令和2(ワ)23152 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年6月15日 東京地方裁判所
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判決文本文15,391 文字)

1 令和3年6月15日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 損害賠償請求事件 口頭弁論終結日 令和3年3月22日 判 決 主 文 5 1 被告らは,原告に対し,連帯して,330万円及びこれに対する令和元年9 月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを10分し,その7を原告の負担とし,その余を被告らの連 帯負担とする。 10 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 被告らは,原告に対し,連帯して,1100万円及びこれに対する令和元年 9月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 15 第2 事案の概要等 1 本件は,被告政党,その代表者である被告A及びその副代表である被告Bが, 原告日本放送協会が受信設備設置者との間で受信契約を締結し,あるいは受信 料の支払を受けることを妨害する目的で,「NHK集金人おびき寄せ作戦」と称 して,受信契約,受信料に関する問合せや相談等の業務に当たる原告の職員, 20 あるいは原告からの委託を受けて受信契約,受信料の収受等の業務に当たる者 (以下「訪問スタッフ」あるいは「集金人」という。)に受信契約の締結ないし 受信料の支払がされるかもしれないと誤信させておびき寄せ,上記訪問スタッ フを追い掛け回し,さらにその様子を動画で撮影し,これを動画投稿サイト「Y ouTube」上にアップロードして広く市民の閲覧に供することを計画し, 25 これを実行するようインターネット上で広く呼び掛けた上で,その呼掛けに応 2 じた被告Cと意思を通じ,令和元年9月7日,被告B及び被告Cにおいて,上 記計画を実行に移したこと(以下「本件おびき寄せ行為」という。)により ターネット上で広く呼び掛けた上で,その呼掛けに応 2 じた被告Cと意思を通じ,令和元年9月7日,被告B及び被告Cにおいて,上 記計画を実行に移したこと(以下「本件おびき寄せ行為」という。)により,原 告にその業務を遂行する上での無形の損害を生じさせたとして,原告が,被告 らに対し,共同不法行為に基づき,被告政党に対しては,予備的に,政党交付 金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律(以下「政党法人 5 格法」という。)8条により準用される一般社団法人及び一般財団法人に関する 法律(以下「一般法人法」という。)78条に基づき,損害賠償金1100万円 (無形損害1000万円及び弁護士費用100万円の合計額)及びこれに対す る不法行為の日の翌日である令和元年9月8日から支払済みまで民法(平成2 9年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による 10 遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨から容易 に認められる事実) ⑴ 当事者等 ア 原告は,放送法に基づき,公共の福祉のために,あまねく日本全国にお 15 いて受信できるよう豊かで,かつ,良い放送番組による国内基幹放送を行 うとともに,放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い,あわせて 国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目的として設立された法人で ある。「NHK」は原告の略称である。(争いがない) 放送法64条1項は,原告の放送を受信することのできる受信設備を設 20 置した者は,原告とその放送の受信についての契約をしなければならない 旨定める(争いがない)。 イ 被告政党は,NHKの受信料制度について,多くの国民及び視聴者が真 剣に考える機会を提供することなどを目的として,平成25年 放送の受信についての契約をしなければならない 旨定める(争いがない)。 イ 被告政党は,NHKの受信料制度について,多くの国民及び視聴者が真 剣に考える機会を提供することなどを目的として,平成25年6月17日, 「NHK受信料不払い党」という名称の政治団体として設立され,同年7 25 月29日,「NHKから国民を守る党」に名称変更した(争いがない)。 3 被告政党は,令和元年7月21日に行われた第25回参議院議員通常選 挙において,選挙区における得票数が2%を上回り,政治資金規正法3条 2項2号及び政党法人格法3条1項2号における「政党」の要件を満たし, 同年8月13日,法人として成立した(争いがない)。 その後,被告政党は,令和3年2月5日,「NHK受信料を支払わない方 5 法を教える党」に,同年5月17日,「古い政党から国民を守る党」に名称 変更した(顕著な事実)。 ウ 被告Aは,被告政党の創立者であり,代表者である(争いがない)。 エ 被告Bは,被告政党の副代表である(争いがない)。 ⑵ NHK集金人おびき寄せ作戦の概要 10 ア 被告政党,被告A及び被告Bは,遅くとも平成25年1月頃から,「NH K集金人おびき寄せ作戦」(以下「おびき寄せ作戦」という。)と称する活 動を開始し,現在まで継続している(争いがない)。 被告Aは,令和元年8月4日,被告Bが柏市議会議員選挙において当選 確実となったことを受け,被告Bとともにカメラの前に立ち,被告Aが「参 15 議院選挙の時に公約にしていた集金人のおびき寄せ作戦。これをB君に隊 長になってもらう。」と発言すると,被告Bが「やりますよ。」と応じた。 続いて,被告Aは,「できれば現職の議員さんは,新しい議員を作っていく ことと,B君の集金人おびき寄せ,集金人をカメラを持って に隊 長になってもらう。」と発言すると,被告Bが「やりますよ。」と応じた。 続いて,被告Aは,「できれば現職の議員さんは,新しい議員を作っていく ことと,B君の集金人おびき寄せ,集金人をカメラを持って追い掛け回す, 一人の集金人をストーカーのようにずっと付け回せば,これは別に威力業 20 務妨害でも何でもなく,彼らが放送法やそれらの契約を守っているかどう かっていうのをチェックするということでね。」と発言した。上記状況を収 録した動画は,同日から,「【祝】柏市議会議員選挙 B 上位当選」と題 して,YouTube上にアップロードされて公開された。 (甲1。以下「8 月4日動画」という。) 25 イ 被告Aは,同年8月8日,ホワイトボードに記載した「NHK集金人お 4 びき寄せ作戦」について,「集金人をおびき寄せて,集金人を撮影してどん どんYouTubeにアップロードしていく,ということをしていきたい と思います。B君がこれリーダーになってやっていますので。」,「NHKか ら国民を守る党の議員やうちから立候補したいと思っている人は,ぜひこ れをやって欲しい。おびき寄せ作戦。」などと発言した。上記状況を収録し 5 た動画は,同日,「NHKに裁判されない方法とNHK集金人おびき寄せ作 戦について」と題して,YouTube上にアップロードされて公開され た。(甲2。以下「8月8日動画」という。) ⑶ 本件おびき寄せ行為 ア 被告Bは,被告Cの協力を得ておびき寄せ作戦を実行することとした(甲 10 3,弁論の全趣旨)。 まず,被告Cは,埼玉県内にある母親宅に訪問スタッフをおびき寄せる こととし,令和元年9月4日,原告のコールセンターに電話をかけ,「未収 分の受信料の振込用紙が届いたが,契約者である父親は入院中であり,母 親がひとり暮ら 玉県内にある母親宅に訪問スタッフをおびき寄せる こととし,令和元年9月4日,原告のコールセンターに電話をかけ,「未収 分の受信料の振込用紙が届いたが,契約者である父親は入院中であり,母 親がひとり暮らしをしているが,担当者から受信料について説明を聞きた 15 い。」と申し出た(争いがない)。 その後,原告のさいたま西営業センターの職員(以下「本件職員」とい う。)は,被告Cと電話で連絡を取り,同月7日午後3時に被告Cの母親宅 を訪ね,そこで被告C及びその母親と面談することになった(弁論の全趣 旨)。 20 イ 本件職員は,同月7日,被告Cの母親宅を訪問し,被告C及びその母親 に対し,自身の名刺を差し出した上で,未払受信料や受信料支払の法的根 拠等を説明した(弁論の全趣旨)。 被告Bは,事前に被告Cの母親宅に赴き,同建物奥に隠れて,本件職員 が説明する様子などを小型ビデオカメラで撮影していたが,本件職員が説 25 明を開始してから約30分後,建物奥から手に小型ビデオカメラを持った 5 まま現れ,本件職員の面前で撮影を続けた(弁論の全趣旨)。 本件職員は,被告Bに対し,撮影を止めるよう求めたが,これを拒否さ れ,なお撮影が継続されたため,被告C及びその母親に対する説明を中止 して被告Cの母親宅から退出し,そのまま最寄り駅に歩いて向かった(甲 6,弁論の全趣旨)。 5 被告B及び被告Cは,本件職員を追尾し,撮影を継続した。その間,被 告Bは,本件職員から,何度も撮影の中止を求められたものの,これを明 確に拒絶し,撮影を続けた。被告Bは,本件職員が最寄り駅の改札口に入 るまでの間,被告Cとともに,本件職員の名前を連呼し,言葉を投げ掛け 続けた。被告B及び被告Cが本件職員に対し投げ掛けた言葉の中には,被 10 告Bから, た。被告Bは,本件職員が最寄り駅の改札口に入 るまでの間,被告Cとともに,本件職員の名前を連呼し,言葉を投げ掛け 続けた。被告B及び被告Cが本件職員に対し投げ掛けた言葉の中には,被 10 告Bから,「止まらないならずっと撮影する」,「じゃあ訴えてよ。」,「答え ないのか。」, 「絶対アップロードします。小銭稼がせていただきます。」, 「君 いい加減にしろよ。」,「逃げるんだな。」等,被告Cから,「お前矛盾してん だろ。おい。」,「お前さほんとひどいよな。俺と話すっつったんなら話せ よ。」,「お前ほんとヤクザだよ。」等の発言があった(甲6)。 15 ウ 被告Bは,①同月7日,本件職員の訪問前に,被告Bが被告Cにおびき 寄せ作戦に参加した経緯を聞いている「【おびき寄せ作戦埼玉編4-1】N HK職員をおびき寄せる前の今回の経緯をお聞きしました」と題する動画 (17分20秒。以下「4-1動画」という。甲3),②同日,本件職員と の応対後に被告Bが被告Cに感想を聞いている「【おびき寄せ作戦埼玉編4 20 -2】NHK職員との対応を終えた後の感想を聞きました」と題する動画 (13分23秒。甲4),③後日,被告Bが本件おびき寄せ行為に係る動画 の編集を終えた旨報告し,被告Cの要望により本件職員の映像にはモザイ ク編集を加えた等とする「お待たせしました!おびき寄せ作戦埼玉編4- 3編集,確認終了しました。公開します!」と題する動画(6分41秒。 25 甲5)及び④本件職員が被告Cの母親宅を出て最寄り駅まで向かう様子を 6 映した「【おびき寄せ作戦埼玉編4-4】NHK職員,駅までの逃亡劇を撮 影(モザイク)」と題する動画(4分51秒。甲6。以下「4-4動画」と いう。)の計4本の動画に編集の上,上記各動画を令和元年9月7日から同 月20日にかけて,それぞれYouTube上 までの逃亡劇を撮 影(モザイク)」と題する動画(4分51秒。甲6。以下「4-4動画」と いう。)の計4本の動画に編集の上,上記各動画を令和元年9月7日から同 月20日にかけて,それぞれYouTube上にアップロードした(甲3 ないし6,弁論の全趣旨)。 5 3 争点及び争点に関する当事者の主張 ⑴ 権利侵害の有無及び違法性阻却事由の有無(争点1) (原告の主張) 原告が受信設備設置者に対し,受信契約についての理解を得て,受信契約 を締結し,受信料の支払を求めることは,放送法64条1項に基づく正当な 10 業務であるにもかかわらず,被告らは,これを妨害する目的で,共同して, おびき寄せ作戦と称する活動を展開し,被告らの関係者に接近した訪問スタ ッフに対して,被告らがカメラを向けて撮影し,訪問スタッフが撮影を拒ん でもこれを追い掛け回し,同人に対しストーカーのようにずっとつけ回し, 撮影した画像をYouTubeにアップロードするようになり,実際,本件 15 おびき寄せ行為に及び,これにより原告の上記業務の遂行を妨害したのであ るから,違法であることは明らかである。 (被告らの主張) ア 被告政党は,原告の不正隠蔽体質を明らかにし,国民の知る権利に奉仕 し,健全な民主主義の発展に寄与するために活動しているところ,おびき 20 寄せ作戦という活動は,原告による犯罪行為の調査や証拠獲得を目的とし て行われたもので,原告の適正な業務を妨害することを目的としていない。 イ 原告は,放送受信規約に反して委託会社らの社員等が訪問した日を受信 契約の契約日とするよう誘導しており,放送法64条2項及び3項に違反 している。また,原告は,弁護士資格を持たない同社員に契約締結の代理 25 行為を行わせている点及び債権回収行為を行わせている点で,弁護 の契約日とするよう誘導しており,放送法64条2項及び3項に違反 している。また,原告は,弁護士資格を持たない同社員に契約締結の代理 25 行為を行わせている点及び債権回収行為を行わせている点で,弁護士法7 7 2条にも違反している。さらに,原告の委託会社らの訪問活動には,暴行 事件に至った例もある。したがって,原告の訪問活動における犯罪行為を 取材行為により明らかにする必要性が高かった。 ウ 他方,被告らは,原告が不正隠蔽体質を有し,原告の会長に対する被告 Aからの取材申込みも拒絶されたことから,原告の訪問活動の実態を明ら 5 かにするため,やむを得ず本件おびき寄せ行為の実施に至ったものである。 そして,本件おびき寄せ行為の撮影場所は,協力者である被告Cの母親宅 及びその周辺であること,被告B及び被告Cは,本件職員に何ら暴行をし ていないこと等からすれば,撮影の場所やその態様としても合理的であっ たというべきである。 10 エ 以上によれば,本件おびき寄せ行為により原告及びその従業員に生ずる 損害,あるいは権利・利益の侵害の程度が社会生活上一般に受忍すべき限 度を超えるものとはいえないから,被告らの行為は,原告の権利又は法律 上保護される利益を侵害したとは認められない。仮に,そうでないとして も,正当業務行為として違法性が阻却される。 15 ⑵ 損害の発生及びその額(争点2) (原告の主張) 被告らが本件計画を立案,公表及び実行したことにより,原告の事業には, 適正な訪問活動が阻害される,取次業務を行う人材の確保に支障が生ずる等 の影響が生じ,原告はこれらの影響への対応を強いられている。原告が被っ 20 た上記無形の損害を填補するために必要な金員は1000万円を下らない。 原告は,本件訴訟を提起するために弁護士に依 の影響が生じ,原告はこれらの影響への対応を強いられている。原告が被っ 20 た上記無形の損害を填補するために必要な金員は1000万円を下らない。 原告は,本件訴訟を提起するために弁護士に依頼せざるを得なかったから, 被告らが負担すべき弁護士費用は100万円を下らない。 (被告らの主張) 否認ないし争う。 25 第3 当裁判所の判断 8 1 認定事実 ⑴ 被告Aは,8月8日動画において,NHKに裁判されない方法として,名 義変更すること,被告政党作成のNHKゲキタイシールを貼ること,集金人 が来たら被告政党のコールセンターに電話することに加え,おびき寄せ作戦 を復活させていくことを挙げた。続いて,被告Aは,おびき寄せ作戦につい 5 て,集金人をおびき寄せて集金人に文句を言うものであるとし,受信契約を 締結する際に,放送受信契約書の「受信機の設置日」欄に,同契約書の記入 日と受信機の設置日が同じ場合には記入不要としている点について集金人が もらさず説明していないときは徹底的に叩く,記入日と設置日を同じくする 趣旨が,記入日より前の設置日まで遡って受信料の支払を求めないというも 10 のであれば,放送法64条2項,3項に違反する行為である,契約の中身に ついて法律で定められていても,契約に基づいてお金を払うかどうかは裁判 所が判断することになっているなどと説明した。(甲2) ⑵ア 被告Cは,4-1動画中で,同被告の父親が昭和60年に原告との間で 受信契約を締結していたが,令和元年に入り,平成16年12月から平成 15 24年まで受信料の未払期間があるとして,原告から同期間中の未払受信 料約12万円の支払を求められたこと,同被告の父親は以前原告の集金人 から同期間中の受 和元年に入り,平成16年12月から平成 15 24年まで受信料の未払期間があるとして,原告から同期間中の未払受信 料約12万円の支払を求められたこと,同被告の父親は以前原告の集金人 から同期間中の受信料は支払わなくてよいと説明されていたこと,そのた め同被告の母親から相談されたこと,被告Cが,被告政党ないし被告Aが アップロードした動画を見るなどした上で,被告政党のコールセンターに 20 電話をかけたこと,本件おびき寄せ行為として,最初はおびき寄せた集金 人と話をし,途中で被告Bに同席してもらうこと,未払受信料相当額を準 備しているので,集金人からの説明内容次第では同未払受信料を支払うべ きかどうか決めることなどを述べている(甲3)。 イ 被告Bは,令和元年9月7日,本件職員が被告Cとその母親に対する説 25 明を行っている中,小型ビデオカメラで撮影しながら介入し,被告Cから 9 交渉を委託された旨述べた(甲6)。 これに対し,本件職員は,被告Cと話すために訪問したので,被告Bと 話すことはなく,また,撮影はご遠慮願いたい旨述べ,被告B及び被告C からこれを拒絶されると,即座に説明を中止し,被告C宅から退出するこ とにしたが,その頃から被告B及び被告Cから,名前を連呼され,同所を 5 出た後も追い掛けられ,本件職員において,やめてください,ご遠慮いた だけますかなど何度も中止を求めたにもかかわらず,明確に拒否されて撮 影が続行され,名前や所属先を連呼されながら,駅改札を通るまで,前提 事実⑶イの内容を含む怒声を浴びせ続けられた(甲6)。 ⑶ 原告は,受信設備設置者の理解を得て,受信契約の締結,受信料の負担を 10 求める活動を行っているところ,そのうち訪問活動には,全国で約200社, 約3000人の委託法人社員,約1500人の地域スタッフ,N ,受信設備設置者の理解を得て,受信契約の締結,受信料の負担を 10 求める活動を行っているところ,そのうち訪問活動には,全国で約200社, 約3000人の委託法人社員,約1500人の地域スタッフ,NHKメイト と呼ばれる個人事業主等多数のNHK業務受託者が携わっている。訪問活動 を行わない受託業者としては,不動産会社約350社,ケーブルテレビ事業 者約340社などが関わり,その他約1000人の原告の営業職員が本部の 15 ほか,約62の地域放送局の営業部・営業センターで関わっている。(甲7) ⑷ 令和元年9月以降,原告の関東地方と大阪周辺の営業部・営業センターを 中心に,訪問スタッフが訪問先で承諾なく撮影される事案が続いて複数発生 し,中には,訪問先で,被告政党の党員,あるいは,被告Aの信者を名乗る 者から,訪問スタッフが追い掛けられて羽交い絞めにされた事案,殴ってや 20 ると言われた事案などが含まれていた(甲7)。 また,同月以降,原告の営業部や営業センターに突然訪問してきた者が, 暴言を吐き,居座り,録音録画しようとする事案が複数発生した(甲7)。 さらに,原告の電話相談窓口宛てにおびき寄せ作戦の動画を見た者から嫌 がらせの電話がかかってくることもあった(甲7)。 25 ⑸ 原告は,上記⑷の複数事案について,おびき寄せ作戦に同調する者らによ 10 る行動が含まれているものと受け止め,アポイントをとっての訪問について は,おびき寄せ作戦の可能性があるとして,単独での対応を複数名のスタッ フが訪問する形式に切り替えること,おびき寄せ作戦やこれを模倣する者へ の対策のために,法人事業者,営業部・営業センターのスタッフやコールセ ンタースタッフなどを対象として,講習会等を何度も実施したり,スタッフ 5 に対するフォロー体制を強化 せ作戦やこれを模倣する者へ の対策のために,法人事業者,営業部・営業センターのスタッフやコールセ ンタースタッフなどを対象として,講習会等を何度も実施したり,スタッフ 5 に対するフォロー体制を強化したりすること,おびき寄せ作戦に関してイン ターネット上に投稿された動画の削除申請をすること,放送局,営業センタ ーの警備体制を強化し,防犯カメラを増設すること,曜日日時を問わずに対 応可能な連絡・報告体制の強化などの各種対応を余儀なくされた(甲7,弁 論の全趣旨)。 10 また,訪問活動の際は,従前,訪問スタッフから身分証明のために名刺を 提示し,交付することもあったが,悪用をおそれてこれを控えると,身分証 明が難しくなるなど対応困難な事案も生じた(甲7)。 2 争点1(権利侵害の有無及び違法性阻却事由の有無)について ⑴ 受信料の支払を求める業務 15 放送法は,受信設備設置者に受信料を負担させる具体的な方法として,受 信料の支払義務は受信契約により発生するものとし,任意に受信契約を締結 しない受信設備設置者については,最終的には,承諾の意思表示を命ずる判 決の確定によって強制的に受信契約を成立させるものとしている。そして, 受信料の支払義務を受信契約により発生させることとするのは,原告が,基 20 本的には,受信設備設置者の理解を得て,その負担により支えられて存立す ることが期待される事業体であることに沿うものであり,現に,放送法施行 後長期間にわたり,原告が,任意に締結された受信契約に基づいて受信料を 収受することによって存立し,同法の目的の達成のための業務を遂行してき たことからも,相当な方法であるといえる。(最高裁判所平成29年12月6 25 日大法廷判決・民集71巻10号1817頁参照) 11 そうすると,原告と受信契約を締 成のための業務を遂行してき たことからも,相当な方法であるといえる。(最高裁判所平成29年12月6 25 日大法廷判決・民集71巻10号1817頁参照) 11 そうすると,原告と受信契約を締結した受信設備設置者は,受信契約に基 づき受信料の支払義務を負うもので,原告が受信設備設置者に対し,未払受 信料の支払を求めることは,原告にとって正当な業務であると認められる。 ⑵ おびき寄せ作戦の手法 これに対し,被告Aが8月8日動画で説明するおびき寄せ作戦は,「NHK 5 に裁判されない方法」の一環として紹介され,その内容も,集金人をおびき 寄せて文句を言う,放送受信契約書の「受信機の設置日」欄の書式に関する 説明が漏れていれば徹底的に叩く,記入日と設置日を同じにする場合は放送 法違反の指摘ができるなどとした上,受信契約の内容が法律で決まっても, 任意に支払う必要はないなどというのであるから,おびき寄せ作戦に協力す 10 る受信設備設置者において,その場で受信契約を締結し又は受信料を支払う ことは想定されていない。 また,被告Aの上記動画及び8月4日動画における説明によれば,おびき 寄せ作戦に協力する受信設備設置者は,被告Bその他被告政党所属の議員や 立候補希望者とともに,自宅等に来させた集金人に対し,放送法の解釈や契 15 約書の書式などの説明を求め,承諾なくその容ぼうを撮影し,拒絶されても カメラをもって執拗に追い掛け回し,その様子をYouTubeに投稿する というものと認められる。 これらの行為は,原告が,基本的には,受信設備設置者の理解を得て,そ の負担により支えられて存立することが期待される事業体であるため,受信 20 契約の締結及び受信料の支払に関する説明を求める趣旨での訪問依頼があれ ばこれを拒むことができないことを奇貨として,被告らにおい 担により支えられて存立することが期待される事業体であるため,受信 20 契約の締結及び受信料の支払に関する説明を求める趣旨での訪問依頼があれ ばこれを拒むことができないことを奇貨として,被告らにおいて,受信契約 の締結及び受信料の支払の意思がないのに,集金人をおびき寄せた上,被告 らの主張を展開してみせ,集金人がその場面の撮影を拒絶する様子を動画に 収めて公開することにより,動画視聴者に向けて身元を明らかにされた個々 25 の集金人の身の安全を脅かすものであると同時に,原告に対する同種行為の 12 継続実施を予告する内容を含むもので,受信契約の締結や受信料の収受とい った集金人の訪問活動業務全般に支障を生じさせるものということができる。 ⑶ 本件おびき寄せ行為 被告B及び被告Cは,令和元年9月7日,本件おびき寄せ行為に及んだ(前 提事実⑶)。すなわち,同被告らは,あらかじめ原告に対し,被告Cの父親が 5 した受信契約に基づく未払受信料の支払請求について担当者から説明を聞き たい旨申し出て,同日,被告Cの母親宅に本件職員をおびき寄せ,同人から 説明を受けている最中に,打ち合わせどおり被告Bが介入し,小型カメラを 見せて撮影しながら本件職員に対応し,本件職員の身元を明かすと,同時点 で説明が中止されたにもかかわらず,その場を離れる本件職員に対し,執拗 10 に追い掛けながら,路上で被告らの主張を投げ掛け続けて一方的に強い口調 で非難し,再三撮影の中止を求められても撮影を続行し,その動画を公開す る旨などを申し向けたものである。 そして,本件職員の到着前及び上記おびき寄せ直後に被告Bと被告Cの間 で,事前打合せ及び事後総括の様子を録画して当日中に公開し,更には動画 15 編集終了後,その内容を予告する動画を公開した上で,4-4動画を公開し たもので,これ 記おびき寄せ直後に被告Bと被告Cの間 で,事前打合せ及び事後総括の様子を録画して当日中に公開し,更には動画 15 編集終了後,その内容を予告する動画を公開した上で,4-4動画を公開し たもので,これらの動画を公開することは,動画視聴者に対し,その経過の 詳細を伝え,広く同種行為の実行を呼び掛けるものということができる。 このように,被告らは,「NHKに裁判されない方法」の一環として,おび き寄せ作戦を実施し,公開動画を通じて協力を呼び掛けていたところ,被告 20 Aが公開した動画などから趣旨に賛同した被告Cの協力を得て,8月4日動 画,8月8日動画で示された手法に従って,被告Cの母親宅に本件職員をお びき寄せ,その説明の途中から被告Bが介入し,4-4動画のとおり,本件 おびき寄せ行為に及び,続いて,その様子を伝える各動画の投稿に及んだも ので,これら一連の行為は,被告A,被告B及び被告Cが,共同して,受信 25 契約の締結や受信料の収受等のため原告が訪問スタッフに行わせている訪問 13 活動業務に対してした妨害行為であると認められる。 よって,原告の権利侵害がないとする被告らの主張は理由がない。 ⑷ 被告らの主張について ア 被告らは,本件おびき寄せ行為が原告による犯罪行為の調査や証拠獲得 を目的とした活動であり,原告の適正な業務を妨害することを目的とする 5 ものではなく,撮影場所や態様も合理的であり,社会生活上受忍限度を超 えるものではないから,原告の権利を侵害した事実がない,仮にこれがあ ったとしても,被告らの行為は正当業務行為であると主張する。 イ しかしながら,上記⑵及び⑶に説示したとおり,被告らによるおびき寄 せ作戦及びその一環としてされた本件おびき寄せ行為は,受信契約の締結 10 や受信料の収受といった原告が訪問スタッフに行わせて イ しかしながら,上記⑵及び⑶に説示したとおり,被告らによるおびき寄 せ作戦及びその一環としてされた本件おびき寄せ行為は,受信契約の締結 10 や受信料の収受といった原告が訪問スタッフに行わせている正当な訪問 活動業務全般に支障を生じさせる業務妨害行為であるというほかない。 それは,本件職員が,被告Cの親の未払受信料の支払に関する説明を求 められた者で,被告らが放送法や弁護士法に違反する行為がみられると指 摘する受信契約締結の場面ではなく,被告らが主張する犯罪行為の調査目 15 的でないことは明らかであったのに,当日本件職員が再三撮影の中止を求 めても撮影を続行され,その間,名前を連呼されて追い掛けられながら, 路上で一方的に強い調子で非難される様子を録画され,後日その動画を公 開されたという態様からすれば,いわば見せしめとして,本件おびき寄せ 行為の対象とされたものと言わざるを得ないことからも裏付けられる。 20 また,本件職員が,被告Cから未払受信料を集金することになったとし ても,これが弁護士法72条に違反するとの指摘はそれ自体失当であるか ら,その違反を調査するとの目的は正当化されない。 さらに,本件職員は,個人的な理由ではなく,原告の訪問スタッフであ るという属性から,本件おびき寄せ行為の対象とされたもので,被告Aの 25 8月4日動画や8月8日動画における発言も併せれば,原告としては,訪 14 問業務活動に従事する不特定多数の原告の訪問スタッフについて,その後 も継続的に同種の被害に遭うおそれがあるものと受け止めざるを得ない。 ウ 以上によれば,本件おびき寄せ行為は,その態様等に照らし,原告の正 当な訪問活動業務に対する妨害行為であって,その権利侵害事実は明らか で,社会生活上一般に受忍すべき限度を超えないものであるとはいえない。 5 れば,本件おびき寄せ行為は,その態様等に照らし,原告の正 当な訪問活動業務に対する妨害行為であって,その権利侵害事実は明らか で,社会生活上一般に受忍すべき限度を超えないものであるとはいえない。 5 また,その活動主体である被告政党が公党であることは,正当化要素たり えず,その正当業務行為ということもできない。 よって,被告らの上記アの主張は理由がない。 3 争点2(損害の発生及びその額)について ⑴ 認定事実⑷のとおり,本件おびき寄せ行為が行われた令和元年9月以降, 10 本件職員以外の訪問スタッフについて,訪問先で承諾なく撮影される事案, 被告政党,被告Aの考えに同調する者らから,訪問スタッフが追い掛けられ て暴力を振るわれる事案が発生したこと,営業部や営業センターに突然訪問 した者が,暴言を吐き,居座り,録音録画しようとする事案が発生したこと, 原告のコールセンター宛てに,おびき寄せ作戦の動画を見たという者から嫌 15 がらせ電話がかかってくる事案が発生したことが認められ,上記各事案につ いては,被告らによるおびき寄せ作戦の呼掛けや本件おびき寄せ行為に関す る動画公開などがきっかけとなっているものということができる。 ⑵ そのため,原告としては,本件おびき寄せ行為の後,おびき寄せ作戦に同 調する者らにより,不特定多数の原告の訪問スタッフについて,現に上記各 20 事案が発生したとおり,その後も継続的に同種の被害に遭うおそれがあるも のと受け止めざるを得ず,各種の対応策の実施を余儀なくされたものである。 具体的には,認定事実⑸のとおり,アポイントをとっての訪問については, おびき寄せ作戦の可能性を考慮し,複数名のスタッフが訪問する形式に切り 替えること,おびき寄せ作戦やこれを模倣する者への対策のために,訪問業 25 務,コールセンター業務に携わ っての訪問については, おびき寄せ作戦の可能性を考慮し,複数名のスタッフが訪問する形式に切り 替えること,おびき寄せ作戦やこれを模倣する者への対策のために,訪問業 25 務,コールセンター業務に携わるスタッフなどを対象として,講習会等を何 15 度も実施するなどしたこと,おびき寄せ作戦に関してインターネット上に投 稿された動画の削除申請をすること,警備体制や連絡・報告体制を強化する ことなどの各種対応を余儀なくされたもので,受信契約の締結,受信料の負 担を求める活動に携わる者の規模の大きさに照らすと,各対応策の実施に当 たっては,人件費の増加を含め,相当額の出費を伴うものと認められる。 5 また,認定事実⑸のとおり,本件おびき寄せ行為において,本件職員が交 付した名刺が動画公開されたことなどから,訪問先において名刺の提示を控 えざるを得なくなり,そのため身分証明が難しくなって,対応困難な事案が 生じるなど,なお訪問活動業務に支障を生じさせていると認められる。 ⑶ 原告に生じた上記の出費,費用増加ないし業務に生じた支障といった損害 10 は,被告らによるおびき寄せ作戦の呼掛け,本件おびき寄せ行為の実行及び 動画公開といった一連の不法行為による損害と認めるべきであるところ,そ の金銭評価を行うことは可能ではあるが,その算定根拠を明らかにすること が極めて困難なため,無形の損害に当たるものというべきである。 そして,本件において顕れた諸般の事情を斟酌し,原告が被った無形損害 15 の金額は少なくとも300万円が相当であると認める。また,弁護士費用に ついては,その1割に相当する30万円と認める。 したがって,原告の損害額は,合計330万円と認める。 4 小括 ⑴ 上記2で説示したとおり,被告A及び被告Bにおいて,おびき寄せ作戦の 20 復活 その1割に相当する30万円と認める。 したがって,原告の損害額は,合計330万円と認める。 4 小括 ⑴ 上記2で説示したとおり,被告A及び被告Bにおいて,おびき寄せ作戦の 20 復活を呼び掛け,これに協力の意思を示した被告Cと被告Bにおいて,本件 おびき寄せ行為に及んだものであるから,結局,被告A,被告B及び被告C は,共同して,受信契約の締結や受信料の収受等のため原告が訪問スタッフ に行わせている訪問活動業務を妨害する目的で,本件おびき寄せ行為に及ん だものと認められる。よって,被告A,被告B及び被告Cは,原告に対し共 25 同不法行為責任を負う。 16 ⑵ 一方,本件では,被告A,被告B及び被告Cによる不法行為とは別に,被 告政党固有の不法行為は観念できないから,被告政党について,その余の被 告らとの共同不法行為を認めることはできない。しかし,上記⑴の不法行為 は,被告Aが,被告政党の代表者(党首)として,被告政党の職務を行うに ついてされたものであることが明らかであるから,被告政党は,政党法人格 5 法8条,一般法人法78条に基づき損害賠償責任を負う。そして,被告政党 とその余の被告らの負う損害賠償責任は,不真正連帯債務の関係にあると解 される。 第4 結論 よって,原告の請求は,被告らに対して損害賠償金330万円及びこれに対 10 する不法行為の日の翌日である令和元年9月8日から支払済みまで民法所定 の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があるから これを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主 文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第44部 15 裁判長裁判官 藤 澤 裕 介 20 裁判官 多 して,主 文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第44部 15 裁判長裁判官 藤 澤 裕 介 20 裁判官 多 田 尚 史 25 裁判官 川 畑 百 代 17

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