平成17(わ)5744 競売入札妨害等被告事件

裁判年月日・裁判所
平成18年5月19日 大阪地方裁判所
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判決文本文4,285 文字)

主文 被告人を懲役1年6月に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,株式会社A取締役営業課長であるが,第1大阪市B局総務部庶務課調達係長として同局が発注する委託業務の指名競争入札に関して入札指名業者選定案を作成するなどの職務に従事していたCと共謀の上,同局が平成17年4月19日に執行した「西部方面街路樹維持管理業務委託-1」の指名競争入札に関し,Aに同委託業務を落札させようと企て,同月上旬ころ,大阪市a区bc丁目d番e号所在のfビル28階所在の同局総務部執務室において,上記Cに対し,上記選定案の作成に当たって特定の業者を除外することなどを求め,同人において,そのころ,同所において,同社に落札させるよう被告人の求めに応じた同選定案を作成し,同月12日,同部庶務課長をして同選定案どおりに入札指名業者を決定させ,もって偽計を用いて公の入札の公正を害すべき行為をし,第2A代表取締役社長であるD及び同社常務取締役であるEと共謀の上,信用保証協会を欺いて同社の金融機関に対する債務を保証させるとともに,金融機関を欺いて同社に対する信用保証協会の保証付融資を実行させ,融資金名下に金員を詐取しようと企て,真実は,同社の平成17年1月期の営業損失が約184万円,当期未処理損失が約1億8,515万円であり,融資金は直ちに同社の債務返済等に費消する意図であるのに,それらの情を秘し,あたかも同社が粉飾決算を行っていない中小企業者等として信用保証協会の保証を受けられる資格を有し,融資金を信用保証協会が資金使途として認める事業資金にのみ使うかのように装い,平成17年6月14日ころ,大阪市g区hi丁目j番k号所在の株式会社F銀行G法人営業部において,同部係員に対し,金額2,40 0万円の 協会が資金使途として認める事業資金にのみ使うかのように装い,平成17年6月14日ころ,大阪市g区hi丁目j番k号所在の株式会社F銀行G法人営業部において,同部係員に対し,金額2,40 0万円の融資申込書に加え,資金使途を手形決済,備品購入及び社員教育に必要な運転資金とする旨使途先を偽った金額2,400万円の信用保証委託申込書並びにAの同期の営業利益を1,143万9,015円,当期未処分利益を733万8,842円とする旨決算内容を粉飾した決算報告書写し等を提出し,同日,同部係員らをして同委託申込書及び同決算報告書写し等を同市l区mn丁目o番p号所在のH協会に送付させて保証契約の申込みをさせ,同月21日,同協会業務二部部長Iをして,上記のとおり誤信させ,同社に対する上記G法人営業部による融資の実行に当たり2,400万円を保証する旨決定させて,同協会理事長J作成名義の信用保証書を発行させた上,同月22日,同協会職員らをして同保証書を上記G法人営業部に回付させて保証を承諾する意思表示を到達させ,同日,同部部長Kをして,同保証書が同協会による適正な審査を経たものであり,同社が融資金を返済しなくても同協会から確実に代位弁済を受けられるものと誤信させて,同社に対する2,400万円の融資を実行する旨決定させ,よって同日,同社を主たる債務者とする上記株式会社F銀行と同協会との間の保証契約を締結させてAに保証を受ける地位を得させるとともに,同月23日,同部係員をして同部と同一所在地の同銀行G支店に開設されたA名義の当座預金口座に融資金として2,400万円を入金させ,もって人を欺いて財産上不法の利益を得るとともに,財物を交付させたものである。 (証拠の標目)略(法令の適用)被告人の判示第1の所為は刑法60条,96条の3第1項に,判示第2の所為の 金させ,もって人を欺いて財産上不法の利益を得るとともに,財物を交付させたものである。 (証拠の標目)略(法令の適用)被告人の判示第1の所為は刑法60条,96条の3第1項に,判示第2の所為のうち,保証を受ける地位を詐取した点は同法60条,246条2項に,融資金を詐取した点は同法60条,246条1項にそれぞれ該当するところ,判示第2は包括して1罪となる場合であるから,同法10条により1罪として犯情の重い融資金を詐取した罪の刑で処断し,判示第1の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は 同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第2の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとする。 (量刑の理由)本件は,Aの取締役営業課長である被告人が,入札指名業者選定案の作成等の職務に従事していた大阪市の調達係長と共謀の上,同市の行う指名競争入札に関して,同社に委託業務を落札させるため,入札指名業者から特定の業者を除外したという競売入札妨害の事案並びに同社の代表取締役社長及び常務取締役と共謀の上,信用保証協会に対し,同社が粉飾決算を行っておらず,また融資金を同協会が認める使途にのみ充てるものと誤信させて,同社に対する取引銀行からの融資を保証する旨決定させ,保証を受ける地位を詐取するとともに,取引銀行に対し,同保証が適正なものであると誤信させてAに対する融資を実行させ,融資金2,400万円を詐取した事案である。 まず,判示第2の詐欺の事案について見るに,その詐取金額は著しく高額であり,結果はまことに重大である。被告人らは,実際にはAが巨額の累積赤字を抱えて債務超過に陥っていたに 円を詐取した事案である。 まず,判示第2の詐欺の事案について見るに,その詐取金額は著しく高額であり,結果はまことに重大である。被告人らは,実際にはAが巨額の累積赤字を抱えて債務超過に陥っていたにもかかわらず,公共工事の受注等のため,黒字を装う内容の粉飾した決算報告書をかねてから関与税理士に指示して作成させていたところ,これを利用するなどして本件犯行に及んだものであって,その犯行態様は巧妙であり,また中小企業者の育成を支援するための公的制度である信用保証制度を悪用した点でも非難を免れない。その中で,被告人は,内容虚偽と知りつつも信用保証委託申込書や決算報告書の写し等を取引銀行に提出した上,詐取した金員から160万円余りを被告人のAに対する貸付金の返済として受領しているのであって,その関与の程度は軽微とはいえない。被告人らは,Aが抱える巨額の債務の返済資金を得るため本件犯行に及んだといい,実際にもその多くを債務返済に充てているほか,被告人はAに対する上記貸付金の返済が受けられるという考えもあって犯行に関与し たというが,いずれも特に酌量すべき動機や使途とはいえない。そして,被告人らは,本件以前にも粉飾した内容の決算報告書を利用して信用保証協会の保証付融資を受けていたものとうかがえることに照らし,本件は常習的犯行というべきであり,被告人には規範意識にいささか欠けるところがあるといわざるを得ない。 次に,判示第1の競売入札妨害の事案について見るに,本件は,当時,大阪市の発注する特定の委託業務を特定の造園業者が10年間にわたって落札し続けており,共犯者Cがこのような事態への対応に苦慮していたところ,被告人が同造園業者を説得して上記委託業務の落札を思いとどまらせたことが発端となっている。そして,従前から,Aらは入札指名業者間の談合行為によって大 者Cがこのような事態への対応に苦慮していたところ,被告人が同造園業者を説得して上記委託業務の落札を思いとどまらせたことが発端となっている。そして,従前から,Aらは入札指名業者間の談合行為によって大阪市の発注する委託業務を落札しており,被告人はその取りまとめ役であったところ,被告人は,上記のような経緯から被告人に恩義を感じていた共犯者Cに対してAへの高額の委託業務の受注を希望する旨を告げて,同共犯者から本件委託業務がその希望する規模の業務であることを教示された上,判示のとおり,同共犯者からの申し出に応じて,談合行為による落札の妨げとなり得る特定の業者を指名から除外するよう求め,同共犯者とともに本件犯行に及んだのである。このように,本件犯行は,それ自体が公の入札の公正を害するものであるのみならず,そもそも談合行為を容易にするために行われたものでもあって,悪質である。また,本件犯行の結果,実際にもAが3,200万円で本件委託業務を落札しており,入札の公正が現に害された点も軽視できない。そして,被告人は,本件犯行後,本件以前の談合について罰金刑に処せられたように,上記のとおりこれまで談合を繰り返していたことがうかがわれ,入札の公正に対する理解に乏しいところがあるといわざるを得ない。 以上のとおり,いずれの犯行においても,被告人の刑事責任は決して軽いものではない。 一方,判示第2の犯行について,被告人は,被告人名義でAに資金を貸し付けるために消費者金融から金員を借り入れていたところ,上記のとおりAから約160万円を受領したのはその返済に充てるためであり,被告人の個人的利得を図るため であったとはいえない側面がある。また,被告人の同犯行への直接の関与は信用保証委託申込書や決算報告書の写し等の提出にとどまる上,本件犯行は,Aの代表取締役であり被告 被告人の個人的利得を図るため であったとはいえない側面がある。また,被告人の同犯行への直接の関与は信用保証委託申込書や決算報告書の写し等の提出にとどまる上,本件犯行は,Aの代表取締役であり被告人の実父でもある共犯者Dが中心となってその主導の下に行われたものであり,被告人は,従属的立場にあったといい得る。そのほか,被告人には上記罰金前科のほかは古い交通関係の罰金前科以外に前科はないこと,被告人は公判廷等において反省の情を示し,再犯に及ばない旨供述していること,Aの元従業員や被告人の弟及び妻が被告人のため証言していること等量刑上被告人に有利な事情も認められる。 そこで,以上の事情を総合して考慮の上,被告人を主文の刑に処し,その刑の執行を猶予することとした。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑-懲役1年6月)平成18年5月19日大阪地方裁判所第12刑事部裁判官増田啓祐

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