1 5主 文1 控訴人の控訴に基づき,原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2 前項の部分に係る被控訴人の請求を棄却する。 3 被控訴人の附帯控訴を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 10事実及び理由第1 控訴及び附帯控訴の趣旨1 控訴の趣旨主文第1項,第2項及び第4項と同旨2 附帯控訴の趣旨15 原判決を次のとおり変更する。 控訴人は,被控訴人に対し,122万8106円及びこれに対する平成30年4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は,第1,2審とも控訴人の負担とする。 仮執行宣言20第2 事案の概要(以下,別途定めるほかは,原判決の略称をそのまま用いる。)1 本件は,被控訴人が,控訴人の経営するスーパーマーケット内で買物をした際,同店舗内レジ前通路で転倒して負傷したこと(本件事故)について,控訴人に対し,安全配慮義務違反の不法行為若しくは債務不履行による損害賠償請25求権又は土地工作物責任による損害賠償請求権に基づき,141万6389円2 及びこれに対する本件事故日である平成30年4月12日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は,被控訴人の請求のうち,控訴人に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,57万8512円及びこれに対する上記遅延損害金の支払を求5める限度で認容し,その余を棄却したところ,控訴人が同請求を認容した部分を不服として控訴をし,被控訴人が同請求を棄却した部分を不服として附帯控訴を 2円及びこれに対する上記遅延損害金の支払を求5める限度で認容し,その余を棄却したところ,控訴人が同請求を認容した部分を不服として控訴をし,被控訴人が同請求を棄却した部分を不服として附帯控訴をした(なお,被控訴人は,当審において,請求額のうち元金部分を122万8106円に減縮した。)。 2 前提事実,争点及び当事者の主張は,次のとおり補正するほかは,原判決「事10実及び理由」の「第2 事案の概要」の1及び2(原判決2頁7行目から7頁5行目まで)のとおりであるから,これを引用する。 原判決5頁6行目の「これにより,」から同頁7行目末尾までを「これにより,以下のとおり合計118万1080円の損害を被ったものであり,同額から既払金6万4620円を控除した上で,その1割に相当する弁護士費15用11万1646円を加算すると,控訴人が賠償すべき損害額は122万8106円となる。」に改める。 原判決5頁8行目の「治療費 10万8330円」を「治療費 11万4650円」に,同頁9行目の「1万5150円及び被告既払額」を「7万9770円」に,同頁17行目の「通院慰謝料 105万円」を「通院慰謝料20100万円」にそれぞれ改め,同頁18行目冒頭から同頁20行目末尾までを削除し,同頁21行目の「オ」を「エ」に改め,同頁24行目冒頭から同頁25行目末尾までを削除する。 原判決6頁12行目冒頭から同頁14行目末尾までを削除し,同頁15行目の「オ」を「エ」に,同頁18行目の「カ」を「オ」に,同頁20行目の25「キ」を「カ」にそれぞれ改める。 3 第3 当裁判所の判断1 当裁判所は,被控訴人の本件請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。 認定事実争点に対する判断に当たり にそれぞれ改める。 3 第3 当裁判所の判断1 当裁判所は,被控訴人の本件請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。 認定事実争点に対する判断に当たり認定した事実は,次のとおり補正するほかは,5原判決「事実及び理由」の「第3 争点に対する判断」の1(原判決7頁7行目から9頁10行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア 原判決8頁15行目から同頁16行目までの「レジ台の前には利用客が並んでいたが,」を「当日は平日であって,本件事故が発生した時刻は,仕事帰りの買物客などで本件店舗が混雑する時間帯にあり,本件事故発生10時もレジ台の前には会計待ちの利用客が並んでいたが,」に改めるとともに,同頁19行目の「(甲24,原告本人)」を「(甲24,乙8,証人A,原告本人)」に改める。 イ 原判決9頁9行目から同頁10行目までの「記載されている。」を「記載されている一方,買物中に注意すべき点として,鮮魚コーナー,冷凍ケ15ース,製氷機等の周辺の床では,濡れている場合や氷が落ちたりしている場合があり,滑りやすくなっていること,惣菜コーナーの前の床は,調理の油で汚れ滑りやすくなっていること,青果コーナーでは,野菜くずなどが床に落ちている場合があり,踏みつけたりするときに滑ることがあること等が記載されており,その末尾に添付されている図面には,転倒事故が20発生しやすい場所として,これらの場所や雨天の店舗入口等が挙げられているが,レジ付近の通路は転倒事故が発生しやすい場所として挙げられていない。」に改める。 争点1(本件事故の発生につき控訴人に不法行為責任若しくは債務不履行責任又は土地工作物責任が成立するか)について25ア 被控訴人の主張は,前記のとおり,控訴人は, いない。」に改める。 争点1(本件事故の発生につき控訴人に不法行為責任若しくは債務不履行責任又は土地工作物責任が成立するか)について25ア 被控訴人の主張は,前記のとおり,控訴人は,本件店舗において,天ぷ4 らのように油を使用し,踏めば滑って転倒することが容易に予想される商品を扱っており,それが床に落ちることも十分に予見可能なのであるから,顧客に対し,信義則に基づく安全配慮義務として,このような商品が通路に放置されないよう配慮すべき義務を負っているところ,これを怠り,本件天ぷらが通路上に放置されたことにより本件事故が発生したのであるか5ら,被控訴人に対し,安全配慮義務違反の債務不履行責任又は不法行為責任を負うとともに,本件天ぷらが落ちていて床が滑りやすい状態にあったのを放置して本件事故を惹起したのであるから,被控訴人に対し,土地工作物責任を負うというものであり,要するに,控訴人が顧客に対する安全配慮義務に違反して,本件天ぷらを本件事故現場付近(本件店舗内レジ前10通路上)に放置したといえるかが争点である。 イ ところで,本件天ぷらがレジ前通路に落ちた状況及びこれが放置された状況については,これを現認した者がおらず,不明であるが,本件事故現場は会計前の商品を持った利用客が通るレジ前通路であること,本件店舗の従業員が同現場付近に本件天ぷらを落とすことは通常考えられないこと15から,本件天ぷらを落としたのは,本件店舗の従業員ではなく利用客であると認められる。また,同現場は,利用客からは見通しのよい場所であること,本件天ぷらは,縦横それぞれ13cm,10cm程度と比較的大きく,利用客が目視するだけでなく,足に触れたり,カートに当たったりする等して発見しやすい物であることが認められるが,利用客からレジ内の ,本件天ぷらは,縦横それぞれ13cm,10cm程度と比較的大きく,利用客が目視するだけでなく,足に触れたり,カートに当たったりする等して発見しやすい物であることが認められるが,利用客からレジ内の20従業員等に落下物があるとの申告,苦情等はなかったことからすると,本件天ぷらは,本件事故に近接する時点に落ちたものである可能性が高く,少なくとも長時間放置されていたものとは認められない。 よって,争点としては,利用客が本件事故現場(レジ前通路)付近に落とした本件天ぷらを短時間放置させたことが控訴人の安全配慮義務違反と25いえるかという点に集約される。 5 ウ そこで検討するに,前記認定のとおり,消費者庁が店舗内の転倒事故に関して発出した文書(乙7)によると,店舗内の床滑りによる転倒事故は,雨天時や水を使う場所の床濡れによるものが大半を占めており,落下物が原因となる場合も,青果物売場において野菜くず等を踏みつけたときに滑ることが想定されているものの,レジ付近の通路は落下物による転倒事故5が発生しやすい場所としては挙げられていない。これは,青果物売場においては,野菜くず等の落下物が比較的多いことに加え,利用客も商品を選別するのに注意が集中し,足下の注意が疎かになりやすいことによるものであると考えられるのに対し,レジ付近の通路においては,この両方の要因とも想定し難いからであると考えられるのであって,合理的な区別であ10ると認められる。前記認定の本件店舗におけるかぼちゃの天ぷら等の惣菜の販売方法からすれば,惣菜売場においても,青果物売場と同様に落下物が比較的に多くなる可能性はあるが,これは飽くまでも売場付近での話であり,レジ付近の通路とは区別して考える必要がある。本件店舗の店長であった証人Aの証言及び陳述書(乙8 も,青果物売場と同様に落下物が比較的に多くなる可能性はあるが,これは飽くまでも売場付近での話であり,レジ付近の通路とは区別して考える必要がある。本件店舗の店長であった証人Aの証言及び陳述書(乙8)によっても,同人の知る限り,こ15れまで他の店舗も含めレジ付近で落下物による転倒事故が発生したことはなかったことが認められる。 他方,レジ前通路を通行する利用客からは同通路は見通しがよく(乙1の別紙店舗図面),同通路上に商品等の落下物があったとしても目に付きやすく,店舗内が混み合っている時間帯でも足下の落下物を回避すること20は特に困難なことではないと認められる。 これらを総合すると,レジ内の従業員にとって,レジ前通路の床は,レジ台等の死角となるため視認することができない部分があり(乙1写真⑦),仮にその視認可能な範囲に落下物があったとしても,店舗内が混み合う時間帯には,レジ台の前に会計待ちの利用客が並んでおり,レジ内の25従業員がレジ打ちの作業に従事しながら当該落下物を速やかに発見して6 これを取り除くことは困難であったこと,レジ付近の売場における品出し等の作業は,店舗内が混み合う時間帯は利用客の妨げとなるため通常行われておらず,その担当の従業員もレジ付近にはいなかったことが認められる(乙8,証人A)ものの,レジ前通路に本件天ぷらのような商品を利用客が落とすことは通常想定し難いこと等から,控訴人において,顧客に対5する安全配慮義務として,あらかじめレジ前通路付近において落下物による転倒事故が生じる危険性を想定して,従業員においてレジ前通路の状況を目視により確認させたり,従業員を巡回させたりするなどの安全確認のための特段の措置を講じるべき法的義務があったとは認められない。 エ したがって,利用客が本件事故現場 においてレジ前通路の状況を目視により確認させたり,従業員を巡回させたりするなどの安全確認のための特段の措置を講じるべき法的義務があったとは認められない。 エ したがって,利用客が本件事故現場(レジ前通路)付近に落とした本件10天ぷらを短時間放置させたことにつき,控訴人において安全配慮義務違反があったということはできず,被控訴人に対して不法行為責任又は債務不履責任を負うものではないと解するのが相当である。 オ また,同様に,本件店舗の設置,管理に瑕疵があることによって本件事故が発生したと認めることはできないのであり,控訴人において被控訴人15に対して土地工作物責任を負うものではないと解するのが相当である。 2 よって,被控訴人の本件請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないから,全部棄却すべきところ,これと異なり同請求を一部認容した原判決は失当であり,控訴人の本件控訴は理由があるから,これに基づき原判決中控訴人の敗訴部分を取り消した上,同部分に係る被控訴人の請求を棄却し,20被控訴人の本件附帯控訴は,理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第12民事部 25裁判長裁判官 平 田 豊7 裁判官 中 久 保 朱 美 5裁判官 井 出 弘 隆
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