億1124万8000円は亡Bに対する退職給与として相当であると認められる金額であるというべきである。 なお,被控訴人は,亡Bは最終月額報酬額(240万円)に賞与(年額720万円)の月額相当額 4万8000円は亡Bに対する退職給与として相当であると認められる金額であるというべきである。 なお,被控訴人は,亡Bは最終月額報酬額(240万円)に賞与(年額720万円)の月額相当額(60万円)を加えた300万円の最終月額報酬の支給を受けていたものとして,本件役員退職給与の相当額を算定すべきである旨を主張する。しかしながら,最終月額報酬額は当該役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を通常反映していると考えられることに加え,亡Bの最終月額報酬額は240万円と高額であること,被控訴人自身が当該金額(240万円)を基礎としてこれに勤続年数と役員退職慰労金規定所定の通常の役員係数に功労加算を施した倍率(功績倍率)を乗じて本件役員退職給与の額を算定していたと認められること(前記前提事実(2)ウ)に照らすと,亡Bの最終月額報酬額は240万円として本件役員退職給与の相当額を算定するのが相当であり,被控訴人の上記主張は採用することができない。」(5) 原判決17頁18行目から20行目までを「(5) 被控訴人は,亡Bには特別の功績があり,平均功績倍率を用いて算出される金額を超えた部分についても「不相当に高額」であるとはいえないと主張するので検討する。」と,同頁21行目の「ア」を「ア(ア)」とそれぞれ改め,同行の「甲8」の後に「,乙3,4」を,18頁1行目の「こと」の後に「(ただし,それが亡Bの経理ないし労務管理の手腕のみによるのか,被控訴人の技術の高さやその他の事情がその要因であるのか明らかでなく,その貢献の具 - 6 -体的態様及び程度は明らかでない。)」を,18頁2行目末尾の後に「Dは,遅くとも昭和46年以降,亡Bが代表取締役であった期間を含め現在に至るまで代表取締 - 6 -体的態様及び程度は明らかでない。)」を,18頁2行目末尾の後に「Dは,遅くとも昭和46年以降,亡Bが代表取締役であった期間を含め現在に至るまで代表取締役であること,」をそれぞれ加え,同頁5行目から20頁16行目までを以下のとおり改める。 「 (イ) また,G発行の「月額役員報酬・役員退職金」(乙13)によれば,売上高が被控訴人と概ね同規模の製造業15社における会長又は社長の退職金の功績倍率が平均して2.36であること,H発行の「中小企業の「支給相場&制度」完全データ」(乙14)によれば,調査対象企業の半数以上で「退任時の最終報酬月額×通算役員在任年数×功績倍率」との算定方法が用いられていること,対象企業の社長(67社)の功績倍率は平均して2.36であり,4.0以上の会社は4社のみ(6.0%)であり,その最高値が5.0であること,I・J発行の「役員の退職慰労金」(乙15)によれば,社長(集計46名)の功績倍率は,平均して2.3であり,中位数が1.8であることがそれぞれ認められる。 イ前記(4)の金額2億1124万8000円は,亡Bの役員在任期間中の功績の程度を最もよく反映しているものである「最終月額報酬額」を基礎として算定されたものである。 ウまた,法人税法施行令70条2号が,役員退職給与の相当額の算定要素として,業務に従事した時間,退職の事情及び同業類似法人の役員に対する退職給与の支給状況等を列挙している趣旨は,当該退職役員又は当該法人に存する個別事情のうち,役員退職給与の相当額の算定に当たって考慮することが合理的であるものについては考慮すべきであるが,かかる個別事情には種々のものがあり,かつ,その考慮すべき程度も様々であるところ,これらの個別事情のうち, 職給与の相当額の算定に当たって考慮することが合理的であるものについては考慮すべきであるが,かかる個別事情には種々のものがあり,かつ,その考慮すべき程度も様々であるところ,これらの個別事情のうち,業務に従事した期間及び退職の事情については,退職役員の個別事情として顕著であり,かつ,役 - 7 -員退職給与の適正額の算定に当たって考慮することが合理的であると認められることから,これらを考慮すべき個別事情として例示する一方,その他の必ずしも個別事情としては顕著といい難い種々の事情については,原則として同業類似法人の役員に対する退職給与の支給状況として把握するものとし,これを考慮することによって,役員退職給与の相当額に反映されるべきものとしたことにあると解される。 そうすると,当該退職役員及び当該法人に存する個別事情であっても,法人税法施行令70条2号に例示されている業務に従事した期間及び退職の事情以外の種々の事情については,原則として,同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として把握されるべきものであり,同業類似法人の抽出が合理的に行われる限り,役員退職給与の適正額を算定するに当たり,これを別途考慮して功労加算する必要はないというべきであって,同業類似法人の抽出が合理的に行われてもなお,同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として把握されたとはいい難いほどの極めて特殊な事情があると認められる場合に限り,これを別途考慮すれば足りるというべきである。 エそこで,亡Bの役員在任中の功績について検討すると,亡Bは,前記ア(ア)のとおり,被控訴人の経理及び労務管理を担当して約8億円の債務完済に何らかの貢献をしたことが認められるが,これに関する亡Bの具体的 で,亡Bの役員在任中の功績について検討すると,亡Bは,前記ア(ア)のとおり,被控訴人の経理及び労務管理を担当して約8億円の債務完済に何らかの貢献をしたことが認められるが,これに関する亡Bの具体的貢献の態様及び程度は必ずしも明らかではなく,同業類似法人の合理的な抽出結果に基づく本件平均功績倍率(公刊資料によって認められる前記ア(イ)の数値に照らしても,有意なものと十分推認することができる。)によってもなお,同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として把握されたとはいい難いほどの極めて特殊な事情があったとまでは認められない。 オ以上によれば,被控訴人の前記主張は採用することができない。」 - 8 -(6) 原判決20頁17行目から21頁21行目までを以下のとおり改める。 「(6) 以上によれば,原判決別表1記載のとおり,本件役員退職給与の額のうち不相当に高額な部分の金額は2億0875万2000円(420,000,000-211,248,000=208,752,000)であり,所得金額はこれに6391万3941円(申告所得金額)を加えた2億7266万5941円であり,納付すべき法人税額は7989万3800円であると認められ,各金額はいずれも本件更正処分の金額を上回るものであるから,本件更正処分は適法である。」(7) 原判決21頁22行目及び22頁17行目から18行目にかけての各「正当な理由」をいずれも「正当な理由があると認められるもの」と,同頁19行目から23頁4行目までを以下のとおりそれぞれ改める。 「 そうすると,本件賦課決定処分は,過少申告加算税が課されないこととなる「正当な理由があると認められるものがある場合」には該当しないから,適法 3頁4行目までを以下のとおりそれぞれ改める。 「 そうすると,本件賦課決定処分は,過少申告加算税が課されないこととなる「正当な理由があると認められるものがある場合」には該当しないから,適法である。」 2 被控訴人の当審における主張(附帯控訴理由)は,いずれも原審における主張を繰り返すものにすぎず,それらの主張が採用できないものであることは,前記1において認定・説示したとおりである。 3 結語以上によれば,被控訴人の請求は理由がないから全部棄却すべきところ,これを一部認容した原判決は失当であり,控訴は理由があり,附帯控訴は理由がない。よって原判決中控訴人の敗訴部分を取り消した上,同部分につき被控訴人の請求を棄却して,附帯控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。 - 9 -東京高等裁判所第9民事部 裁判長裁判官齊木敏文 裁判官石井浩 裁判官小田正二
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