平成20(行コ)19 損害賠償(住民訴訟)請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第335号)

裁判年月日・裁判所
平成20年7月30日 東京高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文7,243 文字)

- 1 -主文本件各控訴をいずれも棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求める裁判 控訴の趣旨( )原判決を取り消す。 ( )被控訴人は,Aに対し14万7870円,Bに対し10万1640円, Cに対し66万2641円,Dに対し88万2824円及びEに対し101万1100円並びにこれらに対する平成19年6月14日(訴状送達の日)から支払済みまで年5分の割合による各金員の支払を請求せよ。 ( )被控訴人は,東村山市の非常勤嘱託職員に対し,退職金(離職報償金) を支払ってはならない。 ( )訴訟費用は第1,第2審とも被控訴人の負担とする。 控訴の趣旨に対する答弁主文同旨第2事案の概要 事案の要旨,,,( )本件は東村山市の住民であり同市の市議会議員でもある控訴人らが 東村山市の嘱託職員の離職に当たって同市が離職報償金(平成19年3月29日制定された「東村山市嘱託職員退職手当支給条例(以下「支給条例」」という)により同趣旨の手当は「退職手当」とされた。以後適宜使い分け。 る)を同職員に支給したことは条例の根拠を欠く違法な支給であるから無。 効であると主張して,被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づいて既に受給した者らに対して受給した離職報償金相当額につき不当利得返還請求をするよう求めるとともに,同項1号に基づいて同市の嘱託職- 2 -員に対する退職手当の支給の差止めを求める事案である。 被控訴人は,上記請求に係る訴えのうちAに対して不当利得返還請求をするよう求める部分(以下「Aに関する部分」という)については,監査請。 求期間徒過後に監査請求された不適法なものであり,東村山市議会議員として委員会等で質疑をしたり東村山市における情報公開制 求をするよう求める部分(以下「Aに関する部分」という)については,監査請。 求期間徒過後に監査請求された不適法なものであり,東村山市議会議員として委員会等で質疑をしたり東村山市における情報公開制度を利用したりすることにより,平成17年12月26日に離職報償金が支給されたことは同日以降容易に判明したことからすると,同人に関する監査請求は地方自治法242条2項ただし書所定の「正当な理由」も認められないとして,同人に関する部分の訴えについて不適法却下を求めた。 ( )原判決は,Aに関する部分の本案前の争点につき,控訴人らが平成17 年度において東村山市の嘱託職員に対し離職報償金が支給されたこと及びその合計額を具体的に知った日は平成19年3月7日であり,控訴人らは同日監査請求をしており,この日より前にAに対して離職報償金が支給されたことが具体的に何らかの方法で公にされていたことをうかがわせる証拠はないとして,Aに対し離職報償金が支給された平成17年12月16日から1年以上を経過した後にされた控訴人らの上記支給に係る監査請求について,地方自治法242条2項ただし書所定の「正当な理由」があると判断した。 次いで本案の争点について原判決は,東村山市の嘱託職員は,その勤務の内容及び態様,嘱託職員の導入の経過及びその役割,並びに報酬額の定め方その他の待遇等の取扱いなどの諸事情を総合的に考慮すれば,地方自治法203条において退職手当の支給が予定されていない「非常勤の職員」ではなく,同法204条において退職手当の支給が予定されている「常勤の職員」に該当するものと認められるとした上で,東村山市の嘱託職員への離職報償金の支給は,条例の根拠を欠いた点においていわゆる給与条例主義の観点から違法と解される余地は存するが,その後に制定された支給条例(嘱託職員に のと認められるとした上で,東村山市の嘱託職員への離職報償金の支給は,条例の根拠を欠いた点においていわゆる給与条例主義の観点から違法と解される余地は存するが,その後に制定された支給条例(嘱託職員に退職手当を支給する等としたもの)及び「東村山市嘱託職員退職手当支給- 3 -条例の一部を改正する条例(支給条例以前に支給された離職報償金は退職」手当の内払とみなす等としたもの。以下「改正条例」という)により,さ。 かのぼって適法なものとなったと解するのが相当であると判断し,控訴人らの請求をいずれも棄却した。 そこで控訴人らは原判決の認定判断を不服として控訴に及んだ。 前提事実,争点及び当事者の主張,( )次項に記載する控訴人らの当審における補充的主張を付け加えるほかは 原判決の「事実及び理由」中の「第2事案の概要」の1ないし4(原判決2頁末行から8頁1行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。 ( )当審における控訴人らの補充的主張 東村山市の嘱託職員について,報酬等条例(非常勤の特別職の職員の報「酬及び費用弁償に関する条例)により「非常勤」職員である旨明示されて」いるにもかかわらず,その勤務実態に着目して実質的な判断をすることで地方自治法上退職手当の支給が許される「常勤」職員とみなしたり,条例上の根拠を欠く退職手当支給の違法性が条例を改正することによりさかのぼって治癒されるなどと解したりすることは,次のとおり地方公共団体のし意的な支給を認め,いわゆる給与条例主義の潜脱を許すことになりかねないので不当であり,是認できない。 すなわち,東村山市は地方交付税削減の影響により新年度予算が50億円も不足する事態に追い込まれており,市民の納税によってのみまかなわれる職員人件費を肥大化させるような支出は取りやめなければならな 。 すなわち,東村山市は地方交付税削減の影響により新年度予算が50億円も不足する事態に追い込まれており,市民の納税によってのみまかなわれる職員人件費を肥大化させるような支出は取りやめなければならない財政状態にある。また,東村山市では,雇用期間が更新され,常勤職員と同様週40時間勤務を行う臨時職員も雇用しているが,臨時職員には退職手当も賞与も支給されていない。このように,条例上「非常勤」であると明示されている嘱託職員について,就労の申込みをした際に退職手当支給制度がなかったにもかかわらず勤務実態に着目して「常勤」職員とみなした上退職手当を支給- 4 -することは,東村山市の財政状況からしても臨時職員との均衡からしても理由がないのである。 第3当裁判所の判断 当裁判所は,控訴人らの請求は理由がなく棄却すべきものと考える。その理由は次のとおりである。 Aに関する部分の訴えの適法性(本案前の争点)について( )証拠(甲1,甲3,乙1ないし4,乙8)及び弁論の全趣旨によれば次 の事実が認められる。 ア東村山市では,東村山市の嘱託職員に対しては報酬等条例を制定していたが,その第1条で「非常勤の特別職の職員の報酬は,別表第1,別表第2及び別表第3に定めるとおりとする」と規定し,その別表第3におい。 て,嘱託職員の報酬月額を「職務の複雑性,困難性,及び資任の度に基づき,規則で定める額とする」とした上で,平成4年以降,嘱託職員規則。 (東村山市嘱託職員に関する規則)に離職報償金の支給についての規「」定を置き,同規定に基づいて東村山市の嘱託職員に対して退職手当と同様の趣旨の離職報償金を支給していた。 イ控訴人らはいずれも平成12年度以降東村山市の市議会議員であり,毎年度8月下旬から9月上旬にかけて最新版の上記条例,規則が登載されて 職員に対して退職手当と同様の趣旨の離職報償金を支給していた。 イ控訴人らはいずれも平成12年度以降東村山市の市議会議員であり,毎年度8月下旬から9月上旬にかけて最新版の上記条例,規則が登載されている例規集を配布されていた。 ウAに対して,平成17年12月16日,嘱託職員規則(平成18年東村山市規則第16号による改正前の嘱託職員規則)19条1項に基づいて離職報償金が支給された。 エ控訴人Fは,平成19年3月7日,東村山市議会において,東村山市長が提案し議題の対象とされた支給条例について質問する際,平成18年度退職手当の支給対象になる者と平成17年度離職した者で離職報償金を受給した者についての具体例を尋ね,東村山市からAに関するものを含む平- 5 -成17年度の嘱託職員離職者の数及びこれらの者に支給された離職報償金の額についての回答を得た。なお,支給条例は平成19年3月29日制定され,同月31日施行されたが,支給条例の施行日よりも前に離職した嘱託職員については,平成19年10月17日に制定,同月23日に施行された改正条例により平成17年4月1日から支給条例が適用され,既に支払われた離職報償金は支給条例及び改正条例に基づく退職手当の内払とみなすこととされた。 オ控訴人らは,平成19年3月7日,Aに対するものも含めて本件監査請求を行った。 ( )ア普通地方公共団体の執行機関,職員の財務会計上の行為が秘密裡にさ れた場合に限らず,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて 存在又は内容を知ることができなかった場合には,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁判所)。 第一小法廷平成14年9月12日判決・民集56巻7号1481頁参照また,当該普通地方公共団体の一般住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて上記の程度に当該行為の存在又は内容を知ることができないような場合であっても,当の監査請求をした者が上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される場合には,上記正当な理由の有無は,そのように解されるときから相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁判所第三小法廷平成14年10月15日判決・裁判集民事208号157頁参照。 )そこで,以下に控訴人らに市議会議員という立場にあったことを考慮し- 6 -てもなお,本件の請求期間につき「正当な理由」があるか検討する。 イ前記( )認定事実によれば,いわゆる給与条例主義(地方自治法203 条5項,204条3項及び204条の2並びに地方公務員法24条6項及び25条1項)により,職員への手当支給等に関する事項については第一次的には条例の確認によりこれを知ることになるところ,支給条例制定前においては,東村山市では条例上嘱託職員へ退職手当及びこれに準ずる手当を支給する旨の明文の規定は存在しなかったのであるから,平成19年3月7日に嘱託職員の離職報償金支給問題が東村山市議会で具体化する以前にAに対し平成17年12月6日離職報償金を支給した行為が公にされていたことをうかがわ 定は存在しなかったのであるから,平成19年3月7日に嘱託職員の離職報償金支給問題が東村山市議会で具体化する以前にAに対し平成17年12月6日離職報償金を支給した行為が公にされていたことをうかがわせる証拠がないことからすれば,東村山市の一般住民としては相当の注意力をもって調査しても同支給を知ることはできなかったものと認められ,これを知ることができた時期は平成19年3月7日以降と認めるのが相当というべきであり,同日から相当な期間内に監査請「」求をしたかどうかで地方自治法242条2項ただし書所定の正当な理由の有無が判断されることになる。 ところで,控訴人らはいずれも単に東村山市の住民というにとどまらず平成12年以来同市の市議会議員という立場にあり,毎年議員として配布される例規集にある同市嘱託職員に関する規則を閲覧することにより,容易に離職報償金の規定の存在を了知することができたし,かつ,Aに対し離職報償金が支給された平成17年12月16日以降,同議員として委員会等における質疑や情報公開請求等必要な調査を行うなどすれば離職報償金の支給対象者や支給額を具体的に把握することが可能であったといえなくはないのであるから,上記支給から1年以内に相当の注意力をもって調査すれば客観的にAに対する離職報償金の支出について監査請求をするに足りる程度にその存在及び内容を知ることができたはずだという被控訴人の指摘にはもっともな点がある。しかしながら,控訴人らは東村山市とい- 7 -う一地方自治体の市議会議員であるし,その職務内容の実体あるいは活動実態が必ずしも明らかではない本件訴訟手続の中では,あるべき姿勢はともかくとして,控訴人らについて上記のような理解をもってするのが現実に即した合理的なものといえるものかなお疑問がないではなく,すると前記認定のとお らかではない本件訴訟手続の中では,あるべき姿勢はともかくとして,控訴人らについて上記のような理解をもってするのが現実に即した合理的なものといえるものかなお疑問がないではなく,すると前記認定のとおり平成19年3月7日以前に嘱託職員に対する離職報償金の支給が東村山市の市議会議員の知るところとなった事実,あるいは市議会議員においてAに対して離職報償金が支給されたことを示す内部資料を入手したなどの事実などを認めるに足りる証拠がないことなどからすると,前記認定の経緯で同日控訴人らが初めて条例の根拠なく嘱託職員であるAに対して離職報償金の支給がされている事実を知り,即日監査請求をしていることを併せ考慮すると,控訴人らの上記監査請求は地方自治法242条2項本文所定の期間を徒過してされた違法なものではあるが,なお同項ただし書所定の「正当な理由」があるものと解して差し支えないものというべきであり,Aに対する部分に係る本件訴えは適法というべきである。 したがって,被控訴人のこの点の主張は採用できない。 本案の争点について( )控訴人らの本件各請求がいずれも理由のないものであることは,次項の とおり当審における控訴人らの補充的主張に対する判断を付け加えるほかは,原判決の「第3争点に対する判断」の2(原判決8頁15行目から原判決14頁4行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ( )控訴人らの当審における補充的主張に対する判断 ,,「」ア控訴人らは東村山市の現在の財政状況下では報酬等条例で非常勤であることが明示されている本件嘱託職員らに対し,条例上の根拠を欠く中で離職報償金あるいは退職手当を支給することは,臨時職員との均衡の点からしても,許されないと主張する。 しかしながら,まず常勤職員と非常勤職員との定義に関する定めのな 員らに対し,条例上の根拠を欠く中で離職報償金あるいは退職手当を支給することは,臨時職員との均衡の点からしても,許されないと主張する。 しかしながら,まず常勤職員と非常勤職員との定義に関する定めのない- 8 -地方自治法においては,両者の法的性質の区別は,任用方法ないし基準,勤務内容及び態様,報酬の支給その他の待遇等を総合的に考慮して実質的に判断せざるを得ず,それが地方自治法の趣旨にも沿う合理的な解釈というべきである。なお,その区別のある地方公務員法(報酬等条例は同法の適用により常勤職員と非常勤職員を区別している)と地方自治法とは趣。 旨,目的が異なるのであるから,地方公務員法上の非常勤職員が当然に地方自治法上の非常勤職員に該当すると解することはできない。 そして,上記原判決に認定のとおり,東村山市の嘱託職員は勤務時間のみならずその職務内容も常勤職員と同様であり,勤務実態からみて常勤職員に該当することが認められるから,勤務時間が嘱託職員と同様であるだけで勤務実態等が大きく異なる臨時職員との間で処遇上の均衡を考慮しなければならない理由はない。したがって,本件嘱託職員らに対する退職手当の支給は地方自治法204条1項にいう「常勤の職員」に該当する職員に対する支給ということができるから適法である。 なお,上記の点だけでは給与条例主義違背の疑念を残すとしても,嘱託職員に退職手当を支給する旨定めた支給条例と,併せて従前の嘱託職員に対して支給された離職報償金については上記退職手当の支給の内払とみなす旨定めた改正条例とが制定されたことにより,上記の瑕疵がさかのぼって治癒され,本件嘱託職員らに対する離職報償金(退職手当)の支給は適法なものとされたというべきであることは原判決13頁の( )争点( )(「3 イについて)の説示するとおりである。 のぼって治癒され,本件嘱託職員らに対する離職報償金(退職手当)の支給は適法なものとされたというべきであることは原判決13頁の( )争点( )(「3 イについて)の説示するとおりである。 」イ控訴人らは,当審においてその他にもるる主張するが,いずれも原審における主張を基本とする繰り返しにすぎず,その理由のないことは既に詳述したところから明らかである。 したがって,以上と同旨の原判決は相当であり,本件各控訴はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 - 9 -東京高等裁判所第15民事部裁判長裁判官藤村啓裁判官佐藤陽一裁判官大浜寿美

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