【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 当審における訴訟費用は被告人の負担とする。 理 由 本件控訴の趣意は、弁護人高橋秀夫の控訴趣意書に記載されたとおりであ
主 文 本件控訴を棄却する。 当審における訴訟費用は被告人の負担とする。 理 由 本件控訴の趣意は、弁護人高橋秀夫の控訴趣意書に記載されたとおりであるから これを引用する。 控訴趣意第一点 理由不備の主張について 所論は、原判決は先行車に追従していた被告人が先行車の急停止に対し右に必要 以上に転把したことも重大な過失であると認定しているが、被告人が対向車の有無 特にA運転の普通乗用自動車の対進して来るのを認めていたか否かを判示していな いため、被告人が先行車との追突を避けるためにとつた転把の措置によつてAの自 動車との衝突を予期し得たか否か原判文上明らかでないから、転把の措置が必要以 上に右転把した重大な過失になるのか明確でない。従つて、原判決にはこの点にお いて理由不備の違法がある、というのである。 そこで検討すると、原判決が判示第三の事実中被告人の過失について、被告人が 必要以上に右転把したことも重大な過失の一つであると認定しているやにもうかが われること、及び被告人が対向車である原判示Aの自動車の進行して来るのを認め ていたか否かについて判示していないことは所論指摘のとおりであるが、仮に必要 以上に右転把したことをも重大な過失の一つに数えたとしても、原判決挙示の証拠 中被告人の司法警察員に対する供述調書によれば、被告人は前方をよく注視してい なかつたことが認められ、従って仮に被告人が右Aの車が対進して来るのを認めて いなかつたとしても、対向車線(道路右側)に進出するに当つては予め対向車の有 無等交通の安全を確認するのが当然であるから、その安全を確認しないままで対向 車線に進出するようなことは、現実に対向車を認識していたと否とを問わず、重大 な過失と認めて差支えなく、原判決には所論のような理由不備の違法はない。論 のが当然であるから、その安全を確認しないままで対向 車線に進出するようなことは、現実に対向車を認識していたと否とを問わず、重大 な過失と認めて差支えなく、原判決には所論のような理由不備の違法はない。論旨 は理由がない。 同第二点 法令適用の誤りの主張について 所論は、原判決は判示第三の事実の被告人の過失について、酒酔い状態で無免許 運転ないし技倆未熟な運転をしたこと自体を重大な過失と認定することなく、車間 距離不保持の点と必要以上に右転把した点を重大な過失と認定し刑法第二一一条後 段を適用したが、本件のように被告人が対向車の比較的少ない道路を通常の速度で 先行車に追従するに当たり、同車との車間距離を十分保持しなかつたとはいえ、先 行車の急停止に即応して同車との追突を避けるため転把の措置をとり無事追突を避 け得たのに、偶々進行して来た対向車に自車を衝突させたような状況の下では、被 告人が通常人の払うべき注意を用いていれば当然本件事故の発生を予見し得べきで あつたとしても、僅かな注意を払うことにより容易に本件事故の発生を認識し得た ものとはいい難いから、被告人の原判示過失は未だ同条後段の重大な過失というこ とはできず、原判決は重過失に関する法令の解釈、適用を誤つたものである、とい うのである。 <要旨第一>そこで、検討すると、原判決挙示の証拠中、被告人の司法警察員及び 検察官に対する各供述調書並びに実況見</要旨第一>分調書によれば、被告人が原判 示道路(道路の舗装部分の幅員約七メートル別に両外側にそれぞれ幅員約二・四メ ートルの非舗装部分がある)を時速約四五キロメートルで先行車に追従したのであ るが、先行車に追従するときは自車の速度に応じた車間距離を保持すべきこと、右 のような車間距離を保持しないでハンドル操作によつて追突をさける場合に、自車 を対向車線に進出させるとき 行車に追従したのであ るが、先行車に追従するときは自車の速度に応じた車間距離を保持すべきこと、右 のような車間距離を保持しないでハンドル操作によつて追突をさける場合に、自車 を対向車線に進出させるときは対向車との衝突という重大な危険を招くおそれがあ ること、僅かな注意を払つて車間距離を保持することによつて容易にこの危険を避 けられたのに、右のような注意を欠き僅々約八メートルの車間距離を保持したのみ で進行し且つハンドル操作によつて追突を避けようとしていきなり対向車線に進出 するような右転把をしたことは重大な過失であるといわなければならない。従つ て、原判決が重大な過失に関する法令の解釈適用を誤つたとはいえない。論旨は理 由がない。 同第三点 訴訟手続の法令違反の主張について 所論は、原判示第三の事実の重大な過失について、訴因は先行車との安全な車間 距離を保持しないで進行した点に求めているのに対し、原判決は右過失の外に、先 行車が急停止したのに対し右に必要以上に転把したことも事故に直結する重大な過 失であるとしているので、両者は過失の態様及び存在時点を異にしているから、こ のように相異なる別個の過失を併せ認定するについてはその旨の訴因の追加手続を 経由すべきであるのに、その手続を欠いたのは訴訟手続が法令に違反するものであ る、というのである。 <要旨第二>そこで、検討すると、原判決は本件事故の原因を被告人が時速約四五 キロメートルで先行車に追従するに当</要旨第二>り、同車が急停止などした場合に 自車もこれに即応して事前に急停止できるよう十分な車間距離を保持して進行すべ きであるのに、これを怠り、先行車との車間距離を僅か約八メートルに保持したの みで進行したためであると認定した上、これに加えて先行車が急停止したのに即応 して急制動の措置をとらず、いきなり右転把したため、 であるのに、これを怠り、先行車との車間距離を僅か約八メートルに保持したの みで進行したためであると認定した上、これに加えて先行車が急停止したのに即応 して急制動の措置をとらず、いきなり右転把したため、道路右側に進出して対向車 である本件被害自動車に衝突したことをも重大な過失の一つとして附加したもので あるが、右のうちで先行車との車間距離を十分に保持しなかつたことが第一次的乃 至基本的過失というべきであり、右転把したことは第二次的乃至派生的過失として 判示されたに過ぎないと認められる。そして、このような派生的過失の有無は当審 における事実の取調の結果をあわせ考えても被告人の防禦に実質的な不利益を与え ていないから、特に訴因の追加手続を要する場合には当らない。論旨は理由がな い。 (その余の判決理由は省略する。) (裁判長判事 青柳文雄 判事 菅間英男 判事 酒井雄介)
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