令和6(わ)568 死体損壊、死体遺棄、殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年11月14日 静岡地方裁判所
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判決文本文5,177 文字)

令和7年11月14日宣告令和6年(わ)第568号、令和7年(わ)第56号判決 主文 被告人を懲役16年に処する。 未決勾留日数のうち210日をその刑に算入する。 理由 【罪となるべき事実】第1 被告人は、令和6年6月23日午前3時20分頃から同日午前4時50分頃までの間に、静岡市a区(以下省略)所在のマンション敷地内において、X(当 時30歳)に対し、殺意をもって、その身体を包丁で複数回突き刺すなどし、よって、その頃、同所において、同人を死因不詳により死亡させて殺害した。 第2 被告人は、A(当時19歳)と共謀の上、⑴令和6年6月23日午前4時50分頃から同日午前8時30分頃までの間に、前記マンション敷地内において、前記Xの死体をブルーシートで包み、同所から運び出した上、同マンション前路 上に駐車中の自動車に積載して静岡市a区(以下省略)B駐車場まで運搬し、⑵同月24日午前3時9分頃から同日午前6時頃までの間に、同所から同区(以下省略)河川敷まで同死体を同車で運搬し、同所において、ブルーシート等にガスバーナーで点火するなどして同死体の一部を焼損させ、同死体を同車に積載して前記駐車場まで運搬し、⑶同月25日午後10時25分頃から同月26日午前6 時頃までの間に、同所から静岡県掛川市(以下省略)の山林まで同死体を同車で運搬し、同所において、充電式のこぎりを使用して同死体の頸部、両上腕部及び両大腿部等を切断し、これらを同車に積載して静岡市a区(以下省略)C駐車場まで運搬し、⑷同月27日午前1時37分頃から同日午前4時頃までの間に、同所から静岡県藤枝市(以下省略)の山林まで同死体を同車で運搬し、同所におい て、スコップで掘った地面の穴に同死体の 車場まで運搬し、⑷同月27日午前1時37分頃から同日午前4時頃までの間に、同所から静岡県藤枝市(以下省略)の山林まで同死体を同車で運搬し、同所におい て、スコップで掘った地面の穴に同死体の胴体部分を投棄して埋めるなどし、も って死体を損壊、遺棄した。 【量刑の理由】 1 事案の概要本件は、被告人が、①本件マンション敷地内において被害者を殺害した上、②その死体を自動車に積載して運搬し、その死体の一部を焼損させ、さらに、その死体 を切断して、山林の土中に胴体部分を埋めるなどしたという殺人、死体損壊、死体遺棄の事案である。 2 犯行態様⑴ 被告人は、被害者の身体を包丁で複数回突き刺して同人を殺害した。被害者は、絶命するまでの間に、被告人に対して謝罪の言葉を述べていたと認められる。 それにもかかわらず、被告人が、なおも被害者に対して包丁を突き刺し、その殺害を遂げた。本件殺人の犯行は執拗であり、強固な殺意に基づくものである。被告人は、犯行当日よりも前からリュックサックの中に包丁を入れて携帯していたと認められるところ、被害者を殺害した後に血を拭くためのタオル等をAに準備させたことなどを踏まえると、事前に被害者を殺害することを計画して包丁を携帯していた とはいえない。しかし、被告人が、結局、被害者に対して突発的に強固な殺意を抱き、携帯していたその包丁を使って被害者の死という深刻な結果を生じさせたことを考えると、被告人が述べるとおり包丁を護身用に携帯していたとしても、本件殺人の犯情を考えるに当たり、被告人に有利に働く事情にはならない。 なお、被告人は、殺人の犯行状況について、①被害者が、本件マンション1階北 側通路にある非常階段を上り始めたかどうかくらいに、被害者の右肩甲骨付近をその背後から包丁で1 く事情にはならない。 なお、被告人は、殺人の犯行状況について、①被害者が、本件マンション1階北 側通路にある非常階段を上り始めたかどうかくらいに、被害者の右肩甲骨付近をその背後から包丁で1回刺したものの、深くは刺さらなかった、②被告人は激怒した被害者に突き飛ばされて同人から殴る蹴るの暴行を受け、その際被告人も被害者の身体を2回ほど刺した、③被告人は、逃げ場のない本件マンション1階北側駐輪場(北側通路の東側に隣接している。)に逃げた被害者を追いかけ、同所でも一、二回 被害者の身体を刺したが、被害者から自転車をぶつけられたため、本件マンション 1階エントランス(北側通路の南側に隣接している。)のオートロックドア付近まで逃げた、④被告人は、追いかけてきた被害者から更に暴行を受けながら、同所でも被害者の身体を何回か刺した、⑤その間、被告人が被害者に謝っていたのであり、被害者が謝罪したことはなかったなどと供述する。しかし、犯行状況に関する被告人の供述には、エントランス内のオートロックドア付近よりも、北側通路に近いエ レベータ前付近に被害者のDNA型と同型の血痕が多数存在し、北側通路にある非常階段の2階部分に至るまで血液が付着していた痕跡が残っているといった犯行現場の客観的な状況に整合しているとはいい難い内容が含まれている。被害者との関係で精神的に極限状態になったとしながら、最初の刺突行為が被害者の身体に深く刺さらない程度の威力だったとする点や、暴行を加えていた被害者が逃げ場のない 北側駐輪場に逃げ、今度は被告人が逃げて被害者が追いかけてきたという点は、犯行状況として不自然である。加えて、Dの証言によれば、被告人は、被害者を殺害してから数日後、A及びDと三人で食事をしている際に、「被害者から謝罪されたが、もうやっ 者が追いかけてきたという点は、犯行状況として不自然である。加えて、Dの証言によれば、被告人は、被害者を殺害してから数日後、A及びDと三人で食事をしている際に、「被害者から謝罪されたが、もうやってしまっていたので遅いと思った」旨の発言をした事実が認められ、被告人の供述は、この事実とも整合しない(Dと被告人の従前の関係に照らして、Dが 自身の関与しない殺害の状況に関してあえて被告人に不利な虚偽の証言をする理由は見当たらない。事件後に被告人が一部犯行に巻き込んだDとAに真実を告げて口裏合わせを頼んだというDの証言内容は自然で、このような話をDが聞き間違えたとも考え難い。Dの証言は信用することができ、被害者が謝罪していた事実を認めることができる。)。さらに、被告人は、公判において、捜査段階でも包丁で刺す際 に被害者から殴る蹴るの暴行を受けていたと話したかどうかは思い出せないなどと曖昧な供述に終始している。被告人が本当に自身の体験としてこの点の供述をしているのか疑わしい。被告人が被害者を殺害しようとする際に同人が抵抗して多少のもみ合いになった可能性は否定できないものの、被害者による殴る蹴るの暴行があったことや被害者が謝罪の言葉を述べなかったことなどに関する被告人の供述は信 用することができない。 ⑵ 被告人は、被害者を殺害した後、犯行を隠蔽してその発覚を遅らせるための罪証隠滅工作の一環として、A及びDの協力を仰いで死体の損壊・遺棄行為に及び、Aらに対して口裏合わせを依頼したり、犯行に使用した道具等を処分したり、死体を積載、運搬した自動車を清掃に出したりしたほか、犯行当日から3か月余りの間にわたって被害者のふりをして同人の母らや自身へのメッセージを作成、送信する などして、殺人の犯行後、長期にわたり、その罪証隠 、運搬した自動車を清掃に出したりしたほか、犯行当日から3か月余りの間にわたって被害者のふりをして同人の母らや自身へのメッセージを作成、送信する などして、殺人の犯行後、長期にわたり、その罪証隠滅工作に及んでいる(被告人が口裏合わせの依頼をしたことはAもDも証言し、その他の罪証隠滅工作を被告人が主導していることとも整合するから、この証言は信用することができる。)。中でも死体の損壊・遺棄は、場当たり的に行われた側面があることは否めないものの、無関係のA及びDを巻き込み、必要な道具を都度準備するなどして、被告人主導に より行われたものであって、被告人自身が、死体の一部を燃やし、その胴体部分から四肢等を切断し、山林の土中にその胴体部分を埋めて四肢等は投げ捨てるといった、死者の尊厳を無視した冷酷で残忍極まりない行為に及んだ。被告人がそのような行為に及んだのは、犯行を隠蔽しようという自己保身しか考えない身勝手な動機によるものであって、その点にも酌量の余地はない。 ⑶ 以上によれば、被告人は、突発的だが強固な殺意に基づく執拗な刺突行為によって被害者を殺害した後、自己保身のために種々の罪証隠滅工作に及び、そのためには残忍な方法による死体の損壊・遺棄もいとわなかったものであって、この点は、本件を同種事案の中でも重い方の部類に位置付けさせる事情である。 3 犯行に至る経緯 もっとも、被告人がこのような犯行に及んだことには、相応の経緯がある。すなわち、被告人と被害者は、もともと小中学校の同級生であったが、被害者の発案で令和元年頃及び令和3年頃に合計2社の会社を設立して二人が共同で飲食店を経営するようになって以降、次第に二人の間に明確な上下関係が生まれ、被告人は、長きにわたり、仕事の関係で、被害者から、度々、暴力を伴う強い叱責を 和3年頃に合計2社の会社を設立して二人が共同で飲食店を経営するようになって以降、次第に二人の間に明確な上下関係が生まれ、被告人は、長きにわたり、仕事の関係で、被害者から、度々、暴力を伴う強い叱責を受け、これ に耐え忍んできた。そのような中、被害者は、被告人が自社従業員である元交際相 手を妊娠、中絶させたことを被害者に報告しなかったために激怒し、殺害される数日前から、被告人に対して、その肋骨を骨折させるほどの暴行を加えたり、バリカンを購入させて衆人環視のもと無理やり坊主にさせたりした。そのような被害者の振る舞いは犯罪行為そのものである。そうであるからといって、当然ながら、被害者に、殺害されなければならないような理由があるとはいえない。被告人が被害者 の殺害を決意したことは強く非難されなければならない。しかし、被害者による上記のような犯罪行為を含む被告人に対する振る舞いが、被害者に対する恨みや恐怖といった被告人の感情を形成し、被告人に、被害者の殺害を決意させたと評価することができる。被告人がそのような感情を抱くこと自体は、被告人にも非があるとはいえ、無理からぬことであったと認められる。被害者の長年にわたる振る舞いが なければ、本件のような悲惨な事態が生じることはなかった可能性も否定できず、被害者側にも本件犯行を招いた一定の落ち度があったといわなければならない。これらの本件各犯行に至る経緯については、被告人のために酌むべき事情として量刑上考慮するのが相当である。 4 一般情状 最後に一般情状を考慮する。被告人の公判における供述内容からは、被告人が、自己保身のために真実を語っておらず、依然として物事を隠蔽しようとする姿勢が残っていることがみて取れ、被告人が真に反省しているとは認め難い。一方で、被告人は、犯 判における供述内容からは、被告人が、自己保身のために真実を語っておらず、依然として物事を隠蔽しようとする姿勢が残っていることがみて取れ、被告人が真に反省しているとは認め難い。一方で、被告人は、犯罪事実自体は認めている。被告人が、罪の償い方を考え、反省の気持ちを深め、物事を隠すような身勝手な考え方を改めることが、その更生のためには不 可欠であるが、支援してくれる家族の存在はその一助になるものである。そして、被害者遺族は、見つかっていない被害者の身体を返してほしいという親として当然の感情を語り、厳しい処罰感情を抱く一方、被害者の母親は、被告人が反省できる時間を与える裁きを望む旨を述べている。被告人は、このような被害者遺族の処罰感情を重く受け止め、時間をかけて内省を深める必要がある。 5 結論 以上の犯情及び一般情状を考慮し、同種事案(処断罪:殺人、共犯関係等:単独犯、凶器等:あり・刃物類、処断罪と同一又は同種の罪の件数:1件、被告人から見た被害者の立場:知人・友人・勤務先関係、被害者の落ち度:あり)の量刑傾向をも踏まえると、被告人に対しては、主文の刑を科するのが相当であると判断した。 よって、主文のとおり判決する。 (検察官の求刑懲役18年、弁護人の科刑意見懲役8年)令和7年11月17日静岡地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官丹羽芳徳 裁判官一社紀行 裁判官河口嵩朋

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