令和6(わ)29 有印私文書偽造・同行使被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年1月14日 山口地方裁判所 周南支部
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判決文本文4,907 文字)

令和7年1月14日宣告令和6年(わ)第29号、第39号、第46号有印私文書偽造・同行使被告事件判 決主 文被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 押収してある残高証明書10通(令和6年押第5号符号1ないし10)及び証券残高等証明書2通(同号符号11、12)の各偽造部分を没収する。 理 由(罪となるべき事実)被告人は、公益財団法人A財団(以下、「財団」という。)の事務局管理課主幹として、財団の経理業務に従事していたものであるが、第1 財団の会計監査に当たり、実際の財団の資産残高が財産目録上の資産残高よりも少ないことを監事に秘匿するため、B信用金庫C支店が発行する残高証明書を偽造しようと企て1【令和6年5月15日付け起訴状記載の公訴事実】令和元年5月17日頃、山口県周南市ab番地のc所在のD会館において、行使の目的で、いずれもB信用金庫C支店名義の証明対象日を平成31年4月25日とする財団の定期預金口座の残高証明書(残高合計金額7000万円)1通及び証明対象日を令和元年5月15日とする財団の定期預金口座の残高証明書(残高金額2000万円)1通の証明対象日の各日付欄の数字を消しゴムで消して、あらかじめ入手していた未記入のB信用金庫C支店の残高証明書の感圧紙を利用して、同日付欄に「31」、「3」、「31」などとそれぞれ記載し、もって平成31年3月 31日現在の財団の定期預金口座の残高を証明するB信用金庫C支店名義の残高証明書2通(令和6年押第5号符号1、2)を偽造した上、令和元年5月21日、同D会館理事長室において実施された監査に際し、財団職員Eをして、前記偽造にかかる残高証明書2通を真正に成立したもののように装って、監事 和6年押第5号符号1、2)を偽造した上、令和元年5月21日、同D会館理事長室において実施された監査に際し、財団職員Eをして、前記偽造にかかる残高証明書2通を真正に成立したもののように装って、監事であるFらに提出して行使した。 2【令和6年6月13日付け起訴状記載の公訴事実第1】令和2年5月20日頃、同D会館において、行使の目的で、いずれもB信用金庫C支店名義の証明対象日を同年4月24日とする財団の定期預金口座の残高証明書(残高合計金額6500万円)1通、証明対象日を同年5月12日とする財団の定期預金口座の残高証明書(残高合計金額3500万円)1通及び証明対象日を同年同月18日とする財団の定期預金口座の残高証明書(残高金額2000万円)1通の証明対象日の各日付欄の数字を消しゴムで消して、あらかじめ入手していた未記入のB信用金庫C支店の残高証明書の感圧紙及びボールペンを利用して、同日付欄に「3」、「31」などとそれぞれ記載し、もって同年3月31日現在の財団の定期預金口座の残高を証明するB信用金庫C支店名義の残高証明書3通(令和6年押第5号符号3ないし5)を偽造した上、同年5月21日、同D会館地下展示室において実施された監査に際し、前記Eをして、前記偽造にかかる残高証明書3通を真正に成立したもののように装って、監事である前記Fらに提出して行使した。 3【令和6年6月13日付け起訴状記載の公訴事実第2】令和3年5月14日頃、同D会館において、行使の目的で、いずれもB信用金庫C支店名義の証明対象日を同年4月23日とする財団の定期預金口座の残高証明書(残高合計金額6927万9759円)1通、証明対象日を同年同月30日とする財団の定期預金口座の残高証明書(残高合計金額4000万円)1通及び証明対象日を同年5月10日 とす 金口座の残高証明書(残高合計金額6927万9759円)1通、証明対象日を同年同月30日とする財団の定期預金口座の残高証明書(残高合計金額4000万円)1通及び証明対象日を同年5月10日 とする財団の定期預金口座の残高証明書(残高合計金額2000万円)1通の証明対象日の各日付欄の数字を消しゴムで消して、あらかじめ入手していた未記入のB信用金庫C支店の残高証明書の感圧紙及びボールペンを利用して、同日付欄に「3」、「31」、「1」などとそれぞれ記載し、もって同年3月31日現在の財団の定期預金口座の残高を証明するB信用金庫C支店名義の残高証明書3通(令和6年押第5号符号6ないし8)を偽造した上、同年5月18日、同D会館地下展示室において実施された監査に際し、前記Eをして、前記偽造にかかる残高証明書3通を真正に成立したもののように装って、監事である前記Fらに提出して行使した。 4【令和6年6月13日付け起訴状記載の公訴事実第3】令和4年4月28日頃、同D会館において、行使の目的で、いずれもB信用金庫C支店名義の証明対象日を同年同月25日とする財団の定期預金口座の残高証明書(残高合計金額7500万円)1通及び証明対象日を同年同月26日とする財団の定期預金口座の残高証明書(残高合計金額5500万円)1通の証明対象日の各日付欄の数字を消しゴムで消して、あらかじめ入手していた未記入のB信用金庫C支店の残高証明書の感圧紙及びボールペンを利用して、同日付欄に「3」、「31」などとそれぞれ記載し、もって同年3月31日現在の財団の定期預金口座の残高を証明するB信用金庫C支店名義の残高証明書2通(令和6年押第5号符号9、10)を偽造した上、同年5月11日、同D会館地下展示室において実施された監査に際し、財団職員Gをして、前記偽造にかかる残高 を証明するB信用金庫C支店名義の残高証明書2通(令和6年押第5号符号9、10)を偽造した上、同年5月11日、同D会館地下展示室において実施された監査に際し、財団職員Gをして、前記偽造にかかる残高証明書2通を真正に成立したもののように装って、監事である前記Fらに提出して行使した。 第2 財団の会計監査に当たり、財団が資産として保有していた社債が株式に転換された上、同株式の評価額が元本を下回っていることを監事 に秘匿するため、H証券株式会社が発行する証券残高等証明書を偽造しようと企て1【令和6年7月23日付け起訴状記載の公訴事実第1】令和3年5月10日頃、前記D会館において、行使の目的で、H証券株式会社名義の証明対象日を令和2年3月31日とする財団の証券残高等証明書(社債数量3000万円)1通の複写を2枚用意し、そのうちの1枚の証明対象日欄及び償還日欄の年の数字の上に、もう1枚から切り取った数字を貼り付けるなどして、証明対象日欄を「2021年3月31日」、償還日欄を「2022年5月19日」と改変した上、これをコピー機により黄色の用紙に印刷し、もって令和3年3月31日現在の財団の証券残高等を証明するH証券株式会社名義の証券残高等証明書1通(令和6年押第5号符号11)を偽造した上、同年5月18日、同D会館地下展示室において実施された監査に際し、前記Eをして、前記偽造にかかる証券残高等証明書1通を真正に成立したもののように装って、監事である前記Fらに提出して行使した。 2【令和6年7月23日付け起訴状記載の公訴事実第2】令和4年5月上旬頃、同D会館において、行使の目的で、第2の1記載のH証券株式会社名義の証券残高等証明書1通の複写を2枚用意し、そのうちの1枚の証明対象日欄及び償還日欄の年の数字の上に、もう1枚か 令和4年5月上旬頃、同D会館において、行使の目的で、第2の1記載のH証券株式会社名義の証券残高等証明書1通の複写を2枚用意し、そのうちの1枚の証明対象日欄及び償還日欄の年の数字の上に、もう1枚から切り取った数字を貼り付けて、証明対象日欄を「2022年3月31日」、償還日欄を「2022年5月19日」と改変し、さらに、これに令和4年4月頃に発行されたH証券株式会社名義の証券残高等証明書1通の複写から切り取った同社の社印等を貼り付けるなどした上、これをコピー機により黄色の用紙に印刷し、もって令和4年3月31日現在の財団の証券残高等を証明するH証券株式会社名義の証券残高等証明書1通(令和6年押第5号符号12)を偽造した上、令和4年 5月11日、同D会館地下展示室において実施された監査に際し、前記Gをして、前記偽造にかかる証券残高等証明書1通を真正に成立したもののように装って、監事である前記Fらに提出して行使した。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)本件は、公益財団法人であるA財団の会計業務に従事していた被告人が、平成19年の年度末頃に二、三千万円もの資金欠損に気付いたが、独自に欠損金の回収をして資金欠損を隠蔽しようと考え、令和元年から令和4年にわたり、年度ごとの会計監査の際、財団が有する資産を証明する残高証明書等を偽造して、これらを提示して行使した、という有印私文書偽造・同行使6件の事案である。 被告人は、偽造にあたり、財団の定期預金口座の新規契約や解約を繰り返し、同口座の残高証明書等を入手した上、それらに感圧紙を用いて文字を記入したり、真正な文書の写しから数字等を切り貼りしたりすることで、証明対象日等を偽造した残高証明書等を作成した。偽造された文書自体、このように巧妙に作成されたものである上 らに感圧紙を用いて文字を記入したり、真正な文書の写しから数字等を切り貼りしたりすることで、証明対象日等を偽造した残高証明書等を作成した。偽造された文書自体、このように巧妙に作成されたものである上、監査の際、これらの偽造文書記載の金額と一致させて粉飾処理した決算書と共に提示して行使しており、偽造された各文書の信用を害している。さらに、本件各犯行によって会計監査の目的が妨げられ、何者かによる窃取ないし横領等や被告人による資産運用の失敗によって拡大する財団の資金欠損にしかるべき措置がとられないまま、最終的に1億4000万円以上の資金欠損が生じるに至ったのであるから、生じた結果や影響は重大である。 被告人は、その動機について、多額の資金欠損が発覚することで財団が 市の指定管理者の地位を取り消されることを危惧し、財団を守るために行ったとか、自らの会計責任やそれまでの偽造行為を追及されることをおそれる気持ちもあったなどと説明している。いずれも被告人がこのような犯行に及ぶ動機としてにわかに理解できるものではないが、被告人の供述を前提にしても、前記のとおり、結局、本件各犯行によって財団の財産流出を拡大させ、財団職員である被告人が犯罪行為でそれを隠蔽したことで、財団の社会的信用が更に損なわれる結果を招いている。このような事態は本件各犯行当時も当然想定し得たはずであるのに、財団の幹部らに資金欠損について何ら報告や相談をすることなく、被告人の身勝手な判断で各犯行に及ぶことを決意したものであるから、被告人の述べる動機や経緯に酌量すべき点はなく、その意思決定は強い非難を免れない。 したがって、被告人の刑事責任はこの種事案の中でも重いというべきである。 他方、被告人が本件各犯行を認め、一応反省の弁を述べていること、1167万円を財団の資金欠損 定は強い非難を免れない。 したがって、被告人の刑事責任はこの種事案の中でも重いというべきである。 他方、被告人が本件各犯行を認め、一応反省の弁を述べていること、1167万円を財団の資金欠損の穴埋めのために充てたこと、前科前歴がないことなどの酌むべき事情も認められる。 このほか、同種事案の量刑傾向なども踏まえると、本件について被告人を直ちに実刑に処すべきとまではいえないから、被告人に対しては、主文の懲役刑を科した上で、その刑の執行を猶予することが相当であると判断した。 (求刑懲役3年、主文掲記の没収)(検察官生貝由香里、松本浩二、私選弁護人沖本浩(主任)、𠮷川五男)令和7年1月15日山口地方裁判所周南支部 裁判官岩谷彩

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