平成25(ワ)16060 特許権に基づく損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年1月16日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-84822.txt

キーワード

判決文本文21,529 文字)

平成27年1月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第16060号特許権に基づく損害賠償請求事件(口頭弁論終結の日平成26年10月29日)判決東京都小平市<以下略>原告 A同訴訟代理人弁護士須納瀬 学同訴訟代理人弁理士西島綾雄川崎市中原区<以下略>被告富士通株式会社同訴訟代理人弁護士田中成志同平出貴和同板井典子同山田 徹同杉本賢太同訴訟復代理人弁護士澤井彬子 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,1億1000万円及びこれに対する平成25年6月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 本件は,発明の名称を「データ処理システム」とする特許権を有する原告が,被告に対し,被告の使用に係る別紙1「物件目録」記載のクラウド・コン ピューティング・システム(以下「被告商品」という。)が同特許権に係る発明の技術的範囲に属すると主張して,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金(特許法102条3項による損害額と弁護士費用及び弁理士費用の ティング・システム(以下「被告商品」という。)が同特許権に係る発明の技術的範囲に属すると主張して,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償金(特許法102条3項による損害額と弁護士費用及び弁理士費用の合計)1億1000万円及びこれに対する平成25年6月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 当事者ア原告は,下記(2)記載の特許権を有する者である。 イ被告は,通信機器・装置・システムの製造及び販売,情報処理機器・装置・システムの製造及び販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告の有する特許権ア原告は,次の特許権を有している(以下「本件特許権」といい,本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)(甲1,2)。 登録番号特許第4737658号発明の名称データ処理システム出願日平成14年11月14日出願番号特願2002-330308登録日平成23年5月13日イ本件特許に係る明細書(以下,図面と併せて「本件明細書」という。なお,本件特許は平成15年6月30日以前にされた出願に係るものであるから,本件特許に係る明細書は特許請求の範囲を含むものである〔平成14年法律第24号附則1条2号,3条1項,平成15年政令第214号〕。 参照の便宜のため,本判決の末尾に本件特許に係る特許公報の写しを添付する。)の「特許請求の範囲」における請求項1の記載は,次のとおりである(以下,同項に記載された発明を「本件発明」といい,本件特許のう ち同発明に係るものを「本件発明についての特許」という。)。 「機 の「特許請求の範囲」における請求項1の記載は,次のとおりである(以下,同項に記載された発明を「本件発明」といい,本件特許のう ち同発明に係るものを「本件発明についての特許」という。)。 「機能を表示するタグを付けホームページを通じてインターネットに複数接続する各種のレンタルエンジンと,インターネットに接続する前記各種のレンタルエンジンを処理するためのコンピュータからなる処理装置と,ユーザーの機能に関する要求に基づいてインターネット上の前記機能を表示するタグを検索し前記タグからユーザーの要求を満足させる前記レンタルエンジンを選択してインターネット上で一つまたは複数のレンタルエンジンとこれを制御する前記処理装置とから構成されるデータ処理システムを構築する検索・分配エンジンとを備え,前記検索・分配エンジンを,インターネット上に接続するユーザーからの端末を介した,レンタル要求を入出力部を通じて受け取るユーザー要求受取手段,前記インターネット上の前記タグを検索し,前記ユーザーの要求に適合するレンタルエンジンを検索するタグ検出手段,前記タグ検出手段からの検出結果に基づいて前記ユーザーの要求を実現するレンタルエンジンを選択しインターネット上にユーザーの要求に適合するレンタルエンジンとこれを処理する処理装置とからなるデータ処理システムを構築するシステム構成手段,ユーザーからのインターネットを通じたデータを前記処理装置に送り,前記レンタルエンジンを制御するシステム制御手段,として機能させ,インターネットを通じて前記検索・分配エンジンのホームページにユーザーからデータが送られると,該データが前記処理装置に送られ,該処理装置が該データに基づいて前記選択されたレンタルエンジンを制御しデータ処理を行うようにし,前記検索・分配エンジンがユーザーに対する ザーからデータが送られると,該データが前記処理装置に送られ,該処理装置が該データに基づいて前記選択されたレンタルエンジンを制御しデータ処理を行うようにし,前記検索・分配エンジンがユーザーに対する課金機能を備えていることを特徴とするデータ処理システム。」(3) 本件発明の構成要件本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い,「構成要件A」などという。)。 A 機能を表示するタグを付けホームページを通じてインターネットに複数接続する各種のレンタルエンジンと,B インターネットに接続する前記各種のレンタルエンジンを処理するためのコンピュータからなる処理装置と,C ユーザーの機能に関する要求に基づいてインターネット上の前記機能を表示するタグを検索し前記タグからユーザーの要求を満足させる前記レンタルエンジンを選択してインターネット上で一つまたは複数のレンタルエンジンとこれを制御する前記処理装置とから構成されるデータ処理システムを構築する検索・分配エンジンとを備え,D 前記検索・分配エンジンを,インターネット上に接続するユーザーからの端末を介した,レンタル要求を入出力部を通じて受け取るユーザー要求受取手段,E 前記インターネット上の前記タグを検索し,前記ユーザーの要求に適合するレンタルエンジンを検索するタグ検出手段,F 前記タグ検出手段からの検出結果に基づいて前記ユーザーの要求を実現するレンタルエンジンを選択しインターネット上にユーザーの要求に適合するレンタルエンジンとこれを処理する処理装置とからなるデータ処理システムを構築するシステム構成手段,G ユーザーからのインターネットを通じたデータを前記処理装置に送り,前記レンタルエンジンを制御するシステム制御手段,として機能させ, とからなるデータ処理システムを構築するシステム構成手段,G ユーザーからのインターネットを通じたデータを前記処理装置に送り,前記レンタルエンジンを制御するシステム制御手段,として機能させ,H インターネットを通じて前記検索・分配エンジンのホームページにユーザーからデータが送られると,該データが前記処理装置に送られ,該処理装置が該データに基づいて前記選択されたレンタルエンジンを制御しデータ処理を行うようにし,I 前記検索・分配エンジンがユーザーに対する課金機能を備えていることJ を特徴とするデータ処理システム。 (4) 被告の行為被告は,平成22年11月ころから,被告商品を業として使用している(甲3,4)。 3 争点原告は,被告商品が別紙2「原告の主張する被告商品の構成」のとおりの構成を有しており,本件発明の構成要件AないしJをすべて充足する旨主張し,被告は,被告商品が別紙3-1「顧客の申込み時の被告商品の構成」ないし3-3「配備完了後の被告商品の構成」に記載のとおりの構成を有している旨主張し,被告商品の構成要件充足性をすべて争っているが,主要な争点は,以下のとおりである。 (1) 被告商品は本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア被告商品は構成要件Aを充足するか(争点1-ア)イ被告商品は構成要件Iを充足するか(争点1-イ)(2) 本件発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか(争点2)(3) 損害発生の有無及びその額(争点3) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1-ア(被告商品は構成要件Aを充足するか)について【原告の主張】ア被告商品の「テンプレート」が「レンタルエンジン」に該当すること(ア) 本件発明は,①インターネットに接続する複数の 争点1-ア(被告商品は構成要件Aを充足するか)について【原告の主張】ア被告商品の「テンプレート」が「レンタルエンジン」に該当すること(ア) 本件発明は,①インターネットに接続する複数のレンタルエンジンが存在し,②同レンタルエンジンには機能を表示するタグが付されており,③ユーザーは,検索・分配エンジンを通じて,機能に関する要求をし,④同検索・分配エンジンが,インターネット上のタグを検索し,ユーザーの要求を満足させるレンタルエンジンを選択し,⑤インターネット上に,選択されたレンタルエンジンと処理装置とからなるデータ 処理システムを構築し,⑥検索・分配エンジンがユーザーに対する課金機能を備えているものである。 このような本件発明において,構成要件Aにいう「レンタルエンジン」の意味に照らせば,被告商品の「テンプレート」とは,即時稼働可能な状態で準備された仮想マシン・仮想システムそのものであり,インターネットに接続しているのであって,構成要件Aにいう「レンタルエンジン」に相当する。 (イ) 被告は,被告商品の「テンプレート」は,仮想マシンではなく,デザインスタジオにおけるメニューの表示にすぎないとか,仮想マシンは,配備が完了するまでは存在せず,存在しない仮想マシンについて,事前に総合試験も行うこともできないなどと主張する。 しかし,被告商品の「テンプレート」とは,単なるメニューの表示ではなく,仮想マシン・仮想システムの雛形として,実体を有するものである。被告の主張は,コンピュータにおける仮想化技術やクラウド技術の常識に反するものである。 すなわち,被告の技術誌において,「Web2階層システムなどの典型的なミドルウェアシステム構成は,ネットワーク,ストレージ,サーバの構成を含めて動作保証したテンプレートとして提供している である。 すなわち,被告の技術誌において,「Web2階層システムなどの典型的なミドルウェアシステム構成は,ネットワーク,ストレージ,サーバの構成を含めて動作保証したテンプレートとして提供している。システムの新規作成時に,テンプレートを選択するだけで,ミドルウェア導入済みのシステムがデータセンターに数十分程度で配備される。」(甲7)とされているとおり,被告商品の「テンプレート」は動作保証されている。テンプレートについて動作保証するためには,当該テンプレート(仮想マシン・仮想システム)のCPU,メモリー等のサーバの構成,ネットワーク,ストレージの想定しうる組合せについて総合試験を実施し,ユーザーの要求にこたえられるということを確認する作業が必須である。動作保証とは,総合試験を実施して,確実に動作することが確認 されたという意味であり,逆に確実に動作することが確認できない組合せや事項については動作保証できないのである。テンプレートとは,このように典型的な構成の仮想マシンについて総合試験を経た雛形のことであり,それはイメージファイルの形で保存されるものである。そして,ユーザーの要求に基づいて仮想マシン・仮想システムを配備するとは,そのようなテンプレートの複製(コピー)を作成することに他ならない。 あるいは,テンプレートに対し,ユーザーの固有の情報を付与するということもできる。ワープロソフトにおけるテンプレートは,文書の雛形という意味で使われているように,ユーザーがテンプレートを用いて文書を作成する場合,そのテンプレートのデータをコピーして,そこに独自の情報を記入することによって新たな文書を作成するが,そのテンプレートは単にメニューの表示にすぎないのではなく,ファイルデータとしての文書そのものとして存在することは明白であって,仮想マシ こに独自の情報を記入することによって新たな文書を作成するが,そのテンプレートは単にメニューの表示にすぎないのではなく,ファイルデータとしての文書そのものとして存在することは明白であって,仮想マシンのテンプレートも基本的には同様のものである。 したがって,仮想マシンの雛形であるテンプレートとそのテンプレートをコピーして作成される仮想マシンは,コンピュータ技術上同一のものなのである。そして,動作保証したテンプレートと同一の仮想マシンが作成されるからこそ,その仮想マシンの動作について,「動作保証」が可能となるのである。 被告商品は,上記のとおり,テンプレートとしての仮想マシンが存在し,ユーザーの申込みを受けてテンプレートをコピーして配備し,さらにパワーオンにすることにより稼働する。その間,仮想マシンは,①総合試験を実施する段階,②総合試験を終了し,動作保証されたテンプレートとしてユーザーの選択対象となる段階,③ユーザーの選択を受けて配備されユーザー専用の仮想マシンとなる段階,④その仮想マシンがパワーオンとなる段階を経るが,コンピュータ技術上同一の仮想マシン が存在しており,単にこれにユーザー固有の情報が付されているか,スイッチが入っているかいないか,という違いがあるにすぎない。 (ウ) 以上のように,被告商品における「テンプレート」は,総合試験を経て,即時稼働可能な状態で提供される仮想マシンそのものであるから,本件発明において,ユーザーの要求に基づいて検索分配エンジンがタグを検索する対象であり,かつ,インターネット上に処理装置とともにデータ処理システムを構築する対象としての「レンタルエンジン」(構成要件A)に該当する。 イ被告商品の「テンプレート」が「機能を表示するタグを付けホームページを通じてインターネットに複数接続する データ処理システムを構築する対象としての「レンタルエンジン」(構成要件A)に該当する。 イ被告商品の「テンプレート」が「機能を表示するタグを付けホームページを通じてインターネットに複数接続する」ものであること(ア) 被告商品は,「all IP化」をうたい,上記アで主張したとおり,検証済みで動作保証されて即時稼働可能な状態でテンプレートが用意されている。当該テンプレートは,インターネットとの接続についても検証済みであり動作保証がなされているのであり,ネットワーク接続試験が行われたテンプレートについて,ユーザーの要求を受けて配備するとは,上記のとおり,テンプレートのコピーをすることであり,ユーザーが確定スイッチを入れることにより,仮想ファイアーウォールも稼働するようになり,インターネット上で利用可能なものとなるのであるから,これはインターネットに接続しているのと同じ,同視できるのである。 そもそも,本件明細書の特許請求の範囲に記載された「インターネットに複数接続する各種のレンタルエンジン」(構成要件A),「インターネットに接続する前記各種のレンタルエンジン」(構成要件B)というのは,必ずしも常にインターネットに「接続している」ということではなく,「ある時点でインターネットに接続している」,又は,「インターネットに接続しうる」ということであるから,「レンタルエンジン」(構成要件A)にあたる被告商品の「仮想マシン」(すなわち, 「テンプレート」)が,インターネットに接続していない時点があったとしても,本件発明の構成要件充足性に影響しない。 (イ) なお,被告商品のサービスポータルは,インターネットに接続されたテンプレートに付されているタグに対応するキーワードを表示し,ユーザーが自ら望むテンプレートに対応するキーワードをクリック 。 (イ) なお,被告商品のサービスポータルは,インターネットに接続されたテンプレートに付されているタグに対応するキーワードを表示し,ユーザーが自ら望むテンプレートに対応するキーワードをクリックすることにより,ユーザーの要求を認識し,これに基づいてインターネットに接続する複数のタグの中からキーワードに対応する1つのタグを特定することにより検索して,ユーザーの要求に適合するテンプレート(仮想マシン,仮想システム)を検索する機能を有しているものであるから,被告商品が「インターネット上のタグを検索し前記ユーザーの要求に適合するレンタルエンジンを検索するタグ検出手段」(構成要件E)を有していることも明らかである。 【被告の主張】ア被告商品の「テンプレート」が「レンタルエンジン」に該当しないこと原告の主張は,本件明細書の特許請求の範囲の記載を無視するものである。 本件発明の構成要件Aにいう「レンタルエンジン」は,「ホームページ」を通じてインターネットに接続するものであり,計算やデータ処理を行うエンジン,すなわちユーザーからの要求に基づき計算やデータ処理を行うコンピュータそのものである。 これに対し,被告商品の「テンプレート」は,仮想マシンではなく,デザインスタジオにおけるメニューの表示にすぎないのであって,作られるべき仮想マシンのコピー元や,作られる仮想マシンのイメージなどではない。 したがって,被告商品の「テンプレート」は,「レンタルエンジン」(構成要件A)に該当しない。 イ被告商品の「テンプレート」が「機能を表示するタグを付けホームページを通じてインターネットに複数接続する」ものでないこと(ア) 本件発明の構成要件Cは,「ユーザーの機能に関する要求に基づいてインターネット上の前記機能を表示するタグを検索し前 グを付けホームページを通じてインターネットに複数接続する」ものでないこと(ア) 本件発明の構成要件Cは,「ユーザーの機能に関する要求に基づいてインターネット上の前記機能を表示するタグを検索し前記タグからユーザーの要求を満足させる前記レンタルエンジンを選択してインターネット上で一つまたは複数のレンタルエンジンとこれを制御する前記処理装置とから構成されるデータ処理システムを構築する検索・分配エンジンとを備え,」であり,構成要件Eは,「前記インターネット上の前記タグを検索し,前記ユーザーの要求に適合するレンタルエンジンを検索するタグ検出手段,」である。本件発明の構成要件C及びEにいう「レンタルエンジン」は,「ホームページを通じてインターネットに複数接続する各種のレンタルエンジン」に付された「タグ」により,インターネット上において検索されて選択されるものである。 被告商品がインターネットに接続するのは,仮想マシン及び仮想システムの配備が完了し,ユーザーによるファイヤーウォールの設定がされた後である。仮想マシンは,「データ処理システムを構築する」ためにタグを検索する時点において,ホームページを通じてインターネットに接続しているものではない。 したがって,原告が本件発明の「レンタルエンジン」(構成要件A)に該当する旨主張する被告商品の「仮想マシン」(又は「テンプレート」)は,「ホームページを通じてインターネットに複数接続する」(構成要件A)ものとはいえない。 (イ) なお,本件発明のタグは,「ホームページを通じてインターネットに複数接続する各種のレンタルエンジン」に付されるものである(本件明細書の第1図参照)が,被告商品において,仮想マシンには,機能を表示するタグも存在しない。 (2) 争点1-イ(被告商品は構成要件Iを充足 種のレンタルエンジン」に付されるものである(本件明細書の第1図参照)が,被告商品において,仮想マシンには,機能を表示するタグも存在しない。 (2) 争点1-イ(被告商品は構成要件Iを充足するか)について【原告の主張】ア構成要件Iにいう「課金機能」とは,①当該サービスの利用に応じてユーザーに課金するために必要な情報を把握すること,②その情報に基づいて利用料を計算すること,③その計算結果をユーザーに通知して,その支払を求めることを含むと解される。 そして,被告商品のサービスポータルは,次のような機能を有している。 ①及び②に関して,サービスポータルの「概算見積画面」において,ユーザーの申込内容に基づく料金の概算を表示し(甲25の1),「誓約画面」において,ユーザーが自らの申込みに基づくサービスに応じた課金がなされることなどを内容とする「サービス利用規約及びサービス仕様に同意する」ことをチェックした上,「申込確定」ボタンをクリックして課金契約を了承する(甲25の2)ことにより,課金の基礎となるサービスの内容(仮想マシン,OS環境,ストレージ,ミドルウェア等の内容)を把握し,その後,サービスポータルの「システム詳細画面」において,ユーザーが仮想マシン,仮想システムのパワーON,パワーOFFを行うことにより,仮想マシン,仮想システムの稼働に関する情報を把握し,時間課金及び従量課金の開始と終了を把握する(甲25の3ないし5)。③に関して,サービスポータルの「利用料金照会画面」において,ユーザーに対して課金結果を表示する(甲25の6)ものであり,以上の流れを図示したのが甲26号証である。このように,被告商品のサービスポータルは,「課金機能」の重要な一部を担っており,本件発明の構成要件Iにおける「課金機能」を備えているといえる。 のであり,以上の流れを図示したのが甲26号証である。このように,被告商品のサービスポータルは,「課金機能」の重要な一部を担っており,本件発明の構成要件Iにおける「課金機能」を備えているといえる。 イ(ア) 被告は,「課金機能を備えている」とは,課金機能の一部を有することとは異なるとか,「インターネットを通じて前記検索・分配エンジンのホームページにユーザーからデータが送られる」,「該データが前 記処理装置に送られ」「該処理装置が該データに基づいて前記選択されたレンタルエンジンを制御しデータ処理を行うようにし」たことで,「検索・分配エンジンがユーザーに対する課金機能」を備えている旨主張する。 しかし,本件発明の構成要件Iは,「前記検索・分配エンジンがユーザーに対する課金機能を備えている」とするのみであって,「該処理装置が・・・レンタルエンジンを制御しデータ処理を行う」ことと「検索・分配エンジンがユーザーに対する課金機能を備える」こととの間に論理的な関係が存在することは必須ではない。 (イ) また,被告は,本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0012】ないし【0014】の記載を引用して,本件発明では,検索・分配エンジンが顧客からデータを受け取ってレンタルエンジンに送っているために,検索・分配エンジンがレンタルエンジンの利用時間及び作業量を把握しているので課金機能を備えている(課金を行うことができる)旨主張する。 しかし,被告の指摘に係る記載は,本件発明の一例を示すものにすぎず,本件発明において,検索・分配エンジンがレンタルエンジンの利用時間及び作業量を把握していることは必須ではない。 【被告の主張】ア本件発明は,各レンタルエンジンで処理されるデータが検索・分配エンジンを経由して各レンタルエンジンに送られる。これによっ 利用時間及び作業量を把握していることは必須ではない。 【被告の主張】ア本件発明は,各レンタルエンジンで処理されるデータが検索・分配エンジンを経由して各レンタルエンジンに送られる。これによって,検索・分配エンジンが,レンタルエンジンの利用時間及び作業量を把握することができるため,課金処理が可能となり「ユーザーの支払うシステムレンタル料」をそれぞれの「レンタルシステムの参加者が所定の割合で受け取る」ことができるのである(本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0012】ないし【0014】及び【0016】)。 イ一方,被告商品においては,①サービスポータルのウェブサーバと課金計算を行うサーバは別のサーバであること,②サービスポータルは,課金された結果の表示が行われているのみであること,③仮想マシンによって処理されるデータは,サービスポータルを経由することなく,ユーザーと仮想マシン間で直接送受信されることから,本件発明の「前記検索・分配エンジンがユーザーに対する課金機能を備えている」との構成(構成要件I)を充足せず,また,構成要件Hも充足しない。 ウ被告商品において,サービスポータルの申込時の「概算見積画面」が表示されることや,「誓約画面」でサービス利用規約に同意し課金契約に了承することは,本件発明の課金機能とはいえない。 また,サービスポータルのウェブサーバと課金計算を行うサーバは別のサーバであり,被告商品の課金計算の対象となる情報は,利用時間や通信量のほか様々であって(甲4・71,72頁),仮想マシンのオン,オフの情報のみで課金計算を行うことはできない。 さらに,サービスポータルの「利用料金照会画面」において,ユーザーに課金結果を表示することは,課金された結果の表示が行われているのみであり,課金処理した結果の単なる 課金計算を行うことはできない。 さらに,サービスポータルの「利用料金照会画面」において,ユーザーに課金結果を表示することは,課金された結果の表示が行われているのみであり,課金処理した結果の単なる表示は,課金の対象となる情報の計測及び計算という課金処理そのものではない。 (3) 争点2(本件発明についての特許は特許無効審判により無効とされるべきものと認められるか)について【被告の主張】ア本件発明は,本件特許の出願前である平成13年11月16日に日本国内で頒布された刊行物である特開2001-318728号公報(以下「引用例1」という。乙1)に記載された発明(以下「引用発明1」という。)と同一であり,本件発明についての特許は,特許法29条1項3号の規定に違反してされたものであるから,特許無効審判により無効と されるべきものと認められる。 また,仮に,引用例1において,本件発明の構成要件のいずれかの開示が十分でなかったとしても,本件発明は,引用発明1と,平成14年1月11日に日本国内で頒布された刊行物である特開2002-7555号公報(乙7)に示されているように,サーバー貸与サービス提供方法において,ユーザーの要求に従い,必要なサーバーをレンタル用に構築する周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであり,本件発明についての特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから,特許無効審判により無効とされるべきものと認められる。 イ本件発明は,本件特許の出願前である平成14年1月31日に日本国内で頒布された刊行物である特開2002-32498号公報(以下「引用例2」という。乙2)に記載された発明(以下,「引用発明2」という。)と同一であり,本件発明についての特許は,特許法29条1項3号の規定に れた刊行物である特開2002-32498号公報(以下「引用例2」という。乙2)に記載された発明(以下,「引用発明2」という。)と同一であり,本件発明についての特許は,特許法29条1項3号の規定に違反してされたものであるから,特許無効審判により無効とされるべきものと認められる。 また,仮に,引用例2において,本件発明の構成要件のいずれかの開示が十分でなかったとしても,本件発明は,引用発明2及び乙7号証に示される周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであり,本件発明についての特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから,特許無効審判により無効とされるべきものと認められる。 【原告の主張】ア引用例1には,本件発明の構成要件C及びFが開示されておらず,引用発明1は,本件発明とは,その構成及び作用効果において著しい差が存する。したがって,引用発明1は,本件発明と同一ではなく,また,当業者が引用発明1と被告主張の周知技術に基づいて容易に発明することができ たものではない。 イ引用例2には,本件発明の構成要件C及びFが開示されておらず,引用発明2は,本件発明とは,その構成及び作用効果において著しい差が存する。したがって,引用発明2は,本件発明と同一ではなく,また,当業者が引用発明2と被告主張の周知技術に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。 (3) 争点3(損害発生の有無及びその額)について【原告の主張】ア被告の売上高被告が平成22年11月から本件訴訟の提起日までの間に被告商品を使用したことにより得た売上高は,288億円を下らない。 イ本件発明の技術分野,被告商品の市場,コスト構造,類似事例,実務慣行等にかんがみれば,本件発明の実施に対する相当な実施料は,売上高 商品を使用したことにより得た売上高は,288億円を下らない。 イ本件発明の技術分野,被告商品の市場,コスト構造,類似事例,実務慣行等にかんがみれば,本件発明の実施に対する相当な実施料は,売上高の3%を下回るものではない。 ウ相当実施料以上から,原告は,被告に対し,少なくとも損害賠償金8億6400万円の支払を求める権利を有するところ,その一部である1億円の支払を求めるものである。 エ弁護士費用及び弁理士費用本件訴訟の追行に対する相当な弁護士費用及び弁理士費用は,上記ウの1億円の10%である1000万円とするべきである。 【被告の主張】争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1-ア(被告商品は構成要件Aを充足するか)について(1) 本件発明の特徴 特許法70条2項に基づき,本件明細書の特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するため,以下,特許請求の範囲以外の同明細書の記載について検討する。 発明の詳細な説明の記載によれば,本件発明は,「インターネットを利用したデータ処理システムに関する」ものであり,「従来,ソフトウエアについては,インターネット上のレンタルシステムが広く知られてい」たところ,「コンピュータクラスタリングシステムや浮動小数点演算装置などの高価なハードウエア処理装置をレンタルで使用する場合には,レンタル会社との個別の契約により,3年あるいは5年等の長期のレンタル期間を設定することが一般的であ」り,「高価なファームウエアを持つ装置(エンジン)を簡単に利用することができないという問題点」や「例えばフーリエ変換とグラフィック表示の両方のデータ処理が必要なときには,フーリエ変換装置とグラフィック表示装置の2つの装置(エンジン)を準備し,両方をコンピュータ処理装置を介して接続してシステムを構築 フーリエ変換とグラフィック表示の両方のデータ処理が必要なときには,フーリエ変換装置とグラフィック表示装置の2つの装置(エンジン)を準備し,両方をコンピュータ処理装置を介して接続してシステムを構築しなければならず,コスト高となるとともにシステム構築に手間がかかるという問題点」があったことから,このような問題点を解決することを目的としたものであるとされている(段落【0001】,【0003】,【0004】)。 「上記目的を達成するため本発明は,機能を表示するタグを付けホームページを通じてインターネットに複数接続する各種のレンタルエンジンと,インターネットに接続する前記各種のレンタルエンジンを処理するためのコンピュータからなる処理装置と,ユーザーの機能に関する要求に基づいてインターネット上の前記機能を表示するタグを検索し前記タグからユーザーの要求を満足させる前記レンタルエンジンを選択してインターネット上で一つまたは複数のレンタルエンジンとこれを制御する前記処理装置とから構成されるデータ処理システムを構築する検索・分配エンジンとを備え,前記検索・分配エンジンを,インターネット上に接続するユーザーからの端末を介 した,レンタル要求を入出力部を通じて受け取るユーザー要求受取手段,前記インターネット上の前記タグを検索し,前記ユーザーの要求に適合するレンタルエンジンを検索するタグ検出手段,前記タグ検出手段からの検出結果に基づいて前記ユーザーの要求を実現するレンタルエンジンを選択しインターネット上にユーザーの要求に適合するレンタルエンジンとこれを処理する処理装置とからなるデータ処理システムを構築するシステム構成手段,ユーザーからのインターネットを通じたデータを前記処理装置に送り,前記レンタルエンジンを制御するシステム制御手段,として機能させ, る処理装置とからなるデータ処理システムを構築するシステム構成手段,ユーザーからのインターネットを通じたデータを前記処理装置に送り,前記レンタルエンジンを制御するシステム制御手段,として機能させ,インターネットを通じて前記検索・分配エンジンのホームページにユーザーからデータが送られると,該データが前記処理装置に送られ,該処理装置が該データに基づいて前記選択されたレンタルエンジンを制御しデータ処理を行うようにした」ものであり,本件発明は,「前記コンピュータからなる処理装置が,機能を示すタグが記述されたホームページを通じてインターネットに接続され,前記各種のレンタルエンジンが,高速フーリエ変換装置,グラフィック表示装置,浮動小数点演算装置,シストリック・アレイ装置及びデータベース装置であることを特徴と」し,「前記検索・分配エンジンがユーザーに対する課金機能を備えているものである」とされている(段落【0005】)。 ここで,「本レンタルシステムの主催者は,ホームページや他の宣伝媒体を用いて,本レンタルシステムの参加者を募集する。ハードウエアやソフトウエアを所有しこれらのレンタルを希望する者は,自己のホームページに自己の所有するファームウエアを持つハードウエアの作用を特殊なタグ(荷札)に記述し,このホームページを通じて自己の所有するファームウエアをもつハードウエアをインターネットに接続することで,本レンタルシステムに参加することができる。」(段落【0007】)とされ,本発明の実施形態の動作については,「インターネット4上に接続するユーザーから端末16,18を介して,検索・分配エンジン2のホームページにアクセスがあり, ユーザーから機能のレンタル要求が入ると,検索・分配エンジン2は,図2に示す,入出力部22を通じてユーザー要求受取部2 6,18を介して,検索・分配エンジン2のホームページにアクセスがあり, ユーザーから機能のレンタル要求が入ると,検索・分配エンジン2は,図2に示す,入出力部22を通じてユーザー要求受取部24がユーザーの要求を受け取」り(段落【0009】),「タグ検出部26はインターネット4上の各サーバのホームページの特殊タグを検索し,これによってユーザーの要求に適合するハードウエア処理装置16とレンタルエンジン6,8,10を検索」し,「ユーザーの要求に基づいて,システム構成部24が働き,処理装置16,レンタルエンジン6,8,10が選択されたものと仮定する」(段落【0010】)と,「システム構成部24の選択により,検索・分配エンジン2は,ユーザーの要求を実現する,処理装置16,レンタルエンジン6,8,10から成るデータ処理システムをインターネット上で構築」し,「このデータ処理システムは,システムデータ表示部28によって検索・分配エンジン2のホームページ20上に表示される」(段落【0011】)とされている。そして,「ユーザーは,ホームページ20上に表示されたシステム構築データに基づいて所望の処理装置やレンタルエンジンを指定することもでき」,「検索・分配エンジン2は,ユーザーから少量のサンプルデータを受け取り,これを処理しこのデータ処理のサンプル処理結果をユーザーに渡」し,「検索・分配エンジン2は,課金処理部30によって課金をセットし,データ処理に移行」(段落【0012】)するとされている。また,「ユーザーがインターネット4を通じて検索・分配エンジン2のホームページ20にデータを送ると,システム制御部32は,このデータを処理装置16に送」り,「処理装置16は,ユーザーの端末16,18からのデータに基づいて,レンタルエンジン6,8,10をインター ホームページ20にデータを送ると,システム制御部32は,このデータを処理装置16に送」り,「処理装置16は,ユーザーの端末16,18からのデータに基づいて,レンタルエンジン6,8,10をインターネット4を通じて制御し,データ処理を行」い(段落【0013】),「選択されたデータ処理システムにより処理されたデータの結果は,インターネット4を通じてユーザーの端末16,18に送られ」,「データ処理が開始されると,課金処理部30によりユーザーに対する課金がスタートし,ユーザーが結果を受け 取った段階で課金が終了する」(【段落0014】)という構成をとるものである。 そして,本件発明の効果として,「高価な装置の所有者は,装置を遊ばせておくことなく,レンタルすることで利益を得ることができ」,「時間を決めてレンタルすれば,自分が使用しながら装置を他人にも有償で利用させることができ,装置の有効利用が可能となる」ことなどが挙げられている(段落【0017】)。 以上からすると,本件発明は,ユーザーの希望に応じて,コンピュータ資源を組み合せてシステムを構築していくものであるが,その構成は,①異なる複数の者が既に所有するコンピュータ資源(本件発明の構成要件Aの「レンタルエンジン」に相当するもの)をユーザーの希望に応じて検索してシステムを構築していくものであって,レンタルエンジンは実在するものであること,②レンタルエンジンをレンタルしようとする者は,自己のホームページにレンタルエンジンの機能を表示するタグを付し,ホームページを通じて自己のハードウェアをインターネットに接続することでレンタルシステムに参加することができるとされていることからして,ユーザーの希望に合うレンタルエンジンを検索する時点において,レンタルエンジンはインターネットに接続されて ターネットに接続することでレンタルシステムに参加することができるとされていることからして,ユーザーの希望に合うレンタルエンジンを検索する時点において,レンタルエンジンはインターネットに接続されていることが必要であること,③処理データは,検索・分配エンジンを経由するものであることが必要であると解される。 (2) 被告商品の構成ア後掲各証拠によれば,被告商品の構成は,次のとおりであることが認められる。 被告商品は,OSやミドルウエア,CPU,サーバ数,サーバのスペック,メモリの容量等についてのユーザーの種々の要求に基づき,注文がなされた後にシステムを構成(配備)し,提供するものである(甲4,5の1ないし5の7)。 そして,被告商品の構成は,別紙3-1「顧客の申込み時の被告商品の構成」のとおり,ユーザーからの申込時において,①リソースプールにあるCPU及びメモリ等は,個別に存在しているだけであり,仮想マシンとして機能するように存在していない,②リソースプールにあるCPUやメモリ等は個別にインターネットに接続していない。また,別紙3-2「配備中の被告商品の構成」のとおり,ユーザーからのリクエストに応じて,仮想マシン及び仮想システムを配備中にもインターネットには接続しておらず,別紙3-3「配備完了後の被告商品の構成」のとおり,ユーザーからのリクエストに応じて,仮想マシン及び仮想システムが配備された後も,仮想マシン及び仮想システムをインターネットに接続するか,専用線によるプライベートネットワーク接続にするかはユーザーの選択に任され,インターネットに接続する場合には,ファイアウォールを設定した上でインターネットに接続することが可能となっている。そして,③処理データについては,サービスポータルを通らずにユーザが仮想マシンと直接送 ンターネットに接続する場合には,ファイアウォールを設定した上でインターネットに接続することが可能となっている。そして,③処理データについては,サービスポータルを通らずにユーザが仮想マシンと直接送受信し,ファイアウォールを通過するデータ通信料と各仮想マシンの利用時間のデータを管理ソフトウェアが収集し,外部の課金システムに送られ,外部の課金計算システムで計算された課金額をサービスポータルの課金情報表示画面に表示させていることが認められる(甲4,乙8の1)。 イなお,原告は,甲10号証及び甲11号証に基づき被告商品の構成について縷々主張するが,同主張によっても,ユーザーからのリクエスト時に仮想マシンはインターネットに接続されていないのであって,この点は上記認定と異ならない。 (3) 上記(1),(2)を前提として,まず,被告商品における「テンプレート」が「レンタルエンジン」(構成要件A)に該当するか否かについて,検討する。 ア被告商品において,サービスポータルのテンプレートを用いて仮想システムを構築する過程は次のとおりと認められる。 ① ユーザーが,サービスポータルの中のデザインスタジオの頁から,ユーザーが必要とする仮想システムのネットワーク構成を,メニューであるシステムテンプレートライブラリの中から選択する(甲5の2,乙3の1)。 ② ユーザーが希望する仮想システムをインターネットに接続するか,イントラネットに接続するかを選択する(甲5の3,乙3の2)。 ③ インターネットに接続する場合には,ファイアーウォールの初期グローバルIPアドレスの数を選択する(乙3の3)。 ④ ネットワークのラインに接続させる仮想マシンのOSなどを選択する(甲5の4,乙3の4)。 ⑤ ユーザーは,仮想マシンのCPU,メモリ(RAM),デ バルIPアドレスの数を選択する(乙3の3)。 ④ ネットワークのラインに接続させる仮想マシンのOSなどを選択する(甲5の4,乙3の4)。 ⑤ ユーザーは,仮想マシンのCPU,メモリ(RAM),ディスクをタイプ別に選択して仮想マシンの性能を決める。この際,ユーザーは,仮想マシンのタイプ(エコノミー,スタンダード,・・・,クアッド・ハイの6つが用意されている(順次に高機能))の中から,仮想マシンのタイプを選択する(乙3の5,4)。 ⑥ 必要に応じて仮想マシンを追加し(乙3の6),大容量のディスクの必要な容量を決定した上(乙3の7),申し込む(甲5の5ないし甲5の7)。 ⑦ 申込みが確定した後,リソースプールの中の必要なリソースを論理的に組み上げることにより,仮想マシン及び仮想システムが配備される。 イ上記アからすると,被告商品における「テンプレート」は,被告のサービスポータルの表示画面において,顧客が利用する仮想マシン及び仮想システムの構成のメニューとしての選択候補を意味するにすぎないものと認められる。 この点,原告は,被告商品における「テンプレート」は,総合試験を経て動作保証された,即時稼働可能な状態で提供される仮想マシンそのものであり,予め用意されたテンプレートのコピーにより仮想マシンが作成されるのであるから,構成要件Aの「レンタルエンジン」に該当する旨主張する。 しかし,前記認定に係る本件発明の特徴からすれば,ユーザーからのリクエスト時にレンタルエンジンは実在するものでなければならないところ,上記のとおり,被告商品においては,ユーザーの選択により仮想マシンが配備される,つまり,ユーザーが選択しない限り仮想マシンは配備されず,ユーザー自らが必要な構成や機能を選択してシステム構築を行うものであるから,ユーザーのリ いては,ユーザーの選択により仮想マシンが配備される,つまり,ユーザーが選択しない限り仮想マシンは配備されず,ユーザー自らが必要な構成や機能を選択してシステム構築を行うものであるから,ユーザーのリクエスト時に実在しない仮想マシンをレンタルエンジンととらえることはできない。まして,テンプレートをコピーすることにより仮想マシンが作成されることを前提としても,テンプレートを実在するレンタルエンジンととらえることもできない。ユーザーからのリクエスト時にテンプレート上に表示されたリソースの動作保証がされていることと表示されたリソースから構成されるコンピューターが現実に存在することが異なることは明らかである。 ウ以上のとおり,被告商品における「テンプレート」を,構成要件Aの「レンタルエンジン」ととらえることはできず,ほかに被告商品において構成要件Aにいう「レンタルエンジン」に該当すると認めるべき構成は見当たらない。 (4) 上記のとおり,被告商品の「テンプレート」は構成要件Aの「レンタルエンジン」に該当するとは認められないが,この点をひとまず措き,テンプレートと仮想マシンがコンピュータ技術上同一のものであるとの原告主張を一応の前提として,被告商品の「仮想マシン」が構成要件Aにいう「機能を表示するタグを付けホームページを通じてインターネットに複数接続する」 ものといえるかについて検討する。 アこの点,原告は,仮想マシンはインターネットとの接続についても検証済みであり動作保証がされているのであるから,インターネットに接続しているのと同視できる旨主張する。 しかしながら,被告商品においては,インターネットプロトコルを用いてイントラネットに接続することもあり得るし,現に,被告商品のサービスポータルにおいては,何れのネットワークに接続する 旨主張する。 しかしながら,被告商品においては,インターネットプロトコルを用いてイントラネットに接続することもあり得るし,現に,被告商品のサービスポータルにおいては,何れのネットワークに接続するかについてはユーザーの選択に委ねられていることが明記されているのであって,仮想マシンがインターネットとの接続について検証済みであるというだけでレンタルエンジンとしての仮想マシンがインターネットに接続しているとは認められない。 なお,原告自身も「インターネットに接続しているのと同視し得る」としており,被告商品における仮想マシンがインターネットに接続されていないことを前提としているものと思われる。 したがって,被告商品においては,原告が本件発明の「レンタルエンジン」に相当すると主張するところの「仮想マシン」は,「インターネットに接続している」ということができない。 イまた,構成要件Aには「機能を表示するタグを付けホームページを通じてインターネットに複数接続する各種のレンタルエンジンと」,構成要件Cには「ユーザーの機能に関する要求に基づいてインターネット上の前記機能を表示するタグを検索し・・・」と記載されており,本件発明において,インターネットに接続されているのはコンピュータ(レンタルエンジン)の機能を表示した「タグ」であり,検索・分配エンジンがタグを検索することによって,システムを構築するものであるところ,被告商品においては,ユーザー自らが必要な構成や機能を選択してシステム構築を行っ ており,この点においても,被告商品は,本件発明の構成要件を充足しているとはいえない。 さらに,原告は,特許請求の範囲の記載の「インターネットに」「接続する」が,「ある時点でインターネットに接続している」または「インターネットに接続しうる」ということ を充足しているとはいえない。 さらに,原告は,特許請求の範囲の記載の「インターネットに」「接続する」が,「ある時点でインターネットに接続している」または「インターネットに接続しうる」ということであるとも主張する。 しかしながら,「インターネットに接続しうる」というだけでは,検索/選択対象になりえず,本件発明の構成要件Cの「ユーザーの機能に関する要求に基づいてインターネット上の前記機能を表示するタグを検索し前記タグからユーザーの要求を満足させる前記レンタルエンジンを選択してインターネット上で一つまたは複数のレンタルエンジンとこれを制御する前記処理装置とから構成されるデータ処理システムを構築する検索・分配エンジンとを備え,」における,ユーザーの要求時において,インターネット上のタグを検索し,レンタルエンジンを選択して,データ処理システムを構築することはできないのであるから,原告主張は認められない。 2 争点1-イ(被告商品は構成要件Iを充足するか)について(1) 本件発明の構成要件Iの「課金機能」にどのような処理が含まれるかについて検討する。 本件明細書には,特許請求の範囲に「インターネットを通じて前記検索・分配エンジンのホームページにユーザーからデータが送られると,該データが前記処理装置に送られ,該処理装置が該データに基づいて前記選択されたレンタルエンジンを制御しデータ処理を行うようにし」(構成要件H)及び「前記検索・分配エンジンがユーザーに対する課金機能を備えている」(構成要件I)との記載があるほか,発明の詳細な説明に「ユーザーがインターネット4を通じて検索・分配エンジン2のホームページ20にデータを送ると,システム制御部32は,このデータを処理装置16に送る。処理装置16は,ユーザーの端末16,18からのデータに基づいて ンターネット4を通じて検索・分配エンジン2のホームページ20にデータを送ると,システム制御部32は,このデータを処理装置16に送る。処理装置16は,ユーザーの端末16,18からのデータに基づいて,レンタルエンジ ン6,8,10をインターネット4を通じて制御し,データ処理を行う。」(段落【0013】),「選択されたデータ処理システムにより処理されたデータの結果は,インターネット4を通じてユーザーの端末16,18に送られる。上記の如くデータ処理が開始されると,課金処理部30によりユーザーに対する課金がスタートし,ユーザーが結果を受け取った段階で課金が終了する。」(段落【0014】)などの記載がある。 これらの記載によれば,検索・分配エンジンがユーザから送られたデータを処理装置に送り,処理装置がレンタルエンジンにデータを送付し,レンタルエンジンでデータ処理が開始すると課金が開始されるものと解される。 そうすると,構成要件Iにおける「課金機能」とは,データ処理の開始から終了までの時間等に基づいた料金を算出することができるものでなければならないと解するのが相当である。 (2) 前記のとおり,被告商品では,ユーザーが仮想マシンと直接送受信するデータ量についてサービスポータルを介さずに把握することができ,サービスポータルとは別のサーバにより,当該データ量に応じた課金処理を行い,サービスポータルは,仮想システムのデータ送受信量などを計算することはできず,料金を表示するのみである。 したがって,被告商品におけるサービスポータルは,構成要件Iの「課金機能」を有するものとは認められず,ほかに被告商品が構成要件Iの「課金機能」に該当するものを備えていると認めるに足りる証拠はない。 3 小括上記検討したところによれば,被告商品は,少なくとも本 機能」を有するものとは認められず,ほかに被告商品が構成要件Iの「課金機能」に該当するものを備えていると認めるに足りる証拠はない。 3 小括上記検討したところによれば,被告商品は,少なくとも本件発明の構成要件A及びIを充足せず,同発明の技術的範囲には含まれない。 第4 結語以上のとおり,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事29部裁判長裁判官嶋末和秀 裁判官鈴木千帆 裁判官石神有吾は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官嶋末和秀

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る