主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 被控訴人は、控訴人に対し、金100万円及びこれに対する平成11年4月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 控訴人の被控訴人に対する宅地建物取引業法64条の10に基づく還付充当金1000万円の支払債務の存在しないことを確認する。 (3) 控訴人の「控訴人が被控訴人の社員たる地位を有することを確認する。」との請求を棄却する。 2 訴訟費用は、第1,2審とも、被控訴人の負担とする。 3 この判決は、1項(1)に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人 (1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人は、控訴人に対し、100万円及びこれに対する平成11年4月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 控訴人の被控訴人に対する宅地建物取引業法64条の10に基づく還付充当金1000万円の支払債務の存在しないことを確認する。 (4) 控訴人が被控訴人の社員たる地位を有することを確認する。 (5) 訴訟費用は、第1,2審とも、被控訴人の負担とする。 2 被控訴人 (1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は控訴人の負担とする。 第2 事案の概要等 事案の概要、争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実並びに争点(当事者の主張を含む。)は、次のとおり訂正付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」の各該当欄に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の訂正付加) 1 原判決3頁9行目の「還付金の充当義務」を「還付充当金の支払債務」と改める。 2 同4頁 由」の「第二事案の概要」の各該当欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の訂正付加) 1 原判決3頁9行目の「還付金の充当義務」を「還付充当金の支払債務」と改める。 2 同4頁10行目の「息子で」を「次男で」と改め,11行目の末尾に「Aは,Bの長男であり,Cは,Bの長女である。(以下「B」などと名のみで言うことがある。)」を加える。 3 同5頁1行目の「大日産業株式会社」の次に「(以下「大日産業」という。)」を同2行目の「株式会社テック」の次に「(以下「テック」という。)」を加える。 4 同6頁2行目の「Dのために」の次に「,B及びE所有の土地建物については」を加え,同3行目の「信託を原因」の次に「,J所有の土地建物については,同日売買を原因」を加え,同5行目から6行目の「所有権登記」を「所有権移転登記」と改める。 5 同8頁9行目の「本件和解」を「本件1和解」と改める。 6 同10頁3行目の「契約金」を「中間金」と,3行目から4行目にかけての「本件契約金と」を「本件中間金と」と改める。 7 同11頁7行目の「Bを債権者とし,」の次に「F及び大日産業を債務者として,」を加え,末行の「右4(三)」を「右5(三)」と改める。 8 同12頁7行目の「被告に対し」を「控訴人に対し」と改め,同行目の「本件還付金相当額」の次に「(以下「本件還付充当金」という。)」を加える。 9 同13頁2行目の「注意義務違反成否」を「注意義務違反の成否」と改める。 10 同14頁1行目の「本件還付金の充当義務」を「本件還付充当金の支払債務」と,同4行目の「実質的には同人らと同一である。」を「テックの従業員である」と改める。 11 同15頁5行目の「本件所有権移転登記(三)」を「本件所有権登記(四)」と改める。 12 同17頁9行目の「本件 行目の「実質的には同人らと同一である。」を「テックの従業員である」と改める。 11 同15頁5行目の「本件所有権移転登記(三)」を「本件所有権登記(四)」と改める。 12 同17頁9行目の「本件各土地等り乗っ取り」を「本件各土地等の乗っ取り」と改める。 (当審主張) 1 控訴人の当審主張(1) 控訴人は,本件各土地の関係者らと協議をし,その了解を得ながら,本件売買契約を進めてきたのである。現に,本件各土地上の障害物・撤去すべきものは着々と取り除かれていたのである。決して,特定の者に特段の利益を与えようとか,騙そうとかしてきたのではない。控訴人は,仲介業者としての注意義務は尽くしてきたのである。とりわけ,その依頼者である大日産業株式会社自身,本件各土地建物の経緯については十分に知っていることであり,業者としての義務も尽くしていた。ところが,最後の段階で,Bが本件売買契約の進捗状況・解決への段取り等を誤認し,関係者に無断で本件仮処分登記をしてしまったために,本件売買契約が履行されなくなったにすぎない。これは,全くの予想外のことであり,控訴人が注意義務を尽くしていたとしても防ぎようのなかったことである。 (2) 原判決の事実誤認は,以下のとおりである。 ① 原判決は,種々の経過があったことをもって全てを律しているが,平成2年3月名古屋高等裁判所での和解等によってそれまでの問題点は,基本的に解決され,一応の整理はついていたという点を無視している。 原判決は,この和解を,「Dが差し向けた弁護士によって」成立させられたとして否定したり,この和解に基づいてなされた予告登記・仮処分登記の抹消登記をDらが無断で行ったとしているが,その根拠は極めて薄弱である。 ② 原判決は,本件売買契約の履行が延期された理由について,大日産 したり,この和解に基づいてなされた予告登記・仮処分登記の抹消登記をDらが無断で行ったとしているが,その根拠は極めて薄弱である。 ② 原判決は,本件売買契約の履行が延期された理由について,大日産業が「控訴人から,競売になるかもしれないので,決済日を1ヶ月ほど延ばしてほしい旨申し込まれ」「延期することに同意した」としているが,その根拠はない。原判決は,大日産業が「岐阜信用金庫羽島支店から,残代金決済のための融資実行の承諾を取っていた」としているが,その根拠としている岐阜信用金庫羽島支店からの書証(乙7)の矛盾を無視しているし,大日産業代表者Gが岐阜信用金庫羽島支店からの資料取り寄せに反対していることも無視している。 ③ 原判決は,大日産業代表者Gが本件売買契約成立に至る経過を十分に熟知している点を無視している。原判決は,あたかも控訴人がBの代理人であるかのような前提で述べているが,控訴人はあくまでも大日産業の依頼により,大日産業のために行動しているのであり,大日産業に対しては十分に仲介人としての義務を尽くしている。 大日産業代表者Gは,本件各土地の経過を控訴人からはもちろん,H,Cからも十分に聞いて知っていた。過去にBらとDらとの間にトラブルがあったこと,名古屋高等裁判所で和解が成立していること,Dらが暴力団員であることなども知っていた。また,大日産業代表者Gは,本件各土地をのどから手が出るほどほしい立場であったし,Dらを信用していなかった。 しかも,控訴人は,大日産業に対しては,万が一のときのために,手付金等(内金返還請求権及び損害賠償債権)を確保すべく,本件各土地に極度額3000万円の根抵当権を設定するなどした。 ④ 原判決は,本件売買契約の履行が十分に確保されていたことを無視している。 本 返還請求権及び損害賠償債権)を確保すべく,本件各土地に極度額3000万円の根抵当権を設定するなどした。 ④ 原判決は,本件売買契約の履行が十分に確保されていたことを無視している。 本件各土地建物は,注意を要する物件ではあったが,控訴人はまず所有名義人が誰であるかを重視した。もっとも,控訴人は,名古屋高等裁判所の和解等で完全に問題点は解決されたと確信を持ってはいたものの,従前の経過を知っていたこと,その後もI等に移転されていること,本件各土地建物の売買代金のうちいくらかがBらに渡されることを知っていたから,B,H,C等と十分に連絡を取っていたのである。そして,同人らの意思も,本件売買契約に賛成であることを十分に確認していたのである。 しかも,同人らのその同意の意思を具現化するものとしての,本件各土地から障害物を撤去すべき件については,同人らの積極的な協力によって着実に進められ,平成2年11月頃にはほぼ完了していた。 ⑤ 被控訴人が本件につき認証をした根拠は,「本件土地上の建物の取り壊し及び本件土地占有者の退去が困難」「本件売買により袋地が生じるため,本件売買契約の履行は合法的には困難」であるにもかかわらず本件仲介をしたという点にあるが,原判決はこの認識が誤りであることも無視している。 本件土地上の建物4棟は本件売買契約成立時までに取り壊されていたし,本件土地占有者であるBらは既に本件各土地上には居住していなかった。また,本件売買によっても,本件各土地が袋地にならないことは明白であった。 そのことが分かった被控訴人は,本件各土地上にはもう1棟の建物があり,それは平成10年6月に取り壊されたではないかと主張を変更してきた。すなわち,実際に認証行為をしたときの理由は間違いであったとして,別の理由を掲 った被控訴人は,本件各土地上にはもう1棟の建物があり,それは平成10年6月に取り壊されたではないかと主張を変更してきた。すなわち,実際に認証行為をしたときの理由は間違いであったとして,別の理由を掲げてきた。しかし,この建物はほんの一部はみ出していたにすぎないし,そのはみ出し部分も平成2年8月には収去されていたのである。被控訴人が主張する平成10年6月に取り壊されたというのは,一部撤去後の本体部分が取り壊された時期のことである。 2 被控訴人の当審主張(1) 控訴人の地位確認請求には確認の利益がないことについて① 弁済業務保証金制度は,営業保証金の代替的制度として昭和47年に創設されたものであるが,保証協会が供託した弁済業務保証金からの還付により社員との取引によって被った損害を補填し,購入者等消費者を保護しようとする制度である。 この制度により,宅建業者は,保証協会に加入し弁済業務保証金分担金(現在は主たる事務所につき60万円)を納付することにより営業を開始することができ,購入者等も保証協会による認証という簡易な手続により迅速な救済を受けられることになった(宅建業法64条の8)。 保証協会は,認証の申出があったときは,当該申出に理由がないと認める場合を除き,認証限度額の範囲内で認証する義務があり(宅建業法施行規則26条の6),申出人から申出債権について疎明書類の提出があれば(同26条の5第2項),認証を拒否する合理的理由がない限り認証すべきことになっている。 ② 被控訴人は,申出人から提出された疎明書類と申出人及び申出対象社員からの事情聴取により得られた事実から認証可否の判断を行っているが,これは被控訴人の自主的判断であって裁判所等の司法による判断とは全く異なる。 被控訴人の認証は,還付請求権者によ 出人及び申出対象社員からの事情聴取により得られた事実から認証可否の判断を行っているが,これは被控訴人の自主的判断であって裁判所等の司法による判断とは全く異なる。 被控訴人の認証は,還付請求権者による還付請求を供託義務者として承諾する手続にすぎない。その意味で被控訴人が申出にかかる弁済を受ける権利について実体法上の判断を誤る余地を否定できない。 ③ 被控訴人が認証を拒否した場合には,申出人は被控訴人を被告として認証請求訴訟を提起することになる。他方,被控訴人が申出を認証した場合には,社員は宅建業法の定めに従い,納付請求の通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を納付しなければならず,これを納付しないときは被控訴人の社員としての地位を失うことになる(宅建業法64条の10)。 これは法が定める当然の地位喪失事由であって,社員が被控訴人の認証を争っているかどうかにかかわるものではない。被控訴人がこのような社員の不利益を回避するため,認証拒否を原則としたのでは,簡易,迅速な手続で購入者等消費者を救済しようとする法の趣旨は達成できない。社員の還付充当金納付の不利益は,本来営業保証金として供託すべき額を超えるものではなく,宅建業法はむしろ購入者等消費者保護を図るため,保証協会が認証と判断した社員については還付充当金の納付をさせ(納付をさせないと弁済業務保証金を確保できない),その上で社員に対し相応の手続をとることを求めたものといえるのである(たとえば,弁済を受けた申出人に不当利得返還請求権を行使するなど)。 ④ もっとも,還付充当金の納付をしなくても(これにより保証協会の社員の地位を失うとしても),社員は被控訴人の社員になることで免除された営業保証金を供託すれば,宅建業者としての地位を維持することができる(同法64条の15)。 付をしなくても(これにより保証協会の社員の地位を失うとしても),社員は被控訴人の社員になることで免除された営業保証金を供託すれば,宅建業者としての地位を維持することができる(同法64条の15)。 したがって,被控訴人の認証を争う場合で,かつ還付充当金の納付をしない場合には,営業保証金を供託することが必要であり,これを怠れば監督庁の免許取消処分により宅建業者としての地位を失うことになる。 被控訴人の社員は宅建業者であることを要件としており,控訴人が宅建業者としての地位を失えば,もはや被控訴人の社員となることはできない(同法64条の2第1項2号)。 ⑤ 控訴人については,宅建業法64条の15の規定により地位喪失の日から1週間以内に営業保証金の供託をすべき義務があったところ,控訴人はこの営業保証金の供託を怠っている。そのため岐阜県知事は控訴人に対し,平成11年11月5日,営業保証金の供託をした旨の届出をするまでの間,最長1年間の業務全部停止処分を命じた。しかし,控訴人がこの期間内にも営業保証金の供託をしなかったことにより,平成13年1月26日,岐阜県知事は控訴人を免許取消処分としたものである。 ⑥ 以上のとおり,控訴人は平成13年1月26日付けで宅建業者としての地位を失ったことから,被控訴人に対し社員たる地位の確認を求める確認の利益を失ったものである。 (2) 真の所有者の確認義務違反についてこの義務は,売主名義人と真の所有者が異なる場合に発生する。実質的には他人物売買であり,仲介業者には売主が所有権者である通常の場合と異なり高度の注意義務が課せられる。注意義務の内容は,真の所有者が誰であるかの調査であり,かつ真の所有者の売買目的及びこれが負債整理のときはその目的達成(実行可能性)の確認である。 る通常の場合と異なり高度の注意義務が課せられる。注意義務の内容は,真の所有者が誰であるかの調査であり,かつ真の所有者の売買目的及びこれが負債整理のときはその目的達成(実行可能性)の確認である。 本件では,売主名義人であるF(ないしI,株式会社テック)がBらと売買契約を締結し,売買代金を支払った事実がないことから,真の所有者はBらであると覚知すべきところ,控訴人はこの調査を怠っている。また,Bらが真の所有者であれば本件売買が負債整理を目的としていることは容易に知りうることであるから,売買代金額及びその代金がいつ誰に対しいくら支払われるかについて真の所有者は承知しているかなど負債整理の実行可能性について調査義務があったというべきところ,控訴人はこの調査をも怠っている。 本件は,暴力団員による任意整理を目的とした売買であり,それだけ控訴人には上記所有者の確認について高度の注意義務が課せられていたというべきである。 控訴人は,平成2年3月の名古屋高等裁判所での和解により,それまでの問題は解決されていたと主張するが,当該和解で有効とされた平成元年10月13日付テックへの所有権移転登記は,和解後の平成2年7月18日に抹消されており,控訴人が上記和解調書を確認したとすれば,和解条項の趣旨,登記の抹消理由とともに,上記Iに対する所有権移転の事実(売買)につき確認をなすべきことに変わりはないものである。 要するに,本件は暴力団関係者が絡んだ特殊な売買案件であるから,Dらとの間に和解調書が存在し,形式的に売主側に宅建業者が付いていたとしても,自ら真の所有権者は誰であるかの確認が求められていたものである。真の所有権者が異なるとすれば,当然に代金の帰属権者も異なることになるから,真の所有権者の目的にかなった売買がなされているか としても,自ら真の所有権者は誰であるかの確認が求められていたものである。真の所有権者が異なるとすれば,当然に代金の帰属権者も異なることになるから,真の所有権者の目的にかなった売買がなされているかどうかの注意義務も生じてくる。 (3) 担保権者の担保解除についての調査義務違反これは,売買の履行を確保するための義務であり,仲介業者は本件各土地に設定している担保権者に対し残高の確認とともに担保解除の応諾状況を調査すべき義務がある。岐阜県信用保証協会では本件売買契約にDらが介在していること及びBに対する意思確認による回答から売主名義人に対し担保抹消の承諾は与えておらず,この点からも本件売買契約の決済は客観的に不可能な状態にあった。 ところが,控訴人は本件各土地の担保権者に対し担保抹消承諾の事前確認を怠っている。 (4) 認証時に問題にならなかったことを被控訴人が主張することの当否について認証は,申出人に還付請求権の根拠となる実体的な取引上の債権が存在するかどうかの判断であり,その判断材料が被控訴人の認証時の資料に限定されるものではない。被控訴人が認証拒否をした場合は,申出人は裁判所に認証請求を求め,実体的な取引上の債権を主張することができる。他方,被控訴人が認証をし,これに対し社員が認証を争った場合には,被控訴人が認証判断が正しかったこと,すなわち,申出人に実体的な取引上の債権が存在することの立証を行うものである。被控訴人の判断は簡易・迅速さが求められており,強制的調査権のない被控訴人には調査についての制度的限界もある。 本件訴訟において,大日産業に控訴人に対する損害賠償請求権が認められるならば,大日産業に対する認証は正しいことになるから,被控訴人が認証の正当性を立証するため,認証時に知り得なかった当時 。 本件訴訟において,大日産業に控訴人に対する損害賠償請求権が認められるならば,大日産業に対する認証は正しいことになるから,被控訴人が認証の正当性を立証するため,認証時に知り得なかった当時の背景事情を挙げて法的主張をすることは,むしろ当然の立証活動である。 第3 当裁判所の判断 1 控訴人の所有権確認義務違反の成否について(1) 引用にかかる原判決第二,一1(三)(六),同2ないし6の各事実に証拠(甲8,10,15,16,18,乙5ないし8,20,21,25,26,27,28の1・2,39,原審証人H,原審における控訴人本人)によれば,次の事実が認められる。 ① Eは,経営状態が悪化し,昭和63年当時約2億7000万円から3億円程度の負債があって倒産の危機に瀕していた。そのため,同社の代表取締役のBや,専務取締役であったHは,昭和63年7月頃,金融業をしていたDから約1000万円を借り入れた。しばらくすると,Dは,BやH,Jに対し,債権者が押しかけてくるので守ってやるなどと言って,同人らを信用させ,財産保全や債権者に対抗するのに必要であると称して,本件土地建物(一)ないし(九)の所有者であるB,J,Eなどに次のような登記手続等をさせた。<ア>昭和63年9月30日付けで,本件土地建物(一)ないし(七)に,同月28日付けで本件建物(九)に,いずれも自己のために同月26日信託を原因とする本件所有権登記(一)を,同月30日付けで本件建物(八)に自己のために同月26日売買を原因とする所有権移転登記を経由させ,<イ>同月13日付けで,Dの知人で暴力団関係者のKのために,債権額3000万円の抵当権設定仮登記や,借賃・1平方メートル当たり1月100円,特約・譲渡転貸ができるとの賃借権設定仮登記を経由させ,<ウ>真実の債権がないのに, 知人で暴力団関係者のKのために,債権額3000万円の抵当権設定仮登記や,借賃・1平方メートル当たり1月100円,特約・譲渡転貸ができるとの賃借権設定仮登記を経由させ,<ウ>真実の債権がないのに,K宛に架空の手形(額面合計3000万円)を振り出させた。 ② B,H,Jは,倒産状態に追い込まれた苦しさなどから,Dの指示に従っていたが,昭和63年10月頃,L弁護士に相談したところ,このままではDに財産を取られかねないと考えるに至り,B,J,H,A,Eは,同年12月1日,岐阜地方裁判所に,D及びKを被告として,上記<ア>,<イ>の各登記等の抹消登記手続を求める訴えを提起し(同庁昭和63年(ワ)第608号),同月2日に本件土地建物(一)ないし(九)等について本件所有権登記(一)や売買を原因とする所有権移転登記の抹消予告登記が経由された。また,Bは,Eについて破産の申立をし,M弁護士が管財人に選任された。 一方,B,H,J,Aは,本件各土地を売却して負債を整理する必要に迫られており,早期解決のために,D,Kと和解することとし,平成元年7月21日に前記昭和63年(ワ)第608号,同庁平成元年(ワ)第44号事件について,B,J,H,A及びE破産管財人Mと,D及びKとの間で,要旨,以下の内容で本件1和解が成立した。 ア B,J,H,Aは,Dに対し,連帯して1200万円の支払義務があることを認め,平成元年11月30日までに支払う。 イ Dは,上記金員の支払と引換に,Bに対し,本件土地(一)ないし(三),本件建物(六)(七),羽島市a町bc番dの宅地,同所j番dの宅地につき,Jに対し,本件土地(四)(五),本件建物(八)につき,Hに対し,羽島市a町ef番dの宅地,同所g番dの宅地,同所h番地i所在家屋番号h番iの木造瓦葺2階建 町bc番dの宅地,同所j番dの宅地につき,Jに対し,本件土地(四)(五),本件建物(八)につき,Hに対し,羽島市a町ef番dの宅地,同所g番dの宅地,同所h番地i所在家屋番号h番iの木造瓦葺2階建居宅,同町bj番地,k番地所在家屋番号j番木造瓦葺2階建居宅,羽島市a町eh番iの宅地につき,Aに対し,羽島市a町el番の池沼,同所m番dの池沼,同所n番の池沼,同所f番iの池沼,羽島市a町en番oiの宅地につき,E破産管財人Mに対し,本件建物(九)ほか4棟の建物につき,本件所有権登記(一)や売買を原因とする所有権移転登記の抹消登記手続をする。 ウ Kは,上記金員の支払をDが受けるのと引換に,上記各土地の一部に設定された,抵当権設定仮登記,賃借権設定仮登記の抹消登記手続をする。 ③ しかし,Dは,B,H,J,Aの知らないうちに,Dと密接な関係にあるテックのために,本件土地建物(一)ないし(九)について,平成元年10月13日付けで,昭和63年10月26日売買を原因とする本件所有権登記(二)を経由した。 そこで,B,H,J,Aは,平成元年10月18日,岐阜地方裁判所にテックを被告としてこの登記等の抹消登記手続請求訴訟を提起し,そのころ,同土地建物につき処分禁止の仮処分申請をした。この仮処分申請の保証金は,Bが大日産業から1000万円を借り受けることによってまかなわれた。 なお,大日産業は,上記貸金を担保するため,名古屋簡易裁判所において成立した後記調停において,Hらから金員の支払いを受けるのと引き替えに抹消登記手続を約したH所有の羽島市a町ep番iの土地等について,条件付所有権移転仮登記の設定を得た。その際,大日産業は,本件土地建物(一)ないし(九)を巡り,BらとDらとの間に上記のような紛争があることを知ったことがうか 有の羽島市a町ep番iの土地等について,条件付所有権移転仮登記の設定を得た。その際,大日産業は,本件土地建物(一)ないし(九)を巡り,BらとDらとの間に上記のような紛争があることを知ったことがうかがえる。 そして,この訴訟の提起に伴い,本件各土地につき,平成元年10月20日付けで,本件所有権登記(二)の抹消予告登記が経由された。また,同年11月24日に処分禁止の仮処分命令がなされ,同年12月6日付けで本件仮処分登記(一)が経由された。 上記訴訟は,1審でテック欠席のままB,H,J,Aの請求が認容されたが,名古屋高等裁判所に控訴された。 ④ Dやテックは,B,H,J,Aに対し,和解の申し入れをし,B,H,J,Aは,経済的に困窮していたことから,これに応じた。そのため,B,H,J,Aが委任していたL弁護士は辞任することとなり,新たにテックの代理人津田繁治の紹介により,近藤之彦弁護士がBらの代理人となった。 近藤弁護士は,Hから,事前に和解内容については話が付いていると説明を受けており,B,J,Aに対しても同事件についての委任事項の確認をした。 そこで,B,H,A,Jは,テックと,平成2年3月15日,上記事件で,要旨,次の内容の和解(以下「本件2和解」という。)をした。 アテックは,Bに対し,羽島市a町bc番dの宅地,同所j番dの宅地について,所有権移転登記の抹消登記手続をする。 イテックは,Hに対し,羽島市a町eh番iの宅地について,所有権移転登記の抹消登記手続をする。 ウテックは,Aに対し,羽島市a町en番oiの宅地について,所有権移転登記の抹消登記手続をする。 エ B,H,A,Jとテックは,本件土地建物(一)ないし(八),羽島市a町ef番dの宅地,同所g番dの は,Aに対し,羽島市a町en番oiの宅地について,所有権移転登記の抹消登記手続をする。 エ B,H,A,Jとテックは,本件土地建物(一)ないし(八),羽島市a町ef番dの宅地,同所g番dの宅地,同所h番地i所在家屋番号h番iの木造瓦葺2階建居宅,同町bj番地,k番地所在家屋番号j番木造瓦葺2階建居宅,羽島市a町el番の池沼,同所m番dの池沼,同所n番の池沼,同所f番iの池沼についてなされた所有権移転登記(本件所有権登記(二))が有効であることを互いに確認する。 もっとも,上記当事者間において,本件2和解の成立によって本件所有権登記(二)の有効性の確認がなされたといっても,現実に売買代金等の授受がなされていたわけではないから,これによって,これまで当事者間で合意されていた,Dもしくはテックが,本件土地建物(一)ないし(八)等を他に処分して,Eの負債整理をするとの内容に実質的な変更を加えるものではない。ただ,本件2和解によって,Dもしくはテックが所有権者として同土地建物の処分が可能であることが確認され,Eの負債整理の促進が図られたものと理解されるところである。 ⑤ 本件各土地について,<ア>平成2年5月21日付けで,本件2和解成立を原因とする本件予告登記(二)の抹消登記が,<イ>同年7月6日付けで,同年6月29日取下げを原因とする本件仮処分登記(一)の抹消登記が,<ウ>いずれも同年7月18日付けで,それぞれ錯誤と本件1和解を原因とする本件所有権登記(一)と本件所有権登記(二)並びに本件予告登記(一)の各抹消登記が,<エ>同日付けで,Iを権利者とする同月17日売買を原因とする所有権移転仮登記が,<オ>同月26日付けで,上記仮登記に基づく本件所有権登記(三)が(ただし,本件土地(四)(五)については,仮登記を経ることな 日付けで,Iを権利者とする同月17日売買を原因とする所有権移転仮登記が,<オ>同月26日付けで,上記仮登記に基づく本件所有権登記(三)が(ただし,本件土地(四)(五)については,仮登記を経ることなく,直接所有権移転登記が),それぞれ経由された。 その際,B,Jは,本件2和解があるにもかかわらず,Dもしくはテックが上記<エ>,<オ>の各登記手続を経由することを了解し,その登記手続に協力した。 その結果,登記簿上は,B,JからIへ直接売買で所有権が移転した形となった。このような登記手続がなされたのは,テックが本件各土地を処分する上での便宜を考えてのことと推察される。 ⑥ 一方,控訴人は,平成2年7月頃,Hの姉で大日産業が営むパチンコ店に勤務していたCから,本件各土地を売却してほしいとの申し入れを受けた。Cは,「Dやテックに本件各土地の売却を頼んでいるがなかなか進まない。これでは銀行への返済が遅れるばかりで(利息等が嵩むの意)困る。土地の名義はDとテックになっているのでそちらと話をしてほしい。大日産業が買ってくれるのではないか。」と述べていた。控訴人は,本件各土地の登記簿謄本を調べ,その所有名義がIであることが分かった。控訴人は,同人がどのような人物か知らなかったが,上記Cの話などから,本件各土地の売買を進める上で格別支障がないものと判断した。 そんな折,控訴人は,大日産業の代表者Gから,「大日産業のパチンコ店の前の本件各土地に別のパチンコ店が進出すると困るので,本件各土地を買った上で,パチンコ店以外に転売したい。協力してほしい。」旨の申し入れを受けた。また,その頃,控訴人は,鹿島建設岐阜営業所の営業部長Pに本件各土地の買い受けを持ちかけたところ,Pは分譲マンション建設候補地として購入する計画があるとの回答を得た。さ い。」旨の申し入れを受けた。また,その頃,控訴人は,鹿島建設岐阜営業所の営業部長Pに本件各土地の買い受けを持ちかけたところ,Pは分譲マンション建設候補地として購入する計画があるとの回答を得た。さらに,その頃,控訴人は,テックの取引主任者であるQからも,「本件各土地を転売目的で取得したが買う人は知らんか。所有名義はテックの従業員であるFにする。」との申し入れも受けた。 そこで,控訴人は,大日産業と坪単価52万円くらいをめどに,本件各土地の購入についての仲介契約を締結し,テックと電話連絡で,売買価格や支払時期について折衝した。控訴人は,本件各土地の物件明細書も作成し,大日産業に示したりもした。 控訴人は,平成2年10月11日付けでテックの従業員であるFのために同日売買を原因とする本件所有権登記(四)が経由されると聞き,大日産業とFとの間で次の内容の本件売買契約を仲介することとなった。 ア契約成立日平成2年10月11日イ代金 3億0075万6500円ウ売買の目的物本件各土地エ登記・引渡及び代金決済日平成2年11月20日オ物件引渡義務本物件に居住者その他の占有者があるときは,これを退去させた上,引渡をしなければならない。 カ特約地上物件の50パーセントを取り壊した時点で,中間金として3000万円を支払う。 ⑦ 大日産業は,本件各土地上の建物が煙突を除き壊されたことから,平成2年11月7日に本件中間金3000万円をテックに支払った。本件各土地の担保権は,残金決済のときに抹消する予定であったが,担保権者が多く,確実に抹消できるか不安があったため,同月9日付けで本件各土地について,同月8日売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記(以下「本件請求権仮登 決済のときに抹消する予定であったが,担保権者が多く,確実に抹消できるか不安があったため,同月9日付けで本件各土地について,同月8日売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記(以下「本件請求権仮登記」という。)と極度額3000万円,債権の範囲を平成2年10月11日売買契約,同日売買契約による内金返還請求権及び損害賠償債権とする根抵当権設定登記(以下,「本件根抵当権登記」という。)を経由した。その頃煙突も壊されている。 ⑧ 代金決済日の平成2年11月20日近くになって,大日産業とFは,代金決済日を1ヶ月延期し,同年12月20日とすることにした。 ⑨ 本件中間金が支払われた後,Bは,Dやテックがその3000万円を負債整理に使っていないらしいことに不信の念を強め,実際には前記のとおり本件2和解の成立を了解し,本件各土地上の建物の収去にも協力していたにもかかわらず,「Dから紹介を受けて委任した近藤弁護士が何らの説明もせずに本件2和解を成立させたから,本件2和解は錯誤により無効である。」等として,岐阜地方裁判所に本件土地(二)の処分禁止の仮処分の申立をし,同年12月4日その旨の命令を得て,同月5日付けで本件土地(二)につき本件仮処分登記(二)を経由した。そのため,大日産業とFないしテックは,同月20日に代金決済ができなくなった。 また,本件各土地について,平成3年1月11日岐阜県信用保証協会の申立によって競売手続が開始された。 ⑩ その後,BとJは,Fを相手方として名古屋簡易裁判所に調停の申立(名古屋簡易裁判所平成3年(ノ)第92号)をしたところ,Bが死亡し,J,C,R,A,H,SがBの申立人としての地位を承継した。 この調停事件において,上記各当事者にテック,D,T,U,大日産業を利害関係人として加え,平成3 2号)をしたところ,Bが死亡し,J,C,R,A,H,SがBの申立人としての地位を承継した。 この調停事件において,上記各当事者にテック,D,T,U,大日産業を利害関係人として加え,平成3年8月6日に,調停が成立した。 この調停は,Fないしテック及び上記Tらが,本件各土地及び本件各土地と同様の経過を経てTらに所有権移転登記手続等がなされているもとH及びA名義の各土地について,任意売却するなどして資金調達する権限のあることを前提にして,<ア>F,テック,D,Tが,前記競売の第一回競売期日までに,本件各土地等に設定された抵当権の被担保債務を代位弁済すること,<イ>F,テックは,解決金として,連帯して,J,C,R,A,H,Sに対し,1000万円を支払うこと,<ウ>J,C,R,A,H,Sは,上記解決金の支払いを受けたときは,本件土地(二)に対する前記処分禁止の仮処分の申立を取り下げることを骨子とするものであり,また,大日産業の関係では,<エ>大日産業は,Fから4000万円の支払を受けるのと引換に,Fに対し,本件各土地につきなされた本件請求権仮登記及び本件根抵当権登記の抹消登記手続をすること,<オ>大日産業は,J,C,R,A,H,Sから1400万円の支払いを受けるのと引換に,Hら所有の羽島市a町ep番i,同所q番,同所m番i,同所r番の各土地につきなされた岐阜地方法務局羽島出張所平成元年11月15日受付にかかる条件付所有権移転仮登記の抹消登記手続をすることが約された。 なお,大日産業が,上記調停に控訴人とともに赴いていることからすると,大日産業が上記<エ>の合意をした本意がどこにあったかは定かでないにしても,調停条項を見るかぎり,大日産業は,同調停において,本件売買契約が白紙に戻されることに異議がないものとして,金員の支払いを 大日産業が上記<エ>の合意をした本意がどこにあったかは定かでないにしても,調停条項を見るかぎり,大日産業は,同調停において,本件売買契約が白紙に戻されることに異議がないものとして,金員の支払いを受ける旨の合意をしたことがうかがえる。 ⑪ しかし,Fから大日産業に4000万円が支払われなかったことから,大日産業は,控訴人に対し,「契約金3000万円を何とか回収してくれないか。」と申し入れた。 控訴人は,岐阜県信用保証協会とも折衝し,また,本件各土地の処分についてのHらの意向をも確認の上,引き続いて転売先を探す一方,大日産業に対しては,競売が進み,入札期間が決められた場合には落札するように勧めた。 控訴人が転売先をなかなか見つけられなかったことから,大日産業は,平成5年9月25日頃,控訴人に対し,「貴殿に買うことを進めました旧E(株)の羽島市s町t字uv番地宅地他数件の同地は(契約金参阡万,内金壱阡万円入金済)私の責任において買主を捜し貴殿に損害をかけないよう解決することを約束します。」との念書(乙8)に記名押印するよう求め,控訴人はこれに応じた。 ⑫ その後も,大日産業が3000万円を回収できるような転売先は現れず,本件各土地の入札期日が定められても,大日産業が入札に参加することはなかった。 結局,本件各土地は,平成10年5月18日に羽島興業株式会社が競落するところとなり,大日産業の本件請求権仮登記,本件根抵当権登記も抹消された。 (2) なお,控訴人は,「代金決済日の平成2年11月20日近くになって,大日産業が控訴人に残金を用意できないと連絡してきた。そこで,控訴人は,テックに大日産業が残金を用意できない旨を伝え,代金決済を1ヶ月延ばし,同年12月20日とすることとなった。」旨主張する一方,被 日産業が控訴人に残金を用意できないと連絡してきた。そこで,控訴人は,テックに大日産業が残金を用意できない旨を伝え,代金決済を1ヶ月延ばし,同年12月20日とすることとなった。」旨主張する一方,被控訴人は,「大日産業は,当初の売買代金の決済時にその残代金支払の準備をしており,売主側の都合で売買代金の決済時期が変更になったものである。」旨主張するが,いずれの主張もこれを認めるに足る的確な証拠はない。原審証人Vの「岐阜信用金庫羽島支店長に事情聴取して,大日産業が残金の準備をしていたことを確認した。」旨供述し,大日産業の控訴人に対する説明書(乙1)の中で,「私は支払の準備をし,その日を待ちました」との記載部分はあるが,同説明書中には「土地売買引渡し日の数日前になって,急に,この土地は裁判が始まったので,売買が出来なくなった,産倉通商の馬場正彌氏から通告され・・・」との記載部分があるところ,その記載部分は,当時,本件各土地に関し裁判が行われた形跡が全くないから不自然であることに照らして採用できない。かえって,大日産業の代表者Gが,控訴人申立てにかかる岐阜信用金庫からの売買代金支払の準備についての資料取り寄せに反対していること(甲22)を考慮すると,本件売買契約の売買代金の決済期日が延期された理由は,大日産業が購入残代金の準備ができなかったためではないかとの可能性を推測させるが,この事実により決済期日が1ヶ月延期され,本件売買契約が履行できなくなった責任が大日産業にあるものと断定することはできないところである。 (3) 以上認定の事実及び原審における控訴人本人によれば,控訴人は,仲介業者として,本件各土地の実質的所有者であるB,H,A,Jの処分の意思とその目的,同人らから所有名義の移転を受けてこれを他に処分する権限を与えられていたDないし る控訴人本人によれば,控訴人は,仲介業者として,本件各土地の実質的所有者であるB,H,A,Jの処分の意思とその目的,同人らから所有名義の移転を受けてこれを他に処分する権限を与えられていたDないしテックの処分権限の有無,買主である大日産業の買入の目的等を確認の上,登記簿の記載に従って本件売買契約の仲介をしたものであること,しかも,実体上の権利関係は控訴人の確認,認識したところにそうものであったこと,そして,当初約定の履行期日に代金の決済がなされていれば,大日産業は有効に本件各土地の所有権を取得し得たであろうこと,仮に履行期日の延期後に本件仮処分登記(二)の仮処分命令が発せられたことが,買主である大日産業の履行拒絶の正当理由となるとしても,その後になされた前記調停の経過を見ると,大日産業において本件売買契約を履行する意思があれば,本件各土地の所有権を取得することは可能であったこと,にもかかわらず大日産業がそのような態度に出なかったのは,本件各土地の転売についての思惑が外れたことに加え,不動産価格の一般的低落傾向が表われていたためであることが推認され,この認定を左右するに足りる証拠はない。これらの事実に照らすと,本件売買契約を仲介するに当たって,控訴人に,本件売買契約の売主側の所有権をはじめ処分権限の有無について調査を尽くしていない等の義務違反を認めることはできない。 被控訴人は,「売主名義人であるF(ないしI,テック)がB,Jと売買契約を締結し,売買代金を支払った事実がないことから,真の所有者はB,Jであると覚知すべきところ,控訴人はこの調査を怠っている。」と主張し,確かにF(ないしI,テック)がB,Jと売買契約を締結しながら売買代金を支払っていないことは前記認定のとおりであるけれども,前記認定の本件売買契約締結の経緯に照らすと の調査を怠っている。」と主張し,確かにF(ないしI,テック)がB,Jと売買契約を締結しながら売買代金を支払っていないことは前記認定のとおりであるけれども,前記認定の本件売買契約締結の経緯に照らすと,この事実があったからといって,これが控訴人の仲介業者としての調査義務を基礎づけるものでないことは明らかであるから,被控訴人の同主張は採用できない。 また,被控訴人は,「B,Jが真の所有者であれば本件売買が負債整理を目的としていることは容易に知りうることであるから,売買代金額及びその代金がいつ誰に対しいくら支払われるかについて真の所有者は承知しているかなど負債整理の実行可能性について調査義務があった。」と主張し,確かに控訴人はB,JがEの負債整理のために本件各土地が売却されることを知っていたことは前記認定のとおりである。しかし,テックが本件各土地の処分のためにその所有権の移転を受けていた以上,控訴人において,Bらが売買代金額及びその代金がいつ誰に対しいくら支払われるかなどを承知しているかなど負債整理の実行可能性についてまで調査する義務があったとは到底認められないから,被控訴人の同主張は採用できない。 2 担保権者の担保解除についての調査義務違反の成否について被控訴人は,「仲介業者である控訴人は,本件各土地に根抵当権等を設定している担保権者に対し残高の確認とともに担保解除の応諾状況を調査すべき義務がある。岐阜県信用保証協会では本件売買契約にDらが介在していること及びBに対する意思確認による回答から売主名義人に対し担保抹消の承諾は与えておらず,この点からも本件売買契約の決済は客観的に不可能な状態にあった。」と主張するが,岐阜県信用保証協会が,本件売買契約にDらが介在していること及びBに対する意思確認による回答から売主名義人に対し担 ず,この点からも本件売買契約の決済は客観的に不可能な状態にあった。」と主張するが,岐阜県信用保証協会が,本件売買契約にDらが介在していること及びBに対する意思確認による回答から売主名義人に対し担保抹消の承諾は与えなかったことを認めるに足る的確な証拠はない。その上,そもそも,大日産業は,本件各土地の見込み価格,本件各土地の売却が負債整理のためであることを承知し,本件各土地に多くの担保権が設定されていることを事前に把握していたものであり,だからこそ,その担保権が抹消できない可能性があることを顧慮して,本件各土地について所有権移転請求権仮登記と極度額3000万円,債権の範囲を平成2年10月11日売買契約,平成2年10月11日売買契約による内金返還請求権及び損害賠償債権とする根抵当権設定登記を経由したことからすれば,控訴人に被控訴人主張にかかる調査義務があったとは到底認められない。 したがって,被控訴人の同主張は採用できない。 3 控訴人が,Dら暴力団関係者が不当な財産乗っ取りを図ろうとしていることを知りながら本件売買契約を成立させたか否か,その点について控訴人が仲介業者としての注意義務に違反した過失があるか否かについて前記認定の本件売買契約締結に至る経緯からすれば,控訴人が,Dら暴力団関係者が不当な財産乗っ取りを図ろうとしていることを知りながら本件売買契約を成立させたとは到底認められない。また,本件売買契約の買主である大日産業との関係で,控訴人に被控訴人の主張に係る仲介業者としての注意義務があるとは認められない。 したがって,被控訴人の同主張は採用できない。 4 そこで,すすんで,控訴人の「控訴人の被控訴人に対する宅建業法64条の10に基づく還付充当金1000万円の支払債務の存在しないこと」の確認請求の当否について検討 控訴人の同主張は採用できない。 4 そこで,すすんで,控訴人の「控訴人の被控訴人に対する宅建業法64条の10に基づく還付充当金1000万円の支払債務の存在しないこと」の確認請求の当否について検討する。 (1) 上記1,2の認定,判断からすれば,大日産業は控訴人に対し,本件仲介契約に関し何らの損害賠償請求権を有しておらず,大日産業は被控訴人が供託した弁済業務保証金から還付を受ける権利(宅建業法64条の8第1項参照)を有していなかったことが認められる。 これを前提として,控訴人の被控訴人に対する宅建業法64条の10に基づく還付充当金1000万円の支払債務があるか否かを判断する上で,弁済業務保証金制度の理解が不可避であるから,以下,これについて検討する。 (2) 弁済業務保証金制度について弁済業務保証金制度は,営業保証金の代替的制度として昭和47年に創設されたものであるが,宅地建物取引業保証協会(以下「保証協会」という。)が供託した弁済業務保証金からの還付により社員との取引によって被った損害を補填し,購入者等消費者を保護しようとする制度である。その概要は次のとおりである。 ① 保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者(社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をしたものも含まれる。)は,その取引により生じた債権に関し,営業保証金に相当する額の範囲内(その社員について弁済を受けることができる額について,すでに保証協会が認証した額があるときはその額を控除し,還付充当金の納付を協会が受けているときは,その額を加えた額の範囲内)において,保証協会が供託した弁済業務保証金から弁済を受ける権利を有することとなっているが,その権利を実行しようとするときは,弁済を受けることができる額について当該宅地建物取引業 を加えた額の範囲内)において,保証協会が供託した弁済業務保証金から弁済を受ける権利を有することとなっているが,その権利を実行しようとするときは,弁済を受けることができる額について当該宅地建物取引業保証協会の認証を受けなければならないとされている(宅建業法64条の8)。 保証協会は,認証の申出があったときは,当該申出に理由がないと認める場合を除き,営業保証金相当額の範囲内において,その申出に係る債権に関し認証しなければならない(宅建業法施行規則26条の6)。 ② 権利の実行があった場合においては,当該保証協会は,建設大臣より,供託物の還付があった旨の通知があった日から2週間以内に,その権利の実行により還付された弁済業務保証金の額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければならない。供託をしたときは,供託物受入れの記載のある供託物の写しを添付して,当該供託に係る社員である宅地建物取引業者が免許を受けた建設大臣又は都道府県知事に当該社員に係る供託をした旨を届け出なければならないことになっている(宅建業法64条の8第4項)。 ③ 保証協会は,権利の実行により弁済業務保証金の還付があったときには,その還付に係る社員に対して,還付額に相当する額の還付充当金を保証協会に納付すべきことを通知し,当該社員は,その通知を受けた日から2週間以内に,その通知された額の還付充当金を保証協会に納付しなければならない。当該社員は,この期間内に還付充当金を納付しないときは,その社員たる地位を失うこととされている(同法64条の10)。 もっとも,宅地建物取引業者は,同法64条の8第1項の規定により建設大臣の指定する弁済業務開始日以降に保証協会の社員の地位を失ったときは,当該地位を失った日から1週間以内に,同法25条1項から3項までの規定によ 地建物取引業者は,同法64条の8第1項の規定により建設大臣の指定する弁済業務開始日以降に保証協会の社員の地位を失ったときは,当該地位を失った日から1週間以内に,同法25条1項から3項までの規定により営業保証金を供託しなければならない,この場合においては,同条4項の規定の適用があるものとする(同法64条の15)とされ,保証協会の社員の地位を失ったとしても,営業保証金を供託すれば,宅建業者の免許を取り消されることはないが,営業保証金を供託しない場合には,業務の全部又は一部が停止され(同法65条2項2号),さらにその免許が取り消されることになる(同法66条1項9号)。 ④ 保証協会は宅建業者のみを社員とするものであることがその指定の要件であるとされる(同法64条の2第1項2号)。 (3) この弁済業務保証金制度の趣旨からすれば,前記(2)②のとおり,保証協会は,権利の実行により弁済業務保証金の還付があったときには,その還付に係る社員に対して,還付額に相当する額の還付充当金を保証協会に納付すべきことを通知し,当該社員は,その通知を受けた日から2週間以内に,その通知された額の還付充当金を保証協会に納付しなければならないとはされているものの,本件のように大日産業が被控訴人の供託した弁済業務保証金から還付を受ける権利を有していない場合においては,「権利の実行により弁済業務保証金の還付があった」とはいえないから,控訴人は被控訴人に対し,宅建業法64条の10に基づく還付充当金1000万円の支払債務を負わないと解される。 (4) そうとすれば,控訴人の「控訴人の被控訴人に対する宅地建物取引業法64条の10に基づく還付充当金1000万円の支払債務の存在しないこと」の確認を求める請求は理由があるから,認容すべきである。 5 次に,控訴人の「被控 の「控訴人の被控訴人に対する宅地建物取引業法64条の10に基づく還付充当金1000万円の支払債務の存在しないこと」の確認を求める請求は理由があるから,認容すべきである。 5 次に,控訴人の「被控訴人の社員たる地位を有すること」の確認請求の当否について検討する。 (1) 引用にかかる原判決「争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実」並びに証拠(乙37,38)によれば,次の事実が認められる。 ① 被控訴人は,平成10年3月9日,大日産業から,本件売買契約に関する中間金返還請求権につき控訴人に損害賠償請求権を有する旨の認証申出を受けて,平成11年2月25日宅建業法64条の8第2項の認証(本件認証)をなし,弁済業務保証金3381万3255円を東京法務局に供託し,大日産業は,同年3月25日にこの供託金から1000万円(本件還付金)の還付を受けた。 ② 被控訴人は,平成11年3月26日付けで控訴人に対し,本件還付金相当額を2週間以内に納付するよう通知したが,弁済業務保証金分担金60万円を除く940万円の納付がなかったため,宅建業法64条の10第3項に基づき,同年4月16日付けで,控訴人が被控訴人の社員たる地位を失った旨の通知(本件通知)をした。 ③ 岐阜県知事は,控訴人に対し,平成11年11月5日,「同年4月16日に被控訴人の社員の地位を失ったため,宅建業法64条の15前段の規定により同日から1週間以内に同法25条1項から3項までの規定により営業保証金を供託しなければならないにもかかわらず,これを行わなかった。」として,営業保証金の供託をした旨の届出をするまでの間,最長1年間(1月内に当該届出をしたときは1月間)の業務の全部停止処分を命じた。しかし,控訴人がこの期間内にも営業保証金の供託をしなかったため,岐阜県知事は, 金の供託をした旨の届出をするまでの間,最長1年間(1月内に当該届出をしたときは1月間)の業務の全部停止処分を命じた。しかし,控訴人がこの期間内にも営業保証金の供託をしなかったため,岐阜県知事は,平成13年1月26日,控訴人を免許取消処分とした。 (2) ところで,弁済業務保証金制度の趣旨からすれば,被控訴人の認証があったとしても,大日産業が被控訴人の供託した弁済業務保証金から還付を受ける権利を有していない場合においては,権利の実行により弁済業務保証金の還付があったとはいえないから,控訴人は被控訴人に対し,宅建業法64条の10に基づく還付充当金1000万円の支払債務を負わないと解されることは前記4(3)で説示のとおりである。 したがって,かかる場合に被控訴人が,控訴人に対して,還付額に相当する額の還付充当金を被控訴人に2週間以内に納付すべきことを通知したとしても,その通知には何らの効力もなく,控訴人がその期間内に還付充当金を納付せずとも,控訴人は社員たる地位を失うことはないと解すべきである。 しかし,保証協会は宅建業者のみを社員とするものであることがその指定の要件であるとされる(同法64条の2第1項2号)ことから,保証協会の社員が宅建業者の資格を失ったときは,社員の地位を失うものと解される。 しかるところ,岐阜県知事が控訴人を免許取消処分としたから,控訴人は被控訴人の社員の地位を失ったと認められる。 (3) 以上によれば,控訴人が被控訴人の社員たる地位を有することの確認を求める請求は,理由がないから,これを棄却すべきである。 6 さらに,被控訴人の本件認証が控訴人に対する不法行為に該当するか否かについて検討する。 (1) 被控訴人が本件認証に至る経緯として,証拠(乙1ないし8,24ないし27,28の1・ である。 6 さらに,被控訴人の本件認証が控訴人に対する不法行為に該当するか否かについて検討する。 (1) 被控訴人が本件認証に至る経緯として,証拠(乙1ないし8,24ないし27,28の1・2,29ないし35,原審証人H,同V,原審における控訴人本人)によれば,次の事実が認められる。 ① 大日産業代表者Gは,平成10年2月2日,宅建協会羽島南支部の無料不動産相談所に訪れ,相談を受けたが,その内容は,「大日産業は,Fに手付金を支払い,売買契約を締結し,平成2年11月20日付けをもって代金の支払移転登記を行うため,資金の手当てを行うも予定日の前々日に連絡があり,処分禁止の仮処分の登記が行われ売買ができなくなり,手付金の返還もなく今日にいたる。その間仲介業者の控訴人は買主の大日産業に対して絶対迷惑をかけないといいながら今日に至っております。契約書の中に明記されているように手付金の倍額の返還,少なくとも支払済手付金3000万円の返還は最低条件かとも考え相談する。」というものであった(乙31)。相談の担当者は,媒介契約書の交付が行われておらず,重要事項の説明内容にも重大な誤りがあり,保証協会の弁済案件であると判断し,大日産業に対し,被控訴人の岐阜本部に行くように指導した。 ② 大日産業代表者Gは,平成10年2月3日,被控訴人の岐阜本部に赴き,大日産業が控訴人に対して損害賠償をすることの苦情申出を行った。その際,大日産業代表者Gは,不動産売買契約書及び重要事項説明書(甲8),説明書(乙1),領収証,支払小切手写,当座勘定元帳写,不動産登記簿謄本,公図の提出をしたが,説明書(乙1)の概要は次のとおりである。 「平成2年9月頃控訴人から本件各土地を買わないかと紹介された。大日産業として,その土地を買うことに決め,控訴人の言う 簿謄本,公図の提出をしたが,説明書(乙1)の概要は次のとおりである。 「平成2年9月頃控訴人から本件各土地を買わないかと紹介された。大日産業として,その土地を買うことに決め,控訴人の言うままに契約日の平成2年10月7日午後7時頃,控訴人の事務所へ契約金3000万円の小切手を用意していき,そこで3000万円の小切手を渡し契約をした。その時は誰が宅建主任者であることも知らされず,重要事項の説明もろくにされなかった。その時の立会人は,土地の名義人で契約者のF,先方の不動産業者テックのW,控訴人とGの4名のみで契約書を交わした。その場には,宅建主任者の資格を持つものは一人も立ち会わなかった。その契約書の中で,平成2年11月20日に土地の売買を完了すると約束されていたので,大日産業は支払の準備をし,その日を待ったが,土地売買引渡日の数日前になって,急にこの土地は裁判が始まったので,売買が出来なくなったと,控訴人から通告された。大日産業は,契約金の返還を控訴人に頼んだが,既にその契約金3000万円はFと田島らが他に流用して,返す金がないとの返事であった。大日産業は,弁護士に相談に行ったが,相手は不動産等何ら取り返せるものがない人物たちであるので訴訟を起こしても何も取れないから無駄であると言われた。その後何度も控訴人に責任を取ってくれと話したが,いつも必ず何とかすると言っての繰り返しばかりであった。4~5年の裁判の結果競売が決定となった。競売となればとても大日産業が出した契約金の3000万円は戻ってくる可能性がないから,控訴人にどのように責任を取るのかと迫ったところ,必ずあの土地を自分が売買して,出した契約金の3000万円は返すからとか言ってその繰り返しだった。大日産業は不安となり,平成5年9月25日に控訴人から必ず契約金3000万円 取るのかと迫ったところ,必ずあの土地を自分が売買して,出した契約金の3000万円は返すからとか言ってその繰り返しだった。大日産業は不安となり,平成5年9月25日に控訴人から必ず契約金3000万円の責任を持って解決するという約束書をもらった。その間被控訴人に申し出るのが遅れたのは,控訴人が口がうまく嘘を平気で言い,いかにもすぐに解決するという言葉に騙されたことと,このような被害を受けた買主を救済する制度があったことを今日まで知らなかったためである。」③ 被控訴人の岐阜支部は,控訴人に対し,それぞれ平成10年2月24日到達の文書により,「本件土地に関する大日産業とFとの平成2年10月11日付け不動産売買契約について,苦情解決の申出があり事情を聴取するので,岐阜県不動産会館3階研修室に,平成10年3月3日午後3時に出席を願いたい。」との通知(乙34の1)をした。被控訴人の岐阜支部は,Gに対しても,同様に,平成10年3月3日午後2時に出席を願いたいと通知した。 控訴人は,平成10年2月25日,被控訴人の岐阜支部に対し,電話でこの文書の内容の説明を受けたいとの連絡をした。被控訴人の岐阜支部は,控訴人に被控訴人の岐阜本部に来てもらうこととし,同月28日に,控訴人に対し,大日産業の苦情内容と被控訴人の苦情解決業務委員会の役割について説明した。 ④ 被控訴人の苦情解決業務委員会が,平成10年3月3日に開催され,G及び控訴人にそれぞれ事情聴取がされた。 その際,Gは,「控訴人から,本件売買契約の履行予定日の数日前になって,急に本件各土地は裁判が始まったので売買ができなくなったとの連絡があり,その売買が履行できなくなった。」旨述べた。 控訴人は,<ア>IはDの子分で,Fはテックの従業員で,D,I,F,テックはいずれ 件各土地は裁判が始まったので売買ができなくなったとの連絡があり,その売買が履行できなくなった。」旨述べた。 控訴人は,<ア>IはDの子分で,Fはテックの従業員で,D,I,F,テックはいずれも暴力団に関係がある,<イ>本件売買契約の履行期日が延期されたのは,大日産業が残代金決済資金を用意できなかったからで,資金が用意されていれば当然に決済されていた,<ウ>その履行期日当時,本件各土地について裁判が始まったという事実はない,<エ>Bが本件売買契約後に本件土地(二)につき仮処分をした理由は分からない,<オ>本件売買契約の履行期日を延期した後にテックが倒産した,<カ>大日産業のために本件各土地について所有権移転請求権仮登記と極度額3000万円,債権の範囲を平成2年10月11日売買契約,平成2年10月11日売買契約による内金返還請求権及び損害賠償債権とする根抵当権設定登記が経由されたから,控訴人には責任がない等と述べた。これに対し,被控訴人の担当者は,「控訴人が,代金の決済ができないということで決済時期を延期した旨の書面を作成しなかったのは問題である。」,「控訴人が大日産業に対する念書(乙8)に署名押印したこと自体が間違っていた。」,「競売開始決定の前に,たぶん審査等をされるにあたっては,大体約8ヶ月ぐらい裁判所は時間をかけるから,平成2年7月くらいの段階ではもう調査に入っているはずである。」等と述べていた。 ⑤ 大日産業は,平成10年3月9日,被控訴人に対し,「取引の相手方である宅地建物取引業者,控訴人,申出に係る債権,3000万円,申出に係る債権の発生時期,平成2年11月頃,取引が成立した時期,平成2年10月11日」の債権につき,宅建業法64条の8第2項による認証の申出書を提出した(乙35)。 平成10年3月16日 出に係る債権の発生時期,平成2年11月頃,取引が成立した時期,平成2年10月11日」の債権につき,宅建業法64条の8第2項による認証の申出書を提出した(乙35)。 平成10年3月16日,弁済業務地方審議会が開催されて認証が相当との意見となり,同年4月7日に,被控訴人の岐阜本部は被控訴人の中央本部に認証申出関係書類を送付した。 平成11年2月25日,被控訴人は,「申出債権は,宅建業法64条の3第1項第3号に定める弁済業務の対象債権に該当するので,同法施行規則第26条の6の定める認証の基準に基き認証する。」との理由で,申出に係わる債権につき債権額1000万円について認証した(乙35)。 ⑥ そこで,控訴人は,控訴人代理人弁護士Xにその対応を委任した。X弁護士は,平成11年4月9日,被控訴人宛に,次の内容の書面(甲4)を送付した。 「控訴人に,大日産業の請求に応ずるべき義務は何らないところでありますし,控訴人に反論・反証の機会を十分に与えないまま認証し,還付されたのは大変遺憾であります。・・・本件の事実関係を明確にするため,下記書類の送付をお願いします。もちろん,これらの書面の写しの送付で結構です。 ア大日産業が被控訴人に提出した「認証申出書」「債権発生原因事実等を記載した書面」「権利を有することを証する書面」等の書面イ被控訴人が控訴人の釈明を求めた際,提出された資料及び釈明・弁明等を記載した書面・・・」これに対し,被控訴人は,平成11年4月13日,X弁護士に対し,次の内容の回答書を送付した。 「控訴人への大日産業からの認証申出について,被控訴人は控訴人に対し申出内容について十分説明し,反論・反証の機会も与えており,今般の認証決定及びその弁済業務保証金の還付につきまし 付した。 「控訴人への大日産業からの認証申出について,被控訴人は控訴人に対し申出内容について十分説明し,反論・反証の機会も与えており,今般の認証決定及びその弁済業務保証金の還付につきましては,宅建業法に基づき適正に処理しております。・・・ご依頼の認証申出の審査関係資料の送付については,被控訴人としては出来かねますので,ご了承の程よろしくお願い致します。」(2) 上記認定の事実からすれば,大日産業の説明書(乙1),苦情解決業務委員会でのGの陳述及び認証申出書によっても,大日産業がいかなる根拠で控訴人に対する損害賠償請求権を有するとしてその苦情申出をしたのか明らかでなく,大日産業の申出債権は宅建業法64条の3第1項第3号に定める弁済業務の対象債権に該当するとはいえないものであったと認められる。 そして,苦情解決業務委員会で,被控訴人の担当者が,「控訴人が大日産業に対し,「控訴人が,代金の決済ができないということで決済時期を延期した旨の書面を作成しなかったのは問題である。」,「控訴人が大日産業に対する念書(乙8)に署名押印したこと自体が間違っていた。」,「競売開始決定の前に,たぶん審査等をされるにあたっては,大体約8ヶ月ぐらい裁判所は時間をかけるから,平成2年7月くらいの段階ではもう調査に入っているはずである。」等と述べていたことから,代金の決済時期が売主のFの事情で延期されたこと,念書(乙8)の存在及び本件売買契約当時競売手続が進められていたことが,被控訴人による本件認証の理由であると推測されるが,<ア>代金の決済時期が必ずしも売主F側の事情で延期されたといえないことは第3の1(2)に認定のとおりである上,仮に売主F側の事情で延期されたとしても,それだけでは大日産業が控訴人に対して本件仲介契約に基づく損害賠償請求権 しも売主F側の事情で延期されたといえないことは第3の1(2)に認定のとおりである上,仮に売主F側の事情で延期されたとしても,それだけでは大日産業が控訴人に対して本件仲介契約に基づく損害賠償請求権を取得する根拠とすることはできないこと,<イ>念書(乙8)は「控訴人の責任において買主を捜し」とあることから,ただちに控訴人が損害賠償責任を負うことを認めたものであるとはいえないこと,<ウ>「競売開始決定の前に,たぶん審査等をされるにあたっては,大体約8ヶ月ぐらい裁判所は時間をかけるから,平成2年7月くらいの段階ではもう調査に入っているはずである。」というのも,競売の申立があってから競売開始決定にいたるまでさほどの期間がかからないことは当裁判所に公知の事実であって,明らかに誤った推測であると認められることからして,被控訴人による本件認証の理由にはさしたる根拠がなかったといい得る。したがって,被控訴人は,控訴人に対し,いかなる根拠で,大日産業の申出債権が宅建業法64条の3第1項第3号に定める弁済業務の対象債権に該当する可能性があるのか,明確にしないまま,苦情解決業務委員会で事情聴取を行い,また,さしたる根拠もなく,本件認証を行ったものと認めることができる。 (3) もっとも,この点,被控訴人の従業員Vの陳述書(乙30),原審証人Vの供述中には,要旨次の記載がある。 「平成10年3月1日頃,現地調査に赴き,本件各土地上に建物が一部存在していることを確認した。また,同月3日から16日までの間に,岐阜信用金庫羽島支店に赴き,羽島支店長から大日産業への融資の経緯を聞いたほか,岐阜県信用保証協会にも赴き,稟議書とか折衝記録等の本件各土地に関する一切の記録の閲覧をする等して,次の事実を解明した。 ア Fはテックの従業員である。 イテ の融資の経緯を聞いたほか,岐阜県信用保証協会にも赴き,稟議書とか折衝記録等の本件各土地に関する一切の記録の閲覧をする等して,次の事実を解明した。 ア Fはテックの従業員である。 イテックは,暴力団A1会系B1会相談役のDと共謀して,本件各土地に関して不法に利得しようと企てている。 ウ Dの内妻がIである。 エ F,テック,D及びIは,同じ暴力団関係の同一の利益を追求している。 オ本件各土地の所有者がFと登記されたのは,平成2年10月11日受付所有権移転登記によるものである。そして,本件売買契約の締結日は同日であるから,売買契約締結時に不動産登記簿上で,本件土地の所有者がFと確認することは著しく困難である。 カ本件各土地については,昭和63年9月30日,Dに所有権移転登記がなされる前,BもしくはJの所有名義となっており,その後,Dとテックの所有権移転登記に対する2度の抹消予告登記とテックに対する処分禁止の仮処分登記並びにこれら抹消登記を経て,Iへの所有権移転登記がなされている。 キ本件各土地は5筆で道路に面しているが,B,J及びその親族が所有する多くの土地があり,本件各土地の売買により袋地が生ずるため,本件売買契約の履行は合法的には困難であった。 ク大日産業は,本件売買契約の代金及び諸費用の支払いに充てるため,岐阜信用金庫羽島支店に3億0200円の融資申込みをしていて,中間金3000万円の小切手による支払いもこの3億0200円の融資申込額から実行された。大日産業が,売買残代金の支払不能を理由に売買契約の履行期限の延長を申し入れした事実はない。 ケ平成2年11月11日,D及びTとC及びBの娘(E経理担当)が,岐阜県信用保証協会に集まった。その際,本件土地は大日産業が購入するが,Hに 買契約の履行期限の延長を申し入れした事実はない。 ケ平成2年11月11日,D及びTとC及びBの娘(E経理担当)が,岐阜県信用保証協会に集まった。その際,本件土地は大日産業が購入するが,Hに話をするな,Bもまだ承諾していないと話して帰った。 コ平成2年11月16日,岐阜信用金庫羽島支店より岐阜県信用保証協会に対して,大日産業の仲介業者は控訴人であると連絡があり,岐阜県信用保証協会は初めて控訴人の名前を聞いた。 サ平成2年11月20日,岐阜県信用保証協会は,入院中のBを訪ねて本件各土地の任意売買の立ち会いを依頼したが,BはDに騙されたと返答した。 シ平成2年11月21日,Hは岐阜県信用保証協会に来て,Dを刑事告訴する準備中である,名古屋のY弁護士に相談していると話した。 ス平成2年11月27日,Z弁護士から岐阜県信用保証協会に電話があり,Hから依頼された,訴訟及び仮処分の準備をしているので売買は中止にしてくれとの連絡であった。 セ本件各土地の任意売買は中止となり,平成3年1月11日,岐阜県信用保証協会は,本件各土地に対する不動産競売開始決定を得た。」しかし,本件各土地上の建物が撤去されていることは前記第3,1(1)⑦の認定のとおりであるから,本件各土地上に建物を確認したというのは,明らかな誤認であると認められる。そして,証拠(甲19)及び弁論の全趣旨によって,B,J及びその親族が所有する多くの土地があり,本件各土地の売買により袋地が生ずるという事実もないことが認められる。 また,Vによる岐阜信用金庫羽島支店や岐阜県信用保証協会での調査も,いつどのような内容の資料を基になされたかを裏付ける的確な証拠がない。前記第3,1(1)④⑤⑦で認定にかかる,B,H,A,Jは,テックと,本件2和解 阜信用金庫羽島支店や岐阜県信用保証協会での調査も,いつどのような内容の資料を基になされたかを裏付ける的確な証拠がない。前記第3,1(1)④⑤⑦で認定にかかる,B,H,A,Jは,テックと,本件2和解をしたこと,B及びJは,Iを権利者とする,同月17日売買を原因とする所有権移転仮登記及び本件所有権登記(三)の各登記手続をすることを了解し,その登記手続に協力したこと,本件売買契約の頃,本件各土地上の建物が撤去されたことからすれば,Vのこの調査結果も直ちに採用しがたいところである。 さらに,Vのこの調査結果によるも,いかなる根拠で控訴人が大日産業に対し損害賠償の責任を負うのか明らかではないし,この調査結果に対して控訴人に反論の機会が与えられていない。 そうとすれば,このVの陳述書,原審証人Vの供述部分は,被控訴人が,控訴人に対し,いかなる根拠で,大日産業の申出債権が宅建業法64条の3第1項第3号に定める弁済業務の対象債権に該当する可能性があるのか,明確にしないまま,苦情解決業務委員会で事情聴取を行い,また,さしたる根拠もなく,本件認証を行ったとの前記認定,判断を左右するものではない。 (4) ところで,宅建業法64条の8第2項にいう認証がなされ,保証協会の社員と宅地建物取引業に関し取引をした者が保証協会の供託した弁済業務保証金から還付を受けると,その取引をした者が権利を有しない場合においても,事実上,当該社員は還付額に相当する還付充当金を保証協会に納付するか,営業保証金を供託するかしなければ,建設大臣又は都道府県知事から,その業務の全部又は一部の停止を命ぜられ,さらに宅建業者としての免許の取消処分を受けることになるのは,前記第3,4(2)の認定,説示から明らかである。 このように保証協会の認証によって社員が重大な不利益 部又は一部の停止を命ぜられ,さらに宅建業者としての免許の取消処分を受けることになるのは,前記第3,4(2)の認定,説示から明らかである。 このように保証協会の認証によって社員が重大な不利益を受けることに鑑みれば,保証協会は,認証に当たっては,当該社員に対し,取引をした者の認証申出の趣旨(取引をした者が当該社員に対しいかなる根拠で損害賠償請求権を有するかについての説明を含む。)を明らかにして,反論の機会を与えなければならないと解するのが相当である。そして,保証協会が当該社員にかかる機会を充分に与えないで認証し,結果として,取引をした者が当該社員に対する権利(損害賠償請求権)を有しないことが認められた場合においては,保証協会としては,民法709条に基づく損害賠償責任を免れないと解される。 本件においては,前記第3,4及び5の認定事実からして,被控訴人が,控訴人に対し,いかなる根拠で,大日産業の申出債権が宅建業法64条の3第1項第3号に定める弁済業務の対象債権に該当する可能性があるのか,明確にしないまま,苦情解決業務委員会で事情聴取を行い,また,さしたる根拠もなく,本件認証を行ったものであるうえに,大日産業は控訴人に対し本件仲介契約につき何らの損害賠償請求権も有していなかったものと認められるから,被控訴人は控訴人に対して,民法709条に基づく損害賠償責任を免れないというべきである。 (5) そこで,控訴人の損害額につき検討するに,前記第3,5(1)の認定事実からすれば,控訴人は,本件認証によって,岐阜県知事から営業停止を命ぜられたり,免許取消を命ぜられたりして,社会的信用を失ったことが認められる。これらの事情を勘案すると,控訴人の損害額は100万円を下るものではないと認められる。 (6) 以上によれば,控訴人の不法行為 ,免許取消を命ぜられたりして,社会的信用を失ったことが認められる。これらの事情を勘案すると,控訴人の損害額は100万円を下るものではないと認められる。 (6) 以上によれば,控訴人の不法行為に基づく損害賠償請求は,理由があるから,これを認容すべきである。 第4 結論よって,上記と異なる原判決を変更し,原判決主文一項を当判決主文1項(1)ないし(3)のとおり変更することとし,訴訟費用の負担につき民訴法67条2項,61条,64条ただし書を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部裁判長裁判官福田晧一裁判官内田計一裁判官倉田慎也
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