平成13(わ)789 窃盗

裁判年月日・裁判所
平成14年1月23日 神戸地方裁判所
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判決文本文3,404 文字)

判決平成14年1月23日神戸地方裁判所平成13年(わ)第789号窃盗被告事件 主文 被告人を懲役6月に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成13年7月16日午前11時ころ,神戸市A区Ba丁目b番c号所在のC株式会社スーパーマーケット事業部D店1階食料品売場において,同店店長V管理に係るキャンディ1袋等4点(販売価格合計861円相当)を窃取したものである。 (証拠の標目)-括弧内は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠番号省略(事実認定の補足説明)弁護人は,被告人には,本件被害品を窃取した事実はなく,購入する意思で買い物かごに入れた商品のうち数点が,誤って白色ビニール袋に混入したため,レジで計上されずに通過してしまったとしか考えられないから,被告人は無罪であると主張し,被告人も弁護人の主張におおむね副う供述をするが,当裁判所は,判示のとおり,被告人が窃盗(万引き)に及んだことを認定したので,以下,補足して説明を加える。 1 前掲関係各証拠によれば,以下の各事実が認められる。 (1) 被告人は,平成13年7月16日午前11時前ころ,神戸市A区Ba丁目b番c号所在のC株式会社スーパーマーケット事業部D店(以下「CストアーD店」という。)へ買い物のために赴いた。 (2) 被告人は,同日午前10時57分ころ,同店の7番レジ(E担当)で,自己名義のCポイントカードを示して購入した商品の代金を支払ったが,その際にレジを通過したことが明らかな商品は,厚揚げ,烏龍茶,白菜等の5点であり,その代金は合計605円(消費税込)であった。 (3) 被告人がFに声を掛けられ,同店事務室に の代金を支払ったが,その際にレジを通過したことが明らかな商品は,厚揚げ,烏龍茶,白菜等の5点であり,その代金は合計605円(消費税込)であった。 (3) 被告人がFに声を掛けられ,同店事務室において,被告人の所持していた買い物袋の中身を確認した際,同店の商品であるキャンディ1袋,カシューナッツ1袋,野菜サラダ1個及び菓子パン1個が入っていたが,それらのうちキャンディ及びカシューナッツの2点については,その日同店における販売実績がなかった。 (4) 被告人が同店で買い物をした際のレシートは,Gにより,同店入口付近で営業していたたこ焼き店付近において,丸められた状態で発見された。 2 Gの当公判廷における供述(以下「G証言」という。)によれば,同人の本件犯行目撃状況は次のとおりである。 Gは,被告人が,左手にCストアーの買い物袋を提げ,右手に菓子パンを持っていたが,更に飴を棚から手に取り,ほどなくそれらを左手に提げていた買い物袋に入れた,半透明のビニール袋からそれらが入っていることも確認できた,その後被告人は,惣菜コーナーへ行き,サラダを右手に取ったところは見たが元に戻したり,買い物袋に入れたりしたところは見ていないのに,自分の方に向き直った時にはサラダを手に持っていなかった,その後,被告人は,レジを通らずに同店から出て行ったのを確認した,その間被告人から目を離したことはほとんどない,上司のFに来てもらい,被告人は同人とともに事務室に行った,その後被告人がレシートを持っていないと言っていると聞き,7番レジのジャーナルと照合したところ,被告人の所持していたもののうち4点について販売した記録がなかった,また店外にレシートを探しに行き,同店入口付近で営業していたたこ焼き店付近において,ビー玉みたいに丸められた状態で発見した,被告人はその 人の所持していたもののうち4点について販売した記録がなかった,また店外にレシートを探しに行き,同店入口付近で営業していたたこ焼き店付近において,ビー玉みたいに丸められた状態で発見した,被告人はそのジャーナルやレシートが自分のものという証拠があるのかなどと言っていたが,レシートにも記載されているポイントカードの番号と一致した,その後警察を呼んだ。 Gのこの供述は,非常に具体的かつ詳細で迫真性に富んでいる上,反対尋問にも動揺せず一貫した供述であること,Gには,被告人をことさらに犯罪に陥れるような虚偽の証言をしなければならない事情は見出し難いこと,被告人が万引きしたとされる商品は4点であり,Gは事務室でそれを確認しているのに,同人は自己の目撃したものが犯行の一部始終ではないことを含め,見ていないこと,分からないことについてもその旨明確にしつつ述べており,自ら体験した事実をありのままに証言しようとしている姿勢が顕著であること等に照らすと,弁護人が指摘する諸事情(目撃したこと自体や,詳細すぎる証言はむしろ不自然である等)を考慮に入れたとしても,G証言の信用性は非常に高いというべきである。 3 これに対して,被告人は,捜査及び公判を通じて,本件窃盗の犯行を否認し,大要,被告人は,本件当日,自宅から持ってきて財布,鍵等のほか別の店での買い物を入れていたビニール袋と,本件被害品を含む9点を買い物かごに入れ,レジを通り,全品について代金を支払った,仮に本件被害品の代金が支払われていなかったとすれば,それはレジ係の従業員がレジを通し損なったためか,購入する意思で買い物かごに入れた商品のうち数点が,誤って前記ビニール袋に混入したため,レジで計上されずに通過してしまったとしか考えられないなどと弁解している。 しかしながら,レジ係の従業員が,一人の客の 買い物かごに入れた商品のうち数点が,誤って前記ビニール袋に混入したため,レジで計上されずに通過してしまったとしか考えられないなどと弁解している。 しかしながら,レジ係の従業員が,一人の客の買い物のうち9点中4点もの商品についてレジを通し損うということはおよそあり得ないと思われること,G証言やEも同様の供述をしていること,買い物かごに入れていた別のビニール袋内に誤って4点もの商品が入ってしまうというのも極めて不自然であること,被告人自身捜査段階で飴,野菜サラダ,カシューナッツについては覚えがない,受け取ったレシートは気にしていないのでいつの間にか紛失していたなどと述べていること,不合理な弁解であると言わざるを得ない。 これらの事情に照らすと,被告人の捜査及び公判における弁解は,到底信用することができない。 4 以上の各事実を総合すると,被告人が,生活に困窮していたわけではなく,動機が見当たらないという点を考慮に入れてもなお,本件犯行当時,厚揚げ等5点の買い物を済ませた後,再度店内に戻り,飴,菓子パン,野菜サラダのみならず,カシューナッツについても窃取したことが優に認められるというべきである。 したがって,弁護人の主張は採用しない。 (法令の適用)被告人の判示所為は,刑法235条に該当するので,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役6月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとする。 (量刑の理由)本件は,窃盗(万引き)1件の事案である。 被告人は,資産もあり所持金に窮したわけでもないのに本件に及んでおり,動機に酌むべき点はなく,犯行態様も手慣れたものであって,その意味において突発的,偶発的な犯行ともいい難いところである。しかも,被告人は,捜査段階から一貫して本件を けでもないのに本件に及んでおり,動機に酌むべき点はなく,犯行態様も手慣れたものであって,その意味において突発的,偶発的な犯行ともいい難いところである。しかも,被告人は,捜査段階から一貫して本件を身に覚えがないとして否認し,反省の態度が全く見られないことなどを考え併せると,被告人の刑事責任は軽いとはいえない。 しかしながら,本件の被害額は861円と少額であり,被害品はいずれも直ちに還付され被害が回復されていること,被告人には前科前歴が全く見当たらないこと,被告人の年齢等,被告人のために斟酌すべき事情を十分に考慮して,主文の刑に止めた上,その刑の執行を猶予することとした。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・懲役10月)平成14年1月23日神戸地方裁判所第11刑事係乙裁判官溝國禎久

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