- 1 -平成19年10月3日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成17年(ワ)第24743号損害賠償等請求事件(平成19年8月10日口頭弁論終結)判決東京都板橋区××××原告A同訴訟代理人弁護士保坂光彦東京都板橋区××××被告B主文 被告は,原告に対し,36万円及びこれに対する平成17年12月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを6分し,その5を原告の,その余を被告の負担とする。 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求被告は,原告に対し,240万円及びこれに対する平成17年12月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 争いのない事実等(末尾に証拠等の記載されていない事実は,当事者間に争いがない)。 - 2 -原告は,平成8年7月29日,東京都板橋区ab丁目所在のマンション(1)であるc(以下「本件マンション」という)の別紙物件目録記載1の建物(その。 広さは3LDKである。以下「原告住戸」という)をその妻と共に各持分2分の。 1の割合で買い受け,そのころから妻と共に原告住戸に居住している。 被告は,平成16年2月ころ,原告住戸の階上の別紙物件目録記載2の建物(その広さは3LDKである。以下「被告住戸」という)を他から賃借してそこに居。 住し,少なくとも同年4月ころ以降は,妻,長男(当時3から4歳)と被告住戸に同居していたが,平成17年11月17日に妻,長男と共に被告住居を退去した。 本件マンションの敷地は第1種中高層住居専用地域に属しており,本件マ(2)ンションの北側には,駐車場を置いて片側1車線の道路があるが,本件当時の原告住戸の暗騒音 妻,長男と共に被告住居を退去した。 本件マンションの敷地は第1種中高層住居専用地域に属しており,本件マ(2)ンションの北側には,駐車場を置いて片側1車線の道路があるが,本件当時の原告住戸の暗騒音は,27~29dBである(甲25,弁論の全趣旨。 ) 原告は,被告に対し,被告住戸から原告住戸に及んだ子供が廊下を走ったり,跳んだり跳ねたりする音(以下「本件音」という)が受忍限度を超えていると主。 張して,不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料200万円及び弁護士費用40万円の合計240万円並びにこれに対する不法行為の後である平成17年12月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 争点及びこれに関する当事者の主張本件音が一般社会生活上原告が受忍すべき限度を超えていたか否か(原告の主張)被告が平成16年2月ころに被告住戸に転居して以来,被告住戸から本件音が原告住戸に及ぶようになった。都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(平成- 3 -12年東京都条例第215号,以下「本件条例」という)は,第1種中高層住居。 専用地域につき,音源の存在する敷地と隣地との境界線における音量を,午前6時から午前8時まで45dB,午前8時から午後7時まで50dB,午後7時から午後11時まで45dB,午後11時から翌日午前6時まで45dBと規制しているが,本件音は,ほぼ毎日夜間を含め,上記規制を超えている。 被告は,原告及び本件マンションの管理組合から再三にわたり注意や要請を受けたにもかかわらず,一向に改善する意思を見せなかった。これは,本件で最も問題とされるべきである。 以上によれば,本件音が一般社会生活上原告が受忍すべき限度を超えていたということができる。 (被告の主張)原告の上記主張は争う。 被告は を見せなかった。これは,本件で最も問題とされるべきである。 以上によれば,本件音が一般社会生活上原告が受忍すべき限度を超えていたということができる。 (被告の主張)原告の上記主張は争う。 被告は,その長男が原告住戸に音を生じさせないように細心の注意を払うとともに,床にマットやカーペットを敷くなどの対処をしていた。被告の長男は,平成16年4月に被告住戸に同居を開始し,その後10日から15日の間は,被告住戸に慣れず,午前零時から1時ころまで起きていたが,それ以降はほぼ毎日午後10時ころには就寝していた。被告は,原告が一方的に被告の言い分を聞かずに静かにするようにと言うだけであるので,原告に対し,これ以上は静かにできない,文句があるなら建物に言うようにと述べたものである。 以上によれば,本件音が一般社会生活上原告が受忍すべき限度を超えていないということができる。 第3当裁判所の判断- 4 - 第2の1の争いのない事実等,証拠(甲1,甲4[枝番を含む,甲5の1]から5まで,甲7,甲8の1から3まで,甲12,甲13の3及び6,甲15,甲18,甲24,甲26の2の1から4まで,乙2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 本件マンションは,昭和63年6月ころに建築されたものであり,その2(1)階の床の構造は,150㎜厚のコンクリートスラブ,その上の居間の仕上げがフェルト8㎜下地の上にカットアンドパイルカーペット毛足7㎜の敷き込み,和室の仕上げが防湿シートとスタイロ畳55㎜であり,重量床衝撃音遮断性能(標準重量床衝撃源使用時)は,LH-60程度であり,日本建築学会の建築物の遮音性能基準によれば,集合住宅の3級すなわち遮音性能上やや劣る水準にある。 本件マンションの所在する土地は,第1種中高層住居専用地域に属しており,本 )は,LH-60程度であり,日本建築学会の建築物の遮音性能基準によれば,集合住宅の3級すなわち遮音性能上やや劣る水準にある。 本件マンションの所在する土地は,第1種中高層住居専用地域に属しており,本件マンションの北側には,駐車場を挟んでバスも通行する片側1車線の道路が存在する程度であり,本件当時の原告住戸の暗騒音は,27~29dB程度である。 原告は,平成8年7月29日,その妻と共に各持分2分の1の割合で原告(2)住戸を買い受け,そのころから妻と共に原告住戸に居住していた。被告は,平成16年2月ころ,原告住戸の階上の被告住戸を賃借してそこに居住し,少なくとも同年4月ころ以降は,妻,長男(当時3から4歳)と被告住戸に同居していた。被告が被告住戸に居住を開始する前は,被告住戸から原告住戸に及ぶ音は,とりたてて問題とするものではなかったが,被告が被告住戸に居住を開始して以来,その長男が被告住戸にいるときは,同人が被告住戸を走り回ったり,跳んだり跳ねたりすることが多くなり,本件音を原告住戸に及ぼすようになった。被告は,被告住戸に入居するに際して原告住戸に挨拶をしておらず,原告との間で近所づきあいもなかっ- 5 -たため,原告は,本件マンションの管理人に相談し,その結果,本件マンションの管理組合名で,本件マンションの各戸に音,特に,子供が室内を走り回ったり,跳び跳ねたりする音などに注意するように呼びかける内容の同年3月4日付け書面が配布された。しかし,本件音の状況が改善されないので,原告は,上記管理人と相談し,同年4月22日,被告あてに,子供が室内や廊下を走ったり,跳ねたりする音が原告住戸に響いて困っているので配慮をお願いする旨の手紙を被告住戸に投函した。被告は,末尾に謝罪文言は記載しているものの,被告住戸から原告住戸に本件音が及んだ際に,原 下を走ったり,跳ねたりする音が原告住戸に響いて困っているので配慮をお願いする旨の手紙を被告住戸に投函した。被告は,末尾に謝罪文言は記載しているものの,被告住戸から原告住戸に本件音が及んだ際に,原告が原告住戸から天井を物で突いたことを非難する内容の手紙を原告住戸に投函した。原告は,同年5月,被告住戸を訪ね,被告と話し合ったが,その際,被告は,これ以上静かにすることはできないので,文句があるなら建物に言ってくれと乱暴な口調で突っぱねた。その後,原告が被告住戸に本件音につき抗議に行っても,被告は応対しなくなり,同年6月22日,原告が原告住戸付近で被告と出会って騒音に対する配慮を求めた際,被告は,本件音が原告住戸に及ばないように努力しているが,これ以上は努力することができない,被告も被告住戸にいる時があるから本件音のことは知っている,原告はうるさい,原告が被告に直接訴えても無駄であるから,他の人に訴えるようにと乱暴な口調で言い,原告の妻が被告と会った際に静かにして下さいと被告に頼んでも,被告は,警察でもどこでも行けばよい,どうせ理事会では何もしてくれないのだろうと言ったりするなど原告の申入れを取り合おうとしなかった。本件マンションの管理組合は,原告の申入れに基づき,同年6月28日に日常の生活音について配慮することを求める内容の書面を掲示板に掲載したり,同年7月17日に本件マンションの各戸に配布したりし,原告は,本件マンションの管理会社や警察にも相談し,警察官も数回本件マン- 6 -ションを訪れたが,解決には至らなかった。 そこで,原告は,本件マンションの管理会社から訴訟で解決するほかないとの指摘を受けたことを踏まえ,客観的なデータを残すほかないと考え,自らMDプレーヤーなどを購入したり,騒音計のリースを受けるなどし,平成16年9月21日以 ョンの管理会社から訴訟で解決するほかないとの指摘を受けたことを踏まえ,客観的なデータを残すほかないと考え,自らMDプレーヤーなどを購入したり,騒音計のリースを受けるなどし,平成16年9月21日以降,騒音計をリビングダイニングのほぼ中心から廊下寄りの位置で,天井から約70㎝~1mの位置に設置し,C特性で測定した。耳の感度に近似するのは,A特性であり,財団法人建材試験センターによる試験の結果,原告の測定した床衝撃系騒音についてC特性をA特性に補正するためには,補正量がマイナス12dB程度であることが判明したため,これによって補正すると,平成17年7月31日までの間はほぼ毎日本件音が原告住戸に及んでおり,その程度は,50~65dB程度のものが多く,午後7時以降,時には深夜にも原告住戸に及ぶことがしばしばあったこと,本件音が長時間連続して原告住戸に及ぶこともあったことが明らかになった。 少なくとも被告の長男が原告住戸に居住するようになった平成16年4月ころから上記騒音計を設置するまでの状況も同様であったと考えられるし,平成17年8月以降も,本件音の測定自体は十分にはされていないが,被告が同年11月17日に妻,長男と共に退去するまでその状況はほぼ同様であった。なお,同年になってからは,被告の長男が保育園に通うようになり,保育園に行っている間は,本件音は,原告住戸に及ばなくなった。また,被告は,被告住戸の床にマットを敷いたものの,その効果は明らかではない。 本件音と被告の上記対応につき,原告は,精神的に悩み,原告の妻には,同年10月7日,咽喉頭異常感,食思不振,不眠等の症状も生じたため,原告の妻は倉科内科クリニックで通院加療を受けた。 - 7 -原告は,同年4月8日,被告に対し,騒音の差止め及び損害賠償を求める旨の調停を求めたが,被告は,これに応 不振,不眠等の症状も生じたため,原告の妻は倉科内科クリニックで通院加療を受けた。 - 7 -原告は,同年4月8日,被告に対し,騒音の差止め及び損害賠償を求める旨の調停を求めたが,被告は,これに応じなかったため,調停不成立により,調停は終了した。 上記認定事実に基づき,本件音が一般社会生活上原告が受忍すべき限度を超えているか否かについて判断する。なお,本件音のようなマンションの階上からの生活音については,本件条例136条は適用にはならない。 本件音は,被告の長男(当時3~4歳)が廊下を走ったり,跳んだり跳ねたりするときに生じた音である。本件マンション2階の床の構造によれば,1重量床衝撃音遮断性能(標準重量床衝撃源使用時)は,LH-60程度であり,日本建築学会の建築物の遮音性能基準によれば,集合住宅の3級すなわち遮音性能上やや劣る水準にある上,本件マンションは,3LDKのファミリー向けであり,子供が居住することも予定している。しかし,平成16年4月ころから平成17年11月17日ころまで,ほぼ毎日本件音が原告住戸に及んでおり,その程度は,かなり大きく聞こえるレベルである50~65dB程度のものが多く,午後7時以降,時には深夜にも原告住戸に及ぶことがしばしばあり,本件音が長時間連続して原告住戸に及ぶこともあったのであるから,被告は,本件音が特に夜間及び深夜には原告住戸に及ばないように被告の長男をしつけるなど住まい方を工夫し,誠意のある対応を行うのが当然であり,原告の被告がそのような工夫や対応をとることに対する期待は切実なものであったと理解することができる。そうであるにもかかわらず,被告は,床にマットを敷いたものの,その効果は明らかではなく,それ以外にどのような対策を採ったのかも明らかではなく,原告に対しては,これ以上静かにすることはできない きる。そうであるにもかかわらず,被告は,床にマットを敷いたものの,その効果は明らかではなく,それ以外にどのような対策を採ったのかも明らかではなく,原告に対しては,これ以上静かにすることはできない,文句があるなら建物に言ってくれと乱暴な口調で突っぱねたり,原告の申- 8 -入れを取り合おうとしなかったのであり,その対応は極めて不誠実なものであったということができ,そのため,原告は,やむなく訴訟等に備えて騒音計を購入して本件音を測定するほかなくなり,精神的にも悩み,原告の妻には,咽喉頭異常感,食思不振,不眠等の症状も生じたのである。 以上の諸点,特に被告の住まい方や対応の不誠実さを考慮すると,本件音は,一般社会生活上原告が受忍すべき限度を超えるものであったというべきであり,原告の苦痛を慰謝すべき慰謝料としては,30万円が相当であるというべきである。 そして,被告は,原告が申し立てた調停による解決も拒み,そのため,原告は,本件訴訟を原告訴訟代理人弁護士に委任せざるを得なくなったものであること,その他本件事案の内容,審理経過,認容額等を考慮すると,本件による弁護士費用として,被告に対して損害賠償を求め得る額は6万円と認めるのが相当である。 以上の次第で,原告の請求は主文1項掲記の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する(なお,被告は,本件訴訟係属後,弁論準備手続期日に連絡することなく出頭しないことがあり,当裁判所は,平成19年6月26日の弁論準備手続期日において,弁論準備手続を終結させ,同年8月10日の口頭弁論期日において,原告と被告の各本人尋問を行うことを決定し,上記弁論準備手続期日に出頭していた被告に対し,同年7月13日までに陳述書を提出し,本人尋問の申出書を提出すること,上記 年8月10日の口頭弁論期日において,原告と被告の各本人尋問を行うことを決定し,上記弁論準備手続期日に出頭していた被告に対し,同年7月13日までに陳述書を提出し,本人尋問の申出書を提出すること,上記口頭弁論期日には必ず出頭するように指示し,被告が上記期限内に上記陳述書及び申出書を提出しないので,裁判所書記官は,被告に対し,上記陳述書及び申出書の提出を催促するとともに,上記口頭弁論期日には必ず出頭するように連絡したが,被告は,上記陳述書及び申出書を提出せず,上記口頭弁論期日にも出頭しなかったも- 9 -のである。 。)東京地方裁判所民事第49部中村也寸志裁判官- 10 -(別紙)物件目録省略
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