- 1 - 主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要(略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。) 1 本件は、佐賀県武雄市の住民である被控訴人らが、同市市長であるAが違法な業務委託契約(本件契約)を締結し、武雄市に損害が生じたとして、地方自 治法242条の2第1項4号に基づき、Aに対して業務委託料相当額の損害金4億0548万6620円の賠償請求をするよう、控訴人に求めた事案である。 原審は、被控訴人らの請求を認容した。 2 関係法令の定め、前提事実、争点及び当事者の主張は、後記3のとおり補正し、後記4のとおり当審における争点及び当事者の主張を付加するほか、原判 決「事実及び理由」第2の1ないし4に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 原判決の補正⑴ 原判決2頁20行目の「(」の次に「令和5年政令第42号による改正前のもの。」を加える。 ⑵ 原判決5頁15行目の次に改行して次のとおり加える。 「⑹ 市議会は、令和5年1月27日、本件契約を追認する旨議決した(乙33の1ないし4。以下「追認議決」という。)。」⑶ 原判決8頁19行目の「市政運営と」を「市政運営を」と改める。 4 当審で追加された争点及び当事者の主張 ⑴ 本件契約の違法性(建設業法及び武雄市規則違反) - 2 -(被控訴人らの主張)本件契約によってBが請け負う業務には土木建築工事や電気通信工事が含まれ、これらは建設業法上の 本件契約の違法性(建設業法及び武雄市規則違反) - 2 -(被控訴人らの主張)本件契約によってBが請け負う業務には土木建築工事や電気通信工事が含まれ、これらは建設業法上の建設工事に当たる(同法別表第1)ところ、本件契約の締結は以下のとおり同法及び武雄市の規則に違反している。 ア建設業法3条の許可を受けた者でなければ、同法2条1項の建設工事で 市が行うものの入札に参加することができない(武雄市建設工事入札参加者の資格に関する規則(以下「本件規則」という。)3条)が、Bは、前記許可を受けないまま市の入札に参加して本件契約を締結した。 イ Bは、建設業法22条に反して、本件契約に係る工事を一括して株式会社Cに請け負わせた。 (控訴人の主張)ア被控訴人らの前記各主張は、時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。 イ本件契約は、その業務に建設業法2条1項の建設工事を含まず、かつ、随意契約として締結されたから、本件規則3条の対象外である。 ウ仮に本件規則や建設業法の違反があったとしても、手続規定や取締法規の違反にすぎない。 ⑵ 追認決議による瑕疵の治癒(控訴人の主張)令和5年1月27日の追認議決により、本件契約の締結に関する瑕疵は治 癒された。 (被控訴人らの主張)ア本件規則及び建設業法の違反という法令違反は、市議会が追認しても治癒されない。 イ市議会は、追認しないと大規模な撤去工事が必要になることから、やむ を得ず追認したにすぎない。また、この議決に当たり、市から有線方式と - 3 -無線方式の優劣に関する説明はなかった。 ⑶ 損益相殺(控訴人の主張)本件契約の締結及び履行に 追認したにすぎない。また、この議決に当たり、市から有線方式と - 3 -無線方式の優劣に関する説明はなかった。 ⑶ 損益相殺(控訴人の主張)本件契約の締結及び履行により市は利益を得ているから、損益相殺がされるべきである。 ア Bが事業から撤退する可能性は否認する。 イ有線方式が無線方式に劣り、無価値であるということはできない。有線方式は、市で普及しているケーブルテレビの回線網を利用するものであったから、戸別受信機の円滑迅速な整備が可能となった。また、有線方式は、通信が地理的条件や気象条件等に左右されないから、明瞭かつ確実な情報 伝達が可能である。さらに、本件契約で採用した戸別受信機は、FMラジオを内蔵しており、無線方式にも転用可能である。 (被控訴人らの主張)本件契約によって市は利益を得ておらず、損益相殺はできない。 ア B以外の事業者は有線方式に対応することができないから、Bが事業か ら撤退すれば本件契約の履行(メンテナンスを含む。)は確保できない。 現に、Bが撤退するおそれもある。 イ有線方式は、ケーブルテレビ未加入者の自宅外壁に穴を開ける必要がある上、災害時に停電や断線、床上浸水があれば使用不能になり、無線方式に劣る。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、被控訴人らの請求をいずれも棄却するのが相当と判断する。その理由は、以下のとおりである。 2 原判決「事実及び理由」第3の1ないし4を引用する。ただし、原判決12頁12行目の「本体の」を「本体を」と改める。 3 本件契約の違法性に関する追加主張について - 4 -Bが本件契約に係る工事を株式会社Cに請け負わせたこと及びこれに関連してBが電気ないし建設工事の資格を有 と改める。 3 本件契約の違法性に関する追加主張について - 4 -Bが本件契約に係る工事を株式会社Cに請け負わせたこと及びこれに関連してBが電気ないし建設工事の資格を有しないことは、原審で被控訴人らが主張しているところであり(原告準備書面⑴、⑵)、一括下請け及び入札資格としての建設業法上の許可の欠缺に関する被控訴人らの追加主張は、わずかな追加調査をすれば原審で容易に提出することができたものと認められ、少なくとも 重大な過失により時機に後れて提出した攻撃の方法といえる。また、これを審理すれば本件契約に係る業務の建設工事該当性等についての主張立証が更に必要になるから、訴訟の完結を遅延させることになるものと認められる。よって、民事訴訟法157条1項により、被控訴人らの前記主張を却下する。 4 追認議決による瑕疵の治癒について ⑴ 追認議決の存在は補正後の原判決「前提事実」のとおりであり、これにより、本件契約は遡って適法なものとされ、瑕疵は治癒されたと認められる。 ⑵ 本件契約を追認しないと大規模な撤去工事が必要になること及び市議会がこのことを考慮してやむを得ず追認議決をしたことを認めるに足りる証拠はない。 また、仮にそうであったとしても、市議会は、本件契約が無効とされた場合の撤去工事等による不利益と控訴人の責任を追及して得られる利益とを衡量した上で市の利益のために追認議決をしたものと推認することができ、その判断は尊重されるべきものであるから、このことを理由に追認議決の効力を否定することはできない。 ⑶ 追認議決に当たり、市が市議会に有線方式と無線方式の優劣に関する説明をしなかったことを認めるに足りる証拠はなく、かえって、証拠(甲18、甲93、甲95、甲96、乙32な できない。 ⑶ 追認議決に当たり、市が市議会に有線方式と無線方式の優劣に関する説明をしなかったことを認めるに足りる証拠はなく、かえって、証拠(甲18、甲93、甲95、甲96、乙32ないし35)及び弁論の全趣旨によれば、市議会は、本件契約締結後の令和2年9月14日に全員協議会を開催して市担当者に有線方式と無線方式のメリット・デメリットについての説明をさせ、 原判決言渡し後の令和4年12月22日から令和5年1月20日までの間の - 5 -4回の特別委員会で、市担当者に有線方式を採用した理由を説明させた上で追認議決に至ったことが認められる。なお、前記証拠によれば、市議会は、有線方式と無線方式との優劣以外にも、付議なしに本件契約が締結された経緯等についても市担当者に説明をさせたことが認められ、本件契約の締結に関する問題点を把握した上でこれを追認したものということができる。 5 よって、被控訴人らの請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。 第4 以上によれば、本件控訴は理由があり、原判決は取消しを免れないから、これを取り消した上で、被控訴人らの請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官久保田浩史 裁判官志賀勝 裁判官穗苅学
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