平成30(ワ)32478

裁判年月日・裁判所
令和3年1月21日 東京地方裁判所
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判決文本文26,579 文字)

令和3年1月21日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第32478号商標権侵害行為差止等及び不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日令和2年11月12日判決 原告現代の理論編集委員会(以下「原告編集委員会」という。)同代表者代表編集委員A 原告B(以下「原告B」という。)上記両名訴訟代理人弁護士荒木昭彦同和田史郎 被告特定非営利活動法人NPO現代の理論・社会フォーラム(以下「被告NPO」という。) 被告株式会社同時代社(以下「被告会社」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士三尾美枝子同山田さくら 主文 1 原告編集委員会の本件訴えをいずれも却下する。 2 原告Bの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは、それぞれ、「現代の理論」という標章を付した出版物の出版、販売若しくは販売のための展示又は頒布をしてはならない。 2 被告NPOは、別紙出版物目録記載1の出版物を、被告らは、同目録記載2の出版物を、それぞれ廃棄せよ。 3 被告 た出版物の出版,販売 若しくは販売のための展示又は頒布をしてはならない。 2 被告NPOは,別紙出版物目録記載1の出版物を,被告らは,同目録記載2の出版物を,それぞれ廃棄せよ。 3 被告らは,連帯して,原告ら各自に対し,それぞれ55万円及びこれに対する平成30年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払 え。 第2 事案の概要 1 本件は,⑴ 「現代の理論」季刊電子版(以下「原告出版物」という。)を発行している権利能力なき社団と主張する原告編集委員会が,被告NPOは,原告編集委 員会ないしその構成員である原告Bその他の編集委員(以下,原告Bその他の編集委員を「原告Bら」という。)との間で,「現代の理論」という名称の出版物を発行しない旨の合意(以下「本件合意」という。)をしたにもかかわらず,原告編集委員会の商品等表示として需要者の間に広く認識されている「現代の理論」という標章(以下「原告標章」という。)と同一の商品等表示 である「現代の理論」という標章(以下「被告標章」という。)を付した別紙出版物目録記載1及び2の各出版物(以下「被告出版物」という。)の出版販売等をし,被告会社は,そのうち同目録記載2の各出版物の発売元として,その販売等をしていると主張して,被告NPOに対しては本件合意及び不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号,3条1項,2項に基づ き,被告会社に対しては同法2条1項1号,3条1項,2項に基づき,被告 標章を付した出版物の出版販売等の差止め及び被告出版物の廃棄を求めるとともに,被告NPOに対しては平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)415条,不競法4条,5条3項1号又は民法709条に基づき,被告会社に対して 版物の廃棄を求めるとともに,被告NPOに対しては平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)415条,不競法4条,5条3項1号又は民法709条に基づき,被告会社に対しては不競法4条,5条3項1号又は民法709条に基づき,連帯して55万円及びこれに対する訴状送達の日の 翌日である平成30年11月30日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,⑵ 別紙原告商標権目録記載の商標権(以下「原告商標権」といい,その登録商標である「現代の理論(標準文字)」を「原告商標」という。)を有している原告Bが,被告NPOは,原告編集委員会ないしその構成員である原告B らとの間で,本件合意をしたにもかかわらず,被告らは,原告商標と同一の標章である被告標章を付した被告出版物の出版販売等をして,原告商標権を侵害していると主張して,被告NPOに対しては本件合意及び商標法36条1項,2項に基づき,被告会社に対しては同条1項,2項に基づき,被告標章を付した出版物の出版販売等の差止め及び被告出版物の廃棄を求めると ともに,改正前民法415条,商標法38条3項又は民法709条に基づき,連帯して55万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年11月30日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,末尾の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。なお,枝番号の記載を省略したものは,枝番号を含む。以下同様。)⑴ 当事者ア原告Bは,原告商標権の商標権者であり,原告編集委員会の事務局長と 主張する者である。 イ被告NPOは,平成17年7月15日に法人化された特定非営 同様。)⑴ 当事者ア原告Bは,原告商標権の商標権者であり,原告編集委員会の事務局長と 主張する者である。 イ被告NPOは,平成17年7月15日に法人化された特定非営利活動法人(NPO)であり,平成20年5月9日,名称を「特定非営利活動法人言論NPO・現代の理論」から「特定非営利活動法人NPO現代の理論・社会フォーラム」に変更した(甲4)。 ウ被告会社は,主に書籍及び印刷物の企画制作,販売を業とする株式会社 である。 ⑵ 雑誌「現代の理論」ア雑誌「現代の理論」は,昭和34年5月に月刊誌として創刊され,同年9月頃に一時終刊になったものの,昭和39年1月に再刊され,その後,平成元年12月に再び終刊となった。 雑誌「現代の理論」(乙2~12)は,平成16年10月に季刊誌として再刊された。なお,同雑誌には,「発行人/C」,「発行所/言論NPO・現代の理論」,「発売/㈱明石書店」などと記載されている。 雑誌「現代の理論」(甲15,16)は,平成19年7月に株式会社明石書店(以下「明石書店」という。)が発行主体となって発行が継続されたが, 平成24年4月に終刊となった。 イ被告NPOは,平成20年2月に雑誌「FORUMOPINION」ないし「FORUMOPINIONNPO現代の理論・社会フォーラム」(甲29)を創刊した。 「現代の理論編集委員会」(原告編集委員会)は,平成26年5月,原告出 版物(「現代の理論」季刊電子版)(甲3,8)を創刊した。 被告NPOは,平成28年6月に上記雑誌の名称を「現代の理論」(被告標章)に変更し,現在まで被告出版物(別紙出版物目録記載1及び2の各出版物)(甲6,7)の出版販売若しくは販売のための展示又は頒布をしている。 被 月に上記雑誌の名称を「現代の理論」(被告標章)に変更し,現在まで被告出版物(別紙出版物目録記載1及び2の各出版物)(甲6,7)の出版販売若しくは販売のための展示又は頒布をしている。 被告会社は,平成29年10月以降の被告出版物(上記目録記載2の各 出版物)の販売元として,その販売若しくは販売のための展示又は頒布をしている。 ⑶ 原告商標(原告標章)と被告標章原告Bが有する原告商標権の登録商標である原告商標(原告標章)と被告標章は同一であり,被告出版物は原告商標権の指定商品である「印刷物」に 含まれる。 3 争点⑴ 原告編集委員会の訴えの適法性及び請求の可否(争点1)ア原告編集委員会が当事者能力を有し,その本件訴えが適法であるか(争点1-1) イ原告編集委員会と被告NPOとの間に本件合意が成立したか(争点1-2)ウ原告編集委員会の不競法2条1項1号に基づく請求の可否(争点1-3)エ原告編集委員会の損害の有無及び額(争点1-4)⑵ 原告Bの請求の可否(争点2) ア原告Bと被告NPOとの間に本件合意が成立したか(争点2-1)イ原告商標が無効審判により無効とされるべきものであるか(争点2-2)ウ被告NPOが被告標章につき先使用に基づく法定使用権を有するか(争点2-3)エ原告Bの被告らに対する原告商標権の行使が権利の濫用に当たるか(争 点2-4)オ原告Bの損害の有無及び額(争点2-5) 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1-1(原告編集委員会が当事者能力を有し,その本件訴えが適法であるか) ア原告編集委員会の主張 原告編集委員会は,平成16年,雑誌「現代の理論」の企画・編集業務を担うために作られた組織である。 事者能力を有し,その本件訴えが適法であるか) ア原告編集委員会の主張 原告編集委員会は,平成16年,雑誌「現代の理論」の企画・編集業務を担うために作られた組織である。 原告編集委員会には,平成30年5月30日時点で9名の編集委員が在籍し,代表編集委員としてA及びDが選定されており,団体性を有する。 そして,原告編集委員会が制定した運営規約(甲1。以下「原告規約」と いう。)5条,11条,13条に定められているように,多数決の原理が存在している。また,原告規約7条により編集委員の追加は可能であり,実際に設立時と比べて構成員の変動はあるが,団体として存続している。さらに,原告規約8条ないし10条により代表の方法が,同規約5条,6条により総会の運営が,同規約12条により財産の管理が,それぞれ確定し ているところ,財産については,原告編集委員会名義でゆうちょ銀行の貯金口座(甲13,26。以下「原告口座」という。)を開設し,事務局長である原告Bがこれを管理している。 以上によれば,原告編集委員会は,権利能力なき社団として,当事者能力を有し,その本件訴えは適法である。 イ被告らの主張否認ないし争う。 原告規約は,本件訴訟のために急遽作成されたものであり,同規約付則2に記載されている「本会は2004年9月20日に設立し,本規約を確認した。」という事実はない。 原告規約5条の総会が開催されたことはない。そして,原告規約7条には,「本会は,季刊『現代の理論』の発足時(2004年)の編集委員(末尾に記載)で構成する。」との記載があり,同規約付則1の編集委員名簿には11名の名前が列挙されているが,当時の被告NPOの理事長であり編集委員であったCらが除かれており,その記載内容は虚偽である。さら に記載)で構成する。」との記載があり,同規約付則1の編集委員名簿には11名の名前が列挙されているが,当時の被告NPOの理事長であり編集委員であったCらが除かれており,その記載内容は虚偽である。さらに, 原告規約12条には,「季刊『現代の理論』の発行・発信にかかわる基本的 費用は,すべて編集委員が持ち寄る資金により負担するものとする。」との記載があるが,平成16年9月時点の財政は,雑誌「現代の理論」の売上と設立基金カンパで賄われていたものであるから,その記載内容も虚偽である。 以上のとおり,原告編集委員会には,運営規約は存在せず,多数決の原 理が行われておらず,代表の方法,総会の運営,財産の管理等,団体としての主要な点が確定していないから,原告編集委員会は権利能力なき社団に該当せず,当事者能力がない。その本件訴えは,不適法である。 ⑵ 争点1-2(原告編集委員会と被告NPOとの間に本件合意が成立したか)ア原告編集委員会の主張 被告NPOは,明石書店による雑誌「現代の理論」の発行を決定した平成19年春頃から平成20年5月9日までの間に,原告編集委員会との間で,今後は雑誌「現代の理論」の編集・発行業務には関わらない,すなわち,「現代の理論」という名称の出版物を発行しない旨の本件合意をした。 イ被告らの主張 否認ないし争う。 被告NPOは,明石書店との間で,同社が雑誌「現代の理論」を発行している間は,同雑誌を出版しないことを合意したが,同雑誌の発行主体でもない原告編集委員会との間で,本件合意をしたことはない。 ⑶ 争点1-3(原告編集委員会の不競法2条1項1号に基づく請求の可否) ア原告編集委員会の主張原告編集委員会は,原告出版物に「現代の理論」の表示を付して使用しているとこ とはない。 ⑶ 争点1-3(原告編集委員会の不競法2条1項1号に基づく請求の可否) ア原告編集委員会の主張原告編集委員会は,原告出版物に「現代の理論」の表示を付して使用しているところ,原告標章は,遅くとも平成28年6月までに,全国の読者において,原告編集委員会の商品等を表示するものとして周知となっていた。 しかるに,被告らは,被告標章を付した被告出版物を販売等しており, 原告編集委員会の情報体も被告らの情報体も思想発表の媒体であるから,原告編集委員会の営業又は商品と被告らの営業又は商品との間に混同を生ずるおそれがある。そして,原告編集委員会は,平成28年6月17日,被告NPOに対し,被告標章を出版物に付すべきではない旨の抗議を,平成29年9月6日,被告会社に対し,被告標章を付した出版物を発売すべ きではない旨の抗議を,それぞれ行ったから,被告らは,遅くとも上記各日には,原告編集委員会の営業上の利益を侵害することを知っていた。 以上によれば,原告編集委員会は,被告らに対し,不競法2条1項1号に基づき,本件に係る各請求をすることができる。 イ被告らの主張 否認ないし争う。 ⑷ 争点1-4(原告編集委員会の損害の有無及び額)ア原告編集委員会の主張次のとおり,原告編集委員会は,被告らの行為により,合計55万円の損害を被った。 すなわち,原告編集委員会は,被告らの行為によって,原告出版物の読者数の減少ないしそのおそれがある上,寄稿者や購読者らから無用の問い合わせを受け,その対応に追われるなどして,営業上の利益を喪失しており,その損害額は,50万円を下らない。 また,原告編集委員会は,被告らに対し,裁判外で被告出版物の販売等 の中止を求めたが,被告らが の対応に追われるなどして,営業上の利益を喪失しており,その損害額は,50万円を下らない。 また,原告編集委員会は,被告らに対し,裁判外で被告出版物の販売等 の中止を求めたが,被告らが交渉に応じなかったため,本件訴訟の提起・追行を余儀なくされ,弁護士費用を負担せざるを得なくなったものであり,被告らの行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金は,5万円とするのが相当である。 イ被告らの主張 否認ないし争う。 原告らは,原告出版物を無料で配信しており,有料コンテンツはないため,営業上の利益を喪失することはない。 ⑸ 争点2-1(原告Bと被告NPOとの間に本件合意が成立したか)ア原告Bの主張仮に原告編集委員会が法人格なき社団に該当しないとされた場合,原告 編集委員会の構成員である原告Bと被告NPOとの間に本件合意が成立したといえる。 イ被告らの主張否認ないし争う。 ⑹ 争点2-2(原告商標が無効審判により無効とされるべきものであるか) ア被告らの主張次のとおり,原告Bの原告商標は,商標法4条1項8号,15号及び19号に該当する商標であり,商標登録無効審判によって無効とされるべきものである(同法39条,特許法104条の3第1項)。 商標法4条1項8号 雑誌「現代の理論」は,そもそもは昭和34年に創刊されたものであり,その歴史も長く,社会運動関係者,政治関係者,法律関係者,出版業界関係者等の間で著名な雑誌であった。 被告NPOは,これを継承すべく,平成15年11月から活動を開始し,平成17年7月の法人化以前は「言論NPO・現代の理論」の名称 で,同月の法人化後は「特定非営利活動法人言論NPO・現代の理論」の名称で,平成20年5月以 ,平成15年11月から活動を開始し,平成17年7月の法人化以前は「言論NPO・現代の理論」の名称 で,同月の法人化後は「特定非営利活動法人言論NPO・現代の理論」の名称で,平成20年5月以降は「特定非営利活動法人NPO現代の理論・社会フォーラム」の名称で,平成16年以降,雑誌「現代の理論」及び雑誌「FORUMOPINIONNPO現代の理論・社会フォーラム」を発行してきたほか,大学教授や国会議員等を招き,フォーラ ム,シンポジウム,研究会等を定期的に開催するなど,幅広い活動を行 ってきた。 このように,被告NPOは,設立時から一貫してその名称に「現代の理論」を使用し,発行雑誌の名称も「現代の理論」であり,かつこれに関連する幅広い活動を行ってきたことからして,被告標章は,長年の歴史を有する雑誌「現代の理論」の発行事業を再開した被告NPOの略称 として,著名であった。なお,原告らも,「現代の理論」という名称が,雑誌発行人の商品等を表示するものとして,著名,少なくとも周知であることを認めているところ,雑誌「現代の理論」の発行人は,被告NPOであるから,被告標章は,被告NPOの略称として著名であるといえる。 これに対し,原告編集委員会は,平成16年以降の雑誌「現代の理論」の実質的な発行主体は,原告編集委員会であり,平成19年7 月に同雑誌の出版権が明石書店に譲渡された際の「現代の理論07夏号」の奥付には,原告編集委員会が「編集人」として記載されているし,平成24年に同雑誌の出版権が明石書店から返還された際の「現代の理論12春 /終刊号」の奥付にも,原告編集委員会が「編集・発行人」として記載されていると主張する。しかし,そもそも,上記「現代の理論07夏号」及び「現代の理論12春/終刊号」の 際の「現代の理論12春 /終刊号」の奥付にも,原告編集委員会が「編集・発行人」として記載されていると主張する。しかし,そもそも,上記「現代の理論07夏号」及び「現代の理論12春/終刊号」の奥付に記載された「『現代の理論』編集委員会」は,被告NPOの内部組織であった編集委員会の構成員の一部が,明石書店から依頼を受けて雑誌「現代の理論」の企画・編集業 務を行うこととなったことに伴って名乗ったものであり,これと原告編集委員会は,同一の組織ではない。 したがって,原告商標は,被告NPOの著名な略称を含む商標に該当するから,商標法4条1項8号により,商標登録を受けることができないものである。 商標法4条1項15号 によれば,原告商標は,被告NPOの業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標に該当するから,商標法4条1項15号により,商標登録を受けることができないものである。 商標法4条1項19号被告NPOは,平成27年11月頃から被告出版物を発刊することを 告知し,そのことは原告Bらに伝わっていたものであり,被告標章は,既に被告NPOの業務に係る商品又は役務を表示するものとして,需要者の間で周知性を有していた。 しかし,原告Bらは,紙媒体による雑誌「現代の理論」を発行したことは一度もなく,今後もこれを発行する予定はないにもかかわらず,被 告NPOによる被告出版物の発行業務を阻止し,被告NPOに損害を加えるなどの不正の目的をもって,指定商品として「電子印刷物」のみならず「印刷物」まで含めて,原告商標に係る商標登録出願をしたのである。 したがって,原告商標は,被告NPOの業務に係る商品又は役務を表 示するものとして周知な商標と同一の商標であって,不正の目的をもって使 で含めて,原告商標に係る商標登録出願をしたのである。 したがって,原告商標は,被告NPOの業務に係る商品又は役務を表 示するものとして周知な商標と同一の商標であって,不正の目的をもって使用されるものに該当するから,商標法4条1項19号により,商標登録を受けることができないものである。 イ原告Bの主張次のとおり,原告Bの原告商標は,商標法4条1項8号,15号及び1 9号に該当する商標ではなく,無効審判によって無効とされるべきものであるとはいえない(同法39条,特許法104条の3第1項)。 商標法4条1項8号被告NPOもその前身である「特定非営利活動法人言論NPO・現代の理論」も,世間一般に「現代の理論」と呼称されていたということは なく,その略称として著名であったということはない。 平成16年以降の雑誌「現代の理論」の実質的な発行主体は,原告編集委員会であり,「特定非営利活動法人言論NPO・現代の理論」は,資金管理等の便宜のために設立され,外部に向けて表示される形式的な発行主体とされたにすぎない。そして,平成19年7月以降に明石書店に同雑誌の出版権を譲渡したのは原告編集委員会であり,平成24年4月 に明石書店から同出版権の返還を受けたのも原告編集委員会である。このことは,平成19年に雑誌「現代の理論」の出版権が明石書店に譲渡された際の「現代の理論07夏号」の奥付に,原告編集委員会が「編集人」として記載されていること,平成24年に同出版権が明石書店から返還された際の「現代の理論12春/終刊号」の奥付に,原告編集委員 会が「編集・発行人」として記載されていることからも明らかである。 なお,現在の被告NPOは,形式的には,平成20年5月に「特定非営利活動法人言論NPO・現代の 刊号」の奥付に,原告編集委員 会が「編集・発行人」として記載されていることからも明らかである。 なお,現在の被告NPOは,形式的には,平成20年5月に「特定非営利活動法人言論NPO・現代の理論」の名称を変更した法人であるが,雑誌「現代の理論」の発行事業が明石書店に譲渡された段階で,今後は同雑誌の発行事業に関与しないこととされ,Cを含む新たな理事により 理事会を構成して活動を開始したものであり,実質的には,両者は断絶している。被告NPOが被告出版物の前に発行していた雑誌の名称は,「FORUMOPINION」であり,「NPO現代の理論・社会フォーラム」は発行人名にすぎない。 したがって,原告商標は,被告NPOの著名な略称を含む商標に該当 しない。 商標法4条1項15号雑誌「現代の理論」の実質的な発行主体は,原告編集委員会であり,原告商標は,被告NPOの業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標に該当しない。 商標法4条1項19号 は役務を表示するものとして,需要者の間に周知であったとはいえない。 また,原告らは,平成26年5月1日に原告出版物の配信を開始していたところ,被告NPOが,平成27年11月になって,雑誌の名称を「FORUMOPINION」から「現代の理論」に変更しようとし たのである。そこで,原告Bは,自己の権利を守るために原告商標に係る商標登録出願をしたにすぎず,何ら不正の目的などない。 したがって,原告商標は,被告NPOの業務に係る商品又は役務を表示するものとして周知な商標と同一の商標に該当せず,不正の目的をもって使用されるものにも該当しない。 ⑺ 争点2-3(被告NPOが被告標章につき先使用に基づく法定使用権を有するか)ア するものとして周知な商標と同一の商標に該当せず,不正の目的をもって使用されるものにも該当しない。 ⑺ 争点2-3(被告NPOが被告標章につき先使用に基づく法定使用権を有するか)ア被告らの主張被告NPOは,平成15年11月,雑誌「現代の理論」を発行することを主目的の一つとして設立された団体であり,平成16年10月に雑誌「現 代の理論」の創刊号が発刊された後,一時的に明石書店に出版権を譲渡した時期も含め,平成17年7月に法人化される前後を通じて,現在まで被告標章を雑誌名として使用しており,これは,いわゆる構造改革派と呼ばれた知識社会の厚い層をなす思想家・変革者や学会・教授等の知識階級を中心とする比較的限られた読者層の中では知らない者はいないほど周知と なっていた。また,被告NPOによる被告標章の使用が,不正競争の目的をもってするものではないことも明らかである。 したがって,被告NPOは,被告標章について,商標法32条1項に基づき,先使用に基づく法定使用権を有する。 イ原告Bの主張 否認ないし争う。 被告NPOが発行する雑誌の名称を「現代の理論」に変更したのは,原告編集委員会が原告出版物の配信を開始した後であり,かつ,原告商標に係る商標登録出願の後でもあるから,先使用には当たらない。また,被告標章が,被告NPOの商品等表示として,需要者の間に広く認識されていたということもない。さらに,平成19年に雑誌「現代の理論」の出版権 が明石書店に譲渡されてから,平成28年に被告NPOが雑誌の名称を「現代の理論」に変更するまでの間に,約9年もの空白期間があり,使用の継続性の要件を欠いている。 ⑻ 争点2-4(原告Bの被告らに対する原告商標権の行使が権利の濫用に当たるか) 名称を「現代の理論」に変更するまでの間に,約9年もの空白期間があり,使用の継続性の要件を欠いている。 ⑻ 争点2-4(原告Bの被告らに対する原告商標権の行使が権利の濫用に当たるか) ア被告らの主張被告NPOは,法人化される前の平成16年6月,雑誌「現代の理論」の準備号を発行し,法人化した後も,雑誌の名称に自らの略称である「現代の理論」を付した上で,その発行業務を行ってきたのであり,被告標章は,被告NPOの業務に係る商品又は役務を表示するものとして周知とな っていた。 また,被告NPOは,平成19年7月に明石書店に対して雑誌「現代の理論」の出版権を譲渡した後は,雑誌に「現代の理論」という名称を単独で使用することは避けることとして,平成20年2月に雑誌「FORUMOPINIONNPO現代の理論・社会フォーラム」を創刊したが,平 成24年4月に明石書店が同雑誌を休刊した後は,その了解を得るなどして,雑誌「現代の理論」の再刊を準備していた。 しかし,原告Bは,被告NPOが平成28年2月に雑誌「現代の理論」のデモ版を発行し,同年6月から同雑誌(被告出版物)を再刊することを周知したことを知り,同年4月に原告商標に係る商標登録出願をした。 被告NPOが,原告商標の存在により,被告NPOの略称そのものであ る被告標章を使用できないとすれば,著しく大きい不利益を受ける一方で,原告Bらは,原告出版物を無料で配信しているだけであり,被告らによる被告標章の使用により何らの不利益も受けない。 原告Bは,被告NPOに対する嫌がらせを目的として,既に周知となっている被告標章を使用できなくするために,本件訴訟を提起したものであ る。 したがって,原告Bによる原告商標に係る商標登録出願及び本件訴訟の NPOに対する嫌がらせを目的として,既に周知となっている被告標章を使用できなくするために,本件訴訟を提起したものであ る。 したがって,原告Bによる原告商標に係る商標登録出願及び本件訴訟の提起は,不正の目的によるものであるから,原告Bによる被告らに対する原告商標権の行使は,権利の濫用に当たり許されない。 イ原告Bの主張 否認ないし争う。 原告Bは,商標権制度に従い,適切な手続を経て,自己の権利を守るために,原告商標に係る商標登録出願をしたのであり,嫌がらせや不正の目的はない。また,被告NPOの略称が「現代の理論」として周知されていたこともないから,略称を使用できない不利益も存在しない。 ⑼ 争点2-5(原告Bの損害の有無及び額)ア原告Bの主張次のとおり,原告Bは,被告らの行為により,合計55万円の損害を被った。 すなわち,原告Bは,被告らの行為によって原告商標権の使用料相当額 の損害を受けており,その損害額は,50万円を下らない。 また,原告Bは,被告らに対し,裁判外で被告出版物の販売等の中止を求めたが,被告らが交渉に応じなかったため,本件訴訟の提起・追行を余儀なくされ,弁護士費用を負担せざるを得なくなったものであり,被告らの行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金の額は,5万円とする のが相当である。 イ被告らの主張否認ないし争う。 原告らは,原告出版物を無料で配信しており,有料コンテンツはないため,営業上の利益を喪失することはない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⑴ 雑誌「現代の理論」の第1次発行及び第2 することはない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⑴ 雑誌「現代の理論」の第1次発行及び第2次発行ア雑誌「現代の理論」は,昭和34年5月,月刊誌として創刊されたが(第 1次発行),同年9月頃,日本共産党中央の干渉等により,一時終刊となった。その後,Eらが,統一社会主義同盟を結成し,スターリン批判や中ソ論争等を媒介にしながら,歴史の転換点に立った新しい政治・理論潮流の形成に踏み出し,雑誌「現代の理論」は,昭和39年1月,月刊誌として再刊されたが(第2次発行),平成元年12月,終刊となった。 イ雑誌「現代の理論」は,発行が現代の理論社,編集兼発行人がF(元東京経済大学学長),発売が河出書房であり,編集はG(岐阜経済大学名誉教授)編集長ほか,H(元神奈川県知事),E,I(桃山学院大学名誉教授)らが中心となって行っていた。 雑誌「現代の理論」の第2次発行の休刊に際しては,平成元年12月2 7日付け朝日新聞書籍欄に「休刊宣言」が掲載され,休刊号は「戦後史と『現代の理論』」を特集し,F,G,H,Iらといった再刊時からの構成員に加え,Jを含む学者や評論家等の論客が揃い,KやLらも寄稿した。 (以上⑴につき,甲23,乙13)⑵ 雑誌「現代の理論」の第3次発行 ア雑誌「現代の理論」の第1次発行及び第2次発行の中心的人物のうち存 命であったIは,平成14年2月9日,統一社会主義同盟の結成40周年記念集会において,同雑誌の再刊を呼びかけた。 これを受けて,Cは,Eの遺族から,雑誌「現代の理論」の再刊と題字使用の了解を得て,同年7月,雑誌「現代の理論」の再刊に向けての準備を開始した。 念集会において,同雑誌の再刊を呼びかけた。 これを受けて,Cは,Eの遺族から,雑誌「現代の理論」の再刊と題字使用の了解を得て,同年7月,雑誌「現代の理論」の再刊に向けての準備を開始した。 平成15年11月29日,雑誌「現代の理論」の再刊に向けた設立会合が開催された。同年12月に発行された「季刊『現代の理論』の発刊決まる」と題する書面には,上記会合において,雑誌「現代の理論」の発行主体として「言論NPO・現代の理論」を発足させ,将来的にはNPO法人化を目指すこと,同雑誌の編集主体は「編集委員会」であることなどが確 認された旨が記載されるとともに,「編集委員会」の編集委員として,I,M,D,N,O,P,Q,A,R,S,T,C,U,W,X,Yの名前が列挙され,また,「言論NPO・現代の理論」の規約が掲載されている。(乙1)イ雑誌「現代の理論」は,平成16年6月に準備号が発刊された上,同年 10月から季刊誌(年4回)として再刊された(第3次発行)。同雑誌の奥付には,「発行人/C」,「発行所/言論NPO・現代の理論」,「発売/㈱明石書店」などと記載されていた。なお,「言論NPO・現代の理論」は,雑誌「現代の理論」の発行主体とされ,Cが理事長,原告Bが副理事長,DやAが理事を務めており,同人らを含むその「編集委員会」の編集委員が, 雑誌「現代の理論」の企画・編集業務を行い,編集委員会を開催していた。 (甲25,33,乙2~13)平成17年7月15日,「言論NPO・現代の理論」が法人化し,被告NPOが設立されたところ,その当時の名称は「特定非営利活動法人言論NPO・現代の理論」であった(甲4)。 ウ雑誌「現代の理論」の第3次発行については,財政難が続いており,明 石書店への出版権の譲渡 の当時の名称は「特定非営利活動法人言論NPO・現代の理論」であった(甲4)。 ウ雑誌「現代の理論」の第3次発行については,財政難が続いており,明 石書店への出版権の譲渡が検討されるようになった(甲33)。 Cは,原告Bに対し,平成19年2月12日,NPO設立と編集委員会体制で進んできたが,言論NPO・現代の理論の自立を目指したい旨を記載したメールを送信した。Cは,同年3月3日に開催された被告NPOの理事会において,被告NPOの解散に関する賛成意見が多数であったとこ ろ,これには賛成できなかったため,同年4月19日,原告Bに対し,被告NPOの理事長を辞任し,同月22日の理事会に出席しない旨を記載したメールを送信した。もっとも,同年6月27日に開催された被告NPOの社員総会においては,被告NPOの解散に関する決議はされず,明石書店への雑誌「現代の理論」の出版権(発行事業)の譲渡に関する決議のみ がされた。(甲17~19,27,30,35~37)雑誌「現代の理論」については,同年7月1日,出版権が明石書店に無償譲渡された。その際,被告NPO(理事長代行 B),「季刊『現代の理論』編集委員会」(代表 M)及び明石書店(代表取締役社長 Z)の3者名義で作成された「季刊『現代の理論』の出版権譲渡に関する覚書き」(甲 20。以下「本件覚書」という。)には,「言論NPO・現代の理論は季刊『現代の理論』の出版権を,㈱明石書店に無償譲渡し,第12号(07夏号)より明石書店が発行元となる。」,「新たな雑誌『現代の理論』の企画・編集については,明石書店から委託を請けた現行の編集委員会が責任を持つ。」などと記載されていた。その後は,「『現代の理論』編集委員会」の構 成員である原告Bらが,明石書店の委 の理論』の企画・編集については,明石書店から委託を請けた現行の編集委員会が責任を持つ。」などと記載されていた。その後は,「『現代の理論』編集委員会」の構 成員である原告Bらが,明石書店の委託を受けて,雑誌「現代の理論」の企画・編集業務を行っており,同雑誌の奥付には,「編集人/『現代の理論』編集委員会」,「発行所/明石書店」などと記載されるようになった。なお,平成21年3月6日,「現代の理論編集委員会」名義の原告口座(甲13,26)が開設された。(甲15,34,乙13) 被告NPOは,平成20年2月,雑誌「FORUMOPINION」 (題名の下に「NPO現代の理論・社会フォーラム」という名称を付記)を季刊誌(年4回)として創刊し,同年5月9日,法人の名称を「特定非営利活動法人言論NPO・現代の理論」から「特定非営利活動法人NPO現代の理論・社会フォーラム」に変更した(甲4,29)。 エ明石書店は,平成23年秋頃,雑誌「現代の理論」の発行事業について 財政難が続いていたこと,原告編集委員会との間に同事業を巡る金銭トラブルが発生していたことなどもあり,同事業から撤退したい旨の申出をし,平成24年4月,雑誌「現代の理論」を終刊した。同雑誌の終刊号には,「編集・発行人/『現代の理論』編集委員会」などと記載されている。(甲16,21,28) ⑶ 原告出版物及び被告出版物の発行ア被告NPOは,明石書店が雑誌「現代の理論」を終刊することを知り,同雑誌を再刊することを計画し,平成24年1月下旬に認定特定非営利活動法人制度(認定NPO法人制度)を利用することを決め,平成25年10月30日に仮認定特定非営利活動法人としての仮認定を受けるための申 請を行い,平成26年6月11日に同仮認定を受け 非営利活動法人制度(認定NPO法人制度)を利用することを決め,平成25年10月30日に仮認定特定非営利活動法人としての仮認定を受けるための申 請を行い,平成26年6月11日に同仮認定を受け(その後,平成29年5月に認定特定非営利活動法人となった。),平成26年7月29日に開催された運営委員会において,雑誌「現代の理論」の再刊を決定した。また,Cは,同年9月24日,明石書店のZ社長と面談し,雑誌「現代の理論」の再刊について了解を得た。(乙14,15) イ原告Bらは,平成26年5月1日,「現代の理論編集委員会」を発行人として,インターネット上において,原告出版物(「現代の理論」季刊電子版)の無料配信を開始した(甲3,8,23)。 ウ被告NPOは,平成28年2月,雑誌「現代の理論」デモ版を発行し,同年6月から雑誌「現代の理論」を再刊することを周知した。 これを知った原告Bは,同年4月9日,登録商標を「現代の理論」(標準 文字),指定商品を「電子印刷物」,「印刷物」とする商標登録出願をし,「現代の理論編集委員会」は,同年6月17日,被告NPOに対し,「現代の理論」という名称を出版物に付すことの中止を求める申入書を送付した(甲9~11)。 被告NPOは,同月,雑誌「FORUMOPINION」の名称を「現 代の理論」に変更し,被告出版物の発行を開始した(甲6)。 エ原告編集委員会は,平成29年9月6日,被告会社に対し,被告NPOが発行する被告出版物の販売元とならないことを求める申入書を送付し,原告Bは,同月8日,原告商標について設定登録を受けた(甲9,10,12)。 被告会社は,同年10月以降,被告出版物の発売元として,その販売を開始した(甲7)。 ⑷ 本件訴訟に至る経緯 Bは,同月8日,原告商標について設定登録を受けた(甲9,10,12)。 被告会社は,同年10月以降,被告出版物の発売元として,その販売を開始した(甲7)。 ⑷ 本件訴訟に至る経緯ア被告NPOは,平成29年12月4日,特許庁に対し,原告商標の商標登録に対する登録異議の申立てをしたが,平成30年3月15日,原告商 標の商標登録を維持する旨の決定がされた(甲14,24)。 イ原告らは,平成30年10月15日,被告らに対し,本件訴訟を提起した。 (以上⑴~⑷につき,甲14,22,38~40,乙16,17,証人a,証人C,原告B本人) 2 争点1(原告編集委員会の訴えの適法性及び請求の可否)について⑴ 争点1-1(原告編集委員会が当事者能力を有し,その本件訴えが適法であるか)について原告編集委員会は,権利能力なき社団として当事者能力を有し,その本件訴えは適法である旨を主張するので,以下検討する。 ア民事訴訟法29条によって当事者能力が認められる権利能力なき社団と いい得るためには,団体としての組織を備え,そこには多数決の原則が行われ,構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない(最高裁判所昭和39年10月15日第一小法廷判決・民集18巻8号1671頁参照)。これらのうち,財産 的側面についていえば,必ずしも固定資産又は基本的財産を有することは不可欠の要件ではなく,そのような資産を有していなくても,団体として,内部的に運営され,対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され,かつ,その収支を管理する体制が備わっているなど,他の諸事情と併せ,総合 なく,そのような資産を有していなくても,団体として,内部的に運営され,対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され,かつ,その収支を管理する体制が備わっているなど,他の諸事情と併せ,総合的に観察して判断すべきである(最高裁判所平成14年6月7 日第二小法廷判決・民集56巻5号899頁参照)。 イ以上を踏まえて以下検討する。 まず,原告編集委員会が提出する原告規約(甲1)7条には,「本会は,季刊『現代の理論』の発足時(2004年)の編集委員(末尾に記載)で構成する。」と記載され,同規約付則1(編集委員名簿)には,11名(M, D,A,N,I,O,P,Q,R,Y,原告B)の名前が列挙されている。 しかし他方,この当時(2004年〔平成16年〕)においては,被告NPOの前身である「言論NPO・現代の理論」の「編集委員会」が存在し,この「編集委員会」の構成員には,上記付則1の編集委員と異なりCらが含まれ,このCらが含まれた「編集委員」が,実際の企画・編集業務を行 っていたことが認められる(認定事実⑵ア,イ)。これらからすれば,原告規約における「編集委員」と実際の企画・編集業務を行っていた「編集委員」との間に齟齬があるといわざるを得ず,原告編集委員会の構成員たる「編集委員」が特定されているとは言い難い。 この点,原告編集委員会は,上記11名は,改正後の原告規約の作成時 である平成26年3月9日時点の「編集委員」である旨を主張する。しか し,これでは同規約7条及び付則1の上記文言と整合せず,また,原告Bも,実際には「編集委員」の名簿を作成していない旨の供述をしている。 原告編集委員会の上記主張は,採用の限りでない。 また,原告規約5条には,「毎事業年度の末日から2か月以内に,総会を開催し 原告Bも,実際には「編集委員」の名簿を作成していない旨の供述をしている。 原告編集委員会の上記主張は,採用の限りでない。 また,原告規約5条には,「毎事業年度の末日から2か月以内に,総会を開催しなければならない。総会の決議は,総編集委員の過半数が出席し, 出席した編集委員の過半数をもって行う。」との定めが,同規約6条には,「総会では,役員の選任,当年度決算,次年度予算のほか,編集委員から提案された議案について決議する。」との定めが,同規約11条には,「本会は,原則として1カ月に1回編集委員会を開催し,季刊『現代の理論』の内容等について協議し多数決をもって決定する。」との定めが,同規約1 3条には,「この規約は,編集委員の過半数の同意をもって改正することができる。」との定めが,また,同規約付則2には,「本会は2004年9月20日に設立し,本規約を確認した。2008年12月25日…代表にBを選出した。」との定めが,それぞれ存することが認められる。 しかし,原告編集委員会は,Cらが構成員に含まれている,平成16年 1月以降の「言論NPO・現代の理論」の「編集委員会」に関する書面(編集委員会報告〔甲25〕,編集委員会レジュメ〔甲33〕)を証拠として多数提出する一方で,原告編集委員会の総会議事録に関する証拠としては,平成30年9月25日付けの「現代の理論編集委員会総会議事録」(甲2)を1通提出しているにとどまる。そして,原告編集委員会が,平成16年 9月20日に原告規約を確認したとする総会や,本件訴訟の提起に関する決議をしたという総会等に関する総会議事録については,何ら証拠として提出されているものではなく,原告ら申出に係る証人a 及び原告Bも,原告編集委員会において,毎年定期的に総会を実施したことはない旨の証言な たという総会等に関する総会議事録については,何ら証拠として提出されているものではなく,原告ら申出に係る証人a 及び原告Bも,原告編集委員会において,毎年定期的に総会を実施したことはない旨の証言ないし供述をしており,証人a は,上記総会議事録(甲2)に係る総会の 開催の有無等についても,曖昧な証言をしている。また,原告規約付則2 の文言は,原告Bが原告編集委員会の代表者に選任されたことがない旨の証人a 及び原告Bの証言ないし供述と整合しないものである。 さらに,原告規約12条には,「季刊『現代の理論』の発行・発信にかかわる基本的費用は,すべて編集委員が持ち寄る資金により負担するものとする。」との記載があり,原告らは,「現代の理論編集委員会」名義の原告 口座の貯金通帳(甲13,26)を提出する。 しかし,原告口座については,少なくとも平成28年7月28日時点の残高が1258円であり,その後に入出金記録はなく,原告Bも,原告出版物を配信するインターネットサイトの維持費は,年間2万円程度であって,個人的な出捐により賄っており,原告出版物の配信による利益や原稿 料の負担もなく,総会において,決算報告等もされていない旨の供述をしている。そうすると,原告編集委員会においては,固定資産等を保有していないのみならず,対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され,かつ,その収支を管理する体制が備わっているとも言い難い。 以上に照らせば,少なくとも本件口頭弁論終結時において,原告編集委 員会が,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものとは認め 体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し,その組織において代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものとは認められない。 ウそうすると,原告編集委員会につき,民事訴訟法29条によって当事者 能力が認められる権利能力なき社団に該当するということはできず,他に,当事者能力を認めるべき理由も見当たらない。したがって,原告編集委員会の本件訴えは,いずれも不適法なものとして却下するほかない。 以上のとおりであって,続けて原告編集委員会の各請求に理由があるかについて判断する必要はないものであるが,なお念のため検討したとして も,後記⑵,⑶で認定説示するとおり,原告編集委員会の被告らに対する 本件合意及びその債務不履行並びに不競法に基づく請求には,いずれも理由がないというべきである。 ⑵ 争点1-2(原告編集委員会と被告NPOとの間に本件合意が成立したか)についてア原告編集委員会は,被告NPOにおいては,明石書店による雑誌「現代 の理論」の出版を決定した平成19年春頃から平成20年5月9日までの間に,原告編集委員会との間で,今後は雑誌「現代の理論」の編集・発行業務には関わらない,すなわち,「現代の理論」という名称の出版物を発行しない旨の本件合意をした旨を主張する。 イしかし,被告NPOが,原告編集委員会(ないしその構成員である原告 Bら)との間で,本件合意をしたことが記載された合意書等の証拠はなく,本件全証拠を精査しても,本件合意について的確に認めるに足りる証拠はない。 また,被告NPOは,平成19年に雑誌「現代の理論」の出版権が明石書店に譲渡された後も,法人名として,「特定非営利活動法人言論 全証拠を精査しても,本件合意について的確に認めるに足りる証拠はない。 また,被告NPOは,平成19年に雑誌「現代の理論」の出版権が明石書店に譲渡された後も,法人名として,「特定非営利活動法人言論NPO・ 現代の理論」ないし「特定非営利活動法人NPO現代の理論・社会フォーラム」というように,「現代の理論」を含む名称の使用を継続し,雑誌名としても,平成20年に創刊した雑誌「FORUMOPINION」の題名の下に「現代の理論」という名称を付記するなどして「現代の理論」という名称の使用を継続している(認定事実⑵ウ)。さらに,被告NPOは, 平成24年に明石書店が雑誌「現代の理論」を終刊した後は,明石書店のZ社長の了解を得た上で,雑誌の名称を「FORUMOPINION」から「現代の理論」に変更し,被告出版物を発刊している(認定事実⑶ア,ウ,エ)。 このような事実経緯は,被告NPOが本件合意をしたとみることに相反 するものであるといえ,仮に被告NPOにおいて,明石書店が雑誌「現代 の理論」の発行を継続している間は,出版物に「現代の理論」という名称を単独で使用することを避けていたことがうかがわれるとしても,原告編集委員会ないし原告Bらとの間で,将来にわたって「現代の理論」という名称の出版物を発行しない旨を合意していたとまでは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ウ以上によれば,被告NPOが,原告編集委員会(ないし原告Bら)との間で,本件合意をしたとは認められない。 したがって,原告編集委員会の被告らに対する本件合意及びその債務不履行に基づく請求は,その余の点(争点1-4)について判断するまでもなく,理由がない。 ⑶ 争点1-3(原告編集委員会の不競法2条1項1号に基づ 員会の被告らに対する本件合意及びその債務不履行に基づく請求は,その余の点(争点1-4)について判断するまでもなく,理由がない。 ⑶ 争点1-3(原告編集委員会の不競法2条1項1号に基づく請求の可否)についてア原告編集委員会は,原告標章が,遅くとも平成28年6月までに,全国の読者において,原告編集委員会の商品等を表示するものとして周知であった旨を主張する。 イ確かに,原告標章として主張されるものと同一の題号である雑誌「現代の理論」は,昭和34年から長年にわたって,断続的に発行されてきたものであり,同雑誌それ自体が需要者の間に周知であったことについては,当事者間に争いがないところである。そして,雑誌の需要者においては,ある特定の発行主体がある場合には,当該発行主体をもって,その出所で あると認識するというべきである。 しかして,昭和34年から平成元年までの雑誌「現代の理論」(月刊誌)の第1次発行ないし第3次発行は,いずれも原告らや被告らとは異なる主体である,現代の理論社が発行主体となり,有識者らによって企画・編集されてきたものである(認定事実⑴)。また,平成元年から平成16年まで は,発行そのものが途切れていたものであり,さらに,同年以降の雑誌「現 代の理論」(季刊誌)は,Cや原告Bらを含む理事によって構成される「言論NPO・現代の理論」ないしこれが法人化した被告NPOが発行主体となり,平成19年に同雑誌の出版権が明石書店に譲渡されてから平成24年に明石書店が同雑誌を終刊するまでは,明石書店が同雑誌の発行主体となっていたものである(認定事実⑵)。 この点,「言論NPO・現代の理論」ないし被告NPOの「編集委員会」の「編集委員」であった原告Bらは,平成16年から平成24年 石書店が同雑誌の発行主体となっていたものである(認定事実⑵)。 この点,「言論NPO・現代の理論」ないし被告NPOの「編集委員会」の「編集委員」であった原告Bらは,平成16年から平成24年までの間に発行された雑誌「現代の理論」においても,企画・編集業務を継続して行ってきたことが認められる(認定事実⑵)。しかし,前記説示のとおり,この時期は,その発行主体は平成19年まではCや原告Bらを含む理事に よって構成される「言論NPO・現代の理論」ないしこれが法人化した被告NPOであり,それ以降は明石書店となっていたものであって,原告Bらの活動も,飽くまでそれぞれの発行主体の下でなされたものであるから,上記の事実から直ちに,原告編集委員会が,同雑誌の発行主体であったと認められることにはならない。 また,原告Bらは,平成26年以降,原告出版物(「現代の理論」季刊電子版)の配信を開始していることが認められる(認定事実⑶イ)。しかし,この時期は,被告らにおいても雑誌「現代の理論」を発刊していたものである(認定事実⑶ウ,エ)。また,雑誌「現代の理論」は,その掲載内容等も踏まえると,その長年の発行経緯を踏まえて読者層が形成されていると いうべきである一方,原告Bらの原告出版物の配信という上記事実は飽くまで,上記の長年の発行経緯に照らせば比較的近時の事情であるにすぎない(認定事実⑴~⑶)。併せて,本件証拠上認められる原告出版物の配信規模,配信内容等に照らしても,上記配信によって直ちに,原告標章である「現代の理論」という名称が,原告編集委員会の商品等を表示するものと して,需要者の間で周知になっているとまでは認められない。 ウ以上に照らせば,その長年の発行経緯におけるいずれの時期についてみても,雑誌「現 委員会の商品等を表示するものと して,需要者の間で周知になっているとまでは認められない。 ウ以上に照らせば,その長年の発行経緯におけるいずれの時期についてみても,雑誌「現代の理論」の発行主体が原告編集委員会であったとはいえないから,需要者において,「現代の理論」の表示の出所が原告編集委員会であったものと認識するということはできず,原告編集委員会が主張するように,原告標章が,その主張時期(平成28年6月)までに,全国の読 者において,原告編集委員会の商品等を表示するものとして周知になっていたと認めることはできない。 したがって,原告編集委員会の被告らに対する不競法に基づく請求は,その余の点(争点1-4)について判断するまでもなく,理由がない。 3 争点2(原告Bの請求の可否)について ⑴ 争点2-1(原告Bと被告NPOとの間に本件合意が成立したか)についてア原告Bは,仮に原告編集委員会が法人格なき社団に該当しないとされた場合,原告編集委員会の構成員である原告Bと被告NPOとの間に本件合意が成立したといえる旨を主張する。 イしかし,前記2⑵で認定説示したのと同様に,被告NPOは,原告編集委員会との間のみならず,原告Bとの間においても,本件合意をしたとは認められない。 したがって,原告Bの被告らに対する本件合意及びその債務不履行に基づく請求は,その余の点(争点2-5)について判断するまでもなく,理 由がない。 ⑵ 争点2-4(原告Bの被告らに対する原告商標権の行使が権利の濫用に当たるか)について次に,原告Bの被告らに対する商標権侵害に基づく請求については,本件事案に鑑み,争点2-4(原告Bの被告らに対する原告商標権の行使が権利 の濫用に当たるか)から判断する。 るか)について次に,原告Bの被告らに対する商標権侵害に基づく請求については,本件事案に鑑み,争点2-4(原告Bの被告らに対する原告商標権の行使が権利 の濫用に当たるか)から判断する。 ア被告らは,原告Bによる原告商標に係る商標登録出願及び本件訴訟の提起は,不正な目的によるものであるから,原告Bによる被告らに対する原告商標権の行使は,権利の濫用に当たり許されない旨を主張する。 この点,ある特定の雑誌の表示について,需要者の間で周知となっており,需要者の間で,その出所(発行主体)として,営業上の信用等を化体 させ周知性の獲得等に貢献してきたその帰属主体があったときに,その中の特定の者が商標権を取得し,当該表示の独占的な表示主体として,その中の他の者ないし当該主体自体に対して商標権に基づく権利行使をする場合は,需要者に対する関係又は当該帰属主体内の関係において,その表示の周知性等の獲得がほとんどその特定の者に帰属しているとまでは認めら れない事情があるときには,当該権利行使は,客観的に公正な競業秩序に背反するものであり,権利の濫用(民法1条3項)として許されないというべきである。 イそこで検討するに,前記認定事実のとおり,昭和34年から平成元年までの雑誌「現代の理論」(月刊誌)の第1次発行ないし第3次発行は,いず れも原告らや被告らとは異なる現代の理論社が発行主体となり,有識者らによって企画・編集されてきたこと(認定事実⑴),平成16年以降の雑誌「現代の理論」(季刊誌)は,Cや原告Bらを含む理事によって構成される「言論NPO・現代の理論」ないしこれが法人化した被告NPOが発行主体となり,被告NPOの理事兼同「編集委員会」の「編集委員」が,同雑 誌の企画・編集業務を行ってきたこと(認 よって構成される「言論NPO・現代の理論」ないしこれが法人化した被告NPOが発行主体となり,被告NPOの理事兼同「編集委員会」の「編集委員」が,同雑 誌の企画・編集業務を行ってきたこと(認定事実⑵ア,イ),同人らの間で,同雑誌の出版権を明石書店に譲渡することを巡り,被告NPOの解散に関する議論があり,これに反対するCは,被告NPOの理事長及び同「編集委員会」の「編集委員」を辞任したが,被告NPOの総会においては,結局,解散に関する決議はされなかったこと(認定事実⑵ウ),平成19年に 同雑誌の出版権が明石書店に譲渡されてから平成24年に明石書店が同雑 誌を終刊するまでは,明石書店が同雑誌の発行主体となっていたところ,同「編集委員会」の「編集委員」であった原告Bらは,引き続き企画・編集業務を行ってきたこと(認定事実⑵ウ,エ),被告NPOは,同雑誌の出版権が明石書店に譲渡された後も,法人名として,「特定非営利活動法人言論NPO・現代の理論」ないし「特定非営利活動法人NPO現代の理論・ 社会フォーラム」という「現代の理論」を含む名称の使用を継続し,雑誌名としても,平成20年に創刊した雑誌「FORUMOPINION」の題名の下に「現代の理論」という名称を付記するなどして「現代の理論」という名称の使用を継続していたこと(認定事実⑵ウ),被告NPOは,平成24年に明石書店が雑誌「現代の理論」を終刊した後は,明石書店のZ 社長の了解を得た上で,雑誌の名称を「FORUMOPINION」から「現代の理論」に変更し,被告出版物を発刊したこと(認定事実⑶ア,ウ,エ),他方で,原告Bらは,平成26年以降,原告出版物(「現代の理論」季刊電子版)の配信を開始したところ,平成28年2月,被告NPOが上記のとおり雑誌の名称 出版物を発刊したこと(認定事実⑶ア,ウ,エ),他方で,原告Bらは,平成26年以降,原告出版物(「現代の理論」季刊電子版)の配信を開始したところ,平成28年2月,被告NPOが上記のとおり雑誌の名称を変更することを知り,同年4月に原告商標に 係る商標登録出願をし,その後に被告らに商標権侵害の警告をするなどして,本件訴訟の提起に至ったこと(認定事実⑶イ~エ,⑷)という各事実がそれぞれ認められる。 ウ以上を踏まえて検討するに,雑誌「現代の理論」の表示は,その発刊当時の精神を受け継ぎつつ,昭和34年から長年にわたって断続的に使用さ れ,需要者の間で周知となっているところ,需要者の間で,その出所(発行主体)として,営業上の信用等を化体させ周知性の獲得等に貢献してきたその帰属主体は,昭和34年から平成16年に至る時期を経て,同年以降は,Cや原告Bらを理事とする「言論NPO・現代の理論」ないし被告NPOとなり,平成19年から平成24年までは,明石書店となったもの であり,それ以降は,平成16年から平成19年までの発行主体が,原告 Bらの側と被告NPOないしCらの側に分裂して,それぞれの形態で「現代の理論」の表示を使用しているといえる。 そして,原告Bは,上記主体たる「言論NPO・現代の理論」ないし被告NPOの一構成員であったところ,「現代の理論」の表示に係る商標権を取得し,当該表示の独占的な表示主体として,上記主体自体である被告N PO(被告会社は,被告NPOの被告出版物の販売元であり,被告NPOに準ずる立場の者といえる。)に対して商標権に基づく権利行使を行っている。しかして,需要者(読者層)に対する関係においては,前記説示のとおり,その長年の発行経緯におけるいずれの時期についてみても,雑誌「現代の の者といえる。)に対して商標権に基づく権利行使を行っている。しかして,需要者(読者層)に対する関係においては,前記説示のとおり,その長年の発行経緯におけるいずれの時期についてみても,雑誌「現代の理論」の出所(発行主体)が原告編集委員会(ひいてはその構成員で ある原告Bら)であったと認識されていたとはいえず,原告Bであると認識されていたともいえない。また,上記主体たる「言論NPO・現代の理論」ないし被告NPO内の関係においても,平成24年以降は,原告Bらの側と被告NPOないしCらの側に分裂して,それぞれが「現代の理論」の表示の使用を相当期間継続して,現在に至っているといえ,原告Bらな いし原告B一人が「現代の理論」の表示の周知性等の獲得等に貢献しているともいえない。そうすると,「現代の理論」の表示の周知性等の獲得等がほとんどその特定の者(原告B)に帰属しているとまでは認められない事情があるというべきである。 以上によれば,原告Bによる被告らに対する原告商標権の行使は,客観 的に公正な競業秩序に背反するものであり,権利の濫用(民法1条3項)として許されないというほかない(なお,原告Bらは,平成26年以降,インターネット上で原告出版物を無料配信しているが(認定事実⑶イ),今後も紙媒体で雑誌を発行する見込みが高いとはいえず,被告NPOによる紙媒体による被告出版物の出版販売等(認定事実⑶ウ,エ)を差し止める べき必要性についても,必ずしも高いとはいえない。)。 エこれに対し,原告Bは,原告編集委員会ないしその構成員である原告Bらが,平成16年から平成24年までの間,雑誌「現代の理論」の実質的な発行主体となり,その後は明石書店から同雑誌の出版権の返還を受け,平成26年からは原告出版物を配信している その構成員である原告Bらが,平成16年から平成24年までの間,雑誌「現代の理論」の実質的な発行主体となり,その後は明石書店から同雑誌の出版権の返還を受け,平成26年からは原告出版物を配信しているのであり,「現代の理論」の表示は,原告編集委員会に独占的に帰属している旨を主張する。 しかし,原告Bらが,平成16年から平成24年までの間,雑誌「現代の理論」の企画・編集業務を行ってきたとしても,そうであるからといって当然に,前記説示のように当事者能力を欠くような原告編集委員会が同雑誌の発行主体であったとか,原告Bらのみが長年の歴史を有する雑誌「現代の理論」の表示を独占的に使用する権限を有していたといえるもの ではない。 この点,原告Bは,原告編集委員会が,同年,明石書店から,雑誌「現代の理論」の出版権の返還を受けるに当たり,「明石との確認について」と題する書面(甲28)の内容を相互に確認した旨を主張する。 しかし,同書面を前提としても,これには「30号の刊行をもって編集 委員会と明石書店の協同事業は終了し,覚書は効力を失う。」という記載があるところ,同覚書に当たる本件覚書(甲20)には,被告NPOが雑誌「現代の理論」の出版権を明石書店に譲渡する旨が記載されていたのであるから(認定事実⑵ウ),上記書面における上記記載からは,同雑誌の出版権が被告NPOに復帰するものであるとも解釈できる可能性がある。また, 上記返還時には,原告Bらと明石書店との間に金銭トラブルが発生していたといった経緯もあること(認定事実⑵エ),その後,Cも,明石書店のZ社長から,雑誌に「現代の理論」の表示を使用することについて了解を得ていること(認定事実⑶ア)などからすれば,原告Bの上記主張をもっても,必ずしも原告Bらのみが,被告NPOやC ,Cも,明石書店のZ社長から,雑誌に「現代の理論」の表示を使用することについて了解を得ていること(認定事実⑶ア)などからすれば,原告Bの上記主張をもっても,必ずしも原告Bらのみが,被告NPOやCらを排して,明石書店から 同雑誌の出版権の返還を受け,「現代の理論」の表示を独占的に使用する権 限を取得したことが導かれることにはならないというべきである。 以上によれば,原告Bの上記主張は採用することができない。 オしたがって,原告Bの被告らに対する商標権侵害に基づく請求は,その余の点(争点2-2,2-3,2-5)について判断するまでもなく,理由がない。 4 結論よって,原告編集委員会の本件訴えは,いずれも不適法であるからこれらを却下することとし,原告Bの請求は,いずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官奥俊彦 裁判官西尾信員 別紙 原告商標権目録 登録番号商標登録第5978523号出願日平成28年4月9日登録日平成29年9月8日商標権者 B登録商標現代の理論(標準文字) 商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務第9類電子印刷物第16類印刷物以上 (別紙出版物目録省略) (別紙出版物目録省略)

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