平成13(行ウ)39 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年7月28日 横浜地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文38,048 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,神奈川県に対し,12億2987万6550円及びこれに対する平成13年5月30日から支払済みまで年5分の割合による金銭を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,神奈川県に事務所ないし住所を有する原告らが,平成13年5月当時,神奈川県知事の地位にあった被告に対し,被告が,神奈川県(以下「県」という。)を代表して,同月21日,株式会社横浜二十一世紀座からテント式ドームシアターである別紙物件目録記載の建物等を代金12億2987万6550円で買取る旨の売買契約を締結し,その支払をしたことは,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項等に反する違法な財務会計行為であり,これにより県が代金相当額の損害を被ったと主張して,平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項4号に基づき,県に代位して被告に対し損害賠償を求める住民訴訟である。 2 基礎となる事実 ── A・横浜21世紀座事業の経過等 ──(以下は,当事者間に争いがないか,記載した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。)(1) 当事者等 〔甲2号証の3,10(2),(3),弁論の全趣旨〕ア原告かながわ市民オンブズマンは,肩書住所地に事務所を置き,「地方公共団体の不正,不当な行為を監視し,これを是正する」ことを目的として設立された権利能力なき社団であり,その余の原告らは,いずれも神奈川県の住民である。 イ被告は,平成7年4月23日神奈川県知事に就任し,平成13年5月当時もその地位にあった者である。 ウ株式 き社団であり,その余の原告らは,いずれも神奈川県の住民である。 イ被告は,平成7年4月23日神奈川県知事に就任し,平成13年5月当時もその地位にあった者である。 ウ株式会社グッドステイ(以下「グッドステイ社」という。)は,企業の事業活動のための投資採算計画,資金調達計画,導入技術,機材購入計画の遂行のため必要な事項についての調査,検討,評価,助言及び指導を含む一切のコンサルティング業務等を目的とする株式会社であり,代表取締役はBである。 エ有限会社エイチ・アイ・ティー(以下「エイチ・アイ・ティー社」という。)は,演劇,演芸その他催事の企画・制作及び販売,芸能人のマネージメント等を目的とする有限会社であり,代表取締役はCである。同社は,歌舞伎俳優であるAのマネージメント業務を行っている。 オ株式会社横浜二十一世紀座(以下「横浜二十一世紀座」という。)は,劇場の経営,管理等を目的として平成12年12月8日設立された株式会社であり,代表取締役はDである。 (2) A・横浜21世紀座事業の企画〔甲2号証の2,11,甲3,20号証,甲21号証の1,2,丙57,65,70号証,証人E,同F,同B,同Cの各証言〕「A・横浜21世紀座事業」(以下本件事業」という。)は,以下の経緯により,県が所有する横浜市αの県庁β分庁舎跡地(以下「本件土地」という。)にテント式ドームシアターを設置し,Aが芸術監督となり,我が国の伝統芸能を中心とする国内外の芸術文化公演を行うことによって,県の「2001年「希望の年」特別記念事業」及び2002年の「ワールドカップ開催記念事業」の一環とするという趣旨の下に,実施することが計画された事業である。 本件事業は,平成 によって,県の「2001年「希望の年」特別記念事業」及び2002年の「ワールドカップ開催記念事業」の一環とするという趣旨の下に,実施することが計画された事業である。 本件事業は,平成12年4月,グッドステイ社代表取締役のBが,県に対し,「A事務所」名義による企画書(甲20号証)を提出したことが契機となり,同年6月頃から,県の担当部局である総務部財産管理課のF課長を中心とする職員や,B,エイチ・アイ・ティー社代表取締役C,地元の商工関係者らが集まって,本件事業の実施の可否,事業における役割分担等が検討,協議された。 (3) 共同記者会見による本件事業の企画の概要の発表〔甲2号証の12,13,甲3号証,丙57,65号証,証人E,同Fの各証言〕県,A及び「A・横浜21世紀座を支援する会」事務局は,平成12年9月14日,共同記者会見を開き,県知事であった被告やA本人も出席して,本件事業の概要についての説明を行った。被告は,この席で,本件事業を,県の「2001年「希望の年」特別記念事業」に位置づけたことを発表した。 ア事業主体事業主体を施設整備と催事企画に分け,芸術監督であるA側が公演に責任を持ち,地元がその受け皿として施設整備を図ることとされた。 (ア) 芸術監督:A(イ) 施設整備運営会社:設立中であり,地元企業等を中心に新規に設立する。 (ウ) 催事企画会社:エイチ・アイ・ティー社イ実施場所(ア) 本件土地(横浜市α54番所在の県庁β分庁舎跡地)(イ) 敷地面積:約7500平方メートルウ施設概要(ア) 名称:A・横浜21世紀座 ) 本件土地(横浜市α54番所在の県庁β分庁舎跡地)(イ) 敷地面積:約7500平方メートルウ施設概要(ア) 名称:A・横浜21世紀座(イ) 規模:約3000平方メートル(仮設テントドーム,同楽屋等)(ウ) 席数:1700程度(可動席を予定)エ事業期間(ア) 第1期(2001年「希望の年」記念事業):平成12年12月下旬から平成13年12月31日(イ) 第2期(ワールドカップ開催記念事業):平成14年1月1日から同年8月下旬オ事業規模(第1期のみ)施設整備に要する経費については,民間企業等からの協賛により確保することとされた。 (ア) 施設整備費  4億5000万円程度(イ) 事業運営費 13億4000万円程度カ支援組織(ア) 名称:「A・横浜21世紀座を支援する会」(以下「支援する会」という。平成12年9月12日発足)(イ) 会長:G(ウ) 参加団体等:協賛企業,地元経済団体,地元自治体(横浜市,神奈川県)等(4) 共同記者会見後,施設整備運営会社の設立まで〔甲2号証の7,14,甲3号証,甲4号証の4,丙57,65,69,70号証,証人E,同F,同D,同Bの各証言〕本件事業では,平成12年12月下旬からの公演に向けて施設を整備する必要があったが,上記のとおり,施設整備運営会社が設立されていなかったため,それまでの間は,Bが代表取締役を務めるグッドステイ社の名義で,本件事業に必要な本件土地の賃貸借契約の締結,仮設興行場の建築許可の申請等及び建設工事の発注 施設整備運営会社が設立されていなかったため,それまでの間は,Bが代表取締役を務めるグッドステイ社の名義で,本件事業に必要な本件土地の賃貸借契約の締結,仮設興行場の建築許可の申請等及び建設工事の発注を行うこととなった。 グッドステイ社は,同年10月20日,次の約定により,県との間で本件土地の賃貸借契約を締結し,その他,先行して必要な建築許可申請等や工事の発注を行った。 ア目的 「A・横浜21世紀座」仮設興業場敷地イ期間平成14年10月19日までの2年ウ貸付料総額3億1245万4739円(月額平均約1300万円)(ア) 平成12年度分 6976万7291円(イ) 平成13年度分 1億5622万7370円(ウ) 平成14年度分 8646万0078円(5) 施設整備費の増加〔甲2号証の11,甲3号証,甲4号証の20,丙57,65,66,69号証,証人E,同F,同D,同Cの各証言〕上記(3)のとおり,施設整備費は,当初,第1期分として4億5000万円程度と見込まれていた。しかし,平成12年10月には,第2期におけるサッカーワールドカップの開催に向けた関連事業の実施も視野に入れたことから,施設の補強が必要となり,また,多様な公演に対応できるよう,従来から使用を予定していた能舞台の他に,劇場形式の舞台を整備することとなったため,それに伴う装置の仕様変更,客席の可動化やグレードアップ,楽屋やトイレ数の変更等の施設及び設備の仕様変更が行われ,施設整備費は9億円に増額されることになった。さらに,同年11月ころには,施設整備費は約10億円に増加することが見込まれるようになった。 (6) 横浜二十一 施設及び設備の仕様変更が行われ,施設整備費は9億円に増額されることになった。さらに,同年11月ころには,施設整備費は約10億円に増加することが見込まれるようになった。 (6) 横浜二十一世紀座の設立〔甲2号証の7,16,甲4号証の5,丙57,65,68,69,70号証,証人E,同F,同D,同Bの各証言〕平成12年12月8日,本件事業の「施設整備運営会社」として,地元企業11社及び個人2名の出資により資本金9500万円で横浜二十一世紀座が設立され,グッドステイ社から,同社に対し,本件土地の賃貸借契約,建築許可,工事請負契約の当事者の地位が承継された。 他方,施設整備費の原資となる協賛金は,企業等に協力を依頼していたが,横浜二十一世紀座の設立の時点においても,出資による協力として上記9500万円,広告等として1300万円の合計1億0800万円程度しか確保できておらず,施設整備費を協賛金で賄うことは困難な状況となっていた。このようなことから,横浜二十一世紀座は,県に対し,土地貸付料の減免や,財政的支援等の依頼を行うに至った。 (7) 本件建物の竣工・こけら落とし公演本件建物は,平成12年12月17日竣工し,同月29日から翌平成13年1月7日まで,こけら落とし公演としてAによる舞踊等が行われた。 (8) 県の財政的支援〔甲3号証,甲4号証の7,8,丙2号証の1,2,丙57号証,証人Eの証言〕県は,本件事業の実施について,当初,「できる限りの協力・支援」を表明していたものの,財政難もあって,財政的支援までは予定していなかったが,上記のような情勢を踏まえ,横浜二十一世紀座に対し財政的支援を行うように方針を変更し,平成12年度2月 限りの協力・支援」を表明していたものの,財政難もあって,財政的支援までは予定していなかったが,上記のような情勢を踏まえ,横浜二十一世紀座に対し財政的支援を行うように方針を変更し,平成12年度2月補正予算案において,横浜二十一世紀座に対し1500万円を出資すること,ドームシアターの施設整備費のうち5億円を補助金として交付することを内容とする予算案を作成するとともに,平成13年度当初予算案において,同社の金融機関からの借入金について6億1887万円を限度とする損失補償にかかる債務負担行為を県が設定するとの予算案を作成し,平成13年2月15日開会予定の県議会2月定例会に提出し,同月8日,その内容を記者発表した。 (9) Aの芸術監督辞任ところが,Aは,平成13年2月9日,記者会見を開き,本件事業の芸術監督を辞任する意向を表明し,本件事業から離脱したため,Aを芸術監督とする形での本件事業の遂行は不可能となった。 (10) その後の県の対応〔甲2号証の4,甲3号証,甲4号証の6,9,丙57,65,69号証,証人E,同F,同Dの各証言〕県は,上記事態を受け,本件建物,附属工作物及び設備・備品一式(能舞台を除く。以下「本件建物等」という。)を購入する方向で事態に対処することとし,Aの芸術監督辞任の意向表明から約1週間後である平成13年2月中旬頃,横浜二十一世紀座に対しその旨を申し入れた。 そして,県は,県議会2月定例会に既に提出していた上記平成12年度2月補正予算案及び平成13年度当初予算案を変更し,平成12年度2月補正予算案の中の出資金1500万円及び補助金5億円を全額減額するとともに,業務整理を円滑に行うために横浜二十一世紀座に5億円を貸し付けることとし,また,平成13年度 算案を変更し,平成12年度2月補正予算案の中の出資金1500万円及び補助金5億円を全額減額するとともに,業務整理を円滑に行うために横浜二十一世紀座に5億円を貸し付けることとし,また,平成13年度予算案中の損失補償に係る債務負担行為分の金額を削除するとともに,本件建物等の購入費として12億7000万円を追加計上した。 上記変更予算案は,いずれも同年3月,県議会本会議において,可決・承認された。 また,県は,平成13年3月19日には,横浜二十一世紀座に対する本件土地の貸付料を全額免除した。 (11) 本件建物等の評価〔甲2号証の9,甲3号証,甲4号証の11ないし13,15,丙3,57号証,証人Eの証言〕県は,本件建物等の買取価額の評価について,神奈川県県有財産規則の実施細則である「神奈川県県有財産規則の運用について」(丙3号証)に基づき,2者以上の不動産鑑定士等による鑑定評価に付すこととし,株式会社中央不動産鑑定所(以下「中央不動産鑑定所」という。)及び有限会社大多和不動産鑑定事務所(以下「大多和不動産鑑定事務所」という。)を委託業者として,本件建物等の評価を「特定価格」により鑑定評価するよう依頼した。 両社は,平成13年5月7日,県に鑑定評価書を提出し,各評価額から売買契約の対象となっていない能舞台等の価格を控除した評価額が,中央不動産鑑定所の鑑定においては11億5893万8000円と,大多和不動産鑑定事務所の鑑定においては11億8368万4000円と,それぞれ評価されたことから,県は,各鑑定結果を平均して得られた11億7131万1000円に消費税相当額を加えた12億2987万6550円をもって購入価格と決定した。 (12) 本件建物等の購入 れ評価されたことから,県は,各鑑定結果を平均して得られた11億7131万1000円に消費税相当額を加えた12億2987万6550円をもって購入価格と決定した。 (12) 本件建物等の購入〔甲2号証の1,甲3号証,甲4号証の14,丙21,57号証,証人Eの証言〕ア県は,平成13年5月,県議会5月臨時会に横浜二十一世紀座から本件建物等を代金12億2987万6550円で購入する旨の財産取得議案を提出し,常任委員会での審議を経た上,同月21日の本会議において,原案どおり可決・承認された。 イ県は,平成13年5月21日,横浜二十一世紀座との間で,本件建物等を代金12億2987万6550円(内消費税及び地方消費税額5856万5550円)で買い取る旨の「財産売買契約」(以下「本件売買契約」という。)を締結し,同月29日,上記代金を支払った(以下,本件売買契約を締結した行為を「本件財務会計行為」という。)。 なお,本件売買契約の締結は県財務規則の定める重要な支出負担行為に該当することから,知事である被告自身がこの支出負担行為について決済を行った。 そして,県は,同年6月1日,横浜二十一世紀座から本件建物等の引渡しを受けた。 ウ本件建物は,平成13年6月8日,「かながわドームシアター」と改称され県の施設としてオープンした。 (13) 住民監査請求〔甲1,3号証〕原告らを含む神奈川県の住民合計194名は,平成13年6月1日付けで県監査委員に対し,本件請求の趣旨と同一の請求を行なうよう同監査委員が県知事に勧告すべきことを求めて監査請求をした。 県監査委員は,原告らに対し,同年7月26日付で,請求を棄却する旨の結果を通知した。 ,本件請求の趣旨と同一の請求を行なうよう同監査委員が県知事に勧告すべきことを求めて監査請求をした。 県監査委員は,原告らに対し,同年7月26日付で,請求を棄却する旨の結果を通知した。 (14) 本件訴訟の提起原告らは,平成13年8月24日,本件訴訟を提起した。 第3 争点及び争点に関する当事者の主張 1 争点本件の主たる争点は,横浜二十一世紀座から本件建物等を代金12億2987万6550円で買い取る旨の本件売買契約を締結するという本件財務会計行為が,公益上の必要性及び価格の適正の観点から,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の規定に反するものとして,違法な財務会計行為というべきであるかどうか,である。 2 原告らの主張本件売買契約の締結は,以下のとおり,もっぱら横浜二十一世紀座の経営破綻を回避するためにされたものであって,県の行政目的を達するための必要性を欠く債務負担行為であり,本件建物等の購入価格も適正なものではないから,本件財務会計行為は,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の規定に反するものとして,違法な財務会計行為というべきである。 (1) 本件建物等を取得する公益上の必要性が乏しいことについてア県には自前の文化施設新設の計画はなかった(ア) 「かながわ新総合計画21」との不整合性「かながわ新総合計画21」は,「県政運営の総合的な指針」として平成9年1月に策定され(以下「当初計画」という。)たが,その後,「計画を取り巻く社会的経済状況の激しい変化に対応するため」の見直しが行われ,平成12年3月に改定された(以下「改定計画」という。)。 ところで,当初計画及び改定計画のいずれ ,「計画を取り巻く社会的経済状況の激しい変化に対応するため」の見直しが行われ,平成12年3月に改定された(以下「改定計画」という。)。 ところで,当初計画及び改定計画のいずれにおいても ,近代美術館新館建設以外の文化芸術施設の新設は含まれていない。また,県の「芸術・文化と生涯スポーツの活動のための環境づくり」の予算規模は,平成13年度の予算額1090万円,累計予算額8400万円にすぎない。 このように,本件建物等の購入は,「かながわ新総合計画21」の計画内容と不整合であり,予算規模との関係でも突出したものとなっている。 (イ) 多目的ホールは不足していない県は,本件建物をシアター(劇場)ではなく,多目的ホールと位置づけている。しかし,神奈川県内においては多目的ホールは不足していない。 ところで,県は,本件建物を多目的ホールと位置づけつつ,本件建物の有用性を主張する際には,「伝統芸能をはじめとした芸術文化の振興」に役立つなどというのであるが,本件建物は,他の文化施設・多目的ホールと比べ,特に伝統芸能の公演等に適しているわけではないのである。 イ横浜21世紀座事業の利点は本件建物等の買い取りにはない県は,横浜21世紀事業の利点を主張するが,Aあればこその企画がなくなった後の本件建物は,どこにでもある多目的ホール,しかも,テントであるため,通常の多目的ホールより品質が低いものにすぎない。 上述のとおり,県には,自前の文化施設新設の計画はなかったし,多目的ホールは不足していない。にもかかわらず,県が,多目的ホールを購入することによる利点は全くない。新設するより い。 上述のとおり,県には,自前の文化施設新設の計画はなかったし,多目的ホールは不足していない。にもかかわらず,県が,多目的ホールを購入することによる利点は全くない。新設するより低コストで取得できるのであれば利点といいうるのであろうが,本件では再調達価格で取得しており,価格面での利点すらない。 ウ本件建物の欠陥性(ア) 本件建物は,厚さわずか0.74ミリメートルのビニールシートで鉄骨支柱を覆ったテント式建物であり,遮音性は極めて低い。ところが,本件建物が面している国道γ線は通称δ街道と呼ばれるトラック等の走行が激しい道路である。 清水建設の行った騒音測定の結果によれば,本件建物内で59デシベルであったが,この59デシベルとは,人の普通の話し声や隣の部屋で弾いているピアノの音くらいのうるささである。 各種建物の「用途別内部騒音推奨基準」によれば,「多目的ホール・劇場」では,25~30デシベルとなるように設計すべきであるとされているが,本件建物は,この基準に遠く及ばない。 (イ) 新聞報道によれば,Aが本件事業の芸術監督を辞任した理由としてあげたのは,「劇場ができてから騒音などいろいろな問題が発生し,早期に解決できないとわかった」「(騒音対策は)客が満足できるレベルに達しなかった」ことである。 県が設置した本件建物の活用について専門家から意見を聴取するための「利活用懇談会」の委員においても,本件建物は騒音面での欠陥を抱えているというのが共通認識であり,公演のジャンルを選ばざるを得ない,あるいは公演への利用が無理であるから,稽古場や舞台技術の人材育成事業をやってはどうか,等の提案がされているのである。 いるというのが共通認識であり,公演のジャンルを選ばざるを得ない,あるいは公演への利用が無理であるから,稽古場や舞台技術の人材育成事業をやってはどうか,等の提案がされているのである。 (ウ) 加えて,本件建物は,外からの騒音を遮断しないだけではなく,内部で発生した音が外部に騒音として漏れやすい。本件建物周辺には居住用マンションが点在するため,それらへの影響も無視することはできない。 つまり,本件建物は,外部からの騒音の影響を受けないジャンル(大音量を発生するロックコンサートや打楽器の演奏等)を選べば公演利用が可能であるが,その場合は,近隣マンション等外部への騒音被害を発生させてしまうという欠陥を持っているのである。 (エ) このような欠陥を有していることにより,本件建物の使用料は他の公共施設に比べても低額に押さえざるを得ず,それが毎年多額の赤字を生み出す原因となっているのである。 エ県の主張する「購入の必要性」の不存在(ア) 「希望の年」記念事業の各種イベント等の実施について2001年「希望の年」特別記念事業は,Aが芸術監督を辞任した段階で実施が不可能になっている。それ以外のイベントについても,本件建物を会場として実施することが予定されていたとの証拠はない。 また,「希望の年」記念事業は,市町村あるいは民間団体と協力して行う事業であって,県主体の事業は一部にすぎず,県主体の事業においても多額の事業費を要するものはみあたらないから,そのような予算規模のイベントの実施のために12億3000万円の施設購入を行うのは不合理である。 (イ) ワールドカップ開催関連事業の実施につい 事業費を要するものはみあたらないから,そのような予算規模のイベントの実施のために12億3000万円の施設購入を行うのは不合理である。 (イ) ワールドカップ開催関連事業の実施についてワールドカップ開催関連事業は,本件建物の買取りを検討していた段階では,未だ具体的な事業の内容も決まっていなかったのであるから,他の公共施設を使用することも可能であり,本件建物を取得せざるを得なかったとはいえない。実際に実施された事業も,他の団体の利用を制限するほど大きな問題が生ずるような利用日数ではなかった。 (ウ) 地元の地域経済活性化への期待について平成8年の警友病院跡地利用構想の頃からの経緯が直ちに本件建物の購入の必要性につながるものではない。警友病院跡地利用構想は,民間及び県双方の経済的な問題で断念しており,本件事業のみ断念するわけにいかない理由はない。 また,本件事業による地域経済活性化への地元の期待は,本件建物というハコに対する期待ではなく,Aに対する期待であるから,Aが降板した以上,地域経済活性化効果はきわめて低くなる。地元からの要望書(丙51号証)も,「恒久文化・芸術関連施設」を求めており,県による本件建物(仮設施設)の買取を支持するものではない。 (エ) 伝統芸能等の振興について県は,「新総合計画21に盛り込んだ伝統芸能など芸術文化に身近に触れ合える機会の提供という施策を実現できること」を買取りの必要性としてあげるが,「新総合計画21」との関係では,上記ア(ア)のとおり,本件建物買取は不整合である。また,本件建物は,一般の多目的ホールに比べ,「伝統芸能」に向いた構造・仕様を有しているわけではない。むしろ るが,「新総合計画21」との関係では,上記ア(ア)のとおり,本件建物買取は不整合である。また,本件建物は,一般の多目的ホールに比べ,「伝統芸能」に向いた構造・仕様を有しているわけではない。むしろ騒音の欠陥により,静寂を要する歌舞伎・能・狂言・日本舞踊等の公演には向かない。伝統芸能を広く解して,民俗芸能まで含めるとしても,本件建物で演ずるのに適しているのは,太鼓や,賑やかなところでやる「道行き」(野外でも行われるもの)の系統に限られ,「祈り」の系統のもの,台詞や音楽のあるものは難しいというのが,専門家の見解である。伝統芸能のうちの一部のジャンルにしか適さない本件建物につき,ことさらに,県民の「伝統芸能」へのニーズを強調して,必要性の根拠とすることは正しくない。 (オ) 活動発表・練習の場の提供について練習の場等としての利用は,本件買取りの段階で意図されていたことではない。また,活動発表の場や練習の場であれば,既存の公共施設で十分に対応可能である。本件建物の需要があるのは,使用料が極めて低廉(しかも,使用料免除が大半)ということに尽きる。活動発表の場や練習の場として施設を使用したいが,既存の公共施設では利用料が高く使いにくいというのであれば,巨額を投じて本件建物を取得し多額の維持管理費をかけたうえで会場使用料を免除するよりも,既存の公共施設に利用料の大幅は減免制度を設けるほうがよほど効率的である上,既存の公共施設の文化的活用は,新総合計画にも打ち出された施策である。さらに,練習の場等のための施設であれば,本件建物のように多額の取得費及び施設維持管理費をかけなくとも,設置運営できる。 (カ) 県立文化施設改修時の代替施設としての利用について県立青少年センター等老朽 建物のように多額の取得費及び施設維持管理費をかけなくとも,設置運営できる。 (カ) 県立文化施設改修時の代替施設としての利用について県立青少年センター等老朽化した県立文化施設を改修する際の代替施設としての利用も,本件建物買取段階で意図されていた取得理由ではない。 (キ) 第三者による所有の問題について第三者が本件建物を取得したとしても,県は法的解決を図ることができ,法的解決に要する期間は,数か月程度とみるのが合理的であるから,本件事業以前の本件土地の利用状況や隣接する警友病院跡地あるいはその他の県有地の「塩漬け期間」に照らし,この程度の期間,利活用が阻害されることを回避するために,12億3000万円を投じることは不合理である。 (ク) 本件建物の利用実態について本件建物の利用状況は,①利用目的が「公演」等であっても,入場料を徴収できる公演が極めて少ない,②利用目的が「集会」のものは,主催・共催者が,県,国の機関,特殊法人の催物が多く,これによって利用率の底上げがなされる結果となっている,③利用目的が「練習」利用が多いという特徴があり,既存の多目的ホールの利用で十分対応できる。県が利用内容として挙げる催物は,「日本舞踊の発表会」を除き,すべて県が主催又は共催するものである。また,「日本舞踊の発表会」は,利用申請書によれば「日本舞踊の練習と発表会」であり,稽古場としての利用との兼用である。また,これも含めて発表会型の催物がほとんどで鑑賞型の催物が極めて少ない。これらの利用実態は,「生活時間の実態と芸術文化に関するニーズ調査」(丙第29号証)に現れた県民のニーズを充足するものではない。 (2) 本件建物等買取の目的 賞型の催物が極めて少ない。これらの利用実態は,「生活時間の実態と芸術文化に関するニーズ調査」(丙第29号証)に現れた県民のニーズを充足するものではない。 (2) 本件建物等買取の目的前記(1)で述べたとおり,県のあげる本件建物等の取得の必要性がいずれも買取の理由としては不合理であるのに,なぜ県は本件建物を買い取ったのか。次に述べるような買取に至る経緯に照らせば,その理由は,横浜二十一世紀座を経営破綻から救済するためであることは明らかである。 ア本件事業の経緯(ア) 本件事業は,平成11年8月ころ,県の総務部財産管理課F課長とBが接触を持ったことからスタートしたところ,平成12年4月,Bは「企画書」(甲20号証)を県に提出し,県有地の利用を申し出た。この企画書は,Aの公演実績として,入場者数を水増しした数値を記載して,採算の取れる企画であることを強調したものであった。 (イ) その後,F課長ら県の担当者にα近隣の商工関係者らを加えてこの企画についての検討がされ,平成12年8月の段階で,催事企画運営会社としてのエイチ・アイ・ティー社とは別に,地元で施設整備運営会社を設立するとの事業フレームが固まり,県は,同年9月14日に共同記者会見を開き,本件事業の立ち上げを公表した。 (ウ) ところが,平成12年9月14日段階で2億円(県の主張によれば4億5000万円)であった施設整備費は,同年10月段階では9億円以上に,同年12月段階では10億5000万円,最終的には12億7000万円にまで増大した。 しかし,このように施設整備費が増大していく一方で,その調達方法として予定していた協賛金は思うように集まらず,本件事業の最終段階でも,資本金9500 00万円にまで増大した。 しかし,このように施設整備費が増大していく一方で,その調達方法として予定していた協賛金は思うように集まらず,本件事業の最終段階でも,資本金9500万円,協賛金1300万円にとどまった。仮に,協賛金を事業期間終了(平成14年8月)までの長いスパンで集めようと考えたとしても,10億円を超える施設整備費の支払いを金融機関からの借入によって賄えば,利息だけで年間数千万円の負担を負うことになるから,通常の経営感覚からすれば,たとえAの降板がなくとも,遅からず横浜二十一世紀座が経営破綻することは目に見えている状況にあったのである。 (エ) このようななかで,県は,5億円の補助金の支出と債務負担行為6億1887万円の方針を立て,平成12年度2月の補正予算案に計上したのであるが,これを前提としても,平成12年8月段階の収支計画よりも状況は悪く,収支を合わせるのは極めて困難な状況であった。 (オ) このように,県は,本件事業について,①県民の芸術文化の振興に役立つ,②2001年「希望の年」事業の目玉になりPR効果が大きい,③地域経済の活性化に資する,④県有地の有効活用ができる,⑤民間の事業であり,県の財政負担が少なくてすむ,などというまさにバラ色の展望を描いていたのであるが,実態は,施設整備費が2億円ないし4億5000万円から12億7000万円に膨らむ一方で,協賛金は集まらず,そもそも当初に提示されたAの興行実績が虚偽であり,しかも,本件事業の要であるAないしエイチ・アイ・ティー社に対して本件事業からの離脱を阻止しうる法的権利が設定されていないという,成功のみ投資が極めて希薄な事業となっていたのである。 イ本件建物買取 Aないしエイチ・アイ・ティー社に対して本件事業からの離脱を阻止しうる法的権利が設定されていないという,成功のみ投資が極めて希薄な事業となっていたのである。 イ本件建物買取に至る経緯と購入決定に至る意思決定過程の不透明性(ア) 平成13年1月31日,Aから横浜二十一世紀座代表取締役のDらに対し,芸術監督降板の申入れがあり,同年2月7日,Aによる辞任の記者発表がされた。 そして,県は,Aの降板後わずか1週間程度で,他の選択肢は全く考慮しないまま,本件建物等の購入の方針を決め,横浜二十一世紀座に対し,その旨の申入れをした。 (イ) しかし,仮に,県の事業等のために本件建物を使用する必要性があったとしても,建物を購入するのではなく,利用料を支払って借り受けるという選択肢もあり得たはずである。すなわち,県が本件建物を買い取り,管理運営することに伴う年間コストは4億0200万円と見込まれるから,365日フルに使用するとして,1日当たり110万円となる。これに対し,横浜二十一世紀座がA側から支払を受けることを予定していた使用料は1日80万円であるから,県の使用料を同額と定めたとしても,買い取るよりも借り受けた方が県の支出は少なくて済むのである。 このような借受けといった選択肢をはじめとした他の選択肢を全く考慮しなかったことは極めて不合理であり,不可思議である。 (ウ) 県は,本件建物の利活用について,平成12年5月10日に至って,ようやく文化芸術関係者らからの意見を聴く「利活用懇談会」を開催した。具体的な利用方法の見通しなく,本件建物を購入したことの現れ (ウ) 県は,本件建物の利活用について,平成12年5月10日に至って,ようやく文化芸術関係者らからの意見を聴く「利活用懇談会」を開催した。具体的な利用方法の見通しなく,本件建物を購入したことの現れである。 広く文化芸術関係者らからの意見や要望を聴取し,本件建物の有用性の程度,これとニーズとの関係,費用効率等について十分な検討をした上で購入するかどうかを決定するのが本来の意思決定過程である。本件においては,これらの検討が全くされないまま購入の決定がされているのである。 ウ結論結局,本件建物の買取は,買取による県の受益の観点からではなく,もっぱら,横浜二十一世紀座の経営破綻を避けるためなされたものと考えざるを得ない。そして,横浜二十一世紀座という私企業を救済することに対する公益上の要請がない以上,このような目的による買取は違法である。 (3) 本件建物等買取価格の不当性ア本件建物の不動産鑑定において「特定価格」を用いることの不当性被告及び参加人は,本件建物等は「公益性の高い,多目的に利用されるホールであり,しかも構造などが特殊な建物であるため,一般に取引の対象にならない不動産である」から「特定価格をもって評価することが適当な場合に該当すると主張する。 しかし,不動産鑑定評価基準によれば,「特定価格」とは,不動産の性格により一般的に取引の対象とならない不動産又は依頼目的及び条件により一般的な市場性を考慮することが適当でない不動産の経済価値を適正に表示する価格をいうとされているところ,「公共又は公益の目的に現に供されている建築物等の鑑定評価」がこれに含まれるものとしても,本件はこれに当たらない。 すなわち,まず,被告及 正に表示する価格をいうとされているところ,「公共又は公益の目的に現に供されている建築物等の鑑定評価」がこれに含まれるものとしても,本件はこれに当たらない。 すなわち,まず,被告及び参加人の主張する「公益性の高い多目的ホール」であることと「公共又は公益の目的に現に供されている建築物等」とは,同意義ではない。本件建物は,県が買取りの意思決定を行なった平成12年2月中旬頃において,「公共又は公益の目的に現に供されてい」たわけではない。客観的に見れば,本件建物は,横浜二十一世紀座という私企業が所有・管理・運営し,エイチ・アイ・ティー社という私企業に貸し出して,歌舞伎等の興行を行なっていたにすぎない。 「特定価格」による鑑定評価がなされるべき建築物とは,当該建築物等をその状態で存続させることが必要だと評価される建築物である。本件建物は,購入時,「公共又は公益の目的に現に供されている建築物」ではなく,本件建物を「その状態で存続させることが必要」と評価すべき事情は存しなかったのである。 同様に,「構造などが特殊な建物である」ことと,「一般に取引の対象にならない不動産である」こととは,同意義ではない。本件建物のようなテント式シアターであっても売買の実例は存する。被告及び参加人の主張する「構造などが特殊な建物である」ことは,取引量が少ない,あるいは,事実上買い手がつかないという意味にすぎない。さらに,敷地が県所有であることは,限定価格を用いるべき理由にはなっても,特定価格を用いるべき理由とはならない。 イ本件建物の価格はゼロである特定価格によるべき事情がない以上,本件建物等の鑑定評価は,正常価格(ないし,その修正としての限定価格)によるべきであり,これらを ない。 イ本件建物の価格はゼロである特定価格によるべき事情がない以上,本件建物等の鑑定評価は,正常価格(ないし,その修正としての限定価格)によるべきであり,これらを求める主要な方法は収益還元法であり,取引事例比較法がこれを補完する。 したがって,本件建物等の価格鑑定は,本件建物等を利用することにより通常どの程度の収益が見込まれるか,またこれを維持するために,通常どの程度の経費を要するかを算定した上,その差益を耐用年数に応じて資本還元した場合にどうなるか,地主自身が購入する特殊性を修正要素としてどの程度考慮すべきかを検討する,という判断手続を踏んでなされるべきものである。 本件建物等の収益性が見込めないことについては,地代1億5600万円免除,補助金5億円を前提としても,横浜二十一世紀座が経営を存続させることは無理だと,県及び横浜二十一世紀座が判断したことから明らかである。 収益がおよそ見込めない以上,本件建物の正常価格はゼロである。 3 被告及び参加人の主張(1) 本件財務会計行為の違法性に関する判断基準地方自治法第2条14項は,地方公共団体がその事務を処理するに当たって準拠すべき指針で,地方自治運営の基本原則を規定したものであり,また,地方財政法4条も,予算の執行面における基本原則を定めたもので,同条1項の規定は,地方自治法第2条14項に掲げる「最少経費による最大効果」の原則を,予算執行の立場から簡潔に表現したものであって,いずれも地方公共団体がその事務を処理するに当たって準拠すべき指針を一般的,抽象的に示したものにすぎない。 そして,地方公共団体がどのような財産を購入すべきか,また,その財産を購入する際の対価が 方公共団体がその事務を処理するに当たって準拠すべき指針を一般的,抽象的に示したものにすぎない。 そして,地方公共団体がどのような財産を購入すべきか,また,その財産を購入する際の対価がどうあるべきかについては,地方自治法96条1項8号が,財産の取得について一定の場合に議会の議決を必要とすることを定めているほかは,さらにこれを具体的に規制する法令は存在しないのである。 要するに,地方自治法上,いかなる経費でいかなる施策を実施するかは,普通地方公共団体の長の広範な裁量に委ねられているのであり,具体的な施策の採用は,単に経済的見地からだけではなく,広く社会的,政策的見地から総合的に行うことが認められているのであるから,その判断に著しい不公正若しくは法令違背が伴わない限り,たとえば,必要性(公益性)の乏しい財産を適正価格よりも著しく高額な対価で取得するようなことがない限り,違法と評価されることはないというべきである。 (2) 本件建物等を購入する公益上の必要性について県は,本件建物等を,幅広い県民利用施設として運営し,芸術文化の振興や地域経済の活性化などの公益目的を実現するために購入したものであって,本件建物等の購入は,公益上の必要性に基づくものである。 もともと,県は,本件事業を「希望の年」記念事業に位置づけ,できる限りの協力・支援を行うと表明したのも,本件事業の持つ高い公益性に着目したからであり,施設整備費への補助金等の財政的支援を計画したのも同様の観点からであった。 また,本件建物等の購入に当たっては,県議会においても,公益性の観点から購入の必要性が十分検討され,議会の議決や不動産鑑定評価等,適正な手続を経て購入がされ らであった。 また,本件建物等の購入に当たっては,県議会においても,公益性の観点から購入の必要性が十分検討され,議会の議決や不動産鑑定評価等,適正な手続を経て購入がされたものであり,原告らの主張するような違法性は全くない。 そして,県による購入後,本件建物等は,平成13年6月に「かながわドームシアター」としてオープンしたが,平成13年には「希望の年フェスタ」などの希望の年記念事業が,平成14年には日韓伝統芸能シリーズ「韓国・紅陵端午祭りの主役たち」などのワールドカップ関連事業が行われたほか,芸術文化等の公演や各種大会,文化活動団体の発表や練習の場としても幅広く利用されてきた。オープン以降,本件建物の利用率は年々高まり,平成15年度(平成16年1月末現在)には97%を超え,延べ利用者数も25万人以上にのぼるなど,その利用・活用は県民の間に広く定着しており,このことによっても,本件建物等の購入が公益上の必要性からされたものであることが裏付けられているところである。 なお,本件建物等の購入に至る経緯として,以下のような諸事情を指摘しておく。 ア県は,従前から,その重点施策として,伝統芸能等の振興を構想してきており,本件事業も,それに沿うものであった。 イ本件事業は,平成12年6月から8月にかけてB企画書を踏まえて行った検討ワーキングにおいて,県の「2001年「希望の年」特別記念事業」に位置づけられた。 ウ平成12年9月14日の記者会見以降も,県は,本件事業の実施についての協力,支援を行った(① 県有地の貸付〔甲4号証の4〕,② 本件事業を,県の事業の中でも特に重点的に広報活動を行う「中心事業」と同等に取扱うとともに,広報紙による事業紹介等 本件事業の実施についての協力,支援を行った(① 県有地の貸付〔甲4号証の4〕,② 本件事業を,県の事業の中でも特に重点的に広報活動を行う「中心事業」と同等に取扱うとともに,広報紙による事業紹介等の実施〔丙22,23号証〕,③ 当面の間,支援する会の事務局として,会員募集やこの事業のPRなどの事務を担当〔丙26号証〕,④ 施設整備面でも建築の専門家の立場から,防災上,構造上の安全性,工事資材等の品質,見積金額の妥当性等のチェックなどの技術面でのアドヴァイスを行うとともに,建築確認申請において建築基準法上,求められる必要な措置などに関するアドヴァイスの提供,⑤ 協賛金確保への協力,⑥ 横浜二十一世紀座の設立事務に関与。)。これは,本件事業が,身近で優れた芸術文化に触れる機会を提供するという点で,県の芸術文化の振興に大きく寄与する公益性の高い事業であるとともに,かねてより,県が行おうとしていた伝統芸能等をはじめとする芸術文化の振興という施策を民主導で担ってくれるというものであったからである。もっとも,当初,県は,「できる限りの協力・支援」を表明していたが,財政難の折りもあり,財政的支援までは検討していなかった。 エしかし,その後,長引く景気の低迷等から協賛金が思うように集まらず,民間の取組のみでは本件事業の円滑な実施が難しいのではないかと危惧されるようになり,他方で,施設整備費が増加するに伴い,芸術文化全般の振興のためにも幅広く使うことができる施設となったことから,県では,県独自の事業を本件建物等で展開し,より多くの県民のニーズ(地域の身近な伝統芸能の発表や練習等)に対応することも可能になると判断した上,本件事業の円滑な実施と公益的な利用の拡大を図るには,県の応分の負担が欠かせないと判断し,芸術文化の振興に寄与し,「希望の年 の身近な伝統芸能の発表や練習等)に対応することも可能になると判断した上,本件事業の円滑な実施と公益的な利用の拡大を図るには,県の応分の負担が欠かせないと判断し,芸術文化の振興に寄与し,「希望の年」記念事業の盛り上げに資するという公益性の観点から,県独自の事業展開や施設整備への財政的支援の検討を開始した。その結果,前記第2,2の基礎となる事実(8)のとおり,平成12年度2月補正予算案及び平成13年度当初予算案において,次のような支援策を実施するための予算を計上することとしたのである。 ① 県が,1500万円を出資することにより,横浜二十一世紀座の筆頭株主となって,経営に積極的に参画する。 ② 施設の仕様の変更等により芸術文化の振興,地域経済の活性化といった事業効果が高まることが期待されたことから,事業の持つ高い公益性に鑑み,施設整備費約10億円の約2分の1の5億円を補助することとする。 ③ ①を前提として,横浜二十一世紀座への金融機関による融資を可能にするために,県が,同社の借入金について6億1887万円を限度とする損失補償に係る債務負担行為を設定する。 さらに,県は,ドームシアターで展開する県事業の推進のために,横浜二十一世紀座に職員1名を派遣したのである。 オそして,A降板後は,県は,次のような事情の下における公益上の必要性を総合的に判断して,買い取りを決断したものである。 ① 緒についたばかりの重点プロジェクトである,「希望の年」記念事業の一環として計画してきた各種イベント等を着実に実施する責務があったこと。 ② 本件建物は,翌年に行われるワールドカップ関連事業の実施のための施設として必要なものであったこと。 して計画してきた各種イベント等を着実に実施する責務があったこと。 ② 本件建物は,翌年に行われるワールドカップ関連事業の実施のための施設として必要なものであったこと。 ③ このような状況の中,本件事業に協力してくれていた地元の方々の地域経済活性化への期待を裏切らないためにも,本件建物等を取得した上で,それを活用してこれら事業を行う必要があったこと。 ④ 県は,本件建物等を取得することで,県が従前(総合計画の策定に取り組んだ平成7年6月頃)よりその必要性を認識し,平成9年4月からスタートした新総合計画21に盛り込んだ,伝統芸能など芸術文化に身近に触れ合える機会の提供という施策を実現できること。 ⑤ 文化団体等からのニーズの高い,活動発表・練習の場を県民に提供できること。 ⑥ 更に,近い将来の文化政策の課題である,老朽化した県立文化施設の改修の際の代替施設として活用することが可能であること。 ⑦ 加えて,横浜二十一世紀座の事業整理の過程において本件建物等が第三者に所有されるなどの事態となれば,今後の県有地の利用に大きな支障が生じることも懸念されたこと。 (3) 購入価格の妥当性について本件建物等は,公益性の高い,多目的に利用されるホールであり,しかも構造などが特殊な建物であるため,一般に取引の対象とならない不動産である。 このため,これを鑑定評価する場合には,市場性を前提とした正常価格又は限定価格を求めることはできない。 そして,このような場合は,一般的に取引の対象とならない不動産の経済価値を適正に表示する価格,すなわち「特定価格」をもって評価することが適当な場合に該当することから,県は,特定価 そして,このような場合は,一般的に取引の対象とならない不動産の経済価値を適正に表示する価格,すなわち「特定価格」をもって評価することが適当な場合に該当することから,県は,特定価格をもって鑑定することを依頼し,いずれの不動産鑑定士も,「不動産鑑定評価基準」等に照らして,これを適正なものとした上で,鑑定評価を行っているのである。 第4 当裁判所の判断 1 本件財務会計行為の違法性に関する判断方法について本件訴訟においてその違法性の有無が争点となっている本件財務会計行為は,県知事であった被告がした,県が横浜二十一世紀座から本件建物等を代金12億2987万余円で買い取る旨の本件売買契約の締結という支出負担行為である。 ところで,県は,市町村を包括する広域の地方公共団体として,地方自治法2条2項の事務で,広域にわたるものや,その規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるもの等を処理すべき普通地方公共団体であり,その事務を処理するために必要な経費を支弁するのである(同法2条5項,232条1項)が,同法2条14項は,地方公共団体は,その事務を処理するに当たっては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を上げるようにしなければならないとし,また,地方財政法4条1項は,地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要かつ最小の限度を超えて,これを支出してはならないとして,地方公共団体がその事務を処理するに当たって準拠すべき経費の支出に関する基本的な考え方を示しているところである。 したがって,県は,上記の地方自治法ないし地方財政法の関係規定の趣旨に沿って,適正な経費の支出に努めるべきであるが,もとより,地方公共団体としての県は,その地域における行政を自主的 ある。 したがって,県は,上記の地方自治法ないし地方財政法の関係規定の趣旨に沿って,適正な経費の支出に努めるべきであるが,もとより,地方公共団体としての県は,その地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担っているものであり(地方自治法1条の2第1項),広域的な地方公共団体としての行政需要に適切に対応した各種施策を講じていくべき責務を負うものであるから,具体的にどのような施策をどの程度の経費負担の下に実施していくかについては,県の長として,県の事務を管理し,これを執行する職責を有する知事の,社会的,経済的,政策的,財政的見地等を総合して行う合目的的な裁量判断に委ねられているところである。 そうであるとすれば,これを本件財務会計行為についてみると,県において本件建物等を購入する公益上の必要性がないのにこれを購入した,あるいは,その購入価格が合理的な基礎に欠ける不当に高額なものであるなど,上記のような役割を担う地方公共団体としての県がする財産の取得行為ないしこれに係る経費の支弁として,知事に委ねられた合目的的な裁量判断の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものと認めるべき場合においてはじめて,上記の地方自治法ないし地方財政法の関係規定の趣旨に反するものとして,本件財務会計行為は違法性を帯びるというべきである。 そこで,以下,上記の観点から,本件財務会計行為すなわち本件売買契約締結の違法性の有無について検討することとする。 2 本件建物等の購入に係る公益上の必要性に関わる事実関係についてまず,本件建物等の購入に係る公益上の必要性に関わる事実関係についてみると,前記第2,2の基礎となる事実に加え,証拠〔甲2号証の4,6(1),13,甲4号証の5,10,甲7号証,丙1号証,丙2号証の1,2 本件建物等の購入に係る公益上の必要性に関わる事実関係についてみると,前記第2,2の基礎となる事実に加え,証拠〔甲2号証の4,6(1),13,甲4号証の5,10,甲7号証,丙1号証,丙2号証の1,2,丙18,29,32,37,41,44号証,丙47号証の1,丙57,59,60,65,67,69,70,79号証,証人E,同F,同D,同B,同Cの各証言〕及び弁論の全趣旨によると,次の諸事実を認めことができる。 (1) 県における伝統芸能等の振興施策等ア県においては,平成7年6月ころから,新しい総合計画の策定に取り組み,平成9年1月に「かながわ新総合計画21」を策定したが,この計画中の実行計画の中で,8つの重点政策課題の1つである「いきいき県民ライフの環境づくり」に対応する重点プロジェクト3本のうちの1つとして「芸術・文化創造活動のための環境づくり」を掲げ,その具体的施策として,①芸術・文化創造活動の支援や,②芸術・文化の鑑賞・創造のための施設整備(音楽,演劇・舞踊,美術等の鑑賞・創造のための施設及び,伝統芸能等を振興する施設の整備を進める。),③公共施設等の文化的活用の促進,を掲げた。また,伝統芸能,民族芸能を文化として保存し活発化することも,その内容として盛込まれた。 このような「芸術・文化創造活動のための環境づくり」施策中に「伝統芸能の振興」が掲げられる背景としては,平成7年3月の「生活時間の実態と芸術文化に関するニーズ調査」において,行政に対する要望の大きい芸術文化のジャンルとして伝統芸能(26・8パーセント)が挙げられていたり,同月の「芸術文化に関するニーズ調査」においても,表現行動の不満として練習や創作をする適当な場所,施設がない(12.8パーセント)との意見が多かったことなどがあった。 ーセント)が挙げられていたり,同月の「芸術文化に関するニーズ調査」においても,表現行動の不満として練習や創作をする適当な場所,施設がない(12.8パーセント)との意見が多かったことなどがあった。 イ平成12年3月に改訂された「かながわ新総合計画21」では,重点プロジェクトとして「2001年「希望の年」記念事業」の展開が位置付けられた。この同事業は,「21世紀が「夢」や「希望」に満ちた世紀になる願いを込めて,その最初の年である2001年を「希望の年」と位置づけ,20世紀を振り返り,また,明るく,楽しくその思いが21世紀に永く息づくような記念事業を展開」するというものであった。 (2) 本件事業に対する県の関与の経過等ア前記第2,2の基礎となる事実(2)のとおり,本件事業は,平成12年4月,Bが企画書を県に提出したことが契機となって,県の担当者ら関係者らによる本件事業の実施の可否等の検討が開始されたものであるが,その過程では,本件事業は,①Aの公演が県民に夢と希望を与える「2001年「希望の年」記念事業」に相応しいものであり,全国的にも記念事業の宣伝効果が期待できること,②県民に優れた舞台芸術の鑑賞の機会を提供するもので,伝統芸能が長期的に定着していくことが期待できるなど芸術文化の振興に資すること,③多くの集客が見込まれることから,地域経済の活性化にも資することなど,大きな効果が期待できるものと考えられたことから,8月中旬頃以降,「2001年「希望の年」記念事業」に位置づけられるよう,県の関係部署において検討がされることとなった。 そして,本件事業は,基礎となる事実(3)の共同記者会見までには,「2001年「希望の年」特別記念事業」として位置づけられ,県としても「できる 部署において検討がされることとなった。 そして,本件事業は,基礎となる事実(3)の共同記者会見までには,「2001年「希望の年」特別記念事業」として位置づけられ,県としても「できる限りの協力・支援」を行うことを表明したのであった。 イ基礎となる事実(3)のとおり,県は,平成12年9月,共同記者会見で本件事業の概要について発表するとともに,県議会定例会においても,同月,本件事業について,「2001年の記念事業として,また,サッカーワールドカップ横浜開催への協力と時宜にかなったものであり,国内外の芸術文化を広く世界に向けて発信し,新たな交流の歴史を築くための礎となるとともに,地域の活性化に資することから,県としては本件土地の暫定利用として」提供する,「Aによりわが国の古典芸能を中心とする内外古今の芸術を広く発信することにより,県民の芸術文化に触れる機会を拡充するとともに,地域の活性化に資する。」などと説明した。 ウまた,上記共同記者会見以降,横浜二十一世紀座の設立までの間,エイチ・アイ・ティー社,支援する会及び県の担当職員らにより,事業計画の具体化に向けた施設整備の内容等についての検討が行われた。 県は,この時期,本件事業に対する協力・支援として,基礎となる事実(4)のとおりグッドステイ社に県有地を賃貸したほか,協賛金確保への協力,横浜二十一世紀座の設立事務,支援する会の事務局としての会員募集や事業宣伝事務を行った。また,本件事業が「2001年「希望の年」特別記念事業」として位置づけられたことから,県は,本件事業を重点的に広報活動を行う他の「中心事業」と同等に取り扱い,広報誌による紹介などを行った。さらに,県は,ドーム 事業が「2001年「希望の年」特別記念事業」として位置づけられたことから,県は,本件事業を重点的に広報活動を行う他の「中心事業」と同等に取り扱い,広報誌による紹介などを行った。さらに,県は,ドームシアターの施設整備面についても,防災上,構造上の安全性,工事資材等の品質,見積金額の妥当性等のチェックなどの技術面での助言を行うとともに,建築確認申請において建築基準法上求められる必要な措置等に関する助言などをした。 エ基礎となる事実(5)のとおり,平成12年10月以降の検討過程において,施設整備費が当初予定より著しく増加したが,これは,支援する会やエイチ・アイ・ティー社との間の話し合いの中で,第2期におけるワールドカップ開催記念事業まで想定するのであれば,当初予定された能舞台形式の舞台のみによる公演だけでなく,公益的な利用の観点からも当初から多様な公演内容(歌舞伎,京劇,ダンス,ミュージカル,演劇等)に対応できる通常のステージ形式の舞台を導入することが不可欠であるということとなり,また,事業期間の長期化により,より安全性の高い施設としなければならないとの意見があったことによるものであり,エイチ・アイ・ティー社も,Aの芸術監督としての立場や,催事企画会社としての立場から,能舞台のみでなく,多彩な公演を展開できる舞台を導入することが不可欠であるとして,これに対応できる劇場作りを求めたほか,施設のグレードアップなどを注文,要望していたためであった。県においても,多くの県民の芸術文化へのニーズに応えられる多様な公演が可能となり,来場する県民が芸術文化に触れあえるための安全な施設作りは当然のことと考えていたため,施設整備計画の変更の必要性とこれに伴う費用の増大の必然性は認識していた。 オ他方,当初の計画におい 来場する県民が芸術文化に触れあえるための安全な施設作りは当然のことと考えていたため,施設整備計画の変更の必要性とこれに伴う費用の増大の必然性は認識していた。 オ他方,当初の計画において施設整備費を賄うものとして当てにしていた協賛金の集まりは,期待に反して低調に推移し,平成12年11月下旬ころになると, 協賛金を提供してもらえる可能性が高い企業であっても,提供の時期や金額の確定を次年度以降とする企業が多く,次年度以降の状況をみて協賛の時期や金額を考えたいとする企業も多かった。 基礎となる事実(6)のとおり,平成12年12月8日,本件事業の施設整備運営会社としての横浜二十一世紀座が設立されたが,この時点においても,協賛金は,出資分の9500万円のほか約1300万円,合計しても約1億0800万円にとどまり,およそ10億円に上るものと見込まれるようになった施設整備費の額には遠く及ばないものであった。このようなことから,横浜二十一世紀座は,県に対し,本件土地の貸付料の減免や財政的支援等を要請するに至った。 カ上記のように,民間任せのままでは県において「2001年「希望の年」特別記念事業」として位置づけた本件事業の円滑な実施が危惧されるような状況となってきたことを踏まえて,基礎となる事実(8)のとおり,県は,本件事業の実施について,「できる限りの協力・支援」を行うとしていたものの,財政的支援までは予定していなかったこれまでの方針を変更し,財政的支援を行うための予算措置を講じることとした。これは,本件事業の施設設備費は増加したものの,それに伴ってドームシアターが芸術文化全般の振興のためにも幅広く利用することができる施設となったことから,県独自の企画による伝統芸能を含む芸術文化事業をドームシア 事業の施設設備費は増加したものの,それに伴ってドームシアターが芸術文化全般の振興のためにも幅広く利用することができる施設となったことから,県独自の企画による伝統芸能を含む芸術文化事業をドームシアターで展開し,より多くの県民のニーズに応えることも可能となったとの認識に基づき,本件事業を円滑に実施し,また,県独自の公益的な利用を拡大して,地元や県民の期待に応えるためにも,横浜二十一世紀座に対する県の財政的な支援が欠かせないと判断するに至ったことによるものであった。 このような方針の変更に基づいて県がとろうとした基礎となる事実(8)記載の財政的支援措置は,次のような考え方によるものであった。 (ア) すなわち,横浜二十一世紀座に対する出資金1500万円は,公益性の高い事業を長期にわたり安定して推進するため,横浜二十一世紀座の経営基盤の強化を図り,県が筆頭株主となりうる額を支出することにより,積極的に会社経営に参画し,横浜二十一世紀座と連携して県独自の事業を展開するとともに,本件事業終了後も,本件建物等で県の事業を展開していくことも視野に入れて出資するというもので,平成12年度2月の補正予算案に計上した。 (イ) また,ドームシアターの施設整備費についての補助金5億円は,通年使用に変更したこと,多様な公演に対応するため,コンサート形式のステージを整備することなどにより,芸術文化の振興,地域経済の活性化といった事業効果が高まることが期待されたことから,このようなドームシアターの施設整備の高い公益性にかんがみ,その施設整備費約10億円の2分の1を補助することとしたというものであり,平成12年度2月の補正予算案に計上した。 (ウ) 平成13年度当初予算案に計上した損失補 い公益性にかんがみ,その施設整備費約10億円の2分の1を補助することとしたというものであり,平成12年度2月の補正予算案に計上した。 (ウ) 平成13年度当初予算案に計上した損失補償にかかる債務負担行為6億1887万円の設定は,上記(ア)のように県が横浜二十一世紀座に出資をして筆頭株主として会社経営に積極的に参画することを予定したことから,同社が金融機関から円滑に融資を受けられるようにするため,同社の平成13年4月以降の借入金見込額6億円に利息1887万円を加算した額を限度額として設定することとしたというものである。 (エ) なお,県は,新世紀のスタートにあたり,より多くの県民に,わが国の優れた伝統的な芸術文化や神奈川の地に受け継がれている民族芸能等を鑑賞する機会を提供し,身近なところで触れあえるよう,横浜二十一世紀座と連携して事業を実施するとして,伝統芸能普及事業費1億円を編成した。 キところが,その後,基礎となる事実(9),(10)のとおり,平成13年2月9日,突然,Aが本件事業の芸術監督を辞任する意向を表明したことから,本件事業の継続が著しく困難となる事態に陥ったが,県は,同月中旬には,本件建物等を購入するという方向でこの事態に対処する方針を決め,本件建物等を買い取りたい旨を横浜二十一世紀座に申し入れた。 また,本件建物等を購入しようとするに当たり,県知事であった被告は,平成13年2月23日の県議会2月定例会において,本件建物の購入の意義・目的等に関して,この施設での舞台芸術,演劇等の公演を通じて,県民の多くの方々に優れた芸術文化を味わってもらうということに加えて,日ごろ県民の接する機会が少ない郷土歌舞伎等の民俗芸能の公演の場としても考えたい,また,県民の文化活動の発 演劇等の公演を通じて,県民の多くの方々に優れた芸術文化を味わってもらうということに加えて,日ごろ県民の接する機会が少ない郷土歌舞伎等の民俗芸能の公演の場としても考えたい,また,県民の文化活動の発表の場,演劇や舞踊などの発表の場,練習の場として利用することも考えられること,青少年の芸術文化活動をより活発にすることも考える必要があるのではないか,との趣旨の説明をした。 さらに,県は,従前より,本件建物等の設備工事見積額の妥当性のチェックなどを行っていたことから,再度,各業者から提出されている設計図書を検討し,横浜二十一世紀座から提出された契約工事費をチェックした上で,買取代金額を12億7000万円と見積り,基礎となる事実(10)のとおり,これを本件建物等の購入費として,変更した平成13年度当初予算案中に計上した。 上記県議会2月定例会における平成13年度予算案の審議は,この本件建物等の購入費12億7000万円を巡る問題を中心として審議が行われ,同年3月,県議会本会議において,上記予算案が賛成多数により可決,成立し,上記定例会は同月23日閉会した。 クその後,県は,基礎となる事実(11),(12)のとおり,本件建物等についての不動産鑑定評価を踏まえて,平成13年5月の県議会5月臨時会に横浜二十一世紀座から本件建物等を代金12億2987万6550円で購入する旨の財産取得議案を提出し,議会の可決,承認を経た上,平成13年5月21日,被告は,県を代表して本件売買契約締結したところである。 (3) 本件建物の利用状況等基礎となる事実(12)ウのとおり,本件建物は,平成13年6月8日,「かながわドームシアター」と改称して,県の施設としてオープンしたが,平成13年には「希望の年フェス 建物の利用状況等基礎となる事実(12)ウのとおり,本件建物は,平成13年6月8日,「かながわドームシアター」と改称して,県の施設としてオープンしたが,平成13年には「希望の年フェスタ」等の「希望の年」記念事業の実施に,また,平成14年には日韓伝統芸能シリーズ「韓国・江陵端午祭の主役たち」等のワールドカップ関連事業の実施に利用されたほか,芸術文化関連の各種公演や各種大会,文化活動団体の活動の成果を発表する場や練習の場として利用されてきた。また,その利用率も,県立県民ホール大ホールや県立音楽堂等他の県立の施設と同様の高い水準のものとなっている。 3 本件建物等の購入に係る公益上の必要性に関する判断(1) このように,県においては,本件事業を,平成12年3月改訂の「かながわ新総合計画21」において重点プロジェクトとして掲げた「2001年「希望の年」記念事業」の展開と関連させて,この記念事業のうちの「特別記念事業」として位置づけ,県知事である被告自らが,平成12年9月14日の共同記者会見において,県として「できる限りの協力・支援」を行う旨を表明し,県の担当部局となった総務部財産管理課を中心としてその事業の実現に向け,財政的支援以外の各種の協力,支援活動を行ってきたところ,平成12年12月29日から翌平成13年1月7日までのこけら落とし公演が無事終了して間もない段階で,かつ,県が,それまでの本件事業の実施を巡る諸情勢の変化を踏まえて,従前からの方針を変更し,横浜二十一世紀座に対する財政的な支援を行う方向に踏み込んで行った平成12年度2月補正予算案の県議会における審議が行われる段階の平成13年2月,Aの突然の芸術監督辞任により,本件事業の継続が著しく困難な状況となる事態に陥ったことを受けて,県に に踏み込んで行った平成12年度2月補正予算案の県議会における審議が行われる段階の平成13年2月,Aの突然の芸術監督辞任により,本件事業の継続が著しく困難な状況となる事態に陥ったことを受けて,県において,本件建物等を購入し,本件建物を会場として,2001年「希望の年」記念事業に係る各種のイベントや,2002年ワールドカップ関連事業に係る各種のイベントを実施ししていこうと考え,また,本件建物を県民の芸術・文化関連の活動の成果を発表する場,あるいはその練習の場等として活用していこうと考えたというのであって,前記基礎となる事実及び上記2(1)の県における伝統芸能の振興施策等,同(2)の本件事業に対する県の関与の経過等,同(3)の本件建物の利用状況等に関する認定事実を総合して考察すれば,客観的にみて,本件建物等の購入に係る公益上の必要性が存在したことは,これを否定することができないものというべきである。 (2) この点に関連して,原告らは,本件建物等を購入する公益上の必要性が乏しいのにもかかわらず,県が,借受け等の他の選択肢を考慮しないまま,本件建物等を買い取ることとしたのは,買取りにより県が利益を享受するためではなく,もっぱら横浜二十一世紀座という私企業を経営破綻から救済するためであると考えざるを得ず,このような公益上の要請のない目的による財産取得としての本件売買契約の締結は違法である旨を主張する。 アこれに対し,被告及び参加人は,前記第3,3(2)のとおり,県は,本件建物等を幅広い県民施設として運営し,芸術文化の振興や地域経済の活性化などの公益目的を実現するために購入したものであるとし,具体的には,同オの①ないし⑦のような事情の下における本件建物等の購入に係る公益上の必要性を総合的に判断した旨を主張するところである。 活性化などの公益目的を実現するために購入したものであるとし,具体的には,同オの①ないし⑦のような事情の下における本件建物等の購入に係る公益上の必要性を総合的に判断した旨を主張するところである。 しかし,上記の被告及び参加人が主張するような「幅広い県民施設として運営し,芸術文化の振興や地域経済の活性化などの公益目的を実現する」との観点のみからは,上記2(1)の県における伝統芸能等の振興施策等に関する認定事実に照らしても,Aの本件事業の芸術監督辞任という事態が生じたことを受けて県がとるべき対応策として,本件建物等を購入すべき公益上の必要性があることがそれほど自明なものであったものとは思われない。 すなわち,原告らも指摘するように,被告及び参加人が主張する上記①の点については,2001年「希望の年」特別記念事業としての本件事業自体は,Aが芸術監督を辞任した段階で,その継続が事実上不可能となったのであるし,他の記念事業関連のイベントについて,ドームシアターを会場として実施することを予定していたとの立証はなく,②の点についても,Aが芸術監督を辞任した平成13年2月の段階では,ワールドカップ関連事業の具体的な内容は未だ決まっていなかったのであり,他の公共施設ではなく,ドームシアターを使用する必要性があったとの立証はない。また,③ないし⑥の点についても,本件建物等の購入という施策についての一応の説明ないし理由づけとなるというにとどまるというべきであり,①ないし⑥の点を通じて,それらの目的を達成するためには,本件建物等の「借受け」ではなくて,「購入」という方策をとる必要性があったこと,あるいは,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の規定の趣旨からして,「借受け」ではなく「購入」という方策をとる方が財政的観点から 借受け」ではなくて,「購入」という方策をとる必要性があったこと,あるいは,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の規定の趣旨からして,「借受け」ではなく「購入」という方策をとる方が財政的観点からみて合理的であったということは,上記2(1)ないし(3)の認定事実より明らかである,とまではいえないのである。そして,⑦の点は,一応,購入の必要性ないし合理性を支持する事情ということができるが,現実の問題としては,本件建物等の敷地は県有地なのであるから,横浜二十一世紀座と県との関係も考慮すれば,本件建物等を第三者が所有しようとするような事態が生じる蓋然性は低いものと思われるし,具体的にそのような事態が生じることが危惧される状況になれば,その段階で,県としての適切な対応をとることが可能であると思われるし,仮に,第三者が本件建物等を所有する事態に至ったとしても,適切に法的手段を用いての解決を図れば足りるともいえるのであるから,⑦の点も,本件建物等の購入の公益上の必要性を基礎づける事情としてそれほど重視することはできないといわなければならないのである。 イところが,県は,上記2(2)キのように,平成13年2月9日にAが本件事業の芸術監督を辞任するとの意向を表明した後,わずか1週間程度しか経過していない2月中旬までには,本件建物等を購入するという方向で,この突然の事態に対処するとの方針を決め,本件建物等を買い取りたい旨を横浜二十一世紀座に申し入れたのであるが,県が,このように本件建物等を購入して事態に対処するとの方針についての意思決定をする過程において,県としてどのような対応をとるべきかに関し,本件建物等の購入以外の,他の選択肢を検討したのかどうか,検討したとして,それ(ら)はどのような選択肢であって,それ(ら)についてどのような内容の おいて,県としてどのような対応をとるべきかに関し,本件建物等の購入以外の,他の選択肢を検討したのかどうか,検討したとして,それ(ら)はどのような選択肢であって,それ(ら)についてどのような内容の検討を,どのような観点から行ったのか等については,本件訴訟の審理においても,被告あるいは参加人からの分かりやすい説明はされなかったところであり,また,当時,県の総務部次長として本件事業の実施や本件建物等の購入の意思決定過程に参画したEの証言によっても,県が,本件建物等の購入の意思を決定する過程において,他の選択肢を具体的に検討した形跡は窺われないところである。 ウしかも,県が本件建物等の購入を意思決定する過程では,常識的には,Aの芸術監督辞任により,もともと「Aありき」でスタートした,Aが芸術監督となって公演を企画し,また,自身の公演も行うことを前提としていた本件事業が事実上頓挫してしまったことにより,当て込んでいたエイチ・アイ・ティー社からの賃料収入が見込めなくなり,Aの存在を前提としていた協賛金の出捐も見込めなくなった状況の下で,10億円を超える施設整備費等の負担を抱え込んだままドームシアターの運営を余儀なくされることとなった横浜二十一世紀座の側から,その経営破綻を回避するために,県に対して,救済策として本件建物等の買取り方を要請し,これを受けて,県において,本件建物等の取得についての公益上の必要性の有無等を検討し,(その購入価格についても横浜二十一世紀座と交渉するなどした上,)購入の是非についての意思決定を行うというのが一般的な経過であると思われるのにかかわらず,これについて,横浜二十一世紀座の代表取締役であったDは,「事業的には整理する方向も考えざるを得ない状況にあった中,2月の中旬ころに,県からドームシアターを公的活用の あると思われるのにかかわらず,これについて,横浜二十一世紀座の代表取締役であったDは,「事業的には整理する方向も考えざるを得ない状況にあった中,2月の中旬ころに,県からドームシアターを公的活用のため購入したいとの話があった」旨を陳述し〔丙69号証〕,横浜二十一世紀座の側から,県に対し,ドームシアターを買い取ってもらいたい旨の要請をしたことを否定しているところである〔証人Dの証言〕。また,E県総務部次長も,本件建物等の買取りの意思決定は,横浜二十一世紀座の要請を受けてのものではなく,県としての独自の判断に基づくものであった旨の証言をするところである。 エこのように,被告及び参加人が主張・立証しようとする本件建物等の購入についての県の意思決定過程や,その公益上の必要性に関する判断内容は,いささか不透明かつ不自然な印象を払拭することができないものといわざるを得ないものである。 しかし,そのような不自然さは,県がした本件建物等の購入についての意思決定の過程やその公益上の必要性に関する判断の中に,横浜二十一世紀座の経営破綻の回避という点についての考慮も含まれていたものとすれば,氷解するものと思われる。 すなわち,前記基礎となる事実の(2)ないし(8)及び上記2(2)のアないしカに認定・摘示したような本件事業の企画,実施における県の立場,本件事業の実施に向けた準備等の経過,事業の実施における県と横浜二十一世紀座との関係,同社に対する財政的支援の経緯等々の諸事情を考えると,たとえば,県知事である被告において,Aの本件事業の芸術監督辞任という事態が生じたことにより,横浜二十一世紀座が,早晩,ドームシアターを運営する企業としての経営に行き詰まることが容易に予測されるようになった状況の下では,この段階で, ,Aの本件事業の芸術監督辞任という事態が生じたことにより,横浜二十一世紀座が,早晩,ドームシアターを運営する企業としての経営に行き詰まることが容易に予測されるようになった状況の下では,この段階で,県が早期にドームシアターを買い取り,これを「希望の年」記念事業関連のイベントの会場として利用し,また,ワールドカップ関連事業の実施のためにも利用し,さらに,これを芸術文化の振興等に幅広く活用するなど,県民の利用に供するための公の施設として運営していくことは,これまで県がとってきた芸術文化関連の行政施策や本件事業との連続性ないし整合性も一応説明することができ,公益目的の実現に資するということがいえるし,また,横浜二十一世紀座の経営破綻の回避にも繋がる方策であって,本件事業の頓挫を巡る行政上の混乱を最小限にとどめることになるなど,本件建物等の「購入」が,県としてとり得る他の選択肢を検討する余地がないくらいに適切な対処方策である,と判断したとしても,それは,県の広範な行政事務を管理・執行する立場にある者の判断としては,むしろ自然なことと思われるからである(なお,この場合,横浜二十一世紀座の経営破綻の回避を前提とする限りは,県の事業の実施のためのドームシアターの「借受け」という選択肢はほとんどなきに等しいものであることは明らかである。県が支払う適正な水準の使用料のみで,横浜二十一世紀座の経営を支えることは不可能であるし,また,前記基礎となる事実(8)及び上記2(2)カのように,県は,平成12年度2月補正予算案の策定段階で,それまでの本件事業の実施を巡る諸情勢の変化を踏まえて,従前からの方針を変更し,横浜二十一世紀座に対する財政的な支援を行う方向に踏み込んで行ったところであり,例えば,ドームシアターの施設整備費10億円の2分の1である5億円を補助金と の変化を踏まえて,従前からの方針を変更し,横浜二十一世紀座に対する財政的な支援を行う方向に踏み込んで行ったところであり,例えば,ドームシアターの施設整備費10億円の2分の1である5億円を補助金として横浜二十一世紀座に交付するとの内容の補正予算案を策定し,議会に提出したところであるが,それは,あくまで芸術監督Aの下で,本件事業が円滑に実施されていくことを前提としたものであって,Aの芸術監督辞任により経営が行き詰まることが容易に予測されるようになった企業としての横浜二十一世紀座に対し,巨額の補助金を交付してその経営を支えようとすることは,地方自治法232条の2の規定の趣旨に照らして,到底容認され得ないと思われるからである。)。 オこのようなところからすれば,被告及び参加人の明確な主張はないものの,県において,平成13年2月中旬ころの時点で,本件建物等を横浜二十一世紀座から購入するとの意思決定を行った過程やその公益上の必要性に関する判断の中に,横浜二十一世紀座の経営破綻を回避するという点についての考慮も含まれていたものと推認するほかはないというべきである。 カしかし,このように,県がした本件建物等を横浜二十一世紀座から購入するとの意思決定の過程やその公益上の必要性に関する判断の中に,私企業である横浜二十一世紀座の経営破綻を回避するという点についての考慮も含まれていたとしても,そのことが,直ちに,客観的にみて,本件建物等の取得について公益上の必要性があったといえるかどうか,の判断を左右するということにはならないのである。 すなわち,本件においては,上記(1)に取りまとめて説示した,本件事業の企画,実施における県の立場,本件事業の実施に向けた準備等の経過,事業の実施における県と横浜二十一世紀座との協 すなわち,本件においては,上記(1)に取りまとめて説示した,本件事業の企画,実施における県の立場,本件事業の実施に向けた準備等の経過,事業の実施における県と横浜二十一世紀座との協同関係,同社に対する財政的支援の経緯等々の諸事情が存在するのであり,本件事業における施設整備運営会社としての横浜二十一世紀座自体が,地元企業11社らの出資により設立された株式会社であり(代表取締役を務めたDは,株式会社みなとみらい21常務取締役,横浜高速鉄道株式会社取締役,平塚ステーションビル株式会社代表取締役社長を務めた県にゆかりの深い人物である。),本件事業については,支援する会(会長は,みなとみらい21の所在する横浜国際平和会議場会長を務めていたG。)ともども,地元の商工団体の関係者を中心として,さらには,歌舞伎界の人気女形であるAという芸術監督を看板とした県の「2001年「希望の年」特別記念事業」として位置づけられた芸術文化活動の支援という県の行政施策の実施のために,県の有力財界関係者をも巻き込んだかたちで,県が,事業の実施に積極的に関与し,各種の協力・支援を行ってきたという実態が存在していたところである。 また,本件においては,本件建物等の購入についての公益上の必要性の存否に関して,前記基礎となる事実(10),(12)及び上記2(2)キ,クのとおり,平成13年の県議会2月定例会における平成13年度予算案の審議及び県議会5月臨時会における財産取得議案の審議の過程を通じて,県議会においても討論,検討が行われたところであり,県議会2月定例会における平成13年度予算案の審議においては,本件建物等の購入策が横浜二十一世紀座の経営破綻の回避策としての一面も有し,そのことが県に過大な財政上の負担を負わせることにならないのか,という 2月定例会における平成13年度予算案の審議においては,本件建物等の購入策が横浜二十一世紀座の経営破綻の回避策としての一面も有し,そのことが県に過大な財政上の負担を負わせることにならないのか,というような問題意識の下での審議が行われたことが窺われるところである〔甲2号証の6,甲23号証〕。 そして,このような審議を通じて,県議会においては,本件建物等の購入費用が計上された平成13年度予算案及び本件建物等を代金12億2987万6550円購入する旨の財産取得議案をいずれも可決・承認し,本件建物等の購入に係る公益上の必要性についての議会としての認識を表明したところである。 キそして,本件訴訟における原告ら,被告及び参加人の主張・立証を総合しても,被告が本件建物等を購入することとした判断が,原告らが主張するように,もっぱら横浜二十一世紀座という私企業を経営破綻から救済することを目的としたものであったものと推認するに足りる諸事情を認めることはできないところである(なお,この関連で,本件建物等の購入についての県の意思決定過程がやや不自然な印象を与えるものとして上記イ及びウに指摘した事情である,本件建物等の購入の意思決定が,極めて短期間の内に,県独自の判断で行われたとの点については,前記基礎となる事実(8)ないし(10)及び上記(2)2カ,キのように,Aの芸術監督辞任という事態が生じたことにより,県において,既に県議会に提出していた平成12年度2月補正予算案及び平成13年度予算案についての緊急な変更を迫られたという事情があったものと認めら,E県総務部長も,そのような事情から,短期間の内に,県独自の判断で本件建物等の購入の意思決定をするに至ったとの趣旨の証言をするところであって,このことについては一応の説明がされているとい のと認めら,E県総務部長も,そのような事情から,短期間の内に,県独自の判断で本件建物等の購入の意思決定をするに至ったとの趣旨の証言をするところであって,このことについては一応の説明がされているというべきであり,上記の点をもって,本件建物等の購入がもっぱら横浜二十一世紀座という私企業を経営破綻から救済することを目的としたものであったとの原告らの推測を基礎づける事情であると評価することはできない。)。 (3) 上記のところからすれば,県知事である被告においては,Aの芸術監督辞任により本件事業の継続が著しく困難となった状況を踏まえた対応策として,県が,本件建物等を購入し,本件建物を会場として,2001年「希望の年」記念事業に係る各種のイベントや,2002年ワールドカップ関連事業に係る各種のイベントを実施し,かつ,本件建物を県民の芸術・文化関連の活動の成果を発表する場,あるいはその練習の場等として活用していこうと考え,また,本件建物等の購入は横浜二十一世紀座の経営破綻の回避にも繋がり,これにより,本件事業の実施に向けて県に協力してきた地元や県の財界関係者らの負担等を軽減して,本件事業の頓挫を巡る行政上の混乱を最小限にとどめる方策ともなると考え,本件建物等の購入の公益上の必要性があると判断し,本件売買契約を締結したものと推認されるところであるが,既に認定・説示してきた本件における事実経過や諸事情からすれば,本件売買契約の締結が,広域的な地方公共団体としての行政需要に適切に対応した各種施策を講じていくべき責務を負う県の長として,県の事務を管理し,これを執行する職責を有する知事がした,社会的,経済的,政策的,財政的見地等を総合して行う合目的的な裁量判断として,知事に委ねられた裁量の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるということ れを執行する職責を有する知事がした,社会的,経済的,政策的,財政的見地等を総合して行う合目的的な裁量判断として,知事に委ねられた裁量の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるということはできないものといわざるを得ない。 原告らは,そのほか,県において本件建物等を取得する公益上の必要性が乏しいとの点に関し,県には自前の文化施設新設の計画はなかったこと(原告らの主張(1)ア),本件建物の欠陥性(原告らの主張(1)ウ)等についてるる主張し,その指摘の中にはそれ自体として傾聴に値するものもあるが,それらによっても,県知事である被告が,県において本件建物等を購入する公益上の必要性があるものと判断し,県を代表して本件売買契約を締結したことについての違法性に関する上記(4)の判断を左右することはできない。 4 本件建物等の購入価格について(1) 本件建物等の購入価格が適正なものであったかどうかに関わる事実関係についてみると,前記基礎となる事実に加え,証拠〔丙5,55,56,76,77〕及び弁論の全趣旨によると,次の各事実が認められる。 ア前記基礎となる事実(11)のとおり,県は,本件建物等の購入に先立ち,2者の不動産鑑定会社に本件建物等の評価を依頼したが,その際,「不動産の性格により一般的に取引の対象とならない不動産又は依頼目的及び条件により一般的な市場性を考慮することが適当でない不動産の経済価値を適正に表示する価格」である「特定価格」により評価するよう依頼し,上記2者も,この特定価格により評価した。 イこのうち,中央不動産鑑定所(担当不動産鑑定士H)は,特定価格を求めた理由として,特定価格は一般的な市場性を有しない場合の価格であるところ,本件建物は,用途及び構 により評価した。 イこのうち,中央不動産鑑定所(担当不動産鑑定士H)は,特定価格を求めた理由として,特定価格は一般的な市場性を有しない場合の価格であるところ,本件建物は,用途及び構造等の特殊性から,市場性がないと判断した。 すなわち,用途・構造に関して,本件建物は,構造が移設可能な大型の鉄骨組のテントで,間取はロビー・エントランス,客席,ステージのほか,楽屋等からなり,事務所等への転用は不可能であり,用途は劇場に制限されるところ,劇場という用途は一般的ではなく,また,本件建物は,通常は市場取引の対象となりえない特殊な構造の注文建築物で,かつ,公共公益目的で利用されるため「特定価格」を求める対象となる「宗教建築物等の特殊な建築物に相当する特殊な建物」であると認められるとした。 また,特殊な用途制限に関しても,本件建物は,敷地が芸術文化の振興,地域振興等の公益を目的とする事業用の建物敷地として神奈川県が無償で貸し付けており,建物の用途は特殊なものに制限され,当該建物を所有しようとする者は公益目的の事業を行うものに限られるため,一般の業者が参入することはできず,一般的な市場を考慮することは適当でないため,特定価格とならざるを得ないと判断した。 さらに,本件建物のような特殊な建築物の評価として特定価格を求める場合,上記のように一般市場を有しないものであるため,取引事例比較法や収益還元法を適用することは困難であり,再調達のための費用を重視することとなり,一般的には積算価格による場合が多いとし,原価法において再調達原価を求める方法には直接法及び間接法があるが,本件では,本件建物のような用途,構造が特殊な建築の建設事例は収集できないため,間接法は適用できず,一方,価格時点における対 とし,原価法において再調達原価を求める方法には直接法及び間接法があるが,本件では,本件建物のような用途,構造が特殊な建築の建設事例は収集できないため,間接法は適用できず,一方,価格時点における対象建物の再調達原価は見積書等により,的確に把握することが可能であるため,直接的に再調達原価を求める方法が有効と判断し,適正な工事請負価格(積算価格)を判断するものとした。 ウまた,大多和不動産鑑定事務所も,同様に特定価格,原価法を選択して評価した。 エ基礎となる事実(11)のとおり,県は,上記2者の鑑定評価額から,購入の対象としなかった能舞台及びその付属設備を除く評価額を平均し,その価額である11億71317万1000円に消費税相当額を加えた12億2987万6550円を本件建物等の購入価格とすることとした。 (2) 以上の認定事実からすると,本件建物は,構造及び用途等の特殊性から,一般的な市場を考慮することが適切でない不動産であるというべきであるから,その鑑定評価の方法において「特定価格」を求めたことが適正さを欠くということはできないというべきである。そして,この「特定価格」を求めるについて,原価法による積算価格を標準として適正価格を決定した上記鑑定評価の手法が不合理なものということもできない。 原告らは,本件建物についても市場があるから正常価格ないし限定価格により鑑定評価すべきであったと主張するが,上記のとおり,本件建物の特殊性からすると,特定価格によったことは適正というべきであり,原告らの主張を採用することはできない。 なお,前記基礎となる事実(12)のように,県議会においても,本件建物等の代金額を12億2987万6550円とする財産取得議案について,平成13年5月の県議会5月臨 ことはできない。 なお,前記基礎となる事実(12)のように,県議会においても,本件建物等の代金額を12億2987万6550円とする財産取得議案について,平成13年5月の県議会5月臨時会において可決・承認し,本件建物等の購入価格の適正さについての議会としての認識を表明したところである。 (3) 上記のところよりすれば,本件建物等の購入価格が合理的な基礎に欠ける不当に高額なものであったと認めることはできないから,被告において,県知事に委ねられた合目的的な裁量判断の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして,本件売買契約の締結が違法であるということはできない。 5 小括以上によると,被告がした本件財務会計行為が地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の規定の趣旨に反する違法なものということはできないから,その余の点について判断するまでもなく,原告らの本件請求は,いずれも理由がない。 第5 結論そこで,原告らの請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法65条,61条を適用して,主文のとおり判決する。 〔口頭弁論の終結の日:平成16年3月8日〕 横浜地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官川勝隆之 裁判官菊池絵理 裁判官諸岡慎介 裁判官諸岡慎介

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