平成23(ワ)7407 特許権侵害差止等請求権不存在確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年1月31日 大阪地方裁判所
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判決文本文45,015 文字)

- 1 -平成25年1月31日判決言渡同日判決原本領収裁判所書記官平成23年第7407号特許権侵害差止等請求権不存在確認等請求事件口頭弁論終結日平成24年10月29日判決 原告日本ロレアル株式会社原告エヌ・エル・オー株式会社上記2 名訴訟代理人弁護士鈴木秀彦同水口美穂同渡 邊 真紀子同志村典子同渡部峻被告atoo株式会社被告P 1上記2 名訴訟代理人弁護士山 田 威一郎同訴訟代理人弁理士松井宏記同補佐人弁理士立花顕治同山 下 未知子主文 1 原告らによる別紙商品目録記載の商品の輸入,製造,販売又は使用につき,被告P1が別紙特許権目録記載の特許権に基づく差止請求権,損害賠償請求権及び不当利得返還請求権をいずれも有しないことを確認する。 2 被告らは,文書,口頭若しくはインターネットを通じて,別紙商品目録記載の商品の輸入,製造,販売又は使用が,別紙特許権目録記載の特許権を侵害し,又は侵害するおそれがある旨を,需要者,原告らの取引関係者及びその他の第三者に告知したり,流布してはならない。 3 被告らは,原告日本ロレアル株式会社に対し,連帯して金200万円及び- 2 - し,又は侵害するおそれがある旨を,需要者,原告らの取引関係者及びその他の第三者に告知したり,流布してはならない。 3 被告らは,原告日本ロレアル株式会社に対し,連帯して金200万円及び- 2 -これに対する被告atoo株式会社においては平成23年7月6日から,被告P1においては平成23年6月29日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告らは,原告エヌ・エル・オー株式会社に対し,連帯して金200万円及びこれに対する被告atoo株式会社においては平成23年7月6日から,被告P1においては平成23年6月29日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,これを10分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告らの負担とする。 7 この判決は,第2項から第4項までに限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求 1 主文第1項及び第2項と同旨 2 被告atoo株式会社は,本判決確定の日から7日以内に,別紙謝罪文目録(原告ら請求)記載の謝罪文を,別紙信用回復措置対象アドレス目録記載の同被告のホームページアドレス上に掲載せよ。 3 被告らは,原告日本ロレアル株式会社に対し,連帯して金2000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告atoo株式会社においては平成23年7月6日,被告P1においては平成23年6月29日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告らは,原告エヌ・エル・オー株式会社に対し,連帯して金2000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告atoo株式会社においては平成23年7月6日,被告P1においては平成23年6月29日)から支払済みまで年 ・エル・オー株式会社に対し,連帯して金2000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告atoo株式会社においては平成23年7月6日,被告P1においては平成23年6月29日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 仮執行宣言- 3 -第2 事案の概要原告らは,被告らにおいて,原告らによる別紙商品目録記載の口紅(以下「本件口紅」という。)の製造,輸入,販売は,被告P1の有する別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」という。)を侵害するものである,本件口紅は原告らの製造した商品ではない,といった虚偽の事実を,本件口紅の需要者,原告らの取引関係者及びその他の第三者に告知,流布し,原告らの信用を毀損したと主張している。 本件は,原告らが,(1)原告らによる本件口紅の輸入,製造,販売又は使用につき,被告P1が本件特許権に基づく差止請求権,損害賠償請求権及び不当利得返還請求権をいずれも有しないことの確認を求めるとともに,(2)被告らの上記告知,流布が,不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為(信用毀損行為)に当たるとして,①被告らに対し,不正競争防止法3条1項に基づき,文書,口頭若しくはインターネットを通じて,本件口紅の輸入,製造,販売又は使用が,本件特許権を侵害し,又は侵害するおそれがある旨を,需要者,原告らの取引関係者及びその他の第三者に告知,流布する行為の差止め,②被告atoo株式会社(以下「被告atoo」という。)に対し,同法14条に基づく信用回復措置として,本判決確定の日から7日以内に,別紙謝罪文目録(原告ら請求)記載の謝罪文を別紙信用回復措置対象アドレス目録記載の被告atooホームページアドレス上に掲載すること,③被告らに対し,不正競争行為に基づく損害賠償として,原告ら各自に金2000万円ず 原告ら請求)記載の謝罪文を別紙信用回復措置対象アドレス目録記載の被告atooホームページアドレス上に掲載すること,③被告らに対し,不正競争行為に基づく損害賠償として,原告ら各自に金2000万円ずつ及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告atooにおいては平成23年7月6日,被告P1においては平成23年6月29日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払いをそれぞれ求めた事案である。 1 判断の基礎となる事実以下の各事実は当事者間に争いがないか,掲記の各証拠又は弁論の全趣- 4 -旨により容易に認められる。 (1) 当事者原告日本ロレアル株式会社(以下「原告ロレアル」という。)は,医薬部外品を含む全ての化粧品,香水,トイレタリー剤,美容及び頭髪用調合剤全般,香料,これらの製品と同一目的を意図する器具,備品類の製造,輸出入並びに販売等を目的とする株式会社である。 原告エヌ・エル・オー株式会社(以下「原告エヌ・エル・オー」という。)は,口紅,ファンデーション,石けん,香水,トイレタリー剤,その他の化粧品及び医薬部外品の製造,輸出入並びに販売等を目的とする株式会社である。 原告エヌ・エル・オーは,原告ロレアルの100%子会社であり,本店所在地及び代表取締役ともに同一である。原告らは,国際的に化粧品事業を展開するロレアルグループの一員であり,フランス法人であるロレアル株式会社(以下「フランスロレアル社」という。)の子会社であり,原告らは実質的に一体となり,「ロレアル」のブランド名で事業を行っている。 被告atooは,化粧品の製造及び販売等を目的とする株式会社であり,被告P1はその代表取締役である。 (2) 本件特許権ア被告P1は,本件特許権(以下,その特許を「本件特許」といい,本件特許に係る tooは,化粧品の製造及び販売等を目的とする株式会社であり,被告P1はその代表取締役である。 (2) 本件特許権ア被告P1は,本件特許権(以下,その特許を「本件特許」といい,本件特許に係る明細書及び図面をあわせて「本件明細書」という。)を有しているが,その特許請求の範囲のうち,請求項1及び同2は,以下のとおりである(以下,各請求項に係る発明を,それぞれ「本件特許発明1」「本件特許発明2」といい,これらをあわせて「本件特許発明」という。)【請求項1】- 5 -内周面に螺旋溝(3a)を設けた筒状の外筒部(3)内に,上下方向にガイド孔(4a)を有した筒状の内筒部(4)を相対回転可能に収容し,この内筒部(4)内に,ガイド孔(4a)を貫通し外筒部(3)の螺旋溝(3a)に係合する主導突起(5a)を設けた筒状の受皿(5)を収容し,外筒部(3)に対して内筒部(4)を相対回転させることにより受皿(5)が内筒部(4)内を螺旋溝(3a)に沿って上下方向に移動可能とした繰り出し容器において,内筒部(4)の外壁に変形可能な突片部(6)を設け,内筒部(4)を外筒部(3)に収容する際に,突片部(6)を変形させ,分別時の使用済み確認を可能にしたことを特徴とする繰り出し容器。 【請求項2】突片部(6)に当接する係合面(7)を外筒部(3)の内周面に設けたことを特徴とする請求項1記載の繰り出し容器。 イ本件特許発明1及び本件特許発明2を構成要件に分説すると以下のとおりである。 【本件特許発明1】A 内周面に螺旋溝(3a)を設けた筒状の外筒部(3)内に,B 上下方向にガイド孔(4a)を有した筒状の内筒部(4)を相対回転可能に収容し,C この内筒部(4)内に,ガイド孔(4a)を貫通し外筒部(3)の螺旋溝(3a)に係合する主導突 部(3)内に,B 上下方向にガイド孔(4a)を有した筒状の内筒部(4)を相対回転可能に収容し,C この内筒部(4)内に,ガイド孔(4a)を貫通し外筒部(3)の螺旋溝(3a)に係合する主導突起(5a)を設けた筒状の受皿(5)を収容し,D 外筒部(3)に対して内筒部(4)を相対回転させることにより受皿(5)が内筒部(4)内を螺旋溝(3a)に沿って上下方向に- 6 -移動可能とした繰り出し容器において,E 内筒部(4)の外壁に変形可能な突片部(6)を設け,F 内筒部(4)を外筒部(3)に収容する際に,突片部(6)を変形させ,G 分別時の使用済み確認を可能にしたことを特徴とするH 繰り出し容器。 【本件特許発明2】I 突片部(6)に当接する係合面(7)を外筒部(3)の内周面に設けたことを特徴とする請求項1記載の繰り出し容器。 (3) 無効審判請求と訂正請求ア原告ロレアルは,平成23年1月14日,特許庁に対し,本件特許発明が登録実用新案公報(実用新案登録第3116256号。以下「甲19文献」という。)で開示された考案(以下「甲19考案」という。)と同一であることなどを理由に無効とされるべきであるとして,本件特許の無効審判を請求した(甲17。以下「本件無効審判請求」という。)。 被告P1は,本件無効審判請求において,同年4月4日,本件特許の特許請求の範囲のうち請求項1及び同2につき,以下のとおり,訂正請求をした(乙1。以下「本件訂正請求」という。下線部が訂正部分である。)。 【請求項1】内周面に螺旋溝(3a)を設けた筒状の外筒部(3)内に,上下方向にガイド孔(4a)を有した筒状の内筒部(4)を相対回転可能に収容し,この内筒部(4)内に,ガイド孔(4a)を貫通し外筒部(3)の螺旋溝(3a)に係合す を設けた筒状の外筒部(3)内に,上下方向にガイド孔(4a)を有した筒状の内筒部(4)を相対回転可能に収容し,この内筒部(4)内に,ガイド孔(4a)を貫通し外筒部(3)の螺旋溝(3a)に係合する主導突起(5a)を設けた筒状の受皿- 7 -(5)を収容し,外筒部(3)に対して内筒部(4)を相対回転させることにより受皿(5)が内筒部(4)内を螺旋溝(3a)に沿って上下方向に移動可能とした繰り出し容器において,内筒部(4)の外壁に水平方向に突き出す変形可能な突片部(6)を設け,内筒部(4)を外筒部(3)に収容する際に,突片部(6)が外筒部(3)に押し倒されて斜め下方に変形され,分別時においても突片部(6)が変形していることで,使用済み確認を可能にしたことを特徴とする繰り出し容器。 【請求項2】突片部(6)に当接する係合面(7)を外筒部(3)の内周面に設け,内筒部(4)において,突片部(6)よりも下方には,径方向外方に突出する部分が設けられ,係合面(7)が設けられた外筒部(3)の下端部は,前記突出する部分に対向配置されることを特徴とする請求項1記載の繰り出し容器。 イ本件訂正請求の請求項1及び請求項2に係る発明(以下,それぞれを「本件特許訂正発明1」「本件特許訂正発明2」という。)を構成要件に分説すると以下のとおりである。 【本件特許訂正発明1】訂正A 内周面に螺旋溝(3a)を設けた筒状の外筒部(3)内に,訂正B 上下方向にガイド孔(4a)を有した筒状の内筒部(4)を相対回転可能に収容し,訂正C この内筒部(4)内に,ガイド孔(4a)を貫通し外筒部(3)の螺旋溝(3a)に係合する主導突起(5a)を設けた筒状の受皿(5)を収容し,- 8 -訂正D 外筒部(3)に対して内筒部(4)を相対回転させること )内に,ガイド孔(4a)を貫通し外筒部(3)の螺旋溝(3a)に係合する主導突起(5a)を設けた筒状の受皿(5)を収容し,- 8 -訂正D 外筒部(3)に対して内筒部(4)を相対回転させることにより受皿(5)が内筒部(4)内を螺旋溝(3a)に沿って上下方向に移動可能とした繰り出し容器において,訂正E 内筒部(4)の外壁に水平方向に突き出す変形可能な突片部(6)を設け,訂正F 内筒部(4)を外筒部(3)に収容する際に,突片部(6)が外筒部(3)に押し倒されて斜め下方に変形され,訂正G 分別時においても突片部(6)が変形していることで,使用済み確認を可能にしたことを特徴とする訂正H 繰り出し容器。 【本件特許訂正請求2】訂正I 突片部(6)に当接する係合面(7)を外筒部(3)の内周面に設け,訂正J 内筒部(4)において,突片部(6)よりも下方には,径方向外方に突出する部分が設けられ,訂正K 係合面(7)が設けられた外筒部(3)の下端部は,前記突出する部分に対向配置されることを特徴とする訂正L 請求項1記載の繰り出し容器。 ウ特許庁は,平成23年10月12日,本件訂正請求を認めるとともに,本件無効審判請求は成り立たないとの審決をした(乙10)。 原告ロレアルは,これを不服として,知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起したが,同裁判所は,平成24年8月28日,請求棄却の判決を言い渡した(乙30)。 (4) 本件容器の構成などア原告ロレアルは,原告エヌ・エル・オーの委託を受け,「メイベリンウォーターシャイニーピュアダイヤモンド」との名称の口紅(以下- 9 -「原告口紅」という。)を日本国内に輸入し,販売している。原告口紅の容器には,内筒部の外壁に突状部があるもの(以下「本件容器」という。本件容器 ーピュアダイヤモンド」との名称の口紅(以下- 9 -「原告口紅」という。)を日本国内に輸入し,販売している。原告口紅の容器には,内筒部の外壁に突状部があるもの(以下「本件容器」という。本件容器を備えた原告口紅が本件口紅である。)と,そのような突状部がないものとがあり,後者は本件特許発明1及び2の技術的範囲に属しない。 イ本件容器の構成は,以下のとおりである。 a 内周面に螺旋状凹部を設けた筒状の外側部材内に,b 上下方向にスリットを有した筒状の内側部材を相対回転可能に収容し,c この内側部材内に,スリットを貫通し外側部材の螺旋状凹部に係合する凸部材を設けた筒状の皿部材を収容し,d 外側部材に対して内側部材を相対回転させることにより皿部材が内側部材内を螺旋状凹部に沿って上下方向に移動可能とした化粧料用容器において,e 内側部材の外周面に容易に曲げることができる水平方向に突き出した突状部を設け,f 内側部材を外側部材に収容している状態で,突状部は外側部材の内周面に設けた内側摺接面に当接し,外側部材で押し倒されて斜め下方向に曲げられており,g 突状部は,内側部材が外側部材から取り出された時においても曲がっているh 化粧料用容器で,i 突状部に当接する内側摺接面が外側部材の内周面に設けられており,j 内側部材の下端に径方向外方に突出する部分(突出部)が設けられており,- 10 -k 係合面が設けられた外側部材の下端部は,突出部に対向配置されている。 ウ本件容器は,本件特許発明1の構成要件AからF及びHを,本件特許発明2の構成要件Iのうち本件特許発明1の引用部分以外をそれぞれ充足する(構成要件Gの充足性について争いがある。)。 特許庁審判官は,平成22年10月29日,請求人を被告P1,被請求 を,本件特許発明2の構成要件Iのうち本件特許発明1の引用部分以外をそれぞれ充足する(構成要件Gの充足性について争いがある。)。 特許庁審判官は,平成22年10月29日,請求人を被告P1,被請求人を原告エヌ・エル・オーとする判定請求事件(判定2010-600036)において,本件容器は,本件特許発明1及び同2の技術的範囲に属するとの判定をした(甲24)。 (5) 原告らの顧客に対する被告P1の書面送付及び被告atooによるウェブサイト掲載被告P1は,本件口紅を小売販売していた下記の各社に対し,以下の内容が記載された書面を送付した。 ア株式会社コクミン① お客様相談室宛の「被疑侵害物件に関しまして」と題する平成22年12月25日付書面(甲8)「さて,2010年12月3日,心斎橋北店にて,被疑侵害物件を確認しました。」「答弁書(エル・エヌ・オー株式会社)の主張は,当該,被疑侵害物件は,エル・エヌ・オー株式会社(日本ロレアル株式会社)が製造・販売に係る製品とは異なると主張しております。従いまして,貴社,店頭にて販売されております製品は,正規品ではないと思料されます。」② 代表取締役宛の「被疑侵害物件」と題する平成23年1月11日付書面(甲9の1・2)「2010年12月3日,心斎橋店で購入致しました[メイベリン- 11 -ニューヨーク口紅]・・・は,判定2010-600036のとおり,私が,保有しております特許第4356901号発明の技術的範囲に属する被疑侵害物件です。また,貴社,お客様相談室宛に資料・判定2010-600036及び,答弁書をお送りした後も,エル・エヌ・オー株式会社と協議を重ねてまいりましたが,答弁書(送付資料)で述べた『エヌ・エル・オー株式会社が製造・販売に係る製品とは異なる』との主張を変え 00036及び,答弁書をお送りした後も,エル・エヌ・オー株式会社と協議を重ねてまいりましたが,答弁書(送付資料)で述べた『エヌ・エル・オー株式会社が製造・販売に係る製品とは異なる』との主張を変える事はなく,また,日本ロレアル株式会社の代理人,P6弁護士は,正規品以外の被疑侵害物件は,エヌ・エル・オー株式会社及び,日本ロレアル株式会社とは係わりのない商品であるかのように理解される発言と主張を繰り返しております。」③ 代表取締役宛の「警告書」と題する平成23年1月17日付書面(甲10の1・2)「メイベリンピュアダイアモンド口紅・・・(以下「侵害物件」といいます)に関して,口頭及び書面で協力要請を繰り返し行ったが,正当理由,正当権限なく侵害物件の店頭販売を継続するなどし,私の信用及び業務に著しい損害を与えた。 私は,貴社に対して,侵害物件の差止,不当利得返還及び信用回復措置を求める。 この警告に従わない場合には,捜査機関への被害届及び,損害賠償を含む司法的措置を講じることを付言する。」イ株式会社丸井グループ① お客様相談室宛の平成22年12月8日付の書面原告ロレアルが,本件口紅につき,原告ロレアルの製品とは異なる旨主張しているとの記載や,原告口紅の品質に疑念を投げかける趣旨の記載。 - 12 -② 代表取締役宛の平成23年1月4日付の書面丸井で購入した(メイベリンの)商品は被疑侵害物件であり,原告エヌ・エル・オーとも協議を繰り返している,丸井に対しても誠意ある対応を求めるという趣旨の記載。 ③ 代表取締役宛の「警告書」と題する平成23年1月15日付の書面侵害物件である本件口紅の店頭販売を正当な理由なく継続しているという趣旨の記載ウ株式会社イトーヨーカ堂「警告書」と題する平成23年1月17日付の 書」と題する平成23年1月15日付の書面侵害物件である本件口紅の店頭販売を正当な理由なく継続しているという趣旨の記載ウ株式会社イトーヨーカ堂「警告書」と題する平成23年1月17日付の書面「私の信用及び業務に著しい損害を与えた」,「捜査機関に被害届けを提出する」の記載とともに,本件口紅(侵害物件)の差止め等を求める旨の記載。 エ株式会社マツモトキヨシ① お客様相談室宛の「被疑侵害物件に関しまして」と題する平成23年1月11日付の書面(甲11)「さて,2011年1月10日,ららぽーと甲子園店にて,被疑侵害物件を確認しました。」「答弁書(エル・エヌ・オー株式会社)の主張は,当該,被疑侵害物件は,エル・エヌ・オー株式会社(日本ロレアル株式会社)が製造・販売に係る製品とは異なると主張しております。従いまして,貴社,店頭にて販売されております製品は,正規品ではないと思料されます。」② 代表取締役宛の「警告書」と題する平成23年1月18日付の書面(甲12)「メイベリンピュアダイアモンド口紅・・・(以下「侵害物件」と- 13 -いいます)に関して,口頭及び書面で協力要請を繰り返し行ったが,正当理由,正当権限なく侵害物件の店頭販売を継続するなどし,私の信用及び業務に著しい損害を与えた。 私は,貴社に対して,侵害物件の差止,不当利得返還及び信用回復措置を求める。 この警告に従わない場合には,捜査機関への被害届及び,損害賠償を含む司法的措置を講じることを付言する。」オ株式会社ダイエー① 代表取締役宛の平成22年12月の書面原告ロレアルが,本件口紅につき,原告ロレアルの製品ではない旨主張しており,現在においてもその主張に訂正がない旨の記載。 ② 代表取締役宛の「警告書」と題する平成23年1月15日付の 12月の書面原告ロレアルが,本件口紅につき,原告ロレアルの製品ではない旨主張しており,現在においてもその主張に訂正がない旨の記載。 ② 代表取締役宛の「警告書」と題する平成23年1月15日付の書面ダイエーが,侵害物件である本件口紅の店頭販売を正当な理由なく継続し,被告P1の信用及び業務に対して著しい損害を与えたとして,侵害物件の差止めを求める旨の記載。 カ株式会社井田両国堂① 代表取締役宛の「ご協力願い書」と題する平成22年12月18日付の書面(甲13の1・2)「メイベリンウォーターシャイニーピュアダイアモンドに関しまして。 2010年11月18日付け,イオンリテール株式会社・・・に提出した報告書内,・・・とした根拠となる資料及び,入手先の情報提供のご協力をお願い申し上げます。 このご協力願い書を受け取った日から5日以内に書面による回答をお願い致します。期限内にご協力が得られない場合には,イオン- 14 -リテール株式会社に,2010年11月18日付け報告書は,根拠のない報告書であった旨を報告させて頂きます。」② 代表取締役宛の「警告書」と題する平成23年1月13日付の書面(甲14)「メイベリンピュアダイアモンド口紅・・・に関して,私がイオンリテール株式会社に行った問い合わせに,前記企業に対して意味不明の報告書を提出するなどし,私の信用及び業務に対して著しい損害を与えた。 この警告書を受け取った日から5日以内に侵害物件の販売差止,不当利得返還及び信用回復措置を求める。 この警告に従わない場合には,貴社,及びイオンリテール株式会社に対して,生じた損害の賠償を求める。また,捜査機関に被害届を提出することを付言する。」キ株式会社ヨドバシカメラお客様相談室宛の平成23年1月13日付の書面 社,及びイオンリテール株式会社に対して,生じた損害の賠償を求める。また,捜査機関に被害届を提出することを付言する。」キ株式会社ヨドバシカメラお客様相談室宛の平成23年1月13日付の書面原告エヌ・エル・オーが本件口紅は正規の製品ではないと主張している,ヨドバシカメラ梅田店で被疑侵害物件を確認した,企業として誠意ある対応を求める旨の記載。 ク株式会社東京ドーム代表取締役宛の「警告書」と題する平成23年1月19日付の書面(甲15の1・2)「メイベリンピュアダイアモンド口紅・・・(以下「侵害物件」といいます)に関して,口頭及び書面で協力要請を繰り返し行ったが,正当理由,正当権限なく侵害物件の店頭販売を継続するなどし,私の信用及び業務に著しい損害を与えた。 私は,貴社に対して,侵害物件の差止,不当利得返還及び信用回復- 15 -措置を求める。 この警告に従わない場合には,捜査機関への被害届及び,損害賠償を含む司法的措置を講じることを付言する。」ケ被告atooのウェブサイト掲載被告atooは,平成22年12月9日を含む一定の期間,別紙信用回復措置対象アドレス目録記載のアドレスに開設している自社ウェブサイトにおいて,原告らによる本件口紅の販売等が本件特許権を侵害する旨の自身の主張を含め,当該特許権侵害の有無に係る原告らとの紛争経過を掲載した(甲2の1)。 (6) 仮処分事件の申立から合意書締結に至るまでの経過ア原告らは,平成23年1月14日,被告らを債務者とし,東京地方裁判所に対し,「債務者らは,債権者らの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する一切の行為をしてはならない。」「債務者らは,文書,口頭若しくはインターネットを通じて,債権者らが別紙商品目録記載の商品(判決注:原告口紅)の輸入, 上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する一切の行為をしてはならない。」「債務者らは,文書,口頭若しくはインターネットを通じて,債権者らが別紙商品目録記載の商品(判決注:原告口紅)の輸入,製造,販売又は使用が,別紙特許権目録記載の特許権を侵害し,又は侵害するおそれがある旨及び同商品が債権者らの製造した商品ではない,又は商品ではないおそれがある旨を,需要者,債権者らの取引関係者及びその他の第三者に告知したり,流布してはならない。」との仮処分を求める申立てをした(甲31)。 原告らと被告らは,同年2月10日,上記仮処分申立事件の審尋期日において,「債権者らの製造販売する別紙商品目録記載の商品(判決注:原告口紅)が,債務者P1の有する別紙特許権目録記載の特許権を侵害しているかどうかを巡る紛争については,債権者らが別途提起する民事訴訟において解決を図るものとし,債務者らは,同訴訟の判決が確定するまでの間,文書,口頭若しくはインターネットを通じ- 16 -て,債権者らが別紙商品目録記載の商品の輸入,製造,販売又は使用が,別紙特許権目録記載の特許権を侵害し,又は侵害するおそれがある旨及び同商品が債権者らの製造した商品ではない,又は商品ではないおそれがある旨を,需要者,債権者らの取引関係者及びその他の第三者に告知したり,流布したりしないことを確約する。」との和解をした。 イその後原告らと被告らは,双方の代理人弁護士間の交渉(甲3~5)を経た後,平成23年5月31日,合意書(甲36)を交わして,以下の条項を含む合意をした(条項中「甲ら」は原告らを,「乙ら」は被告らを意味する。)。 「1 甲らは,本合意書締結後10日以内に,P1氏に対する特許権侵害差止請求権不存在確認請求(以下「本件請求」という。)を含む訴訟(以下「本件訴訟」と 原告らを,「乙ら」は被告らを意味する。)。 「1 甲らは,本合意書締結後10日以内に,P1氏に対する特許権侵害差止請求権不存在確認請求(以下「本件請求」という。)を含む訴訟(以下「本件訴訟」という。)を乙らを被告として大阪地方裁判所に提起する。 2 乙らは,本件訴訟に対し,反訴を提起しない。」「4 本件訴訟において,突片部を有する容器に収納された甲の製品を販売する行為が別紙特許権目録記載の特許の特許権侵害にあたるとの判断がなされ,当該判決が確定した場合,甲らは,判決確定後1か月以内に,P1氏に対し,解決金として7000万円を支払うほか,甲らの取引先に残存している侵害品を回収し,破棄するよう最大限努力する。」(7) 本訴の提起原告らは,平成23年6月9日に本件訴訟を提起した。 2 争点(1) 特許権に基づく差止請求権等の不存在確認請求ア本件容器が本件特許発明1及び同2の技術的範囲に属するか- 17 -(争点1-1)イ本件特許は,新規性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効とされるべきものか (争点1-2)ウ先使用権の成否 (争点1-3)(2) 不正競争防止法に基づく請求ア不正競争防止法2条1項14号(信用毀損行為)該当性(争点2-1)イ不正競争防止法3条1項に基づく差止めの必要性 (争点2-2)ウ被告らの故意又は過失 (争点2-3)エ原告らの損害 (争点2-4)オ不正競争防止法14条に基づく信用回復措置の必要性(争点2-5)第3 争点に らの損害 (争点2-4)オ不正競争防止法14条に基づく信用回復措置の必要性(争点2-5)第3 争点に対する当事者の主張 1 争点1-1(本件容器が本件特許発明1及び同2の技術的範囲に属するか)について【被告らの主張】本件容器は,「突状部は,内側部材が外側部材から取り出された時においても曲がっている」との構成を備えるが,これにより,内側部材は外側部材に収容されていたことが確認できる。そのため,本件容器は,本件特許発明1の「分別時の使用済み確認を可能にした」(構成要件G)を充足するものである(本件特許訂正発明1の「分別時においても突片部(6)が変形していることで使用済み確認を可能にした」(構成要件訂正G)も充足する。)。 したがって,本件容器は,本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2の技術的範囲に属する(本件特許訂正発明1及びこれを引用する本件特許訂正発明2の技術的範囲にも属する。)。 - 18 -【原告らの主張】本件容器において,「分別時の使用済み確認」は,突片部の変形によって可能になるものではないから,構成要件Gを充足しない。すなわち,「使用済み」の意味が,繰り出し容器に収納された製品が本来の目的に使用されたことであるならば,「使用済み」であることは,口紅の消耗から一見して明らかであり,内筒と外筒とを分解して,突片部の変形の有無を確認するまでもない。他方,「使用済み」の意味が,繰り出し容器として組み立てられたことをもって,その部品である内筒が「使用済み」になるという意味であるとすると,そもそも,内筒が外筒に収容されている状態の製品を見れば,内筒が「使用済み」であることは一目瞭然であり,内筒と外筒とを分解して,突片 その部品である内筒が「使用済み」になるという意味であるとすると,そもそも,内筒が外筒に収容されている状態の製品を見れば,内筒が「使用済み」であることは一目瞭然であり,内筒と外筒とを分解して,突片部の変形の有無を確認するまでもない。 なお,本件容器は,内筒と外筒を「分別」して回収すること自体が不可能であり,実際にそのような分別回収がなされることはあり得ない。外筒を破壊しない限り,内筒と外筒は外れないし,外筒を破壊し,内筒だけを分別回収して再利用するなどということはあり得ないからである。 したがって,本件容器は構成要件Gを充足せず,本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2の技術的範囲に属しない。 2 争点1-2(本件特許は,新規性欠如の無効理由を有しており,特許無効審判により無効とされるべきものか)について【原告らの主張】本件特許発明1及び同2は,本件特許出願前に頒布された甲19文献の開示する甲19考案と同一であるから,新規性欠如(特許法29条1項3号)の無効理由を有している。このことは,本件訂正請求が認められたとしても,同様であるから,以下甲19考案と本件特許訂正発明1及び同2とを対比する。 (1) 本件特許訂正発明1- 19 -本件特許訂正発明1の構成要件訂正AからD及びHは,甲19文献で開示されていることが明らかであるが,構成要件訂正EからGまでも,以下のとおり,甲19文献に開示されている。 ア構成要件訂正E甲19考案の係合固定片13は,本件特許訂正発明1の内筒部(4)に相当する内管10に設けられているが,甲19文献中の「管底部の該回転台11と相互に接続する周囲縁上には,数個の突出排列する薄片状の弾性係合固定片13を等分に設置し,適当な高さの突出を形成する。こうして,挿入組立て後は適当に傾斜湾曲 ,甲19文献中の「管底部の該回転台11と相互に接続する周囲縁上には,数個の突出排列する薄片状の弾性係合固定片13を等分に設置し,適当な高さの突出を形成する。こうして,挿入組立て後は適当に傾斜湾曲し緊密に固定される構造を形成する。」「特に該係合固定片13の弾性による適当なサポートにより,該口紅本体18を伸ばし使用する時も圧力により該内管10が回転し,該口紅本体18が内部へと収縮する状況の発生を防止する」(段落【0006】)との記載によれば,当該係合固定片13は変形可能であり,変形することを予定しているといえる。 そして,係合固定片13は,摩擦抵抗を与えることが目的であるところ,最初から斜め下方に出ている突起よりも,水平方向に出ている突起の方が,組み合わせた時に斜め下方に変形することによって,摩擦抵抗が大きくなるのは当然である。実際,甲19文献には,「管底部の該回転台11と相互に接続する周囲縁上には,数個の突出排列する薄片状の弾性係合固定片13を等分に設置し,適当な高さの突出を形成する。こうして,挿入組立て後は適当に傾斜湾曲し緊密に固定される構造を形成する。」(段落【0006】)と明確に記載されており,「突起」が,組み立て「前」には「傾斜湾曲」していないこと,すなわち水平方向に突き出ていることは,当業者にとって明白である。 したがって,甲19考案の係合固定片13は,「内筒部(4)の外壁に水平方向に突き出す変形可能な突片部(6)」(構成要件訂正- 20 -E)に相当する。 イ構成要件訂正F甲19文献には,係合固定片13について,「管底部の該回転台11と相互に接続する周囲縁上には,数個の突出排列する薄片状の弾性係合固定片13を等分に設置し,適当な高さの突出を形成する。こうして,挿入組立て後は適当に傾斜湾曲し緊密に固定される構 底部の該回転台11と相互に接続する周囲縁上には,数個の突出排列する薄片状の弾性係合固定片13を等分に設置し,適当な高さの突出を形成する。こうして,挿入組立て後は適当に傾斜湾曲し緊密に固定される構造を形成する。」「特に該係合固定片13の弾性による適当なサポートにより,該口紅本体18を伸ばし使用する時も圧力により該内管10が回転し,該口紅本体18が内部へと収縮する状況の発生を防止する」(段落【0006】)との記載がある。これら記載に基づけば,内管10に設けられた係合固定片13が嵌合管16の内壁面に接触して弾性力を付与する以上,当然に係合固定片13が変形していると理解される。 そして,前記のとおり,係合固定片13が組立て前には水平方向に突き出ていることも考え合わせれば,「内筒部(4)を外筒部(3)に収容する際に,突片部(6)が外筒部(3)に押し倒されて斜め下方に変形され,」(構成要件訂正F)も,甲19文献に開示されているといえる。 ウ構成要件訂正G(ア) 甲19考案の係合固定片13につき,被告らは,弾性サポートを形成するという甲19考案の特徴に鑑みると突片部が折れ曲がった状態に固まることは想定されていない旨主張する。 しかし,係合固定片13にポリプロピレンなどのごく一般的な素材を使用した場合,塑性変形するため,分解しても水平に突き出した状態に戻るわけでないことは,当業者にとって周知の事実である。そのため,「分別時においても突片部(6)が変形していること」(構成要件訂正G)は,甲19考案で開示されているというべ- 21 -きである。 (イ) そして,構成要件訂正Gのうち「使用済み確認を可能にしたことを特徴とする」の部分は,発明の構成を限定するものではなく,発明によって期待される効果の記載である。しかし,発明は,課題解決のた (イ) そして,構成要件訂正Gのうち「使用済み確認を可能にしたことを特徴とする」の部分は,発明の構成を限定するものではなく,発明によって期待される効果の記載である。しかし,発明は,課題解決のための技術的手段であるから,特に本件のような機械的製品に関する発明の新規性を判断する際には,上記のような期待される効果を発明の構成と考えることは許されない。そのため,本件特許訂正発明1の構成自体が,甲19文献に開示されているのであれば,効果たる「使用済み確認を可能にしたことを特徴とする」が開示されているか検討するまでもなく,新規性は否定されるべきである。 また,仮にかかる効果の記載を発明の構成であると考えたとしても,甲19考案の係合固定片13にポリプロピレンなどのごく一般的な素材を使用した場合,塑性変形することに伴う既知の効果であるから,新規性を肯定する根拠にはならない。 (2) 本件特許訂正発明2「突片部(6)に当接する係合面(7)を外筒部(3)の内周面に設けた」(構成要件訂正I)との構成は,甲19考案における嵌合管16の内周に設けられ,係合固定片13が当接する係合面そのものである。 この点,被告が相違点とする唯一の根拠は,甲19文献の図2において,弾性係合固定片13の下方にある内管10の突出部分が,嵌合管16の下端部から垂直に下ろした直線上まで延びていないため,「対向配置」(構成要件訂正K)といえないということのようである。 しかし,被告らの言う「対向配置」は,外筒部(3)と内筒部(4)の隙間を狭くして,突片部6に塑性変形を生ぜしめるという意味しかないところ,甲19文献には,「挿入組立て後は適当に傾斜湾曲し緊密に固定される構造」(段落【0006】)というように,外筒と内筒との- 22 -間隔を,弾性係合固定片13を傾斜湾曲させる 意味しかないところ,甲19文献には,「挿入組立て後は適当に傾斜湾曲し緊密に固定される構造」(段落【0006】)というように,外筒と内筒との- 22 -間隔を,弾性係合固定片13を傾斜湾曲させるに足りる程度に狭くするべきことは明確に記載されている。甲19文献の図2で内管10の突出部分が,嵌合管16の下端部から垂直に下ろした直線上まで延びていないのは,そのようなデザインに限定する趣旨でなく,単なる設計事項であることは明らかである。 そのため,「対向配置」なるものは,何ら新規性を根拠づけるものではない。 【被告らの主張】(1) 本件特許発明1は,以下のとおり,甲19文献に記載も示唆もされていない構成,つまり,突片部の使用前及び分別後の状態を特定した構成を有しているものであるから,新規性を有することは明らかである。 ア構成要件訂正F本件特許発明1の突片部は,構成要件Fで示すように,「内筒部(4)を外筒部(3)に収容する際に,突片部(6)が外筒部(3)に押し倒されて斜め下方に変形され」る必要がある。すなわち,本件特許発明1では,突片部が,外筒部に押し倒されて復元できない状態まで変形されている必要がある。 これに対し,甲19考案の係合固定片は,弾性による適当なサポートにより,嵌合管を押圧するため,復元可能な状態で,傾斜湾曲しているに過ぎず,本件特許発明1のように押し倒されて下方に変形した状態ではない。むしろ,本件特許発明1のように復元しないよう変形すると,甲19考案の効果を得ることができないのである。 かかる相違から明らかなように,本件特許発明1と甲19考案は使用時の係合片の態様が全く異なるものであり,甲19文献には,「内筒部(4)を外筒部(3)に収容する際に,突片部(6)が外筒部(3)に押し倒されて斜め下方に変形され」( 本件特許発明1と甲19考案は使用時の係合片の態様が全く異なるものであり,甲19文献には,「内筒部(4)を外筒部(3)に収容する際に,突片部(6)が外筒部(3)に押し倒されて斜め下方に変形され」(構成要件訂正F)との構成が開示- 23 -されていない。 イ構成要件訂正E構成要件訂正Eは,使用前に,突片部が水平方向に突出するとの構成であるが,かかる構成が特定されているのは,構成要件Gで特定する分別後の突片部の態様との差異を明確にするためである。すなわち,突片部が使用前に水平方向に突出しているのは,突片部が,使用前の水平状態から斜め下方に変形することで,使用前後の突片部の態様の差が明確になり,使用後であることが容易に視認できるためである。 この点,甲19文献の図1には,口紅ケースの組み立て前の状態が示されているが,係合固定片13の存在が確認できる程度に示されているに過ぎず,係合固定片13が水平であるのか,あるいは斜め下方に延びているのかを読み取ることはできない。そのため,甲19文献が構成要件訂正Eを開示するものでないことは明らかである。 ウ構成要件訂正G甲19文献には,分別後の状態についても一切記載されていないが,これは,使用時の問題のみを解決する甲19考案の課題からして当然である。そのため,甲19文献が構成要件訂正Gを開示するものでないことも明らかである。 (2) 本件特許訂正発明2本件特許訂正発明2は,本件特許訂正発明1の構成を全て具備しているから,上記(1)より,甲19考案との相違は既に明らかである。 加えて,甲19考案では,係合固定片の下方に径方向外方に突出する部分を有するものの,外筒部の下端は,そこからさらに径方向外方にずれており,突出部分に対して軸方向に向き合っておらず対向配置されていない。これは, 9考案では,係合固定片の下方に径方向外方に突出する部分を有するものの,外筒部の下端は,そこからさらに径方向外方にずれており,突出部分に対して軸方向に向き合っておらず対向配置されていない。これは,内管と嵌合管とが干渉しないように,隙間を形成するという甲19考案の課題に起因する構成であり,本件特許発明2の「係- 24 -合面(7)が設けられた外筒部(3)の下端部は,前記突出する部分に対向配置される」(構成要件訂正K)との構成とは相違する。 したがって,本件特許訂正発明2の新規性も明らかである。 3 争点1-3(先使用権の成否)について【原告らの主張】内筒部の外壁に突片部がある本件容器は,本件特許発明の発明者とされる被告P1の指示によることなく,台湾を本店所在地とするShyaHsinPlasticWorksCo.,Ltd.(以下「台湾シャ・シン社」という。)が実用新案権を有する甲19考案の実施として,その子会社であるSuzhouShyaHsinPlasticCo.,Ltd.(以下「蘇州シャ・シン社」という。)が中国において製造したものである。原告らは,本件特許出願の際,尚美国際化粧品有限公司(以下「尚美公司」という。)を介して,かかる本件容器を備えた本件口紅を日本に輸入し,また,日本国内で譲渡の準備をしていたのであるから,本件特許発明につき,先使用権(特許法79条)を有している。 以下,各要件について主張する。 (1) 特許出願に関わる発明の内容を知らないでその発明をした者「ランコム」ブランドの口紅に係る容器の製作図面(以下「本件図面」という。)は,平成17年11月19日,蘇州シャ・シン社により,甲19考案に基づき,内筒部の外壁に突片部を備えるよう製図され,平成18年2月14日に一部修正されたものである 作図面(以下「本件図面」という。)は,平成17年11月19日,蘇州シャ・シン社により,甲19考案に基づき,内筒部の外壁に突片部を備えるよう製図され,平成18年2月14日に一部修正されたものである。つまり,当該突片部は,被告P1の指示によって備え付けられたわけではない。そのため,台湾シャ・シン社及び蘇州シャ・シン社は,「特許出願に関わる発明の内容を知らないでその発明をした者」に該当する。 ア甲19考案の想到時期台湾シャ・シン社は,本件図面が作成された当時,突片部を有する口紅容器に係る甲19考案につき,日本での実用新案登録(甲19)- 25 -のほか,世界各国で特許又は実用新案登録の出願をしていた。本件図面が甲19考案に基づくことは,本件図面中に,特許出願中を意味する「SH-PATP」との記載があることからも明らかである。 イ本件容器は甲19考案の実施品であること本件容器は,その構成からして,甲19考案の実施品そのものである。 この点,被告らは,①本件容器が甲19考案に基づいているのであれば,突片部は弾性サポートを形成するという甲19考案の特徴からして,突片部が折れ曲がった状態に固まることはない,②本件容器の突片部は「等分に設置」されていない,③甲19文献によれば,潤滑油が塗布されていないはずであるが本件容器には潤滑油が塗布されていたこと等を指摘し,本件容器が甲19考案の実施であることを否定する。 しかし,突片部にポリプロピレンというごく一般的な素材を使用した場合,一度組み立てられた際に折れ曲がった突片部は,折れ曲がった状態のままで,水平に突き出した状態に戻るわけでないことは当業者の常識である。 また,甲19文献では,突片部を「等分に設置」とされているが,突片部の中心部からの角度が全て90度になるよう設置する た状態のままで,水平に突き出した状態に戻るわけでないことは当業者の常識である。 また,甲19文献では,突片部を「等分に設置」とされているが,突片部の中心部からの角度が全て90度になるよう設置することを示しているわけではなく,突片部による弾性サポートが生じるよう適正位置に配置することを示しているだけである。本件図面中の突片部は,甲19考案の「等分に設置」という要件を完全に満たしている。 潤滑油の点についても,本件口紅に潤滑油が塗布されていたことを基礎づける証拠は何もない上,そもそも顧客の希望によって,潤滑油を塗布する場合としない場合がある以上,たまたま潤滑油を塗布した本件口紅があったとしても,それだけをもって本件容器が甲19考案- 26 -に基づくものでないということはできない。 ウ被告P1の電子メールの内容被告P1は,平成19年4月19日に,蘇州シャ・シン社の従業員であるP5氏に対し,「さて,図面SH052023 DRIVE(F)羽根部分の権利関係を知らせて下さい。貴社保有の特許ですか。日本での使用に問題はありませんか。羽根が折れる危険性はありませんか。」という内容の電子メールを送っている。このような問合せに対し,P5氏が同年4 月25 日に「FortheDRIVE (F), itisourpatent, thereisnoproblemtouseinJapan.(DRIVE(F)についてですが,これは我々の保有する特許であり,日本で使用することに問題はありません。)」と回答し,同日,被告P1は「DRIVE(F)了解いたしました。」と返信している。これら文面からは,被告P1が,蘇州シャ・シン社から送られてきた図面上で,本件容器の突片部に相当する羽根部分に係る特許権を蘇州シャ・シン社らが保有している (F)了解いたしました。」と返信している。これら文面からは,被告P1が,蘇州シャ・シン社から送られてきた図面上で,本件容器の突片部に相当する羽根部分に係る特許権を蘇州シャ・シン社らが保有しているか照会したところ,P5氏が当該羽部分は自分達の特許に基づくものであると説明し,被告P1もこれを了承しているとしか読み取りようがない。 また,蘇州シャ・シン社の代表取締役P2の秘書であるP3が,平成19年3月中旬になって突如,突片部は蘇州シャ・シン社が特許権を保有していると言い始めたなどという被告らの主張する事実がなかったことは,これら電子メールの内容を見れば明らかである。 エ被告らの主張の不合理性被告らは,蘇州シャ・シン社に対し,口紅容器に突片部を付けるアイディアを提供したのは被告P1であり,その時期は平成18年2月8日としている。しかし,上記のとおり,本件図面が作成されたのは,平成17年11月19日のことであるから,時間的前後関係だけから見ても,被告らの説明は破綻している。 - 27 -しかも,被告らは,蘇州シャ・シン社に上記アイディアを提供した時期につき,当初は本件特許の出願日(平成19年3月1日)の後と主張していたのを,それよりも早く本件容器が製造されていたことを示す証拠が提出されるや,平成18年2月8日と主張を変遷させたのであり,その主張に信用性がないことは明らかである。 (2) 特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者ア本件容器を備えるロット番号「2C361」の本件口紅は,平成18年12月27日に蘇州シャ・シン社で製造され,同月28日には原告らの輸入元である尚美公司の倉庫に保管されていた。そして,それら本件口紅は,平成19年1月5日には上海を出港し,同10 口紅は,平成18年12月27日に蘇州シャ・シン社で製造され,同月28日には原告らの輸入元である尚美公司の倉庫に保管されていた。そして,それら本件口紅は,平成19年1月5日には上海を出港し,同10日に東京税関を通過後,同15日群馬県にある寿倉庫に納入された。これら一連の経過と証拠との対比は,別紙本件口紅輸入経過表記載のとおりである。 したがって,原告らは,本件特許発明の「特許出願の際」である平成19年3月1日において,本件口紅を輸入することで本件特許発明と同一である甲19考案の実施をしており,「現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者」に該当する。 なお,仮にロット番号「2C361」の製品に,突片部のない容器を備えた原告口紅が混在していたとしても,本件口紅が輸入されたという事実に影響を及ぼすものではない。 イまた,原告らは,「輸入」のみならず,「譲渡」による実施の準備をしていた者でもある。すなわち,原告らは,平成19年2月以前から,本件口紅を含む原告口紅を日本国内で販売することを決定しており,雑誌やウェブサイトでその記事を掲載していた。このような記事の掲載は,本件口紅の販売の申出としての「発明の実施」に該当する- 28 -と同時に,発明の実施である「事業の準備」に当たる。 したがって,原告らは,「発明の実施である事業の準備をしている者」にも該当する。 (3) 知得ア 「知得」は,発明の実施品を仕入れる行為によっても知得は生じ得るもので,この場合,特許発明に係る構造や内容を認識していることは必要とされない。 原告らは,前記のとおり,尚美公司を介して,平成18年12月17日にシャ・シン社が製造したロット番号「2C361」の本件口紅を平成19年1月15日には日本国内に輸入していたのであるから,本 い。 原告らは,前記のとおり,尚美公司を介して,平成18年12月17日にシャ・シン社が製造したロット番号「2C361」の本件口紅を平成19年1月15日には日本国内に輸入していたのであるから,本件特許発明と同一である甲19考案を,「特許出願に関わる発明の内容を知らないでその発明をした者」であるシャ・シン社「から知得」していたといえる。 イまた,本件容器の製作図面である本件図面は,原告ロレアルの親会社で,ロレアルグループの筆頭であるフランスロレアル社が,前記輸入より前から保管し,その内容を知っていたものである。 したがって,ロレアルグループである原告らにおいても,本件特許発明の内容を「知得」していたといえる。 【被告らの主張】原告らは,本件特許発明につき,特許法79条の要件を満たすものではなく,先使用権を有しない。 各要件の主張は,以下のとおりである。 (1) 本件容器は被告P1の指示に基づいて製作された本件容器は,蘇州シャ・シン社において,被告P1の指示に基づき製造した「ランコム」用の突片部付容器試作品につき,その底部の形状を変更し,「メイベリンニューヨーク」用の容器として無断使用したものである。 - 29 -そのため,原告らは「特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得」した者とはいえない。 ア被告atooと蘇州シャ・シン社は,平成17年3月26日,使い切り容器の製造に関する覚書を交わした。当時蘇州シャ・シン社は,「ランコム」用の容器を製造していたが,被告P1の発明した使い切り容器の技術提供を受け,その試作品を製作することとしたのである。 そして,被告P1は,平成18年2月8日,上記試作品製作の打ち合わせのため来日していた蘇州シャ・シン社代表取締役のP2に対し,内筒に突片部を有する容器のア 試作品を製作することとしたのである。 そして,被告P1は,平成18年2月8日,上記試作品製作の打ち合わせのため来日していた蘇州シャ・シン社代表取締役のP2に対し,内筒に突片部を有する容器のアイディアを説明し,「使用済み確認をするための印をつけるという技術があるのだけれども,興味があるか」「もし興味があるなら,試作品を作ってもらえないか」と持ち掛けたところ,P2社長はこれを快諾した。さらに,被告P1は,同日の晩,日本国内のホテルに宿泊していたP2に対し,バイク便にて,①突片部の配置(中心から90度ずつの等分配置ではなく,あえて非等分な位置に配置する。),②突片部の形状(角の形を左右非対照にする。),③ランコムの通常の容器に設けられているストッパーを外すことを記載した指示書を送付した。蘇州シャ・シン社は,それから間もない平成18年2月14日に本件図面を作成したものであり,被告P1からの上記3つの指示が全て具体的に反映されている。 被告P1は,平成19年2月7日,蘇州シャ・シン社本社にて,「ランコム」の既存の容器をもとに製造された突片部を有する口紅容器の現物を見せてもらい,当該突片部が使用後も折れ曲がっていることを確認したため,その後同年3月1日に本件特許の出願を行った。 このような経過からして,本件容器の突片部が,被告P1の指示に由来することは明らかである。 イ原告らは,平成19年4月における蘇州シャ・シン社との電子メール- 30 -でのやりとりを殊更に問題視し,被告らの主張は信用できないと主張しているが,被告P1は,同年3月にP3から突片部を有する容器の権利を自分達が保有していると聞かされたことを受け,事実関係を確認するために電子メールを送ったに過ぎない。電子メールには,被告P1が突片部を有する容器を発明した旨示 月にP3から突片部を有する容器の権利を自分達が保有していると聞かされたことを受け,事実関係を確認するために電子メールを送ったに過ぎない。電子メールには,被告P1が突片部を有する容器を発明した旨示唆する記載はないが,当時は使い切り容器を大至急完成させることが社運をかけた最重要課題であり,突片部はあくまで付随的な技術にとどまるため,あえて波風を立てる必要はないと考えたからである。そのため,上記電子メールの内容は,被告らの主張と何ら矛盾するものではない。 (2) 原告らは本件特許発明の内容を知得していないア一般論として,先使用者が,図面などを見た場合のほか,発明の実施品を購入することによって発明の内容を「知得」する場合があることを特段争うものではないが,発明の実施品を購入すれば直ちに知得したものとみなすかのような原告らの解釈は採り得ない。先使用権は,特許出願前に独自に発明の内容を知得して発明の実施又は実施の準備をしていた者に対し,実施料なしに特許発明を実施できる大変強い権利を与えるものであるが,かかる権利を,特許発明の認識すらない販売業者に認める必要性は皆無である。 本件において原告らは,本件特許発明と同一である甲19考案の内容を知らなかったというだけでなく,本件容器に突片部が存在していたことすら知らなかったと明言しているのであるから,原告らが本件特許発明の内容を「知得」していたなどと評価できないことは明らかである。 イまた,フランスロレアル社が本件特許発明の内容を知得していたとしても,その子会社とはいえ,あくまで別法人である原告らが,本件特許発明を知得したことにはならない。そもそも,フランスロレアル社- 31 -が本件図面を目にしていたかも不明である。 (3) 本件特許出願前に本件口紅が輸入されたとの立証不十分原 が,本件特許発明を知得したことにはならない。そもそも,フランスロレアル社- 31 -が本件図面を目にしていたかも不明である。 (3) 本件特許出願前に本件口紅が輸入されたとの立証不十分原告らは,本件口紅を,本件特許出願前に輸入していたと主張するが,その証拠は到底信用できるものではない。まず原告らの主張は,ロット番号「2C361」の口紅の容器に突片部が設けられていること(甲25)を全ての出発点としているが,この製品をどのようなルートで入手したか一切明らかにしていない。ロット番号が記載されたシールの貼り換えが容易であることは原告らも自認しているのであるから,その信用性は極めて疑わしく,本訴のため捏造された証拠である可能性が高い。加えて,原告らの提出する証拠には,その作成当時に存在しなかった会社名が記載されているものも含まれており,当該証拠のみならず,他の証拠に関しても偽造されたことが強く疑われる。 そもそも,本訴訟では「ランコム」に係る本件図面は提出されている一方,本件容器の図面は一切証拠として提出されていないが,これは当該図面の作成日が本件特許出願後であるからに他ならない。また,原告らの調査結果からでさえ,口紅容器の製造過程では突片部があるものとないものとが混在していたことがはっきりと理解できる。 原告らは,中国における口紅容器の製造過程には全く関与していないため,蘇州シャ・シン社や尚美公司から提出された信憑性の低い中途半端な証拠しか提出できないというのが実態である。このような信用性に欠ける証拠によっては,本件突片部付口紅が本件特許出願前に輸入されていたとの立証が不十分であることは明らかである。 4 争点2-1(不正競争防止法2条1項14号(信用毀損行為)該当性)について【原告らの主張】被告P1は,平成22年1 許出願前に輸入されていたとの立証が不十分であることは明らかである。 4 争点2-1(不正競争防止法2条1項14号(信用毀損行為)該当性)について【原告らの主張】被告P1は,平成22年12月から平成23年1月にかけてのわずか2- 32 -か月の間に,「競争関係にある他人」に当たる原告らの取引先である原告口紅の卸売業者や小売店に対し,前記「1 判断の基礎となる事実」の(5)記載のとおり,直接あるいは書面により,本件口紅が被告P1の本件特許を侵害する等の虚偽の事実を執拗に告知し,その結果原告らの商品に対する営業上の信用は著しく害された。 また,被告atooも,前記「1 判断の基礎となる事実」の(5)記載のとおり,被告P1による上記一連の行動等を自社ウェブサイト上に掲載し,その結果として原告らの営業上の信用を害する虚偽事実の告知又は流布を行った。 このような被告らの行為が「営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」という不正競争行為(不競法2条1項14号)に当たることは明らかである。 【被告らの主張】否認ないし争う。 原告らは,本件口紅の輸入,製造,販売などによって,被告P1の本件特許権を侵害したのであるから,被告らの行為は,「虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」には当たらない。 5 争点2-2(不正競争防止法3条1項に基づく差止めの必要性)について【原告らの主張】前記4【原告らの主張】記載の被告P1の行為により,原告らは,取引先に対する説明・謝罪等を余儀なくされ,これにより原告らは通常の業務に支障をきたした。さらに,原告口紅をいったん店頭から引き下げるなどの対応をとった取引先もあり,原告らは極めて重大な営業上の損害を被った。このような信用棄損行為が再開されれば,原告らと取引先との信頼 に支障をきたした。さらに,原告口紅をいったん店頭から引き下げるなどの対応をとった取引先もあり,原告らは極めて重大な営業上の損害を被った。このような信用棄損行為が再開されれば,原告らと取引先との信頼関係が破壊され,原告らの商品取扱い中止等の結果も招きかねない上,情報- 33 -の流布によって一般消費者の原告らに対するイメージが著しく劣化し,回復困難な損害を生じることは明らかである。そして,被告P1が本訴において原告らによる本件特許権侵害を主張し続けていることを考えると,被告P1が同様の行為をいつ再開してもおかしくない状況にあるといえる。 一方,被告atooのウェブサイト上には,現在前記4【原告らの主張】記載のような掲載はされていないが,本訴における主張内容からすると,やはり同様の掲載をいつ再開してもおかしくなく,その場合,原告らの営業上の利益が侵害されることは明らかである。 したがって,原告らは被告らの「不正競争によって営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者」(不正競争防止法3条1項)に当たる。 【被告らの主張】否認ないし争う。 6 争点2-3(被告らの故意又は過失)について【原告らの主張】(1) 被告P1被告P1は,蘇州シャ・シン社に対して,突片部の指示をしたことがない上,蘇州シャ・シン社の製造した口紅容器の図面に描かれた突片部が甲19考案に基づくことを認識していながら,前記4【原告らの主張】記載の信用毀損行為に及んだのであるから,その故意性は明らかである。 (2) 被告atoo被告atooによる前記4【原告らの主張】記載の信用毀損行為につき,被告atooの代表取締役は被告P1であるところ,その認識を前提とすれば,故意又は過失があったことは明らかである。 【被告らの主張】- 34 - 前記4【原告らの主張】記載の信用毀損行為につき,被告atooの代表取締役は被告P1であるところ,その認識を前提とすれば,故意又は過失があったことは明らかである。 【被告らの主張】- 34 -否認ないし争う。 7 争点2-4(原告らの損害)について【原告らの主張】(1) 原告らは,被告らの信用毀損行為により,営業上の信用毀損による無形の損害を被った上,弁護士及び弁理士の費用,不正競争行為に対応するための経費等,信用回復のために相当額を費やしている。これら損害額の合計は,各自2000万円を下らない。 (2) 被告らの不正競争行為は,客観的に関連し共同して行われたものであるから,原告らに対し,連帯して損害賠償責任を負うものといえる。 【被告らの主張】否認ないし争う。 8 争点2-5(不正競争防止法14条に基づく信用回復措置の必要性)について【原告らの主張】前記4【原告らの主張】記載のとおり,被告atooは,自社ウェブサイトを通じて信用毀損行為を行ったものである。この点,同サイトは,インターネットへアクセスできる者であれば,誰でも閲覧し得たわけで,現に閲覧した者を特定することは,事実上不可能である。そのため,信用回復の措置として,謝罪文を送付させることは困難であるが,このウェブサイトを1度閲覧した者であれば,同サイトの存在を認識しており,再度同サイトを閲覧する可能性が存在すると考えられる。 したがって,信用回復措置として,被告atooのウェブサイト上に別紙謝罪文目録(原告ら請求)記載の謝罪文を掲載させることが必要である。 【被告らの主張】否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断- 35 - 1 争点1-1(本件容器が本件特許発明1及び同2の技術的範囲に属するか)について本件容器につき,本件特許発明 る。 【被告らの主張】否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断- 35 - 1 争点1-1(本件容器が本件特許発明1及び同2の技術的範囲に属するか)について本件容器につき,本件特許発明1及び同2のうち構成要件Gを除く部分の充足性に争いはない。 そして,以下のとおり,本件容器は,構成要件Gも充足するため,本件特許発明1及び同2の各技術的範囲に属すると判断する。 (1) 特許請求の範囲の文言構成要件Gは,「分別時使用済み確認を可能にしたことを特徴とする」というものであるが,その他の構成要件をあわせて読むと,内筒部(4)の外壁に設けられた変形可能な突片部(6)が,内筒部(4)を外筒部(3)に収容する際に変形することにより,その後に内筒部(4)と外筒部(3)を分別しても,その変形が視覚的に確認可能な程度に残存すること,つまり,突片部(6)の変形残存によって,内筒部(4)が繰り出し容器として使用済みである旨確認できることを求めていると解される(構成要件訂正G「分別時においても突片部(6)が変形していることで,使用済み確認を可能にしたことを特徴とする」は,この趣旨を明確にしたものと理解される。)。 (2) 本件明細書の記載本件明細書は,【発明が解決しようとする課題】につき,「この発明は,被繰り出し物の用途に応じてリュースをしてはいけない場合や,衛生面に特に配慮が必要な部材を分別後,又は,部材洗浄後にも特定可能な構造の繰り出し容器を得ようとするものである。」(段落【0008】)とした上,【課題を解決するための手段】として,「内筒部4の外壁に変形可能な突片部6を設け,内筒部4を外筒部3に収容する際に,突片部6を変形させ,分別時の使用済み確認を可能にした」(段落【0009】),「このように,容器の分別後には突片部6が変形してい の外壁に変形可能な突片部6を設け,内筒部4を外筒部3に収容する際に,突片部6を変形させ,分別時の使用済み確認を可能にした」(段落【0009】),「このように,容器の分別後には突片部6が変形しているので使用済み部材で- 36 -あることを容易に確認することができる。」(段落【0010】)と記載されている。 これら記載は,特許請求の範囲上の文言に基づく上記(1)の解釈と整合するものといえる。 (3) 構成要件Gの解釈以上によれば,構成要件Gは,内筒部(4)の外壁に設けられた突片部(6)につき,内筒部(4)の外筒部(3)への収容時に生じる変形が,内筒部(4)と外筒部(3)の分別後にも,視覚的に確認可能な程度残存していることを求めるものと解される。 (4) 本件容器の構成前記判断の基礎となる事実,証拠(甲51,乙21,証人P4)及び弁論の全趣旨によれば,本件容器の構成につき,以下の事実が認められる(本件図面[甲51]は,原告らが日本国内で販売する口紅のうち商品名「ランコム」の口紅容器に係るものであるが,これと本件容器との間には,以下の認定の範囲において構成上の差異はない。)。 本件容器の内側部材の外周面には,容易に曲げることができる水平方向に突き出した突状部が設けられている。当該突状部は,内側部材底部と内側部材を回転させる回転台が相互に接続する周囲縁上に4片設けられており,薄片状のポリプロピレン(PP)又は同程度の弾性を有するプラスチックでできている。これら4片の突状部は,内側部材の長手軸に対して直交し,かつ,互いに直交する2本の軸線のそれぞれに対して線対称に設けられており,一方の軸線からの距離が他方の軸線からの距離よりやや離れて設けられている。本件容器を組み立てた状態,すなわち,内側部材が外側部材により外側を覆われた状態 線のそれぞれに対して線対称に設けられており,一方の軸線からの距離が他方の軸線からの距離よりやや離れて設けられている。本件容器を組み立てた状態,すなわち,内側部材が外側部材により外側を覆われた状態で,いずれの突状部も,回転台側に折れ曲がっている。いったん組み立てた本件容器を分解した場合,回転台側に押し倒された突状部は復元力により元の起立した状態に戻ろうとするが,- 37 -塑性変形した分は元に戻らず,折れ曲がった状態が視覚的に確認できる程度残存する。 (5) 充足性の判断本件容器の「内側部材」は本件特許発明1の「内筒部(4)」に,「外側部材」は「外筒部(3)」に当たり,「突状部」は,「内筒部(4)の外壁に設けられた突片部」に当たる。そして,当該「突状部」は,本件容器を組み立てた状態で,回転台側に折れ曲がる上,本件容器の分解後も,それら突状部は水平方向には戻らず,折れ曲がった状態が視覚的に確認できる程度残存すると認められるから,構成要件Gの求める構成,つまり,突片部(6)の変形が,内筒部(4)と外筒部(3)の分別後にも,視覚的に確認可能な程度に残存するとの構成を備えており,同構成要件を充足するといえる。 (6) 小括したがって,本件容器は,本件特許発明1及び同2の全ての構成要件を充足しており,その技術的範囲に属するといえる。 2 争点1-3(先使用権の成否)について以下に述べるとおり,本件容器は,本件特許の出願前に公知であった甲19考案の実施品と認められる。この点のみからしても,本件口紅の販売等が本件特許権を侵害するとの被告らの主張に疑問が生じるところであるが,本件では原告らの先使用権(特許法79条)が成立するため,この点についての判断を示すこととする。 (1) 本件容器は甲19考案の実施品といえるか原告ら 告らの主張に疑問が生じるところであるが,本件では原告らの先使用権(特許法79条)が成立するため,この点についての判断を示すこととする。 (1) 本件容器は甲19考案の実施品といえるか原告らは,突状部を備えた本件容器につき,台湾シャ・シン社が実用新案権を有する甲19考案(平成17年12月2日発行の甲19文献で開示)に基づくものである旨主張する。そこで,先使用権の成否を検討するに当たり,まず本件容器が甲19考案の実施品といえるかを検討する。 - 38 -ア甲19考案(ア) 台湾シャ・シン社は,以下の考案(甲19考案)につき実用新案権を有している(甲19考案に係る明細書及び図面をあわせて「甲19明細書」という。)。 考案の名称口紅ケース内管の回転制御構造出願日平成17年8月30日登録日平成17年10月19日登録番号実用新案登録第3116256号実用新案登録請求の範囲【請求項1】主に内管を含み,該内管底部は回転台と相互に連結し,該内管両側にはそれぞれスライド槽を形成し,外側に嵌設する嵌合管上の螺旋導入槽に対応し,該内管の中空内部には口紅本体を設置する充填台を組合せ,該内管の回転により口紅の昇降を形成し,該内管底部と該回転台が相互に接続する周囲縁上には,数個の突出排列する弾性係合固定片を等分に設置し,該嵌合管により外側を覆う時,該係合固定片の突出により,嵌設時の2個の管間の弾性サポートを形成し,該2個の管面間は適当な間隙を保持し,一定の摩擦阻害力を達成し,円滑な回転制御を確保することを特徴とする口紅ケース内管の回転制御構造。 (イ) 請求項1の考案(甲19考案)を構成要件に分説すると,以下のとおりである。 A’ 主に内管を含み,B’ 該内管底部は回転台と相互に連結し,該内管両 する口紅ケース内管の回転制御構造。 (イ) 請求項1の考案(甲19考案)を構成要件に分説すると,以下のとおりである。 A’ 主に内管を含み,B’ 該内管底部は回転台と相互に連結し,該内管両側にはそれぞれスライド槽を形成し,外側に嵌設する嵌合管上の螺旋導入槽に対応し,- 39 -該内管の中空内部には口紅本体を設置する充填台を組合せ,該内管の回転により口紅の昇降を形成し,C’ 該内管底部と該回転台が相互に接続する周囲縁上には,数個の突出排列する弾性係合固定片を等分に設置し,該嵌合管により外側を覆う時,該係合固定片の突出により,嵌設時の2個の管間の弾性サポートを形成し,該2個の管面間は適当な間隙を保持し,一定の摩擦阻害力を達成し,円滑な回転制御を確保することを特徴とするD’ 口紅ケース内管の回転制御構造。 (ウ) 甲19明細書には,以下の記載がある。 「【技術分野】【0001】本考案は一種の口紅ケース内管の回転制御構造に関する。特に一種の口紅内管底部の環状周囲面上に適当に突出する数枚の弾性固定片を設置し,嵌合管底部と相互に嵌設後は適当な係合状態を呈し,嵌合管はオーバーハング設置を形成し,口紅充填台との間は適当な間隙を具え,口紅の回転力を一致させ円滑な昇降操作を確保可能で,潤滑剤を一切使用する必要がないため,口紅本体の使用が安全で衛生的となる口紅ケース内管の回転制御構造に係る。 【背景技術】【0002】公知の口紅ケースの内管と口紅本体が相互に組合され回転制御される構造設計は,およそ図4,5,6に示すように,内管20に口紅本体21の充填台22を穿置し,該内管20両側管面にそれぞれL型のスライド槽23を設置するものである。該管体底部には回転台を接続し,該口紅本体21を昇降させる回転制御操作を行う。 全体の 0に口紅本体21の充填台22を穿置し,該内管20両側管面にそれぞれL型のスライド槽23を設置するものである。該管体底部には回転台を接続し,該口紅本体21を昇降させる回転制御操作を行う。 全体の昇降操作は,主に該内管20外側に嵌合管24を穿設し,内- 40 -部には螺旋導入槽25を具えることにより,該充填台22両側の凸軸26を該スライド槽23に挿入,組合せ後,該嵌合管24の螺旋導入槽25内部に嵌設し,該口紅本体22を該導入槽25と該内管20面上のスライド槽23に沿って昇降させる。 該公知の口紅本体21の昇降操作は,通常は手で嵌合管24の外側を握り,反対の手で底部の充填台22を持ち該充填台22を操作し,該螺旋導入槽25に従い昇降させるもので,該内管の直立スライド槽23に対応し操作することにより,該口紅本体21を上下に伸縮させることができる。 しかし,公知の嵌合管24と内管20間の相互組合せ設計は,部品が全て組成材質であるため,回転時にはその真円度の不足或いはサイズのコントロール不良により,実際の組合せ槽道間の相互摩擦を引起している。さらに,実際の口紅の充填台22は,変形或いはサイズの緩みにより,部品全体が構造に入り込み或いはサイズが合わなくなるなど,組立て後の変形を生じており,実際の昇降回転操作における干渉或いは非円滑などを形成している。この回転が非円滑である状況を改善するため,通常は槽孔上に潤滑剤を塗布し摩擦の減少を図るが,該潤滑剤は極めて高い確率で口紅と混合し得る。しかし,口紅は化学顔料で製造するため,同様に化学材料である潤滑剤と混合すると,口紅の色が変質する可能性がある。さらには,使用における口紅の安全性,衛生状況にも悪影響を及ぼしかねない。 加えて潤滑剤の塗布により,該口紅本体21を伸ばし使用する時には,しばしば唇に と混合すると,口紅の色が変質する可能性がある。さらには,使用における口紅の安全性,衛生状況にも悪影響を及ぼしかねない。 加えて潤滑剤の塗布により,該口紅本体21を伸ばし使用する時には,しばしば唇に塗る時の圧力により,自動的に内部へと収縮し不便である。 【考案の開示】【考案が解決しようとする課題】- 41 -【0003】公知構造には以下の欠点があった。 すなわち,公知構造では管面の硬度の不足,成型時の塑性変形による真円度の不足,組立て時に生じ得る押し込みによる偏りなどのために,回転が非円滑となり緩み,また滑移動する状況が発生する。 本考案は上記構造の問題点を解決した口紅ケース内管の回転制御構造を提供するものである。 【課題を解決するための手段】【0004】上記課題を解決するため,本考案は下記の口紅ケース内管の回転制御構造を提供する。 それは主に口紅内管底部の環状周囲面上に適当に突出する数枚の弾性係合固定片を設置し,嵌合管底部と相互に嵌設後は適当な係合状態を呈し,該内管を回転操作する時には一定の摩擦係数を維持し,管体の真円度不足による回転の偏りを改善することができ,潤滑剤を一切使用する必要がないため,口紅本体の使用が安全で衛生的となり,製品の品質を効果的に向上させることができることを特徴とする口紅ケース内管の回転制御構造である。 【考案の効果】【0005】上記のように,本考案は内管と回転台間の管面上に直接弾性係合固定片を等分に配置し,嵌合管に穿設後,自然に定位,組合され,口紅ケース内管と螺旋嵌合間の安定的な組立てを実現し,口紅ケース管面の変形により生じる様々な欠点を改善することができる。さらに,潤滑剤の塗布を省くことができるため,口紅の使用における安全性と回転操作の快適性を大幅に向上させることが な組立てを実現し,口紅ケース管面の変形により生じる様々な欠点を改善することができる。さらに,潤滑剤の塗布を省くことができるため,口紅の使用における安全性と回転操作の快適性を大幅に向上させることができる。」- 42 -イ構成要件A’,B’及びD’の充足性前記判断の基礎となる事実及び前記1(4)で認定した本件容器の構成によれば,本件容器の「内側部材」「回転台」「スリット」「外側部材」「螺旋状凹部」「皿部材」「化粧料用容器」が,それぞれ甲19考案の「内管底部」「回転台」「スライド槽」「嵌合管」「螺旋導入槽」「充填台」「口紅ケース」に当たり,甲19考案の構成要件A’,B’及びD’を各充足することは明らかである。 ウ構成要件C’の充足性(ア) 実用新案登録請求の範囲の文言構成要件C’は,「該内管底部と該回転台が相互に接続する周囲縁上には,数個の突出排列する弾性係合固定片を等分に設置し,該嵌合管により外側を覆う時,該係合固定片の突出により,嵌設時の2個の管間の弾性サポートを形成し,該2個の管面間は適当な間隙を保持し,一定の摩擦阻害力を達成し,円滑な回転制御を確保する」というものである。つまり,「該内管底部と該回転台が相互に接続する周囲縁上」という位置に,「数個の突出排列する弾性係合固定片を等分に設置」するという構成を有し,その結果として,「該嵌合管により外側を覆う時,該係合固定片の突出により,嵌設時の2個の管間の弾性サポートを形成し,該2個の管面間は適当な間隙を保持し,一定の摩擦阻害力を達成し,円滑な回転制御を確保する」という機能を生じることが求められている。 「固定片」については,「弾性」の部材であることが求められている上,「嵌設時の2個の管間の弾性サポートを形成し,該2個の管面間は適当な間隙を保持し,一定の摩擦阻害 を生じることが求められている。 「固定片」については,「弾性」の部材であることが求められている上,「嵌設時の2個の管間の弾性サポートを形成し,該2個の管面間は適当な間隙を保持し,一定の摩擦阻害力を達成し,円滑な回転制御を確保する」ものである以上,かかる機能を果たすだけの弾性を有することが求められていると解される。しかし,「内管」と「嵌合- 43 -管」とを分解した後,当該「固定片」が「嵌合管」の嵌設前の形に戻る,つまり,嵌設時の変形の痕跡を全く残さないほどの復元力を有することは,所望される実施形式の1つであるとしても(乙30・34ページ参照),これを必須の構成とする文言上の根拠はない。 また,「数個」の「固定片」は「等分に設置」とされているが,上記機能を生じるための構成であることに照らせば,「固定片」間の距離に,上記機能を阻害しない範囲内で若干の差異があるにとどまる場合までを除外する趣旨とは解されない。 (イ) 甲19明細書の記載前記認定のとおり,「弾性係合固定片」については,「特に一種の口紅内管底部の環状周囲面上に適当に突出する数枚の弾性固定片を設置し,嵌合管底部と相互に嵌設後は適当な係合状態を呈し,嵌合管はオーバーハング設置を形成し,口紅充填台との間は適当な間隙を具え,口紅の回転力を一致させ円滑な昇降操作を確保可能」(段落【0001】),「口紅内管底部の環状周囲面上に適当に突出する数枚の弾性係合固定片を設置し,嵌合管底部と相互に嵌設後は適当な係合状態を呈し,該内管を回転操作する時には一定の摩擦係数を維持し,管体の真円度不足による回転の偏りを改善することができ」(段落【0004】)との記載がある。これらの記載でも,「適当な係合状態」,「適当な間隙」,「一定の摩擦係数を維持」など,「適当」,「一定」との表現が繰り返さ による回転の偏りを改善することができ」(段落【0004】)との記載がある。これらの記載でも,「適当な係合状態」,「適当な間隙」,「一定の摩擦係数を維持」など,「適当」,「一定」との表現が繰り返されており,「固定片」に求められる弾性は,これらの機能を果たし得る程度で足りることが読み取れる一方,それ以上に強度な弾力や復元力を必須とする根拠は,甲19明細書上にも見当たらない。 (ウ) 構成要件C’の解釈以上によれば,構成要件C’における「弾性係合固定片」は,「該- 44 -内管底部と該回転台が相互に接続する周囲縁上」という位置に,等しい距離あるいは下記機能を害しない範囲のおおよそ等しい距離を置いて複数個設置され,「該嵌合管により外側を覆う時,該係合固定片の突出により,嵌設時の2個の管間の弾性サポートを形成し,該2個の管面間は適当な間隙を保持し,一定の摩擦阻害力を達成し,円滑な回転制御を確保する」という機能を果たし得るだけの弾力が求められていると解される。その一方で,「内管」と「嵌合管」とを分解した後,当該「固定片」が「嵌合管」の嵌設前の形に戻る,つまり,嵌設時の変形の痕跡を全く残さないような構成は求められていない(そもそも,弾性部材を折り曲げた場合であっても,弾性変形と共に一定の塑性変形は生じるところ,塑性変形した分は元に戻らず,折れ曲がった状態が一定程度維持されるため,変形の痕跡を残さないということは,技術常識上想定しにくい。)。 (エ) 充足性の判断前記認定のとおり,本件容器の突状部は,薄片状のポリプロピレン又は同程度の弾性を有するプラスチックである。そして,前記判断の基礎となる事実,証拠(甲51,乙21,証人P4)及び弁論の全趣旨によれば,内側部材と外側部材の隙間の幅より突状部の高さが長いため,内側部材を外側部材に 有するプラスチックである。そして,前記判断の基礎となる事実,証拠(甲51,乙21,証人P4)及び弁論の全趣旨によれば,内側部材と外側部材の隙間の幅より突状部の高さが長いため,内側部材を外側部材に挿入すると,突状部は外側部材に押されて回転台側に倒された状態となるが,押し倒された突状部が板ばねの作用を奏して外側部材内壁に弾性的に接触することで,内側部材の外壁と外側部材の内壁との間に隙間を作り,両部材が直接接触する場合と比べ,回転操作時の摩擦力を軽減することが認められる。 また,本件容器の突状部は,内側部材底部と内側部材を回転させる回転台が相互に接続する周囲縁上に4片設けられているが,隣接する突状部間の距離は,厳密な等間隔にはなっていない。しかし,その距- 45 -離の差異はわずかである(甲51)上,4片の突状部は,内側部材の長手軸に対して直交し,かつ,互いに直交する2本の軸線のそれぞれに対して線対称に設けられており,一方の軸線からの距離が他方の軸線からの距離よりやや離れているにとどまることから,それぞれの突状部にかかる摩擦力はほぼ等しく,内側部材の外壁と外側部材の内壁とで隙間がなく直接接触する部分が生じたり,回転の際にいずれかの突状部にのみ特に大きな摩擦力がかかるほど偏った配置となっているわけではない。 このように考えると,本件容器は,その「突状部」が構成要件C’における「弾性係合固定片」に当たり,「等分に設置」されているといえる上,「該嵌合管により外側を覆う時,該係合固定片の突出により,嵌設時の2個の管間の弾性サポートを形成し,該2個の管面間は適当な間隙を保持し,一定の摩擦阻害力を達成し,円滑な回転制御を確保する」との機能を果たしており,同要件を充足するものといえる(本件容器を分解した場合に,突状部の折れ曲がった状態が視覚的 の管面間は適当な間隙を保持し,一定の摩擦阻害力を達成し,円滑な回転制御を確保する」との機能を果たしており,同要件を充足するものといえる(本件容器を分解した場合に,突状部の折れ曲がった状態が視覚的に確認可能な程度残存することが,この判断を左右するものではない。)。 エ小括以上によれば,本件容器は,甲19考案の技術的範囲に属しており,その実施品といえる。 (2) 事実経過次に本件における事実経過のうち,先使用権の成否に関係するものについて検討する。前記判断の基礎となる事実,証拠(主要なものは各項末尾に掲記)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア蘇州シャ・シン社蘇州シャ・シン社は,台湾シャ・シン社の子会社であり,中華人民共- 46 -和国を本店所在地として口紅容器の製造などを行っている。被告らとの間で以下のとおり口紅使い切り容器の商品化を進めていた時期の代表取締役は,P2であった。 (証人P4,被告P1)イ蘇州シャ・シン社と被告atooとの提携蘇州シャ・シン社は,被告P1が発明し,日本では被告P1が,中華人民共和国では被告atooがそれぞれ特許権を有する口紅の使い切り容器に係る発明に関心を持ち,平成17年3月26日,被告P1との間で,同発明につき,独占的に製造,販売することの許諾を受ける旨の覚書を交わした上,使い切り容器試作品の製作を開始した。同年6月22日には使い切り容器の図面を作成し,平成18年2月8日にはその試作品第1号を被告P1に手渡した。 (乙6の1~4,11の5,14~18)ウ台湾シャ・シン社による甲19考案に係る出願台湾シャ・シン社は,平成17年8月から同年10月にかけ,甲19考案につき,日本のほか,中華人民共和国,台湾,イギリスなど複数の国及び地 ~18)ウ台湾シャ・シン社による甲19考案に係る出願台湾シャ・シン社は,平成17年8月から同年10月にかけ,甲19考案につき,日本のほか,中華人民共和国,台湾,イギリスなど複数の国及び地域で特許又は実用新案登録の出願をした。日本での実用新案登録出願日は平成17年8月30日,中華人民共和国での実用新案登録出願日は同年9月27日であった。 甲19考案の考案者は,P2の息子のP4である。 (甲19,59の1~5,証人P4)エ蘇州シャ・シン社による本件図面の作成蘇州シャ・シン社は,かねてから原告らも含めたロレアルグループの口紅である「ランコム」や「メイベリンニューヨーク」の容器の製造を行っていた。蘇州シャ・シン社は,遅くとも平成18年2月14日までに「ランコム」用の容器に係る本件図面(甲51。CUSTOMER- 47 -[顧客]欄には「LANCOM」と記載されている。)を作成した。本件図面は,口紅容器の内側部材の外周面に水平方向に突き出した突状部が4片描かれ,材質としてはポリプロピレン(PP)が指定されていた。 これら突状部の部位及び形状は,本件容器における4片の突状部と同じであり,上記ウのとおり既に中華人民共和国,日本などで出願済みの甲19考案の技術的範囲に属する構成であった(前記(1)参照)。また,本件図面内には,発明の具体的内容の明示はないものの,自社グループの特許出願中を意味する「SH-PATP」(SH はシャ・シン社を,PATP は特許出願中を意味する。)との表示もされていた。 一方,被告P1は,蘇州シャ・シン社から,本訴前に本件図面を見せられたことはなかった。 (甲19,45,51,乙21,証人P4,被告P1)オ本件特許出願等蘇州シャ・シン社は,平成18年11月24日,被告atooとの間で, ら,本訴前に本件図面を見せられたことはなかった。 (甲19,45,51,乙21,証人P4,被告P1)オ本件特許出願等蘇州シャ・シン社は,平成18年11月24日,被告atooとの間で,使い切り容器に係る特許発明につき,有効期間を平成28年12月31日まで,実施料を単位販売価格の10%などの条件で,中華人民共和国で独占的に製造することができる旨の契約を締結した。同契約に係る契約書において,本件特許発明への言及はなかった。 被告P1は,平成19年2月7日,中華人民共和国の蘇州シャ・シン社を訪問し,「ランコム」用の使い切り容器試作品の開示を受けた。 同試作品には,本件容器(メイベリンニューヨーク)や本件図面(ランコム)と同位置に同形状の突状部が設けられていた。 被告P1は,同年3月1日,日本において,本件特許発明に係る特許出願をした。この時点で,被告P1は,台湾シャ・シン社が,甲19考案について,日本や中華人民共和国などで実用新案登録や特許の出願をし,日本では平成17年10月19日に実用新案登録されてい- 48 -たことを知らなかった。 (甲18,19,乙8,13,22,被告P1[尋問調書10ページ])カ蘇州シャ・シン社から被告P1への図面提示及び両者間の電子メールでのやりとり蘇州シャ・シン社は,平成19年4月19日,使い切り容器に係る図面を完成させて被告P1に電子メールで送信した。同図面には,本件図面と同一部位に同一形状の4片の突状部が描かれ,材質もポリプロピレン(PP)が指定されていた。 被告P1は,同日,当該突状部を摘示し,「羽根部分の権利関係を知らせて下さい。貴社の保有特許ですか。日本での使用に問題はありませんか。羽根が折れる危険性はありませんか。」と照会する返信をした。これに対し,蘇州シャ・シン社が 部を摘示し,「羽根部分の権利関係を知らせて下さい。貴社の保有特許ですか。日本での使用に問題はありませんか。羽根が折れる危険性はありませんか。」と照会する返信をした。これに対し,蘇州シャ・シン社が,同月25日,突状部以外の部位に若干の修正を加えた図面(乙9。CUSTOMER[顧客]欄には「atooCorporation」と記載されている。)を添付した電子メールを送り,「これは我々のパテントです。日本での使用に問題はありません。」と説明したところ,被告P1は同日の電子メールにて,「了解いたしました。」と回答した。 被告P1は,同年6月22日,蘇州シャ・シン社から,甲19考案の日本における実用新案登録証の写しを受け取り,同社が羽根部分の特許と説明していたのが,平成17年10月19日に日本で実用新案登録を受けた甲19考案であることを初めて知った。 (甲46,61,乙9,22)キ被告P1による本件口紅の発見とその後の経過被告P1と蘇州シャ・シン社とが開発を進めていた使い切り容器は,平成19年7月には,製品化の見通しが立たない状況に至った。 一方,被告P1は,同月,原告らの販売する原告口紅に,蘇州シャ- 49 -・シン社から同年4月に見せられた上記図面(乙9)で描かれたのと同一部位に同一形状の突状部を備える容器(本件容器)が使用されていることを発見した。本件容器を製造し,尚美公司を介して原告らに納品していたのは蘇州シャ・シン社であった。被告P1は,同年,蘇州シャ・シン社に対し,本件容器の製造及び販売を中止するよう要請した。 本件特許発明は,平成21年8月14日に特許権設定登録がされた。 被告P1は,平成22年6月22日,特許庁に対し,本件容器が本件特許発明1及び同2の技術的範囲に属するとの判定を求める判定請求を行い,同年 特許発明は,平成21年8月14日に特許権設定登録がされた。 被告P1は,平成22年6月22日,特許庁に対し,本件容器が本件特許発明1及び同2の技術的範囲に属するとの判定を求める判定請求を行い,同年10月29日その旨の判定がなされた。並行して,被告P1は,原告らとの交渉を開始するとともに,同年12月以降,原告らの取引先に対し,本件口紅の販売は本件特許権を侵害する旨記載した書面を送付した。 (甲24,38,乙9,19,27,証人P4,被告P1,弁論の全趣旨)(3) 発明の知得経路についての検討ア本件容器が,甲19考案の技術的範囲に属し,その実施品であるといえることに加え,蘇州シャ・シン社の代表取締役P2の息子であるP4が平成17年には既にその甲19考案を考案し,台湾シャ・シン社を出願人として日本や中華人民共和国などで特許又は実用新案登録の出願をしていたこと,そのため,蘇州シャ・シン社は,被告P1からの指示がなくても,本件容器の構成に至ることができる技術を,平成17年の段階で既に持ち合わせていたこと,現に蘇州シャ・シン社は,遅くとも平成18年2月までに,甲19考案の技術的範囲に属し,かつ,突片部の位置及び形状で本件容器と構成を同じくする本件図面(甲51)を作成していたこと,これに対し,被告P1が本件特許の- 50 -出願をしたのは,それらから大幅に遅れる平成19年3月1日であること,被告P1から蘇州シャ・シン社に対して突状部の指示があったことを裏付ける客観的証拠はなく,被告らが当該指示のあった日とする平成18年2月8日より後に締結された口紅容器の製造に係るライセンス契約でも,本件特許発明への言及はないこと,そして,平成19年4月における被告P1と蘇州シャ・シン社との電子メールのやりとりは,本件容器と同一部位・同一形状の突状 れた口紅容器の製造に係るライセンス契約でも,本件特許発明への言及はないこと,そして,平成19年4月における被告P1と蘇州シャ・シン社との電子メールのやりとりは,本件容器と同一部位・同一形状の突状部につき,蘇州シャ・シン社が日本で特許権(正確には実用新案権であった。)を有していると説明し,被告P1もこれを受け入れていると理解され,被告P1の指示が過去にあったとは読み取れず,両者間で過去に話題になった様子さえうかがわれないことからすれば,本件容器の突状部は,蘇州シャ・シン社において,被告P1の指示を受けることなく,甲19考案の実施として備え付けた構成(「ランコム」用の容器にも備え付けられた構成である。)であると認めるのが相当である。 イこれに対し,被告らは,当該突状部の構成は,被告P1が,平成18年2月8日,蘇州シャ・シン社の代表取締役P2に対して,口頭及びバイク便で送った書面によって指示したものである旨主張する。 しかし,その主張に沿う証拠は,被告P1の陳述書(乙27)及びその尋問結果を除けば,同日に被告P1からP2の秘書であるP3に何らかの配達物が届けられたことを示すもの(乙18)程度で,その内容物も証拠上明らかでないのであるから,客観的裏付けとして十分でないことは明らかである。 この点,被告らは,本件容器が本件特許発明1及び同2の技術的範囲に属することを,被告P1からの指示があったことの客観的根拠にしていると考えられる。しかし,蘇州シャ・シン社は,かかる指示があったと主張される平成18年2月8日以前から,本件容器を技術的- 51 -範囲に含む甲19考案を持ち合わせていたのであるから,その実施として突状部のある容器を製造したと見る方がはるかに合理的かつ自然である。特段の裏付けなしに,被告P1の指示に由来する構成と見る 1 -範囲に含む甲19考案を持ち合わせていたのであるから,その実施として突状部のある容器を製造したと見る方がはるかに合理的かつ自然である。特段の裏付けなしに,被告P1の指示に由来する構成と見ることはできない。 加えて,被告らは,答弁書(53,62ページ)において,蘇州シャ・シン社に突状部の指示をしたのは,本件特許出願をした平成19年3月1日よりも後のことと主張していたにもかかわらず,蘇州シャ・シン社が同日よりも前に本件容器を製造していた旨の原告らの主張及び裏付け証拠(甲25,26の1~8)が提出されるや,指示があった日を,原告らの主張及び証拠とも矛盾のない平成18年2月8日と大きく変遷させた(被告第2準備書面)。しかも,被告らの主張によると,被告P1は,蘇州シャ・シン社から,平成19年2月7日,自身の指示に由来する突状部も備えた容器試作品を初めて見せられ,それを確認してから同年3月1日に本件特許の出願をしたとの経過があったというのであるから,本件特許の出願と蘇州シャ・シン社への指示の時間的前後関係を勘違いすることは起こりにくいはずである。 被告P1は尋問でも同旨の供述をしているが,真に記憶に基づく主張,供述をしているか疑わしいと言わざるを得ない。 さらに平成19年4月における被告P1と蘇州シャ・シン社との電子メールでのやりとりは,突状部について,被告P1からの指示があったという被告らの主張と到底整合せず,蘇州シャ・シン社側の甲19考案に由来する構成であることを強く示唆するものといえる。 また,被告P1の供述によると,P2は,平成18年2月8日に被告P1から突状部の指示を受けた際,甲19考案に全く言及せず(被告P1調書25ページ),その後少なくとも平成19年2月ころまで被告P1の指示に従い続け,当該突状部を備えた容器試作品を製 2月8日に被告P1から突状部の指示を受けた際,甲19考案に全く言及せず(被告P1調書25ページ),その後少なくとも平成19年2月ころまで被告P1の指示に従い続け,当該突状部を備えた容器試作品を製作し- 52 -たことになる。しかし,掲げる課題や作用効果こそ違うとはいえ,口紅容器内筒部の外壁に突片部を備えるという点で共通する技術を日本や中華人民共和国などで既に権利化している者(被告P1の供述によると,P2は技術に詳しく自社の保有特許も全て把握している。)の対応として考えにくく,やはり,被告らの主張,供述の信用性に疑問を投げかける。 なお,被告らは,本件図面(甲51)及びその一部(甲45)が証拠提出される前から,その3つの特徴(突状部の配置,突状部の形状,ストッパーが取り外されていること)を,P2への指示内容として既に指摘できていた(被告第2準備書面)のは,被告P1の指示が実際にあったことの証左であると主張するが,それらの特徴は,蘇州シャ・シン社から被告P1に示されていた図面(乙9)や,本訴提起前に入手していた本件容器の実物(乙21)から把握できるものであるから,被告らの主張,供述の信用性を特段高めるものではない。 以上より,本件容器の突状部につき,被告P1が,蘇州シャ・シン社の代表取締役P2に対して指示したことに由来する旨の被告らの主張は採用できない。 (4) 輸入日証拠(甲25,26の1~8,27~30,42~44)及び弁論の全趣旨によれば,ロット番号「2C361」の原告口紅のうち少なくとも一部に本件容器を備えた本件口紅が含まれていたこと,ロット番号「2C361」の原告口紅が平成18年12月27日に蘇州シャ・シン社の中国工場で製造され,同月28日尚美公司の保有倉庫に入庫された後,平成19年1月5日には,原告らに輸出 まれていたこと,ロット番号「2C361」の原告口紅が平成18年12月27日に蘇州シャ・シン社の中国工場で製造され,同月28日尚美公司の保有倉庫に入庫された後,平成19年1月5日には,原告らに輸出すべく上海を出港し,同年1月10日の日本における通関手続を経て,同月15日に原告ロレアルの管理する寿倉庫に入庫したこと,以後原告らは日本国内で本件口紅を含めて原告口紅の販- 53 -売を行ったことが認められ,この認定を妨げるに足りる証拠はない(かかる認定は,蘇州シャ・シン社が,甲19考案を,別ブランドの口紅用容器のものとはいえ,平成18年2月14日には既に図面化[本件図面]していたこととも整合する。また,平成19年3月の原告口紅の発売開始[甲29]から間もない同年7月には本件口紅が市場で見つかっていることからも,原告口紅の製造開始当初から,本件容器が利用されていたものとうかがわれる。)。 したがって,原告らは,本件特許が出願された平成19年3月1日の際,本件特許発明1及び同2の技術的範囲に属する本件容器を備えた本件口紅を輸入し,もって,「現に日本国内においてその発明の実施である事業」(特許法79条)をしていたものといえる。 (5) 知得本件容器と同部位に同形状の突状部を描いた本件図面は,平成18年2月14日には蘇州シャ・シン社によって作成されていたことからすれば,そのころ本件図面に係る「ランコム」の口紅の製造,販売を国際的に展開するフランスロレアル社に送付されたものと推認され,この推認を妨げるに足りる証拠はない。 そうするとフランスロレアル社の子会社で,ロレアルグループの一員である原告らも,本件口紅の輸入時には,「本件特許出願に係る発明を知らないでその発明をした者」であるP4から,本件容器の突状部に係る発明を「知得」してい ロレアル社の子会社で,ロレアルグループの一員である原告らも,本件口紅の輸入時には,「本件特許出願に係る発明を知らないでその発明をした者」であるP4から,本件容器の突状部に係る発明を「知得」していたと評価するのが相当である(この点,被告らは,原告らとフランス法人のロレアル社はあくまで別法人であるため,その知得を原告らの知得と同視すべきでない旨主張するが,先使用権の成否を判断するに当たり,発明の実施者が親会社であるか,あるいは,同社が支配する子会社であるかによって結論を左右させることは,特許法79条による利害調整の趣旨に沿う解釈とはいえず,採用できない。)。 - 54 -(6) 小括以上のとおり,原告らは,本件特許発明につき,「特許出願に係る発明を知らないでその発明をした者から知得して,特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者」に当たるから,少なくとも本件容器の実施形式の範囲で先使用権を有するものである。 したがって,原告らが本件口紅を販売等することは,被告P1の有する本件特許権の侵害にはあたらないというべきである。 3 争点2-1(不正競争防止法2条1項14号(信用毀損行為)該当性)について前記判断の基礎となる事実(第1の1(5))記載のとおり,被告P1は,原告らの取引先に書面を送付して,原告らによる本件口紅の販売等が被告P1の本件特許権を侵害する旨の事実を,それぞれ告げたものであり,被告atooは,これに沿う記事及び原告らと被告らの紛争の経過をそのウェブサイトに掲載したものである。 しかし,前記のとおり,原告らによる本件口紅の販売等は,被告P1の本件特許権を侵害するものとは認められないのであるから,被告らの上記行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又 前記のとおり,原告らによる本件口紅の販売等は,被告P1の本件特許権を侵害するものとは認められないのであるから,被告らの上記行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布」するものとして,不正競争防止法2条1項14号の定める不正競争行為(信用毀損行為)に該当するといえる。 そして,上記書面の送付は被告P1の名によるもの,ウェブサイトへの掲載は被告atooによるものであるが,内容的に一体のものとして行われていること,前記第1の1(3)のとおり,原告らは「ロレアル」のブランドの下に一体で事業を行っていることを考慮すると,上記信用毀損行為は,被告らが共同して,原告ら各々に対し行ったものと認めるのが相当である。 4 争点2-2(不正競争防止法3条1項に基づく差止めの必要性)について- 55 -被告らは,少なくとも平成23年5月31日に原告らとの間で合意書(甲36)を交わして以降,原告らの信用を毀損する行為を行っているわけではない(弁論の全趣旨)が,前記判断の基礎となる事実や証拠(甲2の1・2)に現れている従前の被告らの行為に照らせば,今後同様の信用毀損行為に及ぶおそれはなお否定できない。 したがって,原告らの求める範囲において,被告らの信用毀損行為を差し止める旨命じる必要があるといえる。 5 争点2-3(被告らの故意又は過失)について被告P1は,前記信用毀損行為に先立ち,特許庁に対し,本件容器が本件特許発明1及び同2の技術的範囲に属するとの判定を得ており,前記1で論じたとおり,その判定に誤りはない。 しかし,被告P1は,平成19年4月下旬には,蘇州シャ・シン社から,本件容器と同一の部位に同一形状の突状部を付けた容器図面を見せられ,当該突状部につき同社が日本で権利化している旨の説明を受けた上, しかし,被告P1は,平成19年4月下旬には,蘇州シャ・シン社から,本件容器と同一の部位に同一形状の突状部を付けた容器図面を見せられ,当該突状部につき同社が日本で権利化している旨の説明を受けた上,同年6月にはそれが甲19考案に係る平成17年10月19日登録の実用新案権であることも知らされていた。そのため,被告P1は,平成19年3月1日出願に係る本件特許権について原告らが先使用権を有しており,本件口紅の販売等が本件特許権侵害とはならないことを十分に認識できたといえる。 それにもかかわらず,被告P1及び同人が代表取締役を務める被告atooは,平成21年12月以降,前記信用毀損行為に及んだのであるから,これらは故意に基づくものというべきである。 6 争点2-4(原告の損害)について(1) 無形損害被告らの前記信用毀損行為により原告らが被った無形損害は,被告らの信用毀損行為の態様,回数,内容など本件における諸般の事情を総合考慮- 56 -し,原告ら各自につき150万円と認めるのが相当である。 (2) 弁護士費用本件訴訟の内容,難易度,金員請求に加えて差止請求も認容すべきことなど,本件における諸般の事情を総合考慮し,被告の前記信用毀損行為と相当因果関係のある弁護士費用は,原告ら各自につき50万円と認めるのが相当である。 (3) その他の損害原告らは,他にも信用回復のための費用等を損害として主張するが,既に上記(1)及び(2)で評価した範囲を超えて,別途損害が生じたと認めるに足りる証拠はない。 (4) 損害額の合計したがって,原告らが被った損害額の合計は,それぞれ200万円ずつである。 (5) 連帯債務関係被告らの信用毀損行為は,客観的に関連共同して行われたものであるから,原告ら各自に対し,上記損害を連 がって,原告らが被った損害額の合計は,それぞれ200万円ずつである。 (5) 連帯債務関係被告らの信用毀損行為は,客観的に関連共同して行われたものであるから,原告ら各自に対し,上記損害を連帯して賠償すべき責任を負うものといえる。 7 争点2-5(不正競争防止法14条に基づく信用回復措置の必要性)について原告らは,被告atooに対し,不正競争防止法14条に基づく信用回復措置として,被告atooのウェブサイトに謝罪文を掲載するよう求めている。 しかし,被告atooが信用毀損行為に当たる掲載をしたのは自社ウェブサイトであり,マスメディアのウェブサイトなどのような多数のアクセス数を有するとは考えにくい。そのため,被告atooの行為により,損害賠償とあわせて謝罪文の掲載まで命じなければならないほどに,原告ら- 57 -の信用が害されたとは直ちに言い難い。また,そのようなアクセス数の観点からは,被告atooのウェブサイトに謝罪文を掲載することにつき,信用回復措置としての実効性も疑わしいといわざるを得ない。 一方,原告らの信用は,原告らによる本件口紅の販売等につき,被告P1が本件特許権に基づく差止請求権等を有しないことを確認する旨の判決を得ることによって回復される部分が相当に大きいと考えられる。 したがって,本件では,被告atooのウェブサイトに謝罪文掲載を命じる必要までは認められず,この点に関する原告らの請求は理由がない。 8 結論以上の次第で,原告らの請求は,主文掲記の限度で理由があるから,これらを認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとする。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官谷有恒 裁判官松川充康 裁判官 ずれも理由がないから棄却することとする。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官谷有恒 裁判官松川充康 裁判官網田圭亮 - 58 -(別紙)商品目録商品名メイベリンウォーターシャイニーピュアダイヤモンド(同商品のうち,同商品の繰り出し容器の内筒部の外壁に突片部があるタイプ)輸入者日本ロレアル株式会社 - 59 -(別紙)特許権目録名称繰り出し容器出願日平成19年3月1日出願番号特願2007-89375登録日平成21年8月14日特許番号特許第4356901号 - 60 -(別紙)謝罪文目録(原告ら請求) <掲載省略>- 61 -(別紙)信用回復措置対象アドレス目録 <掲載省略>- 62 - 別紙本件口紅輸入経過表 <掲載省略>

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