令和7年11月14日宣告令和7年(わ)第330号 被告人に対する殺人被告事件について、当裁判所は、検察官林正章及び同松本滋陽並びに国選弁護人大谷和広(主任)及び同辰野真也各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を懲役14年に処する。 未決勾留日数中130日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、借金や退職等で生活に窮したことから、令和5年9月頃、実家である北海道苫小牧市(住所省略)A方に戻り、自室に引きこもる生活を送っていたところ、自分の人生がうまく行かず、無力感を抱くに至った原因は幼少期からの両親の自分に対する接し方等によるところが大きいなどと考え、両親への恨みを募らせていた中、母親を殺害して両親の束縛から解放されたいなどという思いが高まり、令和7年2月28日、前記A方において、実母であるB(当時63歳)に対し、殺意をもって、その頭部をハンマーで複数回殴打し、さらに、その頸部に電源延長コードを巻いて絞め付けるなどし、よって、同日午後8時36分頃、札幌市(住所省略)C病院において、同人を頸部圧迫による窒息により死亡させた。 (証拠の標目)省略(法令の適用)罰条令和4年法律第68号441条1項により同年法律第67号2条による改正前の刑法199条刑種の選択有期懲役刑を選択未決勾留日数の算入刑法21条 訴訟費用刑訴法181条1項ただし書(不負担)(量刑の理由)被告人は、被害者に対し、あらかじめ用意していた重量約800グラムのハンマーを用いて、その頭部を狙い、頭蓋骨が陥没骨折するほどの強い力で複数回殴打した上、被害者がなお呼吸をしているのを見て、両手で首を絞めたり、 害者に対し、あらかじめ用意していた重量約800グラムのハンマーを用いて、その頭部を狙い、頭蓋骨が陥没骨折するほどの強い力で複数回殴打した上、被害者がなお呼吸をしているのを見て、両手で首を絞めたり、タオルを口の中に入れたりして被害者を窒息させようとし、最終的に、首に電源延長コードを巻き付け、約2分間、呼吸が止まるまで絞め付けて殺害を遂げている。このような犯行態様は、生命に対する危険性が高く、強固な殺意に基づく残虐かつ執拗なものというほかない。 被害者は、実の息子から突然襲われ、尊い命を絶たれたもので、もとよりその結果は重大である。家族の絆を大切にしながら温かな家庭を築いてくれたかけがえのない被害者を突如として失った遺族の悲嘆は深く、被害者の夫や次男の処罰感情が峻烈であるのも当然である。 本件犯行に至った動機・経緯についてみると、被告人は、格別非難されるようなものではない両親の言動を、被告人に自信や将来への希望を失わせ、自立の機会を奪うものであるなどと受け止め、判示のとおり、両親への恨みを募らせながらも、両親に頼って生きていくしかない現状に絶望感を覚え、令和6年2月頃に3度自殺を試みるなどしている。起訴前の精神鑑定結果によれば、こうした悲観的な思考や自殺念慮等には適応障害及びうつ病の可能性による抑うつ症状が影響した可能性があることは否定できない。もっとも、同鑑定結果によれば、被告人の上記の恨みは劣等感や問題解決を先送りにするなどの被告人の性格傾向によるところが大きく、被告人の知能は全体的に平均より高く、高い問題解決能力があるなどとされていることに照らすと、被告人の精神障害が本件犯行に与えた影響は限定的というべきである。そうすると、被告人が、上記現状を全て両親に帰責し、これを打破するための他の手段を十分検討することもなく、被害者の殺害 ことに照らすと、被告人の精神障害が本件犯行に与えた影響は限定的というべきである。そうすると、被告人が、上記現状を全て両親に帰責し、これを打破するための他の手段を十分検討することもなく、被害者の殺害を決意し、本件犯行に及んだことは、余りに短絡的で身勝手といわざるを得ず、その意思決定は厳しい非難に値 する。 以上の犯情を総合すると、本件は、親に対する凶器等を用いた殺人1件という同種事案の中でも重い部類に位置付けられる。 その上で、被告人は、本件犯行後速やかに自首し、当公判廷でも事実関係を認め、弟妹に対する謝罪の言葉を口にしてはいるものの、被害者の命を奪った自己の罪の重さや本件犯行に至った自身の問題点に正面から向き合う姿勢は見られないことといった一般情状も考慮すると、主文の刑はやむを得ないと判断した。 (求刑懲役15年)令和7年11月19日札幌地方裁判所刑事第1部 裁判長裁判官吉戒純一 裁判官藤井俊彦 裁判官木下颯は差支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官吉戒純一
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