平成20(行コ)128 公文書非公開決定処分取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成20年12月18日 大阪高等裁判所 情報公開
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判決文本文18,776 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2事案の概要(略記は原判決のそれに従う。) 本件は,被控訴人が,本件条例に基づき,堺市長に対し,住居表示の新旧対照表(住居表示実施前後の新旧住所の対応関係を一覧化したもの)等の公開請求をしたところ,その全部につき非公開決定を受けた(本件処分)ため,そのうち旧新対照表(ただし,個人の氏名が記録されている部分を除いた部分)(本件文書)を非公開とした部分の取消しを求めている事案である。 原審は,被控訴人の請求を認容した。 控訴人は,これを不服として控訴した。 前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張は,次のとおり訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第2事案の概要等」の「2前提事実」及び「3本件の争点及び当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決2頁15行目の「地方自治」を「住民自治」と改める。 (2)原判決12頁8行目の「町名がどのようなものであったか」を「番地が何番であったか」と改める。 第3当裁判所の判断 当裁判所も被控訴人の請求は理由があるものと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第3争点に対す る判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決7頁3行目から8頁23行目までを次のとおり改める。 「(1)本件条例7条1号は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)」であって,特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなる 号は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)」であって,特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものも含む。)については,同号ただし書所定の除外事由に当たるものを除き,これが記録されている公文書を公開しないことができると規定している。同号にいう「個人に関する情報」については,「事業を営む個人の当該事業に関する情報」が除外されている以外には文言上何ら限定されていないから,個人の思想,信条,健康状態,所得,学歴,家族構成,住所等の私事に関する情報に限定されるものではなく,個人にかかわりのある情報であれば,原則として同号にいう「個人に関する情報」に当たると解するのが相当である(最高裁判所平成15年11月11日第3小法廷判決・民集57巻10号1387頁参照)。 これを本件情報についてみると,本件情報は,旧新対照表の「旧住所」と「新住所」との対応関係に関する情報であって,個人の氏名を記録した部分を含まないものであるから,それ自体から特定の個人を識別することはできない。しかし,不動産登記法119条ないし121条等によれば,誰でも不動産登記記録の登記事項証明書及び地図等の写しの交付を受けることができ,これにより旧住所である土地の地番,同土地上の建物の所在の有無,土地及び建物の所有者等を知ることができるし,また,住居表示に係る新住所を地形図上に書き込んだものが一般の閲覧に供されているので,その図面に基づいて,本件文書に記載されている新住所を現地見分したり住宅地図と照合したりすることにより,当該個人の住所を知ることができる。したがって,本件情報は,少なくとも他 の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができるものであり,本件条例7条1 宅地図と照合したりすることにより,当該個人の住所を知ることができる。したがって,本件情報は,少なくとも他 の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができるものであり,本件条例7条1号にいう「個人に関する情報」に該当するというべきである。 (2)しかし,本件情報は,以下のとおり,本件条例7条1号ただし書アに該当するというべきである。 市町村は,住居表示法3条3項により建物に街区符号及び住居番号を設定したときにはこれを告示しなければならず,同法8条1項により当該区域内に町名及び街区符号を記載した表示板を設置しなければならない。また,当該区域内の建物の所有者等は,同条2項により見やすい場所に住居番号を表示しなければならないとされている。このことからすれば,本件情報のうち新住所表示欄の記載は法令等の規定により公にされているということができる。そして,不動産登記法44条1項1号の表示の登記,同法14条1項の建物所在図等に当該建物の敷地の地名地番が示されているところ,同法119条ないし121条により登記事項証明書,建物所在図等の写しの交付を受けることができることからすれば,本件情報のうち旧住所表示欄の記載についても,法令上公にされているということができる。 さらに,建築確認を受ける際に提出される建築計画概要書の第2面には,建築物の住居表示(新住所)と敷地の地名地番(旧住所)が併記されることになっているところ,建築計画概要書は,建築基準法93条の2及び同法施行規則11条の4の規定により建物が滅失し,又は除却されるまで,閲覧に供さなければならないとされており,新たに建築される建物については,法令等の規定により新旧住所表示欄の記載がともに公にされることが予定されているものである。 この点,控訴人は,旧住所は登記地番と一致しているわけ ならないとされており,新たに建築される建物については,法令等の規定により新旧住所表示欄の記載がともに公にされることが予定されているものである。 この点,控訴人は,旧住所は登記地番と一致しているわけではない,建築計画概要書第2面の「地名地番」は,建物敷地の登記事項としての 地名地番が記載されているものにすぎない,また,建築計画概要書は,現在閲覧が制限されている,などと主張する。しかし,旧住所と登記地番との関係については,例外的に一致しない場合があることは否定できないにしても,基本的には一致しているとみることができるのであるし,また,建築契約概要の閲覧制限も,例外的濫用的な閲覧請求に該当しない場合にも閲覧を制限できるとは考え難いし,閲覧制限の一般的公開性が現に否定されていることを認めるに足りる客観的な証拠は存しないのであるから,控訴人の上記主張は前記認定を左右しない。 したがって,本件情報のうち新住所表示欄及び旧住所表示欄の記載は,法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されているものであり,本件条例7条1号ただし書アに該当する。」(2)原判決10頁4行目の「十分可能といえ」から6行目の「おそれがある」までを「十分可能であるが,こうしたことが直ちに被差別部落に対する差別的取扱いや偏見等を生じさせているとはいえない上,本件情報を公にしたことにより,被差別部落に対する差別的取扱いや偏見等を生じさせ,あるいは助長する具体的ないし客観的なおそれがある」(3)原判決10頁11行目の「情報」の次に「(世帯主氏名等)」を,14行目末尾に「現に大阪府,京都府,兵庫県,奈良県,滋賀県,和歌山県内などの近畿一円を含む数多くの自治体で旧新住居対照表が公開されている(甲4,39)ところ,それに伴い住居表示実施事務の遂行に支障が生じていること に大阪府,京都府,兵庫県,奈良県,滋賀県,和歌山県内などの近畿一円を含む数多くの自治体で旧新住居対照表が公開されている(甲4,39)ところ,それに伴い住居表示実施事務の遂行に支障が生じていることをうかがわせる事情は全く認められないところからも,上記のことは明らかである。」をそれぞれ加える。 (4)原判決10頁24行目の「それ自体」から25ないし26行目の「認め難い」までを「それ自体が直接的な原因となって,あるいは他の情報や状況と相まって被差別部落に対する差別的取扱いや偏見等を生じさせたり,これを助長させたりする具体的ないし客観的なおそれがあるとはにわかに認め難 い」と改める。 以上の次第であり,被控訴人の請求は理由があり,これを認容した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第3民事部裁判長裁判官島田清次郎裁判官坂本倫城裁判官松井千鶴子 (原裁判等の表示)主文 堺市長が,原告に対し,平成19年2月14日付けでした公文書非公開決定(堺区画第○-○号)のうち,旧新対照表(ただし,個人の氏名が記録されている部分を除いた部分)を公開しないこととした部分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求主文同旨第2事案の概要等 事案の概要本件は,原告が,堺市情報公開条例(平成14年堺市条例第37号。以下「本件条例」という。)に基づき,堺市長に対し,住居表示の新旧対照表(住居表示実施前後の新旧住所の対応関係を一覧化したもの)等の公開請求をしたところ,その全部につき非公開決定を受けた(以下「本件処分」という。)ため,そのうち旧新対照表(ただし,個人の氏名が記録されている部分を除いた部分)( の対応関係を一覧化したもの)等の公開請求をしたところ,その全部につき非公開決定を受けた(以下「本件処分」という。)ため,そのうち旧新対照表(ただし,個人の氏名が記録されている部分を除いた部分)(以下「本件文書」という。)を非公開とした部分の取消しを求めている事案である。なお,被告においては,上記対応関係を示す文書として,新旧対照表ではなく旧新対照表のみを作成していたため,本件処分においては,上記請求の対象文書を旧新対照表と特定して本件処分を行っており,原告においても,対象文書が旧新対照表であることを争わず,専ら旧新対照表に非公開情報があると判断した点をとらえて本件処分が違法であると主張しているものである。 前提事実(争いがないか,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお,書証番号は特記しない限り枝番を含む。)(1)本件条例の内容 本件条例の定めは,以下のとおりである(甲3)。 1条(目的)この条例は,日本国憲法の保障する地方自治の理念にのっとり,市民の知る権利を具体化するため,公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに,情報公開の総合的な推進に関し必要な事項を定めることにより,市の保有する情報の一層の公開を図り,もって市政について市民に説明する市の責務が全うされるようにし,市民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な市政の発展に寄与することを目的とする。 3条(実施機関の責務)1項実施機関は,公文書の公開を求める権利が十分に尊重されるように,この条例を解釈し,運用するものとする。この場合において,実施機関は,個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう最大限の配慮をしなければならない。 2項実施機関は,公開請求をしようとする者に対し,当該公開請求に係る公文書の特定に必要な情報を提供するよう努 ,個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう最大限の配慮をしなければならない。 2項実施機関は,公開請求をしようとする者に対し,当該公開請求に係る公文書の特定に必要な情報を提供するよう努めなければならない。 5条(公開請求権者)何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,公文書の公開を請求することができる。 7条(公文書の公開義務)実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,公開請求者に対し,当該公文書を公開しなければならない。 1号個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあると認められるもの。 ただし,次に掲げる情報を除く。 ア法令若しくは他の条例の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報イ人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報6号本市の機関又は国若しくは他の地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって,次に掲げるものオアからエまでに掲げるもののほか,事務又は事業の性質上,公にすることにより,当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすと認められるもの8条(部分公開)1項実施機関は,公開請求に係る公文書の一部に非公開情報が記録されている場合において,非公開情報に係る部分を容易に区分して除くことができるときは,公開請求者に対し,当該非公開情報に係る部分以外の 1項実施機関は,公開請求に係る公文書の一部に非公開情報が記録されている場合において,非公開情報に係る部分を容易に区分して除くことができるときは,公開請求者に対し,当該非公開情報に係る部分以外の部分について公開しなければならない。ただし,当該非公開情報に係る部分を区分して除くことにより公開請求の趣旨が損なわれることが明らかであるときは,この限りでない。 2項公開請求に係る公文書に前条第1号の規定に該当する情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において,当該情報のうち,氏名,生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより,公にしても個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,同号の情報に含まれないものとみなして,前項の規定を適用する。 (2)住居表示の実施について住居表示とは,住居表示に関する法律(昭和37年法律第119号。以下「住居表示法」という。)に基づき,街区符号と住居番号とで建物を特定す るなどして,住所若しくは居所又は事務所,事業所その他これらに類する施設の所在する場所(以下「住居」という。)を表すこととする制度である(以下,住居表示実施前の住居の表示を「旧住所」,同実施後の住居の表示を「新住所」という。)。住居表示に伴い,町又は字の名称が変更される場合がある(住居表示法5条の2)が,その変更は当然に予定されているものではない。 旧住所は,主に土地の登記「地番」(不動産登記法34条,35条)を借用して表示されていた(以下「地番方式」という。)。現在でも,住居表示が実施されていない地域では,このような地番方式が使われている。しかし,地番は,登記所が地番区域を定め,その地番区域ごとに定めることとされている(不 (以下「地番方式」という。)。現在でも,住居表示が実施されていない地域では,このような地番方式が使われている。しかし,地番は,登記所が地番区域を定め,その地番区域ごとに定めることとされている(不動産登記規則98条1項)ものの,分合筆が繰り返されるなどして,必ずしも規則的に並んでいるわけではないことから,地番方式の下では様々な不都合が生じた。そこで,合理的な住居表示の制度及びその実施について必要な措置を定め,もって公共の福祉の増進に資することを目的として,住居表示法が制定された。 被告においても,市内全域の30パーセント程度の地域で住居表示が実施されており,同市では,住居表示実施済みの地域について,旧住所から新住所を照会することを容易にするべく,旧住所と新住所の各対応関係を体系的に編さんした旧新対照表が作成されているところ,同旧新対照表には,「旧住所」,「世帯主又は会社名等」,「新住所」,「摘要」の各欄があり(「世帯主構成員」の欄がある場合もある。),「旧住所」欄は更に「町名」及び「番地」に,「新住所」欄は更に「町名」及び「番号」に,それぞれ区分され,特定の場所についての旧住所と新住所との対応関係が一覧できるように表示されている。 (3)情報公開請求及び非公開決定の経緯原告は,堺市長に対し,平成19年1月31日付けで,本件条例5条に基 づき,対象となる公文書を「住居表示実施地区全ての新旧対照表・新旧対照図」と特定して,その公開を請求した。 堺市長は,上記請求の対象文書を旧新対照表と特定した上で,当該文書には本件条例7条1号及び同条6号オに該当する情報が記録されているとして,同文書の全部を公開しないとする本件処分を行い,同年2月14日付け書面により原告に通知した。 (以上(2)及び(3)につき,甲1,2,乙1,9,弁論の全趣旨) に該当する情報が記録されているとして,同文書の全部を公開しないとする本件処分を行い,同年2月14日付け書面により原告に通知した。 (以上(2)及び(3)につき,甲1,2,乙1,9,弁論の全趣旨)(4)原告の本訴提起原告は,同年6月13日,本件処分のうち,本件文書を公開しないこととした部分の取消しを求めて,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 本件の争点及び当事者の主張本件の争点は,本件文書について,①部分公開請求の可能な情報の単位をどのようにとらえるべきか,②本件条例7条1号に該当するかどうか,③本件条例7条6号オに該当するかどうかである。争点に関する当事者の摘示すべき主張は,別紙「当事者の主張」のとおりである。 第3争点に対する判断 情報の単位と部分公開請求の可否旧新対照表の作成の経緯及び趣旨並びにその記載内容は前記前提事実(第2の2(2))のとおりであり,旧新対照表の記載のうち本質的な要素は,特定の場所について「旧住所」と「新住所」との対応関係を示した部分であって,それ自体,独立した一体的な情報と解される。これに対し,「世帯主又は会社名等」欄及び「世帯構成員」欄は,住居表示実施証明書の交付申請等において,検索や特定を容易にするために記載事項とされているものと考えられるものの,旧新対照表作成の趣旨からすれば,「旧住所」と「新住所」との対応関係とは別個の情報として付加されたものとみるのが相当というべきであり,「旧住所」,「世帯情報」及び「新住所」の対応関係をもって独立した一体的な情報 とする旨の被告の主張は採用できない。 そして,旧新対照表の「旧住所」と「新住所」との対応関係に関する情報(以下「本件情報」という。)の中に個人の氏名の記載がないことは旧新対照表の体裁・書式(乙1の1・2)に照らして明らかであるから,原告が て,旧新対照表の「旧住所」と「新住所」との対応関係に関する情報(以下「本件情報」という。)の中に個人の氏名の記載がないことは旧新対照表の体裁・書式(乙1の1・2)に照らして明らかであるから,原告が,本件訴えにおいて,個人の氏名が記載されている部分を除外した形の部分公開を求めていることは,独立した一体的な情報を更に細分化するものではなく,本件条例8条1項の部分公開の要件を満たしたものということができる(もっとも,本件条例7条1号の非公開情報との関係では,同8条2項の規定により,独立した一体的な情報を細分化するという問題は当然に生じないこととなる。)。 なお,原告は,本件文書中の旧住所の「町名」及び「番地」,新住所の「町名」及び「番号」(「番」及び「号」)の各欄の記載がそれぞれ独立した1個の情報であると主張するが,既にみた旧新対照表の作成の経緯及び趣旨並びにその記載内容に照らせば,これらの個々の記載をとらえて独立した1個の情報とみることはできず,原告の主張は採用できない。 本件条例7条1号該当性(1)被告は,本件情報が,「個人に関する情報」に該当することは明らかであり,住居表示に係る新住所を地形図上に書き込んだものが一般の閲覧に供されているので,その図面に基づいて,本件文書に記載されている新住所を現地見分したり住宅地図と照合したりすれば,その住所の特定の個人が識別されるから,「特定の個人を識別することができるもの」に該当すると主張する。 (2)本件条例7条1号にいう「個人に関する情報」は,事業を営む個人の当該事業に関する情報を除外するほかは,文言上特に限定を付していないことからすれば,私事に関する情報に限定されるものでなく,個人にかかわりのある情報であれば,原則として「個人に関する情報」に当たるものと解される。 しかし,同号の趣旨 は,文言上特に限定を付していないことからすれば,私事に関する情報に限定されるものでなく,個人にかかわりのある情報であれば,原則として「個人に関する情報」に当たるものと解される。 しかし,同号の趣旨が,基本的人権としての個人の尊厳を守るため,個人の プライバシーを保護することにあると解されることからすれば,同号の「個人に関する情報」として保護に値するというためには,他の情報と併せて個人と何らかのかかわりを見いだせるというだけでは足りず,少なくとも,当該情報自体から,個人との意味あるかかわりを看取できるものであることを必要とするというべきである。 これを本件情報につき検討すると,本件情報は,「町名」及び「番地」からなる旧住所と,「町名」及び「番号」からなる新住所との間の対応関係を示すものにすぎず,例えば,その場所の居住者が引っ越しをしたり,建物が建て替えられたりするなど,その居住者や建物に変動が生じた場合でも当然には影響を受けない,位置に関する不変の情報というべきものであり,それ自体から,個人との意味あるかかわりを見いだすことはできないものというべきである。 被告は,本件情報にはプライバシー性が極めて高い個人の住所等に関する情報が含まれることから,本件情報は「個人に関する情報」に該当すると主張するが,被告のいう「個人の住所等に関する情報」とは,「特定の個人が特定の場所に居住等していることについての情報」を指すものというべきであって,特定の個人との結び付きやその居住等の事実を捨象した位置に関する情報のみをもって「個人に関する情報」とみるのは相当でない。被告のような考え方に立つと,現在の住居表示のみを単純に列記した文書やこれらを付記した地図も「個人に関する情報」に該当することになりかねないところ,本件条例7条1号本文がこのような情報まで でない。被告のような考え方に立つと,現在の住居表示のみを単純に列記した文書やこれらを付記した地図も「個人に関する情報」に該当することになりかねないところ,本件条例7条1号本文がこのような情報まで広く対象とする趣旨とは解されないから,被告の主張は採ることができない(このような情報は,同号ただし書アの「公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当するものともいえるが,そもそも「個人に関する情報」に該当しないものと解するのが相当である。)。 なお,被告は,住居表示実施前の住民登録の表示(旧住所)が土地登記の 地番と対応しておらず,住民登録をした者が独自の地番等を届け出たような場合もあるから,旧住所は飽くまで生活や活動の本拠を示すものであるとも主張している。確かに,旧住所と土地登記の地番との不一致の存在は否定できないにしても,被告はそのような場合が例外的に存する旨を主張するにとどまるのであって,そのことから,本件情報の一般的性質が位置に関する情報であることを否定できるものではないし,「個人に関する情報」に該当することを直ちに基礎付けるものでもないというべきである。 (3)そうすると,本件情報は,「個人に関する情報」として保護に値するとはいえないのであって,本件条例7条1号ただし書ア及びイの該当性について検討するまでもなく,同号本文の非公開情報には当たらないものである。 本件条例7条6号オ該当性(1)住居表示実施事務についてア被告は,本件情報(特に旧住所)を公開することになれば,住居表示実施の際の住民に対する聴取調査に支障を及ぼすことは明らかであり,ひいては正確かつ迅速な住居表示の実施が困難となって,住居表示法の趣旨・目的の実現が困難となり,住居表示実施事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすと主張する。 イ本件条例7 ぼすことは明らかであり,ひいては正確かつ迅速な住居表示の実施が困難となって,住居表示法の趣旨・目的の実現が困難となり,住居表示実施事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすと主張する。 イ本件条例7条6号オが「事務又は事業の性質上,公にすることにより,当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすと認められるもの」と規定していることからすれば,当該情報に該当するというためには,公にすることにより著しい支障が生ずることについて,抽象的な可能性があるだけでは不十分であり,法的な保護に値する蓋然性があるか,実施機関がそう認めるに足りる実質的根拠を有することが必要と解するのが相当である。 ウこれを本件についてみるに,乙9によれば,被告において住居表示を実施するに当たり,旧住所のほか,世帯主氏名,同居者の有無,同居者の氏 名,建物の形,出入口の位置等,多岐にわたる事項を当該地区の住民等から聴取していること,近年のプライバシー意識の高まりから,住民の中には,調査に協力的でない者もまま見受けられること,このため,調査の際に,聴取した情報は第三者に公開するものではないことを説明していることが認められる。確かに,旧新対照表には,世帯主や世帯構成員といった情報も記載されており,これらの個人に関する情報を含んだ形で旧新対照表が公にされた場合には,被告において実施する調査に支障を来すという事態も起こり得るところであるが,これを除いた本件文書が公にされることにより,調査の実施に具体的な支障が生ずるものとはにわかに認め難い。 被告は,旧住所には被差別部落を想起させるものも含まれていることから,本件情報を公にすれば,これに対応する新住所に居住の本拠を置く住民に対する差別的取扱いや偏見等を生じさせるおそれがあり,ひいては,被告の実施する調査に応じてもらえなく るものも含まれていることから,本件情報を公にすれば,これに対応する新住所に居住の本拠を置く住民に対する差別的取扱いや偏見等を生じさせるおそれがあり,ひいては,被告の実施する調査に応じてもらえなくなるとも主張する。しかし,現住所に対応した旧住所の「町名」,すなわち,旧町名については,閉鎖登記簿(50年間の保存期間が定められている(不動産登記規則28条1号・4号)。)のほか,旧版の地図や地名に関する文献を調査するなど,他の手段により探索することが現在でも十分可能といえ,本件情報を公にしたことそれ自体が原因となって,被差別部落に対する差別的取扱いや偏見等を生じさせるおそれがあるとはにわかに認め難い。さらに,かつて,他の公共団体において,旧新対照表に相当する文書が図書館で一般の閲覧に供され,差別文書として問題になった事例があり(乙5,8),大阪府下の市町村長は,昭和57年12月,旧新対照表及び新旧対照表の閲覧について制限を付す旨の申し合わせをしている(乙3)とはいえ,これらは個人に関する情報を含んだ旧新対照表及び新旧対照表全体の閲覧・公開等が問題とされたものであり,旧住所と新住所との対応関係からなる本件情報を公にした場合に生ずる弊害を直ちに基礎付けるものではないというべきで ある。 エ以上のとおり,本件情報を公開することにより,住居表示実施事務に著しい支障が生ずる一定の蓋然性があるとも,そう認めるに足りる実質的根拠があるとも認められないというべきである。したがって,被告の主張は採用できない。 (2)人権尊重啓発事務についてア被告は,本件情報が公開されると,旧住所の旧町名から被差別部落が連想されることで,改めて差別意識が助長されるなど,被告が行ってきた差別解消に向けた取組の成果が無に帰してしまうおそれがあり,人権尊重啓発事務に 件情報が公開されると,旧住所の旧町名から被差別部落が連想されることで,改めて差別意識が助長されるなど,被告が行ってきた差別解消に向けた取組の成果が無に帰してしまうおそれがあり,人権尊重啓発事務にも支障が生ずると主張する。 イしかし,本件情報を公にしたことそれ自体が原因となって,被差別部落に対する差別的取扱いや偏見等を生じさせるおそれがあるとはにわかに認め難いことは前記(1)ウで判断したとおりであって,殊更に被差別部落に対する差別意識が助長され,被告が行ってきた差別解消に向けた取組の成果が無に帰すことになる一定の蓋然性があるとも,そう認めるに足りる実質的根拠があるとも認められないというべきである。 ウしたがって,被告の主張は採用できない。 (3)以上より,いずれにせよ,本件情報は7条6号オの非公開情報には当たらない。 結論 以上によれば,本件情報は本件条例7条1号及び6号オの非公開情報には当たらない。そして,被告は,原告請求に係る本件文書の本件情報以外の部分について,非公開情報に当たる旨の主張を特にしないので,その余の部分についても,これを公開すべきと認めるのが相当である。 よって,原告の本訴請求は理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のと おり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官吉田徹裁判官小林康彦裁判官山田葉月 (別紙)当事者の主張 情報の単位と部分公開請求の可否(1)原告の主張本件文書において,①「旧住所」欄の「町名」欄からは,ある施設が所在する場所の住居表示実施以前の町名がどのようなものであったかを,②「旧住所」欄の「番地」欄からは,ある施設が所在する場所の住居表示実施以前の町名がど ①「旧住所」欄の「町名」欄からは,ある施設が所在する場所の住居表示実施以前の町名がどのようなものであったかを,②「旧住所」欄の「番地」欄からは,ある施設が所在する場所の住居表示実施以前の町名がどのようなものであったかを,③「新住所」欄の「町名」欄からは,ある施設が所在する場所の住居表示実施後の町名がどのようなものであるかを,④「新住所」欄の「番号」欄に記載されているハイフンの左部分からは,ある施設が所在する場所の街区符号が何番であるかを,⑤同ハイフンの右部分からは,ある施設の住居番号は何番であるかを知ることができる。町名や地番,街区符号,住居番号を定める主体や,これらの事柄を定めるための手続やその仕組みが制度的に異なっていることからすると,①から⑤までの情報は,それぞれ各施設につき独立して観念することができるというべきであり,本件条例の適用に際しては,それぞれを1個の情報として非公開情報に当たるか否かを判断すべきものである。 また,本件文書には「世帯主又は会社名等」欄と「摘要」欄が記載されているが,これらの欄は,本件文書の作成目的との関係で直接に必要とされるものではなく,住居表示実施証明書の交付申請に係る施設を検索,特定するのに便宜であるという理由から設けられているにすぎないので,「旧住所」欄や「新住所」欄に記載されている情報との関係で概念上区分されることが明らかであり,それらの情報とは独立して把握されるべきものである。 (2)被告の主張旧新対照表は,市が住民から住居表示の実施に係る住所変更等に関する各 種証明書の発行請求を受けたときに円滑に対応できるようにするための便宜的な内部資料として作成されたものであり,このような文書を公開請求しようとする場合の一般的な趣旨は,旧住所と新住所の対照関係及びその世帯情報を知ろうとするとこ に円滑に対応できるようにするための便宜的な内部資料として作成されたものであり,このような文書を公開請求しようとする場合の一般的な趣旨は,旧住所と新住所の対照関係及びその世帯情報を知ろうとするところにあるものであるから,そのような観点からすれば,独立した一体的な情報とは,各世帯ごとに「旧住所-世帯情報-新住所」を対照している情報,少なくとも「旧住所,新住所」を対照している情報を指すものということになる。 本件条例7条1号該当性(1)被告の主張ア本件条例7条1号本文に該当すること「個人に関する情報」とは,個人の人格や私生活に関する情報に限らず,個人の知的創作物に関する情報,組織体の構成員としての個人の活動に関する情報,その他思想,信条,心身の状況,病歴,学歴,成績,職歴,住所,電話番号,家族状況,親族関係,収入,資産等,個人との関連性を有するすべての情報をいう。 そして,「旧住所-世帯情報-新住所」を対照している情報,あるいは「旧住所」と「新住所」との対応関係に関する情報(以下「本件情報」という。)が,「個人に関する情報」に該当することは明らかであり,前者が「特定の個人を識別することができるもの」に当たるのは当然のこと,後者の場合も,住居表示に係る新住所を地形図上に書き込んだものが一般の閲覧に供されているので,その図面に基づいて,本件文書に記載されている新住所を現地見分したり住宅地図と照合等したりすれば,その住所の特定の個人が識別されるから,本件情報は「特定の個人を識別することができるもの」に該当する。 原告は,本件情報につき,公共性が高く,社会的に共有することが予定されている情報であるというが,個人の住所に関する情報は,いわゆる4 情報(氏名,住所,生年月日,性別)の一つであり,一般に本質的にプライバシー性が極めて高 性が高く,社会的に共有することが予定されている情報であるというが,個人の住所に関する情報は,いわゆる4 情報(氏名,住所,生年月日,性別)の一つであり,一般に本質的にプライバシー性が極めて高い情報である上,旧住所の問題は,差別問題にも関わる面があって,人権擁護及びプライバシーの保護の観点から十分に慎重な対応をすることが要求されているのであって,公開することにより個人のプライバシー等の権利利益を侵害するおそれがある。 イ本件条例7条1号ただし書アに該当しないこと住居表示が実施される前の住所(旧住所)の地番は,基本的に土地の登記事項としての地番(土地登記地番)が借用されているものであるが,現実には,土地登記地番が枝番号の付された番号であるときに,旧住所としての地番は,枝番号のない本番号だけになっているとか,土地登記地番の枝番号と異なる枝番号が付いているようなケースもあり,旧住所としての地番が土地登記地番と全く無関係な番号となっていることもある。 したがって,往々にして,旧住所の地番と土地登記地番とは1対1の対応関係にはない。 また,建築計画概要書の第2面の「地名地番」は,敷地の登記事項としての地名地番が記載されているにすぎないから,土地登記事項としての地名地番と旧住所とは1対1の対応関係にはないことからいっても,建築計画概要書の閲覧制度が定められているからといって,旧住所や,旧住所と新住所との対照関係を公にすることが予定されているとはいえない。 さらに,住居表示案内図の告示等は,新住所の状況を示すものにすぎないし,登記制度も,土地に付けられた地番等の登記事項を公にするものにすぎず,登記制度が存するからといって,生活や活動の本拠を示す住所を公にすることが予定されているとはいえない。地方自治法260条も,登記事項としての町名の変更・廃 た地番等の登記事項を公にするものにすぎず,登記制度が存するからといって,生活や活動の本拠を示す住所を公にすることが予定されているとはいえない。地方自治法260条も,登記事項としての町名の変更・廃止等に関するものにすぎず,変更地番等については全く関係がないものである。 したがって,原告の主張はいずれも,本件情報について,公にすること が予定されているという理由にはならない。 ウ本件条例7条1号ただし書イに該当しないこと本件条例7条1号ただし書イは,当該情報を公開することにより得られる人の生命,身体,健康,生活又は財産の保護という公益が優越する場合に,当該情報を公開することとしようとするものであり,人の生命等を害する相当の蓋然性その他保護の必要性,緊急性等を具体的に考慮して,その該当性が判断されるものである。 しかし,旧住所や,旧住所と新住所との対応関係が公開されたところで,人の生命等の保護につながる具体的関連性は皆無である。 原告は,本件情報の公開により,救急や消防,警察等の車両が素早く現場に駆けつけることができるようになると述べるが,それは現在の新住所が明らかにされておく必要性をいうものにすぎず,旧住所や,旧住所と新住所との対応関係が公開されなければならない理由とはならない。 (2)原告の主張ア本件条例7条1号本文に該当しないこと(ア)ある情報が「個人に関する情報」に該当するためには,当該情報と他の情報とを組み合わせることによって個人にかかわりのある形で観念されるというだけでは不十分で,当該情報自体から,個人のかかわりを観念できることが必要というべきである。 そして,本件情報からは建物の入居者や所有者が誰であるか,また,建物の入居者や所有者が個人であるか否かも分からないため,個人のかかわりを観念できず,「個人に関する情報 ることが必要というべきである。 そして,本件情報からは建物の入居者や所有者が誰であるか,また,建物の入居者や所有者が個人であるか否かも分からないため,個人のかかわりを観念できず,「個人に関する情報」に該当しない。 (イ)また,市の自治権が及ぶ空間領域に関する情報のように公共性が高い情報であって,個人とのかかわりと無関係に客観的に決まっていて,かつ,公知又はそれに近い情報や社会に広く共有されることが当然に予定されている情報等,個人の権利利益を保護する観点から秘匿の必要が 認められないような情報は,もはや個人を離れて「みんなに関する情報」を構成しているものとして,「個人に関する情報」には該当しないものと解すべきである。 これを本件情報についてみるに,本件情報は,被告の自治権が及ぶ空間領域において実施されている住居表示に関する情報であって,中でも,現に設定されている街区符号及び住居番号の組み合わせと,それに対応する旧住所地番(番地)に関する情報であるから,極めて公共性が高いものであり,二つの位置情報(住居表示と地番)相互の対応関係を示すものにすぎないから,個人がかかわるかどうかとは無関係に,客観的に決まっているものである。そして,本件情報の「新住所」部分については,住居表示法3条,8条,9条により,地名地番たる「旧住所」部分については,不動産登記法119条から122条まで等の規定により,既に公になっているか又は公にすることが予定されているので,本件情報は,住居表示台帳と各種公図とを重ね合わせること等によって,容易に把握することが可能な情報であり,個人の権利利益を保護することとの関係では,秘匿の必要性は極めて低いのであり,個人識別情報としての保護に値しない。 したがって,本件情報は,この見地からも,「個人に関する情報」には該当しない あり,個人の権利利益を保護することとの関係では,秘匿の必要性は極めて低いのであり,個人識別情報としての保護に値しない。 したがって,本件情報は,この見地からも,「個人に関する情報」には該当しない。 イ本件条例7条1号ただし書アに該当すること本件条例7条1号ただし書アの趣旨は,個人に関する情報であっても,法令等又は慣行により公にされているような情報は,公開されても当然に受忍すべきことにあるところ,かかる趣旨からすれば,法令等により既に公にされている情報から容易に導き出せる情報についても,法令等で既に公にされているに等しいものとして扱うべきである。 そして,建築物の住居表示とその敷地の地名地番は,建築計画概要書の 第2面に併記されることになっているところ,特定行政庁は,建築計画概要書につき,建築基準法93条の2及び同法施行規則11条の4の規定により,建築物が滅失し,又は除却されるまで,閲覧に供さなければならないとされているから,建築物の住居表示とその敷地の地名地番とは,当該閲覧制度によって,法令上公にされているものといえる。 また,どこの建物にどういった街区符号及び住居番号が設定されているかは,住居表示法3条3項の告示,同法8条1項の街区表示板,同条2項の住居番号表示板等によって公にされているし,当該建物の敷地の地名地番については,不動産登記法44条1項1号の表示の登記,同法14条1項の建物所在図等に示されており,登記事項証明書の交付について定めた同法119条や,建物所在図等の交付について定めた同法120条によって公にされているから,建築物の住居表示とその敷地の地名地番とは,これらの規定によっても,法令上公にされているといえる。 さらに,住居表示法5条の2第1項,第4項,第6項の公聴会,地方自治法260条2項の告示等によって公にさ 物の住居表示とその敷地の地名地番とは,これらの規定によっても,法令上公にされているといえる。 さらに,住居表示法5条の2第1項,第4項,第6項の公聴会,地方自治法260条2項の告示等によって公にされている情報を基に,当該建築物の敷地の地名地番の地名部分を旧地名に置き換えれば旧住所が容易に導き出せるから,当該建築物の旧住所も,法令等の規定により公にされているに等しいといえる。 ウ本件条例7条1号ただし書イに該当すること本件情報が公開されることで,土地や建物の位置関係を正確かつ容易に把握できるようになり,救急や消防,警察等の車両が素早く現場に駆けつけることができる等,人の生命,健康,生活又は財産を保護することを含めた積極消極両面において,公共の福祉が増大する。 したがって,本件情報は,本件条例7条1号ただし書イに該当する。 本件条例7条6号オ該当性(1)被告の主張 ア住居表示を実施するに当たっては,旧住所は位置等が不明確であることが多いこと等から,準備作業として,実施区域内の全住民に対し,旧住所,世帯主及び同居者氏名,建物の出入口等の聴取調査を行うことが不可欠である。 しかし,住所・氏名のプライバシー性の高さから,それらの情報についてなかなか調査に応じてもらえないことが多く,旧住所及び氏名については,被告の公簿類等における住所変更や,当該住民への住居表示変更証明書の交付等のための内部資料としてのみ使用することを説明・約束して,住民らの任意の協力の下,ようやく調査に応じてもらっていることが多い。 かかる実情に照らすと,もし本件情報(特に住民の旧住所)を公開することになったら,上記の聴取調査に支障が及ぶことは明らかであり,ひいては正確かつ迅速な住居表示の実施が困難となって,住居表示法の趣旨・目的の実現が困難となり,住居表示実施 に住民の旧住所)を公開することになったら,上記の聴取調査に支障が及ぶことは明らかであり,ひいては正確かつ迅速な住居表示の実施が困難となって,住居表示法の趣旨・目的の実現が困難となり,住居表示実施事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼす。 イまた,被告においては生活のあらゆる領域にわたる同和対策事業が遂行されてきたが,本件情報が公開されると,旧住所の旧町名から被差別部落が連想されることで,改めて差別意識が助長されるなど,被告が行ってきた差別解消に向けた取組の成果が無に帰してしまうおそれがあり,人権尊重啓発事務にも支障が生ずる。 (2)原告の主張ア本件情報は,被告地域において広く用いられている二つの位置情報と相互の対応関係を示すものにすぎず,公にすることで被告の住居表示実施事務の遂行に支障が生じるとは認められない。 また,住民への聴取調査を行う際,住民等が調査に応じないことがあったとしても,当該住居表示実施事務の重要性を説明したり,あるいは本件文書のすべてが公開されるようなことはないと説明したりすることで,住 民に上記調査に応じるように説得することは可能である。さらに,聴取調査が必ずしも必要不可欠ではないことからしても,被告の主張するような事態は名目的なもの,あるいは,住居表示実施事務の性質に内在するものであり,「適正な遂行に著しい支障を及ぼす」とは認められない。 仮に被告の住居表示実施事務の遂行に支障が生じることが実質的に観念できるとしても,その蓋然性があるとまでは認められない。 7条6号オ該当性判断にあっては,公開によってもたらされる支障と公開の公益上の必要性とが比較衡量されなければならず,本件情報が公開されることで地名地番,住居表示という二つの位置情報相互の対応関係を正確に把握することができるようになり,両者間での相対的な整 障と公開の公益上の必要性とが比較衡量されなければならず,本件情報が公開されることで地名地番,住居表示という二つの位置情報相互の対応関係を正確に把握することができるようになり,両者間での相対的な整合性が担保されるようになるのであって,本件情報公開の公益上の必要性が高い。 イ本件情報は誰でも知り得るものであることからすると,その公開は被告の人権尊重啓発事務の支障につながる関係はない。

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