- 1 -主文 1 近畿運輸局長が平成22年3月2日付けで原告に対してした一般貸切旅客自動車運送事業許可の取消処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,一般貸切旅客自動車運送事業の許可を受けていた原告が,近畿運輸局長から平成22年3月2日付けで一般貸切旅客自動車運送事業許可の取消処分(以下「本件処分」という。)を受けたのに対し,本件処分の理由とされた他人への事業の貸渡しの事実はない,行政手続法14条1項本文所定の理由提示の要件に欠けるところがあるなどとして,本件処分の取消しを求めている事案である。 2 関係法令等の定め(1)道路運送法の規定等道路運送法(以下「法」という。)33条1項は,一般旅客自動車運送事業者は,その名義を他人に一般旅客自動車運送事業又は特定旅客自動車運送事業のため利用させてはならない旨を,同条2項は,一般旅客自動車運送事業者は,事業の貸渡しその他いかなる方法をもってするかを問わず,一般旅客自動車運送事業又は特定旅客自動車運送事業を他人にその名において経営させてはならない旨をそれぞれ定めている。 国土交通大臣から権限の委任を受けた地方運輸局長は,法に違反した一般貸切旅客自動車運送事業者に対し,6か月以内の期間を定めて自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止(以下「自動車等の使用停止」という。)若しくは事業の停止を命じ,又は許可を取り消すことができる(法 - 2 -40条1号,88条2項,道路運送法施行令1条2項)。 (2)行政処分の基準ア処分基準公示の定め(乙3)近畿運輸局長は,一般貸切旅客自動車運送事業者の法令違反について,法40条に基づく許可の取消し等の行政処分等を行う際の基準として, 項)。 (2)行政処分の基準ア処分基準公示の定め(乙3)近畿運輸局長は,一般貸切旅客自動車運送事業者の法令違反について,法40条に基づく許可の取消し等の行政処分等を行う際の基準として,「一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」(近運監一公示第3号,近運自一公示第29号,近運技安公示第5号。以下「処分基準公示」という。)を定めた。 処分基準公示1(1)では,行政処分等を受けた者が,当該処分等を受けた日から3年以内に同一営業所において更に同一の事項に違反した場合を「同一違反事項の再違反」と定義した上で,違反及び同一違反事項の再違反並びに再々違反以上の累違反については,原則として,別途定める一般貸切旅客自動車運送事業者に対する違反事項ごとの処分等の基準による処分等を行うものとする旨を定めている(なお,近畿運輸局自動車監査指導部,自動車交通部及び自動車技術安全部は,平成20年6月19日付け「「一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」の解釈運用について」において,「同一違反事項の再違反」とは,営業所単位をもって判断することとする旨の解釈を明らかにしている。)。 また,処分基準公示5(5)では,法33条1項又は2項の規定に違反して名義を利用させ,又は事業の貸渡し等をし,かつ,反復・計画的なものと認められて行政処分を受けた事業者が,当該行政処分を受けた日から3年以内に更に当該違反をした場合には許可の取消処分を行うものとする旨を定めている。 イ個別基準公示の定め(乙5)近畿運輸局長は,処分基準公示1(2)の「一般貸切旅客自動車運送事業者に対する違反事項ごとの処分等の基準」として,「一般貸切旅客自動 - 3 -車運送事業者に対する違反事項ごとの行政処分等の基準について」(近運自監 公示1(2)の「一般貸切旅客自動車運送事業者に対する違反事項ごとの処分等の基準」として,「一般貸切旅客自動 - 3 -車運送事業者に対する違反事項ごとの行政処分等の基準について」(近運自監公示第5号,近運自一公示第31号,近運技安公示第7号。以下「個別基準公示」という。)を定めた。 個別基準公示では,一般貸切旅客自動車運送事業者に行政処分等を行う場合,別添処分等の基準によるものとされ,その別添の表において,違反事項ごとに処分基準が定められており,法33条1項,2項の名義貸し,事業の貸渡しについては,このうち,①臨時・偶発的なものと認められるものの「初違反」については自動車等の使用停止(30日×違反車両数)を,「再違反」については自動車等の使用停止(90日×違反車両数)を,②反復・計画的なものと認められるものの「初違反」については自動車等の使用停止(60日×違反車両数)を,「再違反」については許可の取消しを,それぞれ基準とする旨定めている。 3 前提事実(当事者間に争いのない事実及び各項掲記の証拠(以下,枝番のあるものは特に断りのない限り枝番を全て含む。)等により認められる事実)(1)当事者原告は,一般貸切旅客自動車運送業等を目的とする会社である。 (2)本件処分に至る経緯ア原告は,国土交通大臣からその権限の委任を受けた近畿運輸局長から,平成14年9月11日付けで,営業区域を奈良県とする一般貸切旅客自動車運送事業の許可を受けた。 イ原告は,平成16年4月23日付けで,近畿運輸局奈良運輸支局長から奈良県a郡b村c番地のdにb営業所を新設することなどを内容とする事業計画変更の認可を受けた。また,原告は,平成17年2月2日付けで,近畿運輸局長から大阪府e市f-g等にe営業所を新設することなどを内容とする事業計画変更 にb営業所を新設することなどを内容とする事業計画変更の認可を受けた。また,原告は,平成17年2月2日付けで,近畿運輸局長から大阪府e市f-g等にe営業所を新設することなどを内容とする事業計画変更の認可を受けた。 ウ近畿運輸局長は,原告の本社営業所に係る違反として,原告が自己の名 - 4 -義をAに一般貸切旅客自動車運送事業のために利用させており,かつ,その態様が反復・計画的なものと認められるなどとして,平成20年6月3日付けで,原告に対し,105日車の自動車等の使用停止処分(以下「前回処分」という。)をした。なお,原告は,前回処分について,不服申立てをしていない。 エ原告は,平成21年2月3日付けで,近畿運輸局奈良運輸支局長からb営業所を廃止することなどを内容とする事業計画変更の認可を受けた。また,原告は,同年4月24日付けで,近畿運輸局長からe営業所を廃止することなどを内容とする事業計画変更の認可を受けた。 オ近畿運輸局長は,平成21年3月27日,同年6月17日及び同年7月13日に,原告の本社営業所に対する巡回監査を実施した。 カ近畿運輸局長は,平成21年9月14日,法40条に基づく事業許可の取消処分を予定しているとして,原告に対する聴聞の手続をした。 キ近畿運輸局長は,原告が一般貸切旅客自動車運送事業をB(以下「B」という。)にその名において経営させており,かつ,その態様が反復・計画的なものと認められること(以下「本件違反事実」という。)を理由として,平成22年3月2日付けで,原告に対し,同月5日をもって,一般貸切旅客自動車運送事業の許可を取り消す旨の処分(本件処分)をした。 (3)本訴提起原告は,平成22年3月3日,本訴を提起した(当裁判所に顕著な事実)。 (4)本訴提起後の事情原告代表者C(以下 旅客自動車運送事業の許可を取り消す旨の処分(本件処分)をした。 (3)本訴提起原告は,平成22年3月3日,本訴を提起した(当裁判所に顕著な事実)。 (4)本訴提起後の事情原告代表者C(以下「C」という。)及びBは,平成22年4月12日,法33条違反容疑で逮捕され,同月14日には同容疑で勾留されたが,同月30日,Cについては不起訴処分とされた(甲9,弁論の全趣旨)。 4 争点(1)原告は,Bに対し,b営業所における事業の貸渡しをしたか。 - 5 -(2)本件処分は,近畿運輸局長の定める処分基準に適合するか。 (3)本件処分は,行政手続法14条1項の定める理由提示の要件を欠くか。 5 当事者の主張(1)争点(1)(原告は,Bに対し,b営業所における事業の貸渡しをしたか。)について(被告の主張)原告は,Bとの間で,b営業所を新設して,同営業所及びこれに配置される原告名義の事業用自動車の管理をBに委ね,Bに自ら顧客との間で運送契約を締結させたり,同営業所における運賃・料金収入をBの収入として計上させたりすることなど事業の貸渡しを行うことについて合意し,同合意に基づいて,平成16年4月23日付けで,近畿運輸局奈良運輸支局長から同営業所を新設することなどを内容とする事業計画変更の認可を受けた上,Bに対し,同営業所及び同年6月24日に登録された原告名義の事業用自動車(奈良○○○×△△△△)の管理をさせ,これにより,このころ以降平成21年2月3日まで,法4条の許可を受けていないBに対し,一般貸切旅客自動車運送事業を継続的に経営させ,もって事業の貸渡しをした。 この点,原告は,Bは原告のb営業所長であって法33条にいう「他人」に該当しない,営業所の新設に伴う費用等は原告が負担しており,原告代表者のCにはBに事業の貸渡し させ,もって事業の貸渡しをした。 この点,原告は,Bは原告のb営業所長であって法33条にいう「他人」に該当しない,営業所の新設に伴う費用等は原告が負担しており,原告代表者のCにはBに事業の貸渡しを行う意思はなかったなどと主張する。しかし,原告はBと雇用契約を締結していなかったこと,Bが日常的に原告を通すことなく顧客との間で運送契約を締結していたこと,原告はb営業所の経費を何ら負担していないことなどに照らし,同主張は失当である。 (原告の主張)原告代表者Cは,長年の知人であり,レストランを経営するBから月ヶ瀬に営業所を作ろうと声を掛けられ,月ヶ瀬におけるバス経営が成り立つと考え,原告においてバスを250万円で新たに購入するなどして営業所新設費 - 6 -用を負担して,Bを営業所長として正規にb営業所を開設したものであって,Bに対して事業の貸渡しを行う意思は全くなかった。また,Bは原告のb営業所の所長であるから,法33条2項にいう「他人」には該当しない。 (2)争点(2)(本件処分は,近畿運輸局長の定める処分基準に適合するか。)について(被告の主張)ア法33条違反に係る許可取消処分の要件(ア)処分基準公示5(5)によれば,法33条違反に係る許可取消処分の要件として,①一般貸切旅客自動車運送事業者が,法33条1項又は2項の規定に違反して名義を利用させ,又は事業の貸渡し等をし,かつ,その態様が反復・計画的なものと認められて行政処分を受けたこと(以下「要件①」という。),②一般貸切旅客自動車運送事業者が,法33条1項又は2項の規定に違反して名義を利用させ,又は事業の貸渡し等をし,かつ,その態様が反復・計画的なものと認められるものであること(以下「要件②」という。),③要件②の違反行為が,要件①の行政処分を受けた日から 規定に違反して名義を利用させ,又は事業の貸渡し等をし,かつ,その態様が反復・計画的なものと認められるものであること(以下「要件②」という。),③要件②の違反行為が,要件①の行政処分を受けた日から3年以内に行われたものであること(以下「要件a」という。)が導かれる。 (イ)他方,処分基準公示1(2)及び個別基準公示別添の表によれば,法33条違反に係る許可取消処分の要件として,①一般貸切旅客自動車運送事業者が,法33条1項又は2項の規定に違反して名義を利用させ,又は事業の貸渡しをし,かつ,その態様が反復・計画的なものと認められて行政処分を受けたこと(要件①),②一般貸切旅客自動車運送事業者が,法33条1項又は2項の規定に違反して名義を利用させ,又は事業の貸渡しをし,かつ,その態様が反復・計画的なものと認められるものであること(要件②),③要件②の違反行為が,再違反に該当すること,すなわち,要件①の行政処分を受けた日から3年以内に行われたも - 7 -のである(要件a)だけでなく,要件①の違反行為と「同一営業所」において行われたものであること(以下「要件b」という。)が導かれる。 (ウ)処分基準公示5では,「違反点数の累計が80点を超えた場合」というように,個別基準公示別添の表に掲げられた法令違反行為を行った場合のみならず,幅広く次元の異なる態様を取り上げて網羅的に許可取消事由が定められている。また,個別基準公示別添の表を通覧すれば明らかなように,この表に許可取消処分ができる場合として便宜上掲げられているものは,処分基準公示に許可取消処分ができるとして掲げられているものに包含されている。そして,近畿運輸局長は,許可取消処分ができる場合を個別基準公示別添の表に掲げられた場合に限る趣旨で個別基準公示を定めた訳ではない。 したがっ 分ができるとして掲げられているものに包含されている。そして,近畿運輸局長は,許可取消処分ができる場合を個別基準公示別添の表に掲げられた場合に限る趣旨で個別基準公示を定めた訳ではない。 したがって,近畿運輸局長が,法33条の規定に違反する行為を行った一般貸切旅客自動車運送事業者に対して,許可取消処分ができるのは,処分基準公示5(5)で定めている場合であって,要件①,要件②及び要件aを満たせば足り,要件bは必要ではない。 (エ)なお,原告は,要件aについて,要件②の違反行為は,要件①の行政処分後に開始されたものである必要があると主張するが,同処分後も貸渡行為が継続している以上,加重すべき要素に欠ける点はない。 イ許可取消しの要件該当性について(ア)要件①について原告は,自己の名義をAに一般貸切旅客自動車運送事業のために利用させており,かつ,その態様が反復・計画的なものと認められて,平成20年6月3日付けで自動車等の使用停止の行政処分を受けた(前回処分)。 (イ)要件②について争点(1)についての被告の主張のとおり,原告は,Bに対してb営 - 8 -業所の事業の貸渡しをしていたところ,このような事業の貸渡しは,Bに貸し渡す目的でb営業所が新設された平成16年4月23日から計画的に開始されたことが明らかであり,前回処分後もなお同営業所が廃止されるまで継続的に行われていたものであるから,その態様が反復・計画的なものであったことも明らかである。 (ウ)要件aについて原告は,Bに対するb営業所における事業の貸渡しを,前回処分後も継続的に行っていたのであるから,要件aを満たす。 (エ)要件bについて仮に,許可取消処分をするには,要件②の違反行為が要件①の違反行為と同一営業所において行われたものであること(要件b)が も継続的に行っていたのであるから,要件aを満たす。 (エ)要件bについて仮に,許可取消処分をするには,要件②の違反行為が要件①の違反行為と同一営業所において行われたものであること(要件b)が必要であるとしても,原告がBへの貸渡しの意思決定をしたのは本社営業所であることに照らすと,要件②の違反行為も,要件①の違反行為と同じ本社営業所で行われたというべきであって,要件bも満たす。 なお,法33条1項と同条2項は,いずれも一般旅客自動車運送事業について許可制を採用したのを潜脱する行為を防止する趣旨に出たものであるから,同条2項(事業の貸渡しの禁止)の違反は同条1項(名義貸しの禁止)と「同一の事項」の違反に当たる。 (オ)小括したがって,本件処分は,近畿運輸局長の定める処分基準に適合する。 (原告の主張)ア法33条違反に係る許可取消処分の要件(ア)処分基準公示1(2)及び個別基準公示別添の表によれば,被告が主張する3要件(①過去の行政処分の存在(要件①),②当該違反(要件②),③当該違反が①の行政処分を受けた日から3年以内であること(要件a))のほか,④同一営業所における再違反であること(要件 - 9 -b)も必要なのは明らかである。 被告は処分基準公示5(5)が許可取消処分の要件である旨を主張するようであるが,近畿運輸局長が,いったん,処分基準公示1(2)を受けて違反条項ごとに具体的な基準として個別基準公示を定めた以上,処分基準公示5(5)に基づいて許可の取消しをすることはできないというべきである。そうでなければ,処分基準公示5(5)における許可取消要件と個別基準公示における許可取消要件とが並立することになってしまい,ひいては個別基準公示を定めた意義が失われてしまう。 (イ)法33条の再違反については,その悪 基準公示5(5)における許可取消要件と個別基準公示における許可取消要件とが並立することになってしまい,ひいては個別基準公示を定めた意義が失われてしまう。 (イ)法33条の再違反については,その悪質性や反省の欠如に鑑み,許可取消しという重大な行政処分を定めていると考えられることに照らすと,ここにいう再違反とは,同種事件を惹起し,いったん行政処分を受けてからその後に同種事件を起こしたことをいうと解すべきである。 イ許可取消しの要件該当性について(ア)要件①について原告が被告指摘のとおり行政処分を受けたことは認める。 (イ)要件②について争点(1)の原告の主張のとおり,原告がBに対してb営業所の事業を貸し渡したことはない。 (ウ)要件aについて争う。 (エ)要件bについて前述のとおり,同一営業所における再違反が許可取消要件であると解すべきところ,前回処分は本社営業所に関する違反であるのに対し,当該違反はb営業所に関するものであり,営業所を異にしており,同一営業所要件を満たさない。 また,前回処分は,法33条1項(名義貸しの禁止)違反であったの - 10 -に対し,当該違反は同条2項(事業の貸渡しの禁止)に関するものであり,同一事項の再違反には当たらない。 (オ)小括したがって,本件処分は,近畿運輸局長が定める許可取消基準に適合せず,違法である。 (3)争点(3)(本件処分は,行政手続法14条1項の定める理由提示の要件を欠くか。)について(被告の主張)ア本件処分理由の提示は,行政手続法14条1項本文の要求する理由の提示として十分であること行政手続法14条1項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,行政庁の恣意を抑制し,処分の名宛人に不服申立ての便宜を与えるという同項本文の趣旨に照らし 求する理由の提示として十分であること行政手続法14条1項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,行政庁の恣意を抑制し,処分の名宛人に不服申立ての便宜を与えるという同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮して決定すべきである。 これを法40条1号,33条による一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分について見ると,法33条の規定に違反した場合,自動車等の使用停止,事業停止又は許可取消しのいずれの処分を選択するのか,自動車等の使用停止又は事業停止の期間を6か月以内のどの程度の期間とするかは,いずれも国土交通大臣又はその権限の委任を受けた地方運輸局長の裁量に委ねられている。また,処分内容の決定に関する基準として,処分基準公示及び個別基準公示が定められ,公表されていることなどに鑑みると,法33条の規定に違反した一般貸切旅客自動車運送事業者に対し,許可取消しをする際に同時に示されるべき理由としては,処分の原因となる事実関係についてどのような根拠法条や処分基準を適用したかを,処分の名宛人において,通知書の記載自体から了知し得る程度に記載していれ - 11 -ば足りるものと解される。 本件処分についても,処分の原因となる事実関係,処分の根拠法条及び適用した処分基準のいずれも本件処分の通知書(以下「本件通知書」という。)に明記されているのであって,処分の名宛人である原告において,本件通知書の記載自体から,本件処分の原因となる事実関係についてどのような根拠法条や処分基準を適用した結果,許可取消処分が選択されたのかを了知し得ることは明らかである。 イ原告の主張に対する反論原告は,本件通 体から,本件処分の原因となる事実関係についてどのような根拠法条や処分基準を適用した結果,許可取消処分が選択されたのかを了知し得ることは明らかである。 イ原告の主張に対する反論原告は,本件通知書記載の処分理由では,処分基準公示と個別基準公示のどちらが適用されたかも分からないと主張するが,原告の聴聞手続における弁明内容や執行停止の申立書の内容に照らすと,原告が処分基準公示と個別基準公示の双方が適用されたと理解していたことは明らかである。 また,近畿運輸局長は,本件処分当時,前回処分に係る違反行為と当該違反とが同一営業所において行われたものである(すなわち,処分基準公示1(2)で定める「再違反」に当たる)ことまで要件とされていると必要以上に厳格に解していた。近畿運輸局長は,この解釈を前提に,本件通知書で理由の説明をしており,本件処分の理由提示に何ら違法な点はない。 このほか,原告は,本件処分の通知の際に,処分基準公示や個別基準公示を示されなかった旨を主張するが,処分基準公示や個別基準公示は公表されている以上,本件処分理由の提示に当たってこれらを殊更に提示しなかったからといって,不服申立ての便宜を考慮した行政手続法14条1項本文の趣旨にもとるとはいえない。 (原告の主張)本件処分理由の提示は,以下の各点に鑑みれば,行政手続法14条1項本文の要求する理由の提示として不十分であり,違法である。 ア一般に,要件事実を記載するには,①いつ,②どこで,③誰が,④誰に - 12 -対して,⑤どのような態様で,⑥どうしたかを明記して特定すべきとされており,このことは,許可の取消しにおける理由の提示においても変わりがないというべきである。 しかるに,本件通知書には,①「いつ」について,平成21年3月27日,同年6月17日及び同年7月1 されており,このことは,許可の取消しにおける理由の提示においても変わりがないというべきである。 しかるに,本件通知書には,①「いつ」について,平成21年3月27日,同年6月17日及び同年7月13日に行った監査時といった不十分な記載しかされておらず,②「どこで」についても,「監査時における本社営業所に係る」と記載されており,一見すると本社営業所について法33条の違反をしたとしか見られない記載になっており,⑤態様については何ら記載がなく,⑥「経営させて」との記載は法33条2項の文言によるものにすぎず,違反について具体的な事実が記載されているわけではない。 したがって,不利益処分をなす前提としての違反事実の明示の要件の最小限度すら具備していない。 イ本件通知書においては,適用法条として,法33条1項,2項の両項が記載されているところ,近畿運輸局長は適用法条についても十分な検討をせずに,かかる記載をしたものである。 ウ近畿運輸局長は,当初は許可取消要件として同一営業所要件(要件b)が必要であるという見解を取っていたところ(被告第1準備書面,第2準備書面参照),裁判所から処分基準公示と個別基準公示の関係について釈明を受けたことを契機として,要件bは不要であり,要件bが必要であるとする従前の見解を撤回することを明らかにした(被告第5準備書面及び第9回口頭弁論期日調書参照)。しかし,近畿運輸局長は,最終準備書面に至って,撤回した筈の要件bに関する主張を蒸し返している。 エ本件通知書に記載された処分理由は,処分基準公示5(5)と個別基準公示のどちらが適用されたのかも分からないものであるなど,理由の提示として不十分である。被告は,本訴において,本件処分が処分基準公示5(5)に基づくものであると主張するが,本件通知書(甲5)にはかかる どちらが適用されたのかも分からないものであるなど,理由の提示として不十分である。被告は,本訴において,本件処分が処分基準公示5(5)に基づくものであると主張するが,本件通知書(甲5)にはかかる - 13 -記載はないから,当該理由を説明したことにはならない。 また,近畿運輸局長は,本件処分の通知に当たって,原告代表者のCに対し,本件各基準公示の内容を何ら説明していない。 したがって,本件処分については,いかなる理由に基づき,どのような処分基準の適用によって,取消処分が選択されたのかをその名宛人である原告が知ることはできないというべきであって,行政手続法14条1項所定の理由の提示がされたとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(3)(本件処分は,行政手続法14条1項の定める理由提示の要件を欠くか。)について(1)行政手続法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁)そして,上記行政手続法14条1項本文の趣旨に鑑みれば,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して不利益処分がされ 年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁)そして,上記行政手続法14条1項本文の趣旨に鑑みれば,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して不利益処分がされたかを,申請者においてその記載自体から知ることができるものでなければならないというべきである(一般旅券発給拒否処分の理由付記に関する最高裁昭和57年(行ツ)第70号同60年1月22日第三小法廷判決・民集39巻1号1頁参照)。 - 14 -(2)上記見地に立って,法40条による一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分についてみると,法40条は,一般旅客自動車運送事業者が,法若しくは法に基づく命令若しくはこれらに基づく処分又は許可若しくは認可に付した条件に違反したとき(1号),正当な理由がないのに許可又は認可を受けた事項を実施しないとき(2号),法7条の欠格事由(同条2号を除く。)に該当することとなったとき(3号)は,国土交通大臣は,当該事業者に対し,6か月以内の期間を定めた自動車等の使用停止若しくは事業の停止又は許可の取消しという不利益処分をすることができる旨を定めている。これら法40条が定める処分要件は,3号の欠格事由該当性はさておき,1号及び2号の各要件はいずれも抽象的である上,これらに該当する場合に自動車等の使用停止,事業停止又は許可取消しのいずれの処分を選択するかも処分行政庁の裁量に委ねられている。 そして,一般貸切旅客自動車運送事業者に対する法40条の行政処分の権限について委任を受けた近畿運輸局長は,行政手続法12条1項を受けて,法40条の不利益処分の基準として,処分基準公示及び個別基準公示を定めているところ,処分基準公示1(2)は,処分基準の通則規定として,違反及び同一違反事項の再違反(処分等を受けたものが当該処分 て,法40条の不利益処分の基準として,処分基準公示及び個別基準公示を定めているところ,処分基準公示1(2)は,処分基準の通則規定として,違反及び同一違反事項の再違反(処分等を受けたものが当該処分等を受けた日から3年以内に「同一営業所において」更に同一の事項に違反した場合をいう。)並びに再々違反以上の累違反については,原則として,別途定める一般貸切旅客自動車運送事業者に対する違反事項ごとの処分等の基準による処分等を行うものとする旨を定めており,かかる基準として個別基準公示が定められ,個別基準公示別添の表では,違反事項ごとに初違反,再違反の別に分けて,口頭注意,勧告,警告,自動車等の使用停止(具体的な停止日車数ないしその算定基準が記載されている。),事業の停止又は許可の取消しといった処分等の基準が具体的に定められている。さらに,個別基準公示別添の表においては,法3 - 15 -3条1項,2項の名義貸し,事業の貸渡しについては,このうち,①臨時・偶発的なものと認められるものの「初違反」については自動車等の使用停止(30日×違反車両数)を,「再違反」については自動車等の使用停止(90日×違反車両数)を,②反復・計画的なものと認められるものの「初違反」については自動車等の使用停止(60日×違反車両数)を,「再違反」については許可の取消しを,それぞれ基準とする旨定めている。一方,処分基準公示5(5)は,法33条1項又は2項の規定に違反して名義を利用させ,又は事業の貸渡し等をし,かつ,反復・計画的なものと認められて行政処分を受けた事業者が,当該行政処分を受けた日から3年以内に更に当該違反をした場合に,許可の取消しの基準に当たる旨を定めている。 このように,一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分については,近畿運輸局長は,処分内容 政処分を受けた日から3年以内に更に当該違反をした場合に,許可の取消しの基準に当たる旨を定めている。 このように,一般貸切旅客自動車運送事業者に対する行政処分については,近畿運輸局長は,処分内容の決定に関する基準として処分基準公示及び個別基準公示を定めて,これらを公にしているところ,法33条違反を理由とする許可取消基準としては,処分基準公示1(2)及び個別基準公示別添の表に定める基準と,処分基準公示5(5)に定める基準の二つが存するところであり,しかもその関係については処分基準公示及び個別基準公示でも何ら明記されておらず,これら両基準の適用の関係は明らかとはなっていない(現に,被告は,当初,本件処分は,処分基準公示5(5)と,処分基準公示1(2)及び個別基準公示別添の表の両方に従ってされたものであり,原告がb営業所における一般貸切旅客自動車事業をBにその名において経営させていたところ,b営業所における事業をBに貸し渡すという意思決定が本社営業所において行われた以上,Bへの貸渡しは本社営業所における違反と評価できると主張していた(被告第1準備書面(第2回口頭弁論期日で陳述)及び被告第2準備書面(第3回口頭弁論期日で陳述))ところ,第7回口頭弁論期日及び第8回口頭弁論期日における裁判長の釈明を受けて,本件 - 16 -処分に適用されるべき基準は処分基準公示5(5)のみであり,「同一営業所における再違反であること」がその処分要件に当たるわけではないと主張を変更した(被告第6準備書面(第9回口頭弁論期日で陳述)及び第9回口頭弁論期日における被告の弁論内容)。)。このようなその適用関係の明確性を欠く両基準の存在は,不利益処分の基準の透明性をできるだけ確保するという行政手続法12条2項の趣旨に照らして大きな問題がある。また,処分基準公 被告の弁論内容)。)。このようなその適用関係の明確性を欠く両基準の存在は,不利益処分の基準の透明性をできるだけ確保するという行政手続法12条2項の趣旨に照らして大きな問題がある。また,処分基準公示1(2)及び個別基準公示別添の表に基づく基準は,許可取消しの要件として,同一営業所における違反であること(同一営業所要件(要件b))を定めているのに対し,処分基準公示5(5)においては,かかる要件は記載されておらず,同一営業所要件は必要とされていないものと解されるところであり,両基準は,許可取消基準として,同一営業所要件(要件b)が必要かどうかという点で重大な差異がある。 以上検討の諸点に加え,許可取消処分が一般貸切旅客自動車運送事業者としての資格を直接に剥奪する重大な不利益処分であることをも踏まえると,近畿運輸局長が一般貸切旅客自動車運送事業者に対して,法33条違反を理由に許可取消処分を行うに際しては,処分の原因となる事実関係についてどのような根拠法条や処分基準(処分基準公示ないし個別基準公示の該当箇所)を適用したかを,処分の名宛人において,本件通知書の記載自体から了知し得る程度に記載しなければならないとともに,法33条違反の事実がどの営業所において現実に行われたものであるかについて具体的に記載して明らかにしなければ,処分の名宛人においてどのような処分基準の適用によって許可取消処分が選択されたのかを知ることができないものというべきである。 (3)これを本件処分について見るに,本件通知書(甲5)には,①違反事実(適用条項)として,「一般貸切旅客自動車運送事業をBにその名において経営させていた。」「(道路運送車両法第33条第1項,第2項)」と記載 - 17 -され,②かかる違反事実によって許可の取消しとしたことについて,「処分基準 自動車運送事業をBにその名において経営させていた。」「(道路運送車両法第33条第1項,第2項)」と記載 - 17 -され,②かかる違反事実によって許可の取消しとしたことについて,「処分基準1.(2)に定めるところにより,平成20年6月3日付け行政処分による違反事実と同一の違反事実のため再違反を適用したものである。」と説明され,③適用として,「②反復・計画的なものと認められるもの(再違反適用)」と記載されているものの,同違反事実がどの営業所において行われたかは明記されていない。この点,本件通知書の違反事実の前には括弧書きで「平成21年3月27日,平成21年6月17日,平成21年7月13日に行った監査時における本社営業所に係る違反」と記載していること(甲5)に照らせば,近畿運輸局長が上記違反事実は本社営業所における違反であると評価していると看取することも不可能ではない。しかしながら,本件処分時には,点呼の記録事項の不備も違反事実として指摘されているところ,本件通知書では当該違反事実について「b営業所の点呼記録について,点呼執行者名の記載に不備があった。」と,同違反事実がb営業所における違反事実であることを明記しており(甲5),上記「本社営業所に係る違反」との記載とは整合性を有しないものとなっているほか,このように点呼記録に係る違反においてはどの営業所に係る違反であるかを明記していることと対比すると,近畿運輸局長は,本件通知書の作成に当たり,本件違反事実については営業所名を明記していないものとみるほかない。また,本件通知書の記載自体からは,近畿運輸局長が本件違反事実をどのような根拠により本社営業所における違反と評価したか(すなわち,聴聞時(乙26の2)とは異なり原告の本社営業所における事業をBに貸し渡したという事実を認定したのか ,近畿運輸局長が本件違反事実をどのような根拠により本社営業所における違反と評価したか(すなわち,聴聞時(乙26の2)とは異なり原告の本社営業所における事業をBに貸し渡したという事実を認定したのか,それとも原告のb営業所における事業をBに貸し渡したという事実を認定し,これを本社営業所における違反と評価したのか(なお,b営業所における事業を貸し渡したとの事実をもって,本社営業所における違反とは通常考え難く,近畿運輸局長においてかかる評価をしているものとは一般には想定されないものと解される。))については,何らの手がかりも見出すこ - 18 -とができず,本件通知書の名宛人である原告において,本件通知書の記載自体からは,本件違反事実がどの営業所において行われたものかを知ることができないものと解するのが相当である。また,前記(2)のとおり,処分基準公示1(2)及び個別基準公示別添の表に基づく基準は,許可取消の要件として,同一営業所における違反であること(同一営業所要件(要件b))を定めているのに対し,処分基準公示5(5)においては,かかる要件は記載されておらず,同一営業所要件は必要とされていないものと解されるところであり,両基準は,許可取消基準として,同一営業所要件(要件b)が必要かどうかという点で重大な差異があることに照らせば,本件違反事実がどの営業所において行われたものかは,本件違反事実に対していかなる基準が適用されるべきかを検討する上でも非常に重要なものといえ,この点が明らかにされていない以上,本件通知書の記載内容から読み取れる処分基準公示1(2)及び個別期日公示添付の表の適用の適否も的確に判断することができないものといわなければならない。 (4)以上の検討結果に照らせば,本件処分に係る本件通知書の記載内容は,行政手続法14 公示1(2)及び個別期日公示添付の表の適用の適否も的確に判断することができないものといわなければならない。 (4)以上の検討結果に照らせば,本件処分に係る本件通知書の記載内容は,行政手続法14条1項本文の趣旨に照らし,同項本文の要求する理由提示としては十分でないといわなければならず,本件処分は,同項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法な処分であるというべきであって,取消しを免れない。 2 よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官田中健治 - 19 - 裁判官尾河吉久 裁判官長橋正憲
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