【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理 由 上告代理人穂積忠夫、同吉田正之の上告理由一ないし三について 不当景品類及び
主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理由 上告代理人穂積忠夫、同吉田正之の上告理由一ないし三について不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)一〇条一項により公正取引委員会がした公正競争規約の認定に対する行政上の不服申立は、これにつき行政不服審査法(以下「行審法」という。)の適用を排除され(景表法一一条)、専ら景表法一〇条六項の定める不服申立手続によるべきこととされている(行審法一条二項)が、行政上の不服申立の一種にほかならないのであるから、景表法の右条項にいう「第一項……の規定による公正取引委員会の処分について不服があるもの」とは、一般の行政処分についての不服申立の場合と同様に、当該処分について不服申立をする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう、と解すべきである。けだし、現行法制のもとにおける行政上の不服申立制度は、原則として、国民の権利・利益の救済を図ることを主眼としたものであり、行政の適正な運営を確保することは行政上の不服申立に基づく国民の権利・利益の救済を通じて達成される間接的な効果にすぎないものと解すべく、したがつて、行政庁の処分に対し不服申立をすることができる者は、法律に特別の定めがない限り、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり、その取消等によつてこれを回復すべき法律上の利益をもつ者に限られるべきであり、そして、景表法の右規定が自己の法律上の利益にかかわりなく不服甲立をすることができる旨を特に定めたもの、すなわち、いわゆる民衆争訟を認めたものと解しがたいことは、規定の体裁に に限られるべきであり、そして、景表法の右規定が自己の法律上の利益にかかわりなく不服甲立をすることができる旨を特に定めたもの、すなわち、いわゆる民衆争訟を認めたものと解しがたいことは、規定の体裁に照らし、明らかなところである- 1 -からである。 ところで、右にいう法律上保護された利益とは、行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている利益であつて、それは、行政法規が他の目的、特に公益の実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることとなる反射的利益とは区別されるべきものである。この点を公正競争規約の認定に対する不服申立についてみると、景表法は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)が禁止する不公正な取引方法の一類型である不当顧客誘引行為のうち不当な景品及び表示によるものを適切かつ迅速に規制するために、独禁法に定める規制手続の特例を定めた法律であつて、景表法一条は、「一般消費者の利益を保護すること」をその目的として掲げている。ところが、まず、独禁法は、「公正且つ自由な競争を促進し……一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」と規定し(一条)、公正な競争秩序の維持、すなわち公共の利益の実現を目的としているものであることが明らかである。したがつて、その特例を定める景表法も、本来、同様の目的をもつものと解するのが相当である。更に、景表法の規定を通覧すれば、同法は、三条において公正取引委員会は景品類の提供に関する事項を制限し又は景品類の提供を禁止することができることを、四条において事業者に対し自己の供給する商品又は役務の取引について不当な表示をしてはならない 三条において公正取引委員会は景品類の提供に関する事項を制限し又は景品類の提供を禁止することができることを、四条において事業者に対し自己の供給する商品又は役務の取引について不当な表示をしてはならないことを定めるとともに、六条において公正取引委員会は三条の規定による制限若しくは禁止又は四条の規定に違反する行為があるときは事業者に対し排除命令を発することができることを、九条一項、独禁法九〇条三号において排除命令の違反に対しては罰則の適用をもつてのぞむことを、それぞれ定め、また、景表法一〇条一項において事業者又は事業者団体が公正取引委員会の認定を受けて公正競争規約を締結し又は設定することが- 2 -できることを定め、同条二項において公正取引委員会が公正競争規約の認定をする場合の制約について定めている。これらは、同法が、事業者又は事業団体の権利ないし自由を制限する規定を設け、しかも、その実効性は公正取引委員会による右規定の適正な運用によつて確保されるべきであるとの見地から公正取引委員会に前記のような権限を与えるとともにその権限行使の要件を定める規定を設け、これにより公益の実現を図ろうとしていることを示すものと解すべきであつて、このように、景表法の目的とするところは公益の実現にあり、同法一条にいう一般消費者の利益の保護もそれが直接的な目的であるか間接的な目的であるかは別として、公益保護の一環としてのそれであるというべきである。してみると、同法の規定にいう一般消費者も国民を消費者としての側面からとらえたものというべきであり、景表法の規定により一般消費者が受ける利益は、公正取引委員会による同法の適正な運用によつて実現されるべき公益の保護を通じ国民一般が共通してもつにいたる抽象的、平均的、一般的な利益、換言すれば、同法の規定の目的である公益の保護の結 受ける利益は、公正取引委員会による同法の適正な運用によつて実現されるべき公益の保護を通じ国民一般が共通してもつにいたる抽象的、平均的、一般的な利益、換言すれば、同法の規定の目的である公益の保護の結果として生ずる反射的な利益ないし事実上の利益であつて、本来私人等権利主体の個人的な利益を保護することを目的とする法規により保障される法律上保護された利益とはいえないものである。もとより、一般消費者といつても、個々の消費者を離れて存在するものではないが、景表法上かかる個々の消費者の利益は、同法の規定が目的とする公益の保護を通じその結果として保護されるべきもの、換言すれば、公益に完全に包摂されるような性質のものにすぎないと解すべきである。したがつて、仮に、公正取引委員会による公正競争規約の認定が正当にされなかつたとしても、一般消費者としては、景表法の規定の適正な運用によつて得られるべき反射的な利益ないし事実上の利益が得られなかつたにとどまり、その本来有する法律上の地位には、なんら消長はないといわなければならない。そこで、単に一般消費者であるというだけでは、公正取引委員会による公正競争規約の認定につき景表法一〇条六- 3 -項による不服申立をする法律上の利益をもつ者であるということはできないのであり、これを更に、「果汁等を飲用するという点において、他の一般の消費者と区別された特定範囲の者」と限定してみても、それは、単に反射的な利益をもつにすぎない一般消費者の範囲を一部相対的に限定したにとどまり、反射的な利益をもつにすぎない者であるという点において何ら変わりはないのであるから、これをもつて不服申立をする法律上の利益をもつ者と認めることはできないものといわなければならない。 また、上告人らの主張する商品を正しく特定させる権利、よりよい取引条件で果汁 りはないのであるから、これをもつて不服申立をする法律上の利益をもつ者と認めることはできないものといわなければならない。 また、上告人らの主張する商品を正しく特定させる権利、よりよい取引条件で果汁を購入する利益、果汁の内容について容易に理解することができる利益ないし表示により内容を知つて果汁を選択する権利等は、ひつきよう、景表法の規定又はその適正な運用による公益保護の結果生ずる反射的利益にすぎないものと解すべきであつて、これらの侵害があることをもつて不服申立をするについて法律上の利益があるものということはできず、上告人らは、本件公正競争規約の認定につき景表法一〇条六項に基づく不服申立をすることはできないものというべきである。 以上述べたところと同旨の原審の判断は、正当であり、論旨は、右と異なる見地に立つて原判決を非難するものであつて、採用することができない。 同四について所論の点に関する原審の判断は、正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。 同五についてD研究所に対する件の審決が本来不服申立資格のない者による不服申立についても実体判断をすることができるとしたものであるとすれば、その判断は誤りであるというべきであつて、右の審決の判断に誤りのないことを前提としてそれとの対比において憲法一四条違反をいう所論は、その前提を欠き、失当である。本件審決が- 4 -実体判断をしなかつたことをもつて憲法一四条違反の問題にならないとした原判決は、その結論において正当であり、論旨は採用することができない。 同六について景表法一〇条六項に基づく不服申立に関する審判手続と独禁法違反事件に関する審判手続とは、原判決のいうように、その性格を異にするものであり、それが同一であることを前提として憲法一四条及び三一条違反をいう 表法一〇条六項に基づく不服申立に関する審判手続と独禁法違反事件に関する審判手続とは、原判決のいうように、その性格を異にするものであり、それが同一であることを前提として憲法一四条及び三一条違反をいう所論は、その前提を欠き、失当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。 同七について所論の点に関する原審の判断は、正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官江里口清雄裁判官天野武一裁判官高辻正己裁判官服部高顯裁判官環昌一- 5 -
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