主文 被告人両名をそれぞれ懲役8月に処する。 被告人両名に対し,この裁判が確定した日から3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人Aは,手術の際等に使用される医療用医薬品であるBの製造等を行うC株式会社のD営業部長であったもの,被告人Eは,同部F営業所F病診2課長であったものであり,Gは,H病院臨床麻酔部副部長として,同部長を補佐し,同病院における手術の際に使用する麻酔等の計画,準備及び実施等の同部の業務を総括して所属職員を監督する業務に従事するとともに,平成30年4月1日以降には同部長に就任し,同部長として,自ら同部の前記業務を総括して所属職員を監督する業務に従事するに至る予定であったものであるが,被告人両名は,共謀の上,同年1月頃から同年3月頃にかけて,津市(住所省略)の前記臨床麻酔部医師控え室において,被告人Eから前記Gに対してなされた,同部においてBを積極的に使用して前記C株式会社においてBを多数受注できるようにしてほしい旨の請託に関する依頼の趣旨で,同年3月20日,前記C株式会社をして,当時の株式会社I銀行J支店に開設されたK大学名義の普通預金口座に現金200万円を振込入金させて同大学に同額の利益を得させ,もって前記Gの前記職務に関し第三者に賄賂を供与した。 (法令の適用)(被告人両名につき共通)罰条刑法60条,198条刑種の選択懲役刑を選択刑の執行猶予刑法25条1項(量刑の理由)本件は,製薬会社のMR(営業職)やその上司の被告人両名によるH病院の医師に対する判示のとおりの贈賄の事案である。 医師からの働き掛けがあったとはいえ,自社の製造する医薬品の受注増につながるとの思惑から,自社の利益を図ることを優先 の被告人両名によるH病院の医師に対する判示のとおりの贈賄の事案である。 医師からの働き掛けがあったとはいえ,自社の製造する医薬品の受注増につながるとの思惑から,自社の利益を図ることを優先し,奨学寄附の趣旨を歪める形で見返りを期待して現金を供与する犯行に及んだことは,あまりにも軽率といわざるを得ない。公に認められている奨学寄附の制度を利用して大学に利益を得させる態様であるものの,賄賂としては比較的多額であるし,実際にも賄賂の供与が医薬品の受注増に結び付いており,公務の適正や社会の信頼を害した結果には重いものがある(検察官は,本件犯行後に病院において当該医薬品に関する麻酔記録改ざんや詐欺が行われたことを指摘しつつ犯行のもたらした結果が重大である旨の主張をするが,被告人両名の量刑上はここまで拡大して結果を捉えることはできない)。 被告人Eは,医薬品の受注増につながるとの期待から,見返りとして寄附金を供与する趣旨を認識しながら上司である被告人Aに経過を報告し,社内における所要の手続を進める一方で,医師と面会を重ねる現場担当者として本件で欠かすことのできない役割を担った。被告人Aは,上司として被告人Eを止めることなく,むしろ決裁が通りやすいように資料を整えるよう指示するなど,円滑に手続が進むように意を払っており,立場上も犯行につながる重要な役割を果たしたというべきである。もっとも,被告人Aも寄附金交付の最終決定権者ではなく,犯行に積極的な被告人Eに対する助言や承認が中心となる関与であったから,それぞれの役割・立場を総合しても,被告人両名の責任に有意な差があるとはいい難い。 以上によれば,被告人両名の刑事責任はいずれも軽いものではなく,本件は懲役刑を選択すべき事案である(奨学寄附自体が問題であるなどと指摘しつつ罰金刑を求める弁護人の主 に有意な差があるとはいい難い。 以上によれば,被告人両名の刑事責任はいずれも軽いものではなく,本件は懲役刑を選択すべき事案である(奨学寄附自体が問題であるなどと指摘しつつ罰金刑を求める弁護人の主張は,既に述べた本件犯情の重さに鑑みて採用できない)。 その上で,被告人両名について,いずれも事実を認めて反省していること,それぞれ妻が出廷して監督を誓約していること,前科前歴がないことなどの事情もある。 以上を総合考慮し,被告人両名に対しては,主文の懲役刑に処するとともに,刑の執行を猶予して社会内で更生する機会を与えるのが相当と判断した。 (求刑被告人Aにつき懲役1年,被告人Eにつき懲役10月) 令和3年6月29日津地方裁判所刑事部裁判長裁判官四宮知彦裁判官中村海山裁判官樋󠄀 口瑠惟
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