- 1 -主文被告人を罰金5万円に処する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 (犯罪事実)被告人は,平成17年5月24日午前2時10分ころ,公安委員会が道路標識により,その最高速度を60キロメートル毎時と指定した神戸市a区b町c丁目県道d線下り20.5キロポスト付近道路において,その最高速度を44キロメートル超える104キロメートル毎時の速度で普通乗用自動車を運転して進行した。 (弁護人の主張に対する判断) 弁護人及び被告人は,①判示の日時場所において被告人の運転する普通乗用自動車(「」。)(「」。 以下被告人車両というの速度を測定したパトカー以下本件パトカーというは赤色警告灯以下赤色灯というをつけないまま最高速度を超過しかつ被),(「」。),,告人車両との車間距離を約28メートルしかとらずに同車両を追尾して同車両の速度を測定したものであり,このような違法な追尾によって行われた速度測定の結果には証拠能力がなく,これを唯一の証拠として提起された本件公訴提起は無効であるから,本件公訴は刑事訴訟法338条4号により棄却されるべきである旨主張し,また,②判示の日時場所における被告人車両の速度は90キロメートル毎時にとどまる旨主張するので,以下,これらの主張に対する当裁判所の判断を補足して説明する(なお,前記②の主張について,判示の道路は最高速度が60キロメートル毎時と指定された高速自動車道路であり,最高速度を超過した速度が40キロメートル毎時未満の場合は先に反則金納付の手続をとらなければ公訴を提起することができないから(道路交通法130条本文,125条1項,同法施行令45条被告人車両の速度が90キロメートル毎時 が40キロメートル毎時未満の場合は先に反則金納付の手続をとらなければ公訴を提起することができないから(道路交通法130条本文,125条1項,同法施行令45条被告人車両の速度が90キロメートル毎時であったとすれば本件公訴),,はやはり刑事訴訟法338条4号により棄却されるべきことになる。 。) まず,本件パトカーが被告人車両を追尾して同車両の速度を測定した際の状況について,兵庫県警の警察官である証人A及び同Bは,①両名は覆面パトカーである本件パトカーに乗車し阪神d線以下本件道路というの走行車線左側車線を進行しなが,(「」。)()ら速度超過の取締りに当たっていたところ,被告人車両が追越車線(右側車線)を進行して本件パトカーを追い抜いていったことから,被告人車両の速度超過を疑い,同車両の速度測定を行うこととし,本件パトカーを追越車線に車線変更して被告人車両を追い上げた,②この時以降,本件パトカーの速度は本件道路の最高速度を超過していたが,被告人車両を追い上げたときは本件パトカーの赤色灯はつけていなかった,③本件パトカーが被告人車両の後方約30メートルに追いついた20.2キロポスト付近で速度測定の準備に入ったが,その直前に赤色灯をつけた,④本件パトカーは,被告人車両との車間を約30メートルに保ったまま,同所から速度測定の準備として約100メートル追尾し,その後20.3キロポスト付近から20.5キロポスト付近まで約200メートル追尾して速度測定を実施した,⑤その結果,被告人車両の速度は104キロメートル毎時と測定されたが,本件パトカーに搭載された速度計の数値は測定開始時から測定終了時まで104キロメートル毎時で不動でありこの点は証人Bの供述またこの間被告人車両と本件パトカー(),- 2 -の車間距離が が,本件パトカーに搭載された速度計の数値は測定開始時から測定終了時まで104キロメートル毎時で不動でありこの点は証人Bの供述またこの間被告人車両と本件パトカー(),- 2 -の車間距離が変わったこともなかった,⑥速度測定を終えてから,サイレンを鳴らし,マイクを使って被告人車両に停止を命じた旨,一致して供述する。 他方,被告人は,公判廷において,①被告人車両は本件道路の追越車線を進行していたが,その速度は90キロメートル毎時から100キロメートル毎時の間であり,100キロメートル毎時を超えないように速度計を頻繁に確認しながら進行していた,②すると,後方から自動車(後に本件パトカーと判明)が被告人車両を追い上げてきたので,ルームミラーで後方を頻繁に観察しながら進行した,③本件パトカーが被告人車両の後ろについて,嫌だなと思っていると,本件パトカーの赤色灯がつき,速度超過の取締りのパトカーだと分かったので,直ちにブレーキを踏んだところ,被告人車両の速度は,90キロメートル毎時台であったのが90キロメートル毎時を切った,④本件パトカーの赤色灯がついてすぐにサイレンが鳴り,マイクで停車を求められた,⑤被告人車両の速度測定の結果が104キロメートル毎時となっているのは,本件パトカーが被告人車両を追い上げたときの速度が測定されたものではないかと思う旨供述する。 3(1) これらの供述を前提に,まず,被告人車両の速度測定をした際の本件パトカーの赤色灯について検討するに,この点について,証人A及び同Bは,前記のとおり,速度測定の準備を開始する直前に赤色灯をつけたと供述するが,この両名の供述には,次の理由からその信用性に疑問があるといわざるを得ない。 ①本件の約3週間後に作成された実況見分調書では,A及びBは,被告人車両が本件パトカーを追い抜いてすぐ けたと供述するが,この両名の供述には,次の理由からその信用性に疑問があるといわざるを得ない。 ①本件の約3週間後に作成された実況見分調書では,A及びBは,被告人車両が本件パトカーを追い抜いてすぐの時点で赤色灯をつけた旨,公判供述と異なる指示説明をしたものとされている。これについて,同調書の作成者である証人Cは,A及びBが公判供述どおりの指示説明をしたのを間違えて記載したものであり,捜査(調査)現認状況報告書で訂正したと供述するが,同報告書は本件の起訴後第1回公判期日を控えた平成18年2月ころに至って,しかもBの指摘があって作成したものであること,証人C自身,前記実況見分調書を作成した際には,A及びBにその指示説明部分について間違いがない旨確認した旨述べている上A及びBの指示説明を誤記した理由について記号の入力間違い,,「じゃないかなと私は思うんですが・・・」などと述べるのみで,明確な理由を供述できていないことからすれば,前記実況見分調書にA及びBの指示説明を誤って記載したという証人Cの前記供述は信用できず,証人A及び同Bは,公判廷において,前記実況見分調書作成の際の指示説明と異なる供述をしていると認められること。 ②両証人は,前記の時点で赤色灯をつけるきっかけとなった事情を何ら述べておらず,他方で,両証人は,被告人車両を追い上げる際に赤色灯をつけなかった理由については,走行車線から追越車線に車線変更する際は,走行車線において本件パトカーの前を進行している自動車に気を取られていたことからつけるのを忘れていたと述べていることからしても,前記の時点で突然思い出して赤色灯をつけたということには不自然さが残ること。 (2) 他方,被告人は,前記のとおり,本件パトカーの赤色灯がついたのは被告人車両の後方に近づいてきた後,サイレンを鳴らし被告 の時点で突然思い出して赤色灯をつけたということには不自然さが残ること。 (2) 他方,被告人は,前記のとおり,本件パトカーの赤色灯がついたのは被告人車両の後方に近づいてきた後,サイレンを鳴らし被告人車両に停車を求める直前であった旨供述するところ,①この点に関する被告人の供述は,後方から本件パトカーが被告人車両を追い上げてきたので,ルームミラーで後方を頻繁に観察しながら進行していたとか,被告人車両には元々付いていたルームミラーの上に,広く後ろが確認できるタイプのルームミラ- 3 -ーを付けており,かなり広い範囲を見ることができるので,本件パトカーの全体像が見えていたなどと,相当に具体的なものであること,②被告人車両の後方を追尾していた本件パトカーの屋根に赤色灯がついているかどうかは,本件当時は深夜であったことに照らしてもその屋根がルームミラーで物理的に確認可能であれば容易に確認できると考えられ,特に,本件パトカーが被告人車両の速度を測定するため同車両を約300メートルにわたり追尾していたのであれば,その所要時間は仮に本件パトカーの速度が100キロメートル毎時であれば約10.8秒であり,その間にルームミラーを確認していれば本件パトカーの屋根に赤色灯がついているかどうかを確認できたと考えられることからすれば,被告人の前記供述の信用性は排斥されないというべきである。 (3) したがって,被告人車両の追尾及び速度測定をした際の本件パトカーの赤色灯はついていなかった疑いが強い。 (4) 他方,被告人車両と本件パトカーの車間距離については,証人A及び同Bの約30メートルとの供述に反する証拠はないから,約30メートルと認められる。 (5) そこで,このような態様による本件パトカーの被告人車両の追尾及び速度測定の違法性について検討するに,まず,被告人車両の メートルとの供述に反する証拠はないから,約30メートルと認められる。 (5) そこで,このような態様による本件パトカーの被告人車両の追尾及び速度測定の違法性について検討するに,まず,被告人車両の追尾及び速度測定の際に本件パトカーが赤色灯をつけていなかったことは,本件パトカーが緊急自動車としての要件を欠いたまま最高速度を超える速度で進行したことになるから,道路交通法22条1項違反として違法となる可能性があるが,この違法は,被告人に対する権利の侵害を伴うものではないから,追尾によって得られた速度測定の結果の証拠能力の否定に結びつくものではない(最高裁第一小法廷昭和63年3月17日決定・刑集42巻3号403頁参照。 )また,被告人車両の追尾及び同車両の速度測定の際に同車両と本件パトカーの車間距離が約30メートルであったことは,同距離は100キロメートル毎時で進行した場合の1秒間での進行距離である約27.8メートルに近いものであるが,本件パトカーを運転していたAは,長年交通取締りに従事した経験を有する警察官である上,本件当時は,前方の被告人車両は速度測定の対象であって,Aが特に被告人車両の動静に注意を払って運転していたことが状況から明らかであることからすれば,前記車間距離は,仮に被告人車両が急に停止したときにおいてこれに追突するのを避けることができる距離といえるから,直ちに道路交通法26条に違反するものとはいえないし,仮に同条違反として違法であるとしても,前記の事情からして本件パトカーの運転が具体的に被告人車両との衝突等,交通の安全を損なうような事態を生じさせる危険性があったとはいえないから,この違法は,速度測定の結果の証拠能力を否定しなければならないほど重大なものとはいえない。 (6) したがって,速度測定の結果の証拠能力は認められ,また, を生じさせる危険性があったとはいえないから,この違法は,速度測定の結果の証拠能力を否定しなければならないほど重大なものとはいえない。 (6) したがって,速度測定の結果の証拠能力は認められ,また,この速度測定の結果を証拠としてされた本件公訴提起の効力が否定されないことも明らかである。 次に,判示の日時場所における被告人車両の速度について検討するに,前記のとおり,この点について,証人A及び同Bは,一致して,本件パトカーは,被告人車両との車間を約30メートルに保ったまま,速度測定の準備として約100メートル追尾し,その後約200メートル追尾して速度測定を実施し,その結果,被告人車両の速度は104キロメートル毎時と測定された,本件パトカーに搭載された速度計の数値は測定開始時から測定終了時まで104キロメートル毎時で不動であり,またこの間被告人車両と本件パトカ- 4 -ーの車間距離が変わったこともなかった旨供述している。この両名の供述は,内容的に不自然,不合理な点はない上,両名にこの点について虚偽の測定をする動機,特に,被告人が供述するような,本件パトカーが被告人車両を追い上げる際の速度を測定して殊更に被告人の罪をつくり上げるような動機は認められないこと(この点は,赤色灯の点灯とは事情が異なるというべきである)からして,十分に信用できるというべきである。 。 これに対して,被告人は,前記のとおり,公判廷において,本件パトカーによる被告人車両の速度測定について,本件パトカーが被告人車両の後ろに付いて,嫌だなと思っていると,本件パトカーの赤色灯がつき,その瞬間ブレーキを踏んで減速したが,すぐにサイレンが鳴り,停車を求められたとして,本件パトカーが被告人車両を追尾して速度測定を実施している状況はなかった旨供述する。しかし,被告人の供述によっても,本 の瞬間ブレーキを踏んで減速したが,すぐにサイレンが鳴り,停車を求められたとして,本件パトカーが被告人車両を追尾して速度測定を実施している状況はなかった旨供述する。しかし,被告人の供述によっても,本件パトカーが被告人車両の後ろに付いてから赤色灯がつくまでの間には少なくとも数秒間の時間がある上,速度測定に必要な距離は準備を入れても約300メートル,必要な時間は100キロメートル毎時で進行していたとすれば約10.8秒にすぎないこと,前記認定のとおり本件パトカーは被告人車両の速度測定中赤色灯をつけていなかったことからすれば,被告人が本件パトカーが被告人車両を追い上げてくるのに気付いてから本件パトカーが赤色灯をつけるまでの間に被告人車両の速度測定がされていたとしても何ら不自然ではない。 また,被告人は,本件当時100キロメートル毎時を超えないように速度計を頻繁に確認しながら被告人車両を進行させていた旨供述するが,被告人自身,被告人車両の速度が90キロメートル毎時台であったことは認めているところ,被告人は,被告人車両が追越車線に入る前に走行車線を進行していた際の速度については必ずしも数キロ単位での詳細な認識を持っていないことからすれば,追越車線の進行時についてのみ数キロと違わない正確な速度の認識を持っていたとは考えられず,少なくとも本件パトカーによる速度の測定時において被告人車両の速度が100キロメートル毎時を超えていたとしても何ら不自然,不合理ではないから,この被告人の供述は証人A及び同Bの前記供述の信用性を左右するものではないというべきである。 したがって,証人A及び同Bの供述によれば,判示の日時場所における被告人車両の速度は104キロメートル毎時であったことが認められる。 以上のとおりであるから,弁護人及び被告人の主張はいずれも理由がなく, って,証人A及び同Bの供述によれば,判示の日時場所における被告人車両の速度は104キロメートル毎時であったことが認められる。 以上のとおりであるから,弁護人及び被告人の主張はいずれも理由がなく,判示の事実が優に認定できる。 (法令の適用) 罰条道路交通法118条1項1号,22条1項,4条1項,同法施行令1条の2第1項 刑種の選択罰金刑を選択 労役場留置刑法18条(金5000円を1日に換算) 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,普通乗用自動車の高速道路での速度違反1件の事案であるが,被告人は,指定最高速度を44キロメートル毎時超える高速度で進行したものであって,違反の程度は著しく,その運転の危険性は軽視できない。また,被告人は,速度違反の程度を争い,また- 5 -自らの速度違反の刑事責任の有無や軽重には関係しないパトカーの赤色灯の不点灯を問題にしていることからしても,被告人の刑事責任を軽くみることはできない。 しかし,他方,本件の動機,経緯において,担当の患者の容態が悪化したことから急いで病院に向かっていたという事情があったこと,パトカーの赤色灯をつけずに速度違反を取り締まる手法は,被告人に対する関係では違法な取り締まりとはいえないものの,これに不信感を持った被告人に対する警察官の対応は誠実なものであったとはいえないこと,速度違反それ自体には反省の態度を示していること,相当以前の速度違反による罰金前科のほかには前科がないことなど,被告人に対して酌むべき事情も認められるので,これらの諸事情を十分に考慮し,主文の刑を量定した。 (求刑―罰金6万円)平成18年8月23日神戸地方裁判所第2刑事部裁判官岩崎邦生 十分に考慮し,主文の刑を量定した。 (求刑―罰金6万円)平成18年8月23日神戸地方裁判所第2刑事部裁判官岩崎邦生
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