平成16(行ウ)9 解職請求署名簿の無効確認請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年1月26日 高松地方裁判所 地方自治
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判決文本文4,504 文字)

主文 1 原告の訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,被告が平成16年10月11日付けでなした告示(三野町選挙管理委員会告示第103号)に係る香川県三豊郡三野町長A解職請求者署名簿の署名の効力が無効であることを確認する。 第2 事案の概要等 1 概要本件は,三野町長である原告が,平成16年7月20日,訴外Bを請求代表者として被告に提出された「香川県三豊郡三野町長A解職請求書」に係る解職請求(以下「本件解職請求」という。)についての署名簿(以下「本件署名簿」という。)が署名用紙1枚ごとに分けて署名を集めたものであって法定の要件を具備せず,また,請求代表者又はその者から委任を受けた者ではない者が署名を集めていること等を理由に,被告が平成16年10月11日付けで行った三野町長解職投票の期日を同月31日とする旨の告示第103号(以下「本件告示」という。)に係る本件署名簿の署名の効力が無効である旨の確認を求めたものである。 2 前提事実(掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって認められる事実)(1) 当事者原告は,平成13年3月,三野町長に選出され,平成16年7月20日当時も三野町長の職にあった(弁論の全趣旨)。 (2) 本件解職請求Bは,平成16年7月20日,被告に対して,三野町長である原告を解職する旨の住民投票を実施することを求める内容の本件解職請求を行った(甲1の1)。 被告は,同月21日,Bに対して,同人が本件解職請求についての解職請求代表者である旨を証する証明書を交付した(甲1の2)。 (3) 縦覧手 の本件解職請求を行った(甲1の1)。 被告は,同月21日,Bに対して,同人が本件解職請求についての解職請求代表者である旨を証する証明書を交付した(甲1の2)。 (3) 縦覧手続被告は,平成16年8月27日から同年9月2日までの間の午前8時30分から午後5時00分まで,三野町役場において,本件解職請求に係る本件署名簿を縦覧に供した(甲1の3)。 (4) 有効署名数の告示被告は,平成16年9月10日,本件署名簿の縦覧に供したところ,本件署名簿の署名の効力についての異議申出が5件あり,そのすべての異議について決定したとして,本件署名簿における有効署名の総数が3169人である旨の告示(三野町選挙管理委員会告示第77号)をした(甲1の5)。 (5) 本件告示被告は,平成16年10月11日,三野町長解職投票の期日を同月31日とする旨の本件告示を行った(甲5の1)。 (6) 本件訴え提起原告は,平成16年10月13日,本件訴えを提起した。 3 当事者の主張の要旨原告は,本件署名簿は,①解職請求書等の書類と署名用紙を順次一括して編綴した上で,有権者に対して署名簿への署名を求める必要があるにもかかわらず,本件署名簿は,解職請求書等の書類と署名用紙が分離された上,署名用紙が1枚ごとに分けられて,有権者の署名が収集されているから法定の要件を具備していないこと,②請求者または請求者から委任を受けた者が,直接,有権者に署名簿への署名押印を求めなければならないのにもかかわらず,請求代表者または請求者から委任を受けた者ではない者が署名を収集していること等を理由に,本件署名簿の署名が無効である旨の確認を求めている。 これに対し,被告は,原告の ないのにもかかわらず,請求代表者または請求者から委任を受けた者ではない者が署名を収集していること等を理由に,本件署名簿の署名が無効である旨の確認を求めている。 これに対し,被告は,原告の本件訴えは,そもそも,行政事件訴訟法の規定する無効確認等の訴えに含まれないこと,原告の本件訴えを地方自治法74条の2第8項に基づくものと解しても,原告適格を欠き,また,適法な出訴期間内に提訴されたものでないから不適法なものであり却下されるべきである旨主張するとともに,本件署名簿の署名全部を無効とする事由は存在しないとして原告の請求を棄却することを求めている。 第3 当裁判所の判断 1 地方自治法74条の2の解釈(1) 地方自治法によれば,地方公共団体の長の解職請求手続に関し,請求代表者が,署名簿の書面の審査を請求し,これに対して,選挙管理委員会が20日以内にその効力を審査し,署名の効力を決定し,その旨を証明し,その署名簿の署名の証明が終了したときは,その日から7日間,審査署名簿を縦覧に供し,署名簿の署名に関する異議の申出がある者は上記縦覧期間に異議を申し出,選挙管理委員会は,その申出を受けた日から14日以内にこれに対する決定及び申出を正当であると決定した場合の修正に関する申出人及び関係人に対する通知並びに告示,申出を正当でないと決定した場合の申出人に対する通知を行い,上記異議申出がないとき又はすべての異議申出についての決定をしたときは,その旨及び有効署名者の総数の告示,署名簿の返付,以上の手続が順次予定されている(地方自治法81条2項,74条の2第1項ないし第6項)。 そして,上記署名簿の署名についての異議申出に対する決定(地方自治法81条2項,74条の2第5項)に不服がある者は,その決定のあった日から14日以内に, 条の2第1項ないし第6項)。 そして,上記署名簿の署名についての異議申出に対する決定(地方自治法81条2項,74条の2第5項)に不服がある者は,その決定のあった日から14日以内に,地方裁判所に対して本件署名簿の署名に関する決定の取消しを求める訴えを提起しなければならないとされている(地方自治法81条2項,74条の2第8項)。 (2) この点,地方自治法74条の2に規定する署名の効力に関する争訟は,個々の署名の効力の有無を対象とするものであるが,同条の争訟で同時に複数の署名の効力を争うことは何らの支障もなく,署名簿そのものの効力を争うことは全部の署名の効力を争うことに帰するということができるから,同条が規定する争訟には,署名簿そのものの効力を争う場合も包含されていると考えられる。 そして,地方自治法74条の2は,上記(1)記載のとおり,署名簿の署名の証明,署名簿の縦覧,署名に関する審査といった事項とともに,署名簿の署名に関する決定の取消しを求める訴えの手続,提訴期間について詳細に規定するところ,同法256条は,普通地方公共団体における直接請求の署名簿の署名の効力については,同法に定められた争訟の提起期間及び管轄裁判所に関する規定によってのみこれを争うことができる旨を規定する。 そうすると,地方自治法256条の規定によって,直接請求制度に関する署名簿の署名に関する紛争については,一律に地方自治法74条の2の規定に基づいて早期に審理を行うことで,民意を迅速に集約させて早期に民主主義制度を回復することが期待されていると考えるのが相当である。 以上によれば,本件署名簿全体の署名の無効を求める訴訟を提起すること自体は否定されないとしても,かかる訴訟も,異議申出に対する決定の取消しを求め 期待されていると考えるのが相当である。 以上によれば,本件署名簿全体の署名の無効を求める訴訟を提起すること自体は否定されないとしても,かかる訴訟も,異議申出に対する決定の取消しを求める場合と同じく地方自治法74条の2が規定する争訟手続のみによって争うことができると解するのが相当である。 2 検討(1) 前提事実(1),(2)によれば,原告は被解職請求者本人であるから,地方自治法74条の2第4項の規定する「関係人」と解することができ,原告自身が同項に基づく異議を申し出ていないとしても,同条8項の署名簿の署名の効力に関する訴訟において原告適格を有する者ということができる。 (2) しかし,上記1(1)記載の条文の体裁によれば,署名簿の署名に関する争訟(地方自治法81条2項,74条の2第8項に基づく訴訟の提起)は,本件署名簿の署名に関する関係人による異議(地方自治法81条2項,74条の2第4項),及びかかる異議申出に対する市町村の選挙管理委員会による決定(地方自治法81条2項,74条の2第5項)といった手続を前提とするものであるから,本件訴えが,本件署名簿の署名が無効であることの確認を求める訴えの体裁をとっていたとしても,署名簿の署名に関する関係人の異議に対する市町村の選挙管理委員会による決定から14日以内に提起しなければならないというべきである。 けだし,地方自治法74条の2は,直接請求制度に関する署名簿の署名に関する争訟につき,上記1(1)のように署名簿の署名の審査に対する選挙管理委員会の審査期間,署名簿の縦覧期間,異議申出期間,異議申出から決定までの期間,提訴期間を厳格に規定しているが,仮に,被解職請求者が,いつまでも,地方自治法81条2項,74条の2第8項の規定する署名簿の署名に関する争訟 名簿の縦覧期間,異議申出期間,異議申出から決定までの期間,提訴期間を厳格に規定しているが,仮に,被解職請求者が,いつまでも,地方自治法81条2項,74条の2第8項の規定する署名簿の署名に関する争訟を提起できるとすれば,直接請求制度に関する署名簿の署名に関する紛争を早期に解決しようとする地方自治法74条の2の規定の趣旨を没却し,早期の民意の集約という直接請求制度の要請に反するし,また,法的安定性を害する事態を招くこととなり,不合理である。 (3) そして,前提事実(3),(4)及び証拠(甲1の7,8,甲2の1~3)によれば,被告は,本件署名簿を縦覧に供したところ,訴外C,同D,同E等からの異議の申出が5件あり,その全ての異議について決定したとして,平成16年9月10日,有効署名の総数が3169名である旨の告示を行っていることが認められる。 そうすると,被告は,遅くとも,平成16年9月10日には,本件署名簿の署名の効力に関する全ての異議に対する決定をしていることとなるところ,原告が,本件訴えを提起したのは平成16年10月13日であるから,同日までには,地方自治法74条の2第8項に規定する14日の出訴期間が既に経過していたといわざるを得ない。 したがって,原告の本件訴えは,本件署名簿の署名の効力に関する争訟は,署名簿の署名に関する異議の申出に対する決定のあった日から14日以内に提起しなければならないとした地方自治法81条2項,74条の2第8項の規定を遵守していないこととなる。 3 結論よって,本件訴えは不適法であるから,その余の点について判断するまでもなく却下することとし,主文のとおり判決する。 高松地方裁判所民事部 裁判長裁判官 件訴えは不適法であるから,その余の点について判断するまでもなく却下することとし,主文のとおり判決する。 高松地方裁判所民事部 裁判長裁判官豊永多門裁判官山口格之裁判官角田康洋

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