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主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人海野普吉、同大野正男の上告理由一乃至四点について。原審は、工業用電気分解装置として相当複雑精密な構造を有する本件電解槽の製作工事については、相当高度の技術と経験を要すべきものであつて、訴外D鉄工はその技術と経験において欠けるところがあり、当初から上告会社もこの点を危惧していたのであるが、右D鉄工代表者Eは、この点につき極めて安易に考え、且つは将来も上告会社から多額の注文を受け得られるということであつたので、多少の犠牲に顧みず比較的廉価な請負代金で右工事を請負うこととなり、上告会社の申出のまま製品規格について十分な定めをなさず、上告会社の提供する仕様書、材料明細書、図面を参考として工事を完成すべく、しかも右工事が契約の趣旨に適合するか否かについては試験官及び上告会社の審査を受ける約旨で本件請負契約を締結するに至つたものであること、被上告会社は、前記Eがもと被上告会社の従業員であつたから、右D鉄工の請負工事を援助する旨を約したものであるが、約定期限までに工事が完成しないところから、上告会社の要請により昭和二三年一一月一〇日原判示のような契約の締結を余儀なくされ、訴外D鉄工とともに極力工事の完成に努めたものの、いかんせん工事に要する精巧な資材の欠乏と技術能力の不足のため、またまた完成に至らず、上告会社の厳重な督促にあい、遂に昭和二四年四月六日上告会社との間に原判示のような契約の締結をも応諾せざるを得ない窮地に立ち至つたこと、右昭和二四年四月六日の契約締結に際し、被上告会社は、今に至るも完成できない主たる理由は資材並びに技術面の不足にあることを痛感し、上告会社に対し特に技術上の援助を懇請し、契約書の作成に当つても こと、右昭和二四年四月六日の契約締結に際し、被上告会社は、今に至るも完成できない主たる理由は資材並びに技術面の不足にあることを痛感し、上告会社に対し特に技術上の援助を懇請し、契約書の作成に当つても上告会社側の技術上の協力義- 1 -務を明確にした乙第六号証の草案を提示したが、結局これは甲第八号証のように修正されたものの、上告会社において好意的には技術上の援助を約したので、この好意ある上告会社の態度に信頼し、この援助を受け得れば、約定の同年五月末頃までには完成できるものと確信し、上告会社の申出どおりその完成引渡あるまで月額二〇万円という多額の金員の支払をも承諾するに至つたものであること、ところが、被上告会社は、期待した右技術上の援助も得られないまま、鋭意工事を続け、同年八月上旬一旦完成したものとして上告会社側及びこの道の権威者Fの試験を受けたが、不合格となつたので、已むなくこれを引き取り、重ねて上告会社の援助を求めたが、その効なく、同年八月下旬本訴を提起されながらも、同年九月二四日附書面で、同年一〇月末までには完成引渡の見込である旨を回答し、鋭意工事の完成に努力を傾倒したけれども、遂にその実現を見ずに終つていること、他方上告会社は、訴外D鉄工乃至被上告会社がもはや上告会社の技術上の協力なくしては本件電解槽のような高度の技術と精巧な資材を要する工事を完成することを期待することの到底至難であることを十分了知しながら、被上告会社の前示窮状に対し終始何ら技術上の援助をしないばかりでなく、本訴提起によつて契約金の支払を求めるにのみ急であつて、恰かもその後における履行遅延を理由に契約金の累加を期待するかのように本件工事についての一切の協力を拒み、他に適当な手段を執ることもなく、右工事の完成を見ないまま今日に至つているのが実情であること、その他原判 事を完成することを期待することの到底至難であることを十分了知しながら、被上告会社の前示窮状に対し終始何ら技術上の援助をしないばかりでなく、本訴提起によつて契約金の支払を求めるにのみ急であつて、恰かもその後における履行遅延を理由に契約金の累加を期待するかのように本件工事についての一切の協力を拒み、他に適当な手段を執ることもなく、右工事の完成を見ないまま今日に至つているのが実情であること、その他原判 後における履行遅延を理由に契約金の累加を期待するかのように本件工事についての一切の協力を拒み、他に適当な手段を執ることもなく、右工事の完成を見ないまま今日に至つているのが実情であること、その他原判示のような事実を確定した上で、叙上認定事実の下では、上告会社の本訴違約金の請求は、被上告会社が、昭和二四年一〇月末までには必らず本件工事を完成すべき旨を上告会社に通告し、これにより同会社をして工事完成を期待せしめた右同日までの分については格別、爾後の分については、徒らに権利の行使に籍口して、被上告会社に難きを強いるものであり、被上告会社に対する信義誠実の態度に著しく欠けるものがあるから、許さるべきではない旨を判示しているのである。そして、右原審の認- 2 -定、判断は、正当として是認するに足り、これに所論のような違法があるものとも認め難い。所論は採用するを得ない。よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官河村又介裁判官島保裁判官垂水克己- 3 -
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