平成25年4月11日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成22年(ワ)第7025号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成25年1月11日判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 被告39ホールディングス株式会社,被告プレミアムオートトレーディングジャパン株式会社,被告P1及び被告P2は,別紙顧客目録①(ただし,番号13,15,79,365,1016,1017及び1478を除く。),②(ただし,番号2,184,245,246,551及び683を除く。)及び④記載の者らに対し,面会を求め,電話をし,郵便物を送付し又は電子メールを送信するなどして,自動車,自動車部品その他自動車に関する商品の売買契約を締結し,同契約の締結を勧誘し又は同契約に付随する営業行為をしてはならない(別紙顧客目録①ないし④の添付省略)。 2 被告39ホールディングス株式会社,被告プレミアムオートトレーディングジャパン株式会社,被告P1及び被告P2は,同目録記載の氏名等を記録したフロッピーディスク若しくはコンピューターのファイル等の磁気媒体又はこれらを印字した紙媒体を廃棄せよ。 3 被告39ホールディングス株式会社,被告P2,被告P3,被告株式会社クインオート及び被告P5は,被告P1と連帯して,原告に対し,8926万4415円及びこれに対する平成21年6月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告プレミアムオートトレーディングジャパン株式会社及び被告P4は,被告P1と連帯して,原告に対し,4997万0673円及びこれに対する平成 24年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告P1は,1億3923万5088円(ただし,8926万4 帯して,原告に対し,4997万0673円及びこれに対する平成 24年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告P1は,1億3923万5088円(ただし,8926万4415円の限度で被告39ホールディングス株式会社,被告P2,被告P3,被告株式会社クインオート及び被告P5と,4997万0673円の限度で被告プレミアムオートトレーディングジャパン株式会社及び被告P4と,それぞれ連帯して)並びに内8926万4415円に対する平成21年6月30日から及び内4997万0673円に対する平成24年3月31日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 原告のその余の請求を棄却する。 7 訴訟費用は被告らの負担とする。 8 この判決は,1,3から5まで及び7項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1)主位的請求ア被告39ホールディングス株式会社,被告プレミアムオートトレーディングジャパン株式会社,被告P1及び被告P2は,別紙顧客目録①から③まで記載の者らに対し,面会を求め,電話をし,郵便物を送付し又は電子メールを送信するなどして,自動車,自動車部品その他自動車に関する商品の売買契約を締結し,同契約の締結を勧誘し又は同契約に付随する営業行為をしてはならない。 イ被告39ホールディングス株式会社,被告プレミアムオートトレーディングジャパン株式会社,被告P1及び被告P2は,同目録記載の氏名等を記録したフロッピーディスク若しくはコンピューターのファイル等の磁気媒体又はこれらを印字した紙媒体を廃棄せよ。 ウ被告39ホールディングス株式会社,被告P2,被告P3,被告株式会社クインオート及び被告P5は,被告P1と連帯して,原告に対し, イル等の磁気媒体又はこれらを印字した紙媒体を廃棄せよ。 ウ被告39ホールディングス株式会社,被告P2,被告P3,被告株式会社クインオート及び被告P5は,被告P1と連帯して,原告に対し,1億円及びこれに対する平成20年3月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ被告プレミアムオートトレーディングジャパン株式会社及び被告P4は,被告P1と連帯して,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成21年4月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 オ被告P1は,1億5000万円(ただし1億円の限度で被告39ホールディングス株式会社,被告P2,被告P3,被告株式会社クインオート及び被告P5と,5000万円の限度で被告プレミアムオートトレーディングジャパン株式会社及び被告P4と,それぞれ連帯して)並びに内1億円に対する平成20年3月14日から及び内5000万円に対する平成21年4月22日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 カ訴訟費用は被告らの負担とする。 キ仮執行宣言(2)前記(1)主位的請求ア及びイについての予備的請求主文1,2項と同旨 2 被告ら(1)原告の請求をいずれも棄却する。 (2)訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない又は当裁判所に顕著な事実である。)(1)原告原告は,各種自動車の輸出入及び売買等を目的とする会社であり,平成3 年12月27日設立された。 日本国内の中古車オークションで中古車を購入し,海外の顧客に輸出しているが,平成7年にインターネットを使用した販売を始め(原告代表者本人1頁),その後,トラッカーという名称の業務管理ソフトを開発,導入して 内の中古車オークションで中古車を購入し,海外の顧客に輸出しているが,平成7年にインターネットを使用した販売を始め(原告代表者本人1頁),その後,トラッカーという名称の業務管理ソフトを開発,導入している。 (2)被告39ホールディングス株式会社(以下「被告39ホールディングス」という。)とその関係者ア被告39ホールディングス被告39ホールディングスは,各種自動車の輸出入及び売買等を目的とする会社である。後記被告株式会社クインオート(以下「被告クインオート」という。)から51%の出資を受け,平成20年1月10日,商号を「株式会社ジェイワントレーディング」として設立され,平成21年5月30日,現在の商号に変更した(以下,商号の変更の前後を問わず「被告39ホールディングス」という。)。 原告と同様に,海外の顧客に対し,中古車を輸出していたが,現在も同様の事業を行っているかについては,後記のとおり当事者間に争いがある。 イ訴外P6P6は,原告の元従業員であり,営業を担当していた。その後,原告を退社し,自ら,中古車販売業を営んでいたが,被告39ホールディングスの設立に関与することとなった。 P6は,被告39ホールディングスの設立に当たり,代表取締役に就任したが,平成21年1月23日,退任するとともに取締役も辞任した(甲1)。 ウ被告P1被告P1は,平成12年5月8日,原告に入社し,営業を担当していた。 平成20年2月25日,原告を退職し,遅くとも同年3月14日までに, 被告39ホールディングスに入社して営業を担当していた。 その後,平成21年4月22日,被告プレミアムオートトレーディングジャパン株式会社(以下「被告プレミアムオート」という。)が設立されるに当たり,同被告の代表取締役に就任した。 エ していた。 その後,平成21年4月22日,被告プレミアムオートトレーディングジャパン株式会社(以下「被告プレミアムオート」という。)が設立されるに当たり,同被告の代表取締役に就任した。 エ被告P2被告P2は,平成19年2月1日,原告に入社し,営業を担当していた。 平成20年3月25日,原告を退職し,遅くとも同年4月3日までに被告39ホールディングスに入社し,営業を担当していた(甲6)。 オ被告P4被告P4は,原告の元従業員であり,営業を担当していた。平成20年4月26日に原告を退職し,被告39ホールディングスに入社した。 その後,平成21年4月22日,被告プレミアムオートが設立されるに当たり,同被告の取締役に就任した。 カ被告P3被告P3は,中古車の輸送を業務とする株式会社シー・リンクの代表取締役であるが,知人に誘われ,被告39ホールディングスの設立に関与することとなった。 被告P3は,被告39ホールディングスの設立に当たり,取締役に就任し,専務として経営に関与していたが,平成21年3月31日,取締役を辞任した。 (3)被告プレミアムオート及びその関係者被告プレミアムオートは,各種自動車及び二輪車の輸出入並びに売買等を目的とする会社であり,平成21年4月22日に設立された。被告39ホールディングスと本店所在地が同一であり,被告P1が代表取締役である。 被告プレミアムオートは,原告と同様,日本国内において中古車を購入し,海外の顧客に輸出している。 (4)被告クインオート及びその関係者ア被告クインオートは,各種自動車及び付属用品の輸出入並びに売買等を目的とする会社である。 被告クインオートは,前記(2)アのとおり,被告39ホールディングスの設立に当たり,同社に出資し,株式の51 告クインオートは,各種自動車及び付属用品の輸出入並びに売買等を目的とする会社である。 被告クインオートは,前記(2)アのとおり,被告39ホールディングスの設立に当たり,同社に出資し,株式の51%を保有していたが,平成20年10月ころ,その全てを売却した。 イ被告P5被告P5は,平成20年5月31日まで,被告クインオートの代表取締役であったが,被告39ホールディングスの設立に関与し,被告クインオートを通じ,出資することとなった。 一方,被告P5自身は,被告39ホールディングスの経営に表面上は関与することはせず,被告クインオートの従業員であるP7が,被告39ホールディングスの設立時に監査役に就任したが,平成21年2月28日退任した。 (5)P8及びP6による情報提供等被告39ホールディングスの元従業員であるP8は,被告P1らが原告の顧客情報(以下「本件顧客情報」という。)を不正に取得し,被告39ホールディングスがこれを不正に使用しているとして,被告39ホールディングスの顧客情報が記載された名簿(甲9:以下「P8名簿」という。)を原告に提供した。 これを受けて,原告は,被告ら及びP6を被告として,本件訴えを起こすに至ったものである。 P6は,本件訴訟において,当初は,原告の主張を争っていたものの,その後概ね認めるに至り,被告39ホールディングスの顧客情報が記載された名簿(甲26:以下「P6名簿」という。)を原告に提供した。 なお,原告は,本件口頭弁論終結後,P6に対する訴えを取り下げた。 2 原告の請求原告は,① 被告P1及び被告P2が不正の手段により原告の営業秘密である本件顧客情報を取得した(後記争点1及び2に関する主張),② 被告39ホールディングスは当該不正取得行為及び不正開示行為を知っ 原告は,① 被告P1及び被告P2が不正の手段により原告の営業秘密である本件顧客情報を取得した(後記争点1及び2に関する主張),② 被告39ホールディングスは当該不正取得行為及び不正開示行為を知って本件顧客情報を取得するなどした(後記争点3に関する主張),③ 被告P5,被告クインオート及び被告P3は被告39ホールディングスの上記行為を謀議するなどした(後記争点4に関する主張),④ 被告プレミアムオートは被告39ホールディングスと同様の行為をした(後記争点5に関する主張)などとして,以下の各請求をしている。 (1)主位的請求ア被告39ホールディングス,被告プレミアムオート,被告P1及び被告P2に対し,不正競争防止法3条1項に基づき,別紙顧客目録①から③まで記載の者らとの契約締結,締結勧誘,営業行為等の差止請求(前記第1の1(1)ア)イ同被告らに対し,不正競争防止法3条2項に基づき,同目録記載の氏名等を記録した媒体の廃棄請求(同イ)ウ被告39ホールディングス,被告P1,被告P2,被告P3,被告クインオート及び被告P5に対し,不正競争防止法4条等に基づき,一部請求として1億円の損害賠償及びこれに対する平成20年3月14日(被告P1が被告39ホールディングスに入社した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求(同ウ,オ)エ被告プレミアムオート,被告P1及び被告P4に対し,不正競争防止法4条等に基づき,一部請求として5000万円の損害賠償及びこれに対する平成21年4月22日(被告プレミアムオート設立の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求(同エ,オ)(2)前記(1)主位的請求ア及びイについての予備的請求 ア被告39ホールディングス,被告プレミアムオート )から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求(同エ,オ)(2)前記(1)主位的請求ア及びイについての予備的請求 ア被告39ホールディングス,被告プレミアムオート,被告P1及び被告P2に対し,不正競争防止法3条1項に基づき,別紙顧客目録①,②及び④記載の者らとの契約締結,締結勧誘,営業行為等の差止請求(前記第1の1(2)ア)イ同被告らに対し,不正競争防止法3条2項に基づき,同目録記載の氏名等を記録した媒体の廃棄請求(同イ) 3 争点(1)本件顧客情報は,営業秘密であるか (争点1)(2)被告P1及び被告P2は,不正の手段により本件顧客情報を取得するなどしたか (争点2)(3)被告39ホールディングスは,本件顧客情報について不正取得行為が介在したことを知って取得するなどしたか (争点3)(4)被告P5,被告クインオート及び被告P3は,上記(3)の行為を謀議するなどしたか (争点4)(5)被告プレミアムオートは,本件顧客情報について不正取得行為が介在したことを知って取得するなどしたか (争点5)(6)本件顧客情報が営業秘密と認められない場合における,本件顧客情報の不正取得,同使用による不法行為の成否 (争点6)(7)差止め及び廃棄請求の可否 (争点7)(8)損害額 (争点8)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件顧客情報は,営業秘密であるか)について【原告の主張】原告から中古車の購入を希望する者 (争点8)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件顧客情報は,営業秘密であるか)について【原告の主張】原告から中古車の購入を希望する者は,原告のウェブサイトにアクセスして,会員登録をする必要がある。 本件顧客情報は,これら会員登録をした顧客の氏名又は名称,担当者名,担 当者のEメールアドレス,電話番号並びに国及び地域であり,原告の営業秘密である。 (1)秘密管理性があったこと以下のとおり,本件顧客情報は,アクセスできる者が制限されており,アクセス権限を有する者は,本件顧客情報が秘密であることを認識していたから,秘密管理性がある。 ア本件顧客情報の管理方法原告は,トラッカーという名称のアプリケーションソフトを独自に開発し,これをインストールした専用コンピューターを本社内に設置して,データ管理用コンピューターをフィリピンのセブ島に設置し,本件顧客情報を管理していた。 イ原告の従業員のアクセス権限及びアクセス方法等(ア) 業務管理ソフト(トラッカー)によるアクセス制限原告は,従業員に対し,トラッカーのクライアントソフトをインストールしたパソコンを貸与し,退職時には返還するように求めていた。従業員が私物のパソコンでトラッカーを利用する場合には,「プログラム等使用許諾依頼書」と題する書面を作成させてから,トラッカーのクライアントソフトをインストールさせていた。上記書面は,無断複製や機密漏洩をしないこと,退職時におけるアンインストール作業を原告に依頼することを誓約させ,トラッカーに関連するデータが原告の所有に帰属することを確認させる内容のものである。 クライアントソフトのインストール及びアンインストールその他のメンテナンスは,原告の技術スタッ ことを誓約させ,トラッカーに関連するデータが原告の所有に帰属することを確認させる内容のものである。 クライアントソフトのインストール及びアンインストールその他のメンテナンスは,原告の技術スタッフが全て行っていた。また,何か問題が生じた場合には,データベース等へのアクセスをいつでも遮断することができるようになっていた。 (イ) アクセス方法 従業員がトラッカーのデータベースにアクセスするには,原告から付与された個別のユーザー名及びパスワードを入力して専用LAN にアクセスした後,さらに別に設定したユーザー名及びパスワードを入力する必要があった。ユーザー名は各従業員の名前を利用したものが多かったが,パスワードはユーザーごとに異なるものを設定していた。 なお,専用LAN に障害が生じた場合,営業に支障を来さないようにするため,一般のインターネット回線からもアクセスして必要な情報を閲覧することができる機能も設けていた。この場合にも,当然にユーザー名及びパスワードの入力が必要であった。 (ウ) アクセス権限等の制限従業員は,原告が付与したアクセス権限の範囲内で,必要最小限度の情報にのみアクセスすることが可能であった。データベースから顧客情報をまとめて取り出す(エクスポートする)権限は,原告代表者,セキュリティ管理者及び被告P1にしか付与されておらず,営業を担当する他の従業員らは,データベースにアクセスして特定の顧客情報を閲覧する権限しか有していなかった。 1回のアクセスで入手できる情報量は,2000レコードに制限されており,エクスポートできる情報量も同じ制限を受けていた。顧客1人当たりの情報量の平均が38レコードであったから,一回のアクセスでは約52人分の顧客情報しか閲覧又はエクスポートすることができなかった おり,エクスポートできる情報量も同じ制限を受けていた。顧客1人当たりの情報量の平均が38レコードであったから,一回のアクセスでは約52人分の顧客情報しか閲覧又はエクスポートすることができなかった。 (エ) アクセス回数のモニタリングトラッカーによるシステムでは,アクセス回数をモニタリングすることが可能であり,これにより顧客情報の漏洩等をモニタリングすることが可能であった。 ウ関連会社従業員のアクセス権限及びアクセス方法等 原告は,ヤード内における車両の移動・修理・各種検査や船積み等の管理業務,トラッカーのメンテナンス等の業務を関連会社に委託していた。 そこで,これら関連会社の従業員にもユーザー名及びパスワードを付与し,各自の業務ごとに限られたアクセス権限を付与していた。 エ本件顧客情報にアクセスした者が秘密であると認識できたこと原告は,従業員らに対し,顧客情報等のデータの持出しや漏洩をしないように就業規則や社員教育を通じて周知徹底していた。 特に,営業スタッフには,トラッカーの利用に関し,前記「プログラム等使用許諾依頼書」の提出を義務づけていた。同書面は,① データの無断複製,② 機密漏洩,③ トラッカーに付帯する全てのデータの譲渡・転売の禁止について明記し,秘密管理の対象となるべき情報を特定して,秘密管理の徹底を義務づけるものである。 加えて,前記イのアクセス制限からすれば,従業員は,本件顧客情報が秘密であることを当然に認識していた。 原告は,関連会社に対しても,トラッカー等のシステムの共同利用について,「システム利用規約」の遵守を求め,厳格な管理をしていたことに加え,前記ウのアクセス制限からすれば,関連会社の従業員も本件顧客情報が秘密であることを当然に認識していた。 (2) 共同利用について,「システム利用規約」の遵守を求め,厳格な管理をしていたことに加え,前記ウのアクセス制限からすれば,関連会社の従業員も本件顧客情報が秘密であることを当然に認識していた。 (2)有用性があること本件顧客情報はインターネット上に公開されている情報を単純に収集したものではなく,過去に原告と取引履歴があるか,原告のウェブサイトを閲覧して会員登録をしてきた顧客の情報である。 このように,中古車の購入意欲のある者を抽出した情報であり,その有用性は明らかである。 (3)非公知性があること本件顧客情報,特に担当者のEメールアドレスは一般に公開されているも のではない。原告が第三者に本件顧客情報を開示したこともない。 したがって,本件顧客情報は「公然と知られていないもの」である。 【被告らの主張】以下のとおり,本件顧客情報は,原告の営業秘密ではない。 (1)秘密管理性がなかったことア業務管理ソフト(トラッカー)によるアクセス制限はなかったこと被告P1らが原告に勤務していた当時,トラッカーの主な機能は,従業員がオークション会場に行った際に,会場からアクセスして在庫や注文に関する情報を入手するというものであった。 従業員の権限に関係なく,顧客情報を全て閲覧することができ,印刷したり,エクスポートしたりすることも,一切禁止されていなかった。 原告の従業員はもとより,関連会社の従業員らも,原告から与えられたパスワードとユーザー名を利用してトラッカーにアクセスすることができた。パスワードは,全従業員が同一のものを使用しており,ユーザー名も各従業員の名前を英字表記しただけであった。専用LAN にアクセスする必要もなく,従業員個人のパソコンからも容易にアクセスすることができた。 イ従業員らが 同一のものを使用しており,ユーザー名も各従業員の名前を英字表記しただけであった。専用LAN にアクセスする必要もなく,従業員個人のパソコンからも容易にアクセスすることができた。 イ従業員らが個人で本件顧客情報を管理していたこと原告の営業担当従業員の大半は,原告に入社するとすぐに原告のデータベースに存在していた顧客情報をExcel やWord の形式に変換して私物のパソコンに保存し,その後,自らの営業活動によって獲得した新たな顧客情報を追加したり,古い情報を更新したりして,自己の顧客情報として管理していた。 ウ従業員らの認識原告は,従業員に対し,本件顧客情報が営業秘密であることを認識させるような社員教育を何ら実施していなかった。 また,前記のとおり,顧客情報の閲覧及びエクスポートは一切制限されておらず,秘密として管理されていることを認識できる状況にはなかったし,現に大半の従業員が本件顧客情報を私物のパソコンや記憶媒体に記録して利用していた。 (2)有用性がないこと競争の激しい中古車輸出業界において,顧客に中古車情報をメールで配信したとしても販売にはつながらない。顧客は,世界中に存在する中古車輸出会社のウェブサイト上で公開されている中古車情報を閲覧し,その中から自らの条件を満たす会社を選択して,ウェブサイト上に公開された担当者の連絡先に連絡をし,交渉の結果,契約が成立する。過去に取引した顧客にオークション情報をEメールで送信することは重要な営業活動ではないし,現に被告P1らはEメールに頼った営業活動をしていなかった。 したがって,過去に取引した顧客のEメールアドレス等の情報は,それほど価値のあるものではない。 そもそも本件顧客情報には,インターネットで検索すれば調べることのできる情報が多く含 なかった。 したがって,過去に取引した顧客のEメールアドレス等の情報は,それほど価値のあるものではない。 そもそも本件顧客情報には,インターネットで検索すれば調べることのできる情報が多く含まれている上,誤ったEメールアドレスも多数含まれていることなどから,その利用価値は低いものである。 (3)本件顧客情報が公知のものであること前記(2)のとおり,本件顧客情報には,インターネットで検索すれば調べることのできる情報が多く含まれているから,それらは「公然と知られていないもの」ではない。 2 争点2(被告P1及び被告P2は,不正の手段により本件顧客情報を取得するなどしたか)について【原告の主張】前記1【原告の主張】(1)エのとおり,原告の従業員は,顧客情報等のデータの持出しや漏洩をしないよう就業規則によって定められていた。 それにもかかわらず,以下のとおり,被告P1及び被告P2は,不正の手段により本件顧客情報を取得し,これを被告39ホールディングスに開示した。 (1)被告P1による不正競争被告P1は,原告のセールスマネージャーであったことから,営業に関する内部資料を作成するために,本件顧客情報等をエクスポートする権限を付与されていたことを利用し,平成20年2月ころ,被告39ホールディングスに本件顧客情報を開示する目的で,上記エクスポート権限を濫用して本件顧客情報を取得し,これを被告39ホールディングスに開示した。 上記行為は,不正競争防止法2条1項4号又は7号の不正競争に当たる。 (2)被告P2による不正競争被告P2は,原告の営業担当従業員であり,本件顧客情報を閲覧する権限を付与されていた。 被告P2は,平成20年2月から3月にかけて,本件顧客情報を被告39ホールディングスに開示する 不正競争被告P2は,原告の営業担当従業員であり,本件顧客情報を閲覧する権限を付与されていた。 被告P2は,平成20年2月から3月にかけて,本件顧客情報を被告39ホールディングスに開示する目的で,本件顧客情報を閲覧して取得し,これを被告39ホールディングスに開示した。 上記行為は,不正競争防止法2条1項4号又は7号の不正競争に当たる。 【被告らの主張】(1)被告P1による不正競争はないこと被告P1が,被告39ホールディングスに本件顧客情報を開示する目的で本件顧客情報を取得し,被告39ホールディングスに開示したことはない。 被告P1は,セールスマネージャーではなく,特別な権限や手当も与えられていなかった。営業に関する内部資料を作成するために,エクスポート権限を与えられたということも一切なかった。 被告P1は,前記1【被告らの主張】のとおり,原告に在籍していた当時から自己の顧客情報として管理していたものを,被告39ホールディングスに入社した後も使用していたにすぎない。 (2)被告P2による不正競争はないこと被告P1と同様に,被告P2が,被告39ホールディングスに本件顧客情報を開示する目的で本件顧客情報を取得し,被告39ホールディングスに開示したことはないし,原告に在籍していた当時から自己の顧客情報として管理していたものを,被告39ホールディングスに入社した後も使用していたにすぎない。 3 争点3(被告39ホールディングスは,本件顧客情報について不正取得行為が介在したことを知って取得するなどしたか)について【原告の主張】被告39ホールディングスは,前記2【原告の主張】の被告P1及び被告P2による不正取得行為及び不正開示行為が介在したことを知って,被告P1及び被告P2から本件顧客情 ついて【原告の主張】被告39ホールディングスは,前記2【原告の主張】の被告P1及び被告P2による不正取得行為及び不正開示行為が介在したことを知って,被告P1及び被告P2から本件顧客情報を取得し,使用している。 上記行為は,不正競争防止法2条1項5号又は8号の不正競争に当たる。 【被告39ホールディングス,被告P1,被告P2,被告P3,被告クインオート及び被告P5の主張】前記2【被告らの主張】のとおり,被告P1及び被告P2は,原告に在籍していた当時から自己の顧客情報として管理していたものを,被告39ホールディングスに入社した後も,同様に,自己の顧客情報として使用していたにすぎない。 したがって,被告P1及び被告P2による不正取得行為及び不正開示行為はないし,不正取得行為又は不正開示行為が介在したことを知って,被告39ホールディングスが本件顧客情報を使用したこともない。 4 争点4(被告P5,被告クインオート及び被告P3は,被告39ホールディングスによる本件顧客情報の不正取得を謀議するなどしたか)について【原告の主張】(1)被告クインオート及び被告P5 ア被告P5の謀議に基づく責任被告P5は,平成19年12月6日,神戸市内のホテルにおいて,被告P3及びP6と共謀の上,被告P1らに対し,原告から本件顧客情報を不正に持出して,被告39ホールディングスに開示することを指示した。 これにより,被告P1及び被告P2は前記2【原告の主張】の不正競争をしたものであるから,被告P5は,不正競争防止法2条1項4号,7号,民法719条1項,2項に基づく損害賠償責任を負う。 また,被告クインオートは,被告39ホールディングスの設立資本のうち51%を出資した親会社であり,被告P5は,週に1,2度は被告3 4号,7号,民法719条1項,2項に基づく損害賠償責任を負う。 また,被告クインオートは,被告39ホールディングスの設立資本のうち51%を出資した親会社であり,被告P5は,週に1,2度は被告39ホールディングスの営業所を訪れ,被告39ホールディングスの経営会議にも参加していた。 被告P5は,上記経営者会議において,被告P3及びP6と共謀の上,被告P1らに対し,上記同様の行為を指示した。 これにより,被告P1及び被告P2は前記2【原告の主張】の不正競争をしたものであるから,被告P5は,不正競争防止法2条1項4号,7号,民法719条1項に基づく損害賠償責任を負う。 イ代表者の不法行為に基づく被告クインオートの責任上記アのとおり,被告クインオートの代表者(当時)である被告P5がその職務を行うにつき,第三者である原告に対し,損害を負わせたから,被告クインオートは会社法350条に基づく責任を負う。 ウ親会社取締役としての被告P5の責任被告P5は,被告39ホールディングスの親会社である被告クインオートの取締役としての善管注意義務違反又は忠実義務違反に基づく責任(会社法429条1項)を負う。 (2)被告P3ア謀議に基づく責任 前記(1)アのとおり,被告P3は,平成19年12月6日,神戸市内のホテルにおいて,被告P5及びP6と共謀の上,被告P1らに対し,原告から本件顧客情報を不正に持出して,被告39ホールディングスに開示することを指示した。 また,被告39ホールディングス設立後も,同社の経営会議において,共謀の上,同様の指示をした。 したがって,被告P5と同様に,不正競争防止法2条1項4号,7号,民法719条1項,2項に基づく損害賠償責任を負う。 イ取締役としての責任被告P3は,被告39 謀の上,同様の指示をした。 したがって,被告P5と同様に,不正競争防止法2条1項4号,7号,民法719条1項,2項に基づく損害賠償責任を負う。 イ取締役としての責任被告P3は,被告39ホールディングスの取締役であり,被告39ホールディングスによる不正競争(前記3【原告の主張】)を中止させなかったから,前記(1)ウの被告P5と同様に,会社法429条1項に基づく責任を負う。 【被告P5,被告クインオート及び被告P3の主張】被告39ホールディングスの事務所は登記簿上の本店所在地にはなく,神戸市にあり,本店所在地における事業は一切行われていなかった。被告P5や被告クインオートの取締役らが被告39ホールディングスの経営会議に参加したことや業務活動について指示をしたこともなかった。 被告P5及び被告P3には,被告39ホールディングスが本件顧客情報を取得して使用しているという認識も全くなく,被告P1に対する指示をしたこともない。 したがって,被告クインオート,被告P5及び被告P3が,被告P1及び被告P2による不正競争(前記2【原告の主張】)や被告39ホールディングスによる不正競争(前記3【原告の主張】)を謀議したり,これを教唆したりしたことはない。 5 争点5(被告プレミアムオートは,本件顧客情報について不正取得行為が介 在したことを知って取得するなどしたか)について【原告の主張】被告プレミアムオートは,上記2【原告の主張】の被告P1及び被告P2による不正取得行為及び不正開示行為が介在したことを知って,被告39ホールディングスから本件顧客情報を取得し,使用している。 上記行為は,不正競争防止法2条1項5号又は8号の不正競争に当たる。 被告P1及び被告P4は,被告プレミアムオートの役員として上記 39ホールディングスから本件顧客情報を取得し,使用している。 上記行為は,不正競争防止法2条1項5号又は8号の不正競争に当たる。 被告P1及び被告P4は,被告プレミアムオートの役員として上記不正競争をしたものであるから,連帯して責任を負う(不正競争防止法2条1項5号又は8号,会社法429条1項)。 【被告プレミアムオート,被告P1及び被告P4の主張】否認又は争う。 6 争点6(本件顧客情報が営業秘密と認められない場合における,本件顧客情報の不正取得,同使用による不法行為の成否)について【原告の主張】仮に本件顧客情報が営業秘密ではなく,被告らの行為が不正競争に当たらないとしても,以下のとおり不法行為が成立する。 (1)被告P1,被告P2及び被告39ホールディングス前記2【原告の主張】のとおり,被告P1及び被告P2は,本件顧客情報を不正に取得して被告39ホールディングスに開示した。 また,前記3【原告の主張】のとおり,被告39ホールディングスは,不正取得行為があったことを知って,本件顧客情報を取得して使用し,原告に損害を加えた。 したがって,被告P1,被告P2及び被告39ホールディングスは,民法709条,719条1項に基づく損害賠償責任を負う。 (2)被告P5及び被告P3前記4【原告の主張】のとおり,被告P5は,被告39ホールディングス による不法行為(前記(1))を認識しながら放置し,むしろ積極的に教唆した者であるから,民法709条,719条2項に基づく責任を負う。 前記4【原告の主張】のとおり,被告P3は,前記(1)の不法行為について被告P1及び被告P2を教唆した者であるから,民法709条,719条2項に基づく責任を負う。 また,被告P3は,被告39ホールディングスの取締役 のとおり,被告P3は,前記(1)の不法行為について被告P1及び被告P2を教唆した者であるから,民法709条,719条2項に基づく責任を負う。 また,被告P3は,被告39ホールディングスの取締役であったところ,被告39ホールディングスが不法行為(前記(1))に及ぶことを放置したものである。上記のとおり,被告P3は,被告P1及び被告P2を教唆した者であり,この点について悪意又は重過失であったから,会社法429条に基づく責任も負う。 (3)被告クインオート被告クインオートは,被告39ホールディングスの設立資本のうち51%を出資しており,取締役も多くが兼務しており,事務所も同じ場所であった。 被告クインオートは,被告39ホールディングスの不法行為(前記(1))を知り,あるいは,知りうるべき立場にありながら,漫然と放置し,その結果,原告に損害を加えたのであるから,民法709条に基づく責任を負う。 (4)被告プレミアムオート,被告P1及び被告P4前記5【原告の主張】のとおり,被告プレミアムオートは,被告P1及び被告P2による不正取得行為及び不正開示行為が介在したことを知って,被告39ホールディングスから本件顧客情報を取得して使用し,原告に損害を加えた。 また,被告P1及び被告P4は,被告プレミアムオートの役員として上記不法行為を行ってきたものである。 したがって,被告プレミアムオート,被告P1及び被告P4は,民法709条,719条1項に基づく損害賠償責任を負う。 以上の事実によると,被告プレミアムオートの取締役である被告P1及び 被告P4は,会社法429条に基づく責任も負う。 【被告らの主張】いずれも否認又は争う。 不正競争防止法の立法趣旨や訴訟経済の観点からすれば,当該情報が不正競争防止法によ び 被告P4は,会社法429条に基づく責任も負う。 【被告らの主張】いずれも否認又は争う。 不正競争防止法の立法趣旨や訴訟経済の観点からすれば,当該情報が不正競争防止法による保護を受けず又はその利用行為が同法の規制する対象にならない場合には,ことさら情報の保有者に損害を与えることのみを目的としてなされた一種の営業妨害行為としての性質のみを有し,市場における競争行為の一環と見ることができないといった事情がない限り,民法709条の不法行為は成立しない。 本件では上記事情がないから,不法行為が成立することはない。 7 争点7(差止め及び廃棄請求の可否)について【原告の主張】別紙顧客目録①は,P8が原告に提供したP8名簿の顧客情報のうち現在の原告の顧客情報と一致する合計2004件を抽出したものである。 別紙顧客目録②は,P6が原告に提供したP6名簿の顧客情報のうち,現在の原告の顧客情報と一致する合計2668件から,別紙顧客目録①と重複する1735件を取り除いたもの(残り合計933件)である。 これらの顧客情報は,被告P1及び被告P2が不正取得した時点での情報であるから,差止め及び廃棄の対象とすべきものである。 別紙顧客目録③は,被告プレミアムオートの現在の顧客情報のうち原告の現在の顧客情報と一致する合計910件から,別紙顧客目録①及び②と重複する367件を取り除いたもの(残り合計543件)である。 これらの顧客情報は,被告P1及び被告P2が原告から持ち出したものであり,差止め及び廃棄の対象とすべきものである。 別紙顧客目録④は,別紙顧客目録③記載の顧客情報から,被告P2が退職した平成20年4月30日以降に原告の顧客情報として登録された顧客情報を取 り除いたもの(残り合計363件) のである。 別紙顧客目録④は,別紙顧客目録③記載の顧客情報から,被告P2が退職した平成20年4月30日以降に原告の顧客情報として登録された顧客情報を取 り除いたもの(残り合計363件)であるから,少なくともこれについては差止め及び廃棄の対象とすべきである。 【被告らの主張】被告39ホールディングスは,現在,自動車輸出事業を行っていないから,原告の主張する顧客情報を全く使用していない。 被告プレミアムオートは,独自に顧客を獲得したものであり,原告の顧客情報を使用していない。 8 争点8(損害額)について【原告の主張】(1)被告39ホールディングスらの行為による損害ア被告39ホールディングスの受けた利益被告39ホールディングスは,平成20年1月10日から平成21年6月までの間に,23億6099万0072円の売上げを得た。 「TKC経営指標速報版小売業」によれば,平成24年5月1日から平成24年7月31日までの「5912 中古車小売業」の限界利益率は,22.5%である。 そうすると,被告39ホールディングスが前記不正競争(前記3【原告の主張】)により受けた利益の額は,5億3122万2766円であり,原告は同額の損害を被ったものである(不正競争防止法5条2項)。 〔計算式〕2,360,990,072×0.225=531,222,766イ不法行為による逸失利益被告39ホールディングスらの不法行為(前記6【原告の主張】(1)~(3))により,原告は,前記アと同額の利益を失ったものである(民法709条)。 ウ弁護士費用 前記アの損害の1割に相当する弁護士費用は,本件と相当因果関係のある損害である。 エ無形損害原告は,被告39ホールディングスが原告の顧 る(民法709条)。 ウ弁護士費用 前記アの損害の1割に相当する弁護士費用は,本件と相当因果関係のある損害である。 エ無形損害原告は,被告39ホールディングスが原告の顧客に対して販売活動をしたことにより,販売活動の混同又は原告が顧客情報を横流ししているという疑いが生じて,信用を著しく毀損された。 これによる損害額は,500万円を下回らない。 オよって,原告は,被告39ホールディングス,被告P1,被告P2,被告P3,被告クインオート及び被告P5に対し,上記損害額のうち1億円及びこれに対する平成20年3月14日(被告P1が被告39ホールディングスに入社した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2)被告プレミアムオートらの行為による損害ア被告プレミアムオートの受けた利益被告プレミアムオートは,平成21年4月から平成24年3月までの間に,11億7873万5202円の売上げを得た。 前記のとおり,中古車小売業における限界利益率は22.5%であるから,被告プレミアムオートが前記不正競争(前記5【原告の主張】)により受けた利益の額は,2億6521万5420円であり,原告は同額の損害を被ったものである(不正競争防止法5条2項)。 〔計算式〕1,178,735,202×0.225=265,215,420イ不法行為による逸失利益被告プレミアムオートらの不法行為(前記6【原告の主張】(4))により,原告は前記アと同額の利益を失ったものである(民法709条)。 ウ弁護士費用 前記アの損害の1割に相当する弁護士費用は,本件と相当因果関係のある損害である。 エよって,原告は,被告プレミアムオート,被告P1及び被告P4に対し,上記損害額のう ウ弁護士費用 前記アの損害の1割に相当する弁護士費用は,本件と相当因果関係のある損害である。 エよって,原告は,被告プレミアムオート,被告P1及び被告P4に対し,上記損害額のうち5000万円及びこれに対する被告プレミアムオート設立の日である平成21年4月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求める。 【被告らの主張】(1)被告39ホールディングスの受けた利益ア被告39ホールディングスの受けた利益不正競争防止法5条2項の利益は,純利益である。 被告39ホールディングスの平成19年度の純利益は1167万9558円の赤字であり,平成20年度も7458万5595円の赤字であり,平成21年度も4109円の赤字であった。 したがって,原告に支払うべき利益(損害)はない。 イ不正競争又は不法行為が成立しうる売上げ被告39ホールディングスは,平成20年1月10日から平成21年6月までの間に,23億6127万7804円の売上げを得た。 J1(被告39ホールディングス)売上利益顧客別一覧表(乙45)に記載のある21億7014万4865円のうち,以下の売上げは,原告が主張する不正競争又は不法行為と因果関係がないから控除されるべきである。 (ア) P6が提供したP6名簿に登録されていない顧客不正競争又は不法行為が成立しうるのは,被告39ホールディングスの元代表取締役であるP6の保有していたP6名簿(ICEの顧客を除く。)に登録されていた顧客に限られる。 当該顧客に対する車両販売の対価は,14億0830万4917円で あり,その余の7億6183万9948円は因果関係がない。 (イ) 被告39ホールディングスが独自に取引を開始した顧客前記(ア)で排除されなかった 対価は,14億0830万4917円で あり,その余の7億6183万9948円は因果関係がない。 (イ) 被告39ホールディングスが独自に取引を開始した顧客前記(ア)で排除されなかった顧客のうちグローバルロジスティックス社は,もともと被告39ホールディングス独自の顧客である。 したがって,同社に対する車両販売の対価2億3125万7175円は因果関係がない。 また,被告39ホールディングスのウェブサイトから独自に登録した顧客らに対する車両販売の対価2億3209万8570円についても因果関係がない。 (ウ) 平成20年7月以降に原告に登録された顧客さらに,原告の主張を前提とすると,被告P1,被告P2は,平成20年4月末日ころまでの間に本件顧客情報を不正に取得して被告39ホールディングスに開示したというのである。そうすると,その後相当期間が経過した同年7月以降に被告39ホールディングスにおいて会員登録された顧客については,原告から顧客情報を取得したものではないと考えられる。 したがって,これらの顧客に対する車両販売の対価1億0665万4819円についても因果関係はない。 (エ) 被告P1独自の顧客被告P1は,主要な顧客であった約24社について,会社名や氏名を記憶しており,チャットなどの連絡手段も確保していた。これらの顧客は被告P1との個人的な信頼関係に基づいて取引をしていたものであるから,これらの顧客に対する車両販売の対価2億9022万5243円についても因果関係がない。 (オ) インターネットで検索が可能な顧客インターネット上で検索可能な顧客に対する車両販売の対価2億89 29万3808円については,不正競争や不法行為によらずに販売することができたものであるから,因果関係がない。 ウ 客インターネット上で検索可能な顧客に対する車両販売の対価2億89 29万3808円については,不正競争や不法行為によらずに販売することができたものであるから,因果関係がない。 ウ経費(売上原価以外の変動経費)運賃,燃料費,旅費交通費,通信費,支払手数料は,車両売上の増加に伴って増加する変動経費であるから,粗利益から控除すべき経費である。 また,役員報酬,給与手当,法定福利費も変動経費であり,利益から控除すべき経費である。 仮に,上記人件費全体が控除されないとしても,少なくとも販売台数×1万円の人件費は経費として控除すべきである。被告39ホールディングスは設立以降平成21年6月30日までの間に,少なくとも2779台の車両を販売したから,2779万円を控除すべきである。 (2)被告プレミアムオートの受けた利益ア被告プレミアムオートの受けた利益前記のとおり,不正競争防止法5条2項の利益は純利益である。 被告プレミアムオートの純利益は,平成21年度が622万9327円の赤字であり,平成22年度が1058万1395円の赤字であった。 したがって,原告に対し支払うべき利益(損害)はない。 イ不正競争又は不法行為が成立しうる売上げ被告プレミアムオートは,平成21年4月から平成24年3月までの間に,11億7873万5202円の売上げを得た。 このうち粗利益は8951万4923円であり,このうちP6が原告に提供したP6名簿に登録されていた顧客に対するものは7308万7823円である。さらに,このうち合計6740万6573円は,以下のとおり,原告が主張する不正競争又は不法行為と因果関係がないから控除されるべきであり,これらを控除した残額は568万1250円である。 (ア) 被告39ホールディングスと 40万6573円は,以下のとおり,原告が主張する不正競争又は不法行為と因果関係がないから控除されるべきであり,これらを控除した残額は568万1250円である。 (ア) 被告39ホールディングスとの関係で売上げがなかった顧客 別紙顧客目録④の顧客には,被告39ホールディングスとの間で一切販売履歴のない顧客が含まれている。 これらの顧客は,被告プレミアムオートが独自に開拓した顧客であるから,これらの顧客に対する売上粗利益合計3443万9248円は因果関係がない。 (イ) 被告プレミアムオートの営業開始後3か月を経過してから登録された顧客被告プレミアムオートが本格的な営業を開始した平成21年6月から3か月が経過した同年9月以降に会員登録した顧客は,被告39ホールディングスとの関係から引き継がれた顧客ではないから,原告の主張する不正競争又は不法行為と因果関係がない。 したがって,これらの顧客に対する売上粗利益合計545万4740円は因果関係がない。 (ウ) 被告P1独自の顧客被告P1との信頼関係等から取引をしていた顧客への売上粗利益合計1893万9863円(ア,イとの重複分除く。乙46)についても因果関係がない。 (エ) インターネットを通じて検索可能な顧客前同様に,インターネットを通じて検索可能な顧客に対する売上粗利益合計857万2722円は因果関係がない。 ウ経費(売上原価以外の変動経費)運賃(船荷証券を郵送する際の費用など),燃料費(従業員の移動費用など),旅費交通費(従業員の移動費用など),通信費(電話代など),支払手数料(振込手数料,為替手数料,外為チャージ手数料など)は,車両売上げの増加に伴って増加する変動経費であるから,粗利益から控除すべきである。 また,役員報酬 信費(電話代など),支払手数料(振込手数料,為替手数料,外為チャージ手数料など)は,車両売上げの増加に伴って増加する変動経費であるから,粗利益から控除すべきである。 また,役員報酬,給与手当,法定福利費などの人件費も,売上増加のためには必要なものであり,利益から控除すべき経費である。 仮に,人件費全体が経費として控除されないとしても,少なくとも販売台数×1万円については経費として控除すべきである。被告プレミアムオートは設立以降平成24年5月までの間に,少なくとも970台の車両を販売したから,970万円を控除すべきである。 (3)寄与度そもそも顧客の連絡先情報を搭載した顧客名簿の価値というものは,顧客との接触や交渉という一部分に集約されるものであり,実際に販売につながるか否かは営業努力いかんによる。 顧客名簿の寄与度は,せいぜい1割程度である。 第4 当裁判所の判断 1 紛争に至る経緯前提事実,証拠(甲1~6,8,11~17,19~22,26~28,33,34,39~43,48,50,53~55,57,58,61,62,71,72,乙1,2,7,8,30~34,41~44,丙2~4〔枝番号は省略〕,証人P8の証言,訴え取下前の被告P6,原告代表者,被告P5,被告P3,被告P1,被告P2,被告P4の各本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。 (1)原告の設立と営業システム原告の代表者であるP9は,昭和63年4月,中古車販売を始め,平成3年12月27日,株式会社に組織変更し,原告を設立した。 原告は,中古車のオークション会場において,中古車を落札し,これを海外の顧客に販売していた。 原告は,インターネットを通じて,海外の顧客との取引を行っていたところ,多額の ,原告を設立した。 原告は,中古車のオークション会場において,中古車を落札し,これを海外の顧客に販売していた。 原告は,インターネットを通じて,海外の顧客との取引を行っていたところ,多額の開発資金を投入し,インターネットを利用した,中古車の販売シ ステム(トラッカー)を開発した。 原告は,上記システムを使用し,顧客の希望により,中古車を購入し,オークション会場において落札した場合は,その場で落札結果を自己のサイトに反映させ,顧客がこれにアクセスし,購入するという方法をとるようになった。 上記システムを使用することにより,海外から多くの顧客が,原告から中古車を購入するようになり,業績を伸ばしていった。 (2)被告39ホールディングスの設立ア事業計画被告P5は,京都の業者との間で,平成19年中頃,ロシアを市場とした中古車販売業を計画していた。両名は,中古車販売業を営んでいたP6や,車両の運送に関する事業を行っていた被告P3に声をかけ,さらに,知り合いの自動車販売業者を加えた5名で,同年10月,ロシアを旅行し,事業計画を具体化させ,新会社の設立を協議した。 その具体的内容は,被告P5が資金を提供し,被告P3が運送面を提供し,P6が営業を担当するという図式のもと,被告39ホールディングスの設立計画が進行した。 イ篠山での会議平成19年11月22日,兵庫県篠山市所在の被告クインオートの本社会議室において,被告39ホールディングスの役員に就任する予定の者が集まり,事業計画のための会合が開かれた。 同月26日にも,同様の会合が開かれ,P6は,被告P1を同行させ,被告P1は,持参したパソコンにより,インターネットを使用した取引を説明した。 ウ神戸でのパーティ平成19年12月6日は,P6の誕 6日にも,同様の会合が開かれ,P6は,被告P1を同行させ,被告P1は,持参したパソコンにより,インターネットを使用した取引を説明した。 ウ神戸でのパーティ平成19年12月6日は,P6の誕生日であったが,神戸市内のホテル において,被告39ホールディングスの設立を前に,関係者の顔合わせを兼ねた誕生パーティが開かれた。パーティでは,被告P5らが挨拶し,被告39ホールディングスの設立の意義を述べるなどした。 なお,このパーティの趣旨について,被告らは,P6の誕生パーティで,他の趣旨はなかったと主張するが,その出席者の顔ぶれから考えて,単なる誕生パーティのみの目的で行われたものとは考えられず,設立後の被告39ホールディングスに関係する人物の顔合わせの会と考えるのが相当である。また,前記アのとおり,被告らの間では,当初,ロシアを市場とした中古車販売業が計画されていたのであるが,遅くとも,上記パーティの時点では,被告39ホールディングスにおいて,本件顧客情報を使用することについても計画されていたものと認められる。 エ被告39ホールディングスの設立翌年の平成20年1月10日,被告クインオートの本店所在地(篠山市)と同じ住所地に,被告39ホールディングスが設立された(設立当時の商号は「株式会社ジェイワントレーディング」)。 P6が代表取締役社長に就任し,被告P1は名目上の副社長に(取締役への就任はしていない。),被告P3は専務取締役に,その外6名が取締役にそれぞれ就任した(甲1,54,55)。 被告P5は,出資するのみで,被告39ホールディングスの取締役には就任しなかったが,オーナーとして位置づけられており(甲34),また,被告クインオートの従業員であるP7を監査役として派遣していた。 オ原告元従業員の関与 ,被告39ホールディングスの取締役には就任しなかったが,オーナーとして位置づけられており(甲34),また,被告クインオートの従業員であるP7を監査役として派遣していた。 オ原告元従業員の関与P6は,被告39ホールディングスの設立に当たり,原告の従業員であった被告P1らに,被告39ホールディングスへ転職するように働きかけ,これにより被告P1(平成12年5月から平成20年2月まで原告勤務),被告P2(平成19年2月から平成20年3月まで原告勤務),被告P4(平 成17年12月から平成20年4月まで原告勤務)及びP8(平成17年4月から平成19年6月まで原告勤務)らが,被告39ホールディングスで勤務するようになったものである。 被告P1は,原告を退職する直前,頻繁にトラッカーにアクセスし,データをエクスポートする権限を付与されていたことを利用して,原告の顧客情報を大量にコピーして持ち出した(後記3参照)。 また,被告P2も,原告を退職する直前,原告の顧客情報をコピーして持ち出した(後記3参照)。 なお,被告P1は,原告に勤務していたころは,完全歩合給であったが,被告39ホールディングスに採用されるに当たり,月額150万円の固定給と副社長の地位を約束されていた(被告P1本人19頁)。 (3)原告からの顧客情報使用中止の申入れと被告39ホールディングスのその後の営業ア被告P1及び被告P2による原告顧客に対するメール送信被告P1は,原告に勤務していたときの顧客に対し,平成20年3月14日,被告39ホールディングスの従業員として,自動車の販売リストを知らせるメールを送信した(甲4)。 また,被告P2は,被告P1と同様,原告に勤務していたときの顧客に対し,平成20年4月3日,被告39ホールディングスの従業員と 業員として,自動車の販売リストを知らせるメールを送信した(甲4)。 また,被告P2は,被告P1と同様,原告に勤務していたときの顧客に対し,平成20年4月3日,被告39ホールディングスの従業員として,自動車の販売リストを知らせ,購入を促すメールを送信した(甲6)。 イ顧客情報使用の中止申入れ原告は,前記アのメール送信の情報を入手し,平成20年4月17日,被告39ホールディングスに対し,顧客データの使用を中止するよう申し入れた(乙1)。 ウ被告39ホールディングスの対応これに対して,P6は,一旦,本件顧客情報の使用を控えるよう指示し たが,中止することなく,使用を継続した(甲13の1~3,乙2の1・2,訴え取下前の被告P6本人20頁,被告P5本人17頁)。なお,被告P1は,本件顧客情報の使用を止めた後,使用を再開したことはないかの供述をするが(被告P1本人48頁),上記認定事実に係る証拠に照らし信用できない。 エ被告39ホールディングスの業績被告39ホールディングスの売上げは,平成20年4月,5月は,月額6000万円前後であったが,平成20年6月には,一挙に2億円台に乗り,翌7月には2億6941万円,8月には2億6676万円,9月には2億8503万円,10月には3億4374万円を売り上げている(いずれも1万円未満切り捨て)。 上記売上げは,被告P1が加入し,当初から予定されていた,平成20年5月の本件顧客情報に含まれる顧客らへのEメール一斉配信を実施したことなど,本件顧客情報を使用したことによる影響であることが強く推認される。 オ被告39ホールディングスの営業方針の転換被告39ホールディングスでは,平成21年5月30日,P10が,新しく代表取締役に就任するとともに,旧商号(株式会社ジェイ ことが強く推認される。 オ被告39ホールディングスの営業方針の転換被告39ホールディングスでは,平成21年5月30日,P10が,新しく代表取締役に就任するとともに,旧商号(株式会社ジェイワントレーディング)から現在の商号に変更した。 そのころ,海外への中古車販売から撤退し,被告P1の設立した被告プレミアムオートが,被告39ホールディングスの事業を引きついだ(甲7,乙8)。 (4)被告クインオート,同P5,同P3及びP6と被告39ホールディングスの関係の推移被告クインオートは,平成20年10月ころ,被告39ホールディングスの株式を全て売却した。しかし,上記株式の売却先はP7であり(被告P5 本人45頁),未だ,実質的なオーナーであるものと推測され,被告クインオート及び被告P5が,被告39ホールディングスの経営から手を引いたのは,外見上に過ぎないと考えられる。 P6は,平成21年1月23日,取締役を辞任し,代表取締役を退任した(登記は,平成21年4月20日)。 被告P3は,平成21年3月31日,被告39ホールディングスの取締役を退任した(登記は,平成21年4月20日)。 (5)被告プレミアムオートの設立ア被告P1,被告P4の取締役就任被告P1は,平成21年4月22日,被告プレミアムオートを設立し,代表取締役に就任した。被告P4も同社の取締役に就任した。 イ被告プレミアムオート被告プレミアムオートは,被告39ホールディングスと同じ事業を行い,本件顧客情報の使用も継続している。 なお,被告プレミアムオートと被告39ホールディングスの事務所は同一住所地にあり,また,被告クインオートは,被告プレミアムオートの営業について関与している(甲71)。 2 争点1(本件顧客情報は,営業秘密である ミアムオートと被告39ホールディングスの事務所は同一住所地にあり,また,被告クインオートは,被告プレミアムオートの営業について関与している(甲71)。 2 争点1(本件顧客情報は,営業秘密であるか)について以下のとおり,本件顧客情報は,原告の営業秘密に当たると認めることができる。 (1)秘密管理性ア本件顧客情報は,アクセスできる者が制限されていたこと原告が顧客情報等を管理するために,専用のアプリケーションソフトであるトラッカーを開発していたこと,原告の従業員がトラッカーを利用するためには,ユーザー名及びパスワードの入力が必要であったことは,当事者間に争いがない。 また,証拠(甲23~25,49)によれば,原告の従業員が初期設定からユーザー名及びパスワードを変更していたこと及び被告P1自身もパスワードを変更していたことが認められる。 さらに,原告の従業員が私物のパソコンにトラッカーをインストールするためには,「プログラム等使用許諾依頼書」に署名することが義務づけられていたこと,同書面には,退職時には必ずアンインストール作業を原告に依頼すること及び「①無断複製 ②機密漏洩 ③A/Tに付帯する全てのデーターの譲渡・転売 ④IBC(株)への損害付与」が禁止されていたこと,実際にトラッカーのインストール及びアンインストール作業は,従業員個人ではなく,作業担当者が行っていたことも認められる(甲15,51)。 加えて,被告P1が利用していたクライアントコンピュータから原告のデータベースへのアクセス回数は,平成19年10月から平成20年1月までの間に,1か月当たり,順に139回,114回,107回及び107回であったのに対し,平成20年2月には1か月227回と倍増しており,同月1日だけで70回にも及ぶことが認 0月から平成20年1月までの間に,1か月当たり,順に139回,114回,107回及び107回であったのに対し,平成20年2月には1か月227回と倍増しており,同月1日だけで70回にも及ぶことが認められる(甲19,20)。同様に,証拠(甲21,22)によれば,被告P2が利用していたクライアントコンピュータからのアクセス回数も,平成19年10月から平成20年3月24日までの間に,1か月当たり,順に77回,65回,21回及び13回であったのに,平成20年2月には145回に急増し,同月6日だけで32回にも及ぶことが認められる。このような急激なアクセス回数の増加は,1回当たりのアクセスで入手できる情報が制限されていたところ,被告P1及び被告P2が本件顧客情報を持ち出すためにアクセス回数を増加させたものであるとする原告の主張を裏付けるものである。被告P1及び被告P2はこの点について首肯できる説明をしていない。 原告が管理業務等を委託した関連会社の従業員についてみると,証拠(甲 16)によれば,原告は,業務委託先との間で,業務委託契約書を締結していたこと,業務委託先の従業員は,ID及びパスワードを付与されてトラッカーへのアクセス権限を付与されていたこと,受託業務等の処理手続以外の目的での利用は禁止されており,利用者が業務中に知り得た原告の情報及び個人情報(顧客情報を含む)を漏洩又は使用して,原告に損害を与えた場合には損害賠償の義務を負うとされていたことが認められる。 上記争いのない事実及び証拠によって認定できる客観的事実によると,原告において,本件顧客情報にアクセスできる者は制限されていたことが認められる。 これに対し,被告P1,被告P2,被告P4及び証人P11は,原告において本件顧客情報にアクセスできる者が制限されていなかっ いて,本件顧客情報にアクセスできる者は制限されていたことが認められる。 これに対し,被告P1,被告P2,被告P4及び証人P11は,原告において本件顧客情報にアクセスできる者が制限されていなかった旨の供述又は証言をするが,いずれも上記客観的事実と整合しないものであり,採用できない。 イ本件顧客情報にアクセスする権限を有する者は,本件顧客情報が秘密であることを認識していたこと前記アのような本件顧客情報の管理状況からすれば,本件顧客情報にアクセスする権限を有する者は,本件顧客情報が秘密であることを当然に認識していたものと認めることができる。 そして,原告の就業規則(甲14)には,「業務上で知った機密などを,他に漏らすこと」について禁止事項として規定されていたこと,前記アのとおりトラッカーに関する「プログラム等使用許諾依頼書」には「②機密漏洩 ③A/Tに付帯する全てのデーターの譲渡・転売 ④IBC(株)への損害付与」を禁止する旨の記載があったことが認められるところ,本件顧客情報が,これらの禁止事項の対象となる「機密」あるいは「A/Tに付帯する全てのデーター」に含まれることも当然に認識することができたと認められる。 (2)有用性及び非公知性本件顧客情報は,原告のインターネットサイトから会員登録をした顧客の氏名又は名称,担当者名,担当者のEメールアドレス,電話番号並びに国及び地域である。 原告のように,インターネットを通じて,日本の中古車を海外の顧客に販売する事業において,顧客に対する営業活動をするに当たり,これらの情報が必要不可欠のものであり,客観的に有用な情報であることは多言を要しない。 被告らは,インターネットの検索エンジンを3つ用いて検索したところ,本件顧客情報に含まれるケニアの顧客合計1010 情報が必要不可欠のものであり,客観的に有用な情報であることは多言を要しない。 被告らは,インターネットの検索エンジンを3つ用いて検索したところ,本件顧客情報に含まれるケニアの顧客合計1010名のうち合計176名及びニュージーランドの顧客合計248名のうち82名について,検索結果に表示することが可能であったから,これらの情報は公知のものであり,本件顧客情報は有用性を欠くものである旨主張する。 しかしながら,関連するタームを用いて検索して検索結果に表示することができたからといって,上記顧客らが日本から中古車を輸入する業者であるか,実績があるかなどについては明らかとはならないのであって,これにより本件顧客情報が公知のものであるなどとはいえない。そもそも,複数の検索エンジンを用いて,ようやく検索できたというのであり,しかも,ケニアの顧客については8割以上(乙3),ニュージーランドの顧客については6割以上(乙5)の者について検索が不可能であったというのであるから,上記被告の主張はおよそ採用しがたいものである。 なお,中古車のオークションに参加した場合,オークションで入札した者の一覧を入手することが可能であり,その中には,海外の顧客もいる(乙39)。しかし,日本のオークションに直接海外から入札する者は,もともと,原告や被告39ホールディングスの顧客として予定されず,原告の顧客となるべき者は,原告を通じて入札しているので,上記一覧からは,原告の顧客 となるべき者の情報を知ることはできない。 (3)小括よって,本件顧客情報については,秘密管理性,有用性及び非公知性のいずれについても認めることができるから,原告の営業秘密に当たるものということができる。 3 争点2(被告P1及び被告P2は,不正の手段により本件顧客情報を取得 は,秘密管理性,有用性及び非公知性のいずれについても認めることができるから,原告の営業秘密に当たるものということができる。 3 争点2(被告P1及び被告P2は,不正の手段により本件顧客情報を取得するなどしたか)について前記2(1)のとおり,被告P1及び被告P2が利用していたクライアントコンピュータから原告のデータベースへのアクセス回数は,被告P1及び被告P2が原告を退職する直前に急増しており,このことは被告P1及び被告P2が本件顧客情報を持ち出すためにアクセス回数を増加させたものであると考えるほかに説明が付かず,被告P1及び被告P2は,原告との合意や就業規則に違反し,本件顧客情報を不正に取得したと認めるのが相当である。 4 争点3(被告39ホールディングスは,本件顧客情報について不正取得行為が介在したことを知って取得するなどしたか)について被告39ホールディングスの代表取締役であったP6は,被告39ホールディングスを設立するに当たり,被告P5及び被告P1との間で,被告P1が本件顧客情報を持ち出して被告39ホールディングスにおいて使用することを計画したこと,被告39ホールディングスにおいて,被告P1及び被告P2が原告から持ち出した本件顧客情報を使用していたと供述する(訴え取下前の被告P6本人21頁)。被告39ホールディングスの元従業員であるP8も同旨の証言をしている(証人P86頁)。 P6及びP8自身,あえてそのような虚偽の事実を述べる理由はなく,これらの供述及び証言は十分に信用することができる。 そもそも,被告P1及び被告P2は,本件顧客情報について営業秘密であることを否定しながらも,原告のデータベースから顧客情報を持ち出したこと, これらの情報を被告39ホールディングスにおいて使用していたことを認める供 P2は,本件顧客情報について営業秘密であることを否定しながらも,原告のデータベースから顧客情報を持ち出したこと, これらの情報を被告39ホールディングスにおいて使用していたことを認める供述をしている。 さらに,P8は,被告39ホールディングスが使用していたものとするP8名簿(甲9)を原告に提供したところ,当該顧客目録2270件中のうち2004件,割合にして88.28%が現在の原告の顧客情報と一致することが認められる(被告らも争うことを明らかにしていない。)。 P6は,被告39ホールディングスが使用していたものであるとするP6名簿(甲26)を原告に提供しており,当該顧客目録3187件のうち2668件,割合にして83.72%が現在の原告の顧客情報と一致することが認められる(被告らも争うことを明らかにしていない。)。 前記2のとおり,本件顧客情報は,原告の営業秘密であり,被告39ホールディングスの代表取締役であったP6は,その管理の状況を知っていたのであるから,被告P1や被告P2から開示を受けた情報が大量であることから,不正の手段により取得されたものであることは,容易に知ることができたというべきである。 これらのことからすれば,被告P1及び被告P2が原告の営業秘密である本件顧客情報を原告から不正に持ち出し,被告39ホールディングスに開示したこと,被告39ホールディングスにおいても,そのことを知りながら開示を受け,使用していたことについて,優に認めることができる。 5 争点4(被告P5,被告クインオート及び被告P3は,被告39ホールディングスによる本件顧客情報の不正取得を謀議するなどしたか)について(1)被告クインオート及び被告P5前記2のとおり,原告や被告39ホールディングスが行っていたように,海外の顧客に中 ールディングスによる本件顧客情報の不正取得を謀議するなどしたか)について(1)被告クインオート及び被告P5前記2のとおり,原告や被告39ホールディングスが行っていたように,海外の顧客に中古車を販売するにおいては,一斉配信などを含む営業が重要であり,本件顧客情報は原告の営業秘密であると認められる。被告39ホールディングスでは,原告で勤務していたP6や被告P1などが,中心的な役 割を果たすことが予定されており(甲33,34),被告39ホールディングスの使用した顧客情報が,原告で使用されていた顧客情報であり,原告の営業秘密であることを,被告39ホールディングスの設立に関与し,その後,経営に直接関与していた人物らは十分に認識していたと認められる。 また,被告P1や被告P2の不正に取得した本件顧客情報は,2000件を超えるものであり,これらが不正に取得されたものであることは容易に判断できたと考えられる。 ところで,被告P5は,直接的には被告39ホールディングスの取締役には就任しなかったし,被告39ホールディングスの経営者会議に常時参加するわけではなく,時折,顔を見せるだけであった。しかしながら,被告39ホールディングスの営業が始まった直後ともいえる平成20年4月17日,原告から顧客データの使用の中止を求める通知書(乙1)が届き,被告P5はその報告を受け,その後の対応を協議しているのであるから(被告P5本人17,40頁),被告P5は,被告39ホールディングスが,本件顧客情報を使用し,その後,使用を継続していたことを知悉していたというべきである。 しかも,被告クインオートは,被告39ホールディングスの設立資本のうち51%を出資し,被告P5は,被告39ホールディングスにおいてオーナーとして位置づけられており(前記1(2) うべきである。 しかも,被告クインオートは,被告39ホールディングスの設立資本のうち51%を出資し,被告P5は,被告39ホールディングスにおいてオーナーとして位置づけられており(前記1(2)エ),被告39ホールディングスの設立時における本店所在地・本社事務所も被告クインオートの本店所在地・本社事務所と同一であったこと,被告39ホールディングスの設立時における取締役の多くが相前後して被告クインオートの取締役に就任していたことは当事者間で争いがない。 また,証拠(被告P5本人22頁,甲40の1・2)によれば,被告39ホールディングス及び被告プレミアムオートは,中古車オークションで中古車を落札するに当たり,実際は被告クインオートがいったん落札し,その後, 被告クインオートから購入する形態で取引をしていたことが認められ,証拠(甲40の1・2)によれば,被告クインオートが平成20年9月30日の時点で,被告39ホールディングスに対し,6億3270万9797円もの債権(上記車両代金の売掛債権等)を有していたことが認められる。 さらに,被告39ホールディングスの総務機能・経理機能は,被告クインオートが行うことが原則とされていた(甲54,被告P5本人33頁)。 したがって,被告P5は,被告39ホールディングスの営業について,大きな影響力を有しており,被告P5の指示があれば,被告39ホールディングスの経営陣は,これに従わざるを得ない状況にあったといえる。また,被告P5は,被告39ホールディングスの経営について高い関心を有しており,被告39ホールディングスの経営に直接関与していた人物と同様の認識を有していたというべきであって,少なくとも,被告39ホールディングスが本件顧客情報を使用していることを知りながら,これを利用するままにしてい ホールディングスの経営に直接関与していた人物と同様の認識を有していたというべきであって,少なくとも,被告39ホールディングスが本件顧客情報を使用していることを知りながら,これを利用するままにしていたものと認めることができる。 しかも,前述したとおり,本件顧客情報は,2000件を超えるものであり,これらが不正に取得されたものであることは容易に判断できたと考えられる。 これらのことからすると,被告P5は,本件顧客情報が不正に取得されたことを知りながら,被告39ホールディングスに,これを使用させたのと同視することができる。 さらに,P6は,被告クインオートの代表取締役であった被告P5が,被告39ホールディングスの設立前に,被告P1が原告から本件顧客情報を持ち出して使用することを認識していた旨の供述をしている。 これに対し,被告P5は,これを否定し,資金は拠出したものの,被告39ホールディングスの業務については全く関与しておらず,認識もなかった旨の供述をしている。 しかし,上述した客観的状況に照らせば,被告クインオートの代表者であった被告P5が,被告39ホールディングスの業務について全く認識していなかった旨の被告P5の上記供述は到底信用することができないものである。 また,P6が被告クインオート及び被告P5に不利な虚偽の事実を述べなければならない事情も認められない。 以上によると,被告P5は,被告39ホールディングスの代表者取締役であったP6や専務取締役であった被告P3らとともに,被告P1,被告P2,被告39ホールディングスによる前記不正競争を共同して実行したというべきであり,原告に対し,不正競争防止法2条1項5号又は8号,4条,民法719条1項に基づく損害賠償責任を負う。 仮に,被告P5が,被告39ホールデ グスによる前記不正競争を共同して実行したというべきであり,原告に対し,不正競争防止法2条1項5号又は8号,4条,民法719条1項に基づく損害賠償責任を負う。 仮に,被告P5が,被告39ホールディングスの行為が許されると考えたというのであれば,それは,違法性の錯誤にしか過ぎず,上記認定を左右することはない。 また,被告クインオートと被告39ホールディングスとの関係は上述したとおりであり,被告クインオートにとって,被告39ホールディングスの業績が上がることは最大の関心事であったことが認められる。したがって,被告P5の上記行為は,被告39ホールディングスらと共同して実行されただけでなく,被告クインオートの代表者としての行為であり,被告クインオートは,代表取締役である被告P5がその職務を行うについて第三者である原告に対し損害を加えたものであるから,会社法350条に基づく損害賠償責任を負う。 (2)被告P3前記(1)のとおり,被告39ホールディングスの設立に関与し,その後,経営に直接関与していた者は,本件顧客情報が原告の営業秘密であり,これを不正に取得したものが,被告39ホールディングスに開示され,被告39ホールディングスがこれを使用していることを認識していたと認められる。 これに対し,被告P3は,これを否定する供述をする。 そこで検討すると,被告P3は,上述したとおり,被告39ホールディングス設立当初から専務取締役として,営業会議にも毎回出席していた(甲54,55)。これは,被告39ホールディングスが中古車を輸出するに当たって,被告P3が関係する会社に委託していた(当事者間に争いがない。)からであると考えられる。 このように,被告P3は,被告39ホールディングスの設立時から主体的に深くその経営に関与していた たって,被告P3が関係する会社に委託していた(当事者間に争いがない。)からであると考えられる。 このように,被告P3は,被告39ホールディングスの設立時から主体的に深くその経営に関与していたのであるから,重要な営業方針の決定,すなわち顧客の確保等について注意を払わなかったとか,認識していなかったという供述は信用しがたく,被告39ホールディングスが本件顧客情報を使用していることを認識していたというべきである。 また,被告P5と同様に,本件顧客情報が原告にとって重要であり,被告P1がこれを大量に持ち出すことは,不正な取得に当たることも認識していたと認めることができる。 以上によると,被告P3は,前記(1)における被告P5と同様,P6や被告P5らとともに,被告P1,被告P2,被告39ホールディングスによる前記不正競争を共同して実行したというべきであり,原告に対し,不正競争防止法2条1項5号又は8号,4条,民法719条1項に基づく損害賠償責任を負う。 なお,被告P3は,原告から本件顧客情報の使用の中止を申し入れる通知書(乙1)が届いた後,P7から,問題ないと言われたとも供述するが(被告P39頁),前記(1)において,被告P5について論じたのと同様,上記認定に照らし,上記弁解を採用することはできない。 仮に,民法719条1項による謀議が認められないとしても,上記認定事実によると,被告P3は,被告39ホールディングスが不正競争に及んでいたことを容易に認識することができたものと認めることができ,これを阻止 しなかったことは職務遂行における重大な過失に当たるものというべきであるから,会社法429条に基づく損害賠償責任を負うものというべきである。 6 争点5(被告プレミアムオートは,本件顧客情報について不正取得行為が介在し 行における重大な過失に当たるものというべきであるから,会社法429条に基づく損害賠償責任を負うものというべきである。 6 争点5(被告プレミアムオートは,本件顧客情報について不正取得行為が介在したことを知って取得するなどしたか)について(1)被告プレミアムオートによる本件顧客情報の取得被告プレミアムオートは,自己の使用する顧客名簿を開示しているところ,そのうち910件が原告の顧客名簿と一致する(弁論の全趣旨)。 前記1(3)オのとおり,被告39ホールディングスが,営業方針を転換し,海外への中古車販売から国内におけるトラック販売に営業の中心を移した時期に,被告プレミアムオートを設立し,被告39ホールディングスの中止した事業と同じ事業を行っている。 また,被告プレミアムオートは,被告P1が設立当時からの代表取締役である上,証拠(甲57)によれば,被告プレミアムオートは,被告39ホールディングスと本店所在地が同一であり,営業所も同一のビルに所在しているばかりでなく,ビル内の同一の区画にあり,入口の扉にも社名が併記されていることが認められる。 これらのことからすれば,被告プレミアムオートは,被告39ホールディングスの事業を実質的に引き継ぎ,活動していると認めるのが相当である。 被告P1は,被告プレミアムオートの顧客名簿は,本件顧客情報を元にせず,営業活動を通じて,独自に取得し,集積したものである旨主張する。 しかし,証拠(甲39の1)によれば,被告プレミアムオートの従業員が平成22年7月16日付けで,原告の従業員が管理するアドレス(テストメールアドレス)に対し,車両購入を勧誘するEメールを送信したことが認められる。被告プレミアムオートが被告39ホールディングスから本件顧客情報の開示を受け,これを使用しているのでない限り ス(テストメールアドレス)に対し,車両購入を勧誘するEメールを送信したことが認められる。被告プレミアムオートが被告39ホールディングスから本件顧客情報の開示を受け,これを使用しているのでない限り,このような事態は起こりえないものである。 これらのことからすれば,被告プレミアムオートは,被告39ホールディングスが被告P1及び被告P2から不正取得を知りながら開示を受け,取得した本件顧客情報を,引き継いで使用していることが認められる。 (2)被告プレミアムオートの認識前記2から4までに述べたところに加え,被告P1を含め僅か3名で被告プレミアムオートの営業を行っていることからすると,被告プレミアムオートの代表取締役である被告P1は,前記(1)の事実,すなわち,本件顧客情報に関する不正取得行為が介在したことを知って本件顧客情報を取得し,使用しているものと認めることができる。 (3)会社法429条1項に基づく責任被告P1及び被告P4は,被告プレミアムオートの取締役(被告P1は代表取締役)であるところ,前述したとおり,上記2名を含め僅か3名で営業していることから,前記(1)の事実を認識していたというべきであり,被告プレミアムオートが上記不正競争をすることについて,故意又は重大な過失があるものというべきであるから,会社法429条1項に基づく責任を負う。 7 争点7(差止め及び廃棄請求の可否)について被告39ホールディングスは,現在,主に国内でのトラック販売事業を営んでおり,中古車の輸出販売業は一切行っていないし,本件顧客情報も使用していない旨主張する。 しかしながら,証拠(甲57,72)によれば,被告プレミアムオートは,被告39ホールディングスと同一のビルに所在しているばかりではなく,同一の区画にあり,入り口の扉 使用していない旨主張する。 しかしながら,証拠(甲57,72)によれば,被告プレミアムオートは,被告39ホールディングスと同一のビルに所在しているばかりではなく,同一の区画にあり,入り口の扉にも社名が併記されていること,被告39ホールディングスは,平成24年2月15日の時点でも,インターネット上で,中古車販売に関する広告宣伝をしていたことが認められる。 これらのことからすると,被告39ホールディングス及び被告プレミアムオートが本件顧客情報を用いる危険があるから,原告によるこれらの者らに対 する本件顧客情報の使用差止め及び廃棄の請求には理由がある。 別紙顧客目録①は,P8が原告に提供したP8名簿(甲9)のうち現在の原告の顧客情報と一致する合計2004件を抽出したものであり,別紙顧客目録②は,P6が原告に提供したP6名簿(甲26)のうち,現在の原告の顧客情報と一致する合計2668件から,別紙顧客目録①と重複する1735件を取り除いたもの(残り合計933件)である。 これらの顧客情報は,P6及びP8の供述及び証言によれば,被告P1及び被告P2が原告から不正取得したものであるから,差止め及び廃棄の対象とすべきものである。もっとも,別紙顧客目録①のうち,番号13及び15はP6,番号79は被告P1,番号365は被告P3が経営する会社の関係者,番号1016及び1017はグローバルロジスティック社(後記8のとおり被告らの不正競争と因果関係がない。),番号1478は被告P2の連絡先であるから,これらを除くのが相当である。また,別紙顧客目録②のうち,番号2,184,551及び683はグローバルロジスティック社,番号245及び246はP6の連絡先であるから,これらも除くのが相当である。他に,除外すべき顧客らを認めるに足りる主張立証は ②のうち,番号2,184,551及び683はグローバルロジスティック社,番号245及び246はP6の連絡先であるから,これらも除くのが相当である。他に,除外すべき顧客らを認めるに足りる主張立証はない。 別紙顧客目録③は,被告プレミアムオートの現在の顧客情報のうち原告の現在の顧客情報と一致する合計910件から,別紙顧客目録①及び②と重複する367件を取り除いたもの(残り合計543件)である。 これらの顧客情報には,被告P2が退職した平成20年4月30日以降に原告の顧客情報として登録された顧客情報が含まれているから,これを差止め及び廃棄の対象とするのは相当でない。 別紙顧客目録④は,別紙顧客目録③記載の顧客情報から,被告P2が退職した平成20年4月30日以降に原告の顧客情報として登録された顧客情報を取り除いたもの(残り合計363件)であるから,これを差止め及び廃棄の対象とするのが相当である。 なお,原告は,本件顧客情報の使用の差止めを求めるに当たり,使用自体の差止めだけでなく,本件顧客情報に記載された顧客らに対して,営業を行うことの禁止を求めている。前述したとおり,本件顧客情報が原告の営業秘密であって高い有用性が認められること,本件における被告らの不正競争の態様の悪質性,結果の重大性からすれば,被告らによる不正競争を差し止める必要性は高い。そして,本件顧客情報の取得経緯や,開示,使用の状況(前記1,3~5)に照らすと,本件顧客情報を記録した磁気媒体,紙媒体の使用のみを禁止したのでは,その差止めの目的を達することは困難である。したがって,上記顧客らが自ら日本国内において中古車の買付行為を行うなど,本件顧客情報に含まれる個々の顧客らに関する情報について営業秘密性が失われるまでは,差止めの必要性は存続すると解する。 。したがって,上記顧客らが自ら日本国内において中古車の買付行為を行うなど,本件顧客情報に含まれる個々の顧客らに関する情報について営業秘密性が失われるまでは,差止めの必要性は存続すると解する。 8 争点8(損害額)について(1)被告39ホールディングスア被告39ホールディングスの売上げ,利益率証拠(乙41の1・2・4)によると,被告39ホールディングスは,平成20年1月10日から平成21年6月30日までの間に,合計23億6093万2017円の純売上高を得たことが認められる。 他方において,当該売上高に対応する売上原価は,合計22億5228万1276円であり,粗利益率は僅か4.60%に過ぎない。 〔計算式〕(2,360,932,017-2,252,281,276)÷2,360,932,017=0.0460これに被告らが主張する経費を控除すると,被告らの計算によれば,被告39ホールディングスは赤字であるというのである。 しかしながら,甲78によれば,平成24年5月1日から同年7月31日までに決算が終了した企業のうち,中古車小売業の限界利益率が全国平均で22.5パーセントであったことが認められる。仮に,被告39ホール ディングスの販売形態が,海外への個人や小売業者に対する販売であったとしても,原告の粗利益率(後述)に比べ,あまりに低額であり,にわかに信用しがたいものがある。 仮に,被告39ホールディングスの販売形態が海外への販売が中心であったことや,原告への対抗上,価格を低く抑えていたと考えられることから,原告の粗利益率より低いという状況があった可能性があるとしても,次のことがいえる。すなわち,前記1(3)エのとおり,被告39ホールディングスらの不正競争による売上げが急増する一方,本件顧客情報に含ま 原告の粗利益率より低いという状況があった可能性があるとしても,次のことがいえる。すなわち,前記1(3)エのとおり,被告39ホールディングスらの不正競争による売上げが急増する一方,本件顧客情報に含まれる顧客らに対する原告の売上げは激減している(甲73の1・2,甲76)。 そして,その営業形態からして,被告39ホールディングスにとって,本件顧客情報を使用しない限り,本件の規模での販売を行うことは極めて困難であったことが推認されることを考えると,原告の車両販売減少数と被告39ホールディングスらの不正競争との間に相当因果関係を見いだすことはたやすいというべきである。 このような場合において,被告39ホールディングスの利益がなかったり,僅かであったりすることを理由に,不正競争防止法5条2項の適用に当たり,損害額を0円として算定したり,僅かな金額しか算定できなかったりすることは不合理といわなくてはならず,被告39ホールディングスの販売数量に相当する原告の車両販売減少数に基づく損害額について,相当程度の割合で,被告39ホールディングスらの不正競争との間に相当因果関係を認めるべきである(そうでなければ,不正競争防止法9条の適用が考慮されるべきである。)。 ところで,証拠(甲73の1・2)によると,P6とP8が原告に提供したP6名簿とP8名簿に記載された顧客に対する,原告の平成12年から平成23年までの間における売上げに係る平均利益率は,13%であったと認めることができる。 そうすると,中古車販売業において,車両購入代金と運送費以外に特段の変動経費があるとは認められないことも考慮すると,限界利益率を13%として,原告の逸失利益を算定するのが相当である。 イ被告39ホールディングスらの不正競争と因果関係のない売上げ被告 特段の変動経費があるとは認められないことも考慮すると,限界利益率を13%として,原告の逸失利益を算定するのが相当である。 イ被告39ホールディングスらの不正競争と因果関係のない売上げ被告らは,被告39ホールディングスの車両販売について,J1売上履歴顧客別一覧表(乙45)に記載のある21億7014万4865円の売上げのうち,P6が原告に提供したP6名簿(甲26)に掲載された顧客らに対するものは,合計14億0830万4917円であり,その差額合計7億6183万9948円は,被告P1及び被告P2による不正競争と因果関係がない旨主張する。 たしかに,原告の顧客名簿に全く登録されていない顧客に対する販売については,これを除外する必要がある。しかしながら,P6名簿に記載された顧客らに対する売上げにのみ限定する理由はない。すなわち,P8が原告に提供したP8名簿に記載された顧客に対する売上げにも,被告P1及び被告P2による不正競争に基づくものが含まれており,これらを全て除外するのは相当でない。また,被告らはICEの顧客に対する売上げも除外しているところ,ICEは,P6が原告を退職し,被告39ホールディングスの代表取締役に就任するまでの間,代表者として中古車販売業を行っていた会社であり,しかも,ICEの顧客情報には,P6が原告から不正に持ち出した顧客情報が多く含まれていることが認められる(甲26,丙2,訴え取下前の被告P6本人28頁)。そうすると,ICEの顧客情報は,被告P1及び被告P2が不正取得した原告の顧客情報と重複している可能性も高く,これらを全て控除することも相当ではない。結局のところ,被告らが除外すべきであるとする売上げのうち,原告の顧客名簿に全く登録されていない顧客の存在は否定できないものの,これは,後に述べる寄与度のとこ れらを全て控除することも相当ではない。結局のところ,被告らが除外すべきであるとする売上げのうち,原告の顧客名簿に全く登録されていない顧客の存在は否定できないものの,これは,後に述べる寄与度のところで考慮すれば足りると考える。 グローバルロジスティックス社との取引2億3125万7175円分についてみると,P6及び被告P5らの供述によれば,被告P1から開示された顧客名簿とは別に,被告39ホールディングスにおいて取引を開始することを計画していたことが認められるから,これについては,被告P1及び被告P2による不正競争との因果関係を認めるのは困難である。 また,被告らは,P6が提供したP6名簿(甲26)に登録されていた顧客のうち,被告P1及び被告P2が原告の顧客名簿にアクセスできなくなった時点以降に,上記顧客名簿に登録された顧客に係る売上げが1億0665万4819円である旨主張する。 しかしながら,P6及びP8の供述及び証言によれば,被告らが上記主張の根拠とする上記顧客名簿の「DateofEntry」(甲26)は,被告39ホールディングスの従業員が上記顧客名簿を作成するに当たり入力した日であることが認められる。 したがって,上記売上げを控除すべきものと認めることはできない。 被告P1独自の顧客であると主張する顧客らについても,被告P1が本件顧客情報を持ち出して使用していることには何ら変わりがないのであるから,これについても控除すべきものとは認められない。 被告らが,被告39ホールディングスのウェブサイトから独自に登録したとする顧客らに対する売上げについても同様である。 インターネット上で検索が可能であるとする顧客らについても,これらが営業秘密であることは前述のとおりであり,被告39ホールディングスらの不正競争 とする顧客らに対する売上げについても同様である。 インターネット上で検索が可能であるとする顧客らについても,これらが営業秘密であることは前述のとおりであり,被告39ホールディングスらの不正競争との因果関係を否定することはできない。 これらのことからすると,前記車両販売の対価合計21億7014万4865円から,グローバルロジスティックス社との取引2億3125万7175円分を控除した19億3888万7690円は,被告39ホールディングスらによる不正競争と因果関係があるものと認めるのが相当であ る。 〔計算式〕2,170,144,865-231,257,175=1,938,887,690そうすると,前記純売上高合計23億6093万2017円に前記車両販売の対価のうち上記不正競争と因果関係のある対価の割合を乗じた21億0934万3988円が本件と相当因果関係のある純売上高であると認められる。 〔計算式〕2,360,932,017×1,938,887,690÷2,170,144,865=2,109,343,988ウ被告39ホールディングスらの不正競争による損害(逸失利益)被告39ホールディングスらの不正競争に関係する前記売上げ(21億0934万3988円)に前記限界利益率を乗じると,2億7421万4718円となる。 〔計算式〕2,109,343,988×0.13≒274,214,718車両を販売するに当たっては,顧客の存在を認識把握することが重要であることは疑いがない。特に,本件では,ケニアやニュージーランド等容易にその存在を把握しがたい顧客らが含まれていることは前述のとおりである。 他方において,中古車を販売するに当たっては,顧客が購入を希望する中古車を適正な価格で調達することが重要 ジーランド等容易にその存在を把握しがたい顧客らが含まれていることは前述のとおりである。 他方において,中古車を販売するに当たっては,顧客が購入を希望する中古車を適正な価格で調達することが重要であることも明らかである。 これらのことを総合考慮すると,本件顧客情報の寄与度は,3割と認めるのが相当である。 そうすると,原告の被告39ホールディングスらに対する損害賠償請求は合計8226万4415円の限度で認めるのが相当である。 〔計算式〕 274,214,718×0.3=82,264,415なお,遅延損害金の起算日については,平成21年6月30日とするのが相当である。 エ被告39ホールディングスらの不正競争による損害(無形損害)被告39ホールディングスらによる不正競争があったからといって,原告に信用が毀損されたなどという無形損害が生じたと認めるに足りる証拠はない。 オ被告39ホールディングスらの不正競争による損害(弁護士費用)被告39ホールディングスに対する請求に係る訴訟の内容,難易度など諸般の事情を総合考慮し,被告39ホールディングスらの不正競争と相当因果関係のある弁護士費用は,700万円であると認めることができる(遅延損害金の起算点については,前記ウと同様とする。)。 カまとめ以上によると,被告39ホールディングス及びその不正競争について共同不法行為責任を負うべき被告P1,被告P2,被告P5,被告P3,被告クインオートは,原告に対し,連帯して,前記ウ,オの合計額8926万4415円及びこれに対する平成21年6月30日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 (2)被告プレミアムオートア被告プレミアムオートの売上げ,利益率乙43の1から乙43の3ま れに対する平成21年6月30日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 (2)被告プレミアムオートア被告プレミアムオートの売上げ,利益率乙43の1から乙43の3までによると,被告プレミアムオートは,平成21年4月22日から平成24年3月31日までの間に合計11億7873万5202円の純売上高を得たことが認められる。 他方において,当該売上高に対応する売上原価は,合計11億0922万7696円であり,粗利益率は僅か5.9%に過ぎない。 〔計算式〕 (1,178,735,202-1,109,227,696)÷1,178,735,202=0.0589これに被告らが主張する経費を控除すると,被告らの計算によれば,被告プレミアムオートは赤字であるというのである。 しかしながら,前記(1)と同様の理由から,被告らが主張する経費を採用することはできず,限界利益率を13%として,原告の逸失利益を算定するのが相当である。 イ被告プレミアムオートらの不正競争と因果関係のない売上げ証拠(乙46)によれば,P6が原告に提供したP6名簿(甲26)に掲載された顧客らに対する,被告プレミアムオートによる車両販売の粗利益は,全粗利益8951万4923円のうち7308万7823円であるというのである。 しかしながら,前記(1)イで述べたとおり,P8が原告に提供したP8名簿(甲9)に記載された顧客に対する売上げには,被告P1及び被告P2による不正競争に基づくものが含まれており,これらを全て除外すべきではなく,前同様に,寄与度で考慮するのが相当である。 また,被告らは,被告39ホールディングスとの関係で取引がなかった顧客や被告プレミアムオートの営業開始から相当期間経過した後に取引をした顧客については 前同様に,寄与度で考慮するのが相当である。 また,被告らは,被告39ホールディングスとの関係で取引がなかった顧客や被告プレミアムオートの営業開始から相当期間経過した後に取引をした顧客については被告らの不正競争と因果関係がない旨主張する。 しかしながら,本件顧客情報により,これらの顧客の存在を把握することができたものの,営業としての成果を上げたのが相当期間後になったにすぎないものと見ることができるのであって,被告らの主張には理由がない。 被告P1の独自の顧客及びインターネットで検索可能な顧客に対する売上げを除くべきとする主張に理由がないのも前述のとおりである。 ウ被告プレミアムオートらの不正競争による損害(逸失利益)前記(1)と同様に,前記純売上高11億7873万5202円に,前記 限界利益率13%と本件顧客情報の寄与度3割を乗じた4597万0673円の限度で,原告の損害と認めるのが相当である。 〔計算式〕1,178,735,202×0.13×0.3=45,970,673なお,遅延損害金については平成24年3月31日を起算日とするのが相当である。 エ被告プレミアムオートらの不正競争による損害(弁護士費用)被告プレミアムオートに対する請求に係る訴訟の内容,難易度など諸般の事情を総合考慮し,被告プレミアムオートらの不正競争と相当因果関係のある弁護士費用は,400万円であると認めることができる(遅延損害金の起算点については,前記ウと同様とする。)。 オまとめ以上によると,被告プレミアムオート及びその不正競争について共同不法行為責任を負うべき被告P1,被告P4は,原告に対し,連帯して,前記ウ,エの合計額4997万0673円及びこれに対する平成24年3月31日から支払済みまで年5分の割合による 不正競争について共同不法行為責任を負うべき被告P1,被告P4は,原告に対し,連帯して,前記ウ,エの合計額4997万0673円及びこれに対する平成24年3月31日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 結論よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官松川充康 裁判官西田昌吾 (別紙)当事者目録 原告 IBC Japan株式会社同訴訟代理人弁護士今川忠同白木裕一同關健一同岩本生 被告 39ホールディングス株式会社被告プレミアムオートトレーディングジャパン株式会社被告P1被告P2被告P3被告P4上記6名訴訟代理人弁護士安藤猪平次同浅田修宏同松田昌明被告株式会社ク 士安 藤 猪平次 浅田修宏 松田昌明 被告 株式会社クインオート 上記両名訴訟代理人弁護士 柴野高之 富山聡子
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