平成17(行コ)11 公金支出差止等請求

裁判年月日・裁判所
平成19年1月15日 名古屋高等裁判所 金沢支部 破棄自判 金沢地方裁判所 平成15(行ウ)11
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判決文本文15,911 文字)

平成19年1月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成17年(行コ)第11号,平成18年(行コ)第1号公金支出差止等請求控訴,同附帯控訴事件(原審:金沢地方裁判所平成15年(行ウ)第11号)口頭弁論終結の日平成18年7月24日主文 本件控訴に基づき,原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 本件附帯控訴を棄却する。 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む)は,第1,2審。 とも,被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 控訴人の控訴につき(控訴の趣旨)主文第1,2項と同旨(控訴の趣旨に対する被控訴人らの答弁)本件控訴を棄却する。 被控訴人らの附帯控訴につき(附帯控訴の趣旨)(1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 控訴人は,当審控訴人補助参加人らに対し,連帯して4億0400万0100円及びこれに対する平成15年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を津幡町に対して支払うよう請求せよ。 (3) 控訴人は,Aに対し,4億0400万0100円及びこれに対する平成15年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を津幡町に対して 支払うよう請求せよ。 (4) 控訴人は,Bに対し,4億0400万0100円及びこれに対する平成15年9月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を津幡町に対して支払うよう請求せよ。 (附帯控訴の趣旨に対する控訴人の答弁)主文第3項と同旨第2事案の概要 本件は,津幡町の住民である被控訴人らが,津幡町の執行機関である控訴人に対し,①津幡町の発注に係る津幡町生涯学習施設建設工事の入札に参加した各社が談合した結果,当審控訴人補助参加人らにより構成される共同企業体が受注予定者となることが合意 津幡町の執行機関である控訴人に対し,①津幡町の発注に係る津幡町生涯学習施設建設工事の入札に参加した各社が談合した結果,当審控訴人補助参加人らにより構成される共同企業体が受注予定者となることが合意され,公正な競争が確保された場合に形成されたであろう正常な落札価格よりも不当に高い価格で落札したことにより,津幡町(),に正常な落札価格との差額相当の損害4億0400万0100円を与えた②津幡町の町長であるAが,上記談合の存在を認識・認容しながら,仮にそうでないとしても,談合が容易な環境を整えた上,事前の談合情報どおりの落札結果となったにもかかわらず,上記工事代金の支出命令をしたことは違法であり,過失がある,③津幡町の助役であるBも,請負業者の選定及び契約方法の決定につき専決権限を有するにもかかわらず,談合が容易な環境を整えて談合を誘因したことにつき故意又は重大な過失があるとして,地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき,当審控訴人補助参加人ら,A及びBに対し,民法709条に基づく損害賠償元金4億0400万0100円及びこれに対する監査請求をした日である平成15年9月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(当審控訴人補助参加人らに対しては民法719条1項に基づく連帯支払)を請求するよう求めた住民訴訟の控訴審である。 原審は,上記入札に際して談合があり,当審控訴人補助参加人らは津幡町に ,,2億1702万4500円の損害を与えたがAの講じた措置に違法性はなくまた,Bに対して地方自治法242条の2第1項4号本文に基づく請求はできないと判断して,被控訴人らの請求について,控訴人は,当審控訴人補助参加人らに対し,連帯して2億1702万4500円及びこれに対する平成17年4月29日から支払済みまで年5分の割 に基づく請求はできないと判断して,被控訴人らの請求について,控訴人は,当審控訴人補助参加人らに対し,連帯して2億1702万4500円及びこれに対する平成17年4月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を津幡町に対して支払うよう請求する限度で認容し,その余の請求を棄却したところ,控訴人が本件控訴を,被控訴人らが本件附帯控訴を各提起した。 なお,略語は,当審控訴人補助参加人らを個別に指すときは「当審控訴人,補助参加人鹿島建設株式会社」を「鹿島建設」と「当審控訴人補助参加人株,式会社豊蔵組を豊蔵組と当審控訴人補助参加人株式会社岡組を岡」「」,「」「組」と,それぞれいうほか,原判決に準ずる。 前提事実次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第2,2に記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)「,,」(1) 原判決4頁20行目の同年8月7日予定どおり本件入札が執行されを次のとおり改める。 「市民オンブズマン・つばたは,同年7月31日,A町長に対し,鹿島等JVが落札する旨の談合情報があるとして本件工事の入札の中止を求めた甲,(1。しかし,本件入札は,予定どおりの同年8月7日に執行され」),(2) 原判決5頁2行目から7頁7行目までを次のとおり改める。 「カなお,津幡町では,平成15年2月20日制定の津幡町事務決裁規則(規則第4号)により,工事又は製造の請負契約における業者の選定及び契約方法の決定については代金500万円以上のものが,入札の執行及び落札者の決定については,そのすべてがいずれも助役の専決権限と定められている(甲77,83。 ) (3) その後の経緯についてア被控訴人らは,同年9月25日付けで,津幡町監査委員に対し,本件契約を直ちに解除するよう そのすべてがいずれも助役の専決権限と定められている(甲77,83。 ) (3) その後の経緯についてア被控訴人らは,同年9月25日付けで,津幡町監査委員に対し,本件契約を直ちに解除するよう津幡町長に勧告することを求める旨の住民監査請求をした(甲12。 )イ津幡町監査委員は,同年11月21日,本件入札に関する談合行為の存在を確認することはできなかったとして,上記監査請求を棄却し,被控訴人らに対してその旨通知した(甲15。 )ウ被控訴人らは,平成15年12月10日,本件訴訟を提起した(記録上明らかな事実。 )エ本件工事は平成17年3月ころまでに完成し,津幡町は,同年4月28日までに鹿島等JVに対して本件工事代金全額を支払った」。 争点及びこれについての当事者の主張次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第3に記載のとおりであるから(ただし「被告の主張」をいずれも「控訴人及び当審控訴人補助参,加人らの主張」と改める,これを引用する。 。)(原判決の補正)(1) 原判決11頁21行目から同末行までを次のとおり改める。 「ア被控訴人らの主張(2)ア(談合情報の存在)は否認する。被控訴人ら主張の談合情報は,情報提供者が匿名とされており,また,その内容においても,誰が,いつ,どのようにして談合したかにつき具体性を欠き,秘密の暴露に当たる事実も何ら含まれていない。上記談合情報で指摘された鹿島等JVが実際に落札したのも,本件入札に参加した共同企業体の数が11にすぎない(偶然一致する確率は1/11=約9%ある)ことからすれば,たまたま一致したにすぎず,上記談合情報の信用性を高める事情とはいえない。 イ被控訴人らの主張(2)イ(本件入札結果の不自然さ)も否認する。個々 の入札にはそれぞれ個性と特徴があるため,談合 ,たまたま一致したにすぎず,上記談合情報の信用性を高める事情とはいえない。 イ被控訴人らの主張(2)イ(本件入札結果の不自然さ)も否認する。個々 の入札にはそれぞれ個性と特徴があるため,談合の事実がなくても理想的な自由競争のもとになされた場合の入札結果と実際の入札結果が常に一致するとは限らないし,本件入札において事前公表された予定価格が,予算の関係上,極めて厳しい見積もりに基づいて決定されているため,各共同企業体の入札価格が予定価格付近に集中するのはむしろ当然であって,本件入札において予定価格が公表されているからといって,落札率が下がる。 ,,のが当然であるとはいえないまた各共同企業体の工事内訳書によれば(),各共同企業体の積算価格は予定価格22億2590万円を超えておりすべての共同企業体が出精値引をして入札価格を決めているところ,値引をする場合にはキリのよい数字にすることは取引通念上一般に見受けられる現象であり,予定価格が事前公表され,かつ,ぎりぎりの値引をして入札価格を決めざるを得ない場合に,100万円未満の金額を切り捨てて入札価格とすることは当然ありうるから,8共同企業体の入札価格が100万円未満を切り捨てた同一金額(22億2500万円)となることもあり得る。したがって,落札率が高いことや他の共同企業体の入札価格が予定価格に近接した同一金額であることだけから,談合の事実を認めることはできない」。 (2) 原判決13頁12行目から同22行目までを次のとおり改める。 「(2) A町長の違法行為A町長は,総合数値1600点以上という極めて高い入札参加資格制限を設定して入札参加可能業者数を15業者にまで絞り込んだ上,名簿(有資格者名簿)を通じて前記入札参加資格を満たす業者名を公表し,談合が容易な態勢を整えて本件入札 以上という極めて高い入札参加資格制限を設定して入札参加可能業者数を15業者にまで絞り込んだ上,名簿(有資格者名簿)を通じて前記入札参加資格を満たす業者名を公表し,談合が容易な態勢を整えて本件入札を実施したばかりか,本件工事につき鹿島等JVの落札が決まっている旨の談合情報が事前に寄せられ,予定価格の事,,前公表制度の下での高落札率11共同企業体における入札金額の横並びとりわけ8共同企業体における同一金額での入札という異常な入札状況で あり,上記談合情報どおりの結果であったにもかかわらず,本件工事の請負契約を締結し,平成16年9月27日に金沢地方裁判所から津幡町において談合が蔓延している旨の指摘(甲51)を受けながら,急ピッチで本件工事を進めさせ,同契約に基づき,急いで公金を支出した。このような事実に照らせば,A町長は,鹿島建設等の入札参加業者による談合を認識・。 ,認容しながら公金を支出したというべきである仮にそうでないとしても談合が極めて容易な環境を整えて本件入札を実施し,談合情報どおりの結果となったのであるから,A町長に過失があることは明らかである。 したがって,A町長は,民法709条に基づき,談合により津幡町が被った損害につき損害賠償責任を負う。 (3) B助役の違法行為B助役は,本件工事の請負業者の選定及び契約方法の決定に関する専決権限を有しながら,上記(2)のような談合が容易な態勢を整えて談合を誘引したから,B助役には故意又は重大な過失がある。 したがって,B助役は,民法709条に基づき,談合によって津幡町が被った損害につき損害賠償責任を負う」。 (3) 原判決14頁11行目を次のとおり改める。 「争う。鹿島等JVの施工した本件工事は最終的には赤字であり,津幡町は何ら損害を被っていない」。 第3当裁判所の判断 損害賠償責任を負う」。 (3) 原判決14頁11行目を次のとおり改める。 「争う。鹿島等JVの施工した本件工事は最終的には赤字であり,津幡町は何ら損害を被っていない」。 第3当裁判所の判断 争点(1)(本件入札において談合が行われたか)について(1) 認定事実前記前提事実及び証拠(甲15,53,54,証人B,証人C,被控訴人D,後記各証拠)によれば,本件入札の実施に至る経緯につき,次の事実が認められる(以下,平成15年の月日については,原則として年の記載を省略する。 。) ア被控訴人Dは,7月24日,T氏(被控訴人らが,情報提供者保護のためとして付した仮称である)から「報道関係各位」と題する書面(甲。 ,2)の交付を受けた(以下「本件談合情報」という。同書面には,大。)別して,①本件入札につき,共同企業体の構成段階で代表者・構成員各自が談合を繰り返し,6月25日に代表者を鹿島建設,その他の構成員を豊蔵組及び岡組とする共同企業体(鹿島等JV)が落札予定業者に選ばれ,鹿島等JVは6月27日に本件入札への参加申込書を提出したこと,②上記談合による選出の背景としてE石川県議会議員の関与が業界関係者から指摘されていること,③鹿島建設は,4月下旬,金沢市発注の浅野本町城北水質管理センター浅野第三ポンプ場の工事施工中に作業員の1人が死亡し,1人が重体事故を起こして現在も入院中であり,この事故についての労働基準監督署の処分が決まれば,関係機関は,指名停止,営業停止の処分を行う旨検討していることが記載されていた。 イもっとも,上記ア①の本件入札に関しては,控訴人の6月16日付け公告(甲7)によれば,入札参加資格は3社により構成される共同企業体であることが必要であり,その共同企業体の構成は代表者1社とその他の構成員2社とする ①の本件入札に関しては,控訴人の6月16日付け公告(甲7)によれば,入札参加資格は3社により構成される共同企業体であることが必要であり,その共同企業体の構成は代表者1社とその他の構成員2社とすること,入札参加の申込受付期間は6月27日までであることが公にされており,上記ア③の事故に関しても,6月21日付け新聞において,同事故の発生により作業員の1人が死亡し,1人が重体となったことや,労働基準監督署が事故原因を調査中であり,判明次第,事故の公表や指名停止などの処分を行う旨の金沢市企業局のコメントが広く報道されていた(丙3ないし5。 ),,,ウ被控訴人Dは7月31日市民オンブズマン・つばたの代表幹事名で控訴人に対し,談合により鹿島等JVが落札者と決められている旨の本件談合情報があるとして,上記アの「報道関係各位」と題する書面(甲2)を示しつつ「入札の執行中止を求める申し入れ書(甲1)をもって本,」 件入札の中止を求めた。これに応対したB助役は,被控訴人Dに対し,本件談合情報の情報提供者が誰であるかを聞いたものの,同被控訴人は,T氏と面談したことや,上記書面の入った封筒の差出人名が石川県建設業協会有志一同である旨回答するにとどまり,T氏を特定し得るような回答はしなかった(なお,津幡町が石川県建設業協会に対し上記談合情報の提供に関する関与を問い合わせたものの,同協会からは無関係である旨の回答があった。また,本件談合情報には,誰が,いつ,どこで談合をした。)か等の具体的な記載はなく,被控訴人Dからも,この点に関する説明はなかった。 エそこで,業者選考委員会委員長でもあるB助役は(乙23,同委員会)を開催し,同委員会において,本件入札への参加業者に対し,個別に事情聴取を行うことが決定された。上記事情聴取は,8月1日及び 。 エそこで,業者選考委員会委員長でもあるB助役は(乙23,同委員会)を開催し,同委員会において,本件入札への参加業者に対し,個別に事情聴取を行うことが決定された。上記事情聴取は,8月1日及び同月4日の2日間にわたり,各参加業者ごとに時間を指定して個別に行われたが,い,,ずれの参加業者からも談合の事実はない旨の回答があり津幡町としても上記以上に談合の存在を窺わせる情報を入手できなかったこともあって,本件入札への参加申込みのあった11共同企業体から,本件入札に関し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律等に抵触する行為を行っておらず,今後も同法律を遵守する旨を誓約する旨の誓約書(乙24ないし34)を徴求して,同事情聴取を終了した。 オ津幡町は,その後,顧問弁護士に本件入札を中止すべきか否かを相談したところ,同弁護士からは,本件談合情報は,談合が行われたか否かを把,,握できない不確かな情報にすぎず参加業者に対する事情聴取によっても談合の存在が確認できないのであれば,本件入札を中止する必要はない旨の回答があった。また,津幡町は,石川県と公正取引委員会にも本件談合情報への対応につき相談したものの,石川県及び公正取引委員会のいずれからも,本件談合情報の取扱い等について積極的な指示や勧告を受けるこ とはなかった。 カ津幡町は,入札当日である8月7日,各参加業者に対し,公告(甲7)に記載された無効事項の定め(入札に参加しようとする者が協定して入札した場合,又は入札に際し不正の行為があった場合)のとおり,談合があれば,本件入札に係る請負契約を破棄する旨警告した上で,本件入札を予定どおり実施した。 キ本件入札の結果は原判決別表1記載のとおりであり,参加申込みのあった11共同企業体すべてが本件入札に参加し,入札を辞退した者はい 請負契約を破棄する旨警告した上で,本件入札を予定どおり実施した。 キ本件入札の結果は原判決別表1記載のとおりであり,参加申込みのあった11共同企業体すべてが本件入札に参加し,入札を辞退した者はいなかった。11共同企業体中,8共同企業体が事前公表に係る予定価格(22億2590万円)を90万円下回る22億2500万円で,2共同企業体が同予定価格を590万円下回る22億2000万円で,鹿島等JVが同,。 予定価格を1590万円下回る22億1000万円でそれぞれ入札した本件入札に際して併せて提出された各入札金額に対応する工事費内訳書(乙1ないし11)には,各共同企業体独自の書式が用いられており,そ。 ,,こに記載された字体等も共通するものはなかったまた上記ウのとおり本件談合情報があったことから,津幡町では,一級建築士の資格を有し,津幡町の職員として同町の建築行政に従事するCらが8月7日及び同月8日の2日間にわたり上記工事費内訳書の内容を精査したが,①各積算内容の単価にはある程度の均一化はみられたものの,独自の単価により積算されたものであり,②設計数量が予め判明しているため,積算結果についても,もともと共同企業体間で極端な差が生ずるものではなく,③8共同企業体が同一の入札金額(22億2500万円)である点も,全共同企業体において,上記予定価格よりも本来の工事価格が上回っていたため,いずれも出精値引又は値引を行い,端数処理の価格として上記の同一金額に至ったものと理解され,いずれの事実も,談合を裏付ける内容ではないと判断した(乙12。 ) ,。 ,ク上記キの入札結果により鹿島等JVが本件工事を落札した津幡町は8月12日開催の町議会において,本件入札における談合の有無につき審議されたものの,談合があったとの結論には至らず, ,。 ,ク上記キの入札結果により鹿島等JVが本件工事を落札した津幡町は8月12日開催の町議会において,本件入札における談合の有無につき審議されたものの,談合があったとの結論には至らず,鹿島等JVとの間における本件工事の請負契約の締結が可決承認された(甲64。 )(2) 本件入札について,当審控訴人補助参加人らが談合をしたことに関する直接証拠はないところ,被控訴人らは,種々の間接事実から上記談合が推認されるべきである旨主張するので,以下において,被控訴人らの主張に即して上記談合の存否を検討する。 ア被控訴人らは,談合の存在を推認させる間接事実として,本件入札に先立ち,被控訴人Dのもとに,S氏及びT氏から,本件入札について談合が行われており,既に落札業者が鹿島等JVに決まっている旨の情報提供があった旨主張する。 上記(1)認定事実によれば,T氏の提供に係る本件談合情報は,本件入札における落札者が鹿島等JVであることを入札前に予告するものであり,実際にも,そのとおりの落札結果となったものの,本件入札への参加業者数が11共同企業体であって,11分の1の割合で落札業者を予測するものにすぎないとも考えられるのであるから,その信用性が高いと即断するのは相当でない。本件談合情報の具体的な記載内容を検討しても,上記(1)認定事実によれば,本件談合情報で指摘された鹿島等JVの具体的構成が代表者を鹿島建設,その他の構成員を豊蔵組及び岡組とする共同企業体である旨の記載は,石川県内における建設業者であれば(乙24ないし34によれば,本件入札に参加した各共同企業体の構成会社はいずれも石川県内に本店,支店又は営業所を有することが認められる,平成15年7月。)当時,既に顕著な事実であったとも考えられ,また,鹿島等JVが6月27日に本件入札参加の 共同企業体の構成会社はいずれも石川県内に本店,支店又は営業所を有することが認められる,平成15年7月。)当時,既に顕著な事実であったとも考えられ,また,鹿島等JVが6月27日に本件入札参加の申込書を提出した旨の記載も,津幡町の公告内容に照らすと,周知の事実を指摘したにすぎないといえる。鹿島建設受注に係 る浅野本町城北水質管理センター浅野第三ポンプ場工事の事故等に関する記載も,本件談合情報が寄せられる前に,既に新聞報道により公知の事実となっており,少なくともこの新聞報道に接した者であれば,誰でも記載することが可能なものであり,本件談合情報に上記報道内容を超える具体的な事実は何ら記載されていない。そして,本件談合情報において,談合についての関与を指摘されている県会議員の関与を窺わせる証拠もない。 その他,本件談合情報の記載内容を詳細に検討しても,談合の関係者でなければ知り得ないような秘密の暴露に該当する事実は格別窺われないから(たとえば,甲126の3によれば,談合により落札予定業者が決定された場合は,談合に反して他の業者が落札することのないように,落札予定業者から応札額の連絡があることが認められるものの,本件談合情報には応札額に関する記載もない,T氏の提供に係る本件談合情報をもって,。)本件入札につき談合があったと推認することはできない。なお,S氏(被控訴人らが,情報提供者保護のためとして付した仮称である)からの情。 報提供は,被控訴人Dの供述又は陳述書によっても,本件工事についての入札公告のされた平成15年6月16日の8か月以上も前の平成14年9月に,電話で,本件工事はすべて鹿島建設を代表とする共同企業体が落札することが決まっている旨のもので,T氏の提供に係る本件談合情報を超えるような内容を有するものとは認められないから 前の平成14年9月に,電話で,本件工事はすべて鹿島建設を代表とする共同企業体が落札することが決まっている旨のもので,T氏の提供に係る本件談合情報を超えるような内容を有するものとは認められないから,仮にS氏からの上記のような情報提供があったとしても,本件入札につき談合があったと推認することはできない。 したがって,被控訴人らの上記主張は採用できない。 イ被控訴人らは,本件入札の落札率が極めて高く,また,落札できなかった共同企業体の入札価格も,高額の,かつ,同一金額である等,本件入札の結果が不自然である旨主張する。 しかし,実際の入札にあっては,入札者による入札価格及び入札の結果 は,個々の入札者の企業規模,従前の工事実績等の実際の入札者の個別的属性のほか,受注期における工事需給の多寡等の経済的情勢,履行の難易及び履行期の長短等の当該工事の特殊性等,様々な他の要因が複雑に影響しあうとも考えられ,談合の事実がなくとも,理想的な自由競争が行われた場合の入札結果と常に一致するとは限らないから,原判決別表1認定の入札価格や落札率をもって,直ちに談合の存在を推認することはできない(談合のない自由競争下での入札においても落札率が93.60%に達するものがあること(甲55,入札制度改革実施後の入札においても落札)率が97%以上となる事例があること(甲59,入札改革に取り組んで)きた国土交通省発注の直轄工事(港湾空港関係を除く)の平均落札率は,。 平成12年度の96.70%から徐々に低下しているものの,平成15年度においても94.40%であること(甲38ないし40,丙1)が認められるから国や他県の入札制度改革による落札率の低下に関する証拠甲,(26,55,56,58ないし60,甲114の1及び2,甲119の1ないし3)は,上記判断を 38ないし40,丙1)が認められるから国や他県の入札制度改革による落札率の低下に関する証拠甲,(26,55,56,58ないし60,甲114の1及び2,甲119の1ないし3)は,上記判断を左右するものではない。 。)また,落札できなかった共同企業体の入札価格が高額であり,かつ,同一金額であった点も,本件入札の事前公表に係る予定価格(22億2590万円)の具体的な積算過程は明確でないものの,前記前提事実(2)ア認定のとおり,本件工事に係る本件施設は,図書館,文化施設,福祉施設等を,,複合した生涯学習施設であり津幡町にとって未曾有の大型建物であってその建設費用は本来相当高額なものとなることが窺われるところ,証人B及び証人Cは,本件入札の予定価格の積算に当たり,津幡町の予算の制約上,相当厳しい査定を行った旨供述しており,少なくとも,所与の単価に基づく積算を行った上で,現場経費,諸経費及び一般管理費(これらの費目は,実質的には受注業者の利益を含めて計上される性質のものである)。 等の包括的な費目につき減額処理を講じて,より低額な予定価格とするこ とは可能かつ容易であり,実際上も,本件入札に参加した各共同企業体の提出に係る工事費内訳書には,いずれも出精値引又は値引の処理が行われた上で入札価格が算定されたこと(甲15,乙1ないし12)が認められるから,上記供述を一概に根拠のない虚偽のものとして排斥することはできない。そして,本来の積算価格が予定価格を上回ることとなった共同企業体としては,予定価格を超過する積算価格をそのまま入札価格とする無効な入札をしたり(甲7の13項(6) ,いったん本件入札への参加を申し)込みながら,入札それ自体を辞退したりすれば,今後の公共入札において指名停止等の不利益処分を受けるおそれがあるものと する無効な入札をしたり(甲7の13項(6) ,いったん本件入札への参加を申し)込みながら,入札それ自体を辞退したりすれば,今後の公共入札において指名停止等の不利益処分を受けるおそれがあるものと思い,予定価格を若干下回るきりのよい金額での入札をやむなく行ったと考える余地があるから,落札できなかった共同企業体の入札価格が高額であったり,同一金額であったことをもって,談合の存在を推認するには足りない。 したがって,被控訴人らの上記主張は採用できない。 ウところで,被控訴人らは,本件入札における落札率が99.29%と極めて高率であること自体が談合の存在を推認させる有力な間接事実であると主張するので,この点について更に検討を加える。 㨯証拠(甲15,66,84,87ないし94,121)及び弁論の全趣旨によれば,津幡町における平成8年度から平成15年度までの予定価格1000万円以上の公共工事854件について,その落札率を見ると,原判決別表2のとおりであったこと,なお,津幡町においては,平成14年度から予定価格の事前公表制度が導入され,また,これに先立って,平成10年度から設計価格からの歩切りが廃止され,設計価格がそのまま予定価格とされたことが認められ,これによれば,上記公共工事における落札率は,①平成8年度において,73件中,99%以上が55件,98%以上が68件,97%以上が70件,90%未満が0件であり(平均落札率99.56%,②平成9年度において,100件) 中,99%以上が66件,98%以上が89件,97%以上が92件,90%未満が0件であり(平均落札率99.53%,③平成10年度)において,129件中,99%以上が70件,98%以上が107件,97%以上が121件,90%未満が3件であり(平均落札率98.49%,④平成 0件であり(平均落札率99.53%,③平成10年度)において,129件中,99%以上が70件,98%以上が107件,97%以上が121件,90%未満が3件であり(平均落札率98.49%,④平成11年度において,108件中,99%以上が44件,)98%以上が86件,97%以上が100件,90%未満が2件であり(平均落札率98.80%,⑤平成12年度において,109件中,)99%以上が44件,98%以上が87件,97%以上が100件,90%未満が4件であり(平均落札率98.86%,⑥平成13年度に)おいて,123件中,99%以上が46件,98%以上が72件,97%以上が88件,90%未満が9件であり(平均落札率96.49%,)⑦平成14年度において,112件中,99%以上が3件,98%以上が9件,97%以上が37件,90%未満が8件であり(平均落札率94.22%,⑧平成15年度において,100件中,99%以上が2)件,98%以上が3件,97%以上が26件,90%未満が5件であった(平均落札率96.94%。 )㨯上記㨯のとおり,津幡町における平成8年度から平成15年度までの各年度の予定価格1000万円以上の公共工事の平均落札率は,94. 22%から99.56%の間にあって,著しく高率ではあるものの,平成13年度以降のそれは,平成12年度以前と比較して,2ないし4%程度低下しているから,津幡町の公共事業の入札において,一般に談合が蔓延しているとまで推認することはできない(なお,被控訴人らは,平成13年度以降の平均落札率の低下は平成10年度から実施された歩切りの廃止に原因するものであり,津幡町の公共事業の入札における談合の蔓延状況は変わっていない旨主張するが,上記した平均落札率の変動について,平成10年度から実施された歩切り 0年度から実施された歩切りの廃止に原因するものであり,津幡町の公共事業の入札における談合の蔓延状況は変わっていない旨主張するが,上記した平均落札率の変動について,平成10年度から実施された歩切りの廃止との連動は認め られないから,被控訴人らの上記主張は採用できない。また,上記した平均落札率の変動について,平成14年度から導入された予定価格の事前公表制度との関連も認め難いので,上記事前公表制度が談合を容易にする措置であるということはできない。 。)そして,上記㨯のとおり,津幡町の公共工事に関する平成14年度及び平成15年度の落札率は,96%台を中心にして相当幅広く分散していることが認められるから,上記アの本件談合情報及び上記イの入札価格に関して説示したことも併せ考慮すると,本件入札における落札率が99.29%と高率であることは,上記アの本件談合情報の存在及び上記イの入札価格を同一とする入札者の存在を総合しても,本件入札に関し,当審控訴人補助参加人ら入札業者間で,事前に,鹿島等JV以外の各共同企業体が,鹿島等JVの入札額よりも高い金額で入札し,鹿島等JVに本件工事を落札させることを合意していたとの事実を推認するには十分ではないというべきである(なお,証拠(甲84,87ないし94,121)によれば,上記854件中,複数回の入札が実施されたのが,平成8年度において10件,平成9年度において5件,平成10年度において3件,平成12年度において2件及び平成13年度において5件あったが,そのうち,1位の順位が入れ替わったのは,平成9年度の1件及び平成10年度の1件だけであり,他はすべて1位の順位が入れ替わっていないこと(ただし,平成12年度の複数回入札2回の内の1回である同年12月26日入札執行分の第2回目入札では,第1回目の第1位 及び平成10年度の1件だけであり,他はすべて1位の順位が入れ替わっていないこと(ただし,平成12年度の複数回入札2回の内の1回である同年12月26日入札執行分の第2回目入札では,第1回目の第1位の者と同額の入札者があった)が認められるところ,被控訴。 人らは,このような「1位不動」は談合の徴表であると主張するが,本件入札においては1回の入札により鹿島等JVが落札者となっているから,本件入札には上記の被控訴人らの主張も当てはまらない。 。)エ被控訴人らは,津幡町においては,入札参加資格条件の制限,名簿(請 負業者有資格者名簿)の公表,予定価格の事前公表の点で談合を容易にする環境が整っていた旨主張する。 㨯入札参加資格条件の制限は,過度に厳しい入札参加資格条件を設定すれば,いたずらに競争参加者を絞り込むことにつながるものの,工事遂行能力に欠ける不良,不適格な業者を予め排除し,対象工事について施工能力を有する者を適切に選別できる等の点で有用であることも否定できないから,当該入札参加資格条件の制限が入札に参加し得る業者を極めて少数の者に限定し,公正な競争を阻害する等の事情のない限り,直ちに談合を容易にするものとはいえない。本件において,被控訴人らの指摘する入札参加資格条件の制限は,総合数値条件が1600点以上,年間平均完成工事高条件が500億円以上であり(ただし,甲7によれば,当該共同企業体の代表者についての要件であって,その他の構成員の要件は,総合数値条件が860点以上,年間平均完成工事高条件が20億円以上である,これは,主要な中央省庁(1250点まで,甲2。)1)や石川県又は金沢市(1500点以上,甲23,31)における入札参加資格条件の制限より厳しいものの,本件工事の重要性,施工の難易度のほか,類似工事の施工実績,経 省庁(1250点まで,甲2。)1)や石川県又は金沢市(1500点以上,甲23,31)における入札参加資格条件の制限より厳しいものの,本件工事の重要性,施工の難易度のほか,類似工事の施工実績,経営能力,施工の信頼性・信用性も併せ考慮して決定されたものであり(証人B,他の地方公共団体にあ)っても,1600点以上又はそれよりも高く設定することが多くみられる(乙13ないし22。なお,年間平均完成工事高条件の制限も,上記総合数値条件を満たす業者であれば,これを通常満たすものと推認され。)。 ,,る本件入札につき11共同企業体の入札があったことに照らせば入札に参加し得る業者を極めて少数の者に限定したとはいえず,実際の入札価格が上記(1)認定の程度にとどまった点も,上記イの説示に照らして公正な競争を阻害したとまではいえないから,これをもって,談合を容易にする環境が整っていたとはいえない。 㨯名簿(請負業者有資格者名簿,甲29)の公表があったことは当事者間に争いがないものの,上記㨯の入札参加資格条件の制限があることのほか,上記アで説示するように,予定価格22億円以上もの大規模工事についての本件入札に参加し得る請負業者有資格者の特定,その経営規模,経営状況等を把握することは,石川県内における建設業者にとって比較的容易なものであったと考えられるから,これをもって,直ちに談合を容易にする環境が整っていたとはいえない。 㨯予定価格の事前公表は,手続の透明性を確保し,予定価格を上回るような無駄な入札を防止し得るものであり,建設業者においても自らの積算の妥当性を事前に検証して,その向上を図ることができる等の点で,一定の有用性があるというべきであるから(甲109によれば,入札制度改革として予定価格の事前公表を採用した地方公共団体があること の積算の妥当性を事前に検証して,その向上を図ることができる等の点で,一定の有用性があるというべきであるから(甲109によれば,入札制度改革として予定価格の事前公表を採用した地方公共団体があることも認められる,これをもって,直ちに談合を容易にする環境が整ってい。)たとはいえない。津幡町における本件入札前の他の入札の結果(甲87ないし94)等を考慮しても,本件入札において談合があったことを推認させるほど,津幡町において談合を容易にする環境が整っていたことを認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 㨯したがって,被控訴人らの上記主張は採用できない。 オ被控訴人らは,談合が全国的に蔓延しているとも主張するが,本件入札において談合があったことを推認させるに足りるほど,談合が全国的に蔓延していることを認めるに足りる証拠はなく,また,他の地方公共団体の入札に際して談合があったことをもって,本件入札における談合の存在を直ちに推認することもできないから,被控訴人らの上記主張は採用できない。 また,被控訴人らは,入札参加業者間で談合をする動機があるとも主張するが,本件入札に参加した11共同企業体において,そのような動機が あったことを認めるに足りる証拠はないから,被控訴人らの上記主張は採用できない。 カなお,津幡町において,平成15年当時における談合防止対策が十分なものであったか,被控訴人Dから本件談合情報の存在を知らされた後の対応に全く落ち度はなかったかについては,疑問を差し挟む余地がないわけではないものの(たとえば,公正取引委員会への正式な通知と事情聴取書の写しの送付をしなかったことを指摘できる,それ故に,本件入札にお。)ける談合の存在が推認されるものではない。 また,鹿島建設が平成18年4月6日に新潟市発注の土木建築 への正式な通知と事情聴取書の写しの送付をしなかったことを指摘できる,それ故に,本件入札にお。)ける談合の存在が推認されるものではない。 また,鹿島建設が平成18年4月6日に新潟市発注の土木建築工事につき談合への関与があったことを認める旨の申出書を公正取引委員会に提出したことは認められるが(甲116の1及び2,そうであるからといっ)て,鹿島建設が過去に落札したあらゆる公共工事の受注がすべて談合によるものであったことを自認する趣旨でないことは明らかであるから,上記判断を左右する事情とはいえない。 キそして,他に本件入札について,これが当審控訴人補助参加人ら入札業者間の談合に基づくものであることを認めるに足りる証拠はない。 結論 以上によれば,被控訴人らの請求は,その余の点につき判断するまでもなく,理由がないから,これを棄却すべきである。 よって,本件控訴に基づき,原判決中,控訴人敗訴部分を取り消し,被控訴人らの請求をいずれも棄却し,本件附帯控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部裁判長裁判官長門栄吉 裁判官沖中康人裁判官田中秀幸

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