平成21(行ウ)58 供託金還付請求却下処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年1月13日 名古屋地方裁判所 その他
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判決文本文11,818 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨処分行政庁が平成21年3月24日付けで原告らに対してした供託金還付請求却下処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,原告らの被相続人の被相続人が所有していた株式に関し発生した配当金等につき債権者不確知を理由に供託がされたのに対し,原告らが,この配当金等は分割債権であり,原告らは自己の相続分に応じてその権利を確定的に取得しているとして,その相続分に応じて供託金の払渡請求(還付請求)をしたところ,処分行政庁からこれを却下する処分を受けたため,その取消しを求める事案である。 2 前提事実(以下の事実は,当事者間に争いのない事実及び後掲の証拠から容易に認定できる事実である。)(1) 原告らは,いずれも亡A(平成▲年▲月▲日死亡。以下「亡A」という。)の相続人である。亡Aは,亡B(昭和▲年▲月▲日死亡。以下「亡B」という。)の相続人であり,亡Bの遺産につき9分の2の相続分を有していた。よって,亡Aの妻である原告Cは,亡Bの遺産につき9分の1の相続分を有し,亡Aの子である原告D及び原告Eは,亡Bの遺産につき各18分の1の相続分を有する。 原告らのほか,亡Bの遺産につき相続分を有し,現在生存する者は,F(相続分9分の2),G(相続分9分の2),H(相続分9分の1)及びI(相続分9分の2)である。 (2) 亡Bの遺産として株式会社J銀行の株式(亡Bの相続開始後,企業再編に伴い「株式会社K銀行」,「株式会社M」,「株式会社L」の株式となった。以下,これらの株式を,時期を問わず「J銀行株式」ということがある。)3万株があったが, その後,この株式 編に伴い「株式会社K銀行」,「株式会社M」,「株式会社L」の株式となった。以下,これらの株式を,時期を問わず「J銀行株式」ということがある。)3万株があったが, その後,この株式に関して別紙記載のとおり有償増資及び新株の無償交付が行われ,平成2年5月30日に一部の株式につきFに名義書換が行われた結果,亡B名義の株式数は5万0214株となった(以下,企業再編の前後を問わず,この株式を「本件株式」という。甲25ないし27,29,弁論の全趣旨)。 (3) Gは,亡Bの遺産に関し,津家庭裁判所伊勢支部に遺産分割の調停を申し立てたところ,同事件は審判移行し,同支部の審判(津家庭裁判所伊勢支部平成▲年(家)第▲号)に対し抗告がされた。抗告審である名古屋高等裁判所は,平成17年8月31日,上記審判を取り消し,亡Bが死亡当時所有していたJ銀行株式3万株及びFが名義書換により取得したJ銀行株式1万0125株をFが取得するものとすることなどを定める決定(平成▲年(ラ)第▲号。以下,「名高裁決定」という。)をした。名高裁決定は,その余の本件株式1万0089株については,遺産から生じた法定果実であり,当事者間にこの株式を遺産分割の対象とする旨の合意がないとして,遺産分割の対象とせず,その帰属について判断を示さなかった。また,名高裁決定は,本件株式等に対する後記(4)の配当金等については,その存在を含め,帰属に関して何ら言及していない。名高裁決定は,許可抗告不許可及び特別抗告棄却により,平成18年1月末ころ確定した(甲14ないし16,29)。 (4) Lは,平成16年6月から平成18年6月の定時株主総会決議(3回)による配当金として36万6487円(甲17)を,Mは,平成13年6月及び平成14年6月の定時株主総会決議による配当金28万1176 Lは,平成16年6月から平成18年6月の定時株主総会決議(3回)による配当金として36万6487円(甲17)を,Mは,平成13年6月及び平成14年6月の定時株主総会決議による配当金28万1176円並びにJ銀行とN間の株式移転に伴う移転交付金14万0600円及びこの株式移転に伴い発生した端数株式処分代金3416円の合計42万5192円(甲18)を,K銀行は,昭和52年9月30日から平成12年3月31日までの間の中間配当金及び期末配当金の合計533万1277円及び昭和61年5月から平成2年5月までの増資(合計4回)に伴う端数株式処分代金合計4147円の合計533万5424円(甲19)を,いずれも,当該配当金等の分割につき,亡Bの相続人間で係争中(未分割の状況)であり,また,異なる相続人から異なる主張に基づく支払要求を受けていて,真の債権者を確知する ことができないとして,平成18年12月8日,津地方法務局伊勢支局に供託した(以下,これらの供託を,順次,「本件供託1」,「本件供託2」,「本件供託3」といい,総称して「本件供託」といい,本件供託により供託された配当金等を総称して「本件供託金」という。また,本件供託を行った供託者らを総称して「本件供託者ら」という。)。 (5) 原告らは,連名で,本件供託1については6万5273円,本件供託2については9万4487円,本件供託3については118万5649円の還付を求める供託金払渡請求書を,通知書(甲20),戸籍謄本(甲1ないし5,7,9,11,30ないし34),決定書(甲14,名高裁決定),抗告不許可決定書(甲15),抗告棄却調書(甲16),委任状及び印鑑登録証明書を添付して津地方法務局伊勢支局に提出した(以下,この還付請求を「本件還付請求」という。)。原告らは,その後,津地方 ),抗告不許可決定書(甲15),抗告棄却調書(甲16),委任状及び印鑑登録証明書を添付して津地方法務局伊勢支局に提出した(以下,この還付請求を「本件還付請求」という。)。原告らは,その後,津地方法務局伊勢支局に,名高裁決定の原審の審判書(甲29)及び株式配当金支払明細書等(甲23ないし27)を提出した(弁論の全趣旨。以下,本件還付請求に際して原告らが処分行政庁に提出した書類を総称して「本件添付書類」という。)。 (6) 処分行政庁は,平成21年3月24日,本件還付請求には供託規則24条1項1号所定の還付を受ける権利を有することを証する書面の添付がないとして,本件還付請求を却下する旨の決定(以下「本件処分」という。)をした。 3 関係法令の定め供託法8条1項供託物ノ還付ヲ請求スル者ハ法務大臣ノ定ムル所ニ依リ其権利ヲ証明スルコトヲ要ス(2項は省略)供託規則24条1項供託物の還付を受けようとする者は,供託物払渡請求書に次の各号に掲げる書類を添付しなければならない。 1号還付を受ける権利を有することを証する書面。ただし,副本ファイルの記録により,還付を受ける権利を有することが明らかである場合を除く。 2号反対給付をしなければならないときは,供託法第10条の規定による証明書類(2項は省略) 4 争点及び当事者の主張本件の争点は,本件処分の適否であり,具体的には,本件還付請求が供託規則24条1項1号にいう「還付を受ける権利を有することを証する書面」を添付してされたと認められるか否かである。この点に関する当事者の主張は,次のとおりである。 (被告の主張)(1) 供託官の審査権限について供託物払渡請求に対する供託官の審査権限(審査方法)は,法定の申請書及び添付書類のみに基づいてする書面審査(形式 者の主張は,次のとおりである。 (被告の主張)(1) 供託官の審査権限について供託物払渡請求に対する供託官の審査権限(審査方法)は,法定の申請書及び添付書類のみに基づいてする書面審査(形式的審査)に限定される。これに対し,供託官の審査の対象及び範囲は,供託の手続的要件のみならず,提出された法定の書面の記載に基づいて判断し得る限りにおいて,当該請求が実体上の要件を具備した有効なものであるか否かにまで及ぶものである。 (2) 債権者不確知の場合における供託金払渡請求本件供託は,法律上の債権者不確知すなわち当事者を巡る債権の帰属等の法律関係の判断が容易でないことを理由に供託されたものであるところ,このような場合の供託金還付請求には,被供託者全員による請求による場合のほか,被供託者の一部からの請求のときは,その者が供託物に対する還付請求権を有することの確定判決,和解調書,請求者以外の被供託者の承諾書等を添付して証明することが必要である(供託規則24条)。 (3) 本件についてア新株の無償交付は,株主からの払込みを伴わず,会社の他の資産を振り替えて新株を発行することをいい,株式分割の性質を有するものであるので,無償交付された新株は遺産であり,これに対する配当金は,遺産である株式の法定果実である。しかし,有償増資は,株式を引き受けようとする者が,その申込みをし,それに対して 株式会社が新株の割り当てを行うものであり,遺産であるとも,その法定果実とも認められないから,有償増資により引き受けた新株に対する配当金は,遺産である株式の法定果実には当たらない。また,株式移転交付金及び端数株式処分代金は,いずれも株主の有していた従前の株式が金銭に形を変えたものであり,遺産そのものである。 イ相続開始から遺産分割までに遺産 式の法定果実には当たらない。また,株式移転交付金及び端数株式処分代金は,いずれも株主の有していた従前の株式が金銭に形を変えたものであり,遺産そのものである。 イ相続開始から遺産分割までに遺産から生ずる果実は,遺産とは別個の財産であり,共同相続人の共有財産と解され,原則として共有者(共同相続人)が相続分に応じて持分を取得することになる。しかし,共同相続人の合意により果実を遺産分割の対象に組み入れることを排除するものではなく,また,共同相続人の合意により不可分債権とすることも可能であるから,果実の分配についても,共同相続人間の合意があれば法定相続分と異なった割合によることも可能である。したがって,原告らが本件供託金(配当金等)を法定相続分に従って確定的に取得するためには,本件供託金の分割について,原告らを含む相続人間で何らかの合意もされていないことが必要である。 本件供託の供託書の供託の原因たる事実欄に「当該配当金等についてはその分割につきG他相続人間で係争中であり,また当社は異なる相続人から異なる主張に基づく支払要求を受けている。」と記載されていることに照らすと,遺産分割審判で言及されなかった本件供託金に関しては,その分割を巡り,相続人間に何らかの争いがあるものと認められるから,原告らが法定相続分に従って本件供託金を取得したことについては疑義があり,債権者不確知といわざるを得ない。したがって,本件還付請求が認められるためには,本件供託金の帰属についての争いが解消され,原告らが本件供託金について相続分に従って取得したことを添付書面において明らかにする必要がある。しかるに,本件添付書類を見ても,本件供託金(配当金等)の帰属については何ら言及されておらず,配当金等の帰属について原告らの権利を確定させるものではない。したがって,本件供託 らかにする必要がある。しかるに,本件添付書類を見ても,本件供託金(配当金等)の帰属については何ら言及されておらず,配当金等の帰属について原告らの権利を確定させるものではない。したがって,本件供託金については,依然として債権者不確知のままであるといわざるを得ないから,供託官はその払渡請求に応じることはできない。 ウよって,本件還付請求は,供託規則24条1項1号による還付を受ける権利を有することを証する書面が添付されていないことになるから,これを却下した本件処分は適法である。 (原告らの主張)(1) 本件供託金の性質についてア亡Bが死亡した時に存在していた株式に対する配当金についてこの配当金は,遺産である本件株式の法定果実であり,相続開始後に発生した果実は各相続人がその相続分に応じて分割債権として確定的に取得し,後にされた遺産分割協議の影響を受けないものである。したがって,この配当金は,亡Bの各相続人が,その相続分に応じて確定的に取得したものである。 イ相続開始後に増加した株式に対する配当金について(ア) 新株を元の株式の法定果実と解する場合① 新株の無償交付の場合新株の無償交付は,株式会社が新株引受権を株主に割り当て,当該株主がその新株引受権を行使することにより無条件に新株が割り当てられるものである。したがって,新株の無償交付により増加した株式は,元の株式の果実である性質を有するものであり,当該新株は,全相続人の相続分に応じた準共有状態となる。 したがって,準共有状態にある無償交付された新株に対する配当金は,当該新株の果実であり,相続分に応じて各相続人が取得するものである。 ② 有償増資の場合有償増資であっても株主に新株引受権が割り当てられる場合には,株主たる地位を基準に新株引受権が割り 当金は,当該新株の果実であり,相続分に応じて各相続人が取得するものである。 ② 有償増資の場合有償増資であっても株主に新株引受権が割り当てられる場合には,株主たる地位を基準に新株引受権が割り当てられており,増加した株式は,元の株式の果実たる性質を有する。したがって,新株は元の株式の果実と解される以上,上記①と同様,新株から生じた配当金は,当該新株の果実であり,相続分に応じて各相続人が取得するものである。 (イ) 新株を元の株式の法定果実と解さない場合 元の株式は,亡Bの死亡により遺産分割までの間各相続人間において準共有の状態にあったところ,相続人の1人が行った新株引受権の行使は,共有株式の変更又は処分行為といえる。また,有償増資の払込みも,共有株式の変更又は処分行為に当たる。そして,共有物の変更・処分については,共有者全員の同意が必要である(民法251条)ところ,本件においては,共同相続人の全員が新株を遺産の対象とすることに同意しており,共有者全員の同意は認められる。 よって,新株の無償交付により取得した株式に対する配当金は,無償交付された新株の果実であり,可分債権として民法427条により共有持分に応じて各共有者が確定的に取得する。 ウ株式移転交付金について株式移転交付金は,完全子会社となる会社の株主に対して,設立する完全親会社の株式を割り当てる際の比率の調整のために支払う金員であり,完全子会社となる会社の株主に対して,株主たる地位を有することにより当然に支払われる金員であり,株式の法定果実といえる。 したがって,本件における株式移転交付金は,遺産である本件株式から生じる法定果実として,亡Bの各相続人が相続分に応じて確定的に取得したものである。 エ端数株式処分代金について端数株式処分代金は,株式 って,本件における株式移転交付金は,遺産である本件株式から生じる法定果実として,亡Bの各相続人が相続分に応じて確定的に取得したものである。 エ端数株式処分代金について端数株式処分代金は,株式が金員に形を変えたものであり遺産ではあるが,金銭債権であることには変わりないので,遺産分割審判等による判断もされていないから,可分債権として各相続人が相続分に従って取得したものである。 (2) 供託官の審査権限等について名高裁決定においては本件供託金について何ら言及されていないが,このことは,本件供託金が各相続人の相続分に従い帰属していることを表しており,原告ら以外の相続人の承諾書が不必要であることは明らかである。したがって,原告らが提出した書面に基づき判断すれば,処分行政庁は,本件還付請求が実体上の要件を具備した有効なものであると判断できる。しかるに,相続人間の合意による分割を排除するもの ではないことを理由として,この分割がされていないことを証する書面が提出されていないとして本件還付請求を却下(本件処分)することは,本件添付書類の記載を超えて実体上の要件具備を審査するものであり,供託官の審査権限を逸脱するものである。 第3 当裁判所の判断 1 供託官の審査権限及び供託規則24条1項1号所定の書面について供託規則24条1項によれば,供託物の還付を受けようとする者は,供託所に保存された副本ファイルにより還付を受ける権利を有することが明らかである場合を除き,供託物払渡請求書に還付を受ける権利を有することを証する書面及び反対給付をしなければならないときは,供託法10条に規定する証明書類を添付しなければならないとされている。これは,供託物の還付に関する事務処理が迅速かつ確実に行われるようにするため,還付請求者に対し,自らが当 しなければならないときは,供託法10条に規定する証明書類を添付しなければならないとされている。これは,供託物の還付に関する事務処理が迅速かつ確実に行われるようにするため,還付請求者に対し,自らが当該供託物の還付を受ける権利を有することを書面により明らかにさせる趣旨によるものと解される。そして,供託物の払渡手続を定めた供託規則の規定を通覧しても,供託官において,例えば関係者に対して照会をするなど提出された書面以外に及ぶ調査をすることは予定されていないことに照らせば,供託規則24条1項1号にいう「還付を受ける権利を有することを証する書面」とは,供託官において,その書面のみによって還付請求者が還付を受ける権利を有することを確認することができるものでなければならないというべきである。 2 本件供託金の性質について(1) 亡Bが死亡当時所有していたJ銀行株式(3万株)に対する配当金について遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に発生した,遺産である株式に対する配当金は,遺産とは別個の財産である。そして,配当金請求権は,金銭債権であるから,遺産である株式の共同相続人が,その相続分に応じて分割債権として取得するものと解するのが相当である(平成16年(受)第1222号同17年9月8日第一小法廷判決・民集59巻7号1931頁〔以下「平成17年判決」という。〕参照)。 したがって,本件株式のうち,亡Bが死亡した当時所有していた3万株に対する亡Bが死亡した後に発生した配当金は,亡Bの相続人らがその相続分に応じて分割債権として取得することになる。 (2) 亡Bが死亡した後,新株の無償交付を受けた株式に対する配当金について前記前提事実並びに証拠(甲25ないし27,2 は,亡Bの相続人らがその相続分に応じて分割債権として取得することになる。 (2) 亡Bが死亡した後,新株の無償交付を受けた株式に対する配当金について前記前提事実並びに証拠(甲25ないし27,29)及び弁論の全趣旨によれば,亡Bが死亡当時所有していたJ銀行株式に対しては,亡Bの死亡後,5回にわたって新株の無償交付が行われ,本件供託により供託された配当金には,この無償交付された新株に対する配当金が含まれていることが認められる。 新株の無償交付は,株式会社における法定準備金の資本組み入れ又は券面超過額の資本組み入れに伴って従前の株主に対して行われるものであり,形式的には当該株式会社の資本増加は生じるものの,実質的には当該株式会社の資産の増加を伴わない新株発行であるから,株式分割の性質を持つものといえる。そうすると,遺産である株式に対して新株の無償交付が行われることは,遺産である株式が分割されたものと評価することができる。 したがって,亡Bが死亡当時所有していた株式に対して無償交付された新株についても,遺産とみて,この新株に対する配当金は,上記(1)と同様に取り扱うのが相当である。 (3) 亡Bが死亡した後,有償増資により発行された株式に対する配当金について前記前提事実並びに証拠(甲25ないし27,29)及び弁論の全趣旨によれば,J銀行においては,亡Bの死亡後,3回にわたってその株主に新株引受権を割り当てて有償増資を行い,このうち2回は亡Aが,その余の1回はGが払込みをして新株の発行が行われたこと,本件供託により供託された配当金には,このうち昭和52年及び昭和56年に行われた有償増資により発行された新株に対する配当金が含まれていることが認められる。 上記認定のとおり,上記有償増資の払込みはいずれも亡Bの相続人の1人がしたものである 昭和52年及び昭和56年に行われた有償増資により発行された新株に対する配当金が含まれていることが認められる。 上記認定のとおり,上記有償増資の払込みはいずれも亡Bの相続人の1人がしたものであるが,上記有償増資は株主に新株引受権を与えてされたものであり,上記有償 増資がされた当時,その基となる株式は亡Bの相続人らが共有していたのであるから,上記有償増資により発行された新株は亡Bの相続人らの共有に属することになるものと解される(なお,出捐した払込代金相当額は,民法253条により処理されることになる。)。そして,この新株に対する配当金請求権は,金銭債権であるから,亡Bの相続人らがその相続分に応じて分割債権として取得するものと解するのが相当である。 (4) 株式移転交付金及び端数株式処分代金について株式移転交付金は,株式移転(平成17年法律第87号による改正前の商法364条)が行われる場合において,交換比率の調整等のために株主に支払われる金銭(同法365条1項4号)である。そうすると,株式移転交付金は,従前の株式の一部が金銭に転化したものと認められる。また,端数株式処分代金は,端数株式を売却した代金であり,従前の株式の一部が金銭に転化したものと認められる。 前記前提事実並びに証拠(甲18,19,23,24,29,乙2,3)及び弁論の全趣旨によれば,本件供託により供託された株式移転交付金及び端数株式処分代金は,亡Bが死亡当時所有していたJ銀行株式並びにその後の株式の無償交付及び有償増資により発行された株式に対するものであると認められるところ,遺産又は共有財産である株式に関して株式移転交付金あるいは端数株式処分代金が交付された場合,これらの金銭は従前の遺産又は共有財産である株式の一部が金銭に転化したものであるから,本件供 られるところ,遺産又は共有財産である株式に関して株式移転交付金あるいは端数株式処分代金が交付された場合,これらの金銭は従前の遺産又は共有財産である株式の一部が金銭に転化したものであるから,本件供託により供託された株式移転交付金及び端数株式処分代金に対する請求権は,金銭債権として,亡Bの相続人らがその相続分に応じて分割債権として取得するものと解するのが相当である。 3 本件処分の適否について以上の本件供託金の性質を前提として,本件処分の適否を検討する。 (1) 前示のとおり,本件供託金については,いずれも亡Bの相続人らがその相続分に応じて分割債権として取得することができる性質のものである。 しかし,遺産を構成する預金債権等の金銭債権や,相続開始後に発生した預金利息 等の遺産の法定果実など,共同相続人がその相続分に応じて分割債権として取得することができる性質のものであっても,共同相続人の合意により遺産分割の対象に組み入れることは理論上可能であり,現在の家庭裁判所における遺産分割の実務では,共同相続人全員の同意により,金銭債権や法定果実をも対象として遺産分割が行われている事例が多く見られることは公知の事実である。 したがって,現実の運用では,金銭債権や相続開始後に遺産から生じた法定果実等共同相続人間において相続分に応じて分割債権として取得することができる性質のものであっても,常に遺産分割手続を経ずに共同相続人がその相続分に応じて分割債権として取得しているわけではない。 (2) 本件供託は,平成17年判決が言い渡された後の平成18年12月8日に行われたものである。そして,本件供託者らは,いずれも,債権者不確知による弁済供託をしたものであるが,その原因事実として,本件供託の供託書には,いずれも,当該配当金等についてはそ 18年12月8日に行われたものである。そして,本件供託者らは,いずれも,債権者不確知による弁済供託をしたものであるが,その原因事実として,本件供託の供託書には,いずれも,当該配当金等についてはその分割につき相続人間で係争中(未分割の状況)であり,また,異なる相続人から異なる主張に基づく支払要求を受けている旨記載されている(乙1ないし3)。この記載自体からは,亡Bの相続人らが本件供託により供託された配当金等の帰属に関して具体的にどのような主張をしていたのかは明らかでないが,本件供託者らが平成17年判決の内容を認識せずに本件供託を行ったとは考え難いところであり,亡Bの相続人の一部の者が配当金等は分割債権でない旨あるいは法定相続分とは異なる相続分(共有持分)の主張をしており,本件供託者らとしてはその主張の当否を確認できなかったものと推認できる。 (3) 前記1で判示したとおり,供託規則24条1項1号にいう「還付を受ける権利を有することを証する書面」とは,供託官において,その書面のみによって還付請求者が還付を受ける権利を有することを確認することができるものでなければならないものである。 これを本件に即して検討すれば,本件供託者らは,上記(2)記載のとおりの事由により債権者不確知を理由に本件供託をしたのであるから,供託物の還付に関する事務 処理を迅速かつ確実に行うという供託制度の趣旨に照らしても,本件還付請求をする原告らは,自らが本件供託金につき9分の2の還付請求権を確実に有することを証明する書面を提出する必要があるというべきである。すなわち,上記のとおり遺産から生じる法定果実等が分割債権とされるとしても,実務での運用上,これが共同相続人の合意により遺産分割の対象とされることが広く行われていることを考慮すれば,原告らが還付 。すなわち,上記のとおり遺産から生じる法定果実等が分割債権とされるとしても,実務での運用上,これが共同相続人の合意により遺産分割の対象とされることが広く行われていることを考慮すれば,原告らが還付請求権を有することの証明としては,単に自己の相続分(共有持分)の証明のみでは不十分であり,また,本件において亡Bの相続人らが本件供託により供託された配当金等に関し異なる主張をしていることを考慮すれば,他の相続人が本件供託金に関しその相続分である9分の7を超える権利を有せず,原告らが本件供託金につき9分の2の権利を確実に有することを証明する書面を提出する必要があるというべきである(そのような書面としては,原告らと他の相続人らとの間で,原告らが本件供託金の9分の2につき還付請求権を有することを確認する確定判決が考えられる。)。 (4) そこで,原告らの提出した本件添付書類の記載から,原告らが,本件供託金につき,確実に9分の2の権利を有することが確認できるか否か検討する。 原告らが本件還付請求に際して処分行政庁に提出した戸籍謄本並びに名高裁決定(甲14)及びその原審の審判書(甲29)によれば,原告らの亡Bに関する相続分が合計で9分の2であること,及び本件供託により供託された配当金等が上記遺産分割審判においては遺産分割の対象とされていなかったことは確認できる。しかし,名高裁決定は,前提事実(3)記載のとおり,本件供託により供託された配当金等については何ら言及しておらず,原告ら以外の相続人が本件供託金に関し,その相続分である9分の7を超える権利を有しないことを証明するものではない。また,その他の本件添付書類によっても,原告らが本件供託金につき確実に9分の2の権利を有することを確認することはできない。 (5) 以上によれば,原告らが本件還付請求に際して 証明するものではない。また,その他の本件添付書類によっても,原告らが本件供託金につき確実に9分の2の権利を有することを確認することはできない。 (5) 以上によれば,原告らが本件還付請求に際して処分行政庁に提出した本件添付書類は,原告らが本件供託金の9分の2につき還付を受ける権利を有することを証す る書面ということはできないから,供託規則24条1項1号所定の書面の添付がないことを理由に本件還付請求を却下した本件処分は,適法である。 4 結論よって,原告らの請求は理由がないので,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部 裁判長裁判官増田稔 裁判官鳥居俊一 裁判官杉浦一輝

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