1 令和5年7月7日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年(ワ)第33996号 特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日 令和5年4月20日判 決 5原告 株式会社ワールドウイングエンタープライズ同訴訟代理人弁護士 溝田宗司浅岡知俊同訴訟復代理人弁護士 松岡悠也被告 4D-Stretch株式会社10同訴訟代理人弁護士 甲本晃啓大江弘之主 文1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 15事実及び理由第1 請求1 被告は、「トータルショルダージョイント」との名称のトレーニングマシンを製造し、販売し、貸し渡し又は販売若しくは貸渡しのための展示その他の販売若しくは貸渡しの申出をしてはならない。 202 被告は、前項のトレーニングマシン及びその半製品を廃棄せよ。 第2 事案の概要本件は、発明の名称を「トレーニング器具」とする特許第4063821号の特許(以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有する原告が、被告による「トータルショルダージョイント」との名25称のトレーニングマシン(以下「被告製品」という。)の製造、販売等が本件特許権の侵害に当たると主張して、被告に対し、特許法100条1項に基づき、被告製品の製造、販売等の差止めを、同条2項に基づき被告製品及び半製品の2 廃棄をそれぞれ求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者(弁論の全趣旨)ア 品及び半製品の 廃棄をそれぞれ求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者(弁論の全趣旨)ア原告は、トレーニング施設の運営等を目的とする株式会社であり、本件 特許権を有している。 イ被告は、トレーニング機械器具の製造、販売等を目的とする株式会社である。 (2) 本件特許(甲3、4)ア原告は、平成16年12月28日、本件特許に係る特許出願(特願20 04-381653)をし、平成20年1月11日、本件特許権の設定登録(請求項の数3)を受けた(以下、同特許出願の願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。また、明細書の発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】などと、図を【図1】などと、それぞれ記載する。)。 イ本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(以下、同請求項に係る発明を「本件発明」という。)。 【請求項1】着座部と、負荷の大きさが調整自在の負荷付与部と、 前記着座部がその中央位置となるように所定の間隔をあけて鉛直方向に延びる2本の案内支柱と、該2本の案内支柱にその一端側が上下動自在で且つ水平方向に回転自在にそれぞれ嵌合された2つの昇降揺動部材と、該2つの昇降揺動部材の他端側に鉛直方向に軸支された軸と連結して該 昇降揺動部材の下方に水平方向に回転自在に設けられた把持部と、一端が前記負荷付与部に連結され、他端が前記昇降揺動部材の案内支柱の嵌合位置よりも他端側に連結され、方向転換案内車に巻回され、前記 負荷付与部の負荷によって前記昇降揺動部を上方向に付勢する引張部材と、前記昇降揺動部材内において前記引張部材 案内支柱の嵌合位置よりも他端側に連結され、方向転換案内車に巻回され、前記3 負荷付与部の負荷によって前記昇降揺動部を上方向に付勢する引張部材と、前記昇降揺動部材内において前記引張部材の他端側と連結して前記負荷付与部により把持部の前記軸を中心とする回転に負荷を与えるように設けられ、前記把持部の前記軸を中心とする回転運動を伝達する回転伝達5部と、該回転伝達部により伝達された回転運動を前記引張部材の他端側と連結している摺動軸の上下動に変換するクランク機構部と、を具備する負荷伝達部と、を具備したトレーニング器具。 ウ 本件発明を構成要件に分説すると、次のとおりである(以下、分説した10構成要件を頭書の符号に対応させて「構成要件A」などという。)。 A 着座部と、B 負荷の大きさが調整自在の負荷付与部と、C 前記着座部がその中央位置となるように所定の間隔をあけて鉛直方向に延びる2本の案内支柱と、15D 該2本の案内支柱にその一端側が上下動自在で且つ水平方向に回転自在にそれぞれ嵌合された2つの昇降揺動部材と、E 該2つの昇降揺動部材の他端側に鉛直方向に軸支された軸と連結して該昇降揺動部材の下方に水平方向に回転自在に設けられた把持部と、F 一端が前記負荷付与部に連結され、他端が前記昇降揺動部材の案内20支柱の嵌合位置よりも他端側に連結され、方向転換案内車に巻回され、前記負荷付与部の負荷によって前記昇降揺動部を上方向に付勢する引張部材と、G 前記昇降揺動部材内において前記引張部材の他端側と連結して前記負荷付与部により把持部の前記軸を中心とする回転に負荷を与えるよう25に設けられ、前記把持部の前記軸を中心とする回転運動を伝達する回転伝達部と、該回転伝達部により伝達された回転運動を前記引張 記負荷付与部により把持部の前記軸を中心とする回転に負荷を与えるよう25に設けられ、前記把持部の前記軸を中心とする回転運動を伝達する回転伝達部と、該回転伝達部により伝達された回転運動を前記引張部材の他端側と連結している摺動軸の上下動に変換するクランク機構部と、を具4 備する負荷伝達部と、H を具備したトレーニング器具。 (3) 被告の行為等ア 被告は、被告製品を製造及び販売している。 イ 被告製品の構成を分説すると、次のとおりであり(ただし、下線部の構5成には争いがある。以下、被告製品の分説した構成を頭書の符号に対応させて「構成a」などという。)、その構成のうち、「シート」、「ウェイト」、「案内支柱」、「昇降揺動部材」、「ハンドル」及び「ワイヤー」の状況は、別紙写真目録1の各写真のとおりである。 a シートと、10b 負荷の大きさが調整可能なウェイトと、c シートが中央の位置となるように所定の間隔をあけて鉛直方向に延びる2本の案内支柱と、d 2本の案内支柱にその一端側が上下動自在で且つ水平方向に回転自在にそれぞれ嵌合された2つの昇降揺動部材と、15e 2つの昇降揺動部材の他端側に鉛直方向に軸支された軸と連結して昇降揺動部材の下方に回転自在に設けられたハンドルと、f 一端が前記ウェイトに連結され、他端が昇降揺動部材の案内支柱の嵌合位置よりも一端側に連結され、滑車に巻回され、前記ウェイトの負荷によって前記昇降揺動部材を上方向に付勢するワイヤーと、20h を具備したトレーニングマシン。 ウ 被告製品の構成aないしc、e及びhは、それぞれ、構成要件AないしC、E及びHを充足するが、同構成fは、構成要件Fを充足せず、被告製品は、構成要件Gに対応する を具備したトレーニングマシン。 ウ 被告製品の構成aないしc、e及びhは、それぞれ、構成要件AないしC、E及びHを充足するが、同構成fは、構成要件Fを充足せず、被告製品は、構成要件Gに対応する構成を有していないから、構成要件Gを充足しない。 252 争点(1) 構成要件Dの充足性(争点1)(2) 均等侵害の成否(争点2)5 (3) 差止め及び廃棄の必要性の有無(争点3)第3 争点に関する当事者の主張1 争点1(構成要件Dの充足性)について(原告の主張)別紙写真目録2の各写真のとおり、被告製品の構成dにおける案内支柱は、5昇降揺動部材(赤枠で囲った部分)の一端側で接続されていることが明らかであり、また、その接続の態様についても、昇降揺動部材の一部を成す3つの車輪が案内支柱に嵌まり合っており、文字どおり「嵌合」しているといえる。 したがって、被告製品は構成要件Dを充足する。 (被告の主張)10被告製品の構成dにおける案内支柱は、「昇降揺動部材」と定義される部材の「その一端側」ではなく中間において円柱状の案内支柱上を鉛直方向に部材が自由に滑走移動するための3つの案内車輪により接続している。 したがって、軸と軸受けのように、互いに相補的に嵌まり合う関係を意味する「嵌合」には当たらず、構成要件Dを充足しない。 152 争点2(均等侵害の成否)について(原告の主張)被告製品のワイヤーは、他端が昇降揺動部材の案内支柱の嵌合位置よりも一端側に連結されており(構成f)、「…他端側に連結され」(構成要件F)ているわけではなく(以下「相違点A」という。)、また、被告製品は構成要件Gに20対応する構成を備えない(以下「相違点B」という。)ものの、以下のとおり、均等侵害が成立する。 (1) 件F)ているわけではなく(以下「相違点A」という。)、また、被告製品は構成要件Gに20対応する構成を備えない(以下「相違点B」という。)ものの、以下のとおり、均等侵害が成立する。 (1) 第1要件についてア 先行技術について本件発明の先行技術としては、プルダウンと呼ばれるトレーニング器具25に関する技術(本件明細書【0002】)及び本件特許に先行して公開された特許公報(米国特許出願公開第6770015号明細書。甲7。以下「甲7文献」という。)に記載されたケーブルマシンの技術(以下「甲76 発明」という。)が挙げられる。甲7発明は、本件明細書に記載された先行技術ではないが、被告との交渉過程において、被告から提出された先行技術である。 これらの先行技術のうち、プルダウンについては、腕を下ろしながら腕を開いても、常に斜め上方向に働くケーブルの張力に抵抗し、斜め下にケ5ーブルを引っ張るだけの運動しかできない。 また、甲7発明に係るケーブルマシンについても、ハンドル62(符号については、別紙甲7図面参照。以下同じ。)、プーリー30、ガイドカラム18を備えており、ハンドル62を上下させるとプーリー30もガイドカラム18に沿って昇降すると考えられるものの、ハンドル62とプーリ10ー30がそのまま接続されているわけではなく、あくまでもハンドル62が接続されているのはケーブル46であって、プーリー30ではない。そのため、ケーブル46のテンションを維持しながら運動する必要があることから、ハンドル62を掴んだ腕を外側に捻りながら引き下げても、結局、ハンドル62とケーブル46を結んだ線上の方向にケーブルを引っ張る力15に拮抗する運動しか行い得ない。したがって、プーリーを上下動させながらもガイドカラム18を軸と りながら引き下げても、結局、ハンドル62とケーブル46を結んだ線上の方向にケーブルを引っ張る力 に拮抗する運動しか行い得ない。したがって、プーリーを上下動させながらもガイドカラム18を軸とした円形に回転させる運動を行うことはできるかもしれないが、ケーブルを引っ張る力を鍛えることができるだけで、肩甲骨を水平方向にスライドさせながら広背筋を収縮させる運動をガイドすることはできないから、関節の可動域を広げる運動を確実かつ容易に行 えるわけではない。 以上のとおり、いずれの先行技術も、ケーブルの張力のみを利用する運動を可能とするものにすぎない。 イ本質的部分について前記アの先行技術に対し、本件発明においては、昇降揺動部材を垂直方 向に下げる運動と、支柱を軸として昇降揺動部材を回転させる運動とを、同時に実現するものである。 そして、このような運動を同時に実現することを可能にする本件発明の 構成は、構成要件Dの「該2本の案内支柱にその一端側が上下動自在で且つ水平方向に回転自在にそれぞれ(接続された)2つの昇降揺動部材」及び構成要件Fの「一端が前記負荷付与部に連結され、他端が前記昇降揺動部材の案内支柱…に連結され、方向転換案内車に巻回され、前記負荷付与部の負荷によって前記昇降揺動部を上方向に付勢する引張部材」である。 したがって、本件発明の本質的部分は、上記各構成であるといえ、相違点Bは本質的部分とはならない。 また、相違点Aは、構成要件Fの一部の構成に係るものではあるが、相違点Aがあったとしても、被告製品により、昇降揺動部材を垂直方向に下げる運動と、支柱を軸として昇降揺動部材を回転させる運動とを、同時に 実現することは可能であり、本件発明の技術的思想を実現できるから、相違点Aは本質的部分とは より、昇降揺動部材を垂直方向に下げる運動と、支柱を軸として昇降揺動部材を回転させる運動とを、同時に10実現することは可能であり、本件発明の技術的思想を実現できるから、相違点Aは本質的部分とはならない。 仮に、上記主張が認められなかったとしても、被告製品は、本件発明の構成の技術的思想と共通の思想を備えるものである。すなわち、本件発明において、昇降揺動部材にかかる力学的要素は、昇降揺動部材を引き15下げた場合に引張部材の張力(負荷付与部の負荷に生じる重力)と、それとは別に、昇降揺動部材と引張部材の接続点に生じる支柱を軸として回転方向に働く復元力であるから、本件発明の技術的思想は、昇降揺動部材に支柱、引張部材及び把持部を接続することで、一方で、負荷付与部の負荷によって昇降揺動部材の上下方向にかかる力(負荷付与部によ20り付与される引張部材の張力を上下方向に分解したときの力)を利用した運動を実現するとともに、他方で、この上下方向にかかる力を利用した運動と同時に、昇降揺動部材を回転させて開いた際に生じる上記回転規制力を利用した「てこ」を使った運動を実現している点にあるといえる。このような本件発明の技術的思想に照らすと、いずれにしても、本25件発明の本質的部分は、上記のとおりとなる。そして、被告製品は、2本の案内支柱にその一端側が上下動自在で且つ水平方向に回転自在にそれぞれ嵌合された2つの昇降揺動部材を備えるものであって、昇降揺動8 部材を水平方向に回転自在させるだけの幅を備えるものであることは明らかであり、同様に「てこの原理」を利用するものであるから、この構成により、本件発明の技術的思想が実現される。 ウ まとめしたがって、被告製品は本件発明の本質的部分を備えており、相違点A5及び てこの原理」を利用するものであるから、この構成により、本件発明の技術的思想が実現される。 ウ まとめしたがって、被告製品は本件発明の本質的部分を備えており、相違点A5及びBは本件発明の本質的部分でないといえるから、被告製品は本件発明の第1要件を充足する。 (2) 第2要件について被告製品は、相違点A及びBがあるとしても、昇降揺動部材50が下がれば下がるほど、把持部にかかる水平方向の力が弱まり、これにより、使用者10は、両腕を屈曲させて把持部60を引き下げるとき、両腕を外側に広げるように略一定の筋力を出力させることにより、把持部60を引き下げながら、両腕を漸次外側に広げる動作を滑らかに行うことができ、その結果、使用者は、主働筋を目的としたトレーニングが可能となり、筋の共縮を防ぐことを可能とするという作用効果(本件明細書【0032】参照)を奏することは15明らかである。 また、被告製品も、本件発明と同様に、一方で、負荷付与部の負荷によって昇降揺動部材の上方向にかかる力(負荷付与部により付与される引張部材の張力を上方向に分解したときの力)を利用した運動を実現するとともに、他方で、この上方向にかかる力を利用した運動とは別に、かつ、同時に、支20柱を軸とした回転方向の復元力による「てこの原理」を用いた運動を実現しているものであるから、作用効果が共通し、置換可能性が認められることが明らかである。 よって、被告製品は第2要件を充足する。 (3) 第3要件について25本件発明から、相違点A及びBに係る構成を除外し、通常のハンドルを直接昇降揺動部材に取り付けることに格別の困難性はなく、被告製品は第3要件を充足する。 9 (4) 第4要件について本件発明の技術的思想 A及びBに係る構成を除外し、通常のハンドルを直接昇降揺動部材に取り付けることに格別の困難性はなく、被告製品は第3要件を充足する。 9 (4) 第4要件について本件発明の技術的思想は、甲7発明の技術的思想と真逆であり、また、その思想が反映された構成も全く異なるから、甲7発明に基づき、本件発明の技術的思想に至る着想をなすのは極めて困難である。したがって、本件発明の技術的思想と同一の技術的思想を備える被告製品についても、甲7発明に5基づき容易に想到できたものとはいえない。 よって、被告製品は第4要件を充足する。 (5) 第5要件について構成要件Gに係る構成は、出願当初の請求項1に記載されていた。しかし、明確性要件違反を内容とする平成19年5月30日付け拒絶理由通知がされ10たことを受けて、同構成をより明確に説明するために、構成要件Gが追加されたにすぎない。 したがって、出願当初の請求項1の技術的範囲に、被告製品のような構成要件Gの構成を欠く製品が当初含まれていたにもかかわらず、その後の出願人の行動によりこれを除外したという事情は一切ない。 15よって、被告製品は第5要件を充足する。 (6) 小括以上によれば、被告製品は、本件特許の特許請求の範囲(請求項1)に記載された構成と均等なものであって、本件発明の技術的範囲に属するものと認められる。 20(被告の主張)(1) 第1要件についてア 先行技術について本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書の記載に照らすと、本件発明により解決すべき課題は、肩部や背部の筋肉のトレーニングにおいて25「初動負荷理論」(「反射の起こるポジションへの身体変化およびそれに伴う重心位置変化等を利用し主働筋の弛緩-伸長-短縮の一連動作を促 り解決すべき課題は、肩部や背部の筋肉のトレーニングにおいて25「初動負荷理論」(「反射の起こるポジションへの身体変化およびそれに伴う重心位置変化等を利用し主働筋の弛緩-伸長-短縮の一連動作を促進させるとともに拮抗筋、並びに拮抗的に作用する筋の共縮を防ぎながら10 行う運動」についての理論。乙5の1)を実践するためのプルダウンマシンの提供にあるが、従来技術としてどのようなプルダウンマシンが存在するのかという出願時の状況については何ら開示をしていない。したがって、客観的にみて先行技術の開示が不十分であるといえるから、本件発明の本質的部分の解釈に当たっては、本件明細書に記載されていな5い先行技術も参酌すべきである。 甲7文献には、「昇降揺動部材」にあたるプーリー30が「該2本の案内支柱」に当たるガイドカラム18に「その一端側が上下動自在で且つ水平方向に回転自在にそれぞれ嵌合され」(構成要件D)ている状況が示されている。そして、プーリー30は、一端から他端といえるだけの所10定の幅があり、かつ、「他端側に鉛直方向に軸支された軸と連結して該昇降揺動部材の下方に水平方向に回転自在に設けられた把持部」(構成要件E)に相当するハンドル62が連結して設けられている構造を有している。さらに、他端がウェイトに接続されてプーリー30を上方向に付勢するためのワイヤーであるケーブル46が接続され、「一端が前記負荷付15与部に連結され、他端が前記昇降揺動部材の案内支柱の嵌合位置よりも他端側に連結され、方向転換案内車に巻回され、前記負荷付与部の負荷によって前記昇降揺動部を上方向に付勢する引張部材」(構成要件F)の構造を有している。 また、甲7文献には、プーリー30を含む作動アセンブリ32とハンド20ル62との接続に関して、作動アセン によって前記昇降揺動部を上方向に付勢する引張部材」(構成要件F)の構造を有している。 また、甲7文献には、プーリー30を含む作動アセンブリ32とハンド ル62との接続に関して、作動アセンブリは、「例えば、摺動要素に結合されたケーブルおよび/またはハンドルから構成されてもよい。」と記載されている。この摺動要素は、プーリー30の一部であり、作動アセンブリ32の一部であるから、「昇降揺動部材」に対してケーブルを介さず直接ハンドルを結合するという構成が記載されているといえる。 さらに、甲7文献には、甲7発明の目的はより具体的な全範囲筋肉、特に拮抗筋群の発達のための運動装置を提供することであると記載されている。 以上のことから、甲7発明には、原告が本件発明の本質的部分であると主張する構成が備わっている一方で、構成要件Gの構成は備わっていない。 イ本質的部分について本件明細書の【0009】には、使用者の初期動作として、上方に腕 を伸ばして昇降揺動部材のハンドル(把持部)を持ち、これを引き下げようとする際に「上腕を外側に捻り各把持部を回転」させる動作をすることで「両腕を引き下げる初動作における負荷が減少する」とともに、ハンドルを回転させて「負荷付与部の負荷の一部に抗する」形で、「捻り」の力を込めるという動作(【0030】でいう「かわし動作」)をするこ とで、筋肉が「弛緩」してリラックスした状態になる作用効果(以下「第1の作用効果」という。)があること、さらに、「それぞれ漸次外側を向くように両腕を外側に広げながら、両腕を屈曲して把持部を引き下げる」という動作をすることにより、「両腕を外側に広げるように略一定の筋力を出力させ」、「筋の共縮を防ぐ」作用効果(以下「第2の作用効 果」という。 に広げながら、両腕を屈曲して把持部を引き下げる」という動作をすることにより、「両腕を外側に広げるように略一定の筋力を出力させ」、「筋の共縮を防ぐ」作用効果(以下「第2の作用効15果」という。)があることが記載されている。 そして、本件明細書の【0027】には、構成要件Gの構成により、「把持部60は負荷付与部30の負荷に比例する力によって正面方向を向くように回転付勢されている」ことが開示されており、これにより、ハンドルを回転させて「負荷付与部の負荷の一部に抗する」形での「か20わし動作」が可能となっているので、第1の作用効果は構成要件Gにより実現しているといえる。 また、構成要件Fの「昇降揺動部材」について、本件明細書の【0025】には、「昇降揺動部50が正面方向を向くように回転付勢する力は…位置Pと昇降揺動部50との距離に略逆比例している」と記載されて25おり、昇降揺動部材を引き下げるほど回転付勢(いわゆる「前へ倣え」の状態への復元力)が弱くなり、「両腕を外側に広げる」ために必要な力は減少するので、それだけでは第2の作用効果である「略一定の筋力を12 出力」することは困難である。 他方で、本件明細書の【0031】では、この引き下げる動作のときにも「両腕を屈曲して把持部60を引き下げて筋肉を「短縮」させるとき、さらに上腕を外側に捻る」とされており、この動作により「各把持部60を昇降揺動部材50に対してさらに外側水平方向に軸回転するこ5とにより、ウェイト31を引き上げ」て、負荷付与部の負荷の一部に抗することとなり、昇降揺動部材を引き下げて回転付勢が弱まった部分を相補して、第2の作用効果である「略一定の筋力を出力」することが実現されていることから、第2の作用効果も構成要件Gの構成がなくては実現でき ととなり、昇降揺動部材を引き下げて回転付勢が弱まった部分を相補して、第2の作用効果である「略一定の筋力を出力」することが実現されていることから、第2の作用効果も構成要件Gの構成がなくては実現できないといえる。 10ウ まとめ以上のとおり、本件発明の課題及び解決手段とその効果に照らすと、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分、すなわち、本件発明の本質的部分は、構成要件Gの構成であり、同構成を欠く被告製品は第1要件を充足しない。 15(2) 第2要件及び第3要件について本件発明の本質的部分は、ハンドル部分が常に正面を向くように回転付勢される点にあるところ、被告製品は、ハンドルが自由回転するだけで、何ら回転付勢はされていない。 したがって、被告製品を使用することにより、第1及び第2の作用効果を20得ることはできないから、被告製品は、置換容易性を論ずるまでもなく、第2要件及び第3要件を充足しない。 (3) 第4要件について甲7発明と被告製品は、基本的な技術的思想が同一である。すなわち、ハンドルの固定方法や支柱との接続方法などについて細かな構成上の差異はあ25るものの、いずれも一般的な技術にすぎず、被告製品の構成は、甲7発明に基づき容易に想到できたものである。 したがって、被告製品は第4要件も充足しない。 13 (4) 第5要件について本件特許の出願当初の請求項1には、構成要件Gに相当する構成として、「前記昇降揺動部材内において前記引張部材の他端側と連結して前記負荷付与部により把持部の前記軸を中心とする回転に負荷を与えるように設けられた負荷伝達部と、」とのみ記載され、負荷伝達部の具体的な構成についての5記載はなく、構成要件Gのクランク機構部の構成は、一つの 与部により把持部の前記軸を中心とする回転に負荷を与えるように設けられた負荷伝達部と、」とのみ記載され、負荷伝達部の具体的な構成についての5記載はなく、構成要件Gのクランク機構部の構成は、一つのバリエーションとして出願当初の請求項4に記載されていた。 しかし、原告は、明確性要件違反及びサポート要件違反を内容とする平成19年5月30日付け拒絶理由通知がされたことを受け、同年8月3日付け手続補正書により、出願当初の請求項1の負荷伝達部の構成を、構成要件G10のクランク機構部に限定する補正を行った。 原告は、上記手続補正書により、本件発明の技術的範囲から、構成要件Gのクランク機構部を備えないものを意識的に除外したといえ、同機構部を備えない被告製品には、本件発明の技術的範囲から意識的に除外されたという特段の事情があるものと評価される。 15よって、被告製品は第5要件も充足しない。 (5) 小括以上のとおり、被告製品は、本件特許の特許請求の範囲(請求項1)に記載された構成と均等なものではなく、本件発明の技術的範囲に属するとは認められない。 203 争点3(差止め及び廃棄の必要性の有無)について(原告の主張)被告製品は、本件発明の技術的範囲に属するものであるが、被告は業として被告製品を製造、販売等している。 したがって、被告製品の製造、販売等を差し止め、廃棄する必要性がある。 25(被告の主張)争う。 第4 当裁判所の判断14 1 本件明細書の記載事項等(1) 本件明細書の発明の詳細な説明には、以下のとおりの記載がある(下記記載中に引用する図は別紙本件明細書図面参照)。 ア 【技術分野】【0001】5本発明は、肩部や背部の筋肉等に対してトレーニングを行う際に用いる 説明には、以下のとおりの記載がある(下記記載中に引用する図は別紙本件明細書図面参照)。 ア 【技術分野】【0001】5本発明は、肩部や背部の筋肉等に対してトレーニングを行う際に用いるトレーニング器具に関する。 【背景技術】【0002】肩部や背部の筋肉等に対してトレーニングを行う際に用いるトレーニ10ング器具として、プルダウンと呼ばれるトレーニング器具がある。このトレーニング器具は、座席に着座した使用者が上方に延ばした両手で1本の棒状の把持部を把持し、この把持部を引き下げて把持部に連結されたウェイトを引き上げることにより、肩部や背部の筋肉等に対して負荷を付与してトレーニングを行うものである。このトレーニングにおいて15は、把持部を両手で引き下げる動作に対して最後までウェイトの重量による負荷が付与される。このようなトレーニングは終動負荷トレーニングと呼ばれ、最後まで負荷を付与し各関節角度において大きな筋力を発揮させることにより、筋肉の強い緊張(硬化)を伴いながら筋肉を肥大化させるものである。 20【発明が解決しようとする課題】【0003】しかしながら、終動負荷トレーニングにより獲得した筋肉は、柔軟性や弾力性に劣るため、実際の競技等に必要な身体動作をロスさせる要因となっている問題があった。又、終動負荷トレーニングは、本来ならば筋出力25の少なくてよい部分に筋出力を出させ、実際動作と異なる動作形態、出力形態でトレーニングを行うため、身体動作に違和感が生じる問題があった。 又、筋細胞への酸素供給が筋肉の緊張によって阻害され、血流の洗い流し15 (ウォッシュアウト)ができないので、産出された乳酸等の疲労物質が蓄積され、筋肉痛や疲労など身体への負担が大きくなる問題があった。さらに、筋肉の硬化 緊張によって阻害され、血流の洗い流し15 (ウォッシュアウト)ができないので、産出された乳酸等の疲労物質が蓄積され、筋肉痛や疲労など身体への負担が大きくなる問題があった。さらに、筋肉の硬化が故障の大きな原因となっている問題があった。 【0004】本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、筋肉の硬化を伴うこ5となく、筋肉痛や疲労など身体への負担が少なく、柔軟で弾力性の富んだ肩部や背部の筋肉等を得ることができるトレーニング器具を提供することを目的とする。 イ 【課題を解決するための手段】【0005】10上記目的を達成するために、請求項1に記載のトレーニング器具は、着座部と、負荷の大きさが調整自在の負荷付与部と、前記着座部がその中央位置となるように所定の間隔をあけて鉛直方向に延びる2本の案内支柱と、該2本の案内支柱にその一端側が上下動自在で且つ水平方向に回転自在にそれぞれ嵌合された2つの昇降揺動部材と、該2つの昇降揺動15部材の他端側に鉛直方向に軸支された軸と連結して該昇降揺動部材の下方に水平方向に回転自在に設けられた把持部と、一端が前記負荷付与部に連結され、他端が前記昇降揺動部材の案内支柱の嵌合位置よりも他端側に連結され、方向転換案内車に巻回され、前記負荷付与部の負荷によって前記昇降揺動部を上方向に付勢する引張部材と、前記昇降揺動部材20内において前記引張部材の他端側と連結して前記負荷付与部により把持部の前記軸を中心とする回転に負荷を与えるように設けられ、前記把持部の前記軸を中心とする回転運動を伝達する回転伝達部と、該回転伝達部により伝達された回転運動を前記引張部材の他端側と連結している摺動軸の上下動に変換するクランク機構部と、を具備する負荷伝達部と、25を具備したことを特徴としている。 回転伝達部と、該回転伝達部により伝達された回転運動を前記引張部材の他端側と連結している摺動軸の上下動に変換するクランク機構部と、を具備する負荷伝達部と、25を具備したことを特徴としている。 【0006】請求項2に記載のトレーニング器具は、請求項1に記載のトレーニング16 器具において、前記着座部、前記負荷付与部及び前記2本の案内支柱は、1つの枠組の所定位置にそれぞれ固定されたものであることを特徴としている。 【0007】請求項3に記載のトレーニング器具は、請求項2に記載のトレーニング5器具において、前記負荷付与部は、前記枠組に上下動自在に且つ相互に連結離別自在に支持されるウェイトからなることを特徴としている。 ウ 【発明の効果】【0009】請求項1に記載のトレーニング器具によれば、着座部に着座した使用者10が上方に伸ばした手で各把持部をそれぞれ把持して上腕を外側に捻ると、使用者の肩や腕が「弛緩」してリラックスした状態になるとともに、引張部材を介した負荷付与部の負荷によって把持部が上方向に付勢されているので、肩甲帯付近等の筋肉が「伸張」される。次に、使用者は、適度に「伸張」された肩甲帯付近等の筋肉が「反射」を引き起こすように、15さらに上腕を外側に捻る「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら、負荷付与部の負荷に抗して両腕を屈曲し筋肉を「短縮」させて把持部を引き下げる。上腕を外側に捻り各把持部を回転することにより、負荷付与部の負荷の一部に抗することになり、両腕を引き下げる初動作における負荷が減少する。このように、両腕を屈曲して把持部を引き下げて筋肉を20「短縮」させるとき、さらに上腕を外側に捻ることによって、「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングを出現させること 。このように、両腕を屈曲して把持部を引き下げて筋肉を 「短縮」させるとき、さらに上腕を外側に捻ることによって、「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングを出現させることが可能となり、各筋肉群が「弛緩-伸張-短縮」のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができる。又、昇降揺動部材の案内支柱の嵌合位置より他端側に引張部材の他端が連結されているので、引張部 材を介した負荷付与部の負荷によって昇降揺動部は回転付勢される。使用者は、この回転付勢力に抗して、各昇降揺動部がそれぞれ漸次外側を向くように両腕を外側に広げながら、両腕を屈曲して把持部を引き下げ る。このとき、両腕を屈曲させて把持部を引き下げるに伴い、両腕を外側に広げることに対する抗力となる回転付勢力が減少する。そのため、使用者は両腕を屈曲させて把持部を引き下げるとき、両腕を外側に広げるように略一定の筋力を出力させることにより、把持部を引き下げながら漸次両腕を外側に広げる動作を滑らかに行うことができるので、筋の 共縮を防ぐことが可能となる。以上により、弛緩-伸張-短縮の一連動作の促進が図られ、さらに共縮が防止されることによって、神経と筋肉の機能や協調性を高め、筋肉痛や疲労など身体への負担が少なく、筋肉の硬化を伴うことなく、柔軟で弾力性の富んだ筋肉を得ることができる。 又、強制的な心拍数や血圧の上昇が少なく有酸素的に代謝を促進させる ことによって、糖尿病、高血圧など生活習慣病の予防や靭帯損傷、骨折等の治癒促進に有効であるとともに、神経・筋肉・関節のストレスの解除、老廃物の除去等、身体に有益な状態を作り出すことができる。 また、請求項1に記載のトレーニング器具によれば、把持部の軸を中心とする回転運動が回転伝達部とクランク機構部とを介し 関節のストレスの解除、老廃物の除去等、身体に有益な状態を作り出すことができる。 また、請求項1に記載のトレーニング器具によれば、把持部の軸を中心とする回転運動が回転伝達部とクランク機構部とを介して、引張部材の15他端側と連結している摺動軸に上下動として伝達されるので、負荷付与部により把持部の軸を中心とする回転に負荷を与えることができる。 エ 【発明を実施するための最良の形態】【0028】以下、このトレーニング器具1を用いたトレーニング方法について、図201及び図2に基づき説明する。 まず、使用者の筋力や目的等に適した負荷に合わせて適切な重量のウェイト31となるように、適切な枚数の前記板状プレートをクランプにより連結する。そして、使用者は、正面を向いて座席11に着座し、足裏が床面に接地するように座席11を適切な高さに調整して固定する。 25さらに、座席11に着座した使用者の大腿部の上面と接する程度に大腿部押え部21を適切な高さに調整して固定する。なお、使用者は、背中に適切なアーチを作りながらトレーニングを行う。 18 【0029】次に、使用者は立ち上がり、正面方向を向いた各把持部60の初期状態に合わせ、手の甲を正面方向に向けて、親指を除く手の指を手握部61に掛け、手の甲や手首の裏が手裏当て部62に当たるようにして、把持部60をそれぞれ把持する。そして、把持部60を上方に伸ばした手で5把持しながら、又、把持部60を下方に引っ張りながら座席21に正面方向を向いて着座する。 【0030】次に、使用者は、負荷付与部30の負荷に比例した力によって把持部60が正面方向を向くように回転付勢される力に抗して、両上腕を外側に捻10り、各把持部60を昇降揺動部材50に対して外側水平方向に軸回転させて、各 負荷付与部30の負荷に比例した力によって把持部60が正面方向を向くように回転付勢される力に抗して、両上腕を外側に捻10り、各把持部60を昇降揺動部材50に対して外側水平方向に軸回転させて、各把持部60を把持した手の甲をそれぞれ正面方向より外側に向ける。 この「かわし動作」のポジションをとることにより、屈筋と伸筋とが共に「弛緩」して肩や腕がリラックスした状態になる。又、負荷付与部30の負荷により把持部60が上方向に付勢されており、肩甲帯付近等の筋肉が15適度に「伸張」される。 【0031】次に、使用者は、適度に「伸張」された肩甲帯付近等の筋肉が「反射」を引き起こすように、負荷付与部30の負荷に抗して両腕を屈曲し筋肉を「短縮」させて把持部60を引き下げる。このとき、さらに上腕を外20側に捻る「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら、両手で把持部60を引き下げる。この上腕を外側に捻る動作によって各把持部60を昇降揺動部材50に対してさらに外側水平方向に軸回転することにより、ウェイト31を引き上げることになり、両腕を引き下げる初動作における負荷が減少する。このように、両腕を屈曲して把持部60を引き下げて筋25肉を「短縮」させるとき、さらに上腕を外側に捻ることによって、「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングを出現させることより、各筋肉群が「弛緩-伸張-短縮」のタイミングを得て、連19 動性よく動作を行うことができる。 【0032】又、使用者は、両腕を屈曲して把持部60を引き下げるとき、各昇降揺動部50が正面方向を向くように回転付勢される力に抗して、各昇降揺動部50がそれぞれ外側を向くように両腕を外側に漸次広げる。昇降揺動部550が正面方向を向くように回転付勢される力は位置Pと昇降揺動部5 0が正面方向を向くように回転付勢される力に抗して、各昇降揺動部50がそれぞれ外側を向くように両腕を外側に漸次広げる。昇降揺動部 50が正面方向を向くように回転付勢される力は位置Pと昇降揺動部50との距離に略逆比例するので、両腕を屈曲させて把持部60を引き下げることに伴い、両腕を外側に広げることに対する抗力が減少する。そのため、両腕を屈曲させて把持部60を引き下げるとき、使用者は両腕を外側に広げるように略一定の筋力を出力させることにより、把持部60を引き下げ ながら、両腕を漸次外側に広げる動作を滑らかに行うことができ、筋の共縮を防ぐことが可能となる。 【0033】次に、使用者は、各把持部60を略肩部の高さまで引き下げた後、負荷付与部30の負荷による各付勢力に従いながら、上腕を内側に捻り両腕を 内側に閉じながら両腕を伸ばすことにより、手の甲を正面方向に向けて把持部60を手でそれぞれ把持しながら着座した状態にゆっくりと戻す。これにより、トレーニングの1サイクルが終了する。そして、このトレーニングを適切な回数のサイクルだけ繰り返す。 (2) 前記(1)の記載事項によれば、本件明細書には、本件発明に関し、次のよ うな開示があることが認められる。 アプルダウンと呼ばれるトレーニング器具を用い、肩部や背部の筋肉等に対して負荷を付与して行うトレーニングにおいては、把持部を両手で引き下げる動作に対して最後までウェイトの重量による負荷が付与されるところ、このようなトレーニングは終動負荷トレーニングと呼ばれ、最 後まで負荷を付与し各関節角度において大きな筋力を発揮させることにより、筋肉の強い緊張(硬化)を伴いながら筋肉を肥大化させるものであるが、終動負荷トレーニングにより獲得した筋肉は、柔軟性や弾力性 に 付与し各関節角度において大きな筋力を発揮させることにより、筋肉の強い緊張(硬化)を伴いながら筋肉を肥大化させるものであるが、終動負荷トレーニングにより獲得した筋肉は、柔軟性や弾力性20 に劣るため、実際の競技等に必要な身体動作をロスさせる要因となっている上、身体動作に違和感を生じたり、筋肉痛や疲労など身体への負担が大きくなる問題があり、さらに、筋肉の硬化が故障の大きな原因となるという問題があった(【0002】、【0003】)。 イ 「本発明」は、前記アの問題を解決するため、筋肉の硬化を伴うことな5く、筋肉痛や疲労など身体への負担が少なく、柔軟で弾力性の富んだ肩部や背部の筋肉等を得ることができるトレーニング器具を提供することを目的とするものであり、このような目的を達成するために、「本発明」のトレーニング器具は、着座部と、負荷の大きさが調整自在の負荷付与部と、前記着座部がその中央位置となるように所定の間隔をあけて鉛直10方向に延びる2本の案内支柱と、該2本の案内支柱にその一端側が上下動自在で且つ水平方向に回転自在にそれぞれ嵌合された2つの昇降揺動部材と、該2つの昇降揺動部材の他端側に鉛直方向に軸支された軸と連結して該昇降揺動部材の下方に水平方向に回転自在に設けられた把持部と、一端が前記負荷付与部に連結され、他端が前記昇降揺動部材の案内15支柱の嵌合位置よりも他端側に連結され、方向転換案内車に巻回され、前記負荷付与部の負荷によって前記昇降揺動部を上方向に付勢する引張部材と、前記昇降揺動部材内において前記引張部材の他端側と連結して前記負荷付与部により把持部の前記軸を中心とする回転に負荷を与えるように設けられ、前記把持部の前記軸を中心とする回転運動を伝達する20回転伝達部と、該回転伝達部により伝達された回転運動を前記 て前記負荷付与部により把持部の前記軸を中心とする回転に負荷を与えるように設けられ、前記把持部の前記軸を中心とする回転運動を伝達する 回転伝達部と、該回転伝達部により伝達された回転運動を前記引張部材の他端側と連結している摺動軸の上下動に変換するクランク機構部と、を具備する負荷伝達部と、を具備したことを特徴としている(【0004】、【0005】)。 「本発明」のトレーニング器具によれば、弛緩-伸張-短縮の一連動作 の促進が図られ、更に共縮が防止されることにより、筋肉の硬化を伴うことなく、柔軟で弾力性の富んだ筋肉を得ることができるとともに、生活習慣病の予防や靭帯損傷、骨折等の治癒促進に有効であるとともに、神経・ 筋肉・関節のストレスの解除、老廃物の除去等、身体に有益な状態を作り出すことができるとの効果を奏する(【0009】)。 2 争点2(均等侵害の成否)について事案に鑑み、争点2から判断する。 (1) 均等の第1要件にいう特許発明における本質的部分とは、当該特許発明の 特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。 そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて、特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で、特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成 する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである。 また、第1要件の判断、すなわち対象製品等との相違部分が非本質的部分であるかどうかを判断する際には、上記のとおり確定される特許発明の本質的部分を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し、これを備え ていると認められる場合には,相違部分は本質 非本質的部分であるかどうかを判断する際には、上記のとおり確定される特許発明の本質的部分を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し、これを備え15ていると認められる場合には,相違部分は本質的部分ではないと判断すべきである。 (2) 本件明細書には、「肩部や背部の筋肉等に対してトレーニングを行う際に用いるトレーニング器具として、プルダウンと呼ばれるトレーニング器具がある。このトレーニング器具は、座席に着座した使用者が上方に延ばし20た両手で1本の棒状の把持部を把持し、この把持部を引き下げて把持部に連結されたウェイトを引き上げることにより、肩部や背部の筋肉等に対して負荷を付与してトレーニングを行うものである。…このようなトレーニングは終動負荷トレーニングと呼ばれ、最後まで負荷を付与し各関節角度において大きな筋力を発揮させることにより、筋肉の強い緊張(硬化)を25伴いながら筋肉を肥大化させるものである」(【0002】)、「終動負荷トレーニングにより獲得した筋肉は、柔軟性や弾力性に劣るため、実際の競技等に必要な身体動作をロスさせる要因となっている問題があった。又、終22 動負荷トレーニングは、…身体動作に違和感が生じる問題があった。又、…産出された乳酸等の疲労物質が蓄積され、筋肉痛や疲労など身体への負担が大きくなる問題があった。さらに、筋肉の硬化が故障の大きな原因となっている問題があった」(【0003】)、「本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、筋肉の硬化を伴うことなく、筋肉痛や疲労など身体へ5の負担が少なく、柔軟で弾力性の富んだ肩部や背部の筋肉等を得ることができるトレーニング器具を提供することを目的とする。」(【0004】)、「請求項1に記載のトレーニング器具によれば、…弛緩-伸張-短縮の一連動作の促 軟で弾力性の富んだ肩部や背部の筋肉等を得ることができるトレーニング器具を提供することを目的とする。」(【0004】)、「請求項1に記載のトレーニング器具によれば、…弛緩-伸張-短縮の一連動作の促進が図られ、さらに共縮が防止されることによって、神経と筋肉の機能や協調性を高め、筋肉痛や疲労など身体への負担が少なく、筋肉10の硬化を伴うことなく、柔軟で弾力性の富んだ筋肉を得ることができる。」(【0009】)、「使用者は、…各把持部60を…軸回転させて、各把持部60を把持した手の甲をそれぞれ正面方向より外側に向ける。この「かわし動作」のポジションをとることにより、屈筋と伸筋とが共に「弛緩」して肩や腕がリラックスした状態になる。又、負荷付与部30の負荷により15把持部60が上方向に付勢されており、肩甲帯付近等の筋肉が適度に「伸張」される。」(【0030】)、「次に、使用者は、…負荷付与部30の負荷に抗して両腕を屈曲し筋肉を「短縮」させて…、さらに上腕を外側に捻る「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら、両手で把持部60を引き下げる。 この上腕を外側に捻る動作によって各把持部60を昇降揺動部材50に対20してさらに外側水平方向に軸回転することにより、ウェイト31を引き上げることになり、両腕を引き下げる初動作における負荷が減少する。このように、…「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングを出現させることより、各筋肉群が「弛緩-伸張-短縮」のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができる。」(【0031】)、「又、25使用者は、両腕を屈曲して把持部60を引き下げるとき、各昇降揺動部50が正面方向を向くように回転付勢される力に抗して、各昇降揺動部50がそれぞれ外側を向くように両腕を外側に漸次広げる。…両腕を屈曲させ 用者は、両腕を屈曲して把持部60を引き下げるとき、各昇降揺動部50が正面方向を向くように回転付勢される力に抗して、各昇降揺動部50がそれぞれ外側を向くように両腕を外側に漸次広げる。…両腕を屈曲させ23 て把持部60を引き下げることに伴い、両腕を外側に広げることに対する抗力が減少する…ため、両腕を屈曲させて把持部60を引き下げるとき、使用者は両腕を外側に広げるように略一定の筋力を出力させることにより、把持部60を引き下げながら、両腕を漸次外側に広げる動作を滑らかに行うことができ、筋の共縮を防ぐことが可能となる。」(【0032】)との記5載がある。 これらの記載に照らすと、本件発明は、把持部を水平方向に軸回転させて負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上方向に付勢する負荷を軽くすることを可能にする構成を採用することにより、使用者が、「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングを出現させる10ことができ、各筋肉群が「弛緩-伸張-短縮」のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができることを可能にするとともに、両腕を屈曲させて把持部を引き下げることに伴い、両腕を外側に広げることに対する抗力が減少する構成を採用することにより、筋の「共縮」を防ぐことを可能にし、もって、筋肉の硬化を伴うことなく、筋肉痛や疲労など身体への負15担が少なく、柔軟で弾力性の富んだ肩部や背部の筋肉等を得ることができるトレーニング器具を提供し、従来技術の課題を解決するものといえる。 そうすると、これらの各構成については、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると認めることができる。 そして、本件明細書においては、上記の各構成のうち、上記把持部を軸20回転させて負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上 い特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると認めることができる。 そして、本件明細書においては、上記の各構成のうち、上記把持部を軸 回転させて負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上方向に付勢する負荷を軽くすることを可能にする構成について、「把持部60を昇降揺動部材50に対して軸回転することにより、回転伝達部91及びクランク機構部92を介して摺動軸57が上下動することに伴い、クランプにより連結されたウェイト31が上下動する。」(【0026】)、「把持部60を昇降 揺動部材50に対して初期状態である略正面方向から外側水平方向へ回転付勢力に抗して軸回転することにより、摺動軸57が昇降揺動部材50に対して下方向に摺動し、前記クランプにより連結されたウェイト31が引 き上げられる。」(【0027】)との記載がある。 これらの記載に照らすと、本件発明の特許請求の範囲において、上記把持部を軸回転させて負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上方向に付勢する負荷を軽くすることを可能にする構成に対応する構成は、把持部の回転運動を伝達し、同伝達された回転運動を摺動軸の上下動に変換す るクランク機構部を具備する負荷伝達部であり、構成要件Gの構成であると認められる。 本件においては、被告製品が構成要件Gに相当する構成を備えていないこと(相違点B)に争いがなく、本件発明の本質的部分を被告製品が共通に備えているとは認められないから、本件発明と被告製品の相違点Bが本 質的部分ではないということはできず、被告製品は、均等の第1要件を満たさない。 その他にも原告はるる主張するが、いずれも上記結論を左右しない。 以上によれば、被告製品は、その余の要件を検討するまでもなく、本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等な 要件を満たさない。 その他にも原告はるる主張するが、いずれも上記結論を左右しない。 以上によれば、被告製品は、その余の要件を検討するまでもなく、本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとはいえないから、15本件発明の技術的範囲に属するものとは認められない。 第5 結論以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部20 裁判長裁判官 國 分 隆 文25 裁判官25 バヒスバラン薫 裁判官5 木村洋一26 (別紙)写 真 目 録 1 シートウェイト案内支柱昇降揺動部材ハンドルワイヤー27 (別紙)写 真 目 録 2 28 (別紙)甲7図面 29 (別紙)本件明細書図面 29 (別紙)本件明細書図面
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