判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告は,原告に対し,750万円及びこれに対する平成14年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 被告(1) 原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 (3) 担保を条件とする仮執行免脱宣言第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア 原告(昭和28年11月3日生)は,昭和63年4月以降,国立米子工業高等専門学校(以下「米子高専」という。)において体育の教官として勤務し,平成3年1月1日付けで講師から助教授に昇格した。 イ 国は,学校教育法,国立学校設置法により米子高専を設置していた。 a(以下「a校長」という。)は,平成8年4月1日以降米子高専の校長であり,同校の管理運営を統括し,学生,教職員の指導監督を行う立場にあったが,平成15年3月31日,同校を退職した(乙24)。 ウ 本件口頭弁論終結後,独立行政法人国立高等専門学校機構法(平成15年法律第113号)の施行により,平成16年4月1日,独立行政法人国立高等専門学校機構が成立し,同機構が,国立高等専門学校の業務に係る国の事務を承継し,本件訴訟における被告の地位を承継した。 (2) 厳重注意処分a校長は,平成13年4月ころ,米子高専の女子生徒より,原告からセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)の被害を受けたとの投書があったことをきっかけとして,米子高専内にセクシュアル・ハラスメント防止対策委員会(以下「セクハラ委員会」という。)を設 クシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)の被害を受けたとの投書があったことをきっかけとして,米子高専内にセクシュアル・ハラスメント防止対策委員会(以下「セクハラ委員会」という。)を設置した上,調査等の結果,原告に対し,平成13年9月18日,口頭での厳重注意処分(以下「本件厳重注意処分」という。)をした。 (3) 教官会議におけるa校長の発言a校長は,平成14年3月6日,米子高専の教官会議(以下「本件教官会議」という。)において,本件厳重注意処分について言及した。 (4) 本件厳重注意処分に関する新聞報道等ア 新日本海新聞社は,a校長らの取材を経た上,平成14年5月18日付け朝刊において,「米子高専教官がセクハラ」「4年間にわたり,厳重注意」との見出しのもとに,次の内容の記事(以下「本件新聞記事」という。)を掲載した。 「国立米子高専‥‥の男性体育教官(48)が女子学生の体にまとわりつくような指導をするなどしたため,セクシュアルハラスメント‥‥の疑いがあるとして昨年10月,校長から厳重注意の処分が行われていたことが‥‥,明らかになった。 同校によると,昨年4月中旬,女子学生‥‥から,1997年から4年間にわたり,同教官が水着姿で屈伸運動をさせる,廊下で後ろから抱きすくめられたなどの行為が約6回あり,不快な思いをした ― との投書が届き,セクハラ疑惑が発覚したという。 女子学生は投書の中で,体育の担当教官を代えて再発防止に努めるよう学校側に強く要求。同校は,教官を女子学生のクラスの担当から外すとともに,5月には対策委員会を立ち上げ事実関係の調査に乗り出した。 教官は事実関係を否定したが『無意識にやったことで,不快に思われたとしたら,それは否定できない』と話したという。委員会は『セクハラとして疑う事実は残る』と判断し,口頭で 実関係の調査に乗り出した。 教官は事実関係を否定したが『無意識にやったことで,不快に思われたとしたら,それは否定できない』と話したという。委員会は『セクハラとして疑う事実は残る』と判断し,口頭での厳重注意処分とした。」イ 本件新聞記事を受け,a校長は,新日本海新聞社に対して抗議をした。 (5) 全校集会におけるa校長の発言a校長は,平成14年5月29日,米子高専での全校集会(以下「本件全校集会」という。)において,本件新聞記事について言及した。 2 原告の請求原告は,① 本件厳重注意処分,② 本件教官会議におけるa校長の発言,③ 新聞社の取材に対するa校長の説明,及び,本件新聞記事に対するa校長の抗議方法,④ 本件全校集会におけるa校長の発言は,いずれも原告の社会的評価を著しく低下させて名誉を毀損する不法行為であるなどと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料750万円及びこれに対する平成14年6月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 3 争点(1) 本件厳重注意処分の違法・不当性(争点(1))(2) 本件教官会議におけるa校長の発言の違法性(争点(2))(3) 本件新聞記事に関する新聞社に対するa校長の対応の違法性(争点(3))(4) 本件全校集会におけるa校長の発言の違法性(争点(4))(5) (1)ないし(4)が認められた場合における,原告の慰謝料額(争点(5))第3 当事者の主張 1 争点(1)(本件厳重注意処分の違法・不当性)について【原告の主張】(1) 本件厳重注意処分に至る経緯ア 平成13年5月10日の経緯(ア) 平成13年5月10日,原告は,a校長から,「米子高専の女子学生から原告によるセクハラの被害での投書が来ている。投書者の名前については言えないが 分に至る経緯ア 平成13年5月10日の経緯(ア) 平成13年5月10日,原告は,a校長から,「米子高専の女子学生から原告によるセクハラの被害での投書が来ている。投書者の名前については言えないが,投書した学生は,『原告に学校を退学させられた。』と言っている。」との説明を受けた。 原告は,平成10年ころ,窃盗や不純異性交遊を繰り返し,その後米子高専から転校した女子学生(以下「X女子学生」という。)に関わり,女子寮に立ち入って同女子学生の部屋で盗品を確認したことなどがあったが,a校長の説明に対し,同女子学生絡みの件であるかと尋ねたところ,a校長は顔色を変えるなどの反応を示した。 (イ) そこで,原告は,a校長に対して,投書の内容を尋ねたところ,a校長は,投書した学生は,① 体育の授業中,柔軟運動のときに胸を見られた,② 体育の水泳の授業のときに,生理日について聞かれた,③ 体育の水泳の授業のときに,「お姫さま抱っこ」をされたと言っている,と説明した。 これに対し,原告は,どの学生が投書したかについては分からなかったが,①,③については明確に否定し,②については,水泳の授業の度に生理を理由として授業を受けない女子学生については,個人的に聞くことはあるなどと説明し,また,上記のX女子学生の問題行動等についてa校長に詳しく説明したところ,a校長は,原告の話に納得するなどし,これはセクハラでもなんでもなく,投書した学生が原告に報復しようとしているのであり,投書した学生が嘘を付いているなどと述べた。 (ウ) 原告は,a校長に対し,投書した学生の氏名を明らかにするよう求めた。 イ 平成13年5月14日の経緯等(ア) 平成13年5月14日,原告は,a校長に面会を求め,投書した学生は誰で,どのようなセクハラ行為を原告がしたといっているのか,具体 を明らかにするよう求めた。 イ 平成13年5月14日の経緯等(ア) 平成13年5月14日,原告は,a校長に面会を求め,投書した学生は誰で,どのようなセクハラ行為を原告がしたといっているのか,具体的に全部説明するよう求めた。 これに対して,a校長は,投書した学生から事情を聞こうとしても逃げてしまって聞けない,原告ですら手こずった学生だから大変であるなどと述べた。 (イ) 同日午後,a校長は,原告に対し,原告の体育の授業担当を変更する旨告げ,原告はこれを了承しなかったが,同月15日から原告の授業担当は変更された。 (ウ) なお,この時期にa校長が原告に対するヒアリング(事情聴取)をするとの話は出ておらず,a校長から投書の内容について記載されたメモを手渡されたということも一切ない。また,米子高専内にあるセクハラの噂は,原告以外の教官についてのものである。 ウ 原告に対するヒアリングの経緯等(ア) 平成13年5月下旬,原告は,上記投書に関する経過を聞くため,a校長に面会を求めたところ,a校長は,「原告が女子寮に入ったかどうか分からないと他の教官が言っているので,第三者にその時の様子を聞いてもらおう。」と述べ,原告に対するヒアリングの日程を同月29日に調整した。 (イ) 同月29日,原告は,a校長とb庶務課長(当時。以下「b庶務課長」という。)に対し,X女子学生に関する経緯を説明したが,a校長やb庶務課長からは質問等はなく,原告が一方的に説明をしただけであった。 なお,a校長から,ヒアリングをする趣旨説明など全くなく,同校長が投書の内容を朗読したこともなく,原告は,投書の内容について弁明・反論のしようもなかった。 また,セクハラ委員会の設置についても全く説明されなかった。 (ウ) 同年6月11日,b庶務課長は,同年5月29日のヒアリ したこともなく,原告は,投書の内容について弁明・反論のしようもなかった。 また,セクハラ委員会の設置についても全く説明されなかった。 (ウ) 同年6月11日,b庶務課長は,同年5月29日のヒアリングの際のメモを持参して,原告と共に,内容の確認及び訂正等をしたが,その内容は,X女子学生の問題行動に関する件についてのみであった。 (エ) 同年6月18日,a校長は,原告に対し,ヒアリングで述べたことについて,「思い違い」や「新たに思い出したこと」があれば,校長宛に連絡してくださいとのメールを送信したが,そこには投書の具体的内容については何ら触れられていなかった。 (オ) 同年7月初旬に至って初めて,a校長は,原告に対し,投書した学生が,① 米子高専の廊下で原告に抱きつかれた,② 原告の頬へのキスを強要されたと訴えていると説明した。 エ 本件厳重注意処分等(ア) 平成13年8月29日,原告は,a校長から,突然,「処分せざるを得なくなったが,セクハラという処分ではなく,学生指導上の問題ということの処分である。」との説明を受けた。 (イ) そして,同年9月18日,本件厳重注意処分の言渡しがされたが,その際,c事務部長(当時。以下「c事務部長」という。)が疑わしきは罰するとして本件厳重注意処分を言い渡し,同席していたa校長やb庶務課長は一言も話をせず,a校長が「セクハラとして疑われる事実」を原告に示したこともなかった。 (ウ) なお,a校長は,新聞社に対しても,原告はセクハラで処分されたのではないと報告している。 (2) 本件厳重注意処分の手続の違法・不当性ア 本件厳重注意処分は,国家公務員法所定の懲戒処分ではないが,原告にとって,同法82条1項所定の懲戒処分としての「戒告」に限りなく近い重大な意味・効果・影響を有するものであり,同処分が 法・不当性ア 本件厳重注意処分は,国家公務員法所定の懲戒処分ではないが,原告にとって,同法82条1項所定の懲戒処分としての「戒告」に限りなく近い重大な意味・効果・影響を有するものであり,同処分が原告の人格権に与える影響は重大であるから,その手続は,慎重に進められなければならない。 イ この点,本件厳重注意処分に関してはセクハラ委員会が設けられたが,前記のとおり,原告にはセクハラ委員会の立上げがことさらに秘匿され,原告不在のまま関係者の調査が行われた。 ウ 原告は,強く要求したにもかかわらず,a校長から,被害申告者・被害の日時・態様等,セクハラの被害に関する具体的内容を知らされないまま,弁明・反論を求められており,また,関係者に対する調査は,原告不在のまま行われるなど,原告の弁明・反論権は実質的に無視されている。 そして,a校長は,原告の弁明について終始同調するような態度を示しながら,抜き打ち的・だまし討ち的に本件厳重注意処分に及んでいる。 エ また,被害申告者に対するヒアリングは個別に行うべきであるにもかかわらず,被告の主張によれば,2名の女子学生(以下,それぞれ「A女子学生」,「B女子学生」という。)に対するヒアリングにd講師(以下「d講師」という。)を同席させ,B女子学生に対するヒアリングには更にA女子学生を同席させるなどしている。 オ セクハラ委員会における委員自身,投書の内容や,本件厳重注意処分について後に教官会議で公表される予定であることを認識しておらず,また,a校長はセクハラ委員会に正しい報告をしていないなど,セクハラ委員会の運営自体,大きな問題がある。 カ このように,本件厳重注意処分の手続は極めて偏頗かつ不公正なものであって,違法・不当であることは明らかである。 (3) 本件厳重注意処分の処分理由の違法・不当性ア 本件厳 ,大きな問題がある。 カ このように,本件厳重注意処分の手続は極めて偏頗かつ不公正なものであって,違法・不当であることは明らかである。 (3) 本件厳重注意処分の処分理由の違法・不当性ア 本件厳重注意処分においては,原告によるセクハラ行為自体の事実認定はなされておらず,被告主張による「セクハラとして疑われる事実」自体も具体的に示されていない。 イ 提訴後,本件において被告が処分理由として主張している,原告が米子高専の廊下で女子学生に抱きついた件,及び,女子学生にキスを強要した件については,全くあり得ないものであり,また,原告の無断休講,その他のセクハラ疑惑,噂等も全くなく,さらに,原告は,以前に口頭での注意処分を受けたこともない。 ウ そもそも,本件は,「セクハラとして疑われた事実が残る」ことを処分理由とするものであるが,このことは,「調査によるもセクハラ事実は認定できないが,投書があった以上責任をとれ」ということと同義であり,何ら処分理由たり得ないものである。 エ また,原告は,a校長から,「処分はセクハラということの処分ではなく,学生指導上の問題ということの処分である」との説明を受けているが,同説明と上記処分理由との間に整合性がなく,このことは,本件厳重注意処分が,正当な処分理由がないのになされた政治的処分であることを示すものである。 オ したがって,本件厳重注意処分の処分理由は,明らかに違法・不当である。 【被告の主張】(1) 本件厳重注意処分に至る経緯ア 本件投書等(ア) 平成13年4月13日,a校長は,米子高専の5年生の女子学生2名が,原告からセクハラ被害を受けたとする匿名の本件投書を受けた。この投書は,2名の女子学生の供述をA女子学生の指導教官であるd講師がまとめたものであるが,A女子学生は,従前,体育の授業で原告からセ が,原告からセクハラ被害を受けたとする匿名の本件投書を受けた。この投書は,2名の女子学生の供述をA女子学生の指導教官であるd講師がまとめたものであるが,A女子学生は,従前,体育の授業で原告からセクハラ被害を受けたが,5年生になって再び原告が体育の授業の担当になったので,体育の授業を他の教員に変更してもらいたいなどと訴えていた。 (イ) 本件投書におけるA女子学生に関する部分は,次のとおりであった。 a 平成9年時(1年生時),原告により,① 開脚柔軟体操の試験で体を密着させて背中を押された,② 水泳の授業を見学していたとき,横抱きにしてプールに落とされそうになった,③ 生理中で水泳の授業を休むとき,生理は何日目かと男子学生の前で聞かれた,④ 体育の授業の立位体前屈時において,胸や下着が見える位置に立たれた,⑤ 授業以外のときに,携帯電話の番号を聞かれた。 b 平成10年か平成11年時,友人と米子高専の廊下を歩いているとき,原告に後ろから抱きつかれた。 c 平成12年時,同年6月の球技大会のとき,次の競技を待つ間に,原告が手を掴んでここにキスしろと頬に引き寄せた。 (ウ) 本件投書におけるB女子学生に関する部分は,次のとおりであった。 a 友人であるX女子学生が転校した平成10年6月以降,原告は,自分や友人を研究室に呼んでプライベートな質問を繰り返し,脅迫的な言動もした。 b 原告は,体育の授業時間中に,自分を含む2,3人の女子学生に強制的に性教育用のビデオを見せ,男性関係を質問した。 (エ) a校長は,本件投書を受け,事実関係を確認するために,e教務主事(以下「e教務主事」という。)に依頼して学校内の噂等を調べた結果,複数の教官から原告のセクハラ行為の噂が学校内に広まっているという情報を得た。 イ 平成13年5月10日の経緯等 ために,e教務主事(以下「e教務主事」という。)に依頼して学校内の噂等を調べた結果,複数の教官から原告のセクハラ行為の噂が学校内に広まっているという情報を得た。 イ 平成13年5月10日の経緯等(ア) 平成13年4月26日ころ,a校長は,本件投書に対して,米子高専としての正規の手続を踏んだ対処が必要であると判断し,慎重を期すため,d講師に対し,投書した学生の原告を追及する意思が固いかどうかの確認と,保護者の了解を得ることを要請した。 そして,同年5月7日,d講師は,a校長に対し,投書した学生は,匿名を強く要望しながらも,あくまで闘う決意であること及び保護者の同意を得たことを報告した。 (イ) 同年5月10日,a校長は,原告に対し,原告からセクハラ被害を受けたという投書が来ている旨を口頭で伝えるとともに,原告と投書した学生を離す必要があると判断したことから,原告の同意を得た上で,e教務主事に原告の授業担当を変更するよう指示した。 ウ 第1回セクハラ委員会の開催等(ア) 平成13年5月11日,a校長は,「米子工業高等専門学校におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規則」5条による防止対策委員会の委員6名を選任し,校長を委員長とするセクシュアル・ハラスメント防止対策委員会(セクハラ委員会)を発足させた。 (イ) 同月14日,第1回セクハラ委員会が開催され,原告,A女子学生及びB女子学生に対するヒアリングを行うこと,投書した学生を匿名で扱い,氏名を明かさないことなどが決められた。 (ウ) 同日ころ,a校長は,原告に対し,同月11日にセクハラ委員会を設置したこと,第1回セクハラ委員会で,原告と投書者の両者に対するヒアリングを行うことになった旨を伝えた。 また,同日ころ,a校長は,原告に対し,本件投書において指摘された原告のセ セクハラ委員会を設置したこと,第1回セクハラ委員会で,原告と投書者の両者に対するヒアリングを行うことになった旨を伝えた。 また,同日ころ,a校長は,原告に対し,本件投書において指摘された原告のセクハラ行為の要点を記したメモを渡し,後日行うヒアリングに備えておくよう指示した。その際,投書者は匿名とする旨も伝えた。 エ 原告及びf助教授に対するヒアリング及び第2回セクハラ委員会等(ア) 平成13年5月29日,a校長とb庶務課長は,原告に対するヒアリングを行った。 a校長は,ヒアリングの冒頭において,原告に対し,セクハラ委員会を設置したこと,セクハラ委員会は非公開であること,セクハラ委員会の決定に基づいてヒアリングを行うことを伝えた後,本件投書において指摘された原告のセクハラ行為の内容を全て朗読した上,原告の弁明・反論を聴取した。 そして,原告は,柔軟体操の補助の件,生理の詳細を聞いた件,B女子学生に対する指導の件については事実を認めた上弁明したが,他の行為については否認し又は記憶がないと主張した。 (イ) その後,b庶務課長は,a校長から原告に対するヒアリングの文書化を依頼されたことから,原告と共に,ヒアリングにおいて作成していたメモの内容に聞き漏れ,聞き違いがないかを確認した。 (ウ) 同年6月初旬,a校長は,原告がキスを強要した件について,目撃者とされるf助教授(以下「f助教授」という。)に対し,そのような事実があったかどうかを尋ねたところ,f助教授は本件投書に書かれているようなことはなかった旨答えたが,その返答は要領を得ないものであった。そこで,a校長がこれと似たようなことがあったかどうか尋ねたところ,f助教授は,似たようなことはあったが,誤解を受けるといけないので,自分の見解は言いたくない旨述べた。 (エ) 同月4日,第 った。そこで,a校長がこれと似たようなことがあったかどうか尋ねたところ,f助教授は,似たようなことはあったが,誤解を受けるといけないので,自分の見解は言いたくない旨述べた。 (エ) 同月4日,第2回セクハラ委員会が開催され,a校長が原告に対するヒアリングの結果を報告し,原告の弁明内容について検討された。 オ 女子学生及びg講師に対するヒアリング及び第3回セクハラ委員会等(ア) 平成13年6月18日,a校長は,A女子学生に対するヒアリングを実施するに先立って,原告に対し,これまでの弁明に思い違いがないかどうか,本件投書において指摘された原告のセクハラ行為の概要を列記した電子メールで確認を求めたが,原告は,校長に対し口頭で,変更する必要はない旨連絡した。 (イ) 同日,a校長とe教務主事は,d講師同席の下で,A女子学生に対するヒアリングを行ったところ,A女子学生は本件投書とほぼ同じ内容のことを述べた。特に,キスを強要されたとの件については具体的に,年月日,態様等を特定できるものであった。 (ウ) 同年6月下旬,a校長は,原告が廊下で抱きついた件の目撃者とされるg講師に対し,そのような事実があったかどうかを尋ねたところ,g講師は,平成11年6月上旬,原告がこれと似たような行為をしたのを見たと述べた。それは,g講師が,たまたま米子高専の学生課に向かう廊下を歩いていると,原告が,前を並んで歩いていた女子学生の1人に後ろから近づき,両手を肩に置いて,体を密着させるようにした,そして,短時間で体を離し,「廊下を大声で話していては駄目じゃないか」というようなことを言って,学生課に入っていった,自分としては高等教育機関としてはありえない行為であると感じた,というものであった。 (エ) 同年7月11日,a校長とe教務主事は,d講師及びA女子学生同席の うなことを言って,学生課に入っていった,自分としては高等教育機関としてはありえない行為であると感じた,というものであった。 (エ) 同年7月11日,a校長とe教務主事は,d講師及びA女子学生同席の下で,B女子学生に対するヒアリングを行ったところ,B女子学生も本件投書とほぼ同じことを述べた。 (オ) 同年7月24日,第3回セクハラ委員会が開催され,a校長がA女子学生及びB女子学生に対するヒアリングの結果等を報告した後,委員により原告の処分について審議されたが,その結果は,次のとおりである。 a 投書した学生は,本件投書の当初から氏名の秘匿を強く望んでおり,ヒアリング段階においては,A女子学生は,投書した事実を原告に知られると原告から報復されるとして恐れ,同級生等への調査をしないよう強く要望したことから,女子学生の秘密保護のためには,これ以上の事実調査は困難であり,したがって,これまでの調査結果を踏まえて判断する必要がある。 b A女子学生に対する,前記平成9年時の①の行為(柔軟体操の補助の件)及び③の行為(生理の詳細を聞いた件)は,原告による体育の授業に関するものであるが,原告の弁明のとおりであるとしても,現在ではセクハラ行為とされるものである。しかし,それらの行われた時期が,「文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」の施行以前であり,セクハラ防止対策について,教職員の啓蒙を十分に行っていなかった時期のことであることを勘案する必要がある。 同④の行為(立位体前屈の際に前に立った件)は,体育の授業内容については一定限度で担当教官の自由に任されており,学生の前に立つことや体に触れることもやむを得ない場合や指導上必要な場合があると考えられ,セクハラ行為であるとは認められない。同②の行為(「お姫さま抱っこ」の件)は,校 担当教官の自由に任されており,学生の前に立つことや体に触れることもやむを得ない場合や指導上必要な場合があると考えられ,セクハラ行為であるとは認められない。同②の行為(「お姫さま抱っこ」の件)は,校内で噂となっているものであるが,それを直接目撃したという者は確認できない。同⑤の行為(携帯電話番号を聞いた件)については,被害者が匿名を強く希望しているため,原告に確かめても,電話番号を聞いた相手が分からず,回答は得られない。 A女子学生に対する,廊下で抱きついた件,及び,キスを強要した件については,原告による授業以外に関するものであるが,前者については,g講師が似たような行為があるのを見た旨述べていること,後者については,f助教授が何時とは特定できないが類似した行為があった旨述べていることから,セクハラと疑われる事実であると認められる。 c B女子学生については,友人であるX女子学生が転校した後の,学級担任であった原告による生活指導における言動を指摘しているものと考えられるが,原告の言動には行きすぎた面があったとも考えられるものの,動機の面では正当な教育活動であったものと判断されることから,セクハラ行為であるとまでは認定できない。 d セクハラ委員会は,原告に対する措置としては,以上のとおりの検討,及び,原告が平成9年に口頭注意処分を受けた矯正措置歴を考慮し,口頭での厳重注意が相当であると判断した。 カ 本件厳重注意処分の言渡し及び第4回セクハラ委員会(ア) 平成13年9月18日,a校長は,c事務部長及びb庶務課長同席の下で,原告に対し,口頭での厳重注意を言い渡し(本件厳重注意処分),今後,セクハラと疑われるような行為は厳に慎むよう指導した。 (イ) 同年10月22日,第4回セクハラ委員会が開催され,a校長が,同年9月18日に原 口頭での厳重注意を言い渡し(本件厳重注意処分),今後,セクハラと疑われるような行為は厳に慎むよう指導した。 (イ) 同年10月22日,第4回セクハラ委員会が開催され,a校長が,同年9月18日に原告に対して口頭での厳重注意を言い渡した旨を報告した。 (2) 本件厳重注意処分の手続の違法・不当性についてア 厳重注意処分とは,指揮監督の権限を有する上司が,部下職員の職務履行の改善向上に資する制裁的措置を伴わない矯正措置として講ずるものであり,処分それ自体により直接に不利益な効果が付与されるということはないから,本件厳重注意処分が,懲戒処分である戒告に限りなく近いということはない。 イ 前記のように,a校長は,①平成13年5月10日,原告に対し,女子学生から原告にセクハラ被害を受けたという投書が来ている旨を口頭で説明し,原告に対して授業担当を変更することの了解を求め,その際,原告のセクハラ行為の内容に関する質問については,セクハラ委員会を発足させてから詳しい説明をする旨伝えており,② 同月14日又は15日,原告に対し,同日11日にセクハラ委員会を設置したこと,同月14日に開催した第1回セクハラ委員会で,原告と投書者の両者に対するヒアリングを行うことになった旨を伝え,③ 原告に対して本件投書で指摘されたセクハラ行為の要点を記したメモを渡し,後日のヒアリングに備えておくよう指示し,④ 同月29日,b庶務課長の同席の下で行われた原告に対するヒアリングにおいて,冒頭に,非公開のセクハラ委員会を設置して,その決定に基づいてヒアリングを行うことを伝えた上,本件投書で指摘された原告のセクハラ行為の全てを朗読したうえ,原告から弁明・反論を聴取するなどしたものである。 なお,投書した学生の氏名を明らかにしないことは,投書した学生からの強い要請があったことに 投書で指摘された原告のセクハラ行為の全てを朗読したうえ,原告から弁明・反論を聴取するなどしたものである。 なお,投書した学生の氏名を明らかにしないことは,投書した学生からの強い要請があったことにもよるものであるが,被害者のプライバシー保護の観点からも当然の措置であるし,投書した学生が被害にあった具体的な日時については投書した学生自身が特定しておらず,かつ,本件投書において指摘された行為は非日常的な事柄であるから,具体的な日時まで示されなければ弁明できないというものではなく,実際,原告は,原告に対するヒアリングの際,本件投書において指摘された全ての行為について弁明・反論しているものである。 さらに,原告不在のまま,投書した学生等に対するヒアリングを実施したことは,被害者のプライバシー保護及びありのままの事実を聴取できるという観点からも合理性がある。 ウ したがって,本件厳重注意処分の手続は適法である。 (3) 本件厳重注意処分の処分理由の適法性ア 米子高専は,平成11年4月に学生相談室を発足させ,同月1日から実施された「文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」を受けて,a校長は,教官会議においてセクハラ防止の意義を説明するなどし,また,平成12年4月には「米子工業高等専門学校におけるセクシュアルハラスメント防止等に関する規則」を制定するなどして,教官のセクハラ防止に対する意識の向上に努めてきた。 イ このような状況において,原告の,A女子学生に対して,廊下で抱きついた行為,及び,キスを強要した行為は,高等教育に携わる教官としてより高い倫理観の下に学生を指導する立場にある教官の学生に対する行為であって,セクハラ行為であるとまでは認定できないが,セクハラと疑われる行為であると認められたことから,学生の教育環境を配慮す してより高い倫理観の下に学生を指導する立場にある教官の学生に対する行為であって,セクハラ行為であるとまでは認定できないが,セクハラと疑われる行為であると認められたことから,学生の教育環境を配慮する義務を負う責任者であり,かつ,原告に対する指揮監督権限を有する校長が,原告に対し,矯正措置である「口頭厳重注意」(本件厳重注意処分)を行ったものである。 そして,原告は,平成9年に「口頭注意」を受けており,本件においては,最も軽い矯正措置とするとしても,一段重い「口頭厳重注意」が相当であるから,本件厳重注意処分の処分理由には合理性がある。 なお,a校長は,本件厳重注意処分を言い渡した際,原告に対し,原告が行ったセクハラと疑われる事実について具体的に告げており,他方,処分はセクハラということの処分ではなく,学生指導上の問題ということの処分である旨説明したことはない。 ウ したがって,本件厳重注意処分の処分理由は適法である。 2 争点(2)(本件教官会議におけるa校長の発言の違法性)について【原告の主張】本件教官会議において,a校長は,「体育教官にセクハラ行為があり,同教官を厳重注意処分とした」と報告したが,この報告は,80名以上の出席者のうち大半が被処分者を原告と特定できるものであると同時に,その内容は,本件厳重注意処分における処分理由とは明らかに異なり,原告によるセクハラ行為の存在を断定する内容であり,公然と虚偽の事実を報告し,原告の名誉を著しく毀損した。 【被告の主張】a校長は,本件教官会議の議事終了後の校長談話の中で,本件厳重注意処分について取り上げたが(したがって,報告事項として取り上げたものではない。),その内容は平成13年度の総括の一部として本件投書に関する対応について説明し,同種の問題の発生防止に向けて,教官に対して注意を いて取り上げたが(したがって,報告事項として取り上げたものではない。),その内容は平成13年度の総括の一部として本件投書に関する対応について説明し,同種の問題の発生防止に向けて,教官に対して注意を喚起したものであって,原告によるセクハラ行為の存在を断定したものではない。 したがって,原告の主張は,その前提を欠いており,失当である。 3 争点(3)(本件新聞記事に関する新聞社に対するa校長の対応の違法性)について【原告の主張】本件新聞記事により,原告の社会的評価は著しく低下して名誉が毀損されたが,これは,a校長が,① 違法・不当な本件厳重注意処分をしたこと,② 本件教官会議で事実と異なる処分理由を報告したこと,③ 新聞社の取材に対し,事実と異なる処分理由を説明したことに起因する。 本件新聞記事は,a校長の違法な先行行為によるものであるから,処分者であるa校長には当然,新聞社に対して記事内容の訂正を求め,原告の地位を回復する義務があるところ,a校長は,いったんは原告の抗議を受け,記事内容の訂正申入れを確約したものの,結局は正式な抗議(公印を押捺した抗議文の送付)をなさず,原告の名誉回復のための必要最小限の措置すら採らなかった。 a校長のかかる新聞社に対する対応は,原告に対する不法行為に当たるというべきである。 【被告の主張】(1) a校長は,新日本海新聞社を含む5社の取材に対し,いずれも同様の説明を行った。また,各記者に対し,原告本人への取材なしに記事にしないよう申し入れた。 平成14年5月18日,新日本海新聞社のみが本件新聞記事を報道したが,見出しの「米子高専教官がセクハラ」,「4年間にわたり,厳重注意」,記事中の「セクハラと疑う事実」と表現されている部分は,a校長の説明と異なっている。 (2) 同日,米子高専の臨時主事会議にお たが,見出しの「米子高専教官がセクハラ」,「4年間にわたり,厳重注意」,記事中の「セクハラと疑う事実」と表現されている部分は,a校長の説明と異なっている。 (2) 同日,米子高専の臨時主事会議において,本件新聞記事には見出し及び記事本文中に正確を欠く表現があることから,新日本海新聞社に対して抗議文を出すことと決定され,同月20日,a校長は,米子高専を訪れた新日本海新聞社の西部本社総局長兼編集局長らに対し,本件新聞記事の表現について抗議し,謝罪文の掲載を要求するべく,校長印を押捺した抗議文を手交しようとしたが,同編集局長から,正式な抗議文を受け取ると,新聞社としても全力をあげて追加調査をしなければならない,米子高専の抗議の趣旨は十分理解したので,正式な抗議文は出さないほうが良いのではないか,との申入れがあった。 そして,a校長は,原告のこれまでの行動や噂等から,新聞社による詳細な追加調査によって原告の受ける打撃は致命的ともなりかねないと判断し,校長印を押捺していない抗議文を手交した。 (3) このように,a校長は,事実と異なる処分理由は説明しておらず,また,原告の名誉回復のための相当な措置を採っているのであるから,本件新聞記事に対する抗議方法は何ら違法ではない。 4 争点(4)(本件全校集会におけるa校長の発言の違法性)について【原告の主張】a校長は,全学生・教官が出席する本件全校集会において,「事実関係はセクハラ報道(本件新聞記事)のとおり」であると報告し,原告にセクハラ行為があった旨断定して虚偽の事実を報告し,重ねて原告の名誉を著しく毀損した。 【被告の主張】本件新聞記事が掲載された後,e教務主事から,a校長に対し,本件新聞記事によって学生,特に女子学生の間に不安が広がり,放置しておけないので,なんとか対応してほしいとの要望が した。 【被告の主張】本件新聞記事が掲載された後,e教務主事から,a校長に対し,本件新聞記事によって学生,特に女子学生の間に不安が広がり,放置しておけないので,なんとか対応してほしいとの要望があったため,a校長は,全校集会において,セクハラ一般について理解してもらうための話をすることとした。 そして,本件全校集会において,a校長は,本件新聞記事があったことについて触れはしたものの,本件新聞記事の具体的な内容には一切触れず,「文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程の制定について(通知)」の別紙「セクシュアル・ハラスメントの防止等のため文部省職員が認識すべき事項についての指針」に沿って,特に「セクシュアル・ハラスメントになりうる言動」を中心に事例を紹介し,① 個々人によりセクハラの受け止め方が相違すること,② もしセクハラを受けたと思ったら,学生相談室員に相談すれば学校がすぐに対応すること,③ セクハラの加害者といわれても,本人が反省している場合は差別的な扱いをしないことなどを説明するなどしたものである。 したがって,a校長において,事実関係はセクハラ報道(本件新聞記事)のとおりであるとか,原告にセクハラ行為があった旨断定したということはない。 5 争点(5)((1)ないし(4)が認められた場合における,原告の慰謝料額)について【原告の主張】原告は,上記1ないし4の一連の不法行為により,教職者としての名誉を著しく毀損され,世間・同僚・学生・父兄等から「セクハラ教官」との事実と異なるらく印を押された。 そして,これにより,事実上内定していた教授昇格も以来棚上げにされてしまっている。すなわち,原告は,平成13年4月23日,a校長から,同年7月1日付けで教授に推薦するので研究業績書を提出するよう求められ,原告はこれ り,事実上内定していた教授昇格も以来棚上げにされてしまっている。すなわち,原告は,平成13年4月23日,a校長から,同年7月1日付けで教授に推薦するので研究業績書を提出するよう求められ,原告はこれを同年5月8日a校長に提出したところ,a校長は一瞥したうえ,ワープロ打ちして改めて提出するよう求めたのであるが,同月10日に至り,原告に対してセクハラの疑いがかけられているので,教授昇進は同問題の結着後としたい旨の意向が伝えられ,その後,研究業績報告書を提出する機会を失っている。 これらによる原告の重大な精神的苦痛は,少なくとも750万円をもって慰謝されなければならず,なお,原告が出捐を余儀なくされる本件弁護士費用については,慰謝料額算定にあたり実質上考慮されるべきである。 【被告の主張】原告の主張は否認ないし争う。 平成13年当時の原告の評価は,公表論文(研究業績)は十分であったものの,平成9年度の校務分掌で学生部の筆頭主事補に選ばれながら,必要な時に学校に出勤しておらず,職務不適合という理由で1年後,その任を解かれており,校務(主事補歴等)の指導歴がやや不足していたこと,また,原告は,平成9年に口頭注意処分の矯正措置歴を有していたことから,a校長は,平成13年5月10日,同年7月1日付けの教授昇任の選考申請を行うに当たって,原告について不相当と判断したものであって,この判断は原告に対するセクハラの疑いとは全く関係がなく,原告の教授昇格が事実上内定していたということもない。 第4 証拠本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する(なお,以下「乙A」を「乙」と表記する。)。 第5 当裁判所の判断 1 前記前提事実(第2の1)に証拠(甲1,4,15,16,17,乙2~14,16~19,乙21の1~5,乙23~30,証人g,同b なお,以下「乙A」を「乙」と表記する。)。 第5 当裁判所の判断 1 前記前提事実(第2の1)に証拠(甲1,4,15,16,17,乙2~14,16~19,乙21の1~5,乙23~30,証人g,同b,同c,同a,原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (1) 平成13年当時の米子高専におけるセクハラ防止対策等ア 文部省(現文部科学省)は,平成11年3月30日付け(同年4月1日実施)で,「文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」を定めている(乙14)。 同規程には,「職員は,この規程及び文部省大臣官房人事課長が定める指針に従い,セクシュアル・ハラスメントをしないように注意しなければならない。」(3条),「国立学校等の長は,当該国立学校等の職員に対し,この規程の周知徹底を図らなければならない。」(5条1項),「セクシュアル・ハラスメントに関する苦情の申出及び相談(以下「苦情相談」という。)が職員からなされた場合に対応するため,‥‥各国立学校等に苦情相談を受ける職員又は苦情相談に対応する委員会等(以下「相談員等」という。)を設ける等必要な措置を講ずるものとする。」(6条1項),「相談員等は,苦情相談に係る問題の事実関係の確認及び当該苦情相談に係る当事者に対する指導・助言等により,当該問題を適切かつ迅速に解決するよう努めなければならない。‥‥」(7条1項),「相談員等は,苦情相談への対応に当たっては,関係者のプライバシーや名誉その他の人権を尊重するとともに,知り得た秘密を他に漏らしてはならない。」(7条2項)等の規定がある(乙14)。 イ 文部省は,平成11年3月30日付けで,各国立学校長等に宛て,前記規程が定められたことに伴い,各機関においてもセクハラの防止等に積極的に取り組むことを要請する旨の 項)等の規定がある(乙14)。 イ 文部省は,平成11年3月30日付けで,各国立学校長等に宛て,前記規程が定められたことに伴い,各機関においてもセクハラの防止等に積極的に取り組むことを要請する旨の通知をし,併せて,前記規程3条及び7条について,次のような指針を定めた(乙17)。 (ア) 3条の指針(「セクシュアル・ハラスメントの防止等のために文部省職員が認識すべき事項についての指針」)は,① 性に関する言動に対する受け止め方には個人間や男女間,その人物の立場等により差があり,セクハラに当たるか否かについては,相手の判断が重要であるが,セクハラであるか否かについて,相手からいつも意思表示があるとは限らないこと,② 身体に不必要に接触することは,セクハラにあたり得ること等を内容としている。 (イ) 7条の指針(「セクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針」)は,苦情相談を受ける際には,原則として2人の職員で対応し,その際,同性の職員が同席するよう努めること等を内容としている。 ウ 米子高専は,学生の定員1000名中,約200名が女子学生であり,15歳から20歳まで(1年生から5年生まで)の多感な学生の教育の難しさから,セクハラ防止については特に留意し,他方において,教官の定員77名中,女性教官は4名であり,とりわけ女子学生に対する生活指導の手薄さが危惧されていた。 そこで,米子高専においては,平成11年4月に,試行措置として学生相談室を発足させ,上記「文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」を受けて,a校長は,教官会議においてセクハラ防止の意義を説明し,また,外部講師を招き,セクハラ防止の講演会を実施してきた。 エ さらに,平成12年4月,米子高専において,「米子工業高等 関する規程」を受けて,a校長は,教官会議においてセクハラ防止の意義を説明し,また,外部講師を招き,セクハラ防止の講演会を実施してきた。 エ さらに,平成12年4月,米子高専において,「米子工業高等専門学校におけるセクシュアル・ハラスメント防止等に関する規則」(乙9)が制定され(同月1日施行),校内におけるセクハラ防止のための態勢が整えられ,a校長は,教官会議,主任会議等において,その規則の趣旨を説明し,教官のセクハラ防止に対する意識の向上に努めてきた。 なお,上記規則には,次の規定がある。 (防止対策委員会)第5条本校に,セクシュアル・ハラスメント防止対策委員会を置き,校長が指名する者をもって組織する。 2 委員会はセクシュアル・ハラスメントの防止及び対策に関し,相談員に対して必要な助言,指導を行うとともに,相談員からの報告に基づき必要な措置について検討する。 3 委員会の委員長は,校長とする。 (2) 本件投書等ア 平成13年4月13日,a校長は,学生相談室長であるh教授(以下「h室長」という。)から,米子高専の女子学生から原告にセクハラ被害を受けているという投書がきているので善処してほしいとの相談を受け,要旨,以下の内容の投書(乙2,3。ただし,「A女子学生」,「B女子学生」の記載は後に加えられたものである。以下「本件投書」という。)を手渡された。 (ア) A女子学生に関する投書a 原告から次のようなセクハラ被害を受けた。 ① 1年生の水泳の時間に実施された,開脚しての柔軟テストに際して,原告が補助として,両手首をつかんで後ろから身体全体を密着させて押してきた。「やめて下さい」とか「痛い」などと言ったが,原告は聞き入れてくれなかった。 ② 水泳の授業を見学していた際,急に「お姫さま抱っこ」で抱きかかえられてプールに落とされそ 体全体を密着させて押してきた。「やめて下さい」とか「痛い」などと言ったが,原告は聞き入れてくれなかった。 ② 水泳の授業を見学していた際,急に「お姫さま抱っこ」で抱きかかえられてプールに落とされそうになった。 ③ 水泳の授業を見学するに当たり,原告には事前に生理中であるため見学することを連絡しておいたにもかかわらず,授業開始後に,男子学生も含むクラス全員の前で見学理由を再度聞かれ,見学の理由は生理であると答えたところ,原告から何日目であるかと聞かれ,答えさせられた。 ④ 体育の授業で自分を含む女子学生が立位体前屈をする際,原告は,いつも,体操服のV首部分から胸や下着が見える,学生の前の位置に立つ。 ⑤ 原告から,授業以外のときに携帯電話の番号を聞かれた。 ⑥ 2年生か3年生のとき,廊下で友人と話しながら歩いていた際,原告が突然,後ろから抱きついてきた。 周りにいた友人はあ然としていたが何も言えなかった。 ⑦ 4年生の6月の球技大会の時,他の競技を見学していたところ,原告がやってきて急に手を掴み,「ここにキスしろ」と原告の頬を指さして言った。この時は,f助教授が注意してくれたため,原告はそれ以上のことは止めた。 b 今年になって,自分は,再び原告が担当する体育の授業を受けることになったが,1年間耐えられる自信がなく,また,これから入学してくる学生のためにも改善されるべきである。 (イ) B女子学生に関する投書原告から次のようなセクハラ被害を受けた。 ① 2年生の時,友人のX女子学生が原告に米子高専を辞めさせられると言った後に同校を退学したが,それ以降,原告は,B女子学生たちを個人的に研究室に呼んで,プライベートな質問を繰り返し聞くようになり,また,「B女子学生が悪いことをしたことも知っており,B女子学生も退学させる。」などと脅迫的なことを 以降,原告は,B女子学生たちを個人的に研究室に呼んで,プライベートな質問を繰り返し聞くようになり,また,「B女子学生が悪いことをしたことも知っており,B女子学生も退学させる。」などと脅迫的なことを言われた。 ② 体育の授業の際,B女子学生を含めた2,3人の女子学生に対し,強制的に性教育用のビデオを見せられ,男性関係について深く質問された。 イ a校長は,本件投書が2名の女子学生によるものと読み取り,本件投書を受け取ったときの状況について,h室長に尋ねたところ,同室長は,d講師から手渡されたものであるなどと述べた。 そこで,a校長は,d講師を呼び,事情を尋ねたところ,投書したのは2名の女子学生であり,氏名も分かっており,連絡もつくとのことであった。 ウ a校長は,投書の内容からA女子学生は5年生であることが分かり,原告が担当している5年生の保健体育の授業は物質工学科の授業であるので,A女子学生は物質工学科の5年生の女子学生であると判断した。 そして,a校長は,e教務主事を呼び,本件投書を見せた上で,学生間に原告のセクハラ行為の噂が立っていないかどうか,調べるよう依頼し,h室長とともに米子高専のセクハラ防止対策の相談員であったb庶務課長を呼び,本件投書を見せた上,当面a校長が対応する旨伝えた。 数日後,a校長は,e教務主事から,原告のセクハラ行為が女子学生の間で深刻な問題になっているとの報告を受け,「米子工業高等専門学校におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規則」(乙9)に基づき,セクハラ委員会を設置して対応することとした。 エ 同年4月26日ころ,a校長は,d講師から問題の進捗状況を尋ねられたので,セクハラ委員会を設置して対応することにしたことを告げた上,同講師に対し,投書した学生に問題の解決までやり抜く覚悟があるかどうか確 4月26日ころ,a校長は,d講師から問題の進捗状況を尋ねられたので,セクハラ委員会を設置して対応することにしたことを告げた上,同講師に対し,投書した学生に問題の解決までやり抜く覚悟があるかどうか確認すること,及び,保護者からの了解を得ることを指示した。 なお,この時,d講師は,本件投書は,学生では文章に取りまとめることができないので,女子学生の言い分をd講師が取りまとめて文章化したものであるとの説明をした。 オ 同年5月7日,d講師は,a校長に対し,投書した学生も問題の解決までやり抜く覚悟であり,保護者の了解も得たことを報告した。 (3) 第1回セクハラ委員会までア 同年5月8日,a校長は,h室長らから,本件投書があってから一月近くになるが,何の対応もされていないのは困る,少なくとも原告の授業担当を交代すべきであると強く要望されるなどした。 そこで,a校長は,同月9日の主事会議終了後,c事務部長と協議の上,早急にセクハラ委員会を設置することを決定した。 そして,a校長とc事務部長は,b庶務課長及びe教務主事と相談の上,この4人のほかに,年長の教官であるi物質工学科教授,及び,米子高専の女性職員の中で女子学生と接触の多い看護師j技官(以下「j技官」という。)をセクハラ委員会の委員とすることとした。 イ 同年5月10日ころ,a校長は,原告に対し,女子学生からセクハラ被害で訴えられていること等を伝え,また,原告の授業担当を交代する必要があると判断し,e教務主事に対して,原告の授業担当の変更を指示した。 ウ 同年5月14日午前10時45分,第1回セクハラ委員会が開催された(乙10)。 同委員会において,a校長は,委員会を非公開とし,委員名も公表しないことを告げた上,本件投書の写しを各委員に配布して,今回の事象が発生した経緯を報告し,また,秘 ハラ委員会が開催された(乙10)。 同委員会において,a校長は,委員会を非公開とし,委員名も公表しないことを告げた上,本件投書の写しを各委員に配布して,今回の事象が発生した経緯を報告し,また,秘密保持のため,投書者の氏名は委員及び原告に対して匿名として扱うこと,原告の授業担当を変更した旨を説明した。 そして,今後,原告と投書者に対するヒアリングをa校長と委員1名で早急に実施することとした。 (4) 第2回セクハラ委員会までア 同年5月29日の午前10時から午前11時15分まで,a校長及びb庶務課長は,原告に対するヒアリングを行い,冒頭において,セクハラ委員会を設置したこと等について説明した上,本件投書中で女子学生がセクハラ行為と訴えている1つ1つにつき読み上げた上で,原告の弁明・反論を徴した(なお,本件投書中,f助教授の名前が出てくる部分は読み上げなかった。)。 これに対し,原告は,次のように弁明し,自分としては,授業に当たっては男女の別なく,厳しく実技指導を行っており,学級指導においては学生の将来を考えて指導してきており,セクハラを行うような意図は全くないと述べた(乙4,6,28)。 (ア) A女子学生についての前記2ア(ア)①の行為(柔軟体操の補助の件)については,水泳の見学者に対し,プールサイドで柔軟テストを行ったことはあるが,水着の者に対して行ったことはない。柔軟運動は,体育の教官なので,指導として体に接触することはある(なお,原告は,この時,足を開き,後ろから相手の手首を握り,体を密着して押す仕草を示した。)。 (イ) 同②の行為(「お姫さま抱っこ」の件)については,絶対にしていない。 (ウ) 同③の行為(生理の詳細を聞いたとの件)については,何回も体育の授業を休む学生に対しては,「生理か。」などと聞いたことはあるが,見 為(「お姫さま抱っこ」の件)については,絶対にしていない。 (ウ) 同③の行為(生理の詳細を聞いたとの件)については,何回も体育の授業を休む学生に対しては,「生理か。」などと聞いたことはあるが,見学者の中には正当な理由がないにもかかわらず,化粧が落ちるとか,汗が出る等色々な理由をつけて休む学生がおり,皆の前で理由を聞くのも必要と思う(乙28)。 (エ) 同⑤の行為(携帯電話番号を聞いた件)については,絶対にしていない。 (オ) 同⑥の行為(廊下で抱きついた件)については,絶対にしていない。 (カ) 同⑦の行為(キスを強要した件)については,そのようなことをした記憶は全くない。 (キ) B女子学生についての前記2ア(イ)①の行為(脅迫的な言辞をした等の件)については,X女子学生には窃盗癖と不純異性交遊という問題があり,両親からの,米子高専の男子学生と外泊してしまうから転校させたいという要望により転校したものであって,原告には学生を退学させることは出来ないし,辞めさせるぞと言ったことはない。 X女子学生の退学後,X女子学生との万引き等に関わっていると思われる女子学生を呼び出して矯正指導を行ったことはある。 (ク) 同②の行為(性教育用のビデオを強制的に見せた等の件)について,性教育の教材用ビデオは保健の授業として見せているが,2,3人の女子を呼んで強制的に見せたことは絶対にない。また,万引き等を行っている女子学生に対して,交際相手やアルバイトのことを聞いたりしながら事実関係をつかみ,本人が反省してくれればいいという気持ちから指導したことはある。 イ b庶務課長は,原告に対するヒアリングの際に自らメモを採り(乙28),後日,このメモをもとに,原告ヒアリングメモ(乙4)を作成した。 ウ a校長は,原告が,A女子学生についての前記2ア(ア)⑦ 。 イ b庶務課長は,原告に対するヒアリングの際に自らメモを採り(乙28),後日,このメモをもとに,原告ヒアリングメモ(乙4)を作成した。 ウ a校長は,原告が,A女子学生についての前記2ア(ア)⑦の行為(キスを強要した件)について記憶にないと言ったので,同年6月上旬,本件投書で名前が挙がっていたf助教授に対し,本件投書の当該項目について確認したところ,f助教授は,「そのような事実はない。」と答えたが,a校長にはf助教授が何かを知っているようなそぶりに思えた。 そこで,a校長は,f助教授に対し,「何か筋書きの違うことがあったのか。」と尋ねたところ,同助教授は肯定したものの,それ以上は,原告は同僚であるので,誤解を受けるようなことは言いたくないと述べて,答えなかった。 エ 同年6月4日午前10時45分,第2回セクハラ委員会が開催された(乙11)。 同委員会において,a校長は,b庶務課長が作成した上記の原告ヒアリングメモを配布して原告に対するヒアリング結果を報告するとともに,f助教授に事実確認した結果を報告した。 これに対して,再度,f助教授に事実確認を行うこと,さらに,A女子学生についての前記2ア(ア)⑥の行為(廊下で抱きついた件)については,g講師が目撃しているという話があるので,同講師に事実確認する必要があるという指摘があり,a校長は,今後,f助教授に対して再度のヒアリング,g講師に対するヒアリングを行うことにした。 (5) 第3回セクハラ委員会までア 同年6月18日,a校長は,A女子学生に対するヒアリングに先立ち,原告の上記ヒアリングの結果について思い違い等がないか確認するため,原告に対し,本件投書の主要な項目(柔軟体操の補助の件,「お姫さま抱っこ」の件,廊下で抱きついた件,キスを強要した件,性教育用のビデオを強制的に見せた等の件 果について思い違い等がないか確認するため,原告に対し,本件投書の主要な項目(柔軟体操の補助の件,「お姫さま抱っこ」の件,廊下で抱きついた件,キスを強要した件,性教育用のビデオを強制的に見せた等の件)とそれに対する原告に対する上記ヒアリングにおける弁明等を記載した電子メールで問い合せをした(乙5)。 電子メールを受けた原告は,a校長に対し,何も変更するところはないと口頭で回答した。 イ 同日,a校長とe教務主事は,A女子学生に対するヒアリングを実施し,その際,女子学生の年齢,ヒアリングを行う委員が男性であることを考慮し,本件投書をまとめたd講師(女性)が立ち会った。 ヒアリングの内容は,次のとおりであった。 (ア) ヒアリングの冒頭において,A女子学生は,f助教授から投書した事実を尋ねられたが,身元が分かってしまうようなことはやらないで欲しいと要求した。これに対し,a校長は,それでは事実関係を確かめることができなくなると言ったが,A女子学生は,身元が分かると何をされるか分からず,卒業までの身の安全をどう保証するのかなどと述べた。 (イ) A女子学生は,本件投書の内容について,以下のように述べた。 a 前記2ア(ア)①の行為(柔軟体操の補助の件)については,A女子学生は,水着のときに柔軟テストが実施されたか否かについては,はっきりとは回答しなかったが,補助の態様については,手首をつかまれて,背中にのしかかるように押され不快であったと説明した。 b 同②の行為(「お姫さま抱っこ」の件)については,a校長が,見学者の中から一人だけを選び,「お姫さま抱っこ」するのは不自然ではないかと質問したところ,A女子学生は,「水泳の授業中,見学でプールサイドにいたところ,原告が歩いて指導している後ろに付いてきなさいと言われた。目的がわからないまま付 姫さま抱っこ」するのは不自然ではないかと質問したところ,A女子学生は,「水泳の授業中,見学でプールサイドにいたところ,原告が歩いて指導している後ろに付いてきなさいと言われた。目的がわからないまま付いて歩いていると,突然横抱きにされて,プールに落とされそうになった。」と説明した。 c 同④の行為(立位体前屈の際に前に立たれた件)については,a校長が,体操の指導に教官が前に立つのは当たり前ではないかと質問したところ,A女子学生は,原告以外の教官は女性同士を組ませて測定させ,何センチ曲がったか,という報告を受けるだけであると説明した。 d 同⑥の行為(廊下で抱きついた件)については,A女子学生は,肩から腕を前に回し,組み止めるようにされた,とd講師をA女子学生に見立てて実演した。 e 同⑦の行為(キスを強要した件)については,A女子学生は,本件投書に記載されていたことと異なり,「球技大会の当日,体育館において,f助教授が原告に対し,A女子学生のことをJRのキャンペーンガールを務めていたなどと紹介したところ,原告は,A女子学生に握手を求めた上その手を引っ張って,『ここへキスしてくれ』と頬を差し出したが,これを見たf助教授が原告をたしなめた。」と説明した。 ウ a校長は,A女子学生から,身元が分かるような調査はしないよう要求されたため,前記2ア(ア)⑥の行為(廊下で抱きついた件)について目撃者とされているg講師への事実確認を控えていたが,d講師から事実確認を行うよう督促されたため,同年6月下旬,g講師に対するヒアリングをした。 g講師は,要旨,「たまたま米子高専の学生課に向かう廊下を歩いていると,前を友人と並んで歩いていたA女子学生に原告が後ろから近づき,両手を肩に置いて体を密着させるようにした(なお,自分と原告との距離は少し離れており,後ろか ま米子高専の学生課に向かう廊下を歩いていると,前を友人と並んで歩いていたA女子学生に原告が後ろから近づき,両手を肩に置いて体を密着させるようにした(なお,自分と原告との距離は少し離れており,後ろから見たので,原告がA女子学生に抱きついたかどうかは分からなかった。)。そして,短時間で体を離し,『廊下で大声で話していてはだめじゃないか』というようなことを言って学生課に入っていった。周りの学生はあっけにとられた感じで,しーんとしていた。自分としては高等教育機関としてはありえない行為であると感じた。」と述べた。 エ a校長は,A女子学生の身元が分かることを防ぐため,f助教授に対する再度のヒアリングは行わなかった。 オ 同年7月11日,a校長及びe教務主事は,B女子学生に対するヒアリングを行ったが,B女子学生が内気な性格であるために,d講師のほか,A女子学生が立ち会った。 この時,B女子学生は,本件投書中のB女子学生分について,本件投書とほぼ同内容のことを述べたが,d講師がB女子学生を代弁するような部分もあった(乙6の8頁。)。 カ a校長は,A,B両女子学生や,g講師に対するヒアリング等を踏まえて,第3回セクハラ委員会のための資料を作成し,その中で,a校長の所見について,次のように記載した(乙6)。 (ア) A女子学生についての前記2ア(ア)①の行為(柔軟体操の補助の件),同③の行為(生理の詳細を聞いた件),同④の行為(立位体前屈で前に立たれた件)については,体育の授業に関することで,内容は担当教官の自由に任せられているが,同①については,15歳の女子学生に体を密着させて指導することは,人権に対する配慮が足りなかったのではないかという疑いが残り,同③については,男子学生の前で生理の状況まで聞くのは,配慮が足りない面がある。 (イ) 同②の 女子学生に体を密着させて指導することは,人権に対する配慮が足りなかったのではないかという疑いが残り,同③については,男子学生の前で生理の状況まで聞くのは,配慮が足りない面がある。 (イ) 同②の行為(「お姫さま抱っこ」の件)については,原告は否定しているが,多くの学生が居る前での出来事であり,事実と考えざるを得ない。横抱きにしてプールに落とそうとした仕草は,体育の授業に関連したものとは認められず,明らかに特定の女子学生を意識した行為であり,学生が不快感を抱いたなら,嫌がらせの行為であると言われても,弁明の余地がない。 (ウ) 同⑤の行為(携帯電話番号を聞いた件)については,教官としては通常慎む事柄であるが,これだけで性的な嫌がらせとは言えない。 (エ) 同⑥の行為(廊下で抱きついた件)については,g講師の目撃からしても,事実であることは間違いない。その内容もかなり異常であり,通常,教官が学生に親しさを示す範囲を逸脱していると考えられる。 (オ) 同⑦の行為(キスを強要した件)については,A女子学生に対するヒアリングの結果,投書の内容とはかなり流れが異なり,本件投書を読み聞かせた段階では,原告やf助教授が,そのような事実は承知していないといったとしても,虚偽の申立てをしたことにはならないと思われるが,A女子学生の説明通り話せば,それは投書者がA女子学生であることを告げるに等しいことであるから,原告やf助教授に再度尋ねることもできない。したがって,これまで得た情報から判断すると,球技大会担当のf助教授が原告にA女子学生を紹介したこと,これに対して原告が握手を求めたことは自然な流れであるが,その手を引いて,頬にキスを求めることは,冗談としても教官としては行きすぎた行為である。 (カ) 以上のように,原告には,特定の女子学生に対して,体を て原告が握手を求めたことは自然な流れであるが,その手を引いて,頬にキスを求めることは,冗談としても教官としては行きすぎた行為である。 (カ) 以上のように,原告には,特定の女子学生に対して,体を接触させる,あるいは密着させるという性行があることが窺われ,これは恣意的なものではないものの,相手が受ける嫌悪感に対して,原告は無頓着であると認められる。したがって,原告のそのような行動を差し止めるよう求めるA女子学生の申立ては,正当な理由を有するものと認められる。 (キ) B女子学生に対する行為については,学生指導という点からみて行き過ぎがあったとしても,セクハラには該当しない。 キ 同年7月24日午前10時30分,第3回セクハラ委員会が開催され(乙12),a校長は,上記資料(乙6)を配布した上,その内容について報告した。そして,A女子学生から身元の安全を保証してほしいと強く要求されているため,これ以上の調査の進展は望めないことを告げた。 以上を前提として,同委員会において原告に対する処分が検討され,少なくともA女子学生についての前記2ア(ア)①(柔軟体操の補助の件),同③(生理の詳細を聞いた件),同⑥(廊下で抱きついた件),同⑦(キスを強要した件)の各行為についてセクハラと疑われる事実が認定できると判断され(証人a調書169項以下),委員の中には,原告について懲戒処分の要件に該当するのではないかとの意見も多くあった。 これに対し,a校長は,原告には投書した学生が誰であるか伝えていないこと,一部のセクハラ行為とされる事実が発生した時期が,平成11年4月の「文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」の制定以前であり,学校としてセクハラ防止等の啓蒙が行われていなかったことなどの理由から,懲戒処分に付するのは無理であり,セ 年4月の「文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」の制定以前であり,学校としてセクハラ防止等の啓蒙が行われていなかったことなどの理由から,懲戒処分に付するのは無理であり,セクハラ行為と疑われても仕方のない行為をしたと教育者が学生から指摘されたという事実を重大に捉え,口頭による厳重注意に止めたいと主張し,委員全員の了承を得た。 なお,原告には,教育者として外形上第三者から誤解を招くような行為をしたとして,平成9年に口頭注意処分とされた矯正措置歴がある(乙21の1~5)。 (6) 本件厳重注意処分の言渡し等ア 平成13年9月18日午前10時30分,本件厳重注意処分の言渡しが行われ,最初に,c事務部長が,セクハラ委員会の調査結果や「厳重注意」に至った経緯等を説明したが,その際,セクハラは加害者が意識していなくても,被害者が不快と感じた場合は成立することを強調した。 イ 次に,a校長が厳重注意の理由について,要旨,次のとおり説明した。 (ア) 柔軟体操の補助の指導の際,男女同等に指導したという口実で,女子学生に上半身を密着させて補助を行ったのは,いささか配慮に欠ける。 (イ) 水泳の授業で出席を取っている時,見学の申し出に生理の詳細を聞くことは,現在ならセクハラ行為であるとされる。 (ウ) 廊下で抱きついた件については,目撃証言もあり,なんらかのセクハラを思わせるような行為があったと認めざるをえない。 なお,キスを強要した件については,a校長が説明を始めたところ,原告が,「体育館に入っていくと女子学生が投げキスをしたので,それでは駄目だ,ここ,ここと言っただけで,手などは掴んでいない。」と述べたため,a校長は,原告が事実を隠していたこと自体その非を認めたものとして,それ以上の説明をしなかった。 ウ そして,a校長は,今 では駄目だ,ここ,ここと言っただけで,手などは掴んでいない。」と述べたため,a校長は,原告が事実を隠していたこと自体その非を認めたものとして,それ以上の説明をしなかった。 ウ そして,a校長は,今回の件は文部省がセクハラ防止対策等の規程を制定する前に起こったものもあるし,投書した学生を匿名として扱うことで,相手がはっきりしていない事情もあるが,いくつかの事実は,セクハラ行為として疑われても致し方がないものであるなどと述べ,最後に,c事務部長が,口頭による厳重注意とするものである旨述べた。 なお,c事務部長は,本件厳重注意処分の言渡しに際して,「疑わしきは罰する」との発言もした。 エ 同年10月22日午前10時45分,第4回セクハラ委員会が開催され(乙13),a校長が,原告を口頭による厳重注意処分としたこと,及び,この件に関する教官会議での説明については,女子学生が卒業した後に行うことなどを説明し,委員会は解散となった。 (7) 本件教官会議におけるa校長の発言等ア 米子高専では,学生の事故,学生対学生の事故,学生対教官の事故等については,教育を遂行する上,教官が共通の理解を持っておく必要性があることから,担当委員会の議を経て,教官会議で報告,あるいは審議されるのが原則であるが,原告に関する本件の問題についても,基本的には教官による学生指導上生じたセクハラ問題であることから,最低限の情報は教官の間で共有しておく必要があった。 そこで,a校長は,本件については,不測の事態が生じ,投書した学生の学習に影響が出ないよう,投書した学生の卒業認定が終わった後の平成14年3月6日の教官会議(本件教官会議)において,全教官に周知することとした。 イ ところで,米子高専における教官会議の議題は,連絡事項,報告事項及び協議事項に分かれているところ,報告 った後の平成14年3月6日の教官会議(本件教官会議)において,全教官に周知することとした。 イ ところで,米子高専における教官会議の議題は,連絡事項,報告事項及び協議事項に分かれているところ,報告事項であれば当該教官会議の議題に上り,議事内容は録音され,議事録として公式に残ることとなる。 この点,a校長は,本件教官会議の議長であるd講師から,本件厳重注意処分を教官会議の議題に上げるよう要求されたが,本件厳重注意処分はあくまで口頭のものであり,原告の履歴(公式記録)にも記載されないという措置であることから,これを断り,議事終了後における「平成13年度を振り返って」という校長談話の中で取り上げることとした(乙23)。 ウ 本件教官会議において,a校長が原告の問題に関して発言した内容及びその前後の内容は,要旨,以下のとおりである(乙7,30)。 (ア) 米子高専に入学した学生は,米子高専にとって客であり,1つの人格であって,その人格を認めた教育を行うことが必要である。 (イ) セクハラの問題もこのことと関係するが,平成13年4月,体育の教官により,授業の指導の中で体に触られる,横抱きにしてプールに落とされそうになった,あるいは,廊下で後ろから不意に抱きつかれたということをされたが,改善して欲しいとの女子学生からの匿名の投書があった。その教官は事実を否定したが,なおあいまいな所があるので,同教官をその女子学生の授業から外した上,セクハラ委員会を設置して調査を行った。 その結果,女子学生が匿名であり事実確認が困難であること,授業に関してはある程度教官の自主性に任されること,女子学生や教官の受け取り方の違い等を考慮しても,なお女子学生に非常に不快な思いをさせたという部分が残り,教官が意識的にしたものではないことは自分も重々認めているが,相手がど の自主性に任されること,女子学生や教官の受け取り方の違い等を考慮しても,なお女子学生に非常に不快な思いをさせたという部分が残り,教官が意識的にしたものではないことは自分も重々認めているが,相手がどのように受け止めるかが非常に大事であるから,同教官に対しては校長からの厳重注意処分にして,現在はその後の経過を見ているところである。 エ a校長の発言後,出席者から処分が軽すぎるという意見が続出したが,a校長はこれには答えず,教官会議を終えた。 オ 本件教官会議の議事録が作成された際,校長談話は記載されなかったが,d講師がこれに不服を唱え,a校長は,校長談話の原稿「平成13年度を振り返って」を議事録と一緒に綴るという方法で調整を図ることとした。 (8) 本件新聞記事の掲載等ア 同年5月17日,米子高専に対し,山陰中央新報の記者から原告のセクハラの件について取材したいとの申入れがあり,同記者の話から,本件教官会議の議事録に添付した校長談話の原稿の写しが新聞社に投書されていたことが分かった。 そこで,a校長は,記者の取材に対しては,女子学生は2名であるということと,セクハラ行為と疑われている事項については,体育の授業のときに,体を密着させるような指導をしたということや,廊下で後ろから抱きついたというようなことであったなど,本件教官会議での発言内容に沿った説明をした(証人a調書214項)。 そして,同記者は,記事にするかどうかについては上司と相談して決めると述べたため,a校長は,一人の教師の人権に関わっているので,記事にする場合は原告本人の話を聞いてからにしてもらいたい,と要望した。 また,その後,新日本海新聞社の記者からも取材があり,a校長は,同記者にも同様の対応をし,記事にする場合の要望を伝えた。 イ 同年5月18日,日本海新聞において,本件新聞 てもらいたい,と要望した。 また,その後,新日本海新聞社の記者からも取材があり,a校長は,同記者にも同様の対応をし,記事にする場合の要望を伝えた。 イ 同年5月18日,日本海新聞において,本件新聞記事が掲載されたが,記事の内容が,a校長が説明した内容と異なっており,a校長は,学校の名誉に関わる問題であると考え,対応について協議するため,臨時主事会議を開くことにした。 臨時主事会議で決定された内容は,次のとおりである(乙24)。 (ア) 学生に事態を説明して,不安が起こらないようにするため,学級担任を通じて説明をする。全校集会等は行わない。 (イ) 事態を教官に説明するために,同月20日の放課後,臨時教官会議を開催する。 (ウ) 同日午後7時から後援会役員会を開催し,事態の説明を行うとともに,保護者に事態を正確に知らせるため,文章を作成し,配布する。 (エ) 本件新聞記事については,米子高専が説明したことと大きく違っているので,謝罪,訂正を求める。 ウ 臨時主事会議終了後,a校長らは,原告に会議の結果を伝え,ついで,a校長,c事務部長,b庶務課長が米子高専としての抗議文(乙8)を作成し,他の者が保護者への説明文(乙27)の原稿を作成した。その要旨は,次のとおりである。 (ア) 米子高専の抗議文本件新聞記事については,下記の事由により,厳重に抗議するとともに謝罪文の掲載を要求する。 記a 米子高専で事実関係の調査を行ったところ,セクハラ行為を確定することは難しかったにもかかわらず,本件新聞記事の見出し文は,あたかも長期間に渡りセクハラ行為があったかのごとく表現されている。 b 本件新聞記事の内容中,「委員会は『セクハラとして疑う事実は残る』と判断し,口頭での厳重注意処分」と記載されたため,米子高専はセ も長期間に渡りセクハラ行為があったかのごとく表現されている。 b 本件新聞記事の内容中,「委員会は『セクハラとして疑う事実は残る』と判断し,口頭での厳重注意処分」と記載されたため,米子高専はセクハラ行為があったと認め厳重注意処分としたと誤解される表現になっているが,米子高専は,「セクハラとして疑われた事実は残るので,今後このような疑いを受けるような行為を厳に慎むよう厳重注意処分を行った」ものである。 (イ) 保護者への説明文本件新聞記事の見出しや表現には,誤解を招く点がある。 平成13年4月,在学中の女子学生から匿名で,過去に教官からセクハラを受けたとの訴えがあり,米子高専としては,このことを重大,かつ真摯に受け止め,速やかに調査委員会を設置し,プライバシーに配慮しながら,両者への聴取,関係者への確認等を行い,事実関係の把握に鋭意努めてきた。 調査の結果,両者の記憶に大きな相違があり,さらなる調査には女子学生のプライバシー保護の制約があるなどのため,セクハラ行為と断定する確実な根拠は得られなかった。 しかし,米子高専としては,教育者たる者がセクハラで訴えられたという重大な事実にかんがみ,校長から当該教官に対して厳重注意処分を行い,今後このような不名誉な事態を起こさないよう申し伝えた。 エ 同年5月20日,a校長は,e教務主事ら同席の下,米子高専を訪れた新日本海新聞社西部本社の編集局長らに対し,米子高専が取材時に説明した内容が記事に正しく表現されていないことを抗議して訂正を求めた上,上記抗議文を手交しようとした。 これに対し,編集局長は,見出し文については新聞社の独自取材による判断であると述べたものの,内容部分については返答せず,米子高専の正式な抗議文を受け取ると,新聞社としても全力をあげて追加調査をしなければならない 編集局長は,見出し文については新聞社の独自取材による判断であると述べたものの,内容部分については返答せず,米子高専の正式な抗議文を受け取ると,新聞社としても全力をあげて追加調査をしなければならない,米子高専の抗議の主旨は十分理解したので,正式な文書は出さないほうがよいのではないかとの提案をした。 これを受けて,a校長らは,米子高専としても,見出しの根拠が新聞社の独自取材に基づくという主張を崩すことが出来ない限り,実効のある訂正は難しく,また,原告のこれまでの言動,噂等から新聞社の詳細な追加調査によって追加記事が出た場合は,原告の受ける打撃は致命的なものになると判断し,上記編集局長らに公印を押捺していない抗議文を手交するにとどめた。 (9) 本件全校集会における発言等ア 同年5月28日,e教務主事からa校長に対し,「本件新聞記事で学生,特に女子学生の間で不安感が広がり,放置しておけないので,対応してほしい。」との依頼があり,これに対し,a校長が「すでに学生には本件新聞記事について話しているので,セクハラ防止への関心を教職員に高めてもらうために,ホームルームで学級担任から話してもらうのがよい。」と述べたところ,e教務主事は,先生方ではセクハラ防止についてうまく話せないので,a校長から話をしてほしいと述べた。 そこで,a校長は,全校集会(本件全校集会)において,前記「文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」に関する指針((1)イ)の紹介を中心とした説明をすることとした。 イ 本件全校集会において,a校長は,本件新聞記事で動揺しないこと等,本件新聞記事に関する発言もしたが,主に,上記指針((1)イ)に沿って,特に「セクシュアル・ハラスメントになりうる言動」を中心に事例を紹介し,人によってセクハラの受け止め方が違うこと, ないこと等,本件新聞記事に関する発言もしたが,主に,上記指針((1)イ)に沿って,特に「セクシュアル・ハラスメントになりうる言動」を中心に事例を紹介し,人によってセクハラの受け止め方が違うこと,もしセクハラを受けたと思ったら,学生相談室員に相談すれば学校がすぐ対応すること,セクハラの加害者といわれても本人が反省している場合は差別的な扱いをしないことなどを説明し,冷静に行動するよう求めた。 2 争点(1)(本件厳重注意処分の違法・不当性)について(1) 本件厳重注意処分の手続の違法・不当性についてア 本件厳重注意処分の性質について本件厳重注意処分は,公務員の服務義務違反の程度が懲戒処分をもって臨むまでに至らないものについて,なおかつ,公務員秩序を維持する観点からこれをそのまま放置出来ないものに対して講じられる,矯正措置の1つであり(乙15,弁論の全趣旨),懲戒処分のように処分自体により直接効果が付与されるものではなく,本件厳重注意処分が懲戒処分である「戒告」に限りなく近い処分であるとはいえない(もっとも,そのことにより,その手続が,慎重を要する必要がないということにはならない。)。 イ セクハラ委員会の設置の告知について原告は,セクハラ委員会の設置が原告に秘匿されたまま調査が行われたと主張する。 しかし,a校長が,平成13年5月29日,原告に対するヒアリングを行った際,同席したb庶務課長が作成したメモ(乙28)によると,冒頭に〔学生からセクハラだとの訴えがでている。委員会設置している→非公開にしている。〕との記載があり,前記1(4)アのとおり,a校長は,ヒアリングの冒頭に,セクハラ委員会を設置したこと等を原告に説明していることが認められる。 ウ セクハラ被害の具体的内容の告知について(ア) 原告は,セクハラ被害の具体的内容の告 とおり,a校長は,ヒアリングの冒頭に,セクハラ委員会を設置したこと等を原告に説明していることが認められる。 ウ セクハラ被害の具体的内容の告知について(ア) 原告は,セクハラ被害の具体的内容の告知を受けないまま,弁明・反論を求められたと主張する。 しかし,前記メモ(乙28)によると,前記1(4)アのとおり,同年5月29日のヒアリングにおいて,a校長が,A,B女子学生の投書を朗読したことが認められる。 なお,前記1(3)ウのとおり,秘密保持のため,原告に対しても,投書した学生の氏名を匿名とすることとしたことが認められるが,少なくとも本件投書中の学生の学年や投書の内容自体から,問題とされている行為の年度を特定することは可能であり,また,投書中で問題とされている行為は,原告の日頃の授業方針に関する行為(柔軟体操の補助の件,立位体前屈の際に前に立たれた件,生理の詳細を聞いた件)か,あるいは,日常的になされることのない行為(A女子学生についてのその余の件,B女子学生についての件)であるから,投書した学生の氏名を明らかにしなければ実質的な弁明・反論ができないものとはいえない。 また,同メモに記載された,原告の弁明・反論の内容によると,告知された被害内容が具体的でないため,弁明・反論ができないといったような状況は全く窺えず,原告は,個々の事実について,明確に否定したり,その説明をしていることが認められる。 原告は,同年5月29日の原告に対するヒアリングに際しては,本件投書の具体的内容については何ら触れられず,もっぱら,原告がX女子学生との経緯について説明しただけであるとも主張する。 たしかに,原告が,ヒアリングに際して,X女子学生のことに言及したことは,前記メモ(乙28)の記載内容からも窺えるが,同記載内容からも,ヒアリングの内容がX女子学 説明しただけであるとも主張する。 たしかに,原告が,ヒアリングに際して,X女子学生のことに言及したことは,前記メモ(乙28)の記載内容からも窺えるが,同記載内容からも,ヒアリングの内容がX女子学生との経緯についての説明だけであったとは認められない。 (イ) その後,a校長は,同年6月18日,A女子学生に対するヒアリングに先立ち,原告に対し,本件投書の主要な項目を記載した電子メールで思い違いがないかどうか確認を求めている(乙5)。 原告は,上記メールには,本件投書の具体的内容については何ら触れられていなかったと供述するが,上記電子メールの内容に照らし,採用できない(なお,乙5は,電子メールのファイルをプリントアウトしたものであるが,乙5は電子メールに転記する前のファイルであり(証人a調書276項),送信者や宛先,送信日時等が付加された,電子メール特有の書式になっていないからといって,不自然とはいえない。)。 (ウ) また,原告は,関係者の調査に立会権を保証されなかったと主張するが,本件投書に記載された事柄からして,投書した学生の自由な意思による発言を得るためには,原告を同席させずに投書した学生に対するヒアリングを実施する必要があったというべきであり,また,上記(ア)のとおり,原告を同席させずとも,原告の弁明・反論の機会は十分だったのであるから,このような方法が相当でなかったとはいえない。 (エ) 以上によると,原告が,セクハラ被害の具体的内容の告知を受けないまま,弁明・反論を求められたというような事情は窺えず,むしろ,本件投書に関する原告の弁明・反論の機会は十分与えられていたものといえ,本件厳重注意処分に至る手続が,原告の弁明・反論権を実質的に無視するものであったとはいえない。 エ 女子学生に対するヒアリングにおける同席者について の弁明・反論の機会は十分与えられていたものといえ,本件厳重注意処分に至る手続が,原告の弁明・反論権を実質的に無視するものであったとはいえない。 エ 女子学生に対するヒアリングにおける同席者について原告は,被害申告者に対するヒアリングは個別に行うべきであるにもかかわらず,A,B女子学生に対するヒアリングにはd講師を,B女子学生に対するヒアリングにはA女子学生を同席させたと主張する。 たしかに,前記1(5)イのとおり,原告が主張する者がヒアリングに同席したことが認められる。 しかし,A,B女子学生に対するヒアリングに,本件投書をまとめたd講師が同席し,B女子学生のヒアリングにA女子学生が同席した措置については,そのこと自体によりヒアリングの手続が必ずしも相当でなくなるものではなく,他者が同席することにより,投書した学生の発言に不当な影響が及んだと窺わせるような事情も認められず,上記措置を根拠として,本件厳重注意処分の手続が相当でなかったとはいえない。 オ 委員会の運営について原告は,セクハラ委員会の委員に対して,本件投書の内容が説明されていないなど,セクハラ委員会の運営に問題があると主張し,その理由として,本訴提起後にセクハラ委員会の委員であったj技官から,同技官は投書の内容を認識していないと聞いた。したがって,本件厳重注意処分に至る経緯に関する被告の主張は虚偽であるなどと述べる。 しかし,j技官は非公開であるセクハラ委員会で知り得た事情について明かさなかったに過ぎないとも考えられ,前記認定事実に照らしても,j技官から聞いたことのみを根拠として,セクハラ委員会の運営に問題があったということはできない。 カ まとめ以上のとおり,a校長は,本件厳重注意処分を行うに当たり,原告に対し,女子学生から訴えのあったセクハラ被害の具体的内容を として,セクハラ委員会の運営に問題があったということはできない。 カ まとめ以上のとおり,a校長は,本件厳重注意処分を行うに当たり,原告に対し,女子学生から訴えのあったセクハラ被害の具体的内容を原告に対して告知し,弁明・反論の機会を与えているほか,本件厳重注意処分の手続について,原告の主張する違法・不当な点は窺えず,本件厳重注意処分の手続は,適法になされたと認めることができる。 (2) 本件厳重注意処分の処分理由の違法・不当性についてア 本件厳重注意処分の理由の告知について原告は,本件厳重注意処分においては,原告によるセクハラ行為自体の事実認定はなされておらず,被告主張による「セクハラとして疑われる事実」自体も具体的に示されていないと主張し,これに沿う供述をする(甲4,原告本人)。 しかし,a校長が原告に対し,本件厳重注意処分を言い渡した際の状況は,前記1(6)のとおりである。 原告は,本件厳重注意処分の言渡しは短時間で終わったというものの,何らかの告知があったことは否定しない。原告は,告知された具体的内容を述べるわけでもなく,上記認定を左右するには至らない。 イ 本件厳重注意処分の理由について(その1)原告は,廊下で抱きついた件,及びキスを強要した件については,あり得ないと主張する。 (ア) 廊下で抱きついた件について原告は,A女子学生の肩に手を置いたこともないと供述する(原告本人第5回口頭弁論調書295項)。 しかし,前記1(2),(5)のとおり,本件投書やA女子学生に対するヒアリングにおいて,A女子学生は,「2年生か3年生のとき(平成10年か平成11年),米子高専の廊下で原告が後ろから抱きついてきた,周りにいた友人はあ然としていた。」と供述しているところ,g講師は,同講師に対するヒアリングにおいて,「平成11年6月 のとき(平成10年か平成11年),米子高専の廊下で原告が後ろから抱きついてきた,周りにいた友人はあ然としていた。」と供述しているところ,g講師は,同講師に対するヒアリングにおいて,「平成11年6月ころ,たまたま学生課に向かう廊下を歩いていると,前を並んで歩いていたA女子学生に原告が後ろから近づき,両手を肩に置いて体を密着させるようにした。そして,短時間で体を離し,『廊下で大声で話していてはだめじゃないか』というようなことを言って学生課に入っていった。周りの学生はあっけにとられた感じで,しーんとしていた。なお,自分と原告との距離は少し離れており,後ろから見たので,原告がA女子学生に抱きついたかどうかは分からなかった。自分としては高等教育機関としてはありえない行為であると感じた。」と,A女子学生の供述と一部符合する供述をしている。また,a校長は,さらに,「g講師は,原告がA女子学生に下半身を押し付けるようにしたと説明した。」と供述している(乙24,証人a)。 一方,a校長作成の資料(乙6)の記載に関し,g講師は,「a校長に対し,『平成11年6月ころに,米子高専の学生課付近において,原告がA女子学生に対してセクハラ的な行為をしたのを見たことはあるが,それは,A女子学生を含む3,4人の学生が廊下で騒いでいたので,原告が後ろからA女子学生の肩に両手を当てて,大きな声を出してはいけないと言っていた。』と説明したものであり,原告の身体のそれ以外の部分がA女子学生に密着したなどと説明したことはないし,高等教育機関としてあり得ない行為であると感じたと説明したこともない。」とも供述する(甲5,12,証人g調書46項,87項,121項)。 しかしながら,g講師は,「周りの学生があっけにとられた感じでしーんとしていた」との部分については否定しないところ(証 ともない。」とも供述する(甲5,12,証人g調書46項,87項,121項)。 しかしながら,g講師は,「周りの学生があっけにとられた感じでしーんとしていた」との部分については否定しないところ(証人g調書119項),両手を肩に置いて注意したことのみによって,周りの学生があっけにとられたような状態になるとは考えがたいし,また,証拠(証人g)及び弁論の全趣旨によれば,g講師は,酒の席で,d講師から原告のセクハラ行為について問われた際,d講師に対し,原告が学生課付近の廊下でした行為を話したが,この時の話が,本件厳重注意処分にまで発展し,原告に対する思わぬ不利益になったことが窺われ,そうすると,事の重大性から,g講師が,ヒアリングの際にa校長に対して説明した内容に比べ,原告に有利となる証言をする傾向があった可能性を否定できない。 また,a校長が,上記資料(乙6)において,説明されてもいない虚偽の事実を記載しなければならないような事情は窺われない(原告は,米子高専では,原告以外の教官によるセクハラに関する問題が生じており,a校長は,原告を処分することによって,そのような状況を収束させようとしたと思われるなどと供述するが(甲16,原告本人第6回口頭弁論調書62項),前記認定事実によれば,他の教官が原告に対しては厳しい処分が妥当であるとするのに対し,a校長は,むしろ原告の処分に消極的であったのであるから,本件において,原告が供述するような事情は窺われないというべきである。)。 そうすると,g講師の上記供述(甲5,12,証人g46項,87項,121項)は採用できず,上記資料(乙6)の記載は,a校長が聴取した内容をそのまま記載したものであり,その内容は信用することができ,これにより,原告は,A女子学生の両肩に手を置き,短時間ではあるが,背後から体を密 できず,上記資料(乙6)の記載は,a校長が聴取した内容をそのまま記載したものであり,その内容は信用することができ,これにより,原告は,A女子学生の両肩に手を置き,短時間ではあるが,背後から体を密着させるような行為をしたと認めることができる。 もっとも,g講師の目撃状況は,A女子学生と原告から離れており,しかも,2人が縦に並んだ後方から目撃したものであること(証人g),A女子学生の供述(投書及びヒアリングの結果)は,2年近くを経た後になされたものである上,原告の両手の動きなどについて,g講師の目撃内容との間に食違いがあることを考えると,これらの供述結果を総合しても,原告が体を実際に密着させたとまで断定することは困難である。 (イ) キスを強要した件について原告は,キスを強要した件について,球技大会の際,22メートル離れたA女子学生から投げキスをされ,それに対して,自分の頬を指さして「ここ,ここ」と言ったことがあるだけであると供述する(甲4,原告本人第5回口頭弁論調書37項)。 しかし,前記1(2),(5)のとおり,本件投書やA女子学生に対するヒアリングにおいて,A女子学生は,原告が手を掴み,「ここにキスしろ」と原告の頬を指さして言ったと供述している。本件投書における説明は,原告がいきなり手を掴んでキスを要求した内容となっており,唐突な感を免れないが,ヒアリングの際は,「球技大会の当日,体育館において,f助教授が原告に対し,A女子学生のことをJRのキャンペーンガールを務めていたなどと紹介したところ,原告は,A女子学生に握手を求めた上その手を引っ張って,『ここへキスしてくれ』と頬を差し出したが,これを見たf助教授が原告をたしなめた。」と説明しており,外形的事実については一貫した内容である上,より具体的で自然な内容となっており,信用性 を引っ張って,『ここへキスしてくれ』と頬を差し出したが,これを見たf助教授が原告をたしなめた。」と説明しており,外形的事実については一貫した内容である上,より具体的で自然な内容となっており,信用性は高いといえる。 また,前記1(4)のとおり,これを目撃していたというf助教授は,投書に書かれているようなことはなかったと供述する一方,筋書きの違うことがあったのかとの問いには肯定しつつ,誤解を受けるようなことは言いたくないと述べたことが認められる。f助教授は,原告の立場を考慮して,供述を控えたと思われるが,原告が主張するような事実であれば,供述を控える動機に乏しいといわざるを得ない。 そうすると,A女子学生に対するヒアリングの際における供述のとおりの事実を認めることができる。もっとも,この事実は,少なくとも,投書に記載された「いきなり手を掴んでキスを強要した」という状況とは様相を異にするといわざるを得ない。 ウ 本件厳重注意処分の理由について(その2)原告は,本件厳重注意処分の理由が「セクハラとして疑われた事実が残る」ことであることについて,「調査によるもセクハラ事実は認定できないが,投書があった以上責任をとれ」ということと同義であり,何ら処分理由たり得ないものであると主張する。 しかし,前記1(6)のとおり,a校長は,「いくつかの事実は,セクハラ行為として疑われても致し方がない。」と述べているが,これは,疑いがあることを理由として処分したものではなく,調査の結果,女子学生から投書のあった事実の一部を認める一方で,これを全て認めることができず,また,それ以上の調査も困難であったため,認定することのできた事実を前提に,セクハラと評価されるおそれのある事実があったと判断して,本件厳重注意処分を選択したことが認められる。 そして,前記イのとお た,それ以上の調査も困難であったため,認定することのできた事実を前提に,セクハラと評価されるおそれのある事実があったと判断して,本件厳重注意処分を選択したことが認められる。 そして,前記イのとおり,廊下で抱きついた件及びキスを強要した件については,調査の結果,上記の限度で事実を認定することができ,これによると,原告は,特定の女子学生に対し,不必要に身体に接触しようとし(肩に両手を置き,体を密着させるか,もしくは,そのように感じるほどに近接させる行為など),その結果,女子学生に不快な思いをさせ,少なくとも,セクハラと評価されるおそれのある事実があったと認めることができる。 さらに,平成11年3月30日付けで「文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程」が制定されて,各国立学校等においてセクハラの防止等に積極的に取り組むことが要請され,米子高専においても,平成11年4月以降,学生相談室を発足させるなどして,セクハラ防止に努めてきた状況や,原告には,上記認定された事実のほか,柔軟体操の補助の件や生理の詳細を聞いた件が存すること(いずれも当事者間に争いがない。また,この2件は,本件厳重注意処分の直接の理由とはされていないが,処分の内容を定める上において,考慮することは可能であるし,上記1(5)キ,(6)イによると,実際に考慮されたことが認められる。),平成9年に口頭注意処分の矯正措置歴を有していることを併せ考えると,a校長が,部下である原告に対し,その職務履行の改善向上に資する矯正措置として,4種類ある矯正措置(「訓告」,「文書厳重注意」,「口頭厳重注意」,「注意」)のうち,「口頭厳重注意」である本件厳重注意処分をなしたことは,必要性,相当性を満たすものであり,適法であったものと認められる。 よって,原告の主張は理由がな 重注意」,「口頭厳重注意」,「注意」)のうち,「口頭厳重注意」である本件厳重注意処分をなしたことは,必要性,相当性を満たすものであり,適法であったものと認められる。 よって,原告の主張は理由がない。 エ 本件厳重注意処分の意図についてまた,原告は,a校長から,「処分はセクハラということの処分ではなく,学生指導上の問題ということでの処分である」と告げたが,このことは,本件厳重注意処分が,正当な処分理由がないのになされた政治的処分であることを示すものであると主張する。 たしかに,a校長は,原告のB女子学生に対する行為について学生指導上問題があると考えており,本件厳重注意処分に際しても,原告の行為に「学生指導上」問題があることについて言及した可能性は否定できないが,このことは,本件厳重注意処分が,原告がセクハラと疑われる行為をしたことに対してなされたという前記認定を左右するものではない。また,c事務部長が「疑わしきは罰する」という表現を用いたとしても,そのことで,直ちに本件厳重注意処分を処分理由がないのになされたということはできず,a校長がc事務部長と同様の認識を有していたことにもならない。 オ まとめ以上によると,a校長は,セクハラ委員会での検討の結果,A女子学生の投書内容のうち,廊下で抱きついた件及びキスを強要した件について,その一部を認定し,セクハラと疑われる事実と判断し,本件厳重注意処分を行うことが相当であると判断し,これを言い渡したものであるが,同処分は適法,相当であったということができる。 3 争点(2)(本件教官会議におけるa校長の発言の違法性)について原告は,本件教官会議において,a校長が,原告がセクハラ行為をしたと断定する発言をしたと主張し,これに沿う証拠(甲4,7)を提出する。 しかしながら,本件教官会議にお 校長の発言の違法性)について原告は,本件教官会議において,a校長が,原告がセクハラ行為をしたと断定する発言をしたと主張し,これに沿う証拠(甲4,7)を提出する。 しかしながら,本件教官会議における校長談話の内容(乙7)は,これを録音したテープ(乙30)と同一であり,したがって,本件教官会議におけるa校長の発言については前記認定のとおり認められるところ,その内容が,原告がセクハラ行為をしたと断定するものでないことは明らかである。たしかに,本件厳重注意処分に関する話題に引き続き,セクハラとわいせつ行為の違いについて言及していることから,聞く者によっては原告がセクハラ行為をしたと誤解させる可能性もないではないが,a校長は,原告が意識的にしたものでないことについて明言し,かつ,セクハラは相手が嫌がる行為を「意識して」繰り返し行うものであると説明しているのであるから,通常の注意力をもってすれば,a校長の発言によって,原告がセクハラ行為をしたと印象づけられるものではないというべきである。 したがって,a校長が,原告がセクハラ行為をしたと断定したことを前提とする原告の主張は失当である。 なお,本件教官会議におけるa校長の発言に関する前記認定を前提としても,これにより原告の教官内での評価を低下させた可能性は否定できないが,本件は,対学生指導の問題性という側面が絡んでおり,教官相互間に共通の理解が持たれるべき事柄であること,a校長の発言が,相手方の受け止め方に配慮すべきであることを主眼としているといえることからすれば,当該発言が違法であるとまではいえない。 4 争点(3)(本件新聞記事に関する新聞社に対するa校長の対応の違法性)について原告は,本件新聞記事が掲載されたのは,a校長が,違法・不当な本件厳重注意処分をしたことのほか,本件教官会議で 。 4 争点(3)(本件新聞記事に関する新聞社に対するa校長の対応の違法性)について原告は,本件新聞記事が掲載されたのは,a校長が,違法・不当な本件厳重注意処分をしたことのほか,本件教官会議で事実と異なる処分理由を報告したこと,及び,新聞社の取材に対し,事実と異なる処分理由を説明したことによると主張する。 しかしながら,平成14年5月8日付け日本海新聞に本件新聞記事が掲載されたのは,本件教官会議における校長談話の原稿の写しが新聞社に投書されたことをきっかけとするものであるが,a校長の本件教官会議における発言前後の経緯について,違法とはいえないことは前記3のとおりであり,また,a校長が,上記投書がされた後に行われた新日本海新聞社の記者の取材に対して,事実と異なる処分理由を説明したとも認められないから,本件新聞記事の掲載に関して,a校長が何らかの責任を負うものではない。 そして,前記2(2)のとおり,a校長において原告がセクハラと疑われる行為をしたと判断したことには相当な理由があると認められること,また,e教務主事から,原告のセクハラ行為が米子高専において問題となっているとの報告を受けていたこと等からして,a校長が,新聞社の追加取材によって原告がさらなる打撃を受ける可能性があると判断したことについても,了解可能である。 以上の事実を前提にすれば,本件新聞記事に対するa校長の対応が適切を欠き,違法であるとはいえない。 5 争点(4)(本件全校集会におけるa校長の発言の違法性)について原告は,a校長は,本件全校集会において「事実関係はセクハラ報道のとおり」であると報告して原告にセクハラ行為があった旨断定したと主張し,これに沿う証拠(甲4,13)を提出する。 しかしながら,米子高専の抗議文(乙8)や保護者に対する説明文(乙27)にお 報道のとおり」であると報告して原告にセクハラ行為があった旨断定したと主張し,これに沿う証拠(甲4,13)を提出する。 しかしながら,米子高専の抗議文(乙8)や保護者に対する説明文(乙27)において,「セクハラ行為と断定する確実な根拠は得られなかった」などとされているにもかかわらず,a校長が,本件全校集会において事実関係はセクハラ報道のとおりであるなどと発言する必然性は全くなく,原告主張に沿う上記証拠を直ちに採用することはできず,その他,本件全証拠によるも,a校長が,本件全校集会において原告の社会的評価を低下させるような何らかの言動をしたとは認められない。 したがって,本件全校集会におけるa校長の発言が違法であるとはいえない。 6 まとめ以上のとおり,原告が主張するa校長による各不法行為はいずれも認められず,同校長の不法行為を前提にした慰謝料請求には理由がない。 第6 結論以上の次第で,原告の本訴請求は理由がないのでこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結日平成16年2月10日)鳥取地方裁判所民事部裁判長裁判官山田陽三裁判官山本和人裁判官小野寺明は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官山田陽三
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